JP2018053690A - 構造物 - Google Patents

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Abstract

【課題】梁部材の長手方向端部における歪みの集中を、簡単且つ効果的に抑制する。【解決手段】形鋼梁10の長手方向端部が柱部材20に接合された躯体1において、形鋼梁10の長手方向端部に位置するフランジ部11には、梁幅方向においてフランジ部11の端から張り出して梁幅を拡張させる拡張部14が設けられており、梁の長手方向において拡張部14が設けられている範囲と隣り合う位置にてプレート材15がウェブ部12に固定されている。プレート材15のうち、長手方向において形鋼梁10と柱部材20との接合箇所からより離れている側の端部は、梁の高さ方向においてウェブ部12の中央に配置された頂点部15aと、長手方向において頂点部15aから接合箇所側に延出した外縁部15bを備えており、梁の高さ方向における外縁部15bとウェブ部12の中央との距離が、頂点部15aから離れるほど長くなっている。【選択図】図1

Description

本発明は、梁部材の長手方向端部を被接合部材に接合することで構築される構造物に係り、特に、梁部材の長手方向端部にあるフランジ部に拡張部を設けて当該長手方向端部の幅を拡張させた構造物に関する。
建物の躯体等の構造物を構築する上で、梁部材の長手方向端部(以下、梁端部ともいう)を柱等に剛接合することがある。しかし、梁部材と被接合部材(柱等)との接合箇所は、地震等の外力によって当該箇所に大きな応力が発生してしまうと、破断する虞がある。このような問題の対策としては、梁端部においてフランジ部に拡張部を取り付けて、当該長手方向端部(すなわち、被接合部材との接合箇所)での応力発生を軽減することが挙げられる。
ただし、梁端部においてフランジ部に拡張部を取り付けると、拡張部の端位置(被接合部材からより離れている側の端位置)において梁部材の断面性能が不連続となってしまう。このため、梁端部(換言すると、拡張部によって補強された範囲)において歪みが集中し易くなり、結果として、拡張部の端位置においてフランジが破断してしまう虞がある。その解決策としては、例えば、特許文献1に記載の技術が挙げられる。
特許文献1では、図12に示すように、拡張部の幅が拡張部の一端(被接合部材からより離れている側の端)から他端(被接合部材により近い側の端)に向かって漸次的に大きくなっている。図12は、特許文献1に記載の梁端部接合構造を示す斜視図である。なお、図12において、符号100が梁部材を、符号101が柱(被接合部材)を、符号102がフランジ部を、符号103が拡張部を、それぞれ示している。
以上のように構成された特許文献1に記載の梁端部接合構造では、梁端部における梁部材の断面性能の不連続変化が解消され、この結果、梁端部における歪みの集中が緩和されるようになる。
特開2015−190258号公報
しかしながら、拡張部の幅が拡張部の一端から他端に向かって漸次的に大きくなるように拡張部を加工し、その上で拡張部を梁部材のフランジ部に取り付けることは、作業上、困難である。また、拡張部の幅が漸次的に大きくなる構成であっても、設計上、図12に図示したように拡張部の端位置における幅が幾分残ってしまう。このため、梁端部における梁部材の断面性能の不連続変化を完全に解消することは、困難である。したがって、上記のように拡張部の形状を調整することで梁部材の断面性能の不連続変化を解消する代わりに、より簡単な方法で、かつ、より効果的に梁端部における歪みの集中を抑制することが求められている。
また、地震時に梁部材に掛かる荷重(外力であって、具体的には曲げモーメント)の大きさは、梁部材と被接合部材との接合箇所において最も大きくなり、当該接合箇所から離れるに連れて小さくなる。一方で、梁端部接合構造においては、上記の荷重分布を考慮して梁部材の変形能力を向上させることが求められている。
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、梁部材の長手方向端部における歪みの集中を、簡単且つ効果的に抑制することが可能な構造物を提供することである。
また、本発明の他の目的は、地震時に梁部材に掛かる荷重の分布を考慮して梁部材の変形能力を向上させることである。
前記課題は、本発明の構造物によれば、フランジ部とウェブ部とを有する梁部材と、該梁部材の長手方向端部が接合される被接合部材とを有する構造物であって、前記長手方向端部に位置する前記フランジ部には、前記梁部材の幅方向において前記フランジ部の端から張り出して前記長手方向端部の幅を拡張させる拡張部が設けられ、前記梁部材の長手方向において前記拡張部が設けられている範囲と隣り合う位置又は当該範囲と重なり合う位置にてプレート材が前記ウェブ部に固定されており、前記プレート材のうち、前記長手方向において前記長手方向端部と前記被接合部材との接合箇所からより離れている側の端部は、前記梁部材の高さ方向において前記ウェブ部の中央に配置された頂点部と、前記長手方向において前記頂点部から前記接合箇所側に延出した外縁部と、を備え、前記高さ方向における前記外縁部と前記ウェブ部の中央との距離が、前記頂点部から離れるほど長くなっていることにより解決される。
上記のように構成された本発明の構造物では、プレート材が梁部材のウェブ部に固定されている。このプレート材の端部(厳密には、梁部材と被接合部材との接合箇所からより離れている側の端部)は、梁部材の高さ方向においてウェブ部の中央に配置された頂点部から接合箇所側に延出した外縁部を備えている。また、高さ方向において、外縁部とウェブ部の中央との距離が、頂点部から離れるほど長くなっている。そして、上記のプレートは、梁部材の長手方向において、拡張部が設けられている範囲と隣り合う位置又は当該範囲と重なり合う位置に配置されている。このような位置関係により、梁部材の断面性能が当該梁部材の長手方向において、接合箇所に向かって徐々に変化するようになる。この結果、梁部材の長手方向端部(より具体的には、プレート材や拡張部による梁補強範囲)において断面性能の不連続変化を緩和することが可能となる。以上のように本発明の構造物であれば、拡張部に対して特に加工を施す必要がなく、ウェブ部にプレート材を固定するという比較的容易な構成にて、梁端部の補強範囲における断面性能の不連続変化を効果的に緩和することが可能となる。
また、本発明の構造物について好適な構成を述べると、前記長手方向において、前記プレート材の前記接合箇所により近い側の端は、前記拡張部の前記接合箇所からより離れている側の端と同じ位置にあるとよい。
上記の構成では、梁部材の長手方向において、プレート材の端位置(厳密には、接合箇所により近い側の端)が拡張部の端位置と同じ位置にある。このような位置関係であれば、梁端部における断面性能の不連続変化をより効果的に緩和することが可能となる。
また、本発明の構造物についてより好適な構成を述べると、前記プレート材は、前記長手方向において前記接合箇所により近い第一部分と、前記長手方向において前記接合箇所からより離れており前記第一部分と連続している第二部分とを有し、該第二部分は、前記長手方向における前記第二部分の前記接合箇所からより離れている側の端から前記接合箇所により近い側の端に向かうにつれて、前記長手方向を法線方向とする前記プレート材の断面の断面係数が線形状に増加するように形成されているとよい。
上記の構成では、プレート材のうち、接合箇所により近い部分(第二部分)では、長手方向において接合箇所に近付くほど、当該第二部分の断面係数が線形状に増加する。これにより、長手方向においてプレート材の第二部分が存する範囲では、梁部材の強度が線形状に変化するようになる。このような傾向を踏まえて梁部材を設計すれば、地震時に梁部材に掛かる荷重の大きさが梁部材の長手方向における位置に応じて変化することに対応させて、梁部材の強度を適切に設定することが可能となる。具体的に説明すると、地震時に梁部材に荷重が掛かったとき、上記の構成であれば、荷重分布に対応しながら梁部材が変形(延伸)するようになる。この結果、地震時の荷重に対する梁部材の強度(靱性)が向上する。
また、本発明の構造物についてより一層好適な構成を述べると、前記第二部分には、前記高さ方向における前記第二部分の中央部を切り欠くことで形成された切り欠き部が設けられているとよい。
上記の構成では、第二部分の中央部分に切り欠き部が設けられている。このような切り欠き部を形成することで、プレート材において、接合箇所からの距離に応じて断面係数が線形状に変化する部分(第二部分)をより容易に設けることが可能となる。つまり、上記の構成では、プレート材中に第二部分を設けることによる効果(具体的には、地震時の荷重に対する梁部材の強度を向上させるという効果)を比較的簡単に得ることが可能となる。
また、本発明の構造物について更に好適な構成を述べると、前記プレート材の側面の縁は、三角形状であり、前記切り欠きの縁は、三角形状であり、前記プレート材の側面の縁と沿っているとよい。
上記の構成では、切り欠きの縁が、プレート材の側面の縁と同じく三角形状となっており、また、プレート材の側面の縁に沿っている。このような構成であれば、プレート材中の第二部分において、接合箇所からの距離に応じて断面係数を線形状に変化させることがより容易となる。つまり、上記の構成では、プレート材中に第二部分を設けることによる効果(具体的には、地震時の荷重に対する梁部材の強度を向上させるという効果)をより一層簡単に得ることが可能となる。
また、本発明の構造物について益々好適な構成を述べると、前記プレート材は、前記ウェブ部に溶接にて固定されているとよい。
上記の構成では、プレート材が溶接にて梁部材のウェブ部に固定されている。このような構成の下では、プレート材の端部(接合箇所により近い側の端部)に切り欠き部を設けることがより有利となる。具体的に説明すると、プレート材の端部に切り欠き部を設けることで、切り欠き部の形成によってプレート材の縁が増加する。その分、より大きな溶接しろ(溶接長)が確保されるため、プレート材がより強固にウェブ部に固定されるようになる。
また、本発明の構造物について一段と好適な構成を述べると、前記頂点部から二つの前記外縁部が延出しており、二つの前記外縁部のうちの一方は、前記高さ方向において前記ウェブ部の中央よりも上方に位置し、他方は、前記高さ方向において前記ウェブ部の中央よりも下方に位置し、二つの前記外縁部の各々は、直線状に延出しているとよい。
上記の構成では、頂点部から延出する二つの外縁部の各々が直線状に延出している。これにより、高さ方向における外縁部とウェブ部の中央との距離が徐々に変化するという構成を、より容易に実現することが可能となる。
また、本発明の構造物について尚一層好適な構成を述べると、前記プレート材は、前記高さ方向における前記ウェブ部の中央を境界として対称な形状となっているとよい。
上記の構成では、プレート材がウェブ部の中央を境界として上下対称な形状となっている。このような構成であれば、プレート材がより単純な形状となるため、成形し易いものとなる。また、頂点部の位置がより明確となるため、当該頂点部をウェブ部の中央部に配置することがより容易になる。
また、本発明の構造物について更に好適な構成を述べると、前記高さ方向における前記拡張部の端面は、矩形形状であるとよい。
上記の構成では、本発明の効果がより有意義なものになる。具体的に説明すると、拡張部が上方から見たときに矩形形状であるとき、拡張部の端位置において梁部材の断面性能が著しく変化する。したがって、梁端部における断面性能の不連続変化を緩和するという本発明の効果がより際立って発揮されるようになる。
本発明の構造物によれば、梁部材の長手方向端部(厳密には、拡張部及びプレート材を設けることで補強された範囲)において梁部材の断面性能が不連続に変化するのを緩和し、これにより梁端部における歪みの集中を抑制することが可能となる。
また、本発明の構造物によれば、地震時に梁部材に掛かる荷重の分布を考慮して梁部材の強度(変形能力)を適切に設定し、これにより地震時の荷重に対する梁部材の強度(靱性)を向上させることが可能となる。
本発明の第一実施形態に係る躯体中の一部を示す斜視図である。 本発明の第一実施形態に係る梁部材の上面図である。 本発明の第一実施形態に係る梁部材の側面図である。 図3の(a)及び(b)は、本発明の第一実施形態にて奏される効果についての説明図である。 プレート材の形状が梁部材の強度分布に及ぼす影響に関する図である。 本発明の第二実施形態に係る梁部材の側面図である。 図5中のプレート材周辺の拡大図である。 図7の(a)及び(b)は、プレート材の形状が梁部材の変形能力に及ぼす影響に関する図である。 図8の(a)は、図7の(a)中の範囲Xを拡大した図であり、図8の(b)は、図7の(b)中の範囲Yを拡大した図である。 プレート材に形成された切り欠き部の形状が梁部材の強度分布に及ぼす影響に関する図である(その1)。 プレート材に形成された切り欠き部の形状が梁部材の強度分布に及ぼす影響に関する図である(その2)。 第一の変形例に係るプレート材の形状を示す図である。 第二の変形例に係るプレート材の形状を示す図である。 従来の梁端部接合構造を示す図である。
以下、本発明について具体例(実施形態)を挙げながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内で変更、改良され得る。また、当然ながら、本発明にはその等価物が含まれる。
また、以下では、建物の躯体を構造物の一例として挙げ、当該躯体の構成について説明することとする。ただし、建物の躯体は、あくまでも構造体の一例に過ぎず、本発明は、建物の躯体以外の構造物、例えば設備据置用の架台や橋脚等にも適用可能である。
また、以下の説明中、「長手方向」とは、後述する形鋼梁10の長手方向を意味し、「梁幅方向」とは、形鋼梁10の幅方向(横幅方向)を意味し、「高さ方向」とは、後述する形鋼梁10の高さ方向(梁せい方向)を意味する。また、以下の説明中、「断面」とは、特に断る場合を除き、長手方向を法線方向とする断面を意味する。
<<第一実施形態について>>
第一実施形態について図1、図2A及び図2Bを参照しながら説明する。図1は、第一実施形態に係る躯体中の一部を示す斜視図である。図2A及び図2Bは、第一実施形態に係る梁部材(具体的には、後述する形鋼梁10)を示す図であり、図2Aは、上面図であり、図2Bは、側面図である。なお、梁部材の形状は、その長手方向中央を境にして対称的な形状となっているため、図2A及び図2Bでは、梁部材のうち、長手方向一端側半分のみを図示している。
第一実施形態に係る躯体は、鉄骨造の躯体(以下、躯体1)である。また、躯体1を構成する梁部材の中には、H形鋼からなる梁部材(以下、形鋼梁10)が含まれており、さらに、形鋼梁10の中には、図1に示すように鋼材からなる柱部材20(被接合部材に相当)に接合されるものがある。形鋼梁10は、フランジ部11とウェブ部12とを有し、その長手方向端部が柱部材20に接合される。
なお、形鋼梁10と柱部材20との接合様式については、公知の接合様式が利用可能であり、例えば図1に示すように柱部材20の外表面に溶接された接合プレート21(シアープレート)によって両部材を接合させてもよい。かかる接合方式を採用した場合には、接合プレート21に形鋼梁10が組み付けられている箇所(具体的には、ボルト留めされている箇所)が、形鋼梁10と柱部材20との接合箇所に該当する。
また、柱部材20の外表面に形鋼梁10の長手方向端面を突き当てた状態で溶接にて形鋼梁10を柱部材20に接合させてもよい。かかる接合方式を採用した場合には、柱部材20の外表面に形鋼梁10を溶接した箇所が、形鋼梁10と柱部材20との接合箇所に該当する。
そして、第一実施形態に係る躯体1では、形鋼梁10の長手方向端部を適切に柱部材20に接合するための構造(梁端部接合構造)を採用している。かかる梁端部接合構造により、第一実施形態では、形鋼梁10と柱部材20との接合箇所での応力発生を軽減すると共に、形鋼梁10の所定部位(具体的には、梁端部中の補強範囲)における歪みの集中を抑制することが可能となる。以下、第一実施形態に係る梁端部接合構造について詳しく説明する。
第一実施形態に係る梁端部接合構造では、略鉛直に立設された柱部材20に対して、略水平に置かれた形鋼梁10の長手方向端部が接合される。図1に図示のケースを例に挙げてより具体的に説明すると、前述したように、柱部材20の外表面に溶接された接合プレート21に形鋼梁10のウェブ部12の端部(長手方向における端部)を重ね合わせた状態で両者をボルト留めする。これにより、形鋼梁10が柱部材20に接合(厳密には剛接合)される。なお、図1に示すように、ウェブ部12の端部の隅角部にはスカラップ13が形成されている。
また、図1に示すように、柱部材20の外表面には、鉛直方向において接合プレート21を挟んだ位置に配置された上下一対のダイヤフラム22が設けられている。そして、形鋼梁10が柱部材20に接合される際には、フランジ部11がダイヤフラム22の厚みの範囲内に収まるようにダイヤフラム22に取り付けられる。
以上のような接合様式では、地震発生により形鋼梁10に荷重(外力)が入力された際に、柱部材20との接合箇所において形鋼梁10の仕口部(長手方向端部)が破断する虞がある。そのため、第一実施形態では、形鋼梁10の長手方向端部に位置するフランジ部11に拡張部14が設けられている。この拡張部14は、形鋼梁10の長手方向端部の幅を拡張させる鋼材であり、梁幅方向においてフランジ部11の両端からそれぞれ水平に張り出している。
拡張部14について図2Aを参照しながら説明すると、拡張部14は、上面視で矩形形状であり、換言すると、拡張部14の高さ方向における端面は、矩形形状の平面となっている。また、拡張部14は、長手方向において幾分長く延出しており、例えば、ウェブ部12のうち、梁接合時に接合プレート21と重ね合わせられる部分の長さよりもやや長くなっている。また、拡張部14は、形鋼梁10の長手方向端部において、フランジ部11の側端(梁幅方向における端)に溶接、厳密には完全溶け込み溶接にて取り付けられている。
以上のように形鋼梁10の長手方向端部に拡張部14を設けて当該長手方向端部を拡幅することで、接合箇所における形鋼梁10の断面積を増やすことができ、これにより形鋼梁10の仕口部(長手方向端部)の破断を防止することが可能となる。
しかしながら、拡張部14を設けることにより、拡張部14の端位置(厳密には、形鋼梁10と柱部材20との接合箇所からより離れている側の端であって、以下、一端位置)において形鋼梁10の断面積、換言すると断面性能が急変してしまう。特に、上方視で矩形形状の拡張部14が設けられている場合には、上述した断面性能の不連続変化が顕著となる。このように断面性能が不連続となった形鋼梁10に対して地震荷重(地震発生によって生じる外力)が入力されると、拡張部14の一端位置においてフランジ部11に応力が集中して当該部位に歪みが生じ、さらに歪みの集中箇所から形鋼梁10が破損する虞がある。
そこで、第一実施形態では、梁端部(厳密には、梁端部中の補強範囲)における断面性能の不連続変化に起因する歪みの集中を緩和する手段として、図1や図2Bに示すようなプレート材15を形鋼梁10のウェブ部12に固定している。プレート材15について図2Bを参照しながら説明すると、プレート材15は、若干の厚みを有する鋼板からなり、側方視で横向き二等辺三角形状であり、換言すると、プレート材の側面の縁が三角形状となっている。
また、プレート材15は、ウェブ部12の側面の所定箇所に溶接(厳密には、隅肉溶接)にて固定されている。なお、第一実施形態において、プレート材15は、ウェブ部12の両側面に固定されており、換言すると、梁幅方向において一対のプレート材15がウェブ部12を挟む位置に設けられている。ただし、これに限定されるものではなく、ウェブ部12の両側面のうちの一方のみにプレート材15が固定されていてもよい。
ウェブ部12におけるプレート材15の固定位置について詳しく説明すると、図2Bに示すように、プレート材15は、長手方向において拡張部14が設けられている範囲と対応する位置に配置されるように、ウェブ部12に固定されている。より厳密に説明すると、長手方向において、プレート材15の端(形鋼梁10と柱部材20との接合箇所により近い側の端であり、以下、前端)が、拡張部14の一端(接合箇所からより離れている側の端)と同じ位置にある。つまり、プレート材15は、長手方向において拡張部14が設けられている範囲と隣り合う位置にてウェブ部12に固定されている。ただし、これに限定されるものではなく、プレート材15は、長手方向において拡張部14が設けられている範囲と重なり合う位置(厳密には、プレート材15のうちの少なくとも一部が重なり合う位置)にてウェブ部12に固定されていてもよい。
また、プレート材15は、その頂点部15aが高さ方向においてウェブ部12の中央に配置されるようにウェブ部12に固定されている。ここで、頂点部15aとは、プレート材15の端(形鋼梁10と柱部材20との接合箇所からより離れている側の端であり、以下、後端)に位置し、第一実施形態では、二等辺三角形状であるプレート材15の頂角部の頂点に相当する。また、ウェブ部12の中央とは、ウェブ部12を側方から見たときの中立軸の位置(図2B中、一点鎖線にて示す位置)である。
上記の位置にてウェブ部12に固定された状態のプレート材15は、高さ方向におけるウェブ部12の中央を境界として上下対称な形状となっている。より詳しく説明すると、プレート材15の後端部(形鋼梁10と柱部材20との接合箇所からより離れている側の端部)には、長手方向において頂点部15aから接合箇所側に延出した二つの外縁部15bが設けられている。外縁部15bは、プレート材15の後端部の上端面又は下端面をなす部分であり、梁幅方向に若干の幅を有する。
なお、第一実施形態では、二等辺三角形状となるプレート材15の等辺部分が外縁部15bに該当する。分かり易く説明すると、二つの外縁部15bの一方は、高さ方向においてウェブ部12の中央よりも上方に位置し、接合箇所に近付くに連れて上方に位置するように傾斜しつつ、直線状に延出している。二つの外縁部15bの他方は、高さ方向においてウェブ部12の中央よりも下方に位置し、接合箇所に近付くに連れて下方に位置するように傾斜しつつ、直線状に延出している。
以上のような形状のプレート材15が上述した位置にてウェブ部12に固定されることにより、梁端部における断面性能の不連続変化を緩和することが可能となる。具体的に説明すると、プレート材15において、高さ方向における各外縁部15bとウェブ部12の中央との距離が、頂点部15aから離れるほど長くなっている。換言すると、プレート材15の上下長さ(高さ方向における長さ)がプレート材15の後端から前端に向かって漸次的に長くなっている。特に、第一実施形態では各外縁部15bが直線状に延出しているので、プレート材15の上下長さは、プレート材15の前端に向かうに連れて線形状に増加する。
したがって、形鋼梁10の断面積、すなわち断面性能がプレート材15の後端から接合箇所に向かって徐々に大きくなっていく。このため、梁端部における断面性能の不連続変化が緩和されるようになる。このことを形鋼梁10の強度の観点から説明すると、拡張部14のみが設けられている構成では、図3の(a)に示すように、拡張部14の一端位置にて形鋼梁10の強度(厳密には、全塑性モーメント)が急変する。これに対し、上記のプレート材15をウェブ部12に固定した構成では、図3の(b)に示すように、プレート材15の後端位置(頂点部15aの位置)から拡張部14の一端位置に亘って形鋼梁10の強度が曲線状に連続的に変化するようになる。
なお、図3の(a)及び(b)は、形鋼梁10における強度分布を示すグラフであり、横軸が形鋼梁10と柱部材20との接合箇所からの距離を示しており、縦軸が強度(厳密には、全塑性モーメント)を示している。
以上のように、第一実施形態では、二等辺三角形状のプレート材15をウェブ部12の所定位置に固定(溶接)するという比較的簡単な方法により、梁端部(具体的には、拡張部14やプレート材15を設けることで補強された範囲)における断面性能の不連続変化を緩和することが可能となる。
また、プレート材15の形状は、形鋼梁10の強度分布に影響を及ぼす。具体的に説明すると、形鋼梁10の強度は、前述したように、プレート材15の後端位置(頂点部15aの位置)から拡張部14の一端位置に亘って曲線状に変化する。そして、その変化度合い(換言すると、曲線の形状)は、外縁部15bの傾斜度合い(厳密には、長手方向に対する傾斜角度)に応じて決まる。より詳しく説明すると、図4に示すように、外縁部15bの傾斜角度が大きくなるほど、形鋼梁10の強度の変化度合いが大きくなる(曲線の曲率が大きくなる)。
なお、図4は、プレート材15の形状が形鋼梁10の強度分布に及ぼす影響に関する図であり、横軸が形鋼梁10と柱部材20との接合箇所からの距離を示しており、縦軸が強度(厳密には、全塑性モーメント)を示している。また、図中のグラフは、プレート材15の形状(具体的には、外縁部15bの傾斜角度)を変化させたときの形鋼梁10の強度分布を示している。図中、菱形プロットを通過するグラフは、傾斜角度がθ1であるときのグラフであり、四角プロットを通過するグラフは、傾斜角度がθ2(>θ1)であるときのグラフであり、三角プロットを通過するグラフは、傾斜角度がθ3(>θ2)であるときのグラフであり、バツ印プロットを通過するグラフは、傾斜角度がθ4(>θ3)であるときのグラフである。
以上のように、外縁部15bの傾斜角度が大きくなるほど、プレート材15の後端位置から拡張部14の一端位置までの範囲における形鋼梁10の強度変化の変化度合いが大きくなる。このような傾向を踏まえてプレート材15の形状を決めた上で、当該プレート材15をウェブ部12に固定すれば、梁端部における断面性能の不連続変化をより効果的に緩和することが可能となる。
<<第二実施形態について>>
第二実施形態について図5及び図6を参照しながら説明する。図5は、第二実施形態に係る形鋼梁10の側面図である。図6は、図5中のプレート材16周辺の拡大図である。なお、第二実施形態に係る形鋼梁10の形状は、その長手方向中央を境にして対称形状となっているため、図5では、当該形鋼梁10のうち、長手方向一端側半分のみを図示している。
第二実施形態に係る躯体は、形鋼梁10のウェブ部12に取り付けられるプレート材16の形状が異なる点を除き、第一実施形態に係る躯体1と共通する。そのため、以下では、第二実施形態に係るプレート材16の形状、及び、当該プレート材16がもたらす効果についてのみ説明する。
第二実施形態に係るプレート材16(以下、単にプレート材16)は、若干の厚みを有する鋼板からなり、図5及び図6に示すように側方視で横向きV字状である。換言すると、プレート材16の側面の外縁は、三角形状となっている。なお、プレート材16は、第一実施形態に係るプレート材15と同じサイズであり、後述の切り欠き部16cが形成されている点を除き、同一形状となっている。
また、プレート材16は、長手方向において形鋼梁10と柱部材20との接合箇所により近い部分(以下、第一部分16a)と、接合箇所からより離れており第一部分16aと連続している部分(以下、第二部分16b)とを有する。さらに、第二部分16bには、高さ方向における第二部分16bの中央部を略三角形状に切り欠くことで形成された切り欠き部16cが設けられている。なお、長手方向における第二部分16bの一端は、長手方向において切り欠き部16cの先端(最深部)が設けられた位置に相当し、第二部分16bの他端は、プレート材16の前端(接合箇所により近い側の端)と一致している。
また、切り欠き部16cの縁は、三角形状であり、プレート材16の側面の縁(具体的には、二等辺三角形状をしたプレート材16の側面の等辺部分)に沿っている。つまり、切り欠き部16cの形状は、プレート材16の外形形状を相似形で縮小させたものとなっている。また、このような形状の切り欠き部16cが形成されていることにより、第二部分16bでは、長手方向における第二部分16bの一端(接合箇所からより離れている側の端)から他端(接合箇所により近い側の端)に向かって、プレート材16の断面の断面係数が線形状に増加している。
より詳しく説明すると、高さ方向におけるプレート材16の側面の縁とウェブ部12の中央との距離は、接合箇所に近付くにつれて線形状に増加している。同様に、高さ方向における切り欠き部16cの縁とウェブ部12の中央との距離は、接合箇所に近付くにつれて線形状に増加している。以上により、プレート材16の第二部分16bの断面の断面係数も、接合箇所に近付くにつれて線形状に増加していることになる。
また、プレート材16は、第一実施形態に係るプレート材15と同様、長手方向において拡張部14が設けられている範囲と隣り合う位置にてウェブ部12に固定されている。より厳密に説明すると、図5に示すように、プレート材16は、その前端(形鋼梁10と柱部材20との接合箇所により近い側の端)が長手方向において拡張部14の一端(接合箇所からより離れている側の端)と同じ位置にあるようにウェブ部12に固定される。なお、プレート材16の位置については、上記の位置に限定されるものではなく、プレート材16は、長手方向において拡張部14が設けられている範囲と重なり合う位置(厳密には、プレート材16のうちの少なくとも一部が重なり合う位置)にてウェブ部12に固定されていてもよい。
また、プレート材16は、その後端に頂点部16dを備え、当該頂点部16dが高さ方向においてウェブ部12の中央に配置されるようにウェブ部12に固定されている。そして、上記の位置にてウェブ部12に固定された状態のプレート材16は、第一実施形態に係るプレート材15と同様、高さ方向におけるウェブ部12の中央を境界として上下対称な形状となっている。つまり、プレート材16の後端である頂点部16dから二つの外縁部16eが接合箇所側に延出しており、各外縁部16eは、長手方向に傾斜しながら直線状に延出している。
以上のようなプレート材16がウェブ部12に固定されることにより、第二実施形態に係る形鋼梁10では、第一実施形態と同様、梁端部における断面性能の不連続変化を緩和することが可能となる。さらに、第二実施形態では、プレート材16に上述の切り欠き部16cを形成することにより、地震時に形鋼梁10に掛かる荷重(地震荷重)の分布を考慮して当該形鋼梁10の強度(変形能力)を適切に設定することが可能となる。かかる効果について、以下、図7の(a)及び(b)、並びに図8の(a)及び(b)を参照しながら詳しく説明する。
図7の(a)及び(b)は、形鋼梁10における強度分布と地震荷重の分布(以下、単に荷重分布)を示す図であり、(a)は、第一実施形態のプレート材15を用いたケースを示し、(b)は、第二実施形態のプレート材16を用いたケースを示している。なお、図中では、荷重分布の細実線グラフにて示し、形鋼梁10における強度分布を太実線のグラフにて示している。また、図中の横軸は、形鋼梁10と柱部材20との接合箇所からの距離を示しており、縦軸は、形鋼梁10の強度及び地震荷重の大きさ(厳密には、モーメント)を示している。
先ず、第一実施形態のプレート材15を用いたケースを比較例として説明する。第一実施形態のプレート材15を用いた場合、図7の(a)及び図8の(a)に示すように、長手方向においてプレート材15の後端(すなわち、頂点部15a)が配置された位置から形鋼梁10の強度(具体的には全塑性モーメント)が徐々に変化している。厳密には、プレート材15の後端が配置された位置から前端が配置された位置(換言すると、拡張部14の一端位置)に向かって、形鋼梁10の強度が曲線状(放物線状)に増加している。
一方、図7の(a)に示すように、地震荷重は、線形状に変化しており、具体的には、接合箇所から離れるほど小さくなっている。そして、図8の(a)に示すように、荷重分布を示すグラフは、長手方向においてプレート材15が存在する範囲内の所定位置(以下、接点)にて、形鋼梁10における強度分布を示すグラフと接している。厳密に説明すると、第一実施形態に係るプレート材15の形状(具体的には、外縁部15bの傾斜角度)は、荷重分布のグラフと形鋼梁10における強度分布のグラフとが接するように設定されている。
また、図8の(a)に示すように、形鋼梁10における強度分布のグラフは、上記の接点付近において、荷重分布のグラフに対して略接している。このことの技術的意義について説明すると、形鋼梁10における強度分布のグラフが荷重分布のグラフに対して接している範囲(以下、対応範囲)では、形鋼梁10における強度が地震荷重の変化度合いと同様の変化度合いにて変化するようになる。つまり、対応範囲内では、形鋼梁10が同範囲における荷重分布と対応しながら変形(延伸)し得ることになる。すなわち、対応範囲が存在するということは、同範囲内において形鋼梁10が荷重分布に対応しながら変形(延伸)可能であることを意味する。そして、対応範囲が広がるほど、地震荷重に対する形鋼梁10の強度(靱性)が向上することになる。
以上の内容を踏まえつつ、第二実施形態のプレート材16を用いたケースを比較例として説明する。第二実施形態のプレート材16を用いた場合、図7の(b)及び図8の(b)に示すように、長手方向においてプレート材16の後端(すなわち、頂点部16d)が配置された位置から形鋼梁10の強度(具体的には全塑性モーメント)が曲線状(放物線状)に変化している。また、図8の(b)に示すように、荷重分布のグラフが接点にて形鋼梁10における強度分布のグラフと接している。以上の点において、第二実施形態のプレート材16を用いるケースは、第一実施形態のプレート材15を用いるケースと共通する。なお、長手方向における接点の位置は、第一実施形態のプレート材15を用いたときの接点の位置と同じ位置である。
他方、第二実施形態では、図8の(b)に示すように、上記の接点位置からプレート材16の前端が配置された位置(換言すると、拡張部14の一端位置)に向かって、形鋼梁10の強度が直線状に増加している。これは、プレート材16の第二部分16bに切り欠き部16cが形成されていることを反映している。
具体的に説明すると、第二実施形態では第二部分16bに切り欠き部16cが形成されていることで、長手方向における第二部分16bの一端(接合箇所からより離れている側の端)から他端(接合箇所により近い側の端)に向かって、プレート材16の断面の断面係数が線形状に増加している。したがって、長手方向においてプレート材16の第二部分16bが存する範囲では、接合箇所に近付くに連れて形鋼梁10の強度が線形状に増加するようになる。
そして、第二実施形態では、図8の(b)に示すように、形鋼梁10における強度分布のグラフのうち、線形状に変化している部分が荷重分布のグラフに対して略接するように沿っている。すなわち、第二実施形態において、形鋼梁10の強度が線形状に変化する範囲は、対応範囲Zに相当し、図8の(a)及び(b)を対比すると分かるように、第一実施形態のプレート材15を用いたときの対応範囲よりも広くなっている。したがって、第二実施形態のプレート材16を用いるケースでは、第一実施形態のプレート材15を用いるケースに比して、地震荷重に対する形鋼梁10の強度(靱性)がより高まることになる。
また、第二実施形態のプレート材16には切り欠き部16cが形成されているため、切り欠き部16cの縁を有する分だけ、プレート材16の溶接しろ(溶接長)をより多く確保することが可能となる。なお、本実施形態では、前述したように、プレート材16をウェブ部12に溶接する方式として、溶接強度が比較的弱くなる隅肉溶接を採用しているため、溶接長をより多く確保するという効果がより有意義なものとなる。
ところで、第二実施形態のプレート材16を用いるケースにおいて、上述の対応範囲Zの広さ(長手方向における長さ)は、プレート材16の形状に応じて決まってくる。より具体的に説明すると、対応範囲Zは、形鋼梁10における強度分布のグラフのうち、曲線状に変化する部分と荷重分布のグラフとが接する位置(接点位置)、及び、形鋼梁10における強度分布のグラフのうち、線形状に変化する部分の変化度合い(傾き)に応じて決まる。この中で、接点位置は、形鋼梁10における強度分布のグラフ中、曲線状に変化する部分の形状(曲率)に応じて決まる。また、当該形状(曲率)は、プレート材16の第一部分16aに備えられた外縁部16eの傾斜度合い(図6中、記号αにて示す傾斜角度)に応じて決まる。
形鋼梁10における強度分布のグラフのうち、線形状に変化する部分の変化度合い(傾き)は、切り欠き部16cの深度(図6中、記号tにて示す距離)と、切り欠き部16cの縁の傾斜度合い(図6中、記号βにて示す傾斜角度)に応じて決まる。このことを図9A及び図9Bを参照しながら説明すると、切り欠き部16cの深度tが長くなるほど、形鋼梁10における強度分布のグラフ中、線形状に変化する部分が占める割合が大きくなる。また、深度tが長くなるほど、グラフ中の線形状に変化する部分の傾きが小さくなる。
また、図9A及び図9Bから分かるように、切り欠き部16cの縁の傾斜角度βが大きくなるほど、形鋼梁10における強度分布のグラフ中、線形状に変化する部分の傾きが大きくなる。
なお、図9A及び図9Bは、プレート材16に設けられた切り欠き部16cの形状が形鋼梁10の強度分布に及ぼす影響に関する図であり、図9Aは、切り欠き部16cの深度tがt1であるときの図であり、図9Bは、切り欠き部16cの深度tがt2(<t1)であるときの図である。また、図中、横軸は、形鋼梁10と柱部材20との接合箇所からの距離を示しており、縦軸は、強度(厳密には、全塑性モーメント)を示している。また、図中の各グラフは、切り欠き部16cの縁の傾斜角度βを変化させたときの形鋼梁10の強度分布を示しており、菱形プロットを通過するグラフは、傾斜角度がβ1であるときのグラフであり、四角プロットを通過するグラフは、傾斜角度がβ2(>β1)であるときのグラフであり、三角プロットを通過するグラフは、傾斜角度がβ3(>β2)であるときのグラフであり、バツ印プロットを通過するグラフは、傾斜角度がβ4(>β3)であるときのグラフである。
以上のように、プレート材16の形状(具体的には、第一部分16aの外縁部16eの傾斜角度α、切り欠き部16cの深度t及び縁の傾斜角度β)に応じて形鋼梁10における強度分布が決まる。そして、形鋼梁10における強度分布が決まると、これに応じた対応範囲Zが決まる。換言すると、第二実施形態では、荷重分布を考慮してプレート材16の形状を決定することにより、対応範囲Zを確保し、当該範囲内で形鋼梁10を荷重分布に対応させながら適切に変形(延伸)させることが可能である。
なお、前述したように、切り欠き部16cの深度tが長くなるほど、形鋼梁10における強度分布のグラフ中、線形状に変化する部分が占める割合が大きくなる。したがって、対応範囲Zをより広く確保する観点では、切り欠き部16cをより深く形成する方がよい。ただし、形鋼梁10における強度分布のグラフ中、線形状に変化する部分が占める割合が大きくなると、梁端部における形鋼梁10の強度の不連続変化を緩和する効果が減退してしまう。この点を考慮して、切り欠き部16cの深度tについては、最適な値に設定する必要がある。例えば、形鋼梁10における強度分布のグラフ中、曲線状に変化する部分と荷重分布のグラフとの接点に相当する位置を最深部とするように切り欠き部16cを設けるのがよい。つまり、プレート材16の形状を最適化することで、梁端部における形鋼梁10の強度の不連続変化を緩和しつつ、荷重分布に見合う形鋼梁10の強度分布を実現することが可能となる。
<<その他の実施形態>>
以上までに本発明の構造物、具体的には梁端部接合構造について具体例を挙げて説明してきたが、その内容は、あくまでも一例に過ぎず、特に、プレート材の形状については上述した形状以外にも考えられる。例えば、上述の実施形態では、プレート材15,16の頂点部15a、16dから延出した外縁部15b、16eが直線状に延出していることとしたが、図10に示すように、外縁部17bが頂点部17aから曲線状(弧状)に延出してもよい。図10は、第一の変形例に係るプレート材17の形状を示す図である。
また、上述の実施形態では、プレート材が一枚の鋼板によって構成されていることとしたが、これに限定されるものではなく、図11に示すように、プレート材18が複数(図11では、2つ)の板片18aに分離した構成であってもよい。かかる構成において、各板片18aの頂点が突き合わされた箇所が頂点部18bに該当し、各板片18aにおいて頂点部18bから延出した2つの面(上端面及び下方向端面)のうち、フランジ部11により近い側の面が外縁部18cに該当する。
1 躯体(構造物)
10 形鋼梁(梁部材)、11 フランジ部
12 ウェブ部、13 スカラップ
14 拡張部、15 プレート材
15a 頂点部、15b 外縁部
16 プレート材
16a 第一部分、16b 第二部分
16c 切り欠き部、16d 頂点部
16e 外縁部
17 プレート材
17a 頂点部、17b 外縁部
18 プレート材
18a 板片、18b 頂点部、18c 外縁部
20 柱部材(被接合部材)
21 接合プレート、22 ダイヤフラム
100 梁部材、101 柱
102 フランジ部、103 拡張部

Claims (9)

  1. フランジ部とウェブ部とを有する梁部材と、該梁部材の長手方向端部が接合される被接合部材とを有する構造物であって、
    前記長手方向端部に位置する前記フランジ部には、前記梁部材の幅方向において前記フランジ部の端から張り出して前記長手方向端部の幅を拡張させる拡張部が設けられ、
    前記梁部材の長手方向において前記拡張部が設けられている範囲と隣り合う位置又は当該範囲と重なり合う位置にてプレート材が前記ウェブ部に固定されており、
    前記プレート材のうち、前記長手方向において前記長手方向端部と前記被接合部材との接合箇所からより離れている側の端部は、前記梁部材の高さ方向において前記ウェブ部の中央に配置された頂点部と、前記長手方向において前記頂点部から前記接合箇所側に延出した外縁部と、を備え、
    前記高さ方向における前記外縁部と前記ウェブ部の中央との距離が、前記頂点部から離れるほど長くなっていることを特徴とする構造物。
  2. 前記長手方向において、前記プレート材の前記接合箇所により近い側の端は、前記拡張部の前記接合箇所からより離れている側の端と同じ位置にあることを特徴とする請求項1に記載の構造物。
  3. 前記プレート材は、前記長手方向において前記接合箇所により近い第一部分と、前記長手方向において前記接合箇所からより離れており前記第一部分と連続している第二部分とを有し、
    該第二部分は、前記長手方向における前記第二部分の前記接合箇所からより離れている側の端から前記接合箇所により近い側の端に向かうにつれて、前記長手方向を法線方向とする前記プレート材の断面の断面係数が線形状に増加するように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の構造物。
  4. 前記第二部分には、前記高さ方向における前記第二部分の中央部を切り欠くことで形成された切り欠き部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の構造物。
  5. 前記プレート材の側面の縁は、三角形状であり、
    前記切り欠き部の縁は、三角形状であり、前記プレート材の側面の縁に沿っていることを特徴とする請求項4に記載の構造物。
  6. 前記プレート材は、前記ウェブ部に溶接にて固定されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の構造物。
  7. 前記頂点部から二つの前記外縁部が延出しており、
    二つの前記外縁部のうちの一方は、前記高さ方向において前記ウェブ部の中央よりも上方に位置し、他方は、前記高さ方向において前記ウェブ部の中央よりも下方に位置し、
    二つの前記外縁部の各々は、直線状に延出していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の構造物。
  8. 前記プレート材は、前記高さ方向における前記ウェブ部の中央を境界として対称な形状となっていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の構造物。
  9. 前記高さ方向における前記拡張部の端面は、矩形形状であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の構造物。
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