JP2018051987A - 金属/ゴム複合構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属部材と架橋ゴム部材との接合強度に優れた金属/ゴム複合構造体を提供する。【解決手段】本発明の金属/ゴム複合構造体1は、金属部材(M)と、金属部材(M)に接合された架橋ゴム部材(R)と、を備え、上記架橋ゴム部材(R)は共役ジエン系ゴムの架橋物を含み、金属部材(M)は少なくとも架橋ゴム部材(R)との接合部表面5に微細凹凸構造を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、金属/ゴム複合構造体に関する。
車両や各種産業機械等には、運転・稼働時の振動や騒音等を抑制するために多くの防振材が使われている。例えば、自動車にはトーショナルダンパー、エンジンマウント、ラバーブッシュ等の防振材が取り付けられている。
このような防振材には、構造的な強さと防振性能を両立させる観点から、鉄、アルミニウム、銅、亜鉛および鉄鋼材等の金属並びに各種合金とゴム部材とを接着した金属/ゴム複合構造体が検討されている。
最近では、主に軽量化の観点から、金属部材としてアルミニウムおよび/またはアルミニウム合金からなるアルミ系金属部材を使用したアルミ/ゴム複合構造体も検討され始めている。
このような金属/ゴム複合構造体に関する技術としては、例えば、特許文献1(特開2008−38059号公報)および特許文献2(特開2015−224371号公報)に記載のものが挙げられる。
特許文献1には、ジエン系ゴムと酸無水物基を含有する低分子量の高シス−ジエン系ゴムとを含むゴム組成物を金属体に加硫接着させてなる金属−ゴム複合体が記載されている。
また、特許文献2には、アルミニウムおよび/またはアルミニウム合金からなるアルミ系金属とゴム材料とを加硫接着してなるアルミ−ゴム複合体において、上記アルミ系金属と上記ゴム材料との間にチタン、フッ素およびリンを含む化成皮膜が形成されていることを特徴とするアルミ−ゴム複合体が記載されている。
特開2008−38059号公報 特開2015−224371号公報
特許文献1および2に開示されている金属/ゴム複合構造体は金属部材やゴム部材の種類が大きく限定されるため、十分に満足できるものではなかった。
具体的には、特許文献1に記載の金属/ゴム複合構造体に関する技術は、ゴム部材中に、酸無水物基を含有する低分子量の高シス−ジエン系ゴムという特殊なゴムを配合する必要があり、使用できるゴム部材の種類が大きく限定されていた。
また、特許文献2に記載の金属/ゴム複合構造体に関する技術は、金属部材がアルミ系金属部材に限定され、例えば鉄や鉄鋼材に対しては不向きであった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、金属部材と架橋ゴム部材との接合強度に優れた金属/ゴム複合構造体を提供するものである。
本発明者らは、表面に微細凹凸構造を有する金属部材を用いることにより、金属部材と架橋ゴム部材との接合強度に優れた金属/ゴム複合構造体が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明によれば、以下に示す金属/ゴム複合構造体が提供される。
[1]
金属部材(M)と、上記金属部材(M)に接合された架橋ゴム部材(R)と、を備える金属/ゴム複合構造体であって、
上記架橋ゴム部材(R)は共役ジエン系ゴムの架橋物を含み、
上記金属部材(M)は、少なくとも上記架橋ゴム部材(R)との接合部表面に微細凹凸構造を有する金属/ゴム複合構造体。
[2]
上記[1]に記載の金属/ゴム複合構造体において、
上記金属部材(M)の上記微細凹凸構造に上記架橋ゴム部材(R)の一部分が浸入することにより上記金属部材(M)と上記架橋ゴム部材(R)とが接合されている金属/ゴム複合構造体。
[3]
上記[1]に記載の金属/ゴム複合構造体において、
上記金属部材(M)と上記架橋ゴム部材(R)との間にプライマー層をさらに備え、
上記金属部材(M)と上記架橋ゴム部材(R)とは上記プライマー層を介して接合している金属/ゴム複合構造体。
[4]
上記[3]に記載の金属/ゴム複合構造体において、
上記プライマー層がカップリング剤を含む金属/ゴム複合構造体。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の金属/ゴム複合構造体において、
上記架橋ゴム部材(R)が射出成形体である金属/ゴム複合構造体。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の金属/ゴム複合構造体において、
上記金属部材(M)の接合部表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(1)および(2)を同時に満たす金属/ゴム複合構造体。
(1)切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が30%以下である直線部を1直線部以上含む
(2)すべての直線部の、評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)が2μmを超える
[7]
上記[6]に記載の金属/ゴム複合構造体において、
上記金属部材(M)の接合部表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(3)をさらに満たす金属/ゴム複合構造体。
(3)切断レベル40%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が60%以下である直線部を1直線部以上含む
[8]
上記[1]乃至[7]のいずれか一つに記載の金属/ゴム複合構造体において、
上記金属部材(M)の接合部表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(4)を満たす金属/ゴム複合構造体。
(4)すべての直線部の、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μmを超え300μm未満である
[9]
上記[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の金属/ゴム複合構造体において、
上記共役ジエン系ゴムが天然ゴムを含む金属/ゴム複合構造体。
[10]
上記[1]乃至[9]のいずれか一つに金属/ゴム複合構造体において、
上記金属部材(M)を構成する金属材料がアルミニウム、アルミニウム合金、鉄および鉄鋼材から選択される一種または二種以上を含む金属/ゴム複合構造体。
本発明によれば、金属部材と架橋ゴム部材との接合強度に優れた金属/ゴム複合構造体を提供することができる。
本発明に係る実施形態の金属/ゴム複合構造体の構造の一例を模式的に示した斜視図であり、(a)はプライマー層を備えない例、(b)はプライマー層をさらに備える例である。 本発明に係る実施形態の金属部材の接合部表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部の測定箇所を説明するための模式図である。 実施例および比較例の金属/ゴム複合構造体の接合強度の測定方法を説明するための模式図である。
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。文中の数字の間にある「〜」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
[金属/ゴム複合構造体]
まず、本実施形態に係る金属/ゴム複合構造体1について説明する。
図1は、本発明に係る実施形態の金属/ゴム複合構造体1の構造の一例を模式的に示した斜視図であり、(a)はプライマー層3を備えない例、(b)はプライマー層3をさらに備える例である。
本実施形態に係る金属/ゴム複合構造体1は、金属部材(M)と、金属部材(M)に接合された架橋ゴム部材(R)と、を備え、上記架橋ゴム部材(R)は共役ジエン系ゴムの架橋物を含み、金属部材(M)は少なくとも架橋ゴム部材(R)との接合部表面5に微細凹凸構造を有する。この場合、金属部材(M)の微細凹凸構造に架橋ゴム部材(R)の一部分が浸入することにより金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)とが接合されていることが好ましい。
また、本実施形態に係る金属/ゴム複合構造体1は、金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)との接合強度をより向上させる観点から、図1(b)のように、金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)との間にプライマー層3をさらに備えることが好ましい。この場合、金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)とはプライマー層3を介して接合していることが好ましい。
本実施形態に係る金属部材(M)は、架橋ゴム部材(R)との接合部表面5に微細凹凸構造が形成されている。このような微細凹凸構造に未架橋の架橋ゴム部材(R)の一部分が侵入し、次いで架橋することにより、金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)が接合することができる。こうすることによって、金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)との間に物理的な抵抗力(アンカー効果)が効果的に発現し、金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)とを強固に接合することが可能になる。
また、本実施形態に係る金属/ゴム複合構造体1は、金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)とが強固に接合されているため、金属/ゴム複合構造体1の機械的強度をより良好にすることができる。その結果、金属/ゴム複合構造体1を構成する金属部材(M)の厚みをより薄くすることができ、より軽量な金属/ゴム複合構造体1を得ることもできる。
以下、本実施形態に係る金属/ゴム複合構造体1を構成する各部材について説明する。
<架橋ゴム部材(R)>
以下、本実施形態に係る架橋ゴム部材(R)について説明する。
本実施形態に係る架橋ゴム部材(R)は、例えば、天然ゴム(NR)、共役ジエン構造を含む炭化水素(以下、「共役ジエン系炭化水素」とも呼ぶ。)を重合して得られる重合体ゴム等の共役ジエン系ゴムを含む原料ゴム組成物を所定の形状に成形しつつ架橋させることにより得ることができる。すなわち、本実施形態に係る架橋ゴム部材(R)は、共役ジエン系ゴムの架橋物を含む。
共役ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム;共役ジエン系炭化水素を重合して得られる重合体ゴム;共役ジエン系炭化水素とモノオレフィン系不飽和化合物とを重合させて得られる共重合体ゴム等が挙げられる。
上記共役ジエン系炭化水素としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられ、好ましくは1,3−ブタジエンおよびイソプレンである。これらの化合物は単独でまたは二種類以上を組み合わせて用いることができる。
上記モノオレフィン系不飽和化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、メタアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、アクリル酸、メタアクリル酸等が挙げられる。
上記共役ジエン系炭化水素を重合して得られる重合体ゴムまたは共役ジエン系炭化水素とモノオレフィン系不飽和化合物とを重合させて得られる共重合体ゴムとしては特に限定されず、例えば、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレンゴム、スチレン−クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル−イソプレンゴム、アクリロニトリル−クロロプレンゴム、水素化ニトリルゴム(HNBR)、イソブチレン−イソプレンゴム(ブチルゴム,IIR)、アクリル酸エステル−イソプレンゴム、アクリル酸エステル−クロロプレンゴム、メタアクリル酸エステルと上記共役ジエン系炭化水素との共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンゴム(SIS)、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンゴム(SBS)等が挙げられる。これらの重合体は乳化重合によって重合してもよいし、また溶液重合によって重合してもよい。
共役ジエン系ゴムとしては防振材としての柔軟性とゴム弾性発現の観点から、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下のゴムであることが好ましい。具体的には、天然ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素化ニトリルゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソブチレン−イソプレンゴム、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンゴム、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンゴム等が挙げられる。
これらの中でも防振材用途の金属/ゴム複合構造体1とした場合の性能とコストとのバランスの視点から、天然ゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素化ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、およびイソブチレン−イソプレンゴムから選択される一種または二種以上が好ましく、天然ゴムおよび水素化ニトリルゴムがより好ましく、天然ゴムが特に好ましい。
本実施形態において、共役ジエン系ゴムとして天然ゴムを使用する場合は、天然ゴムはゴムの樹液を酸で凝固させ、水洗および乾燥した、いわゆる生ゴムを用いてもよいし、またラテックスのままでゴム成分を60〜70質量%まで濃縮したものを用いてもよい。
また、架橋ゴム部材(R)中の共役ジエン系ゴムの含有量は、架橋ゴム部材(R)全体を100質量%としたとき、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、50質量%以上が特に好ましい。架橋ゴム部材(R)中の共役ジエン系ゴムの含有量の上限は特に限定されないが、架橋ゴム部材(R)全体を100質量%としたとき、例えば、100質量%以下である。
また、架橋ゴム部材(R)中のゴム成分の含有量を100質量部としたとき、共役ジエン系ゴムの含有量は、50質量部超過が好ましく、70質量部以上がより好ましく、80質量部以上がさらに好ましく、90質量部以上が特に好ましい。架橋ゴム部材(R)中の共役ジエン系ゴムの含有量の上限は特に限定されないが、架橋ゴム部材(R)中のゴム成分の含有量を100質量部としたとき、例えば、100質量部以下である。
架橋ゴム部材(R)は、必要に応じて、共役ジエン単量体単位を含有しない原料ゴムを含んでもよい。
このような原料ゴムとしては、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)等を挙げることができる。
EPDMに含まれる非共役ジエン成分は、例えば炭素数5〜20の非共役ジエンであり、より具体的には1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンおよび1,4−オクタジエン等の鎖状ジエン;1,4−シクロヘキサジエン、シクロオクタジエンおよびジシクロペンタジエン等の環状ジエン;5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネンおよび2−イソプロペニル−5−ノルボルネン等のアルケニルノルボルネン等が挙げられる。
架橋ゴム部材(R)中の共役ジエン単量体単位を含有しない原料ゴムの含有量は、架橋ゴム部材(R)全体を100質量%としたとき、例えば20質量%以下である。
ここで、架橋ゴム部材(R)を構成する原料ゴム組成物には、必要に応じて、公知の酸化防止剤;着色剤;カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、マイカ、亜鉛華、ステアリン酸等の充填剤;可塑剤、プロセスオイル等の軟化剤;ワックス等の粘着付与剤;老化防止剤;硫黄;加硫促進剤等の各種添加剤を配合してもよい。
原料ゴム組成物を架橋する方法としては特に限定されないが、硫黄架橋や過酸化物架橋等が挙げられる。硫黄架橋においては、例えば硫黄、加硫促進剤等が使用される。過酸化物架橋においては、例えばジクミルパーオキサイド、MEKパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物が使用される。
またイソブチレン−イソプレンゴムについては、例えばフェノール樹脂やベンゾキノンオキシム等のオキシム化合物等を使用してもよい。クロロプレンゴムについては酸化亜鉛や酸化マグネシウム等の金属酸化物;チオ尿素等を使用してもよい。上記の架橋方法以外に電子線等の放射線を使用して架橋することも可能である。
<金属部材(M)>
以下、本実施形態に係る金属部材(M)について説明する。
本実施形態に係る金属部材(M)は架橋ゴム部材(R)との接合部表面5に微細凹凸構造を有する。
本実施形態に係る金属部材(M)を構成する金属材料は特に限定されないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄鋼材、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金、チタンおよびチタン合金等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、軽量、安価、および高強度の点から、アルミニウム(アルミニウム単体)およびアルミニウム合金が好ましく、アルミニウム合金がより好ましい。
アルミニウム合金としては、JIS H4000に規定された合金番号1050、1100、2014、2024、3003、5052、6063、7075等が好ましく用いられる。
また、高剛性の観点から、鉄および鉄鋼材が好ましく、鉄鋼材がより好ましい。
ここで鉄鋼材とは普通鋼(炭素鋼)および特殊鋼全体を包含し、例えば一般構造用圧延鋼材等の炭素鋼、低温用鋼、原子炉用鋼板材料等をいい、冷間圧延鋼材(以下、「SPCC」という。)、熱間圧延鋼材(以下、「SPHC」という。)、自動車構造用熱間圧延鋼板材(以下、「SAPH」という。)、自動車加工用熱間圧延高張力鋼板材(以下、「SPFH」という。)等の鉄鋼材である。これらの多くはプレス加工および切削加工が可能であるので、部品および本体として採用するとき、構造および形状も自由に選択できる。また、本実施形態でいう鉄鋼材は上記鉄鋼材に限らず、例えば、日本工業規格(JIS「SS400」)等で規格化されたあらゆる鉄鋼材が含まれる。鉄鋼材としては、ステンレス鋼および圧延軟鋼から選択される少なくとも一種により構成されたものであることが好ましい。
金属部材(M)の形状は、架橋ゴム部材(R)と接合できる形状であれば特に限定されず、例えば、平板状、曲板状、棒状、筒状、塊状等とすることができる。また、これらの組み合わせからなる構造体であってもよい。
また、架橋ゴム部材(R)と接合する接合部表面5の形状は、特に限定されないが、平面および曲面等が挙げられる。
金属部材(M)は上記金属材料を、切断、プレス等による塑性加工、打ち抜き加工、切削、研磨、放電加工等の除肉加工等の公知の方法によって所定の形状に加工された後に、後述する粗化処理がなされたものが好ましい。要するに、種々の加工法により、必要な形状に加工されたものを用いることが好ましい。
金属部材(M)は、架橋ゴム部材(R)との接合部表面5に微細凹凸構造を有する。
ここで、金属部材(M)の上記微細凹凸構造は、例えば、間隔周期が5nm以上500μm以下である凸部が林立した微細凹凸構造である。
ここで、微細凹凸構造の間隔周期は凸部から隣接する凸部までの距離の平均値であり、電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡で撮影した写真、あるいは表面粗さ測定装置を用いて求めることができる。
電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡により測定される間隔周期は通常500nm未満の間隔周期である。具体的には、以下の手順で間隔周期を測定することができる。まず、金属部材(M)の接合部表面を撮影する。次いで、得られた写真から、任意の凸部を50個選択し、それらの凸部から隣接する凸部までの距離をそれぞれ測定する。そして、凸部から隣接する凸部までの距離の全てを積算して50で除したものを間隔周期とする。一方、500nmを超える間隔周期は通常、表面粗さ測定装置を用いて求める。
なお、通常、金属部材(M)の接合部表面5だけでなく、金属部材(M)の表面全体に対し、表面粗化処理が施されているため、金属部材(M)の接合部表面と同一面で、接合部表面以外の箇所から間隔周期を測定することもできる。
上記間隔周期は、好ましくは10nm以上300μm以下、より好ましくは20nm以上200μm以下である。
上記間隔周期が上記下限値以上であると、微細凹凸構造の凹部に架橋ゴム部材(R)を構成する原料ゴム組成物が十分に進入することができ、金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)との接合強度をより向上させることができる。また、上記間隔周期が上記上限値以下であると、金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)との接合部分に隙間が生じるのを抑制できる。その結果、金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)との界面の隙間から水分等の不純物が浸入することを抑制できるため、金属/ゴム複合構造体1を高温、高湿下で用いた際、強度が低下することを抑制できる。
上記間隔周期を有する微細凹凸構造を形成する方法としては、NaOH等の無機塩基水溶液および/またはHCl、HNO等の無機酸水溶液に金属部材を浸漬する方法;陽極酸化法により金属部材を処理する方法;機械的切削、例えばダイヤモンド砥粒研削またはブラスト加工によって作製した凹凸を有する金型パンチをプレスすることにより金属部材表面に凹凸を形成する方法や、サンドブラスト、ローレット加工、レーザー加工により金属部材表面に凹凸形状を作製する方法;国際公開第2009/31632号パンフレットに開示されているような、水和ヒドラジン、アンモニア、および水溶性アミン化合物から選ばれる1種以上の水溶液に金属部材を浸漬する方法等が挙げられる。これらの方法は、金属部材(M)を構成する金属材料の種類や、上記間隔周期の範囲内において形成する凹凸形状によって使い分けることが可能である。本実施形態においては、NaOH等の無機塩基水溶液および/またはHCl、HNO等の無機酸水溶液に金属部材を浸漬する方法が、金属部材を広範囲にわたってまとめて処理することができることや、また金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)との接合力に優れることから好ましい。
また、金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)との接合強度をより向上させる観点から、金属部材(M)の接合部表面5上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(1)および(2)を同時に満たすことが好ましい。
(1)切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が30%以下である直線部を1直線部以上含む
(2)すべての直線部の、評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)が2μmを超える
図2は、金属部材(M)の接合部表面5上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部を説明するための模式図である。
上記6直線部は、例えば、図2に示すような6直線部B1〜B6を選択することができる。まず、基準線として、金属部材(M)の接合部表面5の中心部Aを通る中心線B1を選択する。次いで、中心線B1と平行関係にある直線B2およびB3を選択する。次いで、中心線B1と直交する中心線B4を選択し、中心線B1と直交し、中心線B4と並行関係にある直線B5およびB6を選択する。ここで、各直線間の垂直距離D1〜D4は、例えば、2〜5mmである。
なお、通常、金属部材(M)は、金属部材(M)の架橋ゴム部材(R)との接合部表面5のみならず、金属部材(M)全体に対し、表面粗化処理が施されているため、例えば、金属部材(M)の架橋ゴム部材(R)との接合部表面5と同一面、または反対面で、接合部表面5以外の箇所から6直線部を選択してもよい。
上記要件(1)および(2)を同時に満たすと、金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)との接合強度に優れた金属/ゴム複合構造体1が得られる理由は必ずしも明らかではないが、金属部材(M)の架橋ゴム部材(R)との接合部表面5が、金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)との間のアンカー効果を効果的に発現できる構造になっているためと考えられる。
金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材(M)の接合部表面5上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(1A)〜(1C)のうち1つ以上の要件をさらに満たすことが好ましく、要件(1C)を満たすことがとりわけ好ましい。なお、要件(1C)は上述した要件(3)に同一である。
(1A)切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が30%以下である直線部を好ましくは2直線部以上、より好ましくは3直線部以上、最も好ましくは6直線部含む
(1B)切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が20%以下である直線部を好ましくは1直線部以上、より好ましくは2直線部以上、さらに好ましくは3直線部以上、最も好ましくは6直線部含む
(1C)切断レベル40%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が60%以下である直線部を好ましくは1直線部以上、より好ましくは2直線部以上、さらに好ましくは3直線部以上、最も好ましくは6直線部含む
また、金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材(M)の接合部表面5上の、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)の平均値が好ましくは0.1%以上40%以下であり、より好ましくは0.5%以上30%以下であり、さらに好ましくは1%以上25%以下であり、最も好ましくは2%以上20%以下である。
なお、上記負荷長さ率(Rmr)の平均値は、前述の任意の6直線部の負荷長さ率(Rmr)を平均したものを採用することができる。
本実施形態に係る金属部材(M)の接合部表面5の負荷長さ率(Rmr)は、金属部材の表面に対する粗化処理の条件を適切に調節することにより制御することが可能である。
本実施形態においては、特にエッチング剤の種類および濃度、粗化処理の温度および時間、エッチング処理のタイミング等が、上記負荷長さ率(Rmr)を制御するための因子として挙げられる。
金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材(M)の接合部表面5上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(2A)をさらに満たすことが好ましい。
(2A)すべての直線部の、評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)が好ましくは5μm超、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上である
金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材(M)の接合部表面5上の、十点平均粗さ(Rz)の平均値が好ましくは2μmを超えて50μm以下、より好ましくは5μmを超えて45μm以下、さらに好ましくは10μm以上40μm以下、特に好ましくは15μm以上30μm以下である。
なお、上記十点平均粗さ(Rz)の平均値は、前述の任意の6直線部の十点平均粗さ(Rz)を平均したものを採用することができる。
金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材(M)の接合部表面5上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(4)を満たすことが好ましい。
(4)すべての直線部の、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μmを超え300μm未満であり、より好ましくは20μm以上200μm以下である。
金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材(M)の接合部表面5上の、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値が好ましくは10μmを超え300μm未満、より好ましくは20μm以上200μm以下である。
なお、上記粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値は、前述の任意の6直線部の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を平均したものを採用することができる。
本実施形態に係る金属部材(M)の接合部表面5の十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)は、金属部材の表面に対する粗化処理の条件を適切に調節することにより制御することが可能である。
本実施形態においては、特に粗化処理の温度および時間、エッチング量等が、上記十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を制御するための因子として挙げられる。
(金属部材の粗化処理方法1)
次に、上記の負荷長さ率(Rmr)、十点平均粗さ(Rz)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)等を満たす金属部材(M)の調製方法について説明する。
このような金属部材(M)は、例えば、エッチング剤を用いて金属部材の表面を粗化処理することにより形成することができる。
ここで、エッチング剤を用いて金属部材の表面を粗化処理すること自体は従来技術においても行われてきた。しかし、本実施形態では、エッチング剤の種類および濃度、粗化処理の温度および時間、エッチング処理のタイミング、等の因子を高度に制御している。本実施形態に係る金属部材(M)の接合部表面5を得るためには、これらの因子を高度に制御することが重要となる。
以下、上記の負荷長さ率(Rmr)、十点平均粗さ(Rz)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)等を満たす金属部材(M)を得るための金属部材の粗化処理方法の一例を示す。ただし、本実施形態に係る金属部材の粗化処理方法は、以下の例に限定されない。
(1)前処理工程
まず、金属部材は、少なくとも架橋ゴム部材(R)との接合側の表面に酸化膜や水酸化物等からなる厚い被膜がないことが望ましい。このような厚い被膜を除去するため、次のエッチング剤で処理する工程の前に、サンドブラスト加工、ショットブラスト加工、研削加工、バレル加工等の機械研磨や、化学研磨により表面層を研磨してもよい。また、架橋ゴム部材(R)との接合側の表面に機械油等の著しい汚染がある場合は、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等のアルカリ性水溶液による処理や、脱脂を行なうことが好ましい。
(2)表面粗化処理工程
本実施形態において金属部材の表面粗化処理方法としては、後述する酸系エッチング剤による処理を特定のタイミングで行うことが好ましい。具体的には、該酸系エッチング剤による処理を表面粗化処理工程の最終段階で行うことが好ましい。
上記酸系エッチング剤を用いて粗化処理する方法としては、浸漬、スプレー等による処理方法が挙げられる。処理温度は20〜40℃が好ましく、処理時間は5〜350秒程度が好ましく、金属部材表面をより均一に粗化できる観点から、20〜300秒がより好ましく、50〜300秒が特に好ましい。
なお、本実施形態では、上記酸系エッチング剤を用いて金属部材を粗化処理する際、金属部材表面の全面を粗化処理してもよく、架橋ゴム部材(R)が接合される面だけを部分的に粗化処理してもよい。
(3)後処理工程
本実施形態では、上記表面粗化処理工程の後、通常、水洗および乾燥を行うことが好ましい。水洗の方法については特に制限はないが浸漬または流水にて所定時間洗浄することが好ましい。
さらに、後処理工程としては、上記酸系エッチング剤を用いた処理により生じたスマット等を除去するため、超音波洗浄を施すことが好ましい。超音波洗浄の条件は、生じたスマット等を除去することができる条件であれば特に限定されないが、用いる溶媒としては水が好ましく、また、処理時間としては、好ましくは1〜20分間である。
(酸系エッチング剤)
本実施形態において、金属部材表面の粗化処理に用いられるエッチング剤としては、後述する特定の酸系エッチング剤が好ましい。特定の酸系エッチング剤で処理することにより、金属部材の表面に、架橋ゴム部材(R)との間の密着性向上に適した微細凹凸構造が形成され、そのアンカー効果により金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)との間の接合強度がより一層向上するものと考えられる。
以下、本実施形態で使用できる酸系エッチング剤の成分について説明する。
上記酸系エッチング剤は、第二鉄イオンおよび第二銅イオンの少なくとも一方と、酸と、を含み、必要に応じて、マンガンイオン、各種添加剤等を含むことができる。
・第二鉄イオン
上記第二鉄イオンは、金属部材表面を酸化する成分であり、第二鉄イオン源を配合することによって、酸系エッチング剤中に該第二鉄イオンを含有させることができる。上記第二鉄イオン源としては、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄等が挙げられる。上記第二鉄イオン源のうちでは、塩化第二鉄が溶解性に優れ、安価であるという点から好ましい。
本実施形態において、酸系エッチング剤中の上記第二鉄イオンの含有量は、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜12質量%、さらに好ましくは0.5〜7質量%、さらにより好ましくは1〜6質量%、特に好ましくは1〜5質量%である。上記第二鉄イオンの含有量が上記下限値以上であれば、金属部材の粗化速度(溶解速度)の低下を防ぐことができる。一方、上記第二鉄イオンの含有量が上記上限値以下であれば、粗化速度を適正に維持することができるため、金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)との間の接合強度向上により適した均一な粗化が可能になる。
・第二銅イオン
上記第二銅イオンは金属部材を酸化する成分であり、第二銅イオン源を配合することによって、酸系エッチング剤中に該第二銅イオン含有させることができる。上記第二銅イオン源としては、硫酸第二銅、塩化第二銅、硝酸第二銅、水酸化第二銅等が挙げられる。上記第二銅イオン源のうちでは、硫酸第二銅、塩化第二銅が安価であるという点から好ましい。
本実施形態において、酸系エッチング剤中の上記第二銅イオンの含有量は、0.001〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜7質量%、さらに好ましくは0.05〜1質量%、さらにより好ましくは0.1〜0.8質量%、さらにより好ましくは0.15〜0.7質量%、特に好ましくは0.15〜0.4質量%である。上記第二銅イオンの含有量が上記下限値以上であれば、金属部材の粗化速度(溶解速度)の低下を防ぐことができる。一方、上記第二銅イオンの含有量が上記上限値以下であれば、粗化速度を適正に維持することができるため、金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)との間の接合強度向上により適した均一な粗化が可能になる。
上記酸系エッチング剤は、第二鉄イオンおよび第二銅イオンの一方のみを含むものであってもよく、両方を含むものであってもよいが、第二鉄イオンおよび第二銅イオンの両方を含むことが好ましい。酸系エッチング剤が第二鉄イオンおよび第二銅イオンの両方を含むことで、金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)との間の接合強度向上により適した良好な粗化形状が容易に得られる。
上記酸系エッチング剤が、第二鉄イオンおよび第二銅イオンの両方を含む場合、第二鉄イオンおよび第二銅イオンのそれぞれの含有量が、上記範囲であることが好ましい。また、酸系エッチング剤中の第二鉄イオンと第二銅イオンの含有量の合計は、0.011〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは1〜5質量%である。
・マンガンイオン
上記酸系エッチング剤には、金属部材表面をむらなく一様に粗化するために、マンガンイオンが含まれていてもよい。マンガンイオンは、マンガンイオン源を配合することによって、酸系エッチング剤中に該マンガンイオンを含有させることができる。上記マンガンイオン源としては、硫酸マンガン、塩化マンガン、酢酸マンガン、フッ化マンガン、硝酸マンガン等が挙げられる。上記マンガンイオン源のうちでは、硫酸マンガン、塩化マンガンが安価である等の点から好ましい。
本実施形態において、酸系エッチング剤中の上記マンガンイオンの含有量は、0〜1質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜0.5質量%である。
・酸
上記酸は、第二鉄イオンおよび/または第二銅イオンにより酸化された金属を溶解させる成分である。上記酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、スルファミン酸等の無機酸や、スルホン酸、カルボン酸等の有機酸が挙げられる。上記カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸等が挙げられる。上記酸系エッチング剤には、これらの酸を一種または二種以上配合することができる。上記無機酸のうちでは、臭気がほとんどなく、安価である点から硫酸が好ましい。また、上記有機酸のうちでは、粗化形状の均一性の観点から、カルボン酸が好ましい。
本実施形態において、酸系エッチング剤中の上記酸の含有量は、0.1〜50質量%であることが好ましく、0.5〜50質量%であることがより好ましく、1〜50質量%であることがさらに好ましく、1〜30質量%であることがさらにより好ましく、1〜25質量%であることがさらにより好ましく、2〜18質量%であることがさらにより好ましい。上記酸の含有量が上記下限値以上であれば、金属部材の粗化速度(溶解速度)の低下を防止できる。一方、上記酸の含有量が上記上限値以下であれば、液温が低下した際の金属部材の金属塩の結晶析出を防止できるため、作業性を向上できる。
・他の成分
本実施形態において使用できる酸系エッチング剤には、指紋等の表面汚染物による粗化のむらを防ぐために界面活性剤を添加してもよく、必要に応じて他の添加剤を添加してもよい。他の添加剤としては、深い凹凸を形成するために添加されるハロゲン化物イオン源、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等を例示できる。あるいは、粗化処理速度を上げるために添加されるチオ硫酸イオン、チオ尿素等のチオ化合物や、より均一な粗化形状を得るために添加されるイミダゾール、トリアゾール、テトラゾール等のアゾール類や、粗化反応を制御するために添加されるpH調整剤等も例示できる。これら他の成分を添加する場合、その合計含有量は、酸系エッチング剤中に0.01〜10質量%程度であることが好ましい。
本実施形態の酸系エッチング剤は、上記の各成分をイオン交換水等に溶解させることにより容易に調製することができる。
(金属部材の粗化処理方法2)
金属部材を構成する金属材料が鉄および鉄鋼材の場合は、少なくとも以下の第一工程および第二工程の2つの工程を含み、上記第二工程の後に、第三工程をさらに含んでもよい方法により金属部材の粗化処理を行い、表面に微細凹凸構造を有する金属部材(M)を作製することが好ましい。
(第一工程)少なくとも金属部材の架橋ゴム部材(R)との接合部表面に、イオン化傾向が鉄よりも小さい金属により構成され、かつ、金属部材と接する面とは反対側の表面が粗化された金属めっき層を付与する工程
(第二工程)少なくとも上記金属めっき層表面を無機酸により処理する工程
(第三工程)少なくとも接合部表面から金属めっき層を除去する工程
次いで、各工程について詳細に説明する。
(第一工程)
第一工程は、公知の方法によって、金属部材と接する面とは反対側の表面が粗化されている金属めっき層を付与する工程である。金属めっき層を形成する金属種のイオン化傾向は鉄よりも小さいことが本実施形態では必須の要件となる。イオン化傾向が鉄より小さな金属としては、Ni、Sn、Pb、Cu、Hg、Ag等を例示することができる。入手容易性の視点(希少金属ではないこと)、有害金属ではない点、金属部材表面へのめっきの経済的手法が確立されている点等からNi、SnおよびCuが望ましい。
本発明者らは、これら3種の金属種の中で、めっき後の金属部材と接する面とは反対側の表面の粗化程度について検討を重ねた結果、Cu(銅)が特に望ましいことを見出した。金属部材表面に、銅めっきする方法としては、例えば、必要に応じて金属部材用脱脂剤や中性洗剤等で脱脂後に水洗した金属部材を、酸と第二銅イオンと塩素イオンを含む水溶液を用いて処理する方法を挙げることができる。
この第一工程により、金属部材表面に凹凸形状の銅めっき層が形成される。
酸と第二銅イオンと塩素イオンを含む水溶液としては、酸を15〜70質量%、塩素イオンを0.3〜9.5質量%、好ましくは1〜7質量%、第二銅イオンを少なくとも0.01質量%、好ましくは0.02〜6質量%含有する水溶液が好ましい。また当該水溶液は必要に応じてチオール系化合物を含有していてもよく、チオール系化合物を含有する場合はチオール系化合物を0.00001〜1質量%、好ましくは0.00005〜1質量%含有する水溶液が好ましい。
酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、スルファミン酸等の無機酸や、スルホン酸、カルボン酸等の有機酸が挙げられる。上記カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸等が挙げられる。酸としては、硫酸が好ましい。
塩素イオン源化合物としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウムが挙げられる。
第二銅イオン源化合物としては、例えば塩化第二銅、硝酸第二銅、硫酸第二銅、酢酸第二銅、水酸化第二銅等があげられる。
チオール系化合物としては、例えばチオぎ酸、チオ酢酸、チオプロピオン酸等のチオール酸類;チオグリコール酸、チオジグリコール酸、チオ乳酸、チオリンゴ酸等のチオカルボン酸類;チオサリチル酸、チオフマル酸等の芳香族チオカルボン酸類等があげられる。
処理温度は通常20〜50℃、処理時間は通常20秒〜10分間である。第一工程後に必要に応じて水洗・乾燥が行われる。
(第二工程)
第二工程は、第一工程で得られた金属めっき層表面を無機酸により処理する。無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、硝酸等が好ましく用いられる。鉄の化学エッチング力の点から硝酸が好ましく用いられる。
無機酸の濃度は、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは10〜25質量%である。処理温度は通常20〜50℃、処理時間は通常20〜120秒である。この第二工程を実施することによって、第一工程のみでは得られなかった架橋ゴム部材(R)との接合力を飛躍的に向上させることができる。
本発明者らは、この理由を以下のように推測している。すなわち、第二工程を実施することによって、第一工程で金属部材表面に生成した凹凸形状の金属めっき層のうちの凹部分、すなわち金属部材に近い部分から無機酸水溶液が金属部材表面に侵入し、金属めっき層を構成する金属よりもイオン化傾向の大きな鉄を優先的に化学エッチングすることによって金属部材の表面にオーバーハング部を有する凹部(ピット)が多数形成される。このようなオーバーハング部を有する凹部はアンカー効果によって架橋ゴム部材(R)との接合力向上に寄与すると推察される。
第二工程後には必要に応じて水洗・乾燥が行われる。
(第三工程)
第三工程は、任意に行われる工程であり通常は上記第二工程の後におこなわれる。金属部材上にイオン化傾向が鉄よりも小さな金属が接していると長期間の放置で鉄の腐食(異種金属接触腐食またはガルバニ腐食)が起こる可能性があるので、このような腐食を極力避けたい用途、例えば電材用途等においては、第三工程を行うことが好ましい。
第三工程は、少なくとも金属部材の接合部表面を、例えば金属めっき剥離液で処理し、金属めっき層の一部または全部を除去する工程である。本実施形態において好ましい金属めっきである銅めっきを除去する第三工程は、例えば、特開2002−356788号に記載の方法に準じておこなうことができる。第三工程で用いられる処理液は、例えば、アンモニア銅錯塩を含有するものが挙げられる。より具体的には、銅(II)アンミン錯体を含有するアルカリ性水溶液であり、対イオンとして有機酸の陰イオンを含有する銅めっき剥離液が挙げられる。この剥離液は上記公開公報の記載内容に従って調製してもよいし、市販の剥離液をメーカーの推奨する処方に従って処理してもよい。後述する実施例においては、メルテックス株式会社製のメルストリップCu−3940を用いた。第三工程の処理温度は通常20〜60℃、好ましくは30〜50℃、処理時間は通常20〜120秒、好ましくは30〜90秒である。第三工程後に必要に応じて水洗・乾燥が行われる。第三工程終了後に、任意に行われる水洗操作は、第二および/または第三工程で生じたスマットを除去することができる条件であれば特に限定されない。処理時間としては、好ましくは0.5〜20分間である。
<プライマー層3>
プライマー層3はカップリング剤を含む。
このようなカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等が挙げられる。
これらの中でも、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤が好ましく、より優れた接合強度向上効果が得られる観点から、シランカップリング剤およびチタンカップリング剤がより好ましく、接合強度向上効果および入手容易性の観点からシランカップリング剤が特に好ましい。
シランカップリング剤としては特に限定されないが、例えば、一分子中に少なくとも1つのアルコキシシリル基とその他の置換基を有する化合物を使用することができる。
シランカップリング剤としては、例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランやγ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート官能性シラン、チオシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリ(β−オキシメチルエトキシ)シラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビス−3−トリエトキシシリルプロピルテトラサルファイド、ビス−3−トリエトキシシリルプロピルジスルフィド等が挙げられる。
これらの中でも、下記式(1)で表されるビス−3−トリエトキシシリルプロピルテトラサルファイド、下記式(2)で表されるビス−3−トリエトキシシリルプロピルジスルフィド、下記式(3)で表されるチオシアネートプロピルトリエトキシシラン、下記式(4)で表されるビニルトリメトキシシラン、下記式(5)で表されるγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、下記式(6)で表されるβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、下記式(7)で表されるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、下記式(8)で表されるγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランから選択される一種または二種以上が好ましい。
(EtO)Si(CH−S−(CHSi(OEt) (1)
(EtO)Si(CH−S−(CHSi(OEt) (2)
(EtO)Si(CHSCN (3)
CH=CHSi(OMe) (4)
CH=C(CH)COOCSi(OMe) (5)
Figure 2018051987
HS−CSi(OMe) (8)
チタンカップリング剤としては、例えば有機チタン酸エステル等を用いることができ、より具体的にはテトラメチル・オルソチタネート、テトラエチル・オルソチタネート、テトラプロピル・オルソチタネート、テトライソプロピル・オルソチタネート、テトラブチル・オルソチタネート、ブチル・ポリチタネート、クレジル・チタネートポリマー、ステアリル・チタネート、テトライソブチル・オルソチタネート、2−エチルヘキシル・チタネート、ジ・イソプロポキシ−ビス(2,4−ペンタジオネート)チタン、ジ・イソプロピル・ジトリエタノール・アミノチタネート、イソプロピルヘキシレン・グリコールチタネート等が挙げられる。
また、カップリング剤としては、下記式(9)で表されるN,N'−ビス(2−メチル−2−ニトロプロピル)−1,6−ジアミノヘキサンを用いることもできる。
NCMeCHNH(CHNHCHCMeNO (9)
以上のカップリング剤はそのまま使用してもよく、また必要に応じて溶剤に溶解して使用してもよい。溶剤としては、例えば、水;エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;セルソルブ類;n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類等が挙げられる。
[金属/ゴム複合構造体の製造方法]
次に、本実施形態に係る金属/ゴム複合構造体1の製造方法について説明する。
はじめに、架橋ゴム部材(R)を構成する原料ゴム組成物を調製する。
本実施形態に係る原料ゴム組成物は、ゴムの技術分野において通常使用される混合ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等の混合装置を用いて各原料を混練することにより製造することができる。このとき、必要に応じて加熱してもよい。
本実施形態に係る金属/ゴム複合構造体1は、このように製造された原料ゴム組成物を金属部材(M)上に成形して金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)とを接合する方法や、金属部材(M)上にプライマー層3を形成し、次いで、得られたプライマー層3上に原料ゴム組成物を成形して金属部材(M)と架橋ゴム部材(R)とをプライマー層3を介して接合する方法等によって製造することができる。
原料ゴム組成物の成形方法は特に限定されず、圧縮成形、押出成形、トランスファー成形、射出成形等により原料ゴム組成物を所定の形状に成形しつつ架橋する方法が挙げられる。ここで、原料ゴム組成物は成形時に加熱することにより架橋してもよいし、成形後に加熱して架橋させてもよい。
本実施形態において、原料ゴム組成物の好ましい成形方法は、生産性に優れた射出成形法である。すなわち、本実施形態に係る架橋ゴム部材(R)は射出成形体であることが好ましい。
一般的に、原料ゴム組成物の射出成形における架橋では、金型からの伝熱により原料ゴム組成物を昇温して架橋させる。この方法では原料ゴム組成物の温度を高くできるので、原料ゴム組成物の昇温に要する時間を短縮でき、架橋時間を短縮することができる。
射出成形する際の金型温度は、例えば130〜200℃、好ましくは140〜190℃である。
原料ゴム組成物の温度は架橋時間によっても変動するが経済的な架橋時間を実現するためには、例えば100〜200℃、好ましくは110〜190℃である。原料ゴム組成物の温度が上記下限値以上であると、架橋時間がより短くなりより現実的である。また、原料ゴム組成物の温度が上記上限値以下であると、早期架橋いわゆる材料ヤケが起こることを抑制することができるため好ましい。
また、原料ゴム組成物の架橋方法としては、原料ゴム組成物を射出注入した後、所定時間加熱する方法も採用することができる。
金属部材(M)上にプライマー層3を形成する方法としては、特に制限されず、例えばプライマー溶液に金属部材を浸漬処理した後に乾燥する方法や、金属部材にプライマー溶液を刷毛やスプレー、ローラー等により塗布した後に乾燥する方法等が挙げられる。乾燥条件としては、例えば、室温〜120℃の温度で10分〜24時間が挙げられる。
[金属/ゴム複合構造体の用途]
本実施形態に係る金属/ゴム複合構造体1は、例えば、ウェザーストリップ、ガスケット、シール材、免震ゴム、ゴム支承等に利用することができる。また、架橋ゴム部材(R)として防振性ゴムを用いた場合では、本実施形態に係る金属/ゴム複合構造体1は、自動車用防振ゴムの複合構成部材、具体的にはエンジンマウント、ボディマウント、キャブマウント、メンバーマウント、ストラットバークッション、センタベアリングサポート、トーショナルダンパー、ステアリングラバーカップリング、テンションロッドブッシュ、ブッシュ、バウンドストッパー、FFエンジンロールストッパー、マフラーハンガー等の各種部材に利用することができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
以下の方法により、アルミニウム合金の表面処理および射出成形を順次実施することにより金属/ゴム複合構造体を作製した。
<表面処理工程>
JIS H4000に規定された合金番号6063のアルミニウム合金板(50mm×40mm×2mm)を脱脂処理した後、硫酸8.2質量%、塩化第二鉄7.8質量%、塩化第二銅0.4質量%が溶解した水溶液(30℃)中に80秒間浸漬し、揺動させることによってエッチングした。次いで、流水で超音波洗浄(水中、1分間)を行い、乾燥させることにより表面処理済みアルミニウム合金板を得た。
得られた表面処理済みのアルミニウム合金板の表面粗さを、表面粗さ測定装置「サーフコム1400D(東京精密社製)」を使用し、JIS B0601(対応ISO4287)に準拠して測定される表面粗さのうち、切断レベル10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%および80%における粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)をそれぞれ測定した。このうち、切断レベル20%におけるRmr(20%)値、上記Rmr(20%)値が30%以下となる直線部の本数、切断レベル40%におけるRmr(40%)値、上記Rmr(40%)値が60%以下となる直線部の本数、6直線部のRz値、6直線部の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)、エッチング処理前後のアルミニウム合金板の質量比から求めたエッチング率を表1に示す。また、得られた表面処理済みのアルミニウム合金板表面の微細凹凸構造における間隔周期は90μmであった。間隔周期は電子顕微鏡により測定した。
なお、測定条件は以下のとおりである。
・触針先端半径:5μm
・基準長さ:0.8mm
・評価長さ:4mm
・測定速度:0.06mm/sec
測定は、表面処理済みのアルミニウム合金板の表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部についておこなった(図2参照)。なお、本実施例・比較例では、アルミニウム合金板の全面について粗化処理をおこなっているため、アルミニウム合金板の接合部表面5以外の箇所について粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の測定をおこなっても、図2に示す測定箇所と同様の評価結果が得られることが理解される。
Figure 2018051987
<射出成形工程>
日本製鋼所社製のJ85AD110Hに、小型ダンベルインサート金型を装着し、該金型内に上記表面処理工程によって調製された表面処理済みアルミニウム合金板を設置した。
ここで、バンバリーミキサーを用いて、天然ゴム(商品名NR RSS−3号)100質量部と、HNBR(DN2020L、日本ゼオン社製)10質量部と、EPDM(ENB−EPT、2060M、三井化学社製)10質量部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シーストSO)50質量部と、硫黄(アクゾノーベル社製、クリステックHS)3質量部と、加硫促進剤(大内新興化学工業製、ノクセラーDZ−G)0.5質量部と、有機過酸化物(日本油脂製、パークミルD)0.5質量部と、を50℃で30分間混練して原料ゴム組成物を調製した。
次いで、表面処理済みアルミニウム合金板を設置した上記金型内に、得られた原料ゴム組成物を原料ゴム組成物温度175℃、金型温度175℃、保圧時間3分の条件にて射出成形し、合計厚みが3mmとなるようにゴム部材を表面処理済みアルミニウム合金板に射出接合させることによって金属/ゴム複合構造体を得た。
(接合強度評価)
図3は、実施例および比較例の金属/ゴム複合構造体の接合強度の測定方法を説明するための模式図である。
上記方法で得られた金属/ゴム複合構造体1において、架橋ゴム部材(R)の任意の30mm×10mm四方の長方形状の枠部分(カット線11)を、剃刀先端がアルミニウム層に十分到達する力でカットした。次いで、架橋ゴム部材(R)(長方形状)のいずれかの短辺部の端部9を平型スパチュラで剥離させ、この端部9を引張試験機(アイコーエンジニアリング社製、モデル1323)の専用の治具7でチャックした後に、鉛直方向に引っ張って剥離(剥離速度;500mm/分および100mm/分)させ、その際の強度を測定した。その結果、最大強度はそれぞれ31N/cmおよび24N/cmであった。
[実施例2]
はじめに、実施例1で得られた表面処理済みのアルミニウム合金板を、シランカップリング剤(γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、東レダウコーニング社製,グレード名Z6062)に室温で5分間浸漬し、その後、100℃、20分間乾燥させることによってプライマー層付きのアルミニウム合金板を作製した。
次いで、実施例1の射出成形工程において、金型内に設置する表面処理済みアルミニウム合金板の代わりに、得られたプライマー層付きのアルミニウム合金板を用いた以外は実施例1と同様にして金属/ゴム複合構造体を得た。
得られた金属/ゴム複合構造体に対して、実施例1と同様な方法で剥離速度500mm/分および100mm/分の条件下で剥離強度をそれぞれ測定した。その結果、最大強度はそれぞれ50.7N/cmおよび37.7N/cmであった。
[実施例3]
<表面処理工程>
(第一工程)
市販の厚さ2mmの冷間圧延軟鋼板SPCC(以下、鋼板とも呼ぶ。)を50mm×40mmの長方形に切断した。次いで、市販脱脂剤NE−6(メルテック社製)を5質量%になるように希釈した60℃の水溶液中に、切断した鋼板を5分間浸漬(無搖動下)させた後、5秒間の水洗(搖動下)を3回繰り返した。
次いで、特開2001−011662号公報の実施例3に記載された条件に準じて第一工程を実施した。すなわち、上記の脱脂後の鋼板を、硫酸、硫酸第二銅の5水和物、塩化カリウム、およびチオサリチル酸をそれぞれ50質量%、3質量%、3質量%および0.0001質量%含有する30℃の水溶液中に5分間浸漬(無搖動下)させた。次いで、超音波照射下で30秒間の水洗(搖動下)を3回繰り返すことによって第一の工程を終えた。
(第二工程)
第一工程で得られた鋼板を、20質量%硝酸水溶液中に90秒間浸漬(無搖動下)させた。その際の水溶液の温度は40℃に維持された。その後、20秒間の水洗(搖動下)を3回繰り返し、次いで80℃に設定された乾燥機中で15分間乾燥させることによって第二工程を終了した。第二工程終了後の鋼板の平均重量減少率は4.9重量%であった。
(第三工程)
第二工程で得られた鋼板を、銅めっき剥離剤(メルテックス社製、メルストリップCU−3940)に、40℃で1分間浸漬(無搖動下)させた。その後、超音波照射下で20秒間の水洗(搖動下)を3回繰り返した。次いで80℃に設定された乾燥機中で15分間乾燥させることによって第三工程を終了した。第三工程終了後の鋼板の平均重量減少率は3.1重量%であった。
得られた表面処理済み鋼板表面の微細凹凸構造における間隔周期は75μmであった。
<射出成形工程>
上記した表面処理工程で得られた表面処理済み鋼板を、表面処理済みアルミニウム合金板の代わりに使用した以外は実施例1と全く同様にして射出成形工程を実施し、金属/ゴム複合構造体を得た。
次いで、得られた金属/ゴム複合構造体に対して、実施例1と同様な方法で剥離速度500mm/分および100mm/分の条件下で剥離強度をそれぞれ測定した。その結果、最大強度はそれぞれ4.1N/cmおよび2.9N/cmであった。
[比較例1]
実施例1の射出成形工程において、金型内に設置する表面処理済みアルミニウム合金板の代わりに、表面処理を行っていないアルミニウム合金板を用いた以外は実施例1と同様にして射出成形工程を実施し、金属/ゴム複合構造体を得た。
次いで、得られた金属/ゴム複合構造体に対して、実施例1と同様な方法で剥離速度500mm/分および100mm/分の条件下で剥離強度をそれぞれ測定した。その結果、最大強度はそれぞれ19.2N/cmおよび23.6N/cmであった。
M 金属部材
R 架橋ゴム部材
1 金属/ゴム複合構造体
3 プライマー層
5 接合部表面
7 治具
9 端部
11 カット線

Claims (10)

  1. 金属部材(M)と、前記金属部材(M)に接合された架橋ゴム部材(R)と、を備える金属/ゴム複合構造体であって、
    前記架橋ゴム部材(R)は共役ジエン系ゴムの架橋物を含み、
    前記金属部材(M)は、少なくとも前記架橋ゴム部材(R)との接合部表面に微細凹凸構造を有する金属/ゴム複合構造体。
  2. 請求項1に記載の金属/ゴム複合構造体において、
    前記金属部材(M)の前記微細凹凸構造に前記架橋ゴム部材(R)の一部分が浸入することにより前記金属部材(M)と前記架橋ゴム部材(R)とが接合されている金属/ゴム複合構造体。
  3. 請求項1に記載の金属/ゴム複合構造体において、
    前記金属部材(M)と前記架橋ゴム部材(R)との間にプライマー層をさらに備え、
    前記金属部材(M)と前記架橋ゴム部材(R)とは前記プライマー層を介して接合している金属/ゴム複合構造体。
  4. 請求項3に記載の金属/ゴム複合構造体において、
    前記プライマー層がカップリング剤を含む金属/ゴム複合構造体。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の金属/ゴム複合構造体において、
    前記架橋ゴム部材(R)が射出成形体である金属/ゴム複合構造体。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の金属/ゴム複合構造体において、
    前記金属部材(M)の接合部表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(1)および(2)を同時に満たす金属/ゴム複合構造体。
    (1)切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が30%以下である直線部を1直線部以上含む
    (2)すべての直線部の、評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)が2μmを超える
  7. 請求項6に記載の金属/ゴム複合構造体において、
    前記金属部材(M)の接合部表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(3)をさらに満たす金属/ゴム複合構造体。
    (3)切断レベル40%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が60%以下である直線部を1直線部以上含む
  8. 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の金属/ゴム複合構造体において、
    前記金属部材(M)の接合部表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(4)を満たす金属/ゴム複合構造体。
    (4)すべての直線部の、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μmを超え300μm未満である
  9. 請求項1乃至8のいずれか一項に記載の金属/ゴム複合構造体において、
    前記共役ジエン系ゴムが天然ゴムを含む金属/ゴム複合構造体。
  10. 請求項1乃至9のいずれか一項に金属/ゴム複合構造体において、
    前記金属部材(M)を構成する金属材料がアルミニウム、アルミニウム合金、鉄および鉄鋼材から選択される一種または二種以上を含む金属/ゴム複合構造体。
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