JP2018044702A - 化学蓄熱反応器、及び化学蓄熱システム - Google Patents

化学蓄熱反応器、及び化学蓄熱システム Download PDF

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Abstract

【課題】化学蓄熱反応器において、熱交換器と蓄熱材層との間の熱交換効率の向上を図る。
【解決手段】反応器は、水蒸気と結合することで発熱し、水蒸気が脱離して蓄熱する蓄熱材成形体が拘束枠44の内部に配置された蓄熱材層32と、蓄熱材層32に隣接して配置され、複数の細孔が形成されたフィルタ34と、内部に熱媒体が流れる空間を有し、少なくとも一方の外面に、フィルタ34と接触する凸部51、及びフィルタ34とは底部52が離間してフィルタ34との間に水蒸気を流す反応媒体通路57を形成する凹部52が形成された熱交換器50とを含んで構成される積層体60が、複数積層された積層ユニット90と、積層ユニット90を内部に収容する容器とを有している。
【選択図】図4

Description

本発明は、化学反応によって蓄熱する化学蓄熱反応器、及び化学蓄熱システムに関する。
特許文献1に記載の構成では、蓄熱材層、フィルタ、反応媒体拡散層、及び熱交換部が積層されることで化学蓄熱反応器の積層体が形成されており、積層体が複数個積層された積層ユニットが容器内に収容されている。
蓄熱を行う場合には、熱交換器に加熱された熱媒体を流して蓄熱材を加熱する。蓄熱材が加熱により脱水反応を生じることで、蓄熱材に蓄熱が行われる。
特開2014−126293号公報
従来の化学蓄熱反応器では、蓄熱材層の一方側に熱交換器が直接的に接触し、蓄熱材層の他方側には、蒸気を流す流路の形成された金属材料からなるプレート状の反応媒体拡散層を介して別の熱交換器が配置されている。
蓄熱材層と、蓄熱層の一方側に配置される熱交換器とは、直接的に接触しているので、熱交換器の熱を効率的に蓄熱材層に伝達することができる。しかし、蓄熱材層の他方側に配置される熱交換器は、蓄熱材層との間に蒸気を流す流路の形成された反応媒体拡散層が介在しているため、一方側の熱交換器に比較して蓄熱材層への熱の伝達効率が低下する。
このため、従来の化学蓄熱反応器では、熱交換器と蓄熱材層との間の熱交換効率を向上するには改善する余地があった。
本願発明の課題は、化学蓄熱反応器、及び化学蓄熱システムにおいて、熱交換器と蓄熱材層との間の熱交換効率の向上を図ることである。
請求項1に記載の化学蓄熱反応器は、反応媒体と結合することで発熱し、反応媒体が脱離して蓄熱する蓄熱材が拘束枠内部に配置された蓄熱材層と、前記蓄熱材層に隣接して配置され、複数の孔が形成されたフィルタと、内部に熱媒体が流れる空間を有し、少なくとも一方の外面に延設され、前記フィルタと接触する凸部、及び前記フィルタとは底部が離間して前記フィルタとの間に前記反応媒体を流す反応媒体通路を形成する凹部が形成された熱交換器と、を含んで構成される積層体が、複数積層された積層ユニットと、前記積層ユニットを内部に収容する容器と、を有する。
請求項1の化学蓄熱反応器は、蓄熱材層と熱交換器とがフィルタを介して隣接しており、該熱交換器には、フィルタと接触する凸部、及びフィルタとは底部が離間してフィルタとの間に反応媒体を流す反応媒体通路を形成する凹部が形成されているので、例えば、蓄熱材を発熱させる場合には、熱交換器の凹部とフィルタとの間に形成された反応媒体通路に反応媒体を流す。反応媒体通路に流された反応媒体は、反応媒体通路の通路壁面の一部を構成するフィルタを通過し、フィルタを通過した反応媒体と蓄熱材とが結合することで、蓄熱材が発熱する。
なお、蓄熱材に蓄熱を行う場合には、熱交換器の内部の空間に熱媒体を流す。これにより、熱交換器の熱がフィルタを介して蓄熱材に伝達される。蓄熱材が加熱されると、反応媒体が脱離して蓄熱が行われる。蓄熱材から離脱した反応媒体は、フィルタを通過し、反応媒体通路を流れて外部へ排出することができる。
従来の化学蓄熱反応器では、熱交換器と蓄熱材層との間に、反応媒体を流す流路の形成された反応媒体拡散層が介在していたが、請求項1の化学蓄熱反応器では、熱交換器の表面を凹凸させることで反応媒体通路を構成しているので、熱交換器と蓄熱材層との間に従来の反応媒体拡散層を必要とせず、熱交換器と蓄熱材層との間の熱交換効率の向上を図ることができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の化学蓄熱反応器において、前記凸部、及び前記凹部は、前記熱交換器の両面に形成され、前記熱交換器の一方の外面と他方の外面とは、非対称に形成されている。
熱交換器の一方の外面と他方の外面とを、非対称に形成することで、熱交換器の一方側と他方側とで、反応媒体通路の流路断面積を変えることができる。反応媒体通路の流路断面積を変えることで、反応媒体通路を流れる反応媒体の通過抵抗や圧力損失を変えることができる。また、熱交換器の一方の外面と他方の外面とを、非対称に形成することで、一方に配置される蓄熱材層と他方側に配置される蓄熱材層との伝熱面積を変え、熱交換器の一方側に配置される蓄熱材層と熱交換器の他方側に配置される蓄熱材層との間で、熱交換特性を変えることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の化学蓄熱反応器において、前記熱交換器の他方の外面は平坦面とされ、前記蓄熱材層と直接的に接触している。
請求項3に記載の化学蓄熱反応器では、熱交換器の他方の外面が平坦面とされ、他方の外面が蓄熱材層と直接的に接触しているため、熱交換器の他方側において、凹凸が無い場合に比較して蓄熱材層との接触面積を大きくとることができる。
また、熱交換器の他方側の外面と蓄熱材層とを直接的に接触させているので、熱交換器と蓄熱材層との間にフィルタ等の他の部材が介在する場合に比較して、熱伝達が良好になる。これにより、熱交換器の他方側と蓄熱材との熱交換効率を向上することができる。
また、蓄熱材層の両側を熱交換器としているので、熱交換効率を向上することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の化学蓄熱反応器において、前記熱交換器の内部に設けられ、一端側から他端側に向けて延びる複数の前記凸部の熱交換器内部側に形成される複数の熱媒体通路と、前記熱交換器の一端側に設けられ、前記熱交換器の外部から内部へ前記熱媒体を流入させる流入部と、前記熱交換器の他端側に設けられ、前記熱交換器の内部から外部へ前記熱媒体を排出させる排出部と、前記熱交換器の内部に設けられ、前記流入部から流入した前記熱媒体を前記複数の熱媒体通路に分配して流す流入部側マニホールドと、前記熱交換器の内部に設けられ、複数の前記熱媒体通路を流れた後の前記熱媒体を合流させて前記排出部へ向けて集合させる排出部側マニホールドと、を有する。
請求項4に記載の化学蓄熱反応器では、熱交換器の流入部から熱媒体を流入させると、熱媒体は流入部側マニホールドを介して複数の熱媒体通路に分配される。複数の熱媒体通路を流れた熱媒体は排出部側マニホールドで合流して排出部へ向けて集合し、排出部から排出される。これにより、熱交換器に設けられた複数の熱媒体通路に対して、熱媒体を均等に流すことが可能となる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の化学蓄熱反応器において、前記凸部は、側面に少なくとも一つの段部が形成されている。
熱交換器を構成する部材を分離しないように拘束したり、蓄熱材が反応媒体と結合して膨張すると、熱交換器が圧縮力を受けることになるため、熱交換器は圧縮力によって変形しないように構成することが好ましい。
請求項54記載の化学蓄熱反応器では、凸部の側面に少なくとも一つの段部を形成することで、凸部の高さ方向(熱交換器の積層方向)の圧縮強度を高めることができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の化学蓄熱反応器において、前記熱交換器は、金属板で形成され一方側が開放された箱状の第1部材と第2部材とを互いに向かい合わせて溶接、またはロー付けにより接合することで形成されている。
請求項6に記載の化学蓄熱反応器では、熱交換器を金属板で形成したので、強度と軽量化を両立することが可能となる。第1部材と第2部材は、金属板で形成され一方側が開放された箱状とされているので、金属板のプレス加工により成形することができる。また、
金属板で形成された第1部材と第2部材とは、溶接、またはロー付けにより接合することができるので、低コストで中空の熱交換器を製造することが可能となる。
請求項7に記載の化学蓄熱システムは、請求項1〜6の何れか1項に記載の化学蓄熱反応器と、前記化学蓄熱反応器の前記反応媒体通路への反応媒体の供給及び前記反応媒体通路からの反応媒体の受け取りを行う蒸発凝縮器と、を有する。
請求項7に記載の化学蓄熱システムは、蒸発凝縮器を備えているため、蓄熱材を発熱させる場合に反応媒体通路へ蒸発した反応媒体を供給することができる。また、蓄熱材から反応媒体を離脱させた場合、離脱した反応媒体を受け取り、凝縮することができる。
本発明の化学蓄熱反応器、及び化学蓄熱システムによれば、熱交換器と蓄熱材層との間の熱交換効率の向上を図ることができる。
(A)、(B)は、第1実施形態に係る化学蓄熱システムを示した構成図である。 第1実施形態に係る反応器を示した斜視図である。 第1実施形態に係る反応器に備えられた積層ユニットを示した斜視図である。 積層体を示した斜視図である。 (A)は熱流動部を示した斜視図であり、(B)は図5(A)に示す熱流動部の5(B)−5(B)線断面図である。 熱流動部を示した分解斜視図である。 図5(A)に示す熱流動部の7−7線断面図である。 図5(A)に示す熱流動部の8−8線断面図である。 (A)は、第2の実施形態に係る熱流動部を示した水平方向断面図であり、(B)は、図9(A)に示す熱流動部の9(B)−9(B)線断面図である。 (A)は第3の実施形態に係る熱流動部を示した斜視図であり、(B)は図10(A)に示す熱流動部の10(B)−10(B)線断面図である。 (A)は第4の実施形態に係る熱流動部を示した斜視図であり、(B)は図11(A)に示す熱流動部の11(B)−11(B)線断面図である。 (A)は第5の実施形態に係る熱流動部を示した斜視図であり、(B)は図12(A)に示す熱流動部を上下に分解した断面図である。 (A)は第6の実施形態に係る熱流動部を示した斜視図であり、(B)は図13(A)に示す熱流動部を上下に分解した断面図である。 (A)は第7の実施形態に係る熱流動部を示した斜視図であり、(B)は図14(A)に示す熱流動部を上下に分解した断面図である。 (A)は第8の実施形態に係る熱流動部を示した斜視図であり、(B)は図15(A)に示す熱流動部を上下に分解した断面図である。 (A)は第9の実施形態に係る熱流動部を示した斜視図であり、(B)は図16(A)に示す熱流動部を上下に分解した断面図である。
[第1実施形態]
図1乃至図8にしたがって、本発明の第1実施形態に係る化学蓄熱システム10を説明する。なお、図中に示す矢印Hは装置上下方向(鉛直方向)を示し、矢印Wは装置幅方向(水平方向)を示し、矢印Dは装置奥行方向(水平方向)を示す。
(全体構成)
図1(A)、(B)に示すように、本実施形態に係る化学蓄熱システム10は、水の蒸発、水蒸気(反応媒体の一例)Wの凝縮が行われる蒸発凝縮器12と、化学蓄熱反応器の一例としての反応器20と、蒸発凝縮器12と反応器20とを連通する連通路14とを含んで構成されている。
(蒸発凝縮器)
蒸発凝縮器12は、貯留した水を蒸発させて反応器20に供給する(水蒸気Wを生成する)蒸発部、反応器20から受け取った水蒸気Wを凝縮する凝縮部、及び水蒸気Wが凝縮された水を貯留する貯留部、としての各機能を備えている。
また、蒸発凝縮器12は、内部に水が貯留される容器16を備えており、この容器16内には、水蒸気Wを凝縮する、又は水を蒸発するのに用いる熱媒流路17の一部が配置されている。さらに、熱媒流路17は、容器16内における少なくとも気相部16Aを含む部分で熱交換を行うように配置されている。そして、凝縮時には低温媒体、蒸発時には中温媒体が、熱媒流路17を流れるようになっている。
(連通路)
連通路14は、蒸発凝縮器12(容器16)と反応器20(後述する反応容器22)との連通、非連通を切り替えるための開閉弁19を備えている。そして、容器16、反応容器22、連通路14、及び開閉弁19は、互いの接続部位が気密に構成されており、これらの内部空間が予め真空脱気されている。
(反応器)
図2に示すように、反応器20は、積層ユニット90と、積層ユニット90を密閉状態で収容する反応容器22とを含んで構成されている。
(反応容器)
図2に示すように、反応容器22は、直方体状とされ、上方側が開放される箱状の本体部22Aと、蓋部材22Bとを備えている。そして、反応容器22の内部は、水蒸気(反応媒体の一例)が流れる反応媒体流動部26とされ、前述したように内部が真空脱気されている。
(積層ユニットの全体構成)
図3、及び図4に示すように、積層ユニット90は、発熱又は蓄熱するための蓄熱材層32、フィルタ34、及び熱交換部の一例としての熱流動部50とを積層した積層体60が、複数積層されている。フィルタ34は、蓄熱材層32の上側、及び下側に配置されており、蓄熱材層32、及びフィルタ34は、装置上下方向から見て矩形状とされ、本実施形態においては、非接合状態(溶接などで固定されていない状態)で積層されている(所謂積層構造)。
(蓄熱材層の構成)
図3に示すように、蓄熱材層32は、ブロック状の蓄熱材成形体40と、蓄熱材成形体40が内部に配置される枠状の拘束枠の一例としてのフレーム部材44とを備えている。
蓄熱材成形体40には、一例として、アルカリ土類金属の酸化物の1つである酸化カルシウム(CaO:蓄熱材の一例)の成形体が用いられている。この成形体は、例えば、酸化カルシウム粉体をバインダ(例えば粘土鉱物等)と混練し、焼成することで、略矩形ブロック状に形成されている。
ここで、蓄熱材成形体40は、水和に伴って膨張して放熱(発熱)し、脱水に伴って蓄熱(吸熱)するものであり、以下に示す反応で放熱、蓄熱を可逆的に繰り返し得る構成とされている。
CaO + H2O ⇔ Ca(OH)2
この式に蓄熱量、発熱量Qを併せて示すと、
CaO + H2O → Ca(OH)2 + Q
Ca(OH)2 + Q → CaO + H2O
となる。
なお、一例として、蓄熱材成形体40の1kg当たりの蓄熱容量は、1.86[MJ/kg]とされている。
また、本実施形態において、蓄熱材成形体40を構成する蓄熱材の粒径とは、蓄熱材が粉体の場合はその平均粒径、粒状の場合は造粒前の粉体の平均粒径とする。これは、粒が崩壊する場合、前工程の状態に戻ると推定されるためである。
また、フレーム部材44は、装置上下方向から見て矩形枠状とされており、蓄熱材成形体40は、フレーム部材44内に密に配置されるようになっている。
(フィルタ)
フィルタ34は、熱流動部50と蓄熱材層32との間に挟まれ、一例としてφ200〔μm〕の微小貫通孔(図示せず)が、フィルタ全面に多数形成されたエッチングフィルターである。
そして、フィルタ34は、蓄熱材成形体40を構成する蓄熱材の平均粒径より小さいろ過精度を有している。これにより、フィルタ34は、蓄熱材成形体40を構成する蓄熱材の平均粒径より小さい流路を水蒸気が通過するのを許容する一方、平均粒径よりも大きい蓄熱材の通過を制限するようになっている。
なお、ろ過精度とは、ろ過効率が50〜98%となる粒子径のことであり、ろ過効率とは、ある粒子径の粒子に対する除去効率である。
(熱流動部)
熱流動部50は、図3、及び図4に示すように、フィルタ34を介して蓄熱材反応部30に隣接して積層されている。熱流動部50は、図5〜図8に示すように、装置上下方向から見て矩形状とされた金属板からなる中空の箱状部材であり、図6に示すように、片側が開放された2つの部材50aを溶接することで箱形状を形成している。
熱流動部50の上面、及び下面には、一端側から他端側へ向けて延びて頂部51Aが平坦とされた複数の凸部51が形成されており、凸部51と凸部51との間には底部52Aが平坦とされた凹部52が形成されている。
熱流動部50の一方側の側壁50Aには、熱流動部50の内部に熱媒体を流入させるための熱媒体流入パイプ53Aが溶接等で取り付けられており、熱流動部50の他方側の側壁50Bには、熱流動部50の内部に流入させた熱媒体を排出させるための熱媒体排出パイプ53Bが溶接等で取り付けられている。
熱流動部50の内部には、矩形の仕切り板54が配置されている。仕切り板54は、上側の凹部52の底部52Aと下側の凹部52の底部52Aとに挟まれており、これにより、熱流動部50の内部には、凸部51と仕切り板54との間に、熱流動部50の一端側から他端側へ延びる熱媒体通路55が形成されている。
熱流動部50の一方側の側壁50Aから他方側の側壁50Bまでの内寸法長さL1に対して、仕切り板54の長さL2は短くなっており、熱流動部50の一方側の側壁50Aと仕切り板54の一端54Aとの間には、熱媒体が熱媒体通路55と直交する方向に流れる流入側幅方向熱媒体通路56Aが形成されており、熱流動部50の他方側の側壁50Bと仕切り板54の他端54Bとの間には、熱媒体が熱媒体通路55と直交する方向に流れる排出側幅方向熱媒体通路56Bが形成されている。
これら流入側幅方向熱媒体通路56A、及び排出側幅方向熱媒体通路56Bは、複数の熱媒体通路55と連通しており、流入側幅方向熱媒体通路56Aは本発明の流入部側マニホールド、排出側幅方向熱媒体通路56Bは本発明の排出部側マニホールドに相当している。
したがって、本実施形態の熱流動部50では、熱媒体流入パイプ53Aから熱流動部50の内部に熱媒体を流入させると、熱媒体は,流入側幅方向熱媒体通路56Aを流れた後、複数の熱媒体通路55に別れて流入し、各々の熱媒体通路55を流れた後に排出側幅方向熱媒体通路56Bに流入する。そして、排出側幅方向熱媒体通路56Bに流入した熱媒体は、熱媒体排出パイプ53Bを介して外部へ排出される。
図3、及び図4に示すように、本実施形態の積層ユニット90は、3つの蓄熱材反応部30と4つの熱流動部50とがフィルタ34を挟んで交互に積層されており、これにより、熱流動部50の凹部52とフィルタ34との間には、蓄熱材層32の蓄熱材成形体40へ供給される反応媒体としての水蒸気、又は蓄熱材層32の蓄熱材成形体40から排出される水蒸気が装置奥行方向Dに沿って流れる反応媒体通路57が形成されている。
なお、積層ユニット90の積層方向両側には、矩形の挟持プレート98が配置されており、積層ユニット90は、金属製のバンドである拘束部材58で巻回されて各部材が分離しないように拘束されている。
(熱媒体流路)
熱媒が流れる熱媒体流路70は、図2に示すように、反応容器22を構成する蓋部材22Bを貫通するように装置上下方向に延びる一対の配管70A、70Bを備えている。
配管70Aは、熱流動部50の熱媒体流入パイプ53Aに接続され、配管70Bは、熱流動部50の熱媒体排出パイプ53Bに接続されている。
(化学蓄熱システムの作用、効果)
次に、化学蓄熱システム10の作用、効果について説明する。
化学蓄熱システム10において反応器20に蓄熱された熱を蓄熱材層32から発熱(放熱)させる際には、図1(B)に示すように、切替部材76により熱媒体流路70の連通先が熱利用対象物96に切り替えられる。さらに、開閉弁19を開放し、この状態で、蒸発凝縮器12の熱媒流路17に中温媒体を流し、液相部16Bの水を蒸発させる。そして、生成された水蒸気Wが連通路14内を矢印D方向に移動して、反応容器22内に供給される。
続いて、反応容器22内では、供給された水蒸気Wが反応媒体流動部26を通り、反応媒体通路57に流れ込む。そして、水蒸気Wがフィルタ34を通過して蓄熱材層32の蓄熱材成形体40と接触することにより、蓄熱材層32の蓄熱材成形体40は、水和反応を生じつつ発熱(放熱)する。この熱は、熱流動部50の内部を流れる熱媒体によって、熱利用対象物96に輸送される。
熱流動部50では、熱媒体流入パイプ53Aから熱媒体が流入し、熱媒体は流入側幅方向熱媒体通路56Aを流れた後、複数の熱媒体通路55に別れて流入し、各々の熱媒体通路55を流れた後に排出側幅方向熱媒体通路56Bに流入する。そして、排出側幅方向熱媒体通路56Bに流入した熱媒体は、熱媒体排出パイプ53Bを介して外部へ排出される。これにより、熱流動部50は、蓄熱材成形体40からの熱を、各々の凸部51から効率的に受け取ることができる。
一方、化学蓄熱システム10において蓄熱材層32の蓄熱材成形体40に熱を蓄熱させる際には、図1(A)に示すように、切替部材76により熱媒体流路70の連通先が熱源94に切り替えられる。さらに、開閉弁19を開放し、この状態で、熱流動部50の内部に熱源94によって加熱された熱媒体が流れる。そして、熱媒体の熱によって蓄熱材成形体40が脱水反応を生じ、この熱が蓄熱材成形体40に蓄熱される。前述したように、本実施形態の熱流動部50では、内部に流入させた熱媒体を、各々の熱媒体通路55に流すことができるので、熱媒体の熱を各々の凸部51から効率的に蓄熱材成形体40に伝達させることができる。
さらに、蓄熱材成形体40から離脱された水蒸気Wは、フィルタ34から反応媒体通路57に流れ込む。反応媒体通路57に流れ込んだ水蒸気Wは、反応媒体流動部26を通り、図1(A)に示すように、連通路14を矢印E方向に流れて蒸発凝縮器12内に流れ込む。そして、蒸発凝縮器12の気相部16Aにおいて、熱媒流路17を流れる冷媒によって水蒸気Wが冷却され、凝縮された水が容器16の液相部16Bに貯留される。
このようにして、本実施形態の積層ユニット90は、蓄熱材を加熱して脱水反応を生じさせることで、蓄熱材に蓄熱を行い、蓄熱材に水蒸気を付与して水和反応を生じさせることで発熱を行わせ、発生した熱を熱利用対象物96で利用することができる。
また、従来の化学蓄熱システムで用いていた反応器では、蓄熱材層の一方側に水蒸気を通す通路を形成した反応媒体拡散層を配置し、蓄熱材層の他方側に熱交換器としての熱流動部を配置していたが、本実施形態の反応器20では、熱流動部50の外面を凹凸形状として水蒸気を通す反応媒体通路57を形成したので、従来の化学蓄熱システムで用いていた蒸気流路を備えた反応媒体拡散層が不要となり、部品点数の低減が図られる。これにより、部品コストの低減、及び反応器20の軽量化を図ることができる。さらに、従来の反応媒体拡散層が不要となったことで、反応媒体拡散層を減らした分の顕熱分が減り、蓄熱材成形体40と熱流動部50との間の熱交換効率を向上することができる。
本実施形態の反応器20では、蓄熱材成形体40の上下両側に、熱流動部50の凹部52とフィルタ34との間に形成された反応媒体通路57が配置されているので、蓄熱材成形体40の上下方向から水蒸気を供給でき、また、蓄熱材成形体40から排出される水蒸気を上下の反応媒体通路57へ排出することができる。したがって、蓄熱材成形体40の片側のみに反応媒体通路57を配置した場合に比較して、蓄熱材成形体40に対して水蒸気の出入りを効率的に行うことができる。なお、蓄熱材成形体40の中で発生した水蒸気が反応媒体通路57へ排出され易いということは、ガス(水蒸気)拡散性が向上することを意味する。これにより、本実施形態の反応器20は、蓄熱材成形体40の水和反応、及び脱水反応を迅速に行うことが可能となる。
ところで、従来装置の反応器では、蓄熱材成形体の一方の片側に熱流動部が配置され、蓄熱材成形体の他方の片側にフィルタ、及び蒸気流路を備えた反応媒体拡散層を介して他の熱流動部が配置された構成であったため、蓄熱材成形体と一方の熱流動部との間の熱交換効率に比較して、蓄熱材成形体と他の熱流動部との間の熱交換効率が低くなっていた。しかしながら、本実施形態の反応器20では、蓄熱材成形体40の上下両側にフィルタ34を介して熱流動部50が配置されており、蓄熱材成形体40と熱流動部50との間に、従来装置で用いていた反応媒体拡散層が介在しないので、蓄熱材成形体40と上下両方の熱流動部50との間で効率的に熱伝達を行うことができる。即ち、本実施形態の反応器20は、従来よりも蓄熱材成形体40と熱流動部50との間の熱交換効率を高めることが可能となる。
なお、従来装置の反応器のように、蓄熱材成形体と熱流動部との間にフィルタ、及び蒸気流路を備えた反応媒体拡散層が介在すると、部材と部材との接触部分が多くなり、接触熱抵抗が大きくなるが、本実施形態では、蓄熱材成形体40と熱流動部50との間にはフィルタ34のみが配置されているので、従来装置の反応容器に比較して接触熱抵抗を小さくすることができ、蓄熱材成形体40と熱流動部50との間の熱抵抗を小さくすることができる。
このように、本実施形態の反応器20においては、熱交換効率が低下するのが抑制され、熱損失を抑制することができるので、本実施形態の化学蓄熱システム10は、効率的な高性能なものとなる。
さらに、本実施形態の反応器20では、従来の化学蓄熱システムで用いていた反応媒体拡散層が設けられていないため、反応媒体拡散層が無い分、積層ユニット90、及び反応容器22を小型化することができ、蓄熱密度(反応容器22の内容積に占める蓄熱材の蓄熱量)を高めることができる。これにより、小型で高性能な反応器20が実現可能となる。
[第2実施形態]
次に、図9にしたがって、本発明の第2実施形態について説明する。なお、前述した実施形態と同一部材等については、同一符号を付してその説明を省略し、前述した実施形態と異なる部分を主に説明する。
図9に示す熱流動部50は、第1実施形態の熱流動部50の変形例であり、第1の実施形態で用いられていた仕切り板54の代わりに、上側の凹部52の底部52Aと下側の凹部52の底部52Aとの間に、底部52Aの幅よりも狭い幅に形成された細長のスペーサー100を配置したものである。
本実施形態では、スペーサー100の幅を、凹部52の底部52Aの幅よりも狭くしたので、第1実施例よりも熱媒体通路55の通路断面積を拡大することができる。
[第3実施形態]
次に、図10にしたがって、本発明の第3実施形態について説明する。なお、前述した実施形態と同一部材等については、同一符号を付してその説明を省略し、前述した実施形態と異なる部分を主に説明する。
図10に示す熱流動部50は、第1実施形態の熱流動部50の変形例であり、一方の面が平坦に形成されているものである。
これにより、熱流動部50の平坦に形成された側において、フィルタ34を介さずに蓄熱材層32と直接的に接触させることができ、さらに凹部52が無い分だけ接触面積を増やすことができ、蓄熱材成形体40と熱流動部50との間の熱交換効率を高めることができる。
[第4実施形態]
次に、図11にしたがって、本発明の第4実施形態について説明する。なお、前述した実施形態と同一部材等については、同一符号を付してその説明を省略し、前述した実施形態と異なる部分を主に説明する。
本実施形態の熱流動部50は、第1実施形態の熱流動部50の変形例であり、下側の凸部51、及び凹部52の数が、上側の凸部51、及び凹部52の数よりも多く、下側の凸部51、及び下側の凹部52が、上側の凸部51、及び上側の凹部52よりも幅狭に形成されているものである。
また、本実施形態の熱流動部50は、上側の部材50aと下側の部材50aとの形状が異なっているので、上側の部材50aと下側の部材50aの各々の外周部分にフランジ50afを形成し、フランジ50af同士を溶接等で接合している。
このように、熱流動部50は、上側と下側とが非対称形状で、上側と下側とで凸部51、及び凹部52の数が異なっていてもよく、上側と下側とで凸部51、及び凹部52の幅が異なっていてもよい。
[第5実施形態]
次に、図12にしたがって、本発明の第5実施形態について説明する。なお、前述した実施形態と同一部材等については、同一符号を付してその説明を省略し、前述した実施形態と異なる部分を主に説明する。
図12に示すように、本実施形態の熱流動部50は、内部に仕切り板54が配置されておらず、上側の凹部52の底部52Aと下側の凹部52の底部52Aとが互いに接触し、上側の凸部51と下側の凸部51とで囲まれた部分が熱媒体通路55となっている。
本実施形態の熱流動部50では、前述した実施形態では設けられていた流入側幅方向熱媒体通路56A、及び排出側幅方向熱媒体通路56Bが無いため、各熱媒体通路55毎に熱媒体流入パイプ53A、及び熱媒体排出パイプ53Bが設けられている。
[第6実施形態]
次に、図13にしたがって、本発明の第6実施形態について説明する。なお、前述した実施形態と同一部材等については、同一符号を付してその説明を省略し、前述した実施形態と異なる部分を主に説明する。
図13に示すように、本実施形態の熱流動部50は、上側の部材50aの形状と下側の部材50aの形状が異なっており、下側の部材50aの凹部52は、側壁の深さ方向の中間部に段部52Bが形成されている。言い換えれば、下側の部材50aの凹部52は、幅広の凹部の底部に幅狭の凹部が形成されている形状となっている。このように、熱流動部50において、凹部52の側壁は平面に限らず、段付き形状としてもよい。
[第7実施形態]
次に、図14したがって、本発明の第7実施形態について説明する。なお、前述した実施形態と同一部材等については、同一符号を付してその説明を省略し、前述した実施形態と異なる部分を主に説明する。
図14に示すように、本実施形態の熱流動部50は、上側の部材50aと下側の部材50aとが同一形状となっており、上側の部材50aの凹部52、及び下側の部材50aの凹部52は、共に側壁の深さ方向中間部に段部52Bが形成されている。
[第8実施形態]
次に、図15にしたがって、本発明の第8実施形態について説明する。なお、前述した実施形態と同一部材等については、同一符号を付してその説明を省略し、前述した実施形態と異なる部分を主に説明する。
図15に示すように、本実施形態の熱流動部50は、上側の部材50aと下側の部材50aとが同一形状となっており、上側の部材50aの凹部52の底部52Aと下側の部材50aの凹部52の底部52Aとの間に仕切り壁102が配置されている。仕切り壁102は、上下の底部52Aに接合されており、また、長手方向端部は、一方側の側壁5Aと他方側の側壁50Bとに接合されている。これにより、熱流動部50の内部には、各々が独立した熱媒体通路55が形成され、熱媒体通路55毎に熱媒体流入パイプ53A、及び熱媒体排出パイプ53Bが設けられている。
[第9実施形態]
次に、図16にしたがって、本発明の第9実施形態について説明する。なお、前述した実施形態と同一部材等については、同一符号を付してその説明を省略し、前述した実施形態と異なる部分を主に説明する。
本実施形態の熱流動部50は、第7実施形態の変形例であり、図16に示すように、上側の部材50aの凹部52の底部52Aと下側の部材50aの凹部52の底部52Aとの間に、仕切り壁102の代わりに波板104が配置されている。波板104は、上下の底部52Aに接合されており、また、長手方向端部は、一方側の側壁5Aと他方側の側壁50Bとに接合されている。これにより、熱流動部50の内部には、各々が独立した熱媒体通路55が形成され、熱媒体通路55毎に熱媒体流入パイプ53A、及び熱媒体排出パイプ53Bが設けられている。
[その他の実施形態]
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。
蓄熱材成形体40と反応媒体通路57との間で水蒸気の行き来を効率的に行えるように、凸部51、凹部52の大きさ、数、及び形状等を調整して、水蒸気の流れる反応媒体通路57の数、断面形状、及び流路断面積を適宜変更することが好ましい。
10 化学蓄熱システム
12 蒸発凝縮器
20 反応器(化学蓄熱反応器の一例)
22 反応容器
32 蓄熱材層
34 フィルタ
40 蓄熱材成形体(蓄熱材)
44 フレーム部材(拘束枠)
50 熱流動部(熱交換器)
50a 部材(第1部材、第2部材)
51 凸部
52 凹部
52A 底部
52B 段部
53A 熱媒体流入パイプ(流入部)
53B 熱媒体排出パイプ(流出部)
55 熱媒体通路
56A 流入側幅方向熱媒体通路(流入部側マニホールド)
56B 排出側幅方向熱媒体通路(排出部側マニホールド)
57 反応媒体通路
60 積層体
90 積層ユニット
W 水蒸気(反応媒体)

Claims (7)

  1. 反応媒体と結合することで発熱し、反応媒体が脱離して蓄熱する蓄熱材が拘束枠内部に配置された蓄熱材層と、前記蓄熱材層に隣接して配置され、複数の孔が形成されたフィルタと、内部に熱媒体が流れる空間を有し、少なくとも一方の外面に延設され、前記フィルタと接触する凸部、及び前記フィルタとは底部が離間して前記フィルタとの間に前記反応媒体を流す反応媒体通路を形成する凹部が形成された熱交換器と、を含んで構成される積層体が、複数積層された積層ユニットと、
    前記積層ユニットを内部に収容する容器と、
    を有する化学蓄熱反応器。
  2. 前記凸部、及び前記凹部は、前記熱交換器の両面に形成され、
    前記熱交換器の一方の外面と他方の外面とは、非対称に形成されている、請求項1に記載の化学蓄熱反応器。
  3. 前記熱交換器の他方の外面は平坦面とされ、前記蓄熱材層と直接的に接触している、請求項1に記載の化学蓄熱反応器。
  4. 前記熱交換器の内部に設けられ、一端側から他端側に向けて延設された複数の前記凸部の熱交換器内部側に形成される複数の熱媒体通路と、
    前記熱交換器の一端側に設けられ、前記熱交換器の外部から内部へ前記熱媒体を流入させる流入部と、
    前記熱交換器の他端側に設けられ、前記熱交換器の内部から外部へ前記熱媒体を排出させる排出部と、
    前記熱交換器の内部に設けられ、前記流入部から流入した前記熱媒体を前記複数の熱媒体通路に分配して流す流入部側マニホールドと、
    前記熱交換器の内部に設けられ、複数の前記熱媒体通路を流れた後の前記熱媒体を合流させて前記排出部へ向けて集合させる排出部側マニホールドと、
    を有する、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の化学蓄熱反応器。
  5. 前記凸部は、側面に少なくとも一つの段部が形成されている、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の化学蓄熱反応器。
  6. 前記熱交換器は、金属板で形成され一方側が開放された箱状の第1部材と第2部材とを互いに向かい合わせて溶接、またはロー付けにより接合することで形成されている、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の化学蓄熱反応器。
  7. 請求項1〜6の何れか1項に記載の化学蓄熱反応器と、
    前記化学蓄熱反応器の前記反応媒体通路への反応媒体の供給及び前記反応媒体通路からの反応媒体の受け取りを行う蒸発凝縮器と、
    を有する化学蓄熱システム。
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