JP2018127453A - 水溶性分子複合体、水溶性分子複合体含有油剤、及び分散液 - Google Patents

水溶性分子複合体、水溶性分子複合体含有油剤、及び分散液 Download PDF

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Abstract

【課題】有機溶剤を含む液剤中において、両親媒性分子により構成される親水部会合構造内に存在させた水溶性分子の、機能低下が抑制された水溶性分子複合体を提供する。【解決手段】両親媒性分子により構成される親水部会合構造内に存在させた水溶性分子の水溶液を脱水させるにあたり、予め前記水溶液に多価アルコールを添加しておくことで前記水溶性分子の立体配座を維持した。また、前記水溶性分子が塩化リゾチームであることにも特徴を有する。【選択図】なし

Description

本発明は、水溶性分子複合体、水溶性分子複合体含有油剤、及び分散液に関する。
従来、医薬品の分野において、所定の成分を所望する部位に効率的に作用させるために、体内の薬物分布を量的・空間的・時間的に制御するというドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System, DDS)の概念を応用した製品が種々提案されている。
また近年においてこのドラッグデリバリーシステムの概念は、医薬品の分野にとどまらず、化粧品や食品の分野にまでその応用範囲が広がりつつある。
ドラッグデリバリーシステムを実現する手段としては、これまでにエマルションを応用する技術や、徐放製剤化する技術、抗体を用いる技術などが提案されているが、なかでもエマルションを応用する技術は、比較的容易かつ安価に成分運搬体の構築が可能であり、化粧品や食品に新たな機能性の付与可能な技術として期待されている。
例えば、所定の水溶性分子を水相に含むW/Oエマルションに対して加熱脱水や真空脱水を施し、水分を除去して水溶性分子を析出させて固体状態とすることにより油中分散固体を製造する技術(以下、固体分散技術と称する。)は、上記エマルション応用技術の延長線上に位置する技術でありながら、従来のエマルション応用技術が抱えていた微粒子化という課題を解決する技術として注目を浴びている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2009−084293号公報
ところで、所定の水溶性化合物や酵素などの水溶性分子は、有機溶剤中において安定に存在させることが困難である。
例えば、水溶性分子が酵素である場合、有機溶剤中においては親水性ドメインや疎水性ドメインの位置関係に狂いが生じ、容易にその活性が失われてしまう。
しかし、水溶性分子を有機溶剤中に安定に存在させる技術は、医薬品を初め化粧品や食品の分野において必要とされており、この点、前述した固体分散技術は、水溶性分子を有機溶剤中において安定に存在させるに際し、極めて有用な解決手段を提供している。
ただ、これまで本発明者が行ってきた固体分散技術に関する試験研究を踏まえると、内包させた水溶性分子の機能が十分に発揮されないケースがあることが見出された。
そして更なる鋭意研究を重ねるうちに、内包させた水溶性分子の機能が十分に発揮されない原因は、内包させた水溶性分子の立体配座が水分の除去に伴って変化するためではないかとの着想を得た。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、有機溶剤を含む液剤中において、両親媒性分子により構成される親水部会合構造内に存在させた水溶性分子の機能低下が抑制された水溶性分子複合体を提供する。
また本発明では、親水部会合構造内に存在させた水溶性分子の機能低下が抑制された水溶性分子複合体含有油剤やその分散液についても提供する。
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る水溶性分子複合体では、両親媒性分子により構成される親水部会合構造内に存在させた水溶性分子の水溶液を脱水させるにあたり、予め前記水溶液に多価アルコールを添加しておくことで前記水溶性分子の立体配座を維持することとした。
また、本発明に係る水溶性分子複合体では、前記水溶性分子が塩化リゾチームであることにも特徴を有する。
また、本発明に係る水溶性分子複合体では、前記多価アルコールがポリエチレングリコールであることにも特徴を有する。
また、本発明に係る水溶性分子複合体含有油剤では、前記水溶性分子複合体が油中に分散した状態であることとした。
また、本発明に係る分散液では、前述の水溶性分子複合体含有油剤を両親媒性分子を含んだ水溶液に分散させた状態であることとした。
本発明に係る水溶性分子複合体によれば、両親媒性分子により構成される親水部会合構造内に存在させた水溶性分子の水溶液を脱水するにあたり、予め前記水溶液に多価アルコールを添加しておくことで前記水溶性分子の立体配座の維持が可能であるため、有機溶剤を含む液剤中において、両親媒性分子により構成される親水部会合構造内に存在させた水溶性分子の機能低下が抑制された水溶性分子複合体を提供することができる。
また、水溶性分子を塩化リゾチームとすれば、例えば同塩化リゾチームを含む水溶性分子複合体にて皮膚外用剤を調製した場合、従来と比較し経時的な機能低下も抑制されるため、長期にわたって一定の抗炎症作用を発揮させることができる。
また、本発明に係る水溶性分子複合体含有油剤によれば、水溶性分子複合体が油中に分散してなることとしたため、油性の医薬品や化粧料、食品において、安定した水溶性分子複合体により水溶性分子を所望の標的部位に到達させたり、水溶性分子に由来する機能性を付与することができる。
また、本発明に係る分散液によれば、両親媒性分子を含んだ水溶液に上記水溶性分子複合体含有油剤を分散させることとしたため、水性の医薬品や化粧料、食品において、安定した水溶性分子複合体により水溶性分子を所望の標的部位に到達させたり、水溶性分子に由来する機能性を付与することができる。
本発明は、両親媒性分子により構成される親水部会合構造内に存在させた水溶性分子の水溶液を脱水させるにあたり、予め前記水溶液に多価アルコールを添加しておくことで前記水溶性分子の立体配座を維持した水溶性分子複合体を提供するものである。
ここで両親媒性分子は、脱水前のW/Oエマルションを安定的に保つことができるものであれば良い。このような両親媒性分子としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル系やグリセリン脂肪酸エステル系、ソルビタン脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系、脂肪酸塩系、シリコーン系、フッ素系等の合成界面活性剤やレシチン等の天然界面活性剤とすることができる。また、両親媒性分子は、一種類であっても良く、複数種類であっても良い。
また、親水部会合構造は、複数の両親媒性分子の親水部が水分の存在等により集合したり、疎水部が疎水性の高い物質に配向することで結果的に親水部が集合することで形成される構造と解することができる。
水溶性分子は、水に溶解可能な分子であれば特に限定されるものではなく、有機化合物や無機化合物のいずれでも良い。また、酵素の如きタンパク質やペプチドであっても良く、これらの混合物であっても良い。例えば酵素としては、国際生化学分子生物学連合(旧国際生化学連合)によりEC 1.X.X.X:酸化還元酵素、EC 2.X.X.X:転移酵素、EC 3.X.X.X:加水分解酵素、EC 4.X.X.X:付加脱離酵素、EC 5.X.X.X:異性化酵素、EC 6.X.X.X:リガーゼ(Xは数字)に分類されたEC番号(酵素番号、Enzyme Commission numbers)の水溶性の酵素が挙げられる。また、水溶性であり免疫作用・抗腫瘍作用・抗ウイルス作用・細胞増殖や分化等の作用を示すタンパク質やペプチド(以下、水溶性サイトカイン)や、水溶性サイトカインを含むプラセンタ、幹細胞の培養液等のエキス類、またはアスコルビン酸等の水溶性ビタミン類やその塩および誘導体、ヒアルロン酸等の水溶性粘性物であっても良い。
脱水は、親水部会合構造が合一しなければ特に限定されるものではなく、加熱脱水や減圧脱水等の方法を採用することができる。例えば、真空脱水する場合は、温度と真空度を調整しながら脱水できるエバポレーターのような市販の装置を使用することもできる。また、0℃以下の温度で油剤が液体である場合は、凍結した水相を真空脱気することにより昇華を伴って脱水する、いわゆる凍結乾燥を用いることもできる。
そして、本実施形態に係る水溶性分子複合体において特徴的な点としては、親水部会合構造内に存在させた水溶性分子の水溶液中に、多価アルコールを添加している点が挙げられる。
多価アルコールを添加しておくことで、水溶性分子の立体配座が維持される機序については現時点において必ずしも明らかではないが、本発明者は、水溶性分子近傍に存在している多価アルコールが脱水に伴って水溶性分子の周囲に集合し、あたかも水溶性分子を多価アルコールにて形成された型枠で強固に固めたような状態となるため、脱水前に水溶性分子が有している立体配座(以下、脱水前配座と称する。)が、脱水後においても保持されるものと考えている。
従って、水溶性分子複合体内の水溶性分子は、水分除去に伴う機能低下が抑制されることで脱水前の機能を保持することができ、水溶性分子に期待される機能、例えば、薬理活性や生理活性、食品としての機能を十分に発揮させることができる。
ここで多価アルコールは特に限定されるものではなく、例えば、エチレングリコールやプロピレングリコール、ブチレングリコール等のジオールや、グリセリン等のトリオールはもちろん、ポリエチレングリコール等の高分子系多価アルコールも用いることができる。
特にポリエチレングリコールを多価アルコールとして使用すれば、鎖状の重合体であるため、水溶性分子の立体配座をより強固に保持することができる。
ところで、水溶性分子の中には、水の存在によって不安定化が助長されてしまうような分子が存在する。
例えば、酵素などの分子はその多くが水の存在により活性化するものであるが、また同時に水が存在することで立体配座が変化し不活性化される可能性も高まってしまう。
また更なる一例としてビタミン類にあっては、水の存在によって光や酸化の影響を受けやすくなり、立体配座が変化して期待されていた作用が体内において発揮されなくなる場合も考えられる。
更には、前述した従来の固体分散技術は、水溶性分子を所望する部位へ効率的に到達できる技術ではあるものの、水溶液の脱水過程で完全に水分を除去することは困難な場合もあり、内包させる水溶性分子の種類によっては、その水溶性分子に期待される機能を十分に発揮できない場合も考えられる。
一方、本実施形態に係る水溶性分子複合体は、このような水分が残存するケースにおいても、水溶性分子の脱水前配座をしっかりと保持することができ、水溶性分子に期待される機能を十分に発揮させることができる。
本実施形態に係る水溶性分子複合体について別の表現をするならば、例えば、水の存在により不安定化が助長される水溶性分子と、同水溶性分子を溶解するのに不十分な量の水分とを備える核部と、親水部が前記核部に配向する両親媒性分子で構成された前記核部を囲繞する殻部と、を備えた水溶性分子複合体において、前記核部の水溶性分子の周囲に同水溶性分子よりも親水性の高い高親水分子、例えば多価アルコール分子を配置して、前記水溶性分子の前記水分に由来する機能性の低下を抑制すべく構成したことを特徴とする水溶性分子複合体であるとも言える。
更に付言すれば、本実施形態に係る水溶性分子複合体は、複数の両親媒性分子により構成される親水部会合構造内に、水の減少に伴い結晶化が助長される水溶性分子と、同水溶性分子を溶解するのに不十分な量の水分とを備えた水溶性分子複合体であって、前記水溶性分子の周囲に多価アルコール分子を配置して、前記水溶性分子の立体配座を維持すべく構成したことを特徴とする水溶性分子複合体とも言える。
また本実施形態に係る水溶性分子複合体は、水溶性分子を塩化リゾチームとしても良い。
塩化リゾチームは、例えば外皮用として皮膚潰瘍や褥瘡に適応の消炎酵素剤として利用されているが、前述した従来の固体分散技術では、水溶性分子として塩化リゾチームを用いて水溶性分子複合体を調製しても、十分な効果を発揮させることは困難であった。
一方、水溶性分子を塩化リゾチームとした本実施形態に係る水溶性分子複合体によれば、塩化リゾチームの脱水前配座が強固に維持されるため、活性の高い塩化リゾチームを効率良く標的部位へ供給することができ、塩化リゾチーム製剤として極めて有用である。
また、本実施形態に係る水溶性分子複合体は、内包した水溶性分子を有機溶剤中において安定的に保持しうる点で特徴的である。この有機溶剤は、物質を溶かす性質を有する有機化合物であれば特に限定されるものではない。特に代表的には、油を挙げることができ、本実施形態に係る水溶性分子複合体含有油剤では、水溶性分子複合体が油中に分散してなることとしている。
ここで、油剤の母剤となる油は特に限定されるものではなく、例えば大豆油、ヒマシ油、オリーブ油、サフラワー油、ホホバ油等の植物油や、牛脂や魚油等の動物油のような生物由来の油のほか、流動パラフィンやスクワラン等の炭化水素、リノール酸やリノレン酸等の脂肪酸類、ヘキサンやトルエン等の有機溶媒、シリコーン油やフッ素系油等の合成油、鉱物系油剤等を使用することができる。特に、両親媒性分子としてグリセリン脂肪酸エステル系の界面活性剤を用いる場合には、植物油や脂肪酸類の油等を使用するのが好ましいが、他の油や両親媒性分子を併用することで流動パラフィンやスクワランを用いることもできる。また、本発明の効果を妨げない範囲内において、必要に応じて、例えば抗酸化剤、香料、着色料等の添加物を加えることもできる。
そして、このような水溶性分子複合体含有油剤によれば、油性の医薬品や化粧料、食品において、安定した水溶性分子複合体により水溶性分子を所望の標的部位に到達させたり、水溶性分子に由来する機能性を付与することができる。
また、本実施形態に係る分散液は、両親媒性分子を含んだ水溶液に水溶性分子複合体含有油剤を分散状態で存在させることとしている。
水溶液は両親媒性分子を含有し、水溶性分子複合体含有油剤の分散を妨げたり、水溶性分子複合体の構造を破壊するものでなければ特に限定されるものではなく、水と両親媒性分子以外に他の成分を含んでいても良い。
また、両親媒性分子は、先に言及した水溶性分子複合体を構成する両親媒性分子と同じものであっても良く、また、異なる両親媒性分子を用いるようにしても良い。また、両親媒性分子は、一種類であっても良く、複数種類であっても良い。両親媒性分子としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の非イオン系性界面活性剤や、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸エステル塩、脂肪酸石鹸等の陰イオン系界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性界面活性剤、塩化ベンザルコニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等の陽イオン系界面活性剤を用いることができる。
そして、本実施形態に係る分散液によれば、水性の医薬品や化粧料、食品において、安定した水溶性分子複合体により水溶性分子を所望の標的部位に到達させたり、水溶性分子に由来する機能性を付与することができる。
以下、本実施形態に係る水溶性分子複合体、水溶性分子複合体含有油剤、及び分散液に関し、製造例や各種実験等を参照しながら詳説する。
〔1.水溶性分子複合体及び水溶性分子複合体含有油剤の調製〕
まず、水溶性分子として塩化リゾチームを用い、本実施形態に係る水溶性分子複合体の調製を行った。
200mlのビーカーに水溶性分子としての10gの塩化リゾチームと、多価アルコールとしての1gのポリエチレングリコールとを量り取り、89gの水を加えてスターラーにより攪拌することで10wt%の塩化リゾチーム水溶液を100g調製した。
次に、500mlのビーカーに予め分注した両親媒性分子としての5gのポリグリセリン脂肪酸エステルと、81.5gのオリーブ油に対し、100gの塩化リゾチーム水溶液を添加し、ホモジナイザーにて十分に乳化を行い200mlの乳化液を得た。
次に、200gの乳化液を分注した500ml容量のナスフラスコをエバポレーターにセットし、60℃にウォーターバスを設定した上で、60mmHgの減圧下で30分間脱水工程を行った。
そして、エバポレーターからナスフラスコを取り外し、回収した内容液を、本実施形態に係る水溶性分子複合体を含む水溶性分子複合体含有油剤とした。なお、本剤に含有される水分量は2.5%であり、塩化リゾチームの力価は0.1mg(力価)/mgであった。
〔2.立体構造保持確認試験〕
本試験では、塩化リゾチームの活性の経時変化を、本実施形態に係る水溶性分子複合体とした場合としていない場合とで比較することにより、経時的な活性低下が少ないほど立体構造が保持されているものとして、立体構造保持状態の確認試験を行った。
具体的には、〔1.水溶性分子複合体及び水溶性分子複合体含有油剤の調製〕で得た水溶性分子複合体含有油剤、多価アルコール(ポリエチレングリコール)を使用することなく水溶性分子複合体含有油剤と同様の方法により調製した油剤、塩化リゾチーム粉末のいずれかをそれぞれ同じ力価となるよう50%エタノール水溶液に添加して試料溶液を調製し、40℃にて最大4ヶ月間に亘り安定性加速試験を行うことで検討を行った。なお、以下の説明において水溶性分子複合体含有油剤を添加して調製した試料溶液を「複合体含有溶液X」と称し、多価アルコールを含有しない油剤を添加して調製した試料溶液を「比較溶液Y1」と称し、塩化リゾチーム粉末を添加して調製した試料溶液を「比較溶液Y2」と称する。
また、活性の確認は1ヶ月毎に行った。活性の測定方法は次の通りである。すなわち、試料溶液1.5gを量り取り、POE硬化ヒマシ油5%配合エタノール試液10mLを加え激しく振り混ぜた後、pH3.0のリン酸塩緩衝液に溶かして100 mLとし、この液から1mLを分取し、pH3.0のリン酸塩緩衝液を加えて100 mLとして活性測定用試料溶液とした。
また、リゾチーム標準品(別途日局 リゾチーム塩酸塩の規格に従い、乾燥減量を測定したもの)約60 mg(力価)に対応する量を精密に量り、pH 3.0のリン酸塩緩衝液に溶かて100 mLとし、この液から1mLを分取し、pH3.0のリン酸塩緩衝液に溶かして100 mLとし、さらにこの液から10 mLを分取してpH3.0のリン酸塩緩衝液を加えて100 mLとし、活性測定用標準溶液とした。
また、活性測定にあたっては、塩化リゾチーム用基質試液3.0mLを量り、35℃の水浴中で3分間加温し、これにあらかじめ35℃の水浴中で3分間加温した活性測定用試料溶液3.0mLを加え、35℃で10分間放置した後、直ちに水を対照とし、紫外可視吸光度測定法により、波長640nmにおける吸光度Atを測定する。
また別に活性測定用標準溶液及びpH3.0の塩酸試液のそれぞれ3.0mLにつき、活性測定用試料溶液と同様に操作し、吸光度As及びAbを測定する。さらに塩化リゾチーム用基質試液をpH6.2のリン酸塩緩衝液に換えて、活性測定用試料溶液3.0mLにつき同様に操作し、吸光度Axを測定する。
そして、下記式に基づいて1g中のリゾチームの量[mg(力価)]を算出し、更に配合理論値で割って、パーセント換算を行った。
本品1g中のリゾチームの量[mg(力価)]
=MS/(MT×10) × ( Ab+Ax−At ) / (Ab−As)
MS:乾燥物に換算したリゾチーム標準品の秤取量(mg)
MT:本品の秤取量(g)
このようにして得られた結果を表1に示す。
Figure 2018127453
表1に示す結果からも分かるように、複合体含有溶液Xは、比較溶液Y1や比較溶液Y2と比較して4ヶ月もの長期に亘り高い力価を保持しており、有機溶剤を含む液剤中において立体構造が良好に維持され、両親媒性分子により構成される親水部会合構造内に存在させた水溶性分子の機能低下が抑制されることが示された。
〔3.抗炎症効果確認試験〕
本試験では、多価アルコールが配合された本実施形態に係る水溶性分子複合体と、多価アルコールを配合していない比較用の製剤とについて抗炎症効果を検討することで、多価アルコールの有無による効果の違いについて確認を行った。
具体的には、〔1.水溶性分子複合体及び水溶性分子複合体含有油剤の調製〕で得た水溶性分子複合体含有油剤、多価アルコール(ポリエチレングリコール)を使用することなく水溶性分子複合体含有油剤と同様の方法により調製した油剤をそれぞれ調製し、被験者4名の被験部位に対し4週間塗布し、試験前後の状態を皮膚科医による目視にて確認した。
試験方法は、プラセボ対照二重盲検比較試験とし、被験者及び評価者(医師)が試料の内容物を把握できないようにした。また、被験部位は左前腕内側とし、テープストリッピングを被験部位において20回実施することで、被験部位に炎症を再現した。また、塗布量は適量とし、使用条件として1日1回の就寝前とした。
また、被験者の選定については、事前にインフォームドコンセントを行い、試験参加可能な健常者を選定した。なお、除外規定として、化粧品に対するアレルギーの既往歴のある者、ホルモン補充治療を受けている者、妊娠中並びに授乳中の者、被験部位に影響を与えるような美容医療の経験のある者、その他として試験に関与する医師が適切ではないと認める者、を規定した。
また、判定は使用前及び継続使用4週間後に、皮膚科医の目視にて判定した。
また、以下の説明において、水溶性分子複合体含有油剤を添加して調製した試料溶液を「複合体含有溶液X」と称し、多価アルコールを含有しない油剤を添加して調製した試料溶液を「比較液Y1」と称する。尚、被験試料は、恒温槽(40℃)に6ヶ月保管した試料を準備した。
このようにして得られた結果を表2に示す。
Figure 2018127453
表2に示す結果からも分かるように、複合体含有溶液Xは、比較溶液Y1と比較して、塩化リゾチームが有する抗炎症作用が顕著に現れており、有機溶剤を含む液剤中において、両親媒性分子により構成される親水部会合構造内に存在させた水溶性分子の効果が持続的に発揮されることが示された。
〔4.各種水溶性分子を用いた水溶性分子複合体含有油剤の調製〕
まず、水溶性分子としてプラセンタを用い、本実施形態に係る水溶性分子複合体の調製を行った。
200mlのビーカーに水溶性分子としての1gのプラセンタと、多価アルコールとしての1gのポリエチレングリコールとを量り取り、98gの水を加えてスターラーにより攪拌することで1wt%のプラセンタ水溶液を100g調製した。
次に、500mlのビーカーに予め分注した両親媒性分子としての5gのポリグリセリン脂肪酸エステルと、81.5gのオリーブ油に対し、100gのプラセンタ水溶液を添加し、ホモジナイザーにて十分に乳化を行い200mlの乳化液を得た。
次に、200gの乳化液を分注した500ml容量のナスフラスコをエバポレーターにセットし、60℃にウォーターバスを設定した上で、60mmHgの減圧下で30分間脱水工程を行った。
そして、エバポレーターからナスフラスコを取り外し、回収した内容液を、本実施形態に係る水溶性分子複合体を含む水溶性分子複合体含有油剤とした。
また、プラセンタに限らず、前述の方法によりプロテオグリカンや幹細胞培養液などの水溶性分子についても同様の手順により、水溶性分子複合体含有油剤を調製することが可能である。
〔5.ヒアルロン酸混合液の保湿効果継続確認試験〕
肌への保湿効果を有するヒアルロン酸ナトリウム、アセチルヒアルロン酸ナトリウムおよび加水分解ヒアルロン酸を混合した混合液を、〔4.各種水溶性分子を用いた水溶性分子複合体含有油剤の調製〕により調製した場合には、水溶性分子複合体含有油剤としない通常のヒアルロン酸混合液と比較して、肌に塗布した場合の保湿感が向上することが示された。
具体的には、水溶性分子としてヒアルロン酸ナトリウム、アセチルヒアルロン酸ナトリウム及び加水分解ヒアルロン酸を用い、〔1.水溶性分子複合体及び水溶性分子複合体含有油剤の調製〕で得た水溶性分子複合体含有油剤、多価アルコールを使用することなく水溶性分子複合体含有油剤と同様の方法により調製した油剤をそれぞれ調製し、被験者の被験部位に塗布し、試験前後の皮膚水分量を測定した。
また、被験者数は12名の男女(男性6名、女性6名)とし、被験部位は左前腕内側とした。
また、被験試料は、恒温槽(40℃)に2ヶ月保管した試料を準備した。
また、測定方法は、被験者を試験室に入室させ、被験部位である左の前腕内側を露出させて、10分間室内環境に馴化させた。次に、2×2cmの試験区を実施する検体数分設定し、塗布直前として、皮膚水分量を測定した。次に被験試料を5μl(1.25μl/cm2)塗布し、所定の時間に皮膚水分量を測定した。皮膚水分量の測定は3回測定して、平均値を測定値として用いた。保湿性評価におけるデータ処理については、塗布前を100%とし、その相対値を算出して統計処理を行った。
また、被験者は試験中、静かに椅子に座らせ、極力動かないように指示した。また、試験区の設定は、一定した場所ではなくランダムに位置を設定し、合わせて無塗布の試験区も設定した。
また、以下の説明において、ヒアルロン酸ナトリウム、アセチルヒアルロン酸ナトリウムおよび加水分解ヒアロルン酸の混合液を水溶性分子とする水溶性分子複合体含有油剤を添加して調製した試料溶液を「複合体含有溶液P」と称し、多価アルコールを含有しない油剤を添加して調製した試料溶液を「比較溶液Q1」と称し、ヒアルロン酸ナトリウム、アセチルヒアルロン酸ナトリウムおよび加水分解ヒアルロン酸を添加して調製した試料溶液を「比較溶液Q2」と称する。
このようにして得られた結果を表3に示す。
Figure 2018127453
表3に示す結果からも分かるように、複合体含有溶液Pは、比較溶液Q1、比較溶液Q2と比較して、ヒアルロン酸ナトリウム、アセチルヒアルロン酸ナトリウムおよび加水分解ヒアロルン酸が有する保湿効果が顕著に現れており、さらに比較溶液より長期に渡り安定して効果を有することから、水溶性分子の機能低下が抑制されることが示された。
また、肌の整肌効果を有するプラセンタを〔4.各種水溶性分子を用いた水溶性分子複合体含有油剤の調製〕により調製した場合には、水溶性分子複合体含有油剤としない通常のプラセンタと比較して、肌に塗布した場合の整肌効果が向上することが確認された。
上述してきたように、本実施形態に係る水溶性分子複合体によれば、両親媒性分子により構成される親水部会合構造内に存在させた水溶性分子の水溶液を脱水するにあたり、予め前記水溶液に多価アルコールを添加しておくことで前記水溶性分子の立体配座の維持が可能であるため、有機溶剤を含む液剤中において、両親媒性分子により構成される親水部会合構造内に存在させた水溶性分子の機能低下が抑制された水溶性分子複合体を提供することができる。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。

Claims (5)

  1. 両親媒性分子により構成される親水部会合構造内に存在させた水溶性分子の水溶液を脱水させるにあたり、予め前記水溶液に多価アルコールを添加しておくことで前記水溶性分子の立体配座を維持した水溶性分子複合体。
  2. 前記水溶性分子が塩化リゾチームであることを特徴とする請求項1に記載の水溶性分子複合体。
  3. 前記多価アルコールがポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水溶性分子複合体。
  4. 請求項1〜3いずれか1項に記載の水溶性分子複合体が油中に分散してなる水溶性分子複合体含有油剤。
  5. 請求項4に記載の水溶性分子複合体含有油剤を両親媒性分子を含んだ水溶液に分散させた分散液。
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