JP7011400B2 - アストロサイトのグルコース代謝活性化剤 - Google Patents

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Description

本発明は、アストロサイトのグルコース代謝を活性化する素材に関する。
脳はグルコースを重要なエネルギー基質とし、その代謝により産生されるATPを用いて活動を維持している。脳神経細胞のエネルギー代謝は脳機能の維持において重要であり、これまで脳エネルギー代謝研究が盛んに行われてきた。1988年のFoxらによるPositron Emission Tomography (PET)を用いた研究では、ヒトの視覚野の脳グルコース消費率、脳血流量および脳酸素消費量を測定し、視覚刺激による脳の機能活動亢進により脳グルコース消費が高まること、およびこの代謝が嫌気的であることが明らかにされている(非特許文献1)。したがって、脳グルコース代謝は脳の機能活動と相関すると考えられる。一方、脳グルコース代謝は、加齢により、またはアルツハイマー病の初期段階から低下することが報告されている(非特許文献2、3)。脳グルコース代謝の改善は、加齢に伴う脳機能障害や、アルツハイマー病をはじめとする認知症の予防および軽減に有用であると考えられる(特許文献1)。
これまで、脳グルコース代謝機構については不明な点が多かった。2000年、脳機能を考える上で細胞間のネットワークが重要であるというneurovascular unitという概念が提唱された。脳グルコース代謝の場合も同様に、ニューロン、脳微小循環(微小血管)、アストロサイトの3者間のネットワークが重要であるとされている。現在、種々の反証はあるものの、脳グルコース代謝機構としてはアストロサイト-ニューロン間の乳酸供与仮説(astrocyte-neuron lactate shuttle hyposis;ANLSH)が一般的に支持されている。この仮説によれば、脳の機能活動の際、グルコースは、主にアストロサイトのグルコース輸送体1(glucose transporter 1;GLUT1)を介して細胞内に取り込まれ、解糖系で代謝されて乳酸に変換される。その後乳酸は、アストロサイト上の乳酸輸送担体1(monocarboxylate transpoter 1;MCT1)および乳酸輸送担体4(monocarboxylate transpoter 4;MCT4)の働きにより細胞外に輸送され、ニューロンに取り込まれる。ニューロンは取り込んだ乳酸をエネルギー基質としてATPを産生し、これをエネルギー源にして活動する(非特許文献4)。ニューロン自身もグルコースを取り込むことは可能であるが、ニューロンはグルコースよりも乳酸を選択的に取り込み、エネルギー基質として用いている(非特許文献5)。したがって、アストロサイトのグルコース代謝による乳酸供給が、ニューロンの活動や機能維持にとって非常に重要であると考えられている。
したがって、近年、脳内乳酸に関する研究が盛んに行われている。非特許文献6では、アストロサイトに存在する乳酸輸送担体であるMCT1またはMCT4を欠損させたマウスでは記憶形成が低下すること、このマウスの脳内への乳酸投与は記憶形成の低下を改善する一方、グルコース投与は記憶形成の低下改善には効果がないこと、これらの知見から、アストロサイトからニューロンへの乳酸供給が記憶を形成する上で非常に重要であると考えられることが報告されている。
一方、特許文献1には、脳内でインスリン感受性を改善しグルコース利用を増進させる物質の投与により、患者の精神活動を改善する方法が記載されている。しかし、非特許文献6によると、脳機能改善には、脳内ニューロンによるグルコース利用の増進だけでは不十分であり、アストロサイトによる乳酸産生の増加やアストロサイトからニューロンへの乳酸の供給が重要であると考えられる。
プーアール茶は、茶葉を微生物により発酵させることで得られる発酵茶である。特許文献2には、プーアール茶の水抽出物が、α-ジカルボニル化合物分解活性を示したことが記載されている。特許文献3には、プーアール茶の熱水抽出物が酸化蛋白質分解酵素(OPH)活性や、糖化反応最終生成物(AGEs)分解作用を増強したことが記載されている。
特表2002-532416号公報 特開2014-205709号公報 特開2013-253071号公報
Science, 241:462-464, 1988 J Neurol Sci, 181(1-2):19-28, 2000 Neuroimage, 17:302-316, 2002 Cell Metabo, 14(6):724-738, 2011 脳循環代謝, 21:18-27, 2010 Cell, 144:810-823, 2011
本発明は、脳内神経活動の向上、または加齢、アルツハイマー病等の認知症などによって生じる脳機能障害の予防または改善に有効な素材を提供することに関する。
本発明者らは、脳内グルコース代謝の活性化に有効な成分の探索を行った結果、プーアール茶の有機溶媒抽出物が、アストロサイトのグルコース代謝を活性させる作用を有し、脳内の神経活動の賦活化、脳機能の向上もしくは抑制低下、または脳機能障害の予防もしくは改善などに有効であることを見出した。
したがって、本発明は、プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効成分とする、アストロサイトのグルコース代謝活性化剤を提供する。
また本発明は、プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効成分とする、脳内神経細胞賦活化剤を提供する。
また本発明は、プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効成分とする、脳機能低下抑制剤を提供する。
また本発明は、プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効成分とする、脳機能向上剤を提供する。
また本発明は、プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効成分とする、脳機能障害の予防または改善剤を提供する。
本発明は、優れたアストロサイトのグルコース代謝活性化作用を有し、脳内ニューロンへのエネルギー供給の向上および脳内神経活動の向上に有効な素材を提供することができる。本発明によれば、脳機能の向上、脳機能の低下抑制、または加齢、アルツハイマー病等の認知症などによって生じる脳機能障害の予防もしくは改善が可能となる。
プーアール茶抽出物によるアストロサイトのグルコース代謝活性化作用。A:ヘキサン抽出物、エラーバー=±標準誤差(n=4~6)。B:99.5(v/v)%エタノール抽出物、エラーバー=±標準誤差(n=3~5)。C:熱水抽出物及び50(v/v)%エタノール抽出物、エラーバー=±標準誤差(n=3~5)。* p<0.05、**p<0.01、*** p<0.001(Dunnett検定、vs 対照)。
本明細書において、「アストロサイトのグルコース代謝活性化」とは、好ましくは、アストロサイトによるグルコースを乳酸に変換する代謝活動、またはアストロサイトによる乳酸産生活動の向上をいう。アストロサイトのグルコース代謝レベルの変化は、アストロサイトによるグルコース取込み量または乳酸産生量の変化を測定することによって評価することができる。アストロサイトによるグルコース取込み量または乳酸産生量の変化は、グルコース含有培地でアストロサイトを培養し、培養前後での培地中のグルコース量または乳酸量を比較することによって測定することができる。または、アストロサイトのグルコース代謝レベルの変化は、グルコース含有培地でアストロサイトを培養し、酸素消費量を測定するか、または生産された乳酸による培地のpH変化を測定することによって評価することができる。培地のpH変化は、培地の水素イオン濃度の変化を測ることで測定することができる。細胞の酸素消費量や培地のpH変化の測定は、例えば、細胞外フラックスアナライザー(Seahorse Bioscience)によって行うことができる。
あるいは、アストロサイトのグルコース代謝レベルの変化は、アストロサイトにおけるグルコース取込み、グルコースから乳酸への変換または乳酸輸送に関与する遺伝子もしくはタンパク質の発現量を測定することによって評価することができる。アストロサイトのグルコース取込み、グルコースから乳酸への変換または乳酸輸送に関与する遺伝子もしくはタンパク質としては、グルコース輸送体1(glucose transporter 1;GLUT1)、乳酸輸送担体1(monocarboxylate transpoter 1;MCT1)、乳酸輸送担体4(monocarboxylate transpoter 4;MCT4)、およびこれらをコードする遺伝子、ならびに該遺伝子のホモログ、パラログおよびオルソログが挙げられる。該遺伝子またはタンパク質の発現量の測定には、当該分野で通常用いられる方法が利用できる。例えば、遺伝子の発現量は、定量RT-PCR法、RNA分解酵素プロテクションアッセイ法、ノーザンブロット解析法、次世代シーケンサーを用いたRNA-Seq解析、DNAマイクロアレイ解析などにより測定することができ、タンパク質の発現量は、通常の免疫測定法、例えばRIA法、ELISA、バイオアッセイ法、プロテオーム、ウェスタンブロットなどにより測定することができる。
本明細書において「脳機能」としては、記憶、学習、思考、注意または知覚、言語、時空間認識、見当識、その他抽象的事象の認知または総合判断能力、および実行能力などが挙げられ、好ましくは記憶または学習能力、総合判断能力、および実行能力が挙げられる。したがって、本明細書における「脳機能低下抑制」および「脳機能向上」とは、好ましくは、記憶、学習、思考、注意または知覚、言語、時空間認識、見当識、その他抽象的事象の認知または総合判断能力、および実行能力について、該能力の低下を抑制することおよび該能力を向上させることである。さらに本明細書における「脳機能障害」とは、好ましくは、加齢、外傷、またはアルツハイマー病や脳血管性認知症等の認知症などによって生じる記憶障害、学習障害、思考能力障害、または認知もしくは総合判断能力の障害、あるいはアルツハイマー病や脳血管性認知症等の認知症の症状または徴候をいう。
本明細書において、「非治療的」とは、医療行為を含まない概念、すなわち人間を手術、治療または診断する方法を含まない概念、より具体的には医師または医師の指示を受けた者が人間に対して手術、治療または診断を実施する方法を含まない概念である。
本明細書において、「予防」とは、個体における疾患、症状もしくは状態の発症の防止、抑制または遅延、あるいは個体の疾患、症状もしくは状態の発症の危険性を低下させることをいう。また本明細書において、「改善」とは、疾患、症状もしくは状態の好転、疾患、症状もしくは状態の悪化の防止、抑制または遅延、あるいは疾患、症状もしくは状態の進行の逆転、防止、抑制または遅延をいう。
本発明で使用されるプーアール茶とは、茶(Camellia sinensis)の葉を酵素発酵させることで得られる発酵茶である。一般的には、プーアール茶は、加熱した茶葉にコウジカビ(Aspergillus)を加えて発酵させることによって製造されるが、加熱した茶葉を長時間熟成させたものも流通している。入手のしやすさの点で、茶葉にコウジカビ(Aspergillus)を加えて発酵させて得られたプーアール茶が本発明で好適に使用される。プーアール茶は市販品を購入することができる。
本発明において、プーアール茶は、そのまま、または切断、破砕、粉砕もしくは搾取して使用されてもよく、あるいはそれらの乾燥物が使用されてもよい。好適には乾燥物が用いられる。該乾燥物は、切断、破砕、粉砕もしくは粉末化されていてもよい。
本発明において使用されるプーアール茶抽出物は、プーアール茶をそのまま抽出するか、または乾燥、切断、破砕、粉砕もしくは搾取したものから抽出した抽出物であってもよいが、好適には、プーアール茶の乾燥物、または該乾燥物を切断、破砕、粉砕もしくは粉末化したものからの抽出物である。
当該抽出物を得るための抽出手段としては、例えば、固液抽出、圧搾抽出、液液抽出、浸漬、煎出、浸出、還流抽出、ソックスレー抽出、超音波抽出、マイクロ波抽出、攪拌等の通常の手段を用いることができる。これらの抽出手段は組み合わせてもよい。例えば、浸漬や固液抽出と液液抽出を組み合わせてもよく、または抽出時間を短縮する場合には、攪拌を伴う固液抽出をおこなってもよい。
当該抽出物の抽出のための溶媒としては、有機溶媒が用いられる。該有機溶媒としては、極性有機溶媒であっても疎水性有機溶媒(低極性有機溶媒および非極性有機溶媒を含む)であってもよい。該有機溶媒の例としては、1価、2価又は多価のアルコール類及びその水溶液;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;ジエチルエーテル等の鎖状エーテル類;ペンタン、ヘキサン等の飽和または不飽和の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;二酸化炭素、超臨界二酸化炭素;ナタネ油、大豆油等の食用油;ジアシルグリセロール(DAG)、中鎖脂肪酸油、スクワラン、スクワレン等の油脂類;ならびにこれらの混合物が挙げられる。該アルコール類の例としては、好ましくはメタノール、エタノール、1,3-ブチレングリコール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール等が挙げられ、より好ましくはエタノールが挙げられる。該アルコール類の水溶液のアルコール濃度は、好ましくは75(v/v)%以上、より好ましくは90(v/v)%以上、さらに好ましくは95(v/v)%以上、さらに好ましくは99(v/v)%以上、さらに好ましくは99.5(v/v)%以上である。上記抽出溶媒のうち、ペンタン、ヘキサン、超臨界二酸化炭素、食用油、油脂類、エタノール、および75(v/v)%以上のエタノールを含むエタノール水溶液が好ましく、ヘキサン、エタノール、および90(v/v)%以上のエタノールを含むエタノール水溶液がより好ましく、ヘキサン、エタノール、および95(v/v)%以上のエタノールを含むエタノール水溶液がさらに好ましく、ヘキサンがさらに好ましい。
抽出における溶媒の使用量としては、植物(乾燥質量換算)1gに対して1~100mLが好ましい。抽出条件は、十分な抽出が行える条件であれば特に限定されない。通常、溶媒がより低温であればより長時間、溶媒がより高温であればより短時間の抽出を行う。例えば、抽出時間は1時間以上が好ましく、12時間以上がより好ましく、他方、2ヶ月以下が好ましく、1ヶ月以下がより好ましい。また例えば、抽出温度は0℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましく、他方、溶媒沸点以下が好ましいが、室温程度であってもよい。好ましい抽出条件の例としては、15~40℃で7~30日間等が挙げられるが、これらに限定されず、当業者によって適宜選択され得る。
超臨界二酸化炭素抽出の条件としては、二酸化炭素使用量は植物(乾燥質量換算)1gに対して10~200g、7.5~50MPa、40~100℃、1~24時間が好ましい。必要に応じてエタノールを1質量%程度添加してもよい。
上述の手順で得られた抽出物に対して、必要に応じて、植物抽出物の製造に一般的に用いられる精製処理、例えば、有機溶剤沈殿、遠心分離、限界濾過膜、高速液体クロマトグラフ、カラムクロマトグラフ、液液分配、ゲルろ過分離、活性炭等を用いた処理を行うこともできる。
上述の手順で得られた抽出物は、抽出液やその画分を単独でまたは混合して、そのまま用いてもよく、または適宜な溶媒で希釈した希釈液として用いてもよく、または濃縮や凍結乾燥などにより濃縮エキスや乾燥粉末もしくはペースト状に調製して用いてもよい。あるいは、該濃縮エキスや乾燥粉末もしくはペーストを、用時に溶媒、例えば水、エタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、水-エタノール混合液、水-プロピレングリコール混合液、水-ブチレングリコール混合液等で希釈して用いることもできる。またあるいは、該濃縮エキスや乾燥粉末もしくはペーストを、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
本発明において、プーアール茶の有機溶媒抽出物としては、好ましくは、プーアール茶のヘキサン抽出物、エタノール抽出物、または90(v/v)%以上のエタノールを含むエタノール水溶液の抽出物が使用され、さらに好ましくはプーアール茶のヘキサン抽出物が使用される。90(v/v)%以上のエタノールを含むエタノール水溶液としては、好ましくは95(v/v)%以上、より好ましくは99(v/v)%以上、さらに好ましくは99.5(v/v)%以上のエタノールを含むエタノール水溶液が挙げられる。なお、本発明において、容量(v/v)は25℃における容量を意味する。
プーアール茶の有機溶媒抽出物は、アストロサイトのグルコース代謝を活性化する作用を有する(後述の実施例1)。アストロサイトのグルコース代謝の活性化は、脳内のニューロンにエネルギー基質となる乳酸をより多く供給することによって、脳内ニューロンの活動を上昇させ(例えば非特許文献1、4参照)、また脳機能(例えば、記憶、学習、総合判断能力等の認知機能、および実行能力)の向上またはその低下抑制をもたらす(例えば非特許文献2、6参照)。したがって、プーアール茶の有機溶媒抽出物は、アストロサイトのグルコース代謝活性化のため、脳内ニューロンへのエネルギー供給の向上のため、脳内神経細胞賦活化のため、脳機能の向上または脳機能の低下抑制のため、さらには脳機能障害の予防または改善のために有効である。
したがって、一態様において、本発明は、プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効成分とする、アストロサイトのグルコース代謝活性化剤を提供する。また本発明は、プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効成分とする、脳内ニューロンへのエネルギー供給向上剤、脳内神経細胞賦活化剤、脳機能向上剤、脳機能低下抑制剤、あるいは脳機能障害の予防または改善剤を提供する。
別の態様において、本発明は、アストロサイトのグルコース代謝活性化剤、脳内ニューロンへのエネルギー供給向上剤、脳内神経細胞賦活化剤、脳機能向上剤、脳機能低下抑制剤、あるいは脳機能障害の予防または改善剤の製造のための、プーアール茶の有機溶媒抽出物の使用を提供する。
一実施形態において、当該剤は、プーアール茶の有機溶媒抽出物から本質的に構成され得る。別の一実施形態において、当該剤は、少なくともプーアール茶の有機溶媒抽出物を含有する組成物であり得る。当該組成物の例としては、後述する医薬品、医薬部外品、食品などが挙げられる。
また別の態様において、本発明は、アストロサイトのグルコース代謝活性化、脳内ニューロンへのエネルギー供給向上、脳内神経細胞賦活化、脳機能向上、脳機能低下抑制、あるいは脳機能障害の予防または改善のためのプーアール茶の有機溶媒抽出物の使用を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、アストロサイトのグルコース代謝活性化、脳内ニューロンへのエネルギー供給向上、脳内神経細胞賦活化、脳機能向上、脳機能低下抑制、あるいは脳機能障害の予防または改善に使用するための、プーアール茶の有機溶媒抽出物を提供する。
当該本発明による使用は、治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。治療的使用の例としては、認知症と診断された者、または重度の認知機能障害を有し、日常生活に支障をきたしている者に対する使用が挙げられる。非治療使用の例としては、脳機能の低下により日常生活に支障をきたしていないが、脳機能向上、脳機能低下抑制または脳機能障害の予防を必要とする者、例えば、軽度認知障害(MCI)の者、記憶、学習、認知機能等の脳機能の低下を感じる者、記憶や学習能力のさらなる向上を所望する者、などに対する使用が挙げられる。また例えば、非治療的使用とは、他者に、医療行為としてではなくプーアール茶の有機溶媒抽出物を投与または摂取させるために、当該脳機能向上、脳機能低下抑制または脳機能障害予防効果等を謳ってそれらを提供することである。
本発明において、プーアール茶の有機溶媒抽出物は、ヒトおよび非ヒト動物のいずれに対しても使用することができる。非ヒト動物としては、非ヒト哺乳動物、鳥類などが挙げられ、非ヒト哺乳動物としては、例えば、類人猿、その他霊長類、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、およびコンパニオン動物などが挙げられる。
本発明において、プーアール茶の有機溶媒抽出物は、医薬品、医薬部外品または食品(非ヒト動物用食品を含む)等に対して、アストロサイトのグルコース代謝活性化、脳内ニューロンへのエネルギー供給向上、脳内神経細胞賦活化、脳機能向上、脳機能低下抑制、あるいは脳機能障害の予防または改善の機能を付与するための有効成分として使用することができる。
当該医薬品(医薬部外品も含む)は、アストロサイトのグルコース代謝活性化、脳内ニューロンへのエネルギー供給向上、脳内神経細胞賦活化、脳機能向上、脳機能低下抑制、あるいは脳機能障害の予防または改善のための医薬品であり、プーアール茶の有機溶媒抽出物を、当該機能のための有効成分として含有する。さらに、該医薬品は、該有効成分の機能が失われない限りにおいて、必要に応じて薬学的に許容される担体、または他の有効成分、薬理成分等を含有していてもよい。
当該医薬品(医薬部外品も含む)の投与形態は、経口投与および非経口投与の何れであってもよい。該医薬品の剤形は、経口または非経口的に投与可能な剤形であれば特に限定されず、例えば注射剤、坐剤、吸入剤、経皮吸収剤、各種外用剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤、シロップ剤等の何れでもよく、また、このような種々の剤形の製剤は、プーアール茶の有機溶媒抽出物を、薬学的に許容される担体(例えば賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、希釈剤等)、他の薬効成分等と適宜組み合わせて、定法に従って調製することができる。
当該医薬品(医薬部外品も含む)におけるプーアール茶の有機溶媒抽出物の含有量(乾燥物換算)は、特に限定されないが、好ましくは全質量中0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上、なお好ましくは10質量%以上であり、かつ好ましくは95質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。さらに、当該含有量の例として、0.01~95質量%、0.01~80質量%、0.01~60質量%、0.1~95質量%、0.1~80質量%、0.1~60質量%、1.0~95質量%、1.0~80質量%、1.0~60質量%、10質量%~95質量%、10質量%~80質量%、および10質量%~60質量%が挙げられる。
当該食品は、アストロサイトのグルコース代謝活性化、脳内ニューロンへのエネルギー供給向上、脳内神経細胞賦活化、脳機能向上、脳機能低下抑制、あるいは脳機能障害の予防または改善の機能を提供するための食品であり、プーアール茶の有機溶媒抽出物を、当該機能のための有効成分として含有する。該食品には、アストロサイトのグルコース代謝活性化、脳内ニューロンへのエネルギー供給向上、脳内神経細胞賦活化、脳機能向上、脳機能低下抑制、あるいは脳機能障害の予防または改善をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した病者用食品、および栄養機能食品、特定保健用食品、機能性表示食品等の保健機能食品が包含される。これらの食品は、例えば「記憶力を高める」、「物忘れや言葉忘れを防ぐ」、「言語、判断、理解または思考能力を高める」、「加齢による脳機能の衰えを予防または改善する」、「認知機能の低下による妄想、徘徊、または幻覚症状を緩和または予防する」などの機能表示と共に提供されてもよい。
本発明により提供される食品は飲料を含む。したがって、当該食品を飲食品と言い換えることができる。当該食品の形態は、固形、半固形または液状(例えば飲料)であり得る。該食品の例としては、パン類、麺類、飯類、クッキー等の菓子類、ゼリー類、乳製品、スープ類、冷凍食品、インスタント食品、でんぷん加工製品、加工魚肉製品、その他加工食品、調味料、栄養補助食品、およびお茶やコーヒー飲料、果実飲料、炭酸飲料、ゼリー状飲料等の飲料、ならびにそれらの原料が挙げられる。あるいは、該食品は、錠剤、カプセル、顆粒、粉末、液剤、シロップなどの経口投与製剤の形態を有するサプリメントであってもよい。
当該食品は、プーアール茶の有機溶媒抽出物を、任意の食品材料または食品に許容される添加物(例えば溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、香科、甘味料、安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤、固着剤、分散剤、湿潤剤等)と適宜組み合わせて、定法に従って調製することができる。
当該食品中における、プーアール茶の有機溶媒抽出物の含有量(乾燥物換算)は、特に限定されないが、好ましくは全質量の0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上、さらにより好ましくは0.1質量%以上、なお好ましくは1質量%以上であり、かつ好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。さらに、当該含有量の例として、0.0001~50質量%、0.0001~20質量%、0.0001~10質量%、0.001~50質量%、0.001~20質量%、0.001~10質量%、0.01~50質量%、0.01~20質量%、0.01~10質量%、0.1~50質量%、0.1~20質量%、および0.1~10質量%、1~50質量%、1~20質量%、および1~10質量%が挙げられる。
なお別の態様において、本発明は、対象のアストロサイトのグルコース代謝活性化方法を提供する。また本発明は、対象の脳内ニューロンへのエネルギー供給向上方法を提供する。また本発明は、対象の脳内神経細胞賦活化方法を提供する。また本発明は、対象の脳機能向上または脳機能低下抑制のための方法を提供する。また本発明は、対象の脳機能障害の予防または改善のための方法を提供する。当該方法は、対象に、プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効量で投与することを含む。当該方法は、治療的方法であっても非治療的方法であってもよい。
当該方法における対象としては、アストロサイトのグルコース代謝活性化、脳内ニューロンへのエネルギー供給向上、脳内神経細胞賦活化、脳機能向上、脳機能低下抑制、または脳機能障害の予防もしくは改善が所望されるかまたはそれらを必要とする動物が挙げられる。動物としては、脳を有する動物であれば特に限定されないが、上述したヒトおよび非ヒト動物が挙げられ、より好ましくはヒトである。
本発明のアストロサイトのグルコース代謝活性化方法、脳内ニューロンへのエネルギー供給向上方法、および脳内神経細胞賦活化方法は、インビトロ方法であってもよい。インビトロ方法の場合の対象としては、上述したヒトまたは非ヒト動物由来の脳組織および培養アストロサイトを挙げることができる。
上記方法における投与の有効量は、対象のアストロサイトのグルコース代謝活性化を達成できる量であり得る。好ましくは、有効量とは、投与群のアストロサイトのグルコース代謝を、未投与群と比べて統計的に有意に上昇させることができる量である。また好ましくは、有効量とは、培養アストロサイトにおいて、投与群のグルコース代謝を、未投与群の105%以上、好ましくは110%以上、より好ましくは120%以上に上昇させることができる量である。あるいは、有効量とは、投与群の脳活動を、未投与群と比べて統計的に有意に上昇させることができる量である。脳活動の測定は、機能的MRI、PET、単一光子放射断層撮影(SPECT)、近赤外線分光法(NIRS)、脳磁計(MEG)などによって測定することができる。
本発明において、プーアール茶の有機溶媒抽出物の投与量および投与計画は、対象の種、体重、性別、年齢、状態、またはその他の要因に従って当業者により適宜決定されればよい。限定ではないが、本発明によるプーアール茶の有機溶媒抽出物(乾燥物換算)の投与量は、例えば成人1人1日当たり、好ましくは1mg以上、より好ましくは5mg以上、さらに好ましくは15mg以上であり、かつ好ましくは10g以下、より好ましくは5g以下、さらに好ましくは1g以下である。上記の用量を、例えば、1日に1回、2回または3回以上に分け、数週間~数ヶ月間継続して投与することが好ましい。
本発明はまた、例示的実施形態として以下の物質、製造方法、用途、方法等を包含する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
〔1〕プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効成分とする、アストロサイトのグルコース代謝活性化剤。
〔2〕プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効成分とする、脳内神経細胞賦活化剤。
〔3〕プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効成分とする、脳機能低下抑制剤。
〔4〕プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効成分とする、脳機能向上剤。
〔5〕プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効成分とする、脳機能障害の予防または改善剤。
〔6〕プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効成分とする、脳内ニューロンへのエネルギー供給向上剤。
〔7〕アストロサイトのグルコース代謝活性化剤の製造のための、プーアール茶の有機溶媒抽出物の使用。
〔8〕脳内神経細胞賦活化剤の製造のための、プーアール茶の有機溶媒抽出物の使用。
〔9〕脳機能低下抑制剤の製造のための、プーアール茶の有機溶媒抽出物の使用。
〔10〕脳機能向上剤の製造のための、プーアール茶の有機溶媒抽出物の使用。
〔11〕脳機能障害の予防または改善剤の製造のための、プーアール茶の有機溶媒抽出物の使用。
〔12〕脳内ニューロンへのエネルギー供給向上剤の製造のための、プーアール茶の有機溶媒抽出物の使用。
〔13〕アストロサイトのグルコース代謝活性化に使用するための、プーアール茶の有機溶媒抽出物。
〔14〕脳内神経細胞賦活化に使用するための、プーアール茶の有機溶媒抽出物。
〔15〕脳機能低下抑制に使用するための、プーアール茶の有機溶媒抽出物。
〔16〕脳機能向上に使用するための、プーアール茶の有機溶媒抽出物。
〔17〕脳機能障害の予防または改善に使用するための、プーアール茶の有機溶媒抽出物。
〔18〕脳内ニューロンへのエネルギー供給向上に使用するための、プーアール茶の有機溶媒抽出物。
〔19〕アストロサイトのグルコース代謝活性化のための、プーアール茶の有機溶媒抽出物の使用。
〔20〕脳内神経細胞賦活化のための、プーアール茶の有機溶媒抽出物の使用。
〔21〕脳機能低下抑制のための、プーアール茶の有機溶媒抽出物の使用。
〔22〕脳機能向上のための、プーアール茶の有機溶媒抽出物の使用。
〔23〕脳機能障害の予防または改善のための、プーアール茶の有機溶媒抽出物の使用。
〔24〕脳内ニューロンへのエネルギー供給向上のための、プーアール茶の有機溶媒抽出物の使用。
〔25〕対象のアストロサイトのグルコース代謝活性化方法であって、それを必要とする対象に、プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効量で投与することを含む、方法。
〔26〕対象の脳内神経細胞賦活化方法であって、それを必要とする対象に、プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効量で投与することを含む、方法。
〔27〕対象の脳機能低下抑制方法であって、それを必要とする対象に、プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効量で投与することを含む、方法。
〔28〕対象の脳機能向上方法であって、それを必要とする対象に、プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効量で投与することを含む、方法。
〔29〕対象の脳機能障害の予防または改善方法であって、それを必要とする対象に、プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効量で投与することを含む、方法。
〔30〕対象の脳内ニューロンへのエネルギー供給向上方法であって、それを必要とする対象に、プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効量で投与することを含む、方法。
〔31〕前記〔5〕、〔11〕、〔17〕、〔23〕、〔29〕において、好ましくは、前記脳機能障害は、加齢、外傷または認知症によって生じる記憶障害、学習障害、思考能力障害、または認知もしくは総合判断能力の障害、あるいは認知症の症状または徴候である。
〔32〕前記〔1〕~〔12〕において、好ましくは、前記剤は経口投与製剤である。
〔33〕前記〔13〕~〔18〕において、好ましくは、前記使用は、アストロサイトのグルコース代謝活性化、脳内神経細胞賦活化、脳機能低下抑制、脳機能向上、脳機能障害の予防もしくは改善、または脳内ニューロンへのエネルギー供給向上のための医薬としての使用である。
〔34〕前記〔33〕において、好ましくは、前記医薬は経口薬である。
〔35〕前記〔19〕~〔24〕において、好ましくは前記使用は非治療的使用である。
〔36〕前記〔35〕において、好ましくは、前記プーアール茶の有機溶媒抽出物は、サプリメントの形態で使用される。
〔37〕前記〔25〕~〔30〕において、好ましくは、前記投与は経口投与である。
〔38〕前記〔1〕~〔37〕において、前記プーアール茶の有機溶媒抽出物は、
好ましくは、ペンタン、ヘキサン、超臨界二酸化炭素、食用油、油脂類、エタノールおよび75(v/v)%以上のエタノールを含むエタノール水溶液からなる群より選択される溶媒を用いて抽出されたプーアール茶抽出物であり、
より好ましくは、プーアール茶のヘキサン抽出物、エタノール抽出物、または90(v/v)%以上のエタノールを含むエタノール水溶液の抽出物であり、
さらに好ましくは、プーアール茶のヘキサン抽出物である。
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
製造例1 抽出物の調製
(プーアール茶抽出物)
プーアール茶(乾燥品、茶卸総本舗より購入)10gに、ヘキサン、99.5(v/v)%エタノールまたは50(v/v)%エタノールを100mL加え、室温、静置下で7~30日間浸漬した。その後、ろ過により抽出残渣を除去した後、得られた抽出液を減圧濃縮および凍結乾燥して抽出物を得た。
プーアール茶の熱水抽出物については、プーアール茶乾燥品10gにイオン交換水120mLを加え、95~100℃に加熱しながら60分間撹拌抽出した後、抽出液をろ過し、凍結乾燥して抽出物を得た。
各抽出物の収量は次のとおり:ヘキサン抽出物=36.7mg、99.5(v/v)%エタノール抽出物=102.5mg、50(v/v)%エタノール抽出物=1042.3mg、熱水抽出物=1369.8mg。
実施例1 アストロサイトにおけるグルコース代謝活性化
細胞は、グルコースを解糖系で代謝し乳酸にして細胞外に放出し、細胞外に放出された乳酸は細胞周辺環境のpHを低下させる。本実施例では、アストロサイト培養物のpH変化を測定することで、被験物質がアストロサイトのグルコース代謝能に及ぼす影響を評価した。pH変化の測定には細胞外フラックスアナライザー(XF96;Seahorse Bioscience)を用いた。この機器は、細胞培養物の水素イオン濃度変化をルミネッセンス法により測定し、細胞外酸性化速度(extracellular acidification rate;ECAR)を算出する。ECARの上昇は、細胞のグルコース代謝能の向上を反映する。被験物質の添加によりECARが上昇した場合、該被験物質はアストロサイトのグルコース代謝能を活性化させる物質である。
被験物質には、製造例1で調製したプーアール茶抽出物を用いた。これらの抽出物を、それぞれ濃度1%(w/v)になるように溶媒に溶解し、サンプルとして用いた。溶媒としては、ヘキサン抽出物と99.5(v/v)%エタノール抽出物には、99.5(v/v)%エタノール、50(v/v)%エタノール抽出物には50(v/v)%エタノール水、熱水抽出物には、10(v/v)%エタノール水を用いた。陽性対照としてはメトホルミン(グルコース代謝活性化剤(AMPK活性化剤);Sigma)1mMを用いた。
初代培養アストロサイト(SDラット胎児大脳由来;コスモバイオ)は、アストロサイト専用培地(コスモバイオ)を用い、5%CO、95%air、37℃に保ったインキュベーター内で培養した。トリプシン・EDTA(Gibco)を用いて、細胞の継代を行い、3継代の細胞を使用した。3継代培養アストロサイトを96wellプレートに5,000個/well播種し、アストロサイト専用培地にて8日間培養した後、DMEM/F12無血清培地(Gibco)に置換した。試験前日に各サンプル(被験物質として終濃度0.002%)を培地に添加した。対照には被験物質無添加培地を用いた。
サンプルを添加して一晩培養後、培地をグルコース不含XF96測定用DMEM培地(Seahorse)に置換し、ECARを測定した。測定は、1 loopを9min(mix;3min、time delay;2min、measure;4min)とし、6 loop測定後、培地にグルコース(終濃度5mM;和光純薬)またはXF96測定用DMEM培地を添加し、さらに12 loopまで測定した。グルコース添加前(6 loop目の値)のECAR値を100%とし、グルコース添加後のECARの変化率を算出し、6~12 loop間における濃度曲線下面積(AUC)を求めた。下記式のとおり、グルコース添加群とグルコース無添加群(XF96測定用培地添加群)との間のAUCの差を、各被験物質添加群のグルコース代謝能とした。
(グルコース代謝能)=(グルコース添加群AUC)-(グルコース無添加群AUC)
被験物質無添加群(対照)のグルコース代謝能を1として、各被験物質添加群のグルコース代謝能の相対値を求めた。結果を図1に示す。プーアール茶のヘキサン抽出物を添加した培地のアストロサイトでは、グルコースによるECAR上昇の増大が認められ、これらのヘキサン抽出物がアストロサイトのグルコース代謝の活性化作用を有することが示された(図1A)。また、99.5(v/v)%エタノール抽出物もアストロサイトのグルコース代謝の活性化作用を有することが示された(図1B)。一方、50(v/v)%エタノール抽出物および熱水抽出物については、いずれもECARの上昇作用が観察されず、アストロサイトのグルコース代謝の活性化作用は認められなかった(図1C)。

Claims (8)

  1. プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効成分とし、該有機溶媒がヘキサン、エタノール、または75(v/v)%以上のエタノールを含むエタノール水溶液である、アストロサイトのグルコース代謝活性化剤。
  2. プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効成分とし、該有機溶媒がヘキサンである、脳内神経細胞賦活化剤。
  3. プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効成分とし、該有機溶媒がヘキサンである、脳機能低下抑制剤。
  4. プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効成分とし、該有機溶媒がヘキサンである、脳機能向上剤。
  5. プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効成分とし、該有機溶媒がヘキサンである、脳機能障害の予防または改善剤。
  6. プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効成分とし、該有機溶媒がヘキサンである、脳機能低下抑制用食品組成物。
  7. プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効成分とし、該有機溶媒がヘキサンである、脳機能向上用食品組成物。
  8. プーアール茶の有機溶媒抽出物を有効成分とし、該有機溶媒がヘキサンである、脳機能障害の予防または改善用食品組成物。
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