JP2010098115A - 希土類磁石の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高保磁力を有する希土類磁石を得やすい製造方法を提供すること。
【解決手段】R114B相(但し、R1:Nd、Pr、Dy、TbおよびHoから選択される少なくとも1種の元素、X:FeまたはFeの一部をCoで置換したもの)を主相とする結晶粒を有し、かつ、結晶粒径が1μm以下である希土類磁石の表面にR2含有化合物(但し、R2:Dy、TbおよびHoから選択される少なくとも1種の元素)を接触させ、結晶粒径が1μmを越えないように熱処理を施し、磁石内にR2元素を拡散させる。熱処理時の熱処理温度は650℃〜850℃、熱処理時間は0.15〜8時間の範囲内にあることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、希土類磁石の製造方法に関するものである。
従来、Nd−Fe−B系希土類磁石は、ハードディスクドライブのボイスコイルモータ(VCM)や磁気共鳴診断装置(MRI)等、主に室温環境下で使用されてきた。そのため、これまでほとんど耐熱性は要求されていなかった。
近年では、Nd−Fe−B系希土類磁石は、一般車のEPSモータやハイブリッド自動車(HEV)の駆動モータ、FA(ロボットや工作機械)用モータ等への応用が拡大している。このように応用範囲が拡大するにつれ、Nd−Fe−B系希土類磁石には、比較的高温環境下での使用に耐えうる耐熱性が要求されるようになっている。この傾向は、特に自動車用途の場合に顕著である。
希土類磁石の耐熱性を高めるためには、保磁力を増加させることが最も一般的な方法であり、古くからNd−Fe−B系合金溶解時にDyやTb等を添加する方法がとられてきた。最近では、希土類磁石表面からDy金属を内部に拡散させることにより保磁力を増加させる試みがなされている。
例えば、非特許文献1には、Dy粉末やDyF粉末をコートしたNd−Fe−B系焼結磁石をAr雰囲気中にて800℃〜900℃、1〜10時間熱処理する技術が開示されている。
また、特許文献1には、希土類焼結磁石の表面に、スパッタリング法によりDyやTbの金属膜を成膜し、850℃で10分間熱処理することにより、Dy等を磁石内部に熱拡散させる希土類焼結磁石の製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、Dyのフッ化物、酸化物または塩化物を800℃〜1100℃の温度条件で還元処理することにより、Nd−Fe−B系焼結磁石表面から内部の粒界相にDy金属を拡散浸透させるNd−Fe−B系焼結磁石の粒界改質方法が開示されている。
また、特許文献3には、Nd−Fe−B系焼結磁石の表面にDyF粉末を付着させ、Ar雰囲気中900℃で1時間という条件で熱処理する希土類焼結磁石の製造方法が開示されている。
また、特許文献4には、蒸発させたDy原子をNd−Fe−B系焼結磁石の表面に付着させ、900℃〜1000℃で熱処理する希土類焼結磁石の製造方法が開示されている。
K.Hirota,H.Nakamura,T.Minowa,and M.Honshima,"Coercivity Enhancement by the Grain Boundary Diffusion Process to Nd-Fe-B Sintered Magnets",IEEE Trans.Magn.,vol.42,no.10,pp2909-2911,Oct.2006. 特開2004−304038号公報 国際公開第WO2006/064848号パンフレット 国際公開第WO2006/043348号パンフレット 国際公開第WO2008/023731号パンフレット
しかしながら、従来技術は、以下の点で問題があった。
すなわち、Nd−Fe−B系焼結磁石は、原料粉末の粒径を小さくし過ぎると酸化や発火の問題が生じる。そのため、原料粉末の大きさはジェットミル粉末でも3μm程度が限度であり、これを1100℃程度の温度で焼結し、磁石の結晶粒径を現行の約5μm以下とすることは工業的に困難である。それ故、焼結磁石の結晶粒径をこれ以上細かくすることで保磁力を向上させることは技術的に難易度が高かった。
一方、最近では、焼結ではなく、ホットプレス等の熱間成形や、さらに熱間成形後に熱間押し出し等の熱間塑性加工を経て製造される磁石もある。この種の磁石は、結晶粒径を約1μm以下とすることが可能である。そのため、高保磁力化に有利ではあるものの、さらにその保磁力を向上させたいという要望がある。
上記要望を満たすため、上述した従来の焼結磁石の技術を適用することにより、さらなる高保磁力化を図ることが考えられる。しかしながら、上記焼結磁石の技術は、DyF粉末の還元、あるいは、Dyの拡散やDy金属蒸気の発生の条件がいずれも800℃〜1000℃の高温長時間である。
それ故、結晶粒径が1μm以下の希土類磁石に対して、上記焼結磁石の技術をそのまま適用すると、微細結晶が粒成長を生じて、Dy拡散による保磁力の増加が相殺されてしまう。また、結晶粒径が大きくなると、磁区が不安定となって保磁力が低下しやすくなる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、高保磁力を有する希土類磁石を得やすい製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係る希土類磁石の製造方法は、R114B相(但し、R1:Nd、Pr、Dy、TbおよびHoから選択される少なくとも1種の元素、X:FeまたはFeの一部をCoで置換したもの)を主相とする結晶粒を有し、かつ、結晶粒径が1μm以下である希土類磁石の表面にR2含有化合物(但し、R2:Dy、TbおよびHoから選択される少なくとも1種の元素)を接触させ、結晶粒径が1μmを越えないように熱処理を施し、磁石内にR2元素を拡散させることを要旨とする。
ここで、上記希土類磁石は、少なくとも熱間成形を経て形成されたものであると良い。
また、上記熱処理時の熱処理温度は650℃〜850℃、熱処理時間は0.15〜8時間の範囲内にあることが好ましい。
また、上記R2含有化合物とともに、さらに、Cu、Al、Ga、Ge、Sn、In、Si、P、Coから選択される少なくとも1種の元素の金属、合金、化合物を接触させることが好ましい。
また、上記熱処理は、真空雰囲気中または不活性ガス雰囲気中にて行われることが好ましい。
本発明に係る希土類磁石の製造方法では、R114B相(但し、R1:Nd、Pr、Dy、TbおよびHoから選択される少なくとも1種の元素、X:FeまたはFeの一部をCoで置換したもの)を主相とする結晶粒を有し、かつ、結晶粒径が1μm以下である希土類磁石の表面にR2含有化合物(但し、R2:Dy、TbおよびHoから選択される少なくとも1種の元素)を接触させ、結晶粒径が1μmを越えないように熱処理を施し、磁石内にR2元素を拡散させる。そのため、高保磁力を有する希土類磁石を製造することができる。この理由は以下の通り推察される。
すなわち、上記製造方法では、希土類焼結磁石にDy元素等を粒界拡散させる方法と比較して、希土類焼結磁石よりも相対的に結晶粒径が小さい希土類磁石にR2元素を拡散させることになる。それ故、比較的僅かなR2元素の拡散量、拡散距離でも十分にR2元素を結晶粒界に行き渡らせることができ、保磁力が向上しやすいものと推察される。
ここで、上記希土類磁石が少なくとも熱間成形を経て形成されたものである場合には、原料合金粉末の結晶粒径が超急冷法あるいはHDDR法で製造されるいずれの場合にも1μm以下であることから、焼結温度の約1100℃より低温の約800℃で熱間成形しても粒成長度合が小さく、出来上がりの磁石の結晶粒径は1μm以下に留まり、その結果として焼結磁石よりも保磁力を高めやすくなる。
また、熱処理時の熱処理温度、熱処理時間が上記特定の範囲内である場合には、R2元素の結晶粒界相への拡散効果と熱処理による結晶粒の粗大化抑制効果とのバランスに優れるため、高保磁力を有する希土類磁石を得やすくなる。
また、上記R2含有化合物とともに、さらに、Cu、Al、Ga、Ge、Sn、In、Si、P、Coから選択される少なくとも1種の元素の金属、合金、化合物を接触させる場合には、R2元素との共晶合金化効果により低温の熱処理で高保磁力化を図ることが可能となり有利である。
また、上記熱処理が真空雰囲気中または不活性ガス雰囲気中にて行われる場合には、R2含有化合物からR2元素への還元性とR2元素の磁石内への拡散性が向上する。とりわけ、上記熱処理が真空中にて行われる場合には、還元反応が顕著に促進され、磁石表面にR2元素が析出しやすくなる。そのため、より多くのR2元素が磁石内に拡散しやすくなり、より高い保磁力を有する希土類磁石を得やすくなる。
以下、本発明の一実施形態に係る希土類磁石の製造方法(以下、「本製造方法」ということがある。)について詳細に説明する。
本製造方法は、特定の希土類磁石の表面にR2含有化合物を接触させ、特定の熱処理を施すことにより、磁石内にR2元素を拡散させて高保磁力を有する希土類磁石を製造する方法である。
1.特定の希土類磁石の準備
ここで、本製造方法で準備する特定の希土類磁石は、R114B相を主相とする結晶粒を有している。結晶粒の周囲は、基本的に粒界相により取り囲まれている。
上記R1は、Nd、Pr、Dy、TbおよびHoから選択される少なくとも1種の元素である。上記R1は、希土類元素の中で比較的資源的に豊富で、かつ、廉価である等の観点から、好ましくは、Nd、Pr、あるいは、Ndおよび/またはPrを含む組み合わせであると良い。一方、上記Xは、FeまたはFeの一部をCoで置換したものである。上記Xは、磁気特性、特に、飽和磁束密度が大きい、廉価である等の観点から、好ましくは、Feであると良い。
上記R114B相としては、具体的には、例えば、 NdFe14B相、PrFe14B相、Dy元素が一部置換した(Nd、Dy)Fe14B相などを例示することができる。
また、本製造方法で準備する特定の希土類磁石は、その結晶粒径が1μm以下である。上記結晶粒径とは、R114B結晶のC面を撮影した画像(倍率:1万倍)に数本の直線を引き、総数50個の結晶粒について測定された長さの平均値のことである。
上記結晶粒径は、好ましくは、熱処理後の結晶粒径を小さくでき、高保磁力化に寄与しやすい、超急冷法製造においてロール周速度の可変による粒径制御が容易である等の観点から、800nm以下、より好ましくは、500nm以下、さらに好ましくは、300nm以下であると良い。なお、上記結晶粒径の下限は特に限定されるものではないが、アモルファス相の残存は保磁力を急激に低下させてしまう。
また、本製造方法で準備する希土類磁石の形態は、特に限定されるものではなく、用途等に応じて、円筒状、角筒状等の筒状、円柱状、角注状等の柱状、円板状等の板状、角形状などの形態を適宜選択することができる。
上述したように、本製造方法で準備する希土類磁石は、その結晶粒径が1μm以下であるが、このような微細な結晶粒径を有する磁石は、高温の焼結プロセスを用いて準備することは難しい。しかしながら、熱間成形や、熱間成形および熱間成形加工を適用すれば比較的簡単に準備することが可能である。以下に、本製造方法で使用する希土類磁石の作製方法の一例について説明する。
先ず、R1−X−B系合金粉末を準備する。ここで、R1、Xについては上述した通りである。R1−X−B系合金におけるR1の含有量は、保磁力と残留磁束密度の双方を高く維持する観点から、好ましくは、28〜32質量%、より好ましくは28.5〜31質量%の範囲内とすると良い。
また、XとしてFeの一部をCoで置換したものを用いる場合、Coの含有量は、R114B化合物のキュリー温度を上昇させる、耐食性を向上させる等の観点から、好ましくは、6質量%以下、より好ましくは、3質量%以下とすると良い。なお、Coの含有量が過度に多くなると、保磁力および飽和磁束密度がともに低下する傾向がある。
また、Bの含有量は、R114B化合物を生成させやすくなる等の観点から、好ましくは、0.8〜1.2質量%の範囲内、より好ましくは、0.9〜1.0質量%の範囲内とすると良い。Bの含有量が過度に少なくなると、R114B化合物の生成量が不足し、逆にBの含有量が過度に多くなると、FeB等のホウ化物が生成し、残留磁束密度が低下しやすくなる傾向がある。
また、R1−X−B系合金は、上記元素に加え、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、In、Ga、Sn、Hf、TaおよびWから選択される少なくとも1種の添加元素を含んでいても良い。これら元素は結晶粒界相に適量介在することで、結晶粒の均一化や保磁力の向上に役立つからである。これら添加元素の含有量は、残留磁束密度の低下を抑制しつつ、保磁力の向上を図る等の観点から、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、2質量%以下、さらに好ましくは、1質量%以下であると良い。
上記R1−X−B系合金粉末の作製方法としては、超急冷法を好適に用いることができる。具体的には、例えば、Nd−Fe−B系合金、Nd−Fe−Co−B系合金、Pr−Fe−B系合金、Pr−Fe−Co−B系合金、(Nd,Pr)−Fe−B系合金等、所定の成分組成を有するR1−X−B系合金を、真空またはアルゴン等の不活性ガス雰囲気中、1200℃以上の温度で溶解した後、その溶湯をオリフィスから抜熱性の高い回転ロール(銅製回転ロール等)に射出して超急冷(例えば、回転ロール周速度:10m/秒〜30m/秒で冷却)する。これにより、長さが数十mmで厚さが約20〜50μm程度であり、内部が約10〜20nm程度の微結晶粒と一部がアモルファスから構成されている、薄片状粉末が得られる。そして、この薄片状粉末を、衝撃式気流粉砕機などを用いて粉砕し、長辺が約300μm以下となるように篩い分けを行うなどすれば、R1−X−B系合金粉末を得ることができる。このようにして製造されるR1−X−B系合金粉末(超急冷粉末)は、磁気的に等方性の粉末である。
次に、得られたR1−X−B系合金粉末を冷間成形し、冷間成形体を作製する。具体的には、得られたR1−X−B系合金粉末を冷間プレス機の金型に充填し、筒状、柱状、板状などの各種の形状を有する冷間成形体を成形すれば良い。
この冷間成形工程では、基本的には、R1−X−B系合金粉末を固化できれば良い。冷間成形体の真密度は、取扱い時の強度、プレス圧力や金型寿命等の観点から、好ましくは、40〜70%、より好ましくは、50〜70%の範囲内にすると良い。
冷間成形時の圧縮成形圧力としては、例えば、2〜4ton/cm程度、圧力保持時間としては、1秒〜10秒間程度を例示することができる。なお、通常、室温では酸化がほとんど進行しないため、大気雰囲気中にて成形を行うが、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気中で成形を行っても良い。
次に、得られた冷間成形体を熱間成形し、熱間成形体を形成する。具体的には、得られた熱間成形体の表面に黒鉛系等の潤滑材を塗布し、これをホットプレス機に装填し、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中、真空中、あるいは大気中にて、金型を加熱し、冷間成形体を加圧緻密化させれば良い。
上記熱間成形法としては、ホットプレスを好適に適用することができるが、それ以外にも、加熱と加圧とさらに高電流を印加して緻密化を促進するSPS(スパーク・プラズマ・シンタリング)なども適用することが可能である。
上記加熱温度は、緻密化と粒成長の抑制効果とのバランス等の観点から、好ましくは、600〜900℃、より好ましくは、750〜850℃の範囲内にあると良い。
熱間成形時の圧縮成形圧力としては、例えば、2〜4ton/cm程度、圧力保持時間としては、5秒〜20秒間程度を例示することができる。
熱間成形後の熱間成形体の真密度は、熱間塑性加工時におけるヒビや亀裂防止等の観点から、好ましくは、97〜100%、より好ましくは98〜100%、さらに好ましくは99.5〜100%の範囲内にあると良い。
次に、得られた熱間成形体を熱間塑性加工し、熱間塑性加工体を形成する。上記熱間塑性加工法としては、具体的には、例えば、熱間押し出し、熱間引き抜き、熱間鍛造、熱間圧延などを例示することができる。これらは1または2以上組み合わせて行っても良い。筒状や板状に加工する場合には、結晶粒の配向特性や材料歩留まり等の観点から、押し出し法を好適に用いることができる。この場合、例えば、押出しプレス機を用い、熱間成形で用いた金型と寸法の異なる金型を用いて、熱間成形体を加圧押し出しするなどすれば良い。
上記熱間塑性加工では、例えば、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中、真空中、あるいは大気中にて、加熱により熱間成形体を塑性変形させる。この際、上記加熱温度は、粒成長の抑制効果と塑性変形性とのバランス等の観点から、好ましくは、600〜900℃、より好ましくは、750〜850℃の範囲内にあると良い。
上記塑性変形により、ランダムな方位をもっていたR114B結晶のC軸が加工応力と同一の方向に配向し、異方性磁石となる。
2.R2含有化合物の接触および熱処理
本製造方法では、準備した特定の希土類磁石の表面に少なくともR2含有化合物を接触させる。ここで、上記R2は、Dy、TbおよびHoから選択される少なくとも1種の元素である。これらR2元素は、磁石内部に拡散することによって、他の希土類元素群に比べて特に保磁力向上に大きく貢献するためである。上記R2としては、NdFe14B化合物と比較して、DyFe14BやTbFe14Bの化合物の結晶磁気異方性が前者が約2倍、後者が約3倍である観点から、好ましくは、DyまたはTbであると良い。
上記R2含有化合物としては、具体的には、上記R2のフッ化物や酸化物、水素化物、窒化物等を好適に用いることができる。より具体的には、DyF、Dy、DyH、DyN、TbF、Tbなどを例示することができる。これらは1種または2種以上併用しても良い。
また、本製造方法では、上記R2含有化合物以外にも、Cu、Al、Ga、Ge、Sn、In、Si、P、Coから選択される少なくとも1種の元素の金属、合金、化合物を磁石表面に接触させることができる。上記金属、合金、化合物としては、具体的には、Cu、AlF、Ga、GeO、SnO、In、SiO等を用いることができる。
上記金属、合金、化合物を接触させた場合には、熱処理時に各種の添加元素も磁石内に拡散させることができる。そのため、各種の添加元素とNd等の磁石構成元素とが共晶合金を形成して粒界相の融点が降下し、これによりR2元素の拡散が助長され、結晶粒を均一な粒界相で被覆しやすくなる。
また、本製造方法では、より低温短時間の熱処理条件でR2含有化合物からR2への還元反応を促進させ、R2元素の拡散性を高める等の観点から、必要に応じて、上記R2含有化合物とともに還元剤を併用しても良い。
上記還元剤としては、例えば、Ca、Mg、CaH等の金属や水素化物等を好適に用いることができる。これらは1種または2種以上併用しても良い。
本製造方法において、上記R2含有化合物、上記金属、合金、化合物、上記還元剤を磁石表面に接触させる方法としては、これらの単体粉末、または、これらの単体粉末を最適な比率で配合した混合粉末を磁石表面に付着させれば良い。好ましくは、上記単体粉末または混合粉末に適当な溶媒を加えてスラリー化し、当該スラリーを磁石表面に塗布すると良い。スラリー塗布法を適用すれば、適度な固定力で磁石表面に塗布可能だからである。
この場合、溶媒としては、例えば、アルコール、ヘキサン等の有機溶媒、水等を用いることが可能である。好ましくは、上記単体粉末や混合粉末との反応性を低減できる等の観点から、有機溶媒を用いると良い。
また、スラリー濃度は、溶媒の添加量によって調整することができる。スラリー濃度は、磁石表面に塗布されるスラリー塗布量と関係がある。つまり、スラリー濃度が相対的に低い場合にはスラリー塗布量は少なくなり、スラリー濃度が相対的に高い場合にはスラリー塗布量は多くなる。磁石内部へ拡散させるR2元素の量は、スラリー塗布量と熱処理条件によって制御することができる。そのため、所望のR2元素を拡散可能なスラリー塗布量となるように適切なスラリー濃度に調整することが望ましい。
上記スラリー濃度は、上記単体粉末あるいは混合粉末に対する溶媒量が、好ましくは、10〜80質量%、より好ましくは、15〜50質量%、さらに好ましくは、20〜30質量%の範囲内にあると良い。スラリー濃度が上記範囲内にあれば、R2元素の拡散量の確保のしやすさ、磁石表面へのR2含有化合物等の固定性、取扱い性等のバランスに優れるからである。
磁石表面へのスラリーの塗布方法としては、当該スラリー中に磁石を浸漬して引き抜くディッピング法、当該スラリーを磁石表面にスプレーするスプレー法、刷毛塗り法、ドクターブレード法等、各種の塗布方法を採用することができる。スラリー塗布後は、自然乾燥させても良いし、乾燥機等を用いて高温乾燥させることもできる。
本製造方法では、準備した特定の希土類磁石の表面にR2含有化合物を接触させた後、または、R2含有化合物を接触させつつ、熱処理を行い、磁石内にR2元素を拡散させる。
ここで、上記熱処理は、R2含有化合物からR2元素への還元と、R2元素の磁石内への拡散を主な目的としている。この熱処理は、当該熱処理後に磁石の結晶粒径が1μmを越えないように行う必要がある。熱処理後の磁石の結晶粒径が1μmを越えると、粒成長による保磁力低下の影響が大きくなり、R2元素の拡散による保磁力向上効果が相殺されてしまうからである。
熱処理後の磁石の結晶粒径が1μmを越えないようにするには、熱処理時の熱処理温度、熱処理時間を主に制御すれば良い。熱処理温度が相対的に高温になると、還元反応、拡散の進行が早くなるが、同時に粒成長も生じやすくなる。熱処理温度としては、具体的には、好ましくは、650℃〜850℃、より好ましくは、700℃〜800℃の範囲内とすると良い。熱処理温度が650℃未満になると、R2含有化合物からR2元素への還元が起こり難くなり、R2元素の拡散量が少なくなる傾向がある。一方、熱処理温度が850℃を越えると、R2元素の還元拡散反応は生じるものの、磁石の粒成長が数倍〜十数倍となってR2元素の拡散による保磁力の増加が減殺されやすくなる。また、拡散したR2元素が粒界相にとどまらず、R114B相内のR1元素と置換し、残留磁束密度を低下させることがある。
一方、熱処理時間は、上記熱処理温度との兼ね合いで調整することができる。基本的には、磁石の粒成長と保磁力増加効果とを考慮して、低温側では長時間、高温側では短時間とすると良い。熱処理時間は、具体的には、好ましくは、0.15〜8時間、より好ましくは、0.15〜6時間、さらに好ましくは、0.5〜4時間の範囲内から選択すると良い。
本製造方法では、熱処理を1回行っても良いし、磁石材質や処理コスト等を考慮し、熱処理を複数回行っても良い。熱処理を複数回行う場合、2回目以降の熱処理における熱処理温度は、1回目の熱処理における熱処理温度よりも低温で行うことが好ましい。R2元素が均一に拡散されやすくなり、粒成長を抑制しつつ、保磁力の増加を図ることができるからである。
2回目以降の熱処理における熱処理温度は、好ましくは、500℃〜700℃、より好ましくは、550℃〜650℃の範囲内から選択すると良い。また、2回目以降の熱処理における熱処理時間は、好ましくは、0.5〜24時間、より好ましくは、1〜8時間の範囲内から選択すると良い。
本製造方法において、上記熱処理は、真空雰囲気中、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中にて行うことができる。好ましくは、真空雰囲気中で行うと良い。本製造方法では、焼結磁石にDy等を拡散させる従来方法とは異なり、磁石の粒成長を抑制するために熱処理温度を低く設定することが多い。熱処理を真空雰囲気中で行った場合には、より低温側で還元反応が促進されてR2元素が析出する。そのため、より多くのR2元素が磁石内に拡散しやすくなり、より高い保磁力を有する希土類磁石を得やすくなるからである。
本製造方法において、磁石内に含有させるR2元素の含有量(拡散量)は、保磁力増加に対する残留磁束密度の低下を抑制するため、および、コスト面を考慮して使用量を抑制する等の観点から、好ましくは、0.01〜5質量%、より好ましくは、0.05〜3質量%、さらに好ましくは、0.1〜2質量%の範囲内とすると良い。
本製造方法により得られた希土類磁石は、室温よりも高温で動作するモータ、あるいは、高速高出力で回転することにより発熱が大きなモータ、例えば、車載用のEPSモータや駆動モータ、工作機械やロボットなどにおける高出力モータ、その他にエアコン室外機用モータ、エレベータ駆動用モータなどの用途に好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例を用いてより具体的に説明する。
1.実験1
1.1 希土類磁石の準備
(原料粉末の作製)
重量%で、29.6Nd−0.9B−0.4Ga−bal.Feの成分組成を有する希土類合金を、1350℃で溶解した後、その溶湯をオリフィスからCrめっきを施したCu製の回転ロールに射出(回転ロール周速度:20m/秒)し、急冷合金薄片を作製した。この急冷合金薄片をカッターミルで粉砕篩分けし、最大粒径が350μm以下の超急冷粉末を作製した。
(冷間成形)
上記作製した超急冷粉末55gを、冷間プレス機の金型に装填して3ton/cmの圧力を加えて成形し、円筒形状の冷間成形体(外径23mm、内径14mm、高さ30mm)を作製した。
(熱間成形)
上記作製した冷間成形体をホットプレス機の金型にセットし、アルゴン雰囲気中で金型を800℃に加熱し、3ton/cmの圧力を約15秒間かけて成形し、高さ約20mmの緻密化した円筒状の熱間成形体を作製した。
(熱間塑性加工)
上記作製した熱間成形体を後方押出し装置の金型にセットし、大気中で金型を850℃に加熱して後方押出しを行い、内径および高さが変形した熱間塑性加工体(外径23mm、内径18mm、高さ40mm)を製作し、押しきれなかった底部分は切り落とした。
得られた円筒状の希土類磁石を高さ方向4mmに切断し、さらに円周16分割に切断した円弧状磁石片(縦4mm×横4mm×厚み2.5mm)を作製した。なお、上記作製した円弧状磁石片とほぼ同様の成分組成(重量%で、29.7Nd−1B−0.4Ga−bal.Fe)を持つ焼結磁石を入手し、縦4mm×横4mm×厚み3mmに切断加工して、これを比較例1に係る磁石片とした。
(準備した磁石の微細構造)
上述のようにして準備した磁石片をその結晶のC面が観察面となるように樹脂に埋め込み、研磨、エッチングした後、SEMを用いて観察した。その結果、多数の板状結晶粒とその周りを取り囲む粒界相とからなる微細組織が観察された。
また、SEMに付属しているEDX分析装置を用いて、希土類元素濃度を調べた結果、結晶粒はNdFe14B相を主相としていることが確認された。
また、結晶のC面を撮影した画像(倍率:1万倍)に数本の直線を引き、総数50個の結晶粒の長さを測定し、これら長さの平均値を磁石の結晶粒径とした。その結果、準備した円弧状磁石片の結晶粒径は、比較例2に示すように322nm以下であることが確認された。なお、準備した比較例1の焼結磁石片の結晶粒径も同様に測定したところ、6.3μmであり、1μmを大きく上回っていた。
1.2 R2含有化合物との接触および熱処理
(実施例1〜5、比較例3)
Arガスを循環させたグローブボックス内で、粉末粒径がいずれも10〜20μmのDyF粉末とCaH粉末、および、n−ブチルアルコールを、重量比で3:2:2で配合し、スラリーを調製した。このスラリー中に上記準備した円弧状磁石片を浸漬し、磁石表面全体にスラリーを塗布し、30分間自然乾燥させた。その後、DyF粉末およびCaH粉末が塗布された円弧状磁石片をSUS製容器に入れて封止し、アルミナルツボ上に並べた。
次いで、これを電気炉に装填し、炉内にてSUS製容器の封止を解除し、2×10−3Paまで真空引きを行った。そして、毎分20℃の昇温速度で所定温度(650℃〜900℃)とし、所定温度で30分間保持した後、電気炉の電源を切って自然冷却した。これにより実施例1〜5に係る磁石片、比較例3に係る磁石片を得た。
(比較例2)
上記において、DyF粉末およびCaH粉末の塗布および熱処理を全く行わなかった円弧状磁石片(準備した円弧状磁石片そのもの)を比較例2に係る磁石片とした。
(磁気特性の測定)
実施例1〜5、比較例1〜3に係る磁石片につき、振動試料型磁力計(VSM)を用いて磁気測定を行い、保磁力Hcjおよび残留磁束密度Brを求めた。また、上述した手順に準拠して熱処理後の磁石片の結晶粒径を求めた。また、磁石中のDy含有量をICP分析により求めた。
実験1の各種条件、結果をまとめて表1に示す。
Figure 2010098115
表1によれば主に以下のことが分かる。すなわち、比較例1は、焼結磁石であるため、結晶粒径が大きく、保磁力Hcjが低い。これに対し、同一成分組成の比較例2は、超急冷粉末を原料に用い、熱間成形、熱間加工を経て形成されている。そのため、結晶粒径が1μm以下であり、比較例1に比較して高い保磁力Hcjが得られている。
ここで、実施例1〜5は、結晶粒径が1μmを越えないように熱処理を施している。そのため、いずれも比較例2に比較して高い保磁力Hcjが得られている。これは、実施例1〜5では、いずれも磁石内にDyを含有していることから、磁石表面から磁石内の粒界相へ優先的にDyが拡散したためであると推察される。
また、実施例1〜5を比較すると、熱処理温度の上昇に伴ってDy含有量が増加し(Dy拡散量が増加し)、保磁力Hcjが著しく増加して750℃〜800℃で最大となり、その後は保磁力Hcjは減少に転じる傾向があることが分かる。そして、比較例3のように熱処理温度が900℃を越えると、Dy含有量が増加しているにもかかわらず、粒成長(結晶粒径322nm→1670nm)によって熱処理を施す前よりも保磁力Hcjが低下してしまっていることが分かる。このことから、結晶粒径が1μmを越えないように条件を制御して熱処理を行うことにより、効率良く高保磁力化を図ることができると言える。
2.実験2
(実施例6〜10、比較例4)
グローブボックス内で粒径が約10μmのDyH粉末とn−ブチルアルコールを、重量比で2:1で配合してスラリーを調製した。実験1において、実験1で調製したスラリーに代えて、実験2で調製したスラリーを用いた以外は同様にして、実施例6〜10、比較例4に係る磁石を作製し、結晶粒径、Dy含有量、磁気特性を測定した。
実験2の各種条件、結果をまとめて表2に示す。
Figure 2010098115
表2によれば主に以下のことが分かる。すなわち、基本的には、実験1と同様に、熱処理温度の上昇に伴ってDy含有量が増加し(Dy拡散量が増加し)、保磁力Hcjが著しく増加して750℃〜800℃で最大となり、その後は保磁力Hcjは減少に転じる傾向があることが分かる。
さらに実験1の結果と比較すると、同じ熱処理条件では実験2の方が磁石内のDy含有量が多く、高保磁力化を図りやすいことが分かる。これは、DyH単独粉末を用いたことにより、CaH粉末がない分だけ、磁石表面に接触するDyH粉末(Dy含有化合物粉末)が実質的に多くなり、磁石内部への拡散が促進されたためであると推察される。しかし、熱処理温度が900℃になると、Dy拡散効果よりも粒成長による保磁力低下の影響が大きくなり、所望の保磁力向上を図り難くなることが分かる。
3.実験3
(実施例11〜24、比較例5)
重量%で、29.4Pr−2Co−0.9B−0.2Ga−bal.Feの成分組成を有する希土類合金を用いて超急冷粉末を作製し、この超急冷粉末を用いて磁石片を作製した点、熱処理条件を650℃で1〜8時間、750℃で0.25〜4時間、800℃で0.15〜1時間とした点以外は実験1と同様にして、実施例11〜24に係る磁石片を作製した。また、DyF粉末およびCaH粉末の塗布および熱処理を全く行わなかった磁石片を比較例5に係る磁石片とした。そして、実験1と同様にして、結晶粒径、Dy含有量、磁気特性を測定した。
実験3の各種条件、結果をまとめて表3に示す。
Figure 2010098115
表3によれば主に以下のことが分かる。すなわち、実施例16、22は、同じ熱処理条件で熱処理した実施例3、4と比較して、より高い保磁力Hcjを有していることが分かる。これは、Nd−Fe−B系磁石は、Ndの融点が1024℃であるのに対し、Pr−Fe−B系磁石は、Prの融点が935℃であるため、後者の方が粒界相融点が低下し、熱処理によってDyの拡散が促進されたためであると推察される。
また、高保磁力化を図るための条件は、熱処理温度が相対的に低温である場合には数時間程度、熱処理温度が相対的に高温である場合には数十分程度が適正であることが分かる。
4.実験4
(実施例25〜34、比較例6)
実験1と同様の手順により、重量%で、29.4Pr−2Co−0.9B−0.2Ga−bal.Feの成分組成を有する希土類合金を用いて超急冷粉末を作製した。次いで、この超急冷粉末55gを、冷間プレス機の金型に装填して5ton/cmの圧力を加えて成形し、円柱形状の冷間成形体(外径20mm、高さ20mm)を作製した。次いで、この冷間成形体をホットプレス機の金型にセットし、アルゴン雰囲気中で金型を820℃に加熱し、3ton/cmの圧力を約10秒間かけて成形し、高さ約14mm、密度99%の緻密化した熱間成形体を作製した。次いで、この熱間成形体をプレス機にセットし、Ar雰囲気中で金型を820℃に加熱して圧縮変形させ、外径32mm、高さ5.5mmの円板状に塑性加工した。次いで、この塑性加工体をワイヤ放電加工機を用いて4mm×4mm×4mmに切断し、試料となる角形状磁石片を作製した。上記において、熱処理を全く行わなかった磁石片を比較例6に係る磁石片とした。
次いで、グローブボックス内で、DyF粉末、CaH粉末、Z粉末(但し、Zは、Cu、AlF、Ga、GeO、SnO、In、SiOのいずれか)、および、n−ブチルアルコールを、重量比で3:2:3:3で配合し、スラリーを調製した。このスラリー中に上記準備した角形状磁石片を浸漬し、磁石表面全体にスラリーを塗布し、30分間自然乾燥させた。その後、上記各粉末が塗布された角形状磁石片をSUS製容器に入れて封止し、アルミナルツボ上に並べた。
次いで、これを電気炉に装填し、炉内にてSUS製容器の封止を解除し、2×10−3Paまで真空引きを行った。そして、毎分20℃の昇温速度で770℃まで昇温し、45分間保持した後、電気炉の電源を切って自然冷却した。これにより、実施例25〜34に係る磁石を作製した。そして、実験1と同様にして、結晶粒径、Dy含有量、添加元素の含有量、磁気特性を測定した。なお、磁石内に含有されたZ元素は、Dyに対していずれも極微量であった。
実験4の各種条件、結果をまとめて表4に示す。
Figure 2010098115
表4によれば主に以下のことが分かる。すなわち、DyF粉末(Dy含有化合物粉末)とともに、Z粉末を磁石表面に接触させて熱処理を行った場合には、より低温で高保磁力化を図ることが可能なことが分かる。
ここで、実施例25〜34は、結晶粒径が1μmを越えないように熱処理を施している。そのため、いずれも比較例6に比較して高い保磁力Hcjが得られている。これは、実施例25〜34では、いずれも磁石内にDyを含有していることから、磁石表面から磁石内の粒界相へ優先的にDyが拡散したためであると推察される。
また、Dyのみならず、各種の添加元素(Cu、Al、Ga、Ge、Sn、In、Si、P、Co等)も同時に磁石内に拡散させると、NdやDy等の磁石構成元素と添加元素とが共晶合金を形成して粒界相の融点が降下し、これによりDy元素の拡散が助長され、結晶粒が均一な粒界相で被覆されやすくなるためであると推察される。
5.実験5
(実施例35〜実施例39、比較例7)
実験1において、真空雰囲気に代えてアルゴン雰囲気中にて、毎分10℃の昇温速度で所定温度(650℃〜900℃)とし、所定温度で30分間保持した後、電気炉の電源を切って自然冷却する熱処理を行った以外は同様にして、実施例35〜39、比較例7に係る磁石片を作製し、結晶粒径、Dy含有量、磁気特性を測定した。
実験5の各種条件、結果をまとめて表5に示す。
Figure 2010098115
表5によれば主に以下のことが分かる。すなわち、熱処理を真空雰囲気中で行った実験1の結果と比較して、保磁力Hcjの増加率は小さいものの、保磁力Hcjが増加していることが分かる。これは以下の理由によるものと推察される。
図1に、DyF粉末とCaH粉末とを重量比で3:2で混合した混合粉末を、真空雰囲気中またはアルゴン雰囲気中にて850℃で1時間熱処理した後のX線回折パターンを示す。
図1によれば、アルゴン雰囲気中で熱処理した場合には、DyFとCaHとが反応し、DyHとCaFとが生成しているのに対し、真空雰囲気中で熱処理した場合には、拡散に好都合なDyが析出していることが分かる。
このことから、真空雰囲気中で熱処理した場合には、磁石表面においてDyF(R2含有化合物)→Dy(R2)の還元反応が促進されるため、磁石内へのDy(R2)の拡散が生じやすくなり、保磁力Hcjを向上させる効果が高くなることが分かる。なお、結晶粒径は、処理雰囲気よりも温度に依存するため、真空雰囲気中にて熱処理した実験1の結果と大差ないことが分かる。なお、比較例7の試料は、熱処理温度が高すぎて結晶粒径が1μmを越えたため、Dyが含有されているにもかかわらず、処理前に対して保磁力が低下していることが分かる。
以上、本発明に係る希土類磁石の製造方法について説明したが、本発明は、上記実施形態、実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
DyF粉末とCaH粉末とを重量比で3:2で混合した混合粉末を、真空雰囲気中またはアルゴン雰囲気中にて850℃で1時間熱処理した後のX線回折パターンである。

Claims (5)

  1. R114B相(但し、R1:Nd、Pr、Dy、TbおよびHoから選択される少なくとも1種の元素、X:FeまたはFeの一部をCoで置換したもの)を主相とする結晶粒を有し、かつ、結晶粒径が1μm以下である希土類磁石の表面にR2含有化合物(但し、R2:Dy、TbおよびHoから選択される少なくとも1種の元素)を接触させ、結晶粒径が1μmを越えないように熱処理を施し、磁石内にR2元素を拡散させることを特徴とする希土類磁石の製造方法。
  2. 前記希土類磁石は、少なくとも熱間成形を経て形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の希土類磁石の製造方法。
  3. 前記熱処理時の熱処理温度は650℃〜850℃、熱処理時間は0.15〜8時間の範囲内にあることを特徴とする請求項1または2に記載の希土類磁石の製造方法。
  4. 前記R2含有化合物とともに、さらに、Cu、Al、Ga、Ge、Sn、In、Si、P、Coから選択される少なくとも1種の元素の金属、合金、化合物を接触させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の希土類磁石の製造方法。
  5. 前記熱処理は、真空雰囲気中または不活性ガス雰囲気中にて行われることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の希土類磁石の製造方法。
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