JP2018066198A - 錆抑制粘着シート貼付プール - Google Patents
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これらのコースライン・クロスライン等は、現在のところ塗装により施工されるのが一般的である。従来の水中塗装の方法については、例えば、特許文献1によって開示されている。現在、これらの意匠は下地となるエポキシ樹脂系の塗料の上にアクリルウレタン等の塗料を塗装することによって形成されている。しかし、経時劣化により塗装による意匠に剥離や退色等が発生するため、5〜10年毎に塗り替える必要性があった。
又、ステンレスプール等にこれらの意匠を塗装によって形成するためには、プール水槽の表面であって塗装する箇所を、塗装下地調整によって予め粗面を形成しておくことが知られている。塗料を強固にプール水槽の表面に定着させ、プール水槽の表面からの塗料の剥離を抑止するためである。
本発明者は、塗装による局部腐食の原因を鋭意研究した結果、特に無塗装ステンレスプールにおける局部腐食がコースラインやクロスライン等の部分塗装端部と床板や側板との境界部で進行していることが分かった。このような局部腐食は、外観品質の低下を招いていた。又、コースラインが退色することにより水泳者が水泳方向を見誤ったり、クロスラインが退色することによりターン開始位置を見誤ったり、ターン側の端壁のクロスラインが退色することによりターン時におけるキック位置を見誤る等、機能性低下の原因になっていた。
プール水槽の素材となる18-8ステンレス鋼は、18%クロム、8%ニッケル、残部は鉄と微量元素のオーステナイト系ステンレス鋼であり、その表面にはクロム(Cr)と酸素(O)が結合した安定した酸化被膜(不動態被膜)が数ナノメートル(1nm=1mm/1,000,000)の厚さで形成されている。この不動態被膜により含有成分の大部分を占める鉄(Fe)の酸化腐食、すなわち錆の発生を防止しているが、プール水中で不動態被膜が破壊されると、プール水(H2O)と溶存酸素(O2)と反応し水酸化第一鉄を生成する(Fe + H2O + 1/2 O2 → Fe(OH)2)。
次いで、水酸化第一鉄は水酸化第二鉄を生成する(2 Fe(OH)2 + H2O + 1/2 O2 → 2 Fe(OH)3)。次いで、水酸化第二鉄から水分子が取れてオキシ水酸化鉄、すなわち赤錆となる(Fe(OH)3 → FeOOH + H2O)。鉄原子は正の電荷を帯びて陽イオンとなり水中に溶出し、負の電荷を帯びた2個の電子が残る(Fe → Fe2+ + 2e-)。これが基本的な酸化反応であり、鉄の溶解反応(アノード反応(陽極反応))として知られている。次いで、水中の酸素が鉄表面で遊離した電子を受け取り、酸素は還元され水酸化物イオン(OH-)となる(カソード反応(陰極反応))。ここで、通常プール水は中性であるが、酸性に寄ると電子を水素イオンが受け取るようになり、発生した水素(H2)により金属表面は活性となる。その結果、ステンレス表面の不動態被膜が生成されなくなり酸化腐食を助長する事が知られている。このようにしてステンレスが水中で酸化腐食し生成された赤錆により、プールの外観品質は損なわれていた。
不動態被膜が水と酸素を遮断している限り、酸化腐食は生じないが、水のpHが低く酸性を呈したり、溶存酸素量の増加、塩化物イオンの存在、温度などの影響により不動態被膜が破壊されると腐食が発生する。例えば不導体被膜が点状に破壊されると、上述の鉄の溶解反応が局部的に生じ、局部腐食となる。
ここで局部腐食とは、孔食、隙間腐食、粒界腐食、応力腐食割れ、異種金属接触腐食、エロージョンコロージョン、微生物腐食、疲労腐食、等があげられ、ステンレスプールでは主に孔食と隙間腐食が発生している事が判った。孔食と隙間腐食はともに、塩化物イオン等のハロゲン化イオンを含む環境で起こる腐食で、塩化物イオン等の作用により不動態皮膜が局部的に破壊され、その部分で優先的に腐食反応が進行する事が知られている。孔食は自由表面で起こる点状あるいは虫食い状の腐食で、隙間腐食は隙間部で起こる腐食である。孔食と隙間腐食ともに、不動態被膜の破壊部でアノード反応による鉄の溶解とカソード反応による水酸化物の析出が連続して起こる電気化学反応であり、原理的には類似するものと考えられている。
以下に、孔食反応のメカニズムを簡潔に示す。
(1)不動態被膜が塩化物イオンによって局所的に破壊され孔食が開始し、(2)孔内で金属原子がイオンとして溶出(アノード反応)し、(3)孔内で金属イオン濃度が増大、(4)孔内の電気的中性を維持する為にCl-イオンを引き付ける、(5)Cl-イオン濃度が上昇、(6)塩化物が孔内で加水分解し水酸化物を形成しH+の生成によりpHが低下(酸性に寄る)し、(7)すなわちCl-イオン濃度上昇とpH低下により孔内腐食性が増大する。プール水中でこれらの反応が停止しない限り、孔食は停止しない。
このような検討の結果、プール水中では、ステンレス素材の主成分である鉄に対し、酸化腐食の要因となる水と酸素ならびにプール水の消毒用に常時供給される次亜塩素酸ナトリウム等塩素系消毒剤由来の塩化物イオンが共存する事に起因し、局部腐食の発生につながるとの知見に至った。更に、無塗装部分には局部腐食が発生せず、ライン塗装端部、全面塗装の部分剥離による塗装端部や塗装のひび割れ部に多く局部腐食が発生する事から、本発明者は、塗装端部での隙間腐食現象と、防食の要となる不動態被膜の関係に着目して鋭意検討を行った。
そのため、上述のプール水槽のステンレス表面に粗面加工、とりわけ電動工具による研磨を施すことは、プール水槽のステンレス表面に形成されている不動態被膜層を摩擦と熱によって破壊し、かつ加工変質層を生成させたり、加工誘起マルテンサイトの生成の原因となることが分かった。当然ながら一度粗面加工時に摩擦され加工変質層を生成したプール水槽のステンレス表面において、不動態被膜が再生されることはなかった。又、加工誘起マルテンサイト化したステンレス材は孔食電位が卑となり、耐腐食性が低下することが分かった。そしてステンレス素地を酸素と塩素から保護していた塗装被膜が経年劣化によるひび割れ、欠け、浮き等の破壊により、ステンレス表面の不動態被膜における破壊された箇所が、経時的に酸素と塩素に曝されることになる。そして局部腐食は、いわゆる隙間腐食として粗面加工された上に塗装によって形成されたコースライン等の部分塗装端部、全面塗装の部分剥離による塗装端部や塗装のひび割れ部とステンレス素地が露出する床板や側板との境界部で進行することになるのである。このように粗面加工された塗装下地に発生した局部腐食は非粗面化部の錆に比べて極度に進行し、孔食として深くステンレス板に孔を穿って行くことから、外観品質の低下のみならず、プール水槽の漏水という致命的欠陥に繋がる原因となっている。更には、粗面加工表面と塗装被膜の密着強度が不十分であった場合には、塗装被膜が断片的に剥離する問題が生じ、剥離片の鋭利な端部による怪我の原因にもなっていた。
又、従来におけるプール水槽の塗装については、一般的に下地処理工程、下塗り工程、中間層塗装工程、着色塗装工程の4工程からなる。各工程は約1日程度の乾燥期間が必要であり、塗装が完了するまで最短で5日間が必要である。更に、一般的に利用されているエポキシ塗料やウレタン系の塗料については、硬化条件として所定以上の気温が必要であるため、寒冷地での施工には難しさがあることが知られている。
また本発明は、従来問題となっていたステンレス無塗装プールにおける、コースライン等の部分塗層端部、全面塗装の部分剥離による塗装端部や塗装のひび割れ部とステンレス素地が露出する床板又は側板との境界部における局部腐食に起因する錆による外観品質の劣化を解消することを目的とする。
又、局部腐食の進行による床板又は側板の貫通漏水を防止し、水泳用プールとして致命的な機能低下を防止することを目的とする。
また本発明は、屋外に設置されたプール施設において、プール側板、天板、オーバーフロー用ダクト周辺等、水面より上において露出している構造部材が、日照により昇温し、水泳者の肌に接触した際に過度の熱さの予防、長時間接触による低温火傷の予防といった安全性の向上を目的とする。
更に本発明は、コースライン等の施工を容易にし、工期を短縮することができる錆抑制粘着シート貼付プールを提供することを目的とする。
(1)意匠が表示されている水泳用プールにおいて、プールを形成するプール水槽の底面及び側面に表示されている水泳の目印となる意匠及び\又はプールサイドに表示されている意匠が、錆抑制粘着シートで形成されていることを特徴とする錆抑制粘着シート貼付プールである。
ここで、水泳の目印となる意匠とは、コースラインやクロスライン等のことである。又、プールサイドに表示されている意匠とは、滑りを防止するシートや、踏み切り板に表示されている目印等のことである。現在、プール水槽の周縁部に表示されている塗装された箇所や、貼着されたシートで目印として表示されている箇所のことである。 ここで錆抑制粘着シートとは、プール施設の表面に貼り付けるための粘着剤層を有した薄い材料である。本発明に使用される錆抑制粘着シートは、柔軟性のある材料で形成されているのが好ましい。ただし、硬質材料で形成されているシートを本発明の範囲から除外するものではない。
また、プール水槽の底面及び側面に表示されている意匠とは、プール水槽の底板、端壁、側板それぞれの内面等に表示されるものを含む。またプールサイドに表示されている意匠とは、プール水槽の周縁部における意匠、例えば、排水溝を覆う板上の意匠や、飛び込み台に表示された意匠等のことである。
(2)錆抑制粘着シートで形成された意匠が表示されているプールにおいて、前記錆抑制粘着シートが着色又は無着色の合成樹脂基材層と粘着剤層とを積層して構成されていることを特徴とする上記(1)に記載された錆抑制粘着シート貼付プールである。
ここで、本発明の合成樹脂基材に使用される塩化ビニル樹脂としては、クロロエチレンを重合したものである。本発明に使用される塩化ビニル樹脂としては、特に軟質ポリ塩化ビニルが好ましい。
又、本発明の合成樹脂基材に使用されるアクリル樹脂としては、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの重合体であり、透明な非晶質の合成樹脂である。又、ポリエステルとは、ジカルボン酸とジオールとの重縮合体のことである。又、シリコーンゴムとは、シリコーン樹脂をゴム状に形成し室温でゴム弾性を持たせたものである。更に発泡ゴムとは、天然ゴム又は合成ゴムからなる原料に、有機発泡剤、架橋剤、軟化剤、補強剤を混練し、加硫させて形成されたものである。発泡ゴムにより合成樹脂基材層を形成した場合、意匠の内部に布地状の基材を内包し、強度を付与することができるため、貼付けの時におけるに引張応力に対する伸縮性が低いため、貼付作業に好適となる。また、耐滑性及び緩衝性をプールサイドに表示されている意匠等に付与することもできる。
いずれの材料も柔軟性を有したものが好ましい。形成された錆抑制粘着シートをロール状に巻き取って取り扱うことが可能となるためである。
ここで粘着シートとは、支持体の片面又は両面に粘着剤を塗工したものである。比較的幅の広いもの又は板状のものであり、場合によってはロール状に巻くことも可能である。粘着とは接着の一種であり、特徴として水、溶剤、熱等を使用せず、常温で短時間わずかな圧力を加えるだけで接着するものである。ここで接着とは、同種又は異種の固体の面と面とを貼りあわせて一体化した状態を表す。接着方法としては、一般的に接着剤が使用される。接着剤としては、溶剤系、水分散系、ホットメルト系、反応系等が挙げられる。このような接着剤の一種として粘着剤が挙げられる。粘着剤は、工業的には感圧型接着剤(pressure-sensitive-adhesive)として、常温で、硬化反応を必要とせずに、わずかな圧力を受けて同種、あるいは異種の固体表面を直ちに接着する。貼り合せた後に硬化することなく液状態を維持し、不要になれば粘着剤を凝集破壊することなく、貼付け界面から剥離できる。接着剤は同種、あるいは異種の固体表面を液状で濡らした後、硬化反応により液体から固体に変化する。固体に変化した接着剤を剥がそうとすると、対向する固体表面それぞれに凝集破壊した接着剤が残る。すなわち、接着剤は接着後に剥離せず使用するが、粘着剤は剥離することもできるものである。
本発明に使用する錆抑制粘着シートとしては、粘着剤層は接着剤によって形成しても良いが、上記粘着剤によって形成するものがより好ましい。
又、本発明の粘着剤層に使用されるウレタン系粘着剤としては、ウレタン基(−NCHCOO−)を持つ粘着剤のことであって、ポリエステルポリオール、あるいはポリエーテルポリオールと多価イソシアネート化合物で架橋させたものが挙げられる。あるいはポリウレタンポリオールからなる。
ウレタン系粘着剤は、ゴム系、アクリル系粘着剤よりも親水性を呈する。アクリル系粘着剤と比較し、粘着性が低い傾向にあるが、低臭気、低皮膚刺激性、耐薬品性、耐候性に優れる。様々な添加物により微粘着から接着まで多様な物性を制御可能だが、高価である。
又、シリコーン系粘着剤としては、オルガノポリシロキサンを主成分とする粘着剤であり、縮合硬化型と付加硬化型が挙げられる。縮合硬化型は、官能基として水酸基を持つオルガノポリシロキサンと架橋剤を混合した液状又はペースト状であり、接着時に大気と触れることにより大気中の水分と反応して表面から硬化が始まり、最終的にはゴム弾性を有した硬化層を形成する。付加硬化型は、官能基としてビニル基などアルケニル基を持つオルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル基を有する架橋剤とに分けた二液型の粘着剤である。触媒を使用し加熱することで硬化、接着することができる。シリコーン系粘着剤は、使用可能温度の範囲が広く、耐薬品性、耐水性に優れている。又、微粘着タイプは、貼着時の空気抜け性に優れ、気泡が入ることなく貼着が可能である。
(6)前記発泡ゴムが、非ジエン系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする上記(5)に記載された錆抑制粘着シート貼付プールである。
非ジエン系熱可塑性エラストマーとは、ポリマー主鎖に二重結合をもたないか、あるいはもっていても極めてわずかしかもたないゴムのことである。例えば、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。本発明で使用される非ジエン系熱可塑性エラストマーとしては、耐老化・耐オゾン、耐候、耐摩耗性、機械特性の観点からは、特にクロロスルホン化ポリエチレンゴムが好ましい。
ここで滑りの指標は、JIS A 1454に定める床材の滑り性試験によって測定する滑り抵抗係数で求めることができる。又、プールサイドにおける意匠は、少しでも着色されていると、熱線を吸収するため、下地であるステンレス材の温度が上昇する。ここでプール水槽の底面、側面における意匠としては、白、赤、青等が使用されることが多く、プールサイドの意匠としては、白、赤、茶、緑、青、その他種々の色が使用される。
ここで粘着剤層の形成方法としては、ナイフコータを用いる方法、ダイコータ、バーコータ、ロールコータ、ブレードコータ、ドクターコータ、コンマコータ(登録商標)、グラビアコータなどを使用して粘着剤を塗工する方法が挙げられる。塗工方法は、粘着剤の材料や物性と、形成したい塗膜物性の要求に合わせて随意選択すればよい。
粘着剤塗工後には加熱乾燥をするのが好ましい。このような加熱乾燥による工程は、粘着剤の粘度調整のために混合された有機溶媒を除去する意義を有する。ワニス状の粘着剤は塗工時に流動性が無ければ塗工出来ないが、塗工後に流動性があると膜厚均一性を維持できない。また、溶媒の揮発時に膜厚減少が起こるため、膜厚を安定させるためには塗膜の残留溶媒濃度が数%、場合により1%未満程度となるように揮発させることが必要である。すなわち脱溶媒工程を経て、所望の塗膜厚さ及び塗膜安定性と粘着性を得るために必要な工程である。粘着剤の粘度調整、塗工速度、塗工量、加熱乾燥温度や時間は、基材あるいは剥離紙または剥離フィルムの諸物性、塗工時の発泡やむらの抑制、その他生産性や安定性などを考慮し、合理的な範囲で随意決定すれば良い。
更に粘着剤に硬化剤(架橋剤)を加えておき、この加熱工程で三次元架橋させることもできる。このことにより、粘着剤の流動性、凝集性、接着性を制御することができる。
この様に形成した粘着シートの粘着層には剥離紙又は剥離フィルムを積層しておけば、保管時やプール水槽への施工時に取扱いがしやすい。特に長尺の錆抑制粘着シートはロール状で施工に供する事が考えられ、保管性と作業性において剥離紙又は剥離フィルムの積層は好適である。施工に際しては、貼付けの起点と終点を結ぶ基準線に沿わせて、順次剥離紙又は剥離フィルムを剥がしながら貼着すればよい。その際、スキージ等を補助的に利用し、貼着面の空気抜きと粘着シートの加圧を行うと効率よく施工可能である。
また本発明に係る錆抑制粘着シート貼付プールは、コースライン等の部分塗層端部、全面塗装の部分剥離による塗装端部や塗装のひび割れ部とステンレス素地が露出する床板又は側板との境界部における局部腐食に起因する錆による外観品質の劣化を解消する効果を奏する。
又、局部腐食の進行による床板又は側板の貫通漏水を防止し、水泳用プールとして致命的な機能低下を防止する効果を奏する。
また本発明に係る錆抑制粘着シート貼付プールは、屋外に設置されたプール施設において、プール側板、天板、オーバーフロー用ダクト周辺等、水面より上において露出している構造部材が、日照により昇温し、水泳者の肌に接触した際に過度の熱さの予防、長時間接触による低温火傷の予防といった安全性を向上させる効果を奏する。
更に本発明に係る錆抑制粘着シート貼付プールは、コースライン等の施工を容易にし、工期を短縮することができる優れた効果を奏する。
図1(a)は、本発明のプールに使用される実施形態1に係る錆抑制粘着シートを示した概念図である。本実施形態1に係る錆抑制粘着シート貼付プール10は、着色又は無着色の合成樹脂基剤層1と粘着剤層2とを積層して構成されている。符号4は、プールを形成するプール水槽の底面及び側面、又はプールサイド施設を示している。
一方、図1(b)は、従来の塗装による積層構造によるプール施設を示す図である。図1(b)に示す如く、従来のプール施設における意匠5の表示は、プール水槽6のステンレス表面を粗面加工7した後、粗面加工7をした上に塗装を行っていた。しかし粗面加工7を施すことによって、ステンレスが本来備える耐食性、高耐久性に寄与する不動態被膜層をも削ってしまうことになる。通常不動態被膜は研削されても瞬時に再生されるが、粗面加工時の摩擦熱により表層に加工変質層が生成された場合は再生しない。そして、意匠5の塗装端部とプール水槽6との境界部に錆が発生し、局部腐食を起こすことになる。
更に本実施形態1に係る錆抑制粘着シート10を貼付したプールは、滑止め塗層部の凹凸による皮膚の擦過傷や裂傷受傷等といった問題を解消し安全性を向上させることができる。
実施例1
本発明に係る錆抑制粘着シート貼付プールに使用される一実施例である錆抑制粘着シートを構成する合成樹脂基材層には、アクリル系樹脂(クラレ製、アクリル樹脂「パラペット」)に青色有機系顔料(トーヨーカラー製、フタロシアニン系有機顔料「リオノールブルー」)を練りこみ、溶剤で溶解させたのち製膜によって得られた青色アクリル樹脂フィルム(t0.05mm)を用いた。
当該青色アクリル樹脂フィルムに、アクリル系粘着剤(綜研化学製、アクリル系粘着剤「SKダイン1310」)100部に、硬化剤(東ソー製、イソシアネート系硬化剤「コロネートL」)を1部配合したものを塗布することによって、錆抑制粘着シートを得た。
本発明に係る錆抑制粘着シート貼付プールに使用される他の実施例である錆抑制粘着シートを構成する合成樹脂基材層には、クロロスルホン化ポリエチレンゴムに、発泡剤及び青色有機系顔料を添加し、ポリエステル基布にカレンダーロールで圧着、および発泡させシート化して得られた、青色発泡ゴム引布(t0.3mm)を用いた。
当該青色発泡ゴム引布に、アクリル系粘着剤を塗布することによって、錆抑制粘着シートを得た。青系有機顔料とアクリル系粘着剤は、実施例1と同様のものを用いた。
比較例1として、白色塩化ビニルフィルム(オカモト製、塩化ビニルフィルム(乳白色)、t0.08mm)にアクリル系粘着剤を塗布して得られた粘着シートの表面に、青色インキ(帝国インキ製、スクリーン印刷用インキ「VK」)をシルクスクリーン印刷し、さらにその上に透明クリアー(帝国インキ製、「SP−62AUクリアー」)をスクリーン印刷して、着色層とそれを保護する保護層を設けた合成樹脂基材層からなる粘着シートを得た。
アクリル系粘着剤は、実施例1と同様のものを用いた。
比較例2として、合成樹脂基材層は、青色に着色した塩化ビニルフィルム(オカモト製、塩化ビニルフィルム(青色)、t0.08mm)によって形成された合成樹脂基材層と、アクリル系粘着剤を塗布して形成された粘着剤層とからなる比較例2の粘着シートを得た。
アクリル系粘着剤は、実施例1と同様のものを用いた。
比較例3
比較例3として、ステンレス板に青色塗料(大同塗料製、プール用塗料「プールコートスペシャルAU D No.808」)を塗装したものを用意した。
上述した実施例1、2と、比較例1、2で製造した各種粘着シートをステンレス板に貼り付けたものと、比較例3の塗装されたステンレス板を、次亜塩素酸ナトリウム水溶液における残留塩素濃度200ppm、水温40±2℃雰囲気下に浸漬させ、粘着シートの退色性試験を行った。退色の度合については、分光測色計(スガ試験機製SM−C)を用いて測色を行い、色差ΔEを算出した。評価にあたり、コースラインの退色が進行しない事、継時変化が少ない事を主眼に評価した。退色性試験の結果を以下の表1にまとめる。
又、比較例1については、インクを印刷する方法の為、着色層の厚みが薄く保護層を設けたとしても著しい退色が見られた上、変化率が11%増加傾向にあり、退色の進行性が懸念される。
又、比較例2については、青系有機顔料を練り込み着色した為、比較例1と比較すると退色が少ない結果となったが、変化率が15.9%増加傾向にあり、退色の進行性が懸念される。
更に、比較例3については、10日での退色はやや少ないが、変化率が30.9%と過大であり比較例中最も退色の進行性に懸念があることが分かった。
上記の結果より、実施例1及び2に係る錆抑制粘着シートを使用した錆抑制粘着シート貼付プールは、比較例1〜3に係る粘着シート及び塗装を使用したプールに比較して、コースラインやクロスライン等、並びに滑り止めの機能をもたせるための意匠における退色に起因する外観品質の低下を抑制する効果を奏することが明らかとなった。
以下、青色アクリルフィルム及び青色発泡ゴム引布で作製した錆抑制粘着シートの粘着力評価として、JIS Z 0273に準拠し、初期180°引き剥がし粘着力と、ステンレス板に貼り付けた後に塩素水試験実施後の粘着力評価試験を行った。その結果を表2に示す。なお、下記の表2中における構成Aとは実施例1の錆抑制粘着シートであり、構成Bとは実施例2の錆抑制粘着シートのことである。
次に、実施例1、2で製造した各錆抑制粘着シートをコースラインテープ、クロスラインテープの形状に裁断し、プール施設の底板、端壁、側板それぞれの内面に貼着し錆抑制効果を確認した。当該プール施設は、A,B,Cの三箇所で、ともに屋外設置の水泳用プールである。貼着翌日に水道水を規定量注水し、水質管理のため、残留塩素濃度が0.4ppmから1.0ppmの範囲に管理しながら水泳用プールとして運用した。
コースライン塗装近傍の局部腐食を計数したところ、プールAでは103箇所、Bは20箇所、Cは15箇所であった。これらの錆を手作業により研磨除去した。同時に古い塗装は塗装剥離剤で離後に、加熱せず下地研磨を施した。貼着部分の乾燥と清浄を保ちつつ錆抑制粘着シートを貼着した。貼着後から、5ヶ月経過後に当該部位の局部腐食再発箇所を計数したところ、プールAでは6箇所に再発が認められたが、プールBとCでは再発は認められなかった。錆抑制効果を以下の表3にまとめる。
2 粘着剤層
4 プールを形成するプール水槽の底面、端壁面及び側壁面、又はプールサイド施設 5 従来のプール施設における意匠
6 従来のプール水槽
7 粗面加工
10 錆抑制粘着シート
Claims (8)
- 意匠が表示されている水泳用プールにおいて、プールを形成するプール水槽の底面及び側面に表示されている水泳の目印となる意匠及び\又はプールサイドに表示されている意匠が、錆抑制粘着シートで形成されていることを特徴とする錆抑制粘着シート貼付プール。
- 錆抑制粘着シートで形成された意匠が表示されているプールにおいて、前記錆抑制粘着シートが着色又は無着色の合成樹脂基材層と粘着剤層とを積層して構成されていることを特徴とする請求項1に記載された錆抑制粘着シート貼付プール。
- 前記錆抑制粘着シートを構成する合成樹脂基材層が、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーンゴム、発泡ゴムのいずれか一から形成される基材を有することを特徴とする請求項1又は2に記載された錆抑制粘着シート貼付プール。
- 前記錆抑制粘着シートを構成する粘着剤層が、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系のいずれか一を主原料として有することを特徴とする請求項2又は3に記載された錆抑制粘着シート貼付プール。
- 発泡ゴムを基材として有する前記合成樹脂基材層において、水泳の目印となる意匠又はプールサイドに表示されている意匠が内部に気泡を有する構造であることを特徴とする請求項3に記載された錆抑制粘着シート貼付プール。
- 前記発泡ゴムが、非ジエン系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項5に記載された錆抑制型錆抑制粘着シート貼付プール。
- 前記発泡ゴムが、滑り防止効果、緩衝/衝撃吸収効果又は断熱効果の中から選択される一以上の効果を有することを特徴とする請求項6に記載された錆抑制粘着シート貼付プール。
- 水泳用プールに意匠を施工する方法において、水泳用プールにおけるプール水槽の底面及び側面及び\又はプールサイドにおける意匠の表示が必要な箇所に、前記請求項1乃至7のいずれか一に記載された錆抑制粘着シートを貼り付けることによって施工されることを特徴とする意匠が表示された水泳用プールの製造方法。
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2016
- 2016-10-20 JP JP2016205628A patent/JP6905322B2/ja active Active
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