(第1の実施形態)
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる画像形成装置を説明する。図1は、実施形態にかかる画像形成装置300の構成例を示す構成図である。画像形成装置300は、給紙部303及び画像形成装置本体304を有し、上部に画像読取装置(信号処理装置の一例)100及び自動原稿給送装置(ADF:搬送装置)200が搭載されたデジタル複写機である。なお、画像読取装置100は、自動原稿給送装置200を有する構成であってもよい。
画像形成装置本体304内には、タンデム方式の作像部(画像形成部)305と、給紙部303から搬送路307を介して供給される記録紙を作像部305に搬送するレジストローラ308と、光書込み装置309と、定着搬送部310と、両面トレイ311とが設けられている。
作像部305には、Y(Yellow),M(Magenta),C(Cyan),K(Black)の4色のトナーに対応して4本の感光体ドラム312が並設されている。各感光体ドラム312の周りには、帯電器、現像器306、転写器、クリーナ、及び除電器を含む作像要素が配置されている。
また、転写器と感光体ドラム312との間には両者のニップに挟持された状態で駆動ローラと従動ローラとの間に張架された中間転写ベルト313が配置されている。
このように構成されたタンデム方式の画像形成装置300は、Y,M,C,Kの色毎に各色に対応する感光体ドラム312に光書込みを行い、現像器306で各色のトナー毎に現像し、中間転写ベルト313上に例えばY,M,C,Kの順に1次転写を行う。
そして、画像形成装置300は、1次転写により4色重畳されたフルカラーの画像を記録紙に2次転写した後、定着して排紙することによりフルカラーの画像を記録紙上に形成する。また、画像形成装置300は、画像読取装置100が読取った画像を記録紙上に形成する。
図2は、画像読取装置100及びADF200の構成例を示す構成図である。画像読取装置100は、デジタル複写機、デジタル複合機、ファクシミリ装置等の画像形成装置に搭載されるスキャナ装置である。また、画像読取装置100は、単体のスキャナ装置であってもよい。そして、画像読取装置100は、光源からの照射光によって被写体(画像読取対象)である原稿を照明し、その原稿からの反射光をCMOSイメージセンサで受光した信号に処理を行い、原稿の画像データを読取る。
具体的には、画像読取装置100は、図2に示すように、原稿を載置するコンタクトガラス101と、原稿露光用の光源部102及び第1反射ミラー103を具備する第1キャリッジ(「光学読取部」の一例)106と、第2反射ミラー104及び第3反射ミラー105を具備する第2キャリッジ107とを有する。また、画像読取装置100は、光電変換素子(例えばCMOS(Complementary MOS)リニアイメージセンサ)50と、光電変換素子50に結像するためのレンズユニット108と、読取り光学系等による各種の歪みを補正するためなどに用いる基準白板(白基準板)110と、シートスルー読取り用スリット111も備えている。
画像読取装置100は、上部にADF200が搭載されており、このADF200をコンタクトガラス101に対して開閉できるように、ヒンジを介した連結がなされている。
ADF200は、複数枚の原稿からなる原稿束を載置可能な原稿載置台としての原稿トレイ221を備えている。また、ADF200は、原稿トレイ221に載置された原稿束から原稿を1枚ずつ分離してシートスルー読取り用スリット111へ向けて自動給送する給送ローラ222を含む分離・給送手段も備えている。また、ADF200の下部は、圧板223となっている。圧板223は、コンタクトガラス101を介して画像を読取る場合の背景板としての機能も有する。
そして、画像読取装置100は、原稿の画像面をスキャン(走査)して原稿の画像を読み取るスキャンモード時には、第1キャリッジ106及び第2キャリッジ107により、ステッピングモータによって矢示A方向(副走査方向)に原稿を走査する。このとき、コンタクトガラス101から光電変換素子50までの光路長を一定に維持するために、第2キャリッジ107は第1キャリッジ106の1/2の速度で移動する。
同時に、コンタクトガラス101上にセットされた原稿の下面である画像面が第1キャリッジ106の光源部102によって照明(露光)される。すると、その画像面からの反射光像が第1キャリッジ106の第1反射ミラー103、第2キャリッジ107の第2反射ミラー104及び第3反射ミラー105、並びにレンズユニット108経由で光電変換素子50へ順次送られて結像される。
そして、光電変換素子50の光電変換により信号が出力され、出力された信号はデジタル信号に変換される。このように、原稿の画像が読取られ、デジタルの画像データが得られる。
一方、原稿を自動給送して原稿の画像を読取るシートスルーモード時には、第1キャリッジ106及び第2キャリッジ107が、シートスルー読取り用スリット111の下側へ移動する。その後、原稿トレイ221に載置された原稿が給送ローラ222によって矢示B方向(副走査方向)へ自動給送され、シートスルー読取り用スリット111の位置において原稿が走査される。
このとき、自動給送される原稿の下面(画像面)が第1キャリッジ106の光源部102によって照明される。そのため、その画像面からの反射光像が第1キャリッジ106の第1反射ミラー103、第2キャリッジ107の第2反射ミラー104及び第3反射ミラー105、並びにレンズユニット108経由で光電変換素子50へ順次送られて結像される。そして、光電変換素子50の光電変換により信号が出力され、出力された信号はデジタル信号に変換される。このように、原稿の画像が読取られ、デジタルの画像データが得られる。画像の読取りが完了した原稿は、排出口に排出される。
なお、スキャンモード時又はシートスルーモード時の画像読取り前に開始された光源部102による照明により、基準白板110からの反射光が光電変換素子50でアナログ信号に変換され、その後デジタル信号に変換される。このように、基準白板110が読取られ、その読取り結果(デジタル信号)に基づいて原稿の画像読取り時のシェーディング補正が行われる。
また、ADF200が搬送ベルトを備えている場合には、スキャンモードであっても、ADF200によって原稿をコンタクトガラス101上の読取り位置に自動給送して、その原稿の画像を読取ることができる。
図3は、画像形成装置300が黒シェーディング補正を行う場合に用いる機能の概要を示すブロック図である。画像読取装置100では、タイミング信号生成部(制御部)120が生成するタイミング信号に応じて、光電変換素子50が画素出力値を黒シェーディング補正部(補正部)30に出力する。タイミング信号生成部120は、光源部102及び光電変換素子50などの動作を制御している。黒シェーディング補正部30は、光電変換素子50が出力した画素出力値の内の、補正対象の信号に含まれる読取画素値(原稿を読み取った場合の画素出力値)と、黒補正の基準信号(特性信号)に含まれる暗時の画素出力値(後述する実黒レベル)又は黒補正の擬似基準信号(擬似信号)に含まれる画素出力値(後述する擬似黒レベル)、との差を算出し、黒側のオフセットレベル補正となる黒シェーディング補正を行う。
後段処理部は、例えば原稿サイズを検知する原稿サイズ検知部や、読取画素値に応じて画像を形成する画像形成部などであり、CPU(Central Processing Unit)が実行するソフトウェア、又はハードウェアによって構成される。制御部(「移動制御部」を含む)330は、CPU及びメモリを備えたコンピュータとしての機能を有し、画像形成装置300を構成する各部を制御する。操作部332は、例えばタッチパネルなどであり、画像形成装置300に対するユーザの操作を受入れる。
なお、タイミング信号生成部(制御部)120及び黒シェーディング補正部30は、光電変換素子50内に集積されていてもよい。本実施形態では、黒シェーディング補正部30を画像読取装置100の外部に設けたものを一例として示すが、黒シェーディング補正部30が画像読取装置100に設けられても良いことは言うまでもない。例えば画像読取装置100を単体でも動作できるようにする場合などに黒シェーディング補正部30を画像読取装置100に設ける。また、「移動制御部」を画像読取装置100に設けても良いことも言うまでもない。その構成において、画像形成装置300で画像読取装置100を動作させる場合には、制御部330からの指示に基づき移動制御部が光学読取部などの移動を制御する。また、画像読取装置100は、ADF200と一体にされた画像読取装置であってもよい。
図4Aは、光電変換素子50の構成の概要及びその周辺を示す図である。光電変換素子50は、例えばそれぞれ主走査方向の画素数分の画素信号生成回路(PixBlock)500、増幅器(PGA)502、及びA/D変換器(ADC:A/D変換部)504を有する。画素信号生成回路500は、図5を用いて後述するように、入力される光量に応じて電気信号を出力する受光素子であるフォトダイオード(PD)と、周辺回路を有する。以下、画素信号生成回路500を画素と記すことがある。
増幅器502は、画素信号生成回路500が出力したアナログ信号をA/D変換器504のダイナミックレンジに合わせるように増幅させる。A/D変換器504は、増幅器502が増幅させたアナログ信号をデジタル信号に変換し、パラレル−シリアル変換部(パラ−シリ変換部)506に対して出力する。
つまり、各画素信号生成回路500が出力するアナログ信号は、並列にデジタル信号に変換されて、パラ−シリ変換部506に入力される。パラ−シリ変換部506は、入力された各デジタル信号をパラレル/シリアル変換し、後段の黒シェーディング補正部30に対して出力する。なお、画素信号生成回路500やパラ−シリ変換部506などの出力タイミングは、タイミング信号生成部120からのクロック信号等によって制御されている。
図4Bは、R(Red)/G(Green)/B(Blue)の3画素を1つのカラムとした場合の光電変換素子の構成の概要を示す図である。光電変換素子60では、受光するR/G/Bの色数分の、主走査方向の画素数の画素信号生成回路500が配列されている。R/G/Bの各3画素は、それぞれが並列接続され、各3画素が後段の対応する増幅器502及びA/D変換器504を共に使用するカラム構成となっている。各画素信号生成回路500には、それぞれに対応するR/G/Bの何れかのカラーフィルタが設けられている。
各画素信号生成回路500が出力するアナログ信号は、色順に並列にデジタル信号に変換されて、パラ−シリ変換部506に入力される。パラ−シリ変換部506は、入力された各デジタル信号をパラレル/シリアル変換し、後段の黒シェーディング補正部30に対して出力する。なお、画素信号生成回路500やパラ−シリ変換部506などの出力タイミングは、タイミング信号生成部61からのクロック信号等によって制御されている。
図4Aでは、タイミング信号生成部120は光電変換素子50の外部にあるように図示しているが、光電変換素子50の内部にあってもよい。図4Bについても同様である。タイミング信号生成部61は光電変換素子60の外部にあるように図示しているが、光電変換素子60の内部にあってもよい。
図5は、画素信号生成回路500の構成例を示す図である。図5(a)は、画素信号生成回路500の第1構成例を示している。画素信号生成回路500は、例えば受光素子であるフォトダイオード(PD)、フローティングディフュージョン(FD:電荷電圧変換部)、電荷転送スイッチ(TX:転送部)、リセットスイッチ(RT:リセット部)、ソースフォロア(SF)、及び書込スイッチ(SL)を有する信号出力部である。TX、RT、SLは、それぞれトランジスタによって構成され、タイミング信号生成部120の制御に応じて動作するスイッチである。
フォトダイオード(PD)は、入射光に応じて電荷を発生させて蓄積する。フローティングディフュージョン(FD)は、電荷を蓄積させて電圧に変換する。電荷転送スイッチ(TX)は、PDに蓄積された電荷をFDに転送する。リセットスイッチ(RT)は、FDをリセット電位(基準電圧)AVDD_RTにリセットする。ソースフォロア(SF)は、電源電圧AVDD_PIXを用いて信号の電流増幅を行う。書込スイッチ(SL)は、電圧変換された信号を後段へ転送する。また、書込スイッチ(SL)は、FDが蓄積した電圧を後段に対して出力させるか否かを選択する選択部としての機能も有する。
画素信号生成回路500が図4Bに示すようなカラム構成である場合、図5(b)に示す画素信号生成回路500の第2構成例のように、SLの後段にアナログメモリ(VM)と、アナログメモリスイッチ(RD_S)をさらに備えて、同時に電荷蓄積を行えるようにしてもよい。なお、以下の実施形態においては、説明を理解し易くするために、図5(a)に示す画素信号生成回路500の第1構成例を有する光電変換素子50(図4A参照)と、そのタイミング信号生成部120(図4A参照)とを例について説明する。図5(b)に示す画素信号生成回路500の第2構成例を有する光電変換素子60(図4B参照)と、そのタイミング信号生成部61(図4B参照)とについても原理は同様である。
次に、光電変換素子50の動作例について説明する。図6は、原稿を読取る場合の画素信号生成回路500の動作を示すタイミングチャートである。以下、原稿を読取るときの動作を通常読取モードと記載する。通常読取モードでは、タイミング信号生成部120は、1ラインの同期信号lsyncを基準にして他の制御信号を生成する。これにより、画素信号生成回路500は、各制御信号に従って次のように動作する。
画素信号生成回路500では、ラインの先頭でまずSLがアサートされる。そして、RTがアサートされると、FDとSFを経て、リセット電位AVDD_RTがアナログ出力Pix_out=AVDD_RTとして転送される。ここまでをリセット期間t1と表す。
次に、画素信号生成回路500で、RTがネゲートされた後、TXがアサートされると、今度はFDに蓄積された電荷が同様に、アナログ出力Pix_out=VSとして転送される。これが電荷転送期間t2となる。VSは、負極性で表され、1ラインでPDに蓄積された電荷に相当する。
その後、画素信号生成回路500でSLがネゲートされると、増幅器502、A/D変換器504及びパラ−シリ変換部506が処理を行い、デジタル出力として、パラ−シリ変換部506から後段の黒シェーディング補正部30に読取画素値の信号が転送される。
ここまでが通常の読取動作1ライン分の制御タイミングであり、光電変換素子50は、2ライン目以降も同様に、リセット、PDの電荷転送を順番で行い、黒シェーディング補正部30に対し、画像データの各ラインの読取画素値を出力する。また、PDの電荷量の推移も図6に示されている。画素信号生成回路500では、TXがアサートされるまでの間にPDに1ライン分の電荷が蓄積され、TXがアサートされると、それまでに蓄積された電荷がFDに転送され、PDの電荷量が0になる。そして、画素信号生成回路500でTXがネゲートされると、その後は、次ラインで転送する電荷がPDに蓄積される。
光電変換素子50の画素の特性は、1画素毎に異なり、画素毎に出力のばらつきが生じる。例えば、光電変換素子50が一様な濃度レベルの原稿を読取った場合、理想的には主走査方向の全画素で一定レベルの読取画像が出力される。しかし、実際には、画素毎に出力のばらつきが生じる。
画素毎の出力のばらつきによる読取レベルの変動を補正するため、画像読取装置100は、光電変換素子50で、光電変換素子50に光が当たっていない暗時の読取レベル(実黒レベル)、又は擬似的な黒レベル(擬似黒レベル)を生成し、後段の黒シェーディング補正部30において画素毎に読取画像の読取レベルから実黒レベル又は擬似黒レベルを差し引く。実黒レベルは、各PDの特性差が反映された黒レベルである。擬似黒レベルは、各PDの特性差を反映せずに擬似的に生成した黒レベルである。
画像読取装置100は、光電変換素子50で実黒レベルを有する基準信号(暗時の画素出力値)を生成する場合、タイミング信号生成部120により、光源部102を消灯し、光電変換素子50に外光が入らない位置において通常の読取動作1ライン分の制御を行う。この制御により、画素信号生成回路500では、TXがアサートされるまでの間にPDに暗時の1ライン分の電荷が蓄積され、TXがアサートされると、それまでに蓄積された電荷がFDに転送される第1の動作が行われる。これにより、デジタル出力として、パラ−シリ変換部506から後段の黒シェーディング補正部30に各画素の暗時の画素出力値の信号が転送される。
擬似黒レベルを生成する際の光電変換素子50の制御については、擬似ダーク生成モードの動作(第2の動作)として後述する。
以上説明した光電変換素子50を有する画像読取装置100は、後段に黒シェーディング補正を行う黒シェーディング補正部30が構成されている。また、黒シェーディング補正後に、原稿サイズの検出や画像の形成などを行う後段処理部が構成されている。
図7は、黒シェーディング補正を行った場合の読取画像の読取レベルを示すグラフである。グラフf1は、補正前の読取画像の主走査方向における読取レベルを示している。グラフf1に示すように、補正前の読取画像の主走査方向において読取レベルに変動が生じている。
グラフf2−1は、主走査方向における実黒レベルの変動を示している。グラフf3−1は、グラフf1の読取レベルからグラフf2−1の黒レベルを差し引いた場合の主走査方向の読取レベルの変化を示している。グラフf3−1に示すように、読取画像を実黒レベルにより補正することにより、読取画像の黒レベルが均一化される。
次に、光電変換素子50に光が入射されている状態で黒レベルを取得する技術(擬似ダーク生成モード)について説明する。図8は、擬似ダーク生成モードの動作タイミングを示すタイミングチャートである。なお、光が光電変換素子50に入射されている状態などに黒レベルを取得する設定を擬似ダーク生成モードと記載する。擬似ダーク生成モードにおける制御では、画素信号生成回路500は、RTがネゲートされた後に、TXがアサートされず、電荷転送期間t2に、そのままリセット電位がPix_outに出力され続ける、第2の動作を行う。
つまり、PDの電荷はFDに転送されずにPDの電荷量が図8に示すように上昇し続ける。このとき、Pix_outに常にVS=0が出力され、擬似的な黒レベルが生成される。
PDは、遮光状態にあっても、暗電流により、電荷を蓄積する。従って、擬似ダーク生成モードでは、ゲインばらつき等によって発生する固定パターンノイズ(FPN)の影響が読取画像に生じることになる。具体的に、擬似ダーク生成モードでは、PDに蓄積された電荷を反映せずに擬似的に黒レベルの擬似基準信号を生成する。従って、PDの暗電流が要因となる固定パターンノイズを擬似基準信号に反映することができず、読取画像を擬似基準信号により補正したとしても、補正後の読取画像に固定パターンノイズの影響が生じることになる。
図9は、固定パターンノイズの影響を受けた、画素信号生成回路500の出力波形を例示するタイミングチャートである。図8のPix_outに示した擬似黒レベルの出力波形は、図9に示すように、画素信号生成回路500ごとに発生した正又は負の固定パターンノイズ(ΔFPN)の分だけ実黒レベルVDDからシフトしている。このように、擬似黒レベルの画素出力値は、FPN誤差(ΔFPNの影響)が含まれているため、補正後の読取画像において画素ごとにバラツキが生じ、画質が劣化してしまう。
図10は、擬似ダーク生成モードにおける黒シェーディング補正を行った場合の読取レベルを示すグラフである。グラフf2−2は、主走査方向における擬似黒レベルの変動を示している。グラフf3−2は、グラフf1の読取レベルからグラフf2−2の擬似黒レベルを差し引いた場合の主走査方向の読取レベルの変化を示している。グラフf3−2に示すように、読取画像を擬似黒レベルにより補正する場合は、各PDのΔFPN成分のばらつきが補正されずに残るため、黒シェーディング補正後の読取画像の読取レベルは精度良く黒レベルを均一化することができない。したがって、擬似ダーク生成モードでは、通常読取モードを使用して取得した実黒レベルを用いた黒シェーディングに比べると、画像品質は劣化してしまう。
FPNを補正しきれない状態は、蓄積時間(ライン周期)が長くなればなるほど暗電流が大きくなるために顕著となる。つまり、低い生産性のスキャナにおいて読取画像を生成する場合には不利に働いてしまう。一方、画像読取装置100は、原稿サイズを検知する場合には、原稿読み取りレベルを2値化して判断するため、この場合には高精度な黒シェーディング補正を必要としない。従って、原稿サイズ検知時の黒シェーディング補正の際に、擬似黒レベルを適用することができる。つまり、プレスキャン時の読取画像に対しては擬似黒レベルにより補正し、スキャン時の読取画像に対しては実黒レベルにより補正するという、選択的な補正が可能になる。
次に、画像読取装置100の動作について説明する。画像読取装置100は、ユーザからの操作や入力が所定期間ない場合、省エネルギー(省エネ)状態に移行する。また、第1キャリッジ106は、圧板223が開かれた場合、及び画像読取装置100が省エネ状態に移行した場合に、後述する待機位置へ移動する。
まず、画像読取装置100が省エネ状態に移行した時、及び画像読取装置100が省エネ状態から復帰した時の第1キャリッジ106の動作について説明する。図11は、画像読取装置100が省エネ状態に移行した時、及び画像読取装置100が省エネ状態から復帰した時の第1キャリッジ106の動作の概要を示す図である。
画像読取装置100は、省エネ移行時には、省エネ復帰時に原稿を検知する動作を行うことに備えて、第1キャリッジ106を待機位置(省エネ待機位置:原稿サイズ検知位置)に移動させる。画像読取装置100には、省エネ状態からの復帰のトリガが例えば2通りある。復帰のトリガには、ユーザが操作部332上の省エネ復帰ボタンを操作する場合と、ユーザが原稿を置くアクション(圧板223開)を行う場合とがある。
図11に示すように、ユーザが操作部332上の省エネ復帰ボタンを操作することによって画像読取装置100が省エネ状態から復帰する場合、第1キャリッジ106は、基準白板110の下方(白板下位置)に移動し、黒シェーディングデータ(黒SHデータ:実黒レベル)を取得して、その後ホームポジション(HP)に移動する。
ユーザが圧板223を開けた時に第1キャリッジ106は原稿のサイズ検知を実行できるように原稿サイズ検知位置に移動する。ユーザがコンタクトガラス101上に原稿を置いた後、圧板223が閉じられたことをトリガとして、第1キャリッジ106はホームポジション(HP)側に移動しながら原稿のサイズ検知を行う。この時のサイズ検知で用いる黒シェーディングデータは最初に第1キャリッジ106が基準白板110の下方に移動時に取得したものである。その後、コピースタートがユーザによって指示されてから、スキャン動作が実行され、一連の動作が完了する。
図11の下部に示した第1キャリッジ106の移動例では、圧板223開によるトリガによって省エネ状態から復帰する場合が示されている。省エネ状態からの復帰時にはキャリッジ106はサイズ検知可能な位置にあるが、ユーザが原稿を置くことに備えるためにキャリッジは待機したままとなる。
ユーザがコンタクトガラス101上に原稿を置いた後、圧板223が閉じられたことをトリガとして、第1キャリッジ106はホームポジション(HP)側に移動しながらサイズ検知を行う。サイズ検知を実行するために用いる黒シェーディングデータは遮光状態では取ることができないため、電子シャッタを用いて取得する擬似黒レベルを用いる。サイズ検知後、第1キャリッジ106は基準白板110下に移動して黒シェーディングデータを取得し、その後ホームポジション(HP)に移動する。その後、コピースタートがユーザによって指示されてから、スキャン動作が実行され、一連の動作が完了する。
このように、画像読取装置100は、省エネルギー(省エネ)状態となって待機する待機状態から通常動作状態に復帰するためのトリガが例えば2通り設定されている。画像読取装置100は、例えばユーザが操作部332上の省エネ復帰ボタンを押下したこと、又は、ユーザがコンタクトガラス101上に原稿を置くためにADF200の圧板223を上げる(開く)ことをトリガとして省エネ状態から通常動作状態に復帰するように設定されている。
図12は、圧板223が閉じられた状態でユーザが操作部332上の省エネ復帰ボタンを押下して省エネ状態から復帰する場合の画像読取装置100の動作を示す図である。図12の下方に示された丸印は、第1キャリッジ106の位置(移動)を示している。
画像読取装置100は、圧板223が閉じられた状態でユーザが操作部332上の省エネ復帰ボタンを押下すると、省エネ状態から通常動作状態に復帰する(S100)。画像読取装置100は、省エネ状態から通常動作状態に復帰すると、第1キャリッジ106が待機位置(原稿サイズ検知位置)から基準白板110の下方へ移動する(S102)。基準白板110は、外部からの光を遮光する部材としての機能も備えている。
黒シェーディング補正部30は、第1キャリッジ106が基準白板110の下方に配置された状態で実黒レベル(基準信号)を取得する(S103)。第1キャリッジ106は、基準白板110の下方からホームポジション(HP)へ移動する(S104)。ホームポジション(HP)は、シートスルー読取り用スリット111の下方である。そして、ユーザが圧板223を開いてコンタクトガラス101上に原稿を載せるときに、第1キャリッジ106は原稿サイズ検知位置へ移動する(S106)。
ユーザが圧板223を閉じると、第1キャリッジ106が再びホームポジション(HP)へ移動する(S108)。この第1キャリッジ106の移動中に、画像読取装置100は、原稿サイズを検知する。この原稿サイズ検知で用いられる黒シェーディングデータは、最初に第1キャリッジ106が基準白板110の下方へ移動した時に取得されたものである。その後、ユーザが操作部332を操作して画像読取が指示されると、画像読取装置100は、第1キャリッジ106を原稿読取範囲で往復させて原稿を読取る(S110)。
図13は、ユーザがADF200の圧板223を開くことによって省エネ状態から復帰する場合の画像読取装置100の動作を示す図である。画像読取装置100は、圧板223が開かれると、省エネ状態から通常動作状態に復帰する(S200)。この復帰時に、第1キャリッジ106は、原稿サイズ検知可能な位置にあるが、ユーザがコンタクトガラス101上に原稿を載せることに備えるために移動せず待機したまま(又は待機位置へ移動)となる。
そして、ユーザがコンタクトガラス101上に原稿を載せた後に圧板223が閉じられると(S202)、黒シェーディング補正部30が擬似黒レベル(擬似基準信号)を取得し(S204)、第1キャリッジ106が待機位置(原稿サイズ検知位置)から基準白板110の下方へ移動する(S206)。この第1キャリッジ106の移動中に、画像読取装置100は、原稿サイズを検知する。この原稿サイズ検知で用いられる黒シェーディングデータは、擬似黒レベルである。
黒シェーディング補正部30は、第1キャリッジ106が基準白板110の下方に配置された状態で実黒レベル(基準信号)を取得する(S207)。第1キャリッジ106は、基準白板110の下方からホームポジション(HP)へ移動する(S208)。その後、ユーザが操作部332を操作して画像読取が指示されると、画像読取装置100は、第1キャリッジ106を原稿読取範囲で往復させて原稿を読取る(S210)。なお、黒シェーディング補正部30は、第1キャリッジ106が基準白板110の下方を最初に通過する時に実黒レベルを取得するが、遮光されていればよく、これに限定されない。
図14は、画像読取装置100の動作の比較例(S300〜S306)と実施例(S400〜S408)とを対比させた図である。比較例では、画像読取装置100は、圧板223が開かれると、省エネ状態から通常動作状態に復帰する(S300)。ユーザがコンタクトガラス101上に原稿を載せた後に圧板223が閉じられると(S302)、第1キャリッジ106が待機位置から基準白板110の下方へ移動する(S304)。
黒シェーディング補正部30は、第1キャリッジ106が基準白板110の下方に配置された状態で実黒レベル(基準信号)を取得する(S305)。そして、画像読取装置100は、第1キャリッジ106が基準白板110の下方から原稿サイズ検知位置に戻る間に原稿サイズを検知して、第1キャリッジ106をホームポジション(HP)に戻す(S306)。
一方、実施例では、画像読取装置100は、圧板223が開かれると、省エネ状態から通常動作状態に復帰する(S400)。この復帰時に、第1キャリッジ106は、原稿サイズ検知可能な位置にあるが、ユーザがコンタクトガラス101上に原稿を載せることに備えるために移動せず待機したままとなる。
そして、ユーザがコンタクトガラス101上に原稿を載せた後に圧板223が閉じられると(S402)、黒シェーディング補正部30が擬似黒レベル(擬似基準信号)を取得し(S404)、第1キャリッジ106が待機位置(原稿サイズ検知位置)から基準白板110の下方へ移動する(S406)。この第1キャリッジ106の移動中に、画像読取装置100は、原稿サイズを検知する。この原稿サイズ検知で用いられる黒シェーディングデータは、擬似黒レベルである。
黒シェーディング補正部30は、第1キャリッジ106が基準白板110の下方に配置された状態で実黒レベル(基準信号)を取得する(S407)。第1キャリッジ106は、基準白板110の下方からホームポジション(HP)へ移動する(S408)。このように、実施例では、第1キャリッジ106を待機位置から移動させることなく擬似黒レベルを取得するので、第1キャリッジ106を移動させる時間が不要である。
次に、画像形成装置(又は画像読取装置)が行う制御について説明する。ここで、第1の動作とは、所定の信号である基準信号を用いて画像形成装置(又は画像読取装置)が実行する動作である。基準信号は、第1の動作の中で、通常読取モードの動作により取得するものとする。また、第2の動作とは、所定の擬似信号である擬似基準信号を用いて画像形成装置(又は画像読取装置)が実行する動作である。擬似基準信号は、第2の動作の中で、擬似ダーク生成モードの動作により取得するものとする。
図15は、画像形成装置(画像読取装置100)の制御部が行う制御を例示するフローチャートである。図15に示すように、上記制御部は、例えば画像読取装置100が待機状態からの復帰であるか否かを判定する(S600)。この処理は、あらかじめ擬似黒レベルを取得するか否かを判断するために必要な制御である。上記制御部は、待機状態からの復帰ではないと判定した場合(S600:Yes)にはS602の処理に進み、待機状態からの復帰であると判定した場合(S600:No)にはS610の処理に進む。
上記制御部は、ユーザによる画像読取動作の指定があるか否かを判定する(S602)。上記制御部は、画像読取動作の指定があると判定した場合(S602:Yes)にはS604の処理に進み、画像読取動作の指定がないと判定した場合(S602:No)にはS610の処理に進む。
上記制御部は、画像読取動作の指定があると判定した場合、画像読取装置100を画像読取モードに設定し(S604)、第1の動作により実黒レベル(基準信号)を取得させて(S606)、更に、読取対象を読取る画像読取動作を実行させる(S608)。この画像読取動作では、原稿の読み取りにより光電変換素子50から出力される原稿の画像データを黒シェーディング補正部30において実黒レベルにより補正して読取画像を得る。従って、その後段で多値化処理を行うことができる。
また、上記制御部は、画像読取動作の指定がないと判定した場合、画像読取装置100を原稿サイズ検知モードに設定し(S610)、第2の動作により擬似黒レベル(擬似基準信号)を取得させて(S612)、更に、原稿サイズを検知する動作を実行させる(S614)。原稿サイズを検知する動作では、原稿の読み取りにより光電変換素子50から出力される原稿の画像データを黒シェーディング補正部30において擬似黒レベルにより補正し、補正後の画像を2値化処理して原稿サイズを得る。
つまり、上記制御部は、画像読取動作のときのように後段で多値化処理が必要になるなど、信号の精度が所定の精度以上必要である場合に、画素信号生成回路500に第1の動作を行わせるように制御する。また、上記制御部は、原稿サイズ検知動作のときのように後段で多値化処理が必要でない、2値化処理でも構わないなど、上記信号の精度が所定の精度未満でも許容される場合に、画素信号生成回路500に第2の動作を行わせるよう制御する。
なお、画像読取装置100は、省エネ状態ではモータに電力供給をしないように設定されており、励磁が切れているので、第1キャリッジ106が振動などで動く可能性がある。図16は、第1キャリッジ106が待機位置からずれていた場合の黒シェーディングデータを取得するための動作を示す図である。
省エネ状態からの復帰時に第1キャリッジ106が所定の位置にない場合(特に、原稿が置かれている位置の下方に第1キャリッジ106がない場合)には、原稿検知を行うために第1キャリッジ106を上流側(図16において左側)に一定の距離だけ移動させるが、ホームポジション(HP)に到達してしまい原稿サイズ検知動作を行うことができなくなってしまう。そこで、画像読取装置100は、第1キャリッジ106の位置を調整するためにリトライ動作として第1キャリッジ106をホームポジション(HP)に一旦戻す。このとき、第1キャリッジ106が基準白板110の下方を往復するので、黒シェーディング補正部30は、実黒レベルを取得することが可能である。
また、第1キャリッジ106が原稿の置かれている位置の上方にある場合には、第1キャリッジ106が待機位置から一定の距離だけ左側の距離に基準白板110が有ることを想定して実黒レベルを取得する場合、第1キャリッジ106は遮光状態で実黒レベルを取得することができない。そこで、画像読取装置100は、第1キャリッジ106の位置を調整するためにリトライ動作として第1キャリッジ106をホームポジション(HP)に一旦戻す。このとき、第1キャリッジ106が基準白板110の下方を往復するので、黒シェーディング補正部30は、実黒レベルを取得することが可能である。
また、画像読取装置100は、ADF200によって原稿連続読取りをする場合には、原稿読取りの間に紙間が存在する。画像読取装置100は、原稿連続読取り時に黒レベルを取得するために、画像読取位置が紙間となる時に光源部102を消灯させて黒レベルを取得する。
また、ADF200に原稿がつまって所定の位置とは異なる位置に原稿が停止した場合には、つまった原稿で隙間ができてしまうことにより正常な黒レベルを取得できない可能性がある。この場合、画像読取装置100は、再度実黒レベルを取得するリカバリ動作を行う。
(第2の実施形態)
第1の実施形態に適用した信号処理装置の原理は、画像形成装置や画像読取装置に限らず、その他の装置にも適用することができる。物理量として、第1の実施形態の光量に代わり、例えば放射線や、電磁波や、光波などを取り扱う製品、一例として、それぞれ、放射線検査装置や、電磁波測定機や、光波測定機などへの適用が可能である。
図17は、信号処理装置の原理を示すブロック構成図である。図17の信号処理装置70は、制御部71と、信号源72と、信号出力部73と、補正部74とを有する。
制御部71は、制御信号を生成し、信号源72と信号出力部73とを制御する。
信号源72は、物理量を出力する信号源である。例えば物理量が光量である場合は光源部に相当し、物理量が放射線である場合は、放射性物質などが相当する。
信号出力部73は、物理量を電気信号に変換して補正部74に出力する。信号出力部73は、補正モードとして複数のモードを有する。例えば、2つのモードである場合、第1のモードでは、後段処理部で必要とされる処理の条件値(例えば上記物理量の変換精度や処理スピードなど)が所定の閾値以上であるときに、制御部71からの制御により、入力した物理量を変換し、信号出力部73の特性を有する信号(実信号)を出力する。第2のモードでは、後段処理部で必要とされる処理の条件値が所定の閾値未満であるときに、制御部71からの制御により、入力した物理量を変換し、信号出力部73の特性の一部又は全てを有さない信号(擬似信号)を出力する。
補正部74は、信号出力部73から出力された信号を、第1のモードの実信号又は第2のモードの擬似信号により補正し、補正後の信号を後段処理部へ出力する。
各ブロックは、CPUが実行するソフトウェア、又はハードウェアによって構成される。
図18は、信号処理装置70の制御部71が行う制御を例示するフローチャートである。ここで、第1の動作とは、実信号を用いて信号処理装置70が実行する動作である。実信号は、第1の動作の中で取得するものとする。また、第2の動作とは、擬似信号を用いて信号処理装置70が実行する動作である。擬似信号は、第2の動作の中で取得するものとする。
図18に示すように、制御部71は、ユーザによる第1の動作の指定があるか否かを判定する(S702)。制御部71は、第1の動作の指定があると判定した場合(S702:Yes)にはS704の処理に進み、第1の動作の指定がないと判定した場合(S702:No)にはS710の処理に進む。
制御部71は、信号処理装置70を通常モードに設定し(S704)、第1の動作により実信号を取得させて(S706)、引き続き第1の動作を実行させる(S708)。又は、上記制御部71は、信号処理装置70を擬似モードに設定し(S710)、第2の動作により所定の擬似信号を取得させて(S712)、引き続き第2の動作を実行させる(S714)。
第1、第2の実施形態によれば、効率的に信号を補正して、出力する信号の必要な精度を維持することができるという効果を奏する。