JP2018058783A - 時計遺伝子の発現を変化させるための組成物 - Google Patents

時計遺伝子の発現を変化させるための組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 時計遺伝子の発現を変化させ、また当該発現変化により概日リズムを変化させるための組成物を提供すること。
【解決手段】 ネムノキ樹皮の水抽出物は、時計遺伝子の発現量及び位相を変化できることが明らかになった。また、ネムノキ樹皮の水抽出物の経口投与によって、被験者の午後の眠気は減少し、また覚醒度、意欲、気分及び集中力が増加し、朝型傾向が強くなることを見出した。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ネムノキ樹皮の水抽出物を有効成分として含む、時計遺伝子の発現を変化させるための組成物に関する。また、本発明は、当該抽出物を有効成分として含む、概日リズムを変化させるための組成物に関する。
地球に存在する殆どの生物は、外部環境(主に明暗サイクル)に合わせて、約24時間周期で、生理機能(睡眠覚醒、体温調節、摂餌排泄、ホルモン分泌等)を制御しており、このような生物学的な日周変動は「概日リズム(サーカディアンリズム)」と呼称される。
近年、この概日リズムの異常によって心身の様々な不調が引き起こされることが社会的な問題となっている。例えば、航空機等の移動による時差ボケ、シフトワーク(交代勤務)等による不規則な生活パターンが引き起こす睡眠障害、夜型生活(夜更かし、夜勤等)による睡眠覚醒リズム等の変調といった、生活環境・労働環境の変化等による概日リズムの乱れが引き起こす問題は多い。また、加齢に伴い、概日リズムを調整するメラトニン等のホルモン分泌量が低下するため、睡眠覚醒、体温調節等の様々なリズムが、高齢者においては減弱することになる。老後の睡眠障害等によるQOLの低下も、近年の急速な高齢化と相まって、社会的な問題として懸念されている。かかる現状を鑑み、概日リズムの変調や減弱等を解消し、ひいては前記睡眠障害等を治療、改善し得る方法が希求されているが、そのような方法は未だ確立していないのが現状である。
概日リズムは、哺乳類において、左右の眼の網膜から伸びた視神経が、脳内の視床下部で交叉している視神経交叉部位(視交叉)上に存在する直径わずか1ミリ程の小さな神経核である視交叉上核(SCN)が制御の中心となっている。そして、SCNが作り出している概日リズムは、時計遺伝子(Bmal1、Clock、Period、Cryptochrome等)という遺伝子群によって形成されている。より具体的には、転写活性化因子BMAL1及びCLOCKタンパク質が、Period及びCryptochrome遺伝子の発現を活性化し、それによって転写翻訳されたPeriod(PER1、PER2)及びCryptochrome(CRY1、CRY2)タンパク質が、BMAL1及びCLOCKタンパク質と相互作用することによって、自らの転写を抑制するというネガティブフィードバックを形成している。その後、PER及びCRYタンパク質は、リン酸化及びユビキチン化修飾を受けた後、プロテアソームで分解されるため、前記転写抑制が解除されることになる。そして、BMAL1及びCLOCKタンパク質による次のサイクルが開始され、このサイクルの1周に約24時間を要することが、概日リズム形成の分子メカニズムである。
このような時計遺伝子のフィードバック機構は、肝臓や筋肉、肺、心臓といった末梢組織、脳の中のSCN以外の組織にも存在しており、当該機構により末梢組織等においても概日リズムを形成することが明らかになっている。また、そのリズムは、制御の中心であるSCNが、様々な組織を介して神経・ホルモン等によるシグナルを出すことによって制御されている。
このように、概日リズムは、時計遺伝子の発現によって制御される。そのため、当該発現を変化させることによって、概日リズムを変化させ、ひいては概リズム異常による睡眠障害等を治療し得る物質の探索が行われている(特許文献1〜2)。
特開2008−266319号公報 特開2015−110564号公報
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、時計遺伝子の発現を変化させ、また当該発現変化により概日リズムを変化させるための物質を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ネムノキ樹皮の水抽出物をマウス胚性線維芽細胞に添加することによって、当該細胞の時計遺伝子(Per2遺伝子)の発現リズムにおいて、その振幅の経過的減弱を抑制できることを見出した。さらに、前記抽出物は、細胞への投与のタイミング如何によって、Per2遺伝子の発現リズムのピーク(位相)を、濃度依存的に前進させることも、また後退させることもできることを、本発明者らは明らかにした。
さらに、ネムノキ樹皮の水抽出物をマウスに経口投与し、その末梢組織(肝臓)における時計遺伝子(Per1、Per2、Bmal1)の発現を解析した。その結果、前記抽出物によって、末梢組織においても、時計遺伝子の発現量及び位相は変化することを、本発明者らは見出した。
また、ネムノキ樹皮の水抽出物をヒトに経口投与した結果、上述の当該抽出物の時計遺伝子の発現を変化させる作用を反映するかのごとく、被験者の朝型傾向は強くなり(入眠が早く、朝早く起き易くなり)、午後の眠気は減少し、活動性(覚醒度、意欲、気分及び集中力)は向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下を提供するものである。
<1> ネムノキ樹皮の水抽出物を有効成分として含む、時計遺伝子の発現を変化させるための組成物。
<2> 時計遺伝子が、Per1遺伝子、Per2遺伝子及びBmal1遺伝子からなる群から選択される少なくとも1の遺伝子である、<1>に記載の組成物。
<3> 概日リズムを変化させるための組成物である、<1>又は<2>に記載の組成物。
本発明によれば、時計遺伝子の発現を変化させ、また当該発現変化により概日リズムを変化させることが可能となる。そして、かかる変化によって、概日リズムにおける異常を解消することができるため、本発明によれば、当該異常に起因する疾患(概日リズム障害等)の治療、改善(緩和)又は予防をすることも可能となる。
時計遺伝子の発現リズム、またはそれによって制御される概日リズムの概略を示す波形グラフである。 ネムノキ樹皮の水抽出物(50μg/ml若しくは100μg/ml)又は対照として蒸留水(DW)を添加した、マウス胚性線維芽細胞における、Per2遺伝子の発現リズムを示す、波形グラフである。図中の横軸は、各細胞におけるPer2遺伝子等の時計遺伝子の発現サイクルをリセットさせて同調させるために、デキサメタゾンを培地に添加してからの日数を示す。 マウスへのネムノキ樹皮の水抽出物投与試験のスケジュールを示す、概略図である。 ネムノキ樹皮の水抽出物(1mg若しくは10mg)又は対照(cont.)として蒸留水を経口投与したマウスにおける、Per1遺伝子の発現量を示す、グラフである。 ネムノキ樹皮の水抽出物(1mg若しくは10mg)又は対照(cont.)として蒸留水を経口投与したマウスにおける、Per2遺伝子の発現量を示す、グラフである。 ネムノキ樹皮の水抽出物(1mg若しくは10mg)又は対照(cont.)として蒸留水を経口投与したマウスにおける、Bmal1遺伝子の発現量を示す、グラフである。 マウスにおけるPer1遺伝子の発現量の経時的変化を示すグラフである。なお、縦軸は、Per1遺伝子の発現量を、Gapdh遺伝子のそれを基準とする相対値として示すものである。横軸は、明暗条件下での時刻(ZT;Zeitgeber Time、明期開始時間をZT0とする)を示す。 ネムノキ樹皮の水抽出物を午前中に摂取したヒトが、睡眠検査(関西学院大学式眠気尺度、KSS)を受けた結果を示すグラフである。 ネムノキ樹皮の水抽出物を午前中に摂取したヒトが、睡眠検査(視覚的アナログ評価尺度、VAS)を受けた結果(覚醒度)を示すグラフである。 ネムノキ樹皮の水抽出物を午前中に摂取したヒトが、睡眠検査(視覚的アナログ評価尺度、VAS)を受けた結果(意欲)を示すグラフである。 ネムノキ樹皮の水抽出物を午前中に摂取したヒトが、睡眠検査(視覚的アナログ評価尺度、VAS)を受けた結果(気分)を示すグラフである。 ネムノキ樹皮の水抽出物を午前中に摂取したヒトが、睡眠検査(視覚的アナログ評価尺度、VAS)を受けた結果(集中力)を示すグラフである。 ネムノキ樹皮の水抽出物を午前中に摂取したヒトが、睡眠検査(朝型・夜型質問紙、MEQ)を受けた結果を示すグラフである。 ネムノキ樹皮の水抽出物を夕食時に摂取したヒトが、睡眠検査(朝型・夜型質問紙、MEQ)を受けた結果を示すグラフである。
後述の実施例に示す通り、本発明において、ネムノキ樹皮の水抽出物は、時計遺伝子の発現量及び位相を変化できることが明らかになった。また、時計遺伝子の発現変化を介して、該遺伝子が制御する概日リズムをも、前記抽出物は変化させることもできる。したがって、本発明は、ネムノキ樹皮の水抽出物を有効成分として含む、時計遺伝子の発現を変化させるための組成物を提供する。また、本発明は、当該抽出物を有効成分として含む、概日リズムを変化させるための組成物を提供する。
ネムノキ樹皮の水抽出物
先ず、本発明の組成物において、有効成分として含まれる「ネムノキ樹皮の水抽出物」について説明する。「ネムノキ」は、マメ科ネムノキ亜科に属する落葉高木の植物(Albizia julibrissin)を意味する。そのネムノキの樹皮を、下記抽出処理に供する場合には、樹皮そのままでもよいが、抽出効率をより高めるという観点から、ミキサー、ブレンダー、ホモジナイザー、乳鉢、超音波破砕機等により破砕した上で、抽出処理に供してもよい。
本発明において、抽出処理に用いられる溶媒としては、水のみであってもよく、また水と他の溶媒との混合溶媒であってもよい。本発明において抽出に用いられる水としては、特に制限はなく、例えば、蒸留水、脱イオン水、RO水、超純水が挙げられる。また、水と混合する他の溶媒としては特に制限はなく、エタノール、メタノール等のアルコール類、プロピレングリコール等の多価アルコール類、酢酸メチル等のエステル類が挙げられる。また混合比率としても特に制限はないが、水:他の溶媒=90〜50:10〜50(体積比)であることが好ましい。
抽出条件としても特に制限はなく、前記用いる溶媒によっても異なるが、例えば、水のみを用いる場合には、ネムノキの樹皮1重量部に対して1〜100重量部の水を用い、4〜100℃の温度で、10分〜7日間かけて抽出することが好ましく、ネムノキの樹皮1重量部に対して5〜20重量部の水を用い、70〜100℃の温度で、30分〜2時間かけて抽出することがより好ましい。また、抽出効率をより高めるという観点から、加圧、攪拌、超音波処理等を、抽出処理の際に併せて行ってもよい。さらに、かかる抽出処理後に、濾過や遠心分離によって残渣と分離してもよい。
本発明にかかる「ネムノキ樹皮の水抽出物」は、抽出液の形態でも本発明の組成物に用いることはできるが、必要に応じて、イオン交換法、ゲルろ過法、膜分画法、電気透析法、溶媒抽出法、減圧濃縮法、加熱処理法等により、濃縮してもよい。
さらに、「ネムノキ樹皮の水抽出物」は、必要に応じて、スプレードライやフリーズドライ等の処理を施すことにより、乾燥させ、粉末としてもよい。
また、安全性の観点から、「ネムノキ樹皮の水抽出物」には、殺菌処理を施してもよい。かかる殺菌処理としては、加熱殺菌、加圧殺菌、放射線殺菌、フィルター除菌等が挙げられる。
また、このようにして調製される「ネムノキ樹皮の水抽出物」は、例えば、そのまま、本発明の組成物として使用してもよいし、後述の通り、他の成分と組み合わせることにより、本発明の組成物として使用してもよい。
時計遺伝子の発現又は概日リズムを変化させるための組成物
次に、本発明の組成物の態様について説明する。前述のネムノキ樹皮の水抽出物は、後述の実施例に示す通り、時計遺伝子の発現を変化させることにより、概日リズムを変化させる活性を有する。したがって、これを有効成分とする、本発明の組成物は、後述の概日リズム障害の治療、改善(緩和)又は予防のための医薬組成物、飲食品として用いることができる。また、時計遺伝子の発現を変化させるための試薬、概日リズムを変化させるための試薬として用いることができる。
本発明において「時計遺伝子」とは、概日リズム(体内時計)を制御する機能を有する遺伝子であればよく、例えば、Period遺伝子(Per1、Per2、Per3等)、Bmal遺伝子(Arntl、Mop3、Tic、Jap3、Pasd3、bHLHe5とも呼称される遺伝子、Bmal1、Bmal2等)、Cryptochrome遺伝子(Cry1、Cry2等)、Clock遺伝子、Ror遺伝子、Rev−erb遺伝子、E4BP遺伝子、GSK3β遺伝子、CK1遺伝子、Dec遺伝子が挙げられるが、本発明において、好ましくは、Per1遺伝子、Per2遺伝子、Bmal1遺伝子である。
典型的に、ヒトのPer1遺伝子は、RefSeq ID:NP_002607で特定されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子(RefSeq ID:NM_002616で特定されるヌクレオチド配列を含む遺伝子)であり、ヒトのPer2遺伝子は、RefSeq ID:NP_073728で特定されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子(RefSeq ID:NM_003894又はNM_022817で特定されるヌクレオチド配列を含む遺伝子)であり、ヒトのBmal1遺伝子は、RefSeq ID:NP_001025443、NP_001025444、NP_001169、NP_001284648又はNP_001284651で特定されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子(RefSeq ID:NM_001030272、NM_001030273、NM_001178、NM_001297719又はNM_001297722で特定されるヌクレオチド配列を含む遺伝子)であり、マウスのPer1遺伝子は、RefSeq ID:NP_001152839又はNP_035195で特定されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子(RefSeq ID:NM_001159367又はNM_011065で特定されるヌクレオチド配列を含む遺伝子)であり、マウスのPer2遺伝子は、RefSeq ID:NP_035196で特定されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子(RefSeq ID:NM_011066で特定されるヌクレオチド配列を含む遺伝子)であり、マウスのBmal1遺伝子は、RefSeq ID:NP_001229977又はNP_031515で特定されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子(RefSeq ID:NM_001243048又はNM_007489で特定されるヌクレオチド配列を含む遺伝子)である。なお、自然界において(すなわち、非人工的に)ヌクレオチド配列は変化する。したがって、本発明にかかる時計遺伝子には、典型例として挙げた上記配列に特定されることなく、このような天然の変異体も含まれる。
本発明において「時計遺伝子の発現」には、転写レベルでの発現(mRNAとしての発現)のみならず、翻訳レベルでの発現(タンパク質としての発現)も含まれる。また、「時計遺伝子の発現の変化」には、時計遺伝子の発現量の増加又は低減に加え、時計遺伝子の発現リズム(振幅、位相及び周期長のうちの少なくとも1つ)が変化することも含まれる。
「振幅」とは、図1に示す通り、リズムにおけるピークからボトムまでの長さ(振動の大きさ)のことであり、時計遺伝子の発現リズムにおいては、そのピークからピーク、又はボトムからボトムまでの期間(一周期)における時計遺伝子の発現量の幅を示す。時計遺伝子の発現リズム及びそれによって制御される概日リズムにおいては、加齢に伴い、それら振幅が減弱していくことが知られている。一方、後述の実施例において示す通り、ネムノキの樹皮水抽出物は、かかる減弱を抑制することができる。
「位相」とは、一周期の特定の位置(例えば、ピーク、ボトム)のことである。また、「周期長」とは、図1に示す通り、リズムにおける一周期の長さ(期間)のことであり、ヒトであれば本来(正常)であれば約24.3時間である。後述の実施例に示す通り、ネムノキ樹皮水抽出物は、投与する又は摂取させるタイミングによって、時計遺伝子の発現リズム及びそれによって制御される概日リズムの位相を前進(図1においては波形を左側にシフト)又は後進(図1においては波形を右側にシフト)させることができるため、本発明によれば、後述の概日リズム障害等においてずれた位相を、本来(正常)の位相に調節することができる。
このように、ネムノキ樹皮の水抽出物によって、時計遺伝子の発現リズム及びそれによって制御される概日リズムにおける異常(振幅の減弱や、位相のずれ等)を解消することができるため、前記抽出物を有効成分とする本発明の組成物によれば、当該異常に起因する疾患(概日リズム障害等)の治療、改善(緩和)又は予防をすることができる。
概日リズム障害としては、例えば、睡眠相前進症候群(ASPS)、睡眠相後退症候群(DSPS)、非24時間睡眠覚醒障害、不規則型睡眠覚醒障害、時差ボケ(時間帯域変化症候群、ジェット時差症候群)、シフトワークによるリズム変調(交代勤務睡眠障害)、夜型生活(夜更かし、夜勤等)による生活リズムの変調、高齢者のリズム消失が挙げられる。さらにはそれら概日リズム障害に付随する不眠、体調不調、注意欠損、意欲低下、肌荒れ等の諸症状の治療、改善(緩和)又は予防等においても、本発明の組成物は有効である。
また、後述の実施例において示す通り、健常人であったとしても、ネムノキ樹皮の水抽出物を摂取させることにより、対象の朝型傾向は強くなり、午後の眠気は減少し、活動性(覚醒度、意欲、気分及び集中力)は増加する。したがって、本発明の組成物は、生活リズム(生活習慣)を朝型に移行させるための組成物としても有用である。なお、本発明において「朝型」とは、朝早くに起床し、午前中から活動し、夜は早く入眠する生活リズム(生活習慣)のことを意味し、例えば、朝型・夜型質問紙(MEQ;Morningness−Eveningness Questionnaire)によって評価することができる(石原金由ら、「日本語版朝型−夜型(morningness−eveningness)質問紙による調査結果」、心理学研究、1986年、57巻、87〜91ページ 参照)。
本発明の組成物は、公知の製剤学的方法により製剤化することができる。例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、液剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、フィルムコーティング剤、ペレット剤、トローチ剤、舌下剤、咀嚼剤、バッカル剤、ペースト剤、シロップ剤、懸濁剤、エリキシル剤、乳剤、塗布剤、軟膏剤、硬膏剤、パップ剤、経皮吸収型製剤、ローション剤、吸引剤、エアゾール剤、注射剤、坐剤等として、経口的又は非経口的に使用することができる。しかしながら、投与対象への負担が少ないという観点から、本発明の組成物は、経口用組成物として用いることが好ましい。
これら製剤化においては、薬理学上若しくは飲食品として許容される担体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、溶剤、基剤、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、芳香剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤、希釈剤、等張化剤、無痛化剤、増量剤、崩壊剤、緩衝剤、コーティング剤、滑沢剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤あるいはその他の添加剤等と適宜組み合わせることができる。
また、本発明の組成物を飲食品として用いる場合、当該飲食品は、例えば、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、機能性表示食品、栄養補助食品、病者用食品、食品添加物又は動物用飼料であり得る。本発明の飲食品は、上記のような組成物として摂取することができる他、種々の飲食品として摂取することもできる。飲食品の具体例としては、食用油、ドレッシング、マヨネーズ、マーガリン等の油分を含む製品;スープ類、乳飲料、清涼飲料水、茶飲料、アルコール飲料、ドリンク剤、ゼリー状飲料、機能性飲料等の液状食品;飯類、麺類、パン類等の炭水化物含有食品;ハム、ソーセージ等の畜産加工食品;かまぼこ、干物、塩辛等の水産加工食品;漬物等の野菜加工食品;ゼリー、ヨーグルト等の半固形状食品;みそ、発酵飲料等の発酵食品;洋菓子類、和菓子類、キャンディー類、ガム類、グミ、冷菓、氷菓等の各種菓子類;カレー、あんかけ、中華スープ等のレトルト製品;インスタントスープ,インスタントみそ汁等のインスタント食品や電子レンジ対応食品等が挙げられる。さらには、粉末、穎粒、錠剤、カプセル剤、液状、ペースト状又はゼリー状に調製された健康飲食品も挙げられる。
本発明の組成物は、いずれの生物を対象として使用することができるが、特にヒトを含む動物に好適に用いられる。ヒト以外の動物としては特に制限はなく、種々の家畜、家禽、ペット、実験用動物等を対象とすることができる。具体的には、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、カモ、ダチョウ、アヒル、イヌ、ネコ、ウサギ、ハムスター、マウス、ラット、サルが挙げられるが、これらに制限されない。
本発明における飲食品の製造は、当該技術分野に公知の製造技術により実施することができる。当該飲食品においては、概日リズム障害等の改善又は予防に有効な、1種又は2種以上の成分あるいは他の機能性食品を添加してもよい。また、当該改善等以外の機能を発揮する他の成分あるいは他の機能性食品と組み合わせることによって、多機能性の飲食品としてもよい。
本発明の組成物を投与する又は摂取させる場合、その投与量又は摂取量は、対象の年齢、体重、症状、健康状態、組成物の種類(医薬品、飲食品等)等に応じて、適宜選択されるが、ヒト(成人)を対象とした場合、1日に1回若しくは数回に分けて、ネムノキ樹皮の水抽出物を、10〜1000mg投与することが好ましく、50〜200mg投与することがより好ましい。また、本発明の組成物の投与等のタイミングとしては、概日リズムがどのようにずれているか(前進又は後退)によるが、好ましくは午前中、より好ましくは午前7〜10時の間、さらに好ましくは午前8〜9時の間である。さらに、本発明の組成物は継続的に(少なくとも3日間続けて、より好ましくは10日以上続けて)投与等することが望ましい。
本発明の組成物の製品(医薬品、飲食品、試薬)又はその説明書は、時計遺伝子の発現を変化、及び/又は、概日リズムを変化させるために用いられる旨の表示を付したものであり得る。ここで「製品又は説明書に表示を付した」とは、製品の本体、容器、包装等に表示を付したこと、あるいは製品の情報を開示する説明書、添付文書、宣伝物、その他の印刷物等に表示を付したことを意味する。
また本発明は、このように、本発明の医薬組成物を対象(例えば、概日リズム障害を罹患しているヒト)に投与させることを特徴とする、対象の概日リズムの変化を伴う、疾患の治療又は予防の方法をも提供する。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<ネムノキ樹皮の水抽出物の調製>
ネムノキの樹皮(株式会社ヤングフォレスト製)に、その10倍の重量の蒸留水を加え、オートクレーブ(100℃、60分)にて処理した。得られた抽出物を、ステンレスメッシュ(目開き:150μm、東京スクリーン株式会社製、網ふるい、品番:635−54−18−41)に通した。得られた濾液をNo.193ろ紙(ADVANTEC社製)に更に通して、計2回の濾過処理を行った後、ロータリーエバポレーター(東京理化器械株式会社製、N−1300型)を用いて固形分が5%になるまで濃縮した。次いで、得られた濃縮液を、デキストリン(三和澱粉工業株式会社製、サンデック)と混合し、加熱殺菌処理(90℃、60分)に供した上で、凍結乾燥機(AGCテクノグラス株式会社製、FRD−82M)にて、乾燥粉末にした。
なお、このようにして得られた乾燥粉末における、ネムノキ樹皮の水抽出物とデキストリンとの比率は1:3である。ネムノキ樹皮の水抽出物は、吸湿性が高く物性が変化しやすい(固まってしまう)ため、上記の通り、賦形剤としてデキストリンを加えた。また、乾燥粉末におけるネムノキ樹皮の水抽出物は、抽出処理に供したネムノキ樹皮の6〜8質量%であった。
(実施例2)
<細胞感作試験>
PER2::LUC MEF(マウス胚性線維芽細胞)を、10%のウシ胎児血清(FBS)、0.1mMのD−ルシフェリン・ナトリウム塩を含むDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)にて維持培養した。そして、デキサメタゾンを前記培地に200nMになるよう添加して2時間培養した後、デキサメタゾンを含有しない前記培地に交換して培養した。次いで、デキサメタゾンを添加してから2.4日後±2時間の間に、前記の通りにして調製したネムノキ樹皮の水抽出物を含む乾燥粉末を、50μg/ml、100μg/mlになるよう培地に添加して30分間培養した後、ネムノキ樹皮の水抽出物を含有しない前記培地に交換して培養し続けた。また、デキサメタゾン処理してから5.5日間、細胞は、37℃、5%COにて設定され、ルミサイクル(LumiCycle32、Actimetrics)の設置されたインキュベータ内にて培養し、PER2遺伝子の発現リズムを解析した。得られた結果を図2に示す。
なお、PER2::LUC MEFは、Per2::ルシフェラーゼノックインマウスから単離した胚性線維芽細胞である。また、当該マウスは、Per2遺伝子下流にホタルルシフェラーゼ遺伝子を導入されているため、Per2遺伝子の発現リズムをルシフェリン−ルシフェラーゼ反応による発光リズムで追うことが可能である(Narishige S.ら、Br J Pharmacol.、2014年12月、171巻、24号、5858〜5869ページ 参照)。
また、合成副腎皮質ホルモン(合成糖質コルチコイド)であるデキサメタゾンは、末梢臓器(細胞)の概日リズム同調因子としても機能するため、各細胞における時計遺伝子の発現サイクルをリセットさせて同調させるために、前記の通り、PER2::LUC MEFに添加した。
さらに、Per2遺伝子の発現リズム(発光リズム)の解析においては、ルミノサイクルにおける計測データ(RAWデータ)から24時間分の移動平均値を引くディトレンド処理を行い,その後2時間分の移動平均値で平滑化する平滑化処理を行い、この波形データの発光値のpeak値を算出した(Hayasaka N.ら、Endocrinology、2007年、148巻、7号、3316〜3326ページ、Ohta H.ら、
PLoS ONE、2008年、3:e2601 参照)。また、図2に示すpeak2及びpeak3の値の変化を解析した。その結果を表1に示す。
(実施例3)
<マウスへの投与試験>
図3に示す通り、7週齢雌性ICRマウスに、ネムノキ樹皮の水抽出物(上記の通りにして調製した乾燥粉末1mg若しくは10mgを蒸留水に溶解したもの)又は蒸留水を、ZT4(12:00)のタイミングにて、3日間ゾンデを用いて強制的に経口投与した。そして、投与最終日のZT5.5に、これらマウスを解剖し、肝臓を摘出した。次いで、摘出した肝臓からトータルRNAを抽出し、cDNAに逆転写した後、Per1、Per2及びBmal1遺伝子の発現量をリアルタイムPCRにて解析した。得られた結果を図4〜6に示す。
(実施例4)
<ヒトへの投与試験>
下記条件にて、ネムノキ樹皮の水抽出物を10日間毎日ヒトに摂取してもらい、睡眠検査に供した(睡眠検査法については、松浦雅人編集、「睡眠検査学の基礎と臨床」、株式会社新興医学出版社、2009年8月10日発行、149〜155ページ 御参照のほど)。
被験者:29〜49歳、健常者(男性5名、女性4名、合計9名)
摂取:上記の通りにして調製した乾燥粉末100mgをカプセル(株式会社ヒルハーフ総合研究所製、ゼラチンカプセル)に入れたものを、10日間、午前8:30〜9:00の間に経口にて水と一緒に摂取してもらった。
睡眠検査:ネムノキ樹皮の水抽出物の摂取の前日及び10日目の13〜16時のタイミングで、下記KSS及びVASを行い、眠気を評価した。また、ネムノキ樹皮の水抽出物の摂取の前日及び10日目に、下記MEQにての朝型・夜型の傾向を調査した。
関西学院大学式眠気尺度(KSS;Kwansei−Gakuin sleeping scale)
KSSは、スタンフォード眠気尺度を参考に日本語版として作成された眠気の質問紙で22項目から構成されている。それぞれの項目には0〜7点の尺度値が付与されており、数字が大きいほど強い眠気を表す。選択した項目(複数選択可)の平均尺度値を眠気得点として算出する(石原金由ら、「眠けの尺度とその実験的検討」、心理学研究、1982年、52巻、362〜365ページ 参照)。得られた結果(計9名の被験者の平均値)を、図8に示す。
視覚的アナログ評価尺度(VAS;Visual analog scale)
視覚的アナログ評価尺度(VAS)によって、被験者の主観的な睡眠を評価する。より具体的には、100mmの直線の左右両端に「まったく眠くない」、「非常に眠い」等の単語を記しておき、今の状態に近いと思われる位置に垂直線を引いてもらう方法である。0の地点から垂直線までの距離をミリ単位で測定し、その数値を眠気得点とする。得点は1mmあたり1点とし、0〜100点の得点とする。今回は覚醒度以外に意欲、気分、気持ち、身体的疲労、集中力、食欲、自信度の計8項目で調査を行った。得られた結果(計9名の被験者の平均値)を、図9〜12に示す。
朝型・夜型質問紙(MEQ;Morningness−Eveningness Questionnaire)
MEQは、睡眠・覚醒リズムの個人差、生活スタイルのリズム志向を検討する質問紙であり、19項目の質問から構成されている。それぞれの項目への回答に応じて得点が付与され、その総得点が高いほど朝型の傾向にあると評価される(石原金由ら、「日本語版朝型−夜型(morningness−eveningness)質問紙による調査結果」、心理学研究、1986年、57巻、87〜91ページ 参照)。得られた結果を、図13に示す。なお、MEQに関しては、午前中(8:30〜9:00)の摂取の代わりに、夕食時にネムノキ樹皮の水抽出物を摂取してもらった被験者も用意し、この検査を受けてもらった。得られた結果(計9名の被験者の平均値)を図14に示す。
図2に示した結果から明らかなように、ネムノキ樹皮の水抽出物をマウス胚性線維芽細胞に添加することによって、当該細胞の時計遺伝子(Per2遺伝子)の発現リズムにおいて、その振幅の経過的減弱を抑制した(Per2の遺伝子発現レベルを維持した)。さらに、表1に示した結果からも明らかなように、ネムノキ樹皮の水抽出物をPer2発現リズムの漸減過程にて細胞に添加した場合には、同発現リズムのピーク(位相)は濃度依存的に前進した。一方、図には示していないが、同抽出物をPer2発現リズムの漸増過程にて細胞に添加した場合には、同発現リズムのピーク(位相)は濃度依存的に後退することが明らかになった。
したがって、投与のタイミングにより位相を前後どちらにも動かせることから、ネムノキ樹皮の水抽出物は、時計遺伝子の発現量及び位相の調節に利用できることが明らかになった。
また、図4及び5に示す通り、ネムノキ樹皮の水抽出物をマウスに経口投与した結果、末梢組織(肝臓)におけるPer1遺伝子及びPer2遺伝子の発現量は、投与量依存的に減少した。一方、図6に示す通り、ネムノキ樹皮の水抽出物投与によって末梢組織におけるBmal1遺伝子の発現量は増加した。
なお、哺乳動物において、BMAL1タンパク質はCLOCKタンパク質とヘテロ二量体を形成してPeriod遺伝子(Per1、Per2)の転写を促進する。また、その一方で、PERタンパク質はCRYPTOCHROMEタンパク質とヘテロ二量体を形成してBMAL1タンパク質及びCLOCKタンパク質の活性を抑制する。そして、このようなフィードバックループによって概日リズムは調整されており、またPeriod遺伝子とBmal1遺伝子の発現リスムは、ほぼ12時間ずれていることが知られている。したがって、図4〜6において示される時計遺伝子(Per1及びPer2と、Bmal1)の発現量における変化の不一致は、発現リズムにおいて、Per1及びPer2と、Bmal1とが逆相の関係にあることを反映しているものと考えられる。
さらに、マウス(ネムノキ樹皮の水抽出物非投与)におけるZT0〜24の3時間毎のPer1遺伝子発現量の変化(図7 参照)を参酌するに、ネムノキ樹皮の水抽出物投与マウスにおいてはZT5.5のPer1遺伝子発現量は減少していたことから、同遺伝子の発現リズムの位相は後退していることが示唆される。
以上のマウスにおける結果から、ネムノキ樹皮の水抽出物を経口摂取することにより、末梢組織の時計遺伝子の発現量及び位相の調節に利用できることも明らかになった。
また、図8〜12に示す通り、ネムノキ樹皮の水抽出物をヒトに経口投与した結果、当該抽出物によって午後の眠気は改善され(KSSスコアの減少)、また覚醒度、意欲、気分、集中力においても有意に改善されること(VASスコアの増加)が明らかになった。
さらに、図13に示す通り、ネムノキ樹皮の水抽出物を午前中、ヒトに経口投与した結果、朝型傾向がより強くなること(MEQスコアの増加)が明らかになった。その一方で、図14に示す通り、同抽出物を午後(夕食時)に投与しても、MEQスコアの有意な変化は認められなかった。
以上の通り、ネムノキ樹皮の水抽出物の経口投与によって、午後の眠気は減少し、また覚醒度、意欲、気分及び集中力が増加し、朝型傾向が強くなった。このことから、当該抽出物の摂取により、時計遺伝子の発現リズムが変化し、さらに概日リズムが変化した結果、入眠が早く、朝早く起き易くなり、さらに午後の眠気が減少した一方で、活動性が向上したものと推察される。
以上説明したように、本発明によれば、時計遺伝子の発現を変化させ、また当該発現変化により概日リズムを変化させることができる。また、かかる変化を生じさせることによって、概日リズムにおける異常を解消することができるため、本発明の組成物は、当該異常に起因する疾患(概日リズム障害等)の治療、改善(緩和)又は予防をするための医薬品、食品等として有用である。さらに、本発明の組成物は、時計遺伝子の発現を変化させるための、また当該発現変化により概日リズムを変化させるための試薬としても有用である。

Claims (3)

  1. ネムノキ樹皮の水抽出物を有効成分として含む、時計遺伝子の発現を変化させるための組成物。
  2. 時計遺伝子が、Per1遺伝子、Per2遺伝子及びBmal1遺伝子からなる群から選択される少なくとも1の遺伝子である、請求項1に記載の組成物。
  3. 概日リズムを変化させるための組成物である、請求項1又は2に記載の組成物。
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