JP2018142640A - R−t−b系焼結磁石の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】より大きく保持力を向上させることができる、R−T−B系焼結磁石の製造方法を提供する。【解決手段】R−T−B系焼結磁石を用意する工程と、R−T−B系焼結磁石の表面にRLRHM合金(RLはNdおよび/またはPr、RHはDyおよび/またはTb、MはAl、Cu、Fe、Ga、Co、Ni、Znからなる群から選ばれる1種以上)の粉末と、Alフッ化物および/またはAl酸化物の粉末とを存在させた状態において、R−T−B系焼結磁石の焼結温度以下で熱処理を行う工程とを含む。RLRHM合金は、RL+RHを50原子%以上、Mを10原子%以上、かつ、RL:RH=96:4〜10:90の原子比で含み、融点は熱処理の温度以下である。熱処理は、RLRHM合金の粉末とAlフッ化物および/またはAl酸化物の粉末とが、RL:Al化合物=82:18〜75:25の質量比で焼結磁石の表面に存在する状態で行われる。【選択図】なし

Description

本発明は、R14B型化合物を主相として有するR−T−B系焼結磁石(Rは希土類元素、TはFeまたはFeとCo、Bはホウ素)の製造方法に関する。
R−T−B系焼結磁石は永久磁石の中で最も高性能な磁石として知られており、ハードディスクドライブのボイスコイルモータ(VCM)、電気自動車用(EV、HV、PHVなど)モータ、産業機器用モータなどの各種モータや家電製品などに使用されている。
R−T−B系焼結磁石は、主としてR14B化合物からなる主相と、この主相の粒界部分に位置する粒界相とから構成されている。主相であるR14B化合物は高い飽和磁化と異方性磁界を持ち、R−T−B系焼結磁石の特性の根幹をなしている。
高温では、R−T−B系焼結磁石の保磁力HcJ(以下、単に「HcJ」という場合がある)が低下するため、不可逆熱減磁が起こる。そのため、特に電気自動車用モータに使用されるR−T−B系焼結磁石では、高いHcJを有することが要求されている。
R−T−B系焼結磁石において、R14B化合物中のRに含まれる軽希土類元素RL(例えば、NdやPr)の一部を重希土類元素RH(例えば、DyやTb)で置換すると、HcJが向上することが知られている。RHの置換量の増加に伴い、HcJは向上する。
しかし、R14B化合物中のRLをRHで置換すると、R−T−B系焼結磁石のHcJが向上する一方、残留磁束密度B(以下、単に「B」という場合がある)が低下する。また、特にTb、DyなどのRHは、資源存在量が少ないうえ、産出地が限定されているなどの理由から、供給が安定しておらず、価格が大きく変動するなどの問題を有している。そのため、近年、RHをできるだけ使用することなく、HcJを向上させることが求められている。
一方、Bを低下させないように、より少ない重希土類元素RHによってR−T−B系焼結磁石のHcJを向上させることが検討されている。例えば、重希土類元素RHのフッ化物または酸化物や、各種の金属MまたはM合金をそれぞれ単独、または混合して焼結磁石の表面に存在させ、その状態で熱処理することにより、HcJ向上に寄与する重希土類元素RHを磁石内に拡散させることが提案されている。例えば、特許文献1は、R酸化物、Rフッ化物、R酸フッ化物の粉末をR−T−B系焼結磁石の表面に接触させて熱処理を行うことによりそれらを磁石内に拡散させる方法を開示している。また、特許文献2は、RLM合金粉末とRHフッ化物粉末とをR−T−B系焼結磁石表面に存在させた状態において拡散熱処理を行う方法を開示している。
国際公開第2006/043348号 国際公開第2015/163397号
特許文献1や2に記載の技術は、より少ない重希土類元素RHによってR−T−B系焼結磁石のHcJを向上させることができる点において非常に優れたものである。発明者がこれらのR−T−B系焼結磁石を断面観察により解析したところ、磁石表面から200μm程度の深さ部分では、重希土類元素RHは主相外殻部のみに拡散し、きれいな網目構造を呈していた。しかしながら、磁石表層付近の主相は、その中心部分までRHが拡散していることがわかった。主相中心部分に拡散したRHはHcJの向上にほとんど寄与しないことがこれまでの研究でわかっている。したがって、磁石表層部分においても主相外殻部のみにRHを拡散させることができれば、同じRH量でさらなるHcJの向上が期待できる。
本発明の実施形態は、より大きくHcJを向上させることができる、R−T−B系焼結磁石の製造方法を提供する。
本開示のR−T−B系焼結磁石の製造方法は、例示的な実施形態において、R−T−B系焼結磁石(Rは希土類元素、TはFeまたはFeとCo、Bはホウ素)を用意する工程と、前記R−T−B系焼結磁石の表面にRLRHM合金(RLはNdおよび/またはPr、RHはDyおよび/またはTb、MはAl、Cu、Fe、Ga、Co、Ni、Znからなる群から選ばれる1種以上)の粉末と、Alフッ化物および/またはAl酸化物の粉末とを存在させた状態において、前記R−T−B系焼結磁石の焼結温度以下で熱処理を行う工程とを含み、前記RLRHM合金はRL+RHをRLRHM合金全体の50原子%以上、MをRLRHM合金全体の10原子%以上、かつ、RLとRHをRL:RH=96:4〜10:90の原子比で含み、かつ、前記RLRHM合金の融点は前記熱処理の温度以下であり、前記熱処理は、前記RLRHM合金の粉末と前記Alフッ化物および/またはAl酸化物の粉末とが、RL:Al化合物=82:18〜75:25の質量比で前記R−T−B系焼結磁石の前記表面に存在する状態で行われる。
本開示の実施形態によると、R−T−B系焼結磁石のHcJを向上させることができる。
Al化合物の配合比とHcJとの関係を示すグラフである。 サンプルF3*の磁石表面の断面元素マッピング分析写真であり、左上からそれぞれ、SEM像、Nd、Cu、フッ素(F)、Tb、およびAlの元素マッピングである。 サンプルO3*の磁石表面の断面元素マッピング分析写真であり、左上からそれぞれ、SEM像、Nd、Cu、Tb、およびAlの元素マッピングである。 (a)は、サンプルF3*の図2AのSEM像よりも広域のSEM像であり、(b)はサンプルO3*の図2BのSEM像よりも広域のSEM像であり、(c)は、別途作製した、特許文献2に記載の磁石に相当する磁石(比較例)の断面SEM像である。
本発明者は、より少ないRHを有効に利用してHcJを向上させる方法として、R−T−B系焼結磁石表面にRLRHM合金と、Alフッ化物および/またはAl酸化物(以下Al化合物)を特定範囲の配合比で存在させて熱処理することによって、HcJが特異的に向上することを見出した。得られた磁石は、RHが従来例よりも磁石の奥深くまで拡散し、主相がはっきりとした二粒子粒界によってきれいに分断された組織を有していることを見出した。また、この方法によって形成された磁石表層部分の組織は、RHが主相外殻部のみに拡散したきれいなコアシェル構造を有していることを見出した。
[R−T−B系焼結磁石母材の準備]
重希土類元素RHの拡散の対象とするR−T−B系焼結磁石母材を準備する。本明細書では、わかりやすさのため、重希土類元素RHの拡散の対象とするR−T−B系焼結磁石をR−T−B系焼結磁石母材と厳密に称することがあるが、「R−T−B系焼結磁石」の用語はそのような「R−T−B系焼結磁石母材」を含むものとする。このR−T−B系焼結磁石母材は公知のものが使用でき、例えば以下の組成を有する。
希土類元素R:12〜17原子%
B(B(ボロン)の一部はC(カーボン)で置換されていてもよい):5〜8原子%
添加元素M´(Al、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Pb、およびBiからなる群から選択された少なくとも1種):0〜2原子%
T(Feを主とする遷移金属元素であって、Coを含んでもよい)および不可避不純物:残部
ここで、希土類元素Rは、主として軽希土類元素RL(Nd、Prから選択される少なくとも1種の元素)であるが、重希土類元素を含有していてもよい。なお、重希土類元素を含有する場合は、DyおよびTbの少なくとも一方を含むことが好ましい。
上記組成のR−T−B系焼結磁石母材は、任意の製造方法によって製造される。R−T−B系焼結磁石母材は焼結上がりでもよいし、切削加工や研磨加工が施されていてもよい。
[RLRHM合金]
RLRHM合金のRLは、Ndおよび/またはPr、RHはDyおよび/またはTb、MはAl、Cu、Fe、Ga、Co、Ni、Znからなる群から選ばれる1種以上の粉末である。RLRHM合金は、RL+RHをRLRHM合金全体の50原子%以上、MをRLRHM合金全体の10原子%以上、かつ、RLとRHをRL:RH=96:4〜10:90の原子比で含む。RL:RHは90:10〜20:80が好ましい。RLRHM合金の融点は拡散熱処理の温度以下である。
RLとしては、Al化合物を還元する効果が高いNdおよび/またはPrとする。Mは、RLRHM合金の融点を後述の拡散熱処理温度以下に下げ、かつ、磁石特性に悪影響を与えない、Al、Cu、Fe、Ga、Co、Ni、Znからなる群から選ばれる1種以上とする。
RLRHM合金は、磁石内に拡散させてHcJを向上させるRHを供給する拡散剤の役割と、Al化合物を還元する還元剤の役割の両方を果たすと考えられる。RL:RHが96:4よりRHが少ない側、すなわち、RHがRL+RHの4原子%未満であると、十分にHcJを向上させるに足るRHを供給することができない。RL:RHが10:90よりRLが少ない側であると、すなわち、RLがRL+RHの10原子%未満であると、Al化合物を還元する力が足りず、後に詳細に述べる、Al化合物をRLRHM合金と共に存在させる効果が発揮できにくい。
RHを十分に磁石中に拡散させ、Al化合物を還元するために、RLRHM合金は拡散熱処理の際に溶融することが好ましい。したがって、RLRHM合金の融点は拡散熱処理の温度以下であることが好ましいが、そのためには、MがRLRHM合金全体の10原子%以上であればよい。
RLRHM合金の製法はどんなものでも良く、ロール急冷法やアトマイズ法などの急冷法、RLRHM合金のインゴットを粉砕する方法などがあげられる。RLRHM合金の粉末の粒度は500μm以下が好ましく、10〜300μmがより好ましい。なお、本開示において粉末の粒度は、その粒度に応じて、例えば顕微鏡観察、市販の粒度分布測定装置(例えば、マイクロトラック・ベル社製レーザー回折・散乱式 粒子径分布測定装置等)、JISZ8801に記載の篩による分級等によって測定すればよい。
[Al化合物]
Al化合物としては、Alフッ化物および/またはAl酸化物を用いる。以下、Alフッ化物およびAl酸化物の全体を「Al化合物」と称する。Alは、RHとともに粒界を介して磁石内部に拡散すると考えられる。Al化合物の製法はどのようなものでも良く、市販のAl化合物を使用できる。Al化合物の粒度は100μm以下が好ましい。
本発明者らの検討によれば、R−T−B系焼結磁石表面にRLRHM合金と、Al化合物を、RL:Al化合物=82:18〜75:25の質量比となるように存在させて熱処理することによって、HcJが特異的に向上し、RHが従来よりも磁石の奥深くまで拡散し、主相がはっきりとした二粒子粒界によってきれいに分断された組織を有し、また、磁石表層部分の組織はRHが主相外殻部のみに拡散したきれいなコアシェル構造となることがわかった。Al化合物の配合比をRLRHM合金に対する配合比(Al化合物/(RLRHM合金+Al化合物))として定義すると、この配合比の好ましい範囲は8〜12質量%である。
[塗布]
RLRHM合金の粉末とAl化合物の粉末とをR−T−B系焼結磁石の表面に存在させる方法はどのようなものであってもよい。例えば、RLRHM合金の粉末とAl化合物の粉末をR−T−B系焼結磁石の表面に散布する方法、RLRHM合金の粉末とAl化合物の粉末とを純水や有機溶剤などの溶媒に分散させ、これにR−T−B系焼結磁石を浸漬して引き上げる方法、RLRHM合金の粉末とAl化合物の粉末とをバインダや溶媒と混合してスラリーを作製し、このスラリーをR−T−B系焼結磁石の表面に塗布する方法、RLRHM合金の粉末とAl化合物の粉末をバインダと共に造粒して造粒粉末を作製し、この造粒粉末をR−T−B系焼結磁石の表面に付着させる方法のいずれもが実行され得る。
バインダおよび溶媒は、その後の熱処理の昇温過程において、RLRHM合金の融点以下の温度で熱分解または蒸発などでR−T−B系焼結磁石の表面から実質的に除去されるものであればよく、特に限定されるものではない。バインダの例としては、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、ポリエステルなどがあげられる。またRLRHM合金の粉末とAl化合物の粉末は、それらが混合した状態でR−T−B系焼結磁石の表面に存在させてもよいし、別々に存在させてもよい。なお、本開示の方法においては、RLRHM合金はその融点が熱処理温度以下であるため熱処理の際に溶融し、R−T−B系焼結磁石の表面は還元されたRHがR−T−B系焼結磁石内部に拡散しやすい状態になる。したがって、RLRHM合金の粉末とAl化合物の粉末とをR−T−B系焼結磁石の表面に存在させる前にR−T−B系焼結磁石の表面に対して酸洗などの特段の清浄化処理を行う必要はない。もちろん、そのような清浄化処理を行うことを排除するものではない。また、RLRHM合金粉末粒子の表面が多少酸化されていてもRHの拡散やAl化合物を還元する効果にほとんど影響はない。
本開示の製造方法は、RLRHM合金およびAl化合物の粉末以外の粉末(第三の粉末)がR−T−B系焼結磁石の表面に存在することを必ずしも排除しないが、第三の粉末がAl化合物中のRHをR−T−B系焼結磁石の内部に拡散することを阻害しないように留意する必要がある。R−T−B系焼結磁石の表面に存在する粉末の全体に占める「RLRHM合金およびAl化合物」の粉末の質量比は、70%以上であることが望ましい。
本開示の製造方法によれば、少ない量のRHで、効率的にR−T−B系焼結磁石のHcJを向上させることが可能である。R−T−B系焼結磁石の表面に存在させる粉末中のRH元素の量は、R−T−B系焼結磁石に対して0.2〜1.5質量%であることが好ましい。
[拡散熱処理]
拡散のための熱処理温度はR−T−B系焼結磁石の焼結温度以下(具体的には例えば1000℃以下)であり、かつ、RLRHM合金の粉末の融点よりも高い温度である。具体的には、熱処理温度はR−T−B系焼結磁石の温度で500℃以上が好ましい。熱処理時間は例えば10分〜72時間である。また拡散のための熱処理の後必要に応じてさらに400〜700℃で10分〜72時間の熱処理を行ってもよい。
(実験例1)
まず、公知の方法で、組成比Nd=13.4、B=5.8、Al=0.5、Cu=0.1、Co=1.1、残部=Fe(原子%)のR−T−B系焼結磁石を作製した。これを機械加工することにより、4.9mm×7.4mm×7.4mmのR−T−B系焼結磁石母材を得た。得られたR−T−B系焼結磁石母材の磁気特性をB−Hトレーサーによって測定したところ、HcJは1035kA/m、Bは1.45Tであった。
なお、後述の通り、熱処理後のR−T−B系焼結磁石の磁気特性は、R−T−B系焼結磁石の表面を機械加工にて除去してから測定する。このため、R−T−B系焼結磁石母材もそれに合わせて、表面をさらに、4.9mmの方向は0.1mmずつ、7.4mmの方向はそれぞれ0.2mmずつ機械加工にて除去し、大きさ4.7mm×7.0mm×7.0mmとしてから測定した。また、別途R−T−B系焼結磁石母材の不純物量をガス分析装置によって測定したところ、酸素が810ppm、窒素が370ppm、炭素が870ppmであった。
次に組成がNd57Tb13Cu30(原子%)(融点570℃)の合金を用意した。この合金はアトマイズ法によって作製した粒度106μm以下の粉末である。得られた合金の粉末と粒度20μm以下のAlF粉末および粒度20μm以下のAl粉末を表1に示す配合比(Al化合物/(Nd57Tb13Cu30+Al化合物))で混合し、混合粉末を得た。この混合粉末とポリビニルアルコールおよび水を混合してスラリーを得た。このスラリーを、R−T−B系焼結磁石母材の7.4mm×7,4mmの1面に、RH(Tb)量がR−T−B系磁石母材に対して0.5質量%となるように塗布し、乾燥した。
このR−T−B系焼結磁石母材を配置したMo板を処理容器に収容して蓋をした。この蓋は容器内外のガスの出入りを妨げるものではない。これを熱処理炉に収容し、100PaのAr雰囲気中、900℃で10時間の熱処理を行った。熱処理は、室温から真空排気しながら昇温し、雰囲気圧力および温度が上記条件に達してから上記条件で行った。その後いったん室温まで降温してからMo板を取り出してR−T−B系焼結磁石を回収した。回収したR−T−B系焼結磁石を処理容器に戻して再び熱処理炉に収容し、10Pa以下の真空中、490℃で3時間の熱処理を行った。この熱処理も室温から真空排気しながら昇温し、雰囲気圧力および温度が上記条件に達してから上記条件で行った。その後いったん室温まで降温してからR−T−B系焼結磁石を回収した。
得られたR−T−B系焼結磁石の表面を4.9mmの方向は0.1mmずつ、7.4mmの方向はそれぞれ0.2mmずつ機械加工によって研磨除去し、4.7mm×7.0mm×7.0mmのサンプルF1〜O5を得た。得られたサンプルF1〜O5との磁気特性をB−Hトレーサーによって測定し、HcJとBを求めた。結果を表1に示す。また、Al化合物の配合比とHcJとの関係を図1に示す。なお、サンプル1はAl化合物を配合せずに、Nd57Tb13Cu30を磁石表面に存在させて熱処理したサンプルである。表1において、「Nd:Al化合物」はRL(本実験例ではNd):Al化合物の質量比率を示し、ΔHcJはR−T−B系焼結磁石母材のHcJとの差を示し、ΔBはR−T−B系焼結磁石母材のBとの差を示す。
図1から、Al化合物の配合比が8〜12質量%(Nd:Al化合物が質量比で82:18〜75:25)のとき、HcJが特異的に向上していることがわかった。特にAl化合物の配合比が9.1〜10.7質量%で顕著に高いHcJが達成されたことがわかる。
さらに、サンプルF3、O3と同様の方法で作製し、熱処理後の機械加工を行っていないサンプル(以下、サンプルF3*、O3*と表記)について、磁石表面直下の断面元素マッピング分析を行った。図2Aは、サンプルF3*の磁石表面の断面元素マッピング分析写真であり、左上からそれぞれ、SEM像、Nd、Cu、フッ素(F)、Tb、およびAlの元素マッピングである。図2Bは、サンプルO3*の磁石表面の断面元素マッピング分析写真であり、左上からそれぞれ、SEM像、Nd、Cu、Tb、およびAlの元素マッピングである。
図2Aおよび図2Bからわかるように、Tbは磁石表面付近においても主相の外殻部のみに拡散し、きれいなコアシェル組織が認められた。AlもTbと同じように粒界を介して拡散しているように認められるが、Tbに比較すると主相内部まで拡散していた。さらに広域のマッピング分析によると、Tbは磁石の500μmを超える奥深くまで十分に拡散しているのが観察された。
図3(a)は、サンプルF3*の図2AのSEM像よりも広域のSEM像である。図3(b)はサンプルO3*の図2BのSEM像よりも広域のSEM像である。図3(c)は、別途作製した、特許文献2に記載の磁石に相当する磁石(比較例)の断面SEM像である。
図3からわかるように、本発明の実施例では、比較例に比べると、はっきりした粒界組織によって主相がきれいに分断されているのが観察される。本発明の実施例における磁石のHcJがAl化合物の配合比に依存して特異的に向上している原因は、図2A、図2B、および図3に示されるように本発明の実施例の磁石が有する組織の特徴が影響していると考えられる。
本発明によるR−T−B系焼結磁石の製造方法は、より少ない重希土類元素RHによってHcJを向上させたR−T−B系焼結磁石を提供し得る。

Claims (1)

  1. R−T−B系焼結磁石(Rは希土類元素、TはFeまたはFeとCo、Bはホウ素)を用意する工程と、
    前記R−T−B系焼結磁石の表面にRLRHM合金(RLはNdおよび/またはPr、RHはDyおよび/またはTb、MはAl、Cu、Fe、Ga、Co、Ni、Znからなる群から選ばれる1種以上)の粉末と、Alフッ化物および/またはAl酸化物の粉末とを存在させた状態において、前記R−T−B系焼結磁石の焼結温度以下で熱処理を行う工程と、
    を含み、
    前記RLRHM合金はRL+RHをRLRHM合金全体の50原子%以上、MをRLRHM合金全体の10原子%以上、かつ、RLとRHをRL:RH=96:4〜10:90の原子比で含み、かつ、前記RLRHM合金の融点は前記熱処理の温度以下であり、
    前記熱処理は、前記RLRHM合金の粉末と前記Alフッ化物および/またはAl酸化物の粉末とが、RL:Al化合物=82:18〜75:25の質量比で前記R−T−B系焼結磁石の前記表面に存在する状態で行われる、R−T−B系焼結磁石の製造方法。
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