JP5132038B2 - インクセット、画像形成方法及び画像形成装置 - Google Patents
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(1)インク中に分散状態で存在している顔料を、記録媒体表面で強制的に凝集させる場合には、インク滴の体積に比較して、記録媒体表面を色材で被覆することのできる面積(いわゆる、エリアファクター)が十分でない場合がある。従って、同じ画像濃度を得るために必要となるインクの付与量が多くなるという課題。
(2)インクの浸透性を高める場合には、当該インクは記録媒体の表面ばかりでなく、記録媒体の厚み方向へも浸透してしまい、記録媒体の表面近傍に高濃度で色材を分布させることができず、高画像濃度を達成できないという課題。
前記良溶媒がグリセリンを含み、且つ、前記貧溶媒がポリエチレングリコール600を含み、
前記シアンインクに含まれる、良溶媒の含有量(質量%)をA1、貧溶媒の含有量(質量%)をB1としたときに、B1/A1が0.5以上3.0以下であり、且つ、ブリストウ法によって求められる、前記複数の水溶性有機溶剤の各々のKa値のうち最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が前記貧溶媒であり、
前記マゼンタインクに含まれる、良溶媒の含有量(質量%)をA2、貧溶媒の含有量(質量%)をB2としたときに、B2/A2が0.5以上3.0以下であり、且つ、ブリストウ法によって求められる、前記複数の水溶性有機溶剤の各々のKa値のうち最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が前記貧溶媒であり、
前記イエローインクに含まれる、良溶媒の含有量(質量%)をA3、貧溶媒の含有量(質量%)をB3としたときに、B3/A3が0.5以上3.0以下であり、且つ、ブリストウ法によって求められる、前記複数の水溶性有機溶剤の各々のKa値のうち最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が前記貧溶媒であり、
前記ブラックインクに含まれる、良溶媒の含有量(質量%)をA4、貧溶媒の含有量(質量%)をB4としたときに、B4/A4が0.5以上3.0以下であり、且つ、ブリストウ法によって求められる、前記複数の水溶性有機溶剤の各々のKa値のうち、最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が前記貧溶媒であることを特徴とする。
又、本発明にかかる画像形成方法は、上記のインクセット構成する、ブラックインクによって形成される画像と、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクから選ばれる少なくとも1色のカラーインクによって形成される画像とが隣接してなる画像を形成する画像形成方法であって、前記ブラックインクを付与する走査を行って画像を形成した後、該画像に隣接する領域に前記少なくとも1色のカラーインクを付与する走査を行って画像を形成することを特徴とする。
又、本発明にかかる画像形成装置は、上記のインクセットを構成する、ブラックインクによって形成される画像と、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクから選ばれる少なくとも1色のカラーインクによって形成される画像とが隣接してなる画像を形成するための画像形成装置であって、該画像形成装置は、前記ブラックインクを吐出させるための吐出口列と、前記少なくとも1色のカラーインクを吐出させるための吐出口列を備えてなる記録ヘッドを有することを特徴とする。
ここで、本発明における画像形成のメカニズムについて例を挙げて説明する。本発明にかかる水性インクが、記録媒体、特に普通紙上に印字された場合には、以下に述べるような理由によって、非常に優れた印字濃度及び印字品位をもたらすことが可能になると考えられる。
上記したような想定メカニズムの下で、本発明に用いる良溶媒及び貧溶媒は、水不溶性色材の分散状態を良好に維持できるか否か、即ち、水不溶性色材、又は、水不溶性色材及びその分散に寄与する物質(後述の分散剤や界面活性剤)との関係において決定される。従って、本発明にかかる水性インクの調製にあたって、良溶媒と貧溶媒とを選択する場合には、使用する水不溶性色材の分散状態の安定度を観察し、その結果から求めることが好ましい。そして本発明者らは、本発明の効果をもたらす良溶媒と貧溶媒との判定の基準を、本発明の効果との関連の下で種々検討した結果、下記のような判定方法が有効であることを見出した。
・貧溶媒:上記において、粒径(A)が粒径(B)よりも大きい場合、当該判定対象の水溶性有機溶剤を貧溶媒として定義した。
・良溶媒:粒径(A)と粒径(B)と同じか、或いは粒径(A)が粒径(B)よりも減少した場合、当該判定対象の水溶性有機溶剤を良溶媒として定義した。
本発明においては、水溶性有機溶剤を上記した特定の構成とする以外に、ブリストウ法によって求められる、複数の水溶性有機溶剤の各々のKa値のうち最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が貧溶媒である場合、上記で述べた画像形成のメカニズムを発現することができる。
本発明にかかる水性インクは、記録媒体、特に普通紙に対して水性インクを定着させた際に、従来の水性インクとは異なる下記に示す挙動を示し、該挙動によって、少ないインク液滴量であっても十分に大きなエリアファクターを有し、且つ画像濃度の高い画像の形成が達成され、更に、普通紙に互いに異なる色の領域が隣接している画像記録を行った場合におけるブリードの抑制効果が得られる。
尚、上記の条件を満たしたインクセットを用いて画像を形成させ、上記と同様なモニターテストを行った結果、ほぼすべての被検者が色バランスに優れていると感じるという結果を得ることができた。
次に、本発明者らは、水不溶性色材を含む水性インクと、該水性インクと接触することによって該水性インク中の色材の分散状態を不安定化させる反応液用いて画像を形成するシステム(以後、2液システムと称す)についても検討を行った。
本発明にかかる水性インクは、インク成分中の水溶性有機溶剤を、使用する水不溶性色材との関連において、上記で説明した構成とすることを必須とするが、それ以外は、従来の水性インクと同様の構成とすればよい。下記に、本発明の水性インクを構成する各成分について説明する。
本発明にかかる水性インクを構成する水性媒体について説明する。前記水性媒体は、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である。本発明においては、先に述べた方法で、水溶性有機溶剤を、当該顔料に対する良溶媒と貧溶媒とに判別する。そして、かかる判定結果を踏まえて、水性インクにおいて少なくとも良溶媒と貧溶媒とが混在し、且つ、各水溶性有機溶剤の含有量が本発明で規定する範囲内となるように、更に、ブリストウ法によって求められる、複数の水溶性有機溶剤のKa値のうち、最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が貧溶媒となるように水溶性有機溶剤を選択して適宜に配合し、インクを調製することが必要となる。又、本発明においては、水性インク全質量に対する、良溶媒の含有量をA(質量%)、貧溶媒の含有量をB(質量%)としたときに、B/Aが0.5以上3.0以下となるように水溶性有機溶剤の含有量を調整することが必要である。
・シアンインク
0.6≦(B1/A1)/(B/A)<1.8 (I)
・マゼンタインク
0.6≦(B2/A2)/(B/A)<1.8 (II)
・イエローインク
0.6≦(B3/A3)/(B/A)<1.8 (III)
・ブラックインク
0.6≦(B4/A4)/(B/A)<1.8 (IV)
尚、上記式(I)〜式(IV)におけるB/Aは、インクセットが具備する当該水性インク以外の任意の水性インクに含まれる貧溶媒と良溶媒の質量比B/Aのことである。すなわち、インクセットが具備する当該水性インク以外の何れに水性インクに対しても満たすことが好ましい。上記式(I)〜(IV)のそれぞれにおいて、最左辺の値0.6は、0.7とすることが特に好ましい。上記式(I)〜(IV)のそれぞれにおいて、最右辺の値1.8は、1.5とすることが特に好ましい。
本発明にかかる水性インクを構成する水不溶性色材について説明する。本発明の水性インクを構成する水不溶性色材は顔料であり、その分散方式にかかわらず、何れのものも用いることができる。顔料は、具体的には、例えば、分散剤や界面活性剤を用いる、いわゆる樹脂分散タイプの顔料(樹脂分散型顔料)や、界面活性剤分散タイプの顔料であってもよいし、顔料自体の分散性を高めて、分散剤等を用いることなく分散可能とした、マイクロカプセル型顔料や、顔料粒子の表面に親水性基を導入した、いわゆる自己分散タイプの顔料(自己分散型顔料)や、更には、顔料粒子の表面に高分子を含む有機基が化学的に結合している改質された顔料(ポリマー結合型自己分散顔料)等を用いることができる。勿論、これらの分散方法の異なる顔料を組み合わせて使用することも可能である。
本発明にかかる水性インクにおいて使用することのできる顔料は特に限定されず、下記に挙げるようなものを何れも使用することができる。
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185等
C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71等
C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272等
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50等
C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64等
C.I.ピグメントグリーン7、36等
C.I.ピグメントブラウン23、25、26等
(樹脂分散型顔料)
本発明にかかる水性インクに用いることのできる水不溶性色材は、上記で述べたように、分散剤を用いる樹脂分散型顔料を使用することができる。この場合には、上記に列挙したような疎水性の顔料を分散させるための界面活性剤、樹脂分散剤等の化合物が必要となる。
本発明にかかる水性インクに用いることのできる水不溶性色材は、上記で述べたように、水不溶性色材を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化してなるマイクロカプセル型顔料を使用することができる。水不溶性色材を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化する方法は、化学的製法、物理的製法、物理化学的方法、機械的製法等が挙げられる。具体的には、界面重合法、in−situ重合法、液中硬化被膜法、コアセルベーション(相分離)法、液中乾燥法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法、酸析法、転相乳化法等が挙げられる。
本発明にかかる水性インクに用いることのできる水不溶性色材は、上記で述べたように、顔料自体の分散性を高め、分散剤等を用いることなく分散可能とした自己分散型顔料を使用することができる。自己分散型顔料は、親水性基が顔料粒子表面に直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合しているものが好ましい。例えば、顔料粒子表面に導入された親水性基が、−COOM1、−SO3M1及び−PO3H(M1)2(式中のM1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。)からなる群から選ばれるもの等を好適に用いることができる。更に、上記他の原子団が、炭素原子数1〜12のアルキレン基、置換若しくは未置換のフェニレン基又は置換若しくは未置換のナフチレン基であるもの等を好適に用いることができる。その他にも、カーボンブラックを次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法、水中オゾン処理でカーボンブラックを酸化する方法、オゾン処理を施した後に酸化剤により湿式酸化し、カーボンブラック表面を改質する方法等によって得られる、表面酸化処理タイプの自己分散型顔料も好適に用いることができる。
本発明にかかる水性インクに用いることのできる水不溶性色材は、上記で述べたように、顔料自体の分散性を高め、分散剤等を用いることなく分散可能としたポリマー結合型自己分散型顔料を使用することができる。前記ポリマー結合型自己分散顔料は、顔料の表面に、直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合されている官能基と、イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体と、の反応物を含むものを用いることが好ましい。これは、表面を改質する場合に用いる共重合体の形成材料であるイオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合比率を適宜に変化させることができ、これによって改質された顔料の親水性を適宜に調整できるためである。又、使用するイオン性モノマー及び疎水性モノマーの種類や、両者の組み合わせを適宜に変化させることができるため、顔料表面に様々な特性を付与することもできる。
ポリマー結合型自己分散顔料の官能基は、顔料表面に、直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合している。前記官能基は、後述する共重合体との反応によって有機基を構成するためのものであり、官能基の種類は、前記共重合体が担持する官能基との関連において選択される。官能基と共重合体との反応は、当該顔料が水性媒体に分散されるものであることを考慮すると、加水分解等を生じることのない結合、例えばアミド結合等を生じる反応とすることが好ましい。このためには、官能基をアミノ基とし、共重合体にカルボキシル基を担持させることで、共重合体を顔料粒子表面にアミド結合を介して導入することができる。又は、官能基をカルボキシル基とし、共重合体にアミノ基を担持させることでも、前記と同様に、共重合体を顔料粒子表面にアミド結合を介して導入することができる。
イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体は、例えば、アニオン性を有するアニオン性の共重合体、或いはカチオン性を有するカチオン性の共重合体が好ましい。
・第1工程;カーボンブラックにジアゾニウム反応で、アミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基(APSES)を付加する工程。
・第2工程;APSES処理をしたカーボンブラックに、ポリエチレンイミンやペンタエチレンヘキサミン(PEHA)を付加する工程。
・第3工程;疎水性モノマーとカルボキシル基を有するイオン性モノマーとの共重合体をつける工程。
・第1工程;カーボンブラックにジアゾニウム反応でアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基(APSES)を付加する工程。
・第2工程;疎水性モノマーとカチオン性モノマーとの共重合体をつける工程。
本発明にかかる水性インクは、保湿性維持のために、上記した成分の他に、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の保湿性固形分をインク成分として用いてもよい。尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン等の、保湿性固形分の水性インクにおける含有量は、一般には、インク全質量に対して0.1質量%〜20.0質量%、更には3.0質量%〜10.0質量%の範囲が好ましい。
上記で説明したような構成成分からなる、本発明で使用する水性インクは、インクジェット記録ヘッドから良好に吐出できる特性を有することが好ましい。インクジェット記録ヘッドからの吐出性という観点からは、インクの特性が、例えば、その粘度を1〜15mPa・s、表面張力を25mN/m(dyne/cm)以上、更には、粘度を1〜5mPa・s、表面張力を25〜50mN/m(dyne/cm)とすることが好ましい。
本発明で使用する反応液は、インク中の色材の分散状態を不安定化若しくは凝集させる反応性成分を含有する。前記反応性成分は、水性媒体中で水不溶性色材が親水性基の作用によって分散又は溶解されているインクと、前記反応液が記録媒体上で接触した際に、該水不溶性色材の分散安定性を低下させ、水不溶性色材を凝集させる。尚、本発明における、インク中の色材の分散状態が不安定化されることとは、インクと反応液を混合した際に、凝集やゲル化といった状態が引き起こされることを指す。
多価金属イオンは、具体的には、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Sr2+及びBa2+等の二価の金属イオンや、Al3+、Fe3+、Cr3+及びY3+等の三価の金属イオンが挙げられる。前記の多価金属イオンを反応液中に含有させる方法には、反応液中に多価金属の塩を添加する方法が挙げられる。前記塩とは、上記に挙げた多価金属イオンと、これらのイオンに結合する陰イオンで構成される金属塩のことであるが、水に可溶であることを要する。塩を形成するための好ましい陰イオンは、例えば、Cl-、NO3 -、I-、Br-、ClO3 -、SO4 2-、CO3 2-、CH3COO-及びHCOO-等が挙げられる。勿論、本発明はこれに限定されるものではない。本発明においては、水性インクと反応液の反応性や着色性、更には、反応液の取り扱いの容易さ等の点から、多価金属イオンは、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Al3+及びY3+が好ましく、更には、Ca2+が特に好ましい。又、陰イオンは、溶解性等の点から、NO3 -が特に好ましい。
反応液を記録媒体に付与する方法には、ローラーコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法等の塗布方法が挙げられる。又、インクと同様にインクジェット記録方法を用い、インクが付着する画像形成領域及び画像形成領域の近傍のみに反応液を選択的に付着せしめる付与方法も可能である。本発明者らが、反応液の記録媒体への付与方法を検討した結果、ローラーコーティング法が最も優れているという見解に至った。これは、反応液の付与量が少ない場合においても、記録媒体表層部近傍における反応性成分の分布状態が他の手段よりも均一であり、更に、インク付与後のベタ部のムラ、更には裏抜け性等の画質が優れているためである。
反応液の記録媒体への浸透性は、ブリストウ法によって求められるKa値で、1.3mL・m-2・msec-1/2以上6.0mL・m-2・msec-1/2以下であることが好ましく、更には、3.0mL・m-2・msec-1/2より大きく6.0mL・m-2・msec-1/2以下であることが好ましい。又、反応液の塗布量は、0.5g/m2以上5g/m2以下であることが好ましく、更には、2.0g/m2より大きく3.0g/m2以下であることが好ましい。
本発明の水性インクは、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、及びブラックインクの4種の水性インクを組み合わせたインクセットとすることが好適である。
図1は、インクジェット記録装置の一例を部分断面図として示すものである。このインクジェット記録装置は、シリアル型のインクジェット記録方式を採用するもので、記録ヘッド1と、記録媒体(以下、記録紙ともいう)19を給紙するための給紙トレイ17と、反応液を塗布するための手段とが一体形成された給紙カセット16と、記録紙の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)へ記録ヘッドを往復移動させるための駆動手段と、これらの構成要素の駆動を制御する制御手段とを有する。
以下、本発明にかかる画像形成方法について具体例を挙げて説明する。本発明にかかる画像形成方法は、ブラックインクと少なくとも1色の水性カラーインクとを用いて普通紙等の記録媒体にインクジェット記録方式で記録を行う画像形成方法であるが、ブラックインクとして先に述べた本発明の水性インクを用い、該ブラックインクによって形成される画像と、前記したようなカラーインクにより形成される画像とが隣接してなる画像を形成する際に、ブラックインクを付与する走査を行って画像を形成した後、該画像が形成された領域にカラーインクを付与する走査を行うことを特徴とする。以下に具体的な手法について説明する。
(i)前記インクセットが有する、水性インク中の水不溶性色材の分散状態を不安定化させる反応液を、記録媒体上に付与して定着させる工程と、
(ii)該反応液が定着された記録媒体上に、前記インクセットが有する水性インクを付与する工程と、
を有する形態とする。
本発明のインクセットを用いて画像を形成する際に用いる記録媒体は、インクを付与して記録を行う記録媒体であれば何れのものでも使用することができる。特に、本発明においては、普通紙や、少なくとも一方の面に水性インクを受容するコーティング層を持つ記録媒体等が好ましく使用される。勿論、本発明はこれに限られるものではない。
(ブラック顔料分散液の調製)
比表面積が210m2/gでDBP吸油量が74ml/100gであるカーボンブラック10部、酸価が200で重量平均分子量が10,000であるスチレン−アクリル酸共重合体を10質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和したものの水溶液20部、イオン交換水70部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散させた。得られた分散液を遠心分離処理することで粗大粒子を除去した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過して、樹脂分散型ブラック顔料を調製した。更に、上記で得られた樹脂分散型ブラック顔料に水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、ブラック顔料分散液を得た。
顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)10部、酸価が200で重量平均分子量が10,000であるスチレン−アクリル酸共重合体を10質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和したものの水溶液20部、イオン交換水70部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散させた。得られた分散液を遠心分離処理することで粗大粒子を除去した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過して、樹脂分散型シアン顔料を調製した。更に、上記で得られた樹脂分散型シアン顔料に水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、シアン顔料分散液を得た。
顔料(C.I.ピグメントレッド122)10部、酸価が200で重量平均分子量が10,000であるスチレン−アクリル酸共重合体を10質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和したものの水溶液20部、イオン交換水70部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散させた。得られた分散液を遠心分離処理することで粗大粒子を除去した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過して、樹脂分散型マゼンタ顔料を調製した。更に、上記で得られた樹脂分散型マゼンタ顔料に水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、マゼンタ顔料分散液を得た。
顔料(C.I.ピグメントイエロー74)10部、酸価が200で重量平均分子量が10,000であるスチレン−アクリル酸共重合体を10質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和したものの水溶液20部、イオン交換水70部を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散させた。得られた分散液を遠心分離処理することで粗大粒子を除去した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過して、樹脂分散型イエロー顔料を調製した。更に、上記で得られた樹脂分散型イエロー顔料に水を加えて顔料濃度が10質量%となるように分散させ、分散液を調製した。上記の方法により、イエロー顔料分散液を得た。
下記に示した各成分を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ0.2μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過を行い、反応液を調製した。
・硝酸マグネシウム(6水和物) 15.0質量%
・トリメチロールプロパン 25.0質量%
・アセチレノールEH 1.0質量%
(アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物;川研ファインケミカル製)
・純水 残量
[水溶性有機溶剤の良溶媒・貧溶媒の判定]
上記顔料分散液中の顔料に対して、良溶媒又は貧溶媒として作用する水溶性有機溶剤を選択するために以下の実験を行った。まず、上記各色の顔料分散液の固形分濃度10質量%水溶液を調製し、これと各水溶性有機溶剤を用いて、以下の配合比にて良溶媒・貧溶媒の判定用分散液A、判定用水分散液Bを調製した。
・各色の顔料分散液の固形分濃度10質量%水溶液 50部
・表1に記載の各水溶性有機溶剤 50部
(判定用水分散液B)
・各色の顔料分散液の固形分濃度10質量%水溶液 50部
・純水 50部
(判定方法)
次に、上記のようにして調製した良溶媒・貧溶媒の判定用分散液A10gを、透明なガラス製フタつきサンプルビンに入れ、蓋をした後、充分撹拌し、これを60℃のオーブン内に48時間静置した。その後、オーブンから取り出した分散液を測定用サンプルとして、当該分散液中の顔料の平均粒径を、濃厚系粒径アナライザー(商品名:FPAR−1000;大塚電子製)を用いて測定した。60℃、48時間保存後の判定用分散液A中の顔料の平均粒径(希釈せずに測定した顔料の平均粒径)とした。一方、判定用水分散液Bは加温保存を行わずに、上記と同様に、当該分散液中の顔料の平均粒径を、濃厚系粒径アナライザーを用いて測定した。そして、判定用分散液A及び判定用水分散液B中の顔料の平均粒径が、判定用分散液Aの方が判定用水分散液Bより大きくなる水溶性有機溶剤を貧溶媒と判定し、判定用分散液Aの平均粒径が、判定用水分散液Bと同等又はそれ以下になる水溶性有機溶剤を良溶媒と判定した。
まず、各水溶性有機溶剤のKa値測定を行うにあたり、下記に示す組成を有する染料濃度0.5質量%の染料水溶液を調製した。かかる染料水溶液を使用するのは、無色透明の試料を着色することにより可視化して、Ka値の測定を容易にするためである。
・水溶性染料C.I.ダイレクトブルー199 0.5部
・純水 99.5部
次いで、この0.5質量%染料水溶液と、測定対象の各水溶性有機溶剤により、下記に示す組成を有する着色された水溶性有機溶剤の20%水溶液をそれぞれ調製した。
・上記0.5質量%染料水溶液 80部
・表1に記載の水溶性有機溶剤 20部
上記で調製した各水溶性有機溶剤の20質量%水溶液を測定用の試料として、動的浸透性試験装置(商品名:動的浸透性試験装置S;東洋精機製作所製)を用い、ブリストウ法により各水溶性有機溶剤の20質量%水溶液のKa値をそれぞれ求めた。
上記のようにして測定した、インクに使用しうる水溶性有機溶剤について、ブラック顔料分散液、シアン顔料分散液、マゼンタ顔料分散液、イエロー顔料分散液に対して良溶媒であるか貧溶媒であるかを判別した結果と、各水溶性有機溶剤の20質量%水溶液におけるKa値の測定結果を表1に示した。尚、表中の、○、×はそれぞれ良溶媒、貧溶媒を表す。
(実施例1〜5)
下記表2〜表6に示した各成分を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過を行い、実施例1〜5の各水性インクを調製した。尚、表中のB/Aは、各水性インクにおける良溶媒の含有量(質量%)をA、貧溶媒の含有量(質量%)をBとしたときの、B/Aの値である。
下記表7〜表10に示した各成分を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過を行い、比較例1〜3及び参考例1の各水性インクを調製した。尚、表中のB/Aは、各水性インクにおける良溶媒の含有量(質量%)をA、貧溶媒の含有量(質量%)をBとしたときの、B/Aの値である。
上記で調製した実施例1〜5、比較例1〜3及び参考例1の各インクを用いて、記録物を作製した。尚、記録物の作製には、記録信号に応じて熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させる、オンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置PIXUS850i(キヤノン製)の改造機を用いた。具体的には、下記の記録媒体に、2cm×2cmのベタ画像を形成して記録物を作製した。得られた記録物を1日放置した後、画像濃度を測定した。画像濃度の測定には、反射濃度計(商品名:マクベスRD−918;マクベス製)を用いた。画像濃度の評価基準は下記の通りである。評価結果を表11に示す。
・用紙の種類:普通紙
・印刷品質:標準
・色調整:自動
記録媒体は、下記の普通紙を用いた。
・PPC用紙PB Paper(キヤノン製)
・PPC用紙SC250C(キヤノン製)
・PPC用紙4200(ゼロックス製)
・高白色用紙SW−101(キヤノン製)
・PPC用紙4024(ゼロックス製)
(評価基準)
A:すべての紙で十分な画像濃度が得られる、或いは、一部の紙で十分な画像濃度が得られないが実際の使用上問題ない。
上記で調製した実施例1〜5、比較例1〜3及び参考例1の各インクをそれぞれショット瓶に入れて密栓し、60℃のオーブンで2週間保存した後にインクの状態を観察した。保存安定性の評価基準は下記の通りである。評価結果を表11に示す。
A:色材がインク中で均一に、安定して分散している。
上記で調製した実施例1〜5、比較例1〜3及び参考例1の各インクを用いて、記録物を作製した。尚、記録物の作製には、前記評価1と同様のインクジェット記録装置PIXUS850i(キヤノン製)の改造機を用いた。具体的には、記録媒体(PPC用紙PB Paper;キヤノン製)に、2cm×2cmで、階調を変化させてベタ画像を形成した記録物を作製した。得られた記録物を1日放置した後、色バランスを目視で確認した。色バランスの評価基準は下記の通りである。評価結果を表11に示す。
A:色バランスが良好である。
実施例1及び参考例1に記載の各水性インク及び反応液を用いて、記録物を作製した。尚、記録物の作製には、記録信号に応じて熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させる、オンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置BJS600(キヤノン製)を、図1で示す、反応液を塗布ローラーにより記録媒体に付与する機構を有するように改造したものを用いた。具体的には、反応液を下記の記録媒体に付与し、反応液が記録媒体に定着した後に、各インクを用いて、2cm×2cmのベタ画像を形成して記録物を作製した。尚、反応液は、塗布量が2.4g/m2になるように、ローラーの速度及びローラーの記録媒体への接触圧を調整した。得られた記録物を1日放置した後、画像濃度を測定した。画像濃度の測定には、反射濃度計(商品名:マクベスRD−918;マクベス製)を用いた。画像濃度の評価基準は下記の通りである。評価結果を表12に示す。
・用紙の種類:普通紙
・印刷品質:標準
・色調整:自動
記録媒体は、下記の普通紙を用いた。
・PPC用紙PB Paper(キヤノン製)
・PPC用紙SC250C(キヤノン製)
・PPC用紙4200(ゼロックス製)
・高白色用紙SW−101(キヤノン製)
・PPC用紙4024(ゼロックス製)
(評価基準)
A:すべての紙で十分な画像濃度が得られる、或いは、一部の紙で十分な画像濃度が得られないが実際の使用上問題ない。
A:色バランスが良好である。
2:キャリッジ
3:排紙ローラー
4:拍車
5:排紙トレイ
6:塗布ローラー
7:主搬送ローラー
8:ピンチローラー
9:ガイド軸
10:給紙ローラー
11:プラテン
12:中間ローラー
13:供給ローラー
14:フロート
15:反応液
16:給紙カセット
17:給紙トレイ
18:スプリング
19:記録媒体(記録紙)
20:注入口
21:残量表示窓
22:補充タンク
23:注入機具
27:ペーパーガイド
1300:記録媒体
1301:インク滴
1302:ドット外周
1303:ドット中心部
1304:水不溶性色材
1305:ドット
1306:水溶性有機溶剤及び水
1307:貧溶媒
Claims (16)
- 少なくとも、水、顔料、該顔料に対する良溶媒及び該顔料に対する貧溶媒を含む複数の水溶性有機溶剤、をそれぞれ含有する、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、及びブラックインクの4種の水性インクを有するインクセットであって、
前記良溶媒がグリセリンを含み、且つ、前記貧溶媒がポリエチレングリコール600を含み、
前記シアンインクに含まれる、良溶媒の含有量(質量%)をA1、貧溶媒の含有量(質量%)をB1としたときに、B1/A1が0.5以上3.0以下であり、且つ、ブリストウ法によって求められる、前記複数の水溶性有機溶剤の各々のKa値のうち最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が前記貧溶媒であり、
前記マゼンタインクに含まれる、良溶媒の含有量(質量%)をA2、貧溶媒の含有量(質量%)をB2としたときに、B2/A2が0.5以上3.0以下であり、且つ、ブリストウ法によって求められる、前記複数の水溶性有機溶剤の各々のKa値のうち最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が前記貧溶媒であり、
前記イエローインクに含まれる、良溶媒の含有量(質量%)をA3、貧溶媒の含有量(質量%)をB3としたときに、B3/A3が0.5以上3.0以下であり、且つ、ブリストウ法によって求められる、前記複数の水溶性有機溶剤の各々のKa値のうち最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が前記貧溶媒であり、
前記ブラックインクに含まれる、良溶媒の含有量(質量%)をA4、貧溶媒の含有量(質量%)をB4としたときに、B4/A4が0.5以上3.0以下であり、且つ、ブリストウ法によって求められる、前記複数の水溶性有機溶剤の各々のKa値のうち、最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が前記貧溶媒であることを特徴とするインクセット。 - 前記インクセットが具備するシアンインク以外の任意の水性インクに含まれる、良溶媒の含有量(質量%)をA、貧溶媒の含有量(質量%)をBとしたときに、下記式(I)を満たす請求項1に記載のインクセット。
0.6≦(B1/A1)/(B/A)<1.8 (I) - 前記インクセットが具備するマゼンタインク以外の任意の水性インクに含まれる、良溶媒の含有量(質量%)をA、貧溶媒の含有量(質量%)をBとしたときに、下記式(II)を満たす請求項1又は2に記載のインクセット。
0.6≦(B2/A2)/(B/A)<1.8 (II) - 前記インクセットが具備するイエローインク以外の任意の水性インクに含まれる、良溶媒の含有量(質量%)をA、貧溶媒の含有量(質量%)をBとしたときに、下記式(III)を満たす請求項1乃至3の何れか1項に記載のインクセット。
0.6≦(B3/A3)/(B/A)<1.8 (III) - 前記インクセットが具備するブラックインク以外の任意の水性インクに含まれる、良溶媒の含有量(質量%)をA、貧溶媒の含有量(質量%)をBとしたときに、下記式(IV)を満たす請求項1乃至4の何れか1項に記載のインクセット。
0.6≦(B4/A4)/(B/A)<1.8 (IV) - 前記インクセットが具備するイエローインク以外の任意の水性インクに含まれる、良溶媒の含有量(質量%)をA、貧溶媒の含有量(質量%)をBとしたときに、下記一般式(V)を満たす請求項1乃至5の何れか1項に記載のインクセット。
(B3/A3)/(B/A)>1 (V) - 前記シアンインクに含まれる貧溶媒の含有量(質量%)が、前記シアンインク全質量に対して4質量%以上である請求項1乃至6の何れか1項に記載のインクセット。
- 前記マゼンタインクに含まれる貧溶媒の含有量(質量%)が、前記マゼンタインク全質量に対して4質量%以上である請求項1乃至7の何れか1項に記載のインクセット。
- 前記イエローインクに含まれる貧溶媒の含有量(質量%)が、前記イエローインク全質量に対して4質量%以上である請求項1乃至8の何れか1項に記載のインクセット。
- 前記ブラックインクに含まれる貧溶媒の含有量(質量%)が、前記ブラックインク全質量に対して4質量%以上である請求項1乃至9の何れか1項に記載のインクセット。
- 前記インクセットが、該インクセットが具備する水性インクを記録媒体に付与する工程、及び該水性インクと接触することによって該水性インク中の顔料を凝集させる反応液を記録媒体に付与する工程、を有する画像形成方法に用いるインクセットである請求項1乃至10の何れか1項に記載のインクセット。
- 請求項1乃至11の何れか1項に記載のインクセットを用いて行う画像形成方法であって、
(i)前記インクセットが具備する、水性インク中の顔料を凝集させる反応液を、記録媒体上に付与する工程、及び
(ii)該反応液が定着した記録媒体に、前記インクセットが具備する水性インクを付与する工程、
を有することを特徴とする画像形成方法。 - 請求項1乃至11の何れか1項に記載のインクセットを構成する、ブラックインクによって形成される画像と、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクから選ばれる少なくとも1色のカラーインクによって形成される画像とが隣接してなる画像を形成する画像形成方法であって、前記ブラックインクを付与する走査を行って画像を形成した後、該画像に隣接する領域に前記少なくとも1色のカラーインクを付与する走査を行って画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
- 前記ブラックインクを付与する走査を行った後、少なくとも1回の走査分の時間をあけた後に、前記少なくとも1色のカラーインクを付与する走査を行う請求項13に記載の画像形成方法。
- 前記ブラックインクを吐出させるための吐出口列と、前記少なくとも1色のカラーインクを吐出させるための吐出口列が、副走査方向にずれて配置されている記録ヘッドを用いてインクの付与を行う請求項13又は14に記載の画像形成方法。
- 請求項1乃至11の何れか1項に記載のインクセットを構成する、ブラックインクによって形成される画像と、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクから選ばれる少なくとも1色のカラーインクによって形成される画像とが隣接してなる画像を形成するための画像形成装置であって、
該画像形成装置は、前記ブラックインクを吐出させるための吐出口列と、前記少なくとも1色のカラーインクを吐出させるための吐出口列を備えてなる記録ヘッドを有することを特徴とする画像形成装置。
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