JP7319634B2 - アルミニウム-樹脂複合体の製造方法。 - Google Patents
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Description
特に、アルミニウム合金に接合する樹脂組成物の種類によっては特許文献1の製造方法によって粗化処理したとしても、特許文献2に記載される機械で求められる十分な接合強度が得られないことがある。
本実施形態の車載用流体機械は、車載空調装置に用いられる電動圧縮機や、燃料電池車用水素循環ポンプ等、自動車等の車輌に搭載される流体機械であれば特に限定されるものではないが、燃料電池車用の水素循環ポンプ装置、特にアルミニウム合金製のロータ部材であることが好ましい。
燃料電池では生成水が回転軸やロータに接触することで生じる腐食からアルミニウム部材を保護するために樹脂コーティングすることが好ましく、またその機能的な面からも高い耐熱性、耐久性が要求されるため、本実施形態の方法で製造されることが適している。
本実施形態のアルミニウム合金は、Siを0.5重量%以上16重量%以下及びCuを0.5重量%以上5.5重量%以下含むアルミニウム合金である。
かかるアルニミウム合金は軽量且つ耐久性が高く車載用流体機械部品の材料として適している。
より具体的には、Siを0.5重量%以上16重量%以下、又は、10.0重量%以上13.0重量%以下、又は、11.0重量%以上12.0重量%以下、Cuを0.5重量%以上5.5重量%以下、又は、3.0重量%以上5.5重量%以下、又は、4.0重量%以上4.8重量%以下、含むアルミニウム合金が挙げられる。
尚、本実施形態において平均粒子径は、FE-SEM観察により計測される粒子径を意味する。
本実施形態の製造方法は、前述のアルミニウム合金の表面に、NaOHを水酸化物イオンとして5.0重量%以上9.3重量%以下と、Znイオンを1.9重量%以上3.5重量%以下と、硝酸イオンと、チオ硫酸イオンとを含むアルカリ性の表面粗化剤を接触させる第1粗化工程を含む。
本実施形態の第1粗化工程において使用される表面粗化剤はアルカリ性の液状粗化剤(以下、アルカリ性表面粗化剤ともいう。)であって以下のような各主成分を含む。
本実施形態のアルカリ性表面粗化剤はNaOHを水酸化物イオンとして5.0重量%以上9.3重量%以下、又は、5.5重量%以上8.7重量%以下含むことが挙げられる。
上記範囲でNaOHを含むことで、本実施形態のアルミニウム合金表面を適切に粗化することができ樹脂との密着性を向上させることができる。
本実施形態のアルカリ性表面粗化剤はZnイオンを1.9重量%以上3.5重量%以下、又は、2.0重量%以上3.3重量%以下、又は、2.5重量%位以上3.0重量%以下含むことが挙げられる。
上記範囲でNaOHを含むことで、本実施形態のアルミニウム合金表面を適切に粗化することができ樹脂との密着性を向上させることができる。
Znイオン源の例としては、硝酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、臭化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛等が挙げられる。
本実施形態の表面粗化剤は、硝酸イオンを含む。硝酸イオンの含有量は限定されるものではないが、例えば、1.5重量%以上5.0重量%以下、又は、2.0重量%以上3.0重量%以下等が挙げられる。
上記範囲で硝酸イオンを含むことで、本実施形態のアルミニウム合金表面を適切に粗化することができ樹脂との密着性を向上させることができる。
硝酸イオン源の例としては、硝酸、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸アンモニウム、硝酸亜鉛等が挙げられる。
本実施形態の表面粗化剤は、チオ硫酸イオンを含む。チオ硫酸イオンの含有量は限定されるものではないが、0.1重量%以上0.8重量%以下、又は、0.2重量%以上0.7重量%以下等が挙げられる。
上記範囲でチオ硫酸イオンを含むことで、本実施形態のアルミニウム合金表面を適切に粗化することができ樹脂との密着性を向上させることができる。
チオ硫酸イオン源の例としては、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸マグネシウム等のチオ硫酸塩等が挙げられる。
アルカリ性表面粗化剤は各成分をイオン交換水等に溶解させることにより容易に調製することができる。各成分を溶媒に溶解させることでアルカリ性になるように調整することもでき、又は適切なpH調整剤等を添加することでアルカリ性に調整することもできる。
アルカリ性表面粗化剤のpHは特に限定されるものではないがpH12以上の範囲であることが挙げられる。
本実施形態の製造方法は、前記第1粗化工程を経たアルミニウム合金の表面に、酸濃度として2.4重量%以上4.2重量%以下の塩酸と、アルミニウム濃度として4.1重量%以上5.8重量%以下の塩化アルミニウムとを含む酸性表面粗化剤を接触させる第2粗化工程を含む。
本実施形態の第2粗化工程において使用される表面粗化剤は酸性の液状粗化剤(以下、酸性表面粗化剤ともいう。)であって、塩酸及び塩化アルミニウムを含む。
本実施形態の酸性の表面粗化剤は、塩酸を酸濃度として2.4重量%以上4.2重量%以下、又は3.0重量%以上3.6重量%以下含む。
例えば、35%塩酸を使用した場合、上記酸濃度の範囲になるようにするためには、6.8重量%以上11.9重量%以下含むことになる。
本実施形態の酸性表面粗化剤は、塩化アルミニウムをアルミニウム濃度として4.1重量%以上5.8重量%以下、又は4.5重量%以上5.2重量%以下含む。
また、酸性表面粗化剤は各成分をイオン交換水等に溶解させることにより容易に調製することができる。各成分を溶媒に溶解させることで酸性になるように調整することもでき、又は適切なpH調整剤等を添加することで酸性に調整することもできる。
酸性表面粗化剤のpHは特に限定されるものではないがpH1以下の範囲であることが挙げられる。
本実施形態の製造方法は、第2粗化工程を経たアルミニウム合金の表面を超音波洗浄する洗浄工程を含む。
かかる洗浄によって、第1、第2粗化工程において付着した各表面粗化剤をアルミニウム合金表面から除去でき、後に行う接合後のアルミニウム合金と樹脂組成物との密着性が良好になり、高い接合強度が得られる。
硝酸水溶液を接触させることは任意であるが、かかる接触処理を行うことで、超音波洗浄による洗浄効果がより高くなる。
かかる硝酸水溶液を接触させる方法は特に限定されるものではなく、公知の方法で接触させることができる。例えば、浸漬、スプレー等による方法が挙げられる。処理温度、処理時間も適宜調整することができる。例えば、処理温度25~35℃、処理時間30~60秒程度が挙げられる。
本実施形態の製造方法は、前記洗浄工程を経たアルミニウム合金の表面に樹脂組成物を接合させる接合工程を含む。
本実施形態で用いる樹脂組成物としてはアルミニウム合金に接合可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、PPS(ポリフェニレンスルフィド)樹脂、液晶ポリマー、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、エポキシ樹脂、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)樹脂、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)樹脂又はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂等が挙げられる。
中でも、PPS樹脂、液晶ポリマーが車載用流体機械の部品において使用される材料として適している。
例えば、期待しうる接合強度は、樹脂の種類によっても相違するため、樹脂の種類に応じて所望の接合強度が得られる接合条件を設定することが好ましい。
樹脂組成物として、液晶ポリマーを用いた場合には、例えば、接合後のアルミニウム合金と樹脂組成物との接合強度が10MPa以上、好ましくは13MPa以上になるような条件を設定することが好ましい。
本実施例で使用するアルカリ性の表面粗化剤及び酸性の表面粗化剤を準備した。
各表面粗化剤は、以下の材料を表1に記載の各成分の濃度(イオン換算値、酸濃度換算値で表示)になるようにイオン交換水に溶解した水溶液である。
NaOH:キシダ化学社製、試薬(特級)
硝酸亜鉛・6水和物:キシダ化学社製、試薬(1級)
チオ硫酸ナトリウム・5水和物:富士フィルム和光純薬社製、試薬(特級)
35%塩酸: キシダ化学社製、試薬(特級)
塩化アルミニウム・6水和物:富士フィルム和光純薬社製、試薬(特級)
尚、実施例比較例で使用するアルカリ性の表面粗化剤のpHはいずれも14以上、酸性の表面粗化剤のpHはいずれも1以下であった。
表2に記載の組成からなる以下の合金の試料を準備した。
Al-Si-Cu合金:T6調質材
Al-Cu合金(A2014):T6調質材
Al-Si合金(A4032):T6調質材
純アルミ(A1050):H24調質材
尚、Al-Si-Cu合金中に含まれるSi粒子の平均粒子径は10μm以下、CuAl2の平均粒子径は2μm以下である。
樹脂組成物として液晶ポリマー及びPPS樹脂を準備した。
各表面粗化剤を用いて各アルミウム材に対して表3に示す処理を行った。
尚、第2粗化工程の処理時間は、アルミニウム材の材質によって適切な粗化状態(エッチング量)になるよう適宜調整した。また、一部の比較例においては表4に示すように一部の工程を省いて処理を行った。
アルミニウム-樹脂複合体は、図1~図2に示すように、一辺が45mm、幅が18mm、厚みが1.5mmの長方形のアルミニウム板の18mmの辺側の一面に、長さ45mm、幅10mm、厚み3mmの樹脂片を、重なり部分5mm×10mmとなるように取り付けられた状態で成形された。
各アルミニウム片のエッチング量を以下の方法で算出した値をμmで表した。
エッチング量=処理前後の重量差÷アルミニウムの比重÷処理表面積
処理前後の重量差:各アルミニウム材を上記表3に記載の第1粗化工程の前と洗浄工程の後に測定した重量差
アルミニウムの比重:2.7
処理表面積:アルミニウム板の表面積45×18×2+45×1.5×2+18×1.5×2
尚、エッチング量は、アルカリ性の表面粗化剤と酸性の表面粗化剤で処理した後に測定した結果であるため、両粗化処理によるエッチング量の合計である。
結果を表4に示す。
実施例では対応する合金と樹脂との組み合わせの比較例に比べて引張剪断強度が高かった。すなわち、高い接合強度が得られるアルミニウム-樹脂複合体であることが示された。
実施例1のAl-Si-Cu合金に対して、各表面粗化剤を用いて表3に示す処理を施した場合、図3に示す通り、表面にマイクロオーダーの凹凸が形成されるとともに、マイクロオーダーの凹凸の周囲にナノオーダーの凹凸が形成されることになる。このように合金(アルミニウム材)の表面にマイクロオーダーの凹凸及びナノオーダーの凹凸の2種類の凹凸が形成されることにより、樹脂が各凹凸に入り込み、アンカー効果により接合強度を高めることができている。
Claims (10)
- 車載用流体機械の部品であるアルミニウム-樹脂複合体の製造方法であって、
Siを0.5重量%以上16重量%以下及びCuを0.5重量%以上5.5重量%以下含むアルミニウム合金の表面に、NaOHを水酸化物イオンとして5.0重量%以上9.3重量%以下と、Znイオンを1.9重量%以上3.5重量%以下と、硝酸イオンと、チオ硫酸イオンとを含むアルカリ性の表面粗化剤を接触させる第1粗化工程と、
前記第1粗化工程を経たアルミニウム合金の表面に、酸濃度として2.4重量%以上4.2重量%以下の塩酸と、アルミニウム濃度として4.1重量%以上5.8重量%以下の塩化アルミニウムとを含む酸性の表面粗化剤を接触させる第2粗化工程と、
前記第2粗化工程を経たアルミニウム合金の表面を超音波洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程を経たアルミニウム合金の表面に樹脂組成物を接合させる接合工程と、を含むアルミニウム-樹脂複合体の製造方法。 - 前記アルミニウム合金はT3調質、T6調質又はT7調質のいずれかの調質材である請求項1に記載のアルミニウム-樹脂複合体の製造方法。
- 前記樹脂組成物は、PPS樹脂、液晶ポリマー、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、PEEK樹脂、PBT樹脂、エポキシ樹脂、ETFE樹脂、PFA樹脂又はPTFE樹脂のいずれかの樹脂である請求項1又は2に記載のアルミニウム-樹脂複合体の製造方法。
- 前記アルミニウム合金は、平均粒径が10μm以下のSi及び平均粒径が2μm以下のCuAl2を含む請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアルミニウム-樹脂複合体の製造方法。
- 前記アルミニウム合金は、Siを10.0重量%以上13.0重量%以下及びCuを3.0重量%以上5.5重量%以下含む請求項1乃至4のいずれか一項に記載のアルミニウム-樹脂複合体の製造方法。
- 前記洗浄工程において、アルミニウム合金の表面に酸濃度10.0重量%以上50.0重量%以下である硝酸水溶液を接触させた後に、前記超音波洗浄を行う、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアルミニウム-樹脂複合体の製造方法。
- 前記接合工程において、溶剤に前記樹脂組成物を溶解又は分散させて塗布するコーティング法又は射出成型法のいずれかによってアルミニウム合金の表面に樹脂組成物を接合させる請求項1乃至6のいずれか一項に記載のアルミニウム-樹脂複合体の製造方法。
- 前記樹脂組成物は、液晶ポリマーであって、接合後のアルミニウム合金と樹脂組成物との接合強度は10MPa以上である請求項1乃至7のいずれか一項に記載のアルミニウム-樹脂複合体の製造方法。
- 前記樹脂組成物は、PPS樹脂であって、接合後のアルミニウム合金と樹脂組成物との接合強度は30MPa以上である請求項1乃至7のいずれか一項に記載のアルミニウム-樹脂複合体の製造方法。
- 前記車載用流体機械は、燃料電池車用の水素循環ポンプである請求項1乃至9のいずれか一項に記載のアルミニウム-樹脂複合体の製造方法。
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