JP4936290B2 - 非天然型アミノ酸を組み込んだタンパク質の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、所望の位置に非天然型アミノ酸を組み込んだタンパク質の製造方法、当該製造方法に使用する宿主細胞及び当該製造方法に使用する無細胞タンパク質合成系試薬キットに関する。
天然のタンパク質は、天然に存在する20種類のアミノ酸(以下、天然型アミノ酸と称する)から構成される。タンパク質の構造や機能を解析したり、その化学的性質を拡張する場合、アミノ酸配列における所望の位置に、天然に存在しないアミノ酸(以下、非天然型アミノ酸と称する)を組み込む手法が知られている。なお、非天然型アミノ酸を組み込んだタンパク質をアロプロテインと称する。
ところで、アミノアシルtRNA合成酵素(以下、aaRSと称する)は、特定のアミノ酸と特定のtRNAとを特異的に結合させる酵素であり、生物種ごとに、一部の例外を除き20種類の天然型アミノ酸それぞれに対応して20種類存在する。アロプロテインを合成する場合、非天然型アミノ酸に対応する新たなaaRS(以下、aaRS*と称する)及び天然型アミノ酸をコードしないコドンと対合するtRNA(以下、tRNA*と称する)を宿主細胞に組み込み、正確に機能させる必要がある。すなわち、宿主細胞において、本来は天然型アミノ酸をコードしないコドンに、aaRS*によって非天然型アミノ酸を結合したtRNA*を対合させ、非天然型アミノ酸を組み込んだアロプロテインを合成することができる。
このとき、aaRS*は、特定の天然型アミノ酸に特異的な既存のaaRSをベースとして、この特定の天然型アミノ酸と類似する非天然型アミノ酸を基質とする活性を持たせるように機能改変することによって作出される。例えば、チロシン(天然型アミノ酸)に類似するO−メチルチロシン(非天然型アミノ酸)に特異的なaaRS*を作出する際には、既存のチロシルtRNA合成酵素(TyrRS)をベースとして、O−メチルチロシンに対する特異性が高められたTyrRS変異体を作出する。このように作出したaaRS*を使用してアロプロテインを合成する場合、宿主細胞が本来的に備える20種類の天然型アミノ酸及びこれらに対応するtRNAと反応せず、所定の非天然型アミノ酸及びtRNA*と特異的に反応するaaRS*を使用しなければならない。
したがって、aaRS*は、所定の非天然型アミノ酸に対する特異性が、既存の天然型アミノ酸に対する特異性に比べて十分に高められたaaRS*を用いる。そうでなければ、所定の非天然型アミノ酸が導入されるべき位置に天然型アミノ酸が導入されたタンパク質が合成されてしまうからである。また、aaRS*が、tRNA*以外に宿主細胞に本来的に備わっているtRNAとも反応するならば、非天然型アミノ酸を導入すべき位置以外にも、天然型アミノ酸であるべき位置に非天然型アミノ酸が導入されることになる。この問題が起こらないためには、宿主細胞として原核細胞を使用する場合、aaRS*は真核生物タイプのaaRSをベースに構築したaaRS*を使用する。なぜなら、真核生物タイプのaaRSは原核生物のtRNAとは反応しにくいからである。なお、ここで“真核生物タイプのaaRS”とは、真核生物由来のaaRSまたは古細菌由来のaaRSを意味している。仮に、宿主細胞として原核細胞を使用し、原核生物由来のaaRS*を導入した場合、当該aaRS*は、tRNA*のみならず、宿主に本来備わった天然型アミノ酸に対応するtRNAを基質として複数種のアミノアシルtRNAを合成してしまう虞があり、この場合には上記の理由から、遺伝子の一意的なタンパク質への翻訳が困難となる。よって、宿主細胞として原核細胞を使用する場合、真核生物タイプのaaRS*を使用する。逆に、宿主細胞として真核生物タイプの細胞を使用する場合、aaRS*は原核生物由来のaaRSをベースに構築するものを使用する。
以上のように、アロプロテインを合成する場合、使用する宿主細胞が真核細胞であるか原核細胞であるかによって、適切なaaRS*を作出しなければならない。宿主細胞が真核生物タイプであるか原核細胞であるかに拘わらず、いずれの場合において使用可能なaaRS*はまれである。したがって、特定の非天然型アミノ酸を組み込んだアロプロテインを真核生物タイプの細胞及び原核細胞で合成しようとすると、原核生物由来のaaRS*及び真核生物タイプのaaRS*を作出する必要がある。ところが、aaRS*の作出には、非天然型アミノ酸を基質とする活性を持たせるように既存のaaRSの機能改変を成功させなければならず、多大な労力を要するといった問題がある。
WO2003/014354 WO2004/039989
そこで、本発明は、上述した実状に鑑み、原核生物由来のaaRS*及び真核生物タイプのaaRS*のいずれか一方を用い、原核細胞及び真核生物タイプの細胞のいずれも宿主細胞として使用することができるアロプロテインの製造方法を提供することを目的とする。
上述した目的を達成した本発明に係るアロプロテインの製造方法は以下の工程を含む。
(a) 所定の天然型アミノ酸に対する特異性に比べて、当該天然型アミノ酸に類似する非天然型アミノ酸に対する特異性が高められた原核生物由来アミノアシルtRNA合成酵素変異体をコードする遺伝子と、当該原核生物由来アミノアシルtRNA合成酵素変異体の存在下で当該非天然型アミノ酸と結合可能な非天然型アミノ酸用tRNA遺伝子とを、上記所定の天然型アミノ酸に対する特異性を有する真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素をコードする遺伝子と、当該真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素の存在下で当該天然型アミノ酸と結合可能なtRNA遺伝子とを発現する原核細胞に導入する工程
(b) 上記原核細胞に本来的に存在する、上記天然型アミノ酸に対する特異性を有する内在のアミノアシルtRNA合成酵素をコードする遺伝子と、当該内在のアミノアシルtRNA合成酵素の存在下で当該天然型アミノ酸と結合可能な内在のtRNA遺伝子とをノックアウトする工程
(c) 上記非天然型アミノ酸用tRNA遺伝子のアンチコドンに対合するコドンを有する目的遺伝子によりコードされる目的タンパク質を、上記原核細胞中で発現させる工程
以上の本発明に係るアロプロテインの製造方法では、上記アンチコドンに対合するコドンの位置に上記非天然型アミノ酸を取り込ませ、原核細胞において所望のアロプロテインを製造することができる。なお、本発明において使用する原核生物由来アミノアシルtRNA合成酵素変異体は、原核細胞においてアロプロテインを合成する系に限定されず、真核細胞でアロプロテインを合成する系にも適用することができる。
また、本発明に係るアロプロテインの製造方法は、以上のような原核細胞を宿主細胞として使用する系に限定されず、真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素変異体を使用して真核生物タイプの細胞を宿主細胞として使用する系にも適用することができる。
また、本発明に係る原核細胞は、以下の特徴を有している。
(a) 所定の天然型アミノ酸に対する特異性を有する真核生物タイプアミノアシルtRNA合成酵素をコードする遺伝子と、当該真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素の存在下で当該天然型アミノ酸と結合可能なtRNA遺伝子とが導入されている
(b) 原核細胞に本来的に存在する、上記天然型アミノ酸に対する特異性を有する内在のアミノアシルtRNA合成酵素をコードする遺伝子と、当該内在のアミノアシルtRNA合成酵素の存在下で当該天然型アミノ酸と結合可能な内在のtRNA遺伝子とがノックアウトされている。
以上のような特徴を有する本発明に係る原核細胞は、非天然型アミノ酸と類似する天然型アミノ酸を組み込む際には、真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素及びこれに対応する真核生物タイプのtRNAを使用することとなる。
さらに、本発明に係る無細胞タンパク質合成系試薬キットは、少なくとも以下の要素を含む。
(a) 所定の天然型アミノ酸に対する特異性に比べて、当該天然型アミノ酸に類似する非天然型アミノ酸に対する特異性が高められた原核生物由来アミノアシルtRNA合成酵素変異体
(b) 上記原核生物由来アミノアシルtRNA合成酵素変異体の存在下で上記非天然型アミノ酸と結合可能な非天然型アミノ酸用tRNA
(c) 上記非天然型アミノ酸を含むアミノ酸溶液
(d) 上記所定の天然型アミノ酸に対する特異性を有する真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素をコードする遺伝子と、当該真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素の存在下で当該天然型アミノ酸と結合可能なtRNA遺伝子とが導入されるとともに、原核細胞に本来的に存在する、上記天然型アミノ酸に対する特異性を有する内在のアミノアシルtRNA合成酵素をコードする遺伝子と、当該内在のアミノアシルtRNA合成酵素の存在下で当該天然型アミノ酸と結合可能な内在のtRNA遺伝子とがノックアウトされた原核細胞の抽出液
以上のような無細胞タンパク質合成系試薬キットを使用した場合、非天然型アミノ酸と類似する天然型アミノ酸を組み込む際には、真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素及びこれに対応する真核生物タイプのtRNAを使用することとなる。なお、本発明に係る無細胞タンパク質合成系試薬キットは、以上のような原核細胞の抽出液を使用する系に限定されず、真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素変異体を使用して真核細胞の抽出液を使用する系にも適用することができる。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2005−338402号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
図1は、TOP10[ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株及びTOP10株をそれぞれプラスミド2541supFで形質転換した後、クロラムフェニコール含有培地及びクロラムフェニコール非含有培地で培養した結果を示す写真である。
図2は、TOP10[ΔtyrT,ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株及びTOP10[ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株にそれぞれ大腸菌TyrRS変異体を導入した株をブロモチロシン含有培地及びブロモチロシン非含有培地において生育したときの増殖曲線を示す特性図である。
図3は、TOP10[ΔtyrT,ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株及びTOP10株について、それぞれ染色体DNAを抽出してPCRを行い、PCR増幅断片を電気泳動によって確認した結果を示す写真である。
以下、本発明をより詳細に説明する。
アロプロテインは、非天然型アミノ酸を組み込んだタンパク質として定義される。本発明に係る非天然型アミノ酸を組み込んだタンパク質の製造方法(以下、アロプロテインの製造方法と称する)は、原核生物由来又は真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素変異体(以下、aaRS*と称する)を使用するが、宿主細胞の種類、すなわち原核細胞、真核生物タイプの細胞、原核細胞由来の無細胞タンパク質合成系或いは真核生物タイプの細胞由来の無細胞タンパク質合成系であるかを問わず、広く如何なる宿主細胞に対してもaaRS*を使用することができる。
なお、本発明において、「真核生物タイプ」とは、真核生物及び古細菌を含む意味である。従って、「真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素」と表現した場合、真核生物由来のアミノアシルtRNA合成酵素及び古細菌由来のアミノアシルtRNA合成酵素を含む意味である。
非天然型アミノ酸
本発明において、非天然型アミノ酸とは、20種類の天然型アミノ酸とは異なる構造を有するアミノ酸である。非天然型アミノ酸は、天然型アミノ酸に類似する構造を有するため、特定の天然型アミノ酸の誘導体又は類似体として分類される。例えば、非天然型アミノ酸としては、天然型アミノ酸であるチロシンの誘導体である3位置換チロシン、4位置換チロシンを挙げることができる。3位置換チロシンとしては、3−ヨードチロシン、3−ブロモチロシン等の3−ハロゲン化チロシンが挙げられる。4位置換チロシンとしては、4−アセチル−L−フェニルアラニン、4−ベンゾイル−L−フェニルアラニン、4−アジド−L−フェニルアラニン、O−メチル−チロシン、4−ヨード−L−フェニルアラニン等を挙げることができる。
また、非天然型アミノ酸としては、チロシン誘導体に限定されず、例えば、アジドアラニン、アジドホモアラニン、ノルロイシン、ノルバリン、4−アミノトリプトファン、7−アザトリプトファン、6−メチルトリプトファン、アセチルリジン、ε−ボクリジン、ε−メチルリジン、1−ナフチルアラニン、2−ナフチルアラニン、スチリルアラニン、ジフェニルアラニン、チアゾリルアラニン、2−ピリジルアラニン、3−ピリジルアラニン、4−ピリジルアラニン、アントリルアラニン、2−アミノ−5−ヘキシノイン酸、フリルアラニン、ベンゾチエニルアラニン、チエニルアラニン、アリルグリシン、プロパルギルグリシン、ホスホリルセリン、ホスホリルトレオニン、2,3−ジアミノプロピオン酸等を挙げることができる。
アミノアシルtRNA合成酵素変異体
本発明において、aaRS*とは、所定の天然型アミノ酸に対する特異性に比べて、当該天然型アミノ酸に類似する非天然型アミノ酸に対する特異性が高められた変異型アミノアシルtRNA合成酵素を意味する。特異性が高められたとは、非天然型アミノ酸に対する活性値(反応速度Kcatをミカエリス定数Kで割った値)が、天然型アミノ酸に対する活性値よりも有意に大となっていることを意味する。活性値は、インビトロのアッセイによって測定することができるが、遺伝学的なデータから活性値の相対的な大きさを判定することもできる。
このように定義されるaaRS*は、天然型アミノ酸に対応する既知のアミノアシルtRNA合成酵素の所定の位置に変異を導入することによって取得することができる。天然型アミノ酸に対応する既知のアミノアシルtRNA合成酵素は、アミノアシルtRNAを合成するに際して、先ず、アミノ酸を特異的に認識してAMPを付加することで活性化する。既知のアミノアシルtRNA合成酵素については、アミノ酸の特異的な認識に寄与する部位が知られており、当該部位に変異を導入することによってその特異性を変化させることができる。このような知見に基づけば、天然型アミノ酸に対する特異性を低減して、当該天然型アミノ酸に類似する非天然型アミノ酸に対する特異性を高めるような変異を導入することができる。このように、既知のアミノアシルtRNA合成酵素における所定の部位に変異を導入することによって、所望の特異性を有するaaRS*を作製することができる。
このようなaaRS*は、原核生物及び真核生物タイプのいずれを由来としてもよいが、原核生物に由来するaaRS*の一例としては、3−ヨード−L−チロシン(非天然型アミノ酸)に対する特異性がチロシン(天然型アミノ酸)に対する特異性に比べて高められたaaRS*(変異TyrRSと称する)を挙げることができる。変異TyrRSは、下記の文献に記載されている。Kiga,D.,Sakamoto,K.,Kodama,K.,Kigawa,T.,Matsuda,T.,Yabuki,T.,Shirouzu,M.,Harada,Y.,Naklayama,H.,Takio,K.,Hasegawa,Y.,Endo,Y.,Hirao,I.and Yokoyama,S.(2002)An engineered Escherichia coli tyrosyl−tRNA synthetase for site−specific incorporation of an unnatural amino acid into proteins in eukaryotic translation and its application in a wheat germ cell−free system.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99,9715−9723.
この文献によれば、大腸菌由来のチロシルtRNA合成酵素における37位のチロシン(Y)及び195位のグルタミン(Q)に相当する位置を他のアミノ酸に置換することで、3−ハロゲン化チロシン(非天然型アミノ酸)への特異性が高められた変異体を得ることができる。さらに好ましくは、37位チロシン(Y)に相当する位置がバリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)又はアラニン(A)で置換され、且つ、195位グルタミン(Q)に相当する位置がアラニン(A)、システイン(C)、セリン(S)又はアスパラギン(N)で置換された変異体を使用できる。これらの変異体は、特に3−ヨード−L−チロシンに対する特異性が高められている。
なお、このような変異体をコードする遺伝子を製造する方法は、公知の遺伝子操作技術により容易に行うことができる。例えば、部位特異的変異導入法と呼ばれる手法により、或いは、部位特異的変異導入法を実施するための市販のキットを使用して変異体をコードする遺伝子を製造することができる。
また、その他の原核生物に由来するaaRS*としては、Chin,J.W.,Cropp,T.A.,Anderson,J.C.,Mukherji,M.,Zhang,Z.,and Schlutz,P.G.(2003)An expanded eukaryotic genetic code.Science 301,964−967に記載されたもの、及びDeiters,A.,Cropp,T.A.,Mukherji,M.,Chin,J.W.,Anderson,J.C.,and Schultz,P.G..(2003)Adding amino acids with novel reactivity to the genetic cods of Saccharomyces cerevisiae.J.Am.Chem.Soc.125,11782−11783に記載されたものを挙げることができる。
一方、真核生物タイプに由来するaaRS*の一例としては、Santoro,S.W.,Wang,L.,Herberich,B.,King,D.S.,Schultz,P.G.:An efficient system for the evolution of aminoacyl−tRNA synthetase specificity,Nature Biotechnol.20,1044−1048(2002)に記載されたもの、及びWang,L.,Brock,A.,Herberich,B.,Schultz,P.G.:Expanding the genetic code of Escherichia coli,Science 292,498−500(2001)に記載されたものを挙げることができる。
非天然型アミノ酸用tRNA遺伝子
非天然型アミノ酸用tRNA遺伝子とは、上述したaaRS*により認識されるとともに、活性化された非天然型アミノ酸が転移する3’末端を有するtRNAをコードする遺伝子である。すなわち、上述したaaRS*は、特定の非天然型アミノ酸を認識して、非天然型アミノ酸−AMPを合成するとともに、非天然型アミノ酸用tRNAの3’末端に非天然型アミノ酸を転移させる活性を有している。
ここで、非天然型アミノ酸用tRNAは、20種類の天然型アミノ酸に対応するコドン以外の遺伝暗号に対して特異的に対合するアンチコドンを有している。非天然型アミノ酸用tRNAのアンチコドンは、UAGアンバーコドン、UAAオーカーコドン及びUGAオパールコドンからなるナンセンスコドンに対合する配列であることが好ましい。言い換えると、非天然型アミノ酸用tRNAは、ナンセンス・サプレッサーtRNAであることが好ましい。なかでも、非天然型アミノ酸用tRNAは、サプレッサーtRNAのうちUAG(アンバーコドン)に対合するアンチコドンを有するものであることが好ましい。その理由の1つは、オパールコドンは低い効率でトリプトファンに翻訳されることがあり、このコドンを用いたとき非天然型アミノ酸とトリプトファンの2種類のアミノ酸に翻訳される虞があるために、オパールコドンは用いることが適当でないからである。もう1つの理由は、アンバーコドンは3字目にGを持つからである。コドン3字目とアンチコドン1字目の塩基対形成は比較的不安的であり、この位置に安定なGC塩基対を形成することは、サプレッサーtRNAがUAGコドンを非天然型アミノ酸に効率よく翻訳する上で有利になるからである。
上述したaaRS*として原核生物由来のaaRSの変異体を使用する場合、非天然型アミノ酸用tRNA遺伝子としては、同じ原核生物由来のtRNA遺伝子を使用することができる。特に、上述した大腸菌由来の変異TyrRSを使用する場合、大腸菌由来のサプレッサーtRNA遺伝子を使用することが好ましい。
また、非天然型アミノ酸用tRNAのアンチコドンとしては、終止コドンに対応する配列に限定されず、4塩基以上のコドンと特異的に対合する配列からなるものであっても良い。その他にも、非天然型アミノ酸用tRNAのアンチコドンとしては、非天然の塩基を含むものであってもよい。この場合には、その非天然塩基と特異的に塩基対を形成することができる別種の非天然塩基をコドンの対応する位置に導入する。このような非天然塩基のペアとしては、イソグアニンとイソイチジン、2−アミノ−6−(2−チエニル)プリンとピリジン−2−オンが挙げられる。
宿主細胞
上述したaaRS*遺伝子及び非天然型アミノ酸用tRNA遺伝子が原核生物由来であるか真核生物タイプであるかに拘わらず、宿主細胞としては真核生物タイプの細胞及び原核細胞のいずれであっても良い。
原核生物由来のaaRS*遺伝子及び非天然型アミノ酸用tRNA遺伝子を使用し、宿主細胞として原核細胞を使用する場合には、当該原核細胞において、aaRS*の基質となる非天然型アミノ酸と類似する天然型アミノ酸に対する特異性を有するaaRSをコードする遺伝子(以下、「対応する原核細胞内在aaRS遺伝子」と称する)と、当該対応する原核細胞内在aaRS遺伝子の存在下で天然型アミノ酸と結合可能なtRNA遺伝子(以下、「対応する原核細胞内在tRNA遺伝子」と称する)とを、真核生物タイプのaaRS遺伝子(以下、「対応する真核生物タイプaaRS遺伝子」と称する)とtRNA遺伝子(以下、「対応する真核生物タイプtRNA遺伝子」と称する)とに置き換えるようにする。
より具体的には、宿主細胞が原核細胞である場合、当該原核細胞において、対応する原核細胞内在aaRS遺伝子及び対応する原核細胞内在tRNA遺伝子をノックアウトするとともに、当該原核細胞に、対応する真核生物タイプaaRS遺伝子及び対応する真核生物タイプtRNA遺伝子を導入する。原核生物由来のaaRS*は、対応する真核生物タイプtRNAをアミノアシル化することなく、非天然型アミノ酸用tRNAのみをアミノアシル化することとなる。また、対応する真核生物タイプaaRSは、非天然型アミノ酸用tRNAをアミノアシル化することなく、対応する真核生物タイプtRNAのみをアミノアシル化することとなる。
ここで、原核細胞に、対応する真核生物タイプaaRS遺伝子及び対応する真核生物タイプtRNA遺伝子を導入する場合、これら対応する真核生物タイプaaRS遺伝子及び対応する真核生物タイプtRNA遺伝子を発現可能な形で導入した発現ベクターを使用する方法、及びこれら対応する真核生物タイプaaRS遺伝子及び対応する真核生物タイプtRNA遺伝子を発現可能な形で原核細胞のゲノムに導入する方法のいずれを用いても良い。導入した遺伝子を高発現させることができ、アロプロテインを効率よく合成できるといった理由から発現ベクターを用いる方法が好ましい。
このように調製した原核細胞では、導入対象の非天然型アミノ酸に類似する天然型アミノ酸については、真核生物タイプaaRS及びtRNAによってタンパク質に組み込まれることとなり、目的とするアミノ酸配列を有するアロプロテインを正確に合成する際の宿主細胞として利用することができる。
ここで宿主細胞として使用できる原核細胞は、特に限定されないが、大腸菌、枯草菌等を挙げることができる。
また、上述した大腸菌由来の変異TyrRSを使用する場合、真核生物タイプaaRSとしてはメタノコッカス・ジャナシー(Methanococcus jannaschii)由来のチロシルtRNA合成酵素を使用することができる。メタノコッカス・ジャナシー(Methanococcus jannaschii)由来のチロシルtRNA合成酵素は、以下の(a)、(b)及び(c)からなる群から選ばれるいずれか一のタンパク質から構成されている。
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、チロシンを活性化するとともにチロシルtRNAを合成する活性を有するタンパク質
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件化でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされ、チロシンを活性化するとともにチロシルtRNAを合成する活性を有するタンパク質
さらに、上述した大腸菌由来の変異TyrRSを使用する場合、真核生物タイプtRNAとしてはメタノコッカス・ジャナシー(Methanococcus jannaschii)由来のチロシンtRNA遺伝子を使用することができる。メタノコッカス・ジャナシー(Methanococcus jannaschii)由来のチロシンtRNAは、以下の(a)、(b)及び(c)からなる群から選ばれるいずれか一のポリヌクレオチドから構成される。
(a)配列番号1における4334〜4410番目に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)配列番号1における4334〜4410番目に示す塩基配列において、1又は数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなり、活性化されたチロシンをメタノコッカス・ジャナシー(Methanococcus jannaschii)由来のチロシルtRNA合成酵素の存在下で結合できるポリヌクレオチド
(c)配列番号1における4334〜4410番目に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件化でハイブリダイズし、活性化されたチロシンをメタノコッカス・ジャナシー(Methanococcus jannaschii)由来のチロシルtRNA合成酵素の存在下で結合できるポリヌクレオチド
なお、ここでストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリダイズが形成されるが非特異的なハイブリダイズは形成されない条件を意味する。例えば、緩衝液として6×SSC(0.9M NaCl、0.09M クエン酸ナトリウム)、温度55℃といった条件を挙げることができる。
ところで、原核生物由来のaaRS*遺伝子及び非天然型アミノ酸用tRNA遺伝子を使用し、宿主細胞として真核生物タイプの細胞を使用する場合には、当該真核生物タイプの細胞が本来的に有している、天然型アミノ酸に特異的なaaRS及び当該aaRSの存在下で天然型アミノ酸と結合可能なtRNA遺伝子を何ら置換すること無く使用することができる。言い換えれば、この場合、宿主細胞となる真核生物タイプの細胞はそのまま使用することができる。
ここで宿主細胞として使用できる真核生物タイプの細胞は、特に限定されないが、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞及び哺乳動物細胞等の真核細胞並びに古細菌を挙げることができる。なかでも遺伝子組換え系が確立されている哺乳類細胞が好ましい。有用な哺乳動物細胞系としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞とCOS細胞が挙げられる。より具体的には、SV40によって形質転換したサル腎臓CV1系(COS−7)、ヒト胚腎臓系(293細胞)、チャイニーズハムスター卵巣/−DHFR系、マウスセルトーリ細胞(TM4)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)及びマウス乳癌細胞(MMT060562)を挙げることができる。
一方、真核生物タイプのaaRS*遺伝子及び非天然型アミノ酸用tRNA遺伝子を使用し、宿主細胞として真核生物タイプの細胞を使用する場合には、当該真核生物タイプの細胞において、aaRS*の基質となる非天然型アミノ酸と類似する天然型アミノ酸に対する特異性を有するaaRSをコードする遺伝子(以下、「対応する真核生物内在aaRS遺伝子」と称する)と、当該対応する真核生物内在aaRS遺伝子の存在下で天然型アミノ酸と結合可能なtRNA遺伝子(以下、「対応する真核生物内在tRNA遺伝子」と称する)とを、原核生物由来のaaRS遺伝子(以下、「対応する原核生物由来aaRS遺伝子」と称する)とtRNA遺伝子(以下、「対応する原核生物由来tRNA遺伝子」と称する)とに置き換えるようにする。
より具体的には、宿主細胞が真核生物タイプの細胞である場合、当該真核生物タイプの細胞において、対応する真核生物内在aaRS遺伝子及び対応する真核生物内在tRNA遺伝子をノックアウトするとともに、当該真核生物タイプの細胞に、対応する原核生物由来aaRS遺伝子及び対応する原核生物由来tRNA遺伝子を導入する。真核生物タイプのaaRS*は、対応する原核細胞由来tRNAをアミノアシル化することなく、非天然型アミノ酸用tRNAのみをアミノアシル化することとなる。また、対応する原核生物由来のaaRSは、非天然型アミノ酸用tRNAをアミノアシル化することなく、対応する原核生物由来tRNAのみをアミノアシル化することとなる。
ここで、真核生物タイプの細胞に、対応する原核生物由来aaRS遺伝子及び対応する原核生物由来tRNA遺伝子を導入する場合、これら対応する原核生物由来aaRS遺伝子及び対応する原核生物由来tRNA遺伝子を発現可能な形で導入した発現ベクターを使用する方法、及びこれら対応する原核生物由来aaRS遺伝子及び対応する原核生物由来tRNA遺伝子を発現可能な形で真核生物タイプの細胞のゲノムに導入する方法のいずれを用いても良い。導入した遺伝子を高発現させることができ、アロプロテインを効率よく合成できるといった理由から発現ベクターを用いる方法が好ましい。
このように調製した真核生物タイプの細胞では、導入対象の非天然型アミノ酸に類似する天然型アミノ酸については、原核生物由来のaaRS及びtRNAによってタンパク質に組み込まれることとなり、目的とするアミノ酸配列を有するアロプロテインを正確に合成する際の宿主細胞として利用することができる。
また、真核生物タイプのaaRS*遺伝子及び非天然型アミノ酸用tRNA遺伝子を使用し、宿主細胞として原核細胞を使用する場合には、当該原核細胞が本来的に有している、天然型アミノ酸に特異的なaaRS及び当該aaRSの存在下で天然型アミノ酸と結合可能なtRNA遺伝子を何ら置換すること無く使用することができる。言い換えれば、この場合、宿主細胞となる原核細胞はそのまま使用することができる。
目的タンパク質及びその製造方法
上述したaaRS*遺伝子、非天然型アミノ酸用tRNA遺伝子及び宿主細胞を用いて、非天然型アミノ酸を組み込んだ目的タンパク質(アロプロテイン)を製造することができる。目的タンパク質の種類としては、何ら限定されるものではない。但し、目的タンパク質をコードする遺伝子において、所望の位置のコドンを上述した非天然型アミノ酸用tRNAのアンチコドンと対合する配列としておく。これにより、所望の位置に非天然型アミノ酸を有するアロプロテインを製造することができる。具体的には、いわゆる部位特異的変異導入法によって野生型の遺伝子における所望の位置を、非天然型アミノ酸用tRNAのアンチコドンと対合する配列に変異させることで、アロプロテインをコードする遺伝子を作製することができる。
作製した目的タンパク質をコードする遺伝子は、通常の方法によって宿主細胞に導入され、当該宿主細胞内で発現することとなる。宿主細胞においては、当該遺伝子における非天然型アミノ酸用tRNAのアンチコドンに対合するコドンの位置に非天然型アミノ酸を組み込んだアロプロテインを合成することができる。
目的タンパク質(アロプロテイン)としては、何ら限定されないが、例えば、細胞情報伝達に関わる一群のタンパク質(上皮成長因子受容体、神経成長因子受容体、Grab2タンパク質、Srcキナーゼ、Rasタンパク質など)、翻訳に関わる一群のタンパク質(ポリペプチド伸長因子、開始因子、転写終結因子、リボソームタンパク質、アミノアシルtRNA合成酵素など)や転写因子、膜タンパク質などが挙げられる。
得られたアロプロテインは、(i)X線結晶解析による構造決定に用いたり、(ii)細胞情報伝達経路の解明のために光クロスリンクや部位特異的蛍光標識を施したり、(iii)薬効を高めるためのポリエチレングリコール化を部位特異的に施した上でタンパク質性薬剤として用いるなどの用途がある。さらに、部位特異的なアミノ酸置換によるタンパク質の機能解析において、置換に用いることのできるアミノ酸の種類は従来、天然の20種類に限られていたが、非天然型アミノ酸を用いればこれに制限されることなく様々なアミノ酸残基に置換することができる。このようにして、一連の変異体を作成して解析することで、タンパク質中の特定部位のアミノ酸残基の役割を詳細に明らかにすることも可能である。
無細胞タンパク質合成系試薬キット
また、上述したaaRS*及び非天然型アミノ酸用tRNAは、いわゆる無細胞タンパク質合成系試薬キットの一部として使用することができる。一般に無細胞タンパク質合成系試薬キットは、各種細胞の抽出液をタンパク質合成能を欠損しない形で含んでいる。無細胞タンパク質合成系においては翻訳系、転写・翻訳系が知られており、それぞれ目的タンパク質をコードするmRNA又はDNAを反応液に加えることによって、抽出液に含まれる各種酵素の働きによりタンパク質を合成している。
本発明に係る無細胞タンパク質合成系試薬キットは、少なくとも、所定の天然型アミノ酸と類似する非天然型アミノ酸を含むアミノ酸溶液と、上述したaaRS*及び非天然型アミノ酸用tRNAのセットと、宿主細胞の抽出液とを含むものである。また、本発明に係る無細胞タンパク質合成系試薬キットは、一般に市販されている公知の無細胞タンパク質合成系試薬キットに含まれる、目的タンパク質をコードする遺伝子を組み込むことができるベクターDNA溶液、目的タンパク質をコードする遺伝子の転写を行うためのRNAポリメラーゼを含む試薬セット等を含んでいても良い。
特に、本発明に係る無細胞タンパク質合成系試薬キットにおいて、上述した宿主細胞の抽出液は、真核生物タイプの細胞及び原核細胞いずれの抽出液であっても良い。但し、原核生物由来aaRS*を使用し、原核細胞の抽出液を使用する場合には、上述した「対応する原核細胞内在aaRS遺伝子」及び「対応する原核細胞内在tRNA遺伝子」をノックアウトし、「対応する真核生物タイプaaRS遺伝子」及び「対応する真核生物タイプtRNA遺伝子」を導入した原核細胞の抽出的を使用する。このとき、「aaRS*遺伝子」及び「非天然型アミノ酸用tRNA遺伝子」を原核細胞にさらに導入するか、または、「aaRS*」及び「非天然型アミノ酸用tRNA」をそのまま原核細胞の培養液に添加することにより、当該原核細胞の抽出液内に「aaRS*」及び「非天然型アミノ酸用tRNA」を含ませることができる。
また、本発明に係る無細胞タンパク質合成系試薬キットにおいて、原核生物由来のaaRS*を使用し、真核生物タイプの細胞抽出液を使用する場合には、当該真核生物タイプの細胞が本来的に有している、天然型アミノ酸に特異的なaaRS及び当該aaRSの存在下で天然型アミノ酸と結合可能なtRNA遺伝子を何ら置換すること無く使用することができる。言い換えれば、この場合、野生型の真核生物タイプの抽出液をそのまま使用することができる。
一方、本発明に係る無細胞タンパク質合成系試薬キットにおいて、真核生物タイプaaRS*を使用し、真核生物タイプの細胞抽出液を使用する場合には、上述した「対応する真核生物内在aaRS遺伝子」及び「対応する真核生物内在tRNA遺伝子」をノックアウトした真核生物タイプの細胞抽出液を使用する。このとき、「対応する原核生物由来aaRS遺伝子」及び「対応する原核生物由来tRNA遺伝子」を真核生物タイプの細胞に導入しておき、当該真核生物タイプの細胞抽出液内に「対応する原核生物由来aaRS」及び「対応する原核生物由来tRNA」を含ませることができる。また、「対応する原核生物由来aaRS遺伝子」及び「対応する原核生物由来tRNA遺伝子」の各産物は、抽出液に別途、添加しても良い。
また、本発明に係る無細胞タンパク質合成系試薬キットにおいて、真核生物タイプのaaRS*を使用し、原核細胞の抽出液を使用する場合には、当該原核細胞が本来的に有している、天然型アミノ酸に特異的なaaRS及び当該aaRSの存在下で天然型アミノ酸と結合可能なtRNA遺伝子を何ら置換すること無く使用することができる。言い換えれば、この場合、野生型の原核細胞の抽出液をそのまま使用することができる。
以下、本発明に係る薬剤を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例では、大腸菌由来のaaRS*(3−ヨード−L−チロシンに対する特異性がチロシンに対する特異性に比べて高められた変異TyrRS)を使用し、宿主細胞として大腸菌を用いたアロプロテインの製造方法を実証した。
先ず、以下のようにして変異TyrRS遺伝子及びサプレッサーtRNATyr遺伝子を準備した。
変異TyrRS
大腸菌TyrRS遺伝子を、大腸菌染色体から単離してクローニングする。このクローニングされた遺伝子に、チロシン→バリン(37位)、アスパラギン→システイン(195位)というアミノ酸置換を施すことで、3−ヨード−L−チロシンに対する特異性がチロシンに対する特異性に比べて高められた変異TyrRS遺伝子を作製した。大腸菌染色体の調製、染色体から遺伝子増幅法(PCR法)によって望みの遺伝子を単離すること、そして、単離された遺伝子を適当なベクターにクローニングすることは、公知の遺伝子操作技術によって容易に行うことができる。変異TyrRS遺伝子の発現のためには、TyrRS遺伝子本来のプロモータをTyrRS構造遺伝子とともに単離・クローニングすればよい。ベクターとしては、具体的にはプラスミドpBR322に由来するベクターが使用できる。
サプレッサーtRNA Tyr
tRNAのように小さなサイズのRNAの遺伝子は、全長を化学的な方法によって製造することができる。サプレッサーtRNATyr遺伝子の塩基配列は、GGTGGGGTTCCCGAGCGGCCAAAGGGAGCAGACTCTAAATCTGCCGTCATCGACTTCGAAGGTTCGAATCCTTCCCCCACCACCAである。この遺伝子の前に、lpp遺伝子由来の転写プロモータを大腸菌染色体から単離して連結し、遺伝子の後ろには、化学合成法によって製造したrrnC遺伝子由来の転写終結配列を連結した。連結後の全長の塩基配列は、GCATGCGGCGCCGCTTCTTTGAGCGAACGATCAAAAATAAGTGGCGCCCCATCAAAAAAATATTCTCAACATAAAAAACTTTGTGTAATACTTGTAACGCTGCCATCAGACGCATTGGTGGGGTTCCCGAGCGGCCAAAGGGAGCAGACTCTAAATCTGCCGTCATCGACTTCGAAGGTTCGAATCCTTCCCCCACCACCATTTATCACAGATTGGAAATTTTTGATCCTTAGCGAAAGCTAAGGATTTTTTTTAGTCGACである。この塩基配列を変異TyrRS遺伝子とともにpBR322由来のベクターにクローニングした。
プラスミドpEcIYRS
上述の作製した変異TyrRS遺伝子及びサプレッサーtRNATyr遺伝子を有するプラスミドをpEcIYRSと名づける。このプラスミドを導入した大腸菌において、変異TyrRS遺伝子はそれ自身の転写プロモータから、サプレッサーtRNAはlppプロモータから恒常的に発現する。
「対応する真核生物タイプaaRS」及び「対応する真核生物タイプtRNA」発現プラスミドの構築
本実施例では、「対応する真核生物タイプaaRS」及び「対応する真核生物タイプtRNA」として古細菌Methanococcus jannaschiiのTyrRS及びチロシンtRNAを宿主細胞内で発現させることとした。これらMethanococcus jannaschii由来TyrRS遺伝子及びチロシンtRNA遺伝子を発現するプラスミドpTK3は以下のように構築した。なお、プラスミドpTK3の全塩基配列を配列番号1に示す。なお、古細菌Methanococcus jannaschiiのTyrRS遺伝子は、配列番号1における3284〜4204番目の塩基配列からなる。古細菌Methanococcus jannaschiiのTyrRSのアミノ酸配列を配列番号2に示す。また、古細菌Methanococcus jannaschiiのチロシンtRNA遺伝子は、配列番号1における4410〜4334番目の塩基配列からなる。さらに、プラスミドpTK3に含まれるカナマイシン耐性遺伝子は、配列番号1における4847〜5662番目の塩基配列からなる。カナマイシン耐性遺伝子によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号3に示す。
プラスミドpTK3の構築の概要は次の通りである。大腸菌染色体からTrpRS遺伝子のプロモータ領域をPCR法によって単離してpACYC184ベクターにクローニングした。このプラスミドをpPTRPとする。Methanococcus jannaschiiのTyrRS遺伝子は、同菌の染色体からPCR法によって単離し、プラスミドpPTRP上のTrpRSプロモータ部位の直後にクローニングし、プラスミドpMjYSを作製した。大腸菌染色体の調製、染色体から遺伝子増幅法(PCR法)によって望みの遺伝子を単離すること、そして、単離された遺伝子を適当なプラスミド上にクローニングすることは、公知の遺伝子操作技術によって容易に行うことができる。Methanococcus jannaschiiのチロシンtRNA遺伝子は、全長を化学的な方法によって製造をおこなった。この遺伝子の前に、lpp遺伝子由来の転写プロモータを大腸菌染色体から単離して連結し、遺伝子の後ろには、化学合成法によって製造したrrnC遺伝子由来の転写終結配列を連結した後、プラスミドpMjYS上にクローニングしてプラスミドpMjYRSを作製した。カナマイシン耐性遺伝子は、市販されているプラスミドpHSG299(宝酒造社)上にクローニングされている同遺伝子をPCR法によってとりだしてプラスミドpMjYRSにクローニングして、プラスミドpTK3を作製した。
以上のようにして得られたプラスミドpTK3を用いて、大腸菌TOP10株を形質転換した。エレクトロポレーション法を用いた形質転換に適した処理を施されたTOP10株が市販されている(インビトロジェン社)ので、これを使用した。
「対応する原核生物由来aaRS」及び「対応する原核生物由来tRNA」のノックアウト
本実施例では、宿主細胞の大腸菌TOP10株における、チロシルtRNA合成酵素遺伝子(tyrS遺伝子)及びチロシンtRNA遺伝子(tyrT遺伝子及びtyrU遺伝子)をノックアウトした。
本実施例では、Gene Bridges社製のQuick and easy BAC modification キット(以下,QBMキット)を使用して、プラスミドpTK3によって形質転換されたTOP10株において、tyrS遺伝子、tyrT遺伝子及びtyrU遺伝子をノックアウトした。なお、各遺伝子をノックアウトする順番は実施例に示す順に限定されるものではなく、各遺伝子が最終的にノックアウトされていれば良い。QBMキットは、人工バクテリア染色体(BAC)を操作するためのものだが、大腸菌染色体上の遺伝子をノックアウトする目的でも用いることができる。実験操作はキットに添付の説明書に準じた。すなわち、染色体上から除去したい遺伝子x(tyrS遺伝子、tyrT遺伝子又はtyrU遺伝子)に、染色体上で隣接する2つの塩基配列(いずれも50塩基程度)をそれぞれ配列x−L、x−Rとする。x−L、x−Rを持つ一対のプライマーを用いてマーカーとなる遺伝子をPCRで増幅すると,マーカー遺伝子の両側にx−L及びx−Rが連結したDNAが得られる.このDNAを、QBMキットを用いて染色体上にノックインすると、遺伝子xがマーカー遺伝子に置換した大腸菌を得ことができる。
染色体上にノックインされたマーカー遺伝子を除去する場合を考慮すると、マーカー遺伝子としては、アンピシリン耐性遺伝子やカナマイシン耐性遺伝子ではなく,クロラムフェニコール耐性遺伝子(CAT遺伝子)を用いるのが望ましい。本実施例ではマーカー遺伝子としてCAT遺伝子を使用した。
(1)tyrS遺伝子のノックアウト
tyrS遺伝子をノックアウトするため、上記x−LとしてtyrS−L及び上記x−RとしてtyrS−Rを決定した。
tyrS−L:ATGCGTGGAAGATTGATCGTCTTGCACCCTGAAAAGATGCAAAAATCTTG(配列番号4)
tyrS−R:ACAGGGAACATGATGAAAAATATTCTCGCTATCCAGTCTCACGTTGTTTA(配列番号5)
tyrS−Lを有するプライマーとしてtyrSL−CmF、tyrS−Rを有するプライマーとしてtyrSR−CmR1を設計し、化学合成によってこれらプライマーを作製した。
tyrSL−CmF(70塩基):
ATGCGTGGAAGATTGATCGTCTTGCACCCTGAAAAGATGCAAAAATCTTGACCCGACGCACTTTGCGCCG(配列番号6)
tyrSR−CmR1(71塩基):
TAAACAACGTGAGACTGGATAGCGAGAATATTTTTCATCATGTTCCCTGTTTACGCCCCGCCCTGCCACTC(配列番号7)
これらtyrSL−CmF及びtyrSR−CmR1を用い、鋳型としてベクターpACYC184を用いたPCRを行うことによって、両端にtyrS−L及びtyrS−Rを連結したCAT遺伝子を含むDNA断片を増幅した。ここで、CAT遺伝子の塩基配列を配列番号16に示す。本例においてCAT遺伝子は、転写プロモータ配列とシャイン−ダルガルノ配列(SD配列)を含み、転写終結配列は含まないものとした。転写プロモータとSD配列によって、CAT遺伝子自身の発現が可能となる。tyrS遺伝子の下流に存在するpdxY遺伝子の転写プロモータはtyrS遺伝子の内部に存在するため、tyrS遺伝子をノックアウトすることによってpdxY遺伝子の発現が消失してしまう。したがって、導入するCAT遺伝子に転写終結配列を含ませないことによって、pdxY遺伝子の発現とCAT遺伝子の発現とを共役させることができる。
次に、このようにして増幅されたDNA断片を、QBMキットを用いて大腸菌TOP10株の染色体にノックインした。染色体上にノックインされたCAT遺伝子は、その両端にtyrS−L及びtyrS−Rを有することとなる。したがって、tyrS−L及びtyrS−Rを直接連結したDNA断片を、QBMキットを用いて染色体上にノックインすることによってCAT遺伝子を染色体から除去することができる。すなわち、tyrS−L及びtyrS−Rを直接連結したDNA断片が染色体に正確にノックインされると、大腸菌TOP10株はクロラムフェニコール(Cm)感受性になる。
QBMキットを用いても正しくノックインされる効率は10000分の1以下であるので、以下の手順に従ってCm感受性大腸菌を選び出した。先ず、増幅されたDNA断片を導入する処理を行った後、1〜10万個の大腸菌を液性LB培地で培養する。次に、培養によって10万〜100万個/mLになったところで10μg/mL濃度のCmを培地に添加し、培養を続ける。30分後、200μg/mL濃度のアンピシリンを培地に加え、大腸菌が溶解するまで30分〜1時間程度培養を続ける。次に、溶解した培養液を遠心にかけ、沈殿してきた大腸菌をLBプレートに播いて一晩培養する。得られたコロニーを100〜200個選んで、レプリカ法によってCm感受性菌を選択する。
以上の処理を行うことによって、大腸菌TOP10株の染色体からtyrS遺伝子がノックアウトされることとなる。
(2)tyrT遺伝子のノックアウト
上記「(1)tyrS遺伝子のノックアウト」と同様にして、大腸菌TOP10株におけるチロシンtRNA遺伝子の1つであるtyrT遺伝子をノックアウトした。このとき、上記x−LとしてtyrT−L及び上記x−RとしてtyrT−Rを決定した。
tyrT−L:AAAATAACTGGTTACCTTTAATCCGTTACGGATGAAAATTACGCAACCAG(配列番号8)
tyrT−R:AGTCCCTGAACTTCCCAACGAATCCGCAATTAAATATTCTGCCCATGCGG(配列番号9)
また、ベクターpACYC184上のCAT遺伝子を鋳型としたPCRに使用する一対のプライマーとしてtyrTL−CmF及びtyrTR−CmR1を設計し、化学合成した。
tyrTL−CmF(70塩基):
AAAATAACTGGTTACCTTTAATCCGTTACGGATGAAAATTACGCAACCAGACCCGACGCACTTTGCGCCG(配列番号10)
tyrTR−CmR1(71塩基):
CCGCATGGGCAGAATATTTAATTGCGGATTCGTTGGGAAGTTCAGGGACTTTACGCCCCGCCCTGCCACTC(配列番号11)
本例においてもPCRによって増幅されたDNA断片に含まれるCAT遺伝子は、転写プロモータ配列とシャイン−ダルガルノ配列(SD配列)を含み、転写終結配列は含まないものとした。tyrT遺伝子の下流に存在するtpr遺伝子の発現とCAT遺伝子の発現とを共役させることができる。また、増幅されたDNA断片を、QBMキットを用いて大腸菌TOP10株の染色体にノックインした後、同様にCAT遺伝子を除去することによってtyrT遺伝子をノックアウトすることができた。
(3)tyrU遺伝子のノックアウト
上記「(1)tyrS遺伝子のノックアウト」と同様にして、大腸菌TOP10株におけるチロシンtRNA遺伝子の1つであるtyrU遺伝子をノックアウトした。このとき、上記x−LとしてtyrU−L及び上記x−RとしてtyrU−Rを決定した。
tyrU−L:GTAATCAGTAGGTCACCAGTTCGATTCCGGTAGTCGGCACCATCAAGTCC(配列番号12)
tyrU−R:GGCCACGCGATGGCGTAGCCCGAGACGATAAGTTCGCTTACCGGCTCGAA(配列番号13)
また、ベクターpACYC184上のCAT遺伝子を鋳型としたPCRに使用する一対のプライマーとしてtyrUL−CmF及びtyrUR−CmR1を設計し、化学合成した。
tyrUL−CmF1(72塩基):
GTAATCAGTAGGTCACCAGTTCGATTCCGGTAGTCGGCACCATCAAGTCCGATTTTCAGGAGCTAAGGAAGC(配列番号14)
tyrUR−CmR1(71塩基):
TTCGAGCCGGTAAGCGAACTTATCGTCTCGGGCTACGCCATCGCGTGGCCTTACGCCCCGCCCTGCCACTC(配列番号15)
本例においては、PCRによって増幅されたDNA断片に含まれるCAT遺伝子は、SD配列を含み、転写プロモータ配列と転写終結配列は含まないものとした。tyrU遺伝子は上流のthrU遺伝子と下流のglyT遺伝子の両方に転写共役しており、CAT遺伝子の上流に転写プロモータは必要なく、翻訳のためのSD配列があればCAT遺伝子自身の発現が可能となる。また、導入するCAT遺伝子に転写終結配列を含ませないことによって、glyT遺伝子の発現とCAT遺伝子の発現とを共役させることができる。また、増幅されたDNA断片を、QBMキットを用いて大腸菌TOP10株の染色体にノックインした後、同様にCAT遺伝子を除去することによって、tyrU遺伝子をノックアウトすることができた。
なお、tyrS遺伝子及びtyrT遺伝子をノックアウトする際に使用した、転写プロモータ配列及びSD配列を含み、転写終結配列は含まないCAT遺伝子の塩基配列を配列番号16に示した。また、tyrU遺伝子をノックアウトする際に使用した、SD配列を含み、転写プロモータ配列も転写終結配列も含まないCAT遺伝子の塩基配列を配列番号17に示した。
アロプロテインの製造
プラスミドpTK3を導入した後、以上のようにしてtyrS、tyrT及びtyrU遺伝子をノックアウトして得られた大腸菌TOP10株(以下、「TOP10*」または「TOP10[ΔtyrT,ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株」)は、この株で発現するすべての遺伝子のチロシンをコードする位置に、古細菌Methanococcus jannaschiiのTyrRS及びチロシンtRNAによりチロシンを組み込むこととなる。そこで、3−ヨード−L−チロシンに対する特異性がチロシンに対する特異性に比べて高められた変異TyrRSとサプレッサーチロシンtRNAを発現するプラスミドpEcIYRSをTOP10*株に導入すれば、サプレッサーtRNATyrにおけるアンチコドンに対合するアンバーコドンの位置に3−ヨードチロシンを組み込んだアロプロテインを合成することとなる。導入された目的タンパク質をコードする遺伝子におけるチロシンをコードするコドンの位置にも、他の遺伝子と同様に古細菌Methanococcus jannaschiiのTyrRS及びチロシンtRNAによりチロシンが組み込まれる。
このとき、原核生物由来のaaRS*である変異TyrRSはMethanococcus jannaschii由来のtRNAをアミノアシル化することがなく、また、Methanococcus jannaschiiのTyrRSはサプレッサーtRNATyrをアミノアシル化することがない。したがって、プラスミドpEcIYRSが導入された大腸菌TOP10株によれば、所望の位置のみに非天然型アミノ酸である3−ヨードチロシンを組み込んだアロプロテインを合成することができる。これは、以下のような実験によって確認することができる。
この実験のために、アンバーコドンをコード配列中に導入したグルタチオンS−トランスフェラーゼ(以下、GST)のアンバー変異遺伝子(配列番号18)を用いる。このGSTアンバー変異遺伝子では、N末端から25番目のコドンがアンバーコドンに置換されている。GSTタンパク質をトリプシン処理して得られるペプチドで、この部位を含むペプチドは質量分析によって容易に検出することができるため、この位置のアミノ酸がヨードチロシンであるかどうかの判定が可能である。GSTアンバー変異遺伝子は、適当な発現プロモータと連結させて、pEcIYRS上にクローニングすることで、大腸菌内で発現させることができる。適当なプロモータとは、例えば、lacZ−UV5プロモータである。GSTアンバー変異遺伝子をクローニングしたプラスミドpEcIYRSを、プラスミドpEcIYRS−GST(Am)とする。
TOP10*株に、プラスミドpEcIYRS−GST(Am)を導入する方法は次の通りである。液性LB培地1.5mLにTOP10*を植菌して培養し、100万個/mL程度の濃度まで菌が増殖したところで培養液を回収し、4度で11000rpmで30秒間遠心して菌体を沈殿させる。上澄みを捨てたのち、氷冷した滅菌水1mLに沈殿を懸濁する。再び4度、11000rpmで30秒間遠心して菌体を沈殿させ、上澄みを捨てたのち、再度、氷冷した滅菌水1mLに懸濁する。最後に、4度で11000rpm、30秒間遠心して菌体を沈殿させ、20−30μLの滅菌水に懸濁する。これで、エレクトロポレーション法に適したTOP10*が調製できた。同法によって、同菌株にプラスミドpEcIYRS−GST(Am)を導入し、TOP10*[pEcIYRS−GST(Am)]を作製する。
3−L−ヨードチロシンを25番目の位置に導入したGSTを作製するためには、TOP10*[pEcIYRS−GST(Am)]を、0.1mg/mLの3−L−ヨードチロシン、および0.1mg/mLのアンピシリンを含む液性LB培地で培養する。GST(Am)遺伝子の発現を誘導するために、最終濃度で1mMになるようにイソプロピル1−チオ−β−D−ガラクトシド(IPTG)を培地に添加する。IPTG添加後数時間で菌を回収し、公知の方法によって大腸菌抽出液を調製したのち、GSTアフィニティーカラム(アマシャム社)を用いてGSTを精製する。得られたGSTを、質量分析法によって解析することで所定の25位にヨードチロシンが導入されていること、および、他のチロシン・コドンはチロシンに翻訳されていることが確認できる。
実験方法及び結果−1
上述した説明に準じて、大腸菌由来の変異TyrRS遺伝子及びサプレッサーtRNATyr遺伝子を用いたアロプロテインの製造に、宿主細胞として使用できる置換型大腸菌を作製した。
具体的には、上述した方法により、先ず、Methanococcus jannaschii由来TyrRS遺伝子及びチロシンtRNA遺伝子を発現するプラスミドpTK3を大腸菌TOP10株に形質転換した。その後、上述した方法により、pTK3を有する大腸菌TOP10株(TOP10[pTK3]株)におけるtyrS遺伝子をノックアウトした変異株(TOP10[ΔtyrS,pTK3]株)を作製した。その後、上述した方法により、変異株(TOP10[ΔtyrS,pTK3]株)におけるtyrU遺伝子をノックアウトした変異株(TOP10[ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株)を作製した。
得られたTOP10[ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株において、tyrS遺伝子がノックアウトされていることを、アンバー・サプレッション実験によって検証した。この検証実験のためにプラスミド2541supFを作製した。プラスミド2541supFには、アンバー変異型のクロラムフェニコール耐性遺伝子と、大腸菌チロシンtRNA由来のアンバーサプレッサーtRNA遺伝子がクローニングされている。プラスミド2541supFの全長塩基配列を配列番号19に示した。
プラスミド2541supFを導入した大腸菌において、大腸菌TyrRS(tyrS遺伝子産物)が発現していれば、プラスミド2541supFに存在するサプレッサーtRNAが働くのでアンバー変異が抑制されることなり、クロラムフェニコール耐性が発現する。一方、プラスミド2541supFを導入した大腸菌において、大腸菌TyrRS(tyrS遺伝子産物)がノックアウトされていれば、クロラムフェニコール耐性が発現しないと予想される。なお、プラスミド2541supFに存在するサプレッサーtRNAは、古細菌由来TyrRSからは認識されないので、プラスミド2541supFを導入した大腸菌において古細菌由来TyrRSが発現していたとしてもクロラムフェニコール耐性は発現しない。
TOP10[ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株及び野生株であるTOP10株をそれぞれプラスミド2541supFで形質転換した後、クロラムフェニコール含有培地で培養した結果を図1に示す。図1に示すように、プラスミド2541supFで形質転換したTOP10株(WTと表示)は、クロラムフェニコール(Cm)含有の培地上で生育することができた。一方、TOP10[ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株(tyrS KOと表示)は、Cm培地上で生育することができなかった。この結果から、TOP10[ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株には大腸菌TyrRSが発現していないことが確認できた。
実験方法及び結果−2
大腸菌に内在するTyrRSが完全にノックアウトされていることが確認されたTOP10[ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株におけるtyrT遺伝子のノックアウトを上述した方法により行い、変異株(TOP10[ΔtyrT,ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株)を構築した。
作製された変異株において、大腸菌に内在するチロシンtRNAが全てノックアウトされていることを検証した。検証実験は、以下のようにして行った。
すなわち、先ず、TOP10[ΔtyrT,ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株において、大腸菌TyrRS変異体を発現させた。この変異体としては、文献(Kiga,Dら,2002年,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99,9715−9723.)に記載されているものを使用した。この大腸菌TyrRS変異体は、3−ヨードチロシン(又は3−ブロモチロシン)を認識して大腸菌チロシンtRNAに結合させる機能を有している。したがって、ブロモチロシンを含む培地にこの変異体を発現させた大腸菌を植菌すると、この大腸菌内ではチロシンのかわりにブロモチロシンがあらゆるタンパク質に取り込まれる。このため、大腸菌TyrRS変異体が機能し、且つ大腸菌チロシンtRNAが存在する場合には、あらゆるタンパク質が機能しなくなり、大腸菌が生育することができない。これに対して、大腸菌TyrRS変異体が機能するが大腸菌内に大腸菌チロシンtRNAが存在しない場合には、大腸菌TyrRS変異体が機能したとしても、ブロモチロシン含有培地上でも大腸菌が生育することができる。
TOP10[ΔtyrT,ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株及びTOP10[ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株にそれぞれ大腸菌TyrRS変異体を導入した株をブロモチロシン含有培地及びブロモチロシン非含有培地において生育したときの増殖曲線を図2に示す。
図2において、TOP10[ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株に大腸菌TyrRS変異体を導入した株を「ΔtyrS」と表記し、TOP10[ΔtyrT,ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株に大腸菌TyrRS変異体を導入した株を「tyr−Mj」と表記した。なお、図2において、横軸は、培養時間を示している。
図2から判るように、TOP10[ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株に大腸菌TyrRS変異体を導入した株においては、ブロモチロシンを添加すると増殖速度が低下し始め、2時間後に増殖が停止していた。これは、TOP10[ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株に大腸菌TyrRS変異体を導入した株は、tyrT遺伝子が存在するので大腸菌TyrRS変異体が機能するためである。一方、図2から判るように、TOP10[ΔtyrT,ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株に大腸菌TyrRS変異体を導入した株においては、ブロモチロシンの添加が増殖に影響しなかった。これは、TOP10[ΔtyrT,ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株に大腸菌TyrRS変異体を導入した株は、大腸菌チロシンtRNAが全てノックアウトされており、大腸菌TyrRS変異体が機能しなかったことを意味する。
実験方法及び結果−3
次に、作製されたTOP10[ΔtyrT,ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株において、tyrT遺伝子、tyrU遺伝子及びtyrS遺伝子が全てゲノム上から除去されているか否かを確認した。具体的には、TOP10[ΔtyrT,ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株から染色体DNAを抽出し、染色体DNAを鋳型としたPCRによって確認した。
染色体DNAは、市販のキットGenとるくんTM(酵母用)(タカラバイオ株式会社)を用いて抽出した。tyrT遺伝子、tyrU遺伝子及びtyrS遺伝子の各遺伝子について以下の塩基配列からなる一対のプライマーを設計して化学合成によって作製した。
tyrT遺伝子増幅用
・GCAGGACGTTATTCATGTCG(配列番号20)
・GGGACTTTTGAAAGTGATGG(配列番号21)
tyrU遺伝子増幅用
・GTAATCAGTAGGTCACCAGT(配列番号22)
・TTCGAGCCGGTAAGCGAACT(配列番号23)
tyrS遺伝子増幅用
・AAAAGTCGTGTACCGGCAAAG(配列番号24)
・TAAACAACGTGAGACTGGATAG(配列番号25)
すなわち、tyrT遺伝子増幅用プライマーはtyrT遺伝子及びtyrV遺伝子の前後の配列に設定し、tyrU遺伝子増幅用プライマーはtyrU遺伝子の前後の配列に設定し、tyrS遺伝子増幅用プライマーはtyrS遺伝子の前後の配列に設定した。
TOP10[ΔtyrT,ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株及び野生株であるTOP10株について、それぞれ染色体DNAを抽出してPCRを行い、PCR増幅断片を電気泳動によって確認した結果を図3に示す。図3において、TOP10株を用いたときの結果を「WT」と表記し、TOP10[ΔtyrT,ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株を用いたときの結果を「ΔtyrU」、「ΔtyrS」及び「ΔtyrT」と表記した。また、図3において、TOP10株の染色体DNAを鋳型として用いてtyrT遺伝子、tyrU遺伝子及びtyrS遺伝子を増幅したときに現れる増幅断片の位置を三角印で指示した。
図3から判るように、TOP10[ΔtyrT,ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株の染色体DNAを用いた場合には、TOP10株の染色体DNAを用いたときに増幅した各断片と比較して、増幅される断片の長さがより短くなっていた。この結果から、TOP10[ΔtyrT,ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株においては、tyrT遺伝子、tyrU遺伝子及びtyrS遺伝子が全てゲノム上から除去されていることが実証された。
以上のことから、TOP10[ΔtyrT,ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株においては、内在していたTyrRSとチロシンtRNAは全てノックアウトされ、代わりに古細菌TyrRSとチロシンtRNAによってチロシン・コドンの翻訳を行って生きていることが示された。このTOP10[ΔtyrT,ΔtyrU,ΔtyrS,pTK3]株は、大腸菌由来の変異TyrRS遺伝子及びサプレッサーtRNATyr遺伝子を用いたアロプロテインの製造に使用することができる。
本発明に係る非天然型アミノ酸を組み込んだタンパク質の製造方法によれば、原核生物由来のアミノアシルtRNA合成酵素変異体を用いるとともに原核細胞を宿主細胞として用いて、所望の位置に非天然型アミノ酸を組み込んだタンパク質を製造することができる。また、この原核生物由来のアミノアシルtRNA合成酵素変異体は、真核生物タイプの細胞を宿主とする非天然型アミノ酸を組み込んだタンパク質の製造方法にも使用することができる。このように、本発明によれば、原核細胞由来のアミノアシルtRNA合成酵素変異体を、原核細胞及び真核生物タイプの細胞のいずれを宿主細胞とする系にも使用することができる。
また、非天然型アミノ酸を組み込んだタンパク質の製造方法によれば、真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素変異体を用いるとともに真核生物タイプの細胞を宿主細胞として用いて、所望の位置に非天然型アミノ酸を組み込んだタンパク質を製造することができる。また、この真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素変異体は、原核細胞を宿主とする非天然型アミノ酸を組み込んだタンパク質の製造方法にも使用することができる。このように、本発明によれば、真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素変異体を、原核細胞及び真核生物タイプの細胞のいずれを宿主細胞とする系にも使用することができる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
[配列表]
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Claims (29)

  1. 所定の天然型アミノ酸に対する特異性に比べて、当該天然型アミノ酸に類似する非天然型アミノ酸に対する特異性が高められた原核生物由来アミノアシルtRNA合成酵素変異体をコードする遺伝子と、当該原核生物由来アミノアシルtRNA合成酵素変異体の存在下で当該非天然型アミノ酸と結合可能な非天然型アミノ酸用tRNA遺伝子とを、
    上記所定の天然型アミノ酸に対する特異性を有する真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素をコードする遺伝子と、当該真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素の存在下で当該天然型アミノ酸と結合可能なtRNA遺伝子とを発現する原核細胞に導入する工程と、
    上記原核細胞に本来的に存在する、上記天然型アミノ酸に対する特異性を有する内在のアミノアシルtRNA合成酵素をコードする遺伝子と、当該内在のアミノアシルtRNA合成酵素の存在下で当該天然型アミノ酸と結合可能な内在のtRNA遺伝子とをノックアウトする工程と、
    上記非天然型アミノ酸用tRNA遺伝子のアンチコドンに対合するコドンを有する目的遺伝子によりコードされる目的タンパク質を、上記原核細胞中で発現させる工程とを備え、
    上記アンチコドンに対合するコドンの位置に上記非天然型アミノ酸を取り込ませることを特徴とする、非天然型アミノ酸を組み込んだタンパク質の製造方法。
  2. 上記原核生物由来アミノアシルtRNA合成酵素変異体は、大腸菌由来のチロシルtRNA合成酵素変異体であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 上記非天然型アミノ酸は、チロシン誘導体であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  4. 上記非天然型アミノ酸用tRNA遺伝子は、大腸菌由来のサプレッサーチロシンtRNA遺伝子であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  5. 上記真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素は、メタノコッカス・ジャナシー(Methanococcus jannaschii)由来のチロシルtRNA合成酵素であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  6. 上記メタノコッカス・ジャナシー(Methanococcus jannaschii)由来のチロシルtRNA合成酵素は、以下の(a)、(b)及び(c)からなる群から選ばれるいずれか一のタンパク質からなることを特徴とする請求項5記載の製造方法。
    (a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
    (b)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、チロシンを活性化するとともにチロシルtRNAを合成する活性を有するタンパク質
    (c)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされ、チロシンを活性化するとともにチロシルtRNAを合成する活性を有するタンパク質
  7. 上記真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素の存在下で当該天然型アミノ酸と結合可能なtRNA遺伝子は、メタノコッカス・ジャナシー(Methanococcus jannaschii)由来のチロシンtRNA遺伝子であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  8. 上記メタノコッカス・ジャナシー(Methanococcus jannaschii)由来のチロシンtRNAは、配列番号1における4334〜4410番目に示す塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドからなることを特徴とする請求項7記載の製造方法。
  9. 上記原核細胞は大腸菌であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
  10. 所定の天然型アミノ酸に対する特異性を有する真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素をコードする遺伝子と、当該真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素の存在下で当該天然型アミノ酸と結合可能なtRNA遺伝子とが導入され、
    原核細胞に本来的に存在する、上記天然型アミノ酸に対する特異性を有する内在のアミノアシルtRNA合成酵素をコードする遺伝子と、当該内在のアミノアシルtRNA合成酵素の存在下で当該天然型アミノ酸と結合可能な内在のtRNA遺伝子とがノックアウトされた、原核細胞。
  11. 上記真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素は、メタノコッカス・ジャナシー(Methanococcus jannaschii)由来のチロシルtRNA合成酵素であることを特徴とする請求項10記載の原核細胞。
  12. 上記メタノコッカス・ジャナシー(Methanococcus jannaschii)由来のチロシルtRNA合成酵素は、以下の(a)、(b)及び(c)からなる群から選ばれるいずれか一のタンパク質からなることを特徴とする請求項11記載の原核細胞。
    (a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
    (b)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、チロシンを活性化するとともにチロシルtRNAを合成する活性を有するタンパク質
    (c)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされ、チロシンを活性化するとともにチロシルtRNAを合成する活性を有するタンパク質
  13. 上記真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素の存在下で当該天然型アミノ酸と結合可能なtRNA遺伝子は、メタノコッカス・ジャナシー(Methanococcus jannaschii)由来のチロシンtRNA遺伝子であることを特徴とする請求項10記載の原核細胞。
  14. 上記メタノコッカス・ジャナシー(Methanococcus jannaschii)由来のチロシンtRNAは、配列番号1における4334〜4410番目に示す塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドからなることを特徴とする請求項13記載の原核細胞。
  15. 上記原核細胞は大腸菌であることを特徴とする請求項10〜14のいずれか一項に記載の原核細胞。
  16. 請求項10〜15のいずれか一項に記載の原核細胞の抽出液。
  17. 所定の天然型アミノ酸に対する特異性に比べて、当該天然型アミノ酸に類似する非天然型アミノ酸に対する特異性が高められた真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素変異体をコードする遺伝子と、当該真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素変異体の存在下で当該非天然型アミノ酸と結合可能な非天然型アミノ酸用tRNA遺伝子とを、
    上記所定の天然型アミノ酸に対する特異性を有する原核生物由来アミノアシルtRNA合成酵素をコードする遺伝子と、当該原核生物由来アミノアシルtRNA合成酵素の存在下で当該天然型アミノ酸と結合可能なtRNA遺伝子とを発現する真核生物タイプの細胞に導入する工程と、
    上記真核生物タイプの細胞に本来的に存在する、上記天然型アミノ酸に対する特異性を有する内在のアミノアシルtRNA合成酵素をコードする遺伝子と、当該内在のアミノアシルtRNA合成酵素の存在下で当該天然型アミノ酸と結合可能な内在のtRNA遺伝子とをノックアウトする工程と、
    上記非天然型アミノ酸用tRNA遺伝子のアンチコドンに対合するコドンを有する目的遺伝子によりコードされる目的タンパク質を、上記真核生物タイプの細胞中で発現させる工程とを備え、
    上記アンチコドンに対合するコドンの位置に上記非天然型アミノ酸を取り込ませることを特徴とする、非天然型アミノ酸を組み込んだタンパク質の製造方法。
  18. 上記真核生物タイプの細胞は酵母であることを特徴とする請求項17記載の製造方法。
  19. 所定の天然型アミノ酸に対する特異性を有する原核生物由来アミノアシルtRNA合成酵素をコードする遺伝子と、当該原核生物由来アミノアシルtRNA合成酵素の存在下で当該天然型アミノ酸と結合可能なtRNA遺伝子とが導入され、
    真核生物タイプの細胞に本来的に存在する、上記天然型アミノ酸に対する特異性を有する内在のアミノアシルtRNA合成酵素をコードする遺伝子と、当該内在のアミノアシルtRNA合成酵素の存在下で当該天然型アミノ酸と結合可能な内在のtRNA遺伝子とがノックアウトされた、真核生物タイプの細胞。
  20. 上記真核生物タイプの細胞は酵母であることを特徴とする請求項19記載の真核生物タイプの細胞。
  21. 請求項19または20記載の真核生物タイプの細胞の抽出液。
  22. 所定の天然型アミノ酸に対する特異性に比べて、当該天然型アミノ酸に類似する非天然型アミノ酸に対する特異性が高められた原核生物由来アミノアシルtRNA合成酵素変異体と、
    上記原核生物由来アミノアシルtRNA合成酵素変異体の存在下で上記非天然型アミノ酸と結合可能な非天然型アミノ酸用tRNAと、
    上記非天然型アミノ酸を含むアミノ酸溶液と、
    上記所定の天然型アミノ酸に対する特異性を有する真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素をコードする遺伝子と、当該真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素の存在下で当該天然型アミノ酸と結合可能なtRNA遺伝子とが導入されるとともに、原核細胞に本来的に存在する、上記天然型アミノ酸に対する特異性を有する内在のアミノアシルtRNA合成酵素をコードする遺伝子と、当該内在のアミノアシルtRNA合成酵素の存在下で当該天然型アミノ酸と結合可能な内在のtRNA遺伝子とがノックアウトされた原核細胞の抽出液と、
    を含む無細胞タンパク質合成系試薬キット。
  23. 上記真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素は、メタノコッカス・ジャナシー(Methanococcus jannaschii)由来のチロシルtRNA合成酵素であることを特徴とする請求項22記載の試薬キット。
  24. 上記メタノコッカス・ジャナシー(Methanococcus jannaschii)由来のチロシルtRNA合成酵素は、以下の(a)、(b)及び(c)からなる群から選ばれるいずれか一のタンパク質からなることを特徴とする請求項23記載の試薬キット。
    (a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質
    (b)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、チロシンを活性化するとともにチロシルtRNAを合成する活性を有するタンパク質
    (c)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされ、チロシンを活性化するとともにチロシルtRNAを合成する活性を有するタンパク質
  25. 上記真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素の存在下で当該天然型アミノ酸と結合可能なtRNAは、メタノコッカス・ジャナシー(Methanococcus jannaschii)由来のチロシンtRNAであることを特徴とする請求項22記載の試薬キット。
  26. 上記メタノコッカス・ジャナシー(Methanococcus jannaschii)由来のチロシンtRNAは、配列番号1における4334〜4410番目に示す塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドであることを特徴とする請求項25記載の試薬キット。
  27. 上記原核細胞は大腸菌であることを特徴とする請求項22〜26のいずれか一項に記載の試薬キット。
  28. 所定の天然型アミノ酸に対する特異性に比べて、当該天然型アミノ酸に類似する非天然型アミノ酸に対する特異性が高められた真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素変異体と、
    上記真核生物タイプのアミノアシルtRNA合成酵素変異体の存在下で当該非天然型アミノ酸と結合可能な非天然型アミノ酸用tRNAと、
    上記非天然型アミノ酸を含むアミノ酸溶液と、
    上記所定の天然型アミノ酸に対する特異性を有する原核生物由来アミノアシルtRNA合成酵素をコードする遺伝子と、当該原核生物由来アミノアシルtRNA合成酵素の存在下で当該天然型アミノ酸と結合可能なtRNA遺伝子とが導入されるとともに、真核生物タイプの細胞に本来的に存在する、上記天然型アミノ酸に対する特異性を有する内在のアミノアシルtRNA合成酵素をコードする遺伝子と、当該内在のアミノアシルtRNA合成酵素の存在下で当該天然型アミノ酸と結合可能な内在のtRNA遺伝子とがノックアウトされた真核生物タイプの細胞の抽出液と、
    を含む無細胞タンパク質合成系試薬キット。
  29. 上記真核生物タイプの細胞は、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞又は哺乳動物細胞であることを特徴とする請求項28記載の試薬キット。
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