JP2018149802A - インクジェット記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ブリーディングが抑制された画像、及び光学濃度が高く、鮮鋭性に優れたブラック画像を1パス記録によって普通紙に記録可能なインクジェット記録方法を提供する。【解決手段】顔料を含有する複数の水性インクで構成されるインクセットを用い、一度の走査で普通紙の単位領域に画像を記録するインクジェット記録方法である。第1ブラックインクの50m秒における動的表面張力が、45mN/m以上であり、第2ブラックインクなどの10m秒における動的表面張力が、それぞれ40mN/m以下であり、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクの10m秒における動的表面張力の差が、いずれの組み合わせにおいても3mN/m以内であり、ブラックインクの付与箇所のうち、シアンインクなどの付与箇所との境界領域には、第2ブラックインクのみを付与する、又は、第1ブラックインク及び第2ブラックインクを付与する。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方法によれば、様々な記録媒体に画像を記録することができる。そして、より良好な画像を記録すべく、記録媒体に応じた種々の記録方法が提案されている。また、近年、記録される画像の堅牢性を高めるために、顔料を色材として含有するインクを用いたインクジェット記録方法が提案されている。特に、ブラックインクで普通紙に記録する画像はテキストや図表である場合が多く、このような場合には、光学濃度や鮮鋭性に優れたブラック画像を記録しうることが強く求められる。
また、顔料を含有する水性インクを一度の走査で記録媒体の単位領域に付与して記録する、いわゆる「1パス記録」により高画質の画像をより高速に記録することが要求されている。このような記録方法の場合、色相の異なるインクが隣接する領域に一度に付与されることがある。色相の異なるインクが隣接する領域に一度に付与されると、インクの浸透又は乾燥により顔料が記録媒体に固定される状態(定着状態)に移行する前に、色相の異なるインクどうしが接触する現象が生じやすくなる。この現象がより顕著に生ずると、色相の異なるインクどうしが記録媒体で混ざり合ってしまい、本来意図した箇所とは異なる箇所に顔料が固定されてしまう、いわゆる「ブリーディング現象」が生じやすく、画像の品位が低下するといった課題が生じていた。また、ブリーディング現象を抑制すべく、インクの浸透性を高めると、記録される画像の光学濃度が低下しやすいことが知られている。
このような課題を解決すべく、種々の技術がこれまでに提案されている。例えば、記録媒体への浸透性及び記録濃度が所定の関係に制御された複数の染料インクを用いる、ブリーディングを抑制しうるインクジェット記録方法が提案されている(特許文献1)。さらに、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有し、動的表面張力が所定の範囲に制御された、画像濃度が高く、定着性の向上した水性インクが提案されている(特許文献2)。
特開平09−193529号公報 特開2007−162006号公報
しかし、特許文献1で提案された記録方法では、染料を色材として含有するインクを用いるが、顔料を含有するインクを用いた場合にブリーディングが抑制されるか否かについては何ら検討されておらず、不明である。また、特許文献2においては、ブリーディングが抑制されるか否かについては言及されていない。さらに、ブラックインクで記録される画像の光学濃度や鮮鋭性についても、向上の余地があることが判明した。
したがって、本発明の目的は、ブリーディングが抑制された画像、及び光学濃度が高く、鮮鋭性に優れたブラック画像を1パス記録によって普通紙に記録可能なインクジェット記録方法を提供することにある。また、本発明の目的は、ブリーディングが抑制された画像、及び光学濃度が高く、鮮鋭性に優れたブラック画像を普通紙に記録可能であり、かつ、光学濃度が高く、光沢性に優れたブラック画像を光沢紙に記録可能なインクジェット記録方法を提供することにある。
すなわち、本発明によれば、顔料を含有する複数の水性インクで構成されるインクセットを用い、一度の走査で普通紙の単位領域に画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記インクセットが、第1ブラックインク及び第2ブラックインクを含むブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、並びにイエローインクで構成され、前記第1ブラックインクの50m秒における動的表面張力が、45mN/m以上であり、前記第2ブラックインク、前記シアンインク、前記マゼンタインク、及び前記イエローインクの10m秒における動的表面張力が、それぞれ40mN/m以下であり、前記シアンインク、前記マゼンタインク、及び前記イエローインクの10m秒における動的表面張力の差が、いずれの組み合わせにおいても3mN/m以内であり、前記第1ブラックインクは、DBP吸油量が100mL/100g以上のカーボンブラックの粒子表面にカルボン酸基及びホスホン酸基の少なくともいずれかが直接又は他の原子団を介して結合した自己分散顔料を含有し、前記ブラックインクの付与箇所のうち、前記シアンインク、前記マゼンタインク、及び前記イエローインクの少なくともいずれかのインクの付与箇所との境界領域には、前記第2ブラックインクのみを付与する、又は、前記第1ブラックインク及び前記第2ブラックインクを付与するとともに、前記境界領域に付与する前記ブラックインクの10m秒における動的表面張力と、前記シアンインク、前記マゼンタインク、及び前記イエローインクの10m秒における動的表面張力との差を、いずれも3mN/m以内とし、前記ブラックインクの付与箇所のうち、前記境界領域以外の非境界領域には、前記第1ブラックインクのみを付与する、又は、前記第1ブラックインク及び前記第2ブラックインクを付与するとともに、前記非境界領域に付与する前記ブラックインクの50m秒における動的表面張力を、45mN/m以上とし、かつ、前記境界領域の幅を、40μm以上130μm以下とすることを特徴とするインクジェット記録方法(以下、「第1のインクジェット記録方法」とも記す)が提供される。
さらに、本発明によれば、顔料を含有する複数の水性インクで構成されるインクセットを用い、普通紙又は光沢紙に画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記インクセットが、第1ブラックインク及び第2ブラックインクを含むブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、並びにイエローインクで構成され、前記第1ブラックインクの50m秒における動的表面張力が、45mN/m以上であり、前記第2ブラックインク、前記シアンインク、前記マゼンタインク、及び前記イエローインクの10m秒における動的表面張力が、それぞれ40mN/m以下であり、前記シアンインク、前記マゼンタインク、及び前記イエローインクの10m秒における動的表面張力の差が、いずれの組み合わせにおいても3mN/m以内であり、前記第1ブラックインクは、DBP吸油量が100mL/100g以上のカーボンブラックの粒子表面にカルボン酸基及びホスホン酸基の少なくともいずれかが直接又は他の原子団を介して結合した自己分散顔料を含有し、前記第2ブラックインクは、DBP吸油量が100mL/100g以下のカーボンブラックが樹脂分散剤で分散された樹脂分散顔料を含有し、前記シアンインク、前記マゼンタインク、及び前記イエローインクは、樹脂分散顔料を含有し、一度の走査で普通紙の単位領域に画像を記録する場合には、前記ブラックインクの付与箇所のうち、前記シアンインク、前記マゼンタインク、及び前記イエローインクの少なくともいずれかのインクの付与箇所との境界領域には、前記第2ブラックインクのみを付与する、又は、前記第1ブラックインク及び前記第2ブラックインクを付与するとともに、前記境界領域に付与する前記ブラックインクの10m秒における動的表面張力と、前記シアンインク、前記マゼンタインク、及び前記イエローインクの10m秒における動的表面張力との差を、いずれも3mN/m以内とし、前記ブラックインクの付与箇所のうち、前記境界領域以外の非境界領域には、前記第1ブラックインクのみを付与する、又は、前記第1ブラックインク及び前記第2ブラックインクを付与するとともに、前記非境界領域に付与する前記ブラックインクの50m秒における動的表面張力を、45mN/m以上とし、かつ、前記境界領域の幅を、40μm以上130μm以下とし、光沢紙に画像を記録する場合には、前記ブラックインクの付与箇所には、前記第2ブラックインクのみを付与することを特徴とするインクジェット記録方法(以下、「第2のインクジェット記録方法」とも記す)が提供される。
本発明によれば、ブリーディングが抑制された画像、及び光学濃度が高く、鮮鋭性に優れたブラック画像を1パス記録によって普通紙に記録可能なインクジェット記録方法を提供することができる。また、本発明によれば、ブリーディングが抑制された画像、及び光学濃度が高く、鮮鋭性に優れたブラック画像を普通紙に記録可能であり、かつ、光学濃度が高く、光沢性に優れたブラック画像を光沢紙に記録可能なインクジェット記録方法を提供することができる。
インクカートリッジの一例を模式的に示す断面図である。 本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。 記録媒体におけるインクを付与する領域を説明する模式図である。
<インクジェット記録方法>
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。なお、本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。また、物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値とする。
本発明において、動的表面張力の測定に採用している最大泡圧法とは、測定する液体中に浸したプローブ(細管)の先端部分から押し出された気泡を放出されるのに必要な最大圧力を測定して、表面張力を求める方法である。また、寿命時間とは、最大泡圧法測定においてプローブの先端部分から気泡が形成される際の、気泡が離れた後に新しい表面が形成されてから最大泡圧時(気泡の曲率半径とプローブ先端部分の半径が等しくなったとき)までの時間を意味する。測定温度は25℃である。
本発明者らは、顔料を色材として含有する水性インクを用いて、特許文献1で提案された記録方法について検討した。具体的には、浸透性の高いブラックインク、浸透性の低いブラックインク、及び浸透性の高いイエローインクを用意した。インクの浸透性は、界面活性剤の含有量を変えることで調整した。界面活性剤としては、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物(商品名「アセチレノールE100」、川研ファインケミカル製)を用いた。浸透性の高いブラックインク及びイエローインク中の界面活性剤の含有量は0.5質量%とし、浸透性の低いブラックインク中の界面活性剤の含有量は0.3質量%とした。
そして、特許文献1で提案された記録方法によって画像を記録したところ、ブリーディングが顕著に発生することがわかった。さらに検討したところ、明度が低いほど浸透性が高いインクを含むインクセットを使用し、明度が低いインクから順に記録媒体に付与する場合においてのみ、ブリーディングが抑制されることがわかった。特許文献1で提案された記録方法では染料を含有するインクを用いるのに対し、本発明者らが行った検討では顔料を含有するインクを用いたために、このような現象が生じたと推測される。特許文献1においては、普通紙を構成するセルロース繊維との親和力を示す指標として、染料のRf値に着目している。Rf値が高い染料はセルロース繊維との親和力が低いため、記録媒体に広がりやすい。そして、Rf値が近い染料の組み合わせでブリーディングが発生しやすく、明度が低いインクほどRf値が低い染料を用いればブリーディングが抑制されるとしている。
色材として顔料を用いた水性インクを用意する場合、顔料を分散させるための分散剤として水溶性樹脂を用いた、いわゆる樹脂分散顔料や、顔料の粒子表面にイオン性基などを結合させた、いわゆる自己分散顔料が一般的に用いられている。このような顔料はセルロース繊維との親和力(特許文献1における染料のRf値に相当)が近似しているため、ブリーディングが発生しやすくなったと考えられる。インク中の顔料は水に溶解しておらず、樹脂分散顔料や自己分散顔料がセルロース繊維と相互作用する。すなわち、顔料そのものの分子の相違に基づく相互作用の違いが生じにくく、結果としてセルロース繊維との親和力が近似すると推測される。そうであるならば、特許文献1で提案された記録方法を、色材として顔料を含有する水性インクに適用することは困難であると言える。
また、明度が低いほど浸透性が高いインクを含むインクセットを使用し、明度が低いインクから順に記録媒体に付与することで、ブリーディングが抑制されることがわかった。しかし、記録ヘッドが走査して画像を記録するシリアル方式のインクジェット記録方法の場合、記録ヘッドの往方向と復方向でインクの付与順序が逆となるため、記録方法としては大きな制約となる。
次に、本発明者らは、顔料を色材として含有する水性インクで画像を記録する場合に、ブリーディングを抑制する方法について検討した。その結果、記録媒体に付与された異なるインク同士が接触してから、記録媒体への浸透が完了するまでの時間単位の表面張力に着目してインクを調製する必要性があることを見出した。より具体的には、10m秒における動的表面張力が40mN/m以下であり、かつ、動的表面張力の差が、いずれの組み合わせでも3mN/m以内である複数のインクを用いる必要があることを見出した。
記録媒体に付与後のインクの挙動を高速度カメラで観察すると、一度の走査で単位領域の画像を記録する、いわゆる1パス記録の場合、記録媒体に付与された直後に異なるインク同士が接触することがわかる。また、記録媒体へのインクの浸透が完了するまでの時間は、インクや普通紙の種類により相違するが、約10m秒から50m秒程度かかることがわかった。異なるインク同士のブリーディングは、記録媒体への浸透が完了する前の混合によって生ずるので、浸透後の混合については無視することができる。すなわち、ブリーディングを抑制するには、インク同士が接触してから記録媒体への浸透が完了するまでの時間における、インク同士の混ざり合いを抑制すればよいことになる。
種々のインクを組み合わせて検討したところ、インク同士が接触してから記録媒体への浸透が完了するまでの時間におけるインク同士の混ざり合いを抑制するには、「張力」と「拡散」の二つの現象を考慮する必要性があることが判明した。
2種のインクの液滴同士が接触するように記録媒体に付与されると、インクの組み合わせによっては、一方のインクが他方のインクに瞬時に引き込まれる。詳細に検討したところ、極短い時間における動的表面張力の差が大きい場合に、このような「引き込み」が生ずることがわかった。液滴同士が接触した時点において表面張力に差があると、表面張力が高いほうのインクの張力(表面張力が低い方のインクを引き込む力)が強い。上記の「引き込み」を抑制するには、インク同士の表面張力の差を極力小さくする必要がある。記録媒体に付与されたインクにより新たな表面が形成されるのとほぼ同時にインク同士が接触するため、極短時間における動的表面張力を考慮する必要がある。
また、色相が異なるインク同士では用いる顔料の種類が異なるため、拡散そのものを抑制することは実質的に不可能である。また、張力による「引き込み」と比較すると、拡散によるインク同士の混ざり合いは緩やかである。そこで、本発明者らは、拡散を抑制するのではなく、拡散によって混ざり合う時間を極力短くすることで、インク同士の混ざり合いを抑制することができると考えた。すなわち、記録媒体への浸透を極力速めることについて検討した。
インクの種類と浸透速度との関係を高速度カメラで観察して検討した結果、極短時間における動的表面張力と浸透速度とに相関があることが判明した。極短時間における動的表面張力を低下させると浸透が速くなり、あるところで飽和する。具体的には、10m秒における動的表面張力が40mN/mを超えるインクの場合、動的表面張力が高いほど浸透が遅くなること、及び記録媒体に付与されてから浸透が完了するまで、約10m秒から50m秒程度かかることがわかった。一方、10m秒における動的表面張力が40mN/m以下のインクの場合、浸透速度は概ね一定となること、及び記録媒体に付与されてから浸透が完了するまで、概ね10m秒かかることがわかった。
このような傾向は、一般的なインクジェット記録方法におけるインク液滴の付与量の範囲内(1ngから100ng)では、大きな差異もなく認められた。また、普通紙の種類について種々確認したが、普通紙の種類の違いによる大きな差異は認められなかった。記録媒体に付与されたインクが記録媒体に浸透するまでの間には、以下のような過程を経ると考えられる。まず、記録媒体の表面に対してインクの濡れが生じた後、毛管力により記録媒体中に浸透し、浸透が完了する。記録媒体の表面にインクを濡らすには、記録媒体の表面エネルギーに応じてインクの表面張力を低く設定する必要がある。普通紙は、通常、水の浸透やインクのにじみを抑制すべく、サイズ剤が内添又は塗工されることによって疎水性にコントロールされている。このため、普通紙の表面エネルギーは概ね近似しており、そのような表面エネルギーの材料に短時間で濡れを発生させるのに必要な条件が、10m秒における動的表面張力を40mN/m以下とすることであると考えられる。また、インクの濡れが発生する時間と比較して、毛管力による記録媒体中への浸透は十分に速いと考えられる。このため、インクの付与量は浸透完了までに要する時間に大きな影響を与えないと推測される。
次いで、本発明者らは、10m秒における動的表面張力が40mN/m以下のインクを用いて張力を抑制する条件について検討した。記録媒体に付与されたインク液滴によって新たな表面が形成され、寿命時間が0となった直後にインク同士が接触するため、極短時間における動的表面張力を考慮する必要があると推測した。しかし、簡便な手法である最大泡圧法を利用し、寿命時間10m秒における動的表面張力によって張力を抑制する条件を特定できることがわかった。具体的には、10m秒における動的表面張力の差が3mN/m以内である複数のインクを用いることが必要であることが判明した。記録媒体に付与されたインクの浸透が完了するには、概ね10m秒必要である。この10m秒の間の表面張力の変化をインク同士で揃えることで、張力を有効に抑制することができる。
前述の通り、明度が低いほど浸透性が高いインクを含むインクセットを使用し、明度の低いインクから順に記録媒体に付与することで、ブリーディングが抑制されることがわかった。但し、このような現象は、浸透性が高く明度が低いインクを記録媒体に先に付与することで、明度が低いインクが記録媒体に濡れる時間を稼いでいるに過ぎない。例えば、付与間隔を徐々に短くし、先に付与された明度の低いインクが濡れる前に、明度の高いインクが付与される場合を想定すると、ブリーディングが発生しやすくなることが予想される。すなわち、明度の低いインクの浸透性の方が高いため、明度の低いインクの表面張力の方が低く、明度の低いインクが明度の高いインクに引き込まれることになる。実際に、インクの付与間隔を短くした場合(例えば、8m秒から2m秒に短くした場合)、ブリーディングが発生しやすくなることが確認された。
次に、光学濃度と鮮鋭性が向上したブラックの画像を記録する方法について検討した。本発明における「ブラック画像」とは、RGBデータがR=0、G=0、B=0の画像をいう。このようなブラック画像は、ブラックインクのみを用いて記録される(カラーインクは併用しない)。まず、特許文献2の記載を参考にして、顔料を含有するインクの動的表面張力と、ブラック画像の光学濃度及び鮮鋭性との関係について検討した。その結果、以下のことが判明した。50m秒における動的表面張力が高いインクを用いた場合ほど、ブラック画像の光学濃度及び鮮鋭性が向上した。具体的には、光学濃度が高く、鮮鋭性に優れたブラック画像を記録するには、50m秒における動的表面張力が45mN/m以上、好ましくは49mN/m以上のブラックインクを用いる必要があることがわかった。
前述の通り、10m秒における動的表面張力が40mN/mを超えるインクは、記録媒体に付与されてから浸透が完了するまでにかかる時間が長くなる。これは、記録媒体の表面に対するインクの濡れが発生するまでの時間が長くなるためと考えられる。ここで、50m秒における動的表面張力を45mN/m以上にすると、10m秒における動的表面張力も45mN/m以上となる。すなわち、50m秒における動的表面張力を45mN/m以上にすると、インクが記録媒体の表面上に留まる時間が長くなる。そして、インクが記録媒体の表面上に留まっている間に、水分蒸発によるインクの粘度上昇や、色材の会合及び凝集などのインクの状態変化が生じ、記録媒体の表面に色材を効果的に存在させることができ、ブラック画像の光学濃度が高まると考えられる。
また、普通紙は、セルロース繊維の粗密の分布やサイズ剤の分布などに起因する表面エネルギーの分布を有することが知られている。ここで、表面エネルギーに分布を有する記録媒体に、各種のインクを付与することを想定し、以下のように場合分けして考察する。(1)普通紙の表面エネルギーよりも十分に低い表面張力のインクを付与する場合;(2)普通紙の表面エネルギーに近しい表面張力のインクを付与する場合;及び(3)普通紙の表面エネルギーよりも十分に高い表面張力のインクを付与する場合、を検討した。
(1)の場合、普通紙の表面に対して速やかにインクの濡れが発生する。また、接触角が小さくなるため、普通紙の表面でインクが濡れ広がり、大きな円形のドットに定着する。(2)の場合、普通紙の表面エネルギーが高い箇所では、速やかにインクの濡れが発生し、接触角は小さくなる。一方、普通紙の表面エネルギーが低い箇所では、インクの濡れが発生するまでに時間を要し、接触角は大きくなる。その結果、表面エネルギーが高い箇所へと向かって広がった不均一な形のドットが形成される。(3)の場合、普通紙の表面に対してインクの濡れが発生するまでに時間を要し、接触角は大きくなる。その結果、インクは広がりにくくなり、小さな円形のドットに定着する。そして、これら3種類のインクを用いると、全体的に太い罫線、太くないがにじみがみられる罫線、及び幅が細く鮮鋭性の高い罫線がそれぞれ記録された。以上より、前述の「普通紙の表面エネルギーよりも十分に高い表面張力」が「45mN/m以上」に相当し、「50m秒における動的表面張力」により、記録されるブラック画像の鮮鋭性の程度が決定されると考えられる。
次いで、本発明者らは、2種類のブラックインク(Bkインク)、シアンインク(Cインク)、マゼンタインク(Mインク)、及びイエローインク(Yインク)を用意した。2種類のBkインクとしては、50m秒における動的表面張力(γ50)が45mN/m以上の第1ブラックインク(Bk1インク)と、10m秒における動的表面張力(γ10)が40mN/m以下の第2ブラックインク(Bk2インク)とを用意した。また、Cインク、Mインク、及びYインクの10m秒における動的表面張力(γ10)を40mN/m以下とした。さらに、Bk2インク、Cインク、Mインク、及びYインクのγ10の差は、いずれの組み合わせにおいても3mN/m以内とした。そして、これら5種のインクを用いてフルカラー画像を記録する方法について検討した。
Bk1インクのみを用いると、光学濃度が高く、鮮鋭性の良好なブラック画像を記録することができた。また、Bk2インク、Cインク、Mインク、及びYインクを用いてフルカラー画像を記録すると、どの色間においてもブリーディングの程度は軽微であったが、ブラック画像の光学濃度及び鮮鋭性は低下した。次に、5種のインクのすべてを用いてフルカラー画像を記録した。具体的には、図3に示すように、Bkインクの付与箇所のうち、Cインク、Mインク、及びYインクの少なくともいずれかのインクの付与箇所(カラー記録領域2)との境界領域3には、Bk2インクのみを付与した。また、この境界領域3以外の領域(非境界領域4)には、Bk1インクのみを付与した。図3中、符号1は、いずれのインクも付与されない非記録領域を示す。その結果、Bk1インク及びBk2インクが隣接して付与されて記録された画像がモヤ状に白っぽくなることが判明した。具体的には、Bk2インクを付与した箇所の近傍に付与したBk1インクで記録した画像が、モヤ状に白っぽくなることが確認された。以下、このような現象のことを「白もや」と表現する。
Bk1インク及びBk2インクの色相はいずれもブラックであるため、ブリーディングは視認されず、これらのインクを隣接して付与した場合であっても互いの干渉は視認できないと予測していた。しかし、動的表面張力の値が顕著に相違するBk1インクとBk2インクを隣接して付与すると、記録される画像に白もやが発生するといった別の課題が生ずることが判明した。
動的表面張力が大きく異なるBk1インクとBk2インクが隣接して付与されると、Bk2インクがBk1インクへと引き込まれる。但し、同色のインクであるため、インクの引き込み(移動)を視認することはできない。Bk1インクのγ50は45mN/m以上であるため、普通紙の表面に対して濡れが発生するまでに時間がかかるのに対し、Bk2インクのγ10は40mN/m以下であるため、普通紙表面に対する濡れは短時間で発生する。したがって、Bk1インクの浸透が開始する前に、Bk2インクの浸透が開始することになる。
Bk2インクの浸透が開始する段階では、Bk1インクとBk2インクは既に接触している。このため、Bk2インクの浸透が開始すると、Bk2インクの近傍に存在するBk1インクが引っ張られ、Bk2インクの付与箇所に浸透する。その結果、Bk2インクの付与箇所の近傍に付与されたBk1インクの量が少なくなるとともに、記録媒体に定着するBkインク中の色材の量が少なってしまい、モヤ状に白っぽくなった画像が記録されることになる。
そこで、本発明者らは、Bk1インクの浸透が開始する前にBk2インクの浸透が開始し、Bk2インクの付与箇所の近傍に付与されたBk1インクが引っ張られることを抑制する手法について検討した。すなわち、記録媒体に付与後のBk1インクの水分蒸発による粘度上昇をより早めることができれば、画像がモヤ状に白っぽくなることを抑制できると推測した。具体的には、Bk1インクに用いる色材及び添加剤の種類などについて検討した。その結果、以下に示す自己分散顔料を含有させることで、水分蒸発によるBk1インクの粘度上昇を早めることができることがわかった。
[自己分散顔料]:DBP吸油量が100mL/100g以上のカーボンブラックの粒子表面に直接又は他の原子団を介してカルボン酸基及びホスホン酸基の少なくともいずれかが結合した自己分散顔料
カルボン酸基及びホスホン酸基の少なくともいずれかがカーボンブラックの粒子表面に直接又は他の原子団を介して結合した自己分散顔料は、水分蒸発により塩や比誘電率の低い水溶性有機溶剤の濃度が高まると凝集しはじめる。これによって、インクの粘度が上昇すると考えられる。また、DBP吸油量が比較的大きいカーボンブラックは凝集しやすく、粘度上昇をさらに早めることができると考えられる。このような自己分散顔料を含有するBk1インクを用いることで、白もやの発生が抑制された画像を記録できることが判明した。また、以下に示す特定の塩をさらに含有させることで、水分蒸発によるBk1インクの粘度上昇をさらに早めることができるため、白もやがより有効に抑制された画像を記録できることがわかった。
[塩]:アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び有機アンモニウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオンと、Cl-、Br-、I-、ClO-、ClO2 -、ClO3 -、ClO4 -、NO2 -、NO3 -、SO4 2-、CO3 2-、HCO3 -、HCOO-、(COO-2、COOH(COO-)、CH3COO-、C24(COO-2、C65COO-、C64(COO-2、PO4 3-、HPO4 2-、及びH2PO4 -からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、が結合して構成される塩
Bk2インクを付与する境界領域の幅を広くするほど、ブリーディングを抑制することができた。但し、境界領域の幅を広くしすぎると、ブリーディングは抑制される一方、Bk1インクを付与して記録したブラック画像と、Bk2インクを付与した境界領域との光学濃度差が視認されやすくなり、画像に白もやが発生することがわかった。種々のフルカラー画像を記録して検討した結果、境界領域の幅を40μm以上130μm以下とすると、ブリーディングを効果的に抑制できるとともに、ブラック画像の光学濃度差が目立たなくなり、画像の均一感が向上することがわかった。
上記の境界領域には、Bk2インクのみを付与してもよく、Bk1インク及びBk2インクを付与してもよい。但し、境界領域に付与するBkインクのγ10と、Cインク、Mインク、及びYインクのγ10との差を、いずれも3mN/m以内とすることが必要である。ここで、「境界領域に付与するBkインクのγ10」とは、Bk2インクのみを境界領域に付与する場合には「Bk2インクのγ10」を意味する。また、Bk1インク及びBk2インクを境界領域に付与する場合には、「Bk1インク及びBk2インクを、付与した比率と同一の比率で混合したインクのγ10」を意味する。
各インクの付与順は特に限定されず、どのような順序でインクを付与してもブリーディングを抑制することができる。例えば、Bk1インクを付与した後、Cインク、Mインク、及びYインクを付与し、さらに隣接部分にBk2インクを付与する場合であっても、ブリーディングを抑制することができる。上記の場合、Cインク、Mインク、及びYインクが、Bk1インクへと引き込まれて移動することになるが、明度の高いインクが明度の低いBk1インクに引き込まれるために視認されにくい。そして、1パスで記録する場合においては、Bk1インクがCインク、Mインク、及びYインクの方へと流れる前に、γ10の値がより小さいBk2インクが付与されるため、ブリーディングが抑制されると考えられる。
境界領域以外の領域、すなわち非境界領域には、Bk1インクのみを付与してもよく、Bk1インク及びBk2インクを付与してもよい。但し、非境界領域に付与するBkインクのγ50を、45mN/m以上とすることが必要である。ここで、「非境界領域に付与するBkインクのγ50」とは、Bk1インクのみを非境界領域に付与する場合には「Bk1インクのγ50」を意味する。また、Bk1インク及びBk2インクを非境界領域に付与する場合には、「Bk1インク及びBk2インクを、付与した比率と同一の比率で混合したインクのγ50」を意味する。
Bk2インク、Cインク、Mインク、及びYインクは、いずれも、自己分散顔料を含有してもよく、樹脂分散顔料を含有してもよい。但し、普通紙だけでなく、光沢紙にも画像を記録することを考慮する場合、Bk2インク、Cインク、Mインク、及びYインクは、樹脂分散剤で分散された樹脂分散を含有する必要がある。さらに、Bk2インクは、DBP吸油量が100mL/100g以下のカーボンブラックが樹脂分散剤で分散された樹脂分散顔料を含有する必要がある。そして、光沢紙に画像を記録する場合には、Bkインクの付与箇所にはBk2インクのみを付与し、Bk1インクを付与しない(Bk1インクを使用しない)。Bk1インクには、DBP吸油量が100mL/100g以上のカーボンブラックを用いた自己分散顔料が含有されている。このため、Bk1インクを光沢紙に付与すると、光沢感が失われたブラック画像が記録されることとなる。
<水性インク>
本発明のインクジェット記録方法では、顔料を含有する複数の水性インクで構成されるインクセットを用いて画像を記録する。以下、本発明のインクジェット記録方法で用いるインクセットを構成する水性インクに含有させる成分や、水性インクの物性などについて詳細に説明する。
(顔料)
インクは、顔料を色材として含有する。第1のインクジェット記録方法で用いるBk1インクは、カーボンブラックを顔料として含有する。第1のインクジェット記録方法で用いるBk2インクには、カーボンブラックを顔料として含有させることができる。また、第2のインクジェット記録方法で用いるBk1インク及びBk2インクは、いずれもカーボンブラックを顔料として含有する。
Cインク、Mインク、及びYインクには、それぞれ、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、及びアゾ顔料などの有機顔料を用いることができる。Cインクに用いる有機顔料としては、C.I.ピグメントブルー15を挙げることができる。Mインクに用いる有機顔料としては、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントバイオレット19、キナクリドン顔料の固溶体などを挙げることができる。Yインクに用いる有機顔料としては、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー155などを挙げることができる。
Bk1インクに含有させる顔料は、カーボンブラックの粒子表面にカルボン酸基及びホスホン酸基の少なくともいずれかが直接又は他の原子団を介して結合した自己分散顔料である。第2のインクジェット記録方法で用いるBk2インクに含有させる顔料は、カーボンブラックが樹脂分散剤で分散された樹脂分散顔料である。また、第2のインクジェット記録方法で用いるCインク、Mインク、及びYインクに含有させる顔料は、いずれも樹脂分散顔料である。第1のインクジェット記録方法で用いるCインク、Mインク、及びYインクに含有させる顔料の分散方法は特に限定されず、自己分散顔料及び樹脂分散顔料のいずれであってもよい。樹脂分散顔料には、樹脂分散剤で顔料を分散させた樹脂分散顔料の他、顔料の粒子表面を樹脂で被覆したマイクロカプセル型顔料や、顔料の粒子表面に高分子を含む有機基が化学的に結合した樹脂結合型顔料が含まれる。
カーボンブラックのDBP吸油量は、JIS K6221に準拠した方法や、ASTMD 2414に準拠した方法により測定することができる。これらの方法は、カーボンブラック100gにフタル酸ジブチルを撹拌下に滴下し、トルクが最大となった時点でのフタル酸ジブチルの滴下量を測定する方法である。第1ブラックインクに用いるカーボンブラックのDBP吸油量は、100mL/100g以上であり、120mL/100g以上であることがさらに好ましい。また、第1ブラックインクに用いるカーボンブラックのDBP吸油量は、200mL/100g以下であることが好ましく、150mL/100g以下であることがさらに好ましい。また、第2インクに用いるカーボンブラックのDBP吸油量は10mL/100g以上100mL/100g以下であることが好ましく、30mL/100g以上70mL/100g以下であることがさらに好ましい。
自己分散顔料は、顔料の粒子表面に直接又は他の原子団(−R−)を介してアニオン性基が結合したものである。このような自己分散顔料を用いることで、顔料をインク中に分散させるための分散剤の添加が不要となる、又は分散剤の添加量を少量とすることができる。
アニオン性基は、インク中で一部が解離した状態であってもよく、全てが解離した状態であってもよい。アニオン性基としては、カルボン酸基、ホスホン酸基を挙げることができる。アニオン性基のカウンターイオンとしては、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムなどのカチオンを挙げることができる。また、アニオン性基は、顔料の粒子表面に他の原子団(−R−)を介して結合していてもよい。他の原子団(−R−)としては、アルキレン基、アリーレン基、アミド基、スルホニル基、イミノ基、カルボニル基、エステル基、エーテル基、これらの基を組み合わせた基などを挙げることができる。
樹脂分散顔料は、樹脂分散剤によって顔料が分散されたものである。樹脂分散剤としては、親水性ユニット及び疎水性ユニットを構成ユニットとして有するアクリル樹脂、好適には水溶性のアクリル樹脂を用いることが好ましい。本発明における「水溶性の樹脂」とは、酸価と当量のアルカリで中和し、動的光散乱法により測定した場合に、粒子径を測定し得る粒子を形成しない樹脂であることを意味する。以下、アクリル樹脂を構成する各ユニットについて説明する。本発明における「(メタ)アクリル」とは、アクリル、メタクリルを意味する。
親水性ユニットは、酸基やヒドロキシ基などの親水性基を有する単量体を重合することで形成される。親水性基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボン酸基を有する酸性単量体;(メタ)アクリル酸−2−ホスホン酸エチルなどのホスホン酸基を有する酸性単量体;これらの酸性単量体の無水物や塩などのアニオン性単量体;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシ基を有する単量体;メトキシ(モノ、ジ、トリ、ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートなどのエチレンオキサイド基を有する単量体などを挙げることができる。アニオン性単量体の塩を構成するカチオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオンなどを挙げることができる。
疎水性ユニットは、酸基やヒドロキシ基などの親水性基を有しない、疎水性の単量体を重合することで形成される。疎水性の単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有する単量体;エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(n−、iso−、t−)ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの脂肪族基を有する単量体などを挙げることができる。
(塩)
第1ブラックインクは、所定の塩を含有することが好ましい。「塩」とは、カチオンとアニオンとがイオン結合した化合物を意味する。第1ブラックインクに塩を含有させることで、水分蒸発によるBk1インクの粘度上昇をさらに早めることができるため、白もやがより有効に抑制された画像を記録できる。第1ブラックインク中の塩の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.20質量%以上0.50質量%以下であることが好ましい。なお、第1ブラックインク以外の各インクにも塩を含有させてもよいが、含有させないことが好ましい。
第1ブラックインクに含有させる塩は、1種以上のカチオンと、1種以上のアニオンとが電荷を中和するように結合して形成された化合物であることが好ましい。カチオンは、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び有機アンモニウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種である。アニオンは、Cl-、Br-、I-、ClO-、ClO2 -、ClO3 -、ClO4 -、NO2 -、NO3 -、SO4 2-、CO3 2-、HCO3 -、HCOO-、(COO-2、COOH(COO-)、CH3COO-、C24(COO-2、C65COO-、C64(COO-2、PO4 3-、HPO4 2-、及びH2PO4 -からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
アルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどを挙げることができる。また、有機アンモニウムイオンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミンなどの炭素数1以上3以下のアルキルアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの炭素数1以上4以下のアルカノールアミン類;などのカチオンを挙げることができる。なかでも、アルカリ金属イオンが好ましく、カリウムイオンが特に好ましい。
カチオンとアニオンとが結合して構成される塩としては、例えば、1価のカチオンを(M2)として表すと、(M2)Cl、(M2)Br、(M2)I、(M2)ClO、(M2)ClO2、(M2)ClO3、(M2)ClO4、(M2)NO2、(M2)NO3、(M22SO4、(M22CO3、(M2)HCO3、HCOO(M2)、(COO(M2))2、COOH(COO(M2))、CH3COO(M2)、C24(COO(M2))2、C65COO(M2)、C64(COO(M2))2、(M23PO4、(M22HPO4、(M2)H2PO4を挙げることができる。なかでも、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸アンモニウム、クエン酸三ナトリウム、フタル酸カリウム、フタル酸アンモニウムなどが好ましい。
(水性媒体)
インクには、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。インクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性インクである。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、40.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができ、1種又は2種以上を含有させることができる。水溶性有機溶剤は、25℃における蒸気圧が水よりも低いものが好ましい。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましく、15.0質量%以上30.0質量%以下であることがさらに好ましい。
(その他の成分)
インクには、上記成分以外にも必要に応じて、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンや、尿素、エチレン尿素などの含窒素化合物などの常温で固体の有機化合物を含有させてもよい。上記の成分の他に、さらに必要に応じて、樹脂、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤などの種々の添加剤をインクに含有させてもよい。
インクには界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤の種類としては、公知のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤などを挙げることができる。なかでも、ノニオン性界面活性剤を好適に用いることができる。
(インクの物性)
最大泡圧法により25℃の条件下で測定される、寿命時間10m秒における動的表面張力(γ10)、又は寿命時間50m秒における動的表面張力(γ50)が所定の値に調整されたインクを用いる。インクの動的表面張力は、例えば、界面活性剤や水溶性有機溶剤の種類及び含有量を適宜調整することによって調整することができる。
第1ブラックインクの寿命時間10m秒における動的表面張力は、50mN/m以上65mN/m以下であることが好ましく、50mN/m以上60mN/m以下であることがさらに好ましい。また、第2ブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの各インクの寿命時間10m秒における動的表面張力は、40mN/m以下であり、25mN/m以上であることが好ましく、30mN/m以上40mN/m以下であることがさらに好ましい。
第1ブラックインクの寿命時間50m秒における動的表面張力は、45mN/m以上であり、60mN/m以下であることが好ましく、49mN/m以上60mN/m以下であることがさらに好ましい。また、第2ブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの各インクの寿命時間50m秒における動的表面張力は、25mN/m以上42mN/m以下であることが好ましく、30mN/m以上40mN/m以下であることがさらに好ましい。
<インクカートリッジ>
インクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、このインク収容部に収容されているインクが、上記で説明したインクである。図1は、インクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、インクカートリッジの底面には、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給口12が設けられている。インクカートリッジの内部はインクを収容するためのインク収容部となっている。インク収容部は、インク収容室14と、吸収体収容室16とで構成されており、これらは連通口18を介して連通している。また、吸収体収容室16はインク供給口12に連通している。インク収容室14には液体のインク20が収容されており、吸収体収容室16には、インクを含浸状態で保持する吸収体22及び24が収容されている。インク収容部は、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容されるインク全量を吸収体により保持する形態であってもよい。また、インク収容部は、吸収体を持たず、インクの全量を液体の状態で収容する形態であってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
<インクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録方法では、例えば、インクセットを構成する、上記で説明した複数のインクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。上記で説明した複数のインクを用いること、及びこれらのインクを所定の領域に付与して画像を記録すること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
図2は、本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。インクジェット記録装置には、記録媒体32を搬送する搬送手段(不図示)、及びキャリッジシャフト34が設けられている。キャリッジシャフト34にはヘッドカートリッジ36が搭載可能となっている。ヘッドカートリッジ36は記録ヘッド38及び40を具備しており、インクカートリッジ42がセットされるように構成されている。ヘッドカートリッジ36がキャリッジシャフト34に沿って主走査方向に搬送される間に、記録ヘッド38及び40から記録媒体32に向かってインク(不図示)が吐出される。そして、記録媒体32が搬送手段(不図示)により副走査方向に搬送されることによって、記録媒体32に画像が記録される。ここでは、シリアル方式の記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置を例に挙げて説明したが、記録媒体の幅をカバーする領域の全体にわたって吐出口列が配列された、ライン方式の記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置を用いてもよい。
本発明のインクジェット記録方法により画像を記録する対象とする記録媒体としては、どのようなものを用いてもよい。普通紙は、コート層を有しない記録媒体であり、その表面に記録媒体を構成するセルロースが存在する。普通紙に画像を記録する場合には記録速度が重視されるため、単位領域へのインクの付与を、記録ヘッドと普通紙の一度の相対走査において行う1パス記録とする。また、光沢紙は、コート層を有する記録媒体であり、その表面には光沢を呈するインク受容層が形成されている。「光沢」の範囲は、目視で光沢感が感じられればよく、例えば、20°光沢度(JIS K5600)が20以上である光沢性を有する光沢紙を用いることが好ましい。光沢紙に画像を記録する場合、単位領域へのインクの付与は、記録ヘッドと普通紙の一度の相対走査において行う1パス記録、及び記録ヘッドと普通紙の複数回の相対走査において行うマルチパス記録のいずれであってもよい。但し、通常、光沢紙に記録する画像は高精細であることが重視されるため、マルチパス記録とすることが好ましい。
記録ヘッドと記録媒体の相対走査の方式は、記録ヘッドの構成(シリアル方式又はライン方式)により決定することができる。1パス記録とマルチパス記録の両方を可能とするため、シリアル方式の記録ヘッドを搭載した記録装置を用いることが好ましい。単位領域は、1画素、1バンド(シリアル方式の記録ヘッドを用いる場合に、1回の記録ヘッドの主走査で記録しうる領域)などから任意に設定することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<樹脂の合成>
表1に示す各単量体(単位:部)を常法にしたがって共重合して、水溶性の樹脂1〜3をそれぞれ合成した。水酸化カリウム水溶液を添加して樹脂中の酸性基を中和率が100%となるように中和した後、イオン交換水をさらに添加して、樹脂(固形分)の含有量が20.0%である樹脂1〜3の水溶液を得た。樹脂の水溶液に塩酸を添加して析出させた析出物を40℃で一晩真空乾燥して樹脂を得た。得られた樹脂をテトラヒドロフランに溶解させて調製した溶液を測定用試料とし、電位差自動滴定装置(商品名「AT−510」、京都電子工業製)を使用して樹脂の酸価を測定した。滴定液としては、水酸化カリウムメタノール滴定液を用いた。結果を表1に示す。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、得られた樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量を測定した。結果を表1に示す。また、表1中の単量体の略称の意味を以下に示す。
・St:スチレン
・BzMA:ベンジルメタクリレート
・MMA:メチルメタクリレート
・BA:ブチルアクリレート
・AA:アクリル酸
Figure 2018149802
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液1〜6、13、17、19、及び21)
シルヴァーソン混合機を使用し、表2に示す種類の顔料20.0g、処理剤、及び純水200mLを室温条件下、6,000rpmで30分混合して混合物を得た。得られた混合物に、少量の水に溶解させた亜硝酸カリウム(処理剤と等モル)をゆっくりと添加して混合した。この混合によって混合物の温度は60℃に達し、この状態で1時間反応させた。水酸化カリウム水溶液を用いて混合物のpHを10に調整した。30分後に純水20mLを添加し、スペクトラムメンブランを用いてダイアフィルトレーションして自己分散顔料を調製した。調製した自己分散顔料に水を添加し、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液1〜6、13、17、19、及び21を調製した。表2中の処理剤の種類を以下に示す。
・処理剤1:4−アミノフタル酸
・処理剤2:((4−アミノベンゾイルアミノ)−メタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸カリウム
・処理剤3:p−アミノ安息香酸
・処理剤4:4−アミノベンゼンスルホン酸
(顔料分散液7〜12、14〜16、18、及び20)
表2に示す種類の顔料20.0部、樹脂(樹脂分散剤)の水溶液(樹脂(固形分)の含有量:20.0%)30.0部、及びイオン交換水50.0部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを使用して10時間分散させて分散液を得た。得られた分散液を遠心分離して粗大粒子を除去した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過し、分散液を調製した。調製した分散液に適量のイオン交換水を添加して、顔料分散液7〜12、14〜16、18、及び20を調製した。
Figure 2018149802
<インクの調製>
表3−1、3−2、4−1、4−2、5及び6の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過して各インクを調製した。表3−1、3−2、4−1、4−2、5及び6中の「アセチレノールE100」は、川研ファインケミカル製の界面活性剤の商品名であり、「エマール20SC」は、花王製の界面活性剤の商品名である。動的表面張力計(商品名「BUBBLE PRESSURE TENSIOMETER BP−2」、KRUSS製)を使用し、25℃の条件下で最大泡圧法により調製したインクの動的表面張力γ10及びγ50を測定した。結果を表3−1、3−2、4−1、4−2、5及び6に示す。
Figure 2018149802
Figure 2018149802
Figure 2018149802
Figure 2018149802
Figure 2018149802
Figure 2018149802
<評価>
熱エネルギーの作用により液体を吐出させる記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置(商品名「PIXUS Pro9500」(キヤノン製)を改造したもの)を使用して画像を記録した。調製した各インクをインクカートリッジにそれぞれ充填した。そして、第1ブラック(Bk1)インクをイエローのポジションにセットし、第2ブラック(Bk2)インクをマゼンタのポジションにセットした。さらに、イエロー(Y)インクをグリーンのポジション、マゼンタ(M)インクをレッドのポジション、及びシアン(C)インクをシアンのポジションにそれぞれセットした。本実施例においては、1/1200インチ×1/1200インチを「1ピクセル」と定義し、1ピクセルの単位領域に4.5ng±10%付与する条件を「記録デューティ100%」であると定義する。
インクセットを構成する各インクの組み合わせ、及び境界領域の幅を表7に示す。また、境界領域に付与するブラックインクの組み合わせ及び比率(Bk2/(Bk1+Bk2))、並びにかかる比率のブラックインクの10m秒における動的表面張力(γ10)を表7に示す。さらに、非境界領域に付与するブラックインクの組み合わせ及び比率(Bk1/(Bk1+Bk2))、並びにかかる比率のブラックインクの50m秒における動的表面張力(γ50)を表7に示す。
Figure 2018149802
本実施例においては、以下に示す各項目の評価基準において、「A」及び「B」を好ましいレベルとし、「C」を許容できないレベルとした。
(1)普通紙を用いた評価
記録ヘッドの吐出口の配置幅分の画像を、(i)記録ヘッドのホームポジションから開始する1回の走査、又は(ii)記録ヘッドのホームポジションの逆側から開始する1回の走査で記録する、1パス双方向記録により記録した。さらに、ブラックインクの付与箇所(ブラック画像)を境界領域と非境界領域に分け、Bk1インクとBk2インクを任意に使い分けて各領域に画像を記録した。元のフルカラー画像から、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの各インクの付与箇所をピクセルごとに決定する。その後、ピクセルごとに、シアン、マゼンタ、及びイエローのいずれかのインクを付与する/付与しない、の2値情報の画像を記録し、その画像の境界を任意の幅で拡張させた画像を作製した。次に、拡張させた画像から、シアン、マゼンタ、及びイエローの各インクの付与箇所を統合した画像を差し引いた画像を作製し、作製した画像と、ブラックインクの付与箇所の重なり合った部分を抽出した。そして、シアン、マゼンタ、及びイエローの各インクの付与箇所と、ブラックインクの付与箇所との境界領域を決定した。なお、拡張させる幅は、設定する境界領域の幅に相当する。
(ブラック画像の光学濃度)
商品名「PB PAPER」(キヤノン製)、商品名「Canon Extra」(キヤノン製)、及び商品名「BUSINESS MULTIPURPOSE 4200 PAPER」(ゼロックス製)の3種の記録媒体(普通紙)を用意した。用意した記録媒体に、1インチ×1インチのブラックのベタ画像(記録デューティ100%)を1パスでそれぞれ記録した。1日後、分光光度計(商品名「Spectrolino」、Gretag Macbeth製)を使用し、光源:D50、視野:2°の条件で記録したベタ画像の光学濃度を測定した。3種の記録媒体に記録したベタ画像の光学濃度の平均値及び最低値より、以下に示す評価基準にしたがってブラック画像の光学濃度を評価した。結果を表8に示す。
A:平均値が1.4以上、かつ、最低値が1.3以上であった。
B:平均値が1.4以上、かつ、最低値が1.2以上1.3未満であった。
C:平均値が1.4未満であった。
(ブラック画像の鮮鋭性)
商品名「PB PAPER」(キヤノン製)、商品名「Canon Extra」(キヤノン製)、及び商品名「BUSINESS MULTIPURPOSE 4200 PAPER」(ゼロックス製)の3種の記録媒体(普通紙)を用意した。用意した記録媒体に、6ポイントのブラックのゴシック文字を1パスでそれぞれ記録した。記録した文字を1日後に観察し、以下に示す評価基準にしたがってブラック画像の鮮鋭性を評価した。結果を表8に示す。
A:3種の記録媒体のいずれにおいても、文字ににじみがなかった。
B:1種のみの記録媒体において、文字ににじみがあった。
C:2種以上の記録媒体において、文字ににじみがあった。
(境界領域付近の耐ブリーディング性)
商品名「PB PAPER」(キヤノン製)、商品名「Canon Extra」(キヤノン製)、及び商品名「BUSINESS MULTIPURPOSE 4200 PAPER」(ゼロックス製)の3種の記録媒体(普通紙)を用意した。用意した記録媒体に、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの背景部分(記録デューティ100%)と、6ポイントのシアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックのゴシック文字(記録デューティ100%)を1パスでそれぞれ記録した。なお、背景部分と文字が同色となる組み合わせについては省略した。記録した画像を1日後に観察し、以下に示す評価基準にしたがって耐ブリーディング性を評価した。結果を表8に示す。
A:3種の記録媒体のいずれにおいても、いずれのカラーの組み合わせにおいても文字ににじみがなかった。
B:1種のみの記録媒体において、いずれかのカラーの組み合わせにおいて文字ににじみがあった。
C:2種以上の記録媒体において、いずれかのカラーの組み合わせにおいて文字ににじみがあった。
(境界領域付近の白もや)
商品名「PB PAPER」(キヤノン製)、商品名「Canon Extra」(キヤノン製)、及び商品名「BUSINESS MULTIPURPOSE 4200 PAPER」(ゼロックス製)の3種の記録媒体(普通紙)を用意した。用意した記録媒体に、シアン、マゼンタ、及びイエローの背景部分(記録デューティ100%)と、12ポイントのブラックのゴシック文字(記録デューティ100%)を1パスでそれぞれ記録した。記録した画像を1日後に観察し、カラーの背景部分に隣接した文字領域の白もやの状態を以下に示す評価基準にしたがって評価した。結果を表8に示す。
A:3種の記録媒体のいずれにおいても、文字領域内の光学濃度が均一であった。
B:1種のみの記録媒体において、文字領域内に光学濃度の低い箇所があった。
C:2種以上の記録媒体において、文字領域内に光学濃度の低い箇所があった。
Figure 2018149802
耐ブリーディング性の評価について、比較例9では、ブラックとシアン、及びブラックとマゼンタの組み合わせ以外にも、シアンとイエロー、及びマゼンタとイエローの組み合わせで文字ににじみがあった。一方、比較例9以外では、シアン、マゼンタ、及びイエローの各組み合わせで文字ににじみがなかった。
(2)光沢紙を用いた評価
記録ヘッドの吐出口の配置幅分の画像を、(i)記録ヘッドのホームポジションから開始する走査、及び(ii)記録ヘッドのホームポジションの逆側から開始する走査を交互に行い、合計8回の走査で記録する8パス双方向記録により記録した。なお、ブラックインクの付与箇所には、Bk2インクのみを付与して記録した。
(ブラック画像の光学濃度)
商品名「キヤノン写真用紙・光沢ゴールド」(キヤノン製)を記録媒体(光沢紙、20°光沢度=39)として用意した。20°光沢度は、ヘイズメーター(商品名「マイクロヘイズプラス」、ビックガードナー製)を用い、JIS K5600に準拠して測定した。用意した記録媒体に、1インチ×1インチのブラックのベタ画像(記録デューティ100%)を8パスで記録した。1日後、分光光度計(商品名「Spectrolino」、Gretag Macbeth製)を使用し、光源:D50、視野:2°の条件で記録したベタ画像の光学濃度を測定し、以下に示す評価基準にしたがってブラック画像の光学濃度を評価した。結果を表9に示す。
A:光学濃度が2.0以上であった。
B:光学濃度が1.8以上2.0未満であった。
C:光学濃度が1.8未満であった。
(各色画像の光沢性)
商品名「キヤノン写真用紙・光沢ゴールド」(キヤノン製)を記録媒体(光沢紙)として用意した。用意した記録媒体に、1インチ×1インチのブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローのベタ画像(記録デューティ100%)を8パスでそれぞれ記録した。記録したベタ画像を1日後に観察し、以下に示す評価基準にしたがって光沢性を評価した。結果を表9に示す。
A:いずれの色のベタ画像も光沢感を有していた。
C:いずれかの色のベタ画像が光沢感を有しておらず、マット調であった。
Figure 2018149802
1:非記録領域
2:カラー記録領域
3:境界領域
4:非境界領域

Claims (4)

  1. 顔料を含有する複数の水性インクで構成されるインクセットを用い、一度の走査で普通紙の単位領域に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記インクセットが、第1ブラックインク及び第2ブラックインクを含むブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、並びにイエローインクで構成され、
    前記第1ブラックインクの50m秒における動的表面張力が、45mN/m以上であり、
    前記第2ブラックインク、前記シアンインク、前記マゼンタインク、及び前記イエローインクの10m秒における動的表面張力が、それぞれ40mN/m以下であり、
    前記シアンインク、前記マゼンタインク、及び前記イエローインクの10m秒における動的表面張力の差が、いずれの組み合わせにおいても3mN/m以内であり、
    前記第1ブラックインクは、DBP吸油量が100mL/100g以上のカーボンブラックの粒子表面にカルボン酸基及びホスホン酸基の少なくともいずれかが直接又は他の原子団を介して結合した自己分散顔料を含有し、
    前記ブラックインクの付与箇所のうち、前記シアンインク、前記マゼンタインク、及び前記イエローインクの少なくともいずれかのインクの付与箇所との境界領域には、前記第2ブラックインクのみを付与する、又は、前記第1ブラックインク及び前記第2ブラックインクを付与するとともに、前記境界領域に付与する前記ブラックインクの10m秒における動的表面張力と、前記シアンインク、前記マゼンタインク、及び前記イエローインクの10m秒における動的表面張力との差を、いずれも3mN/m以内とし、
    前記ブラックインクの付与箇所のうち、前記境界領域以外の非境界領域には、前記第1ブラックインクのみを付与する、又は、前記第1ブラックインク及び前記第2ブラックインクを付与するとともに、前記非境界領域に付与する前記ブラックインクの50m秒における動的表面張力を、45mN/m以上とし、かつ、
    前記境界領域の幅を、40μm以上130μm以下とすることを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. 顔料を含有する複数の水性インクで構成されるインクセットを用い、普通紙又は光沢紙に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記インクセットが、第1ブラックインク及び第2ブラックインクを含むブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、並びにイエローインクで構成され、
    前記第1ブラックインクの50m秒における動的表面張力が、45mN/m以上であり、
    前記第2ブラックインク、前記シアンインク、前記マゼンタインク、及び前記イエローインクの10m秒における動的表面張力が、それぞれ40mN/m以下であり、
    前記シアンインク、前記マゼンタインク、及び前記イエローインクの10m秒における動的表面張力の差が、いずれの組み合わせにおいても3mN/m以内であり、
    前記第1ブラックインクは、DBP吸油量が100mL/100g以上のカーボンブラックの粒子表面にカルボン酸基及びホスホン酸基の少なくともいずれかが直接又は他の原子団を介して結合した自己分散顔料を含有し、
    前記第2ブラックインクは、DBP吸油量が100mL/100g以下のカーボンブラックが樹脂分散剤で分散された樹脂分散顔料を含有し、
    前記シアンインク、前記マゼンタインク、及び前記イエローインクは、樹脂分散顔料を含有し、
    一度の走査で普通紙の単位領域に画像を記録する場合には、
    前記ブラックインクの付与箇所のうち、前記シアンインク、前記マゼンタインク、及び前記イエローインクの少なくともいずれかのインクの付与箇所との境界領域には、前記第2ブラックインクのみを付与する、又は、前記第1ブラックインク及び前記第2ブラックインクを付与するとともに、前記境界領域に付与する前記ブラックインクの10m秒における動的表面張力と、前記シアンインク、前記マゼンタインク、及び前記イエローインクの10m秒における動的表面張力との差を、いずれも3mN/m以内とし、
    前記ブラックインクの付与箇所のうち、前記境界領域以外の非境界領域には、前記第1ブラックインクのみを付与する、又は、前記第1ブラックインク及び前記第2ブラックインクを付与するとともに、前記非境界領域に付与する前記ブラックインクの50m秒における動的表面張力を、45mN/m以上とし、かつ、
    前記境界領域の幅を、40μm以上130μm以下とし、
    光沢紙に画像を記録する場合には、
    前記ブラックインクの付与箇所には、前記第2ブラックインクのみを付与することを特徴とするインクジェット記録方法。
  3. 前記第1ブラックインクの50m秒における動的表面張力が、49mN/m以上である請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記第1ブラックインクが、さらに、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び有機アンモニウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオンと、Cl-、Br-、I-、ClO-、ClO2 -、ClO3 -、ClO4 -、NO2 -、NO3 -、SO4 2-、CO3 2-、HCO3 -、HCOO-、(COO-2、COOH(COO-)、CH3COO-、C24(COO-2、C65COO-、C64(COO-2、PO4 3-、HPO4 2-、及びH2PO4 -からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、が結合して構成される塩を含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
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