JP2018065464A - 車線逸脱抑制装置 - Google Patents

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広矩 伊藤
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明 永江
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亮 猪俣
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Abstract

【課題】車線逸脱を抑制する制御を実行する場合に、車両の駆動力を好適に制御する。
【解決手段】車線逸脱抑制装置(17)は、現在走行している走行車線から車両(1)が逸脱する可能性がある場合に、走行車線からの車両の逸脱を抑制する逸脱抑制動作を実施する第1制御手段(172)と、逸脱抑制動作が実施される期間において、車両の駆動力が低下するように車両の内燃機関(165)の点火時期を制御する第2制御手段(173)とを備える。
【選択図】図5

Description

本発明は、現在走行している走行車線からの車両の逸脱を抑制することが可能な車線逸脱抑制装置の技術分野に関する。
この種の装置として、走行車線から車両が逸脱する可能性がある場合に、車両の挙動を自動的に調整して逸脱を抑制するものが知られている。例えば特許文献1では、制動力によるヨーモーメントを利用して、車両の車線逸脱を抑制するという技術が提案されている。
特開2006−182308号公報
上述した特許文献1に記載されているような技術では、制動力の付与に合わせて車両の駆動力を抑制することが好ましい。駆動力の抑制方法としては、例えばスロットルの制御が挙げられるが、スロットルを制御してから実際に駆動力が変動するまでにある程度の期間を要するため、駆動力を好適に抑制することが難しい。
具体的には、制動力が付与されるタイミングで駆動力を抑制するためには、制動力が付与されるより前にスロットルを制御しておくことが要求される。この場合、確実に駆動力を抑制するためには、制動力を付与するか否かを決定する前にスロットルを制御しておかなければならず、不必要な駆動力の抑制が実現されてしまうおそれがある。
また、制動力を付与した後で加速要求がある場合、制動力の付与を中止すると同時にスロットルを制御しても、すぐには駆動力を高めることができない。よって、車線逸脱を抑制できたとしても、その後の速やかな加速を実現することができない。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、車線逸脱を抑制する制御を実行する場合に、車両の駆動力を好適に制御することが可能な車線逸脱抑制装置を提供することを課題とする。
<1>
本発明の車線逸脱抑制装置は、現在走行している走行車線から車両が逸脱する可能性がある場合に、前記走行車線からの前記車両の逸脱を抑制する逸脱抑制動作を実施する第1制御手段と、前記逸脱抑制動作が実施される期間において、前記車両の駆動力が低下するように前記車両の内燃機関の点火時期を制御する第2制御手段とを備える。
本発明の車線逸脱抑制装置によれば、逸脱抑制動作が実施される期間において、内燃機関の点火時期を制御することで車両の駆動力が抑制される。なお、ここでの「逸脱抑制動作が実施される期間」とは、車両の車線逸脱を抑制するために物理的な力(例えば、制動力によるヨーモーメント等)が付与される期間である。ここで特に、点火時期の制御による駆動力の変動は、例えばスロットルを制御する場合と比べて応答遅れがない。このため、逸脱抑制動作が実施されるタイミングに合わせて、適切に駆動力を制御することが可能である。
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
実施形態に係る車両の構成を示すブロック図である。 実施形態に係る車両逸脱抑制動作の流れを示すフローチャートである。 実施形態に係る駆動力抑制制御の流れを示すフローチャートである。 点火時期とトルクとの関係を示すグラフである。 車両逸脱抑制動作時の各パラメータの変動を示すタイムチャートである。
以下、図面を参照しながら、本発明の車線逸脱抑制装置の実施形態について説明する。以下では、本発明の車線逸脱抑制装置の実施形態が搭載された車両1を用いて説明を進める。
<車両1の構成>
まず車両1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、実施形態に係る車両の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、車両1は、ブレーキペダル111と、マスタシリンダ112と、ブレーキパイプ113FLと、ブレーキパイプ113RLと、ブレーキパイプ113FRと、ブレーキパイプ113RRと、左前輪121FLと、左後輪121RLと、右前輪121FRと、右後輪121RRと、ホイールシリンダ122FLと、ホイールシリンダ122RLと、ホイールシリンダ122FRと、ホイールシリンダ122RRと、ブレーキアクチュエータ13と、ステアリングホイール141と、振動アクチュエータ142と、車速センサ151と、車輪速センサ152と、ヨーレートセンサ153と、加速度センサ154と、カメラ155と、ディスプレイ161と、スピーカ162と、エンジン165と、「車線逸脱抑制装置」の一具体例であるECU(Electronic Control Unit)17とを備えている。
ブレーキペダル111は、車両1を制動するためにドライバによって踏み込まれるペダルである。マスタシリンダ112は、マスタシリンダ112内のブレーキフルード(或いは、任意の流体)の圧力を、ブレーキペダル111の踏み込み量に応じた圧力に調整する。マスタシリンダ112内のブレーキフルードの圧力は、ブレーキパイプ113FL、113RL、113FR及び113RRを夫々介してホイールシリンダ122FL、122RL、122FR及び122RRに伝達される。このため、ホイールシリンダ122FL、122RL、122FR及び122RRに伝達されるブレーキフルードの圧力に応じた制動力が、夫々、左前輪121FL、左後輪121RL、右前輪121FR及び右後輪121RRに付与される。
ブレーキアクチュエータ13は、ECU17の制御下で、ブレーキペダル111の踏み込み量とは無関係に、ホイールシリンダ122FL、122RL、122FR及び122RRの夫々に伝達されるブレーキフルードの圧力を調整可能である。従って、ブレーキアクチュエータ13は、ブレーキペダル111の踏み込み量とは無関係に、左前輪121FL、左後輪121RL、右前輪121FR及び右後輪121RRの夫々に付与される制動力を調整可能である。
ステアリングホイール141は、車両1を操舵する(つまり、転蛇輪を転蛇する)ためにドライバによって操作される操作子である。尚、本実施形態では、転蛇輪は、左前輪121FL及び右前輪121FRであるものとする。振動アクチュエータ142は、ECU17の制御下で、ステアリングホイール141を振動させることが可能である。
車速センサ151は、車両1の車速Vvを検出する。車輪速センサ152は、左前輪121FL、左後輪121RL、右前輪121FR及び右後輪121RRの夫々の車輪速Vwを検出する。ヨーレートセンサ153は、車両1のヨーレートγを検出する。加速度センサ154は、車両1の加速度A(具体的には、前後方向の加速度A1及び横方向の加速度A2)を検出する。カメラ155は、車両1の前方の外部状況を撮像する撮像機器である。車速センサ151から加速度センサ154の検出結果を示す検出データ及びカメラ155が撮像した画像を示す画像データは、ECU17に出力される。
ディスプレイ161は、ECU17の制御下で、任意の情報を表示可能である。スピーカ162は、ECU17の制御下で、任意の音声を出力可能である。
エンジン165は、「内燃機関」の一具体例であり、車両1の主たる動力源として機能するガソリンエンジンである。尚、本実施形態に係るエンジン165は特に、火花点火式のエンジンであり、点火時期を制御(言い換えれば、変更)することが可能に構成されている。
ECU17は、車両1の全体の動作を制御する。本実施形態では特に、ECU17は、現在走行している走行車線からの車両1の逸脱を抑制するための車線逸脱抑制動作を行う。従って、ECU17は、いわゆるLDA(Lane Departure Alert:レーンデパーチャーアラート)又はLDP(Lane Departure Prevention:レーンデパーチャープリベンション)を実現するための制御装置として機能する。
車線逸脱抑制動作を行うために、ECU17は、ECU17の内部に論理的に実現される処理ブロックとして又は物理的に実現される処理回路として、データ取得部171と、「第1制御手段」の一具体例であるLDA制御部172と、「第2制御手段」の一具体例である点火時期制御部173とを備えている。尚、データ取得部171、LDA制御部172、及び点火時期制御部173の夫々の動作については、以下の動作説明において詳述する
<車線逸脱抑制動作>
次に、本実施形態に係る車線逸脱抑制装置(即ち、ECU17)が行う車線逸脱抑制動作について、図2を参照して詳細に説明する。図2は、実施形態に係る車両逸脱抑制動作の流れを示すフローチャートである。
図2に示すように、車線逸脱抑制動作時には、データ取得部171は、車速センサ151、車輪速センサ152、ヨーレートセンサ153及び加速度センサ154の検出結果を示す検出データ及びカメラ155が撮像した画像を示す画像データを取得する(ステップS10)。
その後、LDA制御部172は、ステップS10で取得された画像データを解析することで、車両1が現在走行している走行車線の車線端(本実施形態では、車線端の一例として白線が用いられる)を、カメラ155が撮像した画像内で特定する(ステップS11)。
その後、LDA制御部172は、ステップS11で特定した白線に基づいて、車両1が現在走行している走行車線の曲率半径Rを算出する(ステップS12)。尚、走行車線の曲率半径Rは、実質的には、白線の曲率半径と等価である。このため、LDA制御部172は、ステップS11で特定した白線の曲率半径を算出すると共に、当該算出した曲率半径を、走行車線の曲率半径Rとして取り扱ってもよい。但し、LDA制御部172は、GPS(Global Positioning System)用いて特定される車両1の位置情報及びナビゲーション動作に用いられる地図情報を用いて、車両1が現在走行している走行車線の曲率半径Rを算出してもよい。
LDA制御部172は、更に、ステップS11で特定した白線に基づいて、車両1の現在の横位置Xを算出する(ステップS13)。本実施形態の「横位置X」は、走行車線が延伸する方向(車線延伸方向)に直交する車線幅方向に沿った、走行車線の中央から車両1までの距離(典型的には、車両1の中央までの距離)を示す。この場合、走行車線の中央から右側に向かう方向及び左側に向かう方向のいずれか一方が、正の方向に設定され、走行車線の中央から右側に向かう方向及び左側に向かう方向のいずれか他方が、負の方向に設定されることが好ましい。後述する横速度Vlや、上述した抑制ヨーモーメント等のヨーモーメントや、上述した加速度Aや、上述したヨーレートγ等についても同様である。
LDA制御部172は、更に、ステップS11で特定した白線に基づいて、車両1の逸脱角度θを算出する(ステップS13)。本実施形態の「逸脱角度θ」は、走行車線と車両1の前後方向軸とがなす角度(つまり、白線と車両1の前後方向軸とがなす角度)を示す。
LDA制御部172は、更に、白線から算出された車両1の横位置Xの時系列データに基づいて、車両1の横速度V1を算出する(ステップS13)。但し、LDA制御部172は、車速センサ151の検出結果及び算出した逸脱角度θと、加速度センサ154の検出結果の少なくとも一方に基づいて、車両1の横速度Vlを算出してもよい。本実施形態の「横速度Vl」は、車線幅方向に沿った車両1の速度を示す。
LDA制御部172は、更に、許容逸脱距離Dを設定する(ステップS14)。許容逸脱距離Dは、走行車線から車両1が逸脱する場合において走行車線からの車両1の逸脱距離(つまり、白線からの車両1の逸脱距離)の許容最大値を示す。このため、車線逸脱抑制動作は、走行車線からの車両1の逸脱距離が許容逸脱距離D内に収まるように、車両1に対して抑制ヨーモーメントを付与する動作となる。
LDA制御部172は、法規等の要請(例えば、NCAP:New Car Assessment Programmeの要請)を満たすという観点から許容逸脱距離Dを設定してもよい。この場合、法規等の要請を満たすという観点から設定された許容逸脱距離Dは、デフォルトの許容逸脱距離Dとして用いられてもよい。
逸脱角度θが相対的に大きい場合には、逸脱角度θが相対的に小さい場合と比較して、走行車線から車両1が逸脱した場合における車両1の逸脱距離が大きくなる可能性が高い。同様に、横速度Vlが相対的に大きい場合には、横速度Vlが相対的に小さい場合と比較して、走行車線から車両1が逸脱した場合における車両1の逸脱距離が大きくなる可能性が高い。つまり、逸脱角度θ及び横速度Vlの少なくとも一方が相対的に大きい場合には、脱角度θ及び横速度Vlの少なくとも一方が相対的に小さい場合と比較して、車両1の逸脱距離を許容逸脱距離D内に収めるように車両1に付与される抑制ヨーモーメントが大きくなる可能性が高い。一方で、過度に大きい抑制ヨーモーメントの付与は、車両1の挙動の不安定化を招く可能性がある。このため、LDA制御部172は、ステップS13で算出した逸脱角度θ及び横速度Vlの少なくとも一方に基づいて許容逸脱距離Dを設定してもよい(或いは、デフォルトの許容逸脱距離Dを調整してもよい)。例えば、LDA制御部172は、逸脱角度θ及び横速度Vlの少なくとも一方が大きくなるほど許容逸脱距離Dが大きくなるように、許容逸脱距離Dを設定又は調整してもよい。
その後、LDA制御部172は、現在走行している走行車線から車両1が逸脱する可能性があるか否かを判定する(ステップS15)。具体的には、LDA制御部172は、将来の横位置Xfを算出する。例えば、LDA制御部172は、車両1が現在の位置から前方注視距離に相当する距離を走行した時点における横位置Xを、将来の横位置Xfとして算出する。将来の横位置Xfは、現在の横位置Xに対して、横速度Vlと車両1が前方注視距離を走行するために必要な時間Δtとの乗算値を加算又は減算することで算出可能である。その後、LDA制御部172は、将来の横位置Xfの絶対値が逸脱閾値以上であるか否かを判定する。車両1が車線延伸方向に平行な方向を向いていると仮定する場合、逸脱閾値は、例えば、走行車線の幅及び車両1の幅に基づいて定まる値(具体的には、(走行車線の幅−車両1の幅)/2)である。この場合、将来の横位置Xfの絶対値が逸脱閾値と一致する状況は、車線幅方向に沿った車両1の側面(例えば、走行車線の中央から遠い方の側面)が白線上に位置する状況に相当する。将来の横位置Xfの絶対値が逸脱閾値より大きくなる状況は、車線幅方向に沿った車両1の側面(例えば、走行車線の中央から遠い方の側面)が白線の外側に位置する状況に相当する。このため、将来の横位置Xfの絶対値が逸脱閾値以上でない場合には、LDA制御部172は、現在走行している走行車線から車両1が逸脱する可能性がないと判定する。一方で、将来の横位置Xfの絶対値が逸脱閾値以上となる場合には、LDA制御部172は、現在走行している走行車線から車両1が逸脱する可能性があると判定する。但し、実際には車両1が車線延伸方向に平行な方向を向いている場合もあるため、逸脱閾値として、上述の例とは異なる任意の値が用いられてもよい。
尚、ここで説明した動作は、現在走行している走行車線から車両1が逸脱する可能性があるか否かを判定する動作の一例に過ぎない。従って、LDA制御部172は、任意の判定基準を用いて、現在走行している走行車線から車両1が逸脱する可能性があるか否かを判定してもよい。尚、「走行車線から車両1が逸脱する可能性がある」状況の一例として、近い将来に(例えば、上述した前方注視距離に相当する距離を走行した時点で)車両1が白線を跨ぐ又は踏む状況があげられる。
ステップS15の判定の結果、走行車線から車両1が逸脱する可能性がないと判定される場合には(ステップS15:No)、車線逸脱抑制動作が終了する。従って、走行車線から車両1が逸脱する可能性があると判定される場合に行われる動作(ステップS16からステップS21)は行われない。つまり、LDA制御部172は、抑制ヨーモーメントを車両1に付与しない(つまり、抑制ヨーモーメントを車両1に付与可能な制動力を付与しない)ように、ブレーキアクチュエータ13を制御する。更に、LDA制御部172は、走行車線から車両1が逸脱する可能性がある旨を、ドライバに対して警告しない。
走行車線から車両1が逸脱する可能性がないと判定されたことに起因して車線逸脱抑制動作が終了した場合には、ECU17は、第1所定期間(例えば、数ミリ秒から数十ミリ秒)が経過した後に再度ステップS10から車線逸脱抑制動作を開始してもよい。つまり、車線逸脱抑制動作は、第1所定期間に応じた周期で繰り返し行われる。尚、第1所定期間は、車線逸脱抑制動作を繰り返し行うデフォルトの周期に相当する期間である。
他方で、ステップS15の判定の結果、走行車線から車両1が逸脱する可能性があると判定される場合には(ステップS15:Yes)、LDA制御部172は、走行車線から車両1が逸脱する可能性がある旨を、ドライバに対して警告する(ステップS16)。例えば、LDA制御部172は、走行車線から車両1が逸脱する可能性があることを示す画像を表示するように、ディスプレイ161を制御してもよい。或いは、例えば、LDA制御部172は、上述したようにディスプレイ161を制御することに加えて又は代えて、走行車線から車両1が逸脱する可能性があることをステアリングホイール141の振動でドライバに伝えるように、振動アクチュエータ142を制御してもよい。或いは、例えば、LDA制御部172は、上述したようにディスプレイ161及び振動アクチュエータ142の少なくとも一方を制御することに加えて又は代えて、走行車線から車両1が逸脱する可能性があることを警報音でドライバに伝えるように、スピーカ(いわゆる、ブザー)162を制御してもよい。
走行車線から車両1が逸脱する可能性があると判定される場合には更に、LDA制御部172は、抑制ヨーモーメントを車両1に付与可能な制動力を付与するように、ブレーキアクチュエータ13を制御する(ステップS17からステップS20)。
具体的には、車両1が走行車線から逸脱する可能性がある場合には、車両1は、走行車線の中央から離れるように走行している可能性が高い。このため、車両1の走行軌跡が、走行車線の中央から離れるように走行する走行軌跡から、走行車線の中央に向かって走行する走行軌跡に変更されれば、走行車線からの車両1の逸脱が抑制される。このため、LDA制御部172は、検出データ、画像データ、特定した白線、算出した曲率半径R、算出した横位置X、算出した横速度Vl、算出した逸脱角度θ及び設定した許容逸脱距離Dに基づいて、走行車線の中央から離れるように走行していた車両1が走行車線の中央に向かうように走行することになる新たな走行軌跡を算出する。このとき、LDA制御部172は、ステップS14で設定した許容逸脱距離Dの制約を満たす新たな走行軌跡を算出する。更に、LDA制御部172は、算出した新たな走行軌跡を走行する車両1に発生すると推定されるヨーレートを、目標ヨーレートγtgtとして算出する(ステップS17)。
その後、LDA制御部172は、車両1に目標ヨーレートγtgtを発生させるために車両1に付与するべきヨーモーメントを、目標ヨーモーメントMtgtとして算出する(ステップS18)。尚、目標ヨーモーメントMtgtは、抑制ヨーモーメントと等価である。
その後、LDA制御部172は、目標ヨーモーメントMtgtを車両1に付与することが可能な制動力を算出する。この場合、LDA制御部172は、左前輪121FL、左後輪121RL、右前輪121FR及び右後輪121RRの夫々に付与される制動力を個別に算出する。その後、LDA制御部172は、算出した制動力を発生させるために必要なブレーキフルードの圧力を指定する圧力指令値を算出する(ステップS19)。この場合、LDA制御部172は、ホイールシリンダ122FL、122RL、122FR及び122RRの夫々の内部でのブレーキフルードの圧力を指定する圧力指令値を個別に算出する。
例えば、車両1の進行方向に対して右側に位置する白線を跨いで車両1が走行車線から逸脱する可能性があると判定される場合には、走行車線からの車両1の逸脱を抑制するためには、車両1の進行方向に対して左側に向けて車両1を偏向させることが可能な抑制ヨーモーメントが車両1に付与されればよい。この場合には、右前輪121FR及び右後輪121RRに制動力が付与されない一方で左前輪121FL及び左後輪121RLの少なくとも一方に制動力が付与されれば、又は、右前輪121FR及び右後輪121RRの少なくとも一方に相対的に小さい制動力が付与される一方で左前輪121FL及び左後輪121RLの少なくとも一方に相対的に大きい制動力が付与されれば、左側に向けて車両1を偏向させることが可能な抑制ヨーモーメントが車両1に付与される。車両1の進行方向に対して左側の白線を跨いで車両1が走行車線から逸脱する可能性があると判定される場合には、逆に、左前輪121FL及び左後輪121RLに制動力が付与されない一方で右前輪121FR及び右後輪121RRの少なくとも一方に制動力が付与されれば、又は、左前輪121FL及び左後輪121RLの少なくとも一方に相対的に小さい制動力が付与される一方で右前輪121FR及び右後輪121RRの少なくとも一方に相対的に大きい制動力が付与されれば、車両1の進行方向に対して右側に向けて車両1を偏向させることが可能な抑制ヨーモーメントが車両1に付与される。
その後、LDA制御部172は、ステップS19で算出した圧力指令値に基づいて、ブレーキアクチュエータ13を制御する。従って、圧力指令値に応じた制動力が、左前輪121FL、左後輪121RL、右前輪121FR及び右後輪121RRのうちの少なくとも一つに付与される(ステップS20)。その結果、車両1には目標ヨーモーメントMtgtと等価な抑制ヨーモーメントが付与されるがゆえに、走行車線からの車両1の逸脱が抑制される。
尚、本実施形態では特に、上述したステップS17からステップS20の処理と並行して、点火時期制御部173による駆動力抑制制御が実行される(ステップS21)。駆動力抑制制御の具体的な処理内容については、以下で詳述する。
<駆動力抑制制御>
次に、上述した車線逸脱抑制動作の一部として実行される駆動力抑制制御について、図3及び図4を参照して詳細に説明する。図3は、実施形態に係る駆動力抑制制御の流れを示すフローチャートである。図4は、点火時期とトルクとの関係を示すグラフである。
図3に示すように、本実施形態に係る駆動力抑制制御では、点火時期制御部173は、
まず車両1の駆動力を取得する(ステップS101)。続いて、点火時期制御部173は、車両1の目標駆動力を算出する(ステップS102)。目標駆動力は、現在の駆動力よりも小さい値として算出されるものであり、例えば車両逸脱抑制動作中の(即ち、抑制ヨーモーメントを発生させるための制動力が付与されている期間の)車両1の前後Gを0にするような駆動力として算出される。
続いて、点火時期制御部173は、目標駆動力を実現するための目標点火時期を算出する(ステップS103)。そして、点火時期制御部173は、算出した目標点火時期が実現されるように、エンジン165の点火時期を制御する。
図4に示すように、エンジン165から出力されるトルクは、点火時期に応じて変動する。具体的には、エンジン165が最大トルクを出力可能な点火時期であるMBT(Minimum advance for the Best Torque)から遅角側に点火時期をずらすことでトルクは減少する。よって、目標点火時期をMBTよりも遅角側に設定すれば、駆動力が抑制され、結果として目標駆動力を実現することができる。尚、エンジン165の点火時期を進角側にずらすことでもトルクは減少するが、予期せぬノッキングが発生してしまう可能性もある。このため点火時期は、MBTよりも遅角側へ変更されることが好ましい。
<実施形態の効果>
最後に、上述した駆動力抑制制御を実行することで得られる技術的効果について、図5を参照して具体的に説明する。図5は、車両逸脱抑制動作時の各パラメータの変動を示すタイムチャートである。尚、図5では、本実施形態に係るパラメータが実線で示されている。また、スロットルの制御によって駆動力を抑制する第1比較例に係るパラメータが破線で示されており、駆動力を抑制しない第2比較例に係るパラメータが点線で示されている。
図5に示すように、本実施形態に係る車線逸脱抑制装置の動作時には、制御フラグがONになると(即ち、図2のステップS15の判定で、走行車線から車両1が逸脱する可能性があると判定される場合)、LDA制御部172による制動力を付与する制御によって、車両には抑制ヨーモーメントが発生する。一方で、点火時期制御部173によるエンジン165の点火時期の制御によって、車両1の駆動力が抑制される。このように、制動力を付与している期間において車両1の駆動力を抑制すれば、駆動力を制御しない場合と比較して、車両1の車線逸脱をより好適に抑制することができる。
また本実施形態では特に、点火時期の制御によって駆動力が抑制されるため、スロットルの制御によって駆動力を抑制する場合と比較して、駆動力の応答性を高めることができる。具体的には、制動力が付与される期間に合わせて、適切なタイミングで駆動力を抑制できる。即ち、制動力が付与される期間と、駆動力が抑制される期間とが互いにずれてしまうことを防止できる。
例えば、スロットルの制御によって駆動力を抑制する場合、制動力の付与と同時にスロットルを制御しても、実際に前後Gが変化するのは一定期間遅れてからとなる。これに対し、点火時期を制御すれば、制動力の付与とほぼ同時に前後Gを変化させることができる。即ち、適切なタイミングで駆動力抑制制御を開始でき、車線逸脱抑制動作時の車両1の加速を適切に抑制することが可能である。
更に、スロットルの制御によって駆動力を抑制する場合、制動力の付与を終了してから、駆動力を回復させるのにも一定期間を要する。これに対し、点火時期を制御すれば、制動力の付与が終了された直後から駆動力を増加させて、速やかな加速を実現することができる。よって、車線逸脱抑制動作の終了後に加速が要求されるような場合でもあっても、好適に車両1を加速させることができる。
以上説明したように、本実施形態に係る車両逸脱抑制装置によれば、車線逸脱を抑制する制御を実行する場合に、車両の駆動力を好適に制御することが可能である。
尚、本実施形態では、車両1が備えるエンジン165がガソリンエンジンであるものとして説明したが、エンジン165がディーゼルエンジンとして構成されている場合には、上述した点火時期の制御に代えて、燃料噴射量の制御を実行すればよい。ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンとは異なり圧着発火式のエンジンであるため、点火時期を高精度に制御することはできないが、燃料噴射量を調整することで同様の技術的効果を得ることが可能である。
また、本実施形態に係る車線逸脱抑制動作は、制動力を利用した所謂ブレーキLDAであるが、減速を伴わない動作(例えば、EPS−LDA)を採用する場合にも、本実施形態に係る駆動力抑制制御を実行することで、車両の挙動を好適に制御することが可能となる。
本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車線逸脱抑制装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
1 車両
13 ブレーキアクチュエータ
151 車速センサ
152 車輪速センサ
153 ヨーレートセンサ
154 加速度センサ
155 カメラ
161 ディスプレイ
162 スピーカ
165 エンジン
17 ECU
171 データ取得部
172 LDA制御部
173 点火時期制御部

Claims (1)

  1. 現在走行している走行車線から車両が逸脱する可能性がある場合に、前記走行車線からの前記車両の逸脱を抑制する逸脱抑制動作を実施する第1制御手段と、
    前記逸脱抑制動作が実施される期間において、前記車両の駆動力が低下するように前記車両の内燃機関の点火時期を制御する第2制御手段と
    を備えることを特徴とする車線逸脱抑制装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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