JP2011139640A - タンパク質の可逆的デュアルラベリング法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上記課題は、3種のPYペプチド、ePY、P4S、および、P4Wをリガンドとして、これらに結合するタグペプチドを、リボソームディスプレイを用いて単離することによって解決した。
【選択図】なし
Description
(項目1)
配列番号1、配列番号2、および、配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むリガンドに対して特異的に結合する変異タグペプチドをコードするmRNAを、出発タグペプチドをコードする核酸配列から生成する方法であって、以下:
(a)出発タグペプチドをコードする核酸配列に変異を導入して、複数の変異タグペプチドをコードするmRNA集団を生成する工程;
(b)インビトロでの翻訳によって、
(i)変異導入によって生成されたmRNA集団に含まれるmRNA、
(ii)該mRNAによってコードされる候補変異タグペプチド、および
(iii)リボソーム、
の複合体を生成する工程;
(c)リガンドを、(b)の複合体と接触させて、リガンドと該複合体との結合体を生成する工程;
(d)該結合体を固相に固定化する工程:
(e)固相に固定化した該結合体を単離する工程;
(f)固相に固定化した該結合体に含まれるmRNAを単離する工程、
(g)上記(f)によって単離されたmRNAに変異を導入して、複数の変異タグペプチドをコードするmRNA集団を生成する工程;および、
(h)上記工程(b)〜(g)を繰り返した後、上記工程(b)〜(f)を行う工程、
を包含する方法。
(項目2)
配列番号1、配列番号2、および、配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むリガンドに対して特異的に結合する変異タグペプチドをコードするmRNAを、該候補タグペプチドをコードする候補mRNAの集団から単離する方法であって、以下:
(b’)候補タグペプチド、該候補タグペプチドをコードするmRNA,および、リボソームを含む複合体を生成する工程;
(c)リガンドを、(b’)の複合体と接触させて、リガンドと複合体との結合体を生成する工程;
(d)該結合体を固相に固定化する工程:
(e)固相に固定化した該結合体を単離する工程;および、
(f)固相に固定化した該結合体に含まれるmRNAを単離する工程、
を包含する方法。
(項目3)
配列番号1、配列番号2、および、配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むリガンドに対して特異的に結合する変異タグペプチドをコードするmRNAを、出発タグペプチドをコードする核酸配列から生成する方法であって、以下:
(a)出発タグペプチドをコードする核酸配列に変異を導入して、複数の変異タグペプチドをコードするmRNA集団を生成する工程;
(b)インビトロでの翻訳によって、
(i)変異導入によって生成されたmRNA集団に含まれるmRNA、
(ii)該mRNAによってコードされる候補変異タグペプチド、および
(iii)リボソーム、
の複合体を生成する工程;
(c’)固相に固定化したリガンドを、(b)の複合体と接触させて、固相上でリガンドと該複合体との結合体を生成する工程;
(e)固相に固定化した該結合体を単離する工程;
(f)固相に固定化した該結合体に含まれるmRNAを単離する工程、
(g)上記(f)によって単離されたmRNAに変異を導入して、複数の変異タグペプチドをコードするmRNA集団を生成する工程;および、
(h)上記工程(b)〜(g)を繰り返した後、上記工程(b)〜(f)を行う工程、
を包含する方法。
(項目4)
配列番号1、配列番号2、および、配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むリガンドに対して特異的に結合する変異タグペプチドをコードするmRNAを、該候補タグペプチドをコードする候補mRNAの集団から単離する方法であって、以下:
(b’)候補タグペプチド、該候補タグペプチドをコードするmRNA,および、リボソームを含む複合体を生成する工程;
(c’)固相に固定化したリガンドを、(b’)の複合体と接触させて、リガンドと複合体との結合体を生成する工程;
(e)固相に固定化した該結合体を単離する工程;および、
(f)固相に固定化した該結合体に含まれるmRNAを単離する工程、
を包含する方法。
(項目5)
項目1〜4いずれか一項に記載の方法によって単離されたmRNA。
(項目6)
項目5に記載のmRNAであって、配列番号22〜33からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む、mRNA。
(項目7)
以下の式:
[A]−[B]−[C]
または、
[C]−[B]−[A]
からなる可逆的デュアルラベリングが可能なポリペプチドであって、ここで、
Aは、配列番号22〜29からなる群から選択されるアミノ酸からなるペプチドであり、
Bは、任意のアミノ酸配列からなるペプチドであり、
Cは、配列番号30〜33からなる群から選択されるアミノ酸からなるペプチド
である、ポリペプチド。
(項目8)
以下の式:
[A]−[B]−[C]
または、
[C]−[B]−[A]
からなる可逆的デュアルラベリングが可能なポリペプチドをコードする核酸であって、ここで、
Aは、配列番号22〜29からなる群から選択されるアミノ酸からなるペプチドであり、
Bは、任意のアミノ酸配列からなるペプチドであり、
Cは、配列番号30〜33からなる群から選択されるアミノ酸からなるペプチド
である、核酸。
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
本明細書に記載される核酸配列は、DNA配列で記載される場合には、対応するRNA配列も包含される。また、RNA配列で記載される場合には、対応するDNA配列も包含される。
本発明のポリペプチドのアミノ酸の欠失、置換もしくは付加(融合を含む)は、周知技術である部位特異的変異誘発法により実施することができる。かかる1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加は、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38,JohnWiley & Sons(1987−1997)、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci USA,82,488(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,81,5662(1984)、Science,224,1431(1984)、PCT WO85/00817(1985)、Nature,316,601(1985)等に記載の方法に準じて調製することができる。
本明細書におけるペプチド、化学物質、低分子などの因子は、合成化学技術を用いて合成することができる。そのような合成化学技術は、当該分野において周知の技術を用いることができる。そのような周知技術としては、例えば、 Fiesers’ Reagents for OrganicSynthesis (Fieser’s Reagents forOrganic Synthesis) Tse−Lok Ho,John Wiley & Sons Inc (2002)などを参照することができる。
本発明による改善された無細胞蛋白質合成系は、従来の無細胞蛋白質合成系に特定の蛋白質を追加および/または除去することによって調製可能である。従来の無細胞蛋白質合成系の調製法は、以下のとおりである。
増殖期中間のE.coli A19株の細胞300 gをアルミナ摩砕する。摩砕した細胞を緩衝液A(pH 7.6の10mM HEPES-KOH(ヘペス-水酸化カリウム)、10 mMMgCl2(塩 化マグネシウム)、50 mM KCl(塩化カリウム)、1 mM DTT(ジチオトレイトール))に懸濁し、アルミナと細胞破砕物を遠心分離(30,000g、4℃で1時間)して除く。得られる上清画分に終濃度が1 μg/mlになるようにDNase(デオキシリボンクレアーゼ)を加えた後、4℃で4時間遠心(100,000g)する。得られる上清画分をS100とする。また、ペレットは緩衝液Aに懸濁しリボソームの粗抽出液とする。このリボソーム粗抽出液を6から36%の ショ糖密度勾配にかけ強く結合した(tight-coupled)リボソーム画分を得る。このtight-coupledリボソーム画分を100,000g回転で遠心分離し、そのペレットをリボソーム緩衝液(pH 7.6の20 mMHEPES-KOH、6 mM MgOAc、30 mM NH4Cl、7mM β-mercaptoethanol(メルカプトエタノール))に懸濁しtight-coupledリボソームを調製する。
大腸菌A19より抽出したゲノムを鋳型としてEF-Tuの遺伝子をコードする遺伝子配列をPCR法により増幅し、5’端にEcoRI、3’端にBglIIが認識する配列をもったDNA断片を得る。得られるDNA断片をあらかじめEcoRI及びBglIIで切断したプラスミドpQE60(QIAGEN社製)に挿入し、C末端にHistag(ヒスタグ)が融合したEF-Tuを高発現させるためのベクターを得る。得られるベクターでE.coli BL21/pREP4を形質転換する。その他延長因子及び開始因子、終結因子を高発現するベクターも同様の手法で構築する。
大腸菌A19より抽出したゲノムを鋳型としてアラニルtRNAシンテターゼの遺伝子をコードする遺伝子配列をPCR法により増幅し、5’端にSphI、3’端にHindIIIが認識する配列をもったDNA断片を得る。得られるDNA断片をあらかじめSphI及びHindIIIで切断したプラスミドpQE30(QIAGEN社製)に挿入し、N末端にHis tag(ヒスタグ)が融合したアラニルtRNAシンセターゼを高発現させるためのベクターを得る。得られるベクターでE.coliBL21/pREP4を形質転換する。その他のARS及びMTFを高発現するベクターも同様の手法で構築する。表1に使用したベクター、制限酵素、his tag の位置を示す。なお、表1におけるプラスミドのpQEシリーズはE.coliBL21/pREP4の、pETシリーズはE.coli BL21/DE3の形質転換に用いられる。
T7 ファージより抽出したゲノムを鋳型としてT7RNAポリメラーゼの遺伝子をコードする遺伝子配列をPCR法により増幅し、5’端にBamHI、3’端にPstIが認識する配列をもったDNA断片を得る。得られるDNA断片をあらかじめBamHI及びPstIで切断したプラスミドpQE30(QIAGEN 社製)に挿入し、N末端にHistag(ヒスタグ)が融合したT7RNAポリメラーゼを高発現させるためのベクターを得る。得られるベクターでE.coli BL21/pREP4を形質転換する。
大腸菌A19より抽出したゲノムを鋳型としてNDKの遺伝子をコードする遺伝子配列をPCR法により増幅し、5’端にBamHI、3’端にHindIIIが認識する配列をもったDNA断片を得る。得られるDNA断片をあらかじめBamHI及びHindIIIで切断したプラスミドpQE30(QIAGEN)に 挿入し、N末端にHistag(ヒスタグ)が融合したNDKを高発現させるためのベクターを得る。得られるベクターでE.coli BL21/pREP4を形質転換する。なお、21頁の(4−1)及び(4−2)で例示した、NDK以外のの酵素類に対するプラスミドも、所望により、同様にして構築することができる。
His tagが付されたEF-Tu(EF-Tu*)を高発現させるために、上記「2:開始因子、延長因子、終結因子の高発現用プラスミドの構築」で得られる形質転換体BL21/pREP4細胞を6リットルのLB培地で細胞懸濁度OD660が0.7になるまで培養する。この培養液に終濃度が0.1 mMになるようにIPTG(イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシド; isopropyl-1-thio-β-D-galactoside)を添加し、さらに37℃で4時間培養する。この培養液を遠心分離し、得られる細胞を懸濁緩衝液(pH 7.6の50 mM HEPES-KOH、1 M NH4Cl、10 mM MgCl2、0.3mg/mlリゾチーム、0.1 % Triton X-100、0.2 mM PMSF (フェニルメタンスルホニルフルオリド;phenylmethanesulfonyl)、6 mM β-mercaptoethanol)に懸濁する。この懸濁液を超音波処理し、細胞を破壊する。超音波処理した懸濁液を4℃で1時間遠心分離(100,000 g)し、細胞破砕物を除く。得られる上清画分をNi2+でプレチャージされた10 mlのHi-Trap chelatingカラム(ファルマシア社製)に供し、10mMのimidazole(イミダゾール)を含む100 mlのHT緩衝液(pH 7.6の50mM HEPES-KOH、1 M NH4Cl、10mM MgCl2)で洗浄する。HT緩衝液に含まれるimidazole濃度を10から400 mMまで直線的に勾配をつけて、EF-Tu*をカラムから溶出する。精製されたEF-Tu*を含む画分を合わせて、Stock緩衝液(pH7.6の50 mM HEPES-KOH、100 mM KCl、10 mM MgCl2、30 % glycerol(グリセロール))で透析する。精製したEF-Tu*の濃度はBio-Rad社のProteinAssay Kitを用いてBSA(ウシ血清アルブミン)を基準に作成した標準曲線から算出する。精製したEF-Tu*は1mlずつ小分けして液体窒素で急冷凍した後−80℃で保存する。その他のHistagが付された延長因子及び開始因子、終結因子も同様の手法で精製を行う。His tagが付された各因子の12%SDS-PAGEによる分離(クマシーブリリアントブルーで染色)を行う。
His tagが付されたSertRNAシンテターゼ(以下において、His tagが付されていることを、「*」で示す)を高発現させるための形質転換体BL21/DE3細胞を2リットルのLB培地で細胞懸濁度OD660が0.7になるまで培養する。この培養液に終濃度が0.1 mMになるようにIPTG(イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシド)を添加し、さらに37℃で4時間培養する。この培養液を遠心分離し、得られる細胞を懸濁緩衝液(pH7.6の50 mM HEPES-KOH、1 M NH4Cl、10 mM MgCl2、0.3 mg/ml リゾチーム、0.1% Triton X-100、0.2 mM PMSF (フェニルメタンスルホニルフルオリド; phenylmethanesulfonyl)、6 mM β-mercaptoethanol)に懸濁する。この懸濁液を超音波処理し、細胞を破壊する。超音波処理した懸濁液を4℃で1時間遠心分離(100,000 g)し、細胞破砕物を除く。得られる上清画分をNi2+でプレチャージされた10 mlのHi-Trap chelatingカラム(ファルマシア社製)に供し、10mMのimidazole(イミダゾール)を含む100 mlのHT緩衝液(pH 7.6の50 mM HEPES-KOH、1 M NH4Cl、10mM MgCl2)で洗浄する。HT緩衝液に含まれるimidazole濃度を10から400 mMまで直線的に勾配をつけて、Ser tRNAシンセターゼ*をカラムから溶出する。精製されたSertRNAシンセターゼ*を含む画分を合わせて、Stock緩衝液(pH 7.6の50 mMHEPES-KOH、100 mM KCl、10mM MgCl2、30 % glycerol(グリセロール))で透析する。精製したSer tRNAシンセターゼ*の濃度はBio-Rad社のProteinAssay Kitを用いてBSA(ウシ血清アルブミン)を基準に作成した標準曲線から算出する。精製したSer tRNAシンセターゼ*は1mlずつ小分けして液体窒素で急冷凍した後−80℃で保存する。
His−tagが付されたT7RNAポリメラーゼ(以下において、Histagが付されていることを、「*」で示す)を高発現させるための形質転換体BL21/pREP4細胞を6リットルのLB培地で細胞懸濁度OD660が0.7になるまで培養する。この培養液に終濃度が0.1 mMになるようにIPTG(イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシド)を添加し、さらに37℃で4時間培養する。この培養液を遠心分離し、得られる細胞を懸濁緩衝液(pH 7.6の50 mM HEPES-KOH、1M NH4Cl、10mM MgCl2、0.3mg/ml リゾチーム、0.1 % Triton X-100、0.2 mM PMSF (フェニルメタンスルホニルフルオリド;phenylmethanesulfonyl)、6 mM β-mercaptoethanol)に懸濁する。この懸濁液を超音波処理し、細胞を破壊する。超音波処理した懸濁液を4℃で1時間遠心分離(100,000 g)し、細胞破砕物を除く。得られる上清画分をNi2+でプレチャージされた10 mlのHi-Trap chelatingカラム(ファルマシア社製)に供し、10mMのimidazole(イミダゾール)を含む100 mlのHT緩衝液(pH 7.6の50 mM HEPES-KOH、1 M NH4Cl、10mMMgCl2)で洗浄する。HT緩衝液に含まれるimidazole濃度を10から400 mMまで直線的に勾配をつけて、T7RNAポリメラーゼ*をカラムから溶出する。精製されたT7RNAポリメラーゼ*を含む画分を合わせて、Stock緩衝液(pH7.6の50 mM HEPES-KOH、100 mM KCl、10 mM MgCl2、30 % glycerol(グリセロール))で透析する。精製したT7RNAポリメラーゼ*の濃度はBio-Rad社のProteinAssayKitを用いてBSA(ウシ血清アルブミン)を基準に作成した標準曲線から算出する。精製したT7RNAポリメラーゼ*は1mlずつ小分けして液体窒素で急冷凍した後−80℃で保存する。
His tagが付されたNDK(以下において、Histagが付されていることを、「*」で示す)を高発現させるための形質転換体BL21/pREP4細胞を2リットルのLB培地で細胞懸濁度OD660が0.7になるまで培養する。この培養液に終濃度が0.1 mMになるようにIPTG(イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシド; isopropyl-1-thio-β-D-galactoside)を添加し、さらに37℃で4時間培養する。この培養液を遠心分離し、得られる細胞を懸濁緩衝液(pH 7.6の50 mM HEPES-KOH、1 M NH4Cl、10 mM MgCl2、0.3mg/ml リゾチーム、0.1 % Triton X-100、0.2 mM PMSF (フェニルメタンスルホニルフルオリド;phenylmethanesulfonyl)、6 mM β-mercaptoethanol)に懸濁する。この懸濁液を超音波処理し、細胞を破壊する。超音波処理した懸濁液を4℃で1時間遠心分離(100,000 g)し、細胞破砕物を除く。得られる上清画分をNi2+でプレチャージされた10 mlのHi-Trapchelatingカラム(ファルマシア社製)に供し、10mMのimidazole(イミダゾール)を含む100 mlのHT緩衝液(pH 7.6の50 mM HEPES-KOH、1 M NH4Cl、10mM MgCl2)で洗浄する。HT緩衝液に含まれるimidazole濃度を10から400 mMまで直線的に勾配をつけて、NDK*をカラムから溶出する。精製されたNDK*を含む画分を合わせて、Stock緩衝液(pH7.6の50 mM HEPES-KOH、100 mM KCl、10 mM MgCl2、30% glycerol(グリセロール))で透析する。精製したNDK*の濃度はBio-Rad社のProteinAssay Kitを用いてBSA(ウシ血清アルブミン)を基準に作成した標準曲線から算出する。精製したNDK*は1mlずつ小分けして液体窒素で急冷凍した後−80℃で保存する。21頁(4−1)及び(4−2)に例示した、その他の酵素類についても、所望により、Histagが付された形の酵素類として同様にして得られる。
E.coli 由来のDHFR(dihydrofolatereductase;ジヒドロ葉酸レダクターゼ)遺伝子の5'末端にHindIII、3'末端にBam HI配列を加えPCRで増幅する。この増幅された遺伝子は、リボソーム結合部の上流に、バクテリオファージT7gene 10由来のエプシロン配列(epsilon sequence)及びそれに引き続くSD(Shine-Dalgarno;シャイン−ダルガノ)配列を有するT7プロモーターを含んでいた。このDNA断片をプラスミドベクターpUC18(宝酒造)に組み込んだ。このプラスミドをSmaIで処理した後、His tagが付されたT7RNAポリメラーゼを用いたランオフ転写(run-off transcription)や転写・翻訳型(transcription/translation)インビトロ翻訳反応に鋳型として用いる。インビトロの転写反応42℃で3時間行う。この反応液1ml中の組成はpH 7.8のHEPES-KOH 40M、20 mM MgCl2、1 mM spermidine(スペリミジン)、5 mMDTT、各2 mM のATP、UTP、CTP及びGTP、20 μgのSma Iで処理された鋳型プラスミド、50 μg BSA、1.78 unitsPPiase(pyrophosphatase;ピロホスファターゼ)、10 μgの精製され、His tagが付されたT7 RNAポリメラーゼである。この反応を終了させるために終濃度が50mMになるようにEDTA(ethylenedinitro‐lotetraacetic acid;エチレンジニトロロ四酢酸)を加える。得られるmRNAはフェノール/クロロホルム抽出を行った後、エタノールで沈殿させ、RNA精製キット(QIAGEN社製)を用いてメーカーの推奨する方法に従って精製を行う。
DNA 配列AUGUUCUUGUAA(配列番号4)(翻訳するとfMet-Phe-Leu-Stop;ホルミルメチオニン−フェニルアラニン−ロイシン−停止コドンになる。以下、MFLと略記する)を、MFLmRNAの鋳型とするために以下に示すような方法で構築する。オリゴヌクレオチドA;5'-TAtgttcttgtaac(配列番号5)とオリゴヌクレオチドB;5'-TCGAgttacaagaaca(配列番号6)をアニールさせNde I配列とXho I配列を含む二本鎖DNAを構築し、T7ターミネーターを含むプラスミドベクターpET29a(Novagen)のNdeIとXho I部位へ連結する。得られるプラスミドは上述のDHFR遺伝子を同様に転写させる。
His tagが付されたARS(アミノアシルtRNAシンテターゼ)活性測定を、以下に示す通りに行う。反応溶液50μlはpolymix緩衝液(翻訳実験の項を参照のこと)に1 mM ATP、2.8 A260 unit tRNAmix(Boehringer社製)、各50μMのラベルされたアミノ酸、そして精製された各His tagが付されたARSを含んだものを用いる。反応は37℃で行い、放射性アミノアシルtRNAを3MMろ紙に沈殿させ5%のトリクロロ酢酸で洗浄した後、放射能を測定する。活性1 unitは、37℃で1分間に1pmolのアミノアシルtRNAの形成を触媒した酵素量で表する。
His tagが付されたMTF(メチオニルtRNAトランスホルミラーゼ/以下において、Histagが付されていることを、「*」で示す)活性は以下に示す通りに行う。反応溶液50 μlはpolymix緩衝液(翻訳実験の項を参照のこと)に1mM ATP、2.8 A260 unit tRNAmix(Boehringer)、各50 μMの[3H]ラベルされたメチオニン、0.5μg 10-formyl-5,6,7,8,-tetrahydroforic acid(テトラヒドロ葉酸)、3000 units MetRS(メチオニルtRNAシンテターゼ)、そしてMTF*を含んだものを用いる。反応は37℃で行い、ホルミル化されていないメチオニルtRNAは緩衝液(0.175M CuSO4、pH 7.5の0.5 M Tris-HCl)中で30℃、8分間脱アシル化させた。放射性ホルミルメチオニルtRNAを3MMろ紙に沈殿させ5%のトリクロロ酢酸で洗浄した後、放射能を測定する。活性1 unitは1分間に1 pmolのホルミルメチオニルtRNAの形成を触媒した酵素量で表する。
翻訳用の混合液(50μl)はJelencら(1979)やWagnerら(1982)の用いたPolymix緩衝液を改良したもので調製する。Polymix緩衝液の組成は5 mMmagnesium acetate(酢 酸マグネシウム)、pH 7.3の5 mM potassium phosphate(リン酸カリウム)、95 mMpotassium glutamate(グルタミン酸カリウム)、5 mM ammonium chloride(塩化アンモニウム)、0.5 mM calciumchloride(塩化カルシウム)、1 mM spermidine、8 mM putrescine(プトレッシン)、1 mM DTTである。反応液の組成は1mM ATP、1 mM GTP、10 mM creatine phosphate(クレアチンリン酸)、2.8 A260 unittRNA mix、0.5 μg 10-formyl-5,6,7,8,-tetrahydrophilic acid、0.1 mM各アミノ酸、因子混合物(後述)である。転写・翻訳型で反応を行わせる場合には、上記の反応液に1mM NTPと4 mM magnesium acetateを添加する。因子・酵素混合物の組成は12 pmolリボソーム、1 μg IF1*、2μg IF2*、0.75 μg IF3*、1 μg EF-G*、2 μg EF-T*u、1μg EF-Ts*、0.5 μg RF1*、0.5μg RF3*、0.5 μg RRF*、30-300units各ARS*あるいはMTF*、0.2 μg creatine kinase (CK;クレアチンキナーゼ)、0.15μg myokinase(MK;ミオキナーゼ)、0.054μg nucleoside diphosphate kinase*(NDK;ヌクレオシド二リン酸キナーゼ)である。転写・翻訳型で反応を行う場合には、上記の反応液に1.78units PPiaseと0.5 μg T7 RNAポリメラーゼ*を添加する。以上の因子、酵素の表示において「*」は、それ等がHis-tagが付されたものであることを示す。反応液を37℃で5分間インキュベートし、その後、DNAやRNAなどの鋳型を加え、反応を 開始する。翻訳の反応は37℃で行なわれる。反応後、リボソームは高分子量であるのでそれをまず100kDa以下の物質を通す限外ろ過膜に通し、除去する。その後限外ろ過膜を通った成分をNiカラムに通し、ヒスタグヒュ-ジョンタンパク質の除去を行う。Niカラムを素通りする成分は高純度の翻訳産物であり、SDS-PAGEで1本のバンドを示す。なお、以下の実施例において、比較のために使用するS30システムはPromega社から購入したものを使用 し、メーカーの推奨する方法に従って翻訳を行う。
His−tagが付された各反応系構成成分の活性を確認した後、これ等酵素及びHis−tagが付されたT7RNAポリメレースを用いて、「14:翻訳実験(一般的方法)」記載の通りにインビトロ 蛋白合成系を構築する。この合成系により、大腸菌のDHFR、λリゾチーム(λlysozyme)、グリーン蛍光蛋白(GFP)、グルタチオントランスフェラーゼ(GST)及びT7 gene10蛋白の全長ポリペプチドを合成し、夫々の生成量を測定する。この合成系が翻訳に必要な総ての成分を含んでいることが 明らかである。
Poly (U)− poly (Phe)のインビトロ反応系における合成は以下に示した通りに行う。反応液は1 mM ATP、1mM GTP、10 mM creatinephosphate、2.8 A260 units tRNAmix、1 mM [14C]でラベルされたフェニルアラニン、因子混合物を含むpolymix緩衝液を用いる。因子混合物の組成は12pmolリボソーム、1 μg EF-G*、2μg EF-Tu*、1μg EF-Ts*、60units PheRS*、0.2μg creatine kinase (CK)、0.15μg myokinase (MK)、0.054μgnucleoside diphosphate kinase* (NDK) である。なお、因子、酵素の表示において「*」は、それ等がHis-tagの付されたものであることを示す。反応液を37℃で5分間インキュベートした後、5μgのpoly (U) を加え、反応を開始する。Poly(Phe)を経時的に8 μlずつサンプリングし、10 %のトリクロロ酢酸で3MMろ紙上に沈殿させた。アミノアシルtRNAを85℃で脱アシル化させ10 %トリクロロ酢酸で洗浄し、放射能を測定し、目的物の生成を確認する。
終結因子(RF1*、RF3*とRRF*/「*」は、Histagが付されていることを示す)の活性は、改良を加えたPavlovら(1997)の方法に基づき測定する。翻訳反応液(50μl)は翻訳実験に用いたpolymix緩衝液を元に調製する。反応液の組成は1mMATP、1 mM GTP、2.8 A260 unit tRNA mix、1 mM フェニルアラニン及びロイシン、[35S]放射性メチオニンを用いて調製した50pmolのformylmethionyl-tRNA、His tagが付された因子・酵素混合物(後述)である。因子・酵素混合物の組成は12 pmol リボソーム、1 μg IF1*、2μg IF2*、0.75 μg IF3*、1 μg EF-G*、2 μg EF-Tu*、1μg EF-Ts*、0.5 μg RF1*、0.5 μg RF3*、0.5 μg RRF*、50unitのPheRS*と300 unitのLeuRS*である。この因子・酵素混合物からRF1*、RF3*、RRF*を目的に応じてそれぞれ除いた反応液を用意し反応を行う。反応液を37℃でプレインキュベーションした後に1 μgのMFL mRNAを加えて翻訳反応をスタートさせた後、この反応液から経時的に5μlずつサンプリングし、等量の1 N HClに加えて反応を止めた。さらにこれに200 μlの酢酸エチルを加えてトリペプチド(fMFL)を溶出させ、液体シンチレーションカウンターを用いて放射能を測定する。
このPUREシステムのインビトロ 翻訳系及びS−30抽出物を用いた翻訳系の夫々により、[35S] でラベルされたメチオニンを含むDHFRを合成する。生成物を12%のSDS-PAGE(sodium dodecyl sulfate polyacrylamide gel electrophoresis;SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)で分離させ、BAS-1000system(Fuji film)で検出し、放射能を測定する。一方、DHFRの活性は以下に示した方法で測定する。pH 7.0の50 mMpotassiumphosphate緩衝液、50 μM DHF(dihydrofolic acid;ジヒドロ葉酸)、60 μM NADPH(reducednicotinamide adnine dinucleotide phosphate;還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)を含む反応液中、30℃で反応させ、A340減少値を1分ごとに測定する。
His tagが付されたRF1(以下、Histagが付されていることを、「*」で示す)の代わりにRF2*を終結因子として用いたこのPUREシステムのインビトロ翻訳系において、化学的に合成したバリルサプレッサーtRNAを用いて37番残基のアスパラギン(ATAコドン)をUAGコドンに置換したDHFRの鋳型を翻訳させる。その結果RF1*を含むサンプルでは37番目の残基で終結反応が行われ途中で止まったタンパク質ができるのに対し、RF1*を除くと(RF2は含まない)途中で切れたタンパク質のバンドが薄くなる。さらにここにRF2*を導入すると通常のDHFRと同様の位置にタンパク質が生産されるようになる。このことからサプレッサーtRNAに結合したバリン残基がDHFRの37番目に導入されたことが確かめられる。
本明細書において用いる無細胞蛋白質合成系の組成は、限定されることはないが、代表的には、以下のとおりである。
2)Kazutaら((2008) Mol Cell Proteomics 7:1530-1540)の手法に従って精製
3)Ohashiら((2007) Biochem Biophys Res Commun 352: 270-276.)の手法に従って精製
4) SigmaAldrich Japanより購入
5) WakoChemicals, Japanより購入
6) SigmaAldrichの製品
7) RocheDiagnosticsより購入した大腸菌MRE600株のtRNA.
8)Nacalai tesqueの製品。
本明細書における「リボソームディスプレイ法」には、例えば、上記無細胞蛋白質合成系でのタンパク質翻訳において生成されるリボソームとmRNAと翻訳されたペプチドとの複合体を用いることができる。
(本発明のタグを用いるタンパク質のラベリング)
本発明のタグは、リガンド特異的であることから、例えば、標的タンパク質・ポリペプチドのN末端とC末端のそれぞれに、別のタグを融合することにより、標的タンパク質・ポリペプチドのN末端とC末端のそれぞれに別のリガンドを結合させることが可能となる。N末端に融合したタグに結合するリガンド、および、C末端に融合したタグに結合するリガンドの各を異なる標識部分で標識することによって、タンパク質・ポリペプチドのデュアルラベルが可能となる。
(リガンドの合成)
選択及び結合実験には3種のPYペプチド(ePY:配列番号1 EYPPYPPPPYPSG、P4S:配列番号2 GTPSPPYTVG、P4W:配列番号3 GTPWPPYTVG)をリガンドとして使用した。ペプチド合成はジーンデザイン社(大阪)が標準的なFmoc法によって行った。さらに、ペプチド配列のN末端ビオチン化をリンカー配列中にSS結合を含むEZ−link Sulfo−NHS−SS−biotin試薬(Pierce, Rockford, IL)、及びSS結合を含まないEZ−link Sulfo−NHS−LC−biotin試薬(Pierce, Rockford, IL)によって行った。これを逆相HPLCで精製し、MALDI−TOF質量分析により確認した。
WWドメイン野生型をコードする配列番号7(ATGGGTGGTTCTATGTCTTTTGAGATTCCTGATGATGTACCTCTGCCAGCAGGTTGGGAGATGGCAAAGACATCTTCTGGTCAGCGCTACTTCCTGAATCACATCGATCAGACAACAACATGGCAGGACCCGCGCAAGGCCATGCTGTCCCAGATGAACGTCACAGCCCCGACCAGTGGA)を含むDNA、および、W17F変異体をコードする配列番号9を含むDNA(ATGGGTGGTTCTATGTCTTTTGAGATTCCTGATGATGTACCTCTGCCAGCAGGTTTCGAAATGGCAAAGACATCTTCTGGTCAGCGCTACTTCCTGAATCACATCGATCAGACAACAACATGGCAGGACCCGCGCAAGGCCATGCTGTCCCAGATGAACGTCACAGCCCCGACCAGTGGA)をpQE30(Qiagen)由来のpRD−dumN2−2プラスミドのNcoI/BamHI制限酵素サイト間に挿入し、pRD−WW及びpRD−W17Fプラスミドを作製した。次に、野生型とW17F変異体のランダム突然変異ライブラリを作製するために、pRD−WWとpRD−W17Fプラスミドを同じ濃度になるよう混合し、これを鋳型としてΔTth DNA polymerase(Toyobo,Osaka,Japan)を用いたerror−prone PCRを行った。鋳型濃度は1pg/μl、dNTP濃度はdATP:2mM、dTTP:10mM、dGTP:2mM、dCTP:10mMであり、プライマーとしてWW_RDf(配列番号11:GGATCTGGTTCCATGGGTGG)およびWW_RDr(配列番号12:GCCACCGGATCCACTGGTCG)を用いた。このPCR産物を再びpRD−dumN2−2プラスミドのNcoI/BamHI制限酵素サイト間に挿入した。配列解析のために、このプラスミドを用いて大腸菌株XL10−GOLDを形質転換し、アンピシリンを含むLBプレートに植菌した。ここから32クローンを選び、SDA−pqeプライマー(配列番号13: AGACCACAACGGTTTCCCTCTAGAAATAATTTTGTTTAACTTTAAGAAAGAGGAGAAATTAACTATGAG)およびpqe1−プライマー(配列番号14:GATCTATCAACAGGAGTCCAAGCTCA)を用いてコロニーPCRを行った後、pD_89_Rプライマー(配列番号15:CCAGAGCACATCCTCATAACGG)を用いて配列解析を行った。次に、インビトロ転写の鋳型作製のために、先のプラスミドを鋳型として、SDA−pqeプライマーおよびpqe1−プライマーを用いてPCRを行い、さらにT7Bプライマー(配列番号16:ATACGAAATTAATACGACTCACTATAGGGAGACCACAACGG)およびT3te_pD−プライマー(配列番号17:CGGCCCACCCGTGAAGGTGAGCC)を用いてPCRを行った。その結果、図のような遺伝子配列を得た(fig)。得られたPCR産物を鋳型として、T7 RNA ポリメラーゼ(TaKaRa)を用いたインビトロ転写を行い、mRNAを合成した。これをRNeasy精製キット(Qiagen)で精製し、変性アガロースゲル電気泳動で確認後、インビトロ翻訳の鋳型とした。なお、全てのPCRはExTaq DNAポリメラーゼ(TaKaRa)を用いて行った。
再構成無細胞翻訳系PUREシステムを用いてインビトロ翻訳を行なった。PUREシステムは、全因子の調整を行い、従来のものより翻訳合成量が改良されたものを使用した。翻訳反応は、50μl反応液中に鋳型mRNA 2μgを加え、37°Cで30分間行なった。翻訳反応を停止させるために、0.5% BSA、2.5mg/ml heparin、5μM ビオチン化リガンドを含む、氷冷却した洗浄バッファ(WBKT: 50 mM Tris−Ac, pH7.4; 150mM NaCl;50 mM Mg(OAc)2; 250mM KCl; 0.1% Tween 20)を翻訳反応溶液の9倍量加えた。これ以後の操作は、全て自動磁性粒子プロセッサ(kingfisher, thermo)を用いて4°Cで行った。まず、翻訳反応終了溶液100μlを専用プレート(thermo)に移し、リガンドと1時間反応させた。次に、WBKTでよく洗ったストレプトアビジン磁性粒子(Dynabeads MyOne Streptavidin C1, Invitrogen)50μlを反応液に加えて30分間振盪した。その後、洗浄のために、200μl WBKTで1分間振盪を2回、さらに5分間振盪を3回行なった。最後に、50mM DTT、及び50μg/ml Saccaromyces cerevieciae RNAを含むWBKT 100μlにビーズを加え30分間振盪し、S−S結合を切断することでリボソーム複合体を特異的に回収した。回収されたリボソーム複合体溶液(溶出液)中のmRNA量は、SYBR Greenを用いた定量RT−PCR(SuperScript III Platinum One−Step qRT−PCR kit, Invitrogen)により定量した。プライマーとしてpD_89_F(配列番号18:TTGGCATTCTTGCGGTTGCTG)およびプライマーpD_89_R(配列番号15:CCAGAGCACATCCTCATAACGG)を使用し、溶出液は100倍希釈し反応液20μl中に2μl加え、その他PCR条件は製造業者のマニュアルに従った。蛍光検出はMx3005P(Stratagene)により行った。次に、溶出液中のmRNAをRNeasy(Qiagen)により精製後、RT−PCR(OneStep RT−PCR kit,Qiagen)により増幅した。プライマーとしてT7Bプライマー(配列番号16:ATACGAAATTAATACGACTCACTATAGGGAGACCACAACGG)およびT3te_pD−プライマー(配列番号17:CGGCCCACCCGTGAAGGTGAGCC)を使用し、その他PCR条件は全て製造業者のマニュアルに従った。PCR産物はアガロースゲル電気泳動で確認後、ゲル回収(QIAquick gel extraction kit, Qiagen)により精製した。これを次のラウンドのインビトロ転写の鋳型とした。
P4Sペプチドに対する選択ラウンドを5回繰り返した後に得られたDNAプールを鋳型として、pentaHis_fプライマー(配列番号19:GATCGCATCACCATCACCAT)およびrsrII−RTプライマー(配列番号20:TTCCGGCAAACGCGGTCCG)を用いてPCRを行った。PCR産物をNcoI/BamHI制限酵素で処理し、pQE−pDNBベクターに挿入した。配列解析のために、このプラスミドを用いて大腸菌株XL10−GOLDを形質転換し、アンピシリンを含むLBプレートに植菌した。ここから32クローン選び、SDA−pqeプライマー(配列番号13: AGACCACAACGGTTTCCCTCTAGAAATAATTTTGTTTAACTTTAAGAAAGAGGAGAAATTAACTATGAG)およびpqe1−プライマー(配列番号14:GATCTATCAACAGGAGTCCAAGCTCA)を用いてコロニーPCRを行った後、pentaHis_fプライマーを用いて配列解析を行った。さらに、コロニーPCR産物を鋳型として、T7B(配列番号16:ATACGAAATTAATACGACTCACTATAGGGAGACCACAACGG)およびwwstopプライマー(配列番号21:GAGTCCAAGCTCAGCTAATTAAGCT)によりPCRを行いカラム精製(Qiaquick PCR purification kit,Qiagen)した。こうして、選択クローンのインビトロ転写・翻訳反応の鋳型を得た。
(実施例2:P4Sリガンドに対して高い特異性を有する変異タグペプチドの評価)
実施例1のRI結合アッセイの結果、最も高い結合能を示した選択クローンf7、及び野生型のRI結合アッセイをリガンド及び溶出法を様々に変えて行った。それぞれのDNA鋳型を用いて、インビトロ転写・翻訳反応を前述と同様にPUREシステム中で行った。続く結合反応に用いるビオチン化PYリガンドには、3種類のペプチド配列(ePY,P4S,P4W)に対して、リンカー配列中にSS結合を含むものと含まないもの計6種類を使用した。また、パニング最後の溶出には、これまでと同様の50mM DTT及び、変性剤として2M グアニジウムチオシアネートによる溶出を行った。放射能測定は、これら2通りの溶出液、及び溶出直前の最終洗浄液の3種を用いた。
選択クローンf7のDNA鋳型を用いて、インビトロ転写・翻訳反応をPUREシステム中で行った。鋳型DNAは、RI結合アッセイで用いたものを使用した。翻訳反応は、50μl反応液に鋳型DNA 0.2μgを加え、4°Cあるいは、37°Cで1時間行った。その後、0.5% BSA、2.5mg/ml heparin、5μM ビオチン化P4Sリガンドを含む、氷冷却したWBKTバッファを翻訳反応溶液の9倍量加えることにより反応を停
止させ、4°Cでそのまま1時間リガンドと反応させた。反応後、50mM DTTを含む、あるいは含まないSDSサンプルバッファを加え、5分間熱変性の後、SDS−PAGEを行った。続いて、Streptavidin−HRP conjugateを用いたウェスタンブロッティングを行った。その結果、f7タグとリガンドとの結合はSDSでは解離しない強固な結合であったが、DTTによって解離した。
(実施例3:ePYリガンドに対して高い特異性を有する変異タグペプチドの単離)
実施例1と同様の方法を用いて、ePYリガンドに対して高い特異性を有する変異タグペプチドを単離することが可能である。具体的には、実施例1では、P4Sペプチドに対する選択ラウンドを5回繰り返したが、本実施例では、P4Sペプチドの替わりにePYペプチドを用いた。その結果、Y16タグペプチド(配列番号30)、Y11タグペプチド(配列番号31)、Y19タグペプチド(配列番号32)、および、Y18タグペプチド(配列番号33)が得られた。得られた配列と、WWドメイン野生型配列およびペプチドf9の配列を図2に示す。
(実施例4:P4Sリガンドに対して高い特異性を有する変異タグペプチドの評価)
実施例2のウェスタンブロッティングによる結合アッセイと同様の実験を、Y16タグペプチド、Y11タグペプチド、Y19タグペプチド、および、Y18タグペプチドについて行った。結合させるリガンドとしては、ePYリガンド、P4Sリガンド、および、P4Wリガンドを用いた。その結果、P4Sリガンドを用いて取得されたY16タグペプチド、Y11タグペプチド、Y19タグペプチド、および、Y18タグペプチドは、ePYリガンドに対してのみ結合しビオチン化されたが、P4SリガンドおよびP4Wリガンドのいずれにも結合しなかった。
配列番号2:P4Sペプチドのアミノ酸配列
配列番号3:P4Wペプチドのアミノ酸配列
配列番号4:MFLmRNAの核酸配列
配列番号5:オリゴヌクレオチドAの核酸配列
配列番号6:オリゴヌクレオチドBの核酸配列
配列番号7:野生型WWドメインをコードする核酸配列
配列番号8:野生型WWドメインのアミノ酸配列
配列番号9:W17F変異体をコードする核酸配列
配列番号10:W17F変異体のアミノ酸配列
配列番号11:WW_RDfプライマー
配列番号12:WW_RDrプライマー
配列番号13:SDA−pqeプライマー
配列番号14:pqe1プライマー
配列番号15:pD_89_Rプライマー
配列番号16:T7Bプライマー
配列番号17:T3te_pDプライマー
配列番号18:pD_89_Fプライマー
配列番号19:pentaHis_fプライマー
配列番号20:rsrII−RTプライマー
配列番号21:wwstopプライマー
配列番号22:f7タグペプチド
配列番号23:f12タグペプチド
配列番号24:f27タグペプチド
配列番号25:f20タグペプチド
配列番号26:f22タグペプチド
配列番号27:f1タグペプチド
配列番号28:f34タグペプチド
配列番号29:f31タグペプチド
配列番号30:Y16タグペプチド
配列番号31:Y11タグペプチド
配列番号32:Y19タグペプチド
配列番号33:Y18タグペプチド
Claims (8)
- 配列番号1、配列番号2、および、配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むリガンドに対して特異的に結合する変異タグペプチドをコードするmRNAを、出発タグペプチドをコードする核酸配列から生成する方法であって、以下:
(a)出発タグペプチドをコードする核酸配列に変異を導入して、複数の変異タグペプチドをコードするmRNA集団を生成する工程;
(b)インビトロでの翻訳によって、
(i)変異導入によって生成されたmRNA集団に含まれるmRNA、
(ii)該mRNAによってコードされる候補変異タグペプチド、および
(iii)リボソーム、
の複合体を生成する工程;
(c)リガンドを、(b)の複合体と接触させて、リガンドと該複合体との結合体を生成する工程;
(d)該結合体を固相に固定化する工程:
(e)固相に固定化した該結合体を単離する工程;
(f)固相に固定化した該結合体に含まれるmRNAを単離する工程、
(g)上記(f)によって単離されたmRNAに変異を導入して、複数の変異タグペプチドをコードするmRNA集団を生成する工程;および、
(h)上記工程(b)〜(g)を繰り返した後、上記工程(b)〜(f)を行う工程、
を包含する方法。 - 配列番号1、配列番号2、および、配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むリガンドに対して特異的に結合する変異タグペプチドをコードするmRNAを、該候補タグペプチドをコードする候補mRNAの集団から単離する方法であって、以下:
(b’)候補タグペプチド、該候補タグペプチドをコードするmRNA,および、リボソームを含む複合体を生成する工程;
(c)リガンドを、(b’)の複合体と接触させて、リガンドと複合体との結合体を生成する工程;
(d)該結合体を固相に固定化する工程:
(e)固相に固定化した該結合体を単離する工程;および、
(f)固相に固定化した該結合体に含まれるmRNAを単離する工程、
を包含する方法。 - 配列番号1、配列番号2、および、配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むリガンドに対して特異的に結合する変異タグペプチドをコードするmRNAを、出発タグペプチドをコードする核酸配列から生成する方法であって、以下:
(a)出発タグペプチドをコードする核酸配列に変異を導入して、複数の変異タグペプチドをコードするmRNA集団を生成する工程;
(b)インビトロでの翻訳によって、
(i)変異導入によって生成されたmRNA集団に含まれるmRNA、
(ii)該mRNAによってコードされる候補変異タグペプチド、および
(iii)リボソーム、
の複合体を生成する工程;
(c’)固相に固定化したリガンドを、(b)の複合体と接触させて、固相上でリガンドと該複合体との結合体を生成する工程;
(e)固相に固定化した該結合体を単離する工程;
(f)固相に固定化した該結合体に含まれるmRNAを単離する工程、
(g)上記(f)によって単離されたmRNAに変異を導入して、複数の変異タグペプチドをコードするmRNA集団を生成する工程;および、
(h)上記工程(b)〜(g)を繰り返した後、上記工程(b)〜(f)を行う工程、
を包含する方法。 - 配列番号1、配列番号2、および、配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むリガンドに対して特異的に結合する変異タグペプチドをコードするmRNAを、該候補タグペプチドをコードする候補mRNAの集団から単離する方法であって、以下:
(b’)候補タグペプチド、該候補タグペプチドをコードするmRNA,および、リボソームを含む複合体を生成する工程;
(c’)固相に固定化したリガンドを、(b’)の複合体と接触させて、リガンドと複合体との結合体を生成する工程;
(e)固相に固定化した該結合体を単離する工程;および、
(f)固相に固定化した該結合体に含まれるmRNAを単離する工程、
を包含する方法。 - 請求項1〜4いずれか一項に記載の方法によって単離されたmRNA。
- 請求項5に記載のmRNAであって、配列番号22〜33からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む、mRNA。
- 以下の式:
[A]−[B]−[C]
または、
[C]−[B]−[A]
からなる可逆的デュアルラベリングが可能なポリペプチドであって、ここで、
Aは、配列番号22〜29からなる群から選択されるアミノ酸からなるペプチドであり、
Bは、任意のアミノ酸配列からなるペプチドであり、
Cは、配列番号30〜33からなる群から選択されるアミノ酸からなるペプチド
である、ポリペプチド。 - 以下の式:
[A]−[B]−[C]
または、
[C]−[B]−[A]
からなる可逆的デュアルラベリングが可能なポリペプチドをコードする核酸であって、ここで、
Aは、配列番号22〜29からなる群から選択されるアミノ酸からなるペプチドであり、
Bは、任意のアミノ酸配列からなるペプチドであり、
Cは、配列番号30〜33からなる群から選択されるアミノ酸からなるペプチド
である、核酸。
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