JP2018127673A - 高炉出銑孔充填用マッド材 - Google Patents
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Abstract
【課題】マッド材に要求される耐摩耗性及び耐食性を確保しつつ、接着性を向上できるマッド材を提供する。【解決手段】マッド材の耐火原料中に、鉱物組成としてのマスコバイトの含有量が３質量％以上９質量％以下である蝋石を１０質量％以上５０質量％以下含有させ、耐火原料中の炭素原料の含有量を３０質量％以下（０を含む。）とする。【選択図】なし
Description
本発明は、高炉出銑孔充填用マッド材に関する。
高炉出銑孔充填用マッド材（以下、単に「マッド材」ともいう。）は、高炉において出銑終了後の出銑孔を閉塞する練り土状の材料であり、マッドガンを用いて出銑孔に充填される。近年の高炉の大型化や高圧操業によって、マッド材の使用環境は過酷化の一途をたどっている。
マッド材に要求される特性としては、耐摩耗性、スラグや溶銑に対する耐食性がある。耐摩耗性や耐食性を向上させる技術としては、炭素原料、炭化珪素原料、アルミナ原料等に白雲母を加えてなるマッド材が知られている（例えば、特許文献１参照）。
特許文献１に記載のマッド材は、炭素原料（黒鉛、コークス等）を多量（マッド材中に６０〜８０重量％）含むものである。しかし、本願発明者らによる試験及び検討の結果、炭素原料が多量であるマッド材は、耐摩耗性及び耐食性に劣ることが判明した。
また、特許文献１によると、白雲母が９００℃以上の高温域で反応してマッド材の耐食性（耐スラグ性）及び強度の向上に寄与するとされているが（第２頁右下欄第１６行〜第３頁左上欄第８行）、本願発明者らによる試験及び検討の結果、特許文献１に記載のマッド材は、出銑孔（高炉炉壁）との接着性が十分とはいえず、いわゆる孔切れが生じる問題があることも判明した。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、マッド材に要求される耐摩耗性及び耐食性を確保しつつ、接着性を向上できるマッド材を提供することにある。
本願発明者らによる試験及び検討の結果、マッド材の接着性を向上するには出銑孔の長手方向中央領域でのマッド材の膨張を十分に確保することが重要であることが判明した。すなわち、出銑孔の長手方向中央領域の温度は６００〜１０００℃程度（以下、この温度域を「中間温度域」という。）であり、この中間温度域でのマッド材の膨張を十分に確保するということである。この観点から本願発明者らはマッド材の原料として蝋石に着目し、さらにその鉱物組成に着目して試験及び検討を重ねたところ、マスコバイトを適量含有する蝋石を使用することで、中間温度域でのマッド材の膨張を十分に確保できることが判明した。
すなわち、本発明の一観点によれば、次のマッド材が提供される。
「耐火原料を含む高炉出銑孔充填用マッド材であって、
耐火原料中に、鉱物組成としてのマスコバイトの含有量が３質量％以上９質量％以下である蝋石を１０質量％以上５０質量％以下含有し、
耐火原料中の炭素原料の含有量が３０質量％以下（０を含む。）である高炉出銑孔充填用マッド材。」
「耐火原料を含む高炉出銑孔充填用マッド材であって、
耐火原料中に、鉱物組成としてのマスコバイトの含有量が３質量％以上９質量％以下である蝋石を１０質量％以上５０質量％以下含有し、
耐火原料中の炭素原料の含有量が３０質量％以下（０を含む。）である高炉出銑孔充填用マッド材。」
本発明によれば、マッド材の耐摩耗性及び耐食性を確保しつつ、接着性を向上できる。
本発明のマッド材は、耐火原料中に、鉱物組成としてのマスコバイトの含有量が３質量％以上９質量％以下である蝋石を１０質量％以上５０質量％以下含有する。蝋石は、主要な鉱物組成としてパイロフェライト、石英等を含有するが、本発明では、上述のとおり中間温度域でのマッド材の膨張を十分に確保する点から、マスコバイト（化学組成がＫＡｌ２（Ｓｉ３Ａｌ）Ｏ１０（ＯＨ）２で表される鉱物）を３質量％以上９質量％以下含有する蝋石を使用する。蝋石中のマスコバイトの含有量が３質量％未満であると、中間温度域でのマッド材の膨張を十分に確保できず、接着性を向上することができない。一方、蝋石中のマスコバイトの含有量が９質量％超であると、マスコバイトの融点が低い（約１２５０℃）ため耐食性が低下する。蝋石中のマスコバイトの好ましい含有量は４質量％以上７質量％以下である。
また、耐火原料中の蝋石の含有量は１０質量％以上５０質量％以下とする。耐火原料中の蝋石の含有量が１０質量％未満であると、蝋石（マスコバイト）による接着性向上効果が十分には得られない。一方、耐火原料中に蝋石の含有量が５０質量％超であると、蝋石の耐火性が低いため耐食性が低下する。耐火原料中の蝋石の好ましい含有量は１５質量％以上３０質量％以下である。
本発明のマッド材において、耐火原料中の炭素原料の含有量は３０質量％以下（０を含む。）とする。耐火原料中の炭素原料の含有量が３０質量％を超えると、耐摩耗性及び耐食性が低下するからである。耐火原料中の炭素原料の含有量は１５質量％以下（０を含む。）であることが好ましく、５質量％以下（０を含む。）であることがより好ましい。ここで、炭素原料としてはコークス、黒鉛、無煙炭等が挙げられるが、本発明においてカーボンブラックは「炭素原料」から除かれるものとする。カーボンブラックは耐摩耗性を低下させないからである。
耐火原料中には上述の蝋石、炭素原料のほかに通常のマッド材に使用されている原料を含有することができる。例えば、アルミナ原料、窒化珪素原料、炭化珪素原料、カーボンブラック、粘土等を適宜含有することができる。そして、通常のマッド材と同様に耐火原料に適量の結合剤を添加する。結合剤としては、タール、ピッチ、フェノール樹脂等が挙げられ、その添加量は耐火原料に対して外掛けで１０質量％〜２０質量％程度が好ましい。また、必要によっては結合剤に対し、例えばクレオコートなどの溶剤が添加される。
表１に示した各例のマッド材について、耐摩耗性、耐食性（溶銑スラグに対する耐食性）及び接着性を評価した。
なお、表１中、「Mus含有量」とは蝋石中のマスコバイトの含有量のことを意味する。「その他の原料」とは窒化珪素原料、炭化珪素原料、カーボンブラック及び粘土である。「結合剤」としてはタールを使用し、耐火原料に対して外掛けで１５質量％又は２５質量％添加した。
なお、表１中、「Mus含有量」とは蝋石中のマスコバイトの含有量のことを意味する。「その他の原料」とは窒化珪素原料、炭化珪素原料、カーボンブラック及び粘土である。「結合剤」としてはタールを使用し、耐火原料に対して外掛けで１５質量％又は２５質量％添加した。
耐摩耗性、耐食性及び接着性については以下の要領で評価し、これらの評価結果に基づき総合評価を行った。
＜耐摩耗性＞
各例のマッド材を７ＭＰａで加圧成形した後、５００℃加熱のベーキング処理を行って得た試験片について、ＪＩＳＲ２２５２−１に規定する方法で摩耗量を測定し、実施例１の摩耗量を１００とする耐摩耗性指数を求めた。この耐摩耗性指数が小さいほど耐摩耗性に優れていることを示す。表１では、耐摩耗性指数が１２０以下の場合を◎（優）、１２０超１４０以下の場合を○（良）、１４０超の場合を×（不良）と表記した。
＜耐食性＞
各例のマッド材を７ＭＰａで加圧成形した後、５００℃加熱のベーキング処理を行って得た試験片を、銑鉄及び高炉スラグを侵食剤とする高周波炉に内張りし、１５５０℃×５時間の侵食試験を行った。侵食試験後、試験片の溶損寸法（最大溶損部位）を測定し、実施例１の溶損寸法を１００とする耐食性指数を求めた。この耐食性指数が小さいほど耐食性に優れていることを示す。表１では、耐食性指数が１２０以下の場合を◎（優）、１２０超１４０以下の場合を○（良）、１４０超の場合を×（不良）と表記した。
＜接着性＞
高炉炉壁を想定したカーボンれんがの中心部にΦ５０×５０ｍｍの貫通孔を設け、この貫通孔部分に各例のマッド材をアムスラーで成形した後、上下を拘束し、５００℃加熱のベーキング処理を行った。その後、還元雰囲気で中間温度域を想定した１０００℃×３時間の焼成を行い、焼成後、常温でマッド材の接着強度を測定した。この接着強度の測定時には、アムスラーにてカーボンれんが内のマッド材をくり抜くようにして接着強度の測定を行った。表１では、接着強度が２．５ＭＰａ以上の場合を◎（優）、１ＭＰａ以上２．５ＭＰａ未満の場合を○（良）、１ＭＰａ未満の場合を×（不良）と表記した。
＜総合評価＞
耐摩耗性、耐食性及び接着性の評価が全て◎（優）の場合を◎（優）、◎（優）又は○（良）の評価があり、×（不良）の評価がない場合を○（良）、×（不良）の評価がある場合を×（不良）とした。
＜耐摩耗性＞
各例のマッド材を７ＭＰａで加圧成形した後、５００℃加熱のベーキング処理を行って得た試験片について、ＪＩＳＲ２２５２−１に規定する方法で摩耗量を測定し、実施例１の摩耗量を１００とする耐摩耗性指数を求めた。この耐摩耗性指数が小さいほど耐摩耗性に優れていることを示す。表１では、耐摩耗性指数が１２０以下の場合を◎（優）、１２０超１４０以下の場合を○（良）、１４０超の場合を×（不良）と表記した。
＜耐食性＞
各例のマッド材を７ＭＰａで加圧成形した後、５００℃加熱のベーキング処理を行って得た試験片を、銑鉄及び高炉スラグを侵食剤とする高周波炉に内張りし、１５５０℃×５時間の侵食試験を行った。侵食試験後、試験片の溶損寸法（最大溶損部位）を測定し、実施例１の溶損寸法を１００とする耐食性指数を求めた。この耐食性指数が小さいほど耐食性に優れていることを示す。表１では、耐食性指数が１２０以下の場合を◎（優）、１２０超１４０以下の場合を○（良）、１４０超の場合を×（不良）と表記した。
＜接着性＞
高炉炉壁を想定したカーボンれんがの中心部にΦ５０×５０ｍｍの貫通孔を設け、この貫通孔部分に各例のマッド材をアムスラーで成形した後、上下を拘束し、５００℃加熱のベーキング処理を行った。その後、還元雰囲気で中間温度域を想定した１０００℃×３時間の焼成を行い、焼成後、常温でマッド材の接着強度を測定した。この接着強度の測定時には、アムスラーにてカーボンれんが内のマッド材をくり抜くようにして接着強度の測定を行った。表１では、接着強度が２．５ＭＰａ以上の場合を◎（優）、１ＭＰａ以上２．５ＭＰａ未満の場合を○（良）、１ＭＰａ未満の場合を×（不良）と表記した。
＜総合評価＞
耐摩耗性、耐食性及び接着性の評価が全て◎（優）の場合を◎（優）、◎（優）又は○（良）の評価があり、×（不良）の評価がない場合を○（良）、×（不良）の評価がある場合を×（不良）とした。
表１に示すとおり、本発明の範囲内にある実施例１から９は、総合評価が◎（優）又は○（良）であり、良好な結果が得られた。すなわち、耐火原料中の蝋石及び炭素原料の含有量、並びに蝋石中のマスコバイトの含有量を本発明の範囲内とすることで、マッド材の耐摩耗性及び耐食性を確保しつつ、接着性を向上できることが確認された。なお、耐火原料中の蝋石及び炭素原料の含有量、並びに蝋石中のマスコバイトの含有量が好ましい範囲内にある実施例１、７、８、９は、総合評価が◎（優）であり、特に良好であった。
これに対して、比較例１は耐火原料中の蝋石の含有量が少ない例で、接着性が低下した。
比較例２は耐火原料中の蝋石の含有量が多い例で、耐食性が低下した。
比較例３は蝋石中のマスコバイトの含有量が少ない例で、接着性が低下した。
比較例４は蝋石中のマスコバイトの含有量が多い例で、耐食性が低下した。
比較例５は耐火原料中の炭素原料の含有量が多い例で、耐摩耗性が低下した。加えて、耐火原料中の炭素原料の含有量が多いため、結合剤の量が増加し、マッド材の組織が粗になるため、耐食性が低下した。
比較例２は耐火原料中の蝋石の含有量が多い例で、耐食性が低下した。
比較例３は蝋石中のマスコバイトの含有量が少ない例で、接着性が低下した。
比較例４は蝋石中のマスコバイトの含有量が多い例で、耐食性が低下した。
比較例５は耐火原料中の炭素原料の含有量が多い例で、耐摩耗性が低下した。加えて、耐火原料中の炭素原料の含有量が多いため、結合剤の量が増加し、マッド材の組織が粗になるため、耐食性が低下した。
Claims (4)
- 耐火原料を含む高炉出銑孔充填用マッド材であって、
耐火原料中に、鉱物組成としてのマスコバイトの含有量が３質量％以上９質量％以下である蝋石を１０質量％以上５０質量％以下含有し、
耐火原料中の炭素原料の含有量が３０質量％以下（０を含む。）である高炉出銑孔充填用マッド材。 - 前記蝋石中の前記マスコバイトの含有量が４質量％以上７質量％以下である請求項１に記載の高炉出銑孔充填用マッド材。
- 前記耐火原料中に、前記蝋石を１５質量％以上３０質量％以下含有する請求項１又は２に記載の高炉出銑孔充填用マッド材。
- 前記耐火原料中の前記炭素原料の含有量が１５質量％以下（０を含む。）である請求項１から３のいずれか一項に記載の高炉出銑孔充填用マッド材。
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