JP4433282B2 - 希土類磁石の製造方法及び製造装置 - Google Patents

希土類磁石の製造方法及び製造装置 Download PDF

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本発明は、希土類磁石及びその製造方法、さらには製造装置に関するものであり、特に、表面特性劣化層を効率的に回復させる技術に関する。
希土類焼結磁石、例えばNd−Fe−B系焼結磁石は、磁気特性に優れた高性能磁石として知られており、磁気共鳴画像診断装置(MRI)用磁気回路や、ハードディスクドライブ(HDD)用モータ等の他、幅広く応用されている。そして、Nd−Fe−B系焼結磁石は、実用磁石の中で最も高い磁気特性を有するため、これらの応用製品の小型化に貢献している。
ただし、この種の希土類焼結磁石は、切断や研磨等の機械加工によって磁気特性が低下する傾向にあり、その解消が課題となっている。特に、小型の磁石での磁気特性の低下が著しく、例えばモバイル機器の小型化やマイクロマシーンの高性能化を進める上において、大きな障害となっている。機械加工によって磁石の表面付近は、数十〜200μm程度にわたり加工の影響を受け、表面積が大きく体積が小さい磁石では、この影響を受けた表面部分が占める割合が大きくなって、磁気特性の低下が顕著に現れる。
そこで、従来、このような機械加工による磁気特性の劣化に対し、様々な対策を講じて磁気特性を回復することが試みられている(例えば、特許文献1や特許文献2、非特許文献1等を参照)。
特許文献1には、焼結後、最終形状に加工した後に、時効処理を行って加工劣化層を正常組織へ回復させる方法が開示されている。特許文献2には、熱処理と、熱処理後の焼結体表面の研削加工を繰り返し行うことにより、磁気特性(残留磁束密度Brや最大エネルギー積BH)を向上させる方法が開示されている。非特許文献1には、Dy金属をスパッタリングにより被着させ、その後、熱処理(時効処理)を行うことにより、表面改質による高特性化を図る方法が開示されている。
特開昭61−140108号公報 特開平7−37742公報 第27回日本応用磁気学会学術講演概要集(2003)、p386
しかしながら、前記特許文献1や特許文献2に記載される時効処理(熱処理)のみでは、特に薄肉形状になればなるほど、十分な磁気特性の回復効果は得られていない。また、非特許文献1に記載される方法では、角型性等、磁気特性の回復はある程度期待できるが、例えばスパッタリングのための三次元スパッタリング装置等が必要であり、量産を考えた場合、多大な設備投資が必要となる他、スパッタリングに長時間を要し、生産性が低下するという問題点を有する。
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、特に薄肉形状の磁石等においても加工劣化層を実用的、且つ簡便な手法により十分に回復させる技術を提供することを目的とするものである。すなわち、本発明は、最終製品として高い磁気特性を有する希土類磁石を提供することを目的とし、さらには、その製造方法、製造装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、前述の問題を解決するために、種々の検討を重ねてきた。その結果、希土類元素を主体とする合金溶湯に浸漬処理(ディッピング処理)を施すことで、特性を回復した磁石を得ることができることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて案出されたものであり、本発明の希土類磁石の製造方法は、希土類元素、遷移金属元素及びホウ素を含む原料合金微粉を成形した成形体を焼結して希土類焼結磁石を作製し、当該希土類焼結磁石を機械加工により所定の厚さに加工して磁石素体とし、前記磁石素体を希土類元素を主体とし融点1000℃以下の合金溶湯に浸漬することを特徴とする。
磁石素体を希土類元素を主体とする合金溶湯に浸漬することで、表面改質により加工劣化層が正常組織に回復し、特性が回復する。特に、角型性の回復が著しく、保磁力や最大エネルギー積(BH)mも向上する。本発明では、合金溶湯にディッピング処理するという簡便な手法によって磁気特性の回復が実現され、スパッタリング装置等の大がかりな設備投資は不要である。また、処理としては、磁石素体を合金溶湯にディッピングするだけで済むので、作業が極めて簡略化され、処理に要する時間も短時間で済む。さらには、ディッピング温度や時間を最適化することで、時効処理を兼ねることができ、さらなる工程の簡略化が実現される。
一方、本発明の希土類磁石の製造装置は、希土類元素を主体とし融点1000℃以下の合金溶湯が収容される浸漬槽と、少なくとも1以上の加熱室とを備え、浸漬後に所定の温度で加熱されるようにこれら浸漬槽と加熱室とが配列され、希土類元素、遷移金属元素及びホウ素を含む原料合金微粉を成形した成形体を焼結して作製された希土類焼結磁石を機械加工により所定の厚さに加工した磁石素体を、前記浸漬槽から加熱室へと移動させることで、合金溶湯に浸漬するディッピング処理から時効処理までの一連の工程が連続的に行われることを特徴とする。
前記装置構成とすることで、磁石素体を前記浸漬槽から加熱室へと移動するだけで、磁石素体に対するディッピング処理から時効処理に至る一連の工程が実施され、効率的な処理が実現される。また、浸漬槽と加熱室とを一体的に配列することで、例えばディッピング処理の余熱を利用した時効処理が可能になる等、加熱に必要な加熱装置が必要最小限で済む。
本発明によれば、加工劣化層による磁気特性の低下を効率的に回復させることができ、角型性や保磁力、最大エネルギー積等において、例えば加工前の磁気特性に匹敵する磁気特性を有する希土類磁石を提供することが可能である。
また、本発明の製造方法、製造装置によれば、簡便に磁石特性を回復させることができ、スパッタリング装置等の設備投資も不要である。したがって、作業を簡略化するとともに、短時間に効率的に希土類磁石を量産することが可能であり、さらには、例えばスパッタリングによる方法等と比べて製造コストを大幅に削減することが可能である。
以下、本発明を適用した希土類磁石及びその製造方法、製造装置について、図面を参照しながら説明する。
本発明の希土類磁石は、希土類元素、遷移金属元素及びホウ素を主成分とする希土類焼結磁石、例えばNdFeB系希土類焼結磁石等を磁石素体とするものである。ここで、磁石素体の磁石組成は、目的に応じて任意に選択すればよい。例えば、R−T−B(R=Yを含む希土類元素の1種または2種以上、T=FeまたはFe及びCoを必須とする遷移金属元素の1種または2種以上、B=ホウ素)系希土類焼結磁石とする場合、磁気特性に優れた希土類焼結磁石を得るためには、焼結後の磁石組成において、希土類元素Rが27.0〜32.0重量%、ホウ素Bが0.5〜2.0重量%、残部が実質的に遷移金属元素T(例えばFe)となるような配合組成とすることが好ましい。希土類元素Rの量が27.0重量%未満であると、軟磁性であるα−Fe等が析出し、保磁力が低下する。逆に、希土類元素Rが32.0重量%を越えると、Rリッチ相の量が多くなって耐蝕性が劣化するとともに、主相であるR214B結晶粒の体積比率が低下し、残留磁束密度が低下する。また、ホウ素Bが0.5重量%未満の場合には、高い保磁力を得ることができない。逆に、ホウ素Bが2.0重量%を越えると、残留磁束密度が低下する傾向がある。
前記組成において、希土類元素Rは、Yを含む希土類元素、すなわちY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb及びLuから選ばれる1種、または2種以上である。中でも、NdやPrは、磁気特性のバランスが良いこと、資源的に豊富で比較的安価であることから、主成分をNdやPrとすることが好ましい。また、Dy2Fe14BやTb2Fe14B化合物は、異方性磁界が大きく、保磁力Hcjを向上させる上で有効である。
さらに、前記希土類焼結磁石は、添加元素Mを加えて、R−T−B−M系希土類焼結磁石とすることも可能である。この場合、添加元素Mとしては、Al、Ga、Cr、Mn、Mg、Si、Cu、C、Nb、Sn、W、V、Zr、Ti、Hf、Mo等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を選択して添加することができる。例えば、高融点金属であるNb、Zr、W等の添加は、結晶粒成長を抑制する効果がある。勿論、これら組成に限らず、磁石素体の組成として、従来公知の希土類磁石組成全般に適用可能であることは言うまでもない。
磁石素体は、焼結の後、機械加工、例えば切断や研磨加工により所定のサイズとされるが、本発明は、厚さ2mm以下の磁石素体に適用して効果が高い。特に、厚さ1mm以下の磁石素体に適用することで、より一層顕著な効果を期待することができる。
本発明の希土類磁石は、前記磁石素体が希土類元素を主体とする合金溶湯により浸漬処理(ディッピング処理)されてなるものである。ここで、合金溶湯は、50原子%以上の割合で希土類元素を含有することが好ましく、磁石素体に含まれる希土類元素の割合よりも合金溶湯に含まれる希土類元素の割合の方が大であることが好ましい。合金溶湯に含まれる希土類元素としては、Nd、Pr、Dy、Tbから選ばれる少なくとも1種が好適である。このディッピング処理により、磁石素体の表面近傍における希土類元素の割合が、好適には磁石素体内部における希土類元素の割合の1.1倍以上となり、表面近傍の加工劣化層が改質され、磁気特性が大幅に改善する。
次に、本発明の希土類磁石の製造方法について説明する。本発明の希土類磁石において、磁石素体となる希土類焼結磁石は、粉末冶金法により製造されるものである。以下、希土類焼結磁石の粉末冶金法による製造方法について説明する。
図1は、粉末冶金法による希土類焼結磁石の作製プロセス、さらにはその後の加工プロセスの一例を示すものである。この製造プロセスは、基本的には、合金化工程1、粗粉砕工程2、微粉砕工程3、磁場中成形工程4、焼結工程5、機械加工工程6、ディッピング工程7、時効工程8、研削加工工程9とにより構成される。但し、時効工程8は、焼結工程5の後でも良い。この場合、ディッピング工程7の後は、特性回復のための時効工程となる(本明細書中では、ディッピング工程後の、特性回復のための熱処理も時効処理と呼ぶ)。なお、酸化防止のために、焼結後までの各工程は、ほとんどの工程を真空中、あるいは不活性ガス雰囲気中(窒素雰囲気中、Ar雰囲気中等)で行う。
合金化工程1では、原料となる金属、あるいは合金を原料合金組成に応じて配合し、不活性ガス、例えばAr雰囲気中で溶解し、鋳造することにより合金化する。鋳造法としては、溶融した高温の液体金属を回転ロール上に供給し、合金薄板を連続的に鋳造するストリップキャスト法(連続鋳造法)が生産性等の観点から好適である。原料金属(合金)としては、純希土類元素、希土類合金、純鉄、フェロボロン、さらにはこれらの合金等を使用することができる。インゴットとして鋳造した場合には、凝固偏析を解消すること等を目的に、必要に応じて溶体化処理を行ってもよい。溶体化処理の条件としては、例えば真空またはAr雰囲気下、700〜1200℃領域で1時間以上保持する。
粗粉砕工程2では、先に鋳造した原料合金の薄板、あるいはインゴット等を、それぞれ粒径数百μm程度になるまで粉砕する。粉砕手段としては、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用いることができる。粗粉砕性を向上させるために、水素を吸蔵させて脆化させた後、粗粉砕を行うことが効果的である。
前述の粗粉砕工程2が終了した後、通常、粗粉砕した原料合金粉に粉砕助剤を添加する。粉砕助剤としては、例えば脂肪酸系化合物等を使用することができるが、特に、脂肪酸アミドを粉砕助剤として用いることで、良好な磁気特性、特に高配向度で高い磁化を有する希土類焼結磁石を得ることができる。粉砕助剤の添加量としては、0.03〜0.4重量%とすることが好ましい。粉砕助剤の添加量が0.03重量%未満であると、潤滑剤の磁気特性に与える効果が十分に得られず、0.4重量%以下の添加量であれば、焼結後の残留炭素の量を効果的に低減することができ、希土類焼結磁石の磁気特性を向上させる上で有効である。
粗粉砕工程2の後、微粉砕工程3を行うが、この微粉砕工程3は、例えば気流式粉砕機等を使用して行われる。微粉砕の際の条件は、用いる気流式粉砕機に応じて適宜設定すればよく、原料合金粉を平均粒径が1〜10μm程度、例えば3〜6μmとなるまで微粉砕する。気流式粉砕機としては、ジェットミル等が好適である。ジェットミルは、高圧の不活性ガス(例えば窒素ガス)を狭いノズルより開放して高速のガス流を発生させ、この高速のガス流により粉体の粒子を加速し、粉体の粒子同士の衝突や、衝突板あるいは容器壁との衝突を発生させて粉砕する方法である。ジェットミルは、一般的に、流動層を利用するジェットミル、渦流を利用するジェットミル、衝突板を用いるジェットミル等に分類される。これらのジェットミルのうちでは、流動層を利用するジェットミル、及び渦流を利用するジェットミルが好ましく、特に流動層を利用するジェットミルが好ましい。例えば原料合金粉と粉砕助剤とは比重が大きく異なるが、流動層中及び渦流中では比重の違いに殆ど関係なく良好に粉砕及び混合が行なわれ、特に流動層中では比重の違いは殆ど問題とならないからである。
微粉砕工程3の後、磁場中成形工程4において、原料合金微粉を磁場中にて成形する。具体的には、微粉砕工程3にて得られた原料合金微粉を電磁石を配置した金型内に充填し、磁場印加によって結晶軸を配向させた状態で磁場中成形する。磁場中成形は、成形圧力と磁界方向が平行な縦磁場成形、成形圧力と磁界方向が直交する横磁場成形のいずれであってもよい。さらに、磁界印加手段として、パルス電源と空芯コイルも採用することができる。この磁場中成形は、例えば700〜1300kA/mの磁場中で、100〜200MPa前後の圧力で行えばよい。
次に、前記磁場中成形工程により形成された成形体を焼結するが、焼結に先立って、脱バインダー工程において脱バインダー処理を行うことが好ましい。この脱バインダー処理は、粉砕工程において添加され成形体に含まれる潤滑剤を系外に除去するための工程であり、脱バインダー処理を行うことで、焼結後に炭化物、酸化物等として残存する炭素や酸素の残存量を減らすことができる。
次いで、焼結工程5において、焼結を実施する。すなわち、原料合金微粉を磁場中成形後、前記脱バインダー処理を行った成形体(予備焼結体)を真空または不活性ガス雰囲気中で焼結する。焼結温度は、組成、粉砕方法、粒度と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、例えば1000〜1150℃で5時間程度焼結すればよい。加熱方法は、抵抗加熱、高周波誘導加熱等、任意である。
焼結工程あるいはその後の時効工程を経た希土類焼結磁石は、機械加工工程5において、切断、研磨、サンドブラスト、バレル加工等の機械加工を施すことにより、所定のサイズに加工される。機械加工の手法は任意であり、例えば切断の方法としては、ワイヤーソーや放電加工等を挙げることができる。磁石素体の加工サイズも任意であるが、厚さ2mm以下、特に厚さ1mm以下となるような機械加工を行った場合、後述のディッピングによる効果が大きい。
機械加工により所定のサイズに加工した希土類焼結磁石を磁石素体とし、これを希土類磁石として用いるが、機械加工を施した磁石素体は、表面に加工劣化層が形成され、磁気特性の低下が見られる。そこで、本発明においては、次のディッピング工程7において、希土類元素を主体とする合金溶湯に磁石素体をディッピングすることで、磁気特性の回復を図る。
ディッピング処理は、磁石素体を希土類元素を主体とする合金溶湯中に浸漬するだけでよく、極めて簡便な手法である。使用する合金溶湯は、希土類元素を主体とするものであるが、希土類元素単体の溶湯であってもよいし、希土類元素を含む2元系合金、あるいは3元系以上の合金の溶湯であってもよい。ただし、加工劣化層の改質による効果を得るためには、希土類元素を50原子%以上含有していることが好ましい。また、磁石素体に含まれる希土類元素の割合よりも、合金溶湯に含まれる希土類元素の割合の方が大であることが好ましい。
また、合金溶湯の融点は、あまり高すぎると磁石素体の焼結温度に近づき、磁石素体の特性を劣化させるおそれがあることから、1000℃以下とすることが好ましい。したがって、合金溶湯の組成は、この融点の観点から設定することも必要である。例えば、Dy−Fe系の状態図を図2に、Nd−Fe系の状態図を図3に示す。Dy−Fe系では、Dyが70原子%において融点が900℃まで下がっており、Dyが65原子%〜77原子%で融点1000℃以下が達成される。Nd−Fe系では、Ndが78原子%で融点685℃であり、Ndが55原子%以上で融点1000℃以下が達成される。
ディッピング処理におけるディッピング時間は、10分間〜1時間程度である。ディッピング時間が短すぎると、表面改質効果が不十分となるおそれがある。ディッピング時間が長すぎると、生産性が低下し、磁石素体への熱的影響が大きくなるおそれもある。なお、ディッピング温度やディッピング時間を最適化すれば、時効処理を兼ねることもでき、製造工程をさらに簡略化することが可能である。
前述のディッピング処理の後、ディッピング処理した磁石素体に対して、時効処理を施すことが好ましい。時効工程8は、希土類磁石の保磁力Hcjを制御する上で重要な工程であり、例えば不活性ガス雰囲気中あるいは真空中で時効処理を施す。時効処理としては、例えば2段時効処理が好ましく、例えば1段目の時効処理工程では、800℃前後の温度で0.1〜3時間保持する。次いで、急冷し、2段目の時効処理工程では、550℃前後の温度で0.2〜3時間保持する。600℃近傍の熱処理で保磁力Hcjが大きく増加するため、時効処理を一段で行う場合には、600℃近傍、例えば450℃〜650℃での時効処理を施すとよい。
なお、前記ディッピング工程において、ディッピング温度やディッピング時間を最適化して時効処理を兼ねるようにした場合には、前記時効工程8の一部、あるいは全部を省略することも可能である。
最後に、研削加工工程9において、表面の研削加工を行って希土類磁石を完成する。この研削加工は、ディッピング処理及び時効処理後に表面に残った希土類リッチ合金を取り除くために行うものであり、簡単な研削加工を施すだけでよい。
図4は、本発明の製造装置の一例の概略構成を示すものである。この製造装置は、ディッピング工程7から時効工程8までを連続して行う装置の例である。
図4に示す製造装置11は、3つの室に分かれており、図中左から順に、浸漬槽12、第1の加熱処理室13、第2の加熱処理室14が配置されている。浸漬槽12は、合金溶湯15を収容する槽であり、ここでディッピング処理が行われる。第1の加熱処理室13や第2の加熱処理室14は、例えば抵抗加熱や温風によりディッピング後の希土類磁石に対して時効処理が行われる。本例では、2つの加熱処理室13,14が設置されているが、これに限らず、3以上の加熱処理室を設けてもよいし、逆に加熱処理室を1つだけ設置するようにしてもよい。第1の加熱処理室13と第2の加熱処理室14では、第1の加熱処理室13の方が設定温度(加熱処理温度)が高くなるように設定されている。なお、温風を使った場合、ディッピング後の湯切りや第2の加熱処理温度への磁石自体の冷却が迅速に行なわれるという利点がある。
このような製造装置を用いることで、ディッピング処理から時効処理までの一連の工程を連続的に行うことができる。すなわち、図5(a)に示すように、機械加工を施した磁石素体16を浸漬槽12に移動し、合金溶湯15中に浸漬してディッピング処理を行う。次いで、磁石素体16を合金溶湯15から引き上げ、図5(b)に示すように、第1の加熱処理室13に移動する。第1の加熱処理室13では、例えば700℃で第1段目の時効処理を行う。このとき、温風により磁石素体1を加熱するが、ディッピングの余熱を利用して1段目の時効処理を行うことも可能である。最後に、図5(c)に示すように、ディッピング処理した磁石素体16を第2の加熱処理室14に移動し、例えば450〜650℃で第2段目の時効処理を行う。
次に、本発明の具体的な実施例について、実験結果を基に説明する。
<希土類磁石の作製>
先ず、NdFeB系焼結磁石として、Nd25.5原子%、Pr4.5原子%、Al0.2原子%、B1原子%、Cu0.06原子%、Co1原子%、残部Feからなる希土類焼結磁石(磁石素材)を用意した。これを試料1とする。
次に、この希土類焼結磁石を機械加工によって切断し、10mm×10mm×0.5mm(厚さ)の磁石素体とした。これを試料2とする。
さらに、試料2を磁石素体としてディッピング処理及び時効処理を行い、試料3〜試料6を作製した。なお、試料3では、合金溶湯組成をPr79原子%、残部Feとし、670℃、40分間の条件でディッピング処理を行った。時効処理は無しである。試料4では、合金溶湯組成をNd40原子%、Pr40原子%、残部Feとし、710℃、10分間の条件でディッピング処理を行った。時効処理は、600℃、25分間なる条件で行った。試料5では、合金溶湯組成をNd60原子%、Pr15原子%、Tb5原子%、残部Feとし、800℃、10分間の条件でディッピング処理を行った。時効処理は、600℃、25分間なる条件で行った。試料6では、合金溶湯組成をNd55原子%、Pr10原子%、Dy15原子%、残部Feとし、900℃、10分間の条件でディッピング処理を行った。時効処理は、600℃、25分間なる条件で行った。試料3〜試料6については、ディッピング処理後、あるいは時効処理後、表面に残った希土類リッチ合金を取り除くため、簡単な研削加工を施した。
<評価>
作製した各希土類磁石について、残留磁束密度Br、保磁力iHc、エネルギー積(BH)m、角型性を測定した。磁石特性[残留磁束密度Br、エネルギー積(BH)m、保磁力iHc、]の測定は、B−Hトレーサーを用いて行った。角型性は、B−Hループにおいて、磁化Bが残留磁化Brより10%低下した点での磁界Hkと、磁化Bがゼロとなる点での磁界(保磁力iHc)との比率(Hk/iHc)より算出した。結果を表1に示す。
Figure 0004433282
この表1から明らかなように、希土類元素を主体とする合金溶湯へのディッピング処理により、加工前の磁石素材(試料1)の磁気特性に匹敵する磁石特性を有する希土類磁石が得られることがわかる。機械加工を施した磁石素体(試料2)は、そのままでは磁気特性の劣化が大きい。
<磁石素体の厚さに関する検討>
先ず、NdFeB系焼結磁石として、Nd23原子%、Pr4.5原子%、Dy2.5原子%、Co3.5原子%、B1原子%、Ga0.35原子%、残部Feからなる希土類焼結磁石(磁石素材)を用意した。これを試料7とする。
次に、この試料7を機械加工によって切断し、10mm×10mm×0.5mm(厚さ)の磁石素体とした。これを試料8とする。さらに、試料8を磁石素体としてディッピング処理及び時効処理を行い、試料9を作製した。試料9では、合金溶湯組成をNd20原子%、Pr30原子%、Dy30原子%、残部Feとし、900℃、10分間の条件でディッピング処理を行った。時効処理は、600℃、25分間なる条件で行った。
一方、試料7を機械加工によって切断し、10mm×10mm×2.5mm(厚さ)の磁石素体とした。これを試料10とする。さらに、試料10を磁石素体としてディッピング処理及び時効処理を行い、試料11を作製した。試料11では、合金溶湯組成をNd20原子%、Pr30原子%、Dy30原子%、残部Feとし、900℃、10分間の条件でディッピング処理を行った。時効処理は、600℃、25分間なる条件で行った。
これら試料7〜試料11についても、残留磁束密度Br、保磁力iHc、エネルギー積(BH)m、角型性を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0004433282
表2から明らかなように、ディッピング処理による磁気特性の回復効果は、厚さ2.5mmの磁石素体を用いた試料11よりも、1mm以下である厚さ0.5mmの磁石素体を用いた試料9において著しい。
希土類磁石の製造プロセスの一例を示すフローチャートである。 DyFe系合金の状態図である。 NdFe系合金の状態図である。 ディッピング工程及び時効工程を連続的に行う製造装置の一例を模式的に示す図である。 図4に示す製造装置による製造プロセスを示す図であり、(a)はディッピング工程、(b)は第1段目の時効工程、(c)は第2段目の時効工程を示す。
符号の説明
1 合金化工程、2 粗粉砕工程、3 微粉砕工程、4 磁場中成形工程、5 焼結工程、6 機械加工工程、7 ディッピング工程、8 時効工程、9 研削加工工程、11 製造装置、12 浸漬槽、13 第1の加熱処理室、14 第2の加熱処理室、15 合金溶湯、16 磁石素体

Claims (12)

  1. 希土類元素、遷移金属元素及びホウ素を含む原料合金微粉を成形した成形体を焼結して希土類焼結磁石を作製し、当該希土類焼結磁石を機械加工により所定の厚さに加工して磁石素体とし、
    前記磁石素体を希土類元素を主体とし融点1000℃以下の合金溶湯に浸漬することを特徴とする希土類磁石の製造方法。
  2. 前記磁石素体としてNdFeB系希土類焼結磁石を用いることを特徴とする請求項1記載の希土類磁石の製造方法。
  3. 前記所定の厚さが2mm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の希土類磁石の製造方法。
  4. 前記合金溶湯は、50原子%以上の割合で希土類元素を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の希土類磁石の製造方法。
  5. 前記磁石素体に含まれる希土類元素の割合よりも、前記合金溶湯に含まれる希土類元素の割合の方が大であることを特徴とする請求項4記載の希土類磁石の製造方法。
  6. 前記合金溶湯への浸漬が時効処理の少なくとも一部を兼ねることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の希土類磁石の製造方法。
  7. 前記合金溶湯への浸漬後、450℃〜650℃で時効処理を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の希土類磁石の製造方法。
  8. 前記合金溶湯への浸漬時間が10分間〜1時間であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の希土類磁石の製造方法。
  9. 前記合金溶湯への浸漬後、表面に対して研削加工を施すことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の希土類磁石の製造方法。
  10. 希土類元素を主体とし融点1000℃以下の合金溶湯が収容される浸漬槽と、少なくとも1以上の加熱室とを備え、浸漬後に所定の温度で加熱されるようにこれら浸漬槽と加熱室とが配列され、
    希土類元素、遷移金属元素及びホウ素を含む原料合金微粉を成形した成形体を焼結して作製された希土類焼結磁石を機械加工により所定の厚さに加工した磁石素体を、前記浸漬槽から加熱室へと移動させることで、合金溶湯に浸漬するディッピング処理から時効処理までの一連の工程が連続的に行われることを特徴とする希土類磁石の製造装置。
  11. 段階的に温度が低下するように複数の加熱室が配列されていることを特徴とする請求項10記載の希土類磁石の製造装置。
  12. 前記加熱室は、温風により加熱されることを特徴とする請求項10又は11記載の希土類磁石の製造装置。
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