JP4420461B2 - 記録方法、インクカートリッジ及び画像形成方法 - Google Patents

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本発明は、水不溶性色材を含有する水性インクを用いた記録方法、インクカートリッジ及び画像形成方法に関する。
従来、着色剤として水不溶性色材、例えば顔料を含むインク(顔料インク)によれば、耐水性や耐光性等の堅牢性に優れた画像を与えることが知られている。近年、このようなインクによって形成されてなる画像の画像濃度をより一層向上することを目的として、種々の技術が提案されている。
例えば、自己分散型カーボンブラックと特定の塩とを含有させてなるインクを用いることにより、より一層の画像濃度の向上を達成することが提案されている(特許文献1参照)。又、顔料、ポリマー微粒子、水溶性有機溶剤及び水を含む組成物であるインクジェット記録用インクと、多価金属塩含有水溶液とを記録媒体に付着させ、該インク組成物と多価金属塩水溶液とを反応させて、高品位な画像を形成する技術の提案がある(特許文献2参照)。これらの技術では、何れの場合も、インク中に分散状態で存在している顔料を、記録媒体表面で強制的に凝集させることによって記録媒体中への顔料の浸透を抑制し、より一層濃度の高い画像を得ている。
特開2000−198955公報 特開2000−63719公報
しかしながら、本発明者らの検討によれば、前記した技術では、記録媒体上で顔料粒子を凝集させているために、インク滴の体積に比較して、記録媒体表面を色材で被覆することのできる面積(いわゆる、エリアファクター)が十分でない場合があることがわかった。このことは、前記した技術では、従来の顔料を高分子分散剤等によって分散させた顔料インクと比較して、同じ画像濃度を得るために必要となるインクの付与量が多くなることを意味しており、この点で改善の余地があった。又、インクの記録媒体に対する浸透性を高めることにより、少ない体積のインク滴でも大きなエリアファクターを得る方法は存在する。しかし、インクの浸透性を高めた場合、当該インクは記録媒体の表面ばかりでなく、記録媒体の深さ方向へも浸透してしまい、十分な画像濃度が得られない場合があった。
本発明者らが、従来のインクそれぞれの利点や欠点を追求し、画像自体の特徴を解析した。その結果、インク中の色材が高濃度であるほど、記録媒体表面に余分な色材が多く存在したり、視覚的に形状がばらついたドットを形成していたり、又、記録媒体中においては、発色に関与しない、無駄な色材が生じていたりすることが判明した。
本発明者らは前記の技術課題の少なくとも1つを解決することで、従来よりも優れた画像を形成できることを見出した。本発明者らが見出した課題を以下に挙げるが、本発明は以下の課題の少なくとも1つを解決するものである。
(1)インク中に分散状態で存在している顔料を、記録媒体表面で強制的に凝集させる場合には、インク滴の体積に比較して、記録媒体表面を色材で被覆することのできる面積(いわゆる、エリアファクター)が十分でない場合がある。従って、同じ画像濃度を得るために必要となるインクの付与量が多くなるという課題。
(2)インクの浸透性を高める場合には、当該インクは記録媒体の表面ばかりでなく、記録媒体の厚み方向へも浸透してしまい、記録媒体の表面近傍に高濃度で色材を分布させることができず、高画像濃度を達成できないという課題。
本発明者らは、上記課題を鑑みて、水不溶性色材を含有する水性インクにおいて、少ないインク液滴量であっても十分に大きなエリアファクターを有し、且つ、画像濃度の高い画像を得ることができ、更に、保存安定性に優れた水性インクを提供するために様々な検討を行った。その結果、インクに含有される水不溶性色材と水溶性有機溶剤の特性を利用することで、上記課題を解決できることを知見した。
本発明者らが更に検討を行った結果、上記のような特性を有する水性インクを用いて普通紙等の記録媒体に画像形成を行った場合、画像濃度が相対的に高い部分では、少ないインク液滴量であっても十分に大きなエリアファクターを有し、画像濃度の高い画像を得ることができることがわかった。その一方で、ハイライト部等の画像濃度が相対的に低い部分においては、水性インクの組成や記録媒体の種類によっては粒状性が目立つ場合がある、という新たな課題があることがわかった。
従って、本発明の目的は、画像濃度が相対的に高い部分では、少ないインク液滴量であっても十分に大きなエリアファクターを有し、且つ画像濃度の高い画像が得られ、ハイライト部等の画像濃度が相対的に低い部分では、粒状性を低減することができる記録方法を提供することにある。
又、本発明の別の目的は、水不溶性色材を含有する水性インクを記録媒体に付与する工程と、該水性インクと接触することによって該水性インク中の水不溶性色材の分散状態を不安定化させる反応液を記録媒体に付与する工程とを有する画像形成方法(以後、2液システムと呼ぶこともある)において、上記構成の記録方法を用いることで、従来の2液システムで得られる画像よりも、少ないインク液滴量であっても十分に大きなエリアファクターを有し、且つ画像濃度の高い画像が得られ、粒状性を低減することができる記録方法を提供することにある。
又、本発明の別の目的は、上記記録方法に好適に用いることのできるインクカートリッジを提供することにある。
更に、本発明の別の目的は、普通紙に互いに異なる色の領域が隣接しているカラー画像記録を行った場合に、各色画像の境界部における混色(ブリード)を有効に抑制することができる画像形成方法を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明にかかる記録方法は、相対的に高濃度の記録を行う際には第1の水性インクを用い、相対的に低濃度の記録を行う際には第2の水性インクを用いる記録方法において、
前記第1の水性インクが、少なくとも、水、顔料、複数の水溶性有機溶剤を含有し、前記顔料がその粒子表面に親水性基が直接若しくは他の原子団を介して結合している顔料であり、
前記第2の水性インクが、少なくとも、水、顔料、水溶性有機溶剤を含有し、前記顔料が樹脂分散剤により分散された顔料であり、
前記複数の水溶性有機溶剤が、前記顔料に対する良溶媒及び前記顔料に対する貧溶媒を含
水性インク全質量に対する、良溶媒の含有量の合計をA(質量%)、貧溶媒の含有量の合計をB(質量%)としたときに、前記第2の水性インクにおけるB/Aが、第1の水性インクにおけるB/Aよりも小さい値であり、
且つ、前記第2の水性インクが、前記第1の水性インクと同一の色相を有することを特徴とする。
又、本発明の別の実施態様にかかる記録方法は、(i)顔料を含有する水性インクを記録媒体に付与する工程、(ii)該水性インクと接触することによって該水性インク中の顔料の溶解状態又は分散状態を不安定化させる反応液を記録媒体に付与する工程、を有する記録方法において、
相対的に高濃度の記録を行う際には第1の水性インクを用い、相対的に低濃度の記録を行う際には第2の水性インクを用い、
前記第1の水性インクが、少なくとも、水、顔料、前記顔料に対する良溶媒及び前記顔料に対する貧溶媒を含有し、前記顔料がその粒子表面に親水性基が直接若しくは他の原子団を介して結合している顔料であり、
前記第2の水性インクが、少なくとも、水、顔料、水溶性有機溶剤を含有し、前記顔料が樹脂分散剤により分散された顔料であり、
水性インク全質量に対する、良溶媒の含有量の合計をA(質量%)及び貧溶媒の含有量の合計をB(質量%)としたときに、前記第2の水性インクにおけるB/Aが、第1の水性インクにおけるB/Aよりも小さい値であり、
且つ、前記第2の水性インクが、前記第1の水性インクと同一の色相を有することを特徴とする。
又、本発明の別の実施態様にかかる記録方法は、相対的に高濃度の記録を行う際には第1の水性インクを用い、相対的に低濃度の記録を行う際には第2の水性インクを用いる記録方法において、
前記第1の水性インクが、少なくとも、水、顔料、複数の水溶性有機溶剤を含有し、前記顔料がその粒子表面に親水性基が直接若しくは他の原子団を介して結合している顔料であり、
前記第2の水性インクが、少なくとも、水、顔料、水溶性有機溶剤を含有し、前記顔料が樹脂分散剤により分散された顔料であり、
前記複数の水溶性有機溶剤が、前記顔料に対する良溶媒及び前記顔料に対する貧溶媒を含み、
水性インク全質量に対する、良溶媒の含有量の合計をA(質量%)及び貧溶媒の含有量の合計をB(質量%)としたときに、前記第2の水性インクにおけるB/Aが、第1の水性インクにおけるB/Aよりも小さい値であり、
且つ、前記第2の水性インクが、前記第1の水性インクと同一の色相を有し、
且つ、ブリストウ法によって求められる、前記複数の水溶性有機溶剤各々のKa値のうち最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が前記貧溶媒であり、
且つ、前記貧溶媒が、前記良溶媒よりも先行して記録媒体に浸透し、記録媒体表面側での前記良溶媒中の前記顔料の凝集を補助することを特徴とする。
又、本発明の別の実施態様にかかるインクカートリッジは、インクを収容するインク収容部を備えたインクカートリッジにおいて、
前記インクが、相対的に高濃度の記録を行う際に用いる第1の水性インク、及び、相対的に低濃度の記録を行う際に用いる第2の水性インク、を含み、
前記第1の水性インクが、少なくとも、水、顔料、複数の水溶性有機溶剤を含有し、前記顔料がその粒子表面に親水性基が直接若しくは他の原子団を介して結合している顔料であり、
前記第2の水性インクが、少なくとも、水、顔料、水溶性有機溶剤を含有し、前記顔料が樹脂分散剤により分散された顔料であり、
前記複数の水溶性有機溶剤が、前記顔料に対する良溶媒及び前記顔料に対する貧溶媒を含み、
水性インク全質量に対する、良溶媒の含有量の合計をA(質量%)、貧溶媒の含有量の合計をB(質量%)としたときに、前記第2の水性インクにおけるB/Aが、第1の水性インクにおけるB/Aよりも小さい値であり、
且つ、前記第2の水性インクが、前記第1の水性インクと同一の色相を有す
ことを特徴とする。
更に、本発明の別の実施態様にかかる画像形成方法は、ブラックインクと少なくとも1色のカラーインクとを用いて記録媒体にインクジェット記録方式で記録を行う画像形成方法において、ブラックインクに上記構成の水性インクを用い、且つ、前記ブラックインクによって形成される画像と、カラーインクによって形成される画像とが隣接してなる画像を形成する際に、ブラックインクを付与する走査を行って画像を形成した後、該画像が形成された領域にカラーインクを付与する走査を行うことを特徴とする。
本発明によれば、画像濃度が相対的に高い部分では、少ないインク液滴量であっても十分に大きなエリアファクターを有し、且つ画像濃度の高い画像が得られ、ハイライト部等の画像濃度が相対的に低い部分では、粒状性を低減することができる記録方法を提供することができる。又、本発明の別の実施態様によれば、水不溶性色材を含有する水性インクを記録媒体に付与する工程と、該水性インクと接触することによって該水性インク中の水不溶性色材の分散状態を不安定化させる反応液を記録媒体に付与する工程とを有する画像形成方法において、上記構成の記録方法を用いることで、従来の2液システムで得られる画像よりも、少ないインク液滴量であっても十分に大きなエリアファクターを有し、且つ画像濃度の高い画像が得られ、粒状性を低減することができる記録方法を提供することができる。更に、本発明の別の実施態様によれば、上記記録方法に好適に用いることのできるインクカートリッジを提供することができる。
以下に、発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
まず、本発明における貧溶媒、及び良溶媒について説明する。その定義の詳細については後述するが、色材として用いる水不溶性色材の分散方法に関わらず、当該水溶性有機溶剤に対する前記水不溶性色材の分散安定性が良いものを良溶媒とし、悪いものを貧溶媒としている。
本発明にかかる第1の水性インクの特徴は、水不溶性色材と共に水性インク中に含有させる水溶性有機溶剤に着目し、水不溶性色材を溶解或いは分散させる機能を有する水溶性有機溶剤を、当該水不溶性色材に対して、前記した貧溶媒としての挙動を示すもの、及び良溶媒としての挙動を示すものに分類し、第1の水性インク中の貧溶媒と良溶媒との比率が特定の範囲内となるように調整してインクを設計した点にある。そして、かかる構成とすることで、従来水性インクによる画像形成において種々の課題があった普通紙に対しても、ブリードが有効に抑制された画像が得られ、更に、付与するインク液滴量が少なくても十分に大きなエリアファクターを有し、且つ画像濃度の高い画像の形成が可能な水性インクが得られる。更に、上記構成の第1の水性インクを、2液システムに適用した場合、従来のインク組成と比較して、より高画質な画像が得られる。
しかしながら、例えば、貧溶媒と良溶媒との比率が特定の範囲内となるように調整したインクを単独で用いて、ハイライト部等の画像濃度が相対的に低い部分の画像形成を行うと、インクが記録媒体に付与された後のドットが広がる過程において、水不溶性色材の凝集スピードが速いため、記録媒体の種類によっては粒状性が目立つ場合があった。
これは、以下のような現象が起きているためだと考えられる。詳細な機構は後述するが、上記のような特性を有するインクを単独で記録媒体に付与すると、インクドットが記録媒体表面近傍で真円に近い形で拡散し、その拡散の過程で貧溶媒の濃度が急激に増加する。これに伴い水不溶性色材の分散状態が不安定化し、水不溶性色材の凝集若しくは分散破壊が起こり、水不溶性色材が凝集する。このため、エリアファクターが大きくなり、画像濃度が高くなる。その一方で、インクの滲みが少なくなるため、特に、ハイライト部等の画像濃度が相対的に低い部分の画像においては粒状性が目立つようになる。
つまり、貧溶媒と良溶媒の比率が特定の範囲内となるように調整すれば、従来のインクと比較して、エリアファクターが大きく、画像濃度が高いインクを得られる。しかし、該インクを単独で用いると、記録媒体によってはハイライト部の粒状性が目立つ場合がある。特に、2液システムに、上記のような特性を有するインクを適用した場合は、ハイライト部等の画像濃度が相対的に低い部分における画像の粒状性がより際立って目立つことがわかった。
そこで、本発明者らは上記課題を解決するために様々な検討を行った。その結果、相対的に高濃度の記録を行う場合に用いられる第1の水性インク、及び、相対的に低濃度の記録を行う場合に用いられる第2の水性インク、の2種の水性インクを組み合わせて用い、該水性インクに含有される良溶媒と貧溶媒の比率を特定の範囲とすることで、インクが記録媒体に付与された後のインクの滲み率をコントロールし、画像濃度が相対的に高い部分では、少ないインク付与量であっても十分に大きなエリアファクターを有し、且つ画像濃度の高い画像が得られ、又、ハイライト部等の画像濃度が相対的に低い部分では、粒状性を低減できることを見出し、本発明に至った。
下記に、本発明に用いられる第1の水性インク及び第2の水性インク、並びに水不溶性色材に対する貧溶媒と良溶媒の関係についてそれぞれ説明する。
[第1の水性インク]
本発明にかかる第1の水性インクは、少なくとも、水、水不溶性色材、複数の水溶性有機溶剤を含有し、前記複数の水溶性有機溶剤が、前記水不溶性色材に対する良溶媒及び貧溶媒であり、且つ、水性インク全質量に対する、良溶媒の含有量の合計をA(質量%)、貧溶媒の含有量の合計をB(質量%)としたときに、前記第2の水性インクにおけるB/Aが、第1の水性インクにおけるB/Aよりも小さい値であることを特徴とする。かかる第1の水性インク中においては、水、水不溶性色材に対する良溶媒及び貧溶媒を含む複数の水溶性有機溶剤、水不溶性色材は所定の比率で混合され、水不溶性色材の分散安定性が保たれている。
本発明にかかる第1の水性インクは、水溶性有機溶剤を上記した特定の構成とする以外は、従来の水不溶性色材を含む水性インクと同様の構成とすればよい。
又、本発明の好ましい別の実施態様は、前記構成の水性インクを用いて、反応液が塗布された記録媒体に印字を行う。この場合、従来の2液システムよりも効果的にブリードを抑制し、更に、裏抜け性、高い画像濃度、高速定着といった画像性能をより向上することが可能となる。
<第1の水性インクによる画像形成のメカニズム>
ここで、本発明にかかる第1の水性インクによる画像形成のメカニズムについて例を挙げて説明する。本発明にかかる第1の水性インクが、記録媒体、特に普通紙上に印字された場合には、以下に述べるような理由によって、非常に優れた画像濃度及び印字品位をもたらすことが可能になると考えられる。
即ち、図13(a)に示したように、本発明にかかるインク滴1301が、記録媒体1300、例えば普通紙上、に印字された場合には、インクの記録媒体上に着弾した瞬間から、インク中の水、水不溶性色材に対する良溶媒及び貧溶媒、水不溶性色材の比率は変化していく。つまり、図13(a)及び(b)に示したように、インク滴1301の記録媒体1300表面への着弾後に、インクが記録媒体へと定着していくにつれて、水の蒸発と共に、まず、インク中の水溶性有機溶剤のうちKa値が高い貧溶媒1307が、Ka値の低い良溶媒よりも記録媒体表面近傍で真円に近い形で拡散し、インクドットが形成されていくと考えられる。
図13の(b)〜(d)は、インクが記録媒体1300上へ着弾してから後に定着するまでのインクの様子を示した模式図である。この場合におけるインクドットの広がり状態に着目すると、ドットの中心部1303と比べてインクと紙の接触部分におけるドットの外周1302において貧溶媒の濃度が高くなっていると考えられる。この結果、インクドットが記録媒体表面近傍で真円に近い形で拡散し、その拡散の過程で、水不溶性色材に対して貧溶媒1307の濃度が急激に増加する。これに伴い水不溶性色材の分散が急激に不安定化し、水不溶性色材の凝集若しくは分散破壊が起こる。この際、記録媒体表面上に真円形に近い縁取りを取りつつ拡散し(図13(b)参照)、水不溶性色材1304が記録媒体1300の表面に留まることが起こり、ドットの外縁部分に、あたかも水不溶性色材の土手が形成されたかのようになる。このようにして、水不溶性色材のドットが真円形に形成され、その状態で記録媒体表面に固定化されると考えられる(図13(c)参照)。この時点において、水不溶性色材のドット形成は完了するが、インク中の水溶性有機溶剤及び水1306は更に拡散しながら放射状に広がっていく。つまり、水不溶性色材のドット形成後も、水溶性有機溶剤及び水1306は記録媒体表面近傍を拡散していく。それに引き続き、良溶媒リッチな中央部1303の水溶性有機溶剤の蒸発や浸透により、この部分においても水不溶性色材が析出してドット1305が形成される(図13(c)参照)。上記したようなプロセスによって形成される画像は、少ないインク液滴量であっても十分に大きなエリアファクターを有し、画像濃度が高く、高品位なものとなる。
[第2の水性インク]
本発明にかかる第2の水性インクは、少なくとも、水、水不溶性色材、水溶性有機溶剤を含有し、前記水溶性有機溶剤が、前記水不溶性色材に対する良溶媒であり、且つ、第1の水性インク全質量に対する、良溶媒の含有量の合計(質量%)をA、貧溶媒の含有量の合計(質量%)をBとしたときに、前記第2の水性インクにおけるB/Aが、第1の水性インクにおけるB/Aよりも小さい値であり、且つ、前記第2の水性インクが、前記第1の水性インクと同一の色相を有することを特徴とする。
本発明にかかる第2の水性インクは、水溶性有機溶剤を上記した特定の構成とする以外は、従来の水不溶性色材を含む水性インクと同様の構成とすればよい。
尚、第2の水性インクは、第1の水性インクと同一の色相を有することが必須であるが、本発明における同一の色相とは、例えば、シアンインク及び淡シアンインク、マゼンタインク及び淡マゼンタインク、ブラックインク及びグレーインク、等のことを言う。勿論、本発明はこれに限られるものではない。又、第1の水性インク及び第2の水性インクにおける色材濃度が実質的に等しいインクの組み合わせでも構わない。
又、本発明の好ましい別の実施態様は、前記構成の水性インクを用いて、反応液が塗布された記録媒体に印字を行う。この場合、第2の水性インクを用いることで、インクの滲み率が高くなり、従来の2液システムよりも効果的に粒状感を低減することが可能となる。
<第2の水性インクによる画像形成のメカニズム>
ここで、本発明にかかる第2の水性インクによる画像形成のメカニズムについて図14及び図15を用いて説明する。
図14の(1)の(a)〜(d)は第1の水性インクが記録媒体上に着弾してから定着するまでの過程を示す模式図であり、上記において図13を用いて説明した通りである。即ち、インクが記録媒体に着弾するとインクドットが拡散する過程で水不溶性色材の分散が不安定化し、水不溶性色材の凝集若しくは分散破壊が起こる。この結果、水不溶性色材が記録媒体の表面に留まることが起こり、ドットの外縁部分に、あたかも水不溶性色材の土手が形成されたかのようになる。このようにして、水不溶性色材のドットが真円形に形成され、その状態で記録媒体表面に固定化される。
図14(2)の(a)〜(d)は、第2の水性インクが記録媒体上に着弾してから定着するまでの過程を示す模式図である。第2の水性インクは第1の水性インクと比較して、インクにおける良溶媒の含有量の合計(質量%)に対する貧溶媒含有量の合計(質量%)の比率が小さい。従って、記録媒体上に第2の水性インクが着弾してから、インクドットが拡散する過程における、水不溶性色材の凝集若しくは分散破壊が起こる程度が第1の水性インクと比較して小さい。このため、水不溶性色材は、水溶性有機溶剤及び水が拡散しながら放射状に広がっていくのと共に広がっていく。その結果、図15で示すように、第2の水性インクは第1の水性インクと比較して、記録媒体における滲み率がより大きくなる。
以上のことから、ハイライト部等の画像濃度が相対的に低い部分においては、第2の水性インクを用いて画像を形成することで、画像の粒状性を低減することが可能となる。
[良溶媒・貧溶媒の判別方法]
上記したような想定メカニズムの下で、本発明に用いる良溶媒及び貧溶媒は、水不溶性色材の分散状態を良好に維持できるか否か、即ち、水不溶性色材、又は、水不溶性色材及びその分散に寄与する物質(後述する分散剤や界面活性剤等)との関係において決定される。従って、本発明にかかるインクの調製にあたって、良溶媒と貧溶媒とを選択する場合には、使用する水不溶性色材の分散状態の安定度を観察し、その結果から求めることが好ましい。そして本発明者らは、本発明の効果をもたらす良溶媒と貧溶媒との判定の基準を、本発明の効果との関連の下で種々検討した結果、下記のような判定方法が有効であることを見出した。
まず、判定対象の水溶性有機溶剤50質量%、及び水45質量%を含有し、且つ当該インクに用いる水不溶性色材5質量%を分散状態で含有する水不溶性色材分散液を調製する。そして、調製した分散液を60℃で48時間保存したときの、当該液体中の水不溶性色材の平均粒径が、5質量%の上記水不溶性色材、及び水95質量%を含有する水分散液の水不溶性色材の平均粒径と比較して増加しているものを貧溶媒とし、又、当該分散液の水不溶性色材の平均粒径が、同じか、或いは減少しているものを良溶媒と規定した。
より具体的には、下記の方法で、ある不溶性色材に対して、使用される水溶性有機溶剤が良溶媒となっているか、或いは貧溶媒となっているかの判定を行った。まず、下記に挙げた、判定対象の水溶性有機溶剤を含有する、ある水不溶性色材の分散液A、及び該水不溶性色材の水分散液B、の2種類の分散液を調製する。
分散液A:判定対象としての水溶性有機溶剤の濃度が50質量%、水不溶性色材の濃度、又は、水不溶性色材及びその分散に寄与する物質の総量の濃度が5質量%、水の濃度が45質量%である組成の水不溶性色材分散液。
水分散液B:水不溶性色材の濃度、又は、水不溶性色材及びその分散に寄与する物質の総量の濃度が5質量%、水の濃度が95質量%である組成の水不溶性色材の水分散液。
次に、前記分散液Aを60℃で48時間保存した後に常温に冷ました分散液Aの水不溶性色材の平均粒径を、濃厚系粒径アナライザー(商品名:FPAR−1000;大塚電子製)等を用いて測定した。又、前記水分散液Bは、加温保存を行わない状態の水不溶性色材の平均粒径を、上記と同様にして濃厚系粒径アナライザーを用いて測定した。そして、前記分散液A及び水分散液Bにおけるそれぞれの水不溶性色材の平均粒径値を、粒径(A)、粒径(B)としたときに、これらの値を次の定義に従って良溶媒と貧溶媒とに判別した。
・貧溶媒:上記において、粒径(A)が粒径(B)よりも大きい場合、当該判定対象の水溶性有機溶剤を貧溶媒として定義した。
・良溶媒:粒径(A)と粒径(B)と同じか、或いは粒径(A)が粒径(B)よりも減少した場合、当該判定対象の水溶性有機溶剤を良溶媒として定義した。
このようにして、判定された良溶媒と貧溶媒とを用いて本発明の構成を有するインクを調製したところ、前記したような優れた効果が得られることが確認できた。
[水溶性有機溶剤のKa値]
本発明においては、第1の水性インクに含まれる、種類の異なる複数の水溶性有機溶剤の各々のKa値を比較したときに、Ka値が最大の水溶性有機溶剤が貧溶媒ある場合、上記で述べた画像形成のメカニズムが効果的に発現するために好ましい。
ここで、ブリストウ法によって求められるKa値について説明する。該値は、液体の記録媒体への浸透性を表わす尺度として用いられる。以下、インクを例に挙げて説明する。インクの浸透性を1m2あたりのインク量Vで表わすと、インク滴を吐出してから所定時間tが経過した後における、インクの記録媒体への浸透量V(mL/m2=μm)は、下記に示すブリストウの式(式(1))によって示される。
Figure 0004420461
記録媒体に付与された直後のインクは、そのほとんどが記録媒体表面の凹凸部分(記録媒体表面の粗さの部分)に吸収され、記録媒体の内部(深さ方向)へはほとんど浸透していない。この間の時間がコンタクトタイム(tw)であり、コンタクトタイムに記録媒体の凹凸部に吸収されたインク量がVrである。そして、インクが記録媒体に付与された後に、コンタクトタイムを超えると、該コンタクトタイムを超えた時間、即ち、(t−tw)の1/2乗べきに比例するインク量が記録媒体の内部(深さ方向)へ浸透し、浸透量が増加する。Kaは、この増加分の比例係数であり、浸透速度に応じた値を取る。尚、Ka値は、ブリストウ法による液体の動的浸透性試験装置(例えば、商品名:動的浸透性試験装置S;東洋精機製作所製)等を用いてすることが可能である。
尚、本発明におけるブリストウ法によるKa値は、普通紙(例えば、電子写真方式を用いた複写機やページプリンタ(レーザビームプリンタ)やインクジェット記録方式を用いたプリンタ用として用いられるPB紙(キヤノン製)や、電子写真方式を用いた複写機用の紙であるPPC用紙等)を記録媒体として用いて測定した値である。又、測定環境は、通常のオフィス等の環境、例えば、温度20℃〜25℃、湿度40%〜60%を想定している。
[第1の水性インクと第2の水性インクの関係]
上記のことから、本発明の第1の水性インクと第2の水性インクにおいて、各インクに含有されている水不溶性色材に対する貧溶媒、良溶媒の比率を上記のように規定することで、画像濃度が相対的に高い部分では、少ないインク液滴量であっても十分に大きなエリアファクターを有し、且つ画像濃度の高い画像が得られ、ハイライト部等の画像濃度が相対的に低い部分では、粒状性が低減した画像を形成することが可能となる。
本発明者らが更に検討を行ったところ、第1の水性インク及び第2の水性インクにおいて、第1の水性インク及び第2の水性インクにおける良溶媒及び貧溶媒の含有量の比を取り、前記含有量の比の差が小さいほど、優れた階調性を表現することが可能となるという、別の効果が得られることがわかった。この場合、具体的には、各水性インク全質量に対する、良溶媒の含有量の合計をA(質量%)、貧溶媒の含有量の合計をB(質量%)としたときに、前記第1の水性インクにおけるB/Aと、前記第2の水性インクにおけるB/Aの差が、1以下、更には0.5以下とすることが好ましい。
[水性インク]
本発明の最大の特徴は、上記で述べたように、水性インク中の水不溶性色材に対する良溶媒及び貧溶媒の量的関係により、記録媒体上でのインクの滲み率を変化させた第1の水性インク及び第2の水性インクを用い、画像の濃度に応じて前記水性インクを使い分けることにある。
本発明にかかる第1の水性インク及び第2の水性インクは、インク成分中の水溶性有機溶剤を、使用する水不溶性色材との関連において、上記で説明した構成とすることを必須とするが、それ以外は、従来の水性インクと同様の構成とすればよい。下記に、本発明の水性インクを構成する各成分について説明する。
<水性媒体>
本発明にかかる水性インクを構成する水性媒体について説明する。前記水性媒体は、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である。本発明においては、先に述べた方法で、水溶性有機溶剤を、当該顔料に対する良溶媒と貧溶媒とに判別する。そして、かかる判定結果を踏まえて、水性インクにおいて少なくとも良溶媒と貧溶媒とが混在し、且つ、各水溶性有機溶剤の含有量が本発明で規定する範囲内となるように、水溶性有機溶剤を選択して適宜に配合し、インクを調製することが必要となる。又、本発明においては、水性インク全質量に対する、良溶媒の含有量の合計をA(質量%)、貧溶媒の含有量の合計をB(質量%)としたときに、前記第2の水性インクにおけるB/Aが、第1の水性インクにおけるB/Aよりも小さい値となるように水溶性有機溶剤の含有量を調整することが必要である。
水溶性有機溶剤は、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。又、水は、脱イオン水を使用することが好ましい。
本発明にかかる水性インク中の水溶性有機溶剤の含有量は特に限定されないが、インク全質量に対して、3質量%〜50質量%の範囲とすることが好ましい。特に、第1の水性インクにおいては、貧溶媒の含有量の合計(質量%)がインク全質量に対して4質量%以上である場合や、貧溶媒の含有量の合計(質量%)が水不溶性色材の固形分の含有量(質量%)と同等以上である場合、本発明の効果が効果的に得られるため、好ましい。又、水性インク中の水の含有量は、インク全質量に対して、50質量%〜95質量%の範囲とすることが好ましい。
本発明の好ましい形態では、第1の水性インクにおいて、良溶媒の含有量の合計(質量%)をA1、貧溶媒の含有量の合計(質量%)をB1としたときに、A1:B1の比率[第1の水性インクにおける、良溶媒の含有量の合計(質量%):貧溶媒の含有量の合計(質量%)]が、A1:B1=10:5以上10:30以下の範囲内となるように、好ましくは、A1:B1=10:5以上10:10以下の範囲内となるように、更に好ましくは、A1:B1=10:6以上10:10以下の範囲内となるように、第1の水性インクを構成する水溶性有機溶剤の種類と含有量とを調整する。尚、「A1:B1の比率が、A1:B1=10:5以上10:30以下」とは、A1を10としたときにB1が5以上30以下ということを意味し、「A1:B1=10:6以上10:10以下」とは、A1を10としたときにB1が6以上10以下ということを意味する。
又、本発明の別の好ましい形態では、第2の水性インクにおいて、良溶媒の含有量の合計(質量%)をA2、貧溶媒の含有量の合計(質量%)をB2としたときに、A2:B2の比率[第2の水性インクにおける、良溶媒の含有量の合計(質量%):貧溶媒の含有量の合計(質量%)]が、A2:B2=10:5より少ない範囲となるように、すなわち、A2を10としたときにB2が5未満(B2=0を含む)となるように、第2の水性インクを構成する水溶性有機溶剤の種類と含有量を調整することが好ましい。上記範囲とすることで、ドットの滲み率が高くなり、粒状性を効果的に低減することができる。尚、第2の水性インクにおいては、良溶媒を含有することは必須であるが、貧溶媒は含有しなくても良い。
本発明者らの詳細な検討によれば、水性インク中に含まれる良溶媒の含有量が多い場合は、保存安定性に優れる水性インクとなるが、特に記録媒体が普通紙の場合には高い画像濃度を得ることが難しい。又、逆に水性インク中に含まれる良溶媒の含有量が少ない場合には、高い画像濃度を得ることができるが、水性インクの保存安定性が不十分になることがある。
これに対して、インク中の水溶性有機溶剤における良溶媒と貧溶媒との比率を上記のように制御すれば、水性インクの保存安定性と、高い画像濃度の実現との両立を図ることが可能となる。更には、ハイライト部等の画像濃度が相対的に低い部分に付与されるの第2の水性インクにおいては、貧溶媒の含有量を低下させるほど、画像の粒状性をより低減することが可能となる。更には、第1の水性インクの場合、先に述べたように、インク中に含有させる各水溶性有機溶剤を決定する際に、記録媒体への浸透性を表わす尺度であるブリストウ法によって求められるKa値の値を制御することで、少ないインク液滴量であっても十分に大きなエリアファクターを有し、しかも高い画像濃度を実現できる、という従来得ることのできなかった効果の達成を図ることができる。
<水不溶性色材>
本発明にかかる水性インクを構成する水不溶性色材について説明する。本発明の水性インクを構成する水不溶性色材は、その分散方式にかかわらず、何れのものも用いることができる。中でも特に、顔料を用いることが好ましい。顔料は、具体的には、例えば、分散剤や界面活性剤を用いる、いわゆる樹脂分散タイプの顔料(樹脂分散型顔料)や、界面活性剤分散タイプの顔料であってもよいし、顔料自体の分散性を高めて、分散剤等を用いることなく分散可能とした、マイクロカプセル型顔料や、顔料粒子の表面に親水性基を導入した、いわゆる自己分散タイプの顔料(自己分散型顔料)や、更には、顔料粒子の表面に高分子を含む有機基が化学的に結合している改質された顔料(ポリマー結合型自己分散顔料)等を用いることができる。勿論、これらの分散方法の異なる顔料を組み合わせて使用することも可能である。
尚、本発明の水不溶性色材は、上記で述べた樹脂分散型顔料、自己分散型顔料、ポリマー結合型自己分散顔料等、水不溶性色材が水性媒体に分散された状態のものである。即ち、本発明の水不溶性色材に対する良溶媒及び貧溶媒とは、樹脂分散型顔料、自己分散型顔料、ポリマー結合型自己分散顔料等に対する良溶媒及び貧溶媒を示していることは言うまでもないことである。以下、本発明に用いることのできる水不溶性色材について説明する。
本発明においては、水不溶性色材の含有量(質量%)が、インク全質量に対して1質量%〜10質量%であることが好ましい。又、第1の水性インクにおける水不溶性色材の含有量(質量%)及び第2の水性インクにおける水不溶性色材の含有量(質量%)は、同じであっても、異なっていても良い。
(顔料)
本発明にかかる水性インクに用いることのできる顔料は特に限定されず、下記に挙げるようなものを何れも用いることができる。又、1の水性インク中に、必要に応じて複数種の顔料を併用することもできる。
ブラックインクに使用される顔料は、カーボンブラックが好適である。例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックを何れも使用することができる。具体的には、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000ULTRA、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA−II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上、コロンビア製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、モナク2000、ヴァルカン(Valcan)XC−72R(以上、キャボット製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(Special Black)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上、デグッサ製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学製)等の市販品を使用することができる。又、本発明のために別途新たに調製されたカーボンブラックを使用することもできる。しかし、本発明は、これらに限定されるものではなく、従来公知のカーボンブラックを何れも使用することができる。又、カーボンブラックに限定されず、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子や、チタンブラック等を黒色顔料として用いてもよい。
ブラックインク以外に使用される顔料粒子は各種の有機顔料粒子が挙げられる。有機顔料は、具体的には、例えば、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料、イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料、インジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。勿論、これらに限定されず、その他の有機顔料であってもよい。
又、本発明で使用することのできる有機顔料を、カラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、例えば、下記のものが挙げられる。
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185等
C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71等
C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272等
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50等
C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64等
C.I.ピグメントグリーン7、36等
C.I.ピグメントブラウン23、25、26等
(樹脂分散型顔料)
本発明にかかる水性インクに用いることのできる水不溶性色材は、上記で述べたように、分散剤を用いる樹脂分散型顔料を使用することができる。この場合には、上記に列挙したような疎水性の顔料を分散させるための界面活性剤、樹脂分散剤等の化合物が必要となる。
界面活性剤は、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤が好ましい。アニオン系界面活性剤の具体例は、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、及びこれらの置換誘導体等が挙げられる。又、ノニオン系界面活性剤の具体例は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、及びこれらの置換誘導体等が挙げられる。
樹脂分散剤の具体例は、スチレン及びその誘導体、ビニルナフタレン及びその誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸及びその誘導体、マレイン酸及びその誘導体、イタコン酸及びその誘導体、フマール酸及びその誘導体、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びその誘導体等から選ばれた少なくとも2つの単量体(このうち少なくとも1つは親水性単量体)からなるブロック共重合体、ランダム共重合体及びグラフト共重合体、並びにこれらの塩等が挙げられる。更に、ブロック共重合体とランダム共重合体等を併用して用いることもできる。
(マイクロカプセル型顔料)
本発明にかかる水性インクに用いることのできる水不溶性色材は、上記で述べたように、水不溶性色材を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化してなるマイクロカプセル型顔料を使用することができる。水不溶性色材を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化する方法は、化学的製法、物理的製法、物理化学的方法、機械的製法等が挙げられる。具体的には、界面重合法、in−situ重合法、液中硬化被膜法、コアセルベーション(相分離)法、液中乾燥法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法、酸析法、転相乳化法等が挙げられる。
マイクロカプセルの壁膜物質を構成する材料として使用される有機高分子類の具体例は、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリウレア、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、多糖類、ゼラチン、アラビアゴム、デキストラン、カゼイン、タンパク質、天然ゴム、カルボキシポリメチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸の重合体又は共重合体、(メタ)アクリル酸エステルの重合体又は共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アルギン酸ソーダ、脂肪酸、パラフィン、ミツロウ、水ロウ、硬化牛脂、カルナバロウ、アルブミン等が挙げられる。これらの中でも、カルボン酸基又はスルホン酸基等のアニオン性基を有する有機高分子類が好ましい。又、ノニオン性有機高分子の具体例は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート又はそれらの(共)重合体)、2−オキサゾリンのカチオン開環重合体等が挙げられる。特に、ポリビニルアルコールの完全ケン物は、水溶性が低く、熱水には解け易いが冷水には解けにくいという性質を有しているため、特に好ましい。
マイクロカプセル化の方法として転相法又は酸析法を選択する場合、マイクロカプセルの壁膜物質を構成する有機高分子類には、アニオン性有機高分子類を使用する。
転相法は、水に対して自己分散能又は溶解能を有するアニオン性有機高分子類と、自己分散性有機顔料又は自己分散型カーボンブラック等の色材との複合物又は複合体、或いは自己分散性有機顔料又は自己分散型カーボンブラック等の色材、硬化剤及びアニオン性有機高分子類との混合体を有機溶媒相とし、該有機溶媒相に水を投入するか、或いは水中に該有機溶媒相を投入して、自己分散(転相乳化)化しながらマイクロカプセル化する方法である。尚、転相法において、有機溶媒相中に、インクに用いられる水溶性有機溶剤や添加剤を混入させて製造することもできる。特に、インク用の分散液を直接製造できるという観点からは、インクの水性媒体を混入させることが好ましい。
酸析法は、アニオン性基を含有する有機高分子類のアニオン性基の一部又は全部を塩基性化合物で中和し、自己分散型有機顔料又は自己分散型カーボンブラック等の色材と共に水性媒体中で混練する工程、及び酸性化合物でpHを中性又は酸性にしてアニオン性基含有有機高分子類を析出させて、顔料に固着する工程、とからなる製法により、含水ケーキを得る。そして、前記含水ケーキを、塩基性化合物を用いてアニオン性基の一部又は全部を中和することによりマイクロカプセル化する方法である。酸析法によって、微細で顔料を多く含有するアニオン性マイクロカプセル化顔料を製造することができる。
又、上記に挙げたようなマイクロカプセル化の際に用いられる有機溶剤の具体例は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルキルアルコール類;ベンゾール、トルオール、キシロール等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;クロロホルム、二塩化エチレン等の塩素化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類等が挙げられる。
尚、上記の方法により調製したマイクロカプセルを遠心分離又は濾過等によりこれらの有機溶剤中から一度分離して、これを水及び必要な溶剤とともに撹拌、再分散を行い、目的とするマイクロカプセル型顔料とすることもできる。以上の如き方法で得られるマイクロカプセル型顔料の平均粒径は50nm〜180nmであることが好ましい。
(自己分散型顔料)
本発明にかかる水性インクに用いることのできる水不溶性色材は、上記で述べたように、顔料自体の分散性を高め、分散剤等を用いることなく分散可能とした自己分散型顔料を使用することができる。自己分散型顔料は、親水性基が顔料粒子表面に直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合しているものが好ましい。例えば、顔料粒子表面に導入された親水性基が、−COOM1、−SO3M1及び−PO3H(M1)2(式中のM1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。)からなる群から選ばれるもの等を好適に用いることができる。更に、上記他の原子団が、炭素原子数1〜12のアルキレン基、置換若しくは未置換のフェニレン基又は置換若しくは未置換のナフチレン基であるもの等を好適に用いることができる。その他にも、カーボンブラックを次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法、水中オゾン処理でカーボンブラックを酸化する方法、オゾン処理を施した後に酸化剤により湿式酸化し、カーボンブラック表面を改質する方法等によって得られる、表面酸化処理タイプの自己分散型顔料も好適に用いることができる。
(ポリマー結合型自己分散型顔料)
本発明にかかる水性インクに用いることのできる水不溶性色材は、上記で述べたように、顔料自体の分散性を高め、分散剤等を用いることなく分散可能としたポリマー結合型自己分散型顔料を使用することができる。前記ポリマー結合型自己分散顔料は、顔料の表面に、直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合されている官能基と、イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体と、の反応物を含むものを用いることが好ましい。これは、表面を改質する場合に用いる共重合体の形成材料であるイオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合比率を適宜に変化させることができ、これによって改質された顔料の親水性を適宜に調整できるためである。又、使用するイオン性モノマー及び疎水性モノマーの種類や、両者の組み合わせを適宜に変化させることができるため、顔料表面に様々な特性を付与することもできる。
〔官能基〕
ポリマー結合型自己分散顔料の官能基は、顔料表面に、直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合している。前記官能基は、後述する共重合体との反応によって有機基を構成するためのものであり、官能基の種類は、前記共重合体が担持する官能基との関連において選択される。官能基と共重合体との反応は、当該顔料が水性媒体に分散されるものであることを考慮すると、加水分解等を生じることのない結合、例えばアミド結合等を生じる反応とすることが好ましい。このためには、官能基をアミノ基とし、共重合体にカルボキシル基を担持させることで、共重合体を顔料粒子表面にアミド結合を介して導入することができる。又は、官能基をカルボキシル基とし、共重合体にアミノ基を担持させることでも、前記と同様に、共重合体を顔料粒子表面にアミド結合を介して導入することができる。
ここで、顔料表面に化学的に結合している官能基は、顔料表面に直接結合していても、又は、顔料表面に他の原子団を介して結合していてもよい。しかし、比較的分子量の大きな共重合体を顔料表面に導入する場合には、共重合体同士の立体障害を避けるため、官能基は他の原子団を介して顔料表面に導入することが好ましい。尚、他の原子団とは、多価の元素や有機基であれば特に限定されるものでない。しかし、上記した理由により、官能基の顔料表面からの距離を制御するという観点から、例えば2価の有機残基が好ましく用いられる。2価の有機残基の具体例は、アルキレン基やアリーレン基(フェニレン基)等が挙げられる。
より具体的に述べると、例えば後述する実施例においては、顔料をアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホンと反応させて、顔料表面にアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基を導入し、その後、ペンタエチレンヘキサミンのアミノ基とアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基とを反応させることにより、官能基としてのアミノ基を導入している。この場合には、アミノ基は、フェニル(2−スルホエチル)基を含む原子団を介して顔料表面に化学的に結合している。勿論、本発明はこれに限られるものではない。
〔共重合ポリマー〕
イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体は、例えば、アニオン性を有するアニオン性の共重合体、或いはカチオン性を有するカチオン性の共重合体が好ましい。
前記アニオン性の共重合体の例は、疎水性モノマーとアニオン性モノマーとの共重合体、或いは、これらの塩等が挙げられる。
前記疎水性モノマーの具体例は、スチレン、ビニルナフタレン、メチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、メタクリロニトリル、2−トリメチルシロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、p−トリルメタクリレート、ソルビルメタクリレート、メチルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、アクリロニトリル、2−トリメチルシロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、p−トリルアクリレート及びソルビルアクリレート等が挙げられる。又、前記アニオン性モノマーの具体例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等が挙げられる。勿論、本発明はこれに限られるものではない。
アニオン性モノマーと疎水性モノマーとのアニオン性の共重合体は、上記に挙げた疎水性モノマーから選択された何れかと、上記に挙げたアニオン性モノマーから選択された少なくとも1つ、の少なくとも2つ以上のモノマーからなる。前記アニオン性の共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、或いは、これらの塩等が挙げられる。
かかるアニオン性の共重合体は、酸価が100〜500の範囲のものが好ましく、且つ、酸価のばらつきが平均酸価の20%以内であるものが好ましい。酸価が上記範囲より高い場合は、顔料表面の親水性が高くなり過ぎることにより、印字後におけるインク中の水及び溶剤が顔料表面にとどまり、記録媒体への印字後における、耐擦過性や耐マーカー性の発現が遅くなる場合がある。又、酸価が上記範囲より低い場合は、顔料表面の親水性が低くなり過ぎることにより、インク中に顔料が安定に分散しにくくなる場合がある。
尚、前記したアニオン性の共重合体の塩とは、ナトリウム、リチウム、カリウム等のアルカリ金属塩の他、アンモニウム塩、アルキルアミン塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。又、これらは、単独或いは複数を適宜に組み合わせて使用できる。
次に、前記カチオン性の共重合体の例は、疎水性モノマーとカチオン性モノマーとの共重合体、或いは、これらの塩等が挙げられる。
疎水性モノマーは、先に挙げたモノマーを使用することができる。又、前記カチオン性モノマーの具体例は、アリルアミン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、第3−ブチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N−ビニルカルバゾール、メタクリルアミド、アクリルアミド及びジメチルアクリルアミド等が挙げられる。勿論、本発明はこれに限られるものではない。
カチオン性モノマーと疎水性モノマーとのアニオン性の共重合体は、先に挙げた疎水性モノマーから選択された何れかと、上記に挙げたカチオン性モノマーから選択された少なくとも1つ、の少なくとも2つ以上のモノマーからなる。前記カチオン性の共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、或いは、これらの塩等が挙げられる。
かかるカチオン性の共重合体は、アミン価が100〜500の範囲のものが好ましく、且つ、アミン価のばらつきが平均アミン価の20%以内であるものが好ましい。アミン価とは、試料1gを中和し、酸価に対応させてKOHのmg数で表した値である。
尚、前記したカチオン性の共重合体の塩とは、酢酸、塩酸、硝酸等が挙げられる。又、これらは、単独或いは複数を適宜に組み合わせて使用できる。
以上で説明したアニオン性或いはカチオン性の共重合体は、その重量平均分子量(Mw)が、1,000〜20,000の範囲のものが好ましく、更には、3,000〜20,000の範囲のものが好ましい。又、カチオン性の共重合体セグメントの多分散度Mw/Mn(重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn)が、3以下であるものが好ましい。このようなアニオン性或いはカチオン性の共重合体の質量は、インク中において、前記共重合体によって表面改質された顔料粒子の質量に対して、その含有率が5%以上40%以下であることが好ましい。又、共重合体の多分散度が大きい場合には、共重合体の分子量分布が広くなり、共重合体の分子量に基づく上記で述べた性質が発現しにくくなるため、共重合体の分子量分布は、揃っている方が好ましい。
次に、カーボンブラックを例に挙げて、顔料粒子表面に化学的に有機基を結合させて、顔料を改質する方法について説明する。この際に用いることのできる方法は、顔料粒子表面の官能基、或いは顔料粒子表面に官能基を導入し、これらの官能基に、イオン性モノマーと疎水性モノマーとからなる共重合体を結合させ、前記共重合体を顔料粒子表面に化学的に結合させる方法であれば、通常用いられる何れの方法でもよく、特に限定されない。
このような方法の具体例は、例えば、次に挙げる方法等を用いることができる。カーボンブラック等の顔料粒子表面に、ポリエチレンイミン等を導入し、その末端官能基に、アミノ基を有する、イオン性モノマーと疎水性モノマーとからなる共重合体をジアゾニウム反応で結合させる方法や、カーボンブラック等の顔料粒子表面に、分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する共重合体をジアゾニウム反応で結合させる方法等の方法を用いることができる。この他の方法の中で最も典型的な例が、WO 01/51566 A1に開示されている。
上記した方法において、例えば、アニオン性の共重合体を、カーボンブラック粒子表面に化学的に結合させる場合には、下記の3工程を含むこととなる。
・第1工程;カーボンブラックにジアゾニウム反応で、アミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基(APSES)を付加する工程。
・第2工程;APSES処理をしたカーボンブラックに、ポリエチレンイミンやペンタエチレンヘキサミン(PEHA)を付加する工程。
・第3工程;疎水性モノマーとカルボキシル基を有するイオン性モノマーとの共重合体をつける工程。
上記第2の工程では、第1の工程によってカーボンブラック表面に化学的に結合しているフェニル(2−スルホエチル)スルホン基とAPSESのアミノ基とを反応させることによって、カーボンブラック表面に化学的に結合してなる官能基としてのアミノ基が導入される。そして、上記第3の工程においては、例えば、共重合体のイオン性モノマー部分が有するカルボキシル基の一部をアミノ基と反応させてアミド結合を形成させることによって、共重合体をカーボンブラックの表面に、APSESの残基であるフェニル(2−スルホエチル)基とPEHAの残基とを含む原子団を介して共重合体が導入できる。
又、上記した方法において、例えば、カチオン性の共重合体を、カーボンブラック粒子表面に化学的に結合させる場合には、下記の2工程を含むこととなる。
・第1工程;カーボンブラックにジアゾニウム反応でアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基(APSES)を付加する工程。
・第2工程;疎水性モノマーとカチオン性モノマーとの共重合体をつける工程。
上記第1の工程では、カーボンブラック表面に化学的に結合してなる官能基としてスルホン基が導入される。そして、上記第2の工程においては、例えば、共重合体のイオン性モノマー部分が有するアミノ基の一部をスルホン基と反応させて(求核置換)、共重合体をカーボンブラックの表面に、APSESの残基であるフェニル(2−スルホエチル)基を含む原子団を介して共重合体が導入できる。
<その他の成分>
本発明にかかる水性インクは、保湿性維持のために、上記した成分の他に、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の保湿性固形分をインク成分として用いてもよい。尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン等の、保湿性固形分の水性インクにおけるの含有量は、一般には、インク全質量に対して0.1質量%〜20.0質量%、更には3.0質量%〜10.0質量%の範囲が好ましい。
更に、本発明にかかる水性インクには、上記した成分以外にも必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤等の、種々の添加剤を含有させてもよい。
本発明にかかる水性インクには、表面張力の調整や、吐出性を改善するために、ノニオン系の界面活性剤を添加することが好ましい。ノニオン界面活性剤の具体例は、下記構造式(1)〜(4)の何れかの構造を有している化合物が挙げられる。
Figure 0004420461
(構造式(1)中、Rはアルキル基であり、nは整数である。)
Figure 0004420461
(構造式(2)中、Rはアルキル基であり、nは整数である。)
Figure 0004420461
(構造式(3)中、Rは水素原子又はアルキル基であり、m及びnはそれぞれ整数である。)
Figure 0004420461
(構造式(4)中、m及びnはそれぞれ整数である。)
上記構造式(1)中、Rは炭素数8〜21の直鎖又は分岐のアルキル基、nは5〜40の整数であることが好ましい。又、R及び/又はnの値が異なる2種以上の化合物の混合物を使用することもできる。
上記構造式(2)中、Rは炭素数8〜21の直鎖又は分岐のアルキル基、nは5〜40の整数であることが好ましい。又、R及び/又はnの値が異なる2種以上の化合物の混合物を使用することもできる。
上記構造式(3)中、mは1〜10の整数、nは1〜10の整数であることが好ましい。尚、mはエチレンオキサイドユニットの数を、nはプロピレンオキサイドユニットの数を表し、ブロック共重合体、交互共重合体、ランダム共重合体の何れでも良い。m及び/又はnの値が異なる2種以上の化合物の混合物を使用することもできる。
上記構造式(4)中、mは1〜10の整数、nは1〜10の整数であることが好ましい。m及び/又はnの値が異なる2種以上の化合物の混合物を使用することもできる。
上記構造式(1)〜(4)の何れかの構造を有している化合物の水性インク中の含有量は、水性インク全質量に対して0.05質量%〜5質量%の範囲、更には0.1質量%〜2質量%であることが好ましい。
<インクの物性>
上記で説明したような構成成分からなる、本発明で使用する水性インクは、インクジェット記録ヘッドから良好に吐出できる特性を有することが好ましい。インクジェット記録ヘッドからの吐出性という観点からは、インクの特性が、例えば、その粘度を1〜15mPa・s、表面張力を25mN/m(dyne/cm)以上、更には、粘度を1〜5mPa・s、表面張力を25〜50mN/m(dyne/cm)とすることが好ましい。
[反応液]
本発明で使用する反応液は、インク中の水不溶性色材の分散状態を不安定化若しくは凝集させる反応性成分を含有する。前記反応性成分は、水性媒体中で水不溶性色材が親水性基の作用によって分散又は溶解されているインクと、前記反応液が記録媒体上で接触した際に、該水不溶性色材の分散安定性を低下させ、水不溶性色材を凝集させる。尚、本発明における、インク中の色材の分散状態が不安定化されることとは、インクと反応液を混合した際に、凝集やゲル化といった状態が引き起こされることを指す。尚、本発明においては第1の水性インク及び第2の水性インクは、必要に応じて反応液を付与していない記録媒体に対して用いても、反応液が付与された記録媒体に対して用いてもよい。
反応性成分の具体例は、金属塩(特には多価金属のイオン及びその塩)、低分子カチオン性化合物、及びカチオン性高分子が挙げられる。以下、反応性成分について説明する。
(多価金属のイオン及びその塩)
多価金属イオンは、具体的には、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Sr2+及びBa2+等の二価の金属イオンや、Al3+、Fe3+、Cr3+及びY3+等の三価の金属イオンが挙げられる。前記の多価金属イオンを反応液中に含有させる方法には、反応液中に多価金属の塩を添加する方法が挙げられる。前記塩とは、上記に挙げた多価金属イオンと、これらのイオンに結合する陰イオンで構成される金属塩のことであるが、水に可溶であることを要する。塩を形成するための好ましい陰イオンは、例えば、Cl-、NO3 -、I-、Br-、ClO3 -、SO4 2-、CO3 2-、CH3COO-及びHCOO-等が挙げられる。勿論、本発明はこれに限定されるものではない。本発明においては、水性インクと反応液の反応性や着色性、更には、反応液の取り扱いの容易さ等の点から、多価金属イオンは、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Al3+及びY3+が好ましく、更には、Ca2+が特に好ましい。又、陰イオンは、溶解性等の点から、NO3 -が特に好ましい。
反応液における多価金属イオンの含有量は、本発明にかかる効果を考慮すると、反応液全質量に対して、0.01質量%以上10質量%以下、更には1.0質量%以上5質量%以下であることが好ましい。特に、水性インクに含有される水不溶性色材の分散状態を不安定化させる機能を充分に発揮し、高いレベルの画像濃度を得るためには、多価金属イオンの含有量が、反応液全質量に対して、2.0質量%以上4.0質量%以下であることが好ましい。尚、反応液における多価金属イオンの含有量は10質量%を超えてもかまわない。しかし、含有量が10質量%よりも多くなっても、水不溶性色材の分散状態を不安定化させる機能の著しい増大は望めないこと、等の理由から、通常は過剰に含有させる必要はない。
反応液は、色材を含まず、透明であることが好ましい。しかし、必ずしも可視域に吸収を示さないものである必要はない。即ち、可視域に吸収を示すとしても、実質上、画像に影響を与えない範囲であれば可視域に吸収を示すものであってもかまわない。
(反応液の付与手段)
反応液を記録媒体に付与する方法には、ローラーコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法等の塗布方法が挙げられる。又、インクと同様にインクジェット記録方法を用い、インクが付着する画像形成領域及び画像形成領域の近傍のみに反応液を選択的に付着せしめる付与方法も可能である。本発明者らが、反応液の記録媒体への付与方法を検討した結果、ローラーコーティング法が最も優れているという見解に至った。これは、反応液の付与量が少ない場合においても、記録媒体表層部近傍における反応性成分の分布状態が他の手段よりも均一であり、更に、インク付与後のベタ部のムラ、更には裏抜け性等の画質が優れているためである。
又、2液システムを用いて画像形成を行う場合、反応液と水性インクを記録媒体上で接触させる手段には様々な方法がある。本発明にかかる2種の水性インクを用いる場合、記録媒体に対する反応液の定着が終了した後、即ち、反応液の液滴が記録媒体に吸収された後に、水性インクを記録媒体に付与する方法が好ましい。これは、本発明の水性インクと反応液が記録媒体上で液体状態で接触した場合、水性インクと反応液との反応性によっては、本発明の特徴であるハイライト部等の画像濃度が相対的に低い部分における粒状性が目立ち、従来のインクを用いて画像を形成した場合とほとんど変わらない場合があることが確認されたためである。
尚、本発明における、定着が終了した時点とは、前記ブリストウの式によって示されるKa(t−tw)1/2の値が、実際に記録媒体に付与した反応液の付与量よりも大きくなる時点を意味する。これは、反応液の液滴が記録媒体に吸収された時点を意味し、ブリストウ法によるKa値と液体組成物の付与量より計算されるt秒後を意味する。
(反応液の物性及び塗布量)
反応液の記録媒体への浸透性は、ブリストウ法によって求められるKa値で、1.3mL・m-2・msec-1/2以上6.0mL・m-2・msec-1/2以下であることが好ましく、更には、3.0mL・m-2・msec-1/2より大きく6.0mL・m-2・msec-1/2以下であることが好ましい。又、反応液の塗布量は、0.5g/m2以上5g/m2以下であることが好ましく、更には、2.0g/m2より大きく3.0g/m2以下であることが好ましい。
尚、反応液の塗布量は、反応液の物性及び塗布装置に使用されているローラーの回転速度及びローラーの記録媒体への接触圧等により適宜調整可能である。
更に、反応液は、本発明にかかる水性インクのみと反応させる必要があるため、記録媒体上で、本発明の水性インクによる記録部分とは別の箇所に反応液が滲まないように、反応液の表面張力を、記録ヘッドから吐出可能な範囲内で、且つ、反応液によって水不溶性色材の分散状態を不安定化させる対象となる水性インクの表面張力よりも大きくすることが好ましい。
[画像形成方法]
以下、本発明にかかる画像形成方法について具体例を挙げて説明する。本発明にかかる画像形成方法は、少なくとも、水と、水不溶性色材と、前記水不溶性色材に対する良溶媒と、前記水不溶性色材に対する貧溶媒を含有した第1の水性インクを用いて相対的に高濃度記録を行う第1のモードと、水性インク中の良溶媒全量をA(質量%)と貧溶媒全量をB(質量%)としたときに、B/Aが第1の水性インクにおけるB/Aよりも小さい値であって、且つ第1の水性インクと同一色相を有する第2の水性インクを用いて相対的に低濃度記録を行う第2のモードを有することを特徴としている。
尚、本発明においては、画像の濃度をインク付与量で考え、「相対的に低濃度」とは、記録媒体へのインク付与量が相対的に少ない部分のことを示し、「相対的に高濃度」とは、インク付与量が相対的に多い部分のことを示す。
より具体的には、例えば1200dpi×1200dpiの解像度で、1ドットあたりの体積が4ngのインク滴を14400滴付与して行う画像形成を「100%duty」と定義する。そして、1の画像において、80%duty以上の部分、及び他の色相を有する画像(例えばシアンインク、マゼンタインク、イエローインク等のカラーインクで形成された画像)との境界部分においては第1の水性インクを用いて画像形成を行う。又、20%dutyより少ない部分は第2の水性インクを用いて画像形成を行う。尚、20%duty以上80%duty未満の中間部分は、第1の水性インク及び第2の水性インクを併用して画像形成を行う。尚、上記解像度、インク滴の数、duty等の数値は、画像形成方法の一例として挙げたものであり、勿論本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の画像形成方法は、ブラックインクと少なくとも1色の水性カラーインクとを用いて普通紙等の記録媒体にインクジェット記録方式で記録を行う画像形成方法において、ブラックインクとして先に述べた本発明の水性インクを用い、該ブラックインクによって形成される画像と、前記したようなカラーインクにより形成される画像とが隣接してなる画像を形成する際に、ブラックインクを付与する走査を行って画像を形成した後、該画像が形成された領域にカラーインクを付与する走査を行う。
本発明にかかる画像形成方法では、第1の水性インク及び第2の水性インクがブラックインクであり、それ以外のインクがカラーインクである場合に、画像濃度が高く、粒状性が低減した画像が得られ、更にブリードの発生を効果的に抑制することができるため好ましい。この理由は次のように考えられる。
一般に、光沢を有する記録媒体(光沢記録媒体)は、付与されたインクを素早く吸収するように設計されているため、インクが滲みにくい。一方、普通紙等の記録媒体は、光沢記録媒体と比較して、インクの滲みが大きい傾向がある。このため、通常、普通紙に対する印刷に多用されるブラックインクを、本発明の構成の第1の水性インク及び第2の水性インクとして用いることで、本発明の効果を十分に発揮することができる。
以下に本発明の画像形成方法の具体的な手法について説明する。
図7は、本発明にかかる画像形成方法を実施する際に使用する記録ヘッドの一例である。該記録ヘッドは、図7に示したように、ブラックインクを吐出するための吐出口列(第1の水性インクBKI/第2の水性インクBKII)と、カラーインクであるシアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の3色のインクをそれぞれ吐出するための吐出口列とを備えている。
本発明の画像形成方法では、フルカラーの画像を形成する場合には、ブラックインクを吐出させるためのブラックインク用吐出口列と、カラーインクを吐出させるためのカラーインク用吐出口列が副走査方向にずれて配置した記録ヘッドを用いることが好ましい。具体的には、例えば、図7に示した記録ヘッドを用いて画像形成を行う際には、ブラックのみの画像を形成する場合には、ブラックインク用の吐出口列全域を使用し、ブラックの画像とカラーの画像が混在したフルカラーの画像の形成を行う場合には、ブラックインクは、ブラックインク用吐出口列のa部分、C、M及びYのカラーインクは、カラーインク用吐出口列のb部分、を用いて画像を形成することが好ましい。以下、ブラックの画像とカラーの画像が混在した画像の形成を行う場合について、更に詳細に説明する。
図7は、本発明に用いることができる記録ヘッドの一例である。記録ヘッドは、ブラックインクを吐出するための吐出口列(BkI及びBKII)と、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の3色のカラーインクをそれぞれ吐出するための吐出口列とを備えている。まず、ブラック用吐出口列(BkI及びBKII)のa部分を用いて、プリントヘッドを図の横方向(主走査方向)に走査することで、ブラックの画像データを1パス印字で記録媒体上に形成する。次に、図の縦方向(副走査方向)に距離aだけ記録媒体の搬送を行い、次のプリントヘッドの主走査の往方向の過程で、カラーインク用吐出口列のb部分を用いて、先程のブラックインク用吐出口列(BkI及びBKII)のa部分で形成された画像領域にカラーの画像を1パス印字で記録媒体上に形成する。このときブラックインク用吐出口列(BkI及びBKII)のa部分は、次の領域に画像を形成している。この繰り返しにより、ブラックの画像及びカラーの画像が混在した画像の形成を行う。
図8は、本発明に用いることができる記録ヘッドの別の一例である。図8においても、図7の場合と同様に、ブラックインクは、ブラックインク用吐出口列(BkI及びBKII)のa部分、C、M及びYのカラーインクは、カラーインク用吐出口列の全領域にあたるb部分を使用し、上記と同様にして、ブラックの画像及びカラーの画像が混在した画像の形成を行う。
図9は、本発明に用いることができる記録ヘッドの別の一例である。図9においても、図7の場合と同様に、ブラックインクは、ブラックインク用吐出口列(BkI及びBKII)のa部分、C、M及びYのカラーインクは、カラーインク用吐出口列の全領域にあたるb部分を使用し、ブラックの画像及びカラーの画像が混在した画像の形成を行う。ここで、図9に示される記録ヘッドにおいては、ブラックインク用吐出口列(BkI及びBKII)のa部分とカラーインク用吐出口列のb部分との間に、1回分の紙送り量a’分だけ距離が置かれている。このため、かかる構成の記録ヘッドにおいては、ブラックの画像が形成されてからカラーの画像が形成されるまでの間に、往復で1回の走査分の時間差が余分に生じることになる。従って、図9に示される記録ヘッドにおいては、図8に示される記録ヘッドの構成よりも、ブラックの画像及びカラーの画像の間におけるブリーディングの抑制に対して、より有利な構成となる。
図10は、本発明に用いることができる記録ヘッドの別の一例である。図10に示される記録ヘッドのように、副走査方向に順に、ブラックインク用吐出口列及びカラーインク用吐出口列が一列に配置された記録ヘッドを用いた場合は、紙送りに応じて、ブラックの画像が形成されてからカラーの画像が形成される。
図11は、本発明に用いることができる記録ヘッドの別の一例である。図11に示される記録ヘッドでは、主走査の往方向と復方向とで、カラーインクの打ち込み順序が等しくなるように、カラーインク用吐出口列が、シアンインク(C1、C2)、マゼンタインク(M1、M2)、イエローインク(Y1、Y2)についてそれぞれ2列ずつ、主走査方向に対称に設けられている。この結果、ブラックの画像及びカラーの画像が混在した画像の形成において、双方向印字が可能となる。この場合には、まず、ブラックインク用吐出口列(BkI及びBKII)のa部分を用いてブラックの画像が形成され、次に、副走査方向に距離a分だけ記録媒体の搬送を行い、次のプリントヘッドにおける主走査の復方向の過程で、カラーインク用吐出口列のb部分を用いて、先程のブラックインク用吐出口列のa部分で形成された画像領域にカラーの画像を1パス印字で記録媒体上に形成する。このとき、ブラックインク用吐出口列(BkI及びBKII)のa部分は、次の領域に画像を形成している。この繰り返しにより、ブラックの画像及びカラーの画像が混在した画像の形成を行う。
図11に示されるような双方向印字に対応した記録ヘッドにおいても、図9において説明した記録ヘッドと同様に、ブラックインク用吐出口列のa部分とカラーインク用吐出口列のb部分との間に、1回分の紙送り量a’分だけ距離が置かれた配置とし(図12参照)、ブラックの画像が形成されてからカラーの画像が形成されるまでの間に、往復で1回の走査分の時間差を設け、ブラックの画像及びカラーの画像の間におけるブリーディングの抑制に対して、より有利な構成としてもよい。
以上、本発明にかかる画像形成方法について説明した。勿論、本発明にかかる画像形成方法用いることができる記録ヘッドの形態は、図7〜12に限定されるものではない。又、パス数は使用する記録装置によって異なるため、1パス印字に限られるものではない。
<インクセット>
本発明にかかる第1の水性インク及び第2の水性インクは、これ以外のインクと組み合わせたインクセットとして用いてもよい。尚、インクセットは、インクが複数組み合わされてなるものであれば、下記に挙げる何れの形態のものであってもよい。例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクがそれぞれ収納されたタンクが一体となった構造のインクタンク又はそのヘッド付きインクタンクで構成されるインクセット、若しくはシアンインク、マゼンタインク、イエローインクがそれぞれ収納されたタンクが一体となった構造のインクタンク又はそのヘッド付きインクタンクで構成されるインクセット、若しくは、上記したようなインクが収納されたそれぞれ個別のインクタンクが記録装置に脱着可能に構成されている構造のインクセット、等が挙げられる。勿論、本発明においてはこれらの上記形態に限らず、どのような変形の形態であってもよい。
[インクジェット記録方法、記録ユニット、カートリッジ及びインクジェット記録装置]
次に、本発明に好適なインクジェット記録装置の一例について以下に説明する。
図1は、インクジェット記録装置の一例を部分断面図として示すものである。尚、前記インクジェット記録装置は、2液システムを適用することも可能である。このインクジェット記録装置は、シリアル型のインクジェット記録方式を採用するもので、記録ヘッド1と、記録媒体(以下、記録紙ともいう)19を給紙するための給紙トレイ17と、反応液を塗布するための手段とが一体形成された給紙カセット16と、記録紙の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)へ記録ヘッドを往復移動させるための駆動手段と、これらの構成要素の駆動を制御する制御手段とを有する。
記録ヘッド1は、インク吐出口が形成された面をプラテン11側に配向するようにしてキャリッジ2に搭載されている。図示しないが、記録ヘッド1は、上記インク吐出口と、インク液を加熱するための複数の電気熱片歓体(例えば発熱抵抗素子)と、これを支持する基板を有する。尚、記録ヘッド1はその上部のキャリッジ内にインクカートリッジを搭載している。
キャリッジ2は、記録ヘッド1を搭載し、かつ記録紙19の幅方向に沿って平行に延びる2本のガイド軸9に沿って往復移動することができる。又、記録ヘッド1は、このキャリッジの往復移動と同期して駆動し、インク液滴を記録紙19に吐出して画像を形成する。給紙カセット16は、インクジェット記録装置本体から着脱することができる。記録紙19は、この給紙カセット16内の給紙トレイ17上に積載収納される。給紙時において、給紙トレイ17を上方向に押圧するスプリング18により最上位のシートが給紙ローラー10に圧接される。この給紙ローラー10は断面形状が概略半月形のローラーであり、図示しないモーターによって駆動回転し、不図示の分離爪により最上位のシート(記録紙19)のみを給紙する。
分離給紙された記録紙19は、大径の中間ローラー12と、それに圧接している小径の塗布ローラー6とによって、給紙カセット16の搬送面とペーパーガイド27の搬送面とに沿って搬送される。これらの搬送面は、中間ローラー12と同心的な円弧を描くようにして湾曲した面からなる。従って、記録紙19は、これらの搬送面を通過することによって、その搬送方向を逆転する。即ち、記録紙19の印字がなされる面は、給紙トレイ17から搬送されて中間ローラー12に達するまでは、下方向を向いているが、記録ヘッド1に対向する時点では、上方向(記録ヘッド側)を向く。従って、記録紙の印字面は、常にインクジェット記録装置外側方向に向いている。
反応液の塗布手段は、給紙カセット16内に設けられ、かつ反応液15を供給するための補充タンク22と、前記タンク22に周面の一部を浸した状態で回転自在に支持された中間ローラー12と、前記中間ローラーと平行となるようにして配置され、かつ中間ローラー12と接触し、同一方向へ回転する塗布ローラー6を有する。又、塗布ローラー6は、記録紙19を搬送するための中間ローラー12と周面が接触、かつ平行となるようにして配置している。従って、記録紙19が搬送される際、中間ローラー12の回転にともなって中間ローラー12及び塗布ローラー6が回転する。その結果、供給ローラー13によって塗布ローラー6の周面に前記反応液15が供給され、更に塗布ローラー6と中間ローラー12とによって挟持された記録紙19の印字面に満遍なく前記反応液が供給ローラー6によって塗布される。
又、本インクジェット記録装置では、補充タンク22内にフロート14が設けられている。このフロート14は、反応液15より比重の軽い物質であり、反応液の液面に浮かぶことにより透明部材である残量表示窓21をとおして外から反応成分を含有した反応液の残量を目視で確認できる。
図2は残量表示部を正面から見た図である。残量表示部は、残量表示窓21の長手方向に沿って、残量の程度を表す表示が設けられている。図中、「Full」と表示された位置に反応液の液面又はフロート14が達している場合が満杯の状態である。一方、「Add」と表示された位置に反応液の液面又はフロート14がある場合、反応液が残り少ないことを示している。従って、反応液15が徐々に減り、フロート14がAddラインまで下がった時に反応液を補充すればよいことが一目瞭然でわかる。
反応液の補充方法は、図3に示すように、給紙カセット16をインクジェット記録装置本体から引き出した状態で、注入機具23の先端を切れ目の入ったゴム部材で構成される注入口20に差し込むことにより補充タンク22内に反応液を注入するものである。
このように、反応液を塗布された記録紙は、その後、主搬送ローラー7とそれに圧接しているピンチローラー8により所定量送られて記録部へと搬送され、記録ヘッド1からインクを付与される。以上の構成において給紙、印字された記録シート19は、排紙ローラー3とこれに圧接する拍車4とによって排出搬送され、排紙トレイ5上にスタックされる。
又、反応液をローラー等により付与する場合には、特に反応液の粘度をインクの粘度よりも高くすると、反応液の付与量が少量でもインクを効果的に不安定化でき、かつ記録物の定着性等にも良いために好ましい。より具体的には、反応液の粘度が高いと、多価金属イオンがより記録媒体の表面近傍に留まりやすくなるため、インクと効果的に反応しやすくなる。インクは、反応液と反応した後、インク中の色材成分は記録媒体の表面近傍に留まり、水溶性有機溶剤や水等は速やかに記録媒体に浸透する、即ち固液分離が速やかに行われることが好ましい。このため、記録物の定着性の観点からは、反応液の粘度は低い方が好ましい。反応液をローラー等により付与する場合の前記反応液の粘度は、3mPa・s以上100mPa・s以下、更には5mPa・s以上60mPa・s以下が好ましい。尚、本発明における反応液やインクの粘度は、25℃環境下、常法によって測定することができる。
図4に、インクジェット記録装置の別の一例を示す。図4において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブレード保持部材によって保持固定されており、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、又、本例の場合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。
62は記録ヘッド65の突出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配置され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。更に、63はブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62及びインク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク吸収体63によって吐出口面の水分、塵埃等の除去が行われる。又、キャップを介して不図示のポンプによって記録へッドの各インク、更には、反応液の吐出口の位置しているインク等を吸引して、記録ヘッド本来のインク、或いはインク及び反応液の本来の吐出性能を回復させる回復系ユニットを構成している。
65は、吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモーター68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。51は記録媒体を挿入するための紙給部、52は不図示のモーターにより駆動される紙送りローラーである。
これらの構成により記録ヘッドの65吐出口面と対向する位置へ記録媒体が給紙され、記録が進行するにつれて排紙ローラー53を配した排紙部へ排紙される。以上の構成において記録ヘッド65が記録終了してホームポジションへ戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。その結果、記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は上記したワイピングの時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。
上述の記録ヘッドのホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
図5は、記録ヘッドにインク若しくは色材を含有していない反応液を供給する部材、例えば、チューブを介して供給されるインク若しくは反応液を収容したカートリッジ45の一例を示す図である。ここで40は供給用のインク又は反応液を収納した収容部、例えば、袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、袋40中のインク又は反応液をヘッドに供給可能にする。44は廃インク又は廃反応液を受容する吸収体である。収容部40はインク又は反応液との接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。このようなカートリッジは、例えば、図6に示したように、インク又は反応液を吐出せしめる記録ヘッド901に着脱可能に構成されてなるとともに、前記カートリッジ45を記録ヘッドに装着した状態ではインク又は反応液が記録ヘッド901に供給されるように構成されている。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、下記実施例によって限定されるものではない。尚、文中「部」、及び「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
[顔料分散液の調製]
(ブラック顔料分散液1の調製)
比表面積が210m2/gでDBP吸油量が74ml/100gであるカーボンブラック10部と、酸価が200で重量平均分子量が10,000であるスチレン−アクリル酸共重合体を10質量%水酸化ナトリウムで中和したものの水溶液20部、イオン交換水70部を混合し、サンドグラインダーを用いて1時間分散させた。得られた分散液を遠心分離処理することで粗大粒子を除去した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過して、樹脂分散型顔料1を調製した。更に、上記で得られた樹脂分散型顔料1に水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、ブラック顔料分散液1を得た。
(ブラック顔料分散液2の調製)
比表面積が230m2/gでDBP吸油量が70ml/100gであるカーボンブラック10g、p−アミノ−N−安息香酸3.41g、水72gをよく混合した後、これに硝酸1.62gを滴下して70℃で撹拌した。数分後、5gの水に1.07gの亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を加え、更に1時間撹拌した。得られたスラリーをろ紙(商品名:標準用濾紙No.2;アドバンテック製)でろ過した後、粒子を充分に水洗し、90℃のオーブンで乾燥させ、自己分散型カーボンブラック2を調製した。更に、上記で得られた自己分散型カーボンブラック2に水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、カーボンブラック粒子表面にフェニル基を介して親水性基が導入されてなり、アニオン性に帯電した自己分散型カーボンブラック2が水中に分散された状態のブラック顔料分散液2を得た。
[水溶性有機溶剤の良溶媒・貧溶媒の判定]
上記顔料分散液中の顔料に対して、良溶媒又は貧溶媒として作用する水溶性有機溶剤を選択するために以下の実験を行った。まず、上記顔料分散液1及び2の固形分濃度10質量%水溶液を調製し、これと各水溶性有機溶剤を用いて、以下の配合比にて良溶媒・貧溶媒の判定用分散液A、判定用水分散液Bを調製した。
(判定用分散液A)
・各顔料分散液の固形分濃度10質量%水溶液:50部
・表1に記載の各水溶性有機溶剤:50部
(判定用水分散液B)
・各顔料分散液の固形分濃度10質量%水溶液:50部
・純水:50部
(判定方法)
次に、上記のようにして調製した良溶媒・貧溶媒の判定用分散液A10gを、透明なガラス製フタつきサンプルビンに入れ、蓋をした後、充分撹拌し、これを60℃のオーブン内に48時間静置した。その後、オーブンから取り出した分散液を測定用サンプルとして、当該分散液中の顔料の平均粒径を、濃厚系粒径アナライザー(商品名:FPAR−1000;大塚電子製)を用いて測定した。60℃、48時間保存後の判定用分散液A中の顔料の平均粒径(希釈せずに測定した顔料の平均粒径)とした。一方、判定用水分散液Bは加温保存を行わずに、上記と同様に、当該分散液中の顔料の平均粒径を、濃厚系粒径アナライザーを用いて測定した。そして、判定用分散液A及び判定用水分散液B中の顔料の平均粒径が、判定用分散液Aの方が判定用水分散液Bより大きくなる水溶性有機溶剤を貧溶媒と判定し、判定用分散液Aの平均粒径が、判定用水分散液Bと同等又はそれ以下になる水溶性有機溶剤を良溶媒と判定した。
[水溶性有機溶剤についてのKa値の測定]
まず、各水溶性有機溶剤のKa値測定を行うにあたり、下記に示す組成を有する染料濃度0.5質量%の染料水溶液を調製した。かかる染料水溶液を使用するのは、無色透明の試料を着色することにより可視化して、Ka値の測定を容易にするためである。
・水溶性染料C.I.ダイレクトブルー199:0.5部
・純水:99.5部
次いで、この0.5質量%染料水溶液と、測定対象の各水溶性有機溶剤により、下記に示す組成を有する着色された水溶性有機溶剤の20%水溶液をそれぞれ調製した。
・上記0.5質量%染料水溶液:80部
・表1に記載の水溶性有機溶剤:20部
上記で調製した各水溶性有機溶剤の20質量%水溶液を測定用の試料として、動的浸透性試験装置(商品名:動的浸透性試験装置S;東洋精機製作所製)を用い、ブリストウ法により各水溶性有機溶剤の20質量%水溶液のKa値をそれぞれ求めた。
[判定及び測定結果]
上記のようにして測定した、インクに使用しうる水溶性有機溶剤について、ブラック顔料分散液1及び2に対して良溶媒であるか貧溶媒であるかを判定した結果と、各水溶性有機溶剤の20質量%水溶液におけるKa値の測定結果を表1に示した。尚、表中の、○、×はそれぞれ良溶媒、貧溶媒を表す。
Figure 0004420461
[インクの調製]
下記表2に示した各成分を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過を行い、ブラックインクBK1〜BK9を調製した。
Figure 0004420461
[記録物の作製]
上記で調製した各BKインクを、下記表3に示すように組み合わせて用い、実施例1、2、5、参考例1、3、4、6〜9、及び比較例1〜4の記録物を作製した。尚、記録物の作製には、記録信号に応じて熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させる、オンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置BJF900(キヤノン製)を用いた。
プリンタドライバは、デフォルトモードを選択した。デフォルトモードの設定条件は下記の通りである。
・用紙の種類:普通紙
・印刷品質:標準
・色調整:自動
記録媒体は、下記のコピー用紙を、温度23℃、湿度40%の環境で24時間放置したものを用いた。
・PPC用紙PB Paper(キヤノン製)
・PPC用紙SC250C(キヤノン製)
・PPC用紙4200(ゼロックス製)
・PPC用紙4024(ゼロックス製)
・スーパーホワイトペーパーSW−101(キヤノン製)
・HP Bright White IJ Paper(ヒューレットパッカード製)
(実施例1)
実施例1においては、BK1とBK6とを組み合わせて用いて記録物を作製した。上記記録装置のブラックインクの位置にBK1、フォトシアンインクの位置にBK6を装着し、dutyを10%duty刻みで100%dutyまで変化させた5cm×5cmのベタ画像の印字を行った。尚、20%duty以下の場合はBK6、30%duty以上70%duty以下の場合はBK6及びBK1、80%duty以上の場合はBK1、の各インクを用いて印字を行うように、印字信号を設定した。
(実施例2)
実施例2においては、BK2とBK6とを組み合わせて用いて上記と同様に記録物を作製した。上記記録装置のブラックインクの位置にBK2、フォトシアンインクの位置にBK6を装着した。尚、20%duty以下の場合はBK6、30%duty以上70%duty以下の場合はBK6及びBK2、80%duty以上の場合はBK2、の各インクを用いて印字を行うように、印字信号を設定した。
参考例3)
参考例3においては、BK3とBK6とを組み合わせて用いて上記と同様に記録物を作製した。上記記録装置のブラックインクの位置にBK3、フォトシアンインクの位置にBK6を装着した。尚、20%duty以下の場合はBK6、30%duty以上70%duty以下の場合はBK6及びBK3、80%duty以上の場合はBK3、の各インクを用いて印字を行うように、印字信号を設定した。
参考例4)
参考例4においては、BK4とBK7とを組み合わせて用いて上記と同様に記録物を作製した。上記記録装置のブラックインクの位置にBK4、フォトシアンインクの位置にBK7を装着した。尚、20%duty以下の場合はBK7、30%duty以上70%duty以下の場合はBK7及びBK4、80%duty以上の場合はBK4、の各インクを用いて印字を行うように、印字信号を設定した。
(実施例5)
実施例5においては、BK2とBK7とを組み合わせて用いて上記と同様に記録物を作製した。上記記録装置のブラックインクの位置にBK2、フォトシアンインクの位置にBK7を装着した。尚、20%duty以下の場合はBK7、30%duty以上70%duty以下の場合はBK7及びBK2、80%duty以上の場合はBK2、の各インクを用いて印字を行うように、印字信号を設定した。
参考例6)
参考例6においては、BK8とBK6とを組み合わせて用いて上記と同様に記録物を作製した。上記記録装置のブラックインクの位置にBK8、フォトシアンインクの位置にBK6を装着した。尚、20%duty以下の場合はBK6、30%duty以上70%duty以下の場合はBK6及びBK8、80%duty以上の場合はBK8、の各インクを用いて印字を行うように、印字信号を設定した。
参考例7)
参考例7においては、BK4とBK10とを組み合わせて用いて上記と同様に記録物を作製した。上記記録装置のブラックインクの位置にBK4、フォトシアンインクの位置にBK10を装着した。尚、20%duty以下の場合はBK10、30%duty以上70%duty以下の場合はBK10及びBK4、80%duty以上の場合はBK4、の各インクを用いて印字を行うように、印字信号を設定した。
参考例8)
参考例8においては、BK11とBK12とを組み合わせて用いて上記と同様に記録物を作製した。上記記録装置のブラックインクの位置にBK11、フォトシアンインクの位置にBK12を装着した。尚、20%duty以下の場合はBK12、30%duty以上70%duty以下の場合はBK12及びBK11、80%duty以上の場合はBK11、の各インクを用いて印字を行うように、印字信号を設定した。
参考例9)
参考例9においては、BK11とBK13とを組み合わせて用いて上記と同様に記録物を作製した。上記記録装置のブラックインクの位置にBK11、フォトシアンインクの位置にBK13を装着した。尚、20%duty以下の場合はBK13、30%duty以上70%duty以下の場合はBK13及びBK11、80%duty以上の場合はBK11、の各インクを用いて印字を行うように、印字信号を設定した。
(参考例1)
参考例1においては、BK2を用いて上記と同様に記録物を作製した。上記記録装置のブラックインクの位置及びフォトシアンインクの位置のそれぞれにBK2を装着した。尚、全てのdutyにおいて、BK2のインクを用いて印字を行った。
(比較例1)
比較例1においては、BK2とBK6とを組み合わせて用いて上記と同様に記録物を作製した。上記記録装置のブラックインクの位置にBK2、フォトシアンインクの位置にBK6を装着した。尚、20%duty以下の場合はBK2、30%duty以上70%duty以下の場合はBK2及びBK6、80%duty以上の場合はBK6、の各インクを用いて印字を行うように、印字信号を設定した。
(比較例2)
比較例2においては、BK6を用いて上記と同様に記録物を作製した。上記記録装置のブラックインクの位置及びフォトシアンインクの位置のそれぞれにBK6を装着した。尚、全てのdutyにおいて、BK6のインクを用いて印字を行った。
(比較例3)
比較例3においては、BK3とBK6とを組み合わせて用いて上記と同様に記録物を作製した。上記記録装置のブラックインクの位置にBK3、フォトシアンインクの位置にBK6を装着した。尚、20%duty以下の場合はBK3、30%duty以上70%duty以下の場合はBK3及びBK6、80%duty以上の場合はBK6、の各インクを用いて印字を行うように、印字信号を設定した。
(比較例4)
比較例4においては、BK2とBK9とを組み合わせて用いて上記と同様に記録物を作製した。上記記録装置のブラックインクの位置にBK9、フォトシアンインクの位置にBK2を装着した。尚、20%duty以下の場合はBK2、30%duty以上70%duty以下の場合はBK2及びBK9、80%duty以上の場合はBK9、の各インクを用いて印字を行うように、印字信号を設定した。
Figure 0004420461
[評価]
1.画像濃度
上記で得られた実施例1、2、5、参考例1、3、4、6〜9、及び比較例1〜4のそれぞれの記録物を1日放置した後、100%duty部分の画像濃度を測定した。画像濃度の測定には、反射濃度計(商品名:マクベスRD−918;マクベス製)を用いた。画像濃度の評価基準は下記の通りである。評価結果を表4に示す。
AA:すべての紙で十分な画像濃度が得られる。
A:一部の紙で十分な画像濃度が得られないが、実際の使用上問題ない。
B:一部の紙で十分な画像濃度が得られない。
C:全ての紙で十分な画像濃度が得られない。
2.粒状性
上記で得られた実施例1、2、5、参考例1、3、4、6〜9、及び比較例1〜4のそれぞれの記録物を1日放置した後、ハイライト部(10%duty及び20%duty部分)の粒状性を目視で観察して評価を行った。粒状性の評価基準は下記の通りである。評価結果を表4に示す。
AA:すべての紙で粒状性が全く感じられない。
A:一部の紙で粒状性がやや感じられるが、実際の使用上問題ない。
B:一部の紙で粒状性が感じられる。
C:全ての紙でかなり粒状性が感じられる。
Figure 0004420461
尚、参考例3と参考例6での画像濃度は、顔料に対する貧溶媒の比率が同じであるBK8を用いた参考例6の方が良好な結果が得られた。
3.階調性
上記で得られた実施例1、2、5、参考例1、3、4、6〜9、及び比較例1〜4のそれぞれの記録物を1日放置した後、画像の階調性を目視で観察した。その結果、実施例1、2、5、参考例3、4、6〜9の画像は、参考例1及び比較例1〜4の画像と比較して、階調表現が良好であった。特に、第1の水性インクに含有されている貧溶媒と良溶媒の比率(B/A)と第2の水性インクに含有されている貧溶媒と良溶媒の比率(B/A)の差が大きい参考例3及び実施例5の画像の階調性は特に優れていた。
4.保存安定性評価
BK1〜BK10の各インクをそれぞれショット瓶に入れて密栓し、60℃のオーブンで2週間保存した後にインクの状態を観察した。保存安定性の評価基準は下記の通りである。評価結果を表5に示す。
A:色材がインク中で均一に、安定して分散している。
B:インクがゲル状に変化している、又はインクの上部が透明になっている、若しくはインクが明らかに増粘している。
Figure 0004420461
[2液システムで得られる画像の評価]
(反応液の調製)
下記に示した各成分を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ1μmのミクロフィルター(製品名:FR100、富士フィルム製)にて加圧濾過を行い(加圧条件:0.4MPa)、反応液を調製した。
・硝酸マグネシウム(6水和物):9.0質量%
・トリメチロールプロパン:15.0質量%
・グリセリン:5.0質量%
・ジエチレングリコール:5.0質量%
・アセチレノールEH:1.0質量%
(アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物;川研ファインケミカル製)
・純水:65.0質量%
(記録物の作製)
上記で調製した各BKインクを、下記表6に示すように組み合わせて用い、実施例8及び比較例5の記録物を作製した。尚、記録物の作製には、記録信号に応じて熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させる、オンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置BJF900(キヤノン製)を、図1で示す、反応液を塗布ローラーにより記録媒体に付与する機構を有するように改造したものを用いた。具体的には、反応液を記録媒体に付与し、反応液が記録媒体に定着した後に、各インクを記録媒体に付与して画像を形成した。尚、反応液は、塗布量が2.4g/m2になるように、ローラーの速度及びローラーの記録媒体への接触圧を調整した。
プリンタドライバは、デフォルトモードを選択した。デフォルトモードの設定条件は下記の通りである。
・用紙の種類:普通紙
・印刷品質:標準
・色調整:自動
記録媒体は、下記のコピー用紙を、温度23℃、湿度40%の環境で24時間放置したものを用いた。
・PPC用紙PB Paper(キヤノン製)
・PPC用紙SC250C(キヤノン製)
・PPC用紙4200(ゼロックス製)
・PPC用紙4024(ゼロックス製)
・スーパーホワイトペーパーSW−101(キヤノン製)
・HP Bright White IJ Paper(ヒューレットパッカード製)
(実施例8)
実施例8においては、BK2とBK6とを組み合わせて用いて上記と同様に記録物を作製した。上記記録装置のブラックインクの位置にBK2、フォトシアンインクの位置にBK6を装着した。尚、20%duty以下の場合はBK6、30%duty以上70%duty以下の場合はBK6及びBK2、80%duty以上の場合はBK2、の各インクを用いて印字を行うように、印字信号を設定した。
(比較例5)
比較例5においては、BK2とBK6とを組み合わせて用いて上記と同様に記録物を作製した。上記記録装置のブラックインクの位置にBK2、フォトシアンインクの位置にBK6を装着した。尚、20%duty以下の場合はBK2、30%duty以上70%duty以下の場合はBK2及びBK6、80%duty以上の場合はBK6、の各インクを用いて印字を行うように、印字信号を設定した。
Figure 0004420461
[評価]
上記で得られた実施例8及び比較例5の記録物について、上記と同様にして画像濃度、粒状性及び階調性の評価を行った。
その結果、画像濃度に関しては、実施例8の画像は比較例5の画像と比較して、画像濃度が高かった。又、粒状性及び階調性に関しても、実施例8の画像は比較例5の画像と比較して、良好な結果が得られた。
インクジェット記録装置の一例を示す概略側断面図である。 図1のインクジェット記録装置に設けられた反応液残量表示部の正断面図である。 図1のインクジェット記録装置への反応液補充状態を示す概略側断面図である。 インクジェット記録装置の一例を示す概略斜視図である。 インクカートリッジの一例を示す縦断面図である。 インクカートリッジが記録ヘッドに装着された状態を示す概略平面図である。 記録ヘッドの構成の一例を示す図である。 記録ヘッドの構成の一例を示す図である。 記録ヘッドの構成の一例を示す図である。 記録ヘッドの構成の一例を示す図である。 記録ヘッドの構成の一例を示す図である。 記録ヘッドの構成の一例を示す図である。 インク滴が記録媒体表面に着弾したときの様子を模式的に説明するための説明図である。 インク滴が記録媒体表面に着弾したときの様子を模式的に説明するための説明図である。 インク滴が記録媒体表面に着弾したときの様子を模式的に説明するための説明図である。
符号の説明
1:記録ヘッド
2:キャリッジ
3:排紙ローラー
4:拍車
5:排紙トレイ
6:塗布ローラー
7:主搬送ローラー
8:ピンチローラー
9:ガイド軸
10:給紙ローラー
11:プラテン
12:中間ローラー
13:供給ローラー
14:フロート
15:反応液
16:給紙カセット
17:給紙トレイ
18:スプリング
19:記録媒体(記録紙)
20:注入口
21:残量表示窓
22:補充タンク
23:注入機具
27:ペーパーガイド
40:袋
42:栓
44:吸収体
45:インクカートリッジ
51:給紙部
52:紙送りローラー
53:排紙ローラー
61:ブレード
62:キャップ
63:インク吸収体
64:吐出回復部
65:記録ヘッド
66:キャリッジ
67:ガイド軸
68:モーター
69:ベルト
901:記録ヘッド
1300:記録媒体
1301:インク滴
1302:ドット外周
1303:ドット中心部
1304:水不溶性色材
1305:ドット
1306:水溶性有機溶剤及び水
1307:貧溶媒

Claims (13)

  1. 相対的に高濃度の記録を行う際には第1の水性インクを用い、相対的に低濃度の記録を行う際には第2の水性インクを用いる記録方法において、
    前記第1の水性インクが、少なくとも、水、顔料、複数の水溶性有機溶剤を含有し、前記顔料がその粒子表面に親水性基が直接若しくは他の原子団を介して結合している顔料であり、
    前記第2の水性インクが、少なくとも、水、顔料、水溶性有機溶剤を含有し、前記顔料が樹脂分散剤により分散された顔料であり、
    前記複数の水溶性有機溶剤が、前記顔料に対する良溶媒及び前記顔料に対する貧溶媒を含
    水性インク全質量に対する、良溶媒の含有量の合計をA(質量%)、貧溶媒の含有量の合計をB(質量%)としたときに、前記第2の水性インクにおけるB/Aが、第1の水性インクにおけるB/Aよりも小さい値であり、
    且つ、前記第2の水性インクが、前記第1の水性インクと同一の色相を有する
    ことを特徴とする記録方法。
  2. 前記第1の水性インクにおいて、
    第1の水性インク全質量に対する、前記良溶媒の含有量の合計(質量%)をA1、前記貧溶媒の含有量の合計(質量%)をB1としたときに、A1:B1の比率が、A1:B1=10:5以上10:30以下であり、
    且つ、ブリストウ法によって求められる、前記複数の水溶性有機溶剤の各々のKa値のうち最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が前記貧溶媒である請求項1に記載の記録方法。
  3. 前記第2の水性インクにおいて、
    第2の水性インク全質量に対する、前記良溶媒の含有量の合計(質量%)をA2、前記貧溶媒の含有量の合計(質量%)をB2としたときに、A2:B2の比率が、A2:B2=10:5より少ない範囲である請求項1又は2に記載の記録方法。
  4. 前記第1の水性インクにおいて、
    第1の水性インク全質量に対する、前記貧溶媒の含有量の合計(質量%)が、インク全質量に対して4質量%以上である請求項1〜3の何れか1項に記載の記録方法。
  5. 前記第1の水性インクにおいて、
    前記顔料、有機顔料又はカーボンブラックである請求項1〜4の何れか1項に記載の記録方法。
  6. 前記第1の水性インク及び/又は前記第2の水性インクが更に、下記構造式(1)〜(4)の何れかの構造を有している化合物を含有する請求項1〜5の何れか1項に記載の記録方法。
    Figure 0004420461
    (構造式(1)中、Rはアルキル基であり、nは整数である。)
    Figure 0004420461
    (構造式(2)中、Rはアルキル基であり、nは整数である。)
    Figure 0004420461
    (構造式(3)中、Rは水素原子又はアルキル基であり、m及びnはそれぞれ整数である。)
    Figure 0004420461
    (構造式(4)中、m及びnはそれぞれ整数である。)
  7. (i)顔料を含有する水性インクを記録媒体に付与する工程、(ii)該水性インクと接触することによって該水性インク中の顔料の溶解状態又は分散状態を不安定化させる反応液を記録媒体に付与する工程、を有する記録方法において、
    相対的に高濃度の記録を行う際には第1の水性インクを用い、相対的に低濃度の記録を行う際には第2の水性インクを用い、
    前記第1の水性インクが、少なくとも、水、顔料、前記顔料に対する良溶媒及び前記顔料に対する貧溶媒を含有し、前記顔料がその粒子表面に親水性基が直接若しくは他の原子団を介して結合している顔料であり、
    前記第2の水性インクが、少なくとも、水、顔料、水溶性有機溶剤を含有し、前記顔料が樹脂分散剤により分散された顔料であり、
    水性インク全質量に対する、良溶媒の含有量の合計をA(質量%)及び貧溶媒の含有量の合計をB(質量%)としたときに、前記第2の水性インクにおけるB/Aが、第1の水性インクにおけるB/Aよりも小さい値であり、
    且つ、前記第2の水性インクが、前記第1の水性インクと同一の色相を有する
    ことを特徴とする記録方法。
  8. 相対的に高濃度の記録を行う際には第1の水性インクを用い、相対的に低濃度の記録を行う際には第2の水性インクを用いる記録方法において、
    前記第1の水性インクが、少なくとも、水、顔料、複数の水溶性有機溶剤を含有し、前記顔料がその粒子表面に親水性基が直接若しくは他の原子団を介して結合している顔料であり、
    前記第2の水性インクが、少なくとも、水、顔料、水溶性有機溶剤を含有し、前記顔料が樹脂分散剤により分散された顔料であり、
    前記複数の水溶性有機溶剤が、前記顔料に対する良溶媒及び前記顔料に対する貧溶媒を含
    水性インク全質量に対する、良溶媒の含有量の合計をA(質量%)及び貧溶媒の含有量の合計をB(質量%)としたときに、前記第2の水性インクにおけるB/Aが、第1の水性インクにおけるB/Aよりも小さい値であり、
    且つ、前記第2の水性インクが、前記第1の水性インクと同一の色相を有し、
    且つ、ブリストウ法によって求められる、前記複数の水溶性有機溶剤各々のKa値のうち最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が前記貧溶媒であり、
    且つ、前記貧溶媒が、前記良溶媒よりも先行して記録媒体に浸透し、記録媒体表面側での前記良溶媒中の前記顔料の凝集を補助することを特徴とする記録方法。
  9. 前記水性インクが、インクジェット用である請求項1〜8の何れか1項に記載の記録方法。
  10. インクを収容するインク収容部を備えたインクカートリッジにおいて、
    前記インクが、相対的に高濃度の記録を行う際に用いる第1の水性インク、及び、相対的に低濃度の記録を行う際に用いる第2の水性インク、を含
    前記第1の水性インクが、少なくとも、水、顔料、複数の水溶性有機溶剤を含有し、前記顔料がその粒子表面に親水性基が直接若しくは他の原子団を介して結合している顔料であり、
    前記第2の水性インクが、少なくとも、水、顔料、水溶性有機溶剤を含有し、前記顔料が樹脂分散剤により分散された顔料であり、
    前記複数の水溶性有機溶剤が、前記顔料に対する良溶媒及び前記顔料に対する貧溶媒を含
    水性インク全質量に対する、良溶媒の含有量の合計をA(質量%)、貧溶媒の含有量の合計をB(質量%)としたときに、前記第2の水性インクにおけるB/Aが、第1の水性インクにおけるB/Aよりも小さい値であり、
    且つ、前記第2の水性インクが、前記第1の水性インクと同一の色相を有する
    ことを特徴とするインクカートリッジ。
  11. ブラックインクと少なくとも1色のカラーインクとを用いて記録媒体にインクジェット記録方式で記録を行う画像形成方法において、ブラックインクに請求項9に記載の水性インクを用い、且つ、前記ブラックインクによって形成される画像と、カラーインクによって形成される画像とが隣接してなる画像を形成する際に、ブラックインクを付与する走査を行って画像を形成した後、該画像が形成された領域にカラーインクを付与する走査を行うことを特徴とする画像形成方法。
  12. ブラックインクを付与する走査を行った後、少なくとも1走査分、間を空けた後にカラーインクを付与する走査を行う請求項11に記載の画像形成方法。
  13. ブラックインクを吐出させるための吐出口列と、カラーインクを吐出させるための吐出口列が副走査方向にずれて配置されている記録ヘッドを用いてインクの付与を行う請求項11又は12に記載の画像形成方法。
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