JP2024064006A - インクジェット記録装置 - Google Patents

Abstract

【課題】インクの吐出安定性に優れると共に、滲みの発生を抑制できるインクジェット記録装置を提供する。【解決手段】インクジェット記録装置は、２個以上のライン式記録ヘッドと、前記ライン式記録ヘッドにそれぞれ収容されるインクとを備える。前記ライン式記録ヘッドは、それぞれ、一定の吐出間隔Ｔを空け、所定の順序に沿って記録媒体にインクジェット吐出を行う。前記吐出間隔Ｔは、３００ミリ秒以上５３０ミリ秒以下である。前記ライン式記録ヘッドは、前記記録媒体に最初にインクジェット吐出を行う第１ライン式記録ヘッドと、前記第１ライン式記録ヘッドの次に前記記録媒体にインクジェット吐出を行う第２ライン式記録ヘッドとを少なくとも有する。前記インクは、それぞれ、顔料と、水溶性有機溶媒と、水とを含有する。前記水溶性有機溶媒は、グリコールエーテル化合物を含む。【選択図】図１

Description

本発明は、インクジェット記録装置に関する。

インクジェット記録装置は、近年急速に進歩し、写真用紙を使用する場合には銀塩写真に匹敵する高精細な画質を得ることができる。インクジェット記録装置には、インクの吐出安定性に優れると共に、複数のインクを用いてカラー画像を形成する際に、滲み（特に、記録媒体の隣接する２つの領域にそれぞれ異なる色のインクを吐出する際に発生する滲み）の発生を抑制できることが要求されている。滲みの発生の抑制は、コート紙のような難吸収性の記録媒体を用いる場合に特に重要となる。

インクジェット記録装置において滲みの発生を抑制する方法として、例えば、色材、１分子中に２個以上の反応性官能基を有する反応性化合物、水溶性溶媒及び／又は水を含有する第１のインクと、反応性官能基を有する反応性化合物、水溶性溶媒及び／又は水を含有する第２のインクとを用いたインクジェット記録装置が提案されている（例えば、特許文献１）。

特開２０１４－６５８２６号公報

しかしながら、特許文献１に記載のインクジェット記録装置によっても、インクの吐出安定性を確保しつつ、滲みの発生を十分に抑制することは難しい。

本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、インクの吐出安定性に優れると共に、滲みの発生を抑制できるインクジェット記録装置を提供することである。

本発明に係るインクジェット記録装置は、２個以上のライン式記録ヘッドと、前記ライン式記録ヘッドにそれぞれ収容されるインクとを備える。前記ライン式記録ヘッドは、それぞれ、一定の吐出間隔Ｔを空け、所定の順序に沿って記録媒体にインクジェット吐出を行う。前記吐出間隔Ｔは、３００ミリ秒以上５３０ミリ秒以下である。前記ライン式記録ヘッドは、前記記録媒体に最初にインクジェット吐出を行う第１ライン式記録ヘッドと、前記第１ライン式記録ヘッドの次に前記記録媒体にインクジェット吐出を行う第２ライン式記録ヘッドとを少なくとも有する。前記インクは、それぞれ、顔料と、水溶性有機溶媒と、水とを含有する。前記水溶性有機溶媒は、グリコールエーテル化合物を含む。前記インクの表面寿命１０ミリ秒での動的表面張力は、それぞれ、４０．０ｍＮ／ｍ以上である。前記第１ライン式記録ヘッドに収容される前記インクを第１インクとし、前記第２ライン式記録ヘッドに収容される前記インクを第２インクとしたときに、界面形成から前記吐出間隔Ｔが経過した時点での前記第１インクの動的表面張力と、表面寿命１０ミリ秒での前記第２インクの動的表面張力との差は、３．０ｍＮ／ｍ以下である。

本発明のインクジェット記録装置によれば、インクの吐出安定性に優れると共に、滲みの発生を抑制できる。

インクジェット記録装置の要部を示す図である。

以下、本発明の実施形態について説明する。なお、インクの動的表面張力は、２５℃において、バブルプレッシャー法（最大泡圧法）で測定される値である。詳細な測定方法については、実施例に記載の方法又はこれに準拠した方法により測定される。

本明細書では、アクリル及びメタクリルを包括的に「（メタ）アクリル」と総称する場合がある。

＜第１実施形態：インクジェット記録装置＞
本発明の第１実施形態に係るインクジェット記録装置は、２個以上のライン式記録ヘッドと、ライン式記録ヘッドにそれぞれ収容されるインクとを備える。ライン式記録ヘッドは、それぞれ、一定の吐出間隔Ｔを空け、所定の順序に沿って記録媒体にインクジェット吐出を行う。吐出間隔Ｔは、３００ミリ秒以上５３０ミリ秒以下である。ライン式記録ヘッドは、記録媒体に最初にインクジェット吐出を行う第１ライン式記録ヘッドと、第１ライン式記録ヘッドの次に記録媒体にインクジェット吐出を行う第２ライン式記録ヘッドとを少なくとも有する。インクは、それぞれ、顔料と、水溶性有機溶媒と、水とを含有する。水溶性有機溶媒は、グリコールエーテル化合物を含む。インクの表面寿命１０ミリ秒での動的表面張力は、それぞれ、４０．０ｍＮ／ｍ以上である。第１ライン式記録ヘッドに収容されるインクを第１インクとし、第２ライン式記録ヘッドに収容されるインクを第２インクとしたときに、界面形成から吐出間隔Ｔが経過した時点での第１インクの動的表面張力と、表面寿命１０ミリ秒での第２インクの動的表面張力との差は、３．０ｍＮ／ｍ以下である。

本発明のインクジェット記録装置に用いる記録媒体としては、例えば、紙製、樹脂製、金属製、ガラス製、又はセラミックス製の記録媒体が挙げられる。記録媒体としては、コート紙、マット紙等の難吸収性の記録媒体が好ましい。本発明のインクジェット記録装置は、滲みの発生し易い難吸収性の記録媒体に画像を形成する場合においても、滲みの発生を抑制できるという特徴がある。

本発明のインクジェット記録装置は、２個以上のライン式記録ヘッドを備える。各ライン式記録ヘッドは、例えば、記録媒体の搬送方向に沿って平行して略等間隔で配設される。本発明のインクジェット記録装置の備えるライン式記録ヘッドの数としては、２個以上６個以下が好ましく、４個がより好ましい。本発明のインクジェット記録装置が４個のライン式記録ヘッドを備えることで、一般的なカラー印刷に必要なシアンインク、マゼンタインク、イエローインク及びブラックインクをそれぞれのライン式記録ヘッドでインクジェット吐出できる。

以下、本発明のインクジェット記録装置の備える複数のライン式記録ヘッドにおいて、記録媒体に最初にインクジェット吐出を行うライン式記録ヘッドを第１ライン式記録ヘッドとする。また、第１ライン式記録ヘッドの次に記録媒体にインクジェット吐出を行うライン式記録ヘッドを第２ライン式記録ヘッドとする。

本発明のインクジェット記録装置が備えるライン式記録ヘッドの個数が３個以上の場合、第２ライン式記録ヘッドの次に記録媒体にインクジェット吐出を行うライン式記録ヘッドを第３ライン式記録ヘッドとする。また、本発明のインクジェット記録装置が備えるライン式記録ヘッドの個数が４個以上の場合、第３ライン式記録ヘッドの次に記録媒体にインクジェット吐出を行うライン式記録ヘッドを第４ライン式記録ヘッドとする。更に、本発明のインクジェット記録装置が備えるライン式記録ヘッドの個数が５個以上の場合においても、各ライン式記録ヘッドの名称は上述と同様である。

インクのうち、第１ライン式記録ヘッドに収容されるインクを第１インクとし、第２ライン式記録ヘッドに収容されるインクを第２インクとする。本発明のインクジェット記録装置が第３ライン式記録ヘッドを備える場合、第３ライン式記録ヘッドに収容されるインクを第３インクとする。本発明のインクジェット記録装置が第４ライン式記録ヘッドを備える場合、第４ライン式記録ヘッドに収容されるインクを第４インクとする。本発明のインクジェット記録装置が５個以上のライン式記録ヘッドを備える場合においても、各インクの名称は上述と同様である。

本発明のインクジェット記録装置は、上述の構成を備えることにより、インクの吐出安定性に優れると共に、滲みの発生を抑制できる。その理由は、以下のように推測される。なお、以下の説明では、本発明のインクジェット記録装置を用い、記録媒体の特定の位置に第１インクで画像（第１画像とする）を形成した後に、第１画像に隣接する位置に第２インクで画像（第２画像とする）を形成する場合を例として説明する。

本発明のインクジェット記録装置は、吐出間隔Ｔが３００ミリ秒以上５３０ミリ秒以下である。吐出間隔Ｔは、ライン式記録ヘッドのヘッド間距離を印字速度（通常は記録媒体の搬送速度）で除することによって決定される（ヘッド間距離／印字速度）。本発明のインクジェット記録装置は、吐出間隔Ｔが比較的長い（３００ミリ秒以上）ため、第１ライン式記録ヘッドで第１インクがインクジェット吐出された後、第２ライン式記録ヘッドで第２インクがインクジェット吐出されるまでに比較的長めの時間的間隔がある。そのため、第１画像に含まれる第１インクは、第２画像が形成される時点である程度乾燥している。これにより、本発明のインクジェット記録装置は、互いに隣接する第１画像及び第２画像を記録媒体に形成する際に、第１画像に含まれる第１インクと第２画像に含まれる第２インクとが混ざり合うことを一定程度抑制できる。

但し、吐出間隔Ｔを過度に長くするためには、ヘッド間距離を大きくするために装置を極端に大型化するか、又は印字速度を極端に遅くする必要があり、実用性に欠ける。そのため、実用性の観点から、本発明のインクジェット記録装置の吐出間隔Ｔは、５３０ミリ秒以下である。

また、本発明のインクジェット記録装置は、界面形成から吐出間隔Ｔが経過した時点での第１インクの動的表面張力（以下、γ_Tとする）と、表面寿命１０ミリ秒での第２インクの動的表面張力（以下、γ₁₀とする）との差（以下、Δとする）が３．０ｍＮ／ｍ以下である。この動的表面張力の差Δは、第２画像を形成する時点において、第１画像に含まれる第１インクの動的表面張力と、新しくインクジェット吐出される第２インクの動的表面張力との差に相当する。つまり、第２画像を形成する時点では、第１インクが吐出されてから吐出間隔Ｔが経過（界面形成から吐出間隔Ｔが経過）しているため、第１インクの動的表面張力はγ_Tである。また、第２画像を形成する時点では、第２インクは吐出された直後（界面形成直後）であるため、第２インクの動的表面張力はγ₁₀である。ここで、２種類の液体が隣接した際に、各液体の動的表面張力の差が大きいほど各液体が混ざり合い易くなる。これに対して、本発明のインクジェット記録装置は、上述の動的表面張力の差Δが小さいため、第２画像を形成する時点において、第１画像に含まれる第１インクの動的表面張力と、新しくインクジェット吐出される第２インクの動的表面張力とが混じり合い難い。これらの結果、本発明のインクジェット記録装置は、滲みの発生を抑制できる。

更に、本発明のインクジェット記録装置の備えるインクは、表面寿命１０ミリ秒での動的表面張力が４０．０ｍＮ／ｍ以上である。本発明のインクジェット記録装置の備えるインクは、上述の動的表面張力が比較的高いことにより、ライン式記録ヘッドで吐出する際に、吐出孔に安定したメニスカス構造を形成する。これにより、本発明のインクジェット記録装置は、インクの吐出安定性に優れる。また、本発明のインクジェット記録装置の備えるインクは、グリコールエーテル化合物を含有すると共に表面寿命１０ミリ秒での動的表面張力が４０．０ｍＮ／ｍ以上であることにより、上述の動的表面張力の差Δを小さくすることができる。

以下、本発明のインクジェット記録装置について、図面を参照しつつ説明する。なお、参照する図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の大きさ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合がある。

図１は、インクジェット記録装置１００の要部を示す図である。図１に示すように、インクジェット記録装置１００は、搬送部１と、４個のライン式記録ヘッド１１とを主に備える。インクジェット記録装置１００は、給紙トレイ２、給紙ローラー３、給紙従動ローラー４、搬送ベルト５、ベルト駆動ローラー６、ベルト従動ローラー７、排出ローラー８、排出従動ローラー９及び排紙トレイ１０を更に備える。搬送ベルト５、ベルト駆動ローラー６及びベルト従動ローラー７は、搬送部１の一部を構成する。インクジェット記録装置１００の図中左端部には、給紙トレイ２が設けられている。給紙トレイ２は、記録用紙Ｐ（記録媒体）を収容する。給紙トレイ２の一端部には、給紙ローラー３と、給紙従動ローラー４とが設けられている。給紙ローラー３は、収容された記録用紙Ｐを、最上位置の記録用紙Ｐから順に一枚ずつ取り出し、搬送ベルト５に搬送し給紙する。給紙従動ローラー４は、給紙ローラー３に圧接されて従動回転する。

給紙ローラー３及び給紙従動ローラー４の用紙搬送方向下流側（図１において右側）には、搬送ベルト５が回転自在に配設されている。搬送ベルト５は、ベルト駆動ローラー６とベルト従動ローラー７とに掛け渡されている。ベルト駆動ローラー６は、用紙搬送方向下流側に配置される。ベルト駆動ローラー６は、搬送ベルト５を駆動する。ベルト従動ローラー７は、用紙搬送方向上流側に配置される。ベルト従動ローラー７は、搬送ベルト５を介してベルト駆動ローラー６に従動して回転する。ベルト駆動ローラー６が時計方向に回転駆動されることにより、記録用紙Ｐが矢印で示される搬送方向Ｘに搬送される。

また、搬送ベルト５の搬送方向下流側には、排出ローラー８と排出従動ローラー９とが設けられている。排出ローラー８は、図中時計回りに駆動され、画像が形成された記録用紙Ｐを装置筐体外へ排出する。排出従動ローラー９は、排出ローラー８の上部に圧接され従動回転する。排出ローラー８及び排出従動ローラー９の下流側には、排紙トレイ１０が設けられている。排紙トレイ１０には、装置筐体外に排出された記録用紙Ｐが積載される。

４個のライン式記録ヘッド１１は、第１ライン式記録ヘッド１１Ｃ、第２ライン式記録ヘッド１１Ｍ、第３ライン式記録ヘッド１１Ｙ及び第４ライン式記録ヘッド１１Ｋを含む。第１ライン式記録ヘッド１１Ｃ、第２ライン式記録ヘッド１１Ｍ、第３ライン式記録ヘッド１１Ｙ及び第４ライン式記録ヘッド１１Ｋは、搬送ベルト５の上方において、記録用紙Ｐの搬送方向Ｘの上流側から下流側に向けて、この順に略等間隔で配設されている。４個のライン式記録ヘッド１１は、それぞれ、搬送ベルト５の上面との距離が所定の長さとなる高さで支持されている。４個のライン式記録ヘッド１１は、それぞれ、搬送ベルト５上を搬送される記録用紙Ｐに画像を記録する。４個のライン式記録ヘッド１１は、それぞれ、異なる４色（シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック）のインク（第１インク、第２インク、第３インク及び第４インク）が収容されている。４個のライン式記録ヘッド１１は、それぞれ、一定の吐出間隔Ｔを空け、所定の順序に沿って記録用紙Ｐにインクジェット吐出を行う。これにより、記録用紙Ｐ上にカラー画像が形成される。

４個のライン式記録ヘッド１１の吐出間隔Ｔは、３００ミリ秒以上５３０ミリ秒以下である。ここで、吐出間隔とは、特定のライン式記録ヘッド１１（例えば第１ライン式記録ヘッド１１Ｃ）が記録用紙Ｐの特定領域に第１インクを吐出した後、次のライン式記録ヘッド１１（例えば、第２ライン式記録ヘッド１１Ｍ）が記録用紙Ｐの同一領域に第２インクを吐出するまでの時間をいう。

第１インク～第４インクは、それぞれ、顔料と、水溶性有機溶媒と、水とを含有する。水溶性有機溶媒は、グリコールエーテル化合物を含む。第１インク～第４インクの表面寿命１０ミリ秒での動的表面張力は、それぞれ、４０．０ｍＮ／ｍ以上である。界面形成から吐出間隔Ｔが経過した時点での第１インクの動的表面張力と、表面寿命１０ミリ秒での第２インクの動的表面張力との差Δは、３．０ｍＮ／ｍ以下である。界面形成から吐出間隔Ｔが経過した時点での第２インクの動的表面張力と、表面寿命１０ミリ秒での第３インクの動的表面張力との差Δは、３．０ｍＮ／ｍ以下である。界面形成から吐出間隔Ｔが経過した時点での第３インクの動的表面張力と、表面寿命１０ミリ秒での第４インクの動的表面張力との差△は、３．０ｍＮ／ｍ以下である。

以上、本発明のインクジェット記録装置の一例について説明したが、本発明のインクジェット記録装置は、図１に示されるものに限定されない。

図１では、４色のインクに対応する４個のライン式記録ヘッド１１を備えるインクジェット記録装置１００を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明のインクジェット記録装置が備えるライン式記録ヘッドの数は、２個以上であれば特に限定されず、例えば、２個以上６個以下とすることができる。本発明のインクジェット記録装置が備えるライン式記録ヘッドの数は、４個が好ましい。なお、本発明のインクジェット記録装置が備えるライン式記録ヘッドの数が３個以上である場合、少なくとも第１インク及び第２インクにおける動的表面張力の差Δが上述の条件を満たしていればよい。例えば、第２インク及び第３インクにおける動的表面張力の差Δは、上述の条件を満たしていなくてもよい。

また、インクジェット記録装置１００は、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの４色のインクをこの順番で吐出するが、インクの種類、組み合わせ及び吐出順序はこれに限定されない。

更に、ライン式記録ヘッドは、第２ライン式記録ヘッドの次に記録媒体にインクジェット吐出を行う第３ライン式記録ヘッドを更に有することが好ましい。この場合、第３ライン式記録ヘッドに収容されるインクを第３インクとしたときに、界面形成から吐出間隔Ｔが経過した時点での第２インクの動的表面張力と、表面寿命１０ミリ秒での第３インクの動的表面張力との差は、３．０ｍＮ／ｍ以下であることが好ましい。

更に、ライン式記録ヘッドは、第３ライン式記録ヘッドの次に記録媒体にインクジェット吐出を行う第４ライン式記録ヘッドを更に有することが好ましい。この場合、第４ライン式記録ヘッドに収容されるインクを第４インクとしたときに、界面形成から吐出間隔Ｔが経過した時点での第３インクの動的表面張力と、表面寿命１０ミリ秒での第４インクの動的表面張力との差は、３．０ｍＮ／ｍ以下であることが好ましい。

更に、ライン式記録ヘッドの個数がｎ（ｎ：５以上の任意の自然数）個である場合、インクが吐出される順番をそれぞれｍ（ｍ：５以上ｎ以下の任意の自然数）番目としたときに、（ｍ－１）番目に吐出されるインクの界面形成から吐出間隔Ｔが経過した時点での動的表面張力と、ｍ番目に吐出されるインクの表面寿命１０ミリ秒での動的表面張力との差は、３．０ｍＮ／ｍ以下であることが好ましい。

更に、本発明のインクジェット記録装置は、スキャナー、複写機、プリンター又はファクシミリの機能を更に有する複合機であってもよい。

［インク］
以下、本発明のインクジェット記録装置に用いるインクの詳細について説明する。インクは、顔料と、水溶性有機溶媒と、水とを含有する。水溶性有機溶媒は、グリコールエーテル化合物を含む。インクは、界面活性剤を更に含有することが好ましい。

（顔料）
インクにおいて、顔料は、例えば、顔料被覆樹脂と共に顔料粒子を構成する。顔料粒子は、例えば、顔料を含むコアと、コアを被覆する顔料被覆樹脂とにより構成される。顔料被覆樹脂は、例えば、溶媒に分散して存在する。インクの色濃度、色相、又は安定性を向上させる観点から、顔料粒子のＤ₅₀としては、３０ｎｍ以上２００ｎｍ以下が好ましく、７０ｎｍ以上１３０ｎｍ以下がより好ましい。

顔料としては、例えば、黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、紫色顔料、及び黒色顔料が挙げられる。黄色顔料としては、例えばＣ．Ｉ．ピグメントイエロー（７４、９３、９５、１０９、１１０、１２０、１２８、１３８、１３９、１５１、１５４、１５５、１７３、１８０、１８５、及び１９３）が挙げられる。橙色顔料としては、例えばＣ．Ｉ．ピグメントオレンジ（３４、３６、４３、６１、６３、及び７１）が挙げられる。赤色顔料としては、例えばＣ．Ｉ．ピグメントレッド（１２２及び２０２）が挙げられる。青色顔料としては、例えばＣ．Ｉ．ピグメントブルー（１５、より具体的には１５：３）が挙げられる。紫色顔料としては、例えばＣ．Ｉ．ピグメントバイオレット（１９、２３、及び３３）が挙げられる。黒色顔料としては、例えばＣ．Ｉ．ピグメントブラック（７）が挙げられる。

上述の通り、本発明のインクジェット記録装置には、複数のインクを用いる。通常、各インクは、それぞれ、異なる色の顔料を含有する。これにより、本発明のインクジェット記録装置は、カラー画像を形成できる。

インクにおける顔料の含有割合としては、０．５質量％以上１０．０質量％以下が好ましく、１．５質量％以上５．０質量％以下が好ましい。顔料の含有割合を０．５質量％以上とすることで、本発明のインクジェット記録装置は所望の画像濃度を有する画像を形成し易くなる。顔料の含有割合を１０．０質量％以下とすることで、インク中での顔料の流動性が増大する。その結果、本発明のインクジェット記録装置は、所望の画像濃度を有する画像を形成し易くなる。

（顔料被覆樹脂）
顔料被覆樹脂は、インクに可溶な樹脂である。顔料被覆樹脂の一部は、例えば、顔料粒子の表面に存在し、顔料粒子の分散性を向上させる。顔料被覆樹脂の一部は、例えば、インクに溶解した状態で存在する。顔料被覆樹脂としては、アクリル樹脂が好ましい。アクリル樹脂は、（メタ）アクリル酸アルキルエステル及び（メタ）アクリル酸のうち少なくとも１つのモノマーの重合体である。

インクにおいて、顔料被覆樹脂の含有割合としては、０．１質量％以上５．０質量％以下が好ましく、０．５質量％以上２．０質量％以下がより好ましい。

（水溶性有機溶媒）
水溶性有機溶媒は、水と共にインクの溶媒又は分散媒として機能する。水溶性有機溶媒は、グリコールエーテル化合物を含む。

（グリコールエーテル化合物）
グリコールエーテル化合物は、記録媒体に対するインクの浸透性を向上させると共に、適切な動的表面張力を付与する。

グリコールエーテル化合物は、アルキレングリコール化合物の片末端又は両末端の水酸基（－ＯＨ基）が低級アルキル基で置換された化合物である。グリコールエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、又はトリプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。

グリコールエーテル化合物としては、トリエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。

インクにおけるグリコールエーテル化合物の含有割合としては、３．０質量％以上２０．０質量％以下が好ましく、５．０質量％以上１０．０質量％以下がより好ましい。

水溶性有機溶媒は、グリコールエーテル化合物以外のその他の水溶性有機溶媒を更に含んでもよい。その他の水溶性有機溶媒としては、例えば、グリコール化合物、ラクタム化合物、含窒素化合物、アセテート化合物、チオジグリコール、グリセリン及びジメチルスルホキシドが挙げられる。

グリコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、１，３－プロパンジオール、プロピレングリコール、１，２－ペンタンジオール、１，５－ペンタンジオール、１，２－オクタンジオール、１，８－オクタンジオール、３－メチル－１，３－ブタンジオール、３－メチル－１，５－ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールが挙げられる。

ラクタム化合物としては、例えば、２－ピロリドン及びＮ－メチル－２－ピロリドンが挙げられる。

含窒素化合物としては、例えば、１，３－ジメチルイミダゾリジノン、ホルムアミド及びジメチルホルムアミドが挙げられる。

アセテート化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。

その他の水溶性有機溶媒としては、グリコール化合物又はラクタム化合物が好ましく、プロピレングリコール又は２－ピロリドンがより好ましい。

本発明のインクにおけるその他の水溶性有機溶媒の含有割合としては、１５．０質量％以上６０．０質量％以下が好ましく、３５．０質量％以上４５．０質量％以下がより好ましい。

本発明のインクにおけるグリコール化合物の含有割合としては、１５．０質量％以上５５．０質量％以下が好ましく、３５．０質量％以上４２．０質量％以下がより好ましい。

本発明のインクにおけるラクタム化合物の含有割合としては、０．３質量％以上５．０質量％以下が好ましく、１．０質量％以上２．０質量％以下がより好ましい。

（水）
インクにおける水の含有割合としては、２０．０質量％以上６０．０質量％以下が好ましく、３０．０質量％以上５０．０質量％以下がより好ましい。

（界面活性剤）
界面活性剤は、記録媒体に対するインクの濡れ性、及びインクにおける各成分の相溶性を向上させる。界面活性剤としてはノニオン界面活性剤が好ましい。

ノニオン界面活性剤としては、例えば、シリコーン界面活性剤、アセチレンジオール及びアセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。アセチレンジオールとしては、例えば、２，４，７，９－テトラメチル－５－デシン－４，７－ジオール、３，６－ジメチル－４－オクチン－３，６－ジオール、３，５－ジメチル－１－ヘキシン－３－オール及び２，４－ジメチル－５－ヘキシン－３－オールが挙げられる。

インクにおける界面活性剤の含有割合としては、０．１質量％以上３．０質量％以下が好ましく、０．２質量％以上１．０質量％以下がより好ましい。

（他の成分）
インクは、必要に応じて、公知の添加剤（より具体的には、乾燥防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤、ｐＨ調整剤、防カビ剤、保湿剤等）を更に含有してもよい。

上述の通り、本発明のインクジェット記録装置には、複数のインクを用いる。各インクは、通常、顔料の種類が互いに異なる。一方で、各インクは、顔料の種類以外の組成については互いに同一であることが好ましい。つまり、各インクは、顔料の種類のみが異なり、顔料の含有割合と、他の成分（具体的には、水溶性有機溶媒、水及び他の任意成分）の種類及び含有割合とについては互いに同一であることが好ましい。

［インクの製造方法］
インクの製造方法としては、顔料及び必要に応じて配合される他の成分を均一に混合することができる限り、特に限定されない。インクの製造方法の具体例としては、インクの各成分を攪拌機により攪拌して、均一に混合した後、フィルター（例えば孔径５μｍ以下のフィルター）により異物及び粗大粒子を除去する方法が挙げられる。

インクの製造方法において水を添加する場合、イオン交換水を添加することが好ましい。

以下、本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。

［顔料分散液の調製］
（シアン顔料分散液の調製）
シアン顔料（ビーエーエスエフ社製「ＨＥＬＩＯＧＥＮ（登録商標） ＢＬＵＥ Ｄ ７０８８」、Ｃ．Ｉ． Ｐｉｇｍｅｎｔ Ｂｌｕｅ１５：３）１５質量部と、顔料被覆樹脂含有分散液（ビックケミー社製「ＤＩＳＰＥＲＢＹＫ（登録商標）１９０」、不揮発分：４０％、有効成分：アクリル樹脂）１０質量部と、水７５質量部とを混合し、ディスパーで予備分散して混合液を得た。次いで、分散メディアとして直径０．１ｍｍのジルコニアビーズ１８００ｇを充填した容積０．６Ｌのビーズミル（ウィリー・エ・バッコーフェン社製「ダイノーミル」）を用いて、上述の混合液に対して分散処理を行った。これにより、シアン顔料分散液（顔料濃度：１５質量％）を得た。

（マゼンタ顔料分散液の調製）
シアン顔料の代わりにマゼンタ顔料（ＢＡＳＦ社製「Ｃｉｎｑｕａｓｉａ Ｍａｇｅｎｔａ Ｄ ４５５０Ｊ」、Ｃ．Ｉ． Ｐｉｇｍｅｎｔ Ｒｅｄ １２２）を用いた以外は、シアン顔料分散液の調製と同様の方法により、マゼンタ顔料分散液（顔料濃度：１５質量％）を得た。

（イエロー顔料分散液の調製）
シアン顔料の代わりにイエロー顔料（山陽色素株式会社製「ＦＡＳＴ ＹＥＬＬＯＷ ７４１３」、Ｃ．Ｉ． Ｐｉｇｍｅｎｔ Ｙｅｌｌｏｗ７４）を用いた以外は、シアン顔料分散液の調製と同様の方法により、イエロー顔料分散液（顔料濃度：１５質量％）を得た。

（ブラック顔料分散液の調製）
シアン顔料の代わりにブラック顔料（オリオンエンジニアドカーボン社製「Ｐｒｉｎｔｅｘ（登録商標）８５」、カーボンブラック）を用いた以外は、シアン顔料分散液の調製と同様の方法により、ブラック顔料分散液（顔料濃度：１５質量％）を得た。

［インクの調製］
下記表１及び表２に示す種類及び含有割合となるように各成分を容器に投入した。容器の内容物を、攪拌機（新東科学株式会社製「スリーワンモーターＢＬ－６００」）を用いて回転数４００ｒｐｍで攪拌して均一に混合した。得られた混合液から異物及び粗大粒子を除去するため、孔径５μｍのフィルターを用いて混合液をろ過した。その結果、シアンインク（Ｃ－１）～（Ｃ－６）、マゼンタインク（Ｍ－１）～（Ｍ－６）、イエローインク（Ｙ－１）及びブラックインク（Ｂ－１）を得た。

下記表１及び２において、各成分の詳細は、以下に示す通りである。
ＢＴ：トリエチレングリコールモノブチルエーテル（日本乳化剤株式会社製）
プロピレングリコール：デュポン・スペシャルティ・プロダクツ株式会社製
２－ピロリドン：三菱ケミカル株式会社製
界面活性剤（Ｓ－１）：ノニオン界面活性剤（日信化学工業株式会社製「オルフィン（登録商標）Ｅ１０１０」、内容：アセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物、有効成分濃度：１００質量％、ＨＬＢ値：１３．５±０．５）
界面活性剤（Ｓ－２）：ノニオン界面活性剤（日信化学工業株式会社製「サーフィノール（登録商標）４２０」、内容：アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、有効成分濃度：１００質量％、ＨＬＢ値：４）
界面活性剤（Ｓ－３）：ノニオン界面活性剤（日信化学工業株式会社製「サーフィノール（登録商標）４４０」、内容：アセチレングリコールのエチレンオキシド付加物、有効成分濃度：１００質量％、ＨＬＢ値：８）

＜インクジェット記録装置＞
評価用のインクジェット記録装置として、２個のライン式記録ヘッド及び搬送ベルトを少なくとも備えるインクジェット記録装置（京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の試作評価機）を準備した。インクジェット記録装置は、印字速度（搬送ベルトの搬送速度）を変更可能であった。２個のライン式記録ヘッドは、搬送方向に沿って並列に配設されていた。２個のライン式記録ヘッドの距離（ヘッド間距離）は、２５０ｍｍであった。２個のライン式記録ヘッドのうち、搬送方向の上流側に配設され、記録媒体に最初にインクジェット吐出を行うライン式記録ヘッドを「第１ライン式記録ヘッド」とした。また、２個のライン式記録ヘッドのうち、第１ライン式記録ヘッドよりも搬送方向の下流側に配設され、第１ライン式記録ヘッドの次に記録媒体にインクジェット吐出を行うライン式記録ヘッドを「第２ライン式記録ヘッド」とした。２個のライン式記録ヘッドから吐出されるインクの吐出量は、それぞれ、４ｐＬに設定した。

第１ライン式記録ヘッドに、第１インクとして、マゼンタインク（Ｍ－１）～（Ｍ－６）又はイエローインク（Ｙ－１）のうち１つを充填した。第２ライン式記録ヘッドに、シアンインク（Ｃ－１）～（Ｃ－６）又はブラックインク（Ｂ－１）のうち１つを収容した。使用したインクの種類及び吐出順序を下記表３に示す。これにより、実施例１～３及び比較例１～４のインクジェット記録装置を準備した。

［動的表面張力の測定］
各インクについて、動的表面張力測定装置（ＫＲＵＳＳ社製「ＢＰ－１００」）を用いて、表面寿命１０ミリ秒での動的表面張力γ₁₀と、表面寿命３１４ミリ秒での動的表面張力γ₃₁₄と、表面寿命５００ミリ秒での動的表面張力γ₅₀₀とを、最大泡圧法により測定した。測定温度は２５℃であった。測定結果を下記表３に示す。

＜評価＞
以下の方法により、実施例１～３及び比較例１～４のインクジェット記録装置について、吐出安定性と、滲みの発生の有無とを評価した。評価においては、記録媒体としてコート紙（王子製紙株式会社製「ＯＫトップコート＋」）を用いた。評価結果を下記表４に示す。

［滲み］
実施例１～３及び比較例１～４のインクジェット記録装置を用いて、記録媒体に第１の評価画像を形成した。第１の評価画像の形成においては、実施例１～３及び比較例１～４のインクジェット記録装置の印字速度（搬送ベルトの搬送速度）を７９６ｍｍ／秒に設定した。第１の評価画像の形成においては、まず、第１ライン式記録ヘッドを用いて第１インクを記録媒体にインクジェット吐出し、搬送方向と直交する第１の横線を形成した。第１の横線の形成においては、各横線の線幅が４ドットとなるように設定した。次に、第２ライン式記録ヘッドを用いて第２インクを記録媒体にインクジェット吐出し、搬送方向と直交する第２の横線を形成した。第２の横線の形成においては、各横線の線幅が４ドットとなるように設定した。第１の横線と、第２の横線とは、互いに隣接するようにした。即ち、第１の評価画像においては、第１インクにより形成される横線と、第２インクにより形成される横線とが互いに隣接していた。この第１の横線の形成と第２の横線の形成とを交互に繰り返し、第１の横線を含むストライプ画像と、第２の横線を含むストライプ画像とにより構成される評価画像を形成した。評価画像の形成後、記録媒体を十分に自然乾燥させた。

実施例１～３及び比較例１～４のインクジェット記録装置の印字速度（搬送ベルトの搬送速度）を５００ｍｍ／秒に設定した以外は、上述の第１の評価画像の形成と同様の方法により、第２の評価画像を形成した。

第１の評価画像及び第２の評価画像の形成において、各インクジェット記録装置の吐出間隔Ｔは、以下のようにして求めた。各インクジェット記録装置において、２個のライン式記録ヘッドのヘッド間距離は、上述の通り２５０ｍｍであった。第１の評価画像の形成においては、各インクジェット記録装置のヘッド間距離（２５０ｍｍ）を印字速度（７９６ｍｍ／秒）で除した値（３１４ミリ秒）を、各インクジェット記録装置の吐出間隔Ｔとした。第２の評価画像の形成においては、各インクジェット記録装置のヘッド間距離（２５０ｍｍ）を印字速度（５００ｍｍ／秒）で除した値（５００ミリ秒）を、各インクジェット記録装置の吐出間隔Ｔとした。

第１の評価画像及び第２の評価画像について、第１インクにより形成される横線及び第２インクにより形成される横線の境界部において２色が混じりあって滲みが形成されているか否かを目視で確認した。滲みは、以下の基準に沿って判定した。

（滲みの基準）
Ａ（良好）：境界部において滲みが発生していない。
Ｂ（不良）：境界部において第１インク及び第２インクが混じりあって滲みが発生している。

［吐出安定性］
実施例１～３及び比較例１～４のインクジェット記録装置を用いて、記録媒体に対して第１ライン式記録ヘッド及び第２ライン式記録ヘッドの全ノズルから３０分間連続でインクジェット吐出を行った（連続吐出）。連続吐出においては、各インクジェット記録装置の印字速度（搬送ベルトの搬送速度）を７９６ｍｍ／秒に設定した。連続吐出の直後、各インクジェット記録装置を用いて、第１インク及び第２インクを重ね合わせることにより混色のソリッド画像を記録媒体に形成した。

上述のソリッド画像について、インクの不吐出に起因する画像不良の有無を目視で確認した。吐出安定性は、以下の基準に沿って判定した。

（吐出安定性の基準）
Ａ（良好）：インクの不吐出に起因する画像不良が発生しなかった。
Ｂ（不良）：インクの不吐出に起因する画像不良が発生した。

実施例１～３のインクジェット記録装置は、２個以上のライン式記録ヘッドと、ライン式記録ヘッドにそれぞれ収容されるインクとを備えていた。ライン式記録ヘッドは、それぞれ、一定の吐出間隔Ｔを空け、所定の順序に沿って記録媒体にインクジェット吐出を行った。吐出間隔Ｔは、３００ミリ秒以上５３０ミリ秒以下であった。ライン式記録ヘッドは、記録媒体に最初にインクジェット吐出を行う第１ライン式記録ヘッドと、第１ライン式記録ヘッドの次に記録媒体にインクジェット吐出を行う第２ライン式記録ヘッドとを少なくとも有していた。インクは、それぞれ、顔料と、水溶性有機溶媒と、水とを含有していた。水溶性有機溶媒は、グリコールエーテル化合物を含んでいた。インクの表面寿命１０ミリ秒での動的表面張力は、それぞれ、４０．０ｍＮ／ｍ以上であった。第１ライン式記録ヘッドに収容されるインクを第１インクとし、第２ライン式記録ヘッドに収容されるインクを第２インクとしたときに、界面形成から吐出間隔Ｔが経過した時点での第１インクの動的表面張力と、表面寿命１０ミリ秒での第２インクの動的表面張力との差は、３．０ｍＮ／ｍ以下であった。実施例１～３のインクジェット記録装置は、インクの吐出安定性に優れると共に、滲みの発生を抑制できた。

一方、比較例１～４のインクジェット記録装置は、上述の構成を満たしていなかった。具体的には、比較例１、２及び４のインクジェット記録装置は、第１インク及び第２インクについて、界面形成から吐出間隔Ｔが経過した時点での第１インクの動的表面張力と、表面寿命１０ミリ秒での第２インクの動的表面張力との差Δが３．０ｍＮ／ｍ超であった。つまり、比較例１、２及び４のインクジェット記録装置は、第２インクをインクジェット吐出した時点において、先に吐出された第１インクと第２インクとの動的表面張力の差が大きく混じり合い易い状態であった。その結果、比較例１、２及び４のインクジェット記録装置は、滲みの発生を抑制できなかった。

また、比較例２～４のインクジェット記録装置は、第１インク及び第２インクの表面寿命１０ミリ秒での動的表面張力が４０．０ｍＮ／ｍ未満であった。その結果、比較例２～４のインクジェット記録装置は、第１インク及び第２インクが安定的にメニスカス構造を形成することができず、吐出安定性が不良であった。

本発明に係るインクジェット記録装置は、例えばカラープリンターにおいて画像を形成するために用いることができる。

１ 搬送部
２ 給紙トレイ
３ 給紙ローラー
４ 給紙従動ローラー
５ 搬送ベルト
６ ベルト駆動ローラー
７ ベルト従動ローラー
８ 排出ローラー
９ 排出従動ローラー
１０ 排紙トレイ
１１ ライン式記録ヘッド
１１Ｃ 第１ライン式記録ヘッド
１１Ｍ 第２ライン式記録ヘッド
１１Ｙ 第３ライン式記録ヘッド
１１Ｋ 第４ライン式記録ヘッド
１００ インクジェット記録装置

Claims (5)

1. ２個以上のライン式記録ヘッドと、前記ライン式記録ヘッドにそれぞれ収容されるインクとを備え、
   前記ライン式記録ヘッドは、それぞれ、一定の吐出間隔Ｔを空け、所定の順序に沿って記録媒体にインクジェット吐出を行い、
   前記吐出間隔Ｔは、３００ミリ秒以上５３０ミリ秒以下であり、
   前記ライン式記録ヘッドは、前記記録媒体に最初にインクジェット吐出を行う第１ライン式記録ヘッドと、前記第１ライン式記録ヘッドの次に前記記録媒体にインクジェット吐出を行う第２ライン式記録ヘッドとを少なくとも有し、
   前記インクは、それぞれ、顔料と、水溶性有機溶媒と、水とを含有し、
   前記水溶性有機溶媒は、グリコールエーテル化合物を含み、
   前記インクの表面寿命１０ミリ秒での動的表面張力は、それぞれ、４０．０ｍＮ／ｍ以上であり、
   前記第１ライン式記録ヘッドに収容される前記インクを第１インクとし、前記第２ライン式記録ヘッドに収容される前記インクを第２インクとしたときに、
   界面形成から前記吐出間隔Ｔが経過した時点での前記第１インクの動的表面張力と、表面寿命１０ミリ秒での前記第２インクの動的表面張力との差は、３．０ｍＮ／ｍ以下である、インクジェット記録装置。
2. 前記ライン式記録ヘッドは、前記第２ライン式記録ヘッドの次に前記記録媒体にインクジェット吐出を行う第３ライン式記録ヘッドを更に有し、
   前記第３ライン式記録ヘッドに収容される前記インクを第３インクとしたときに、
   界面形成から前記吐出間隔Ｔが経過した時点での前記第２インクの動的表面張力と、表面寿命１０ミリ秒での前記第３インクの動的表面張力との差は、３．０ｍＮ／ｍ以下である、請求項１に記載のインクジェット記録装置。
3. 前記ライン式記録ヘッドは、前記第３ライン式記録ヘッドの次に前記記録媒体にインクジェット吐出を行う第４ライン式記録ヘッドを更に有し、
   前記第４ライン式記録ヘッドに収容される前記インクを第４インクとしたときに、
   界面形成から前記吐出間隔Ｔが経過した時点での前記第３インクの動的表面張力と、表面寿命１０ミリ秒での前記第４インクの動的表面張力との差は、３．０ｍＮ／ｍ以下である、請求項２に記載のインクジェット記録装置。
4. 前記ライン式記録ヘッドの個数は、ｎ（ｎ：５以上の任意の自然数）個であり、
   前記インクが吐出される順番をそれぞれｍ（ｍ：５以上ｎ以下の任意の自然数）番目としたときに、
   （ｍ－１）番目に吐出される前記インクの界面形成から前記吐出間隔Ｔが経過した時点での動的表面張力と、ｍ番目に吐出される前記インクの表面寿命１０ミリ秒での動的表面張力との差は、３．０ｍＮ／ｍ以下である、請求項３に記載のインクジェット記録装置。
5. 前記グリコールエーテル化合物の含有割合は、５．０質量％以上２０．０質量％以下である、請求項１又は２に記載のインクジェット記録装置。

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