JP2018157837A - 上昇したレベルの外因性シャペロンを有する細胞抽出物を用いる細菌無細胞合成系における生物活性のあるタンパク質の発現 - Google Patents

上昇したレベルの外因性シャペロンを有する細胞抽出物を用いる細菌無細胞合成系における生物活性のあるタンパク質の発現 Download PDF

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Abstract

【課題】無細胞合成系における、適正にフォールディングされた生物活性のある目的のタンパク質の発現を改善するための方法および系を提供すること。【解決手段】当該方法および系は、活性な酸化的リン酸化系を有する細菌無細胞抽出物を使用し、外因性タンパク質シャペロンを含む。外因性タンパク質シャペロンは、無細胞抽出物を調製するために使用される細菌によって発現させることができる。外因性タンパク質シャペロンは、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよび/またはペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼであってよい。本発明者らは、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼとペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼの組合せにより、適正にフォールディングされた生物活性のある目的のタンパク質の量が相乗的に増加することを発見した。【選択図】なし

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2013年4月19日に出願された米国特許出願第61/813,914号、および2014年2月7日に出願された米国特許出願第61/937,069号の優先権の利益を主張し、それぞれの開示は、その全体が本明細書に参考として援用される。
ASCIIテキストファイルとして提出された「配列表」、表またはコンピュータープログラムリストの付録への参照
2014年4月16日に作成され、73,728バイト、マシンフォーマットはIBM(登録商標)−PC、MS−Windows(登録商標)オペレーティングシステムである、−58−2PC.TXTファイルで書かれた配列表は、全ての目的について本明細書にその全体が参考として援用される。
細菌無細胞合成系におけるタンパク質の発現は、組換え標的タンパク質を発現させるための、十分に確立された技法である。タンパク質に応じて性質が変更された細菌無細胞合成系をもたらすために、目的のタンパク質を発現または過剰発現する細菌から抽出物を作製することができる。しかし、細菌の成長中にタンパク質を過剰発現させることにより、しばしば細菌の成長速度が遅くなり、また、細菌から調製した抽出物におけるタンパク質合成活性が低下する。
さらに、そのような抽出物から組換えタンパク質を発現させることにより、多くの場合、不適正なフォールディングおよび生物活性の喪失が導かれる。タンパク質シャペロンの使用により、適正なフォールディングおよびタンパク質の生物活性が改善され得る。したがって、シャペロンを過剰発現する細菌から調製される組換えタンパク質を発現させるための改善された細菌細胞抽出物であって、適正にフォールディングされたタンパク質を大量に合成可能な抽出物が依然として必要とされている。これらおよび他の必要が下記の通り本発明により提供される。
本開示は、無細胞合成系における、生物活性があり、かつ/または適正にフォールディングされた目的のタンパク質の発現を改善するための方法および系を提供する。無細胞合成系は、活性な酸化的リン酸化系を有する細菌抽出物および無細胞タンパク質合成に必要な成分を含む。無細胞合成系は、外因性タンパク質シャペロンをさらに含む。一部の実施形態では、外因性タンパク質シャペロンを、細菌抽出物を調製するために使用する細菌により発現させる。
したがって、一態様では、細菌無細胞合成系における生物活性のあるタンパク質の発現レベルを改善する方法が記載され、当該方法は、
i)活性な酸化的リン酸化系を有し、無細胞タンパク質合成に必要な生物学的機能性tRNA、アミノ酸およびリボソームを含む細菌抽出物を調製するステップであって、抽出物が調製される細菌が、外因性タンパク質シャペロンを抽出物1リットル当たり少なくとも約1gmの濃度で発現するステップ;
ii)細菌抽出物を目的のタンパク質をコードする核酸と組み合わせて、細菌無細胞合成系をもたらすステップ;ならびに
iii)細菌無細胞合成系を、目的のタンパク質を少なくとも約100mg/Lの濃度まで発現させることが可能な条件下でインキュベートするステップ
を含む。
第2の態様では、生物活性のあるタンパク質を発現させるための細菌無細胞合成系が記載され、当該系は、
i)活性な酸化的リン酸化系を有する細菌の無細胞抽出物であって、無細胞タンパク質合成に必要な生物学的機能性tRNA、アミノ酸およびリボソームを含有し、外因性タンパク質シャペロンが細菌において抽出物1リットル当たり少なくとも1gmのレベルで発現された、細菌の無細胞抽出物;および
ii)目的のタンパク質をコードする核酸
を含み、目的のタンパク質を少なくとも約100mg/Lの濃度まで発現する。
第3の態様では、適正にフォールディングされた生物活性のあるタンパク質を細菌無細胞合成系において発現させる方法が記載され、当該方法は、
i)無細胞タンパク質合成に必要な生物学的機能性tRNA、アミノ酸、リボソームと、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス/トランスイソメラーゼとを含む細菌抽出物を調製するステップであって、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス/トランスイソメラーゼが、適正にフォールディングされた生物活性のあるタンパク質の発現を改善するために十分な濃度で存在するステップ;
ii)細菌抽出物を目的のタンパク質をコードする核酸と組み合わせるステップ;ならびに
iii)細菌抽出物を、目的のタンパク質の発現および適正なフォールディングが可能になる条件下で核酸と共にインキュベートするステップ
を含む。
第4の態様では、生物活性のあるタンパク質を発現させるための細菌無細胞合成系が記載され、当該系は、
i)活性な酸化的リン酸化系を有する細菌無細胞抽出物であって、無細胞タンパク質合成に必要な生物学的機能性tRNA、アミノ酸およびリボソームを含有し、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス/トランスイソメラーゼをさらに含み、
タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス/トランスイソメラーゼが、適正にフォールディングされた生物活性のあるタンパク質の発現を改善するために十分な濃度で存在する細菌無細胞抽出物;ならびに
ii)目的のタンパク質をコードする核酸
を含み、目的のタンパク質を少なくとも約100mg/Lの濃度まで発現する。
第5の態様では、E coli細胞培養物の生命力および/または成長速度を改善する方法が記載され、当該方法は、
i)構成的プロモーターに作動可能に連結した、タンパク質DsbCを発現する核酸でE.coli細胞を形質転換するステップ;および
ii)形質転換されたE.coli細胞を、DsbCタンパク質を少なくとも1mg/mlの細胞内濃度まで過剰発現させることが可能になる条件下で培養するステップ
を含む。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
細菌無細胞合成系における生物活性のあるタンパク質の発現レベルを改善する方法であって、
i)細菌抽出物を目的のタンパク質をコードする核酸と組み合わせて、細菌無細胞合成系をもたらすステップ;および
ii)前記細菌無細胞合成系を、前記目的のタンパク質を少なくとも約100mg/Lの濃度まで発現させることが可能な条件下でインキュベートするステップ
を含み、前記細菌抽出物が、活性な酸化的リン酸化系を有し、無細胞タンパク質合成に必要な生物学的機能性tRNA、アミノ酸およびリボソームを含み、前記抽出物を、外因性ジスルフィドイソメラーゼおよび外因性プロリルイソメラーゼを抽出物1リットル当たり少なくとも約1gの総濃度で発現する細菌から調製する、方法。
(項目2)
前記抽出物を、外因性デアグリガーゼをさらに発現する細菌から調製する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記抽出物が調製される細菌が、ジスルフィドイソメラーゼをコードする遺伝子、プロリルイソメラーゼをコードする遺伝子、またはデアグリガーゼをコードする遺伝子で共形質転換された、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記外因性ジスルフィドイソメラーゼがDsbCであり、前記外因性プロリルイソメラーゼがFkpAまたはSlyDであり、前記デアグリガーゼがSkpである、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記細菌がEscherichia coliである、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記抽出物が調製される細菌が、構成的プロモーターに作動可能に連結した遺伝子から外因性ジスルフィドイソメラーゼ、プロリルイソメラーゼ、またはデアグリガーゼを発現する、項目1から5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記目的のタンパク質が、その生物活性のあるコンフォメーションにおいて少なくとも1つのジスルフィド結合を有する、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記目的のタンパク質が、少なくとも2つのプロリン残基を有する、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記目的のタンパク質が抗体または抗体断片である、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記細菌無細胞合成系の体積が0.5リットルから500リットルの間であり、前記インキュベーションが1〜36時間続く期間のインキュベーションである、項目1に記載の方法。
(項目11)
生物活性のあるタンパク質を発現させるための細菌無細胞合成系であって、
i)活性な酸化的リン酸化系を有する細菌の無細胞抽出物であって、無細胞タンパク質合成に必要な生物学的機能性tRNA、アミノ酸およびリボソームを含有し、外因性ジスルフィドイソメラーゼおよび外因性プロリルイソメラーゼが細菌において抽出物1リットル当たり少なくとも1gのレベルで発現された、細菌の無細胞抽出物;ならびに
ii)目的のタンパク質をコードする核酸
を含み、目的のタンパク質を少なくとも約100mg/Lの濃度まで発現する、細菌無細胞合成系。
(項目12)
(削除)
(項目13)
前記抽出物が調製される細菌が、前記ジスルフィドイソメラーゼをコードする遺伝子および前記プロリルイソメラーゼをコードする遺伝子で共形質転換された、項目11に記載の系。
(項目14)
前記外因性ジスルフィドイソメラーゼがDsbCであり、前記外因性プロリルイソメラーゼがFkpAまたはSlyDである、項目11または13に記載の系。
(項目15)
前記細菌がEscherichia coliである、項目11または13に記載の系。
(項目16)
前記抽出物が調製される細菌が、構成的プロモーターに作動可能に連結した遺伝子から前記外因性ジスルフィドイソメラーゼおよび前記外因性プロリルイソメラーゼを発現する、項目11、13または15に記載の系。
(項目17)
前記抽出物がE.coliのS30抽出物である、項目11、13または16に記載の系。
(項目18)
適正にフォールディングされた生物活性のあるタンパク質を細菌無細胞合成系において発現させる方法であって、
i)細菌抽出物を目的のタンパク質をコードする核酸と組み合わせるステップ;ならびに
ii)前記細菌抽出物を、前記目的のタンパク質の発現および適正なフォールディングが可能になる条件下で前記核酸と共にインキュベートするステップ
を含み、前記細菌抽出物が、無細胞タンパク質合成に必要な生物学的機能性tRNA、アミノ酸、リボソームと、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼとを含み、前記タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよび前記ペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼが、適正にフォールディングされた生物活性のあるタンパク質の発現を改善するために十分な濃度で存在する、方法。
(項目19)
前記タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよび前記ペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼの総濃度が、前記抽出物中、1リットル当たり少なくとも約1gの濃度で存在する、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよび前記ペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼの総濃度が、前記抽出物中、1リットル当たり1gから1リットル当たり14gの間の濃度で存在する、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記目的のタンパク質の発現が、前記タンパク質ジスルフィドイソメラーゼとペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼの両方ではなく一方が存在する場合であって、インキュベーション条件が他の点では同じである場合の濃度を上回る濃度まで改善される、項目18に記載の方法。
(項目22)
前記タンパク質ジスルフィドイソメラーゼがDsbA、DsbB、DsbC、およびDsbDからなる群から選択され、前記ペプチジル−プロリルシス/トランスイソメラーゼがFkpAおよびSlyDからなる群から選択される、項目18に記載の方法。
(項目23)
前記抽出物が調製される細菌が、構成的プロモーターに作動可能に連結した遺伝子からタンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼの少なくとも1つを発現する、項目18に記載の方法。
(項目24)
前記細菌がEscherichia coliである、項目18に記載の方法。
(項目25)
前記目的のタンパク質が、その生物活性のあるコンフォメーションにおいて少なくとも1つのジスルフィド結合を有する、項目18に記載の方法。
(項目26)
前記目的のタンパク質が、少なくとも2つのプロリン残基を有する、項目18に記載の方法。
(項目27)
前記目的のタンパク質が抗体または抗体断片である、項目18に記載の方法。
(項目28)
生物活性のあるタンパク質を発現させるための細菌無細胞合成系であって、
i)活性な酸化的リン酸化系を有する細菌無細胞抽出物であって、無細胞タンパク質合成に必要な生物学的機能性tRNA、アミノ酸およびリボソームを含有し、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼをさらに含み、
前記タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよび前記ペプチジル−プロリルシス/トランスイソメラーゼが、適正にフォールディングされた生物活性のあるタンパク質の発現を改善するために十分な濃度で存在する、細菌無細胞抽出物;ならびに
ii)目的のタンパク質をコードする核酸、
を含み、目的のタンパク質を少なくとも約100mg/Lの濃度まで発現する、細菌無細胞合成系。
(項目29)
タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼの総濃度が、前記抽出物中、1リットル当たり少なくとも約1gの濃度で存在する、項目28に記載の系。
(項目30)
タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼの総濃度が、前記抽出物中、1リットル当たり1gから1リットル当たり14gの間の濃度で存在する、項目28に記載の系。
(項目31)
前記目的のタンパク質の発現が、前記タンパク質ジスルフィドイソメラーゼと前記ペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼの両方ではなく一方が存在する場合であって、インキュベーション条件が他の点では同じである場合の濃度を上回る濃度まで改善される、項目28に記載の系。
(項目32)
前記タンパク質ジスルフィドイソメラーゼがDsbA、DsbB、DsbC、およびDsbDからなる群から選択され、前記ペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼがFkpAおよびSlyDからなる群から選択される、項目28に記載の系。
(項目33)
前記抽出物が調製される細菌が、構成的プロモーターに作動可能に連結した遺伝子からタンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼの少なくとも1つを発現する、項目28に記載の系。
(項目34)
前記細菌がEscherichia coliである、項目28に記載の系。
(項目35)
前記目的のタンパク質が、その生物活性のあるコンフォメーションにおいて少なくとも1つのジスルフィド結合を有する、項目28に記載の系。
(項目36)
前記目的のタンパク質が、少なくとも2つのプロリン残基を有する、項目28に記載の系。
(項目37)
前記目的のタンパク質が抗体または抗体断片である、項目28に記載の系。
(項目38)
細菌抽出物を調製するための方法であって、
i)外因性タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよび外因性ペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼを発現する細菌を培養するステップ、ならびに
ii)活性な酸化的リン酸化系を有し、無細胞タンパク質合成に必要な生物学的機能性tRNA、アミノ酸およびリボソームを含む抽出物を調製するステップ
を含み、前記タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよび前記ペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼが、前記抽出物中、1リットル当たり少なくとも約1gの総濃度で存在する、方法。
(項目39)
活性な酸化的リン酸化系を含む、生物活性のあるタンパク質を発現させるための細菌無細胞抽出物であって、無細胞タンパク質合成に必要な生物学的機能性tRNA、アミノ酸およびリボソームを含有し、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼをさらに含み、
前記タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよび前記ペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼが、前記抽出物中、1リットル当たり少なくとも約1gの総濃度で存在する、細菌無細胞抽出物。
図1は、真核生物PDIと細菌DsbCが機能的に交換可能であることを示すグラフである。
図2Aは、実施例に記載されているシャペロン逐次的発現スクリーニングの概略図である。
図2Bは、細菌無細胞系で発現させたタンパク質シャペロンを細菌無細胞合成系に添加することによってIgG力価を改善できることを示す図である。
図3は、タンパク質シャペロンSkp、SlyDおよびFkpAにより、適正に集合したIgGの可溶性および/または量が改善されることを示す図である。
図4は、タンパク質シャペロンFkpAにより、IgGタンパク質の可溶性およびフォールディングが改善されることを示す図である。
図5は、DsbCを含有する抽出物に精製FkpAを添加することにより、IgGのフォールディングが促進されることを示す図である。
図6は、FkpAを含有する抽出物に外因性DsbCタンパク質を添加することにより、IgG力価が増大することを示す図である。
図7は、シャペロンDsbCまたはFkpAを発現する、示されている細菌株由来の抽出物中でCFPSによって産生されるGMCSFタンパク質の量を示すグラフである。
図8は、構成的プロモーターの制御下で1×コピーまたは2×コピーのDsbCを発現するプラスミドで形質転換した細菌株の成長速度を示す図である(上のパネル)。下のパネルは、ペリプラズム溶解物中に存在するDsbCタンパク質の量を示す。
図9は、1×コピーまたは2×コピーのDsbCを過剰発現する細菌株によって産生されるDsbCタンパク質の量を示す。上のパネルは細胞内濃度を示す。下のパネルは抽出物中濃度を示す。
図10は、構成的プロモーターの制御下で1×コピーまたは2×コピーのFkpAを発現するプラスミドで形質転換した細菌株の成長速度を示す図である(上のパネル)。左下のパネルは、1×コピーおよび2×コピーのFkpAを発現する細菌から調製した全抽出物中に存在するFkpAタンパク質の量を示す。右下のパネルは細菌株の倍加時間を示す。
図11は、1×コピーおよび2×コピーのFkpAを発現する細菌由来の抽出物中のFkpA濃度の定量化を示す図である。
図12は、FkpAへのC末端Hisタグの付加の結果を示すグラフである。(a)は、FkpA−His(2×FkpA−His(e49))を過剰発現する細菌から調製したFkpAの抽出物レベルが、30℃で抽出物を活性化(プレインキュベーション)した後、遠心回転によって上昇したことを示す。(b)は、FkpA−Hisを含有する抽出物により、野生型FkpAを含有する抽出物よりも多くの総IgGが産生されたこと(2×FkpA(e44)と2×FkpA−His(e49)の比較)、および正確に集合したIgGの総量が、抽出物を活性化後に遠心分離することによって増加したこと(2×FkpAの最終回転と2×FkpA−Hisの最終回転の比較)を示す。Con1およびCon2はFkpAを発現しない細菌から調製した対照抽出物である。
図13は、Open Cell Free Synthesis系において、シャペロンの過剰発現により多数のIgGの収量が改善されることを示す図である。(A)トラスツズマブ、CD30抗原結合性ブレンツキシマブ、ならびに、生殖細胞系列重鎖VH3−7およびVH3−23と生殖細胞系列軽鎖Vk3−20の組合せをSBJY001、2×DsbC、および2×D+2×F抽出物中で14C−ロイシンの存在下で発現させ、SDS−PAGEおよびオートラジオグラフィーによって可視化した。(B)実施例に記載の通り異なる抽出物中で発現させた集合したIgGを数量化した。
定義
別段の定義のない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。例えば、Lackie、DICTIONARY
OF CELL AND MOLECULAR BIOLOGY、Elsevier(第4版、2007年);Sambrookら、MOLECULAR CLONING、A
LABORATORY MANUAL、Cold Springs Harbor Press(Cold Springs Harbor、NY 1989年);Ausubelら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、John Wiley and Sons(Hoboken、NY 1995年)を参照されたい。「a(1つの)」または「an(1つの)」は、「1つまたは複数」を意味するものとする。「含む(comprise)」という用語およびそのバリエーション、例えば、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」は、ステップまたは要素の列挙の前にある場合、さらなるステップまたは要素の追加が任意選択であり、排除されないことを意味することが意図されている。本明細書に記載のものと同様または等価である任意の方法、デバイスおよび材料を本発明の実施において使用することができる。以下の定義は、本明細書において頻繁に使用される特定の用語の理解を容易にするために提示されるものであり、本開示の範囲を限定するものではない。
「活性な酸化的リン酸化系」という用語は、タンパク質合成の間に活性な酸化的リン酸化を示す細菌溶解物を指す。例えば、細菌溶解物は、ATPシンターゼ酵素および酸素の還元を使用してATPを生成することができるものである。当技術分野で公知の他の翻訳系でもタンパク質合成の間に活性な酸化的リン酸化が使用され得ることが理解されよう。酸化的リン酸化の活性化は、電子伝達鎖阻害剤などの特定の阻害剤を使用した経路の阻害によって実証することができる。
「抗体」という用語は、機能的には結合性タンパク質と定義され、構造的には、抗体を産生する動物の免疫グロブリンをコードする遺伝子のフレームワーク領域に由来すると当業者に理解されるアミノ酸配列を含むと定義されるタンパク質を指す。抗体は、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子の断片によって実質的にコードされる1つまたは複数のポリペプチドからなり得る。認められている免疫グロブリン遺伝子としては、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖はカッパまたはラムダのいずれかに分類される。重鎖はガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンに分類され、今度はそれにより、免疫グロブリンのクラス、それぞれIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEが定義される。
典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は四量体を含むことが公知である。各四量体は2つの同一のポリペプチド鎖の対で構成され、各対は1つの「軽」鎖(約25kD)と1つの「重」鎖(約50〜70kD)を有する。各鎖のN末端により、抗原認識に主に関与する約100〜110またはそれ超のアミノ酸の可変領域が定義される。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)という用語は、それぞれ、これらの軽鎖および重鎖を指す。
抗体は、インタクトな免疫グロブリンとして、または種々のペプチダーゼを用いた消化によって産生されるいくつものよく特徴付けられた断片として存在する。したがって、例えば、ペプシンにより、抗体はヒンジ領域内のジスルフィド結合の下で消化されて、Fabの二量体であるF(ab)’が生じ、これはそれ自体がVH−CH1とジスルフィド結合によってつながった軽鎖である。F(ab)’を穏やかな条件下で還元してヒンジ領域におけるジスルフィド結合を破壊し、それにより、(Fab’)二量体をFab’単量体に変換することができる。Fab’単量体は、基本的にはヒンジ領域の一部を有するFabである(他の抗体断片に関するより詳細な記載についてはFundamental Immunology、W.E. Paul編、Raven Press、N.Y.(1993年)を参照されたい)。種々の抗体断片がインタクトな抗体の消化に関して定義されているが、そのようなFab’断片を化学的にまたは組換えDNAの方法体系を利用することによって新規に合成できることが当業者には理解されよう。したがって、抗体という用語は、本明細書で使用される場合、全抗体の改変によって作製されたか、または組換えDNA方法体系を使用して新規に合成された抗体断片も包含する。抗体は、単鎖抗体(単一のポリペプチド鎖として存在する抗体)、可変重鎖と可変軽鎖がつなぎ合わさって(直接またはペプチドリンカーを通じて)連続的なポリペプチドが形成され、単鎖Fv抗体(sFvまたはscFv)も包含する。単鎖Fv抗体は、共有結合により連結したVH−VLヘテロ二量体であり、直接つながったまたはペプチドをコードするリンカーによってつながったVHコード配列とVLコード配列を含む核酸から発現し得る。Hustonら(1988年)Proc. Nat. Acad. Sci. USA、85巻:5879〜5883頁。VHとVLは単一のポリペプチド鎖として互いと接続しているが、VHドメインおよびVLドメインは非共有結合により会合している。繊維状ファージの表面上で発現させる最初の機能性抗体分子は単鎖Fv’s(scFv)であったが、代替の発現戦略も上首尾に行われている。例えば、鎖(重鎖または軽鎖)の一方をg3カプシドタンパク質と融合し、相補鎖を可溶性分子としてペリプラズムに移出すると、Fab分子をファージ上にディスプレイすることができる。2つの鎖は同じレプリコン上にコードされていてもよく、異なるレプリコン上にコードされていてもよい。重要な点は、各Fab分子内の2つの抗体鎖が翻訳後に集合し、鎖の一方がg3pと連結することによって二量体がファージ粒子に組み入れられることである(例えば、米国特許第5733743号を参照されたい)。scFv抗体、および、天然に凝集しているが化学的に分離した抗体V領域の軽ポリペプチド鎖および重ポリペプチド鎖を、抗原結合性部位の構造と実質的に類似した3次元構造にフォールディングされる分子に変換するいくつもの他の構造は当業者に公知である(例えば、米国特許第5,091,513号、同第5,132,405号、および同第4,956,778号を参照されたい)。抗体は、ファージ上にディスプレイされた抗体も全て包含する(例えば、scFv、Fv、Fabおよびジスルフィド連結したFv(Reiterら(1995年)Protein Eng. 8巻:1323〜1331頁)。抗体は、ジ抗体(diantibody)、ミニ抗体(miniantibody)およびscFv−Fc融合物も包含し得る。
「細菌由来細胞を含まない抽出物」という用語は、DNAをmRNAに転写し、かつ/またはmRNAをポリペプチドに翻訳することができるin vitro反応混合物の調製物を指す。混合物は、リボソーム、ATP、アミノ酸、およびtRNAを含む。これらは、溶解させた細菌から直接、精製した成分またはその両方の組合せから引き出すことができる。
「細菌無細胞合成系」という用語は、生物学的な抽出物および/または定義済みの試薬を含む反応混合物中でのポリペプチドのin vitro合成を指す。反応混合物は、巨大分子、例えば、DNA、mRNAなどを産生させるための鋳型;合成される巨大分子の単量体、例えば、アミノ酸、ヌクレオチドなど;ならびに補因子、酵素および合成に必要な他の試薬、例えば、リボソーム、空のtRNA(uncharged tRNA)、非天然アミノ酸を保持するtRNA(tRNAs charged with unnatural amino acids)、ポリメラーゼ、転写因子、tRNA合成酵素などを含む。
「生物活性のあるタンパク質」という用語は、目的のタンパク質の生物活性の少なくとも一部を保持するタンパク質を指す。生物活性は、本明細書に記載の方法によって発現させる目的のタンパク質の活性、機能および/または構造を目的の参照タンパク質の活性と比較することによって決定することができる。例えば、目的の参照タンパク質がIgGである場合、生物活性のあるタンパク質は、適正にフォールディングされ、集合したIgG分子を含む。一部の実施形態では、参照タンパク質は、外因性タンパク質シャペロンを含有しない細菌無細胞合成系によって発現されるタンパク質であってよい。生物活性は、目的のタンパク質に適したin vitroアッセイまたはin vivoアッセイを使用して決定することもできる。目的のタンパク質の生物活性は、無細胞タンパク質合成反応混合物の単位体積当たりの生物活性として表すことができる。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法によって産生されるタンパク質の生物活性は、参照タンパク質の活性の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%である。
「構成的プロモーター」という用語は、適切な条件下で、当該プロモーター配列と作動可能に接続または連結した核酸配列または遺伝子の連続的な転写を可能にする核酸配列を指す。適切な条件は、プロモーター配列に結合するRNAポリメラーゼなどの転写因子、および転写されるRNAに組み入れられるリボヌクレオチドを含む。構成的プロモーターは、一般には、正常な細胞性条件下で連続的な転写を促進するという点で、調節されていないプロモーターである。
「ジスルフィドイソメラーゼ」または「タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ」(PDI)という用語は、それぞれが典型的なチオレドキシン(Trx)フォールドを有する多数のドメインを含むタンパク質のファミリーを指す。PDI分子はイソメラーゼ活性に対する部位であるCXXCモチーフを含む2つまたはそれ超の活性部位を有する。in vitroにおいて、PDIは、環境の酸化還元電位に応じてジスルフィド結合の酸化的形成、還元、または異性化を触媒する。PDIは、フォールダーゼ(foldase)とも称されるフォールディング触媒のクラスのメンバーである。フォールディング触媒は、タンパク質フォールディングプロセスにおけるある特定の律速ステップを加速し、それにより、凝集したタンパク質フォールディング中間体の濃度を低下させることによってフォールディングを補助する。ジスルフィド結合の形成を触媒するイソメラーゼ機能に加えて、PDIは、ポリペプチドのそれらのネイティブな立体配置へのフォールディングも促進し、したがって、シャペロンとして作用する。PDIのC末端領域はポリペプチド結合性領域を含み、シャペロン活性に関与すると考えられている。PDIのイソメラーゼ活性とシャペロン活性は別々の独立した活性であり、どちらの活性も、還元および変性した、ジスルフィド結合を含有するタンパク質の再活性化に必要であると思われる。
グラム陰性菌では、ジスルフィド結合形成、還元および異性化は、DsbA、DsbB、DsbC、およびDsbDを含めたタンパク質のDsb(ジスルフィド結合形成)ファミリーによって触媒される。DsbAは、その活性部位ジスルフィドを標的タンパク質に移入することによってジスルフィド結合の酸化的形成を触媒し、DsbAは還元された形態のままになる。DsbBはDsbAを再酸化し、その電子を呼吸鎖に送って酸化されたDsbBを再生する。DsbCはジスルフィド結合の再構成を触媒し、真核生物PDIの対応物として認められている。DsbCの還元された形態がDsbDによって維持される。DsbCは、4つのチオール基を有し、そのそれぞれが23kDaのサブユニット単量体であり、2つが活性部位−Cys98−Gly−Tyr−Cys101(配列番号29)にあり、他の2つがCys141およびCys163である、ホモ二量体である。PDIと同様に、DsbCはそのイソメラーゼ活性とは独立したシャペロン活性を有する。(例えば、Chenら、J. Biol. Chem. 274巻:19601〜19605頁、1999年;およびKolag、O.ら、Microbial Cell Factories、2009年、8巻:9頁を参照されたい)。各単量体は、シスタチンフォールドを有するN末端二量体形成ドメインおよびチオレドキシンフォールドを有するC末端触媒ドメインからなる(McCarthy A.A.ら、Nat. Struct. Biol. 7巻:196〜199頁、2000年)。他のDsbタンパク質としてはDsbEおよびDsbGが挙げられる。
「外因性タンパク質シャペロン」という用語は、一般に、細菌抽出物を調製するために使用する細菌株によっては通常発現されないタンパク質シャペロン(例えば、組換えタンパク質シャペロン)、またはネイティブな細菌株には存在しない核酸構築物によって発現される組換えタンパク質シャペロンを指す。例えば、細菌抽出物を調製するために使用するネイティブな細菌株が内因性タンパク質シャペロンを低レベルで(例えば、生物活性のある目的のタンパク質の発現レベルを改善するためには十分でないレベルで)天然に発現する場合、外因性タンパク質シャペロンを非ネイティブな核酸構築物から発現させ、したがって、外因性タンパク質シャペロンをコードする核酸配列を、シャペロンをコードする内因性配列とは異なる調節配列の制御下に置くことができる。例えば、タンパク質シャペロンDsbCおよびFkpAは天然に存在するE.coliタンパク質であるが、それらの発現レベルは、細菌抽出物中のタンパク質を検出するための本明細書に記載のELISAアッセイを使用した検出限界を下回る。したがって、「外因性」という用語は、細菌抽出物を調製するために使用する細菌株によっては通常発現されないタンパク質シャペロン、またはネイティブな細菌株には存在しないタンパク質シャペロンをコードする核酸を指す「異種性」と同義である。一部の実施形態では、この用語は、細菌無細胞抽出物に添加される組換えタンパク質シャペロンを指し、したがって、抽出物を作製するための細菌によっては発現されない。
「同一」、「基本的に同一」またはパーセント「同一性」という用語は、2つまたはそれ超の核酸またはポリペプチド配列に関しては、それぞれAltschulら(J. Mol. Biol. 215巻:403〜10頁、1990年)、およびAltschulら(Nucleic Acids Res.、25巻:3389〜3402頁、1997年)に記載されているBLASTアルゴリズムおよびPSI−BLASTアルゴリズムを使用して測定して、比較ウインドウまたは指定の領域にわたって最大の対応について比較し、アラインメントした場合に、同じである、または、同じであるヌクレオチドまたはアミノ酸残基を規定の百分率で有する(例えば、規定の領域にわたって60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一性)2つまたはそれ超の配列または部分配列を指す。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通じて公的に入手可能である(インターネットを参照されたい、ncbi.nlm.nih.gov)。このアルゴリズムは、まず、データベース配列内の同じ長さのワードとアラインメントした場合に、いくつかの正の値をとる閾値スコアTとマッチするか、またはそれを満たすクエリ配列内の長さWの短いワードを同定することにより高スコア配列対(HSP)を同定することを伴う。Tは、近傍ワードスコア閾値と称される(Altschulら、上記)。これらの最初の近傍ワードヒットは、それらを含有するより長いHSPを見いだすための検索を開始するための種としての機能を果たす。累積的なアラインメントスコアを増加させることができる限り、ワードヒットを各配列に沿って両方向に伸長する。ヌクレオチド配列については、パラメータM(マッチする残基の対についてのリワードスコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基についてのペナルティスコア;常に<0)を使用して累積スコアを算出する。アミノ酸配列については、スコアリング行列を使用して累積スコアを算出する。累積アラインメントスコアがその最大達成値から数量Xだけ減少した時;1つもしくは複数の負スコア残基アラインメントの蓄積により累積スコアがゼロもしくはそれ未満になった時;またはいずれかの配列の末端に達した時に、各方向へのワードヒットの伸長を停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXにより、アラインメントの感度およびスピードが決定される。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)では、初期値としてワード長(wordlength)(W)11、期待値(expectation)(E)10、M=5、N=−4および両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムで初期値としてワード長(wordlength)3、期待値(expectation)(E)10、およびBLOSUM62スコアリング行列を使用する(HenikoffおよびHenikoff、Proc. Natl. Acad. Sci.
USA 89巻:10915〜10919頁、1992年を参照されたい)。
「配列同一性の百分率」は、比較ウインドウにわたって最適にアラインメントされた2つの配列を比較することによって決定し、ここで、比較ウインドウ内のポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の一部は、2つの配列を最適にアラインメントするために参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでよい。両方の配列内で同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が存在する位置の数を決定して、マッチする位置の数を得、マッチする位置の数を比較のウインドウ内の位置の総数で割り、その結果に100を掛けて、配列同一性の百分率を得ることによって百分率を算出する。
「比較ウインドウ」とは、本明細書で使用される場合、配列を、同じ数の連続した位置の参照配列と、2つの配列を最適にアラインメントした後に比較することができる20〜600、通常約50〜約200、さらに通常約100〜約150からなる群から選択される連続した位置の数のいずれか1つのセグメントへの言及を含む。比較のために配列をアラインメントする方法は当技術分野で周知である。
BLASTアルゴリズムにより、2つの配列間の類似性の統計解析も実施される(例えば、KarlinおよびAltschul、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:5873〜87頁、1993年を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによってもたらされる類似性の1つの測定基準は最小和確率(P(N))であり、これにより、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間のマッチが偶然に起こり得る確率の指標がもたらされる。例えば、核酸は、試験核酸と参照核酸の比較における最小和確率が約0.2未満、一般には約0.01未満、より一般には約0.001未満である場合、参照配列と類似しているとみなされる。
配列同一性の百分率がポリペプチドに関して使用される場合、他の点では同一ではない1つまたは複数の残基の位置が、最初のアミノ酸残基が同様の電荷または疎水特性または親水特性などの同様の化学的性質を有する別のアミノ酸残基で置換されており、したがって、ポリペプチドの機能的性質が変化しない保存的アミノ酸置換により異なってよいことが理解される。ポリペプチド配列が保存的置換で異なる場合、置換の保守性が補正されるようにパーセント配列同一性を上向きに調整することができる。そのような調整は、周知の方法、例えば、保存的置換を完全なミスマッチではなく部分的なミスマッチとしてスコアリングし、それにより、配列同一性の百分率を上昇させることを使用して行うことができる。したがって、例えば、同一のアミノ酸のスコアを1とし、非保存的置換のスコアをゼロとした場合、保存的置換のスコアはゼロから1の間になる。保存的置換のスコアリングは、Pearsonら(Meth. Mol. Biol. 24巻:307〜331頁、1994年)に記載されているアルゴリズムを使用して算出することができる。アラインメントは、配列の単純な目視検査および手動のアラインメントによっても実施することができる。
「保存的に改変されたバリエーション」という用語は、特定のポリヌクレオチド配列に関して使用される場合、同一または基本的に同一の(例えば、規定の領域にわたって少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一性)アミノ酸配列をコードする異なるポリヌクレオチド配列を指し、ポリヌクレオチドがアミノ酸配列をコードしない場合には、基本的に同一の配列を指す。遺伝暗号の縮重が原因で、多数の機能的に同一のポリヌクレオチドが任意の所与のポリペプチドをコードする。例えば、コドンCGU、CGC、CGA、CGG、AGA、およびAGGは全てアミノ酸アルギニンをコードする。したがって、アルギニンがコドンによって規定されているあらゆる位置において、コードされるポリペプチドの変更を生じることなく、コドンを記載されている対応するコドンのいずれかに変更することができる。そのようなヌクレオチド配列のバリエーションは、「保存的に改変されたバリエーション」の種とみなすことができる「サイレントバリエーション」である。そのように、タンパク質バリアントをコードすることが本明細書に開示されている各ポリヌクレオチド配列により、あらゆる可能性のあるサイレント変動も記載されることが理解されよう。ポリヌクレオチド内の各コドンは、普通はメチオニンの唯一のコドンであるAUG、および普通はトリプトファンの唯一のコドンであるUUG以外は、標準の技法によって改変して機能的に同一の分子をもたらすことができることも理解されよう。したがって、コードされるポリペプチドの配列を変化させないポリヌクレオチドの各サイレントバリエーションは、暗黙のうちに本明細書に記載されている。
さらに、コードされる配列内の単一のアミノ酸または小さな百分率のアミノ酸(一般には10%未満、一般に1%未満)を変更する、付加する、または欠失させる個々の置換、欠失または付加は、当該変更により、アミノ酸の化学的に類似したアミノ酸での置換がもたらされるのであれば、保存的に改変されたバリエーションとみなすことができることが理解されよう。それぞれが互いに保存的置換とみなされるアミノ酸を含有する以下の6つの群を含めた、機能的に類似したアミノ酸をもたらす保存的アミノ酸置換は当技術分野で周知である:
1)アラニン(Ala、A)、セリン(Ser、S)、トレオニン(Thr、T);
2)アスパラギン酸(Asp、D)、グルタミン酸(Glu、E);
3)アスパラギン(Asn、N)、グルタミン(Gln、Q);
4)アルギニン(Arg、R)、リシン(Lys、K)
5)イソロイシン(Ile、I)、ロイシン(Leu、L)、メチオニン(Met、M)、バリン(Val、V);および
6)フェニルアラニン(Phe、F)、チロシン(Tyr、Y)、トリプトファン(Trp、W)。
2つもしくはそれ超のアミノ酸配列または2つもしくはそれ超のヌクレオチド配列は、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列が、所与の比較ウインドウにわたって、互いとまたは参照配列と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を共有する場合、「実質的に類似している」とみなされる。2つまたはそれ超のタンパク質は、機能的に類似したアミノ酸をもたらす保存的アミノ酸置換がアミノ酸配列に組み入れられている場合にも、実質的に類似しているとみなされる。
「インキュベーション条件が他の点では同じである」という用語は、比較する目的で、対照または参照抽出物が外因性タンパク質シャペロンを含有または発現しないこと以外は同じである実験条件を指す。この用語は、1つのクラスの外因性タンパク質シャペロン(例えばPDI)を発現または含有する対照抽出物と、2つの異なるクラスの外因性タンパク質シャペロン(例えば、PDIおよびPPIase)を発現または含有する抽出物の間の比較も包含する。例えば、1つのクラスのタンパク質シャペロン(例えば、PDIまたはDsbC)を発現または過剰発現する細菌株から抽出物を調製し、他のクラスのタンパク質シャペロン(例えば、FkpAなどの精製されたPPIase)由来の精製タンパク質を抽出物に添加することができる。条件は、細菌抽出物中の外因性タンパク質シャペロンの総濃度(例えば、PDIなどの1つのシャペロンの総濃度、またはPDIおよびPPIなどの2つの異なるシャペロンの組合せの総濃度)が同じになるように調整することも含んでよい。他の点では、細菌抽出物の成分と目的のタンパク質をコードする核酸は同じである。目的のタンパク質の発現および適正なフォールディングを可能にする例示的な条件は実施例に記載されている。
「ペプチジルプロリルイソメラーゼ」、「ペプチジルプロリルシス−トランスイソメラーゼ」および「プロリルイソメラーゼ」(PPIまたはPPIase)という用語は、互換的に使用され、タンパク質フォールディング触媒として公知のシャペロンのクラスを指す。PPIは、ネイティブなまたは機能的なタンパク質におけるアミノ酸プロリンにおけるトランスペプチジルプロリル結合のシス立体配置への変換を触媒する。PPIは、異なる機能を有する異なるサブユニットまたはモジュール、例えば、触媒活性を有するモジュールおよびシャペロンまたはタンパク質結合活性を有するモジュールを有し得る。PPIの3つのファミリーが認められている:シクロフィリン(イソメラーゼ活性がシクロスポリンAによって阻害される);FKBP(FK506結合性タンパク質)、FK506およびラパマイシンによって阻害される;およびパルブリン(parvulin)。シクロフィリンの非限定的な例としては、PpiA(RotA)が挙げられる。FKBPの非限定的な例としては、FkpA、SlyD、および誘発因子(TFまたはtig)が挙げられる。パルブリンの非限定的な例としては、SurAおよびPpiDが挙げられる。PPIのさらなる例としては、CypA、PpiB、Cpr1、Cpr6、およびFpr1が挙げられる。FkpA、SlyD、および誘発因子は、配列アラインメントに基づいて、関連するものである。FkpAについては、シャペロンおよび触媒活性はそれぞれN末端ドメインおよびC末端ドメインに存在する(Saul F.A.、J. Mol. Biol. 335巻:595〜608頁、2004年)。
「デアグリガーゼ(deaggregase)」という用語は、例えば無細菌翻訳系において産生される目的のタンパク質の脱凝集および/または可溶化を補助するタンパク質シャペロンを指す。そのようなシャペロンは、作用機構が触媒的ではなく化学量論的であり、タンパク質がフォールディングされる間に新しく合成されるタンパク質の疎水性パッチを安定化することによって機能すると考えられているので、高濃度で特に役立つ。デアグリガーゼの例としては、IbpA、IbpB、およびSkpが挙げられる。
「ペプチド」、「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、本明細書では互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的模倣物であるアミノ酸のポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸のポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸のポリマーにあてはまる。本明細書で使用される場合、この用語は、全長タンパク質および短縮されたタンパク質を含めた、アミノ酸残基が共有結合性のペプチド結合によって連結した任意の長さのアミノ酸の鎖を包含する。
「適正にフォールディングされたタンパク質」という用語は、生物活性があるまたは機能的であるタンパク質またはポリペプチドのネイティブなコンフォメーションを指す。したがって、この用語は、自由エネルギーが最も低い、フォールディングされた状態にある三次構造を有するタンパク質またはポリペプチドを指す。細菌において発現させる組換えタンパク質に関して使用される場合、この用語は、一般に、細胞質ゾルにおいて過剰発現させた際に可溶性であるタンパク質を指し、したがって、適正にフォールディングされた組換えタンパク質は不溶性凝集体を形成せず、かつ/または変性しない、もしくはアンフォールディングされない。
「相乗的」または「相乗作用」という用語は、互換的に、2つまたはそれ超の薬剤の、それらを組み合わせた効果がそれらの個々の効果の合計を超えるような相互作用を指す。相乗的な薬物相互作用は、半数影響原理(median effect principle)を使用して決定することができ(ChouおよびTalalay(1984年)Adv Enzyme Regul 22巻:27頁およびSynergism and Antagonism in Chemotherapy、ChouおよびRideout編、1996年、Academic、61〜102頁を参照されたい)、コンピュータプログラムCalcusynを使用して組合せ指標によって定量的に決定される(ChouおよびHayball、1996年、Biosoft、Cambridge、MA)。ReynoldsおよびMaurer、Methods in Molecular in Medicine、110巻14章:Chemosensitivity、1巻:In vitro Assays、Blumenthal編、2005年、Humana Pressも参照されたい。組合せ指標(CI)により相乗作用、相加および拮抗作用が以下の通り数量化される:CI<1(相乗作用);CI=1(相加);CI>1(拮抗作用)。0.7〜0.9のCI値により中程度〜わずかな相乗作用が示される。0.3〜0.7のCI値により相乗作用が示される。0.1〜0.3のCI値により強力な相乗作用が示される。<0.1のCI値により非常に強力な相乗作用が示される。
発明の詳細な説明
諸言
本明細書に記載の方法および系は、無細胞合成系、例えば細菌無細胞合成系における生物活性のあるタンパク質の発現レベルを改善し、かつ/または上昇させるために有用である。生物活性のある目的のタンパク質の発現レベルの上昇は、外因性タンパク質シャペロンを含む、活性な酸化的リン酸化系を有する細菌抽出物を使用することによって実現される。外因性タンパク質シャペロンは、抽出物を調製するために使用する細菌により発現させることができる。本発明者らは、驚いたことに、抽出物を調製するために使用する細菌において比較的大量の外因性タンパク質シャペロンを発現させることにより、無細胞合成系によって発現される生物活性のある目的のタンパク質の量が増加することを発見した。したがって、大量のタンパク質を発現する抽出物の能力は、驚いたことに、比較的高い濃度レベルのタンパク質シャペロンによって悪影響を受けず、したがって、無細胞タンパク質合成反応で産生される適正にフォールディングされた生物活性のあるタンパク質の総量は、外因性タンパク質シャペロンを含有しない無細胞合成系によって発現される適正にフォールディングされた生物活性のあるタンパク質の量よりも実質的に多い。したがって、無細胞タンパク質合成系によって産生されるタンパク質の総量は外因性シャペロンを発現しない無細胞タンパク質合成系によって産生されるタンパク質の総量と実質的に同様であるが、抽出物中のタンパク質シャペロンの濃度レベルを上昇させることにより、適正にフォールディングされ、集合し、生物活性のある目的のタンパク質の量が増加する。本発明者らは、驚いたことに、2つの異なるクラスのタンパク質シャペロン(例えば、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジルプロリルシス−トランスイソメラーゼ)を発現させることにより、適正にフォールディングされた生物活性のあるタンパク質の発現レベルの相乗的な改善が得られることも発見した。ここで方法および系について記載する。
生物活性のある目的のタンパク質を産生させるために、本明細書に記載の方法および系では、活性な酸化的リン酸化系、ならびに無細胞タンパク質合成に必要な他の成分、例えば生物学的機能性tRNA、アミノ酸およびリボソームなどを有する細菌抽出物を使用する。細菌抽出物の成分を以下により詳細に記載する。一態様では、外因性タンパク質シャペロンを発現する組換え細菌から細菌抽出物を調製する。一部の実施形態では、抽出物が調製される細菌は、外因性タンパク質シャペロンを抽出物1リットル(L)当たり少なくとも約1グラム(g)の濃度で発現する。例えば、抽出物が調製される細菌は、外因性タンパク質シャペロンを抽出物1リットル当たり少なくとも約1g、1リットル当たり2g、1リットル当たり3g、1リットル当たり4g、1リットル当たり5g、1リットル当たり6g、1リットル当たり7g、1リットル当たり8g、1リットル当たり9g、1リットル当たり10gまたはそれ超の濃度で発現し得る。一部の実施形態では、外因性タンパク質シャペロンの総濃度は、抽出物1L当たり約1gから1L当たり20gの間、1L当たり約1gから1L当たり15gの間、1L当たり約1gから1L当たり10gの間、または1L当たり約1gから1L当たり5gの間である。一部の実施形態では、細菌は、外因性タンパク質シャペロンを少なくとも1mg/ml、少なくとも2mg/ml、少なくとも3mg/ml、少なくとも4mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも15mg/ml、少なくとも20mg/ml、少なくとも30mg/ml、または少なくとも40mg/mlの細胞内濃度で発現する。一部の実施形態では、細菌は、外因性タンパク質シャペロンを約1mg/ml〜約40mg/ml、約1mg/ml〜約20mg/ml、約1mg/ml〜約15mg/ml、約1mg/ml〜約10mg/ml、または約1mg/ml〜約5mg/mlの範囲の細胞内濃度で発現する。
外因性タンパク質シャペロンは、適正にフォールディングされ、かつ/または生物学的に機能性である目的のタンパク質の産生の増加をもたらす任意のタンパク質シャペロンであってよい。本明細書においてより詳細に記載されている通り、タンパク質シャペロンは、目的の標的タンパク質と相互作用して、目的のタンパク質の適正なフォールディングを補助し、かつ/または目的のタンパク質が凝集して非機能性凝集体になるのを予防するタンパク質であり得る。理論に縛られるものではないが、分子シャペロンは、アンフォールディングされた、部分的にフォールディングされた、またはミスフォールディングされたポリペプチドの露出した疎水性部分に結合することによって凝集を予防すると考えられている。したがって、露出した疎水性部分に結合し、目的のタンパク質の凝集を予防する任意のタンパク質シャペロンを本明細書に記載の方法において使用することができる。
外因性タンパク質シャペロンは、目的のタンパク質のネイティブであり機能的なコンフォメーションの形成に重要な共有結合性の変化を触媒する酵素であってもよい。例えば、一部の実施形態では、外因性タンパク質シャペロンは、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)またはペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼ(PPI)である。PDIの例としては、これだけに限定されないが、哺乳動物PDI、酵母PDI、または細菌PDIが挙げられる。一部の実施形態では、PDIは、E.coliのDsb(ジスルフィド結合形成)ファミリーのメンバー、例えば、DsbAまたはDsbCである。一実施形態では、外因性タンパク質シャペロンはチオレドキシン(Trx)である。PPIの例としては、これだけに限定されないが、シクロフィリン(イソメラーゼ活性がシクロスポリンAによって阻害される);FKBP(FK506結合性タンパク質)、FK506およびラパマイシンによって阻害される;およびパルブリンが挙げられる。E.coliにおけるPPIaseの3つのファミリーは、限定された配列および構造的類似性を示すが、非構造ペプチドに対する高い触媒活性および比較的低い親和性を共有する。当業者には理解される通り、PDIおよびPPIシャペロンは、シャペロン(タンパク質結合性)および触媒ドメインの両方を含むモジュラー構造を有し得る。例えば、Kolag, O.ら、Microbial Cell Factories、2009年、8巻:9頁;Wang, C−C.、Methods in Enzymology、2002年、348巻:66〜75頁を参照されたい。本明細書に記載の方法および系において有用な他のタンパク質シャペロンは、例えばSkpを含め、デアグリガーゼと称される。
別の態様では、本開示は、PDIおよびPPIaseを含む細菌抽出物を使用して、細菌無細胞合成系において適正にフォールディングされた生物活性のあるタンパク質を発現させるための方法および系も提供する。当該方法は、無細胞タンパク質合成に必要な成分、例えば生物学的機能性tRNA、アミノ酸、リボソームなどを含む細菌抽出物を調製するステップを含む。細菌抽出物は、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼをさらに含み、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼは、適正にフォールディングされた生物活性のあるタンパク質の発現を改善する(例えば、増加させる)ために十分な濃度で存在する。この実施形態では、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼの発現により、適正にフォールディングされた、生物活性のある目的のタンパク質の発現に相乗的な改善がもたらされる。例えば、目的のタンパク質の発現が、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼとペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼの両方ではなく一方が存在する場合であって、インキュベーション条件が他の点では同じである場合の濃度を上回る濃度まで改善される。タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼの発現によりタンパク質の発現に相乗的な改善がもたらされる実施形態では、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼの総濃度は、抽出物1リットル当たり少なくとも約1gm(g/L)である。例えば、一部の実施形態では、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼの総濃度は、抽出物1L当たり少なくとも約1g、1L当たり少なくとも約2g、1L当たり少なくとも約3g、1L当たり少なくとも約4g、1L当たり少なくとも約5g、1L当たり少なくとも約6g、1L当たり少なくとも約7g、1L当たり少なくとも約8g、1L当たり少なくとも約9g、1L当たり少なくとも約10g、1L当たり少なくとも約11g、1L当たり少なくとも約12g、1L当たり少なくとも約13g、1L当たり少なくとも約14g、1L当たり少なくとも約15gまたはそれ超である。一部の実施形態では、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼの総濃度は抽出物1L当たり約1gから1L当たり20gの間、1L当たり約1gから1L当たり15gの間、1L当たり約1gから1L当たり14gの間、1L当たり約1gから1L当たり10gの間、または1L当たり約1gから1L当たり5gの間である。一部の実施形態では、PDIは、DsbA、DsbC、およびDsbGなどのDsbファミリータンパク質からなる群から選択され、PPIは、FkpA、SlyD、tig、SurA、およびCpr6からなる群から選択される。
本明細書に記載の細菌抽出物は、ジスルフィドイソメラーゼをコードする遺伝子およびプロリルイソメラーゼをコードする遺伝子で共形質転換した細菌から調製することができる。抽出物が調製される細菌(例えば、E.coli)は、外因性タンパク質シャペロンを構成的プロモーターに作動可能に連結した遺伝子から発現することができる。一部の実施形態では、外因性タンパク質シャペロンは、DsbA、DsbC、FkpA、SlyD、および/もしくはSkp、またはこれらの組合せである。一部の実施形態では、細菌抽出物はE.coli由来のS30抽出物である。
本明細書に記載の細菌無細胞合成系の体積は、約20マイクロリットルから500リットルの間であってよく、インキュベーションの時間は、約1時間から約36時間続く期間である。例えば、インキュベーションの時間は約1時間から36時間の間、約1〜24時間、約1〜18時間、または約1〜12時間である。
目的のタンパク質を産生させるために、細菌抽出物を目的のタンパク質をコードする核酸と組み合わせて細菌無細胞合成系をもたらす。目的のタンパク質をコードする核酸は、一般にはDNAまたはmRNAである。核酸から目的のタンパク質を発現させるための方法を以下により詳細に記載する。細菌無細胞合成系を、目的のタンパク質の発現および/または適正なフォールディングが可能になる条件下でインキュベートする。一部の実施形態では、目的のタンパク質を、少なくとも約100mg/L、200mg/L、300mg/L、400mg/L、500mg/L、600mg/L、700mg/L、800mg/L、900mg/L、または1L当たり1000mgまたはそれ超の濃度で発現させる。目的のタンパク質を発現させるための条件を以下により詳細に記載する。
一部の実施形態では、目的のタンパク質は、その生物活性のあるコンフォメーションにおいて少なくとも1つのジスルフィド結合を有する。一実施形態では、目的のタンパク質は少なくとも2つのプロリン残基を有する。目的のタンパク質は抗体または抗体断片であってもよい。一部の実施形態では、目的のタンパク質を本明細書に記載のシャペロンタンパク質との融合タンパク質として発現させる。
別の態様では、本開示は、E.coli細胞培養物の生命力および/または成長速度を改善する方法を提供する。当該方法は、E coli細胞を構成的プロモーターに作動可能に連結したDsbタンパク質で形質転換するステップ;および形質転換されたE coli細胞を、Dsbタンパク質の過剰発現が可能になる条件下で培養するステップを含む。一部の実施形態では、Dsbタンパク質を少なくとも約1mg/mlの細胞内濃度で発現させる。例えば、一部の実施形態では、Dsbタンパク質を約1mg/ml〜約40mg/mlの細胞内濃度で発現させる。
一部の実施形態では、タンパク質シャペロンとして、N末端またはC末端における、ポリ−アミノ酸タグ、例えば、ポリヒスチジン(例えば、His;配列番号24)タグまたはポリ(Ser−Arg)タグを挙げることができる。一部の実施形態では、ポリ−アミノ酸タグは荷電アミノ酸を含む。一部の実施形態では、荷電アミノ酸は正に荷電したものである。一部の実施形態では、荷電アミノ酸は負に荷電したものである。一部の実施形態では、ポリ−アミノ酸タグは極性アミノ酸を含む。一部の実施形態では、ポリ−アミノ酸タグは荷電アミノ酸および極性アミノ酸を交互に含む。一部の実施形態では、ポリ−アミノ酸タグは、Ser−Arg−Ser−Arg−Ser−Arg−Ser−Arg(配列番号25)を含む。一部の実施形態では、ポリ−アミノ酸タグはSer−Lys−Ser−Lys−Ser−Lys−Ser−Lys(配列番号26)を含む。一部の実施形態では、ポリ−アミノ酸タグはAsp−Asp−Asp−Asp−Asp−Asp(配列番号27)を含む。一部の実施形態では、ポリ−アミノ酸タグはGlu−Glu−Glu−Glu−Glu−Glu(配列番号28)を含む。どんな特定の理論または作用機構にも制約されるものではないが、C末端タグにより、シャペロンの可溶性が増大し、それにより、タグを付けたシャペロンを発現する細菌から調製した抽出物中のシャペロンの量が増加すると考えられる。一部の実施形態では、ポリ−アミノ酸タグが存在することにより、産生される目的のタンパク質の総量が増加する。一部の実施形態では、活性化された、ポリ−アミノ酸タグを付けたシャペロンを含有する抽出物を遠心分離することにより、適正に集合した目的のタンパク質の量が増加する。
一般的な方法
別段の定義のない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されている意味を有する。実践者は、当技術分野の定義および用語に関して、参照により本明細書に組み込まれるGreen, M.R.およびSambrook, J.編、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(2012年)、およびAusubel, F. M.ら、Current Protocols in Molecular Biology(補遺99)、John Wiley & Sons、New York(2012年)の指示を特に受ける。標準の方法はまた、RNAの操作および分析に関する詳細な方法について記載されており、参照により本明細書に組み込まれるBindereif、Schon、およびWesthof(2005年)Handbook of RNA Biochemistry、Wiley− VCH、Weinheim、Germanyにも見られる。組換え核酸を生成するための適切な分子技法の例、および当業者を多くのクローニング実習を通じて指導するために十分な説明は、参照により本明細書に組み込まれるGreen, M.R.、およびSambrook, J.、(同上);Ausubel, F. M.ら(同上);BergerおよびKimmel、Guide to Molecular Cloning Techniques、Methods in Enzymology(152巻、Academic Press, Inc.、San Diego、Calif. 1987年);およびPCR Protocols: A Guide to Methods and Applications(Academic Press、San Diego、Calif. 1990年)において見いだされる。
タンパク質の精製、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離、および結晶化の方法は、Coliganら(2000年)Current Protocols in Protein Science、1巻、John Wiley and Sons, Inc.、New Yorkに記載されている。無細胞合成の方法は、SpirinおよびSwartz(2008)Cell−free Protein Synthesis、Wiley− VCH、Weinheim、Germanyに記載されている。無細胞合成を使用して非ネイティブなアミノ酸をタンパク質に組み入れるための方法は、Shimizuら(2006年)FEBS Journal、273巻、4133〜4140頁に記載されている。
PCR増幅方法は当技術分野で周知であり、例えば、Innisら、PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications、Academic Press Inc. San Diego、Calif.、1990年に記載されている。増幅反応は、一般には、増幅されるDNA、熱安定性DNAポリメラーゼ、2つのオリゴヌクレオチドプライマー、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、反応緩衝液およびマグネシウムを含む。一般には、望ましい数の熱的サイクルは1から25の間である。プライマーの設計およびPCR条件の最適化の方法は当技術分野で周知であり、Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology、第5版、Wiley、2002年、およびInnisら、PCR Protocols、Academic Press、1990年などの標準の分子生物学テキストにおいて見ることができる。必要な特異性および最適な増幅性を有するプライマーの設計にはコンピュータプログラムが有用である(例えば、Oligo
Version 5.0(National Biosciences))。一部の実施形態では、PCRプライマーは、増幅されたDNA断片をベクター内の特定の制限酵素部位に挿入することを容易にするために、制限エンドヌクレアーゼの認識部位をさらに含有してよい。制限部位をPCRプライマーの5’末端に付加する場合、酵素によるより効率的な切断を可能にするために少数(例えば、2つまたは3つ)の余分の5’塩基を含めることが好ましい。一部の実施形態では、PCRプライマーは、その後のin vitroにおける転写を可能にするために、T7またはSP6などのRNAポリメラーゼプロモーター部位も含有してよい。in vitroにおける転写の方法は当業者には周知である(例えば、Van Gelderら、Proc. Natl. Acad. Sci.
U.S.A. 87巻:1663〜1667頁、1990年;Eberwineら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89巻:3010〜3014頁、1992年を参照されたい)。
本明細書に記載のタンパク質が名称で言及されている場合、同様の機能および同様のアミノ酸配列を有するタンパク質を含むことが理解される。したがって、本明細書に記載のタンパク質は、野生型プロトタイプタンパク質、ならびにホモログ、多型的バリエーションおよび組換えによって創製された変異タンパク質を含む。例えば、「DsbCタンパク質」という名称は、E.coli由来の野生型プロトタイプタンパク質(例えば、配列番号1)、ならびに他の種由来のホモログ、多型的バリエーションおよび組換えによって創製された変異タンパク質を含む。DsbCおよびFkpAなどのタンパク質は、それらが野生型タンパク質と実質的に同じ生物活性または機能的能力を有する場合(例えば、いずれかの少なくとも80%)、同様の機能を有すると定義される。DsbCおよびFkpAなどのタンパク質は、それらがプロトタイプタンパク質に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%配列同一性を有する場合、同様のアミノ酸配列を有すると定義される。タンパク質の配列同一性は、ワード長(wordlength)3、期待値(expectation)(E)10の初期値を用いたBLASTPプログラム、およびBLOSUM62スコアリング行列を使用して決定する(HenikoffおよびHenikoff、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89巻:10915〜10919頁、1992年を参照されたい)。
タンパク質ホモログ、多型バリアントまたは組換え変異タンパク質が本明細書に記載のタンパク質シャペロンに含まれるかどうかを決定するための容易な従来の試験は、プロトタイプタンパク質に対して生成したポリクローナル抗体への特異的な結合によるものである。例えば、DsbCタンパク質は配列番号1のプロトタイプタンパク質に対して生成したポリクローナル抗体に結合するタンパク質を含み、FkpAタンパク質は、配列番号6のプロトタイプタンパク質に対して生成したポリクローナル抗体に結合するタンパク質を含む。
本明細書に記載のタンパク質シャペロンのポリクローナル抗体に対する反応に関しては、試験タンパク質は指定のイムノアッセイ条件下で規定の抗体にバックグラウンドの少なくとも2倍結合し、規定の抗体は試料中に存在する他のタンパク質とは有意な量では実質的に結合しない。例えば、配列番号1にコードされるDsbC、スプライスバリアント、またはその一部に対して生じたポリクローナル抗体は、DsbCに対して特異的に免疫反応性であり、DsbCの多型バリアント以外の他のタンパク質に対しては免疫反応性ではないポリクローナル抗体のみが得られるように選択することができる。この選択は、Dsbファミリーの他のメンバーと交差反応する抗体を取り去ることによって実現することができる。特定のタンパク質に対して特異的に免疫反応性である抗体を選択するために種々のイムノアッセイ形式を使用することができる。例えば、固相ELISAイムノアッセイがタンパク質に対して特異的に免疫反応性である抗体を選択するために常套的に使用される(例えば、特異的な免疫反応性を決定するために使用することができるイムノアッセイ形式および条件についての記載に関しては、HarlowおよびLane、Antibodies、A Laboratory Manual(1988年)を参照されたい)。一般には、特異的または選択的な反応はバックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍になり、より一般にはバックグラウンドの10〜100倍を超える。
本明細書に記載のシャペロンタンパク質の少なくとも一部は、同様の機能および種々の程度の配列相同性を有する関連するタンパク質の大きなファミリーのメンバーであることが理解されよう。したがって、本明細書に記載のタンパク質シャペロンは、同様の機能を有するファミリーメンバーのホモログ、例えば、PDIおよびPPIaseのホモログ、Dsbタンパク質のホモログ、FkpAタンパク質のホモログなどを含む。したがって、一部の実施形態では、シャペロンは、本明細書に記載のシャペロンに対して少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%配列同一性を有し得る。さらに、実施例において提示されるデータにより、真核生物PDIと細菌DsbCが、適正に集合したIgGを産生するそれらの能力に関して機能的に交換可能であることが示されており、これにより、本明細書に記載のシャペロンのホモログを本明細書に記載の方法および系において使用できることの証拠がもたらされる。
無細胞タンパク質合成(CFPS)技術
本明細書に記載の生物活性のある目的のタンパク質を発現させるために、無細胞タンパク質合成系を使用することができる。精製されたmRNA転写物からの、またはin vitroにおける合成反応の間にDNAから転写されたmRNAからの、in vitroにおけるタンパク質の合成を支持する細胞抽出物が開発されてきた。
反応混合物におけるポリペプチドのCFPSは、細菌抽出物および/または定義済みの試薬を含む。反応混合物は、少なくともATPまたはエネルギー源;巨大分子、例えばDNA、mRNAなどを産生させるための鋳型;アミノ酸、およびそのような補因子、酵素およびポリペプチド合成に必要な他の試薬、例えば、リボソーム、tRNA、ポリメラーゼ、転写因子、アミノアシル合成酵素、伸長因子、開始因子などを含む。本発明の一実施形態では、エネルギー源は恒常性エネルギー源である。高エネルギーリン酸結合からのATPの再生を触媒する酵素(複数可)、例えば、酢酸キナーゼ、クレアチンキナーゼなども含まれ得る。そのような酵素は、翻訳に使用する抽出物中に存在するものであってもよく、反応混合物に添加することもできる。そのような合成反応系は当技術分野で周知であり、文献に記載されている。
「反応混合物」という用語は、本明細書で使用される場合、核酸鋳型からのポリペプチドの合成を触媒することが可能な反応混合物を指す。反応混合物は、細菌細胞由来の抽出物、例えばE.coli S30抽出物を含む。S30抽出物は当技術分野で周知であり、例えば、Lesley, S.A.ら(1991年)、J. Biol. Chem.
266巻、2632〜8頁に記載されている。合成は、好気条件または嫌気条件のいずれかで実施することができる。
一部の実施形態では、細菌抽出物は乾燥したものである。乾燥細菌抽出物は、milli−Q水(例えば、逆浸透水)中に、出発材料の固体のパーセントの測定によって決定して元の固体の110%で再構成することができる。一実施形態では、元の抽出物10mLの固体の110%に相当する正確に秤量した一定分量の乾燥抽出物をマグネチックスターラー上、撹拌子を伴うガラスビーカー中Milli−Q水10mLに添加する。生じた混合物を粉末が溶解するまで撹拌する。溶解したら、材料をFalconチューブ15mLに移し、すぐに使用しないのであれば−80℃で保管する。
反応混合物中の抽出物の体積パーセントは変動し、抽出物は通常、総体積の少なくとも約10%、さらに通常少なくとも約20%であり、いくつかの場合には、総体積の少なくとも約50%、または少なくとも約60%であり、通常は約75%以下でもたらされた場合には、さらなる利益がもたらされ得る。
一般的な系は目的のタンパク質をコードする核酸鋳型を含む。核酸鋳型は、RNA分子(例えば、mRNA)またはmRNAをコードする核酸(例えば、RNA、DNA)であり、任意の形態(例えば、直鎖状、環状、高次コイル、一本鎖、二本鎖など)である。核酸鋳型により、所望のタンパク質の産生がガイドされる。
鋳型を維持するために、抽出物を作製するために使用する細胞を、有害な酵素の活性の低下、実質的な低下もしくは排除に関して、または活性が改変された酵素に関して選択することができる。ヌクレアーゼ活性またはホスファターゼ活性が改変された(例えば、少なくとも1つの変異したホスファターゼ遺伝子またはヌクレアーゼ遺伝子またはこれらの組合せを有する)細菌細胞を細胞抽出物の合成に使用して、合成効率を上昇させることができる。例えば、CFPS用のS30抽出物を作製するために使用するE.coli株は、RNアーゼEまたはRNアーゼAが欠損したもの(例えば、変異によって)であってよい。
検出可能に標識したアミノ酸、または非通常もしくは非天然アミノ酸の所望のタンパク質への組み入れがガイドされるようにCFPS系を工学的に操作することもできる。アミノ酸は合成のものであっても別の生物学的供給源に由来するものであってもよい。これだけに限定することなく、特定の目的のために、検出可能に標識したアミノ酸を含めた種々の非天然アミノ酸をCFPS反応物に添加し、タンパク質に効率的に組み入れることができる。例えば、Albayrak, C.およびSwartz, JR.、Biochem. Biophys Res. Commun.、431巻(2号):291〜5頁;Yang WCら、Biotechnol. Prog.(2012年)、28巻(2号):413〜20頁;Kuechenreutherら、PLoS One、(2012年)、7巻(9号):e45850頁;およびSwartz JR.、AIChE Journal、58巻(1号):5〜13頁を参照されたい。
一般的なCFPS反応では、目的のタンパク質をコードする遺伝子が転写緩衝液中で発現してmRNAが生じ、これがCFPS抽出物および翻訳緩衝液において目的のタンパク質に翻訳される。転写緩衝液、無細胞抽出物および翻訳緩衝液を別々に添加することもでき、これらの溶液の2つまたはそれ超を添加前に組み合わせるか同時に添加することもできる。
in vitroにおいて目的のタンパク質を合成するために、CFPS抽出物は、目的のタンパク質をコードするmRNA分子をある時点で含む。いくつかのCFPS系では、天然の供給源から精製した後、または、in vitroにおいて、クローニングされたDNAからRNAポリメラーゼII、SP6 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、T7 RNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼIIIおよび/またはファージ由来RNAポリメラーゼなどのRNAポリメラーゼを使用して合成的に調製した後に、mRNAを外因的に添加する。他の系では、mRNAをin vitroにおいて鋳型DNAから作製し、転写および翻訳はどちらもこの種のCFPS反応で起こる。一部の実施形態では、転写翻訳系は、相補的な転写翻訳系とカップリングしたものである、またはそれを含み、RNAの合成とタンパク質の合成の両方を同じ反応で行う。そのようなin vitro転写翻訳系では、CFPS抽出物は、転写(mRNAを作製するため)および翻訳(タンパク質を合成するため)の両方に必要な全ての成分(外因性または内因性)を単一の系に含有する。本明細書に記載のカップリングした転写翻訳系は、時にはOpen−Cell Free Synthesis(OCFS)系と称され、高力価の適正にフォールディングされた目的のタンパク質、例えば、高力価の抗体発現を実現することができるものである。
無細胞タンパク質合成反応混合物は、以下の成分を含む:少なくとも1つのプロモーター、および、場合により、1つもしくは複数の他の調節配列(例えば、目的の遺伝子を含有するクローニングベクターもしくは発現ベクター)に作動可能に連結した目的の遺伝子を含むDNAまたはPCR断片などの鋳型核酸;目的の遺伝子が作動可能に連結したプロモーター(複数可)、および、場合により、鋳型核酸が作動可能に連結した任意選択の調節配列を対象とする1つまたは複数の転写因子を認識するRNAポリメラーゼ(例えば、T7 RNAポリメラーゼ);リボヌクレオチド三リン酸(rNTP);場合により、他の転写因子およびその補因子;リボソーム;転移RNA(tRNA);他のまたは任意選択の翻訳因子(例えば、翻訳開始因子、伸長因子および終結因子)およびその補因子;1つまたは複数のエネルギー源、(例えば、ATP、GTP);場合により、1つまたは複数のエネルギー再生成分(例えば、PEP/ピルビン酸キナーゼ、AP/酢酸キナーゼまたはクレアチンホスフェート/クレアチンキナーゼ);場合により、収量および/または効率を増強する因子(例えば、ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ阻害剤、タンパク質安定剤、シャペロン)およびその補因子;ならびに;場合により、可溶化剤。反応混合物は、塩(例えば、酢酸、グルタミン酸、または硫酸のカリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、およびマンガン塩)、高分子化合物(例えば、ポリエチレングリコール、デキストラン、ジエチルアミノエチルデキストラン、四級アミノエチルおよびアミノエチルデキストランなど)、サイクリックAMP、タンパク質または核酸分解酵素の阻害剤、タンパク質合成の阻害剤または調節因子、酸化/還元調整剤(例えば、DTT、アスコルビン酸、グルタチオン、および/またはそれらの酸化物)、非変性界面活性物質(例えば、トリトンX100)、緩衝液成分、スペルミン、スペルミジン、プトレシンなどを含めた、タンパク質合成に特に必要なアミノ酸および他の材料をさらに含む。CFPS反応物の成分は、それぞれの開示の全体があらゆる目的について参照によって組み込まれる、米国特許第7,338,789号および同第7,351,563号、および米国特許出願公開第2010/0184135号およびUS2010/0093024においてより詳細に考察されている。
合成効率を改善するために、抽出物中に存在する特定の酵素に応じて、例えば多くの公知のヌクレアーゼ阻害剤、ポリメラーゼ阻害剤またはホスファターゼ阻害剤のうちの1つまたは複数を選択し、有利に使用することができる。
タンパク質および核酸合成には、一般にはエネルギー源が必要である。エネルギーは、mRNAを作製するための転写を開始するために必要である(例えば、DNA鋳型を使用する場合、および翻訳を開始するために、高エネルギーリン酸を例えばGTPの形態で使用する)。その後のリボソームから1つのコドン(3つのヌクレオチド;1つのアミノ酸)のステップのそれぞれには、さらなるGTPがGDPに加水分解されることが必要である。ATPも一般に必要である。タンパク質合成の間に重合するアミノ酸については、まず活性化されなければならない。したがって、タンパク質および/または核酸合成を進行させるためには高エネルギーリン酸結合からの著しい量のエネルギーが必要である。
エネルギー源は、酵素により処理して所望の化学反応を実現するためのエネルギーをもたらすことが可能な化学的基質である。ヌクレオシド三リン酸、例えばATPに見いだされるものなどの高エネルギーリン酸結合の切断による合成のためのエネルギーの放出を可能にするエネルギー源が一般に使用される。高エネルギーリン酸結合に変換できる任意の供給源が特に適している。ATP、GTP、および他の三リン酸は通常、タンパク質合成を支持するための等価のエネルギー源とみなされる。
合成反応のためのエネルギーをもたらすために、系は、例えばATP、GTP、他のNTPなどの高エネルギー三リン酸化合物を生成または再生することができる付加エネルギー源、例えば、グルコース、ピルベート、ホスホエノールピルベート(PEP)、カルバモイルホスフェート、アセチルホスフェート、クレアチンホスフェート、ホスホピルベート、グリセルアルデヒド−3−ホスフェート、3−ホスホグリセレートおよびグルコース−6−ホスフェートなどを含む。
合成系において十分なエネルギーが最初に存在しない場合、追加的なエネルギー源を補充することが好ましい。エネルギー源は、in vitroにおける合成反応の間に添加または補充することができる。
一部の実施形態では、NTP、E.coli tRNA、アミノ酸、Mg2+アセテート、Mg2+グルタメート、Kアセテート、Kグルタメート、フォリン酸、Tris、pH8.2、DTT、ピルビン酸キナーゼ、T7 RNAポリメラーゼ、ジスルフィドイソメラーゼ、ホスホエノールピルベート(PEP)、NAD、CoA、Naオキサレート、プトレシン、スペルミジン、およびS30抽出物を含むPANOx−SP系を使用して無細胞タンパク質合成反応を実施する。
一部の実施形態では、天然ではないアミノ酸(nnAA)を含有するタンパク質を合成することができる。そのような実施形態では、反応混合物は、天然ではないアミノ酸、20種の天然に存在するアミノ酸に対して直交性のtRNA、およびnnAAを直交性tRNAと連結することができるtRNA合成酵素を含んでよい。例えば、米国特許出願公開第US2010/0093024号を参照されたい。あるいは、反応混合物は、天然に存在するtRNA合成酵素を枯渇させたtRNAとコンジュゲートしたnnAAを含んでよい。例えば、PCT公開第WO2010/081111号を参照されたい。
いくつかの場合には、無細胞合成反応は、一般に二次エネルギー源の添加を必要としないが、それにもかかわらず酸化的リン酸化の同時活性化およびタンパク質合成を使用する。いくつかの場合には、CFPSをCytomim(細胞質模倣)系などの反応において実施する。Cytomim系は、ポリエチレングリコールの不在下、最適化されたマグネシウム濃度で実施される反応条件と定義される。この系では、タンパク質合成を阻害することが公知であるホスフェートが蓄積しない。
活性な酸化的リン酸化経路の存在は、経路内のステップを特異的に阻害する阻害剤、例えば電子伝達鎖阻害剤などを使用して試験することができる。酸化的リン酸化経路の阻害剤の例としては、シアン化物、一酸化炭素、アジ化物、カルボニルシアニドm−クロロフェニルヒドラゾン(CCCP)、および2,4−ジニトロフェノールなどの毒素、オリゴマイシンなどの抗生物質、ロテノンなどの殺虫剤、およびマロネートおよびオキサロアセテートなどのコハク酸デヒドロゲナーゼの競合阻害剤が挙げられる。
一部の実施形態では、NTP、E.coli tRNA、アミノ酸、Mg2+アセテート、Mg2+グルタメート、Kアセテート、Kグルタメート、フォリン酸、Tris、pH8.2、DTT、ピルビン酸キナーゼ、T7 RNAポリメラーゼ、ジスルフィドイソメラーゼ、ピルビン酸ナトリウム、NAD、CoA、Naオキサレート、プトレシン、スペルミジン、およびS30抽出物を含むCytomim系を使用して無細胞タンパク質合成反応を実施する。一部の実施形態では、Cytomim系のエネルギー基質はピルベート、グルタミン酸、および/またはグルコースである。当該系の一部の実施形態では、ヌクレオシド三リン酸(NTP)をヌクレオシド一リン酸(NMP)で置き換える。
ジスルフィド結合を低下させ、適切なタンパク質フォールディングを損なう可能性がある酵素を不活化するために、ヨードアセトアミドを用いて細胞抽出物を処理することができる。本明細書にさらに記載されている通り、これだけに限定されないが、E.coli
DsbCおよびPDIなどの原核生物ジスルフィド結合イソメラーゼを用いて細胞抽出物を処理することもできる。DsbC、FkpAおよびペプチジルプロリルイソメラーゼ(peptidyl peolyl isomerase)を用いて細胞抽出物を処理することができる。グルタチオンジスルフィド(GSSG)およびグルタチオン(GSH)も、適切なタンパク質フォールディングが促進され、異常なタンパク質ジスルフィドの形成が予防される比率で抽出物に添加することができる。
一部の実施形態では、CFPS反応物は、酸化的リン酸化を実施するための反転膜小胞を含む。これらの小胞は、本明細書に記載の細胞抽出プロセスの調製物の高圧均質化ステップの間に形成され得、反応混合物に使用する抽出物に残留する。
無細胞抽出物は、CFPS反応に使用する前に室温まで解凍することができる。ジスルフィド結合を有するタンパク質を合成する場合には、抽出物を50μMのヨードアセトアミドと共に30分インキュベートすることができる。一部の実施形態では、CFPS反応物は、約8mMのグルタミン酸マグネシウム、約10mMのグルタミン酸アンモニウム、約130mMのグルタミン酸カリウム、約35mMのピルビン酸ナトリウム、約1.2mMのAMP、それぞれ約0.86mMのGMP、UMP、およびCMP、約2mMのアミノ酸(チロシンについては約1mM)、約4mMのシュウ酸ナトリウム、約0.5mMのプトレシン、約1.5mMのスペルミジン、約16.7mMのリン酸カリウム、約100mMのT7 RNAポリメラーゼ、約2〜10μg/mLのプラスミドDNA鋳型、約1〜10μMのE.coli DsbC、および総濃度約2mMの酸化型(GSSG)グルタチオンを伴う約30%(v/v)ヨードアセトアミドで処理した抽出物を含む。場合により、無細胞抽出物は1mMの還元型(GSH)を含んでよい。
無細胞合成反応条件は、当技術分野で公知の通り、バッチ式、連続フロー、または半連続フローとして実施することができる。反応条件は、例えば、0.5Lの撹拌槽反応器中0.3L規模から10L発酵槽中4L規模まで、および200Lの発酵槽中100L規模まで直線的に拡大可能である。
Spirinら(1988年)Science 242巻:1162〜1164頁による連続フローin vitroタンパク質合成系の開発により、反応を数時間にまで延長可能であることが証明された。それ以来、多数のグループにより、この系が再現され改善された(例えば、Kigawaら(1991年)J. Biochem. 110巻:166〜168頁;Endoら(1992年)J. Biotechnol. 25巻:221〜230頁を参照されたい)。KimおよびChoi(Biotechnol. Prog. 12巻:645〜649頁、1996)により、バッチ系と連続フロー系の利点を、単純な透析膜反応器を使用した「半連続的操作」を採用することで組み合わせられることが報告された。彼らにより、連続フロー系の反応期間の延長を再現すると同時に、従来のバッチ系の最初の速度を維持することが可能になった。しかし、連続的な手法および半連続的な手法のどちらでも、費用のかかる試薬が、産物の収量の増加よりも著しく大きな係数で増加させなければならない分量で必要である。
従来のバッチ系にいくつかの改善がなされている(Kimら(1996年)Eur. J. Biochem. 239巻:881〜886頁;Kuldlickiら(1992年)Anal. Biochem. 206巻:389〜393頁;Kawarasakiら(1995年)Anal. Biochem. 226巻:320〜324頁)。半連続的な系では、タンパク質合成の最初の速度が長期間にわたって維持されるが、それにもかかわらず、従来のバッチ系によってもいくつかの有利な点、例えば、操作の利便性、スケールアップの容易さ、試薬費用の低さ、および優れた再現性がもたらされる。また、バッチ系は、種々の遺伝物質を同時に発現させるために多重化形式で容易に行うことができる。
PatnaikおよびSwartz(Biotechniques 24巻:862〜868頁、1998年)により、タンパク質合成の最初の比速度を、反応条件の広範囲にわたる最適化によって、in vivoにおける発現と同様のレベルまで増強できることが報告された。彼らが、そのような高速度のタンパク質合成を、いかなる凝縮ステップも伴わずに調製した従来の細胞抽出物を使用して実現したことに注目すべきである(Nakanoら(1996年)J. Biotechnol. 46巻:275〜282頁;Kimら(1996年)Eur. J. Biochem. 239巻:881〜886頁)。Kigawaら(1999年)FEBS Lett 442巻:15〜19頁により、凝縮抽出物およびエネルギー源としてクレアチンホスフェートを使用した高レベルのタンパク質合成が報告されている。これらの結果は、特にタンパク質合成反応を長続きさせることに関するバッチ系のさらなる改善により、バッチin vitroタンパク質合成の生産性が実質的に増加することを意味する。しかし、従来のバッチ系におけるタンパク質合成の早期停止の理由は不明のままである。
本明細書に記載のタンパク質合成反応は、大規模反応器を利用するものであってもよく、小規模のものであってもよく、複数の同時合成を実施するために多重化したものであってもよい。連続的な反応では、試薬の流れを導入するために供給機構を使用することができ、最終産物をプロセスの一部として単離することができる。バッチ系も目的のものであり、その場合、活性な合成の期間を延長するために追加的な試薬を導入することができる。反応器は、バッチ式、長期バッチ式、半バッチ式、半連続式、流加式および連続式などの任意の方式で作動させるものであってよく、適用目的に応じて選択される。
溶解物の生成
本明細書に記載の方法および系では、目的の標的タンパク質をin vitroにおいて翻訳させるために細胞溶解物を使用する。便宜上、溶解物の供給源として使用する生物体は、供給源生物体または宿主細胞と称することができる。宿主細胞は、細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞もしくは植物細胞、またはタンパク質を合成することができる任意の他の細胞型であってよい。溶解物は、所望のタンパク質をコードするメッセンジャーリボ核酸(mRNA)を翻訳することができる成分を含み、場合により、所望のタンパク質をコードするDNAを転写することができる成分を含む。そのような成分としては、例えば、DNA指向性RNAポリメラーゼ(RNAポリメラーゼ)、所望のタンパク質をコードするDNAの転写を開始するために必要な任意の転写活性化因子、転移リボ核酸(tRNA)、アミノアシル−tRNA合成酵素、70Sリボソーム、N10−ホルミルテトラヒドロ葉酸、ホルミルメチオニン−tRNAfMetシンテターゼ、ペプチジルトランスフェラーゼ、例えばIF−1、IF−2、およびIF−3などの開始因子、例えばEF−Tu、EF−Ts、およびEF−Gなどの伸長因子、例えばRF−1、RF−2、およびRF−3などの放出因子などが挙げられる。
ある実施形態では、溶解物が由来する細菌細胞を使用する。細菌の任意の株に由来する細菌溶解物を本発明の方法において使用することができる。細菌溶解物は、以下の通り得ることができる。選択された細菌を、当技術分野で周知であり、実践者により容易に最適化される、特定の細菌を成長させるためのいくつもの成長培地のいずれかおよび成長条件下で対数期まで成長させる。例えば、合成の天然の環境では、グルコースおよびホスフェートを含有する培地であって、グルコースが少なくとも約0.25%(重量/体積)、さらに通常少なくとも約1%;および通常約4%以下、さらに通常約2%以下の濃度で存在する培地で成長させた細菌細胞に由来する細胞溶解物を利用する。そのような培地の例は2YTPG培地であるが、定義済みの栄養源と未定義の栄養源のどちらも使用される、E.coliなどの細菌を成長させるために適した多くの培地が公開されているので、多くの培養培地がこの目的に適し得ることが当業者には理解されよう。一晩かけて採取した細胞を、細胞ペレットを適切な細胞懸濁緩衝液中に懸濁させること、および、懸濁した細胞を超音波処理によって破壊すること、懸濁した細胞をフレンチプレスで破砕すること、連続フロー高圧均質化、または効率的な細胞溶解のために有用な当技術分野で公知の任意の他の方法によって溶解させることができる。次いで、細胞溶解物を遠心分離または濾過して大きなDNA断片および細胞片を除去する。
細胞溶解物を作製するために使用する細菌株は、一般に、無細胞合成効率を上昇させるために、ヌクレアーゼおよび/またはホスファターゼ活性を低下させたものである。例えば、無細胞抽出物を作製するために使用する細菌株は、ヌクレアーゼであるRNアーゼEをコードする遺伝子およびRNアーゼAをコードする遺伝子に変異を有し得る。株は、無細胞合成反応においてそれぞれアミノ酸であるトリプトファン、アルギニン、セリンおよびシステインの分解を妨げるtnaA、speA、sdaAまたはgshAなどの遺伝子の欠失などの、細胞合成反応の成分を安定化するための変異も有し得る。さらに、株は、プロテアーゼであるompTまたはlonPのノックアウトなどの、無細胞合成のタンパク質産物を安定化するための変異を有し得る。
目的のタンパク質
本明細書に記載の方法および系は、適正にフォールディングされた、生物活性のある目的のタンパク質の発現を増加させるために有用である。目的のタンパク質は、細菌無細胞合成系において発現させることができる任意のタンパク質であってよい。非限定的な例としては、ジスルフィド結合を有するタンパク質および少なくとも2つのプロリン残基を有するタンパク質が挙げられる。目的のタンパク質は、例えば、抗体またはその断片、治療用タンパク質、増殖因子、受容体、サイトカイン、酵素、リガンドなどであってよい。目的のタンパク質のさらなる例を以下に記載する。
ジスルフィド結合を有するタンパク質
本明細書において提供される方法は、その生物活性のあるコンフォメーションにおいて少なくとも1つのジスルフィド結合を有する任意のタンパク質に対して使用することができる。ジスルフィド結合により、残基が共有結合で連結することによってフォールディング単位が安定なコンフォメーションにロックされることにより、タンパク質三次構造が安定化され得る。
原核細胞では、DsbAタンパク質のジスルフィド結合が、ネイティブな構造内にジスルフィド結合を含む新しく合成されたポリペプチドに供与されるとジスルフィド結合が形成される。内在性膜タンパク質であるDsbBではそれ自体の中でジスルフィド結合が生成し、次いでこれがDsbAに転移する。いくつかの真核細胞では、主要なジスルフィド経路は膜結合型フラビンタンパク質EroIおよび可溶性チオレドキシン様タンパク質PDIで構成される。EroIは、フラビン補因子を使用してそのシステイン対の酸素による再酸化を媒介するものであり、それ自体の中でジスルフィド結合が生成し、次いでその結合がPDIに転移する。今度は、PDIからジスルフィド結合が、それらのネイティブな構造をとっていない新しく合成されたポリペプチドに直接転移する。
ジスルフィド結合は、これだけに限定されないが、分泌タンパク質、免疫タンパク質、細胞外マトリックスタンパク質、糖タンパク質、リソソームのタンパク質および膜タンパク質を含めた多数のタンパク質に存在する。ジスルフィド結合およびジスルフィド結合を有するタンパク質の詳細な説明は、例えば、Fass, D. Annu. Rev. Biophys.、2012年、41巻:63〜79頁、Sevier, C.S.およびKaiser, C.A.、Antioxidants & Redox Signaling、2006年、8巻(5号):797〜811頁およびde Marco, A.、Microbial Cell Factories、2009年、8巻:26頁に見いだすことができる。
プロリンを有するタンパク質
本明細書において提供される方法は、少なくとも2つのプロリン残基を有する任意のタンパク質に対して使用することができる。プロリンを含有するタンパク質では、一般にはターンおよびポリプロリンへリックスなどの二次構造要素が好まれる。ポリプロリンへリックスは、ペプチド骨格のねじれ角がφ=−78°およびψ=+146°である細長い左巻きのへリックスであり得る。膜貫通へリックスの中心に近いタンパク質において比較的高い割合のプロリンが見いだされ得る。プロリン残基は、β−ターンおよびα−ヘリックスキャップ形成モチーフにおいても、例えば、α−へリックスの最後、さらには最後から1つまたは2つの残基に見いだされ得る。プロリンは、適切なタンパク質フォールディングのために重要なシス−トランス異性化も受け得る。
プロリンリッチタンパク質としては、反復性の短いプロリンリッチ配列を有するタンパク質、タンデムに繰り返されたプロリンリッチ配列を有するタンパク質、非反復性のプロリンリッチ領域を有するタンパク質、およびヒドロキシプロリンリッチタンパク質を有するタンパク質が挙げられる。プロリン残基は、これだけに限定されないが、輸送体、チャネル、および受容体などの内在性膜タンパク質、球状タンパク質、ホルモン、神経ペプチド、ムチン、免疫グロブリン、ならびに細胞外マトリックスタンパク質を含めた種々のタンパク質に見いだすことができる。
プロリンリッチペプチドは、細胞における一酸化窒素産生を増強し、かつ/または持続させ得、細胞におけるアルギノコハク酸シンテターゼ活性を強化し得、細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させ得、SH3、WW、EVH1またはBHBドメインを含有するタンパク質のリガンドとして機能し得ることが示されている。プロリンを含有するタンパク質の詳細な説明は、例えば、Williamson, M. Biochem. J. 1994年、297巻:249〜260頁およびKayら、FASEB J.、14巻:231〜241頁に見いだすことができる。
シャペロン
生物活性のある目的のタンパク質の発現を改善するために、本方法および系では、外因性タンパク質シャペロンを含む細菌抽出物を使用する。分子シャペロンは、他の高分子構造の非共有結合性フォールディングまたはアンフォールディングおよび集合または脱集合を補助するタンパク質である。シャペロンの1つの主要な機能は、新しく合成されたポリペプチド鎖および集合したサブユニットの両方が凝集して非機能性の構造になるのを予防することである。同定された最初のタンパク質シャペロンであるヌクレオプラスミンは、DNAおよび適正にフォールディングされたヒストンからのヌクレオソームの集合を補助するものである。そのような集合シャペロンにより、フォールディングされたサブユニットのオリゴマー構造への集合が補助される。シャペロンは、リボソームから押し出される最初のタンパク質フォールディング、タンパク質の細胞内輸送、ならびにミスフォールディングされた、または変性したタンパク質のタンパク質分解に関係する。大多数の新しく合成されたタンパク質はシャペロンの不在下でフォールディングし得るが、少数はシャペロンを厳密に必要とする。一般には、シャペロンの内部は疎水性であり、表面構造は親水性である。シャペロンにより基質タンパク質のフォールディングが容易になる正確な機構は不明であるが、シャペロンにより、部分的にフォールディングされた構造とネイティブな形態の間の活性化障壁が低くなることにより、所望のフォールディングステップが加速されて適正なフォールディングが確実になると考えられている。さらに、特定のシャペロンにより、ミスフォールディングされた、または凝集したタンパク質がアンフォールディングされ、逐次的なアンフォールディングおよびネイティブかつ生物学的に活性な形態へのリフォールディングによってタンパク質がレスキューされる。
フォールディング基質を封入するシャペロンのサブセットがシャペロニンとして公知である(例えば、グループI型シャペロニンGroEL/GroES複合体)。グループII型シャペロニン、例えば、TRiC(TCP−1環複合体、TCP−1を含有するシャペロニンに関してはCCTとも称される)は、他の基質の中でも細胞骨格タンパク質であるアクチンおよびチューブリンをフォールディングすると考えられている。シャペロニンは、積み重なった二環構造を特徴とし、原核生物、真核生物の細胞質ゾル、およびミトコンドリアにおいて見いだされる。
他の型のシャペロンは、真核生物においてミトコンドリアおよび小胞体(ER)における膜輸送に関与する。細菌の転位置に特異的なシャペロンにより、新しく合成された前駆ポリペプチド鎖が転位置にコンピテントな(一般にアンフォールディングされた)状態に維持され、これらが、一般にトランスロケーターまたは転位置チャネルとして公知のトランスロコンに導かれる。原核生物および真核生物における同様のタンパク質の複合体とは、最も一般的に、ターゲティングシグナル配列を有する新生ポリペプチドを細胞質ゾルから小胞体(ER)の内部(槽または内腔)空間に輸送するが、新生タンパク質の膜自体への組み込み(膜タンパク質)にも使用される複合体を指す。小胞体(ER)には、タンパク質のフォールディングを助ける一般的なシャペロン(BiP、GRP94、GRP170)、レクチン(カルネキシンおよびカルレティキュリン)および非古典的分子シャペロン(HSP47およびERp29)が存在する。フォールディングシャペロンタンパク質としては、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI、DsbA、DsbC)およびペプチジルプロリルシス−トランスイソメラーゼ(PPI、FkpA、SlyD、TF)が挙げられる。
多くのシャペロンが、熱ショックなどの細胞ストレスの間に高度に上方制御され、また、温度の上昇または他の細胞ストレスによってタンパク質が変性すると凝集する傾向が増すので、熱ショックタンパク質(Hsp)にも分類される。タンパク質に分解の目印を付けるユビキチンは熱ショックタンパク質の特徴も有する。いくつかの高度に特異的な「立体シャペロン」は、独特の構造的コンフォメーション(立体的)情報を自然にフォールディングされ得ないタンパク質に伝えるものである。シャペロンの他の機能としては、タンパク質分解の補助、細菌アドヘシン活性、およびタンパク質凝集に関連づけられるプリオン病に対する応答が挙げられる。
フォールダーゼとして公知の酵素は、合成されたタンパク質のネイティブであり機能的なコンフォメーションの形成に必須である共有結合性の変化を触媒する。フォールダーゼの例としては、ネイティブなジスルフィド結合の形成を触媒するように作用するタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)、および、安定なトランスペプチジルプロリル結合の、タンパク質の機能的なフォールディングに必要なシス立体配置への異性化を触媒するように作用するペプチジルプロリルシス−トランスイソメラーゼ(PPI)が挙げられる。ネイティブなジスルフィドの形成およびプロリルイミド結合のシス−トランス異性化はどちらも共有結合性の反応であり、頻繁にタンパク質フォールディングプロセスの律速ステップになる。シャペロンタンパク質として、フォールダーゼにより、化学量論的な濃度で、いくつかの変性したタンパク質の再活性化収率が上昇することが最近提唱された。シャペロンタンパク質の他の例としては、Skpなどのデアグリガーゼ、ならびに酸化還元タンパク質であるTrr1およびGlr1が挙げられる。
一部の実施形態では、タンパク質シャペロンを、所望のタンパク質シャペロンの活性を増大させるように機能する別のタンパク質(複数可)と同時発現させることができる。例えば、Dsbタンパク質であるDsbAおよびDsbCを、それぞれDsbAおよびDsbCを酸化および還元するDsbBおよびDsbDと同時発現させることができる。
シャペロンをコードする遺伝子を用いた細菌の形質転換
本明細書に記載の方法および系において使用する細菌抽出物は、外因性タンパク質シャペロンを含有する。本明細書に記載の外因性タンパク質シャペロンは、抽出物に添加することもでき、無細胞抽出物を調製するために使用される細菌によって発現させることもできる。後者の実施形態では、遺伝子の転写を開始するプロモーターに作動可能に連結した、外因性タンパク質シャペロンをコードする遺伝子から外因性タンパク質シャペロンを発現させることができる。
本発明において使用することができるプロモーターは、構成的プロモーターと調節される(誘導性)プロモーターのどちらも含む。プロモーターは、宿主に応じて、原核生物のものであっても真核生物のものであってもよい。本発明の実施のために有用な原核生物(バクテリオファージを含む)プロモーターには、lac、T3、T7、ラムダPr’P1’およびtrpプロモーターがある。本発明の実施のために有用な真核生物(ウイルスを含む)プロモーターには、遍在プロモーター(例えば、HPRT、ビメンチン、アクチン、チューブリン)、中間フィラメントプロモーター(例えば、デスミン、神経フィラメント、ケラチン、GFAP)、治療用遺伝子プロモーター(例えば、MDR型、CFTR、第VIII因子)、組織特異的プロモーター(例えば、平滑筋細胞におけるアクチンプロモーター)、刺激に応答するプロモーター(例えば、ステロイドホルモン受容体、レチノイン酸受容体)、テトラサイクリンにより調節される転写モジュレーター、サイトメガロウイルス最初期、レトロウイルスLTR、メタロチオネイン、SV−40、E1a、およびMLPプロモーターがある。テトラサイクリンにより調節される転写モジュレーターおよびCMVプロモーターは、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO96/01313、米国特許第5,168,062号および同第5,385,839号に記載されている。
一部の実施形態では、プロモーターは構成的プロモーターである。細菌における構成的プロモーターの例としては、spcリボソームタンパク質オペロンプロモーターPspc、プラスミドpBR322のβ−ラクタマーゼ遺伝子プロモーターPbla、ファージλのPプロモーター、プラスミドpBR322の複製制御プロモーターPRNAIおよびPRNAII、rrnBリボソームRNAオペロンのP1プロモーターおよびP2プロモーター、tetプロモーター、ならびにpACYCプロモーターが挙げられる。
目的のタンパク質およびシャペロンの定量測定
本明細書に記載の方法および系によって産生される目的のタンパク質の数量は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して決定することができる。例えば、発現された目的のタンパク質を精製し、ゲル電気泳動(例えば、PAGE)、ウエスタン分析またはキャピラリー電気泳動(例えば、Caliper LabChip)を使用して数量化することができる。無細胞翻訳反応でのタンパク質合成は、放射標識したアミノ酸、一般には、35Sで標識したメチオニンまたは14Cで標識したロイシンを組み入れることによってモニターすることができる。放射標識したタンパク質を、電気泳動後にオートラジオグラフィーによって分子サイズについて可視化し、定量化すること、または免疫沈降によって単離することができる。組換えHisタグの組み入れにより、Ni2+アフィニティーカラムクロマトグラフィーによる別の精製手段がもたらされる。発現系からのタンパク質産生は、可溶性タンパク質の収量として、または酵素アッセイもしくは結合活性アッセイを使用することによって測定することができる。
無細胞合成系に添加するシャペロンタンパク質の量は、細菌抽出物を調製するために使用する細菌細胞培養物に14C−ロイシンなどの放射性アミノ酸を含め、発現されたタンパク質シャペロンの量を、例えば、トリクロロ酢酸(TCA)を使用して放射性タンパク質を沈殿させ、回収された放射活性の総量を測定することによって数量化することにより、数量化することができる。シャペロンの量は、免疫学的に、例えば、シャペロンに対するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を使用して、プレートまたはウエスタンブロットに固定化されたシャペロンタンパク質を検出し、数量化するELISAによって測定することもできる。
発現されたタンパク質の生物活性および適正なフォールディングの定量測定
本明細書に記載の方法によって産生される目的のタンパク質の生物活性は、目的のタンパク質に特異的なin vitroアッセイまたはin vivoアッセイを使用して数量化することができる。目的のタンパク質の生物活性は、無細胞タンパク質合成反応混合物の単位体積当たりの生物活性として表すことができる。発現された目的のタンパク質の適正なフォールディングは、産生された総タンパク質の量と可溶性タンパク質の量を比較することによって数量化することができる。例えば、産生されたタンパク質の総量およびそのタンパク質の可溶性画分は、14C−ロイシンなどの放射標識したアミノ酸を用いて目的のタンパク質を放射標識し、標識されたタンパク質をTCAで沈殿させることによって決定することができる。フォールディングされ、集合したタンパク質の量は、正しい分子量で移動する可溶性タンパク質の画分を測定するための還元条件下および非還元条件でのゲル電気泳動(PAGE)によって決定することができる。非還元条件下では、タンパク質凝集体は、ゲルマトリックスの上に捕捉され得る、または別個の実体として特徴付けることが難しい高分子量スメアとして移動し得るが、還元性条件下、試料を加熱すると、ジスルフィド結合を含有するタンパク質が変性し、凝集体が解離し、発現されたタンパク質が単一のバンドとして移動する。適正にフォールディングされ、集合した抗体タンパク質の量を決定するための方法は実施例に記載されている。抗体分子の機能活性は、イムノアッセイ、例えば、ELISAを使用して決定することができる。
(実施例1)
この実施例では、細菌無細胞タンパク質合成系によって発現されるシャペロンタンパク質により、無細胞タンパク質合成系によって発現される適正に集合したIgGの量が増加すること、および細菌PDIとPPIの組合せが相乗的に作用して適正に集合したIgGの量を増加させることが実証される。
免疫グロブリンタンパク質を急速に発現させるための細菌小胞体の工学的操作。
材料および方法:
小規模無細胞発現。無細胞タンパク質合成反応物100μlを、96ウェルマイクロタイタープレート中、10μg/mLのDNA(発現ベクターpYD317内、2.5μg/mLのトラスツズマブ軽鎖DNA、7.5μg/mLのトラスツズマブ重鎖DNA)の存在下、30℃、650rpmで12時間、VWR Thermomixerにかけた。無細胞抽出物を、ヨードアセトアミド50μMを用いてRT(20℃)で30分処理し、成分のプレミックスに添加した。タンパク質合成反応物中最終濃度は、別段の指定のない限り、30%細胞抽出物(v/v)、2mMのGSSG、8mMのグルタミン酸マグネシウム、10mMのグルタミン酸アンモニウム、130mMのグルタミン酸カリウム、35mMのピルビン酸ナトリウム、1.2mMのAMP、それぞれ0.86mMのGMP、UMP、およびCMP、2mMのアミノ酸(1mMであったチロシンおよびフェニルアラニン以外)、4mMのシュウ酸ナトリウム、1mMのプトレシン、1.5mMのスペルミジン、15mMのリン酸カリウム、20μg/mLのT7 RNAPであった。
PDIとDsbCの互換性。ジスルフィド結合イソメラーゼのIgGのフォールディングおよび集合に対する必要性を理解するために、PDIおよびDsbCの濃度を変動させて無細胞タンパク質合成反応を行った。0〜5μMの組換えPDIを0〜13μMの組換えDsbCと組み合わせて無細胞反応物に添加した。無細胞反応物100μlを、96ウェルマイクロタイタープレート中、8μg/mLのHC−HIS6 DNAおよび2μg/mLのLC DNAの存在下、30%対照抽出物と共に30℃、650rpmで12時間、VWR Thermomixerにかけた。その後、反応物を5000×gで10分遠心分離し、上清をPBSで2倍希釈した後、Biomekロボットシステムを使用してIMAC Phytips(200μlのチップ、5μlの樹脂ベッド)で精製した。試料を20mMのTris、pH8、300mMのNaCl、500mMのイミダゾール中に溶出させ、溶出したIgGを、Caliper LapChip GXIIでキャピラリー電気泳動を使用して数量化した。
シャペロン逐次的発現スクリーニング。候補シャペロンを、無細胞発現プラスミドpYD317にクローニングした。これらのプラスミドから、T7プロモーター配列とターミネーター配列の間に挟まれたシャペロン遺伝子を含有するPCR断片を生成した。その後、これらのPCR断片から、標準のマイクロタイタープレート条件下、30℃で16時間にわたり、無細胞タンパク質合成によってシャペロンを発現させた。PCR断片をDNA分解に対して安定化するために、40μg/mLのGamSタンパク質を反応物に添加した。その後、シャペロンを発現する抽出物を5000×gで10分遠心分離し、シャペロンを含有する上清を、14C−ロイシンの存在下、IgGを発現させるための新しい無細胞反応物(8μg/mLのトラスツズマブ重鎖DNAおよび2μg/mLのトラスツズマブ軽鎖DNA)に20%(v/v)で添加した。IgG力価を、以前に記載されている通り、14C−ロイシンのIgG分子への組み入れ率に基づいて算出した(MAbs. 2012年3月1日;4巻(2号))。IgG力価のシャペロンに関連する改善を、GFPを発現する抽出物の添加に対するフォールディングの改善として表した。IgG発現反応物に添加するシャペロンの量を見積もるために、シャペロン無細胞反応物も14C−ロイシンの存在下に供し、発現されたタンパク質を数量化した。
2×DsbCおよび2×FkpA抽出物。構成的プロモーター(pACYC)の後ろに細菌遺伝子DsbC(2×DsbC)およびFkpA(2×FkpA)があるバイシストロン性プラスミドを生成し、細菌に入れてそれを形質転換した。Yang W.C.ら、Biotechnol. Prog.(2012年)、28巻(2号):413〜20頁に記載の通り、これらの株を対数期まで成長させ、無細胞抽出物を作製するために溶解させた。FkpAによりIgGのフォールディングおよび集合がさらに改善されるかどうかを試験するために、FkpAタンパク質を、2×DsbC抽出物を使用したIgG無細胞反応物に添加した。2×FkpA抽出物を用いた無細胞反応に13μMのDsbCタンパク質を添加することによって逆実験を実施した。
結果:
PDIとDsbCの互換性。IgGのフォールディングおよび集合の真核生物ジスルフィド結合イソメラーゼおよび細菌ジスルフィド結合イソメラーゼに対する依存性をよりよく理解するために、PDIおよびDsbCの濃度を変動させてIgG無細胞タンパク質合成反応を行った。IgGを無細胞反応物中、0〜5μMのPDIと0〜13μMのDsbCの組合せの存在下で発現させた。発現したIgG−HisをNi++樹脂によって精製し、キャピラリー電気泳動によって数量化した(図1)。DsbCの不在下で、IgGはフォールディングについてPDIに高度に依存した(図1、黒塗りの丸)。しかし、反応物中のDsbCの濃度が上昇するにつれPDIに対する依存性は低下し、したがって、6.4μMのDsbCでは、反応中のPDIに起因するさらなる利益はなかった(図1、白抜きの三角形)。さらに、反応物中のDsbCの濃度を上昇させることにより、IgG力価に以前観察されたものを超える顕著な改善が見られた(図1、白抜きの丸)。事実上、真核生物ジスルフィド結合イソメラーゼが、真核生物のタンパク質のフォールディングにおける機能が同様である細菌シャペロンで効率的に置換されることが確認された。
シャペロン逐次的発現スクリーニング。in vivoにおいて、真核生物のシャペロンは、IgGのフォールディングおよび集合において重要な役割を果たすことが公知である。したがって、これらの生理的フォールダーゼを欠く細菌系におけるIgG分子の発現は困難なものになっている(REFS)。そのように、IgGのフォールディングおよび/または集合の正のエフェクターになるシャペロンタンパク質を同定するためのスクリーニング手法を理解した。候補シャペロンを我々の無細胞系において発現させ、発現したシャペロンをその後、IgGの発現のために新しい無細胞反応物に添加した。IgGのフォールディングにおけるあらゆる改善を、IgGと相互作用する可能性が低いタンパク質である、GFPを発現する対照抽出物の添加に対する力価の改善として表した。スクリーニングのスループットを改善するために、IgG反応物に添加する前にシャペロンを抽出物から精製しなかった。この理由で、シャペロンDNAがその後のIgG反応物において転写されず、発現されないことを確実にすることを望んだ。そのように、シャペロンタンパク質をプラスミドDNAよりも著しく不安定なPCR鋳型から発現させた。GamSタンパク質の添加は、PCR鋳型の保存に役立ち、したがって、十分なレベルのシャペロンタンパク質を合成することができた。
シャペロンのいくつかのファミリーが、in vivoでのIgGのフォールディングにおけるそれらの役割を考慮して、特に興味深いものであった。細菌種、酵母種、およびヒト種に由来するPPIase、フォールダーゼ、デアグリガーゼ、および酸化還元タンパク質を試験した。酸化還元シャペロンの中で、我々は、PDI(酵母相同体)およびDsbCによりIgG形成が著しく補助されることを見出し、これは我々の以前の所見と一致する(図2B)。興味深いことに、ヒトPDI(hPDI)はIgGのフォールディングに有意な影響を及ぼさず、これはおそらく、細胞抽出物中でのその発現が不十分であり、IgGのフォールディングを補助するために十分な量で添加することが不可能であったことに起因する。対照的に、細菌タンパク質DsbCは、抽出物中で非常によく発現し、約5μMのDsbCをIgG反応物に添加することが可能になった(DsbCは約25μMで発現し、それを20%でIgG反応物に添加した)。試験したPPIaseの中のいくつかが、IgG発現に対して有益であることが証明された(図2B)。これらから、Skp、SlyD、およびFkpAについて追跡することに決定した。
精製したSkp、SlyD、およびFkpAはIgG力価を改善し得る。シャペロンスクリーニングからの我々のヒットを確認するために、Skp、SlyD、およびFkpAを発現させ、精製し、これらをIgG無細胞タンパク質合成反応物に戻した(図3)。シャペロンSkpに関しては、SkpによりHCおよびLCの可溶性が補助されるが、集合したIgGの量は有意に増加しないことが認められた。しかし、プロリルイソメラーゼ、SlyDおよびFkpAに関しては、これらのシャペロンをより多く添加すると、可溶性タンパク質の量および集合したIgGが比例して増加することが観察された。プロリル異性化が以前我々の無細胞タンパク質合成系におけるIgG形成を限定していた機能であり、これらの外因性タンパク質を添加することにより、IgGのフォールディングおよび集合が劇的に改善されたと推論した。DsbCおよびFkpAを用いると大きな改善が観察されたので、IgGのフォールディングにおけるそれらの役割をさらに特徴付けることを決定した。
FkpAおよびDsbCは相乗的に働いてIgGをフォールディングし、集合させる。FkpAおよびDsbCがIgG形成において果たす役割をよりよく理解するために、IgGのフォールディングに対するそれらの寄与をそれぞれ独立に評価した(図4)。興味深いことに、FkpAの添加により、HCおよびLC合成の間に形成される高分子量の凝集体の程度が有意に低下した。漸増量のFkpAを用いて、IgG、ならびにいくつもの部分的に集合した産物の形成も観察された。これらのタンパク質は、不明瞭なバンドとして移動し、これにより、これらが交差ジスルフィド結合したタンパク質の混成集団を示す可能性があることが示唆される。他方では、DsbCの添加により、IgGの鮮明なバンドが生じた。しかし、FkpAを用いないと、著しい割合の発現されたタンパク質が、SDS−PAGEゲルに完全に進入することができない高次凝集体を形成した。
2つのシャペロンを組み合わせて同じIgG反応物に入れた場合、それらは相乗的に作用してIgGをフォールディングさせた(図5)。HCおよびLCを、DsbCを含有する抽出物中(2×DsbC)で発現させ、異なる量の外因性FkpAタンパク質を添加した。50μMのFkpAでは、およそ900μg/mLの集合したIgGを発現させることができた。これを追跡するために、細胞抽出物を生成するための、FkpAを過剰発現する細菌株を工学的に作製した。外因性DsbCタンパク質を添加したFkpA抽出物からIgGを合成した(図6)。30%抽出物(v/v)の我々の標準の条件下で、IgGが約600μg/mLで産生され、凝集が減少した。各反応物中のFkpAの濃度をさらに上昇させるために、反応物中のFkpAを含有する抽出物の力価測定を行い、>900μg/mLのIgG力価がもたらされた(図6)。
上記の実施例により、2つの異なるクラスのタンパク質シャペロン、PDIとPPIを組み合わせることにより、無細胞発現系における適切なタンパク質フォールディングおよび集合に対する相乗効果がもたらされることが実証される。
(実施例2)
この実施例では、細胞抽出物を調製するために使用する細菌株における外因性タンパク質シャペロンの過剰発現によりGMCSFなどの目的のタンパク質の産生は阻害されないことが実証される。
株の説明:
SBDG028:SBJY001+pACYC 2×DsbC+ΔRF1
SBDG031:SBJY001+pACYC 2×DsbC
SBDG044:SBJY001+pACYC 2×FkpA
SBDG049:SBJY001+pACYC 2×FkpA−6×His
細胞抽出物の調製:
E.coli株SBDG028、SBDG031、SBDG044およびSBDG049に由来する抽出物を基本的にZawadaら、Biotechnology and Bioengineering 108巻、7号、2011年7月に記載の通り調製した。
GMCSF CFPS反応
GMCSFタンパク質産生のための無細胞反応手順を、その全体が参照により本明細書に組み込まれるZawadaら、Biotechnology and Bioengineering108巻、7号、2011年7月に記載の通り実施した。
図7は、示されているDsbCまたはFkpAを過剰発現する株由来の抽出物中でCFPSによって産生されるGMCSFタンパク質の量を示す。外因性DsbCまたはFkpAを発現しない細菌から調製した対照抽出物では、非常に少量のGMCSFが産生される(データは示していない)。
(実施例3)
この実施例では、タンパク質シャペロンを過剰発現する細菌細胞がタンパク質シャペロンを過剰発現しない細菌と同様の成長速度を有することが実証される。
方法:実施例1に記載の通り、1(1×)コピーまたは2(2×)コピーのDsbCおよびFkpAを発現する組換えプラスミドで細菌株を形質転換した。これらの株を、対数期まで成長させ、無細胞抽出物を作製するために溶解させた。株の成長速度(倍加時間)を決定し、細菌株によって産生されるタンパク質シャペロンの量を、ウエスタン分析および/またはELISAを使用して数量化した。
発現されたタンパク質シャペロンの細胞内濃度を決定するために、振とうフラスコで成長させた細胞のペリプラズムを、浸透圧ショックを使用して溶解させた。ペリプラズム溶解物を、既知DsbC濃度の標準物質を用いたゲル電気泳動によって分離した。デンシトメトリーを使用して標準のDsbCバンドの強度とペリプラズム溶解物におけるバンドの強度を比較した。バンドの強度を使用して溶解物中のDsbC濃度を決定し、それを使用して細胞におけるDsbCの濃度を逆算した。
無細胞抽出物中のシャペロンタンパク質の量をELISAによって決定した。無細胞抽出物中のDsbCおよびFkpAの力価を決定するためのELISAは直接ELISA形式である。アッセイは、アッセイプレートを標準物質および試料でコーティングし、次いで、DsbCまたはFkpAを認識する抗体を結合させ、過剰なDsbC抗体およびFkpA抗体を洗い流し、HRPとコンジュゲートしたウサギIgGに対する二次抗体(ウサギにおいて産生させたDsbC抗体およびFkpA抗体)を導入し、過剰なコンジュゲートした二次抗体を洗い流し、次いで、ABTS基質を使用して、コンジュゲートした二次抗体上に存在するHRPを検出することからなる。既知濃度の精製したDsbCおよびFkpAを使用して、試料濃度の決定に使用するための7点標準曲線を作成した。
DsbC:MSD(最小試料希釈度):1/120,000;MSDにおけるLLOQ(定量下限):187.5μg/ml。
FkpA:MSD(最小試料希釈度):1/75,000;MSDにおけるLLOQ(定量下限):390μg/ml
結果:
図8は、構成的プロモーターの制御下で1×コピーまたは2×コピーのDsbCを発現するプラスミドで形質転換した細菌株の成長速度を示す。1×コピーのDsbCを発現する株および2×コピーのDsbCを発現する株の成長速度は発現プラスミドで形質転換していない対照株と同様であった。図8の下のパネルは、上記の通り、ペリプラズム溶解物中に存在するDsbCタンパク質の量を示す。
図9は、1×コピーまたは2×コピーのDsbCを過剰発現する細菌株によって産生されるDsbCタンパク質の量を示す。上のパネルは、上記の通り決定した細胞内濃度を示す。下のパネルはELISAによって決定された抽出物中濃度を示す。
図10は、構成的プロモーターの制御下で1×コピーまたは2×コピーのFkpAを発現するプラスミドで形質転換した細菌株の成長速度を示す。1×コピーのFkpAを発現する株および2×コピーのFkpAを発現する株の成長速度は発現プラスミドで形質転換していない対照株と同様であった。図10の左下のパネルは、1×コピーのFkpAを発現する細菌および2×コピーのFkpAを発現する細菌から調製した全抽出物中に存在するFkpAタンパク質の量を示す。図11は、1×コピーのFkpAを発現する細菌および2×コピーのFkpAを発現する細菌由来の抽出物中のFkpA濃度の定量化を示す。
代表的なELISA実験の結果が下の表に示されている。FkpAについてのELISAデータは、異なるDsbC濃度を占める図9に示されているものとは異なる抽出調製物からのものである。
この実施例では、シャペロンタンパク質を過剰発現する組換え細菌株は、急速に成長させることができ、無細胞タンパク質合成のための高品質の抽出物を調製するために有用であることが実証される。
(実施例4)
この実施例では、シャペロンFkpAのC末端上の多荷電アミノ酸タグにより、抽出物中のFkpAの量が増加し、無細胞タンパク質合成系によって産生される総タンパク質の量が増加することが示される。
Hisタグ(配列番号24)または(Ser−Arg)タグ(配列番号25)のいずれかをC末端に有する、FkpAをコードする遺伝子を、ベクターpACYC−Pcにクローニングした。これらのベクターを株SBJY001に導入してそれを形質転換し、抽出物を上記の通り作製した。FkpA ELISAにより、Hisタグを付けたFkpAバリアントの抽出物レベルが、活性化後の最終的な抽出物の遠心回転により上昇したことが示された(図12a)。wt FkpAを含有する抽出物と比較して、これらの可溶性タグを付けたFkpAタンパク質を含有する抽出物では、より多くの総タンパク質が産生された。さらに、集合したIgGレベルが活性化後の抽出物の最終回転により増強された(図12b)。
この実施例では、FkpAのC末端に多荷電アミノ酸タグを付加することにより、抽出物を作製するために使用する細菌によって発現されるFkpAの量が増加し、産生される総タンパク質の量が増加することが実証される。さらに、C末端Hisタグを付けたFkpAを含有する抽出物については、活性化後に抽出物を遠心沈殿させることにより、正確に集合したIgGの量が増加する。
(実施例5)
この実施例では、2つの独立した細菌株におけるシャペロンdsbCおよびFkpAのゲノム組み込みにより、シャペロンを高レベルで産生する、成長速度が大きい細胞がもたらされ、これらの株に由来する無細胞抽出物が両方のシャペロンを高レベルで含有し、組換えIgGおよびGMC−SFの高レベルでの無細胞合成を支持することが実証される。
株108
株SBDG108は、SBMT095の誘導体である。この株は、相同組換えを使用して調製した培地強度構成的プロモーターの後ろのgalK遺伝子座に染色体上で組み込まれた2コピーのdsbCを有する。SBMT095をコンピテントにし、次いで、構成的プロモーターの後ろに2コピーのFkpAを有する中コピープラスミドであるpACYC−Pc0−2×FkpAで形質転換した。どちらのコピーも野生型E.coli FkpAをコードするものであったが、1つの遺伝子は、WT遺伝子に対するヌクレオチド相同性が低下するように合成されたものであり、それにより、それぞれが同じプラスミドで安定に繁殖することが可能になった。
DM80−80をバッチ方式で使用した標準の抽出物発酵において、株SBDG108により、高い成長速度を実現すると同時に、それでもなおシャペロンを非常に高レベルで産生させることができた(表3参照)。
株108から作製した抽出物は、両方のシャペロンを高レベルで含有し、非常に高レベルの組換えIgGおよび他のタンパク質の無細胞合成を支持するものであった(表4参照)。
株150
株SBMT150は、ompT感受性RF1を有するKGK10誘導体であるSBHS016の誘導体である。SBMT150を作製するために、2コピーのDsbCを染色体上でxylA遺伝子座に組み込んだ。2コピーのFkpAをgalK遺伝子座に組み込んだ。どちらの染色体組み込みも相同組換えを用いて導入した。
DM80−80をバッチ方式で使用した標準の抽出物発酵において、株SBMT150により、高い成長速度を実現する一方で、それでもなおシャペロンを高レベルで発現させることができた(表5参照)。シャペロンはゲノムから過剰発現されるので、この株の発酵の間に抗生物質は必要ない。
以下の表6に示されている通り、株108から作製した抽出物は両方のシャペロンを高レベルで含有し、高レベルの組換えIgGおよび他のタンパク質の無細胞合成を支持するものであった。
要約すると、この実施例では、成長速度を損なうことなくシャペロンタンパク質を高レベルで発現するシャペロン発現カセットが安定に組み入れられるように細菌株を工学的に操作できること、およびこれらの株に由来する無細胞抽出物により、目的の組換えタンパク質が高レベルでもたらされることが実証される。
(実施例6)
この実施例では、DsbCおよびFkpAシャペロンを過剰発現する細菌細胞に由来する抽出物により、多数の異なるIgGの発現および集合を改善できることが示される。
方法:
2×DsbCおよび2×FkpA抽出物。E.coli株SBJY001(Yin Gら、Aglycosylated antibodies and antibody fragments produced in a scalable in vitro transcription−translation system. mAbs
2012年;4巻)をpACYCに基づくシャペロン過剰発現プラスミドで形質転換し、対数期に採取して細胞抽出物を作製した。1コピーのfkpA(1×FkpA)または2コピーのfkpA(2×FkpA)の場合と同様に、E.coliプロモーターMt−cons−10(Thouvenot B.ら、The strong efficiency of the Escherichia coli gapA P1 promoter depends on a complex combination of
functional determinants. Biochem J 2004;383巻:371〜82頁)の後ろに1コピーのdsbC(1×DsbC)または2つのタンデムコピーのdsbC(2×DsbC)を有するプラスミドを生成し、細菌に入れてそれを形質転換した。記載の通り、これらの株を対数期まで成長させ、無細胞抽出物を作製するために溶解させた(Zawada J.F.ら、Microscale to manufacturing scale−up of cell−free cytokine production−−a new approach for shortening protein production development timelines. Biotechnol Bioeng 2011年;108巻:1570〜8頁)。これらの抽出物のそれぞれのIgG産生活性を、単独で、または、外因的に添加した精製タンパク質と組み合わせてのいずれかで試験した。OCFS抽出に対して最適化した細菌株SBHS016(細菌株SBJY001由来)をさらに改変して、DsbCタンパク質の産生を増強した。この株は、改変MT−cons−10プロモーターを使用して構成的に発現させる、細菌galK遺伝子座に組み込まれた二重タンデムコピーのdsbCを有する(Thouvenot B.ら、Biochem J 2004年;383巻:371〜82頁)。これは、正常なdsbC遺伝子座の野生型遺伝子に追加されたものである。二重タンデム遺伝子カセットは、親dsbC遺伝子を1コピー、および野生型タンパク質をコードするように設計された合成バージョンのdsbC遺伝子を1コピー含有するが、ゲノム内の他の所における他のバージョンのdsbC遺伝子での望ましくない配列組換えが抑制されるようにコドンが変更されている。このDsbC過剰発現株を2×FkpAプラスミドで形質転換して株「2×D+2×F」を作製した。
結果:
異なるIgGのパネルを本明細書に記載の細菌in vitro転写/翻訳系において翻訳した。IgGは対照抽出物(SBJY001)、DsbC抽出物(2×DsbC抽出物)、およびDsbC+FkpA抽出物(2×D+2×F)で翻訳した。パネルには、2つの生殖細胞系列重鎖VH3−7およびVH3−23と軽鎖Vk3−20の組合せに加えて、治療用抗体トラスツズマブ(抗Her2 IgG1)およびブレンツキシマブ(抗CD30 IgG1)が含まれた。図13に示されている通り、2×DsbC抽出物におけるIgGの発現により、4種のIgG全ての収量が劇的に改善された。DsbC+FkpA抽出物中でさらなる改善が観察され、発現レベルはトラスツズマブとブレンツキシマブの両方に対しては1g/Lまでになり、生殖細胞系列IgGに対してはほぼ1.5g/Lまでになった。
この実施例では、工学的に操作された、シャペロンDsbCおよびFkpAを過剰発現する細菌由来の抽出物により、OCFSカップリング転写−翻訳系における広範囲の免疫グロブリンタンパク質の発現を増加させることができることが実証される。
本明細書に記載の実施例および実施形態は単に例示する目的のものであること、および、それに照らして種々の改変または変化が当業者に提案され、本出願の主旨および権限および添付の特許請求の範囲内に包含されることが理解される。本明細書において引用されている刊行物、配列受託番号、特許、および特許出願は全て、あらゆる目的についてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
非公式の配列表:
例えば、本発明は以下の項目も提供する。
(項目1)
細菌無細胞合成系における生物活性のあるタンパク質の発現レベルを改善する方法であって、
i)活性な酸化的リン酸化系を有し、無細胞タンパク質合成に必要な生物学的機能性tRNA、アミノ酸およびリボソームを含む細菌抽出物を調製するステップであって、前記抽出物が調製される細菌が、外因性タンパク質シャペロンを抽出物1リットル当たり少なくとも約1gmの濃度で発現する、ステップ;
ii)前記細菌抽出物を目的のタンパク質をコードする核酸と組み合わせて、細菌無細胞合成系をもたらすステップ;ならびに
iii)前記細菌無細胞合成系を、前記目的のタンパク質を少なくとも約100mg/Lの濃度まで発現させることが可能な条件下でインキュベートするステップ
を含む方法。
(項目2)
前記タンパク質シャペロンが、ジスルフィドイソメラーゼ、プロリルイソメラーゼおよびデアグリガーゼからなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記抽出物が調製される細菌が、ジスルフィドイソメラーゼをコードする遺伝子およびプロリルイソメラーゼをコードする遺伝子で共形質転換された、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記外因性タンパク質シャペロンが、DsbC、FkpA、およびSlyDからなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記細菌がEscherichia coliである、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記抽出物が調製される細菌が、構成的プロモーターに作動可能に連結した遺伝子から前記外因性タンパク質シャペロンを発現する、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記目的のタンパク質が、その生物活性のあるコンフォメーションにおいて少なくとも1つのジスルフィド結合を有する、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記目的のタンパク質が、少なくとも2つのプロリン残基を有する、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記目的のタンパク質が抗体または抗体断片である、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記細菌無細胞合成系の体積が0.5リットルから500リットルの間であり、前記インキュベーションが1〜36時間続く期間のインキュベーションである、項目1に記載の方法。
(項目11)
生物活性のあるタンパク質を発現させるための細菌無細胞合成系であって、
i)活性な酸化的リン酸化系を有する細菌の無細胞抽出物であって、無細胞タンパク質合成に必要な生物学的機能性tRNA、アミノ酸およびリボソームを含有し、外因性タンパク質シャペロンが前記細菌において抽出物1リットル当たり少なくとも1gmのレベルで発現された、細菌の無細胞抽出物;ならびに
ii)目的のタンパク質をコードする核酸
を含み、目的のタンパク質を少なくとも約100mg/Lの濃度まで発現する、細菌無細胞合成系。
(項目12)
前記タンパク質シャペロンがジスルフィドイソメラーゼおよびプロリルイソメラーゼからなる群から選択される、項目11に記載の系。
(項目13)
前記抽出物が調製される細菌が、ジスルフィドイソメラーゼをコードする遺伝子およびプロリルイソメラーゼをコードする遺伝子で共形質転換された、項目11に記載の系。
(項目14)
前記外因性タンパク質シャペロンが、DsbC、FkpA、およびSlyDからなる群から選択される、項目11に記載の系。
(項目15)
前記細菌がEscherichia coliである、項目11に記載の系。
(項目16)
前記抽出物が調製される細菌が、構成的プロモーターに作動可能に連結した遺伝子から前記外因性タンパク質シャペロンを発現する、項目11に記載の系。
(項目17)
前記抽出物がE.coliのS30抽出物である、項目11に記載の系。
(項目18)
適正にフォールディングされた生物活性のあるタンパク質を細菌無細胞合成系において発現させる方法であって、
i)無細胞タンパク質合成に必要な生物学的機能性tRNA、アミノ酸、リボソームと、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼとを含む細菌抽出物を調製するステップであって、前記タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよび前記ペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼが、適正にフォールディングされた生物活性のあるタンパク質の発現を改善するために十分な濃度で存在するステップ;
ii)前記細菌抽出物を目的のタンパク質をコードする核酸と組み合わせるステップ;ならびに
iii)前記細菌抽出物を、前記目的のタンパク質の発現および適正なフォールディングが可能になる条件下で前記核酸と共にインキュベートするステップ
を含む方法。
(項目19)
タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼの総濃度が、前記抽出物中、1リットル当たり少なくとも約1gmの濃度で存在する、項目18に記載の方法。
(項目20)
タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼの総濃度が、前記抽出物中、1リットル当たり1gmから1リットル当たり14gmの間の濃度で存在する、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記目的のタンパク質の発現が、前記タンパク質ジスルフィドイソメラーゼとペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼの両方ではなく一方が存在する場合であって、インキュベーション条件が他の点では同じである場合の濃度を上回る濃度まで改善される、項目18に記載の方法。
(項目22)
前記タンパク質ジスルフィドイソメラーゼがDsbA、DsbB、DsbC、およびDsbDからなる群から選択され、前記ペプチジル−プロリルシス/トランスイソメラーゼがFkpAおよびSlyDからなる群から選択される、項目18に記載の方法。
(項目23)
前記抽出物が調製される細菌が、構成的プロモーターに作動可能に連結した遺伝子から外因性タンパク質シャペロンの少なくとも1つを発現する、項目18に記載の方法。
(項目24)
前記細菌がEscherichia coliである、項目18に記載の方法。
(項目25)
前記目的のタンパク質が、その生物活性のあるコンフォメーションにおいて少なくとも1つのジスルフィド結合を有する、項目18に記載の方法。
(項目26)
前記目的のタンパク質が、少なくとも2つのプロリン残基を有する、項目18に記載の方法。
(項目27)
前記目的のタンパク質が抗体または抗体断片である、項目18に記載の方法。
(項目28)
生物活性のあるタンパク質を発現させるための細菌無細胞合成系であって、
i)活性な酸化的リン酸化系を有する細菌無細胞抽出物であって、無細胞タンパク質合成に必要な生物学的機能性tRNA、アミノ酸およびリボソームを含有し、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼをさらに含み、
前記タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよび前記ペプチジル−プロリルシス/トランスイソメラーゼが、適正にフォールディングされた生物活性のあるタンパク質の発現を改善するために十分な濃度で存在する、細菌無細胞抽出物;ならびに
ii)目的のタンパク質をコードする核酸、
を含み、目的のタンパク質を少なくとも約100mg/Lの濃度まで発現する、細菌無細胞合成系。
(項目29)
タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼの総濃度が、前記抽出物中、1リットル当たり少なくとも約1gmの濃度で存在する、項目28に記載の系。
(項目30)
タンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよびペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼの総濃度が、前記抽出物中、1リットル当たり1gmから1リットル当たり14gmの間の濃度で存在する、項目28に記載の方法。
(項目31)
前記目的のタンパク質の発現が、前記タンパク質ジスルフィドイソメラーゼと前記ペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼの両方ではなく一方が存在する場合であって、インキュベーション条件が他の点では同じである場合の濃度を上回る濃度まで改善される、項目28に記載の系。
(項目32)
前記タンパク質ジスルフィドイソメラーゼがDsbA、DsbB、DsbC、およびDsbDからなる群から選択され、前記ペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼがFkpAおよびSlyDからなる群から選択される、項目28に記載の系。
(項目33)
前記抽出物が調製される細菌が、構成的プロモーターに作動可能に連結した遺伝子から外因性タンパク質シャペロンの少なくとも1つを発現する、項目28に記載の系。
(項目34)
前記細菌がEscherichia coliである、項目28に記載の系。
(項目35)
前記目的のタンパク質が、その生物活性のあるコンフォメーションにおいて少なくとも1つのジスルフィド結合を有する、項目28に記載の系。
(項目36)
前記目的のタンパク質が、少なくとも2つのプロリン残基を有する、項目28に記載の系。
(項目37)
前記目的のタンパク質が抗体または抗体断片である、項目28に記載の系。

Claims (1)

  1. 本明細書に記載の発明。
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