以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
第1実施形態に係る制御モジュール100は、車両50に設けられる熱交換ユニット10の制御を行うための装置として構成されている。制御モジュール100の説明に先立ち、先ず熱交換ユニット10の構成について説明する。図1及び図2に示されるように、熱交換ユニット10は複数の熱交換器(室外用熱交換器740とラジエータ31)や装置(シャッタ装置20等)を組み合わせてユニット化したものである。熱交換ユニット10は、車両50のエンジンルームER内に設置されている。尚、熱交換ユニット10は、本実施形態のように複数の熱交換器を備える構成であってもよいが、熱交換器を1つだけ備える構成であってもよい。
室外用熱交換器740は、後に説明する車両用空調装置70(図5を参照)の一部を成すものである。室外用熱交換器740は、フロントグリルGRの開口OPからエンジンルームER内に導入された空気と、車両用空調装置70を循環する空調用の冷媒との間での熱交換を行うための熱交換器として構成されている。上記の冷媒は、室外用熱交換器740の内部を通過して熱交換に供される「熱媒体」に該当する。
ラジエータ31は、フロントグリルGRの開口OPからエンジンルームER内に導入された空気と、内燃機関であるエンジン51を冷却するための冷却水との間で熱交換を行い、これにより冷却水の温度を低下させるための熱交換器である。上記の冷却水は、ラジエータ31の内部を通過して熱交換に供される「熱媒体」に該当する。
ラジエータ31は、室外用熱交換器740の後方側となる位置に配置されている。このため、フロントグリルGRの開口OPからエンジンルームER内に導入された空気は、上記のように室外用熱交換器740を通って冷媒との熱交換に供された後、ラジエータ31を通って冷却水との間の熱交換に供される。
熱交換ユニット10は、上記のラジエータ31及び室外用熱交換器740に加えて、シャッタ装置20と、電動ファン40と、シュラウド43と、電動膨張弁730と、温水弁32と、を備えている。
シャッタ装置20は、開口OPからエンジンルームER内に流入する空気の流量を調整し、これにより室外用熱交換器740等を通過する空気の流量を調整するための装置である。このようなシャッタ装置20は、所謂「グリルシャッタ」と称されるものである。
シャッタ装置20は、シャッタブレード21と、シャッタアクチュエータ22とを有している。シャッタブレード21は、室外用熱交換器740よりも前方側となる位置において、複数並ぶように配置された板状の部材である。シャッタブレード21が回転してその開度が変化すると、フロントグリルGR及びシャッタ装置20を通過する空気の流量が変化し、室外用熱交換器740及びラジエータ31のそれぞれを通る空気の流量が変化する。尚、シャッタブレード21の上記開度のことを、以下では「シャッタ装置20の開度」とも表記する。
シャッタアクチュエータ22は、シャッタブレード21を回転させ、その開度を調整するための電動の駆動装置である。シャッタアクチュエータ22は、シャッタブレード21の近傍に設けられている。シャッタアクチュエータ22の動作は後述の制御モジュール100によって制御される。
電動ファン40は、室外用熱交換器740及びラジエータ31に向けて空気を送り込み、これらを通過する空気の流れを作り出すための電動のファンである。電動ファン40は、ラジエータ31よりも後方側となる位置に配置されている。電動ファン40は、空気の流れを作り出すための回転翼41と、回転翼41を回転させるための回転電機であるファンモータ42とによって構成されている。ファンモータ42の回転数(単位時間当たりの回転数である。以下同様)が変化すると、フロントグリルGRから流入し室外用熱交換器740及びラジエータ31を通る空気の流量が変化する。
電動ファン40は、単位時間あたりにおける回転翼41の回転数を測定するためのセンサ(不図示)を備えている。このようなセンサとしては、例えば電動ファン40に内蔵されたホールセンサ等が挙げられる。当該センサで測定された回転数は、制御モジュール100に送信される。尚、ファンモータ42や回転翼41の回転数のことを、以下では「電動ファン40の回転数」とも表記する。また、ファンモータ42や回転翼41の回転方向のことを、以下では「電動ファン40の回転方向」とも表記する。
本実施形態における電動ファン40は、上記のようにフロントグリルGR側からラジエータ31側に向けて空気を送り込むような回転方向(以下では「正回転方向」とも称する)に回転翼41を回転させることができるほか、正回転方向とは反対の方向(以下では「逆回転方向」とも称する)に回転翼41を回転させることもできる。正回転方向及び逆回転方向のいずれにも回転翼41を回転させることが容易にできるように、本実施形態におけるファンモータ42はブラシレスタイプの回転電機として構成されている。ファンモータ42の回転数及び回転方向は、いずれも制御モジュール100によって制御される。
図1では、回転翼41が正回転方向に回転しているときにおいて空気の流れる方向が矢印AR1で示されている。また、回転翼41が逆回転方向に回転しているときにおいて空気の流れる方向が矢印AR2で示されている。
シュラウド43は、電動ファン40の周囲を後方側から覆うように設けられた部材である。電動ファン40によって送り込まれる空気は、シュラウド43によって室外用熱交換器740及びラジエータ31に効率よく導かれる。
図3に示されるように、電動ファン40のファンモータ42には、ファンモータ42を動作させるための回路基板BDが設けられている。回路基板BDには、ファンモータ42を動作させるために必要な構成部品の他、本実施形態に係る制御モジュール100の構成部品も配置されている。つまり、本実施形態に係る制御モジュール100は電動ファン40と一体に構成されている。尚、図3においては、電動ファン40が有する回転翼41の図示が省略されている。
電動膨張弁730は、室外用熱交換器740と共に、車両用空調装置70の一部を成す装置である。後に説明するように、電動膨張弁730は、冷凍サイクルにおいて冷媒の圧力を低下させる膨張弁として機能するものである。電動膨張弁730の開度は制御モジュール100によって制御される。電動膨張弁730によって、室外用熱交換器740を通る経路で循環する冷媒の流れが調整される。
温水弁32は、ラジエータ31とエンジン51との間で冷却水が循環する流路310(図4を参照)の途中に設けられた電動の開閉弁である。本実施形態では、温水弁32はラジエータ31と隣接する位置に設けられている。温水弁32が閉状態になると、ラジエータ31に対する冷却水の供給が停止される。温水弁32の動作は制御モジュール100によって制御される。
エンジン51を冷却するための構成について、図4を参照しながら説明する。同図に示されるように、流路310は冷却水を循環させるために環状に配置された配管である。ラジエータ31及びエンジン51は、これから説明するウォーターポンプ320等と共に、この流路310に沿って配置されている。
ウォーターポンプ320は、冷却水を圧送し流路310において循環させるための装置である。ウォーターポンプ320は、流路310のうちエンジン51よりも下流側であり、且つラジエータ31よりも上流側となる位置に配置されている。ウォーターポンプ320により圧送された冷却水が流路310を循環する経路が、複数の矢印で示されている。ウォーターポンプ320の動作は制御モジュール100によって制御される。
温水弁32は、流路310のうちラジエータ31よりも下流側であり、且つエンジン51よりも上流側となる位置に配置されている。流路310における冷却水の循環が停止される際には、ウォーターポンプ320の動作が停止されるとともに、温水弁32が閉状態とされる。これにより、ラジエータ31の中にある低温の冷却水が、エンジン51側に流れてしまうことが防止される。尚、流路310には、冷却水がラジエータ31をバイパスする経路で流れるようなバイパス流路が設けられていてもよい。
流路310のうち、エンジン51よりも僅かに下流側となる位置には、温度センサ330が設けられている。温度センサ330は、エンジン51を通る冷却水の温度を測定するためのセンサである。温度センサ330で測定された冷却水の温度は、制御モジュール100へと送信される。尚、流路310において温度センサ330が設けられている位置は、上記とは異なる位置であってもよい。
車両用空調装置70の構成について、図5を参照しながら説明する。車両用空調装置70は、冷媒が循環する冷凍サイクルとして構成されている。車両用空調装置70は、冷媒流路710と、コンプレッサ720と、電動膨張弁750と、室内用熱交換器760と、電動膨張弁730と、室外用熱交換器740と、を備えている。図5に示されるように、車両用空調装置70はその一部(室外用熱交換器740等)が車両50のエンジンルームER内に配置されており、他部(室内用熱交換器760等)が車両50の車室IR内に配置されている。
冷媒流路710は、冷媒を循環させるために環状に配置された配管である。これから説明するコンプレッサ720等は、いずれもこの冷媒流路710に沿って配置されている。
コンプレッサ720は、冷媒を圧送し冷媒流路710において循環させるための装置である。コンプレッサ720が駆動されているときには、コンプレッサ720において圧縮され高温高圧となった冷媒が電動膨張弁750側に向けて送り出される。
電動膨張弁750は、冷媒流路710のうちコンプレッサ720よりも下流側となる位置に設けられている。電動膨張弁750は、当該位置において冷媒流路710の流路断面積を絞ることにより、通過する冷媒の圧力を低下させるものである。電動膨張弁750は不図示の電動アクチュエータによって不図示の弁体を動作させ、その開度を変化させる。
冷媒流路710のうち電動膨張弁750の近傍となる位置には、電動膨張弁750を迂回するように冷媒を流すためのバイパス流路751が設けられている。バイパス流路751の途中には電磁開閉弁752が設けられている。電磁開閉弁752が閉状態のときには、冷媒は電動膨張弁750を通る経路で冷媒流路710を循環する。電磁開閉弁752が開状態のときには、冷媒は電動膨張弁750を殆ど通らず、バイパス流路751を通る経路で冷媒流路710を循環する。
室内用熱交換器760は、冷媒流路710のうち電動膨張弁750よりも下流側となる位置に設けられている。室内用熱交換器760は、車室IRに吹き出される空気と、冷媒流路710を循環する冷媒との間で熱交換を行うための熱交換器である。車両用空調装置70は、室内用熱交換器760において空気を加熱又は冷却することにより車室IR内の空調を行う。
室内用熱交換器760は、冷媒を貯える一対のタンクの間を、冷媒の流路が形成された複数のチューブによって繋いだ構成となっている。それぞれのチューブの間にはフィンが配置されている。室内用熱交換器760では、チューブ間を通過する空気と、チューブ内の流路を通る冷媒との間で熱交換が行われる。室外用熱交換器740の構成もこれと同様である。このような室外用熱交換器740や室内用熱交換器760の構成としては公知のものを採用し得るので、その具体的な図示や説明については省略する。
電動膨張弁730は、既に述べたように熱交換ユニット10の一部を成すものであって、冷媒流路710のうち室内用熱交換器760よりも下流側となる位置に設けられている。電動膨張弁730は、当該位置において冷媒流路710の流路断面積を絞ることにより、通過する冷媒の圧力を低下させるものである。電動膨張弁730は不図示の電動アクチュエータによって不図示の弁体を動作させ、その開度を変化させる。
冷媒流路710のうち電動膨張弁730の近傍となる位置には、電動膨張弁730を迂回するように冷媒を流すためのバイパス流路731が設けられている。バイパス流路731の途中には電磁開閉弁732が設けられている。電磁開閉弁732が閉状態のときには、冷媒は電動膨張弁730を通る経路で冷媒流路710を循環する。電磁開閉弁732が開状態のときには、冷媒は電動膨張弁730を殆ど通らず、バイパス流路731を通る経路で冷媒流路710を循環する。
室外用熱交換器740は、既に述べたように熱交換ユニット10の一部を成すものである。室外用熱交換器740は、冷媒流路710のうち電動膨張弁730よりも下流側となる位置であり、コンプレッサ720よりも上流側となる位置に設けられている。
車両用空調装置70によって車室IR内の暖房が行われる際には、電磁開閉弁732が閉状態に切り換えられ、電磁開閉弁752が開状態に切り換えられる。冷媒は、電動膨張弁730を通る経路で冷媒流路710を循環し、電動膨張弁730を通る際においてその温度及び圧力を低下させる。つまり、車室IR内の暖房が行われる際には、電動膨張弁730は冷凍サイクルの「膨張弁」として機能する。
室外用熱交換器740には、電動膨張弁730を通過した低温低圧の冷媒が供給される。室外用熱交換器740では、低温の冷媒によって空気からの吸熱が行われ、これにより内部で冷媒が蒸発する。つまり、車室IR内の暖房が行われる際には、室外用熱交換器740は冷凍サイクルの「蒸発器」として機能する。
室外用熱交換器740を通過した冷媒は、コンプレッサ720において圧縮され、その温度及び圧力を上昇させた状態で下流側に送り出される。高温高圧となった冷媒は、バイパス流路751を経て室内用熱交換器760に供給される。
室内用熱交換器760では、冷媒から空気への放熱が行われ、これにより内部で冷媒が凝縮する。つまり、車室IR内の暖房が行われる際には、室内用熱交換器760は冷凍サイクルの「凝縮器」として機能する。空気は、室内用熱交換器760における熱交換によってその温度を上昇させた後、空調風として車室IR内に吹き出される。
室内用熱交換器760を通過した冷媒は、冷媒流路710を通って再び電動膨張弁730に到達する。図5では、車室IR内の暖房が行われる際において上記のように冷媒が循環する経路が、複数の矢印で示されている。
車両用空調装置70によって車室IR内の冷房が行われる際には、電磁開閉弁732が開状態に切り換えられ、電磁開閉弁752が閉状態に切り換えられる。当該状態においては、冷媒流路710を循環する冷媒は電動膨張弁730をバイパスして流れる一方で、電動膨張弁750を通るようになる。冷媒は、電動膨張弁750を通る際においてその温度及び圧力を低下させる。つまり、車室IR内の冷房が行われる際には、電動膨張弁750が冷凍サイクルの「膨張弁」として機能する。
室内用熱交換器760には、電動膨張弁750を通過した低温低圧の冷媒が供給される。室内用熱交換器760では、低温の冷媒によって空気からの吸熱が行われ、これにより内部で冷媒が蒸発する。つまり、車室IR内の冷房が行われる際には、室内用熱交換器760が冷凍サイクルの「蒸発器」として機能する。
また、室外用熱交換器740では、冷媒から空気への放熱が行われわれ、これにより内部で冷媒が凝縮する。つまり、車室IR内の暖房が行われる際には、室外用熱交換器740は冷凍サイクルの「凝縮器」として機能する。このとき、コンプレッサ720よる冷媒の圧縮が、室外用熱交換器740の下流側ではなく上流側において行われるように、冷媒の流れる経路が不図示の配管や切換え弁等によって予め変更されるような構成としてもよい。
図6を参照しながら、制御モジュール100を含む熱交換ユニット10、及びその周囲の構成について説明する。既に述べたように、熱交換ユニット10はその全体が車両50のエンジンルームER内に配置されている。
エンジンルームER内には、熱交換ユニット10における3流体(冷媒、冷却水、空気)の流れを制御するために必要な複数のセンサが配置されている。このようなセンサとしては、例えば、冷媒流路710の各部における冷媒の圧力を測定する圧力センサや、各部における冷媒の温度を測定する温度センサ、シャッタ装置20の開度を測定する開度センサ等が挙げられる。それぞれのセンサで測定された値は、電気信号(検知信号)として制御モジュール100に入力される。図6においては、これら複数のセンサが、符号60が付された単一のブロックとして描かれている。以下では、これら複数のセンサのことを総じて「センサ60」とも表記する。
車両50の車室IRには、エンジンECU200と空調ECU300とが配置されている。これらはいずれも、CPU、ROM、RAM、通信インタフェース等を有するコンピュータシステムとして構成されている。
エンジンECU200は、エンジン51の制御を行うための制御装置である。エンジンECU200は、エンジン51とラジエータ31との間で循環する冷却水の流量の調整や、温水弁32の動作制御、シャッタ装置20の開度の調整、及び電動ファン40の回転数の調整等を行う。尚、エンジンECU200によって行われる制御のうち一部の制御(例えばシャッタアクチュエータ22の動作制御)は、制御モジュール100を介して行われる。
エンジンECU200と制御モジュール100との間では、LIN等のネットワークを介した通信が行われる。制御モジュール100は、エンジンECU200から送信される制御信号を受信し、当該制御信号に基づいて各種機器(シャッタアクチュエータ22等)の動作制御を行う。ただし、制御モジュール100は、常に制御信号の通りに各種機器の動作制御を行うのではなく、自らの判断で各種機器の動作制御を行うこともある。
空調ECU300は、車両用空調装置70の制御を行うための制御装置である。空調ECU300は、車両用空調装置70を構成する各種の機器(電動膨張弁730等)のそれぞれの動作を制御することにより、車室IR内の空調を適切に行う。尚、空調ECU300によって行われる制御のうち一部の制御(例えば電動膨張弁730の動作制御)は、制御モジュール100を介して行われる。
空調ECU300と制御モジュール100との間では、LIN等のネットワークを介した通信が行われる。制御モジュール100は、空調ECU300から送信される制御信号を受信し、当該制御信号に基づいて各種機器(電動膨張弁730等)の動作制御を行う。ただし、制御モジュール100は、常に制御信号の通りに各種機器の動作制御を行うのではなく、自らの判断で各種機器の動作制御を行うこともある。
車両50には、各種機器に電力を供給するための電源系統が複数設けられている。図6に示されるように、制御モジュール100には電源系統PL1からの電力が供給されており、エンジンECU200には電源系統PL2からの電力が供給されており、空調ECU300には電源系統PL3からの電力が供給されている。
電源系統PL1は、車両50に設けられたバッテリ(不図示)からの電力が直接供給される電源系統である。このため、車両50のイグニッションスイッチ(不図示)がオンであるかオフであるかに拘らず、制御モジュール100には電源系統PL1からの電力が常に供給されている。
電源系統PL2は、車両50に設けられたオルタネータ(不図示)からの電力が供給される電源系統である。このため、車両50のイグニッションスイッチがオンとされ、エンジン51が動作しているときには、エンジンECU200には電源系統PL2からの電力が供給される。一方、車両50のイグニッションスイッチがオフとされ、エンジン51が停止しているときには、エンジンECU200には電源系統PL2からの電力が供給されない。
電源系統PL3は、電源系統PL1と同様に、車両50に設けられたバッテリからの電力が直接供給される電源系統である。このため、車両50のイグニッションスイッチがオンであるかオフであるかに拘らず、空調ECU300には電源系統PL3からの電力が常に供給されている。
尚、図6においては、制御モジュール100によってその動作が制御される複数の機器のうち、電動ファン40、温水弁32、及びシャッタ装置20のみが図示されている。
図7を参照しながら、制御モジュール100の構成について説明する。制御モジュール100は、受信部110と、入力部120と、制御部130と、ドライバ141、142と、HUB143とを備えている。
受信部110は、エンジンECU200及び空調ECU300のそれぞれから、各種機器の動作を制御するための制御信号を受信する部分である。当該制御信号は、これまでに説明したシャッタ装置20や電動膨張弁730等の動作を制御するための信号である。尚、本実施形態では、エンジンECU200及び空調ECU300からなる2つのECUから制御信号が送信され、当該制御信号が受信部110によって受信される。このような態様に替えて、単一のECUからの制御信号が、受信部110によって受信されるような態様であってもよい。
本実施形態では、シャッタ装置20の動作を制御するための制御信号、電動ファン40の動作を制御するための制御信号、及び温水弁32の動作を制御するための制御信号が、エンジンECU200から送信され受信部110によって受信される。
また、電動膨張弁730の動作を制御するための制御信号が空調ECU300から送信され、受信部110によって受信される。ただし、図7においては、電動膨張弁730の動作制御を行うための構成の図示が省略されている。
以上のように、本実施形態では、複数の装置の動作を制御するための制御信号が受信部110によって受信される。このような態様に替えて、受信部によって受信される制御信号は単一の装置の動作を制御するためのものであってもよい。
入力部120は、センサ60からのそれぞれの検知信号が入力される部分である。センサ60からの検知信号は、他のECU(電子制御ユニット)を介することなく、センサ60に含まれるそれぞれのセンサから制御モジュール100に対して直接入力される。他のECUを介した通信によるタイムラグが生じないので、制御モジュール100は、各種センサにおける測定値を瞬時に把握することができる。
尚、制御モジュール100は、車両50に設けられた車速センサ201から、車速(車両50の走行速度)を示す検知信号を受信することも可能となっている。ただし、車速センサ201から送信される検知信号は、入力部120に直接入力されるのではなく、エンジンECU200を介して制御モジュール100に入力される。つまり、制御モジュール100は、エンジンECU200との通信によって車両50の走行速度を取得することが可能となっている。
これと同様に、制御モジュール100には、車両50に設けられた内気温センサ202及び外気温センサ203のそれぞれからの検知信号が、エンジンECU200を介して入力される。内気温センサ202は、エンジンルームER内の気温を検知するための温度センサである。外気温センサ203は、車両50の外の気温を検知するための温度センサである。制御モジュール100は、エンジンECU200と制御モジュール100との通信によって、車両50の内外の気温をそれぞれ取得することが可能となっている。
このような態様に替えて、車速センサ201、内気温センサ202、及び外気温センサ203から検知信号のうち少なくとも一部が、入力部120に直接入力されるような態様であってもよい。
入力部120では、上記のように各種センサにより検知された情報が取得される。取得される情報には、温度センサ330により測定された冷却水の温度、すなわち、ラジエータ31を通る冷却水の温度が含まれる。このような入力部120は、本実施形態における「水温取得部」に該当するものである。
また、入力部120で取得される情報には、電動ファン40が備えるセンサ(不図示)から入力される、電動ファン40の回転数も含まれる。このため、入力部120は、本実施形態における「回転数取得部」にも該当するものである。
制御部130は、後述のドライバ141等を介して、シャッタ装置20や電動ファン40等、熱交換ユニット10が備える各種機器の動作を制御する部分である。エンジンECU200や空調ECU300から受信された制御信号は、受信部110から制御部130へと入力される。また、センサ60から入力された各種の検知信号は、入力部120から制御部130へと入力される。制御部130は、入力された制御信号及び検知信号に基づいて、シャッタ装置20等の動作を制御する。
ドライバ141は、シャッタ装置20に駆動用電流を供給するための部分である。ドライバ141には、動作用の電力として電源系統PL1からの電力が供給されている。ドライバ141には、シャッタアクチュエータ22に駆動用電流を供給するための回路が形成されている。ドライバ141からシャッタアクチュエータ22への駆動用電流の供給は、制御部130からの信号によって制御される。これにより、シャッタアクチュエータ22の動作が制御され、シャッタ装置20の開度が所定の開度となるように調整される。
ドライバ142は、電動ファン40のファンモータ42に駆動用電流を供給するための部分である。ドライバ142には、動作用の電力として電源系統PL1からの電力が供給されている。ドライバ142には、ファンモータ42に供給される駆動用電流の大きさを調整するための回路が形成されている。ファンモータ42に供給される駆動用電流の大きさは、制御部130からの信号によって調整される。ファンモータ42に供給される駆動用電流が大きくなると、電動ファン40の回転数が大きくなる。ファンモータ42に供給される駆動用電流が小さくなると、電動ファン40の回転数が小さくなる。
HUB143は所謂集線装置である。HUB143には、熱交換ユニット10が備える各種機器の一部に繋がる信号線が接続される。本実施形態では、温水弁32に繋がる信号線がHUB143に接続されている。また、HUB143には、動作用の電力として電源系統PL1からの電力が供給されている。
制御部130は、温水弁32に対して(駆動用の電流ではなく)制御用の信号のみを送信することにより、温水弁32の動作を制御するように構成されている。温水弁32には、その動作を制御するためのドライバ(不図示)が内蔵されている。当該ドライバは、制御部130からHUB143を介して送信される制御用の信号に基づいて動作し、温水弁32の開閉を切り換える。温水弁32が開状態となると、ラジエータ31に対する冷却水の供給が開始される。温水弁32が閉状態となると、ラジエータ31に対する冷却水の供給が停止される。
HUB143に繋がる機器の数は、本実施形態のように1つであってもよく、2つ以上であってもよい。また、HUB143が設けられておらず、熱交換ユニット10が備える各種機器の全てが、本実施形態におけるシャッタ装置20のように、ドライバを介して制御部130に接続されているような態様であってもよい。制御部130と各種機器との間における通信のタイムラグが問題となるような場合には、このような構成の方が好ましい。
上記とは逆に、熱交換ユニット10が備える各種機器の全てが、本実施形態における温水弁32のように、HUB143を介して制御部130に接続されているような態様であってもよい。制御モジュール100や熱交換ユニット10の拡張性に鑑みれば、このような構成の方が好ましい。
エンジン51の始動時に、制御モジュール100によって行われる制御の概要について、図8を参照しながら説明する。図8(A)に示されるのは、温度センサ330で測定される冷却水の温度(以下では、当該温度のことを「冷却水温」とも称する)の時間変化である。図8(B)に示されるのは、電動ファン40の回転数の時間変化である。図8(B)のグラフは、回転翼41が正回転方向に回転しているときの回転数がプラス側(縦軸の上方側)となり、回転翼41が逆回転方向に回転しているときの回転数がマイナス側(縦軸の下方側)となるように描かれている。図8(C)に示されるのは、シャッタ装置20の開度の時間変化である。
エンジン51の始動が開始されてから時刻t10までの期間においては、電動ファン40に対する駆動用電流の供給が停止されており、電動ファン40はその動作を停止している(図8(B))。また、シャッタ装置20の開度は0%(つまり全閉)となっている(図8(C))。このため、エンジン51での発熱に伴い、冷却水温は比較的早い速度で上昇して行く(図8(A))。時刻t10までの期間における上記のような動作モードのことを、以下では「暖機モード」とも称する。
時刻t10において冷却水温が所定の第1温度TW1に到達すると、制御モジュール100は、電動ファン40を逆回転方向に回転させる。図8(B)では、このときにおける電動ファン40の回転数が回転数R01として示されている。尚、シャッタ装置20の開度は0%のままである(図8(C))。
電動ファン40が逆回転しているので、エンジンルームERでは、エンジン51側から熱交換ユニット10側に向かうような空気の流れが生じる。つまり、図1の矢印AR2で示されるような空気の流れが生じる。これにより、エンジン51の周囲、特に図1の点線DLで示されるようなエンジン51の後方側の領域に滞留していた高温の空気が、ラジエータ31や室外用熱交換器740を通過するようになる。
ラジエータ31では、エンジン51側から供給される空気の熱によって冷却水の加熱が行われる。このとき、蒸発器である室外用熱交換器740において、空気から冷媒への熱の回収が行われることとしてもよい。
時刻t10以降においても、冷却水温は引き続き上昇して行く(図8(A))。時刻t10から時刻t20までの期間における上記のような動作モードのことを、以下では「熱回収モード」とも称する。また、熱回収モードとするために制御部130が行う制御のことを、以下では「熱回収制御」とも称する。
このように、制御部130は、入力部120で取得される冷却水温が所定温度(第2温度TW2)よりも低いときに、予め、逆回転方向に電動ファン40を駆動させる熱回収制御を行うように構成されている。これにより、エンジンルームER内の熱を有効に利用しながら冷却水温を上昇させることが可能となっている。
時刻t20において、冷却水温が所定の第2温度TW2に到達すると、制御モジュール100は、電動ファン40への駆動電流の供給を停止させる。また、制御モジュール100は、シャッタ装置20の開度を大きくし始める。具体的な開度の調整方法については後に説明する。
尚、第2温度TW2は、第1温度TW1よりも高い温度であって、熱回収制御を完了させ電動ファン40を正回転方向に回転させ始める際の温度として予め設定されている。
時刻t20以降は、電動ファン40は逆回転方向に惰性で回転している。このとき、シャッタ装置20の開度は0%よりも大きくなっている。このため、車両50が走行中であれば、フロントグリルGRからエンジンルームER内には空気が流入している。つまり、エンジンルームERには、図1の矢印AR1で示されるような空気の流れが生じており、これによりエンジンルームERの換気が行われている。
電動ファン40の回転翼41には、上記の空気が当たることにより、正回転方向に回転するような力が加えられる。このため、逆回転方向に回転している電動ファン40の回転数は急速に小さくなり、時刻t25以降において0となる。その後は、電動ファン40は正回転方向に回転し始める。
このように、入力部120で取得される冷却水温が第2温度TW2よりも高くなり、正回転方向に電動ファン40を回転させ始める際において、制御部130は、シャッタ装置20を開状態とし、フロントグリルGRから流入する空気の流れによって、電動ファン40(具体的には回転翼41)に対して正回転方向の力を加える処理を行う。このように、空気の流れによって電動ファン40に正回転方向の力を加える処理のことを、以下では「アシスト処理」とも称する。
このようなアシスト処理によれば、電力以外の力を用いて電動ファン40を正回転方向に回転させることができる。このため、電動ファン40に大きな駆動用電力を供給することなく、電動ファン40の回転数を迅速に変化させることが可能となっている。
このような構成においては、電動ファン40に大きな駆動用電流を供給するための大容量の電源回路や、大電流に対応し得るような保護回路が不要となる。つまり、本実施形態では、電動ファン40を駆動するための回路のコストを抑制しながらも、電動ファン40の回転数を迅速に変化させることが可能となっている。
また、本実施形態における制御部130は、熱回収制御が終了した時刻t20の後にアシスト処理を開始することにより、電動ファン40の回転方向を逆回転方向から正回転方向へと切り換える。このように、アシスト処理によれば、電動ファン40に大きな駆動用電流を供給することなく、電動ファン40の回転数を大きく且つ迅速に変化させることができる。
時刻t20において、制御部130は、電動ファン40に対する駆動用電流の供給が停止している状態でアシスト処理を開始する。電動ファン40に対する駆動用電流の供給が停止している状態は、電動ファン40が逆回転方向に回転している期間、すなわち時刻t25までの期間において維持される。
電動ファン40の回転数が0となった時刻t25以降は、制御部130は、電動ファン40に対する駆動用電流の供給を開始する。これにより、電動ファン40は、フロントグリルGRから流入する空気の力と、ファンモータ42の駆動力との両方によって、正回転方向に回転する。その回転数は、時刻t25以降において次第に大きくなって行く。時刻t20から時刻t30までの期間における上記のような動作モードのことを、以下では「換気モード」とも称する。
時刻t30において、冷却水温が所定の第3温度TW3に到達すると、制御モジュール100は、シャッタ装置20の開度を100%(つまり全開)とする。尚、第3温度TW3は、第2温度TW2よりも高い温度であって、換気モードを完了させファンモータ42を正回転方向に回転させ始める際の温度として予め設定されている。
時刻t30における電動ファン40の回転数が、図8(B)では回転数R10として示されている。時刻t30以降において、制御部130は、電動ファン40の回転数を次第に増加させて行く。その間、冷却水温は引き続き上昇して行き、時刻t40において第4温度TW4に到達している。
第4温度TW4は、第3温度TW3よりも高い温度であって、冷却水温の上限値として予め設定された温度である。時刻t30以降において、制御部130は、冷却水温が第3温度TW3から第4温度TW4の範囲内に収まるように、電動ファン40やシャッタ装置20等の動作を制御して冷却水の冷却度合いを調整する。これにより、エンジン51の冷却が適切に行われる。時刻t30以降の期間における上記のような動作モードのことを、以下では「冷却モード」とも称する。
尚、図8(C)においては、時間の経過とともにシャッタ装置20の開度が直線的に増加するように描かれているのであるが、実際における開度の変化はこれとは異なる。後に説明するように、制御部130は、シャッタ装置20の開度を冷却水温等に基づいた適切な開度となるように調整する。
図8に示されるような制御を実現するために、制御モジュール100によって行われる具体的な処理の内容について、図9を参照しながら説明する。図9に示される一連の処理は、所定の制御周期が経過する毎に制御モジュール100の制御部130によって繰り返し実行されるものである。
最初のステップS01では、温度センサ330で測定された冷却水温、すなわち、エンジン51から排出された直後における冷却水の温度が取得される。ステップS01に続くステップS02では、取得された冷却水温が第1温度TW1以下であるかが判定される。冷却水温が第1温度TW1以下である場合には、ステップS03に移行する。ステップS03では、暖機モードへの切り換えが行われる。既に説明したように、暖機モードでは、シャッタ装置20の開度が0%とされ、電動ファン40への駆動用電流の供給が停止される。
ステップS02において、冷却水温が第1温度TW1を超えていた場合には、ステップS04に移行する。ステップS04では、取得された冷却水温が第2温度TW2以下であるかが判定される。冷却水温が第2温度TW2以下である場合には、ステップS05に移行する。ステップS05では、熱回収モードへの切り換えが行われる。既に説明したように、熱回収モードでは、シャッタ装置20の開度が0%とされて、電動ファン40は逆回転方向に回転するよう駆動される。
ステップS04において、冷却水温が第2温度TW2を超えていた場合には、ステップS06に移行する。ステップS06では、取得された冷却水温が第3温度TW3以下であるかが判定される。冷却水温が第3温度TW3以下である場合には、ステップS07に移行する。ステップS07では、換気モードへの切り換えが行われる。既に説明したように、換気モードでは、シャッタ装置20の開度が0%よりも大きくされ、その初期段階(時刻t25までの期間)では電動ファン40への駆動用電流の供給が停止される。
ステップS06において、冷却水温が第3温度TW3を超えていた場合には、ステップS08に移行する。ステップS08では、冷却モードへの切り換えが行われる。既に説明したように、冷却モードでは、電動ファン40の回転数及びシャッタ装置20の開度が適宜調整され、冷却水温を第3温度TW3から第4温度TW4の範囲内に収めるような制御が行われる。
ステップS07の換気モードにおいて実行される処理について、図10を参照しながら説明する。図10に示される一連の処理は、図9のステップS07において実行される処理の具体的な流れを示すものである。図9に示される一連の処理が繰り返し実行される結果、図10に示される一連の処理も繰り返し実行される。
最初のステップS11では、温度センサ330で測定された冷却水温、すなわち、エンジン51から排出された直後における冷却水の温度が取得される。ここでは、図9のステップS01で取得された冷却水温をそのまま用いることとしてもよい。
ステップS11に続くステップS12では、シャッタ装置20の目標開度の算出が行われる。この目標開度は、アシスト処理が行われており、且つ冷却水温が上昇し続ける状態を維持するための適切な開度として設定されるものである。
図11に示されるのは、ステップS11で取得された冷却水温(横軸)と、ステップS12で算出される目標開度(縦軸)との対応関係である。当該対応関係は、マップとして予め作成され、制御モジュール100の記憶装置に記憶されている。ステップS12では、図11の対応関係に基づいて、シャッタ装置20の目標開度が算出される。
図11に示されるように、冷却水温が第2温度TW2以下であるときには、目標開度は0%に設定される。また、冷却水温が第2温度TW2を超えると、冷却水温が高くなるほど目標開度は大きくなる(開放側となる)ように設定される。冷却水温が第3温度TW3に到達すると、目標開度は100%に設定される。
ステップS12に続くステップS13では、シャッタ装置20の開度を、ステップS12で算出された目標開度に一致させるよう、シャッタ装置20(具体的にはシャッタアクチュエータ22)を駆動する処理が行われる。これにより、シャッタ装置20の開度が目標開度に一致した状態となり、既に説明したアシスト処理が適切に行われる。
このように、本実施形態における制御部130がアシスト処理を行うに当たっては、制御部130は、入力部120で取得された冷却水温に応じて、シャッタ装置20の開度を変化させる。具体的には、入力部120で取得された冷却水温が高くなるほどシャッタ装置20の開度を大きくする。このような制御によれば、冷却水温が低いときには、フロントグリルGRからエンジンルームER内に流入する空気の流量が抑制されるので、冷却水温の低下が防止される。つまり、本実施形態では、アシスト処理によって電動ファン40の回転数を効率的に増加させながらも、エンジン51の暖気が空気の流入により妨げられてしまうようなことが防止される。
尚、図8(B)を参照しながら説明したように、本実施形態に係る制御部130は、電動ファン40の回転方向が0となった時刻t25に、電動ファン40に対する駆動用電流の供給を開始する。このような態様に替えて、電動ファン40に対する駆動用電流の供給を開始するタイミングは適宜変更してもよい。
例えば、電動ファン40が逆回転方向に回転している期間(時刻t20から時刻t25までの期間)から、電動ファン40に対する駆動用電流の供給が行われることとしてもよい。また、電動ファン40が正回転方向に回転し始めた後(時刻t25よりも後)のタイミングで、電動ファン40に対する駆動用電流の供給が開始されることとしてもよい。ただし、駆動用電流を低く抑え、且つ電動ファン40の回転数を迅速に上昇させるためには、電動ファン40に対する駆動用電流の供給は、電動ファン40の回転方向が正回転方向となった以降の時点で開始されることが好ましい。
以上に説明したような制御モジュール100の機能を、エンジンECU200や空調ECU300のような上位のECUが有するような態様としてもよい。つまり、エンジンECU200等が制御モジュール100として機能するような態様としてもよい。しかしながら、通信のタイムラグや機器の配置等に鑑みれば、本実施形態のように、熱交換ユニット10の制御を担う専用の装置として制御モジュール100が構成されている態様の方が好ましい。
第2実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。本実施形態では、制御モジュール100によって実行される処理の内容について第1実施形態と異なっており、その他の点については第1実施形態と同じである。
本実施形態でも、図10に示されるものと同様の処理が制御モジュール100によって行われる。本実施形態では、シャッタ装置20の目標開度の算出方法、すなわち、ステップS12で行われる処理の内容について、第1実施形態と異なっている。
図12に示されるのは、図10のフローチャートに沿って実行される処理の内容(ただし、本実施形態の処理として実行される内容)を、所謂ブロック線図として描いたものである。
ブロックB1は、目標水温を示すブロックである。目標水温とは、冷却水温の目標値として、エンジンECU200から制御モジュール100へと送信される温度である。目標水温は、例えば図8(A)の時刻t20から時刻t30までの期間における冷却水温のように、時間の経過と共に変化するように都度更新され、定期的にエンジンECU200から送信される。
ブロックB2は所謂加算器である。ブロックB2では、ブロックB1から入力される目標水温と、後述のブロックB7から入力される実際の冷却水温との偏差が算出され、当該偏差がブロックB3に向けて出力される。
ブロックB3では、上記の偏差に基づいて、ラジエータ31における目標熱交換量が算出される。目標熱交換量とは、ラジエータ31を通過する空気と冷却水との間において交換される熱量の目標値である。目標熱交換量は、冷却水から奪われる熱量の目標値、ということもできる。このため、目標熱交換量が大きく設定されると、ラジエータ31を通過する際における冷却水の温度低下量が大きくなる。ブロックB3で算出された目標熱交換量は、ブロックB4に向けて出力される。
ブロックB4は加算器である。ブロックB4では、ブロックB3から入力される目標熱交換量から、後述のブロックB12から入力される換気損失が減算される。減算後の目標熱交換量は、ブロックB4からブロックB5に向けて出力される。
ブロックB5では、入力された目標熱交換量に基づいて、シャッタ装置20の目標開度が算出される。当該目標開度は、図10のステップS12で算出される目標開度のことである。ブロックB5では、予め作成されたマップを算出することにより、ブロックB4から入力される目標熱交換量を実現するために必要な目標開度が算出される。
ブロックB5で算出されたシャッタ装置20の目標開度は、ブロックB6に入力される。ブロックB6では、シャッタ装置20の開度を目標開度に一致させる処理が行われる。つまり、ブロックB6は、図10のステップS13に示される処理を示すものである。
ブロックB6においてシャッタ装置20の開度が調整された結果、エンジンルームER内に流入する空気の流量が変化する。これに伴い、エンジンルームER内の気温や冷却水温も変化する。ブロックB7は、このように変化する冷却水温を示すブロックである。
ブロックB8では、上記のように変化した冷却水温が温度センサ330から取得される。このように、ブロックB8は、図10のステップS11に示される処理を示すものである。ブロックB8で取得された冷却水温はブロックB2に入力され、既に述べたように冷却水温の偏差の算出に供される。
このように、図12に示される処理は、温度センサ330で測定された冷却水温をフィードバックしながらシャッタ装置20の開度を調整し、これにより冷却水温を目標水温に一致させる処理となっている。
ブロックB9は、内気温センサ202で測定されたエンジンルームER内の気温である。ブロックB10は、外気温センサ203で測定された車両50の外の気温である。それぞれの気温はブロックB11に入力される。
ブロックB11は加算器である。ブロックB11では、ブロックB9から入力されるエンジンルームER内の気温と、ブロックB10から入力される車両50の外の気温との差(以下では「温度差」とも称する)が算出され、当該温度差がブロックB12に向けて出力される。
ブロックB12では、入力される温度差に基づいて換気損失が算出される。換気損失とは、エンジンルームER内に外部からの冷たい空気が流入することにより、冷却水から失われる熱エネルギーのことである。ブロックB12では、予め作成されたマップを算出することにより、温度差に応じた換気損失が算出される。
図12では、車速センサ201で測定された車速がブロックB13として示されている。ブロックB12では、ブロックB13から入力される車速、すなわち車両50の走行速度に基づいて、算出される換気損失が補正される。当該処理は制御部130により実行される。具体的には、車両50の走行速度が大きくなるほど、換気損失が大きくなるように補正される。また、車両50の走行速度が小さくなるほど、換気損失が小さくなるように補正される。算出された補正後の換気損失は、ブロックB4に入力され、既に述べたように目標熱交換量から減算される。
本実施形態では、温度差が大きいときには換気損失が大きくなり、ブロックB4を経てブロックB5に入力される目標交換量は小さくなる。その結果、ブロックB5で算出される目標開度も小さくなる。
このように、本実施形態における制御部130がアシスト処理を行うに当たっては、制御部130は、熱交換ユニット10の周囲の気温(内気温センサ202で測定された気温)と外気温(外気温センサ203で測定された気温)との温度差に応じて、シャッタ装置20の開度を変化させる。具体的には、温度差が大きくなるほどシャッタ装置20の開度を小さくする。これにより、アシスト処理によって電動ファン40の回転数を効率的に増加させながらも、エンジン51の暖気が空気の流入により妨げられてしまうようなことが更に防止される。
また、本実施形態では、走行速度が大きいときにも換気損失が大きくなり、ブロックB4を経てブロックB5に入力される目標交換量が小さくなる。その結果、ブロックB5で算出される目標開度も小さくなる。
このように、本実施形態における制御部130がアシスト処理を行うに当たっては、制御部130は、車両50の走行速度に応じてシャッタ装置20の開度を変化させる。具体的には、車両50の走行速度が大きくなるほどシャッタ装置20の開度を小さくする。これにより、アシスト処理によって電動ファン40の回転数を効率的に増加させながらも、エンジン51の暖気が空気の流入により妨げられてしまうようなことが更に防止される。
第3実施形態について説明する。図13には、本実施形態に係る制御モジュール100及び熱交換ユニット10が搭載される車両50の内部構成が、側面視で模式的に描かれている。尚、図13においては、熱交換ユニット10の全体(制御モジュール100と電動ファン40とを除く)が点線で示されており、熱交換ユニット10が備える熱交換器(室外用熱交換器740等)の図示が省略されている。
車両50の構成について説明する。本実施形態に係る車両50はエンジン51を有しておらず、不図示の回転電機の駆動力によって走行する車両、すなわち電動車両として構成されている。このため、車両50の前方側に形成された空間のことを、本実施形態においては「エンジンルームER」ではなく「フロントルームFR」と称することとする。熱交換ユニット10はこのフロントルームFRに配置されている。図13においては、フロントルームFR及び車室IRに加えて、車両50の後方側に形成されたトランクルームRRも示されている。
車室IRのうち、フロントルームFRとの境界部分(ファイアウォール)の近傍には、車両用空調装置70の一部である空調ケース770が配置されている。空調ケース770は、室内用熱交換器760や電動膨張弁750等(いずれも図13では不図示)を内部に収容する容器である。空調ケース770の内部には、室内用熱交換器760を通るように空気を送り出すブロア782も収容されている。
空調ケース770には、内気導入部772と、外気導入部773と、吹き出し口771と、が形成されている。内気導入部772は、空調対象の空気として、車室IR内の空気を空調ケース770内に導入するための開口である。外気導入部773は、空調対象の空気として、車室IR外の空気(具体的にはフロントルームFR内の空気)を空調ケース770内に導入するための開口である。吹き出し口771は、温調後の空気を車室IR内に吹き出すための開口である。
空調ケース770のうち、内気導入部772と外気導入部773との間となる位置には、内外気切り換えドア781が設けられている。内外気切り換えドア781は、外部から導入された空気を温調して車室IR内に吹き出す外気導入モードと、車室IR内から導入された空気を温調して車室IR内に吹き出す内気循環モードと、を切り換えるためのドアである。
外気導入モードにおいては、図13に示されるように、内外気切換えドア781によって内気導入部772が閉じられた状態となり、外気導入部773が開放された状態となる。一方、内気導入モードにおいては、図13においては点線で示されるように、内外気切換えドア781によって外気導入部773が閉じられた状態となり、内気導入部772が開放された状態となる。内外気切換えドア781の動作は空調ECU300によって制御される。
空調ケース770の前方側には、フロントダクト790が設けられている。フロントダクト790は、フロントルームFRの空気を、空調ケース770の外気導入部773に導くために設けられたダクトである。フロントダクト790のうち前方側端部に形成された開口は、熱交換ユニット10に対して後方側から対向している。フロントダクト790のうち後方側端部に形成された開口は、空調ケース770の外気導入部773に接続されている。
フロントダクト790のうち前方側端部の近傍となる位置には、フィルタ791が設けられている。フィルタ791は、空気に含まれる埃等の異物を除去するためのものである。フロントルームFRの空気は、フィルタ791を通過する際において異物が除去され、正常な空気となって空調ケース770へと導入される。
本実施形態における電動ファン40も、フロントグリルGR側から熱交換器側(熱交換ユニット10側)に向けて空気を送り込むような正回転方向と、正回転方向とは反対の逆回転方向と、のいずれにも回転翼41を回転させることができる。図13では図1と同様に、回転翼41が正回転方向に回転しているときにおいて空気の流れる方向が矢印AR1で示されている。また、回転翼41が逆回転方向に回転しているときにおいて空気の流れる方向が矢印AR2で示されている。
図14には、外気導入モードにおける車両50の状態が示されている。当該状態においては、シャッタ装置20は開状態となっており、内外気切換えドア781によって内気導入部772は閉じられた状態となっている。また、電動ファン40は正回転方向に回転している。
図14の状態においては、フロントグリルGRからフロントルームFRに流入した空気が、電動ファン40によって後方側に向けて引き込まれ、フロントダクト790を通って空調ケース770に導入される。その後、当該空気は空調ケース770内で温調され、空調風として吹き出し口771から車室IR内に吹き出される。図14では、このような空気の流れが矢印AR11によって示されている。
図14の状態においては、フロントルームFRの空気に含まれる埃等がフィルタ791によって除去されるので、車室IR内には清浄な空気が吹き出される。このとき、フィルタ791のうち特に前方側の部分には、空気中の埃等が吸着され堆積して行く。このため、図14に示されるような車両用空調装置70の動作モードのことを、以下では「ダスト吸着モード」とも称する。
ダスト吸着モードにおける動作が継続されると、フィルタ791に吸着され堆積している埃などの量が次第に増加して行くことにより、フィルタ791が目詰まりした状態となる。当該状態においては、車両用空調装置70の動作効率が低下してしまう。このため、フィルタ791から埃等を除去する必要が有る。
フィルタ791から埃等を除去するための動作モードとして、車両用空調装置70は目詰まり解消モードを実行することが可能となっている。「目詰まり解消モード」とは、電動ファン40を逆回転方向に回転させることにより、フィルタ791に吸着されている埃などを前方側に向けて吹き飛ばすための動作モードである。
図15には、目詰まり解消モードにおける車両50の状態が示されている。当該状態においては、シャッタ装置20は閉状態となっており、内外気切換えドア781によって内気導入部772は閉じられた状態となっている。また、電動ファン40は上記のように逆回転方向に回転している。尚、目詰まり解消モードにおいては、ブロア782等はその動作を停止しているので、車両用空調装置70による空調は行われない。
図15の状態においては、電動ファン40によって空気が前方側に向けて引き込まれる。これにより、フロントダクト790内の空気も前方側に向けて引き込まれ、フィルタ791を通過して電動ファン40に到達する。その後、当該空気は、不図示の開口を通って車両50の下方側へと排出される。これに伴い、フィルタ791に吸着されていた埃等は、前方側に向けて吹き飛ばされ、フィルタ791から除去される。その結果、フィルタ791の目詰まりが解消する。
以上のような「ダスト吸着モード」や「目詰まり解消モード」を実現するために、空調ECU300及び制御モジュール100によって実行される処理の内容について説明する。図16に示される一連の処理は、所定の周期が経過する毎に、空調ECU300によって繰り返し実行される処理である。空調ECU300は、不図示の記憶装置に記憶されているアプリケーションソフトウェアを実行することにより、当該処理を実行する。尚、空調ECU300とは別の装置が当該処理を実行することとしてもよい。
当該処理の最初のステップS21では、フロントダクト790における通風抵抗が算出される。ここでは、ブロア782の回転数と、ブロア782のモーターを流れる電流値との関係に基づいて、通風抵抗の大きさが算出される。
ステップS21に続くステップS22では、上記通風抵抗の大きさに基づいて、フィルタ791に目詰まりが生じたか否かが判定される。通風抵抗が所定の閾値を越えた場合には目詰まりが生じたと判定され、それ以外の場合には目詰まりが生じていないと判定される。
当該判定は、通風抵抗の算出を経ることなく、ブロア782の回転数と、ブロア782のモーターを流れる電流値との関係に基づいて行われてもよい。例えば、ブロア782の回転数に対応して予め設定されている電流閾値を、実際に測定されたモーターの電流値が超えた場合に、目詰まりが生じたと判定されるような態様であってもよい。
ステップS22において、目詰まりが生じていないと判定された場合には、ステップS23に移行する。ステップS23では、ダスト吸着モード(図14)に移行するための処理が行われる。尚、ステップS23への移行時において既にダスト吸着モードが実行されている場合には、ダスト吸着モードが維持される。
ステップS23に続くステップS24では、ダスト吸着モードに移行するための処理の一部として、電動ファン40を正回転方向に回転させるための駆動要求(制御信号)を、制御モジュール100に向けて送信する処理が行われる。
ステップS22において、目詰まりが生じていると判定された場合には、ステップS25に移行する。ステップS25では、目詰まり解消モード(図15)に移行するための処理が行われる。尚、ステップS25への移行時において既に目詰まり解消モードが実行されている場合には、目詰まり解消モードが維持される。尚、ステップS25では、目詰まり解消モードに移行した旨を、パネル表示等によって乗員に報知することとしてもよい。これにより、空調が停止したことへの違和感を乗員に与えてしまうことを防止することができる。
ステップS25に続くステップS26では、目詰まり解消モードに移行するための処理の一部として、電動ファン40を逆回転方向に回転させるための駆動要求(制御信号)を、制御モジュール100に向けて送信する処理が行われる。
続いて図17を参照しながら、制御モジュール100によって実行される処理について説明する。図17に示される一連の処理は、所定の周期が経過する毎に、制御モジュール100の制御部130によって繰り返し実行される処理である。制御モジュール100は、不図示の記憶装置に記憶されているドライバソフトウェアを実行することにより、当該処理を実行する。
当該処理の最初のステップS31では、空調ECU300からの駆動要求を参照する処理が行われる。ステップS31に続くステップS32では、上記駆動要求が、電動ファン40を正回転方向させるためのものであるか否かが判定される。当該判定が肯定である場合にはステップS33に移行する。
ステップS33では、電動ファン40の現時点における回転状態を検出する処理が行われる。ここでいう「回転状態」とは、電動ファン40の回転方向及び回転速度のことである。当該処理は、電動ファン40が備えるセンサ(不図示)から入力部120に入力される信号に基づいて行われる。
ステップS33に続くステップS34では、電動ファン40が逆回転方向に回転しているか否かが判定される。逆回転方向に回転している場合には、ステップS35に移行する。ステップS35ではアシスト処理が実行される。既に述べたように、アシスト処理とは、フロントグリルGRから流入する空気の流れによって、電動ファン40に正回転方向の力を加える処理である。本実施形態におけるアシスト処理の具体的な態様については後述する。
ステップS32において、駆動要求が電動ファン40を逆回転方向させるためのものであった場合には、ステップS36に移行する。この場合、ステップS36では、電動ファン40が逆回転方向に回転している状態を維持するための処理が行われる。
また、ステップS34において、電動ファン40が正回転方向に回転していた場合にも、ステップS36に移行する。この場合、ステップS36では、電動ファン40が正回転方向に回転している状態を維持するための制御が行われる。
いずれの場合であっても、ステップS36では、アシスト処理を行うことなく通常の処理を行うことにより、電動ファン40の動作が制御される。
アシスト処理の具体的な内容について、図18を参照しながら説明する。図18に示される一連の処理は、図17のステップS35において実行されるアシスト処理の具体的な流れを示すものである。図17に示される一連の処理が繰り返し実行される結果、図18に示される一連の処理も繰り返し実行される。
最初のステップS41では、電動ファン40の回転数を取得する処理が行われる。ここでは、図17のステップS33で検出された「回転状態」に含まれる回転数を、そのまま取得することとしてもよい。
ステップS41に続くステップS42では、上記の回転数に基づいて、シャッタ装置20の目標開度を設定する処理が行われる。ステップS42に続くステップS43では、シャッタ装置20の開度が目標開度に一致するように、シャッタ装置20を動作させる処理が行われる。
図19に示されるのは、電動ファン40の回転数(横軸)と、シャッタ装置20の目標開度(縦軸)との対応関係である。同図に示されるように、正回転方向における回転数が大きい程(図19の右側に行く程)、目標開度は小さく設定される。また、逆回転方向における回転数が大きい程(図19の左側に行く程)、目標開度は大きく設定される。
このため、電動ファン40が逆回転方向に大きな回転数で回転しているときには、シャッタ装置20の開度が大きくされ、電動ファン40に加えられる正回転方向の力も大きくなる。これにより、逆回転方向に回転している電動ファン40を急速に減速させ、短時間の内に正回転方向に回転させ始めることができる。
また、電動ファン40が正回転方向に回転しているときには、その回転数の増加に伴ってシャッタ装置20の開度が小さくされ、電動ファン40に加えられる正回転方向の力も小さくなる。これにより、電動ファン40の回転数がオーバーシュートしてしまうような事態が防止される。
尚、以上の例におけるアシスト処理は、電動ファン40の回転数に応じて、シャッタ装置20の目標開度を次第に変化させて行くような処理となっている。このような態様に替えて、アシスト処理の実行時における目標開度が一定の値に固定されているような態様であってもよい。
本実施形態でも、アシスト処理が実行されており且つ電動ファン40が逆回転方向に回転している期間においては、電動ファン40に対する駆動用電流の供給を停止することが好ましい。
以上の例におけるアシスト処理は、逆回転方向に電動ファン40が回転しているときから開始される。このような態様に替えて、電動ファン40の回転が停止している状態から、アシスト処理が開始されることとしてもよい。
第4実施形態について説明する。図20には、本実施形態に係る制御モジュール100及び熱交換ユニット10が搭載される車両50の内部構成が、側面視で模式的に描かれている。当該車両50の構成は、図13に示される第3実施形態における構成に近いものである。このため、以下では第3実施形態との相違点について主に説明し、第3実施形態との共通点については適宜説明を省略する。
本実施形態に係る車両50では、空調ケース770のうち外気導入部773が形成されている位置が、フロントダクト790が接続されている部分よりも上方側の位置となっている。内外気切り換えドア781によって内気導入部772が閉じられているときには、外気導入部733には、開口774から入り込んだ外気が導入される。開口774は、車両50のボンネット上面に形成された開口である。
フロントダクト790の後方側端部は、空調ケース770に形成されたフロント用吹き出し口775に接続されている。フロント用吹き出し口775は、吹き出し口771と同様に、温調後の空気(空調風)を吹き出すための開口として形成されている。
空調ケース770の内部にはフロント開閉ドア783が設けられている。フロント開閉ドア783は、図20のようにフロント用吹き出し口775が開かれている状態と、点線で示されるようにフロント用吹き出し口775が閉じられている状態と、を切り換えるためのドアである。
フロント用吹き出し口775が閉じられている状態においては、空調ケース770の内部で生成された空調風は、吹き出し口771から車室IR内に吹き出され、フロント用吹き出し口775からは吹き出されない。一方、フロント用吹き出し口775が開かれている状態においては、空調ケース770の内部で生成された空調風は、吹き出し口771から車室IR内に吹き出されると共に、フロント用吹き出し口775からフロントルームFR内にも吹き出される。フロント開閉ドア783の動作は空調ECU300によって制御される。
図21には、外気導入モードにおける車両50の状態の一例が示されている。当該状態においては、内外気切換えドア781によって内気導入部772は閉じられた状態となっている。空調ケース770には、開口774及び外気導入部773を通った空気(外気)が供給される。当該空気は、空調ケース770の内部において温調され、空調風として吹き出し口771から車室IR内へと吹き出される。このとき、フロント用吹き出し口775はフロント開閉ドア783によって閉じられているので、空調風はフロントルームFRへは吹き出されない。図21においては、以上のような空気の流れが矢印AR21で示されている。
図21の状態においては、シャッタ装置20は開状態となっており、電動ファン40は正回転方向に回転している。このため、フロントグリルGRからフロントルームFRに流入した空気は、電動ファン40によって後方側に向けて引きこまれ、熱交換ユニット10における熱交換に供される。その後、当該空気は、不図示の開口を通って車両50の下方側へと排出される。図21においては、以上のような空気の流れが矢印AR22で示されている。図21に示されるような車両用空調装置70の動作モードのことを、以下では「通常空調モード」とも称する。
通常空調モードでは、フロント用吹き出し口775がフロント開閉ドア783によって閉じられているので、車室IR内の空調のみが行われる。一方、フロント用吹き出し口775が開かれているときには、車室IR内の空調と、フロントルームFR内の空調との両方が行われる。図22には、このような状態の一例が示されている。
図22に示される状態においては、フロント開閉ドア783が開かれた状態となっている。また、内気導入部772によって内外気切換えドア781は引き続き閉じられた状態となっている。空調ケース770には、開口774及び外気導入部773を通った空気(外気)が供給される。当該空気は、空調ケース770の内部において温調され、その一部が空調風として吹き出し口771から車室IR内へと吹き出される。図22では、このような空気の流れが矢印AR23で示されている。
空調ケース770の内部において温調された空気の残部は、フロント用吹き出し口775からフロントダクト790へと供給され、フロントダクト790を通ってフロントルームFRへと吹き出される。図22では、このような空気の流れが矢印AR24で示されている。
図22の状態においては、シャッタ装置20は閉状態となっており、電動ファン40は逆回転方向に回転している。このため、フロントダクト790内の空気は、電動ファン40によって前方側に向けて引き込まれる。その結果、矢印AR24で示される空気の流れが更に促進される。矢印AR24で示されるように、フロントダクト790から引き込まれた空気は、電動ファン40に到達した後、不図示の開口を通って車両50の下方側へと排出される。
図22に示される状態においては、車室IR内の空調と、フロントルームFR内の空調との両方が同時に行われる。図22に示されるような車両用空調装置70の動作モードのことを、以下では「フロント同時空調モード」とも称する。
ところで、図22に示される状態から、逆回転方向に回転している電動ファン40の回転数を更に増加させると、フロントダクト790を通ってフロントルームFRへと吹き出される空気の流量が大きくなる。これにより、吹き出し口771から車室IR内の空気を吸引し、車室IR内の気圧を減圧させることもできる。図22に示される状態において、上記のように車室IR内の気圧を減圧させるような車両用空調装置70の動作モードのことを、以下では「車室減圧モード」とも称する。
以上のような「フロント同時空調モード」等を実現するために、空調ECU300及び制御モジュール100によって実行される処理の内容について説明する。図23に示される一連の処理は、所定の周期が経過する毎に、空調ECU300によって繰り返し実行される処理である。空調ECU300は、不図示の記憶装置に記憶されているアプリケーションソフトウェアを実行することにより、当該処理を実行する。尚、空調ECU300とは別の装置が当該処理を実行することとしてもよい。
当該処理の最初のステップS51では、フロント温調要求の有無を確認する処理が行われる。「フロント温調要求」とは、フロントルームFRの空調を開始するよう、車両50に搭載された他のECUから空調ECU300へと発せられる制御信号のことである。尚、このような態様に替えて、空調ECU300が自らの判断でフロント温調要求を発するような態様であってもよい。
ステップS51に続くステップS52では、現時点においてフロント温調要求が発せられているか否かが判定される。フロント温調要求が発せられていない場合にはステップS53に移行する。
ステップS53では、通常空調モード(図21)に移行するための処理が行われる。尚、ステップS53への移行時において既に通常空調モードが実行されている場合には、通常空調モードが維持される。
ステップS53に続くステップS54では、通常空調モードに移行するための処理の一部として、電動ファン40を正回転方向に回転させるための駆動要求を、制御モジュール100に向けて送信する処理が行われる。
ステップS52において、フロント温調要求が発せられている場合には、ステップS55に移行する。ステップS55では、フロント同時空調モード(図22)に移行するための処理が行われる。尚、ステップS55への移行時において既にフロント同時空調モードが実行されている場合には、フロント同時空調モードが維持される。
ステップS55に続くステップS56では、フロント同時空調モードに移行するための処理の一部として、電動ファン40を逆回転方向に回転させるための駆動要求を、制御モジュール100に向けて送信する処理が行われる。
ステップS54またはステップS56のいずれかにおいて駆動要求が送信された場合において、これを受けた制御モジュール100の制御部130によって実行される処理は、図17乃至19を参照しながら説明したものと同様である。例えばフロント同時空調モードから通常空調モードに移行する場合等のように、電動ファン40を正回転方向に回転させ始める際には、既に述べたアシスト処理が行われる。これにより、先の実施形態において説明したものと同様の効果を得ることができる。
先に説明したように、本実施形態に係る制御モジュール100では、図22に示される状態から電動ファン40の回転数を更に増加させることにより、車室減圧モードを実行することも可能となっている。以下では、車室減圧モードを実行するために、空調ECU300及び制御モジュール100によって実行される処理の内容について説明する。図24に示される一連の処理は、所定の周期が経過する毎に、空調ECU300によって繰り返し実行される処理である。当該処理は、図23に示される一連の処理と並行して実行されてもよく、状況に応じて択一的に実行されてもよい。
最初のステップS61では、車室減圧要求の有無を確認する処理が行われる。「車室減圧要求」とは、車室IR内の圧力を一時的に低下させるよう、車両50に搭載された他のECUから空調ECU300へと発せられる制御信号のことである。尚、このような態様に替えて、空調ECU300が自らの判断で車室減圧要求を発するような態様であってもよい。尚、このような車室減圧要求は、例えば車両50がトンネルに侵入する際のように、車室IR内の圧力がこれから急上昇することが予測された場合等において発せられるものである。
ステップS61に続くステップS62では、現時点において車室減圧要求が発せられているか否かが判定される。車室減圧要求が発せられていない場合にはステップS63に移行する。
ステップS63では、通常空調モード(図21)に移行するための処理が行われる。尚、ステップS63への移行時において既に通常空調モードが実行されている場合には、通常空調モードが維持される。
ステップS63に続くステップS64では、通常空調モードに移行するための処理の一部として、電動ファン40を正回転方向に回転させるための駆動要求を、制御モジュール100に向けて送信する処理が行われる。
ステップS62において、車室減圧要求が発せられている場合には、ステップS65に移行する。ステップS65では、車室減圧モード(図22)に移行するための処理が行われる。尚、ステップS65への移行時において既に車室減圧モードが実行されている場合には、車室減圧モードが維持される。
ステップS65に続くステップS66では、車室減圧モードに移行するための処理の一部として、電動ファン40を逆回転方向に回転させるための駆動要求を、制御モジュール100に向けて送信する処理が行われる。
ステップS64またはステップS66のいずれかにおいて駆動要求が送信された場合において、これを受けた制御モジュール100の制御部130によって実行される処理は、図17乃至19を参照しながら説明したものと同様である。例えば車室減圧モードから通常空調モードに移行する場合でも、既に述べたアシスト処理が行われる。
第5実施形態について説明する。図25には、本実施形態に係る制御モジュール100及び熱交換ユニット10が搭載される車両50の内部構成が、側面視で模式的に描かれている。当該車両50の構成は、図13に示される第3実施形態における構成に近いものである。このため、以下では第3実施形態との相違点について主に説明し、第3実施形態との共通点については適宜説明を省略する。
本実施形態に係る車両50では、車室IRのフロア501の下方側にアンダーダクト510が形成されている。アンダーダクト510は、前方側のフロントルームFRと、後方側のトランクルームRRとを連通させるような空間として形成されている。
アンダーダクト510のうちフロントルームFRの近傍となる位置には、第1シャッタ装置520が設けられている。また、アンダーダクト510のうちトランクルームRRの近傍となる位置には、第2シャッタ装置521が設けられている。第1シャッタ装置520及び第2シャッタ装置521はいずれも、シャッタ装置20と同様の装置であって、アンダーダクト510を通る空気の流量を調整するための装置である。第1シャッタ装置520の動作、及び第2シャッタ装置521の動作は、空調ECU300によって個別に制御される。このような態様に替えて、それぞれの動作が他のECUによって制御されるような態様であってもよい。
アンダーダクト510の途中には、循環用ファン540が配置されている。循環用ファン540は、アンダーダクト510において前方側又は後方側に向けて空気を送り込むための電動のファンである。循環用ファン540は、電動ファン40と同様に、正回転方向及び逆回転方向のいずれにも回転することができる。図25では、循環用ファン540が正回転方向に回転している時の空気の流れ方向が矢印AR3で示されており、循環用ファン540が逆回転方向に回転している時の空気の流れ方向が矢印AR4で示されている。
フロア501のうち、第1シャッタ装置520と循環用ファン540との間となる位置には、開口502が形成されている。また、フロア501のうち、循環用ファン540と第2シャッタ装置521との間となる位置には、開口503が形成されている。開口502及び開口502によって、アンダーダクト510と車室IRとの間が連通されている。
尚、本実施形態の車両50にも、図13等に示されるものと同様の車両用空調装置70が搭載されているのであるが、図25においてはその図示が省略されている。
本実施形態に係る車両50では、フロントルームFRからアンダーダクト510へと空気を送り込むことで、アンダーダクト510内の冷却を行うことが可能となっている。図26には、このような制御が行われているときの車両50の状態の例が示されている。当該状態では、シャッタ装置20が開状態となっており、電動ファン40は正回転方向に回転している。
図26の状態では、第1シャッタ装置520及び第2シャッタ装置521はいずれも開状態となっている。また、循環用ファン540は正回転方向に回転している。
このような状態では、フロントグリルGRからフロントルームFRに流入した空気は、電動ファン40によって後方側に送り出された後、アンダーダクト510に流入する。当該空気は、アンダーダクト510を後方側に向かって流れた後にトランクルームRRに流入し、不図示の開口を通って車両50の下方側へと排出される。図26においては、以上のような空気の流れが矢印AR31、AR32で示されている。図26に示されるような動作モードのことを、以下では「床下冷却モード」とも称する。
例えば、アンダーダクト510内に熱源となる機器(例えば燃料電池等)を配置した上で上記の床下冷却モードを実行すれば、当該機器の冷却を行うことができる。
例えば冬期のように気温が低いときには、アンダーダクト510内に配置された機器(不図示)からの発熱を利用して、車室IR内の暖房を行うこともできる。図27には、このような暖房が行われているときの車両50の状態の例が示されている。当該状態では、第1シャッタ装置520及び第2シャッタ装置521はいずれも閉状態となっている。また、循環用ファン540は逆回転方向に回転している。
このような状態においては、アンダーダクト510内において後方側から前方側に向かう空気の流れが生じている。これにより、車室IR内の空気は開口503からアンダーダクト510に流入し、アンダーダクト510を前方側に向かって流れる。当該空気は、機器によって加熱されその温度を上昇させた後、開口502から車室IR内へと吹き出される。これにより、車室IR内の暖房が行われる。図27に示されるような動作モードのことを、以下では「床下排熱利用モード」とも称する。
尚、図27の例では、シャッタ装置20は閉状態となっており、電動ファン40は逆回転動作を行っている。このため、電動ファン40の近傍では、空気は後方側から前方側に向かって流れている。図27では、このような空気の流れが矢印AR33で示されている。
ただし、床下排熱利用モードにおけるシャッタ装置20の状態や電動ファン40の動作状態は、特に図27に示されるようなものに限定されない。床下排熱利用モードにおいては、シャッタ装置20は開状態となっていてもよく、電動ファン40は正回転方向に回転していてもよい。また、電動ファン40が停止していてもよい。
本実施形態でも、例えば床下排熱利用モード(図27)から床下冷却モード(図26)に移行する場合等のように、電動ファン40を正回転方向に回転させ始める際には、既に述べたアシスト処理が行われる。これにより、先の実施形態において説明したものと同様の効果を得ることができる。
第6実施形態について説明する。図28には、本実施形態に係る制御モジュール100及び熱交換ユニット10が搭載される車両50の内部構成が、側面視で模式的に描かれている。当該車両50の構成は、図20に示される第4実施形態における構成に近いものである。このため、以下では第4実施形態との相違点について主に説明し、第4実施形態との共通点については適宜説明を省略する。
本実施形態に係る車両50では、車室IRとトランクルームRRとの間を仕切る隔壁WLに、開口505が形成されている。開口505により、車室IRとトランクルームRRとの間が連通されている。また、開口505には後部用ファン541が設けられている。
後部用ファン541は、前方側又は後方側に向けて空気を送り込むための電動のファンである。後部用ファン541は、電動ファン40と同様に、正回転方向及び逆回転方向のいずれにも回転することができる。図28では、後部用ファン541が正回転方向に回転している時の空気の流れ方向が矢印AR5で示されており、後部用ファン541が逆回転方向に回転している時の空気の流れ方向が矢印AR6で示されている。
本実施形態に係る車両50では、空調された車室IR内の空気を、開口505を通じてトランクルームRRへ送り込み、トランクルームRR内の空調を行うことが可能となっている。図29には、このような空調が行われているときの車両50の状態の例が示されている。
図29の状態においては、シャッタ装置20は開状態となっており、電動ファン40は正回転方向に回転している。このため、フロントグリルGRからフロントルームFRに流入した空気は、電動ファン40によって後方側に向けて引きこまれ、熱交換ユニット10における熱交換に供される。その後、当該空気は、不図示の開口を通って車両50の下方側へと排出される。図29においては、以上のような空気の流れが矢印AR42で示されている。
図29の状態においては、内外気切換えドア781によって内気導入部772は閉じられた状態となっている。空調ケース770には、開口774及び外気導入部773を通った空気(外気)が供給される。当該空気は、空調ケース770の内部において温調され、空調風として吹き出し口771から車室IR内へと吹き出される。このとき、フロント用吹き出し口775はフロント開閉ドア783によって閉じられているので、空調風はフロントルームFRへは吹き出されない。図29においては、以上のような空気の流れが矢印AR41で示されている。
車室IR内に吹き出された空調風は、その一部が後部用ファン541によってトランクルームRRへと供給される。これにより、トランクルームRR内の空調が行われる。図29においては、以上のような空気の流れが矢印AR43で示されている。図29に示されるような車両用空調装置70の動作モードのことを、以下では「後部空調モード」とも称する。
例えば、トランクルームRR内に熱源となる機器(例えば燃料電池等)を配置した上で上記の後部空調モードモードを実行すれば、当該機器の冷却を行うことができる。
例えば冬期のように気温が低いときには、トランクルームRR内に配置された機器(不図示)からの発熱を利用して、車室IR内の暖房を行うと共に、機器からの熱を熱交換ユニット10においても利用することができる。図30には、このような暖房及び熱利用が行われているときの車両50の状態の例が示されている。
当該状態では、後部用ファン541は逆回転方向に回転している。これにより、トランクルームRRにおいて機器により加熱された空気は、後部用ファン541によって車室IR内へと供給される。図30においては、以上のような空気の流れが矢印AR44で示されている。
図30の状態では、フロント開閉ドア783は開かれており、フロントルームFRと車室IRとの間が空調ケース770を介して連通した状態となっている。尚、車両用空調装置70はその動作を停止している。
また、電動ファン40は逆回転方向に回転している。このため、電動ファン40の近傍においては、後方側から前方側に向かうような空気の流れが生じている。これに伴い、車室IR内の空気(つまり、トランクルームRRの機器によって加熱された空気)は、その一部が吹き出し口771から空調ケース770の内部に引き込まれ、フロントダクト790を通って電動ファン40に到達する。これにより、トランクルームRRの機器で生じた熱が、熱交換ユニット10において利用される。図30においては、以上のような空気の流れが矢印AR45で示されている。図30に示されるような車両用空調装置70の動作モードのことを、以下では「後部熱利用モード」とも称する。
本実施形態でも、例えば後部熱利用モード(図30)から後部空調モード(図29)に移行する場合等のように、電動ファン40を正回転方向に回転させ始める際には、既に述べたアシスト処理が行われる。これにより、先の実施形態において説明したものと同様の効果を得ることができる。
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。