JP2020105515A - ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物および成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】可撓性、耐熱老化性、押出製膜性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物および成形品を提供する。【解決手段】(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂と(b)オレフィン系樹脂(エラストマー)を配合してなるPPS樹脂組成物であって、該(b)オレフィン系樹脂(エラストマー)は(b−1)α,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位及びアクリル酸ブチルに由来する構造単位を有するオレフィン系樹脂を含み、(b)オレフィン系樹脂(エラストマー)中におけるα,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位量をA、アクリル酸ブチルに由来する構造単位量をBとした時の比A/B(重量比)が0.07を超え0.50以下であることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、可撓性、耐熱老化性、押出製膜性に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に関するものである。更に詳しくは可撓性、耐熱老化性に優れた押出成形品、とりわけ絶縁樹脂被覆材に関する。
ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下PPS樹脂と略す場合もある)は高耐熱性のスーパーエンジニアリングプラスチックに属し、機械的強度、剛性、難燃性、耐薬品性、絶縁特性および寸法安定性などに優れることから、各種電気・電子部品、家電部品、自動車部品および機械部品などの用途に幅広く使用されている。
ポリフェニレンスルフィド樹脂は、その優れた耐熱性、絶縁特性から、絶縁皮膜として使用可能である。絶縁被膜の耐熱要求が更に高まる中、高温処理後における絶縁被膜の可撓性が悪化する場合には、ポリフェニレンスルフィド樹脂に樹脂改質剤を添加する手法が知られている。しかし、樹脂改質剤を添加することで可撓性は向上する一方で高粘度化し、押出製膜性が悪化することから、可撓性と押出製膜性を両立するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が広く求められている。
特許文献1および特許文献2には、ポリフェニレンスルフィド樹脂にα,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位およびアクリル酸ブチルに由来する構造単位を有するオレフィン系樹脂が配合されたPPS樹脂組成物が開示されている。
特開2005―161693号公報 特開2000−103964号公報
絶縁被膜用のPPS樹脂組成物には、熱処理後の可撓性と押出製膜性の両立が必須である。しかし従来のPPS樹脂組成物では、これら特性を両立できず適用は限定されていた。
特許文献1や特許文献2に開示されるPPS樹脂組成物では、熱処理後の可撓性もしくは押出製膜性の何れかが不十分となり、特に130℃以上の高温領域にて連続使用するには課題があった。
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、下記を提供するものである。
(1)(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂と(b)オレフィン系樹脂(エラストマー)を配合してなるPPS樹脂組成物であって、該(b)オレフィン系樹脂(エラストマー)は(b−1)α,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位及びアクリル酸ブチルに由来する構造単位を有するオレフィン系樹脂を含み、(b)オレフィン系樹脂(エラストマー)中におけるα,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位量をA、アクリル酸ブチルに由来する構造単位量をBとした時の比A/B(重量比)が0.07を超え0.50以下であることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(2)(b−1)α,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位及びアクリル酸ブチルに由来する構造単位を有するオレフィン系樹脂中のα,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位の含有量が4〜10重量%であることを特徴とする(1)記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(3)(a)成分と(b)成分の合計を100重量部とした時の(b−1)α,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位及びアクリル酸ブチルに由来する構造単位を有するオレフィン系樹脂が10〜30重量部であることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(4)前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物中のカルシウムイオン濃度が100ppm以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(5)前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物のメルトフローレイト(温度315℃、荷重2160g)が15〜100g/10minであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる押出成形品。
(7)前記押出成形品が電線用絶縁樹脂被覆材であることを特徴とする(6)記載の押出成形品。
(8)(1)〜(5)のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物と、金属からなる金属複合成形体。
(9)前記金属複合成形体がバスバーであることを特徴とする(8)に記載の金属複合成形体。
本発明によれば、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物中に配合されるオレフィン系樹脂中におけるα,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位とアクリル酸ブチルに由来する構造単位を好ましい範囲に制御することで、押出成形品の可撓性と耐熱老化性を向上すると共に、押出製膜性も両立させることが可能となり、従来使用困難であった高温領域で使用される電線用の被膜に好適なポリフェニレンスルフィド樹脂組成物および成形品を提供することができる。また、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、金属との密着性に優れることから、バスバーなどの金属複合成形体にも好適に使用することができる。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明で用いられる(A)PPS樹脂は、下記構造式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体である。
Figure 2020105515
耐熱性の観点からは上記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。またPPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満程度が、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。
Figure 2020105515
以下に、本発明で用いるPPS樹脂の製造方法を述べる。まず、使用するポリハロゲン化芳香族化合物、スルフィド化剤、重合溶媒、分子量調節剤、重合助剤および重合安定剤の内容について説明する。
[ポリハロゲン化芳香族化合物]
ポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくはp−ジクロロベンゼンが用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
ポリハロゲン化芳香族化合物の使用量は、加工に適した粘度のPPS樹脂を得る点から、スルフィド化剤1モル当たり0.9から2.0モル、好ましくは0.95から1.5モル、更に好ましくは1.005から1.2モルの範囲が例示できる。
[スルフィド化剤]
スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるスルフィド化剤も用いることができる。また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物からスルフィド化剤を調製し、これを重合槽に移して用いることができる。
あるいは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系においてin situで調製されるスルフィド化剤も用いることができる。また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素からスルフィド化剤を調製し、これを重合槽に移して用いることができる。
仕込みスルフィド化剤の量は、脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいが、この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに対し0.95から1.20モル、好ましくは1.00から1.15モル、更に好ましくは1.005から1.100モルの範囲が例示できる。
[重合溶媒]
重合溶媒としては有機極性溶媒を用いることが好ましい。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられ、これらはいずれも反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
有機極性溶媒の使用量は、スルフィド化剤1モル当たり2.0モルから10モル、好ましくは2.25から6.0モル、より好ましくは2.5から5.5モルの範囲が選択される。
[分子量調節剤]
生成するPPS樹脂の末端を形成させるか、あるいは重合反応や分子量を調節するなどのために、モノハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。
[重合助剤]
比較的高重合度のPPS樹脂をより短時間で得るために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは、得られるPPS樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸塩および/または水が好ましく用いられる。
アルカリ金属カルボン酸塩とは、一般式R(COOM)(式中、Rは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。
アルカリ金属カルボン酸塩は、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩および重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記アルカリ金属カルボン酸塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価であり、カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は反応系への溶解性が不十分であると思われるため、安価で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが最も好ましく用いられる。
これら重合助剤を用いる場合の使用量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.01モル〜0.7モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.1〜0.6モルの範囲が好ましく、0.2〜0.5モルの範囲がより好ましい。
また水を重合助剤として用いることは、流動性と高靭性が高度にバランスした樹脂組成物を得る上で有効な手段の一つである。その場合の添加量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.5モル〜15モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.6〜10モルの範囲が好ましく、1〜5モルの範囲がより好ましい。
これら重合助剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、重合助剤としてアルカリ金属カルボン酸塩を用いる場合は前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。また水を重合助剤として用いる場合は、ポリハロゲン化芳香族化合物を仕込んだ後、重合反応途中で添加することが効果的である。
[重合安定剤]
重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するので、本発明で使用する重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対して、通常0.02〜0.2モル、好ましくは0.03〜0.1モル、より好ましくは0.04〜0.09モルの割合で使用することが好ましい。この割合が少ないと安定化効果が不十分であり、逆に多すぎても経済的に不利益であり、ポリマー収率が低下する傾向となる。
重合安定剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することがより好ましい。
次に、前工程、重合反応工程、および回収工程を、順を追って具体的に説明する。
[前工程]
PPS樹脂の重合において、スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。なお、この操作により水を除去し過ぎた場合には、不足分の水を添加して補充することが好ましい。
また、上述したように、スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温から100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180〜245℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
重合反応における、重合系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.5〜10.0モルであることが好ましい。ここで重合系内の水分量とは重合系に仕込まれた水分量から重合系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は、水、水溶液、結晶水などのいずれの形態であってもよい。
[重合反応工程]
有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させることによりPPS樹脂粉粒体を製造することが好ましい。
重合反応工程を開始するに際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜215℃、好ましくは100〜215℃の温度範囲で、有機極性溶媒にスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物を加える。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
かかる混合物を通常200℃〜290℃の範囲に昇温する。昇温速度に特に制限はないが、通常0.01〜5℃/分の速度が選択され、0.1〜3℃/分の範囲がより好ましい。
一般に、最終的には250〜290℃の温度まで昇温し、その温度で通常0.25〜50時間、好ましくは0.5〜20時間反応させる。
最終温度に到達させる前の段階で、例えば200℃〜245℃で一定時間反応させた後、270〜290℃に昇温する方法は、より高い重合度を得る上で有効である。この際、200℃〜245℃での反応時間としては、通常0.25時間から20時間の範囲が選択され、好ましくは0.25〜10時間の範囲が選択される。
なお、より高重合度のポリマーを得るためには、複数段階で重合を行うことが有効である。複数段階で重合を行う際は、245℃における系内のポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が、40モル%以上、好ましくは60モル%に達した時点であることが有効である。
[回収工程]
PPS樹脂の製造方法においては、重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。回収方法については、公知の如何なる方法を採用してもよい。
例えば、重合反応終了後、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法を用いてもよい。この際の徐冷速度には特に制限は無いが、通常0.1℃/分〜3℃/分程度である。徐冷工程の全工程において同一速度で徐冷する必要はなく、ポリマー粒子が結晶化し析出するまでは0.1〜1℃/分、その後1℃/分以上の速度で徐冷する方法などを採用してもよい。
また上記の回収を急冷条件下に行うことも好ましい方法の一つであり、この回収方法の好ましい一つの方法としてはフラッシュ法が挙げられる。フラッシュ法とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、8kg/cm以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉末状にして回収する方法であり、ここでいうフラッシュとは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、具体的には例えば常圧中の窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は通常150℃〜250℃の範囲が選ばれる。
フラッシュ法は、溶媒回収と同時に固形物を回収することができ、また回収時間も比較的短くできることから、経済性に優れた回収方法である。この回収方法では、固化過程でNaに代表されるイオン性化合物や有機系低重合度物(オリゴマー)がポリマー中に取り込まれやすい傾向がある。
[後処理工程]
本発明では、PPS樹脂は、上記前工程、重合反応工程、および回収工程を経て生成した後、酸処理、熱水処理、有機溶媒による洗浄、アルカリ金属やアルカリ土類金属処理を施されたものを用いてもよい。
酸処理を行う場合は次のとおりである。(a)PPS樹脂の酸処理に用いる酸は、(a)PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられる。なかでも酢酸および塩酸がより好ましく用いられる。一方、硝酸のような(a)PPS樹脂を分解、劣化させるものは好ましくない。
酸処理の方法は、例えば、酸または酸の水溶液に(a)PPS樹脂を浸漬せしめる方法があり、必要により撹拌または加熱することも可能である。例えば、酢酸を用いる場合、pH4の酢酸水溶液を80〜200℃に加熱した中にPPS樹脂粉末を浸漬し、30分間撹拌することにより十分な効果が得られる。処理後のpHは4以上となってもよく、例えばpH4〜8程度となってもよい。酸処理を施された(a)PPS樹脂から残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水は、酸処理による(a)PPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわないために、蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
熱水処理を行う場合は次のとおりである。(a)PPS樹脂を熱水処理するにあたり、熱水の温度を100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは170℃以上とすることが好ましい。100℃未満では(a)PPS樹脂の好ましい化学的変性の効果が小さいため好ましくない。
熱水処理による(a)PPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作に特に制限は無い。所定量の水に所定量の(a)PPS樹脂を投入し、圧力容器内で加熱、撹拌する方法や、連続的に熱水処理を施す方法などにより行われる。(a)PPS樹脂と水との割合は、水の多い方が好ましいが、通常、水1リットルに対し、(a)PPS樹脂200g以下の浴比(乾燥PPS重量に対する洗浄液重量)が選ばれる。
また、末端基の分解が好ましくないので、これを回避するため、処理の雰囲気は不活性雰囲気下とすることが望ましい。さらに、残留している成分を除去するため、この熱水処理操作を終えた(a)PPS樹脂は、温水で数回洗浄するのが好ましい。
有機溶媒で洗浄する場合は次のとおりである。(a)PPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒は、(a)PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はない。例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがPPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒として挙げられる。これらの有機溶媒のうちでも、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が特に好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、例えば、有機溶媒中に(a)PPS樹脂を浸漬せしめる方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒で(a)PPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上の温度で加圧下に洗浄することも可能である。また、洗浄時間についても特に制限はない。洗浄条件にもよるが、バッチ式洗浄の場合、通常5分間以上洗浄することにより十分な効果が得られる。また連続式で洗浄することも可能である。後処理工程は、酸処理、熱水処理、有機溶媒による洗浄のいずれかを施すことが好ましく、2種以上の処理を併用することが、不純物除去の観点から好ましい。
アルカリ金属、アルカリ土類金属処理する方法としては、上記前工程の前、前工程中、前工程後にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法、重合工程前、重合工程中、重合工程後に重合釜内にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法、あるいは上記洗浄工程の最初、中間、最後の段階でアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法などが挙げられる。中でももっとも容易な方法としては、有機溶剤洗浄や、温水または熱水洗浄で残留オリゴマーや残留塩を除いた後にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法が挙げられる。アルカリ金属、アルカリ土類金属は、酢酸塩、水酸化物、炭酸塩などのアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンの形でPPS中に導入するのが好ましい。また過剰のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩は温水洗浄などにより取り除く方が好ましい。上記アルカリ金属、アルカリ土類金属を導入する際のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン濃度としてはPPS1gに対して0.001mmol以上が好ましい。温度としては、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましく、90℃以上が特に好ましい。上限温度は特にないが、操作性の観点から通常280℃以下が好ましい。浴比(乾燥PPS重量に対する洗浄液重量)としては0.5以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましい。
本発明においては、滞留安定性および耐熱老化性の優れたPPS樹脂組成物を得る観点から、有機溶媒洗浄と80℃程度の温水または前記した熱水処理を数回繰り返すことにより残留オリゴマーや残留塩を除いた後、酸処理もしくはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩で処理したものを用いてもよく、特にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩で処理する方法が好ましい。
本発明で用いられるPPS樹脂は、上記酸処理、熱水処理、アルカリ金属、アルカリ土類金属処理、有機溶媒による洗浄をした後に、熱酸化処理を行うことで得られたものを用いてもよい。熱酸化処理とは、PPS樹脂を、酸素雰囲気下においての加熱またはH等の過酸化物もしくは硫黄等の加硫剤を添加しての加熱による処理を施すことであるが、処理の簡便さから酸素雰囲気下においての加熱が特に好ましい。
PPS樹脂の熱酸化処理のための加熱装置は、通常の熱風乾燥機でもよいし、また回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。熱酸化処理の際の雰囲気における酸素濃度は1体積%以上、更には2体積%以上とすることが望ましい。本発明の効果を発揮するためには、酸素濃度の上限は5体積%以下が好ましい。酸素濃度5体積%以下で熱酸化処理を行うことで、熱酸化処理が過剰に進行することがなく、熱酸化処理をおこなったPPS樹脂を含む成形品の靭性が損なわれることがない。一方、酸素濃度1体積%以上での熱酸化処理を行うことで、十分な熱酸化処理を行うことができ、揮発成分が少ないPPS樹脂を得ることができるので好ましい。
PPS樹脂の熱酸化処理温度は、160〜270℃が好ましく、より好ましくは160〜230℃である。270℃以下で熱酸化処理を行うことで、熱酸化処理が急激に進行することがなく、熱酸化処理をおこなったPPS樹脂を含む成形品の靭性が損なわれることがないので好ましい。一方、160℃以上の温度で熱酸化処理を行うことで、適切な速度で熱酸化処理を進行させることができ、揮発成分の発生量が少ないPPS樹脂を得ることができるので好ましい。
熱酸化処理の処理時間は、0.5〜30時間が好ましく、0.5〜25時間がより好ましく、2〜20時間がさらに好ましい。処理時間を0.5時間以上とすることで十分な熱酸化処理を行うことができ揮発成分が少ないPPS樹脂を得ることができるので好ましい。処理時間を30時間以下とすることで、熱酸化処理による架橋反応を制御することができ、熱酸化処理をおこなったPPS樹脂を含む成形品の靭性を損なうことがないので好ましい。
本発明で用いられるPPS樹脂は、温度315.5℃、荷重5000gの条件下、ASTM D−1238−70に従って計測したメルトフローレイト(MFR)が5g/10分以上4000g/10分以下が好ましく、50g/10分以上2000g/10分以下がより好ましい。4000g/10分を上回る場合耐熱老化性が低下し、5g/10分を下回ると押出製膜性が悪化する懸念がある。
本発明で用いられるPPS樹脂は、真空下、320℃で2時間加熱溶融した際に揮発するガス発生量が0.4重量%以下であることがより好ましい。ガス発生量が0.4重量%を上回ると、金型や金型ベント部に付着する揮発性成分が増加し、転写不良やガスやけが起こりやすくなる場合があるため好ましくない。ガス発生量の下限については特に制限しないが、ガス発生量を低減する手法として挙げられるポリマー洗浄や熱酸化処理に必要な時間が長くなると経済的に不利となる。
なお、上記ガス発生量とは、PPS樹脂を真空下で加熱溶融した際に揮発するガスが、冷却されて液化または固化した付着性成分の量を意味しており、PPS樹脂を真空封入したガラスアンプルを、管状炉で加熱することにより測定されるものである。ガラスアンプルの形状としては、腹部が100mm×25mm、首部が255mm×12mm、肉厚が1mmである。具体的な測定方法としては、PPS樹脂を真空封入したガラスアンプルの胴部のみを320℃の管状炉に挿入して2時間加熱することにより、管状炉によって加熱されていないアンプルの首部で揮発性ガスが冷却されて付着する。この首部を切り出して秤量した後、付着したガスをクロロホルムに溶解して除去する。次いで、この首部を乾燥してから再び秤量する。ガスを除去した前後のアンプル首部の重量差よりガス発生量を求める。
本発明で用いられるPPS樹脂は、550℃で灰化させたときの灰分率が1.0重量%未満であることが好ましい。灰分率が1.0重量%以上になることは、PPS樹脂の金属含有量が過度に多いことを意味する。金属含有量が多いと電気絶縁性が劣るだけでなく、溶融流動性低下による押出製膜性悪化が起こり好ましくない。更に好ましい灰分率の上限としては、0.9重量%以下であり、より好ましくは0.8重量%以下であり、0.7重量%が最も好ましい。また下限として0.01重量%以上が望ましい。0.01重量%を下回ると耐熱老化性が低下する懸念がある。
本発明で用いられるPPS樹脂は、PPS樹脂5gを500℃の電気炉で灰化した後、0.1規定塩酸水溶液、0.1%塩化ランタン水溶液で希釈した水溶液を試料とし、島津製作所製原子吸光分光光度計AA−6300を用いた原子吸光法により測定したアルカリ金属、アルカリ土類金属含有量が100ppm以上2000ppm以下であることが好ましい。100ppmを下回る場合には押出加工性が低下する懸念があり、2000ppmを超えると耐熱老化性が低下する場合がある。
本発明で用いられるPPS樹脂は、250℃で20倍重量の1−クロロナフタレンに5分間かけて溶解させ、ポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルターで熱時加圧濾過した際の残さ量が4.0重量%以下であってもよい。残さ量が4.0重量%を上回ることは、PPS樹脂の熱酸化架橋が過度に進行し、樹脂中のゲル化物の増加を意味する。PPS樹脂の熱酸化架橋を過度に進行させることでPPS樹脂の靭性が低下し可撓性が低下する場合がある。残さ量の下限については特に制限しないが、1.5%以上、好ましくは1.7%以上である。残さ量が1.5%を下回ると、熱酸化架橋の程度が軽微すぎるため、溶融時の揮発成分はそれほど減少せず、揮発分低減効果が小さい可能性がある。
なお、上記残さ量は、PPS樹脂を約80μm厚にプレスフィルム化したものを試料とし、高温濾過装置および空圧キャップと採集ロートを具備したSUS試験管を用いて測定されるものである。具体的には、まずSUS試験管にポアサイズ1μmのメンブランフィルターをセットした後、約80μm厚にプレスフィルム化したPPS樹脂および20倍重量の1−クロロナフタレンを秤量して密閉する。これを250℃の高温濾過装置にセットして5分間加熱振とうする。次いで空圧キャップに空気を含んだ注射器を接続してから注射器のピストンを押し出し、空圧による熱時濾過を行う。残さ量の具体的な定量方法としては、濾過前のメンブランフィルターと濾過後に150℃で1時間真空乾燥したメンブランフィルターの重量差より求める。
本発明で用いられる(b)オレフィン系樹脂(エラストマー)は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、イソブチレンなどのα−オレフィン単独または2種以上を重合して得られる(共)重合体、α−オレフィンとアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、などのα,β−不飽和酸およびそのアルキルエステルとの共重合体、例えば、エチレン/プロピレン共重合体(“/”は共重合を表す、以下同じ)、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/1−オクテン、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸ブチル共重合体などが挙げられる。(b−1)α,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位及びアクリル酸ブチルに由来する構造単位を有するオレフィン系樹脂は、これら共重合体のうち、アクリル酸ブチルに由来する構造単位を必須とする共重合体に対し、さらにα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを導入することにより得られる。そのα,β−不飽和酸のグリシジルエステルの例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルなどのエポキシ基を含有する単量体などが挙げられる。これら官能基含有成分を導入する方法は特に制限なく、オレフィン系(共)重合体を(共)重合する際に共重合させたり、オレフィン系(共)重合体にラジカル開始剤を用いてグラフト導入させたりするなどの方法を用いることができる。本発明においては、メタクリル酸グリシジルに由来する構造単位及びアクリル酸ブチルに由来する構造単位を有することが必要である。更に、(b)オレフィン系樹脂(エラストマー)は(b−1)α,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位及びアクリル酸ブチルに由来する構造単位を有するオレフィン系樹脂を含み、(b)オレフィン系樹脂(エラストマー)中におけるα,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位量をA、アクリル酸ブチルに由来する構造単位量をBとした時の比A/B(重量比)が0.07を超え0.50以下である必要があり、0.10〜0.48が好ましく、0.20〜0.44がより好ましく、0.30〜0.40が最も好ましい。0.07以下の場合、熱処理後の可撓性が不足し、0.50を超える場合には押出製膜性が著しく低下するため好ましくない。このような化合物は具体的には、(商品名)LОTADER(登録商標)AX8700(アルケマ(株)製)、(商品名)LОTADER(登録商標)AX8750(アルケマ(株)製)等の市販品を挙げることができる。また各構造単位が前記比となる範囲内においては、α,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位及びアクリル酸ブチルに由来する構造単位を有するオレフィン系樹脂に対し、α,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位を有さず、アクリル酸ブチルに由来する構造単位のみを有するオレフィン系樹脂を(b)オレフィン系樹脂に併用して用いてもよい。そのような化合物は、例えば(商品名)LОTADER(登録商標)4210(アルケマ(株)製)、(商品名)LОTADER(登録商標)3210(アルケマ(株)製)、(商品名)LОTADER(登録商標)3410(アルケマ(株)製)、(商品名)LОTRYL(登録商標)17BA40(アルケマ(株)製)、(商品名)LОTRYL(登録商標)28BA175(アルケマ(株)製)、(商品名)LОTRYL(登録商標)30BA02(アルケマ(株)製)、(商品名)LОTRYL(登録商標)17BA40(アルケマ(株)製)、(商品名)LОTRYL(登録商標)35BA40(アルケマ(株)製)、(商品名)LОTRYL(登録商標)35BA320(アルケマ(株)製)を挙げることができる。
以上の様に、(b)オレフィン系樹脂中におけるα,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位とアクリル酸ブチルに由来する構造単位を好ましい範囲に制御することで、押出成形品の可撓性と耐熱老化性が向上するのみならず、金属との密着性が劇的に改善される。
(b−1)α,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位及びアクリル酸ブチルに由来する構造単位を有するオレフィン系樹脂中のα,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位の量としては、4〜10重量%が好ましく、6〜9重量%が更に好ましい。4重量%以上とすることで熱処理後の可撓性が低下することがなく、また10重量%以下とすることで押出製膜性が良好となり好ましい。
(a)PPS樹脂と(b)オレフィン系樹脂の合計を100重量部とした時の(b−1)α,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位及びアクリル酸ブチルに由来する構造単位を有するオレフィン系樹脂の含有量は10〜30重量部が好ましく、15〜25重量部が更に好ましい。10重量部以上とすることでの場合は熱処理後の可撓性が低下することがなく、30重量部以下とすることで押出製膜性が良好となり好ましい。
本発明で用いるPPS樹脂組成物は本発明の効果を損なわない範囲において、繊維状および/または非繊維状充填材を配合して使用することも可能である。かかる充填材の具体例としてはガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填材、あるいはフラーレン、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などの非繊維状充填材が挙げられる。これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填材を2種類以上併用することも可能である。また、これらの充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。
中でも材料の剛性を向上する効果を得る上で、ガラス繊維および炭素繊維であることが好ましく、さらに材料コストと電機絶縁性の観点から、ガラス繊維であることがより好ましい。
更に本発明で用いるPPS樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、アルコキシシラン化合物を添加してよい。アルコキシシラン化合物としては、γ−イソシアネートトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリクロロシランなどのイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物などのシラン化合物を挙げることができる。
更に本発明で用いるPPS樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、有機結晶核剤を添加してもよい。有機結晶核剤としてはソルビトール化合物及びその金属塩;燐酸エステル金属塩;ロジン化合物;オレイン酸アミド、アクリル酸アミド、ステアリン酸アミド、デカンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、ヘキサンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、トリメシン酸アミド、アニリド化合物、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、N,N’−ジベンゾイル−1,4−ジアミノシクロヘキサン、N,N’−ジシクロヘキサンカルボニル−1,5−ジアミノナフタレン、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド等アミド化合物、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、モンタン酸ワックス類、脂肪族カルボン酸金属塩、芳香族カルボン酸金属塩、芳香族ホスホン酸及び金属塩、芳香族リン酸金属塩、芳香族スルホン酸の金属塩、β−ジケトン類の金属塩、カルボキシル基の金属塩、有機リン化合物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸エステル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸エステル)、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン等の有機化合物及び高分子化合物が挙げられる。かかる有機結晶核剤の配合量として(a)成分および(b)成分の合計100重量部に対して0.01〜10重量部以下が望ましい。0.01重量部以上とすることで生産安定性が低下し、10重量部以下とすることで分散不良による引張伸びの低下を抑制できるため、好ましい。
更に本発明で用いるPPS樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、樹脂組成物の難燃性を改良するため難燃剤を配合しても良い。難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水和金属系難燃剤 、ブロム系難燃剤 、塩素系難燃剤 、燐系難燃剤 、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤等が挙げられるが、これらの中でも燐系難燃剤が好ましい。
燐系難燃剤としては、燐原子を有する化合物であれば特に制限されず、赤燐、有機燐化合物、例えば、燐酸エステル、ホスホン酸とその誘導体(塩も含む)、ホスフィン酸とその誘導体(塩も含む)、ホスフィン、ホスフィンオキサイド、ビホスフィン、ホスホニウム塩、ホスファゼン、ホスファフェナントレン誘導体、無機系燐酸塩等が挙げられる。当該難燃剤は耐熱性及び熱安定性保持を目的とした酸化防止剤として使用可能である。
更に本発明で用いるPPS樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、高い耐熱性及び熱安定性を保持するために、フェノール系、およびリン系化合物の中から選ばれた1種以上の酸化防止剤を含有せしめることが好ましい。かかる酸化防止剤の配合量は、耐熱改良効果の点からは(a)成分および(b)成分の合計100重量部に対して、0.01重量部以上、特に0.02重量部以上であることが好ましく、成形時に発生するガス成分の観点からは、5重量部以下、特に1重量部以下であることが好ましい。また、フェノール系及びリン系酸化防止剤を併用して使用することは、特に耐熱性及び熱安定性保持効果が大きく好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物が好ましく用いられ、具体例としては、トリエチレングリコール−ビス[3−t−ブチル−(5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N、N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどが挙げられる。
中でも、エステル型高分子ヒンダードフェノールタイプが好ましく、具体的には、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが好ましく用いられる。
次にリン系酸化防止剤としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリト−ル−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリト−ル−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリト−ル−ジ−ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビスフェニレンホスファイト、ジ−ステアリルペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、トリフェニルホスファイト、3,5−ジーブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォネートジエチルエステルなどが挙げられる。
中でも、PPS樹脂のコンパウンド中に酸化防止剤の揮発や分解を少なくするために、酸化防止剤の融点が高いものが好ましく、具体的にはビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリト−ル−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリト−ル−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトなどが好ましく用いられる。
更に本発明で用いるPPS樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、更に(a)成分および(b)成分以外の、他の樹脂をブレンドして用いてもよい。かかるブレンド可能な樹脂には特に制限はないが、その具体例としては、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシルジメチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルアミドエラストマー、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、シロキサン共重合ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、エポキシ基含有ポリオレフィン共重合体などが挙げられる。
なお、本発明で用いるPPS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば前記以外の酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒドロキノン系)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、着色用カーボンブラック等)、染料(フタロシアニン、ニグロシン等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、前記以外の難燃剤(メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、熱安定剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウムなどの滑剤、ビスフェノールA型などのビスフェノールエポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの強度向上材、紫外線防止剤、および発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
本発明のPPS樹脂組成物の製造方法には特に制限はないが、各原料を混合して、単軸あるいは二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなど通常公知の溶融混合機に供給して混練する方法などを代表例として挙げることができる。
なかでも、スクリュー長さLとスクリュー直径Dの比L/Dが10以上100以下である二軸押出機を用いて溶融混練する方法が好適である。L/Dは20以上100以下がより好適であり、30以上100以下が更に好適である。
本発明のPPS樹脂組成物を溶融混練して製造する際の原料の混合順序は特に制限はなく、全ての原材料を配合後、上記の方法によりメインフィード口から投入し溶融混練する方法、一部の原材料を配合後、上記の方法により溶融混練し、更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは二軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法などのいずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することも可能である。
本発明のPPS樹脂組成物について、カルシウム(Ca)イオン濃度が100ppm以上2000ppm以下であることが好ましい。Caイオン濃度が100ppm以上であることで、押出製膜性が良好となり、2000ppmを以下であることで熱処理後の可撓性の低下を抑制することができる。なお、PPS樹脂組成物中におけるCaイオン濃度は、PPS樹脂組成物5gを500℃の電気炉で灰化した後、0.1規定塩酸水溶液、および0.1%塩化ランタン水溶液で希釈した水溶液を試料とし、島津製作所製原子吸光分光光度計AA−6300を用いた原子吸光法によりアルカリ金属、アルカリ土類金属含有量を測定し求めた。
本発明のPPS樹脂組成物について、温度315℃、荷重2160gの条件下、ISO1183に従って計測したメルトフローレイト(MFR)が15〜100g/10分であることが好ましく、20〜90g/10分であることがより好ましい。MFRが15g/10分以上とすることで、押出製膜性が向上し、100g/10分以下とすることで熱処理後の可撓性を維持することができる。
本発明のPPS樹脂組成物からなる成形品の曲げ弾性率は3800MPa以下が好ましく、3000MPa以下がより好ましい。3800MPa以下とすることで、熱処理後の可撓性を維持することが可能である。ここで、曲げ弾性率は以下の方法で測定する。PPS樹脂組成物のペレットを、熱風乾燥機を用いて130℃で3時間乾燥した後、シリンダー温度:310℃、金型温度:145℃に設定した住友重機製射出成形機(SE−50D)に供給し、ISO 20753(2008)に規定されるタイプA1試験片形状の金型を用いて、中央平行部の断面積を通過する溶融樹脂の平均速度が400±50mm/sとなる条件で射出成形して試験片を得る。この試験片の中央平行部を切り出し、タイプB2試験片を得た。次いで、23℃、相対湿度50%の条件で16時間状態調節を行った後、ISO 178(2010)法に準拠し、スパン64mm、試験速度:2mm/sの条件で曲げ弾性率測定を行う。
本発明のPPS樹脂組成物を成形品としたときに、熱処理後の可撓性を以下の用法で評価できる。本発明のPPS樹脂組成物ペレットを、熱風乾燥機を用いて130℃で3時間乾燥した後温度320℃、金型温度140℃に設定した住友重機械工業社製射出成形機(SE50DU)に供給し、厚み1.6mmのASTM4号ダンベル片を成形する。測定用のサンプルを10本取得し、そのうち5本を240℃に設定したギアオーブン内で30分間熱処理する。ギアオーブンから取り出し、23℃、相対湿度50%の条件で16時間状態調節を行う。同様に熱処理を行わない未処理のダンベル片も23℃、相対湿度50%の条件で16時間状態調節を行い、23℃、相対湿度50%の雰囲気下、歪速度10mm/min、支点間距離64mmの条件で引張強度及び引張伸び測定を行う。未処理のASTM4号ダンベル片の引張伸び値に対する、240℃ 30分間熱処理したASTM4号ダンベル片の引張伸び値の割合を引張伸び保持率として計算する。この時、引張伸び保持率は40%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。40%未満の場合、電線被膜にした際の乾熱処理後の可撓性が著しく低下し、乾熱処理後の電線を屈曲させた際に亀裂が入る懸念がある。
また本発明のPPS樹脂組成物ペレットを、熱風乾燥機を用いて130℃で3時間乾燥した後温度330℃、金型温度50℃に設定した住友重機械工業社製射出成形機(SE100DU)に供給し、試験片長さ 80mm、幅 10mm、試験片厚み 1mm、ヒンジ部長さ 5mm、ヒンジ部厚み 0.4mmの試験片を成形する。試験片5本を240℃に設定したギアオーブン内で30分乾熱処理する。ギアオーブンから取り出し、23℃、相対湿度50%の条件で16時間状態調節を行う。調節後試験片の両端部が接触するように試験片を山折り及び谷折りすることを繰り替えし、ヒンジ部に亀裂が入るまでの折り曲げ回数を熱処理後の可撓性として測定した。熱処理後の可撓性は15回以上が好ましく、20回以上がより好ましく、30回以上が更に好ましく、40回以上が最も好ましい。15回未満の場合、電線被膜にした際の乾熱処理後の可撓性が著しく低く、乾熱処理後の電線を屈曲させた際に亀裂が入る懸念がある。
本発明のPPS樹脂組成物の降温結晶化温度(Tmc(℃))を次のように測定する。本発明のPPS樹脂組成物のペレット約10mgを秤量し、パーキンエルマー社製示差走査熱量計DSC−7を用い、昇温速度20℃/分で昇温し、340℃で5分間保持後、20℃/分の速度で降温させた時の結晶化ピーク(発熱ピーク)温度を測定し、降温結晶化温度(Tmc(℃))とする。Tmc(℃)は170〜240℃が好ましく、180〜230℃がより好ましく、190〜215℃が更に好ましい。170℃未満の場合、押出製膜時に被覆が電線に追従せず絶縁不良の原因となる場合があり、240℃を超える場合、熱処理後の可撓性が劣る場合がある。
本発明のPPS樹脂組成物について、温度330℃、荷重2160gの条件下、5分滞留させた後にISO1183に従って計測したメルトフローレイト(MFR)A(g/10min)に対する、温度330℃、荷重2160gの条件下、30分滞留させた後にISO1183に従って計測したメルトフローレイト(MFR)B(g/10min)の比B/Aは、0.3以上となることが好ましく、更に0.5以上となることがより好ましく、0.7以上となることが更に好ましく、1.0以上となることが最も好ましい。0.3未満の場合、製膜時の成形機内滞留安定性が劣り押出製膜性が著しく低下する。
本発明のPPS樹脂組成物を押出成形品とした時の、電線被膜加工性を次のように評価する。本発明のPPS樹脂組成物ペレットをスクリュー外径30mmφの電線成形機に供給し、外径1.0mmφの銅撚り線を芯線とする被覆厚さ0.1mmの被覆電線を線速100m/minにて製造した。加工時に電線成形機内で増粘し、引き取りできなかったものを×、引き取りできたが被膜膨れが発生したものを△、問題なく加工できたものを〇として評価できる。
このようにして得られるPPS樹脂組成物は、上記押出成形以外に、射出成形、ブロー成形、トランスファー成形など各種成形に供することも可能である。
本発明のPPS樹脂組成物は、可撓性、耐熱老化性、および押出製膜性に優れていることから、高温環境下で連続使用する電線用絶縁樹脂被覆材に適用できる。本電線用絶縁樹脂被覆材に用いる導体は、導電性が良好な材料であれば特に制限されず、例えば、銅、銅合金、銅クラッドアルミニウム、アルミニウム、銀、金、亜鉛めっき鉄等が挙げられる。導体の形状に特に限定はなく、円形であっても平形であってもよい。
以上のように、本発明のPPS樹脂組成物は、熱処理後の可撓性と押出製膜性に優れていることから、130℃以上の環境下で使用される電線用絶縁樹脂被覆材に使用することができる。
また、本発明のPPS樹脂組成物は、金属密着性に優れていることから、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができ、金属部品と複合化して使用される成形品に有用である。さらに、本発明のPPS樹脂組成物は、熱処理後の可撓性と押出製膜性に優れていることから、130℃以上の環境下で使用されるバスバー用絶縁樹脂被覆材に使用することができる。
その他、本発明で用いられるPPS樹脂組成物からなる成形品の適用可能な用途としては、例えばセンサー、LEDランプ、民生用コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、水道蛇口コマ、混合水栓、ポンプ部品、パイプジョイント、水量調節弁、逃がし弁、湯温センサー、水量センサー、水道メーターハウジングなどの水廻り部品への適用も可能である。その他、オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;バルブオルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、車速センサー、ケーブルライナーなどの自動車・車両関連部品、石油掘削用パイプ、工業廃水用パイプ、上下水道用パイプ、石油輸送用パイプ等流体配管等の工業用パイプ部品、家電、食器、箸、タッパー等の食品接触部品など各種用途が例示できる。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
[参考例1]PPS−1の調製
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.96kg(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.43kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム2.58kg(31.50モル)、及びイオン交換水10.50kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14.78kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン10.24kg(69.63モル)、NMP9.01kg(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、2.63kgのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31.90kgのNMPで洗浄、濾別した。これを、56.00kgのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70.00kgのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPS樹脂は、MFRが600g/10分であった。ここで、メルトフローレイト(MFR)は、東洋精機社製メルトインデクサ(長さ8.00mm、穴直径2.095mmのオリフィス)を用い、温度315.5℃、荷重5000gの条件下、ASTM D−1238−70に従って測定した値である。
[参考例2]PPS−2の調製
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム2583.00g(31.50モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次にp−ジクロロベンゼン10362.03g(70.49モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸カルシウム一水和物水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥することにより、乾燥PPSを得た。得られたPPSは、MFRが100g/10分で、カルシウムの含有量は500ppmであり、また降温結晶化温度は175℃であった。
(B)オレフィン系樹脂
B−1:α,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位及びアクリル酸ブチルに由来する構造単位を有するオレフィン系樹脂(アルケマ(株)製LОTADER AX8750:グリシジルメタクリレート(GMA)5重量%、アクリル酸ブチル(BA)25重量%)
B−2:α,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位及びアクリル酸ブチルに由来する構造単位を有するオレフィン系樹脂(アルケマ(株)製LОTADER AX8700:グリシジルメタクリレート8重量%、アクリル酸ブチル25重量%)
B−3:α,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位及びアクリル酸ブチルに由来する構造単位を有するオレフィン系樹脂(日油(株)製モディパーA4300:グリシジルメタクリレート15重量%、アクリル酸ブチル21重量%)
B−4:α,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位を有するオレフィン系樹脂(住友化学(株)製BF−E:グリシジルメタクリレート12重量%、アクリル酸ブチル0重量%)
B−5:α,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位及びアクリル酸メチルに由来する構造単位を有するオレフィン系樹脂(住友化学(株)製BF−7M:グリシジルメタクリレート12重量%、アクリル酸ブチル(MA)0重量%)
B−6:アクリル酸ブチルに由来する構造単位を有するオレフィン系樹脂(アルケマ(株)製LОTRYL 35BA40:グリシジルメタクリレート0重量%、アクリル酸ブチル35重量%)
〔測定評価方法〕
本実施例および比較例における測定評価方法は以下の通りである。
(メルトフローレイト(MFR)の測定)
本発明のPPS樹脂組成物ペレットを、測定温度315℃、2160g荷重とし、ISO1133に準ずる方法で測定した。
(曲げ弾性率の測定)
本発明のPPS樹脂組成物ペレットを、熱風乾燥機を用いて130℃で3時間乾燥した後、シリンダー温度:310℃、金型温度:145℃に設定した住友重機製射出成形機(SE−50D)に供給し、ISO 20753(2008)に規定されるタイプA1試験片形状の金型を用いて、中央平行部の断面積を通過する溶融樹脂の平均速度が400±50mm/sとなる条件で射出成形を行い、試験片を得た。この試験片の中央平行部を切り出し、タイプB2試験片を得た。この試験片を、23℃、相対湿度50%の条件で16時間状態調節を行った後、ISO 178(2010)法に準拠し、スパン64mm、試験速度:2mm/minの条件で曲げ弾性率測定を行った。
(引張伸び保持率の測定)
本発明のPPS樹脂組成物ペレットを、熱風乾燥機を用いて130℃で3時間乾燥した後、温度320℃、金型温度140℃に設定した住友重機械工業社製射出成形機(SE50DU)に供給し、厚み1.6mmのASTM4号ダンベル片を成形した。測定用のサンプルを10本取得し、そのうち5本を240℃に設定したギアオーブン内で30分間熱処理した。ギアオーブンから取り出し、23℃、相対湿度50%の条件で16時間状態調節を行った。同様に、熱処理を行わない未処理のダンベル片も23℃、相対湿度50%の条件で16時間状態調節を行い、23℃、相対湿度50%の雰囲気下、歪速度10mm/min、支点間距離64mmの条件で引張強度及び引張伸び測定を行った。未処理のASTM4号ダンベル片の引張伸び値に対する、240℃、30分間熱処理したASTM4号ダンベル片の引張伸び値の割合を引張伸び保持率として計算した。
(熱処理後の可撓性の測定)
本発明のPPS樹脂組成物ペレットを、熱風乾燥機を用いて130℃で3時間乾燥した後、温度330℃、金型温度50℃に設定した住友重機械工業社製射出成形機(SE100DU)に供給し、試験片長さ 80mm、幅 10mm、試験片厚み 1mm、ヒンジ部長さ 5mm、ヒンジ部厚み 0.4mmの試験片を成形した。試験片5本を240℃に設定したギアオーブン内で30分処理した。ギアオーブンから取り出し、23℃、相対湿度50%の条件で16時間状態調節を行った。調節後試験片両端部が接触するように試験片を山折り及び谷折りを繰り返し、ヒンジ部に亀裂が入るまでの折り曲げ回数を測定した。
(降温結晶化温度(Tmc)の測定)
本発明のPPS樹脂組成物のペレット約10mgを秤量し、パーキンエルマー社製示差走査熱量計DSC−7を用い、昇温速度20℃/分で昇温し、340℃で5分間保持後、20℃/分の速度で降温させた時の結晶化ピーク(発熱ピーク)温度を測定した。
(メルトフローレイト(MFR)変化率の測定)
本発明のPPS樹脂組成物のペレットを温度330℃、荷重2160gの条件下、5分滞留させた後にISO1133に従って計測したメルトフローレイト(MFR)A(g/10min)に対する、温度330℃、荷重2160gの条件下、30分滞留させた後にISO1133に従って計測したメルトフローレイト(MFR)B(g/10min)の比B/Aを計算した。
(電線被膜加工性(引き取り性)の評価)
本発明のPPS樹脂組成物を押出成形品とした時の電線被膜加工性を次のように評価した。本発明のPPS樹脂組成物ペレットを130℃で3時間乾燥した後、スクリュー外径30mmφの電線成形機に供給し、外径1.0mmφの銅撚り線を芯線とする被覆厚さ0.1mmの被覆電線を線速100m/minにて製造した。加工時に電線成形機内で増粘し、引き取りできなかったものを×、引き取りできたが被膜膨れが発生したものを△、問題なく加工できたものを〇として評価した。
(金属密着性の評価)
本発明のPPS樹脂組成物ペレットを、熱風乾燥機を用いて130℃で3時間乾燥した後、温度320℃、金型温度140℃に設定した住友重機械工業社製射出成形機(SE50DU)に供給し、ISO19095−2:2015「Overlapped testspecimens(type B)」に準拠した形状の評価用試験片を作成した。射出条件は、シリンダー温度320℃、金型温度140℃、充填時間1.0秒となるように射出速度を調整し、保圧40MPa、射出時間20秒、冷却時間25秒にて、金属片をインサートして成形した。23℃、相対湿度50%の条件で16時間状態調節を行い、ISO19095−3:2015に従い、樹脂部と金属部のせん断破壊荷重を測定した。なお、金属片には、アルミニウム片(A5052)と銅片(タフピッチ銅C1100)を使用した。
(PPS樹脂組成物の製造)
シリンダー温度を280℃に設定した、26mm直径の中間添加口を有する2軸押出機(東芝機械(株)製TEM−26SS L/D=64.6)を用いて、(A)PPS樹脂、(B)オレフィン系樹脂をメインフィード口から添加後、溶融混練してペレットを得た。このペレットを用いて上記の各特性を評価した。その結果を表1および表2に示す。
Figure 2020105515
Figure 2020105515
〔実施例1〜20〕
シリンダー温度を280℃に設定した、26mm直径の中間添加口を有する2軸押出機(東芝機械(株)製TEM−26SS L/D=64.6)を用いて、表1に示す重量部数にて、(a)PPS樹脂、(b)オレフィン系樹脂をメインフィード口から添加した。得られたペレットを130℃、3時間熱風乾燥し、メルトフローレイト(MFR)、射出成形、降温結晶化温度(Tmc)測定、メルトフローレイト(MFR)変化率測定、引き取り性評価に供した。更に得られた射出成形品を前記の通り240℃で30分処理した後、曲げ弾性率、引張伸び保持率、熱処理後の可撓性、金属密着性を評価した。各種評価結果は表1および表2に示すとおりであった。
〔比較例1〜2〕
シリンダー温度を280℃に設定した、26mm直径の中間添加口を有する2軸押出機(東芝機械(株)製TEM−26SS L/D=64.6)を用いて、表2の重量部数にて、(a)PPS樹脂、(b)オレフィン系樹脂をメインフィード口から添加した。得たペレットを130℃、3時間熱風乾燥し、メルトフローレイト(MFR)、射出成形、降温結晶化温度(Tmc)測定、メルトフローレイト(MFR)変化率測定、電線被膜加工性評価に供した。更に得られた射出成形品を前記の通り240℃で30分処理した後、曲げ弾性率、引張伸び保持率、熱処理後の可撓性を評価した。熱処理後の可撓性が低く、実使用できない結果であった。
〔比較例3〜5〕
シリンダー温度を280℃に設定した、26mm直径の中間添加口を有する2軸押出機(東芝機械(株)製TEM−26SS L/D=64.6)を用いて、表2の重量部数にて、(a)PPS樹脂、(b)オレフィン系樹脂をメインフィード口から添加した。得たペレットを130℃、3時間熱風乾燥し、メルトフローレイト(MFR)、射出成形、降温結晶化温度(Tmc)測定、メルトフローレイト(MFR)変化率測定、電線被膜加工性評価に供した。更に得られた射出成形品を前記の通り240℃で30分処理した後、曲げ弾性率、引張伸び保持率、熱処理後の可撓性を評価した。引き取り性評価時に電線成形機内で増粘し引き取りできず、実使用できない結果であった。
〔比較例6〕
シリンダー温度を280℃に設定した、26mm直径の中間添加口を有する2軸押出機(東芝機械(株)製TEM−26SS L/D=64.6)を用いて、表2の重量部数にて、(a)PPS樹脂、(b)オレフィン系樹脂をメインフィード口から添加した。得たペレットを130℃、3時間熱風乾燥し、メルトフローレイト(MFR)、射出成形、降温結晶化温度(Tmc)測定、メルトフローレイト(MFR)変化率測定、電線被膜加工性評価に供した。更に得られた射出成形品を前記の通り240℃で30分処理した後、曲げ弾性率、引張伸び保持率、熱処理後の可撓性を評価した。引張伸び保持率が低く引き取り性評価時に電線に膨れが多数発生し、実使用できない結果であった。
〔比較例7〕
シリンダー温度を280℃に設定した、26mm直径の中間添加口を有する2軸押出機(東芝機械(株)製TEM−26SS L/D=64.6)を用いて、表2の重量部数にて、(a)PPS樹脂、(b)オレフィン系樹脂をメインフィード口から添加した。得たペレットを130℃、3時間熱風乾燥し、メルトフローレイト(MFR)、射出成形、降温結晶化温度(Tmc)測定、メルトフローレイト(MFR)変化率測定、電線被膜加工性評価に供した。更に得られた射出成形品を前記の通り240℃で30分処理した後、曲げ弾性率、引張伸び保持率、熱処理後の可撓性、金属密着性を評価した。引き取り性評価時に電線成形機内で増粘し引き取りできず、実使用できない結果であり、金属密着性も低かった。
本発明のPPS樹脂組成物は、熱処理後の可撓性、押出製膜性に優れるため、130℃以上の環境下で連続使用される押出成形品、とりわけ絶縁電線被覆材として好適に利用できる。

Claims (9)

  1. (a)ポリフェニレンスルフィド樹脂と(b)オレフィン系樹脂(エラストマー)を配合してなるPPS樹脂組成物であって、該(b)オレフィン系樹脂(エラストマー)は(b−1)α,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位及びアクリル酸ブチルに由来する構造単位を有するオレフィン系樹脂を含み、(b)オレフィン系樹脂(エラストマー)中におけるα,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位量をA、アクリル酸ブチルに由来する構造単位量をBとした時の比A/B(重量比)が0.07を超え0.50以下であることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  2. 前記(b−1)α,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位及びアクリル酸ブチルに由来する構造単位を有するオレフィン系樹脂中におけるα,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位の含有量が4〜10重量%であることを特徴とする請求項1記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  3. 前記(a)成分と(b)成分の合計を100重量部とした時の(b−1)α,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構造単位及びアクリル酸ブチルに由来する構造単位を有するオレフィン系樹脂が10〜30重量部であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  4. 前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物中のカルシウムイオン濃度が100ppm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  5. 前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物のメルトフローレイト(温度315℃、荷重2160g)が15〜100g/10minであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる押出成形品。
  7. 前記押出成形品が電線用絶縁樹脂被覆材であることを特徴とする請求項6に記載の押出成形品。
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物と、金属からなる金属複合成形体。
  9. 前記金属複合成形体がバスバーであることを特徴とする請求項8に記載の金属複合成形体。
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