JP2013133374A - ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れたオリゴマー低溶出性と溶融流動性を両立するPPS樹脂組成物およびその成形品の提供。
【解決手段】(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)無機充填材を30〜150重量部を配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、樹脂組成物のクロロホルム抽出量が0.4wt%以下であり、かつ樹脂組成物の溶融粘度(温度320℃、せん断速度1,216/s)が100〜500Pa・sであることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、PPS樹脂組成物およびその成形品を提供する。
ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下PPS樹脂と略す)は、剛性、耐熱性、耐熱水性、耐薬品性および成形加工性をバランスよく備えているため、電気・電子部品、水廻り部品および自動車部品などに広く用いられている。
かかるPPS樹脂の優れた特性を活かして、PPS樹脂成形体をモーター部品、特に冷媒と接触するモーター部品に適用する試みはこれまでにもなされてきている。
すなわち冷媒と接触するモーター部品は、100℃以上の高温に曝される場合があるため高い耐熱性を要求される場合がある。また冷媒中に水分が含まれる場合があり、耐湿熱性も要求される場合がある。更に、冷媒中に溶け出した分解成分やオリゴマー成分が冷媒循環系で異物となり、フィルターなどに詰まる場合があるため、高い耐薬品性も求められる場合がある。PPS樹脂はこれら特性を兼ね備えていることから、モーター部品、特に冷媒と接触するモーター部品に好適な材料と言える。
また、冷媒と接触するモーター部品に特に好適なPPS材料とすべく、PPS樹脂から冷媒への溶出成分を極力減らす試みもなされてきており、特定の脂肪酸アミド系化合物を添加することによる溶融流動性と耐冷媒性に優れたPPS樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、特定の脂肪酸アミド系化合物の添加は連続成形時に金型付着物(モールドデポジット)が増える傾向にあり、生産性を悪化させる課題があった。
更に冷媒としては、かつてはフロンが採用されてきたが、低オゾン層破壊性が求められてきたため、代替フロンHFCが採用されるようになった。しかし、代替フロンHFCは多くの場合、地球温暖化効果が高い問題がある。そのため近年は更に、地球温暖化効果も低い(地球温暖化係数の低い)冷媒の採用が進んでいる。かかる冷媒で高い冷却性能を得るためには作動温度を高くしなければならない場合があり、高温下でもオリゴマーが溶出し難い、より優れた耐冷媒性PPS材料のニーズが高まっている。
一方で近年、地球温暖化対策から、自動車分野を中心に、より小型で出力性能も高いエアコンなどのモーター需要が高まっており、かかる用途に適用されるPPS樹脂に対して、小型、厚み低減による軽量化を目的に、より優れた溶融流動性が求められている。しかしながら、溶融流動性を上げるために分子量を下げると、低分子量成分であるオリゴマーが増加する傾向にあり、優れた、耐冷媒性および溶融流動性を兼ね備えたPPS樹脂組成物およびその成形品の開発が課題であった。
PPS樹脂のオリゴマーを削減する目的で、PPSポリマー自体のオリゴマー量を削減する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、上記のごとき近年のモーター部品、特に近年の低オゾン層破壊性かつ低地球温暖化係数冷媒と接触するモーター部品に対する要求に応えるには十分なレベルとは言い難い状況であった。

特開2003−105099号公報 特開2005−194312号公報
本発明は、特定の脂肪酸アミド系化合物を添加することなく、優れた耐冷媒性および連続成形性や溶融流動性等の成形加工性を兼ね備えたPPS樹脂組成物およびその成形品を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、下記を提供するものである。
1.(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)無機充填材を30〜150重量部を配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、樹脂組成物のクロロホルム抽出量が0.4wt%以下であり、かつ樹脂組成物の溶融粘度(温度320℃、せん断速度1,216/s)が100〜500Pa・sであることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
2.(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)無機充填材を40〜90重量部を配合してなる、上記1項記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
3.上記1〜2項いずれか記載のモーター部品用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
4.上記1〜3項いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を射出成形して得られた成形体であって、モーター部品用であることを特徴とする成形体。
5.成形体が冷媒と接触するモーター部品用であることを特徴とする上記4項記載の成形体。
6.冷媒の地球温暖化係数が1,700以下であることを特徴とする上記5項記載の成形体。
本発明は、優れた、耐冷媒性および連続成形性や溶融流動性等の成形加工性を兼ね備えたPPS樹脂組成物およびその成形品を提供するものであり、モーター部品、特に冷媒と接触するモーター部品、中でも地球温暖化係数が低い冷媒と接触するモーター部品用途に特に有用である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
(1)PPS樹脂
本発明で用いられる(A)PPS樹脂は、下記構造式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体であり、
Figure 2013133374
耐熱性の観点からは上記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。またPPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満程度が、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。
Figure 2013133374
本発明で用いられる(A)PPS樹脂はクロロホルム抽出量が0.5wt%以下であることが好ましく、さらには0.4wt%以下であることが好ましい。
PPS樹脂のクロロホルム抽出量が0.5wt%を越える場合、それを用いた樹脂組成物のクロロホルム抽出量が過大となり好ましくない。本発明おいて、クロロホルム抽出量を低減させる方法としては、後述する重合工程、後処理工程を組み合わせる方法が好ましく用いられる。なお本発明における(A)PPS樹脂のクロロホルム抽出量は、ソックスレー抽出器を用い、PPS樹脂組成物を凍結粉砕して32メッシュパス、42メッシュオンの粒子2.0g、クロロホルム200mlを用い5時間抽出し、その抽出液を50℃で乾燥し、得られた残さを仕込みPPSサンプル量で割り返し、100をかけてパーセンテージ表記としたものである。
本発明で用いられる(A)PPS樹脂の溶融粘度は、優れた溶融流動性を有する樹脂組成物を得る観点から、5〜50Pa・s(310℃、剪断速度1,216/s)の範囲が好ましく、10〜45Pa・sの範囲がより好ましく、10〜40Pa・sの範囲が更に好ましい。また溶融粘度の異なる2種以上のポリフェニレンスルフィド樹脂を併用して用いてもよい。なお、本発明における(A)PPS樹脂の溶融粘度は、310℃、剪断速度1,216/sの条件下、東洋精機社製キャピログラフを用いて測定した値である。
以下に、本発明に用いる(A)PPS樹脂の製造方法について説明するが、上記構造と特性を有するPPSが得られれば下記方法に限定されるものではない。但し、ジクロロベンゼンと硫黄源を主たるモノマー(90モル%以上)とし、非プロトン性極性溶媒存在下で重合する方法が、生産安定性の点で最も好ましい。
次に、製造に使用するポリハロゲン芳香族化合物、スルフィド化剤、重合溶媒、分子量調節剤、重合助剤および重合安定剤の内容について説明する。
[ポリハロゲン化芳香族化合物]
本発明で用いられるポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3.5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくは、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3.5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼンなどのポリクロロベンゼンが好ましく用いられ、更にp−ジクロロベンゼンが特に好ましく用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p−ジクロロベンゼンで代表されるp−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
ポリハロゲン化芳香族化合物の使用量は、加工に適した粘度とオリゴマー低溶出性のPPS樹脂を得る点から、スルフィド化剤1モル当たり0.8から1.023モル、好ましくは0.8から1.020モル、更に本発明に有用な重合度と低オリゴマー性を両立させる意味からは、0.9から1.015モルの範囲が有用である。上記範囲の場合、前述したクロロホルム抽出量が好ましい範囲にあるPPS樹脂を得ることが出来る。
[スルフィド化剤]
本発明で用いられるスルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
あるいは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
本発明において、仕込みスルフィド化剤の量は、脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいが、この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに対し0.90から1.10モル、好ましくは0.90から1.05モル、更に好ましくは0.95から1.02モルの範囲が例示できる。
[重合溶媒]
本発明では重合溶媒として有機極性溶媒を用いる。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられ、これらはいずれも反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
有機極性溶媒の使用量は、スルフィド化剤1モル当たり2.0モルから10モル、好ましくは2.25から6.0モル、より好ましくは2.5から5.5モルの範囲が選択される。
[分子量調節剤]
本発明においては、生成するPPS樹脂の末端を形成させるか、あるいは重合反応や分子量を調節するなどのために、モノハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。モノハロゲン化化合物としては、モノハロゲン化ベンゼン、モノハロゲン化ナフタレン、モノハロゲン化アントラセン、ベンゼン環を2個以上含むモノハロゲン化化合物、モノハロゲン化複素環式化合物、などを挙げることができる。なかでも、経済性の観点からするとモノハロゲン化ベンゼンが好ましい。また、異なる2種以上のモノハロゲン化化合物を組み合わせて用いることも可能である。
[重合助剤]
本発明においては、重合度調節のために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは得られるPPS樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸塩、水、およびアルカリ金属塩化物が好ましく、さらにはナトリウム、リチウムのカルボン酸塩および/または水が特に好適に用いられる。
上記アルカリ金属カルボン酸塩とは、一般式R(COOM)n(式中、Rは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。
アルカリ金属カルボン酸塩は、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩および重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記アルカリ金属カルボン酸塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価であり、カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は反応系への溶解性が不十分であると思われるため、安価で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが最も好ましく用いられる。
これらアルカリ金属カルボン酸塩を重合助剤として用いる場合の使用量は、加工に適した粘度とオリゴマー低溶出性のPPS樹脂を得る点から、仕込みスルフィド化剤1モルに対し、通常0.01モル〜2モルの範囲であり、本発明に有用な重合度と低オリゴマー性を両立させる意味からは、0.010〜0.088モルの範囲が好ましい。上記範囲の場合、前述した溶融粘度が好ましい範囲にあるPPS樹脂を得ることが出来る。
また水を重合助剤として用いる場合の添加量は、仕込みスルフィド化剤1モルに対し、通常0.3モル〜15モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.6〜10モルの範囲が好ましく、1〜5モルの範囲がより好ましい。これら重合助剤は2種以上を併用することももちろん可能であり、例えばアルカリ金属カルボン酸塩と水を併用すると、それぞれより少量で高分子量化が可能となる。
これら重合助剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、重合助剤としてアルカリ金属カルボン酸塩を用いる場合は前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。また水を重合助剤として用いる場合は、ポリハロゲン化芳香族化合物を仕込んだ後、重合反応途中で添加することが効果的である。
[重合安定剤]
本発明においては、重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するので、本発明で使用する重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、仕込みスルフィド化剤1モルに対して、通常0.02〜0.2モル、好ましくは0.03〜0.1モル、より好ましくは0.04〜0.09モルの割合で使用することが好ましい。この割合が少ないと安定化効果が不十分であり、逆に多すぎても経済的に不利益であったり、ポリマー収率が低下する傾向となる。
重合安定剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。
次に、本発明に用いる(A)PPS樹脂の製造方法について、前工程、重合反応工程、回収工程、および後処理工程と、順を追って具体的に説明する。
[前工程]
本発明に用いる(A)PPS樹脂の製造方法において、スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。
また、上述したように、スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製されるスルフィド化剤も用いることができる。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温から100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
重合反応における、重合系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.3〜10.0モルであることが好ましい。ここで重合系内の水分量とは重合系に仕込まれた水分量から重合系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は、水、水溶液、結晶水などのいずれの形態であってもよい。
[重合反応工程]
本発明においては、有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させることによりPPS樹脂を製造する。
重合反応工程を開始するに際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜240℃、好ましくは100〜230℃の温度範囲で、有機極性溶媒とスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物を混合する。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
かかる混合物を通常200℃〜290℃の範囲に昇温する。昇温速度に特に制限はないが、通常0.01〜5℃/分の速度が選択され、0.1〜3℃/分の範囲がより好ましい。一般に、最終的には250〜290℃の温度まで昇温し、その温度で通常0.25〜50時間、好ましくは0.5〜20時間反応させる。最終温度に到達させる前の段階で、例えば200℃〜260℃で一定時間反応させた後、270〜290℃に昇温する方法は、より高い重合度を得る上で有効である。この際、200℃〜260℃での反応時間としては、通常0.25時間から20時間の範囲が選択され、好ましくは0.25〜10時間の範囲が選択される。
なお、より高重合度のポリマーを得るためには、複数段階で重合を行うことが有効である場合がある。複数段階で重合を行う際は、245℃における系内のポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が、40モル%以上、好ましくは60モル%に達した時点であることが有効である。
また、ポリハロゲン化芳香族化合物(ここではPHAと略記)の転化率は、以下の式で算出した値である。PHA残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求めることができる。
(a)ポリハロゲン化芳香族化合物をアルカリ金属硫化物に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)−PHA過剰量(モル)〕
(b)上記(a)以外の場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)〕
[回収工程]
本発明で用いる(A)PPS樹脂の製造方法においては、重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。本発明で用いるPPS樹脂は、公知の如何なる回収方法を採用しても良い。
例えば、重合反応終了後、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法を用いても良い。この際の徐冷速度には特に制限は無いが、通常0.1℃/分〜3℃/分程度である。徐冷工程の全行程において同一速度で徐冷する必要もなく、ポリマー粒子が結晶化析出するまでは0.1〜1℃/分、その後1℃/分以上の速度で徐冷する方法などを採用しても良い。上記回収方法を用いる場合、前述したクロロホルム抽出量が好ましい範囲にあるPPS樹脂を得ることが出来る。
また上記の回収を急冷条件下に行うことも好ましい方法の一つであり、この回収方法の好ましい一つの方法としてはフラッシュ法が挙げられる。フラッシュ法とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、8kg/cm以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉末状にして回収する方法であり、ここでいうフラッシュとは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、具体的には例えば常圧中の窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は通常150℃〜250℃の範囲が選択される。
なかでも、より優れた低オリゴマー性を発現させるためには、後述の有機溶媒による洗浄効果を上げるために、重合反応終了後、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法が好ましく用いられる。
[後処理工程]
本発明で用いられる(A)PPS樹脂は、上記重合、回収工程を経て生成した後、酸処理、熱水処理または有機溶媒による洗浄を施されたものであってもよい。
酸処理を行う場合は次のとおりである。本発明でPPS樹脂の酸処理に用いる酸は、PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられ、なかでも酢酸および塩酸がより好ましく用いられるが、硝酸のようなPPS樹脂を分解、劣化させるものは好ましくない。
酸処理の方法は、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。例えば、酢酸を用いる場合、pH4の水溶液を80〜200℃に加熱した中にPPS樹脂粉末を浸漬し、30分間撹拌することにより十分な効果が得られる。処理後のpHは4以上例えばpH4〜8程度となっても良い。酸処理を施されたPPS樹脂は残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
熱水処理を行う場合は次のとおりである。本発明において使用するPPS樹脂を熱水処理するにあたり、熱水の温度を100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは170℃以上とすることが好ましい。100℃未満ではPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果が小さいため好ましくない。
本発明の熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作に特に制限は無く、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、圧力容器内で加熱、撹拌する方法、連続的に熱水処理を施す方法などにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の多い方が好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
また、処理の雰囲気は、末端基の分解は好ましくないので、これを回避するため不活性雰囲気下とすることが望ましい。さらに、この熱水処理操作を終えたPPS樹脂は、残留している成分を除去するため温水で数回洗浄するのが好ましい。
有機溶媒で洗浄する場合は次のとおりである。本発明でPPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒は、PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒のうちでも、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が好ましく、特に優れたオリゴマー除去効果を得る意味では、N−メチル−2−ピロリドンの使用が特に好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上の温度で加圧下に洗浄することも可能である。また、洗浄時間についても特に制限はない。洗浄条件にもよるが、バッチ式洗浄の場合、通常5分間以上洗浄することにより十分な効果が得られる。また連続式で洗浄することも可能である。かかる有機溶媒による洗浄は、高いオリゴマー除去効果が得られることから、本発明で用いる(A)PPS樹脂の製造に好適なプロセスである。
本発明においては、上記のようにして得られたポリフェニレンスルフィド樹脂を、アルカリ土類金属塩を含む水による洗浄による処理を施しても良い。ポリフェニレンスルフィド樹脂を、アルカリ土類金属塩を含む水で洗浄する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。アルカリ土類金属塩の種類としては特に制限は無いが、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムなどの水溶性有機カルボン酸のアルカリ土類金属塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物が好ましい例として挙げられ、特に酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムなどの水溶性有機カルボン酸のアルカリ土類金属塩が好ましい。水の温度は、室温〜200℃であることが好ましく、50〜90℃であることがより好ましい。上記水中におけるアルカリ土類金属塩の使用量は乾燥ポリフェニレンスルフィド樹脂1kgに対し0.1g〜50gであることが好ましく、0.5g〜30gであることがより好ましい。洗浄時間としては0.5時間以上が好ましく、1.0時間以上がより好ましい。また好ましい洗浄浴比(乾燥ポリフェニレンスルフィド樹脂単位重量当たりのアルカリ土類金属塩を含む温水使用重量)は洗浄時間、温度にもよるが、乾燥ポリフェニレンスルフィド1kg当たり、上記アルカリ土類金属を含む温水を5kg以上用いて洗浄することが好ましく、10kg以上用いて洗浄することがより好ましい。上限としては特に制限はなく、高くてもよいが、使用量と得られる効果の点から100kg以下であることが好ましい。かかる温水洗浄は複数回行っても良い。
本発明において用いる(A)PPS樹脂は、重合終了後に酸素雰囲気下においての加熱および過酸化物などの架橋剤を添加しての加熱による熱酸化架橋処理により高分子量化して用いることも可能である。
熱酸化架橋による高分子量化を目的として乾式熱処理する場合には、その温度は160〜260℃が好ましく、170〜250℃の範囲がより好ましい。また、酸素濃度は5体積%以上、更には8体積%以上とすることが望ましい。酸素濃度の上限には特に制限はないが、50体積%程度が限界である。処理時間は、0.5〜100時間が好ましく、1〜50時間がより好ましく、2〜25時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
しかしながら、オリゴマー低溶出性と優れた溶融流動性を両立する観点からは、架橋構造の導入はあまり好ましくなく、直鎖状PPSであることが好ましい。
また、熱酸化架橋を抑制し、揮発分除去を目的として乾式熱処理を行うことが可能である。その温度は130〜250℃が好ましく、160〜250℃の範囲がより好ましい。また、この場合の酸素濃度は5体積%未満、更には2体積%未満とすることが望ましい。処理時間は、0.5〜50時間が好ましく、1〜20時間がより好ましく、1〜10時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
本発明において、脱イオン処理などにより、PPS中の灰分率が0.2重量%以下に低減されたPPS樹脂を用いることは、より優れた靭性および成形加工性を得る意味で好ましい。かかる脱イオン処理の具体的方法としては酸水溶液洗浄処理、熱水洗浄処理および有機溶剤洗浄処理などが例示でき、これらの処理は2種以上の方法を組み合わせて用いてもよい。なお、ここで灰分量の測定は以下の方法が挙げられる。乾燥状態のPPS原末約5gを白金坩堝に量り取り、電気コンロ上で黒色塊状物となるまで焼成する。次にこれを550℃に設定した電気炉中で炭化物が焼成しきるまで焼成を続ける。その後デシケータ中で冷却後、重量を測定し、初期重量との比較から灰分量を計算することができる。
例えば、上記のごとき製造法を採用することで、優れたオリゴマー低溶出性と溶融流動性を備えた(A)PPS樹脂を得ることが可能であり、本発明にはかかる(A)PPS樹脂を用いることが重要となる。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物における(B)無機充填材の配合量は、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)無機充填材を30〜150重量部である。優れた低溶出性と溶融流動性を並立させる意味および適切な強度を付与する意味において必要である。
(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)無機充填材が30重量部未満の場合は、組成物としての適切な機械強度が得られないため好ましくない。また(B)無機充填材が150重量部を超える場合は、組成物の溶融流動性が低下し、適切な成形加工性が得られないため好ましくない。特に(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)無機充填材を30〜100重量部の範囲が好ましく、40〜90重量部の範囲が特に好適である。(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)無機充填材が40〜90重量部の範囲では、優れたオリゴマー低溶出性と、組成物としての適切な機械強度、成形加工性を兼ね備えるため特に好ましい。
かかる(B)無機充填材としての繊維状充填材としては、具体的には、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ガラスフラットファイバー、異形断面ガラスファイバー、ガラスカットファイバー、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維、ロックウール、PAN系やピッチ系の炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、アスベスト繊維、石膏繊維、セラミック繊維、ジルコニア繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、などが挙げられ、これらは2種類以上併用することも可能である。また、これら繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
また(B)無機充填材としての非繊維状充填材の具体例としては、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケート、ハイドロタルサイトなどの珪酸塩、酸化珪素、ガラス粉、酸化マグネシウム、酸化アルミ(アルミナ)、シリカ(破砕状・球状)、石英、ガラスビーズ、ガラスフレーク、破砕状・不定形状ガラス、ガラスマイクロバルーン、二硫化モリブデン、酸化アルミニウム(破砕状)、透光性アルミナ(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、酸化チタン(破砕状)、酸化亜鉛(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)などの酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛などの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛、窒化アルミニウム、透光性窒化アルミニウム(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属酸化物などが挙げられ、ここで金属粉、金属フレーク、金属リボンの金属種の具体例としては銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫などが例示できる。また、カーボン粉末、黒鉛、カーボンフレーク、鱗片状カーボン、フラーレン、グラフェンなどが挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。
また、これら非繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。中でもガラス繊維、炭素繊維、炭酸カルシウム、カーボンブラック、黒鉛が特に好ましい。
さらに、本発明のPPS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、機械的強度、靱性などの向上を目的に、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基およびウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するシラン化合物を添加してもよい。かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリクロロシランなどのイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、およびγ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。なかでもエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基を有するアルコキシシランが優れたウェルド強度を得る上で特に好適である。かかるシラン化合物の好適な添加量は、ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、0.05〜3重量部の範囲が選択される。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに他の樹脂をブレンドして用いてもよい。かかるブレンド可能な樹脂には特に制限はないが、その具体例としては、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、芳香族系ナイロンなどのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシルジメチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシル基やカルボン酸エステル基や酸無水物基やエポキシ基などの官能基を有するオレフィン系コポリマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルアミドエラストマー、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、エポキシ基含有ポリオレフィン共重合体などが挙げられる。
なお、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(モンタン酸及びその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、着色用カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、燐酸エステル、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、熱安定剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウムなどの滑剤、ビスフェノールA型などのビスフェノールエポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの強度向上材、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤および発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の調製方法には特に制限はないが、各原料を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなど通常公知の溶融混合機に供給して、280〜380℃の温度で混練する方法などを代表例として挙げることができる。原料の混合順序にも特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し、さらに残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法などのいずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することももちろん可能である。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、そのクロロホルム抽出量が0.4wt%以下であることが必要であり、0.3wt%以下であることがより好ましい。クロロホルム抽出量が0.4wt%を超えると、オリゴマー成分に代表されるクロロホルム抽出物が冷媒中に溶け出して冷媒循環系で異物となり、フィルターなどに詰まる可能性が高まるためである。特に地球温暖化効果の低い(地球温暖化係数の低い)冷媒と接触する場合、高い冷却性能を得るために作動温度を高くしなければならない。高温下でもオリゴマーを溶出しにくくするために、耐冷媒性に優れる。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物のクロロホルム抽出量は、例えば、ソックスレー抽出器を用い、PPS樹脂組成物を凍結粉砕して32メッシュパス、42メッシュオンの粒子2.0g、クロロホルム200mlを用い5時間抽出し、その抽出液を50℃で乾燥する方法が挙げられる。得られた残さ重量を仕込みPPSサンプル重量で割り返し、100をかけてパーセンテージ表記としたものを、クロロホルム抽出量とする。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、その溶融粘度(温度320℃、せん断速度1,216/s)が100〜500Pa・sである。溶融粘度が100Pa・s未満の場合は、無機充填材を配合しても強度低下の問題を招き易くなり好ましくない。また溶融粘度が500Pa・sを超える場合は、成形加工性が著しく低下するため好ましくない。特にポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の溶融粘度が150〜350Pa・sの範囲がより好ましい。これは、近年、地球温暖化対策から、自動車分野を中心に、より小型で出力性能も高いエアコンなどのモーター需要が高まっており、かかる用途に適用されるPPS樹脂に対して、小型、厚み低減による軽量化を目的に成形品の薄肉化要求が高まり、より優れた溶融流動性且つ高強度が求められているためである。
本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物PPS樹脂組成物の溶融粘度は、例えば、320℃、剪断速度1,216/sの条件下、東洋精機社製キャピログラフを用いて測定する方法が挙げられる。
溶融流動性を上げるために分子量を下げると、低分子量成分であるオリゴマーが増加する傾向にあり、優れたオリゴマー低溶出性と溶融流動性を両立するPPS樹脂組成物およびその成形品の開発が求められている。
このようにして得られる本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、トランスファー成形など各種成形に供することが可能であるが、特に射出成形用途に適している。
以上のように、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、低オリゴマー溶出性と高溶融流動性について均衡して優れている事から、モーター部品、特に家庭用、産業用、自動車用エアコンや冷蔵庫などの冷媒と接触するモーター部品に好適に用いられ、さらには地球温暖化係数が低い冷媒と接触するモーター部品に特に好適に用いられる。モーター部品の具体例としては、モーターインシュレーター、モーターコイルのオーバーモールドなどが例示できる。
また冷媒としては、CFC R11(地球温暖化係数 4,750)、CFC R12(同10,900)、CFC R114(同10,000)、HCFC R123(同77)、HFC R23(14,800)、HCFC R22(同1,810)、HFC R32(同675)、HFC R134a(同1,430)、HFC R143a(同4,470)、HFC R245fa(同1,030)、HFC R404A(同3,920)、HFC R407C(同1,770)、HFC R407E(同1,550)、HFC R410A(同2,090)などが挙げられる。中でも地球温暖化係数が1,700以下のHCFC R123(地球温暖化係数 77)、HFC R32(同675)、HFC R134a(同1,430)、HFC R245fa(同1,030)、HFC R407E(同1,550)および最近開発されたHFO−1234yf(同4)が冷媒として用いられる際に、本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物およびそれからなる成形体は特に有効に適用される。更に地球温暖化係数が1,000以下のHCFC R123(地球温暖化係数 77)、HFC R32(同675)、HFO−1234yf(同4)が冷媒として用いられる際に、格段に有効である。なおここで言う地球温暖化係数とは、二酸化炭素を基準にして、ほかの気体がどれだけ温暖化する能力があるか表した数字のことである。すなわち、単位質量の気体が大気中に放出されたときに、100年間で地球に与える放射エネルギーの積算値(すなわち温暖化への影響)を二酸化炭素に対する比率として見積もったものである。
その他本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の適用可能な用途としては、例えばセンサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品への適用も可能である。なお、昨今、優れた耐腐食性や環境等への配慮から、塩素、臭素含有量を少なくすることが、電気電子部品、なかでも特に、コネクター、コネクター構成部品、DVDシャーシ、パソコン筐体、コンデンサー構成部品用途において求められている。本発明の樹脂組成物はこの観点に置いても優れた低塩素、低臭素のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物(塩素、臭素の含有量がそれぞれ900ppm以下、さらには700ppm以下)を提供できる。なぜならば、本発明の方法で得られる(A)PPS樹脂は、特にオリゴマー量が少ないため、塩素末端量を低減できるからである。なお、ここで言う塩素、臭素の含有量は、SGSジャパン株式会社に依頼し、BSEN14582法に従い、SGS台湾で測定した値である。その他、オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;水道蛇口コマ、混合水栓、ポンプ部品、パイプジョイント、水量調節弁、逃がし弁、湯温センサー、水量センサー、水道メーターハウジングなどの水廻り部品;バルブオルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、車速センサー、ケーブルライナーなどの自動車・車両関連部品など各種用途が例示できる。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
参考例 PPS樹脂の重合
[参考例の測定方法]
(1)PPS樹脂の溶融粘度:310℃、剪断速度1,216/sの条件下、東洋精機社製キャピログラフを用いて測定した。なおL/D=8.0mm/2.096mmのオリフィスを用いた。
(2)塩素含有量:SGSジャパン株式会社に依頼し、BS EN14582法に従い、SGS台湾で測定した。
(3)灰分量:乾燥状態のPPS樹脂約5gを白金坩堝に量り取り、電気コンロ上で黒色塊状物となるまで焼成する。次にこれを550℃に設定した電気炉中で炭化物が焼成しきるまで焼成を続ける。その後デシケータ中で冷却後、重量を測定し、初期重量との比較から灰分量を計算した。
[参考例1]PPSの重合(PPS−1)
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.94kg(70.63モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム0.402kg(4.90モル)、及びイオン交換水3.82kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水8.09kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。その後200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン10.18kg(69.25モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から235℃まで昇温し、235℃で30分反応した後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温し、270℃で70分反応した。その後、270℃から250℃まで15分かけて冷却しながら水2.52kg(140.0モル)を圧入した。ついで250℃から220℃まで75分かけて徐々に冷却した後、室温近傍まで冷却し内容物を取り出した。内容物を約35リットルのNMPで希釈しスラリーとして85℃で30分撹拌後、80メッシュ金網(目開き0.175mm)で濾別して固形物を得た。得られた固形物を同様にNMP約35リットルで洗浄濾別した。得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収する操作を合計3回繰り返した。得られた固形物および酢酸30gを70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過し、更に得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収した。このようにして得られた固形物を窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPSを得た。得られたPPSの溶融粘度は、22Pa・s(310℃、剪断速度1,216/s)、灰分量0.03wt%、クロロホルム抽出量0.25wt%、塩素含有量870ppmであった。
[参考例2]PPSの重合(PPS−2)
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.94kg(70.63モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム0.517kg(6.30モル)、及びイオン交換水3.82kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水8.09kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。その後200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン10.34kg(70.32モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から235℃まで昇温し、235℃で30分反応した後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温し、270℃で70分反応した。その後、270℃から250℃まで15分かけて冷却しながら水2.52kg(140.0モル)を圧入した。ついで250℃から220℃まで75分かけて徐々に冷却した後、室温近傍まで冷却し内容物を取り出した。内容物を約35リットルのNMPで希釈しスラリーとして85℃で30分撹拌後、80メッシュ金網(目開き0.175mm)で濾別して固形物を得た。得られた固形物を同様にNMP約35リットルで洗浄濾別した。得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収する操作を合計3回繰り返した。得られた固形物および酢酸30gを70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過し、更に得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収した。このようにして得られた固形物を窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPSを得た。得られたPPSの溶融粘度は、得られたPPSの溶融粘度は、22Pa・s(310℃、剪断速度1,216/s)、灰分量0.03wt%、クロロホルム抽出量0.53wt%、塩素含有量1,800ppmであった。
[参考例3]PPSの重合(PPS−3)
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.94kg(70.63モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム2.30kg(28.00モル)、及びイオン交換水3.82kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水8.09kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。その後200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン10.34kg(70.32モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から235℃まで昇温し、235℃で30分反応した後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃到達10分後に水1.008kg(56.0モル)を圧入し、270℃で120分反応した。その後、270℃から250℃まで15分かけて冷却し、ついで250℃から220℃まで75分かけて徐々に冷却した後、室温近傍まで冷却し内容物を取り出した。内容物を約35リットルのNMPで希釈しスラリーとして85℃で30分撹拌後、80メッシュ金網(目開き0.175mm)で濾別して固形物を得た。得られた固形物を同様にNMP約35リットルで洗浄濾別した。得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収する操作を合計3回繰り返した。得られた固形物および酢酸30gを70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過し、更に得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収した。このようにして得られた固形物を窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPSを得た。得られたPPSの溶融粘度は、195Pa・s(310℃、剪断速度1,216/s)、灰分量0.03wt%、クロロホルム抽出量0.51wt%、塩素含有量1,200ppmであった。
[実施例および比較例で用いた配合材とPPS樹脂組成物の製造法]
シリンダ設定温度を310℃、スクリュウ回転数を200rpmに設定した、44mm直径の中間添加口を有する2軸押出機(日本製鋼所製TEX−44)を用いて、参考例1〜3で得たPPS樹脂(A)100重量部および(C)添加剤および場合によって(B−2)無機充填材を表1に示す重量比で原料供給口から添加して溶融状態とし、(B−1)無機充填材の残りを表1に示す重量比で中間添加口から供給し、吐出量40kg/時間で溶融混練してペレットを得た。このペレットを用いて下記の各特性を評価した。なお、実施例中の物性の測定および試験は次の方法で行った。その結果を表1に示す。本実施例および比較例に用いた(A)PPS樹脂は以下の通りである。
PPS−1:参考例1に記載の方法で重合したPPS樹脂
PPS−2:参考例2に記載の方法で重合したPPS樹脂
PPS−3:参考例3に記載の方法で重合したPPS樹脂
本実施例および比較例に使用した(B)無機充填材および(C)添加剤は以下の通りである。
(B)無機充填材
B−1: チョップドストランド(日本電気硝子(株)社製 T−747H 3mm長、平均繊維径10.5μm)
B−2: 硫酸バリウム(堺化学工業社製)
(C)添加剤
C−1:金型離型性改良剤 高密度ポリエチレン メルトフローレート 0.04g/10分(測定法ASTM D1238)
C−2:金型離型性改良剤 エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物
軟化点(環球法)250±5℃
[測定方法]
(1)クロロホルム抽出量:ソックスレー抽出器を用い、PPS樹脂組成物を凍結粉砕して32メッシュパス、42メッシュオンの粒子2.0g、クロロホルム200mlを用い5時間抽出し、その抽出液を50℃で乾燥し、得られた残さ重量を仕込みPPSサンプル重量で割り返し、100をかけてパーセンテージ表記としたものである。
(2)PPS樹脂組成物の溶融粘度:320℃、剪断速度1,216/sの条件下、東洋精機社製キャピログラフを用いて測定した。なおL/D=40.0mm/1.0mmのオリフィスを用いた。
(3)曲げ強度:ISO 178法に準拠
(4)引張強度:ISO 527−1、2法に準拠
(5)モールドデポジット性:PPS樹脂組成物を用い、成形品のサイズとして最大長さ55mm、幅20mm、厚み2mm、ゲートサイズとして幅2mm、厚み1mm(サイドゲート)、ガスベント部最大長さ20mm、幅10mm、深さ5μmのガス評価用金型で、住友重機械工業(株)社製SE−30Dを用いて、シリンダ温度305℃、金型温度130℃、射出速度100mm/sとして、樹脂組成物ごとの充填時間が0.4秒となるよう射出圧力を50〜80MPa内で設定し、さらに保圧25MPa、保圧速度30mm/s、保圧時間3秒として連続成形を行い、200ショット完了時にガスベント部およびキャビティ部に汚れが認められなかった場合に「優れる」(○)、僅かに汚れが認められた場合に「僅かに劣る」(△)、明確な汚れやガスベント部の詰まりが認められた場合に「劣る」(×)とした。
(6)耐冷媒性:PPSペレットを凍結粉砕して32メッシュパス、42メッシュオンの粒子0.5gを、内径10φのガラス管内に、ポリオールエステル油系の冷凍機油1.5ccと冷媒2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン1.5ccとともに注入後密封し、130℃、及び175℃で14日間加熱処理した。その後、それぞれのガラス管を0℃、−20℃、−40℃、−60℃に冷却して液状態を観察し、液中に白色浮遊物が認められなかった場合に「透明」、液中に白色浮遊物が認められ白濁の外観を示した場合は「白濁」とした。
Figure 2013133374
実施例1と比較例1との対比および実施例2と比較例3から判るように、PPS−2を用いるとクロロホルム抽出量が多くなりすぎる。また、実施例1と比較例2との対比から判るように、PPS−3を用いると溶融流動性の低下が大きい。実施例1と実施例2は低オリゴマー性と溶融流動性に均衡して優れることがわかる。
実施例1、2と比較例4、5との対比からわかるように、PPS−1を用いても(B)無機充填材量が不適切であると、低オリゴマー性と溶融流動性のバランスが悪化する。
また、実施例1と比較例1との対比および実施例2と比較例3から判るように、処理温度130℃ではPPS−1とPPS−2の明確な差は認められないが、処理温度175℃では比較例1は−20℃から白濁の外観を示した。PPS−1を用いた場合は実用環境において高い処理温度でも冷凍回路に影響を及ぼす可能性のある異物の析出が少ないことがわかる。
かくして得られるPPS樹脂およびそれを射出成形して得られる成形体は、PPS樹脂が元来示す耐熱性、耐薬品性、耐熱水性、機械的特性を維持しつつ、低オリゴマー性と溶融流動性に均衡して優れため、モーター部品に特に有用に用いられる。

Claims (6)

  1. (A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)無機充填材を30〜150重量部を配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、樹脂組成物のクロロホルム抽出量が0.4wt%以下であり、かつ樹脂組成物の溶融粘度(温度320℃、せん断速度1,216/s)が100〜500Pa・sであることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  2. (A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)無機充填材を40〜90重量部を配合してなる、請求項1記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  3. 請求項1〜2いずれか記載のモーター部品用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を射出成形して得られた成形体であって、モーター部品用であることを特徴とする成形体。
  5. 成形体が冷媒と接触するモーター部品用であることを特徴とする請求項4記載の成形体。
  6. 冷媒の地球温暖化係数が1,700以下であることを特徴とする請求項5記載の成形体。
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