JP2018037562A - 磁心材料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の磁心材料は、母材である樹脂中に磁性粒子が充填されてなる磁心材料であって、磁性粒子は、磁性金属を含むアモルファス粒子であり、磁性粒子の表面がガラス相からなる酸化被膜により被覆されていることを特徴とする。磁性粒子としては、鉄を主成分とする鉄系のアモルファス粒子が好適に用いられる。
【選択図】なし
Description
本発明者は、数MHz帯における電力変換用のコアとして、カルボニル鉄粉(CIP)/エポキシ樹脂からなる鉄系メタルコンポジット鉄心(CIP/Epoxy)を提案した(非特許文献1)。この鉄系メタルコンポジット鉄心は、磁性材としてカルボニル鉄粉を使用することにより、高周波領域での渦電流損失を低減させ、効率的な電力変換を可能にしたものである。しかしながら、CIPを用いる場合は、CIPが凝集しても導通しないように、CIPの表面を高抵抗膜により被覆する必要がある(非特許文献2)。本発明者は、表面を酸化させたカルボニル鉄粉を使用した鉄系メタルコンポジット鉄心を使用すると、高周波領域で渦電流損失が低減することを確かめている(非特許文献3)。
本発明は、数MHz帯において高い透磁率を備えるとともに、渦電流損といった鉄損を抑えることができ、電力変換用として優れた磁気特性を備える磁心材料及びその好適な製造方法を提供することを目的とする。
磁性粒子が、磁性金属を含むアモルファス粒子であるとは、磁性粒子としては非晶質の形態として形成されているものであることを意味する。非晶質の磁性粒子は結晶質の磁性粒子と比較して電気抵抗が高く、高周波領域における渦電流損を抑制する上で有効である。
アモルファス粒子に含まれる磁性金属としては、Fe、Co、Ni及びこれらの合金が挙げられる。また、Fe、Co、Niに加えて、Mn、Cu、Mo、Cr等の磁性材としての透磁率を向上させる成分を含ませることができる。また、磁性金属の他に非磁性金属として、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Zn、Mn、Ba、Sr、Mo、Ag、Ga、Sc、V、Nb、Pb、In、Snを含ませることができる。
また、B、C、Ta、W 、P、Nを添加することもできる。これらの添加物は磁性金属と固溶する事によって、磁気異方性を大きくすることができる。
なお、磁性金属として鉄を主成分として含むアモルファス粒子は、飽和磁化が高いことから、磁心材料に使用する磁性粒子としてとくに好適である。
表面がガラス相からなる酸化被膜により被覆されたアモルファス粒子は、アモルファス粒子を大気中でアニール処理することによって得られる。アニール処理により形成される酸化被膜はガラス相であり、金属粒子を表面熱酸化して得られる酸化被膜よりもはるかに電気的絶縁性が高いという利点がある。なお、酸化被膜を形成する方法には、大気中におけるアニール処理の他に、酸素ガス及び/または窒素ガス等によるガスフロー熱処理や、過酸化水素水、過酸化ナトリウム、過硫酸などの酸化剤中に入れて酸化させる方法等がある。
水アトマイズ法とは別にめっき法により磁性粒子を製造する方法もある。めっき法による場合は1μm未満の小径の磁性粒子を製造することができる。粒子径の異なる磁性粒子を使用する場合に、異なる製造方法で得られる磁性粒子を利用することも可能である。なお、水アトマイズ法による場合も、得られた磁性粒子を分級することで1μm未満の磁性粒子を分別して使用することもできる。
本発明方法によれば、種々の形態の磁心材料をきわめて容易に製造することができ、電力変換用として優れた特性を備える磁心材料を提供することができる。
本発明に係る磁心材料は、磁性粒子として磁性金属を含むアモルファス粒子を母材である樹脂中に充填して形成したものである。
図1は、エポキシ樹脂の母材に磁性金属として鉄を含むアモルファス粒子(鉄系アモルファス粒子)を充填した磁心材料の断面SEM像を示す。
図1(a)は平均粒径2.56μmの鉄系アモルファス粒子、図1(b)は平均粒径3.36μmの鉄系アモルファス粒子、図1(c)は平均粒径5.16μmの鉄系アモルファス粒子を使用した例である。それぞれの磁心材料における鉄系アモルファス粒子の充填率は、図1(a)91.5wt%(65.1vol%)、(b)91.6wt%(67.5vol%)、(c)92.2wt%(68.8vol%)である。
図2に示すように、水アトマイズ法によって作製した鉄系アモルファス粒子は、球形状の粒子であり、粒径がかなりばらついている。このように、粒径にばらつきのある微粒子を母材の樹脂に充填すると、小径の微粒子が大径の微粒子の間の隙間部分に入り込むことにより、微粒子の充填率が高くなる。図1に示す磁心材料では、鉄系アモルファス粒子の充填率が65vol%を超えている。磁性微粒子の磁心材料における充填率が高くなると、磁心材料の透磁率が高くなるという利点がある。
図3(a)は、CIPの断面SEM像と、エポキシ樹脂を母材とした磁心材料のSEM像である。このカルボニル鉄粉では、鉄粉の表面に30〜50nmの厚さの酸化被膜が形成されている。酸化被膜はFe2O3とFe2O4の混相からなる。
図3(b)は、AMOの断面SEM像と、エポキシ樹脂を母材とした磁心材料のSEM像である。鉄系アモルファス粒子では、微粒子を被覆している酸化被膜はSi-Fe-Oのガラス相からなり、酸化被膜の膜厚10nm程度である。
図4は、母材に磁性粒子を充填した複合材(コンポジット)の透磁率が磁性粒子の充填率(体積比)によってどのように変化するかを示したグラフである(L. Olmedo et al., J. Appl. Phys., 73, 6992 (1993))。図4のグラフは、磁性粒子の形状を球状、粒子径を均一とし、磁性粒子の比透磁率μir=10、30、100、300の場合である。母材中における磁性粒子の充填率が高くなるとともに複合材の比透磁率が高くなる。
図4のグラフに、磁性粒子としてカルボニル鉄粉(CIP)を使用した場合と、鉄系アモルファス粒子を使用した場合を示した。磁性粒子として鉄系アモルファス粒子を使用することにより、CIPを使用した場合と比較して複合材料の比透磁率が向上する。
渦電流による損失Weは次式で与えられる。
We = K(πd Bm f)2×10-6/20ρ [W/cm3}
ここで、K:体積充填率、d:粒子径(m)、Bm:励磁磁束密度振幅(T)、f:周波数(Hz)、ρ:粒子の抵抗率(Ω・m)である。
図5(a)、(b)から、磁性粒子として鉄系アモルファス粒子を使用すると、カルボニル鉄粉を使用した場合と比較して、渦電流による損失が明らかに低減されることがわかる。
また、水アトマイズ法による鉄系アモルファス粒子と、化学めっき法による小径の鉄系アモルファス粒子を組み合わせて(混合して)利用することにより、所望の特性を備える磁心材料を構成することができる。また、水アトマイズ法と化学めっき法による鉄系アモルファス粒子を使用すると、大径と小径の鉄系アモルファス粒子が混在することで、母材中の磁性粒子の充填率が高くなり、磁心材料の比透磁率を向上させることができるという利点がある。
図6に示す測定結果は、鉄系アモルファス粒子についてはアニール温度が400℃程度で保磁力が最低になり、カルボニル鉄粉ではアニール温度が200℃程度で保磁力が最低になることを示す。図3に示したカルボニル鉄粉と鉄系アモルファス粒子は、図6中の○印で示した温度でアニール処理したものである。
図6の測定結果は、鉄系アモルファス粒子を大気中でアニール処理すると、膜厚が薄くかつ絶縁性に優れた酸化被膜が形成されることに加えて、保磁力が0.7(Oe)とカルボニル鉄粉の1/4程度にまで低減すること、すなわち、鉄系アモルファス粒子はカルボニル鉄粉と比較して、高周波領域における磁心材料として好適な特性を備えることを示す。
以下では、Ni-Znフェライト、カルボニル鉄粉コンポジット、鉄系アモルファス粒子コンポジットについて、透磁率、Q値、鉄損について測定した結果を示す。
図7は透磁率とtanδの測定結果を示す。使用したサンプルは、Ni-Znフェライトについては3種(K17(94)、K26(35)、F14F(17))、カルボニル鉄コンポジットは、54.0vol%- 1.6μm (200℃ 6hアニール)/エポキシ樹脂、鉄系アモルファス粒子コンポジットは、65.1vol%-2.56μm (300℃ 6hアニール)/エポキシ樹脂である。
図7に示す測定結果は、周波数が1〜10MHzの領域においてtanδの値が最も小さくなるのは、鉄系アモルファス粒子コンポジットであり、周波数が30MHz以上の領域においてはカルボニル鉄コンポジットであることを示す。また、周波数が6MHz程度を超えると、Ni-Znフェライトでは、磁気共鳴による損失が徐々に増大し、鉄系アモルファス粒子コンポジットでは徐々に渦電流による損失が増大する。したがって、鉄系アモルファス粒子コンポジットを高周波領域(1MNz〜数十MHz)で使用する場合には、1μmあるいはサブμmサイズのアモルファス粒子を使用して渦電流による損失を抑制するようにするのがよい。
図8の各図で、薄い色の曲線はLCR meterを使用して測定したQ値である。LCR meterによる測定は、電流を極めて低く抑えた状態でのQ値の測定に相当する。
これに対して、図8(b)、(c)のカルボニル鉄粉コンポジットと、鉄系アモルファス粒子コンポジットについては、電流値を0.1A、0.5A、1A、1.5Aと徐々に増加させても、LCR meterによるQ値の測定結果よりも下がることがなく、また周波数を徐々に高くしてもLCR meterによるQ値の測定結果とまったく変わらないという測定結果が得られた。
この測定結果は、カルボニル鉄粉コンポジットと、鉄系アモルファス粒子コンポジットの磁心については、Q値の電流依存性がほとんどなく(線形鉄心)、電力変換用の磁心材料として好適に使用することができる。また、鉄系アモルファス粒子コンポジットについては、微細なアモルファス粒子を使用して渦電流損を低減させることにより、さらに高周波領域においてQ値を向上させることが可能である。
図9から、最大磁束密度Bmが20[mT]において鉄系アモルファス粒子コンポジットの鉄損はNi-Znフェライトの約1/5にまで低減している。図9でAMOとあるのは鉄系アモルファス粒子コンポジットである。
Ni-Znフェライトからなる鉄心と、鉄系アモルファス粒子コンポジットからなる鉄心を用いた共振形コンバータを作製し、実際に駆動した際の変換効率について調べる実験を行った。
図10は、実際に作製した共振形コンバータの回路である。このコンバータは入力電圧48V、出力電圧24Vのコンバータで、リーケージトランスとして、Ni-Znフェライトコアトランス(F14F、μr=17)と、鉄系アモルファス粒子コンボジットトランス(μr=10)を使用した。
図11は、変換効率の測定結果を示すグラフである。図11に示す測定結果は、鉄系アモルファス粒子コンポジットを鉄心とするトランスの最大変換効率が91%程度であるのに対し、Ni-Znフェライトを鉄心とするトランスの最大変換効率が89%程度であり、鉄系アモルファス粒子コンポジットを鉄心とするトランスの効率が優っていることが示されている。
図12(a)、(b)に示すように、鉄系アモルファス粒子コンポジットを鉄心とした場合は、コア部分についてはほとんど温度上昇せず、巻線の部分で温度上昇し、巻線部分の温度が76.2℃(ΔT=34.4℃)であった。一方、Ni-Znフェライトを鉄心とした場合のトランス部分の温度は、コア全体が加熱され、巻線を含むコアの温度が115.5℃(ΔT=90.5℃)となり、コアの周縁部でも110.3℃となった。
本発明に係る磁心材料は、樹脂からなる母材に磁性粒子としてアモルファス粒子が充填されてなるものである。この磁心材料は、母材となる樹脂の前駆体とアモルファス粒子との混合スラリーを、磁心材料を成形するための成形型にキャスティングし、混合スラリーが硬化した後、成形型から成形品を取り出す方法によって製造することができる。
成形型に混合スラリーをキャスティングして磁心材料を作製することができる理由は、本発明に係る磁心材料が母材である樹脂中に磁性粒子を充填した形態として構成されること、磁性粒子の表面が酸化被膜により被覆され母材の樹脂中に効率的に分散させて充填することができることにある。
また、混合スラリーに用いる樹脂の前駆体や、樹脂に充填する磁性粒子については、使用する周波数領域や用途に応じて、適宜材料及び適宜アモルファス粒子を選択して使用することができるという利点もある。
11 磁性粒子
12 容器
14 成形型
16 成形品
Claims (6)
- 母材である樹脂中に磁性粒子が充填されてなる磁心材料であって、
前記磁性粒子は、磁性金属を含むアモルファス粒子であり、該磁性粒子の表面がガラス相からなる酸化被膜により被覆されていることを特徴とする磁心材料。 - 前記磁性粒子は、平均粒径が10μm以下のものからなることを特徴とする請求項1記載の磁心材料。
- 前記磁性粒子は、粒径が異なる粒子が混在していることを特徴とする請求項1記載の磁心材料。
- 前記磁性粒子は、鉄を主成分とする鉄系のアモルファス粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の磁心材料。
- 磁性粒子と樹脂の前駆体とから調製された混合スラリーを、磁心材料を成形する成形型にキャスティングし、
前記成形型内で前記混合スラリーを硬化させ、硬化後の成形品を前記成形型から離型して、母材である樹脂中に磁性粒子が充填された磁心材料を製造する方法であって、
前記磁性粒子は、磁性金属を含むアモルファス粒子であり、該磁性粒子の表面がガラス相からなる酸化被膜により被覆されたものであることを特徴とする磁心材料の製造方法。 - 前記磁性粒子は、鉄を主成分とする鉄系のアモルファス粒子であることを特徴とする請求項5記載の磁心材料の製造方法。
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