(実施の形態)
以下に添付図面を参照して、画像読取装置、画像形成装置、画像処理装置、及び画像処理方法の実施の形態を詳細に説明する。以下では、上記「画像読取装置」として、上記「画像形成装置」への適用例を示す。
図1は、実施の形態にかかる画像形成装置の構成の一例を示す図である。図1において、画像形成装置1は、プリンタ機能、スキャナ機能、及びコピー機能を利用可能な複合機として構成されている。
図1において、画像形成装置1は、上記「画像読取装置」としての画像読取ユニット10と、記録紙供給ユニット20と、画像形成ユニット30とを備えている。更に、画像形成装置1は、筐体上部に操作パネル(不図示)を備えている。
操作パネルは、例えば液晶ディスプレイ上にタッチパネルを重ねて配置した表示入力装置などであり、ユーザによる画像読取ユニット10や、記録紙供給ユニット20や、画像形成ユニット30などの操作指示(例えば読取開始の指示など)を受け付ける。
画像読取ユニット10は、スキャナ10aと、スキャナ10a上面のコンタクトガラス11の上に配設された原稿自動搬送装置(以下、ADF(Auto Document Feeder)という)10bとを有し、ADF10bにセットした原稿を所定速度で搬送させながら固定式の読取ユニットにより原稿を読み取らせる読取方式を有する。
ADF10bは、本体カバーに、読取前の原稿束を載置するための原稿載置台12と、読取後の原稿束をスタックするための原稿スタック台13とを有する。ADF10bの本体内部には、原稿を原稿載置台12からコンタクトガラス11上を通過して原稿スタック台13へ排出する原稿搬送路14を有する。当該ADF10bは、スキャナ10aに開閉自在に蝶番により固定され、ADF10bが開かれることによりスキャナ10a上面のコンタクトガラス11が露出し、コンタクトガラス11に載置した原稿の読み取りも可能になっている。
スキャナ10aはコンタクトガラス11の下方に第1の固定読取ユニット15を有し、ADF10bは原稿搬送路14沿いに第2の固定読取ユニット16を有する。画像読取ユニット10は、原稿を原稿搬送路14を搬送させ、第1の固定読取ユニット15で原稿の第1面(表面)を読み取る。続いて、画像読取ユニット10は、第2の固定読取ユニット16で原稿の第2面(裏面)を読み取る。
図2は、ADF10bの具体的な構成の一例を示す断面図である。図2を参照し、ADF10bの構成と、その動作について説明する。
ADF10bは、原稿搬送路14に沿い、原稿セットユニットAと、分離搬送ユニットBと、レジストユニットCと、ターンユニットDと、第1読取搬送ユニットEと、第2読取搬送ユニットFと、排紙ユニットGと、スタックユニットHとを有する。
原稿セットユニットAは、主に原稿束MSを搬送開始状態にスタンバイする構成要素を有する。分離搬送ユニットBは、主に原稿載置台12にスタンバイ状態にされた原稿束MSから原稿を一枚ずつ分離して給送する構成要素を有する。レジストユニットCは、主に、分離搬送ユニットBから給送された原稿を一時的に突き当て原稿を整合し、その後、原稿を送り出す構成要素を有する。ターンユニットDは、主に、原稿搬送路14に含まれるC字状に湾曲する湾曲搬送路を有し、この湾曲搬送路を原稿が通り抜けることにより原稿の表裏を反転する。第1の読取搬送ユニットEは、主に原稿の第1面(表面)を読み取る構成要素を有する。第2の読取搬送ユニットFは、主に原稿の第2面(裏面)を読み取る構成要素を有する。排紙ユニットGは、主に読取後の原稿をスタックユニットHに向けて排出する構成要素を有する。スタックユニットHは、主に読取後の原稿をスタックする原稿スタック台13を有する。
具体的に、原稿セットユニットAは、原稿載置台12や、セットフィラー42や、ピックアップローラ43などにより構成されている。原稿載置台12は、原稿束MSの先端側を支持する可動原稿テーブル40と、原稿束MSの後端側を支持する固定原稿テーブル41とから構成されている。
固定原稿テーブル41には、原稿束MSの搬送方向の長さを検知する原稿長さセンサ60が所定間隔に配置されている。原稿長さセンサ60により、原稿束MSの搬送方向の長さの概略が判定される。原稿長さセンサ60には、反射型フォトセンサや、原稿1枚でも検知可能なアクチュエーター・タイプのセンサなどが使用されている。
また、固定原稿テーブル41は、原稿束MSの搬送方向に直交する方向(幅方向)の両端にサイドガイド(不図示)を有し、これが原稿束MSに突き当てられることで、原稿束MSの幅方向の位置決めがなされる。
可動原稿テーブル40はカム機構によって図中矢印a、b方向に上下動可能に設けられている。また、可動原稿テーブル40の上方に、レバー部材であるセットフィラー42が揺動可能に設けられている。原稿束MSが原稿の第1面が上向きになるように原稿載置台12へセットされると、原稿束MSがセットフィラー42を押し上げ、原稿セットセンサ61が原稿束MSのセットを検知する。そして、原稿束MSの最上面がピックアップローラ43と接触するように可動原稿テーブル40が上昇する。
可動原稿テーブル40の上方にはピックアップローラ43が設けられている。ピックアップローラ43は、カム機構により図中矢印c、d方向に動作可能となっている。ピックアップローラ43は、可動原稿テーブル40が上昇することにより原稿束MSの上面により図中矢印c方向に押し上げられる。可動原稿テーブル40の上昇は、テーブル上昇センサ62が上限を検知することにより停止する。
操作パネルの読取開始キーが押下されると、ピックアップローラ43が原稿束MSの最上位の原稿を給紙口44に搬送する方向に回転し、最上位から1枚〜数枚の原稿をピックアップする。ピックアップされた1枚〜数枚の原稿は、分離搬送ユニットBに進入し、給紙ベルト45とリバースローラ46との間に送り込まれる。
給紙ベルト45は、駆動ローラ47と従動ローラ48とによって張架されており、給紙方向に無端移動する。リバースローラ46は、給紙ベルト45の下面に当接し、給紙方向とは逆方向に回転する。これにより、最上位の原稿とそれよりも下の原稿を分離して、最上位の原稿のみを給紙する。
1枚に分離された原稿は、レジストユニットCに進入する。原稿は、給紙ベルト45により先に送られ、突き当てセンサ63によって先端が検知される。すると、ピックアップローラ43を原稿の上面から退避させ原稿を給紙ベルト45の搬送力のみで送る。原稿の先端は、プルアウトローラ49の上下ローラのニップに進入し、先端の整合(スキュー補正)が行われる。
プルアウトローラ49は、スキュー補正機能を有し、スキュー補正した原稿を中間ローラ50まで送る。送り出された原稿は、原稿幅センサ64を通過する。
原稿幅センサ64は、反射型フォトセンサなどからなる紙検知センサを原稿の幅方向に複数個並べたセンサであり、原稿の幅方向のサイズを検知する。一方、原稿の長さ方向(搬送方向)のサイズについては、突き当てセンサ63により原稿の後端の通過を検知し、原稿の先端の検知からのモータパルスのカウントにより検知する。
原稿は、プルアウトローラ49および中間ローラ50によって搬送され、ターンユニットDに進入する。進入した原稿は、中間ローラ50および読取入口ローラ51によって湾曲搬送路を通過し、表裏を反転する。
原稿の先端が読取入口センサ65に検出されると、読取入口ローラ51の上下ローラ対のニップに原稿の先端が進入する前に、原稿の搬送速度が減速される。更に原稿が第1の読取搬送ユニットEに進入して原稿の先端がレジストセンサ66により検知されると、第1の固定読取ユニット15の第1の読取位置52の手前で原稿の搬送が一時停止する。
その後、読取の開始が許可されると、搬送が開始され、原稿が所定の搬送速度で第1の読取位置52を通過しながら原稿の第1面が第1の固定読取ユニット15に読み取られる。
第1の読取搬送ユニットEの通過後、原稿は第2の読取搬送ユニットFを所定速度で通過する。原稿の両面(第1面および第2面)を読み取る際には、原稿の先端が排紙センサ67により検知される。そして、原稿が第2の読取位置53を通過しながら原稿の第2面が第2の固定読取ユニット16に読み取られる。
第2の固定読取ユニット16は、例えば密着型イメージセンサ(CIS:Contact Image Sensor)である。第2の読取位置53の原稿が通過する搬送路を挟む対向位置には、濃度基準部材54を設けている。濃度基準部材54は、イメージセンサが読み取ったデータを補正するための基準白部として機能する。また、濃度基準部材54は、ここでは第2の読取位置53での原稿の浮きを抑える機能も担う。
第2の読取搬送ユニットFの通過後、原稿は、排紙ユニットGへ搬送され、排紙ローラ55の回転により排紙ローラ55のローラ対のニップから抜け出てスタックユニットHの原稿スタック台13に排紙される。
図1に戻り、残りの箇所について説明する。記録紙供給ユニット20は、多段に配設された2つの記録紙給紙カセット21、22、記録紙給紙カセット21、22から記録体である記録紙を送り出す記録紙送出ローラ23、送り出された記録紙を分離して記録紙供給路24に供給する記録紙分離ローラ25を有している。
記録紙供給路24に供給された記録紙は、記録紙供給ユニット20から画像形成ユニット30内に入り、レジストローラを介して二次転写装置36に送り込まれる。
画像形成ユニット30は、主に、光書込装置31と、タンデム方式の作像ユニット32Y、32M、32C、32Kと、中間転写ベルト35と、定着装置37とを備え、記録紙上に液体(一例としてトナーとする)により画像を形成する。
具体的に、作像ユニット32Y、32M、32C、32Kは、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の、4つの感光体ドラム33を、図の反時計回りに回転可能に並設して備え、各感光体ドラム33の周囲に、帯電ローラ、現像器、一次転写ローラ34、クリーナーユニット、及び除電器を含む作像要素を備える。
中間転写ベルト35は、各感光体ドラム33と各一次転写ローラ34との間のニップに、駆動ローラと従動ローラとにより張架して配置している。
この構成を有する画像形成ユニット30は、各感光体ドラム33の表面を帯電器により帯電し、帯電した各感光体ドラム33の表面に向けて光書込装置31から例えばレーザ光を照射する。そのレーザ光の照射により、各感光体ドラム33の表面に静電潜像画像が形成される。続いて、画像形成ユニット30は、各感光体ドラム33に向けて現像装置から該当色のトナーを供給して静電潜像画像を現像する。
更に、画像形成ユニット30は、各感光体ドラム33の表面の、現像された各色のトナー画像を、図の時計回りに走行する中間転写ベルト35に一次転写ローラ34により一次転写する。続いて、画像形成ユニット30は、中間転写ベルト35上の一次転写されたトナー画像を、二次転写装置36により、その位置に搬送されてきた記録紙に二次転写する。その後、画像形成ユニット30は、トナー画像が転写された記録紙を定着装置37に搬送し、定着装置37において記録紙上の各色のトナー像を加圧や加熱によりカラー画像として定着させ、機外の排紙トレイへ排出する。
なお、一次転写後の各感光体ドラム33の表面に残留する電荷やトナーは、各感光体ドラム33の周囲の除電器やクリーナーユニットなどにより除去する。
定着装置37の下には、記録紙反転装置であるスイッチバック装置38が配設されている。これは、両面プリントを行う場合において、片面を画像定着させた記録紙を反転し、再び二次転写装置36に進入させるためのものである。
なお、上述では、画像形成ユニット30が画像を形成する記録体を紙媒体である記録紙として説明したが、この限りではない。記録紙の他、記録フィルムなど他の媒体であっても良い。
続いて、画像形成装置1を制御する制御ユニットの構成について説明する。
図3は、制御ユニット100のハードウエア構成の一例を示す図である。ここでは、制御ユニット100の構成として、後述するシェーディングデータの処理に関わるものを主に示している。
本体制御ボード102は、マイクロコンピュータを備え、画像読取ユニット10(図1参照)や、記録紙供給ユニット20(図1参照)や、画像形成ユニット30(図1参照)などを統括的に制御する。具体的に、本体制御ボード102は、マイクロコンピュータや、操作パネル101の入出力インタフェース回路や、通信インタフェース回路などを備える。操作パネル101の入出力インタフェース回路や、通信インタフェース回路などは、マイクロコンピュータにバスを介して接続されている。
マイクロコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有し、CPUがROMの制御プログラムをRAMにロードして実行する。制御プログラムの実行により、マイクロコンピュータは、画像読取ユニット10や、記録紙供給ユニット20や、画像形成ユニット30などを、それぞれのコントローラと通信インタフェース回路を介して通信して制御する。また、マイクロコンピュータは、操作パネル101と入出力インタフェース回路を介して通信し、操作パネル101に対するユーザ操作(読取開始キーの操作など)の検知や、操作パネル101への表示情報の表示を行う。
読取コントローラ103は、ADF10bに設けられており、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などに構成される。読取コントローラ103は、外部インタフェース(I/F)として、本体制御ボード102と通信する通信I/F200や、画像読取ユニット10の各種検知センサからの出力を入力する入力I/Fや、画像読取ユニット10の各種駆動モータに制御信号を出力する出力I/Fや、第2の固定読取ユニット16にタイミング信号を出力したり第2の固定読取ユニット16からの出力データを入力したりする入出力I/Fなどを有する。他方の第1の固定読取ユニット15(図2参照)は、スキャナ10aに設けられており、本体制御ボード102に通信可能に接続されている。
読取コントローラ103は、本体制御ボード102などから電源の供給を受けて起動し、所定手順で読取動作を行う。例えば、読取コントローラ103は、検知センサからの出力のモニタや、モータ制御や、第2の固定読取ユニット16の制御や、本体制御ボード102との通信などを伴いながら、以下のような手順で読取動作を行う。なお、ここでは、本体制御ボード102との通信を含む読取動作の主な手順のみを示すことにする。
読取コントローラ103は、原稿セットセンサ61から原稿束MSの検知信号を読み取ると、読取原稿セット動作を完了させる。そして、読取コントローラ103は、本体制御ボード102からユーザによる読取開始キーの操作を示す読取開始信号を受信すると、原稿束MSから原稿を1枚ずつ分離して搬送する動作を行う。原稿が所定の搬送動作によりレジスト停止位置に到達すると、読取コントローラ103は、レジスト停止位置で原稿を停止し、本体制御ボード102にレジスト停止信号を送信する。そして、本体制御ボード102から動作開始の信号を受信すると、読取コントローラ103は、所定速度での原稿の搬送を開始し、第1の固定読取ユニット15や第2の固定読取ユニット16を制御して所定の読取動作を行う。
読取コントローラ103は、ディジタル画像処理回路300を備えている。ディジタル画像処理回路300は、第2の固定読取ユニット16から出力された読取データ(画像データ)の黒補正や白補正などを行い、補正後の画像データを形式変換して本体制御ボード102に出力する。
ディジタル画像処理回路300は、上記白補正を行うに当たり、原稿X(図5参照)の読み取り前に、第2の固定読取ユニット16から濃度基準部材54(図5参照)を読み取った読取データ(シェーディングデータ)を取り込み、このシェーディングデータに対して異物補正処理を行う。「異物補正処理」とは、光路上の異物(汚れなど)、主に第2の固定読取ユニット16の受光面160(図5参照)と原稿X(図5参照)との間の部材に付着している異物による原稿画像に発生する黒スジを白スジ化するための、シェーディングデータに施す補正処理のことである。ディジタル画像処理回路300が有する異物補正のための具体的な構成や処理などについては後述する。
図4は、第2の固定読取ユニット16の制御ブロックの構成の一例を示す図である。図4に示すように、第2の固定読取ユニット16は、「照明手段」として光源部201を有し、イメージセンサとして、画素回路202と、アンプ203と、A/D(Analog-to-Digital)変換回路204とを有する。
光源部201は、LED、蛍光灯、冷陰極管などの光源を有し、光源を駆動する。画素回路202は、光電変換素子を有し、受光面160(図5参照)に結像した光を光電変換して電気信号(アナログの画素信号)を出力する。アンプ203は、各画素回路202から出力される画素信号を増幅する。A/D変換回路204は、増幅後の信号をディジタル信号に変換する。
図4に示すように、読取コントローラ103から第2の固定読取ユニット16には、出力I/FC10を介し、光源部201を駆動するオン/オフ信号d1や、画素回路202を駆動する駆動タイミング信号d2などが入力される。この他、読取コントローラ103から第2の固定読取ユニット16には、駆動用の電源なども供給される。第2の固定読取ユニット16から読取コントローラ103には、A/D変換回路204から出力されるデータ列D1、つまり濃度基準部材54の読取データ(後のシェーディングデータ)や原稿Xの読取データ(後の画像データ)が、入力I/FC11を介して入力される。
(異物補正)
続いて、ディジタル画像処理回路300の、異物補正のための構成や処理について詳しく説明する。なお、以下では、当該異物補正の説明に当たり、異物が第2の固定読取ユニット16のコンタクトガラス(光を通過させる「透過部材」の一例)に付着している場合を想定したものを示す。また、コンタクトガラスに入射する反射光が原稿と濃度基準部材(それぞれ、「対象物」の一例)とから反射されるものとして示す。
図5〜図7は、異物補正の原理を説明するための図である。図5は、第2の固定読取ユニット16の受光面160と、上記コンタクトガラスのコンタクトガラス面161と、原稿Xと、濃度基準部材54との配置関係の一例を示す図である。図6は、コンタクトガラス面161上の異物に対する受光面160上の対向画素が受ける光の量の説明図である。図7は、受光面160全体が受ける光の量の説明図である。以下、図5に設定したように、コンタクトガラス面161の高さを「高さA」、原稿Xの通過する高さを「高さB」、濃度基準部材54の高さを「高さC」とし、異物補正の原理について説明する。
図5の配置において、濃度基準部材54は、受光面160から見て原稿Xが通過する高さBよりも高い位置(高さC)に配置されている。このため、コンタクトガラス面161の異物により影響を受けない受光面160上の画素領域では、濃度基準部材54(高さC)からの反射光が弱く、通過する原稿X(高さB)からの反射光が強くなる。
図6には異物Yを透過する反射光と、異物の左側から対向画素に入射する反射光とを矢印により示している。なお、異物Yの右側から入射する反射光については図示を省略しているが、左側と略同様の割合で反射光が入射しているものとする。図6に示すように、異物Yの影響を受ける対向画素(異物の対向位置の画素やその周辺の画素)では、濃度基準部材54(高さC)からの反射光が強く、通過する原稿X(高さB)からの反射光が弱くなる。原稿X(高さB)からの反射光は、原稿Xと異物Yとの距離が近いため、異物Yの対向位置周辺の反射光が異物により遮られて対向画素へ入射する光が弱められる。濃度基準部材54(高さC)からの反射光は、濃度基準部材54と異物Yとの距離が遠いため、異物Yの対向位置周辺の反射光が異物に遮られることなく入射し、相対的に光が強められる。このように、異物Yの対向画素においては、光の反射の高さに対する入射光の量の関係が対向画素以外の領域と逆転する。
図7(a)には、照射光が反射する高さと、その高さの反射光を受光するイメージセンサの出力パターンとの関係を示している。なお、何れの出力パターンP1、P2、P3も、各高さで同じ濃度の部材を読み取った場合のものを示している。出力パターンP1、P2、P3の直線で示す部分T1が、異物の影響を受ける対向画素の出力パターンで、その他の曲線で示す部分が、異物の影響を受けない画素の出力パターンである。曲線で示す部分については、濃度基準部材54(高さC)よりも原稿X(高さB)における出力の方が大きくなっている。
図7(b)には、高さAにおける出力パターンにより高さBと高さCの出力パターンをそれぞれ正規化した場合の、高さBと高さCの出力比の関係を示している。異物の影響を受けない画素領域については正規化により出力比がフラットになり、高さBが高さCよりも高い状態がそのまま維持されたものになる。異物の影響を受ける対向画素については、図7(c)の拡大図により説明する。
図7(c)には、異物周辺箇所(図7(b)に示す矩形範囲)における高さBと高さCの出力比の関係を拡大して示している。図7(c)に示すように、異物周辺箇所では異物の周辺画素から異物の中心画素にかけて出力比の関係が逆転する。これは、図6において説明したように、異物の対向位置周辺から対向画素に入射する光が高さBよりも高さCの方が多いためである。近傍画素では、入射する光の量が高さBと高さCの距離の差に基づく光量の差を超え、出力比の関係が逆転する。
本実施の形態では、出力比が逆転する画素の画素値が黒を示すことを前提に、その画素値が黒から白を示す値へ変更されるようにシェーディングデータの対応画素のデータ値を補正する。以下、図8〜図11を参照し、ディジタル画像処理回路300の、異物補正のための構成及び処理について詳しく説明する。
図8は、ディジタル画像処理回路300のブロック構成の一例を示す図である。ディジタル画像処理回路300は、第2の固定読取ユニット16から入力された読取データ(シェーディングデータや画像データなど)をディジタル画像処理する回路である。ディジタル画像処理回路300は、黒補正処理ブロック301と、白補正処理ブロック302と、画像処理ブロック303と、画像処理ブロック303が生成した画像データを格納するフレームメモリ304と、フレームメモリ304の画像データを本体制御ボード102に形式変換するための出力制御回路305とを有する。
黒補正処理ブロック301は、オフセットメモリを有し、黒レベルのオフセット成分を示すデータ(オフセットデータ)をオフセットメモリに格納する。オフセットデータは、光源部201(図4参照)を消灯した状態で第2の固定読取ユニット16(図4参照)からデータ列D1(この場合、画素毎の黒レベルのデータ)を入力したものである。
白補正処理ブロック302は、シェーディングデータメモリを有し、原稿Xの読取データ(つまり画像データ)をシェーディングデータにより白補正する。
例えば、白補正処理ブロック302は、光源部201を点灯した状態で第2の固定読取ユニット16から読取データを入力する。白補正処理ブロック302は、濃度基準部材54の読取データを入力した場合、オフセット成分を除去したシェーディングデータを生成し、そのシェーディングデータをシェーディングデータメモリに格納する。更に、白補正処理ブロック302は、シェーディングデータメモリに格納したシェーディングデータを対象に異物補正の処理を行う。また、白補正処理ブロック302は、原稿Xの読取データ(画像データ)を入力した場合、入力した画像データを異物補正後のシェーディングデータにより白補正する。
画像処理ブロック303は、白補正後の画像データについて画像処理を行う。具体的に、画像処理ブロック303は、白補正処理ブロック302から白補正処理された画像データを入力し、その画像データにライン間補正などの画像処理を施して、処理後の画像データをフレームメモリ304に格納する。
図9は、白補正処理ブロック302の詳細ブロックの構成の一例を示す図である。図9に示す白補正処理ブロック302は、シェーディングデータ生成部401と、シェーディングデータメモリ402と、異物検知部403と、異物データ補正部404と、シェーディング補正部405とを有する。
本実施の形態において、主にシェーディングデータ生成部401が「データ処理手段」に対応する。また、主に異物検知部403が「異物検出手段」に対応する。また、主に異物データ補正部404が「異物補正手段」に対応する。主にシェーディング補正部405が「シェーディング補正手段」に対応する。
シェーディングデータ生成部401は、入力データ(濃度基準部材54の読取データ)からシェーディングデータを生成し、そのシェーディングデータをシェーディングデータメモリ402に格納する。例えば、シェーディングデータ生成部401は、黒補正処理ブロック301のオフセットメモリに格納されているデータにより上記入力データからオフセット成分を除去したシェーディングデータを生成する。
異物検知部403は、シェーディングデータメモリ402に格納されたシェーディングデータを入力してコンタクトガラス面161の異物を検知する。そして、異物検知部403は、異物を検知した画素(対向画素の画素番号等)を異物データ補正部404に出力する。異物検知部403による異物検知の方法は例えば公知の方法を使用する。その一例については図10を用いて後述する。
異物データ補正部404は、対向画素のデータ値を除算や乗算などにより補正し、補正後のシェーディングデータによりシェーディングデータメモリ402を上書きする。具体的に、異物データ補正部404は、シェーディングデータメモリ402に格納されたシェーディングデータと異物検知部403が検知した異物を指す画素(対向画素の画素番号等)とを入力し、入力したシェーディングデータ(補正前のシェーディングデータ)をSD、補正後のシェーディングデータをSD´とする次式(1)などの演算を対向画素に対して行う。
例えば、異物データ補正部404は、シェーディングデータメモリ402からシェーディングデータの入力を異物検知部403と同タイミングで入力する場合、入力したシェーディングデータを1クロック遅らせるための遅延回路を設ける。異物データ補正部404は、シェーディングデータの入力後の1クロック後に、異物検知部403による検知により入力された異物を指す画素が示す、遅延回路により出力を遅らせた1クロック前のシェーディングデータの値を式(1)により置き換える。
これにより、異物検知部403と異物データ補正部404とにおいて、リアルタイムに、対向画素の値をSD´の値に置き換え、この置き換え後のシェーディングデータ(つまり補正後のシェーディングデータ)によりシェーディングデータメモリ402を上書きする。
SD=SD´×α ・・・(1)
ここで、αは「補正レベル」を示す補正係数である。補正係数αの決定方法については図10を用いて後述する。
シェーディング補正部405は、入力データ(原稿Xの読取データ)をシェーディングデータメモリ402に格納されている更新後のシェーディングデータにより白補正し、白補正後のデータを画像処理ブロック303に出力する。一般的に、シェーディング補正部405は、入力データ(原稿Xの読み取りデータ)をDin、シェーディングデータをSD、白補正後のデータをDoutとすると、次式(2)の演算を行って入力データを白補正する。
Dout=Din/SD ・・・(2)
図7(c)で説明したように、異物の対向画素においては他の画素領域とは異なり、濃度基準部材54を読み取った場合と原稿Xを読み取った場合とでイメージセンサからの出力(出力比)に逆転が生じる。当該対向画素ではSDが大きな値を示すため、式(2)の関係から、Doutの値が小さくなる。よって、画像の副走査方向に設定される当該対向画素の輝度値は何れも小さくなり、2値階調であれば黒スジ化する。本実施の形態の異物データ補正部404は、Doutが白の値を示すように、異物の対向画素のSDの値を小さな値に補正する。具体的には、次に示すように、式(1)の補正係数αを1以下にする。これにより、当該対向画素においてDoutの値を大きくし、黒スジを白スジ化する。
図10は、白補正処理ブロック302における異物補正処理の説明図である。図10(a)には、シェーディングデータメモリ402に格納された主走査方向全域のシェーディングデータの出力パターンの一例を示している。図10(a)に示す出力パターンP4の直線部分T2は、異物の対向画素の出力であり、異物の対向画素における出力の低下を表している。
異物検知部403は、シェーディングデータメモリ402から、主走査方向全域のシェーディングデータの出力値を読み取り、図10(a)において破線で示す閾値Q1を基準に異物を検知する。図10(a)に示す例では、図中の直線部分T2の出力が閾値Q1を跨るので、異物検知部403が、異物として検知し、その画素(画素番号等)を異物を指す画素(対向画素)として異物データ補正部404に通知する。
図10(b)には、補正前と補正後のシェーディングデータの出力パターンの一例を示している。本実施の形態では、シェーディングデータの内の、異物の対向画素の値を補正する。そのため、図10(b)に、直線部分T2の周辺の出力パターンのみを拡大したものを示している。以下、図10(b)を用いて補正係数αの決定方法を説明する。
図10(b)において補正前のシェーディングデータ(出力パターンP4)は、異物の対向画素(直線部分T2の範囲)において他の画素より出力値が低下したものになっているが、原稿を読み取った場合の出力パターン(不図示)は、直線部分T2の範囲でシェーディングデータの出力値を超えて下回るものになる。従って、異物データ補正部404は、シェーディングデータの、直線部分T2の範囲の出力値を、図10(b)の破線P5で示すようにより低い値(具体的には原稿を読み取った場合の出力パターンよりも低い値)に補正することにより、相対的に、図7(c)に示す高さCの対向画素の出力比を高さBの対向画素の出力比以下に抑える。この場合、式(1)の補正係数αとして1以下の値を使用する。グレースケールでは、補正係数αの値に応じて異物の対向画素の色が黒から白の間の多数階調の何れかに決定される。補正係数αの値に応じて変わるスジ色の一例を次に示す。
図11は、異物補正後の画像データの補正係数αの値に応じて変わるスジ色の一例を示す図である。図11(a)は、補正係数αを「1」とした場合のもの、つまり異物補正前の画像データを表している。図11(b)〜図11(d)は、補正係数αを「1」よりも小さな値、それぞれ、補正係数α=「0.8」、「0.9」、「0.95」とした場合の異物補正後の画像データを表している。各画像データは、地肌が白色で、図柄(本例では図柄を数字の「1」としている)が黒色の原稿Xを読み取った場合のものである。画像の幅方向(数字「1」の幅方向)が主走査方向であり、画像の縦方向(数字「1」の高さ方向)が副走査方向である。
補正係数αを「1」とした場合、異物の対向画素は黒に決定され、図11(a)に示すようにスジKが黒スジ化する。
補正係数αを「0.8」とした場合、異物の対向画素は白に決定され、図11(b)に示すようにスジKが白スジ化する。
補正係数αを「0.9」とした場合、異物の対向画素は白に近いグレーに決定され、図11(c)に示すようにスジKがグレー色でスジ化する。
補正係数αを「0.95」とした場合、異物の対向画素は黒に近いグレーに決定され、図11(d)に示すようにスジKがグレー色でスジ化する。
以上のように、補正係数αを1以下の範囲で選ぶことにより、スジKを原稿Xの地肌色や図柄の色などに揃えることが可能になる。原稿Xの地肌色が白で、ユーザから黒スジのクレームを受けることが多い場合には、補正係数αを「0.8」にすることで最適な効果が得られる。
なお、本実施の形態では、式(2)のシェーディングデータSDの出力値を低く補正することにより黒スジを白スジ化する例を示したが、SDの代わりに、画像の読取データの出力値Dinを高くすることにより黒スジを白スジ化しても良い。
以上のように、原稿の読み取り前に異物を含む画素のシェーディングデータを補正するため、画像に入る異物信号(スジ)をリアルタイムに色補正することができ、専用メモリが不要になる。
(変形例1)
図12は、原稿Xの地肌色がグレーの場合のスジ色の一例を示す図である。図12(a)は、スジKを黒スジ化したものを示している。図12(b)は、スジKを白スジ化したものを示している。図12(c)は、スジKを地肌よりも明るいグレーにしたものを示している。図12(d)は、スジKを地肌と同じグレーにしたものを示している。
このように、地肌色が白以外の場合でも補正係数αの選択によりスジKを原稿Xの地肌色や図柄の色などに揃えることが可能になる。ユーザによりスジの色が地肌の色に合わないとクレームを受ける場合、補正(弱)の補正係数αを選択することにより最適な効果が得られる。
なお、本実施形態及び変形例1では、説明を容易にするため、無彩色を例に説明したが、有彩色の場合も、色毎に補正係数αを選択することによりスジKを原稿Xの地肌色や図柄の色などに揃えることが可能になることは言うまでもない。
地肌が白の場合と地肌がグレーの場合とでユーザに求められる補正効果は異なる。ユーザ毎に、スキャンをする原稿の色が異なるため、ユーザのニーズに合わせて、補正係数αを可変できることが望ましい。
(変形例2)
次に、補正係数αを可変できるようにする例を示す。
図13は、変形例2に係る白補正処理ブロック302の詳細ブロックの構成の一例を示す図である。図13に示す白補正処理ブロック302は、図9に示す白補正処理ブロック302に補正係数αの「設定手段」として設定部501を設けたものである。
異物データ補正部404は、補正係数αを外部にパラメータ情報(補正係数パラメータ)として提供し、補正係数パラメータに設定された値(補正係数)により動作する。
設定部501は、異物データ補正部404の補正係数パラメータに値を設定する。具体的に、設定部501は、補正係数αの設定を通信I/F200を介し本体制御ボード102に通知する。そして、設定部501は、本体制御ボード102から通信I/F200を介して補正係数αの変更指示があった場合に、異物データ補正部404の補正係数パラメータの値を設定値(例えばデフォルト値)から変更指示のあった値に変更する。
例えば、異物データ補正部404の補正係数パラメータのデフォルト値が「補正係数α=1」であったとする。本体制御ボード102から「補正係数α<1」の何れかの値が指示されると、異物データ補正部404の補正係数パラメータに設定されているデフォルト値を、その指示された値に変更する。
本体制御ボード102は、設定部501からの補正係数αの設定が通知されると、操作パネル101に補正係数αの設定画面(表示情報)を送信し、操作パネル101からユーザ(サービスマン等)による設定画面への入力操作を受信する。本体制御ボード102は、上記設定画面に、例えば、補正係数αの値と、補正係数αの値毎のスジの色を示す画像イメージ(図11や図12に示す各画像データのサンプルイメージなど)とを比較可能に表示する情報や、補正係数αの値を任意に受け付ける入力ボックスなどを設けて操作パネル101に送信する。
なお、異物データ補正部404は、有彩色の場合には、色毎の補正係数αを外部にパラメータ情報(補正係数パラメータ)として提供し、各色の補正係数パラメータに設定された値(補正係数)により動作するものとする。
また、本体制御ボード102は、有彩色の場合には、上記設定画面に、例えば、補正係数αの値と、補正係数αの値毎のスジの色(この場合、各色の混合色)を示す画像イメージとを比較可能に表示する情報を設ける。
(変形例3)
本実施の形態では、異物Yがコンタクトガラス面161に付着しているケースを取り扱ったが、異物Yが濃度基準部材54にのみ付着しているケースでは、式(2)においてSDのみが小さくなり、Dоutは大きくなり、その結果、白スジ化される。このようなケースでは、異物データ補正部404にてSDを小さな値に補正すると、過剰に白スジ化される懸念がある。
これを回避するため、濃度基準部材54における異物の影響を排除できるように濃度基準部材54を可動式にすることが望ましい。
図14は、変形例3に係る濃度基準部材の構成の一例を示す図である。図14に示す濃度基準部材70は、可動式である。濃度基準部材70は、例えば、ローラ部の表面にシェーディングデータ用の基準白部を有する。ローラ部の表面に有する基準白部の読み取り時に、読取コントローラ103(図3参照)が濃度基準部材70の駆動モータ(不図示)を制御してローラ部を一定の速さで軸回転させる。
この制御により、濃度基準部材70の表面の一部に異物があった場合でも、可動により濃度基準部材70の表面が移動するため、異物がない部分への光の照射時間が長くなり、濃度基準部材70の表面の異物の影響は排除される。
なお、ここでは可動方式の一例としてローラを軸回転させる方式について示したが、可動方式を、それに限定するものではない。この他、例えば濃度基準部材54(図5参照)を通紙方向に移動させる方式などを採用しても良い。
(変形例4)
異物検知部403は一般的に閾値Q1(図10参照)を割った領域のみを検知する。そのため、対向画素の内、補正対象領域の前後数画素は異物の影響を受けていても補正されないままになる。
図15は、変形例4に係る対向画素の全域に補正対象を拡大する場合の説明図である。図15(a)は、補正対象の拡大前を示し、図15(b)は補正対象の拡大後を示す。
図15(a)に示すように、補正対象の拡大前は、対向画素の内、補正対象領域の前後数画素は異物の影響を受けていても補正されないままになる。図15(b)では、図15(a)に示す補正対象領域の前後数画素までを補正対象として拡大しているため、異物の影響を受けている対向画素全域を補正することが可能になる。
具体的には、異物データ補正部404が、異物検知部403から出力された異物を指す画素(画素領域)のデータ値と、それらの画素番号順の前後数画素分の画素のデータ値とを補正する。画素番号順の前後数画素分、つまり画素数拡大する範囲は、対向画素の全域を全て含むように任意に決定して良い。
このように構成することにより、黒スジの端部付近が補正できずに、黒スジとして残ってしまう可能性を排除することができる。
なお、本実施の形態では、画像読取装置を画像形成装置に適用し、画像読取装置の読取画像を画像形成に利用する例を示したが、画像読取装置を単体で使用し、生成した読取画像をハードディスクや記録メディアにファイル出力するなどしても良い。
また、本実施の形態では、画像読取装置に読取コントローラ103が内蔵されたものを示したが、読取コントローラ103の一部又は全てを画像処理装置(例えばICチップ等)の形態で供給し、供給された画像処理装置を、対応する画像読取装置に搭載して、異物補正を実行しても良い。なお、画像処理装置には、白補正処理ブロック302の内の、異物検知部403と異物データ補正部404とを少なくとも含むようにする。
また、本実施の形態では、シェーディングデータの出力値を下げることにより異物補正を行う例を示したが、異物の対向画素に相当する入力データ(画像データ)の出力値を上げることにより異物補正を行うようにしても良い。