JP2018104483A - 水素化天然ゴムラテックスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
一般に、ポリマーの主鎖に二重結合を含むものは、酸素やオゾンの存在下、酸化反応等により主鎖切断を引き起こし、耐久性が低下し、脆くなり、それらは致命的な欠点であった。その為、例えば、スチレン−イソプレン(ブタジエン)ブロック共重合ゴム(SIS,SBS)(特許文献1)、環状アモルファスポリオレフィン類(特許文献2)、ブタジエン−アクリロニトリル共重合ゴム(NBR)(特許文献3)では、水素化反応により、炭素−炭素二重結合を水素化し、耐久性の向上を図っている。
特許文献3のNBRの場合、有機溶媒を用いずに、ラテックス状態である不均一系で水素化反応が行われている。NBRはブタジエンユニットを含むジエン系合成ポリマーである為、反応性が高く、また、ラテックスの粒径が小さい合成ポリマーであり、天然ゴムに含まれる蛋白質のような触媒毒になる物質が含有されていないことから、反応阻害が少なく、触媒の使用量を抑えられ、工業的な製造方法が確立され、HNBRとして一般に流通されている。
この場合、天然ゴムの濃度として、全配合物100重量%に対して2〜5重量%と非常に低い濃度で反応が行われ、生産効率が悪い上、多量の有機溶媒を使用することから作業環境に悪く、工業的量産化には更なる改良が必要であった。
天然ゴムラテックスの水素化反応として、(A)遷移金属化合物触媒を用いる方法と、(B)ヒドラジン−過酸化水素によるジイミド中間体を形成させて水素化する方法がある。(非特許文献4、5)
(B)ヒドラジン−過酸化水素による方法では、架橋や主鎖切断などの副反応が起こりやすいという欠点があり、また、近年ではヒドラジンの毒性が問題となり、天然ゴムラテックスの水素化方法としては(A)の遷移金属化合物触媒を用いる方法が多く採用されている。
天然ゴムラテックスの水素化は、ジエン系合成ラテックスを用いた場合と異なり、天然ゴムラテックス中に含まれる蛋白質などの不純物が水素化反応を阻害することや、合成ポリマーに比べて粒径が大きいことなどの理由で、反応速度が遅く、天然ゴムラテックスの水素化は困難であった。その為、脱蛋白化処理された脱蛋白化天然ゴムラテックスを用いた水素化反応が行われている。
特許文献4及び5は、塩化パラジウムを主体とする触媒を用いた反応が行われているが、本発明者は特許文献4及び5を追試した結果、本特許の比較例1に示す通り、反応条件によっては反応効率が悪く、その為十分な再現性が得られず、また、脱蛋白化天然ゴムラテックスでしか水素化反応が進行しないといった、数々の問題点があった。
この場合、Grubbs触媒のような高価な触媒を用いていることや、天然ゴム濃度が非常に低い状態(全配合物100重量%に対して、固形分濃度が1〜2重量%)で検討されていることから、生産コストが高い上、生産効率が悪いという問題点があり、更に、特許文献4及び5と同様に、脱蛋白化天然ゴムラテックスを用いたものでしか例示されていなかった。
1.天然ゴムラテックスを原材料に、水素化触媒の存在下、水素と反応させて得られる水素化天然ゴムラテックスであって、
前記天然ゴムラテックス中のゴム分は、水を含む全配合物の100重量%に対して10重量%以上含有し、
前記水素化触媒は、ルテニウム化合物であることを特徴とする水素化天然ゴムラテックスの製造方法。
2.前記ルテニウム化合物は、水溶性であることを特徴とする請求項1に記載の水素化天然ゴムラテックスの製造方法。
3.前記ルテニウム化合物は、ハロゲン化ルテニウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の水素化天然ゴムラテックスの製造方法。
4.水素化触媒を連続的又は間欠的に添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水素化天然ゴムラテックスの製造方法。
5.脱蛋白化処理を施さない天然ゴムラテックスを用いた請求項1〜4のいずれかに記載の水素化天然ゴムラテックスの製造方法。
6.前記水素化天然ゴムラテックス中の水素添加物の水素添加化率が65%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水素化天然ゴムラテックスの製造方法。
7.前記水素化反応の反応温度が60℃〜150℃であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の水素化天然ゴムラテックスの製造方法。
本発明の水素化天然ゴムラテックスは、天然ゴムラテックスを原材料に、水素化触媒の存在下、水素と反応させて得られるものである。
原材料の天然ゴムラテックスとしては、(1)脱蛋白処理を施さない天然ゴムラテックス、(2)脱蛋白処理を施した脱蛋白化天然ゴムラテックスから選択されるが、
(1)脱蛋白処理を施さない天然ゴムラテックスとしては、フィールドラテックス、アンモニアを含有した高アンモニアタイプのHAラテックス、低アンモニアタイプのLAラテックス、濃縮前のフィールドラテックスにアンモニア処理等を施し、二回以上の遠心分離により非ゴム分を1%未満に抑えた高精製ラテックス、等を用いることができる。
(2)脱蛋白天然ゴムラテックスとしては、酵素を添加して蛋白質を分解し、界面活性剤で処理した後、精製する酵素処理による脱蛋白化タイプのものや、尿素処理により蛋白質を除去し精製した脱蛋白化タイプのものがある。
これらは単独でも、あるいは複数を組み合わせても使用してもよい。
その中でも、触媒使用量の最適化から好ましくは、酵素処理天然ゴムラテックスや尿素処理天然ゴムラテックスを用いて遠心分離処理を行った脱蛋白化天然ゴムラテックスであり、コスト面や性能面から最も好ましくは、遠心分離を二回以上行い非ゴム分を1%未満に抑えた高精製天然ゴムラテックスである。
即ち、ラテックスが凝集しない限りにおいて、水素化天然ゴムラテックスの生産効率を向上させる為には、ゴム分濃度が高いことが望ましい。
水溶性のルテニウム化合物としては、ハロゲン化ルテニウム、硫酸ルテニウム、硝酸ルテニウム、酢酸ルテニウム、ルテニウムニトロシルハライド、などの無機又は有機酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィンを配位子とするルテニウム錯体、1,2−ビス(ジヒドロキシメチルホスフィノ)エタンを配位子とするルテニウム錯体などを挙げることができる。
これらの中で、ハロゲン化ルテニウムが好ましい。
ハロゲン化ルテニウムとしては、塩化ルテニウム(RuCl3)、臭化ルテニウム(RuBr3)、ヨウ化ルテニウム(RuI3)などがある。 この中で、価格面や反応性の点などから、塩化ルテニウム(RuCl3)が最も好ましい。
これらは単独でも、あるいは複数を組み合わせても使用してもよい。
一方、本発明の水素化触媒であるハロゲン化ルテニウムは、水溶性であり、溶解度が高く、強酸などの処理を必要としないことから、濃度の高い天然ゴムラテックスでも凝集せず、安定的に水素化反応するという特徴があり、また、ハロゲン化ルテニウムを用いて、後述する製造方法により水素化反応を行うことにより、脱蛋白処理を施さない天然ゴムラテックスでも水素化反応が進行することが可能である。
また、高濃度の天然ゴムラテックスを用いた場合においても、この方法によれば、凝集することなく安定的に水素化天然ゴムラテックスを得られることができる。
特に天然ゴムラテックスのような不純物の多いポリマーへの水素化反応の場合、蛋白質などの触媒毒となるような物質が含有されていることから、反応阻害要因となり、触媒活性が低下し、水素化効率が悪くなる傾向がある為、水素化天然ゴムラテックスの反応には脱蛋白化処理を施した脱蛋白天然ゴムラテックスを用いた方が効率良く反応するという傾向がある。
本発明によれば、水溶性のハロゲン化ルテニウムを用いた水素化触媒を連続的又は間欠的に添加する製造方法により、脱蛋白化処理を施さない天然ゴムラテックスでも安定的に水素化反応が進行し、少ない触媒量で高濃度の水素化天然ゴムラテックスを得ることを可能とする。
触媒は、窒素などで脱酸素化されたイオン交換水や蒸留水で希釈しておくことが好ましい。特に、連続的又は間欠的に添加する場合は、系内に酸素などが入り込まないように、窒素などの不活性ガス下で行うことが好ましい。触媒は、水溶性のルテニウムを単独でも、あるいは他の水素化触媒と複数を組み合わせても使用してもよい。ハロゲン化ルテニウムを用いる場合は、そのままの状態で使用してもよいし、ハロゲンの一部を他の配位子と置換させて使用してもよい。
触媒使用量としては、天然ゴムラテックス中のゴム分に対して、0.01〜5.0重量%のRu量が好ましい。
特に、0.02〜3.0重量%のRu量が好ましく、より好ましくは0.05〜2.0重量%のRu量が好ましく、更に、0.1〜1.5重量%のRu量が好ましく、最も好ましくは、0.2〜1.0重量%である。
0.01重量%未満であると水素化反応が十分に進行しない場合があり、一方、5重量%を超えると、高コストになり好ましくない。
触媒を連続的又は間歇的に添加する方法としては、ポンプを使用して連続的に添加する方法や、ある量を含有した容器から都度添加する方法、触媒を徐放性の容器などに入れて触媒を徐放していく方法などがあるが、それらの方法は、特に限定するものではない。
連続的又は間欠的に添加する場合の触媒添加量は、最初の添加量をやや多めに添加し、その後は少量を連続的又は間欠的に添加することが好ましい。
界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤及びカチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などから選択できるが、その中でもラテックスの安定性の点から、アニオン系界面活性剤が好ましい。
(2)水素化反応工程において、
天然ゴムラテックスを水素化触媒の存在下、水素ガスを用いて反応させ、水素化天然ゴムラテックスを得る。
水素化反応は、水素の存在下、バッチ式、セミバッチ式、連続式、いずれかの方法を採用してもよい。
尚、水素化反応における酸素の存在は、ポリマーへの水素化を阻害する要因となり、酸化反応のような副反応をもたらす為、脱酸素下、例えば脱酸素状態でのラテックス中で行うことが好ましい。
また、上述した通り、水素化触媒を希釈する際は脱酸素化した状態で行う必要があり、又は別の方法として、天然ゴムラテックスと水素化触媒である水溶性ルテニウム触媒の水溶液を室温下で混合した後、脱酸素化する方法を用いることができ、作業の短縮となり、好ましい方法である。
60℃未満では、反応速度が遅い為に水素添加化率が低くなる恐れがあり、150℃を超える反応温度では、ラテックスの安定性が悪く、凝集する恐れがあり、更に天然ゴム自体の劣化が起こりやすくなることから、好ましくない。
特に、80℃〜130℃の温度範囲が好ましい。
水素ガスの添加方法としては、圧力を一定に保つため、連続的に添加する方法や、間欠的に添加する方法を用いてもよい。
水素化反応後は、ラテックス中の触媒を除去することが好ましく、触媒の除去方法は、既知の方法を採用することにより、回収することができる。
即ち、延伸結晶化や通常時の結晶・非結晶の問題があり、水素添加率が2/3を超える状態、即ち、67%以上の水素添加率になると、結晶性が発現し始め、非特許文献5に記載されている通り、水素添加率が高い状態であると、天然ゴムの特徴である延伸結晶化が起こり難くなる傾向にあるとされている。
従って、力学特性が要求される用途においては、水素添加率は最大でも65%以下が好ましく、より好ましくは50%以下である。
一方、水素添加率が非常に状態である場合、例えば10%以下では、耐久性の向上が得られない場合があり好ましくない。水素添加率は、力学特性が要求される用途・分野での使用においては、水素添加率は20〜50%が最も好ましい。
更に、本実施例から分かる通り、得られた水素化天然ゴムラテックスは、伸長率が向上し、弾性率、破断点強度は低下する傾向にある。
このことから、恐らく、本発明法で製造された水素化天然ゴムは、ゴムとリン脂質間のエステル結合が(一部又は全て)切断されたものと推定される。
以下に実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
(1)シートの作成:水素化品及び未水素化品のシート化ガラス板に原料天然ゴムラテックス及び実施例で得られた水素化天然ゴムラテックスを流し込み、水分を蒸発させてシートを作製した。シートの厚みは、0.3〜0.8mm程度とした。
(2)水素化率の測定:(株)島津製作所社製のフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を使用して、水素化率を求めた。未水素化品のNRシート、水素化品のNRシートをFT−IRでガラス面、及び空気面の両面をATR法で測定し、833cm−1と1370cm−1の比較から、水素化率を求めた。(ガラス面と空気面では異なるので、平均値を採用して、水素化率とした。)
(3)力学特性の測定:力学特性の測定は、(株)島津製作所社製のオートグラフAGS−1kgNGを使用した。厚さ;0.3〜0.8mm程度の水添物、未水添物、原料NRのシートから4号ダンベルを切り出し、500mm/minの速度で引張試験を行った。
(4)分解温度の測定:分解温度の評価は、SIIのDTA装置を使用し、窒素ガス流通下、室温から500℃まで10℃/minの速度で測定した。
水素化触媒である市販の塩化ルテニウム等を、イオン交換水に適量添加し、触媒を作製・調製した。
例えば、塩化ルテニウムRuCl3の水溶液(固形分濃度3.8重量%)を作成する場合、和光純薬工業(株)社製の塩化ルテニウム(III)n水和物を用いて、RuCl3・nH2Oを5.0g秤量し、イオン交換水で希釈して、RuCl3水溶液131gを調製した。
尚、塩化ルテニウム(III)n水和物を用いた場合、Ru濃度は43.1重量%として計算し、上記のRuCl3水溶液中におけるRu濃度としては、1.64重量%である。
原料の天然ゴムラテックスとして(A)脱蛋白質天然ゴムラテックスである住友精化(株)社のセラテックス1101(ゴム分濃度60重量%)を120gビーカーに投入し、次に、界面活性剤を3g投入後、撹拌混合し、
次に、(a)触媒添加方法は、予め全量を原料の天然ゴムラテックスに一括添加する方法を用いて、上記の手順により調製したRuCl3触媒の水溶液を26.5g投入した後、更にイオン交換水209gを加え撹拌混合し、未変性のラテックス混合物(i)を得た。
このときのゴム分濃度は、全配合物量100重量%に対して、ゴム分濃度を20重量%とした。
また、Ru濃度は、全配合物中の固形分100重量%に対して、0.6重量%であった。
次に、得られた未変性のラテックス混合物(i)をオートクレーブに投入し、オートクレーブ容器内のラテックスを窒素ガス置換してラテックス中の溶存酸素を除去した。
その後、オートクレーブ内を水素ガス置換し、水素ガスを1.2MPaに加圧し、85℃になるまで急昇温し、オートクレーブ内の圧力を1.2MPaに維持し、85℃で5時間水素化反応を行った。 水素化の進行状況は、圧力の低下から判断し、圧力が1.0MPaに低下すると水素を継ぎ足す方法で水素化を続行させた。5時間経過後、サンプリングし(実施例1)、その後も継続して水素化を続行させ、反応開始から21時間経過後、オートクレーブを急冷により水素化反応を完全に停止させた。オートクレーブ内から得られた水素化天然ゴムを回収した。(実施例2)
実施例1及び実施例2で得られた水素化天然ゴムラテックスは凝集せず安定なラテックス状態であった。
得られた水素化天然ゴムラテックス中における水素化天然ゴムの水素添加率は、(実施例1)18%、(実施例2)33%であった。
脱蛋白天然ゴムラテックスの配合量を133g、RuCl3触媒の水溶液を20gに変更し、ゴム分濃度を25重量%になるようにイオン交換水の配合量を調整し、また、反応温度及び反応時間を変更した以外は実施例1と同様の方法で行った。
尚、実施例3では4時間後にサンプリングし、実施例4では反応開始から20時間継続して水素化反応を行い、水素化天然ゴムラテックスを得た。
得られた水素化天然ゴムラテックス中における水素化天然ゴムの水素添加率は、(実施例3)11%、(実施例4)17%であった。
脱蛋白天然ゴムラテックスの配合量及びRuCl3触媒水溶液の配合量を変更してゴム固形分濃度を35重量%とし、反応温度及び反応時間を変更した以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水素化天然ゴムラテックス中における水素化天然ゴムの水素添加率は、31%であった。
原料の天然ゴムラテックスに(B)遠心分離処理を複数回施したハイアンモニアタイプの高精製天然ゴムラテックス(マレーシア産、ゴム分濃度60.1重量%、非ゴム分0.7重量%)を用いて150g配合し、RuCl3触媒の水溶液を25gに変更し、また、ゴム固形分濃度を25重量%に変更し、反応温度及び反応時間を変更した以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水素化天然ゴムラテックス中における水素化天然ゴムの水素添加率は、15%であった。
原料の天然ゴムラテックスを(B)高精製天然ゴムラテックスに変更し、ゴム固形分濃度を30重量%とし、RuCl3触媒水溶液の配合量を変更し、また、反応温度及び反応時間を変更した以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水素化天然ゴムラテックス中における水素化天然ゴムの水素添加率は、18%であった。
原料の天然ゴムラテックスに(C)脱蛋白処理を施さない天然ゴムラテックスであるハイアンモニアタイプの天然ゴムラテックス(マレーシア産、ゴム分濃度60.2重量%、非ゴム分1.3重量%)を用いて、配合量を70gとし、RuCl3水溶液を60gに変更し、ゴム固形分濃度を25重量%に変更し、反応温度及び反応時間を変更した以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水素化天然ゴムラテックス中における水素化天然ゴムの水素添加率は、15%であった。
触媒の添加方法を間欠的添加方法(b)3回に分けて間欠的に添加する方法に変更した以外は、実施例2と同様の方法で行った。
尚、(b)3回に分けて添加する方法は、予め触媒量の全量のうち1/2を原料の天然ゴムラテックスに混合し、水素化反応を4時間行った後、次いで触媒量の1/4を配合し4時間水素化反応を行い、更に残りの触媒量1/4を配合して、合計12時間水素化反応を行った。
得られた水素化天然ゴムラテックス中における水素化天然ゴムの水素添加率は、38%であった。
この結果より、触媒の添加方法以外を同条件で行った実施例2では水素添加率33%に比べ、高い水素添加率であることから、間欠的に添加する方法がより好ましいことが解る。
触媒の添加方法を(b)3回に分けて添加する方法(実施例9と同様の方法)に変更した以外は、実施例2と同様の方法で行った。
得られた水素化天然ゴムラテックス中における水素化天然ゴムの水素添加率は、48%であった。
触媒の添加方法を(b)3回に分けて添加する方法(実施例9と同様の方法)に変更し、反応時間を12時間に変更した以外は、実施例6と同様の方法で行った。
得られた水素化天然ゴムラテックス中における水素化天然ゴムの水素添加率は、28%であった。
触媒の添加方法を(b´)5回に分けて添加する方法に変更し、反応時間を12時間に変更した以外は実施例7と同様の方法で行った。
尚、(b´)5回に分けて添加する方法は、予め触媒量の全量のうち1/3の量を原料の天然ゴムラテックスに混合し、水素化反応を2時間行った後、次いで2.5時間ごとに触媒量の1/6を添加し、それを4回繰り返し、合計12時間水素化反応を行った。
得られた水素化天然ゴムラテックス中における水素化天然ゴムの水素添加率は、35%であった。
原料の天然ゴムラテックスを(C)ハイアンモニア天然ゴムラテックスに変更し、反応温度を120℃に変更した以外は、実施例12と同様の方法で行った。
得られた水素化天然ゴムラテックス中における水素化天然ゴムの水素添加率は、35%であった。
同様にして実施例6と実施例11の比較において実施例11がより良好であり、実施例7と実施例12の比較では実施例12が良好であり、実施例8と実施例13の比較では実施例13が良好な結果である。
原料の天然ゴムラテックスに(B)高精製天然ゴムラテックスを用いて、RuCl3触媒の代わりに塩化パラジウム(RdCl2)を用いた。PdCl2は水に溶解し難いので、食塩を適量加えて水溶性のPdCl2に調整し、その後、ラテックス中に混合し、実施例6と同様の方法で水素化反応を行った。
この時、Pdの濃度はゴム分濃度に対して、0.45重量%とした。
反応温度を100℃とし、20時間水素化反応を行ったが、反応中はオートクレーブ内の圧力低下は確認されず、殆ど水素化反応は進行しなかった。
反応後に回収した触媒含有の天然ゴムラテックスをシート化したものは、表面は非常にべたつきがあり、力学測定はできなかった。
原料の天然ゴムラテックスに(B)高精製天然ゴムラテックスを用いて、RuCl3触媒の代わりに非水溶性のRu錯体を用いた。
それをラテックス中に混合し、実施例6と同様の方法で水素化反応を行った。
この時、Ruの濃度は固形分濃度に対して、0.45重量%とした。
反応温度を100℃とし、20時間水素化反応を行ったが、反応中はオートクレーブ内の圧力低下は確認されず、殆ど水素化は進行しなかった。
即ち、本発明は、
1.天然ゴムラテックスを原材料に、水素化触媒の存在下、有機溶媒を用いずに、水素と反応させて得られる水素化天然ゴムラテックスであって、
前記天然ゴムラテックス中のゴム分は、水を含む全配合物の100重量%に対して10重量%以上含有し、
前記水素化触媒は、水溶性ハロゲン化ルテニウム化合物であり、
連続的又は間欠的に触媒を添加することを特徴とする水素化天然ゴムラテックスの製造方法。
2.脱蛋白化処理を施さない天然ゴムラテックスを用いた請求項1に記載の水素化天然ゴムラテックスの製造方法。
3.前記水素化天然ゴムラテックス中の水素添加物の水素添加率が65%以下であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の水素化天然ゴムラテックスの製造方法。
4.前記水素化反応の反応温度が60℃〜150℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水素化天然ゴムラテックスの製造方法。
Claims (7)
- 天然ゴムラテックスを原材料に、水素化触媒の存在下、水素と反応させて得られる水素化天然ゴムラテックスであって、
前記天然ゴムラテックス中のゴム分は、水を含む全配合物の100重量%に対して10重量%以上含有し、
前記水素化触媒は、ルテニウム化合物であることを特徴とする水素化天然ゴムラテックスの製造方法。 - 前記ルテニウム化合物は、水溶性であることを特徴とする請求項1に記載の水素化天然ゴムラテックスの製造方法。
- 前記ルテニウム化合物は、ハロゲン化ルテニウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の水素化天然ゴムラテックスの製造方法。
- 水素化触媒を連続的又は間欠的に添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水素化天然ゴムラテックスの製造方法。
- 脱蛋白化処理を施さない天然ゴムラテックスを用いた請求項1〜4のいずれかに記載の水素化天然ゴムラテックスの製造方法。
- 前記水素化天然ゴムラテックス中の水素添加物の水素添加化率が65%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水素化天然ゴムラテックスの製造方法。
- 前記水素化反応の反応温度が60℃〜150℃であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の水素化天然ゴムラテックスの製造方法。
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