JP7287131B2 - インクジェット記録用インクセットおよび画像記録方法 - Google Patents
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Description
本発明において用いるインクは、顔料と樹脂とを含む顔料分散体、有機溶媒、および水とを含むものである。また、本発明において用いるインクは、必要に応じ、インクに含まれる成分の溶解状態を安定化させる溶解安定剤、およびインクからの液体成分の揮発を抑制してインクの粘性を安定化させる保湿剤を含んでいてもよい。以下、本発明に用いるインクに含まれる、顔料分散体、水、有機溶媒、溶解安定剤、および保湿剤について順に説明する。
顔料分散体中に含有させることができる顔料は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来からインクジェット記録装置用インクの着色剤として使用されている顔料から適宜選択して使用できる。シアンインクに含有させることができる顔料の具体例としてはC.I.ピグメントブルー15等の青色顔料が挙げられる。イエローインクに含有させることができる顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー74、93、95、109、110、120、128、138、139、151、154、155、173、180、185、193等の黄色顔料が挙げられる。マゼンタインクに含有させることができる顔料としてはC.I.ピグメントレッド122、202等の赤色顔料が挙げられる。ブラックインクに含有させることができる顔料としてはC.I.ピグメントブラック4、7(B.K-4、7、カーボンブラック)等の黒色顔料が挙げられる。
本発明において用いるインクは、水性インクであり、水を必須成分として含む。インクに含まれる水は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来、水性インクの製造に使用されている水から、所望の純度の水を適宜選択して使用できる。インク中の水の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。インク中の水の含有量は、後述する他の成分の使用量に応じて適宜変更される。インク中の水の含有量としては、典型的には、インクの全質量に対して20~70質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましい。
本発明に用いるインクは、インクの記録媒体への浸透を促進させる目的等で有機溶媒を含む。好適な有機溶媒の具体例としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、およびトリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルや、1,2-ヘキシレングリコール、1,2-オクタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、および2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール等の炭素原子数6~9のアルカンジオール等が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。インク中の有機溶媒の含有量は、インクの全質量に対して5~20質量%が好ましく、10~15質量%がより好ましい。
溶解安定剤は、インクに含まれる成分を相溶化してインクの溶解状態を安定化させる成分である。溶解安定剤の具体例としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、およびγ-ブチロラクトン等が挙げられる。これらの溶解安定剤は2種以上を組み合わせて用いることができる。インクが溶解安定剤を含有する場合、溶解安定剤の含有量は、インクの全質量に対して1~20質量%が好ましく、3~15質量%がより好ましい。
保湿剤は、インクからの液体成分の揮発を抑制してインクの粘性を安定化させる成分である。保湿剤と水の量を調整することで、インクの粘度を調整することができる。保湿剤の具体例は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、チオジグリコール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、およびグリセリン等が挙げられる。これらの保湿剤の中では、水等の液体成分の揮発の抑制効果に優れることからグリセリンがより好ましい。保湿剤は2種以上を組み合わせて用いることができる。インクが保湿剤を含有する場合、保湿剤の含有量は、インクの全質量に対して5~30質量%が好ましく、12~20質量%がより好ましい。
インクの製造方法は、顔料分散体、水、有機溶媒等のインク成分を均一に混合することができれば特に限定されない。インクジェット記録装置用インクの製造方法の具体例としては、インクの各成分を混合機により均一に混合した後、孔径5μm以下のフィルターにより異物や粗大粒子を除去する方法が挙げられる。なお、インクを製造する際には、必要に応じて上述した溶解安定剤、保湿剤の他、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤、防腐防カビ剤等の、従来インクジェット記録用のインクに配合されている種々の添加剤を適宜配合することができる。
本発明の画像記録方法において用いられる2種以上のインクを規定する動的表面張力とは、液表面(気-液界面)が形成された直後であって、液表面が非平衡状態にあるときの表面張力であり、表面寿命とは、液表面が形成されてからの経過時間である。そして、表面寿命の経過につれて、液表面はインク中の各成分が拡散して平衡状態に近づくため表面張力が低下する。このように液表面が平衡状態となったときの表面張力が静的表面張力である。インクジェット記録用のインクは、記録ヘッドからインク滴が吐出され、ごく短時間で記録媒体に着弾するため、インクの記録媒体に対する種々の性質は、インクの動的表面張力により規定することが、実際の状況に対してより適切である(特開2011-207146、段落0019参照)。
本発明の画像記録方法において用いるインクジェット記録装置は特に限定されないが、高品質の画像を高速で形成できることから、インクジェット記録装置として、ラインヘッド方式のインクジェット記録装置を用いるのが好ましい。ラインヘッド方式のインクジェット記録装置では、オフセットによる画像の汚れや、カラーブリードが生じやすいが、本発明のインクセットを用いる画像記録方法によれば、これらの問題が生じにくい。
イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックの各色について、顔料、分散樹脂(スチレン-アクリル樹脂)、界面活性剤(オルフィンE1010、アセチレンジオールのエチレンオキシド付加物、日信化学工業社製)と、水とを表1に示す割合で混合し、合計割合が100質量%となった組成物を、湿式分散機であるダイノミル(シンマルエンタープライゼス社製)のベッセルに充填した後、分散処理を行い、各色の顔料分散体を得た。各色の顔料は、イエロー顔料としてP.Y-74を、マゼンタ顔料としてP.R-122を、シアン顔料としてP.B-15:3を、ブラック顔料としてB.K-4をそれぞれ用いた。
調製された顔料分散体を用いて、表2に示したインク配合を行うことで、顔料インクを作製した。具体的には、表2の組成となるように各成分を攪拌機にて攪拌しながら、順に添加した。
作製されたインクセットについて、図1に示した4つのラインヘッド11a~11dを備えるラインヘッド方式のインクジェット記録装置100を用い、オフセット、サテライト、およびカラーブリードの発生の有無について評価した。
オフセット性の評価は、インクジェット記録装置100におけるラインヘッド11a~11d毎に、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各インクを単色で用い、且つ動的表面張力ごとに評価を行った。具体的には、ラインヘッド11a~11dの各記録ヘッド17a~17cにインクを充填し、インク吐出面から漏出している余剰液をワイプブレードにより掻きとった。記録ヘッドのインク吐出面と用紙Sとの距離を1mmに固定し、給紙部から排出部までの用紙Sの搬送速度を846.7mm/秒に設定した。用紙SとしてIJW(王子製紙社製)をA4サイズにカットしたものを用い、記録ヘッド17a~17cから用紙Sへのインクの打ち込み量が15g/m2となるようにインクを吐出して、10cm×10cmのベタ画像を連続10枚形成した。10枚目に画像が形成された用紙Sについて、用紙Sを排出する排出ローラー対16を構成する、表面材質がポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)である従動ローラー16bと接触した後の用紙Sの非画像部の状態と、従動ローラー16bへのインクの付着の状況を目視により観察してオフセット性を評価した。
サテライトの評価は、図1のラインヘッド11a~11dから、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックのインクをそれぞれ吐出して、動的表面張力ごとに評価を行った。具体的には、画像濃度評価方法と同様の条件・方法により、5cm×5cmのベタ画像を1枚形成した。形成したベタ画像を顕微鏡観察してサテライトの評価を行った。
カラーブリードの評価は、単色画像形成によるオフセットの評価方法と同様の条件・方法により、ラインヘッド11a~11dに充填されたイエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックのインクで直線画像を重ね打ちして形成した。直線画像は、線幅が600dpiで10画素分の太さ、実際の画像では0.42mmの太さ(カラーブリードのない理論的な太さ)となるように形成した。形成された画像は、カラースキャナー(GT-X970、セイコーエプソン社製)を用い、1200dpiで取り込み、取り込んだ画像について2値化を行い、画像データを修正した。修正した画像について、ドットアナライザー(Da-6000、王子計測機器社製)を用いて、画像1画素あたりに含まれる輝度(0~255の数値範囲で評価)の分布を測定し、1画素あたりの輝度分布から平均値を求めた。このとき、輝度分布の平均値が1~244であるものを滲んでいるものと定義し、その滲みの長さに応じて、インクのカラーブリードを評価した。
11a~11d ラインヘッド
17a~17c 記録ヘッド
18 インク吐出ノズル
100 インクジェット記録装置
Claims (4)
- 顔料と樹脂とを含む顔料分散体と、有機溶媒と、水とを含有する2種以上のインクで構成され、前記2種以上のインクをそれぞれ吐出する2以上の記録ヘッドを有するインクジェット記録装置に用いられるインクジェット記録用インクセットであって、
前記記録ヘッドから最初に吐出され、表面寿命が10msのときの動的表面張力が最も高く、前記表面寿命が100msのときの前記動的表面張力が最も低い先頭インクと、
前記記録ヘッドから最後に吐出され、前記表面寿命が10msのときの前記動的表面張力が最も低く、前記表面寿命が100msのときの前記動的表面張力が最も高い最終インクと、
を含み、
前記先頭インクと前記最終インクの間に吐出される1種以上の中間インクを含む場合、前記中間インクは、前記表面寿命が10msのときの前記動的表面張力が直前に吐出されるインクよりも低く、且つ前記最終インクよりも高く、前記表面寿命が100msのときの前記動的表面張力が直前に吐出されるインクよりも高く、且つ前記最終インクよりも低く、
前記先頭インクおよび前記最終インクは、前記表面寿命が10msのときの前記動的表面張力が40~44mN/mであり、前記表面寿命が100msのときの前記動的表面張力が28~35mN/mであることを特徴とするインクジェット記録用インクセット。 - 前記有機溶媒は、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,2-オクタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、および2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオールから選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用インクセット。
- 顔料と樹脂とを含む顔料分散体と、有機溶媒と、水とを含有する2種以上のインクを用いて、前記2種以上のインクをそれぞれ吐出する2以上の記録ヘッドを有するインクジェット記録装置により記録媒体に画像を形成する画像記録方法であって、
前記記録ヘッドから最初に吐出される先頭インクとして、表面寿命が10msのときの動的表面張力が最も高く、前記表面寿命が100msのときの前記動的表面張力が最も低いインクを用い、
前記記録ヘッドから最後に吐出される最終インクとして、表面寿命が10msのときの動的表面張力が最も低く、前記表面寿命が100msのときの前記動的表面張力が最も高いインクを用い、
前記先頭インクと前記最終インクの間に1種以上の中間インクを吐出する場合、前記中間インクは、前記表面寿命が10msのときの前記動的表面張力が直前に吐出されるインクよりも低く、且つ前記最終インクよりも高く、前記表面寿命が100msのときの前記動的表面張力が直前に吐出されるインクよりも高く、且つ前記最終インクよりも低く、
前記先頭インクおよび前記最終インクは、前記表面寿命が10msのときの前記動的表面張力が40~44mN/mであり、前記表面寿命が100msのときの前記動的表面張力が28~35mN/mであることを特徴とする画像記録方法。 - 前記有機溶媒は、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,2-オクタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、および2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオールから選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項3に記載の画像記録方法。
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