JP2018111781A - ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】難燃性を維持しながら、流動性を損なうことなく、高い耐トラッキング性(CTI)を有するポリエステル樹脂組成物を提供する。【解決手段】熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、ガラス繊維(B)0〜120質量部及び臭素系難燃剤(C)0〜50質量部を含有し、(B)と(C)の含有量の合計は5〜150質量部であり、さらに、第1のフッ素樹脂(D1)と、第1のフッ素樹脂(D1)より質量平均分子量が低い第2のフッ素樹脂(D2)を併せて1〜25質量部含有することを特徴とするポリエステル樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエステル樹脂組成物に関し、詳しくは、難燃性を維持しながら、流動性を損なうことなく、高い耐トラッキング性(CTI)を有するポリエステル樹脂組成物に関する。
ポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートに代表される熱可塑性ポリエステル樹脂は、機械的強度、耐薬品性及び電気絶縁性等に優れており、また優れた耐熱性、成形性、リサイクル性を有していることから、電気電子部品、自動車部品その他の電装部品、機械部品等に広く用いられている。
特に、電気電子機器分野では、火災に対する安全を確保するため難燃性が極めて重要であり、また電気的負荷による発火に対する安全性の確保のため、電気的特性の一つである耐トラッキング性に優れていることが必要である。
そして、近年、電気電子機器部品や電装部品は、機器自体の小型化傾向から薄肉小型化されてきており、その結果、絶縁距離が小さくなり、これら部品(成形品)の耐トラッキング性等への要求スペックは高度化している。絶縁材料は、通電中に装置から発生した熱により乾燥し帯電するため、絶縁材料の表面には埃が付着しやすい傾向がある。そのため、その絶縁材料から形成される部品は、装置停止中にその表面に埃が付着しやすく、その埃が空気中の水分を吸収し、吸収された水分により材料の表面抵抗が低下し、漏洩電流が増加する。一般に、電気部品は多かれ少なかれこのような状況にさらされており、絶縁材料の耐トラッキング特性が重要視されている。
電気電子部品は、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ社のUL94規格の難燃性や比較トラッキング指数(CTI:Comparative Tracking Index)等の要求事項を満たさねばならず、0.75mm厚みにてV−0以上の難燃性と、CTIが300V以上であることが望ましい。
熱可塑性ポリエステル樹脂を難燃化するには、通常、ハロゲン系難燃剤や無機系難燃剤等が配合されるが、これらは熱可塑性ポリエステル樹脂の耐トラッキング性等の電気特性を低下させる傾向にある。例えば、CTIで300V以上であるものが難燃剤を配合することにより300V未満に悪化することはよく観察される。
耐トラッキング性の改良を試みた材料としては、例えば、特許文献1には、ポリブチレンテレフタレートにポリオレフィンを配合した樹脂組成物が、耐トラッキンング性を改善するとの提案がなされている。この方法では、配合したポリオレフィンの一部が表面に分散することで、炭化が抑制されて耐トラッキング性が改善される。しかしながら、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンを多く配合すると耐熱性が低下するなどの弊害をもたらす。
特開昭50−55657号公報
本発明の目的(課題)は、難燃性を維持しながら、流動性を損なうことなく、高い耐トラッキング性(CTI)を有するポリエステル樹脂組成物を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性ポリエステル樹脂に、ガラス繊維と臭素系難燃剤、さらに分子量が高いフッ素樹脂と分子量が低いフッ素樹脂をそれぞれ特定の量を含有するポリエステル樹脂組成物が、難燃性を維持しながら、流動性を損なうことなく、高い耐トラッキング性(CTI)を有することを見出し、本発明に到達した。
本発明は、以下のポリエステル樹脂組成物に関する。
[1]熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、ガラス繊維(B)0〜120質量部及び臭素系難燃剤(C)0〜50質量部を含有し、(B)と(C)の含有量の合計は5〜150質量部であり、さらに、第1のフッ素樹脂(D1)と、第1のフッ素樹脂(D1)より質量平均分子量が低い第2のフッ素樹脂(D2)を併せて1〜25質量部含有することを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
[2]第1のフッ素樹脂(D1)の質量平均分子量が1,000,000〜100,000,000である上記[1]に記載のポリエステル樹脂組成物。
[3]第2のフッ素樹脂(D2)の質量平均分子量が60,000〜800,000である上記[1]又は[2]に記載のポリエステル樹脂組成物。
[4]フッ素樹脂(D1)とフッ素樹脂(D2)の含有量の質量比が1/0.5〜1/10である上記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、難燃性と流動性を損なうことなく、高い耐トラッキング性(CTI)を有し、強度に優れ、凝集異物の発生もなく、さらに生産性にも優れる。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、ガラス繊維(B)0〜120質量部及び臭素系難燃剤(C)0〜50質量部を含有し、(B)と(C)の含有量の合計は5〜150質量部であり、さらに、第1のフッ素樹脂(D1)と、第1のフッ素樹脂(D1)より質量平均分子量が低い第2のフッ素樹脂(D2)を併せて1〜25質量部含有することを特徴とする。
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する各構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定して解釈されるものではない。なお、本願明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
[熱可塑性ポリエステル樹脂(A)]
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)は、ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物の重縮合、オキシカルボン酸化合物の重縮合あるいはこれらの化合物の重縮合等によって得られるポリエステルであり、ホモポリエステル、コポリエステルのいずれであってもよい。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)を構成するジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体が好ましく使用される。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルフォン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルイソプロピリデン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、アントラセン−2,5−ジカルボン酸、アントラセン−2,6−ジカルボン酸、p−ターフェニレン−4,4’−ジカルボン酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸等が挙げられ、テレフタル酸が好ましく使用できる。
これらの芳香族ジカルボン酸は2種以上を混合して使用しても良い。これらは周知のように、遊離酸以外にジメチルエステル等のエステル形成性誘導体として重縮合反応に用いることができる。
なお、少量であればこれらの芳香族ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸を1種以上混合して使用することができる。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)を構成するジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、へキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパン−1、3−ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサン−1、4−ジメタノール等の脂環式ジオール等、及びそれらの混合物等が挙げられる。これらの中でもエチレングリコール、ブタンジオールが好ましく、特にはブタンジオールが好ましい。
なお、少量であれば、分子量400〜6,000の長鎖ジオール、すなわち、ポリエチレングリコール、ポリ−1、3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を1種以上共重合せしめてもよい。
また、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族ジオールも用いることができる。
また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)としては、通常は主としてジカルボン酸とジオールとの重縮合からなるもの、即ち樹脂全体の50質量%、好ましくは70質量%以上がこの重縮合物からなるものを用いる。ジカルボン酸としては芳香族カルボン酸が好ましく、ジオールとしては脂肪族ジオールが好ましい。
なかでも好ましいのは、酸性分の95モル%以上がテレフタル酸であり、アルコール成分の95質量%以上が脂肪族ジオールであるポリアルキレンテレフタレート樹脂である。その代表的なものはポリブチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂である。これらはホモエステルに近いもの、即ち樹脂全体の95質量%以上が、テレフタル酸成分及び1.4−ブタンジオール又はエチレングリコール成分からなるものであるのが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、主成分がポリブチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の固有粘度は、0.5〜2dl/gであることが好ましい。成形性及び機械的特性の点からして、0.6〜1.5dl/gの範囲の固有粘度を有するものがより好ましい。固有粘度が0.5dl/gより低いものを用いると、得られる樹脂組成物が機械的強度の低いものとなりやすい。また2dl/gより高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化する場合がある。
なお、熱可塑性ポリエステル樹脂の固有粘度は、1,1,2,2−テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定するものとする。
また、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)は、その末端カルボキシル基量は適宜選択して決定すればよいが、通常、60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることが好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。60eq/tonを超えると、樹脂組成物の溶融成形時にガスが発生しやすくなる。末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造の生産性を考慮し、通常、10eq/tonである。
なお、ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mLにポリアルキレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/lベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定して得られた値をいう。末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
[ガラス繊維(B)]
本発明に用いるガラス繊維(B)としては、特に制限はないが、Aガラス、Cガラス、Eガラス等の組成からなるものが好ましく、特に、Eガラス(無アルカリガラス)が熱可塑性ポリエステル樹脂の熱安定性に悪影響を及ぼさない点で好ましい。また一般的には、取り扱いの容易さや、高い強度・剛性および耐熱性を有する成形物を与える点などから、短繊維タイプ(チョップドストランド)のガラス繊維を使用することが好ましい。
ガラス繊維(B)の平均繊維径は特に制限されないが、例えば1〜100μmの範囲で選ぶことが好ましく、より好ましくは2〜50μm、更に好ましくは3〜30μm、特に好ましくは5〜20μmである。平均繊維径が1μm未満のガラス繊維は、製造が容易でなく、コスト高になる恐れがあり、一方100μmを超えると、ガラス繊維の引張強度が低下する恐れがある。
また、ガラス繊維(B)の平均繊維長は特に限定されないが、例えば0.1〜20mmの範囲で選ぶことが好ましく、0.3〜5mmであることがより好ましい。平均繊維長が0.1mm未満であると、補強効果が十分に発現しない恐れがあり、20mmを超えると、得られるポリエステル樹脂組成物の成形が困難になる恐れがある。
ガラス繊維(B)は、収束剤又は表面処理剤と組み合わせて使用してもよい。このような収束剤又は表面処理剤としては、任意のものを使用でき、具体的には、例えば、アミノシラン系、エポキシシラン系、アリルシラン系、ビニルシラン系等のシラン系カップリング剤が好ましく挙げられる。
これらの中では、アミノシラン系表面処理剤が好ましく、具体的には例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい例として挙げられる。
また、ノボラック型等のエポキシ樹脂、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂等も好ましく挙げられる。中でも、ノボラック型のエポキシ樹脂がより好ましい。
収束剤又は表面処理剤は、それぞれ単独で用いても複数種で用いてもよく、両者を併用することも好ましい。
ガラス繊維(B)は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、0〜120質量部であり、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは90質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下、特には70質量部以下であることが好ましい。ガラス繊維(B)の含有量が120質量部を上回ると、流動性が著しく損なわれ、好適に射出成形できなくなることがあるので好ましくない。
[臭素系難燃剤(C)]
本発明に用いる臭素系難燃剤(C)としては、従来公知の任意の、熱可塑性ポリエステル樹脂に使用される臭素系難燃剤を用いることができる。このような臭素系難燃剤としては、具体的には、例えば、テトラブロモビスフェノールAのエポキシオリゴマー等の臭素化エポキシ、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、ペンタブロモポリベンジルアクリレート等の臭素化ベンジルポリ(メタ)アクリレート、N,N’−エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)等の臭素化イミド、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA、グリシジル臭素化ビスフェノールA等が挙げられる。
これらの中でも、臭素化ベンジルポリ(メタ)アクリレート、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリスチレン、グリシジル臭素化ビスフェノールAが、耐衝撃性の低下を抑制しやすい傾向にあり、好ましい。
臭素化ベンジルポリ(メタ)アクリレートとしては、ペンタブロモベンジルポリアクリレートが特に好ましい。
臭素化ポリカーボネートとしては、臭素化ビスフェノールA、特にテトラブロモビスフェノールAから得られる、臭素化ポリカーボネートであることが好ましい。その末端構造は4−t−ブチルフェニル基や2,4,6−トリブロモフェニル基等が挙げられ、特に、末端基構造に2,4,6−トリブロモフェニル基を有するものが好ましい。
臭素化エポキシとしては、例えば、臭素化ビスフェノール、好ましくはテトラブロモビスフェノールAを出発原料とし、その分子末端にエポキシ基を有する臭素化エポキシが代表的であり、オリゴマータイプやポリマータイプのものも好ましい。
臭素化ポリスチレンとしては、例えば、ポリ(4−ブロモスチレン)、ポリ(2−ブロモスチレン)、ポリ(3−ブロモスチレン)、ポリ(2,4−ジブロモスチレン)、ポリ(2,6−ジブロモスチレン)、ポリ(2,5−ジブロモスチレン)、ポリ(3,5−ジブロモスチレン)、ポリ(2,4,6−トリブロモスチレン)、ポリ(2,4,5−トリブロモスチレン)、ポリ(2,3,5−トリブロモスチレン)、ポリ(4−ブロモ−α−メチルスチレン)、ポリ(2,4−ジブロモ−α−メチルスチレン)、ポリ(2,5−ジブロモ−α−メチルスチレン)、ポリ(2,4,6−トリブロモ−α−メチルスチレン)およびポリ(2,4,5−トリブロモ−α−メチルスチレン)等が挙げられ、ポリ(2,4,6−トリブロモスチレン)、ポリ(2,4,5−トリブロモスチレン)および平均2〜3個の臭素基をベンゼン環中に含有するポリジブロモスチレン、ポリトリブロモスチレンが特に好ましく用いられる。
臭素系難燃剤(C)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、0〜60質量部である。60質量部を超えると機械的強度が低下する。臭素系難燃剤(B)の好ましい含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、5質量部以上であり、より好ましくは8質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上であり、また好ましくは50質量部以下であり、より好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下、特に好ましくは20質量部以下である。
ガラス繊維(B)と臭素系難燃剤(C)の含有量の合計は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、5〜150質量部である。本発明はガラス繊維(B)および/または臭素系難燃剤(C)の配合により強度向上および/または難燃性の機能が付与される代わりにCTIが低下する現象を改善するものであるが、5質量部未満ではCTIの低下が小さいが、強度向上および/または難燃性のいずれの機能も十分には発現しないので好ましくない。150質量部を超えると流動性が著しく悪化し、好適に射出成形できなくなることが ある。ガラス繊維(B)と臭素系難燃剤(C)の含有量の合計は、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上、特に好ましくは40質量部以上であり、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下である。
[フッ素樹脂(D1)及び(D2)]
本発明のポリエステル樹脂組成物は、第1のフッ素樹脂(D1)と、第1のフッ素樹脂(D1)より質量平均分子量が低い第2のフッ素樹脂(D2)を含有する。
高分子量の第1のフッ素樹脂(D1)を含有するだけの場合では、難燃性を向上させることはできるが耐トラッキング性(CTI)は向上せず、さらに含有量を増加させるとCTIを多少上げることはできるが、樹脂組成物ペレットの製造時にストランド切れが起きやすく、生産性が悪くなり、また品質の悪化(ペレット中に凝集異物発生等)が起きやすい。一方、低分子量の第2のフッ素樹脂(D2)だけを含有する場合、生産性や品質は悪化しないものの、CTIや難燃性の改善効果はみられない。
しかし、高分子量の第1のフッ素樹脂(D1)と低分子量の第2のフッ素樹脂(D2)を併せて含有することにより、CTIが顕著に向上し、難燃性、強度にも優れ、生産性や品質の問題も発生しないことが見いだされた。
第1のフッ素樹脂(D1)の質量平均分子量は、1,000,000〜100,000,000であることが好ましく、より好ましくは1,000,000〜50,000,000である。また、第2のフッ素樹脂(D2)の質量平均分子量は、60,000〜800,000であることが好ましく、より好ましくは80,000〜700,000、さらに好ましくは100,000〜600,000である。
なお、フッ素樹脂(D1)及び(D2)の質量平均分子量は、示差熱分析装置を用いて、フッ素樹脂試料を370℃から20℃まで冷却したときの結晶化熱を測定し、下記式に従って算出される。
M=2.1×1010×ΔHc−5.16
ここで、Mは質量平均分子量、ΔHcは結晶化熱(cal/g)である。
フッ素樹脂(D1)及び(D2)のフッ素樹脂としては、例えば、フルオロオレフィン樹脂が挙げられる。フルオロオレフィン樹脂は、通常フルオロエチレン構造を含む重合体あるいは共重合体であり、具体例としては、テトラフルオロエチレン重合体、ジフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート共重合体等が挙げられる。中でも好ましくはテトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等が好ましい。
また、フッ素樹脂(D1)及び(D2)としては、有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂も好適に使用することができる。有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂を用いることで、分散性が向上し、成形品の表面外観が向上し、表面異物を抑制できる。有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂は、公知の種々の方法により製造でき、例えば、ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合して、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、ポリフルオロエチレン粒子水性分散液存在下で、有機系重合体を構成する単量体を重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合した分散液中で、エチレン性不飽和結合を有する単量体を乳化重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、等が挙げられる。
第1のフッ素樹脂(D1)と第2のフッ素樹脂(D2)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、(D1)と(D2)の合計で1〜25質量部であり、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。(D1)と(D2)の合計含有量が1質量部未満ではCTIの向上効果が不十分になり、25質量部を超えると機械強度が悪くなる。
また、第1のフッ素樹脂(D1)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、0.4〜3質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは2.7質量部以下、さらに好ましくは2.5質量部以下である。
また、第2のフッ素樹脂(D2)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、0.2〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは12質量部以下である。
さらに、フッ素樹脂(D1)とフッ素樹脂(D2)の含有量の質量比(D1/D2)は、1/0.5〜1/10であることが好ましく、1/1〜1/5であることがより好ましい。
[難燃助剤]
さらに本発明のポリエステル樹脂組成物は、臭素系難燃剤(C)と共に、難燃助剤を含有することが好ましい。難燃助剤としては、例えば、アンチモン化合物、硼酸亜鉛、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化鉄、酸化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられ、2種以上併用してもよい。これらの中でも、難燃性がより優れる点からアンチモン化合物、硼酸亜鉛が好ましい。
アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン(Sb)、五酸化アンチモン(Sb)、アンチモン酸ナトリウム等が挙げられる。特に、臭素系難燃剤(C)との相乗効果から、三酸化アンチモンを併用することが好ましい。
ポリエステル樹脂組成物中の臭素系難燃剤(C)由来の臭素原子と、アンチモン化合物由来のアンチモン原子の質量濃度が、両者の合計で5〜16質量%であることが好ましく、6〜15質量%であることがより好ましい。5質量%未満であると難燃性が低下する傾向にあり、16質量%を超えると機械的強度や耐トラッキング特性が低下する場合がある。また、臭素原子とアンチモン原子の質量比(ハロゲン原子/アンチモン原子)は、0.3〜5であることが好ましく、0.3〜4であることがより好ましい。
難燃助剤の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは3〜15質量部、さらに好ましくは5〜10質量部である。
[無機充填材]
本発明のポリエステル樹脂組成物には、ガラス繊維(B)以外の無機充填材を含有することも好ましい。無機充填材としては常用のものをいずれも用いることができる。ガラス繊維(B)以外の無機充填材を含有する場合の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.5〜50質量部であり、より好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。ガラス繊維(B)以外の無機充填材の含有量が50質量部を上回ると、流動性が低下するので好ましくない。
ガラス繊維(B)以外の無機充填材としては、具体的には例えば、炭素繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム繊維等の繊維状の充填材;炭酸カルシウム、酸化チタン、長石系鉱物、クレー、有機化クレー、ガラスビーズ等の粒状又は無定形の充填材;タルク等の板状の充填材;ガラスフレーク、マイカ、グラファイト等の鱗片状の充填材を用いることもできる。中でも、機械的強度、剛性及び耐熱性の点からタルクを用いるのが好ましい。
[離型剤]
本発明のポリエステル樹脂組成物は、更に、離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、ポリエステル樹脂に通常使用される既知の離型剤が利用可能であるが、中でも、離型性が優れる点で、ポリオレフィン系化合物、脂肪酸エステル系化合物及びシリコーン系化合物から選ばれる1種以上の離型剤が好ましい。
ポリオレフィン系化合物としては、パラフィンワックス及びポリエチレンワックスから選ばれる化合物が挙げられ、中でも、質量平均分子量が、700〜10,000、更には900〜8,000のものが好ましい。
脂肪酸エステル系化合物としては、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類等の脂肪酸エステル類やその部分鹸化物などが挙げられ、中でも、炭素数11〜28、好ましくは炭素数17〜21の脂肪酸で構成されるモノ又はジ脂肪酸エステルが好ましい。具体的には、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリン−12−ヒドロキシモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート等が挙げられる。
また、シリコーン系化合物としては、熱可塑性ポリエステル樹脂との相容性などの点から、変性されている化合物が好ましい。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖に有機基を導入したシリコーンオイル、ポリシロキサンの両末端及び/又は片末端に有機基を導入したシリコーンオイルなどが挙げられる。導入される有機基としては、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、フェノール基などが挙げられ、好ましくはエポキシ基が挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖にエポキシ基を導入したシリコーンオイルが特に好ましい。
離型剤の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、0.05〜2質量部であることが好ましい。0.05質量部未満であると、溶融成形時の離型不良により表面性が低下する傾向があり、一方、2質量部を超えると、樹脂組成物の練り込み作業性が低下し、また成形品表面に曇りが見られる場合がある。離型剤の含有量は、好ましくは0.07〜1.5質量部、更に好ましくは0.1〜1.0質量部である。
[安定剤]
本発明のポリエステル樹脂組成物は、さらに安定剤を含有することが、熱安定性改良や、機械的強度、透明性及び色相の悪化を防止する効果を有するという点で好ましい。安定剤としては、リン系安定剤およびフェノール系安定剤が好ましい。
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられ、中でもホスファイト、ホスホナイトが好ましい。
ホスファイトとしては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジラウリルハイドロジェンホスファイト、トリエチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、モノフェニルジデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、水添ビスフェノールAフェノールホスファイトポリマー、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジ(トリデシル)ホスファイト)、テトラ(トリデシル)4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(4−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、水添ビスフェノールAペンタエリスリトールホスファイトポリマー、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
また、ホスホナイトとしては、テトラキス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、およびテトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイトなどが挙げられる。
また、ホスフェートとしては、例えば、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェート等が挙げられる。
リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
フェノール系安定剤の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。
中でも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
なお、フェノール系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
安定剤の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1.5質量部以下、好ましくは1質量部以下である。0.001質量部未満では安定剤としての効果が不十分であり、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、また1.5質量部を超えると、過剰量となりシルバーの発生や、色相悪化が更に起こりやすくなる傾向がある。
[その他成分]
本発明のポリエステル樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記した以外の種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、紫外線吸収剤、染顔料、蛍光増白剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等が挙げられる。
また、本発明におけるポリエステル樹脂組成物には、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂を、本発明の効果を損わない範囲で含有することができる。その他の熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等が挙げられる。
[樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法としては、ポリエステル樹脂組成物調製の常法に従って行うことができる。通常は各成分及び所望により添加される種々の添加剤を一緒にしてよく混合し、次いで一軸又は二軸押出機で溶融混練する。なお、ガラス繊維は、押出機のシリンダー途中のサイドフィーダーから供給することが好ましい。また各成分を予め混合することなく、ないしはその一部のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練し、本発明の樹脂組成物を調製することもできる。さらには、ポリエステル樹脂の一部に他の成分の一部を配合したものを溶融混練してマスターバッチを調製し、次いでこれに残りのポリエステル樹脂や他の成分を配合して溶融混練してもよい。
溶融混練に際しての加熱温度は、通常220〜300℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、不透明化の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。混練り時や、後行程の成形時の分解を抑制する為、酸化防止剤や熱安定剤の使用が望ましい。
[成形体]
本発明のポリエステル樹脂組成物は、通常、任意の形状に成形して成形体として用いる。この成形体の形状、模様、色、寸法等に制限はなく、その成形体の用途に応じて任意に設定すればよい。
成形体の製造方法は、特に限定されず、ポリエステル樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられ、中でも射出成形法が好ましい。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、難燃性、流動性、高い耐トラッキング性を有し、強度にも優れるポリエステル樹脂材料であるので、電気電子機器あるいはそれ等の絶縁性部品として特に好適である。
絶縁性部品としては、金属接点、銅版などと組み合わせることにより、電気接点開閉部を有する電気電子機器部品、例えばリレー、スイッチ、ターミナルスイッチ、センサー、コネクター、アクチュエーター、マイクロスイッチ、マイクロセンサーおよびマイクロアクチュエーター等の有接点電気電子部品や、ブレーカー等の電気電子製品の筐体或いはカバー等として好ましく用いることができる。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
なお、以下の説明において[部]とは、特に断りのない限り、質量基準に基づく「質量部」を表す。
以下の実施例および比較例において、使用した成分は、以下の表1の通りである。
(実施例1〜3、比較例1〜8)
上記表1に記載の各成分を下記表2に記載の配合割合(質量部)になるように配合し、2軸押出機(日本製鋼所社製「TEX−30α」、スクリュー径30mm)を用い、ガラス繊維はサイドフィーダーから供給し、バレル設定温度250℃、回転数200rpmで溶融混練し、ストランド状に押出し、冷却後カッティングして、樹脂組成物のペレットを作った。
<生産性評価>
この際、ストランド切れを起こす等の問題点が発生するかどうかを観察し、生産性の評価を行った。
<品質評価>
また、凝集異物の評価のため、上記において、さらにカーボンブラックを0,5%配合した以外は同様にして、黒色のペレットを製造した。得られた黒色ペレットの表面をルーペで観察し、フッ素樹脂の凝集した白色の異物の有無を判定した。
<物性評価>
得られたペレットの特性は、射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX−80」)を用いてシリンダー温度260℃で、下記(1)、(2)の形状の評価用試験片を射出成形した。なお、成形に際して、樹脂組成物はその直前まで120℃にて6〜8時間乾燥した。
(1)耐トラッキング特性(CTI)
厚さ3.0mm、50φの円板の試験片を用い、試験法UL746A 23項で規定されている耐トラッキング性試験方法はASTM D3638に準拠して測定した。装置のノズルから電解液(塩化アンモニウム0.1%水溶液、23℃で抵抗率385Ω・cm)を30秒間隔で滴下させ、両白金電極間に600V以下(25Vステップ)の電圧を印加し、トラッキングが発生するまでの電解液滴下数を測定し、5回の平均値が50滴未満となる電圧(単位:V)を求めた。
CTIは、数値が高いほど耐トラッキング性が良好であることを意味し、300V以上であるのが好ましい。
(2)難燃性(UL94)
アンダーライターズ・ラボラトリーズのサブジェクト94(UL94)の方法に準じ、5本の試験片(厚み;0.8mm)を用いて難燃性を試験した。難燃性は、UL94記載の評価方法に従って、V−0、V−1、V−2に分類した。さらに、5試料のうち、1つでも上記基準を満たさないものがある場合、V−2を満足しないとしてNR(Not Rated)と評価した。
(3)曲げ強度
日本製鋼所社製射出成形機「J85 AD」(型締め力85トン)を用い、シリンダー温度250℃の条件でISO試験片を射出成形し、ISO178規格に準拠して曲げ強度(単位:MPa)を測定した。
以上の評価結果を、以下の表2に示す。
上記の比較例6では、ストランド切れが多発し、切れる度に対応し、サンプル採取したが、ストランド切れによるロス率30%にも達した。
比較例8ではストランドが切れてしまい、全く引けずサンプル採取もできなかったため、物性は評価自体ができなかった。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、難燃性と耐トラキング性に優れるポリエステル樹脂材料なので、電気電子機器部品、例えばコネクター、リレー、スイッチ等や、電気電子機器部品の筐体・カバーなどの広範囲の部品に特に好適に利用できる。

Claims (4)

  1. 熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、ガラス繊維(B)0〜120質量部及び臭素系難燃剤(C)0〜50質量部を含有し、(B)と(C)の含有量の合計は5〜150質量部であり、さらに、第1のフッ素樹脂(D1)と、第1のフッ素樹脂(D1)より質量平均分子量が低い第2のフッ素樹脂(D2)を併せて1〜25質量部含有することを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
  2. 第1のフッ素樹脂(D1)の質量平均分子量が1,000,000〜100,000,000である請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
  3. 第2のフッ素樹脂(D2)の質量平均分子量が60,000〜800,000である請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
  4. フッ素樹脂(D1)とフッ素樹脂(D2)の含有量の質量比が1/0.5〜1/10である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
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