JP6438307B2 - ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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Description

本発明は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物及び成形品に関し、詳しくは、難燃性及び耐衝撃性に優れたポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物及びその成形品に関する。
近年、電気自動車やプラグインハイブリッド車のように、電動モータを動力源に含む自動車が普及しており、そのような自動車のためのバッテリー充電用の充電スタンドを設置することが推進されており、またバッテリー充電のための電気自動車用充電器コネクタや、あるいはまた電池キャパシタ用ホルダーが利用されてきている。
電気自動車用充電器コネクタあるいは電池キャパシタ用ホルダー、電気自動車用充電スタンド等を構成するための筺体等には高度の難燃性が要求され、金属製のものが多く使用されている。また、これを樹脂化する動きもあり、各種の樹脂が検討されつつある。
なかでも、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、優れた耐熱性、成形性、耐薬品性及び電気絶縁性等エンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有していることから、電気電子部品、自動車部品その他の電装部品、機械部品等に用いられており、これを難燃化する検討がなされている。
ポリブチレンテレフタレート樹脂に難燃性を付与する方法としては、一般的には、ポリブチレンテレフタレート樹脂に、ハロゲン化合物や難燃助剤として三酸化アンチモン(特許文献1参照)を用いた難燃剤を添加することにより、難燃化する方法がよく知られている。また、電気自動車用充電器コネクタ、電池キャパシタ用ホルダー、電池キャパシタ用筐体あるいは電気自動車用充電スタンド用筺体等は、他の電気電子部品と同様に、機器の小型化、軽量化の趨勢から薄肉小型化されてきており、それに利用される成形品も小型化と薄肉化が進展しており、薄肉成形品において高度の難燃性が要求されるが、成形品が薄肉になるほど難燃化の達成は難しくなる。
さらに、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、結晶特性に優れるため、衝撃強度に代表される靭性が不十分であるという課題を有しており、この課題を解決するためにポリマーアロイの研究が従来から行われ、その難燃処方についても各種の提案がなされている。
例えば、特許文献2には、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ハロゲン系難燃剤、難燃助剤およびエステル交換防止剤を構成成分とする難燃性ポリエステル樹脂組成物が開示され、また、特許文献3には、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、エラストマー、難燃剤及び難燃助剤からなる難燃性ポリエステル樹脂組成物が開示されている。さらに、特許文献4には、ポリエステル樹脂、ポリスチレン系ゴム及び難燃剤からなるポリエステル樹脂組成物が開示されている。
しかしながら、電気電子機器分野における要求物性は、益々高度化してきており、高い難燃性と耐衝撃性を有することが求められ、従来の処方では対応が困難になってきている。
特開昭61−66746号公報 特開2007−314664号公報 特開平6−100713号公報 特開2005−112994号公報
本発明の目的は、難燃性及び耐衝撃性に優れたポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物及びその成形品を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリブチレンテレフタレート系樹脂に、ポリカーボネート樹脂、臭素化ポリカーボネート系難燃剤、アンチモン化合物及びエラストマーをそれぞれ特定の量で含有し、さらに硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ホウ酸亜鉛またはシリカを特定の量で含有することにより、難燃性及び耐衝撃性の両方に優れたポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物及びその成形品を提供できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1](A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂を、(A)及び(B)の合計100質量部基準で、(A)を50〜80質量部、(B)を20〜50質量部含有し、さらに、(A)及び(B)の合計100質量部に対し、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤5〜40質量部、(D)アンチモン化合物1〜15質量部、(E)エラストマー5〜20質量部及び(F)硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ホウ酸亜鉛及びシリカからなる群から選ばれる少なくとも1種を0.5〜10質量部含有することを特徴とするポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
[2](B)ポリカーボネート樹脂が、28000を超える粘度平均分子量を有するものである上記[1]に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
[3](A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂の極限粘度が0.9dl/g以上である上記[1]又は[2]に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
[4](E)エラストマーが、アクリル系コア/シェル型グラフト共重合体である上記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
[5](E)エラストマーの平均粒子径が300nm以上である上記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
[6]さらに、(G)滴下防止剤を、前記(A)及び(B)の合計100質量部に対し、0.05〜1質量部含有する上記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を成形してなる成形品。
[8]電気自動車用充電器コネクタ、電池キャパシタ用ホルダー、電池キャパシタ用筐体あるいは電気自動車用充電スタンド用筺体のいずれかである上記[7]に記載の成形品。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、難燃性及び耐衝撃性の両方に優れる。従って、各種の電気電子機器部品、特に電気自動車用充電器コネクタ、電池キャパシタ用ホルダー、電池キャパシタ用筐体あるいは電気自動車用充電スタンド用筺体、電子電気機器部品の筐体、コネクタ、リレー、スィッチ、センサー、アクチュエーター、ターミナルスイッチ、炊飯器関連部品、グリル調理機器部品等に好適に使用することができる。
[発明の概要]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂を、(A)及び(B)の合計100質量部基準で、(A)を50〜80質量部、(B)を20〜50質量部含有し、さらに、(A)及び(B)の合計100質量部に対し、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤5〜40質量部、(D)アンチモン化合物1〜15質量部、(E)エラストマー5〜20質量部及び(F)硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ホウ酸亜鉛及びシリカからなる群から選ばれる少なくとも1種を0.5〜10質量部含有することを特徴とする。
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
以下に記載する各構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定して解釈されるものではない。なお、本明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
[(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を構成する主成分である(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂(以下、「PBT樹脂」と略称することもある。)としては、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有する高分子を示す。即ち、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ホモポリマー)の他に、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位以外の、他の共重合成分を含むポリブチレンテレフタレート共重合体や、ホモポリマーと当該共重合体との混合物を含む。
PBT樹脂は、テレフタル酸以外のジカルボン酸単位を含んでいてもよいが、他のジカルボン酸の具体例としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4,4’−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、1,4−シクロへキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類、および、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
ジオール単位としては、1,4−ブタンジオールの外に他のジオール単位を含んでいてもよいが、他のジオール単位の具体例としては、炭素原子数2〜20の脂肪族又は脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類等が挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオぺンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノ一ル、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノ一ルAのエチレンオキシド付加ジオール等が挙げられる。更に、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオールも挙げられる。
PBT樹脂は、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとを重縮合させたポリブチレンテレフタレート単独重合体が好ましいが、また、カルボン酸単位として、前記のテレフタル酸以外のジカルボン酸1種以上および/又はジオール単位として、前記1,4−ブタンジオール以外のジオール1種以上を含むポリブチレンテレフタレート共重合体であってもよい。PBT樹脂は、機械的性質、耐熱性の観点から、ジカルボン酸単位中のテレフタル酸の割合が、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である。同様に、ジオール単位中の1,4−ブタンジオールの割合が、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である。
また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
PBT樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分又はこれらのエステル誘導体と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、回分式又は通続式で溶融重合させて製造することができる。また、溶融重合で低分子量のポリブチレンテレクタレート樹脂を製造した後、さらに窒素気流下又は減圧下固相重合させることにより、重合度(又は分子量)を所望の値まで高めることができる。
PBT樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、連続式で溶融重縮合する製造法で得られたものが好ましい。
エステル化反応を遂行する際に使用される触媒は、従来から知られているものであってよく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等を挙げることができる。これらの中で特に好適なものは、チタン化合物である。エステル化触媒としてのチタン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等を挙げることができる。
PBT樹脂は、共重合により変性したポリブチレンテレフタレート樹脂であってもよいが、その具体的な好ましい共重合体としては、ポリアルキレングリコール類(特にはポリテトラメチレングリコール(PTMG))を共重合したポリエステルエーテル樹脂や、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、特にはイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が挙げられる。なお、これらの共重合体は、共重合量が、PBT樹脂全セグメント中の1モル%以上、50モル%未満のものをいう。中でも、共重合量が好ましくは2〜50モル%、より好ましくは3〜40モル%、特に好ましくは5〜20モル%である。
そして、これら共重合体の好ましい含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂の総量100質量%中に、10〜70質量%、更には15〜60質量%、特には20〜50質量%である。
PBT樹脂の極限粘度([η])は、0.9dl/g以上であるものが好ましい。極限粘度が0.9dl/gより低いものを用いると、得られる樹脂組成物が耐衝撃性等の機械的強度の低いものとなりやすい。また極限粘度は、1.8dl/g以下であることが好ましく、1.6dl/g以下であることがより好ましく、1.3dl/g以下であることがさらに好ましい。1.8dl/gより高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化する場合がある。なお、極限粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定するものとする。
[(B)ポリカーボネート樹脂]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(B)ポリカーボネート樹脂を含有する。
ポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性重合体又は共重合体である。ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造したものを使用することができる。
原料のジヒドロキシ化合物は、実質的に臭素原子を含まないものであり、芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましい。具体的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
ポリカーボネート樹脂としては、上述した中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される芳香族ポリカーボネート樹脂、又は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導される芳香族ポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーとの共重合体等の、芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体であってもよい。更には、上述したポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、例えば、m−及びp−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、15000以上であることが好ましく、20000以上であることがより好ましく、さらに好ましくは23000以上、特に好ましくは25000以上、特に28000を超えるものであることが最も好ましい。粘度平均分子量が20000より低いものを用いると、得られる樹脂組成物が耐衝撃性等の機械的強度の低いものとなりやすい。また60000以下であることが好ましく、40000以下であることがより好ましく、35000以下であることがさらに好ましい。60000より高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化する場合がある。
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ粘度計を用いて、20℃にて、ポリカーボネート樹脂のメチレンクロライド溶液の粘度を測定し極限粘度([η])を求め、次のSchnellの粘度式から算出される値を示す。
[η]=1.23×10−4Mv0.83
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)及び溶融法(エステル交換法)のいずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、溶融法で製造したポリカーボネート樹脂に、末端のOH基量を調整する後処理を施したポリカーボネート樹脂も好ましい。
(B)ポリカーボネート樹脂の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部基準で、(B)ポリカーボネート樹脂が20〜50質量部であり、好ましくは25質量部以上、より好ましくは30質量部以上であり、好ましくは45質量部以下、より好ましくは43質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。上記下限値を下回ると、本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の耐衝撃性や靭性の改良効果が小さく、さらに、寸法安定性が低下する。また、上記上限値を上回ると流動性が悪くなり成形性が悪化する。
なお、本明細書において、(B)ポリカーボネート樹脂は以下の(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤を包含する意味で使用されるものではなく、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤は(B)ポリカーボネート樹脂とは異なるものとして定義される。
[(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤を含有する。難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤(ポリリン酸メラミン等)、窒素系難燃剤(シアヌル酸メラミン等)、金属水酸化物(水酸化マグネシウム等)等各種のものがあるが、本発明においては、ハロゲン系難燃剤として、臭素系の、しかも臭素化ポリカーボネート系難燃剤を含有することを特徴とする。(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤は、(B)ポリカーボネート樹脂との相溶性がよく、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤が(B)ポリカーボネート樹脂相に存在しやすくなり、耐衝撃性に優れる。
(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤としては、従来より臭素化ポリカーボネート系難燃剤として知られているものが使用でき、具体的には例えば、臭素化ビスフェノールA、特にテトラブロモビスフェノールAから得られる、臭素化ポリカーボネートであることが好ましい。その末端構造は、フェニル基、4−t−ブチルフェニル基や2,4,6−トリブロモフェニル基等が挙げられ、特に、末端基構造に2,4,6−トリブロモフェニル基を有するものが好ましい。
臭素化ポリカーボネート系難燃剤における、カーボネート繰り返し単位数の平均は適宜選択して決定すればよいが、通常、2〜30である。カーボネート繰り返し単位数の平均が小さいと、溶融時に(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂の分子量低下を引き起こす場合がある。逆に大きすぎても(B)ポリカーボネート樹脂の溶融粘度が高くなり、成形体内の分散不良を引き起こし、成形体外観、特に光沢性が低下する場合がある。よってこの繰り返し単位数の平均は、中でも3〜15、特に3〜10であることが好ましい。
臭素化ポリカーボネート系難燃剤の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、好ましくは、粘度平均分子量で1000〜20000、中でも2000〜10000であることが好ましい。なお、臭素化ポリカーボネート系難燃剤の粘度平均分子量は、(B)ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量の測定と同様の方法で求めることができる。
上記臭素化ビスフェノールAから得られる臭素化ポリカーボネート系難燃剤は、例えば、臭素化ビスフェノールとホスゲンとを反応させる通常の方法で得ることができる。末端封鎖剤としては芳香族モノヒドロキシ化合物が挙げられ、これはハロゲン又は有機基で置換されていてもよい。
(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、5〜40質量部であり、好ましくは7質量部以上であり、より好ましくは10質量部以上であり、好ましくは30質量部以下であり、より好ましくは25質量部以下であり、さらに好ましくは20質量部以下である。(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤の含有量が少なすぎると樹脂組成物の難燃性が不十分となり、逆に多すぎても機械的特性、離型性の低下や難燃剤のブリードアウトの問題が生ずる。
なお、本明細書において、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤は、前述した(B)ポリカーボネート樹脂とは別のものであり、(B)ポリカーボネート樹脂に包含されるものではない。
[(D)アンチモン化合物]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(D)アンチモン化合物を含有する。
アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン(Sb)、五酸化アンチモン(Sb)およびアンチモン酸ナトリウムが好ましい例として挙げられる。これらの中でも、耐衝撃性の点から三酸化アンチモンが好ましい。
(D)アンチモン化合物は、樹脂組成物中の(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤由来の臭素原子と、アンチモン化合物由来のアンチモン原子の質量濃度が、両者の合計で3〜25質量%であることが好ましく、4〜22質量%であることがより好ましく、10〜20質量%であることがさらに好ましい。3質量%未満であると難燃性が低下する傾向にあり、20質量%を超えると機械的強度が低下する傾向にある。また、臭素原子とアンチモン原子の質量比(Br/Sb)は、0.3〜5であることが好ましく、0.3〜4であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、難燃性が発現しやすい傾向にあり好ましい。
本発明においては、(D)アンチモン化合物は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹とのマスターバッチとして配合することが好ましい。これにより、(D)アンチモン化合物が、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂相に存在しやすくなり、(B)ポリカーボネート樹脂に対する悪影響が抑制でき、耐衝撃性の低下が抑えられる傾向となる。
マスターバッチ中の(D)アンチモン化合物の含有量は20〜90質量%であることが好ましい。(D)アンチモン化合物が20質量%未満の場合は、難燃剤マスターバッチ中のアンチモン化合物の割合が少なく、これを配合するポリブチレンテレフタレート系樹脂への難燃性向上効果が小さい。一方、アンチモン化合物が90質量%を超える場合は、アンチモン化合物の分散性が低下しやすく、これをポリブチレンテレフタレート系樹脂に配合すると熱可塑性樹脂組成物の難燃性が不安定になり、また難燃剤マスターバッチ製造時の作業性も著しく低下する、例えば、押出機を使用して製造する際に、ストランドが安定せず、切れやすい等の問題が発生しやすいため好ましくない。
マスターバッチ中の(D)アンチモン化合物の含有量は、好ましくは30〜85質量%であり、より好ましくは40〜80質量%、さらに好ましくは50〜75質量%である。
(D)アンチモン化合物の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、1〜15質量部であり、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。上記下限値を下回ると難燃性が低下する。また、上記上限値を上回ると、結晶化温度が低下し離型性が悪化したり、耐衝撃性等の機械的物性が低下する。
[(E)エラストマー]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(E)エラストマーを含有する。(E)エラストマーとしては、ポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂に配合してその耐衝撃性を改良するのに用いられている熱可塑性エラストマーを用いればよく、例えばゴム性重合体やゴム性重合体にこれと反応する化合物を共重合させたものを用いる。
(E)エラストマーの具体例としては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ジエン系共重合体(スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリル・ブタジエンゴム等)、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとの共重合体(エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・オクテン共重合体等)、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(エチレン・メタクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体等)、エチレンと脂肪族ビニル化合物との共重合体、エチレンとプロピレンと非共役ジエンとのターポリマー、アクリルゴム(ポリブチルアクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート共重合体等)、シリコーン系ゴム(ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴム)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
尚、本発明において(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸を意味する。
また(E)エラストマーの他の例としては、ゴム性重合体に単量体化合物を重合した共重合体が挙げられる。この単量体化合物としては例えば、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物等が挙げられる。また、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)も挙げられる。これらの単量体化合物は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
(E)エラストマーとしては、アクリル及び/又はブタジエン成分を含有するエラストマーが好ましく、ブタジエン系及び/又はアクリル系ゴム性重合体にこれと反応する単量体化合物を共重合させたものがより好ましい。
アクリル及び/又はブタジエン成分を含有する耐衝撃性改良剤の具体例としては、例えばアクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリル・ブタジエンゴム、また、これらゴム性重合体に単量体化合物を重合した共重合体が挙げられる。この単量体化合物としては例えば、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物等が挙げられる。また、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)も挙げられる。これらの単量体化合物は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
アクリル及び/又はブタジエン成分を含有するエラストマーは、耐衝撃性改良の点から、コア/シェル型グラフト共重合体タイプのものが好ましく、ブタジエン成分含有ゴム及び/又はアクリル成分含有ゴム性重合体をコア層とし、その周囲にアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物から選ばれる単量体を共重合して形成されたシェル層からなる、コア/シェル型グラフト共重合体が特に好ましい。
コア/シェル型グラフト共重合体の例としては、ブチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体、ブタジエン−メチルメタクリレート・スチレン共重合体、シリコーン・アクリル−メチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン重合体(MBS)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン重合体(MABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン重合体(MB)、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム−スチレン共重合体等が挙げられる。これらのゴム性重合体は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、コア、シェルともにアクリル酸エステルであるアクリル系コア/シェル型のエラストマーが、耐衝撃性、耐熱老化性、耐光性の点から好ましい。
アクリル及び/又はブタジエン成分を含有するエラストマー中のアクリル及び/又はブタジエン成分の含有量は、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは60〜90質量%、さらに好ましくは70〜85質量%ある。アクリル及び/又はブタジエン成分の含有量が50質量%未満であると、耐衝撃性に劣る傾向となり、90質量%を超えると、難燃性や耐候性が悪化する傾向となるため好ましくない。
(E)エラストマーの平均粒子径は、5μm以下であることが好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下であることがさらに好ましく、1μm以下が特に好ましく、800nm以下が最も好ましい。また、下限は通常100nmであり、好ましくは150nm、より好ましくは200nm、さらに好ましくは300nm以上、特に好ましくは400nm、最も好ましくは500nm以上である。このような粒子径のエラストマーを使用することにより、面衝撃性等の耐衝撃性が良好となる傾向にあり好ましい。
なお、(E)エラストマーの平均粒子径は、光学顕微鏡、SEM(走査型電子顕微鏡)、TEM(透過型電子顕微鏡)等により、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物成形体断面のモルフォロジーを観察することで測定できる。
具体的には、SEM、STEM、TEM分析装置を用い、成形体断面のコア部(深さ20μm未満の表層部を除く部分で、断面の中心部、樹脂組成物流動方向に平行な断面。)を、20kVの加速電圧下で、倍率3,000〜100,000倍の倍率により観察される。
また、(E)エラストマーのガラス転移温度は、−30℃以下であることが好ましく、−35℃以下であることがより好ましく、−40℃以下であることがさらに好ましく、−50℃以下であることが特に好ましい。このようなガラス転移温度を有する(E)エラストマー原料を使用することにより、成形体の表層部において、エラストマーの配向によりエラストマーの扁平度(後述のエラストマーの長径と短径の比)が向上しやすく、耐衝撃特性が大幅に良好となる傾向にあり好ましい。
なお、(E)エラストマーのガラス転移温度は、動的粘弾性測定により得られる損失正接(tanδ)のピーク温度を求めることにより測定することができる。具体的には、200℃で加熱した熱プレス機を用いて、(E)エラストマー原料を、0.7mm厚×10cm×10cmの型枠にて3分間プレス成形し、水冷後に0.7mm厚×5.5mm×25mmの測定用試験片を切り出し、50〜−100℃の温度範囲で、昇温速度3℃/min、周波数110Hzの条件で動的粘弾性測定を行い、得られるtanδのピーク温度を求め、ガラス転移温度とする。
本発明の(E)エラストマーとして好ましく用いられるアクリル系コア/シェル型エラストマーの製造方法には乳化重合方法があり、これはコア重合とシェル重合とを含む方法である。
前記コア重合は、アクリル酸エステル単量体を重合して行われ、この時、アクリル酸エステルの分子構造には二重結合が一つ存在するため、重合完了後に二重結合が存在せず、優れた耐候性を示し、またガラス転移温度が低いために良好な耐衝撃性を示す。アクリル酸エステル単量体以外にも、エラストマーとしてゴム構造を形成し、耐衝撃性を付与するため、ならびにガラス転移温度を制御するために一定範囲の架橋剤を用いる。一定範囲にて配合された架橋剤は、重合中のラテックスの安定性を維持させるだけでなく、加工中、ならびに樹脂組成物中でも、コア構造が球形から扁平形態へ容易に変形しやすいように作用する。
前記シェル重合は、通常(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂と相溶性に優れたメタクリル酸エステルを単量体として用い、コア表面でグラフト重合を進行させることによって行われる。エラストマーの分散性を高めるために、シェルはアクリロニトリル単量体を少量含んでいてもよい。
乳化重合によるアクリル系コア/シェル型エラストマーの公知の製造方法には大きく2種類の方法がある。第1の方法は米国特許第5,612,413号に開示されたものであって、粒子の大きさが小さい種(Seed)を重合し、単量体を2〜4工程に分けて投入して種を成長させた後、シェル成分単量体を投入してコア表面を囲うことによってコア・シェル構造を完成させる多段階乳化重合方法である。第2の方法は欧州特許第0527605号に開示されたものであって、100nm以下の大きさのコア・シェル構造を有するラテックスを重合し、凝集過程(Agglomeration)を通じて所望の大きさの粒子に成長させた後、凝集粒子上にカプセル化シェルを形成させることによってコア・シェル構造を形成する微細凝集(Microagglomeration)方法である。
(E)エラストマーのガラス転移温度は、エラストマーの架橋密度が高ければ大きくなり、ゴムの架橋密度が低ければ低くなる。従って、架橋密度の程度はエラストマーを製造する際の架橋剤の使用量によって調整可能であり、架橋剤を極めて少量用いることで、ガラス転移温度の低いエラストマーを製造することができる。しかし、架橋剤の使用量があまりに少ない場合は、重合中にラテックスの安定性が低下するため、ガラス転移温度の制御が困難になる場合があるので、好ましくない。
本発明の好ましいアクリル系コア/シェル型エラストマーは、例えば、種(seed)を重合し、コア成分単量体を2〜4回に分けて重合してコアゴム粒子を成長させた後、シェル成分単量体を投入してシェルでコア表面を囲うことによって製造される、粒径が400〜900nmの大粒径エラストマーである。
このために前記大粒径エラストマーは、それらの各々のコアが、i)アルキル基の炭素数が2〜8であるアクリル酸エステル95〜99.999質量部;及びii)架橋剤0.001〜5.0質量部を含むことが好ましい。
前記アクリル酸エステルは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートからなる群より選択される1種以上の単量体、及びこれら単量体のホモ重合体または共重合体を含むことが好ましく、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、又はこれらの混合物を含むアクリル酸エステルであることがさらに好ましい。
また、前記架橋剤は、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート及びジビニルベンゼンからなる群より選択される1種以上の単量体、及びこれら単量体のホモ重合体または共重合体を用いることが好ましい。1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート又はこれらの混合物を含むことがより好ましい。前記架橋剤は、本発明の各々のエラストマーで全単量体に対して0.001〜5質量部を用いることが好ましい。架橋剤の含有量が全単量体に対して0.001質量部未満であると、加工中のハンドリングが乏しく、5質量部を超えると、エラストマーのコアが脆性を示し、衝撃補強効果が低下する場合がある。
また、前記大粒径エラストマーは、シェルが、i)アルキル基の炭素数が1〜4であるメタクリル酸エステル80〜100質量部を含み、ii)シェル成分のガラス転移温度を調整するために、さらにエチルアクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレートを10質量部以下の割合で添加することができ、iii)マトリックスとシェルとの相溶性を増加させるために、さらにアクリロニトリル、メタクリロニトリルのようなニトリル化合物を10質量部以下の割合で添加することもできる。
また、本発明の好ましいアクリル系コア/シェル型エラストマー(大粒径エラストマー)のコアは、全単量体に対して70〜95質量%のゴム成分単量体を含むことが好ましい。70質量%未満であると、ゴム含有量が小さくなって耐衝撃補強性が低下しやすく、95質量%を超えるとシェル成分がコアを完全に囲うことができないために、マトリックス中のゴムの分散がよく行われなくなり、耐衝撃性が低下する場合がある。
重合後のエラストマーは、電解質で凝析させた後にろ過して得ることでき、前記電解質としては塩化カルシウム等が好ましい。
本発明において好ましく用いられるエラストマーの1つである、低ガラス転移温度及び平均粒子径が大きい、好ましくは400nm以上のアクリル系コア/シェル型エラストマーを製造する工程をより詳細に説明する。その製造方法は以下の工程を主として含む。
前記低ガラス転移温度を有する大粒径エラストマーは、
i)アルキル基の炭素数が2〜8であるアクリル酸エステル95〜99.999質量部;架橋剤0.001〜5質量部;重合開始剤0.001〜5質量部;乳化剤0.001〜10質量部;及びイオン交換水1000質量部;を含む混合物を、60〜80℃の温度で架橋反応させて種(seed)を製造する1次重合工程と、
ii)アルキル基の炭素数が2〜8であるアクリル酸エステル95〜99.999質量部;架橋剤0.001〜5質量部;乳化剤0.001〜6質量部;及びイオン交換水80質量部;を含むエマルジョン混合物を前記i)工程で製造した種に連続投入すると同時に、重合開始剤0.001〜5質量部を投入し重合してコアラバーを製造する2次重合工程と、
iii)アルキル基の炭素数が2〜8であるアクリル酸エステル95〜99.999質量部;架橋剤0.001〜5質量部;乳化剤0.001〜6質量部;及びイオン交換水80質量部;を含むエマルジョン混合物を前記ii)工程で製造した2次重合物に連続投入すると同時に、重合開始剤0.001〜5質量部を投入し重合してコアラバーを製造する3次重合工程と、
iv)アルキル基の炭素数が1〜4であるアクリル酸エステル80〜100質量部;エチルアクリレート、メチルアクリレート及びブチルアクリレートからなる群より選択されるアクリル酸エステル10質量部以下;アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群より選択されるニトリル成分10質量部以下;乳化剤0.001〜4質量部;及びイオン交換水150質量部;を含むエマルジョン混合物を前記iii)段階で製造したコアに連続投入すると同時に、重合開始剤0.001〜5質量部を投入し重合してシェルを形成させる4次重合工程とを含む方法で製造される。
前記大粒径エラストマーの製造に用いられる重合開始剤は、架橋反応を起こすことのできるいかなる化合物も用いることができ、具体的には、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスブチロニトリル、ブチルヒドロパーオキサイド及びクメンヒドロパーオキサイド等を用いることができる。
また、前記大粒径エラストマーの製造に用いられる乳化剤は、不飽和脂肪酸カリウム塩、オレイン酸カリウム塩、ソジウムラウリルスルフェート、ソジウムドデシルベンゼンスルフェート等のイオン系乳化剤と非イオン系乳化剤等を用いることができる。
このようにして製造されたた大粒径エラストマーにイオン交換水を投入し、固形分含有率を10質量%と低くした後、10質量%の塩化カルシウム溶液を混合物に投入してポリマー粒子を凝析させる。凝析スラリーは90℃まで昇温して熟成させ冷却する。その後、冷却されたスラリーをイオン交換水で洗浄しろ過することで、本発明において好ましく用いられる、アクリル系コア/シェル型エラストマーを得ることができる。
(E)エラストマーの含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、5〜20質量部である。(E)エラストマーの含有量が5質量部未満では、耐衝撃性の改良効果が小さく、20質量部を超えると耐熱老化性や剛性、さらには流動性、難燃性が低下しやすい。好ましい(E)エラストマーの含有量は7質量部以上であり、好ましくは16質量部以下、より好ましくは13質量部以下である。
[(F)硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ホウ酸亜鉛及びシリカ]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(F)成分として、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ホウ酸亜鉛及びシリカからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する。このような(F)成分を、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤、(D)アンチモン化合物及び(E)エラストマーをそれぞれ所定の量で共に存在することにより、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂の結晶化が適度に遅延し、高い耐衝撃性を達成することが初めて可能となる。
硫酸バリウムは、バリウムイオンと硫酸イオンからなるイオン結晶性の化合物で、天然のものでも合成によるものでもよく、製造方法、結晶形態および平均粒子径などは、特に限定されるものではない。酸化亜鉛は、組成式ZnOで表される亜鉛の酸化物であり、亜鉛華とも呼ばれる。工業的には金属亜鉛を熱して気化させ、空気で燃焼させるか、硫酸亜鉛または硝酸亜鉛の熱分解で製造される。硫化亜鉛は、組成式ZnSで表される共有結合性の化合物で、白または黄色の粉末または結晶である。天然には閃亜鉛鉱として産出する。ホウ酸亜鉛は、酸化亜鉛とホウ酸とから得ることができ、例えば、ZnO・B・2HOおよび2ZnO・3B・3.5HO等の水和物や無水物が挙げられる。シリカとしては、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ等が用いられる。
これら(F)成分の平均粒子径は、0.01〜10μmであることが好ましく、0.05〜5μmであることがより好ましく、0.1〜3μmであることがさらに好ましい。平均粒子径が0.01μm未満では樹脂組成物製造時の作業性に劣り、10μmを超える場合は、成形品表面に肌荒れを起こしたり、成形品の機械的強度が低下したりしやすい。
これら(F)成分は、例えばオルガノシロキサン系等の各種の表面処理剤で表面処理することも好ましい。表面処理剤での処理量は、(F)成分100質量部に対し、0.1〜6質量部がより好ましく、0.5〜5質量部がさらに好ましく、1〜4質量部が特に好ましい。処理量が、上記下限値未満の場合は、表面処理効果が低く、本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の耐衝撃性が低下する場合がある。また、処理量が、上記上限値を超える場合は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の流動性が低下しやすくなるため好ましくない。
(F)成分としては、特に硫酸バリウム、酸化亜鉛が好ましい。
硫酸バリウムは、天然に産出するものとしては例えば天然重晶石を粉砕したものを使用することができる。また合成によって得られるものとしては公知の合成法により合成された硫酸バリウムを使用することができる。
硫酸バリウムの製造方法は特に限定されず、公知の方法によって製造することができるが、微粒子状の硫酸バリウムを得る方法として、例えば、硫酸ナトリウム水溶液と硫化バリウム水溶液とを反応させる際に、硫酸ナトリウム水溶液中に特定のメタリン酸塩を共存させ、硫化バリウムに対する硫酸ナトリウムのモル比を化学量論的に過剰量存在させて反応させる方法(特開昭47−31898号公報)、硫化バリウム水溶液と硫酸水溶液とを硫化バリウム濃度が過剰となるように連続的にポンプ等の反応槽に導き、撹拌下で反応を行う方法(特開昭57−51119号公報)、硫酸水溶液と特定のバリウム塩水溶液とを正確な化学量論比で別々にかつ同時に噴霧装置に供給して反応させ、生成した沈殿物を含む媒質をあらかじめ濃縮した後に噴霧乾燥する方法(特開平2−83211号公報)等を挙げることができる。
硫酸バリウム中の水分率は、1.5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.8質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。1.5質量%を超えると得られるポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の耐加水分解性や機械的物性が低下する場合がある。なお、硫酸バリウム中の水分率は、JIS K5101により測定される。
硫酸バリウムの平均粒子径には特に制限はないが、通常0.05〜3μmであり、0.1〜2μmであることが好ましく、0.15〜1.5μmであることがより好ましい。硫酸バリウム粒子の平均粒子径を上記範囲のような大きさとすることにより、機械的特性と耐トラッキング性とのバランスに優れやすくなる。
硫酸バリウムは、公知の方法で表面処理されたものであってもよい。表面処理剤としては、公知の有機化合物、無機化合物が挙げられるが、無機化合物が好ましい。
例えば、無機化合物としては、水酸化アルミニウム、アルミナ、シリカ、ジルコニア、水酸化ジルコニウム、ジルコニア水和物、酸化セリウム、酸化セリウム水和物、水酸化セリウム等のアルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、セリウム等の無機酸化物、水酸化物が好ましく挙げられる。また、これらの無機化合物は水和物であってもよい。これらの中でも、水酸化アルミニウム、シリカが好ましく、シリカを用いる場合は、SiO・nH0で表されるシリカ水和物であることが特に好ましい。
また、有機化合物としては、アミン化合物が好ましく、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジクロルヘキシルアミン等のアミン化合物がより好ましい化合物として例示することができる。
硫酸バリウムを表面処理する場合は、無機化合物で表面処理した後、有機化合物で表面処理してもよく、特に、水酸化アルミニウム及び/又はシリカ水和物で表面処理した後、有機化合物で表面処理したものも、好ましく用いられる。
表面処理層の厚さは、特に限定されないが、0.05〜0.5μmであることが好ましく、更に好ましくは、0.1〜0.2μmである。
硫酸バリウムを表面処理する場合は、表面処理された硫酸バリウム中の硫酸バリウムの含有量が、85〜99.5質量%であることが好ましく、88〜99質量%であることがより好ましく、90〜98質量%であることがさらに好ましい。このような硫酸バリウム含有量とすることにより、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物中により微分散しやすく、耐衝撃性が低下しにくい傾向となり好ましい。なお、表面処理された硫酸バリウム中の硫酸バリウム含有量は、JIS K5115により測定される。
(F)成分の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、0.5〜10質量部であり、好ましくは0.7質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは8質量部以下、より好ましくは6質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。(F)成分の含有量が0.05質量部未満であると、耐衝撃性、難燃性の改良効果が十分でなく、10質量部を超えると機械的物性、成形性が低下する。
[(G)滴下防止剤]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(G)滴下防止剤を含有することが好ましい。
(G)滴下防止剤としては、フルオロポリマーが好ましい。
フルオロポリマーとしては、フッ素を有する公知のポリマーを任意に選択して使用できるが、中でもフルオロオレフィン樹脂が好ましい。
フルオロオレフィン樹脂としては、例えば、フルオロエチレン構造を含む重合体や共重合体が挙げられる。その具体例を挙げると、ジフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂等が挙げられる。中でもテトラフルオロエチレン樹脂等が好ましい。このフルオロエチレン樹脂としては、フィブリル形成能を有するフルオロエチレン樹脂が好ましい。
フィブリル形成能を有するフルオロエチレン樹脂としては、例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製「テフロン(登録商標)6J」、ダイキン工業社製「ポリフロン(登録商標)F201L」、「ポリフロンF103」等が挙げられる。
また、フルオロエチレン樹脂の水性分散液として、例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製の「テフロン(登録商標)30J」、ダイキン工業社製「フルオンD−1」、住友スリーエム社製「TF1750」等も挙げられる。さらに、ビニル系単量体を重合してなる多層構造を有するフルオロエチレン重合体も、フルオロポリマーとして使用することができる。その具体例を挙げると、三菱レイヨン社製「メタブレン(登録商標)A−3800」等が挙げられる。
(G)滴下防止剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、0.05〜1質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.12質量部以上、特に好ましくは0.15質量部以上であり、より好ましくは0.6質量部以下、さらに好ましくは0.45質量部以下、特に好ましくは0.35質量部以下である。(G)滴下防止剤の含有量が少なすぎると、樹脂組成物の難燃性が不十分となる可能性があり、逆に多すぎても樹脂組成物の成形品の外観不良や機械的強度の低下が生じる可能性がある。
[その他含有成分]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、安定剤、離型剤、強化充填材、紫外線吸収剤、核剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等が挙げられる。
<安定剤>
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、さらに安定剤を含有することが、熱安定性改良や、機械的強度、透明性や色相の悪化を防止する効果を有するという点で好ましい。安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
安定剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、好ましくは0.001〜1質量部である。安定剤の含有量が0.001質量部未満であると、樹脂組成物の熱安定性や相溶性の改良が期待しにくく、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、1質量部を超えると、過剰量となりシルバーの発生や、色相悪化が更に起こりやすくなる傾向がある。安定剤の含有量は、より好ましくは0.001〜0.7質量部であり、更に好ましくは、0.005〜0.6質量部である。
安定剤としては、リン系安定剤およびフェノール系安定剤が好ましい。特に、リン系安定剤を含有すると、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂と(B)ポリカーボネート樹脂と(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤との相互の相溶性を格段に向上させることができ、耐衝撃性等の機械的特性が良好となる傾向にあり好ましい。
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられ、中でも有機リン酸エステル化合物が好ましい。
有機リン酸エステル化合物は、リン原子にアルコキシ基又はアリールオキシ基が1〜3個結合した部分構造を有するものである。なお、これらのアルコキシ基やアリールオキシ基には、さらに置換基が結合していてもよい。好ましくは、下記一般式(1)〜(5)のいずれかで表される有機リン酸エステル化合物を用いる。有機リン酸エステル化合物は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して、アルキル基又はアリール基を表す。Mはアルカリ土類金属又は亜鉛を表す。
一般式(2)中、Rはアルキル基又はアリール基を表し、Mはアルカリ土類金属又は亜鉛を表す。
一般式(3)中、R〜R11は、それぞれ独立して、アルキル基又はアリール基を表す。M’は3価の金属イオンとなる金属原子を表す。
一般式(4)中、R12〜R14は、それぞれ独立して、アルキル基又はアリール基を表す。M’は3価の金属イオンとなる金属原子を表し、2つのM’それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
一般式(5)中、R15はアルキル基又はアリール基を表す。nは0〜2の整数を表す。なお、nが0のとき3つのR15は同一でも異なっていてもよく、nが1のとき2つのR15は同一でも異なっていてもよい。
一般式(1)〜(5)中、R〜R15は、通常は炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基である。滞留熱安定性、耐薬品性、耐湿熱性等の観点からは、炭素数2〜25のアルキル基であるのが好ましく、更には炭素数6〜23のアルキル基であるのが最も好ましい。アルキル基としては、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。また、一般式(1)、(2)のMは亜鉛であるのが好ましく、一般式(3)、(4)のM’はアルミニウムであるのが好ましい。
有機リン酸エステル化合物の好ましい具体例としては一般式(1)の化合物としてはビス(ジステアリルアシッドホスフェート)亜鉛塩、一般式(2)の化合物としてはモノステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩、一般式(3)の化合物としてはトリス(ジステアリルアッシドホスフェート)アルミニウム塩、一般式(4)の化合物としては1個のモノステアリルアッシドホスフェートと2個のモノステアリルアッシドホスフェートアルミニウム塩との塩、一般式(5)の化合物としてはモノステアリルアシッドホスフェートやジステアリルアシッドホスフェート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、また混合物として用いてもよい。
有機リン酸エステル化合物としては、エステル交換抑制効果が非常に高く、成形加工時の熱安定性がよく成形性に優れ、射出成形機での計量部の設定温度を高めに設定することが可能となって成形が安定すること、また耐加水分解性、耐衝撃性が優れる観点から、前記一般式(1)で表される有機リン酸エステル化合物の亜鉛塩であるビス(ジステアリルアシッドホスフェート)亜鉛塩、前記一般式(2)で表される有機リン酸エステル化合物の亜鉛塩であるモノステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩等のステアリルアシッドホスフェートの亜鉛塩を用いるのが好ましい。これらの市販のものとしては、城北化学工業製「JP−518Zn」等がある。
有機リン酸エステル化合物の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、好ましくは0.001〜1質量部である。含有量が0.001質量部未満であると、樹脂組成物の熱安定性や相溶性の改良が期待しにくく、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、1質量部を超えると、過剰量となりシルバーの発生や、色相悪化が更に起こりやすくなる傾向がある。有機リン酸エステル化合物の含有量は、より好ましくは0.01〜0.8質量部であり、更に好ましくは、0.05〜0.7質量部、特に好ましくは0.1〜0.5質量部である。
フェノール系安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−ネオペンチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等が挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリト−ルテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
フェノール系安定剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、好ましくは0.001〜1質量部である。含有量が0.001質量部未満であると、樹脂組成物の熱安定性や相溶性の改良が期待しにくく、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、1質量部を超えると、過剰量となりシルバーの発生や、色相悪化が更に起こりやすくなる傾向がある。フェノール系安定剤の含有量は、より好ましくは0.001〜0.7質量部であり、更に好ましくは、0.005〜0.5質量部である。
<離型剤>
本発明における樹脂組成物は、金型からの離型性をさらに高めるという点から、離型剤を配合することが好ましい。離型剤としては、ポリブチレンテレフタレート系樹脂に通常使用される既知の離型剤が利用可能であるが、中でも、ブリードアウトしにくく高い離型性を発現する点で、ポリオレフィン系化合物、脂肪酸エステル系化合物及びシリコーン系化合物から選ばれる1種以上の離型剤が好ましく、耐衝撃性の点からポリオレフィン系化合物の離型剤がより好ましい。
ポリオレフィン系化合物としては、パラフィンワックス及びポリエチレンワックスから選ばれる化合物が好ましく挙げられ、中でも、ポリオレフィン系化合物の分散が良好であるという点から、質量平均分子量が、700〜10000、更には900〜8000のポリエチレンワックスが好ましい。
また、本発明においては、ポリオレフィン系化合物は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂と親和性のある官能基を付与されていないものが好ましいが、カルボキシル基(カルボン酸(無水物)基、即ちカルボン酸基および/又はカルボン酸無水物基を表す。以下同様。)、ハロホルミル基、エステル基、カルボン酸金属塩基、水酸基、アルコシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基等の、ポリブチレンテレフタレート系樹脂と親和性のある官能基を付与されたものも使用できる。この濃度は、ポリオレフィン系化合物の酸価として、5mgKOH/gを超えて50mgKOH/g未満が好ましく、中でも10〜40mgKOH/g、さらには15〜30mgKOH/g、特に20〜28mgKOH/gであることが好ましい。
また、揮発分が少なく、同時に離型性の改良効果も著しい点で、ポリオレフィン系化合物としては、酸化ポリエチレンワックスを使用することもできる。
なお、酸価は、0.5mol KOHエタノール溶液による電位差滴定法(ASTM D1386)に従って測定することができる。
また、ポリオレフィン化合物系離型剤は、その滴点が100℃以下であるものが好ましく、より好ましくは90℃以下である。またその下限は通常50℃、好ましくは60℃である。滴点が50℃未満であると、成形品を射出成形する前の予備乾燥時に離型剤がブリードしやすく、ペレット同士が融着する場合があり好ましくない。また、滴点が100℃を超えると離型効果が低下しやすいため、好ましくない。
なお、滴点は、ASTM D127に準拠した方法により測定することができる。具体的には、金属ニップルを用いて、溶融したワックスが金属ニップルから最初に滴下するときの温度として測定される。
脂肪酸エステル系化合物としては、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類等の脂肪酸エステル類やその部分鹸化物等が挙げられ、中でも、炭素数11〜28、好ましくは炭素数17〜21の脂肪酸で構成されるモノ又はジ脂肪酸エステルが好ましい。具体的には、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリン−12−ヒドロキシモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ぺンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリストールジステアレート等が挙げられる。
また、シリコーン系化合物としては、ポリブチレンテレフタレートとの相溶性等の点から、変性されている化合物が好ましい。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖に有機基を導入したシリコーンオイル、ポリシロキサンの両末端および/又は片末端に有機基を導入したシリコーンオイル等が挙げられる。導入される有機基としては、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、フェノール基等が挙げられ、好ましくはエポキシ基が挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖にエポキシ基を導入したシリコーンオイルが特に好ましい。
離型剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対して、好ましくは、0.01〜3質量部である。0.01質量部未満であると、溶融成形時の離型不良により表面外観が低下する傾向がある。一方、3質量部を超えると、樹脂組成物の練り込み作業性が低下し、また、成形時にガスが発生しやすく、樹脂流動末端部でのガス焼けや、成形品表面に曇りが見られる場合がある。離型剤の含有量は、より好ましくは0.07〜1.2質量部、さらに好ましくは0.1〜1.0質量部である。
<紫外線吸収剤>
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、耐光性改良効果を有する点から、さらに紫外線吸収剤を含有することも好ましい。特に、上記したリン系安定剤及び/またはフェノール系安定剤と併用することにより、耐光性がより向上しやすい傾向にある。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物等の有機紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの中では、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤またはマロン酸エステル系紫外線吸収剤がより好ましく、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が特に好ましい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が挙げられ、なかでも2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が好ましく、特に2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
トリアジン系紫外線吸収剤の具体例としては、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシエトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
マロン酸エステル系紫外線吸収剤の具体例としては、2−(アルキリデン)マロン酸エステル類、特に2−(1−アリールアルキリデン)マロン酸エステル類が挙げられ、このようなマロン酸エステル系紫外線吸収剤としては、具体的には例えば、クラリアント社製「PR−25」、BASF社製「B−CAP」等が挙げられる。
紫外線吸収剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、また、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下、さらに好ましくは0.6質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、耐光性の改良効果が不十分となる可能性があり、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性がある。
<顔料>
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、着色性、耐候性改良効果を有する点から、さらに顔料を含有することも好ましい。顔料としては、例えば、無機顔料(カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック等)等の黒色顔料、酸化鉄赤等の赤色顔料、モリブデートオレンジ等の橙色顔料、有機顔料(黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料等)等が挙げられる。なかでも、着色性、耐候性効果の点から、カーボンブラックが好ましい。
顔料の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対して、好ましくは、0.05〜5質量部である。0.05質量部未満であると、所望の色が得られなかったり、耐候性改良効果が十分でない場合があり、5質量部を超えると機械的物性が低下する場合がある。顔料の含有量は、より好ましくは0.05〜4質量部、さらに好ましくは0.1〜3質量部である。
特に、本発明においては、カーボンブラックを配合した場合に発生する、カーボンブラックの凝集等による成形品ウエルド部や成形品段差部等における外観不良が、(F)硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ホウ酸亜鉛又はシリカを配合することによって改善されることが明らかとなった。これは、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の混合樹脂に、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤、(D)アンチモン化合物及び(E)エラストマーを特定量含有する樹脂組成物に特有に確認される効果であり、顕著な効果である。
<強化充填材>
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、強化充填材を含有してもよいが、高い耐衝撃性が必要な場合は、強化充填材は含有しないことが好ましい。強化充填材を含有する場合は、樹脂に配合することにより得られる樹脂組成物の機械的性質を向上させる効果を有する強化充填材が好ましく、常用のプラスチック用無機充填材を用いることができる。好ましくはガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム繊維等の繊維状の充填材を用いることができる。また炭酸カルシウム、酸化チタン、長石系鉱物、クレー、有機化クレー、ガラスビーズ等の粒状又は無定形の充填材;タルク等の板状の充填材;ガラスフレーク、マイカ、グラファイト等の鱗片状の充填材を用いることもできる。なかでも、機械的強度、剛性および耐熱性の点からガラス繊維を用いるのが好ましい。
なお、結晶化速度向上の目的で核剤としてタルク等の充填材を使用する場合は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対して1質量%以下、好ましくは0.6質量部以下の量で配合してもよい。
強化充填材は、カップリング剤等の表面処理剤によって、表面処理されたものを用いることがより好ましい。表面処理剤が付着したガラス繊維は、耐久性、耐湿熱性、耐加水分解性、耐ヒートショック性に優れるので好ましい。
表面処理剤としては、従来公知の任意のものを使用でき、具体的には、例えば、アミノシラン系、エポキシシラン系、アリルシラン系、ビニルシラン系等のシラン系カップリング剤が好ましく挙げられる。
これらの中では、アミノシラン系表面処理剤が好ましく、具体的には例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい例として挙げられる。
また、表面処理剤として、ノボラック型等のエポキシ樹脂、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂等も好ましく挙げられる。中でもノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
シラン系表面処理剤とエポキシ樹脂は、それぞれ単独で用いても複数種で用いてもよく、両者を併用することも好ましい。
強化充填材の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、好ましくは0〜100質量部である。強化充填材の含有量が100質量部を上回ると、流動性が低下するので好ましくない。強化充填材のより好ましい含有量は、5〜90質量部であり、中でも15〜80質量部、さらに好ましくは30〜80質量部、特には40〜70質量部である。
また、本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を、本発明の効果を損わない範囲で含有することができる。その他の熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン等が挙げられる。
[樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の製造方法としては、樹脂組成物調製の常法に従って行うことができる。通常は各成分及び所望により添加される種々の添加剤を一緒にしてよく混合し、次いで一軸又は二軸押出機で溶融混練する。また各成分を予め混合することなく、ないしはその一部のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練し、本発明の樹脂組成物を調製することもできる。さらには、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂又は(B)ポリカーボネート樹脂の一部に他の成分の一部を配合したものを溶融混練してマスターバッチを調製し、次いでこれに残りの他の成分を配合して溶融混練してもよい。
上述したように、本発明においては、(D)アンチモン化合物を熱可塑性樹脂、好ましくは(A)ポリブチレンテレフタレート系樹とのマスターバッチとして配合することが、溶融混練、成形加工時等の熱安定性や難燃性、耐衝撃性のばらつきが少なく良好である点から好ましい。
マスターバッチ化する方法は、特に制限はないが、熱可塑性樹脂とアンチモン化合物を溶融混練する方法が挙げられる。溶融混練の方法としては、単軸又は二軸押出機型混練機、混練ロールもしくはカレンダーロールなどの連続式混練機、又は、加圧ニーダー、バンバリーミキサーなどの公知の混練機を用いる方法等が挙げられる。中でも二軸押出機を使用することが好ましい。
熱可塑性樹脂と(D)アンチモン化合物を溶融混練してマスターバッチ化する際には、必要に応じて安定剤等の各種の添加剤を配合することもできる。
アンチモン化合物マスターバッチの配合は、得られるポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物中のアンチモン化合物の含有量が、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物全体100質量%において、0.5〜10質量%であるように配合することが好ましく、より好ましくは0.7〜9質量%、さらに好ましくは1〜8質量%、特には1.5〜7質量%、最も好ましくは2〜6質量%である。
(D)アンチモン化合物をマスターバッチで配合する場合は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤、(E)エラストマー及び他の所望の成分を、それぞれ所望の割合で押出機等の混練機にフィードするが、この際、アンチモン化合物マスターバッチは、他の原料とは別に設けた専用のフィーダーから押出機に供給することが好ましい。アンチモン化合物マスターバッチは、(A)〜(C)、(E)成分及び他の所望の添加剤と混合して同じフィーダーから供給するのではなく、独立した専用のフィーダーから供給することが、分級が抑制され、難燃性、耐衝撃性が良好となり、ばらつきも少ない点から好ましい。
アンチモンバスターバッチを専用のフィーダーから供給する場合は、押出機のホッパーに、専用のフィーダーから他の原料と同時にフィードしてもよいし、押出機の途中にフィードしてもよい。押出機の途中にフィードする場合は、ニーディングゾーンよりもホッパー側にフィードすることが好ましい。
溶融混練に際しての加熱温度は、通常220〜300℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、不透明化の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。混練り時や、後行程の成形時の分解を抑制する為、酸化防止剤や熱安定剤の使用が望ましい。
なお、ガラス繊維等の繊維状の強化充填材を用いる場合には、押出機のシリンダー途中のサイドフィーダーから供給することも好ましい
上記の方法で得られる本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、UL94に準拠した厚み1.5mmの難燃性がV−0、UL94 5V試験に準拠した厚み3.0mmの難燃性が5VA判定であることが好ましい。また、ノッチ付きシャルピー衝撃強度が30kJ/m以上であることが好ましく、40kJ/m以上であることがより好ましい。面衝撃強度は、成形品が全破壊するときの高さが80cm以上であることが好ましく、90cm以上であることがより好ましく、100cm以上であることがさらに好ましい。なお、難燃性、耐衝撃性の評価方法は、後述の実施例に記載の通りである。
[成形品]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を成形した成形品は、電気電子部品、自動車部品その他の電装部品、機械部品、調理器具等の家電製品の部品として、例えば、電気自動車用充電器コネクタ、電池キャパシタ用ホルダー、電池キャパシタ用筐体あるいは電気自動車用充電スタンド用筺体、電子電気機器部品の筐体、コネクタ、リレー、スィッチ、センサー、アクチュエーター、ターミナルスイッチ、炊飯器関連部品、グリル調理機器部品等に好適に使用でき、特には電気自動車用充電器コネクタ、電池キャパシタ用ホルダー、電池キャパシタ用筐体あるいは電気自動車用充電スタンド用筺体として好適に使用できる。
電気自動車用充電器コネクタは、蓄電量が低下した場合に充電器を備えた設備において充電することになるが、当該設備で使用する電気自動車用充電器の接触式コネクタである。電池キャパシタ用ホルダーは、充電器(バッテリー)とは別に非常用補助電源としての大容量キャパシタを保持するホルダーである。電池キャパシタ用筐体は、上記キャパシタを構成する筐体である。また、電気自動車用充電スタンド用筺体は、100Vあるいは200Vの交流電源から電気自動車のバッテリーに充電するためのスタンドを構成する筺体である。
これら成形品の形状、大きさ、厚み等は任意である。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を用いて上記成形品を製造する方法は、特に限定されず、ポリエステル樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられる。中でも射出成形が好ましい。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
以下の実施例および比較例において、使用した成分は、以下の表1の通りである。
(実施例1〜5、比較例1〜6)
表1に示す各成分を表2に示す割合(全て質量部)にて、タンブラーミキサーで均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX−30α」、L/D=52)を使用し、バレル設定温度250℃、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練した樹脂組成物を、水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物のペレットを得た。なお、(D)アンチモン化合物は、三菱エンジニアリングプラスチックス社製ポリブチレンテレフタレート樹脂「ノバデュラン(登録商標)5020」50質量%と、三菱エンジニアリングプラスチックス社製ポリブチレンテレフタレート樹脂「ノバデュラン(登録商標)5008」50質量%の混合物をベース樹脂としたアンチモン化合物のマスターバッチとして配合した(マスターバッチ中の(D)アンチモン化合物の含有量は70質量%)。
得られたペレットの特性は、射出成形機(日精樹脂工業社製、NEX80−9E)を用いてシリンダー温度250℃、金型温度80℃、冷却時間15秒の条件で射出成形した試験片について、評価した。なお、成形に際して、樹脂組成物はその直前まで120℃にて6〜8時間乾燥した。
(1)難燃性
UL94試験用試験片(125mm×12.5mm×1.5mmt)を成形し、UL94規格に準拠して、V−0、V−1、V−2の判定をした。
また、UL94 5V Bar試験用試験片(125mm×12.5mm×3.0mmt)及び5V Plate試験用試験片(150mm×150mm×3.0mmt)を成形し、UL94 5V試験に準拠して、5VA、5VBの判定を行った。
(2)衝撃特性
・ノッチ付シャルピー衝撃強度:
ISO多目的試験片(厚さ4.0mm)を射出成形し、ISO179規格に準拠して試験片から厚さ4.0mmのノッチ付試験片を作製し、ノッチ付シャルピー衝撃強度(単位:kJ/m)を測定した。
・面衝撃強度:
大きさ150×80×40mmの箱型成形品(肉厚1.5mmt)を成形し、2.975kgの鋼球を所定の高さから落下させ、成形品が全破壊するときの高さ(単位:cm)を求めた。全破壊するときの高さが高いほど、面衝撃性に優れているといえる。なお、試験は105cmの高さまで行い、105cmで破壊しないものを「>100」と表中に記載した。
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、難燃性及び耐衝撃性に優れた樹脂組成物であるので、各種の電気電子機器部品、自動車用部品、その他の電装部品、機械部品、調理器具等の家電製品用として、特に、電気自動車用充電器コネクタ、電池キャパシタ用ホルダー、電池キャパシタ用筐体あるいは電気自動車用充電スタンド用筺体に好適であり、産業上の利用性は非常に高いものがある。

Claims (8)

  1. (A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂を、(A)及び(B)の合計100質量部基準で、(A)を55〜80質量部、(B)を20〜45質量部含有し、さらに、(A)及び(B)の合計100質量部に対し、(C)臭素化ポリカーボネート系難燃剤5〜40質量部、(D)アンチモン化合物1〜15質量部、(E)エラストマー5〜20質量部、及び、(F)硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ホウ酸亜鉛及びシリカからなる群から選ばれる少なくとも1種を0.5〜10質量部含有することを特徴とするポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
  2. (B)ポリカーボネート樹脂が、28000を超える粘度平均分子量を有するものである請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
  3. (A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂の極限粘度が0.9dl/g以上である請求項1又は2に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
  4. (E)エラストマーが、アクリル系コア/シェル型グラフト共重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
  5. (E)エラストマーの平均粒子径が300nm以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
  6. さらに、(G)滴下防止剤を、前記(A)及び(B)の合計100質量部に対し、0.05〜1質量部含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を成形してなる成形品。
  8. 電気自動車用充電器コネクタ、電池キャパシタ用ホルダー、電池キャパシタ用筐体あるいは電気自動車用充電スタンド用筺体のいずれかである請求項7に記載の成形品。
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