JP2018123307A - ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物および成形品 - Google Patents
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(1)(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)無機充填材を20〜300重量部、(C)有機結晶核剤を0.06〜0.19重量部配合してなることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(2)前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を、示差走査熱量計にて、340℃まで昇温し溶融させてから、20℃/分の速度で降温した際に観察される結晶化に伴う発熱ピ−ク温度(Tmc)が215℃以上260℃以下であることを特徴とする(1)に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(3)前記(C)有機結晶核剤がカルボニル基を有する有機化合物であることを特徴とする(1)〜(2)のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(4)更に(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(D)オレフィン系共重合体を0.01〜20重量部配合してなることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(5)前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形して得られる外径21.7mm、肉厚2.8mmのT字型継手に、95℃の温水中、0.5MPaの内水圧を1000時間掛けるクリープ試験を実施した後に測定した耐水圧強度が、7MPa以上であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(6)前記(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂が熱酸化処理を施されたポリフェニレンスルフィド樹脂であり、(a)真空下、320℃で2時間加熱溶融した際に揮発するガス発生量が0.3重量%以下、(b)250℃で20倍重量の1−クロロナフタレンに5分間かけて溶解させた後、ポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルターで熱時加圧濾過した際の残渣量が4.0重量%以下であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(7)(1)〜(6)いずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品。
(8)前記成形品が、液体ポンプ用ケーシング部品または水回り用配管部品であることを特徴とする(7)記載の成形品。
ポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくはp−ジクロロベンゼンが用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
重合溶媒としては有機極性溶媒を用いることが好ましい。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられ、これらはいずれも反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
生成するPPS樹脂の末端を形成させるか、あるいは重合反応や分子量を調節するなどのために、モノハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。
比較的高重合度のPPS樹脂をより短時間で得るために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは得られるPPS樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸塩および/または水が好ましく用いられる。
重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するので、本発明で使用する重合安定剤の一つに含まれる。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。なお、この操作により水を除去し過ぎた場合には、不足分の水を添加して補充することが好ましい。
有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させることによりPPS樹脂粉粒体を製造することが好ましい。
重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。
中でも配合した結晶核剤をPPS樹脂中に微分散化するためには、溶融混練する際のPPS樹脂組成物の温度を310℃以上とすることが好ましく、さらに320℃以上が好ましく、330℃以上が最も好ましい。
(1)ガス発生量
腹部が100mm×25mm、首部が255mm×12mm、肉厚が1mmのガラスアンプルにPPS樹脂3gを計り入れてから真空封入した。このガラスアンプルの胴部のみを、アサヒ理化製作所製のセラミックス電気管状炉ARF−30Kに挿入して320℃で2時間加熱した。アンプルを取り出した後、管状炉によって加熱されておらず揮発ガスの付着したアンプルの首部をヤスリで切り出して秤量した。次いで付着ガスを5gのクロロホルムで溶解して除去した後、60℃のガラス乾燥機で1時間乾燥してから再度秤量した。ガスを除去した前後のアンプル首部の重量差をガス発生量(重量%)とした。
空圧キャップと採集ロートを具備したセンシュー科学製のSUS試験管に、予め秤量しておいたポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルターをセットし、約80μm厚にプレスフィルム化したPPS樹脂100mgおよび1−クロロナフタレン2gを計り入れてから密閉した。これをセンシュー科学製の高温濾過装置SSC−9300に挿入し、250℃で5分間加熱振とうしてPPS樹脂を1−クロロナフタレンに溶解した。空気を含んだ20mLの注射器を空圧キャップに接続した後、ピストンを押出して溶液をメンブランフィルターで濾過した。メンブランフィルターを取り出し、150℃で1時間真空乾燥してから秤量した。濾過前後のメンブランフィルター重量の差を残渣量(重量%)とした。
測定温度315.5℃、5000g荷重とし、ASTM−D1238−70に準ずる方法で測定した。
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.91kg(69.80モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム1.89kg(23.10モル)、及びイオン交換水10.5kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14.78kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.96kg(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.43kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム2.58kg(31.50モル)、及びイオン交換水10.50kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14.78kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
チョップドストランド(日本電気硝子(株)社製 T−760H 3mm長 平均繊維径10.5μm)
ポリエーテルエーテルケトン:“PEEK450−PF”(ビクトレックスエムシー社製)
タルク:“ハイトロン”(竹原化学工業社製)
オレフィン系エラストマー:“ボンドファースト 7M”(住友化学社製)
本実施例および比較例における測定評価方法は以下の通りである。
PPS樹脂組成物ペレットを、シリンダー温度310℃、金型温度145℃に設定した住友重機械工業社製射出成形機(SE50DUZ−C160)に供給し、充填時間0.8sで充填、充填圧力の75%の保圧にて射出成形を行い、ISO 20753に規定されるタイプA1試験片を得た。この試験片を用い、23℃、相対湿度50%の雰囲気下、つかみ具間距離:114mm、試験速度:5mm/sの条件にて、ISO527−1,−2に準拠して測定を行った。
PPS樹脂組成物のペレットから約10mgをサンプルとして採取し、パーキンエルマー社製示差走査熱量計DSC−7を用い、昇温速度20℃/分で昇温し、340℃で5分間保持後、20℃/分の速度で降温させた時の結晶化ピーク(発熱ピーク)温度を測定し、降温結晶化温度(Tmc(℃))とした。
PPS樹脂組成物ペレットを、シリンダー温度305℃、金型温度130℃に設定した住友重機械工業社製射出成形機(SE100DU)に供給し、充填時間1sで充填、充填圧力の50%の保圧にて射出成形を行い、JIS G3452で規定される外径21.7mm、肉厚2.8mmのT字配管型継手の試験片を得た。この試験片の一方にキヨーワ社製のポンプ(T−300N)に接続したゴム配管を接続させ、残り二方に密栓、ボールバルブを接続した。ボールバルブを開けた状態で試験片に通水させ、試験片内部のエアを抜いた後にボールバルブを閉じ、ポンプを使って水圧をかけ、試験片破壊時に圧力計が示した圧力を耐水圧強度とした。
PPS樹脂組成物ペレットを、シリンダー温度305℃、金型温度130℃に設定した住友重機械工業社製射出成形機(SE100DU)に供給し、充填時間1sで充填、充填圧力の50%の保圧にて射出成形を行い、JIS G3452で規定される外径21.7mm、肉厚2.8mmのT字配管型継手の試験片を得た。次いでこの試験片の一方にキヨーワ社製のポンプ(T−100K)に接続した金属配管を接続し、残り二方に密栓、ボールバルブを接続した。ボールバルブを開けた状態で試験片に通水させ、試験片内部のエアを抜いた後にボールバルブを閉じた。試験片を95℃の温水中に浸漬させ、0.5MPaの内水圧を1000時間掛けた後にT字型継手試験片を熱水から取り出し、ボールバルブを開けて水圧を逃がし、その後試験片に通水して、割れの有無を確認した。n=10で試験を実施し、割れが発生した試験片の個数を破壊個数とした。その後割れが発生しなかった試験片の一方にキヨーワ社製のポンプ(T−300N)に接続したゴム配管を接続させ、残り二方に密栓、ボールバルブを接続した。ボールバルブを開けた状態で試験片に通水させ、試験片内部のエアを抜いた後にボールバルブを閉じた。ポンプを使って水圧をかけ、試験片破壊時に圧力計が示した圧力を1000時間熱水浸漬クリープ試験後の耐水圧強度とした。
PPS樹脂組成物ペレットを、シリンダー温度310℃、金型温度130℃に設定した住友重機械工業社製射出成形機(SE100DU)に供給し、充填時間2秒で充填、充填圧力の70%の保圧、冷却時間50秒にて射出成形を行い、JIS B 0203(1999)に準ずる管用テーパーネジの呼び径がR1/2、ネジ部の中空内径がφ11である形状を有する、図1〜図3で示される継手試験片を得た(図3中の数値の単位はmmである。)。この試験片を万力で固定し、試験片のオスネジ部分に、JIS B 0203(1999)に準ずる管用テーパーネジの呼び径がRc1/2である真鍮製のメスネジキャップを、トルクレンチで締め付けていき、試験片のオスネジが破壊した時の強度をトルク強度とした。
シリンダー温度を300℃、スクリュー回転数を350rpmに設定した、26mm直径の中間添加口を有する2軸押出機(東芝機械(株)製TEM−26SS)を用いて、PPS樹脂(A)100重量部および(C)有機結晶核剤を表1に示す重量比で原料供給口から添加して溶融状態とし、(B)繊維状充填材を表1に示す重量比で中間添加口から供給し、吐出量30kg/時間で溶融混練してペレットを得た。このペレットを用いて上記の各特性を評価した。その結果を表1に示す。
表1に示す実施例1〜9では、有機結晶核剤を添加すると共に特定の添加量としたことで、成形品の耐水圧強度、耐湿熱性、更にはトルク強度が向上した。この結果より、実施例1〜9の樹脂組成物からなる配管部品は熱水が流れ、高い水圧がかかる配管部品に適している。
表1に示す比較例1では、有機結晶核剤添加量が多すぎるため、Tmcは高くなったものの、異物効果によって、ウエルド強度及び耐水圧強度、耐湿熱性に劣る結果であった。
表1に示す比較例2では、Tmcが230℃と比較的高くなったものの、有機結晶核剤添加量が少なく、球晶サイズが不均一なためか、耐水圧強度、耐湿熱性に劣る結果であった。
表1に示す比較例3では、結晶核剤を添加しないため、Tmcが低く、耐水圧強度、耐湿熱性に劣る結果であった。
〔比較例4〕
表1に示す比較例4では、無機結晶核剤を添加しているが、結晶核剤の効果が劣るため耐水圧強度、耐湿熱性に劣る結果であった。
20 テーパーオスネジ部(呼び径 R1/2)
Claims (8)
- (A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)無機充填材を20〜300重量部、(C)有機結晶核剤を0.06〜0.19重量部配合してなることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- 前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を、示差走査熱量計にて、340℃まで昇温し溶融させてから、20℃/分の速度で降温した際に観察される結晶化に伴う発熱ピ−ク温度(Tmc)が215℃以上260℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- 前記(C)有機結晶核剤がカルボニル基を有する有機化合物であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- 更に(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(D)オレフィン系共重合体を0.01〜20重量部配合してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- 前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形加工して得られる外径21.7mm、肉厚2.8mmのT字型継手に、95℃の温水中、0.5MPaの内水圧を1000時間掛けるクリープ試験を実施した後に測定した耐水圧強度が、7MPa以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- 前記(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂が熱酸化処理を施されたポリフェニレンスルフィド樹脂であり、(a)真空下、320℃で2時間加熱溶融した際に揮発するガス発生量が0.3重量%以下、(b)250℃で20倍重量の1−クロロナフタレンに5分間かけて溶解させた後、ポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルターで熱時加圧濾過した際の残渣量が4.0重量%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品。
- 前記成形品が、液体ポンプ用ケーシング部品または水回り用配管部品であることを特徴とする請求項7記載の成形品。
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