JP2006008915A - インクセット、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、及び画像形成方法 - Google Patents

インクセット、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、及び画像形成方法 Download PDF

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Kohei Nakagawa
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Abstract

【課題】顔料を色材としたインクを用いる際に、顔料インクで従来顕著に起こりやすい2次色以上のカラー画像の不均一性に起因する画像の美麗さの低下を改善できる画像形成方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも水、複数の水溶性有機溶剤と、水不溶性色材とを含有する異なる色の水性インクを用いる画像形成方法において、該複数の水性有機溶剤が水不溶性色材に対する良溶媒と、上記水不溶性色材に対する貧溶媒を含有し、該異なる色の水性インクから選んだ2色以上の水性インク中にそれぞれに含まれる貧溶媒の含有割合が実質的に同等の範囲内にあるインクを用いて被記録媒体に多次色を形成する画像形成方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、水、水溶性有機溶剤及び水不溶性色材を含有する水性インクから構成されるインクセットに関し、より詳しくは、インクジェット記録方式を用いた記録方法や記録装置、更には、画像形成方法に好適なインクセットに関する。
従来より、着色剤として顔料を含むインク(顔料インク)は、耐水性や耐光性等の堅牢性に優れた画像を与えることが知られており、顔料の選択や溶剤の選択など様々な検討がされている。また、近年、このようなインク及びインクセットにより形成されてなる画像の光学濃度の向上、更には、互いに異なる色を組み合せて形成する画像の美麗さを向上させる目的として種々の技術の提案がされている。例えば、画像濃度を向上させる技術として、自己分散型カーボンブラックと特定の塩を組み合せてなるブラックインクを用いることにより、画像濃度をより一層の向上を達成できることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、画像の美麗さを向上させる技術として、インク中に顔料と多価金属塩を含んでなるカラーインクと、インク中にカーボンブラックと、樹脂エマルジョンまたは無機酸化物コロイドを1種以上含むブラックインクのインクセットによる記録方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。これらの技術では、いずれの場合も、インク中に分散状態で存在している顔料を、記録媒体表面で強制的に凝集させて画像濃度を向上させたり、カラーインク中の含有物によりブラックインク中のカーボンブラックを増粘・凝集を起こし、ブラックインクとカラーインクの境界の滲みが改善された画像を得ている。
このように、画像濃度を向上や、境界の滲みが抑制された高品位な画像の形成あたり、従来ではインク中に別途化合物を含有させる手段が主に用いられてきた。
特開2000−198955公報 特開平09−279069公報
しかしながら、ブラックインク及びカラーインクを用いて2次色以上のカラー画像を形成する際には、各色の画像濃度の向上や境界の滲みの抑制のみではなく、更に、形成された画像中において、2次色以上の画像を形成した際の均一性を向上させ、より一層画像の美麗さを向上させることが望まれていた。また、コート層の有無、厚みや構成、基材の違いなどに多種の被記録媒体を選択した際に、一様に画像の美麗さを確保することができないという課題があった。
従って、本発明の目的は、顔料などの水不溶性色材を含有する水性インクを用いる際に、かかる水性インクで顕著に起こりやすい2次色以上のカラー画像の不均一性に起因する画像の美麗さの低下、すなわち、2次色などの多次色の形成の際に生じる特定の色のくすみ、違和感、色の不均一性などが改善できるインクセットを提供することである。本発明の他の目的は、かかるインクセットを用いることにより、多次色で表現された部分を含むカラー画像の均一性が高い美麗な画像が形成できるインクジェット記録方法、上記記録方法に好適にもちいることが出来るインクカートリッジ、記録ユニット及び記録装置を提供することである。
また、デジタルフォトやファインアートの分野において求められる性能として、写真、描画、グラフィックなどのデジタル画像などを再現性の高いプリント、好みの表現をするためのプリントを実現することであり、また、光沢紙、マット紙、普通紙、更には、基材の風合いを生かしたアート紙などの複数のメディアを選択する際においても、多次色で表現された部分を含むカラー画像の均一性に起因する画像の美麗さが得られる画像形成方法を提供することである。
上記目的は、以下の本発明によって達成される。
本発明のインクセットは、水、複数の水溶性有機溶剤と、水不溶性色材とを含有する異なる色の水性インクを組み合わせてなるインクセットであって、該異なる色の水性インクの少なくとも2つ以上の組み合わせにおいて、各水性インクに、該複数の水性有機溶剤として水不溶性色材に対する良溶媒と、上記水不溶性色材に対する貧溶媒を含有し、且つ、各インクの中に含有する該貧溶媒の含有割合が実質的の同等の範囲内にあることを特徴とするインクセットである。
本発明のインクジェット記録方法は、上記のインクセットを構成するインクジェット用の水性インクをインクジェット方法で吐出する工程を少なくとも有することを特徴とするインクジェット記録方法である。
本発明のインクカートリッジは、上記の水性インクセットを構成する水性インクを個別に収容していることを特徴とするインクカートリッジである。
本発明の記録ユニットは、上記の水性インクセットを構成する水性インクを個別に収容しているインク収容部と、該インクを吐出させるためのインクジェットヘッドとを具備していることを特徴とする記録ユニットである。
本発明にかかるインクジェット記録装置は、上記の水性インクセットを構成する水性インクを個別に収容しているインク収容部と、該インクを吐出させるためのインクジェットヘッドとを具備していることを特徴とするインクジェット記録装置である。
本発明の画像形成方法は、複数の異なる色の水性インクを組み合わせて被記録媒体で多次色を形成する工程を有する画像形成方法において、
前記複数の異なる色の水性インクが、少なくとも水、複数の水溶性有機溶剤と、水不溶性色材とを含有し、かつ、該複数の水性有機溶剤が水不溶性色材に対する良溶媒と、上記水不溶性色材に対する貧溶媒からなり、さらに、これらの水性インクの貧溶媒の含有割合が実質的の同等の範囲内にあることを特徴とする画像形成方法である。
本発明の画像形成用のインクの一態様は、少なくとも水、水不溶性色材、該水不溶性色材に対する良溶媒と、上記水不溶性色材に対する貧溶媒を含有する異なる色の第1の水性インクと第2の水性インクを用いて画像形成を行う記録装置に用いられる第1の水性インクであって、前記第1の水性インクの貧溶媒の含有割合が前記第2の水性インクと実質的の同等の範囲内にある揃えたことを特徴とするインクである。
本発明にかかる画像形成用のインクの他の態様は、水と、水不溶性色材と、該水不溶性色材に対する良溶媒と、上記水不溶性色材に対する貧溶媒と、を含有する異なる色の第1の水性インクと第2の水性インクを付与する工程と、該水性インクとを接触することによって該水性インク中の水不溶性色材の分散状態を不安定化させる反応液を付与する工程により画像形成を行う記録装置に用いられる第1のインクであって、前記第1の水性インクの貧溶媒の含有割合を前記第2の水性インクと揃えたことを特徴とするインクである。
ここで「実質的に同等の範囲内にある」とは、本発明においては、対象インクとなる
インク同士を比較した際に、各貧溶媒の相対比が10:9乃至9:10の範囲内にあることを意味する。又「貧溶媒」は以下のように本発明では定義する。即ち、良溶媒及び貧溶媒は、水不溶性色材の分散状態を良好に維持できるか否かによって決定される。即ち、水不溶性色材、或いはその分散剤との関係において決定されるものである。従って、本発明にかかるインクの調製にあたって、良溶媒と貧溶媒とを選択する場合には、水不溶性色材の分散状態の安定性の程度を観察し、その結果から求めることが好ましい。そして本発明者らは、本発明の効果をもたらす良溶媒と貧溶媒との判定の基準を、本発明の効果との関連の下で種々検討した結果、判定しようとする溶媒50質量%程度を含み、且つ当該インクに用いる水不溶性色材を分散状態で含む顔料分散液を、60℃で、48時間保存したときの当該液体中の粒子径が、判定しようとする溶媒を含まない、若しくは少量含み、且つ当該インクに用いる水不溶性色材を分散状態で含む顔料分散液の粒径と比較して増加しているものを「貧溶媒」とし、判定しようとする溶媒を含まない、若しくは少量含み、且つ当該インクに用いる水不溶性色材を分散状態で含む顔料分散液と同じか、或いは減少しているものを良溶媒と定義した場合に、本発明の効果との整合性が極めてよいことを見出した。
本発明は、対象インク同士の貧溶媒の相対量を実質的に同等の範囲内にあるとしているので、顔料などの水不溶性色材を含有する水性インクを用いる際に、かかる水性インクで従来顕著に起こりやすい2次色以上のカラー画像の不均一性に起因する画像の美麗さの低下を改善できるインクセットが提供される。また、本発明によれば、かかるインクセットを用いることにより、2次色以上のカラー画像の均一性の高い美麗な画像が形成できるインクジェット記録方法、上記記録方法に好適に用いることが出来るインクカートリッジ、記録ユニット及び記録装置が提供できる。また、デジタルフォトやファインアートの分野において求められる、多種の紙種、すなわち、光沢紙、マット紙、普通紙、更には、基材の風合いを生かしたアート紙などの複数のメディアを選択する際においても、2次色以上のカラー画像の均一性に起因する画像の美麗さが得られるインクセット、及び、画像形成方法を提供される。更に、水不溶性色材を含む水性インクを用いた画像形成方法に、水性インク中の水不溶性色材の分散状態を不安定化させる反応液を付与する工程を更に追加することで、画像濃度を更に向上させることがきる。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。先ず、本明細書に用いている貧溶媒、及び良溶媒について説明する。その定義の詳細については後述するが、水不溶性色材の分散方法に関わらず、当該水溶性有機溶剤に対する水不溶性色材の分散安定性がよいものを良溶媒とし、悪いものを貧溶媒としている。本発明は、水不溶性色材とともに水性インク中に含有させる水溶性有機溶剤に着目し、水不溶性色材を溶解或いは分散させる機能を有する水溶性有機溶剤を、当該色材に対して、上記した貧溶媒としての挙動を示すものと、及び良溶媒としての挙動を示すものとに分類し、水性インク中にこの貧溶媒と良溶媒を組み合せて含有させることを特徴の一つとしている。更に、本発明は、顔料などの水不溶性色材を含む水性インクの特徴を鑑みて、従来、インクの粘度や表面張力の調整だけではコントロールできなかった画像形成における課題について解決できるインクセット及び画像形成法を見いだし、その知見に基づいてなされたものである。
すなわち、これらのインクを組み合わせて用いた際に、異なる色の水性インクから選んだ多次色形成用の2色以上の水性インク中にそれぞれに含まれる貧溶媒の割合が実質的に同等の範囲内にある、すなわち貧溶媒の割合が実質的に変わらない水性インクを用いて、2色以上の多次色の画像を形成することにより顔料インクなどで顕著に起こりやすい多次色のカラー画像の不均一性に起因する画像の美麗さの低下を改善できる。ここにおける貧溶媒の含有割合とは貧溶媒が1種類の場合は、その貧溶媒の含有割合であり、水性インク中に貧溶媒となるもの2種以上が存在する場合にはそれらを足し合わせた含有割合を示す。
ここで、カラー画像の不均一性とは、多次色の形成の際に、特定の色のくすみ、違和感、色の不均一性などが2色以上の水性インクを重ねた際に生じることを示す。ここにおける、カラー画像の不均一性に起因する画像の美麗さの低下改善効果はブラックインクを含まないカラーインクの組み合わせによる画像形成において、色調などをも加味した上でより有利になると考えられる。
本発明において異なる色の水性インクから選んだ2色以上の水性インク中にそれぞれに含まれる貧溶媒の含有割合が実質的に変わらないことは、本発明の効果が多次色での記録部における均一性などの効果が得られる程度に貧溶媒の含有割合が揃えられていることをいい、貧溶媒の含有割合の比としては、対象となる異なる2以上のインクから任意に選択した2つのインクにおける貧溶媒の含有割合の比が、10:9〜9:10の範囲にある。この範囲にあることにより、2色以上を用いた多次色のカラー画像の不均一性に起因する画像の美麗さの低下を改善できる。更に、その比率を等量に揃えることがより好適である。
本発明によってこのような効果が得られる理由は明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。
本発明にかかる水性インクを用いて被記録媒体に画像形成する場合には、以下に述べる理由によって、顔料インクなどで顕著に起こる2次色以上のカラー画像の不均一性に起因する画像の美麗さの低下を改善できると考えられる。すなわち、本発明にかかる水性インクのインク滴が被記録媒体上に印字された場合に、色材を効率的に、且つ、その挙動を制御して被記録媒体上に配置するかという点に着目することにより、形成された画像の優れた品位を得ることが可能になると考えられる。そして、この作用が2次色以上を用いて順次カラー画像を形成する際に連続的に生じていると考えられる。
以下に本発明にかかるインクセットを構成する水性インクを用いて2色以上の多次色での色表現を行う場合を水不溶性色材として顔料を用いた顔料インクの場合を代表として説明する。顔料インクによる画像形成時のインクの着弾からインク中のおいて水不溶性色材である顔料が浸透していく様子を模式的に示した図1を示す。図1において水不溶性色材である顔料103と水溶性有機溶剤102を含んだ第1のインクのインク滴101が被記録媒体100に着弾後(図1−a)、インク滴101が被記録媒体に浸透していく過程(図1−b〜d)で水溶性有機溶剤102中の貧溶媒104が顔料103に作用し、浸透を制御されながら定着していく。次に、多次色を形成する際に、異なる色の水性インクのインク滴105が被記録媒体100に着弾後(図1−e)、インク滴105が被記録媒体に浸透していく過程(図1−f〜h)において示すが、ここで、貧溶媒の量が重要になってくる。すなわち、本発明においては最初の色を形成するインク滴101の後に、異なる色のインク滴105が着弾する際、貧溶媒量104と貧溶媒量108が実質的に同じであることにより、顔料に対する貧溶媒の作用を同じ状態にできること、更には、貧溶媒の量が同じであるため、先に着弾したインク滴と後に着弾したインク滴の親和性を高めることができるため、すなわち、顔料103と顔料107が被記録媒体100に着弾、定着後、均一に混じりあうものと考えられる。このことによって、更に、その効果はインク滴101のKaとインク滴105のKaが実質的に同じであることにより、水溶性有機溶媒の浸透と、顔料の浸透定着を更に最適にコントロールできるために、2色以上の多次色の画像を形成することにより顔料インクで従来顕著に起こりやすい多次色のカラー画像の不均一性に起因する画像の美麗さの低下すなわち、特定の色のくすみ、違和感、色の不均一性などが改善の効果が高まる。
以上の顔料と貧溶媒との関係から浸透がコントロールされて定着した後の様子を図2(A)に、本発明以外の比較としてのインクが着弾し、定着後した後の様子をそれぞれ、図2(B)に示す。本発明においてインクが被記録媒体100上へ着弾して、定着後のインクの広がり、浸透の様子を本発明の効果が発揮された場合を示した模式図が図2(A)である。
一方、従来の顔料インクの場合には模式図の図2(B)に示したように、別々に着弾された1種のインク111と別のインク112は被記録媒体100に着弾、画像形成後、顔料分散体の種類、溶剤の種類によって定着後、広がりや浸透の仕方は異なってしまい制御し難いものであった。これは、粘度や表面張力を同じ値に調整した場合でも十分に制御できないものであった。このことは顔料インク特有の現象であり、印字、着弾、定着までの過程において分散状態から凝集状態への顕著な状態変化が生じることにある。
本発明者らはこの顔料インク特有の現象に着目して鋭意検討した結果、異なる色のインクの組み合わせによる画像形成において、各インクの分散状態から凝集状態への変化を調整することによって2色以上の多次色形成において定着後、広がりや浸透を制御することによって顔料インクで従来顕著に起こる2次色以上のカラー画像の不均一性に起因する画像の美麗さの低下を改善できることを見いだした。すなわち、異なる色の水性インクから選んだ2色以上の水性インク各々の中に該複数の水性有機溶剤が水不溶性色材に対する良溶媒と、上記水不溶性色材に対する貧溶媒を含有し、且つ、各インクの中に含有する該貧溶媒の含有割合が揃えられている、すなわち実質的に変わらないインクを用いることにより達成できることを見いだした。ここで、実質的に変わらないことは、先に記載したとおり、多次色での記録部におけるカラー画像の不均一性に起因する画像の美麗さの低下などの不都合を回避でできる程度に貧溶媒の含有割合が揃えられていることを意味する。更に、2種のインク間での貧溶媒の含有割合の比としては、対象となる異なる2以上のインクから任意に選択した2つのインクにおける貧溶媒の含有割合の比が、10:9〜9:10の範囲にあることが好ましい。この範囲内にあることにより、図1において2色以上の水性インクを重ねる際に、その重ねる順番、重ねる回数(インクジェット記録の場合はパス数)に応じてインクの広がり、浸透をよりコントロールした画像形成ができると考えられる。更に、この効果は異なる色の水性インクから選んだ多次色形成用の2色以上の水性インクの各々のKa値が実質的に変わらないように調整することにより、より効果的に達成される。ここで、インクのKa値は顔料インクの場合、表面張力や粘度だけで決まるものではなく、界面活性剤の添加量のみならず、顔料と被記録媒体表面との親和性や溶剤、添加剤等との関係から調整される。ここで、実質的に変わらないことは、その比率が10:9〜9:10の範囲にあることを示す。この範囲にあることにより、更に、2次色画像の均一性は色合いと品位の面で多様な被記録媒体において向上する。更に、その比率を等量揃えることがより好適である。ここで、顔料インクのKa値は分散樹脂の量などで変わり、顔料種によってその量が変わる場合には界面活性剤の量のみならず分散樹種を添加するなど、または別途浸透をコントロールできる添加剤によって調整する。
図1と比較して、2種のインク間での貧溶媒の含有割合の比この範囲内に比率がない場合には、組み合わせるインクによって異なるが、貧溶媒の多い、すなわち、第一のインクが10に対し、第二のインクが9より小さくなる場合には第一のインクの顔料が被記録媒体表面上に配置しやすく、第二のインクの顔料が被記録媒体中により深く浸透しやすくなるため、多次色形成における形成画像の不均一性抑制の効果は十分に発揮されなくなる。また、多種の被記録媒体に対応する不均一性抑制の効果も更に発揮されなくなる。ここで、本発明の効果が発揮されない例を挙げると、第一のインクの貧溶媒量が極端に多く、第二のインクの良溶媒量が極端に多い場合には、両者のインク中における顔料の浸透がコントロールされなくなるため、図2(B)のような定着状態になり、均一性は得られない。
また、本発明において、その多次色形成において画像濃度を高めるためには、インクセット中の各々のインクにおいて色材を効率的に且つ、制御することが効果的である。その作用効果を明確に説明するために図3を示す。
図3の(b)〜(d)は、インクが被記録媒体200上へ着弾してから後に定着するまでのインクの様子を示した模式図である。この場合におけるインクドットの広がり状態に着目すると、ドットの中心部203よりも、インクと紙の接触部分におけるドットの外周202において貧溶媒の濃度が高くなっていると考えられる。この結果、インクドットが被記録媒体表面近傍で真円に近い形で拡散し、その広がる過程で、水不溶性色材に対して貧溶媒207の濃度が急激に増加することが起こる。これに伴なって水不溶性色材が不安定化し、色材の凝集若しくは分散破壊が起こり、この結果、紙面上に真円形に近い縁取りを取りつつ拡散し(図3(b)参照)、水不溶性色材204が被記録媒体200の表面に留まることが起こり、ドットの外縁部分に、あたかも水不溶性色材の土手が形成されたかのようになる。このようにして、水不溶性色材のドットが真円形に形成され、その状態で紙面に固定化されると考えられる(図3(c)参照)。この時点において、水不溶性色材のドット形成は完了するが、インク中の水溶性有機溶剤及び水は更に拡散しながら放射状に広がっていく。つまり、水不溶性色材のドット形成後も、水及び、水溶性有機溶剤は被記録媒体表面近傍を拡散していく。それに引き続き、良溶媒リッチな中央部203の水溶性有機溶剤の蒸発や浸透により、この部分においても水不溶性色材が析出して画像を形成するドット205が形成される(図3(c)参照)。上記したようなプロセスによって形成されるインク画像は、少ないインク液滴量であっても十分に大きなエリアファクターを有し、高い印字濃度を有するものとなり、しかも、フェザリングの発生が十分に軽減された高品位なものとなる。
ここで、良溶媒の含有割合(質量%)をA、貧溶媒の含有割合(質量%)をBとした場合に、A:Bが10:5以上10:30以下の範囲内にあることにより、インクの保存安定性と、高い印字濃度の実現との両立を図ることが可能になるため、実際に画像形成をする上でより安定的に本発明の効果は得られる。A:Bの比率が10:5より低い場合はより高い印字濃度を得ることが難しく、また、A:Bの比率が10:30よりも高い場合は保存安定性が十分でない場合がある。
更に、インク中の上記複数の水溶性有機溶媒の各々のKa値を比較したときに、この中で最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が貧溶媒である場合に、より高い画像濃度が得られる。すなわち、図3(d)に示したように、インクが被記録媒体に着弾した直後のインクドット直径をdI、インクが被記録媒体に定着した後におけるインクの広がりの最大径をdS、インクが被記録媒体に定着した後におけるインク中の水不溶性色材による広がりの最大径をdCとした場合に、dC<dI<dS(式1)の関係が成り立つときに、上述した効果がより発揮され高品位なものとなる。
本発明にかかる水性インクの構成に鑑みると、この関係式は、インク液滴が被記録媒体へ付与された後、Ka値の高い貧溶媒により、色材が被記録媒体表面近傍で真円に近い形で拡散し固定化した後、インク中の水及び水溶性有機溶剤が被記録媒体の表面近傍を更に拡散しながら放射状に広がっていくこと意味しており、インク中の水不溶性色材と、水及び水溶性有機溶剤の被記録媒体上への定着過程が、水不溶性色材の固定化の後に、水と水溶性有機溶剤が被記録媒体内を拡散していくことを表すものである。このことは2次色以上による多次色形成においても発現される。
本発明においては、上記したような想定メカニズムの下で、本発明に用いる良溶媒及び貧溶媒について詳細に述べる。
本発明において、良溶媒及び貧溶媒は、水不溶性色材の分散状態を良好に維持できるか否かによって決定される。即ち、水不溶性色材、或いはその分散剤との関係において決定されるものである。従って、本発明にかかるインクの調製にあたって、良溶媒と貧溶媒とを選択する場合には、水不溶性色材の分散状態の安定性の程度を観察し、その結果から求めることが好ましい。そして本発明者らは、本発明の効果をもたらす良溶媒と貧溶媒との判定の基準を、本発明の効果との関連の下で種々検討した結果、判定しようとする溶媒50質量%程度を含み、且つ当該インクに用いる水不溶性色材を分散状態で含む顔料分散液を、60℃で、48時間保存したときの当該液体中の粒子径が、判定しようとする溶媒を含まない、若しくは少量含み、且つ当該インクに用いる水不溶性色材を分散状態で含む顔料分散液の粒径と比較して増加しているものを貧溶媒とし、判定しようとする溶媒を含まない、若しくは少量含み、且つ当該インクに用いる水不溶性色材を分散状態で含む顔料分散液と同じか、或いは減少しているものを良溶媒と定義した場合に、本発明の効果との整合性が極めてよいことを見出した。
より具体的には、下記の方法で、特定の不溶性色材に対して使用する溶媒が、良溶媒となっているか、或いは貧溶媒となっているかの判定を行った。先ず、下記の2つの水不溶性色材分散液A及びBを調製する。
A:判定対象としての水溶性有機溶剤の濃度が50%、水不溶性色材の濃度、又は、水不溶性色材及びその分散に寄与する物質の総量の濃度が5質量%、水の濃度が45%である組成の水不溶性色材分散液;
B:水不溶性色材及びその分散に寄与する物質の総量の濃度が5質量%の、水溶性有機溶剤を含まない水不溶性色材の水分散液。
次に、上記分散液Aを60℃で48時間保存した後に常温に冷ました分散液Aの粒径を、濃厚系粒径アナライザー(商品名:FPAR−1000;大塚電子(株)社製)等を用いて測定した。又、同様にして上記水分散液Bの粒径を、上記濃厚系粒径アナライザーを用いて測定した。そして、上記分散液A及び水分散液Bの各々の粒径値を、粒径(A)、粒径(B)としたときに、これらの値を下記の定義に従って良溶媒と貧溶媒とに判別した。
・貧溶媒:上記において、粒径(A)が粒径(B)よりも大きい場合、当該判定対象としての水溶性有機溶剤を貧溶媒として定義した。
・良溶媒:粒径(A)と粒径(B)と同じか、或いは粒径(A)が粒径(B)よりも減少した場合、当該判定対象としての水溶性有機溶剤を良溶媒として定義した。
このようにして、判定された良溶媒と貧溶媒とを用いて本発明の構成を有するインクを調製したところ、上記したような優れた効果を得られることが確認できた。
次に、ブリストウ法によって求められるKa値について説明する。該値は、インクや水溶性有機溶剤の被記録媒体への液の浸透性を表わす尺度として用いられる。インク液を引用例に採って説明すると、インクの浸透性を1mあたりのインク量Vで表わすと、インク滴を吐出してから所定時間tが経過した後における、インクの被記録媒体への浸透量V(mL/m=μm)は、下記に示すブリストウの式によって示される。
V=Vr+Ka(t−tw)1/2
ここで、インク滴が被記録媒体表面に付着した直後には、インクは、被記録媒体表面の凹凸部分(被記録媒体の表面の粗さの部分)において吸収されるのが殆どで、被記録媒体内部へは殆ど浸透していない。その間の時間がコンタクトタイム(tw)であり、コンタクトタイムに被記録媒体の凹凸部に吸収されたインク量がVrである。そして、インクが付着した後、コンタクトタイムを超えると、該コンタクトタイムを超えた時間、即ち、(t−tw)の1/2乗べきに比例した分だけ被記録媒体への浸透量が増加する。Kaは、この増加分の比例係数であり、浸透速度に応じた値を示す。そして、このKa値は、ブリストウ法による液体の動的浸透性試験装置(例えば、商品名:動的浸透性試験装置S;東洋精機製作所製)等を用いて測定可能である。
尚、本発明においてはブリストウ法によるKa値は、普通紙[例えば、キヤノン(株)製の、電子写真方式を用いた複写機やページプリンタ(レーザビームプリンタ)やインクジェット記録方式を用いたプリンタ用として用いられるPB紙や、電子写真方式を用いた複写機用の紙であるPPC用紙等]を被記録媒体として用いて測定した値である。又、測定環境としては、通常のオフィス環境、例えば、温度20〜25℃、湿度40〜60%を想定している。
本発明にかかる水性インクは、インク成分中の水溶性有機溶剤を、使用する水不溶性色材との関連において、上記で説明した構成とすることを特徴とするが、それ以外は、従来の水性インクと同様の構成とすればよい。下記に、本発明のインクを構成する各成分について説明する。先ず、水不溶性色材を分散する水性媒体について説明する。
<水溶性有機溶剤>
本発明にかかる水性インクは、水不溶性色材の分散媒体として水性媒体を含み、この水性媒体は水と水溶性有機溶剤との混合溶媒である。水溶性有機溶剤としては、下記に列挙したようなものの中から選択することができる。本発明においては、水溶性有機溶剤を選択する際に、先に述べた方法で、先ず、使用する水不溶性色材に対する良溶媒と貧溶媒とに判別し、かかる判定結果を踏まえて、その後に、少なくとも良溶媒と貧溶媒とが混在し、且つ、各水溶性有機溶剤の含有量が本発明で規定する範囲内となるように、水溶性有機溶剤を選択して適宜に配合し、インクを調製することが必要となる。
水溶性有機溶剤としては、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。又、水としては、脱イオン水を使用することが望ましい。
本発明にかかる水性インク中の水溶性有機溶剤の含有量は特に限定されないが、インク全質量に対して、好ましくは3〜50質量%の範囲とすることが好適である。又、インクに含有される水の量は、インク全質量に対して、好ましくは50〜95質量%の範囲とすることが好ましい。
本発明の好ましい形態では、インクセットを構成する全水性インクが貧溶媒と良溶媒からなる水溶性有機溶剤を含み、インク中における良溶媒の含有割合(質量%)をA、インクにおける貧溶媒の含有割合(質量%)をBとした場合に、これらの比率A:Bが10:5以上10:30未満の範囲内となるように、好ましくは、A:Bが、10:5以上〜10:10未満の範囲内となるように、更に好ましくは、比率A:Bが10:6〜10:10の範囲内となるように、水性インクを構成する水溶性有機溶剤の種類と含有量とを調整する。
本発明者らの詳細な検討によれば、水性インク中に含まれる良溶媒の比率が多い場合には保存安定性に優れるが、高い印字濃度を得ることが難しく、又、逆に良溶媒の比率が少ない場合には、高い印字濃度を得ることができるが、保存安定性が不十分になることがある。これに対して、インク中の水溶性有機溶剤における良溶媒と貧溶媒との比率を上記のように制御すれば、インクの保存安定性と、高い印字濃度の実現との両立を図ることが可能となる。
<水不溶性色材>
次に、本発明にかかる水性インクを構成する水不溶性色材について説明する。本発明にかかる水性インクを構成する水不溶性色材としては、その分散方式にかかわらず、例えば、分散剤や活性剤を用いる樹脂分散タイプの顔料(樹脂分散型顔料)や、活性剤分散タイプの顔料であってもよいし、水不溶性色材自体の分散性を高めて分散剤等を用いることなく分散可能とした、マイクロカプセル型構成の顔料(マイクロカプセル型顔料)や、顔料粒子の表面に親水性基を導入した自己分散タイプの顔料(自己分散型顔料)や、更には、顔料粒子の表面に高分子を含む有機基が化学的に結合している改質された顔料(ポリマー結合型自己分散顔料)を用いることができる。もちろん、これらの分散方法の異なる顔料を組み合わせて使用することも可能である。
水不溶性色材のインク含有割合に対する割合としては、0.1〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%である。以下、本発明に用いることのできるこれらの顔料について説明する。水不溶性色材の1種まるいは必要に応じて組み合わせた2種以上を水性インク中に含有させることができる。
(カラー顔料)
カラー顔料としては、有機顔料が挙げられ、具体的には、例えば、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロンエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料、インジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、キノフタロンエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。勿論、これらに限定されず、その他の有機顔料であってもよい。
又、本発明で使用することのできる有機顔料を、カラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、例えば、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が例示できる。
(ブラック顔料)
ブラック顔料に使用される顔料としては、カーボンブラックが好適である。例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックをいずれも使用することができる。具体的には、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000ULTRA、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA−II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上、コロンビア社製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、モナク2000、ヴァルカン(Valcan)XC−72R(以上、キャボット社製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(Special Black)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上、デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学社製)等の市販品を使用することができる。又、本発明のために別途新たに調製されたカーボンブラックを使用することもできる。しかし、本発明は、これらに限定されるものではなく、従来公知のカーボンブラックをいずれも使用することができる。又、カーボンブラックに限定されず、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子や、チタンブラック等を黒色顔料として用いてもよい。
(樹脂分散型顔料)
本発明にかかる水性インク中に含有される水不溶性色材としては、先に述べたように、分散剤を用いた樹脂分散型顔料も使用可能であるが、この場合には、上記に列挙したような疎水性の顔料を分散させるための化合物が必要となる。このようなものとしては、いわゆる分散剤、界面活性剤、樹脂分散剤等を用いることができる。分散剤又は界面活性剤としては、特に限定はないが、中でも、アニオン系、ノニオン系のものを好適に使用できる。例えば、アニオン系のものとしては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、及びこれらの置換誘導体等;ノニオン系のものとしては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、及びこれらの置換誘導体等が挙げられる。樹脂分散剤としては、スチレン及びその誘導体、ビニルナフタレン及びその誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸及びその誘導体、マレイン酸及びその誘導体、イタコン酸及びその誘導体、フマール酸及びその誘導体、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びその誘導体等から選ばれた少なくとも2つの単量体(このうち少なくとも1つは親水性単量体)からなるブロック共重合体、ランダム共重合体及びグラフト共重合体、並びにこれらの塩等を挙げることができる。
(マイクロカプセル型顔料)
本発明にかかる水性インク中に含有される水不溶性色材としては、先に述べたように、水不溶性色材を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化してなるマイクロカプセル型顔料を使用することもできる。水不溶性色材を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化する方法としては、化学的製法、物理的製法、物理化学的方法、機械的製法等が挙げられる。具体的には、界面重合法、in−situ重合法、液中硬化被膜法、コアセルベーション(相分離)法、液中乾燥法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法、酸析法、転相乳化法等が挙げられる。
マイクロカプセルの壁膜物質を構成する材料として使用される有機高分子類としては、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリウレア、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、多糖類、ゼラチン、アラビアゴム、デキストラン、カゼイン、タンパク質、天然ゴム、カルボキシポリメチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸の重合体又は共重合体、(メタ)アクリル酸エステルの重合体又は共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アルギン酸ソーダ、脂肪酸、パラフィン、ミツロウ、水ロウ、硬化牛脂、カルナバロウ、アルブミン等が挙げられる。
これらの中ではカルボン酸基又はスルホン酸基等のアニオン性基を有する有機高分子類を使用することが可能である。又、ノニオン性有機高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート又はそれらの(共)重合体)、2−オキサゾリンのカチオン開環重合体等が挙げられる。特に、ポリビニルアルコールの完全ケン物は、水溶性が低く、熱水には解け易いが冷水には解けにくいという性質を有しており特に好ましい。
マイクロカプセル化の方法として転相法又は酸析法を選択する場合は、マイクロカプセルの壁膜物質を構成する有機高分子類としては、アニオン性有機高分子類を使用する。転相法は、水に対して自己分散能又は溶解能を有するアニオン性有機高分子類と、分散性を有した有機顔料の色材との複合物又は複合体、或いは分散性を有した有機顔料の色材、硬化剤及びアニオン性有機高分子類との混合体を有機溶媒相とし、該有機溶媒相に水を投入するか、或いは水中に該有機溶媒相を投入して、自己分散(転相乳化)化しながらマイクロカプセル化する方法である。上記転相法において、有機溶媒相中に、インクに用いられる水溶性有機溶剤や添加剤を混入させて製造しても何等問題はない。特に、直接インク用の分散液を製造できることからいえば、インクの液媒体を混入させる方がより好ましい。
一方、酸析法は、アニオン性基含有有機高分子類のアニオン性基の一部又は全部を塩基性化合物で中和し、分散性を有する有機顔料の色材と、水性媒体中で混練する工程及び酸性化合物でpHを中性又は酸性にしてアニオン性基含有有機高分子類を析出させて、顔料に固着する工程とからなる製法によって得られる含水ケーキを、塩基性化合物を用いてアニオン性基の一部又は全部を中和することによりマイクロカプセル化する方法である。このようにすることによって、微細で顔料を多く含むアニオン性マイクロカプセル化顔料を製造することができる。
又、上記に挙げたようなマイクロカプセル化の際に用いられる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルキルアルコール類;ベンゾール、トルオール、キシロール等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;クロロホルム、二塩化エチレン等の塩素化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類等が挙げられる。尚、上記の方法により調製したマイクロカプセルを遠心分離又は濾過等によりこれらの溶剤中から一度分離して、これを水及び必要な溶剤とともに撹拌、再分散を行い、目的とするマイクロカプセル型顔料とすることもできる。以上の如き方法で得られるカプセル化顔料の平均粒径は50nm〜180nmであることが好ましい。
(自己分散型顔料)
本発明にかかる水性インク中に含有される水不溶性色材としては、先に述べたように、水不溶性色材自体の分散性を高めた、分散剤等を用いることなく分散可能とした自己分散型の顔料を使用することもできる。自己分散型顔料としては、顔料粒子表面に、親水性基が直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合しているものが挙げられる。例えば、顔料粒子表面に導入された親水性基が、−COOM1、−SOM1及び−POH(M1)(式中のM1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。)からなる群から選ばれるもの等を好適に用いることができる。更に、上記他の原子団が、炭素原子数1〜12のアルキレン基、置換若しくは未置換のフェニレン基又は置換若しくは未置換のナフチレン基であるもの等を好適に用いることができる。その他にも、有機顔料を次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法、水中オゾン処理で有機顔料を酸化する方法、オゾン処理を施した後に酸化剤により湿式酸化し、有機顔料表面を改質する方法等によって得られる、表面酸化処理タイプの自己分散顔料も好適に用いることができる。
(ポリマー結合型自己分散顔料)
本発明にかかる水性インク中に含有される水不溶性色材としては、先に述べたように、水不溶性色材自体の分散性を高めた、分散剤等を用いることなく分散可能としたポリマー結合型自己分散顔料も使用可能である。この分散剤を用いないポリマー結合型自己分散顔料は、顔料の表面に、直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合されている官能基と、イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体と、の反応物を含むものを用いることが好ましい。即ち、このような構造を有するものを使用すれば、表面を改質する場合に用いる共重合体の形成材料であるイオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合比率を適宜に変化させることができ、これによって改質された顔料の親水性を適宜に調整できるので好適である。又、使用するイオン性モノマー及び疎水性モノマーの種類や、両者の組み合わせを適宜に変化させることができるため、顔料表面に様々な特性を付与することもでき、この点からも好適である。
(その他の成分)
本発明にかかる水性インクは、保湿性維持のために、上記した成分の他に、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の保湿性固形分をインク成分として用いてもよい。尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン等の、保湿性固形分のインク中の含有量は、一般には、インクに対して0.1〜20.0質量%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは3.0〜10.0質量%の範囲である。
更に、本発明にかかるインクには、上記成分以外にも必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤等の、種々の添加剤を含有させてもよい。
界面活性剤としては表面張力の調整や、吐出性を改善するために、ノニオン系の界面活性剤を用いてもよい。
界面活性剤としては表面張力の調整や、吐出性を改善するために、ノニオン系の界面活性剤を添加しても良い。好適なノニオン界面活性剤としては、下記構造式(1)〜(4)のいずれかの構造を有している化合物が一例として挙げられる。
Figure 2006008915
(但し、上記構造式(1)中、Rはアルキルを表し、nは整数を表す。)
Figure 2006008915
(但し、上記構造式(2)中、Rはアルキル基を表し、nは整数を表す。)
Figure 2006008915
(但し、上記構造式(3)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、m及びnは、夫々整数を表す。)
Figure 2006008915
(但し、構造式(4)中、m及びnは、夫々整数を表わす。)
上記構造式(1)中、Rは炭素数8〜21のアルキルであることが好ましい。Rは直鎖状でも分岐状でも良い。nは5〜40の整数であることが好ましい。R及び/又はnの値が異なる2種以上の化合物の混合物を使用することもできる。
上記構造式(2)中、Rは炭素数8〜21のアルキルであることが好ましい。Rは直鎖状でも分岐状でも良い。nは5〜40の整数であることが好ましい。R及び/又はnの値が異なる2種以上の化合物の混合物を使用することもできる。
上記構造式(3)中、mは1〜10の整数であることが好ましい。nは1〜10の整数であることが好ましい。なお、mはエチレンオキシドユニット数を、nはプロピレンオキシドユニット数を意味し、ブロック共重合体、交互共重合体、ランダム共重合体のいずれでも良い。m及び/又はnの値が異なる2種以上の化合物の混合物を使用することもできる。
上記構造式(4)中、mは1〜10の整数であることが好ましい。nは1〜10の整数であることが好ましい。m及び/又はnの値が異なる2種以上の化合物の混合物を使用することもできる。
上記構造式(1)〜(4)のいずれかの構造を有している化合物の水性インク中の含有量は、水性インク全質量に対して0.05〜5質量%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは0.1〜2質量%である。
(インク特性)
上記で説明したような構成成分からなる本発明で使用するカラーインクは、インクジェット記録ヘッドから良好に吐出できる特性を有することが好ましい。このため、インクジェット記録ヘッドからの吐出性という観点からは、インクの特性が、例えば、その粘度が1〜15mPa・s、表面張力が25mN/m以上、更には、粘度が1〜5mPa・s、表面張力が25〜50mN/mとすることが好ましい。
(インクセット)
本発明にかかるインクセットは、多次色記録部を形成するための異なる色の水性インクの2種以上を少なくとも有するものである。従って、多次色記録を行わないインクについてはインクセットの目的用途に応じて適宜選択することができるが、。本発明のインクセットでの多次色記録部形成用の2種以上の水性インクはいずれも良溶媒と貧溶媒を含んでおり、先に述べたように、かつ貧溶媒の含有割合が各水性インクで揃えられている。更に、これらの多次色記録部を形成するための異なる色の水性インクの2種以上のKa値も揃えられている、すなわち実質的に変らないことが好ましい。ここでKa値が実質的に変らない点を対象となるインクのKa値の比で表すと、対象となる異なる2以上のインクから任意に選択した2つのインクのKa値の比が、10:9〜9:10の範囲にある。
本発明で言うインクセットは、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク若しくはシアンインク、マゼンタインク、イエローインク一体のインクタンク又は、ヘッドつきインクタンクで構成されるインクセット、又は、記録装置に対し個別のインクタンクが脱着可能で有るように用いられる事を実質的に「これらのインクを有するインクセット」と称する。いずれにしても、本発明においては、使用される(プリンター内であるいはインクタンクとして)他のインクに対して、本発明のインク単体の特性を相対的に規定するもので、これらの上記形態に限らず、どのような変形の形態で有っても良い。
<反応液の特性>
本発明のインクセットを用いた画像形成方法においては、被記録媒体や記録すべき画像の種類によっては、水性インク中の水不溶性色材を不安定化させる反応液を併用することで、本発明にかかる多次色記録用の2種以上の水性インクの貧溶媒の含有割合を揃えることの効果をより向上させることができ、かつ、画像濃度の更なる向上を図ることができる。
次にこの反応液の各成分及び物性、更には、該反応液を記録媒体に塗布する条件などについて夫々説明する。
本発明で使用する反応液は、インク中の色材を不溶化また凝集せしめる反応成分を含有するが、より具体的には、例えば、水性媒体中に、イオン性基の作用によって安定に分散又は溶解されている色材を有するインクと、記録媒体上で接触した場合に、該インクの分散安定性を破壊及び凝集することができる、金属塩(特には多価金属のイオン及びその塩)、低分子カチオン性化合物、及びカチオン性高分子から選ばれる、少なくとも何れかを、反応性成分として含むものが挙げられる。以下、これらの反応性成分について説明する。
(多価金属のイオン及びその塩)
本発明にかかる反応液に用いることのできる好ましい多価金属イオンとしては、具体的には、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Sr2+及びBa2+等の二価の金属イオンや、Al3+、Fe3+、Cr3+及びY3+等の三価の金属イオンが挙げられるがこれに限定されるものではない。これら多価金属イオンを反応液中に含有させるためには、多価金属の塩を用いる。塩とは、上記に挙げたような多価金属イオンと、これらのイオンに結合する陰イオンとから構成される金属塩のことであるが、水に可溶なものであることを要する。塩を形成するための好ましい陰イオンとしては、例えば、Cl-、NO3 -、I-、Br-、ClO3 -、SO4 2-、CO3 2-、CH3COO-及びHCOO-等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明においては、反応性や着色性、更には取り扱いの容易さ等の点から、多価金属イオンとしては、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Al3+及びY3+が特に好ましく、更には、Ca2+が好ましい。また、陰イオンとしては、溶解性等の点から、NO3 -が特に好ましい。
反応液中の多価金属イオンの含有量は、本発明にかかる効果を考慮すると、反応液の含有割合に対して、質量基準で0.01%以上10%以下とすることが好ましい。より好ましくは1.0%以上5%以下、さらにインクを不安定化させる機能を充分に発揮し、高いレベルの画像均一性、光学濃度を得るためには、反応液に対して2.0%以上4.0%以下の多価金属イオンを含有させることが好ましい。また、反応液中に多価金属イオンを10%を超えて含有させることも可能である。しかし、10%よりも多く入れたとしても、インクを不安定化させる機能の著しい増大は望めないこと、等の理由で、通常は、過剰に含有させなくてもよい。
又、反応液は、色材を含まず、透明であることが好ましいが、必ずしも可視域に吸収を示さないものである必要はない。即ち、可視域に吸収を示すとしても、実質上画像に影響を与えない範囲であれば可視域に吸収を示すものであってもかまわない。
(反応液の記録媒体に対する塗布手段)
反応液を記録媒体に付着せしめる方法としては、ローラーコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法等による塗布方法が挙げられる。また、インクと同様にインクジェット記録方法を用い、インクが付着する画像形成領域及び画像形成領域の近傍のみに反応液を選択的に付着せしめる塗布方法も可能である。本発明者らは、反応液の記録媒体への付与方法を幾つか検討した結果、少ない付与量でも記録媒体上層部近傍での反応成分の分布状態が他の手段よりも均一となり、インク付与後のベタ部のムラ、更には裏抜け性と言った画質という点で、ローラーコーティング法が最も優れているという見解に至った。
また、2液を用いて画像を形成するシステムにおいて、反応液とインクを記録媒体上で接触させる手段には様々な方法がある。例えば、反応液とインクが記録媒体上で互いが液体の状態で接触させる方法、又は、反応液の記録媒体に対する定着が終了した後、即ち、反応液の液滴が記録媒体内部に吸収された後インクと接触する方法などが挙げられる。本発明者らは、2液システムを検討していく過程で、少ない液量でもエリアファクターを満足させる点、更に記録物の定着性といった画像堅牢性という点で、反応液の定着が終了した後インクを付与する方法が最も優れているという結論に至った。該方法が画像堅牢性に優れている理由としては以下のように推測される。反応液とインクが記録媒体上で互いが液体状態で接する場合、インクと反応液との反応性が強い程、記録媒体表層部で色材が凝集する。その結果、発色性には非常に優れた画像が得られるが、画像堅牢性、特に定着性が十分でない場合が生じる。一方、反応液が記録媒体に対し定着した後にインクが付与される場合、反応液に含有される反応成分は、記録媒体内部にその多くが存在するため、色材の凝集物も記録媒体の表層部より深さ方向にやや沈み込んだ所に多くの凝集物を形成される。つまり、記録媒体が反応液により一度なじんだ後に、インクが付与されるため、インク付与後の液体の記録媒体内部への浸透速度が向上する。その結果、記録媒体上で2液が液体状態で存在するよりも少ない液量でも十分エリアファクターを満足させることが出来、更に画像堅牢性に優れていると考えられる。
尚、本発明で言う定着が終了した時点とは、前記ブリストウの式によって示されるVの値と反応液が実際に付与された付与量が同時になる値以降のt秒後の値以降を意味する。
(反応液の物性及び塗布量)
本発明における反応液の普通紙への浸透性はブリストウ法によって求められるKa値は1.3mL・m−2・msec−1/2以上であり更に塗布量は0.5g/m以上5g/m以下が好ましく、更に好ましくは、Ka値は3.0mL・m−2・msec−1/2より大きく塗布量は2.0g/mを超えて以下3.0g/m以下がより好ましいと言う結論に至った。尚本発明における塗布液の塗布量等は、反応液の物性及び塗布装置に使用されているローラーの回転速度及びローラーの記録媒体への接触圧等により適宜調整可能である。
<記録画像、記録方法及び記録装置>
(記録画像)
本発明のインクジェット記録画像は、本発明の水性インクを用いて、後述するようなインクジェット記録装置にて記録媒体上に形成される。本発明における記録媒体はインクジェット記録可能などのような媒体でも制限無く用いることができる。
(記録方法および記録装置)
本発明の分散性色材、および水性インクは、インクジェット吐出方式のヘッドにもちいられ、また、そのインクが収納されているインクタンクとしても、あるいは、その充填用のインクとしても有効である。特に、本発明は、インクジェット記録方式の中でもバブルジェット方式の記録ヘッド、記録ユニット、記録装置に於いて、優れた効果をもたらすものである。
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は所謂オンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、インクが保持されているシートや液路に対応して配置された電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を超える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰させて、結果的にこの駆動信号に一対一対応し、インク内の気泡を形成出来るので有効である。この気泡の成長,収縮により吐出用開口を介してインクを吐出させて、少なくとも一つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行なわれるので、特に応答性に優れたインクの吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。尚、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、更に優れた記録を行うことができる。
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体の組み合わせ構成(直線状液流路又は直角液流路)の他に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書、米国特許第4459600号明細書を用いた構成にも本発明は有効である。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通すると吐出孔を電気熱変換体の吐出部とする構成(特開昭59年第123670号公報等)に対しても、本発明は有効である。 更に、記録装置が記録できる最大記録媒体の幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドとしては、上述した明細書に開示されているような複数記録ヘッドの組み合わせによって、その長さを満たす構成や一体的に形成された一個の記録ヘッドとしての構成のいずれでも良いが、本発明は、上述した効果を一層有効に発揮することができる。
加えて、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッド、あるいは記録ヘッド自体に一体的に設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。具体的には、図7に、記録ヘッドにインク供給部材、例えば、チューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジの一例を示す図である。ここで40は、供給用インクを収納したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能にする。44は、廃インクを受容するインク吸収体である。インク収容部としてはインクとの接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。尚、インクカートリッジは、インク収容部とヘッド部を一体として備えた構成としても良い。
本発明のインクジェット記録装置は、上述のようにヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、図8に示すような、それらが一体になったものも好ましい形態である。図8において、70は記録ユニットであり、この中にはインクを収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中のインクが、複数オリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。インク吸収体の材料としては、ポリウレタンを用いることが好ましい。又、インク吸収体を用いず、インク収容部が内部にバネ等を仕込んだインク袋であるような構造でもよい。72は、カートリッジ内部を大気に連通させるための大気連通口である。又、本発明は、適用される記録装置の構成として設けられる、記録ヘッドに対しての回復手段、予備的な補助手段等を付加することは本発明の効果を一層安定できるので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャピング手段、クリーニング手段、加圧或は吸引手段、電気熱変換体或はこれとは別の加熱素子或はこれらの組み合わせによる予備加熱手段、記録とは別の吐出を行う予備吐出モードである。
<反応液塗布装置>
図4に本発明に用いられる反応液塗布装置の一例を示す。反応液塗布手段は、給紙カセット316内に設けられ、かつ反応液315を供給するための補充タンク322と、該タンク322に周面の一部を浸した状態で回転自在に支持された中間ローラー312と、該中間ローラーと平行となるようにして配置され、かつ中間ローラー312と接触し、同一方向へ回転する塗布ローラー306を有する。また、塗布ローラー306は、記録紙319を搬送するための中間ローラー312と周面が接触、かつ平行となるようにして配置している。したがって、記録紙319が搬送される際、中間ローラー312の回転にともなって中間ローラー312及び塗布ローラー306が回転する。その結果、供給ローラー313によって塗布ローラー306の周面に該反応液315が供給され、更に塗布ローラー316と中間ローラー312とによって挟持された記録紙319の印字面に満遍なく該反応液が供給ローラー306によって塗布される。
また、本画像形成装置では、補充タンク322内にフロート314が設けられている。このフロート314は、反応液315より比重の軽い物質であり、反応液の液面に浮かぶことにより透明部材である残量表示窓321を通して外から反応成分を含有した反応液の残量を目視で確認できる。
図5は残量表示部を正面から見た図である。残量表示部は、残量表示窓21の長手方向に沿って、残量の程度を表す表示が設けられている。図中、「Full」と表示された位置に反応液の液面またはフロート14が達している場合が満杯の状態である。一方、「Add」と表示された位置に反応液の液面またはフロート1314がある場合、反応液が残り少ないことを示している。したがって、反応液1315が徐々に減り、フロート1314がAddラインまで下がった時に反応液を補充すればよいことが一目瞭然でわかる。 反応液の補充方法としては、図6に示すように、給紙カセット316を画像形成装置本体から引き出した状態で、注入機具323の先端を切れ目の入ったゴム部材で構成される注入口320に差し込むことにより補充タンク322内に反応液を注入するものである。
このように、反応液を塗布された記録紙は、その後、主搬送ローラー307とそれに圧接しているピンチローラー308により所定量送られて記録部へと搬送され、記録ヘッド301からインクを付与される。以上の構成において給紙、印字された記録シート319は、排紙ローラー303とこれに圧接する拍車304とによって排出搬送され、排紙トレイ305上にスタックされる。
又、反応液をローラー等により付与する場合には、特に反応液の粘度の方がインクの粘度よりも高くする方が、少ない付与量でインクを効果的に不安定化でき、かつ記録物の定着性等にも良いために好ましい。より具体的に説明すると、反応液の粘度が高い方が、多価金属イオンがより記録媒体の上方に留まりやすくなるため、インクと効果的に反応しやすくなる。
<被記録媒体>
本発明の画像形成方法においては、被記録媒体としてはもちろん限定されるものではないが、普通紙や、紙、樹脂フィルムなど各種基材少なくとも一方の面にインクを受容するコーティング層を持つ被記録媒体等が好ましく使用される。コーティング層を持つ被記録媒体としては、少なくとも親水性ポリマー及び/又は無機多孔質体を含有した少なくとも一方の面にインクを受容するコーティング層を持つ被記録媒体が挙げられ、画像を形成した場合に、特に優れた効果が発揮される。インクを受容するコーティング層を有する被記録媒体としては、表面状態、コーティング層の厚みやインクを吸収する細孔の大きさ、インク吸収層を構成する材料の違い、更には基材の種類などにより多種多様なものが存在する。例えば、表面光沢が高い強光沢紙や光沢フィルム、表面光沢を加工などによって調整した微光沢紙や半光沢紙や光沢のないマット紙、コーティング層が少ない微量コート紙などが挙げられる。
本発明において、インクジェット記録に用いられる被記録媒体としては、目的に応じて種々選ばれ、例えば銀塩写真印画紙並の光沢感を有する画像を得るための光沢紙や、絵画や写真、更にはグラフィック画像などを好みの表現をするために、基材の風合い(画用紙調、キャンバス地調、和紙調など)を生かしたアート紙などが用いられている。
上記した被記録媒体のインク受容層を構成する親水性ポリマーとしては、従来公知の物質を使用することができる。例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウム、架橋型ポリアクリル酸、ポリビニルメチルエーテル、ポリスチレンスルホン酸、4級ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアミン、水性ウレタン樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性エポキシ化合物、水溶性ポリエステル等を挙げることができる。又、上記ポリマーの変性物、例えば、カチオン変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルピロリドン等のイオン変性物等も適宜使用することができる。更に、上記被記録媒体のインク受容層を構成するために用いられる無機多孔質体としては、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト及び多孔質ガラス等を挙げることができる。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、下記実施例によって限定されるものではない。尚、文中「部」、及び「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
(シアン顔料分散液1の調製)
顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)10部と、酸価200、重量平均分子量10,000のスチレン−アクリル酸共重合体の10%水酸化ナトリウム中和水溶液20部、更にイオン交換水70部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散させた後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去し、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、顔料濃度10%のシアン顔料分散液を得た。
(マゼンタ顔料分散液1の調製)
顔料(C.I.ピグメントレッド122)10部と、酸価200、重量平均分子量10,000のスチレン−アクリル酸共重合体の10%水酸化ナトリウム中和水溶液20部、更にイオン交換水70部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散させた後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去し、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、顔料濃度10%のマゼンタ顔料分散液を得た。
(イエロー顔料分散液1の調製)
顔料(C.I.ピグメントイエロー74)10部と、酸価200、重量平均分子量10,000のスチレン−アクリル酸共重合体の10%水酸化ナトリウム中和水溶液20部、更にイオン交換水70部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散させた後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去し、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、顔料濃度10%のイエロー顔料分散液を得た。
(反応液の調整)
下記の組成からなる反応液を調製した。具体的な調製方法としては、下記の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ0.2μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過した。
反応液の組成
硝酸カルシウム(4水和物):18%
トリメチロールプロパン:25%
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物(商品名:アセチレノールEH):1%
水:残量
[使用した水溶性有機溶剤の良溶媒及び貧溶媒の判定方法]
上記顔料分散体中の顔料、若しくは顔料と分散剤とに対する良溶媒と貧溶媒とを選択するために以下の実験を行った。先ず、上記顔料分散液の顔料濃度10%水溶液を調製し、これを用いて、以下の配合比にて良溶媒、貧溶媒の判定用分散液を作成した。
(良溶媒、貧溶媒の判定用分散液の配合比)
・各顔料分散液の顔料濃度10%水溶液:50部
・表1に記載の各水溶性有機溶剤:50部
(判定方法)
次に、上記のようにして調製した良溶媒、貧溶媒の判定用分散液10gを透明なガラス製フタつきサンプルビンに入れ、蓋をした後、充分攪拌し、これを60℃のオーブン内に48時間静置した。その後、60℃オーブンから取り出した分散液を測定用サンプルとして、当該液中の水不溶性色材の粒径を、濃厚系粒径アナライザー(商品名:FPAR−1000;大塚電子(株)社製)を用いて測定し、これを60℃、48時間加温保存後の良溶媒、貧溶媒の判定用分散液の原液粒径(希釈せずに測定した粒子径)とした。一方、レファレンスとして、良溶媒、貧溶媒の判定用分散液と顔料濃度が等しい顔料水分散体、つまり、水溶性有機溶剤の代わりに同量の水を加えた良溶媒、貧溶媒の判定比較用の顔料水分散液を作成し、当該水分散液は加温保存を行うことなしに上記と同様に濃厚系粒径アナライザーによって液中の水不溶性色材の粒径を測定した。そして、得られた判定用分散液の原液粒径を、レファレンスの水分散液の粒径と比較し、60℃、48時間の加温保存後の分散液の原液粒径が、レファレンスの水分散液の原液粒径よりも増大しているものを貧溶媒と判定し、60℃、48時間の加温保存後の分散液の原液粒径が、レファレンスの水分散液のそれと、同一若しくは小さくなったものを良溶媒と判定した。
[各水溶性有機溶剤についてのKa値測定方法]
先ず、各水溶性有機溶剤のKa値測定において、測定しやすいように、下記の組成を有する染料濃度0.5%の染料水溶液を作製した。
・水溶性染料C.I.ダイレクトブルー199:0.5部
・純水:99.5部
次いで、この0.5%染料水溶液を利用して以下の配合比で、測定対象の各水溶性有機溶剤を使用して、着色された水溶性有機溶剤の20%水溶液をそれぞれ作製した。
・上記0.5%染料水溶液:80部
・表1に記載の水溶性有機溶剤:20部
上記で調製した各水溶性有機溶剤の20%水溶液を測定用の試料として、東洋精機製作所製の動的浸透性試験装置S(商品名)を用い、ブリストウ法により水溶性有機溶剤20%水溶液のKa値をそれぞれ求めた。
<判定及び測定結果>
上記のようにして測定した、インクに使用し得る各水溶性有機溶剤について、顔料分散液1〜3に対して良溶媒であるか貧溶媒であるかを判別した結果と、各水溶性有機溶剤の20%水溶液におけるKa値の測定結果を表1に記した。
Figure 2006008915
表1中における、ポリエチレングリコール誘導体とは、以下に示す構造の誘導体であって、分子量が約1,000のものである。
Figure 2006008915
尚、測定時の記録媒体としてはキヤノン(株)社製、PPC用紙NSKを23℃40%の環境下に24時間放置した記録媒体を用いた。
<インクの調製>
上記で調べた水溶性有機溶剤と、調製した顔料分散液を用い、表2に記載した成分を混合し、十分に攪拌して溶解或いは分散した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(冨士フィルム製)にて加圧ろ過してインクを調整した。尚、アセチレングリコールEO付加物(商品名:アセチレノールE−100、川研ファインケミカル製)を1質量を基準として添加量を微調整して表面張力値を各インクで調整した。これらの粘度をE型粘度計(東京計器製 VISCONIC ED形)で測定し、表面張力を表面張力計CBVP−A3(協和界面科学製)を用い、測定温度;25.0±0.5℃で測定したところ、各インクにおいて粘度2.8±0.3(cP)、表面張力32.5±0.5(mN/m)の範囲内に調製された。
更に、各インクのKa値を東洋精機製作所製の動的浸透性試験装置S(商品名)を用い、ブリストウ法により測定し、結果は表2に示した。
Figure 2006008915
<実施例1〜3及び比較例1〜3>
上記表2のインクを用い、表3に記載したインクを組み合わせたインクセットとした。
Figure 2006008915
<印字評価>
上記した実施例1〜3、比較例1〜3の各インクセットを用いて印字評価を行った。実施例1〜3、比較例1〜3の各インクセットについては記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置PIXUS950i(キヤノン製)を改造して用いて印字した。
印字は4パス双方向印字に制御して行い、各インクが100%dutyの打ち込み量となるように2次色画像形成を行い、下記の被記録媒体A〜Eにそれぞれに2cm×2cmのべた部を含む印字を行った。
(被記録媒体)
A:キヤノン社製、高白色用紙SW−101
B:キヤノン社製、MP−101
C:キヤノン社製、PR−101
D:ハーネミューレ社製、Photo Rag
E:PCM竹尾社製、iフォトかきた
上記のように印字された画像の2次色の均一画像性を目視で行い、下記の基準で評価した。得られた評価結果を表4に示した。
◎:全ての紙で2次色の均一な色合いと品位が優れている。
○:全ての紙で十分な2次色の均一な色合いと品位が得られている。
×:一部の紙で十分な2次色の均一な色合いや品位が得られない。
表3に示したように、本発明による実施例は2次色均一性において良好であった。 <実施例4、及び比較例4>
次に下記表3のインクを用い、表4に記載した貧溶媒量を調節したマゼンタインク(M−6、M−7、M−1、M−8、M−9)とシアンインクC1とを表5に示したように組み合わせたインクセットとし、実施例1と同様な評価を行ったところ、貧溶媒の比が本発明の範囲内にあるものは2次色均一性において良好であった。
Figure 2006008915
Figure 2006008915
<実施例5、及び比較例5>
次に下記表6のインクを用い、表7に記載したインクのKa値を調節したイエローインク(Y−3、Y−4、Y−1、Y−5、Y−6)とマゼンタインクM1とを表6に示したように組み合わせたインクセットとし、実施例1と同様な評価を行ったところ、インクのKa値の比が本発明の範囲内にあるものは2次色均一性においてさらに良好であった。このときY−3、Y−4、Y−5、Y−6のKa値はアセチレングリコールEO付加物添加の微調整及びイエロー顔料分散液を調整する際に用いた分散樹脂(スチレン−アクリル酸共重合体)の添加に微量調整によって行った。
Figure 2006008915
Figure 2006008915
<実施例6〜実施例8>
上記表2のインクを用い、表8に記載したインクセットとし、実施例1と同様な評価を行ったところ、実施例6、実施例7、実施例8ともに2次色の均一性は○の判定であり、且つ、実施例7は2次色の鮮鋭性の点で良化していた。
Figure 2006008915
<反応液の付与>
<実施例9〜11>
さらに、実施例1〜3のインクセットを用いて、A及びEの記録媒体に印字をする直前に上述した反応液を記録媒体上に不図示の塗布装置中の塗布ローラーにより付与(塗布量:2.4g/m2)した。その際、2.4g/m2になるように、ローラーの速度及びローラーの被記録媒体への接触圧を調整した。
反応液を付与し、直後に実施例1と同様の方法で印字評価をし、実施例1〜3全てと比較して、色の濃さを目視したところ、印字濃度がさらに向上した。
本発明にかかる2色以上の水性インクを用いて被記録媒体に多次色の画像形成をした際の様子を模式的に説明するための説明図である。 本発明にかかる2色以上の水性インクを用いて被記録媒体に多次色の画像形成をした際の様子を模式的に説明するための説明図である。 本発明にかかるインクの滴が被記録媒体表面に着弾したときの様子を模式的に説明するための説明図である。 本発明で用いる反応液塗布装置を内蔵するインクジェット記録装置の概要を示す図である。 インクジェット記録装置に設けられた反応液残量表示部の正断面図である。 インクジェット記録装置への反応液補充状態を示す概略側断面図である。 インクジェット用カートリッジの一例を示す図である。 インクジェット用記録ユニットの一例を示す図である。
符号の説明
100:被記録媒体
101、105:インク滴
102、106:水溶性有機溶剤
103、107:顔料
104、108:貧溶媒
109、110:定着後のインク1
111、112:定着後のインク2
200:被記録媒体
201:インク滴
202:ドット外周
203:ドット中心部
204:水不溶性色材
205:ドット
206:水溶性溶剤
207:貧溶媒
301:記録ヘッド
302:キャリッジ
303:排紙ローラー
304:拍車
305:排紙トレイ
306:塗布ローラー
307:主搬送ローラー
308:ピンチローラー
309:ガイド軸
310:給紙ローラー
311:プラテン
312:中間ローラー
313:供給ローラー
314:フロート
315:反応液
316:給紙カセット
317:給紙トレイ
318:スプリング
319:被記録媒体
320:注入口
321:残量表示窓
322:補充タンク
323:注入機具
327:ペーパーガイド
40:インク袋
42:栓
44:インク吸収体
45:インクカートリッジ
70:記録ユニット
71:ヘッド部
72:大気連通口

Claims (16)

  1. 水、複数の水溶性有機溶剤と、水不溶性色材とを含有する異なる色の水性インクを組み合わせてなるインクセットであって、該異なる色の水性インクの少なくとも2つ以上の組み合わせにおいて、各水性インクに、該複数の水性有機溶剤として水不溶性色材に対する良溶媒と、上記水不溶性色材に対する貧溶媒を含有し、且つ、各インクの中に含有する該貧溶媒の含有割合が実質的に同等の範囲内にあることを特徴とするインクセット。
  2. ブリストウ法によって求められる、該異なる色の水性インクの各々のKa値が実質的に同等の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のインクセット。
  3. 前記貧溶媒と良溶媒を含む水性インクにおける良溶媒の含有割合(質量%)をA、貧溶媒の含有割合(質量%)をBとした場合に、A:Bが10:5以上10:30以下の範囲内にありブリストウ法によって求められる、上記複数の水溶性有機溶媒の各々のKa値を比較したときに、この中で最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が貧溶媒であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクセット。
  4. 前記水性インクがインクジェット用である請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクセット。
  5. 請求項4に記載されるインクセットを構成するインクジェット用の水性インクをインクジェット方法で吐出する工程を少なくとも有することを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記インクジェット方法が、熱エネルギーをインクに与えて気泡を発生させることにより液滴を吐出させる方式のインクジェット記録方法である請求項5に記載のインクジェット記録方法。
  7. 前記インクジェット方法が、インクに力学的エネルギーを加えてインクを吐出させる方式のインクジェット記録方法である請求項5に記載のインクジェット記録方法。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の水性インクセットを構成する水性インクを個別に収容していることを特徴とするインクカートリッジ。
  9. 請求項6に記載の水性インクセットを構成する水性インクを個別に収容しているインク収容部と、該インクを吐出させるためのインクジェットヘッドとを具備していることを特徴とする記録ユニット。
  10. 請求項6に記載の水性インクセットを構成する水性インクを個別に収容しているインク収容部と、該インクを吐出させるためのインクジェットヘッドとを具備していることを特徴とするインクジェット記録装置。
  11. 複数の異なる色の水性インクを組み合わせて被記録媒体で多次色を形成する工程を有する画像形成方法において、
    前記複数の異なる色の水性インクが、少なくとも水、複数の水溶性有機溶剤と、水不溶性色材とを含有し、かつ、該複数の水性有機溶剤が水不溶性色材に対する良溶媒と、上記水不溶性色材に対する貧溶媒からなり、さらに、これらの水性インクの貧溶媒の含有割合が実質的に同等の範囲内にあることを特徴とする画像形成方法。
  12. ブリストウ法によって求められる、前記水性インクの各々のKa値が実質的に同等の範囲内にあることを特徴とする請求項11に記載の画像形成方法。
  13. 前記良溶媒の含有割合(質量%)をA、貧溶媒の含有割合(質量%)をBとした場合に、A:Bが10:5以上10:30以下の範囲内にり、且つ、ブリストウ法によって求められる、上記複数の水溶性有機溶媒の各々のKa値を比較したときに、この中で最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が貧溶媒であることを特徴とする請求項11または12に記載の画像形成方法。
  14. 水不溶性色材を含む水性インクを付与する工程と、該インクとを接触することによって該インク中の水不溶性色材の分散状態を不安定化させる反応液を付与する工程を有することを特徴とする請求項11〜13いずれか1項に記載の画像形成方法。
  15. 少なくとも水、水不溶性色材、該水不溶性色材に対する良溶媒と、上記水不溶性色材に対する貧溶媒を含有する異なる色の第1の水性インクと第2の水性インクを用いて画像形成を行う記録装置に用いられる第1の水性インクであって、前記第1の水性インクの貧溶媒の含有割合が前記第2の水性インクと実質的に同等の範囲内にあることを特徴とするインク。
  16. 水と、水不溶性色材と、該水不溶性色材に対する良溶媒と、上記水不溶性色材に対する貧溶媒と、を含有する異なる色の第1の水性インクと第2の水性インクを付与する工程と、該水性インクとを接触することによって該水性インク中の水不溶性色材の分散状態を不安定化させる反応液を付与する工程により画像形成を行う記録装置に用いられる第1のインクであって、前記第1の水性インクの貧溶媒の含有割合を前記第2の水性インクが実質的に同等の範囲内にあることを特徴とするインク。
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JP2008007773A (ja) * 2006-06-02 2008-01-17 Fujifilm Corp 有機ナノ粒子及びその分散組成物、並びにそれらを含有する着色感光性樹脂組成物、インクジェットインク、感光性樹脂転写材料、それらを用いたカラーフィルタ、液晶表示装置、及びccdデバイス
JP2010073445A (ja) * 2008-09-17 2010-04-02 Nippon Steel Corp 電気導体及びその製造方法並びに集電用インターコネクター
KR101376637B1 (ko) * 2006-06-02 2014-03-20 후지필름 가부시키가이샤 유기나노입자 및 그 분산조성물, 그것들을 함유하는 착색감광성 수지 조성물 및 감광성 수지 전사재료, 그리고 이를사용한 칼라필터, 액정표시장치, 및 ccd 디바이스
JP2015014006A (ja) * 2014-09-19 2015-01-22 セイコーエプソン株式会社 インクセットおよびそのインクセットを用いたインクジェット記録方法
US9120932B2 (en) 2010-09-28 2015-09-01 Seiko Epson Corporation Ink set and ink jet recording method using the ink set

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