JP7287131B2 - インクジェット記録用インクセットおよび画像記録方法 - Google Patents

インクジェット記録用インクセットおよび画像記録方法 Download PDF

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Description

本発明は、インクジェット記録ヘッドから記録媒体に吐出して画像を記録するインクジェット記録用インクセットおよびインクセットを用いた画像記録方法に関するものである。
ファクシミリ、複写機、プリンターのような記録装置として、インクを吐出して画像を形成するインクジェット記録装置が、高精細な画像を形成できることから広く用いられている。
このようなインクジェット記録装置では、良好な印字濃度、高速印字、印字の際の裏抜け(印字したインクが記録媒体を通過し、表面に形成された画像が裏面に映る現象)の抑制、異なる色のインク間でのカラーブリードの抑制、およびオフセットによる画像汚れの発生の抑制等が要求されており、これらの課題を解決するために、種々の検討が行われている。
例えば、特許文献1には、少なくとも2色のインクを重ね合わせて2次色画像を形成するインクジェット記録方法において、界面活性剤の含有量の多いインクから順に被記録材上にインクを付着させることで、耐フェザリング性、耐ブリード性を向上させるインクジェット記録方法が開示されている。また、特許文献2には、インクの乾燥粘度、および動的表面張力を所定の値とすることで、乾燥性に優れ、かつ滲みが少なく、吐出信頼性の高いインクジェット記録用インクが開示されている。
特許文献3には、少なくとも2以上の記録ヘッドを有するインクジェット記録装置による画像記録方法において、表面寿命が10msのときの動的表面張力が37~48mN/mであり、且つ、各インクの動的表面張力差がすべて2mN/m以上である2種以上のインクを、動的表面張力の大きいインクから順に吐出して画像形成を行う画像記録方法が開示されている。
特開平10-100530号公報 特開2003-231838号公報 特開2013-107224号公報
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェット記録方法で用いる界面活性剤では、インク中のイオンの種類や濃度によっては、インク中で界面活性剤が分離してしまう。そのため、界面活性剤の含有量だけでノズルからインクを吐出する順番を決めると所望の効果が得られなかった。また、特許文献2記載のインクジェット記録用インクでは、2色以上のインクを用いた場合に、一色の場合と同様の効果が得られないことがあった。
また、特許文献3のインクジェット記録用インクでは、表面寿命が10msのときの動的表面張力はインク吐出時のインク滴のまとまりに影響を与えるが、メディア(記録媒体)に着弾したインク滴の濡れ拡がりや浸透性の設計値としては不適当であり、所望の効果を得られない場合があった。
本発明は、上記問題点に鑑み、インクジェット記録装置を用いて高速で画像を形成する場合の、オフセットおよびカラーブリードによる画像汚れの発生を抑制しつつ、高画質の画像を形成できるインクジェット記録用インクセットおよび画像記録方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、2種以上のインクをそれぞれ吐出する2以上の記録ヘッドを有するインクジェット記録装置に用いられるインクジェット記録用インクセットである。インクセットは、顔料と樹脂とを含む顔料分散体と、有機溶媒と、水とを含有する2種以上のインクで構成され、記録ヘッドから最初に吐出される先頭インクと、記録ヘッドから最後に吐出される最終インクと、を含む。先頭インクは、表面寿命が10msのときの動的表面張力が最も高く、表面寿命が100msのときの動的表面張力が最も低い。最終インクは、表面寿命が10msのときの動的表面張力が最も低く、表面寿命が100msのときの動的表面張力が最も高い。先頭インクと最終インクの間に吐出される1種以上の中間インクを含む場合、中間インクは、表面寿命が10msのときの動的表面張力が直前に吐出されるインク以下であり、表面寿命が100msのときの動的表面張力が直前に吐出されるインク以上である。
本発明の第1の構成によれば、先頭インクは表面寿命が10msのときの動的表面張力が最も高く、液滴のまとまりが最も良好であるため、分滴やサテライトの発生が抑制され、記録媒体に素早く着弾し、かつ、記録媒体への着弾時の動的表面張力が最も低く浸透性が速いので、オフセットやカラーブリードへの影響がなくなる。また、最終インクは表面寿命が100msのときの動的表面張力が最も高く、記録媒体への浸透性が遅いので、記録媒体への濡れ拡がりが抑えられてカラーブリードが抑制される。先頭インクと最終インクの間に吐出される中間インクは表面寿命が10msのときの動的表面張力が直前に吐出されるインク以下であり、表面寿命が100msのときの動的表面張力が直前に吐出されるインク以上であるため、直前に吐出されたインクに対するカラーブリードが抑制される。
インクジェット記録装置100の構造を示す概略図 インクジェット記録装置100の記録部9を上方から見た平面図 インクジェット記録装置100のラインヘッド11aと用紙S上に形成されたドット列の一部を示す拡大平面図
本発明の画像記録方法は、顔料と樹脂とを含む顔料分散体、有機溶媒、および水を含有する2種以上のインクを用いて画像形成する、少なくとも2以上の記録ヘッドを有するインクジェット記録装置による画像記録方法であって、記録ヘッドから最初に吐出されるインクとして、後述する表面寿命が10msのときの動的表面張力が最も高く、表面寿命が100msのときの動的表面張力が最も低いインクを用いる。そして、表面寿命が10msのときの動的表面張力が直前に吐出されたインク以下であり、100msのときの動的表面張力が直前に吐出されたインク以上であるインクを順次吐出し、記録ヘッドから最後に吐出されるインクとして、表面寿命が10msのときの動的表面張力が最も低く、表面寿命が100msのときの動的表面張力が最も高いインクを用いる画像記録方法である。以下、本発明のインクジェット記録用のインクセット、および画像記録方法について詳細に説明する。
(インク)
本発明において用いるインクは、顔料と樹脂とを含む顔料分散体、有機溶媒、および水とを含むものである。また、本発明において用いるインクは、必要に応じ、インクに含まれる成分の溶解状態を安定化させる溶解安定剤、およびインクからの液体成分の揮発を抑制してインクの粘性を安定化させる保湿剤を含んでいてもよい。以下、本発明に用いるインクに含まれる、顔料分散体、水、有機溶媒、溶解安定剤、および保湿剤について順に説明する。
本発明では、2色(2種)以上のインクが使用される。インクの数は、2以上であれば、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。種々の色相の画像を良好に形成でき、記録ヘッドの数を削減してインクジェット記録装置を小型化しやすいことから、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックのインクからなる4色のインクを使用するのが好ましい。
(顔料分散体)
顔料分散体中に含有させることができる顔料は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来からインクジェット記録装置用インクの着色剤として使用されている顔料から適宜選択して使用できる。シアンインクに含有させることができる顔料の具体例としてはC.I.ピグメントブルー15等の青色顔料が挙げられる。イエローインクに含有させることができる顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー74、93、95、109、110、120、128、138、139、151、154、155、173、180、185、193等の黄色顔料が挙げられる。マゼンタインクに含有させることができる顔料としてはC.I.ピグメントレッド122、202等の赤色顔料が挙げられる。ブラックインクに含有させることができる顔料としてはC.I.ピグメントブラック4、7(B.K-4、7、カーボンブラック)等の黒色顔料が挙げられる。
上記以外の色相の顔料の具体例としては、C.I.ピグメントオレンジ34、36、43、61、63、71等の橙色顔料、C.I.ピグメントバイオレット19、23、33等の紫色顔料等が挙げられる。これらの顔料を2種以上組み合わせて用い、インクの色相を所望の色相に調整することができる。
顔料分散体に含まれる顔料の量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、インクの全質量に対して2~15質量%が好ましく、4~9質量%がより好ましい。顔料の使用量が過少であると所望する画像濃度を得にくく、顔料の使用量が過多であると、インクの流動性が損なわれ所望する画像を形成しにくくなったり、記録媒体に対するインクの浸透性が損なわれ、オフセットが発生しやすくなったりする場合がある。さらに、顔料の使用量が過多である場合、インクの分散安定性が維持できなくなる場合もある。
顔料分散体に含まれる樹脂は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来、顔料分散体の製造に用いられている種々の樹脂から適宜選択して使用できる。好適な樹脂の具体例としては、スチレン-アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体等が挙げられる。これらの樹脂の中では、調製が容易で、顔料の分散効果に優れることから、スチレン-アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-マレイン酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸アルキルエステル共重合体等の、スチレンに由来する単位と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、又はメタクリル酸エステルに由来する単位とを含むスチレン-アクリル系樹脂が好ましい。上記の樹脂は、ラジカル重合により得られる。
顔料分散体の調製に用いる樹脂の重量平均分子量(Mw)は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、5000~150000であるのが好ましい。顔料分散体に含まれる樹脂の重量平均分子量(Mw)はゲルろ過クロマトグラフィーにより測定できる。樹脂の分子量が過小である場合、記録媒体に画像を形成する際に、所望する画像濃度を有する画像を得にくい。また、分子量が過大である場合、インクの粘度が高いため、溶媒の揮発等によりインクの粘度がさらに高くなりやすく、吐出ノズルからのインクの吐出不良が起こりやすい。
また、顔料分散体の調製に用いる樹脂の酸価は、150~300mgKOH/gが好ましい。樹脂の酸価が過小である場合、顔料分散体中の顔料の分散性が低くなりやすく、顔料の微粒子化が困難となるため、画像の良好な着色性、発色性を得にくい。樹脂の酸価が過大である場合、インクの保存安定性が低くなりやすい。樹脂の酸価は、樹脂を合成する際に、アクリル酸、メタクリル酸等の酸性の官能基(例えばカルボキシル基)を有する単量体(モノマー)の使用量を適宜調整することにより調整できる。具体的には、酸性の官能基を有する単量体の使用量を増やすことにより酸価を高めることができる。
顔料分散体を調製する際の樹脂の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。樹脂の使用量は、顔料分散体の全質量に対して、0.5~6.75質量%が好ましい。
顔料と樹脂とを含む顔料分散体を製造する方法は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来知られる方法から適宜選択できる。好適な方法としては、例えば、ナノグレンミル(浅田鉄工社製)、MSCミル(三井鉱山社製)、ダイノーミル(シンマルエンタープライゼス社製)、サンドミル(安川製作所社製)等のメディア型湿式分散機を用いて、水等の適切な液体の媒体中において、顔料と樹脂とを混練して顔料分散体を得る方法が挙げられる。メディア型湿式分散機による処理では、小粒径のビーズを用いる。ビーズの粒子径は特に限定されず、典型的には粒径0.5~2.0mmである。また、ビーズの材質は特に限定されず、ジルコニアビーズ、ガラスビーズ等の硬質の材料からなるビーズが使用される。
(水)
本発明において用いるインクは、水性インクであり、水を必須成分として含む。インクに含まれる水は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来、水性インクの製造に使用されている水から、所望の純度の水を適宜選択して使用できる。インク中の水の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。インク中の水の含有量は、後述する他の成分の使用量に応じて適宜変更される。インク中の水の含有量としては、典型的には、インクの全質量に対して20~70質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましい。
(有機溶媒)
本発明に用いるインクは、インクの記録媒体への浸透を促進させる目的等で有機溶媒を含む。好適な有機溶媒の具体例としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、およびトリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルや、1,2-ヘキシレングリコール、1,2-オクタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、および2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール等の炭素原子数6~9のアルカンジオール等が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。インク中の有機溶媒の含有量は、インクの全質量に対して5~20質量%が好ましく、10~15質量%がより好ましい。
上記有機溶媒としては、1,2-オクタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、および2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオールから選択される少なくとも1種以上が好ましい。これらの有機溶媒を0.2~2.0質量%の範囲でインクに配合することによって、後述するインクの表面寿命10msにおける動的表面張力を40~44mN/mの範囲、表面寿命100msにおける動的表面張力を28~35mN/mの範囲で調整することができる。有機溶媒の含有量が2.0質量%を超える場合、オフセットによる画像汚れが発生しやすくなる。また、有機溶媒の使用量は、有機溶媒の種類によって、前述の範囲内で適宜調整するのが好ましい。
(溶解安定剤)
溶解安定剤は、インクに含まれる成分を相溶化してインクの溶解状態を安定化させる成分である。溶解安定剤の具体例としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、およびγ-ブチロラクトン等が挙げられる。これらの溶解安定剤は2種以上を組み合わせて用いることができる。インクが溶解安定剤を含有する場合、溶解安定剤の含有量は、インクの全質量に対して1~20質量%が好ましく、3~15質量%がより好ましい。
(保湿剤)
保湿剤は、インクからの液体成分の揮発を抑制してインクの粘性を安定化させる成分である。保湿剤と水の量を調整することで、インクの粘度を調整することができる。保湿剤の具体例は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、チオジグリコール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、およびグリセリン等が挙げられる。これらの保湿剤の中では、水等の液体成分の揮発の抑制効果に優れることからグリセリンがより好ましい。保湿剤は2種以上を組み合わせて用いることができる。インクが保湿剤を含有する場合、保湿剤の含有量は、インクの全質量に対して5~30質量%が好ましく、12~20質量%がより好ましい。
(インクの製造方法)
インクの製造方法は、顔料分散体、水、有機溶媒等のインク成分を均一に混合することができれば特に限定されない。インクジェット記録装置用インクの製造方法の具体例としては、インクの各成分を混合機により均一に混合した後、孔径5μm以下のフィルターにより異物や粗大粒子を除去する方法が挙げられる。なお、インクを製造する際には、必要に応じて上述した溶解安定剤、保湿剤の他、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤、防腐防カビ剤等の、従来インクジェット記録用のインクに配合されている種々の添加剤を適宜配合することができる。
(動的表面張力の測定)
本発明の画像記録方法において用いられる2種以上のインクを規定する動的表面張力とは、液表面(気-液界面)が形成された直後であって、液表面が非平衡状態にあるときの表面張力であり、表面寿命とは、液表面が形成されてからの経過時間である。そして、表面寿命の経過につれて、液表面はインク中の各成分が拡散して平衡状態に近づくため表面張力が低下する。このように液表面が平衡状態となったときの表面張力が静的表面張力である。インクジェット記録用のインクは、記録ヘッドからインク滴が吐出され、ごく短時間で記録媒体に着弾するため、インクの記録媒体に対する種々の性質は、インクの動的表面張力により規定することが、実際の状況に対してより適切である(特開2011-207146、段落0019参照)。
インクの動的表面張力の測定方法は特に限定されず、従来用いられている動的表面張力計を用いた方法により測定できる。動的表面張力計としては、例えば、バブルプレッシャー動的表面張力計(BP100、KRUSS社製)等が挙げられる。
インクの動的表面張力が過大である場合、記録媒体に対するインクの浸透性が得られにくく、オフセットによる画像汚れを抑制しにくい。一方、インクの動的表面張力が過小である場合、インクの浸透性が高くなりやすく、また、吐出ノズルから吐出されたインク滴が記録媒体に着弾するまでの間にインク滴が分離することによる画像の乱れ(サテライト)が発生しやすく、所望する画像濃度を得にくい。
本発明の画像記録方法において用いられる2種以上のインク(以下、インクセットという)は、記録ヘッド17a~17cから最初に吐出されるインク(以下、先頭インクという)として、表面寿命が10msのときの動的表面張力が最も高く、表面寿命が100msのときの動的表面張力が最も低いインクを用いる。また、記録ヘッド17a~17cから最後に吐出されるインク(以下、最終インクという)として、表面寿命が10msのときの動的表面張力が最も低く、表面寿命が100msのときの動的表面張力が最も高いインクを用いる。
そして、先頭インクと最終インクの間に1種以上のインク(以下、中間インクという)を吐出する場合、中間インクとして、表面寿命が10msのときの動的表面張力が直前に吐出されるインク以下であり、表面寿命が100msのときの動的表面張力が直前に吐出されるインク以上であるインクを用いる。
記録ヘッド17a~17cから吐出されたインクが記録媒体に着弾するまでの時間は、印字速度や記録媒体と記録ヘッドとの間の距離(ギャップ)によって異なるが、一般的にラインヘッドで用いられる印字速度、ギャップであれば、吐出されたインクは50ms~数百msで用紙Sに着弾する。その際の表面張力値が記録媒体へのインク浸透性に大きな影響を与えている。
本実施形態に用いられるインクセットでは、先頭インクは表面寿命が10msのときの動的表面張力が最も高く、液滴のまとまりが最も良好であるため、分滴やサテライトの発生が抑制され、記録媒体に素早く着弾し、かつ、記録媒体への着弾時(50ms~数百ms)の動的表面張力が最も低く浸透性が速いので、オフセットやカラーブリード(滲み)への影響がなくなる。また、最終インクは表面寿命が100msのときの動的表面張力が最も高く、記録媒体への浸透性が遅いので、記録媒体への濡れ拡がりが抑えられてカラーブリードが抑制される。
そして、中間インクは表面寿命が10msのときの動的表面張力が直前に吐出されるインク以下であり、表面寿命が100msのときの動的表面張力が直前に吐出されるインク以上であるため、直前に吐出されたインクに対するカラーブリードが抑制される。
特に、中間インクは、表面寿命が10msのときの動的表面張力が直前に吐出されるインクよりも低く、且つ最終インクよりも高く、表面寿命が100msのときの動的表面張力が直前に吐出されるインクよりも高く、且つ最終インクよりも低いことが好ましい。このようにすれば、表面寿命が10msのとき(吐出直後)の動的表面張力は色順(吐出順)に低くなり、液滴のまとまりが抑えられて濡れ拡がりやすくなるが、表面寿命が100msのとき(記録媒体への着弾時)の動的表面張力が先頭インクから最終インクまで色順に高くなるため、カラーブリードを効果的に抑制することができる。
また、本発明のインクセットを構成する2種以上のインクは、表面寿命が10msのときの動的表面張力が40~44mN/mであり、表面寿命が100msのときの動的表面張力が28~35mN/mであることが好ましい。表面寿命が10msおよび100msのときの動的表面張力を上記の範囲とすることで、オフセットに加えてサテライトやカラーブリードを効果的に抑制することができ、所望の画質を得ることができる。
(画像記録方法)
本発明の画像記録方法において用いるインクジェット記録装置は特に限定されないが、高品質の画像を高速で形成できることから、インクジェット記録装置として、ラインヘッド方式のインクジェット記録装置を用いるのが好ましい。ラインヘッド方式のインクジェット記録装置では、オフセットによる画像の汚れや、カラーブリードが生じやすいが、本発明のインクセットを用いる画像記録方法によれば、これらの問題が生じにくい。
また、ラインヘッド方式のインクジェット記録装置を用いて画像を形成する場合、画像形成速度は、A4縦サイズの記録媒体を搬送して画像形成する場合の画像形成速度として100ppm(頁/分)以上であるのが好ましい。本発明の画像記録方法によれば、100ppm以上の高速で画像を形成する場合であっても、カラーブリード、およびオフセットによる画像汚れのない画像を所望する画像濃度で形成できる。
次に、本発明に用いるインクジェット記録装置について説明する。図1は、本発明のインクセットを使用するインクジェット記録装置100の構造を示す概略図である。図1に示すように、インクジェット記録装置100の左側部には用紙S(記録媒体)を収容する給紙トレイ2が設けられており、この給紙トレイ2の一端部には収容された用紙Sを、最上位の用紙Sから順に一枚ずつ後述する第1搬送ユニット5へ搬送(給紙)するための給紙ローラー3と、給紙ローラー3に圧接されて従動回転する従動ローラー4とが設けられている。
用紙搬送方向(矢印X方向)に対し給紙ローラー3および従動ローラー4の下流側(図1の右側)には、第1搬送ユニット5および記録部9が配置されている。第1搬送ユニット5は、第1駆動ローラー6と、第1従動ローラー7と、第1駆動ローラー6および第1従動ローラー7に掛け渡された第1搬送ベルト8とを含む構成であり、インクジェット記録装置100の制御部110からの制御信号により第1駆動ローラー6が時計回り方向に回転駆動されることにより、第1搬送ベルト8に保持された用紙Sが矢印X方向に搬送される。
記録部9は、ヘッドハウジング10と、ヘッドハウジング10に保持されたラインヘッド11a、11b、11c、および11dを備えている。各ラインヘッド11a~11dを構成する記録ヘッド17a~17cには、それぞれインクタンク(図示せず)に貯留されている4色(イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラック)のインクがラインヘッド11a~11dの色毎に供給される。
用紙搬送方向に対し第1搬送ユニット5の下流側(図1の右側)には第2搬送ユニット12が配置されている。第2搬送ユニット12は、第2駆動ローラー13と、第2従動ローラー14と、第2駆動ローラー13および第2従動ローラー14に掛け渡された第2搬送ベルト15とを含む構成であり、第2駆動ローラー13が時計回り方向に回転駆動されることにより、第2搬送ベルト15に保持された用紙Sが矢印X方向に搬送される。記録部9においてインク画像が記録された用紙Sは第2搬送ユニット12へと送られ、第2搬送ユニット12を通過する間に用紙Sの表面に吐出されたインクが乾燥される。
第2搬送ユニット12の下方にはメンテナンスユニット19が配置されている。メンテナンスユニット19は、ワイプブレード(図示せず)による拭き取り動作を実行する際に記録部9の下方に移動する。そして、記録ヘッド17a~17cのクリーニング液供給口(図示せず)からクリーニング液を供給し、ワイパーを用いてクリーニング液を塗り広げながらインク吐出面を拭き取り、拭き取られたクリーニング液を回収する。
また、用紙搬送方向に対し第2搬送ユニット12の下流側には、画像が記録された用紙Sをインクジェット記録装置100の外部へ排出する排出ローラー対16が設けられている。排出ローラー対16は、駆動ローラー16aと従動ローラー16bとで構成されており、排出ローラー対16の下流側には、インクジェット記録装置100の外部へ排出された用紙Sが積載される排出トレイ(図示せず)が設けられている。
図2は、インクジェット記録装置100の記録部9を上方から見た図である。記録部9は、ヘッドハウジング10と、ヘッドハウジング10に保持されたラインヘッド11a~11dを備えている。ラインヘッド11a~11dは、第1搬送ユニット5を構成する第1搬送ベルト8の搬送面に対して所定の間隔(例えば1mm)が形成されるような高さに支持され、用紙搬送方向と直交する用紙幅方向(図2の上下方向)に沿って複数(ここでは3個)の記録ヘッド17a~17cが千鳥状に配列されている。
各ラインヘッド11a~11dを構成する記録ヘッド17a~17cには、それぞれインクタンク(図示せず)に貯留されている4色(イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラック)のインクがラインヘッド11a~11dの色毎に供給される。
各記録ヘッド17a~17cは、外部コンピューターから受信した画像データに応じて、制御部110(図1参照)からの制御信号によって第1搬送ベルト8の搬送面に吸着保持されて搬送される用紙に向かって吐出ノズル18からインクを吐出する。これにより、第1搬送ベルト8上の用紙Sにはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクが重ね合わされたカラー画像が形成される。
インクジェット記録装置100では、記録ヘッド17a~17cのインク吐出面を清浄にするために、長期間停止後の印字開始時および印字動作の合間には、全ての記録ヘッド17a~17cのクリーニング液供給口(図示せず)からインク吐出面にクリーニング液を供給し、ワイプブレード(図示せず)によりインク吐出面を拭き取る記録ヘッド17a~17cの回復動作を実行し、次の印字動作に備える。
図3は、インクジェット記録装置100のラインヘッド11aと用紙S上に形成されたドット列の一部を示す拡大平面図である。ラインヘッド型の記録方式のインクジェット記録装置100を用いてドットを形成する方法を、図3を用いて具体的に説明する。なお、図3では図1および図2に示したラインヘッド11a~11dのうち、ラインヘッド11aを例に挙げて説明するが、他のラインヘッド11b~11dについても全く同様に説明される。
図3に示すように、ラインヘッド11aには複数個の吐出ノズル18からなるノズル列N1、N2が搬送方向(矢印X方向)に並設されている。つまり、搬送方向の各ドット列を形成する吐出ノズル18として、ノズル列N1、N2に各1個ずつ(例えばドット列L1では吐出ノズル18aおよび18a′)、合計2個の吐出ノズル18を備えている。なお、ここでは説明の便宜のため、ノズル列N1、N2を構成する吐出ノズル18のうち、ドット列L1~L16に対応する18a~18pおよび18a′~18p′までの各16個の吐出ノズル18のみを記載しているが、実際にはさらに多数の吐出ノズル18が搬送方向と直交する方向に配列されているものとする。
そして、このノズル列N1、N2を順次用いて記録媒体上に画像を形成する。例えば、記録媒体を搬送方向に移動させながら、記録媒体の幅方向(図3の左右方向)1行分のドット列D1をノズル列N1からのインク吐出(図3の実線矢印)により形成した後、次の1行分のドット列D2をノズル列N2からのインク吐出(図3の破線矢印)により形成し、さらに次の1行分のドット列D3を再びノズル列N1からのインク吐出により形成する。以下、ドット列D4以降もノズル列N1、N2を交互に用いて同様に形成する。
以上説明した画像記録方法によれば、ラインヘッド方式のインクジェット記録装置を用いて高速で画像形成する場合であっても、オフセットによる画像汚れ、および異なる色のインク間でのカラーブリードの発生を抑制しつつ、所望する濃度の画像を形成できる。このため、本発明の画像記録方法は種々のインクジェット記録装置において好適に利用される。
その他本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では所定の形状にカットされた用紙S(カット紙)にインクを吐出するインクジェット記録装置100について説明したが、本発明はロール状に巻かれた長尺の用紙を所定の速度で繰り出してインクを吐出するインクジェット記録装置にも同様に適用可能である。
また、上記実施形態では先頭インクとしてイエローのインク、最終インクとしてブラックのインク、中間インクとしてマゼンタおよびシアンのインクの計4種類のインクからなるインクセットについて説明したが、先頭インク、中間インク、最終インクを1種類ずつ有する3種類のインクからなるインクセットや、3種類以上の中間インクを含む5種類以上のインクからなるインクセット、中間インクを含まない先頭インクと最終インクの2種類のインクからなるインクセットについても本発明を同様に適用可能である。
また、記録媒体の種類も紙に限定されるものではなく、天然繊維、合成繊維の織物、編物、または不織布等の布帛、合成樹脂製のフィルム等、種々の記録媒体を使用することができる。以下、実施例により本発明の効果について更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制約されるものではない。
[顔料分散体の調製]
イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックの各色について、顔料、分散樹脂(スチレン-アクリル樹脂)、界面活性剤(オルフィンE1010、アセチレンジオールのエチレンオキシド付加物、日信化学工業社製)と、水とを表1に示す割合で混合し、合計割合が100質量%となった組成物を、湿式分散機であるダイノミル(シンマルエンタープライゼス社製)のベッセルに充填した後、分散処理を行い、各色の顔料分散体を得た。各色の顔料は、イエロー顔料としてP.Y-74を、マゼンタ顔料としてP.R-122を、シアン顔料としてP.B-15:3を、ブラック顔料としてB.K-4をそれぞれ用いた。
Figure 0007287131000001
分散樹脂であるスチレン-アクリル樹脂に関しては、任意の60~80℃の温水にて樹脂を加熱し、溶解するためにアルカリ(対イオン:ここではNaOH)をpHが8.0になるまで中和溶解したのち顔料分散を行った。
分散条件としては、ジルコニアビーズ(粒径1.0mm)をベッセル容量(1.4L)に対して70%の充填率でセットし、顔料分散体の分散粒度として平均粒子径が70~130nmになるように調製した。顔料分散体の平均粒子径は、イオン交換水で300倍希釈した溶液を動的光散乱式粒径分布測定装置(ゼータサイザーナノ、シスメックス社製)で測定した。
[インクの調製]
調製された顔料分散体を用いて、表2に示したインク配合を行うことで、顔料インクを作製した。具体的には、表2の組成となるように各成分を攪拌機にて攪拌しながら、順に添加した。
Figure 0007287131000002
異物やゴミ、粗大粒子等を除去するために、孔径5μmのフィルターによりろ過して、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックの各色について動的表面張力の異なるインクを調製し、本発明および比較例のインクセット(本発明1~4、比較例1~2)を作製した。動的表面張力の調整は、インク全質量に対する1,2-オクタンジオール、およびトリエチレングリコールモノブチルエーテルの配合量を調整することにより行った。各インクセットを構成するインクの表面寿命10ms、100msのときの動的表面張力を表3、表4に、1,2-オクタンジオール、およびトリエチレングリコールモノブチルエーテルの配合量を表5に示す。
Figure 0007287131000003
Figure 0007287131000004
Figure 0007287131000005
※1;1,2-オクタンジオール
※2;トリエチレングリコールモノブチルエーテル
[動的表面張力の違いによるインクセットの評価]
作製されたインクセットについて、図1に示した4つのラインヘッド11a~11dを備えるラインヘッド方式のインクジェット記録装置100を用い、オフセット、サテライト、およびカラーブリードの発生の有無について評価した。
<オフセット性の評価方法>
オフセット性の評価は、インクジェット記録装置100におけるラインヘッド11a~11d毎に、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各インクを単色で用い、且つ動的表面張力ごとに評価を行った。具体的には、ラインヘッド11a~11dの各記録ヘッド17a~17cにインクを充填し、インク吐出面から漏出している余剰液をワイプブレードにより掻きとった。記録ヘッドのインク吐出面と用紙Sとの距離を1mmに固定し、給紙部から排出部までの用紙Sの搬送速度を846.7mm/秒に設定した。用紙SとしてIJW(王子製紙社製)をA4サイズにカットしたものを用い、記録ヘッド17a~17cから用紙Sへのインクの打ち込み量が15g/m2となるようにインクを吐出して、10cm×10cmのベタ画像を連続10枚形成した。10枚目に画像が形成された用紙Sについて、用紙Sを排出する排出ローラー対16を構成する、表面材質がポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)である従動ローラー16bと接触した後の用紙Sの非画像部の状態と、従動ローラー16bへのインクの付着の状況を目視により観察してオフセット性を評価した。
オフセット性の評価基準は、インクが従動ローラー16bに付着しておらず、非画像部に画像が版画されていない場合を○、インクが従動ローラー16bに付着しているが、非画像部に画像が版画されていない場合を△、インクが従動ローラー16bに付着しており、非画像部に画像が版画されている場合を×とした。
<サテライトの評価方法>
サテライトの評価は、図1のラインヘッド11a~11dから、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックのインクをそれぞれ吐出して、動的表面張力ごとに評価を行った。具体的には、画像濃度評価方法と同様の条件・方法により、5cm×5cmのベタ画像を1枚形成した。形成したベタ画像を顕微鏡観察してサテライトの評価を行った。
サテライトの評価基準は、インク滴の着弾位置から10μm以内にインクが収まっている場合を○、インク滴の着弾位置から10μm以内にインクが収まっていない場合を×とした。
<カラーブリードの評価方法>
カラーブリードの評価は、単色画像形成によるオフセットの評価方法と同様の条件・方法により、ラインヘッド11a~11dに充填されたイエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックのインクで直線画像を重ね打ちして形成した。直線画像は、線幅が600dpiで10画素分の太さ、実際の画像では0.42mmの太さ(カラーブリードのない理論的な太さ)となるように形成した。形成された画像は、カラースキャナー(GT-X970、セイコーエプソン社製)を用い、1200dpiで取り込み、取り込んだ画像について2値化を行い、画像データを修正した。修正した画像について、ドットアナライザー(Da-6000、王子計測機器社製)を用いて、画像1画素あたりに含まれる輝度(0~255の数値範囲で評価)の分布を測定し、1画素あたりの輝度分布から平均値を求めた。このとき、輝度分布の平均値が1~244であるものを滲んでいるものと定義し、その滲みの長さに応じて、インクのカラーブリードを評価した。
カラーブリードの評価基準は、滲みの長さが50μm以下である場合を○、滲みの長さが50μmよりも長く100μm以下である場合を△、滲みの長さが100μmよりも長い場合を×とし、○、△の場合を合格、×の場合を不合格と判定した。オフセット性、サテライト、およびカラーブリードの評価結果をまとめて表6に示す。
Figure 0007287131000006
表6から明らかなように、ラインヘッド11aから最初に吐出されるイエローのインク(先頭インク)として、表面寿命が10msのときの動的表面張力が最も高く、表面寿命が100msのときの動的表面張力が最も低いインクを用い、ラインヘッド11dから最後に吐出されるブラックのインク(最終インク)として、表面寿命が10msのときの動的表面張力が最も低く、表面寿命が100msのときの動的表面張力が最も高いインクを用い、イエローとブラックのインクの間にラインヘッド11b、11cから順次吐出されるマゼンタ、シアンのインク(中間インク)として、表面寿命が10msのときの動的表面張力が直前に吐出されるインク以下であり、表面寿命が100msのときの動的表面張力が直前に吐出されるインク以上であるインクを用いた本発明1~4のインクセットでは、10枚目に画像が形成された用紙Sが排出されたとき従動ローラー16bにインクが付着しておらず、用紙Sの非画像部に画像が版画されていなかった。
特に、インクセットを構成するインクの、表面寿命が10msのときの動的表面張力が40~44mN/m、表面寿命が100msのときの動的表面張力が28~35mN/mの範囲内である本発明1、2では、サテライト、カラーブリードの発生も抑制されることが認められた。この理由としては、本発明3ではイエローのインクの表面寿命10msのときの動的表面張力が25mN/mと低いため、インク滴(液滴)のまとまりが抑えられてサテライトが発生したものと考えられる。また、本発明4ではブラックのインクの表面寿命100msのときの動的表面張力が37mN/mと高いため、インクの浸透性が悪く、異なる色のインク間で若干のカラーブリードが発生したものと考えらえる。
これに対し、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクの全てで表面寿命が10ms、100msのときの動的表面張力が同じ(43mN/m、30mN/m)である比較例1では、用紙Sの非画像部には画像が版画されていなかったが、インクが従動ローラー16bに付着していた。また、異なる色のインク間でのカラーブリードも発生した。
また、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクの順に表面寿命が10msのときの動的表面張力が高くなり、100msのときの動的表面張力が低くなっている比較例2では、用紙Sの非画像部に画像が版画され、インクが従動ローラー16bに付着していた。また、異なる色のインク間でのカラーブリードも発生した。
本発明1~4および比較例1、2の結果から、ラインヘッド11aから最初に吐出されるイエローのインク(先頭インク)として、表面寿命が10msのときの動的表面張力が最も高く、表面寿命が100msのときの動的表面張力が最も低いインクを用い、ラインヘッド11dから最後に吐出されるブラックのインク(最終インク)として、表面寿命が10msのときの動的表面張力が最も低く、表面寿命が100msのときの動的表面張力が最も高いインクを用い、イエローとブラックのインクの間にラインヘッド11b、11cから順次吐出されるマゼンタ、シアンのインク(中間インク)として、表面寿命が10msのときの動的表面張力が直前に吐出されるインク以下であり、表面寿命が100msのときの動的表面張力が直前に吐出されるインク以上であるインクを用いることで、オフセットの発生を抑制する効果が得られることが確認された。
さらに、イエローのインクの、表面寿命が10msのときの動的表面張力が44mN/mである本発明1、2、4のインクセットでは、オフセットに加えてサテライトの発生も効果的に抑制されることが確認された。また、ブラックのインクの表面寿命が100msのときの動的表面張力が35mN/mである本発明1~3のインクセットでは、オフセットに加えてカラーブリードの発生もより効果的に抑制されることが確認された。
その中でも、本発明1のインクセットでは、マゼンタ、シアンのインクが、表面寿命が10msのときの動的表面張力が直前に吐出されるインクよりも低く、且つブラックのインクよりも高く、表面寿命が100msのときの動的表面張力が直前に吐出されるインクよりも高く、且つイエローのインクよりも低い。そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの全てのインクが、表面寿命が10msのときの動的表面張力が40~44mN/mであり、表面寿命が100msのときの動的表面張力が28~35mN/mの範囲にある。これにより、オフセット性、サテライト、およびカラーブリードの全てが効果的に抑制されることが確認された。
本発明は、記録媒体にインクを吐出するインクジェット記録装置の画像記録方法およびインクジェット記録用インクセットに利用可能である。本発明の利用により、ラインヘッド方式のインクジェット記録装置を用いて高速で画像を形成する場合であっても、オフセットによる画像汚れ、および異なる色のインク間でのカラーブリードの発生を抑制しつつ、所望する画質の画像を形成できる画像記録方法およびインクジェット記録用インクセットを提供することができる。
9 記録部
11a~11d ラインヘッド
17a~17c 記録ヘッド
18 インク吐出ノズル
100 インクジェット記録装置

Claims (4)

  1. 顔料と樹脂とを含む顔料分散体と、有機溶媒と、水とを含有する2種以上のインクで構成され、前記2種以上のインクをそれぞれ吐出する2以上の記録ヘッドを有するインクジェット記録装置に用いられるインクジェット記録用インクセットであって、
    前記記録ヘッドから最初に吐出され、表面寿命が10msのときの動的表面張力が最も高く、前記表面寿命が100msのときの前記動的表面張力が最も低い先頭インクと、
    前記記録ヘッドから最後に吐出され、前記表面寿命が10msのときの前記動的表面張力が最も低く、前記表面寿命が100msのときの前記動的表面張力が最も高い最終インクと、
    を含み、
    前記先頭インクと前記最終インクの間に吐出される1種以上の中間インクを含む場合、前記中間インクは、前記表面寿命が10msのときの前記動的表面張力が直前に吐出されるインクよりも低く、且つ前記最終インクよりも高く、前記表面寿命が100msのときの前記動的表面張力が直前に吐出されるインクよりも高く、且つ前記最終インクよりも低く、
    前記先頭インクおよび前記最終インクは、前記表面寿命が10msのときの前記動的表面張力が40~44mN/mであり、前記表面寿命が100msのときの前記動的表面張力が28~35mN/mであることを特徴とするインクジェット記録用インクセット。
  2. 前記有機溶媒は、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,2-オクタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、および2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオールから選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用インクセット。
  3. 顔料と樹脂とを含む顔料分散体と、有機溶媒と、水とを含有する2種以上のインクを用いて、前記2種以上のインクをそれぞれ吐出する2以上の記録ヘッドを有するインクジェット記録装置により記録媒体に画像を形成する画像記録方法であって、
    前記記録ヘッドから最初に吐出される先頭インクとして、表面寿命が10msのときの動的表面張力が最も高く、前記表面寿命が100msのときの前記動的表面張力が最も低いインクを用い、
    前記記録ヘッドから最後に吐出される最終インクとして、表面寿命が10msのときの動的表面張力が最も低く、前記表面寿命が100msのときの前記動的表面張力が最も高いインクを用い、
    前記先頭インクと前記最終インクの間に1種以上の中間インクを吐出する場合、前記中間インクは、前記表面寿命が10msのときの前記動的表面張力が直前に吐出されるインクよりも低く、且つ前記最終インクよりも高く、前記表面寿命が100msのときの前記動的表面張力が直前に吐出されるインクよりも高く、且つ前記最終インクよりも低く、
    前記先頭インクおよび前記最終インクは、前記表面寿命が10msのときの前記動的表面張力が40~44mN/mであり、前記表面寿命が100msのときの前記動的表面張力が28~35mN/mであることを特徴とする画像記録方法
  4. 前記有機溶媒は、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,2-オクタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、および2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオールから選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項に記載の画像記録方法
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