JP2018084004A - 透水性付与剤及びその利用 - Google Patents
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Abstract
Description
また、不織布の製造面からは、カード工程の高速化に伴い、シリンダーへの巻付き防止や静電気発生防止といった良好なカード通過性が要求される。
このような要求特性を満足するために、例えば、特許文献1、2に記載の処理剤を用いることが開示されている。
本願発明者らは、原因を調査した結果、おむつ製品の中で、トップシートの耐久透水性が経時的に低下していることが原因であることを突き止めた。
本発明の目的は、長期的に耐久親水性を維持できる透水性付与剤を提供するものである。
すなわち、本発明は、多価アルコール脂肪酸エステルサルフェート塩(A)と、有機リン酸エステル化合物(B1)及び有機スルホン酸化合物(B2)から選ばれる少なくとも1種である化合物(B)とを含む透水性付与剤であって、前記サルフェート塩(A)を構成する脂肪酸が少なくとも1つの炭素―炭素二重結合を含み、前記化合物(B)が炭素数6〜10の炭化水素基を有する化合物(B1)又は化合物(B2)を必須に含有する、透水性付与剤である。
前記透水性付与剤の不揮発分全体に占める前記サルフェート塩(A)の重量割合が4〜60重量%であり、前記化合物(B)の重量割合が15〜95重量%であると好ましい。
ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルとジカルボン酸との縮合物の少なくとも1つの水酸基を脂肪酸で封鎖したエステル(C)をさらに含み、前記透水性付与剤の不揮発分全体に占める前記エステル(C)の重量割合が0.2〜50重量%であると好ましい。
不織布製造用合成繊維に用いられると好ましい。
本発明の不織布の製造方法は、上記透水性繊維を集積させて繊維ウェブを作製し、得られた繊維ウェブを熱処理する工程を含む。
〔多価アルコール脂肪酸エステルサルフェート塩(A)〕
多価アルコール脂肪酸エステルサルフェート塩(A)(以後単にサルフェート塩(A)と表すことがある)は、構成する脂肪酸が少なくとも1つの炭素―炭素二重結合を含む。
後述する成分(B)と併用することにより、長期的に耐久親水性を維持できる。
長期的に耐久親水性を維持できる理由は定かではないが、構成する脂肪酸が少なくとも1つの炭素―炭素二重結合を含むので、経時的に重合反応が進行し、エステル化合物の分解による分子量低下に起因する耐久性の低下を防止しているためではないか、と推定している。
硫酸化の方法は、特に限定されず、発煙硫酸、濃硫酸、クロルスルホン酸、三酸化硫黄ガス等により、公知の方法を用いることができる。
中和の方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。中和に用いる塩基性物質としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物、アンモニア、ヒドロキシアルキル鎖の炭素原子数が2〜4の、モノ、ジ及びトリアルカノールアミン、アルキル鎖の炭素原子数が1〜4の、1級、2級及び3級アルキルアミン等である。塩基性物質は二種以上併用してもよい。
このような不飽和脂肪酸としては、たとえば、オレイン酸、リシノール酸、リノレン酸が挙げられ、飽和脂肪酸、ヒドロキシ脂肪酸又はヒドロキシ不飽和脂肪酸としては、たとえば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラノリン脂肪酸、ヒドロキシカプリル酸、ヒドロキシカプリン酸、ヒドロキシウンデカン酸、ヒドロキシラウリン酸、ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
これらのなかでも、耐久親水性の観点から、リノレン酸が好ましい。
化合物(B)は、有機リン酸エステル化合物(B1)及び有機スルホン酸化合物(B2)から選ばれる少なくとも1種であり、親水性に寄与する化合物である。
有機リン酸エステル化合物(B1)としては、下記一般式(1)で示される化合物及び下記一般式(2)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
A1Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。オキシアルキレン単位の繰り返し数であるmは0〜15の整数であり、0〜10が好ましく、0〜3がさらに好ましく、mが0でポリオキシアルキレン基を含有しない場合が特に好ましい。(A1O)mは、オキシアルキレン単位としてオキシエチレン単位を50モル%以上有するポリオキシアルキレン基が好ましい。
また、Q=R1O(A1O)mの場合、一般式(2)で示される化合物を構成する2つの有機基[R1O(A1O)m]−は、同一でもよく、異なっていてもよい。
有機リン酸エステル化合物(B1−1)のP核積分比率(%)は、5〜55%が好ましく、10〜50%がより好ましく、15〜45%がさらに好ましい。有機リン酸エステル化合物(B1−2)のP核積分比率(%)は、15〜65%が好ましく、20〜60%がより好ましく、25〜55%がさらに好ましい。有機リン酸エステル化合物(B1−3)のP核積分比率(%)は、15〜65%が好ましく、20〜60%がより好ましく、25〜55%がさらに好ましい。有機リン酸エステル化合物(B1−4)のP核積分比率(%)は、0〜10%が好ましく、0〜8%がより好ましく、0〜7%がさらに好ましい。無機リン酸のP核積分比率(%)は、0〜10%が好ましく、0〜8%がより好ましく、0〜7%がさらに好ましい。
有機スルホン酸化合物(B2)は、下記式(4)で示される化合物である。
R2−SO3T (4)
(式中、Tはアルカリ金属、4級窒素含有化合物または4級リン含有化合物、R2は有機基を表す)
エステル(C)は、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルとジカルボン酸との縮合物の少なくとも1つの水酸基を脂肪酸で封鎖したものである。
本願発明の透水性付与剤がエステル(C)を含むと、耐久親水性の長期化が極端に向上するために好ましい。
このときの透水性付与剤の不揮発分全体に占めるエステル(C)の重量割合は、0.2〜50重量%が好ましく、10〜45重量%がより好ましく、15〜40重量%がさらに好ましく、20〜35重量%が特に好ましい。該重量割合が0.2重量%未満の場合、耐久親水性の長期化の効果が発揮されないことがある。該重量割合が50重量%超の場合、繊維のカード通過性が低下することがある。
ポリヒドロキシエステルとしては、たとえば、炭素数6〜22(好ましくは12〜22)のヒドロキシ脂肪酸と多価アルコールとのエステル化物のアルキレンオキシド付加物を挙げることができる。
ポリヒドロキシエステルを製造する場合、多価アルコールの水酸基1モル当量あたりのヒドロキシ脂肪酸のカルボキシル基モル当量は、0.5〜1の範囲であることが好ましい。
前記透水性付与剤の不揮発分全体に占める前記サルフェート塩(A)の重量割合は4〜60重量%が好ましく、10〜55重量%がより好ましく、15〜50重量%がさらに好ましく、20〜45重量%が特に好ましい。該重量割合が4重量%未満の場合、耐久親水性の長期化の効果が発揮されないことがある。該重量割合が60重量%超の場合、繊維のカード通過性が悪化する。
本発明の透水性繊維は、疎水性合成繊維(繊維本体)とこれに付着した上記透水性付与剤とから構成される透水性繊維であり、一般的には所定の長さに切断した短繊維である。透水性付与剤の不揮発分の付着率は、前記透水性繊維に対して0.1〜2重量%であり、好ましくは0.3〜1重量%である。該付着率が0.1重量%未満では、繊維や不織布の瞬時透水性、耐久透水性が低下することがある。一方、該付着率が2重量%を超えると、繊維をカード処理する時に巻付きが多くなって生産性が大幅に低下し、乾式法等の方法により得られた不織布等の繊維製品が透水後にベトツキが大きくなることがある。
これら疎水性合成繊維(繊維本体)のなかでも、付着した透水性付与剤が尿や体液等の液体で濡れても繊維表面に残り易いという理由から、ポリオレフィン系繊維(ポリオレフィン繊維やポリオレフィン繊維を含む複合繊維)、ポリエステル系繊維(ポリエステル繊維やポリエステル繊維を含む複合繊維)等の疎水性合成繊維に本発明の透水性付与剤は好適である。また、これらのなかでも、不織布製造用の疎水性合成繊維に対して、本発明の透水性付与剤は特に好適である。
下記(A−1〜D−5)の各成分を用い、表1〜6に記載の比率で混合を行い、撹拌して、各実施例・比較例の高圧水流絡合用繊維処理剤の不揮発分を調製し、イオン交換水で希釈して、0.5%濃度のエマルションを得た。
A−1 牛脂サルフェートナトリウム塩
A−2 ロート油ナトリウム塩
A−3 菜種油サルフェートカリウム塩
A−4 グリセリンモノリノレン酸エステルサルフェートナトリウム塩
A−5 グリセリンモノオレイン酸エステルサルフェートナトリウム塩
A−6 ソルビタンモノリノール酸エステルサルフェートナトリウム塩
B1−1 ヘキシルホスフェートカリウム塩
B1−2 オクチルホスフェートカリウム塩
B1−3 ポリオキシエチレン(4モル)オクチルホスフェートジエタノールアミン塩
B1−4 デシルホスフェートカリウム塩
B2−1 2−エチルヘキシルスルホン酸ナトリウム塩
B2−2 デシルスルホン酸ナトリウム塩
B2−3 ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩
B´1−1 セチルホスフェートカリウム塩
B´2−1 ラウリルスルホン酸ナトリウム塩
C−1 ポリオキシエチレン(20モル)カスターワックスのマレイン酸縮合物の水酸基1 モル当量あたりステアリン酸1モル当量で封鎖したエステル(ヨウ素価6)
C−2 ポリオキシエチレン(20モル)カスターワックスのマレイン酸縮合物の水酸基1 モル当量あたりベヘン酸1モル当量で封鎖したエステル
D−1 ポリオキシエチレン変性シリコーン(Si元素含有率:20%、分子量:10000)
D−2 ポリエチレングリコール(分子量:400)モノオレエート
(静電気防止性)
カード試験機を用いて20℃×45%RHの条件で試料透水性繊維40gをシリンダー回転数970rpm(設定可能な最高回転数)でミニチュアカード機に通す。発生した静電気の電圧を測定し、以下の基準で評価する。なお、5が最も良い評価であり、1.0kV以下であれば実用に供し得る。
5…0.5kV未満、4…0.5〜1.0kV、3…1.0kV超〜1.5kV、
2…1.5kV超〜2.0kV、1…2.0kVより大
(シリンダー巻付き)
カード試験機を用いて30℃×70%RHの条件で試料短繊維40gをカーディングした後にシリンダーを観察し、以下の基準で評価した。なお、5が最も良い評価である。4以上であると実用に供し得る。
5 … 巻付きなし
4 … 巻付いているが、巻付がシリンダー面の1/10以下に巻付きあり
3 … 巻付がシリンダー面の1/10超かつ1/5以下に巻付きあり
2 … 巻付がシリンダー面の1/5超かつ1/3以下に巻付きあり
1 … 巻付がシリンダー面の1/3超〜全面に巻付きあり
不織布(10cm×10cm)を、45度に傾斜した台上に置き、不織布表面から10mmの高さに設置したビューレットより1滴(約0.05ml)の生理食塩水を滴下して、滴下位置から、生理食塩水が吸収されて消失するまでの距離を測定する。不織布表面の10箇所でこの測定を行って平均液流れ距離を算出する。この距離が20mm未満であれば瞬時透水性は良好である。
不織布を濾紙(東洋濾紙、No.5)の上に重ね、不織布表面から10mmの高さに設置したビューレットより1滴(約0.05ml)の生理食塩水を滴下して、不織布表面から水滴が消失するまでの時間を測定する。不織布表面の20箇所でこの測定を行って5秒未満の個数を表示する。この個数が16個以上であれば瞬時透水性は良好となり実用に供し得る。
不織布(10cm×10cm)を市販の紙おむつに重ね、その上に内径60mmの円筒を置き、生理食塩水80mlを円筒内に注入して不織布を通して紙おむつに吸収させた。注水後3分間放置した後に、不織布を2枚の濾紙(東洋濾紙、No.5)の間に挟み、その上に板(10cm×10cm)と重り(合計3.5Kg)を乗せて3分間放置して脱水し、その後さらに5分間風乾した。風乾後の試料不織布に上記円筒内で生理食塩水が通過した箇所について、不織布の瞬時透水性の試験方法によって、生理食塩水の消失時間を20箇所で測定し、消失時間5秒未満の個数を表示した。この個数が10個以上であれば耐久透水性は良好である。試験に供した不織布について、同様の作業を繰り返して行う。この繰り返し試験では回数を重ねても生理食塩水の消失個数(消失時間5秒未満となる箇所の個数)が多い方が良い。
市販の紙おむつの上に不織布(10cm×10cm)を置き、さらにその上に内径60mmの円筒を置き、生理食塩水100mlを円筒内に注入して不織布を通して紙おむつに吸収させた。生理食塩水が全て紙おむつに吸収されたら円筒を取り除き、予め秤量した濾紙(東洋濾紙、No.5)を20枚重ね、これに5Kgの荷重を乗せた。5分間放置後、濾紙の重さを計り、重量増加分を測定して液戻り量(g)とした。1.2g以下を許容範囲としているが、1.0g以下が望ましい。
不織布(10cm×10cm)を40℃×70%RHの環境試験器に30日放置する。この不織布を30日後に環境試験器から取り出して、上記に示した不織布の液流れ距離、瞬時透水性及び耐久透水性試験を行う。環境試験器投入前後の液流れ距離、瞬時透水性及び耐久透水性の差が小さいほど、透水性の経時低下が小さいとする。この経時低下が小さい方がよい。
液流れ距離の経時低下の合否の判定方法は、経時前の液流れ距離の合否の判定方法に準ずる。
瞬時透水性及び耐久透水性の経時低下の合否の判定は、経時前後の不織布の瞬時透水及び耐久透水2回目の生理食塩水の消失個数をそれぞれ比較し、双方(瞬時透水及び耐久透水)とも経時後の消失個数が経時前の消失個数の7割以上であるものを良好とした。
一方、サルフェート塩(A)がない場合(比較例3及び4)、化合物(B1)がない場合(比較例1及び2)、有機リン酸エステル化合物又は有機スルホン酸化合物であっても、炭素数6〜10の炭化水素基を有しない場合(比較例5及び6)には、本願の課題のうち、少なくとも1つを解決することができなかった。
Claims (7)
- 多価アルコール脂肪酸エステルサルフェート塩(A)と、有機リン酸エステル化合物(B1)及び有機スルホン酸化合物(B2)から選ばれる少なくとも1種である化合物(B)とを含む透水性付与剤であって、
前記サルフェート塩(A)を構成する脂肪酸が少なくとも1つの炭素―炭素二重結合を含み、前記化合物(B)が炭素数6〜10の炭化水素基を有する化合物(B1)又は化合物(B2)を必須に含有する、透水性付与剤。 - 前記サルフェート塩(A)に対する化合物(B)の重量比率(B/A)が、0.2〜20である、請求項1に記載の透水性付与剤。
- 前記透水性付与剤の不揮発分全体に占める前記サルフェート塩(A)の重量割合が4〜60重量%であり、前記化合物(B)の重量割合が15〜95重量%である、請求項1に記載の透水性付与剤。
- ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルとジカルボン酸との縮合物の少なくとも1つの水酸基を脂肪酸で封鎖したエステル(C)をさらに含み、前記透水性付与剤の不揮発分全体に占める前記エステル(C)の重量割合が0.2〜50重量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の透水性付与剤。
- 不織布製造用合成繊維に用いられる、請求項1〜4のいずれかに記載の透水性付与剤。
- 不織布製造用合成繊維に対して、請求項1〜5のいずれかに記載の透水性付与剤を付着させてなる、透水性繊維。
- 請求項6に記載の透水性繊維を集積させて繊維ウェブを作製し、得られた繊維ウェブを熱処理する工程を含む、不織布の製造方法。
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