JP2018037562A - 磁心材料及びその製造方法 - Google Patents

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誠 曽根原
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敏郎 佐藤
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Kanako Sugimura
佳奈子 杉村
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Abstract

【課題】数MHz帯において高い透磁率を備え、渦電流損といった鉄損を抑えることができ、電力変換用として優れた磁気特性を備え、安価なキャスティング法によって作製できる磁心材料及びその好適な製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の磁心材料は、母材である樹脂中に磁性粒子が充填されてなる磁心材料であって、磁性粒子は、磁性金属を含むアモルファス粒子であり、磁性粒子の表面がガラス相からなる酸化被膜により被覆されていることを特徴とする。磁性粒子としては、鉄を主成分とする鉄系のアモルファス粒子が好適に用いられる。
【選択図】なし

Description

本発明は、MHz帯域においてインバータやコンバータに用いられる低損失な磁心材料及びその製造方法に関する。
近年、小型・高効率化が可能であることから、電力変換装置にSiC/GaNパワー半導体デバイスの利用が期待されている。これらのパワー半導体デバイスを用いれば、DC-DCコンバータのスイッチング周波数を数MHz〜数十MHzに高周波化することができ、リアクトルやトランスの小型化を可能とし、電源の小型化を図ることができる。
現在、MHz帯のスイッチング用としてNi-Zn系のフェライトコアが用いられている。しかしながら、これらは通信用(磁束密度が低い領域)として用いられているもので、電力変換用(磁束密度が高い領域)としては鉄損が大きく使用することができない。
本発明者は、数MHz帯における電力変換用のコアとして、カルボニル鉄粉(CIP)/エポキシ樹脂からなる鉄系メタルコンポジット鉄心(CIP/Epoxy)を提案した(非特許文献1)。この鉄系メタルコンポジット鉄心は、磁性材としてカルボニル鉄粉を使用することにより、高周波領域での渦電流損失を低減させ、効率的な電力変換を可能にしたものである。しかしながら、CIPを用いる場合は、CIPが凝集しても導通しないように、CIPの表面を高抵抗膜により被覆する必要がある(非特許文献2)。本発明者は、表面を酸化させたカルボニル鉄粉を使用した鉄系メタルコンポジット鉄心を使用すると、高周波領域で渦電流損失が低減することを確かめている(非特許文献3)。
特開2016−63170号公報
Y.Sugawa,K.Ishidate,M.Sonehara, and T.Sato:"Carbonyl-Iron/Epoxy Composite Magnetic Core for Planar Power Inductor Used in Package-Level Power Grid", IEEE Transactions on Magnetic.s, 49 (7), 4172 (2013). 伊志嶺朝之,渡辺麻子,上野友之,前田徹,徳岡輝和:SEI テクニカルレビュー 178,pp. 121-127 (2011). 杉村 佳奈子,上野 敦也,柴本 大輔,平山 涼介,曽根原 誠,佐藤敏郎:「カルボニル鉄/エポキシコンポジット鉄心インダクタの試作とGaNパワーデバイスMHz帯スイッチングDC-DCコンバータへの適用」,電気学会マグネティックス研究会資料,MAG-15-167,pp.13-18 (2015).
上述したカルボニル鉄粉を使用した鉄系メタルコンポジット鉄心は、数MHz帯におけるコア材(磁心材料)として有効に利用できる可能性を備える。しかしながら、Ni-Znフェライトと比べて透磁率が低いという問題と、数MHz帯におけるQ値が必ずしも十分とはいえないという問題がある。
本発明は、数MHz帯において高い透磁率を備えるとともに、渦電流損といった鉄損を抑えることができ、電力変換用として優れた磁気特性を備える磁心材料及びその好適な製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る磁心材料は、母材である樹脂中に磁性粒子が充填されてなる磁心材料であって、前記磁性粒子は、磁性金属を含むアモルファス粒子であり、該磁性粒子の表面がガラス相からなる酸化被膜により被覆されていることを特徴とする。
磁性粒子が、磁性金属を含むアモルファス粒子であるとは、磁性粒子としては非晶質の形態として形成されているものであることを意味する。非晶質の磁性粒子は結晶質の磁性粒子と比較して電気抵抗が高く、高周波領域における渦電流損を抑制する上で有効である。
アモルファス粒子に含まれる磁性金属としては、Fe、Co、Ni及びこれらの合金が挙げられる。また、Fe、Co、Niに加えて、Mn、Cu、Mo、Cr等の磁性材としての透磁率を向上させる成分を含ませることができる。また、磁性金属の他に非磁性金属として、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Zn、Mn、Ba、Sr、Mo、Ag、Ga、Sc、V、Nb、Pb、In、Snを含ませることができる。
また、B、C、Ta、W 、P、Nを添加することもできる。これらの添加物は磁性金属と固溶する事によって、磁気異方性を大きくすることができる。
なお、磁性金属として鉄を主成分として含むアモルファス粒子は、飽和磁化が高いことから、磁心材料に使用する磁性粒子としてとくに好適である。
表面がガラス相からなる酸化被膜により被覆されたアモルファス粒子は、アモルファス粒子を大気中でアニール処理することによって得られる。アニール処理により形成される酸化被膜はガラス相であり、金属粒子を表面熱酸化して得られる酸化被膜よりもはるかに電気的絶縁性が高いという利点がある。なお、酸化被膜を形成する方法には、大気中におけるアニール処理の他に、酸素ガス及び/または窒素ガス等によるガスフロー熱処理や、過酸化水素水、過酸化ナトリウム、過硫酸などの酸化剤中に入れて酸化させる方法等がある。
磁心材料に使用する磁性粒子としては、平均粒径が10μm以下のものが好適に用いられる。磁心材料に磁性粒子を使用する理由は小径の磁性粒子を使用することにより、渦電流による損失を抑制することができるからである。渦電流による損失は磁性粒子の粒子径が小さいほど低減される。また、磁心材料の比透磁率を高くするには磁性粒子の充填率を高くする必要がある。磁性粒子の粒子径が大きくなると磁性粒子の充填率が低くなるから、磁性粒子の充填率と渦電流による損失を考慮すると、粒子径が10μm程度以下の磁性粒子を使用するのがよい。
水アトマイズ法はアモルファスの磁性粒子を量産する方法として知られている。水アトマイズ法によって製造される磁性粒子は粒子径が1〜10μm程度の大きさのものである。磁心材料に使用する磁性粒子は必ずしも粒子径が揃っているものである必要はない。磁心材料中の磁性粒子の充填率と磁性粒子の渦電流による損失を勘案すると、磁心材料としては比較的大径(1μm程度以上)の磁性粒子と、比較的小径(1μm未満)の磁性粒子を混在させて使用するといったように粒径が異なる粒子を混在させて使用する方法が有効である。大径の磁性粒子と小径の磁性粒子を混在させることにより、大径の磁性粒子の隙間に小径の磁性粒子が充填され、磁心材料全体として磁性粒子の充填率を向上させることができ、かつ渦電流損を抑制することができる。
水アトマイズ法とは別にめっき法により磁性粒子を製造する方法もある。めっき法による場合は1μm未満の小径の磁性粒子を製造することができる。粒子径の異なる磁性粒子を使用する場合に、異なる製造方法で得られる磁性粒子を利用することも可能である。なお、水アトマイズ法による場合も、得られた磁性粒子を分級することで1μm未満の磁性粒子を分別して使用することもできる。
本発明に係る磁心材料の製造方法は、磁性粒子と樹脂の前駆体とから調製された混合スラリーを、磁心材料を成形する成形型にキャスティングし、前記成形型内で前記混合スラリーを硬化させ、硬化後の成形品を前記成形型から離型して、母材である樹脂中に磁性粒子が充填された磁心材料を製造する方法であって、前記磁性粒子は、磁性金属を含むアモルファス粒子であり、該磁性粒子の表面がガラス相からなる酸化被膜により被覆されたものであることを特徴とする。
本発明方法によれば、種々の形態の磁心材料をきわめて容易に製造することができ、電力変換用として優れた特性を備える磁心材料を提供することができる。
本発明に係る磁心材料は、MHz帯域における渦電流損を抑制し、Q値を向上させることができ、電力変換用の磁心材料として好適に利用することができる。また、本発明に係る磁心材料の製造方法によれば、種々の形態の磁心材料を容易に製造することができ、MHz帯帯域における特性の優れた磁心材料として提供することができる。
エポキシ樹脂の母材に鉄系アモルファス粒子を充填した磁心材料の断面SEM像である。 図1の磁心材料に使用している鉄系アモルファス粒子のSEM像である。 カルボニル鉄粉の断面SEM像と磁心材料のSEM像(a)と、鉄アモルファス粒子の断面SEM像と磁心材料のSEM像(b)である。 母材に磁性粒子を充填したコンポジットの比透磁率が磁性粒子の充填率によりどのように変化するかを示すグラフである。 カルボニル鉄粉コンポジットと鉄系アモルファス粒子コンポジットについて、渦電流による損失を計算した結果を示すグラフである。 カルボニル鉄粉と鉄系アモルファス粒子を大気中でアニール処理する前後における保磁力を測定した結果を示すグラフである。 Ni-Znフェライト、カルボニル鉄粉コンポジット、鉄系アモルファス粒子コンポジットについて、透磁率とtanδの測定結果を示すグラフである。 Ni-Znフェライト、カルボニル鉄粉コンポジット、鉄系アモルファス粒子コンポジットを使用したトロイダルインダクタのQ値を測定した結果を示すグラフである。 Ni-Znフェライト、カルボニル鉄粉コンポジット、鉄系アモルファス粒子コンポジットについて、鉄損Wc[J/cm3]を測定した結果を示すグラフである。 共振形コンバータの回路図である。 Ni-Znフェライトを使用したトランスと、鉄系アモルファス粒子コンポジットを使用したトランスの変換効率を示すグラフである。 共振形コンバータを駆動しているときのトランス周辺のサーモグラフィである。 磁心材料の製造方法を示す説明図である。
(磁心材料の構成)
本発明に係る磁心材料は、磁性粒子として磁性金属を含むアモルファス粒子を母材である樹脂中に充填して形成したものである。
図1は、エポキシ樹脂の母材に磁性金属として鉄を含むアモルファス粒子(鉄系アモルファス粒子)を充填した磁心材料の断面SEM像を示す。
図1(a)は平均粒径2.56μmの鉄系アモルファス粒子、図1(b)は平均粒径3.36μmの鉄系アモルファス粒子、図1(c)は平均粒径5.16μmの鉄系アモルファス粒子を使用した例である。それぞれの磁心材料における鉄系アモルファス粒子の充填率は、図1(a)91.5wt%(65.1vol%)、(b)91.6wt%(67.5vol%)、(c)92.2wt%(68.8vol%)である。
図2に、図1の磁心材料に使用している鉄系アモルファス粒子のSEM像(平均粒径:(a)2.56μm、(b)3.36μm、(c)5.16μm)を示す。この鉄系アモルファス粒子は、水アトマイズ法(SWAP法)により作成したものである。水アトマイズ法は、μmサイズの鉄系アモルファス粒子を効率的に製造する方法として知られている。水アトマイズ法では、ノズルの構造を調整することによりサブミクロンサイズの鉄系アモルファス粒子を製造することができる。
図1、2に示す鉄系アモルファス粒子の組成は、Fe73.7Si11.0B11.0Cr2.3C2.0(at.%)、Fe87.8Si6.6B2.6Cr2.5C0.5(wt.%)であり、飽和磁化 M0;1.26 T(CIPの63%)、保磁力 Hc;<1 Oe(CIPの1/4以下)である。
図2に示すように、水アトマイズ法によって作製した鉄系アモルファス粒子は、球形状の粒子であり、粒径がかなりばらついている。このように、粒径にばらつきのある微粒子を母材の樹脂に充填すると、小径の微粒子が大径の微粒子の間の隙間部分に入り込むことにより、微粒子の充填率が高くなる。図1に示す磁心材料では、鉄系アモルファス粒子の充填率が65vol%を超えている。磁性微粒子の磁心材料における充填率が高くなると、磁心材料の透磁率が高くなるという利点がある。
磁性材としてカルボニル鉄粉を使用する場合には、カルボニル鉄粉が互いに金属接触しないように、カルボニル鉄粉の表面に酸化被膜を形成するようにした。鉄系アモルファス粒子を使用する場合も微粒子の表面に酸化被膜を形成して微粒子同士が導通しないようにする。
図3に、カルボニル鉄粉(CIP)と上述した鉄系アモルファス粒子(AMO)の表面に酸化被膜を形成した状態を拡大して示す。
図3(a)は、CIPの断面SEM像と、エポキシ樹脂を母材とした磁心材料のSEM像である。このカルボニル鉄粉では、鉄粉の表面に30〜50nmの厚さの酸化被膜が形成されている。酸化被膜はFe2O3とFe2O4の混相からなる。
図3(b)は、AMOの断面SEM像と、エポキシ樹脂を母材とした磁心材料のSEM像である。鉄系アモルファス粒子では、微粒子を被覆している酸化被膜はSi-Fe-Oのガラス相からなり、酸化被膜の膜厚10nm程度である。
このように鉄粉と微粒子の表面を被覆する酸化被膜の厚さが相違することから、母材中の磁性粒子の充填率が異なり、カルボニル鉄粉を使用した場合の最高充填率が54vol%であるのに対し、鉄系アモルファス粒子を使用した場合は最高充填率が68vol%にまで向上する。
図4は、母材に磁性粒子を充填した複合材(コンポジット)の透磁率が磁性粒子の充填率(体積比)によってどのように変化するかを示したグラフである(L. Olmedo et al., J. Appl. Phys., 73, 6992 (1993))。図4のグラフは、磁性粒子の形状を球状、粒子径を均一とし、磁性粒子の比透磁率μir=10、30、100、300の場合である。母材中における磁性粒子の充填率が高くなるとともに複合材の比透磁率が高くなる。
図4のグラフに、磁性粒子としてカルボニル鉄粉(CIP)を使用した場合と、鉄系アモルファス粒子を使用した場合を示した。磁性粒子として鉄系アモルファス粒子を使用することにより、CIPを使用した場合と比較して複合材料の比透磁率が向上する。
また、図3中に示したように、磁性粒子としてCIPを使用した複合材料(コンポジット)と、鉄系アモルファス粒子を使用したコンポジットの体積抵抗率を測定すると、カルボニル鉄粉を使用したコンポジットでは体積抵抗率が100Ω・mであるのに対して、鉄系アモルファス粒子を使用したコンポジットの体積抵抗率が測定不能のレベルであった。この測定結果は、鉄系アモルファス粒子を被覆する酸化被膜の絶縁性がきわめて良好であり、微粒子同士の導通を確実に防止することができ、粒子が凝集したような場合であっても、渦電流による損失を効果的に抑制することが可能であることを示す。
図5は、カルボニル鉄粉コンポジットと鉄系アモルファス粒子コンポジットについて、高抵抗の表面被膜により磁性粒子の表面を被覆し、渦電流を磁性粒子内に閉じ込めたとしたときの渦電流による損失を計算した結果を示す。グラフの横軸が粒子径、縦軸が渦電流損Weである。
渦電流による損失Weは次式で与えられる。
We = K(πd Bm f)2×10-6/20ρ [W/cm3}
ここで、K:体積充填率、d:粒子径(m)、Bm:励磁磁束密度振幅(T)、f:周波数(Hz)、ρ:粒子の抵抗率(Ω・m)である。
図5(a)がカルボニル鉄粉コンポジットの場合、図5(b)が鉄系アモルファス粒子コンポジットの場合で、周波数f=1、5、10MHzでの渦電流損を示す。なお、カルボニル鉄粉の抵抗率ρ=10×10-8(Ω・m)、鉄系アモルファス粒子の抵抗率ρ=130×10-8(Ω・m)とした。
図5(a)、(b)から、磁性粒子として鉄系アモルファス粒子を使用すると、カルボニル鉄粉を使用した場合と比較して、渦電流による損失が明らかに低減されることがわかる。
なお、カルボニル鉄粉の粒子径は1〜1.5μmであり、水アトマイズ法により作成される鉄系アモルファス粒子の粒子径は2.5〜10μmで、比較的大径である。渦電流は粒子径が小さくなるほど低減する。0.1μm〜0.2μmといった小径の鉄系アモルファス粒子は化学めっき法を利用して作製することができるから、小径の鉄系アモルファス粒子を使用する場合は、化学めっき法により作成したものを使用すればよい。
また、水アトマイズ法による鉄系アモルファス粒子と、化学めっき法による小径の鉄系アモルファス粒子を組み合わせて(混合して)利用することにより、所望の特性を備える磁心材料を構成することができる。また、水アトマイズ法と化学めっき法による鉄系アモルファス粒子を使用すると、大径と小径の鉄系アモルファス粒子が混在することで、母材中の磁性粒子の充填率が高くなり、磁心材料の比透磁率を向上させることができるという利点がある。
カルボニル鉄粉も鉄系アモルファス粒子も、粒子の表面に酸化被膜を形成する方法として、大気中でアニール処理(表面熱酸化)する方法を利用することができる。図6はカルボニル鉄粉と鉄系アモルファス粒子を大気中でアニール処理する前後における保磁力を測定した結果を示す。
図6に示す測定結果は、鉄系アモルファス粒子についてはアニール温度が400℃程度で保磁力が最低になり、カルボニル鉄粉ではアニール温度が200℃程度で保磁力が最低になることを示す。図3に示したカルボニル鉄粉と鉄系アモルファス粒子は、図6中の○印で示した温度でアニール処理したものである。
図6の測定結果は、鉄系アモルファス粒子を大気中でアニール処理すると、膜厚が薄くかつ絶縁性に優れた酸化被膜が形成されることに加えて、保磁力が0.7(Oe)とカルボニル鉄粉の1/4程度にまで低減すること、すなわち、鉄系アモルファス粒子はカルボニル鉄粉と比較して、高周波領域における磁心材料として好適な特性を備えることを示す。
(透磁率、Q値、鉄損についての比較)
以下では、Ni-Znフェライト、カルボニル鉄粉コンポジット、鉄系アモルファス粒子コンポジットについて、透磁率、Q値、鉄損について測定した結果を示す。
図7は透磁率とtanδの測定結果を示す。使用したサンプルは、Ni-Znフェライトについては3種(K17(94)、K26(35)、F14F(17))、カルボニル鉄コンポジットは、54.0vol%- 1.6μm (200℃ 6hアニール)/エポキシ樹脂、鉄系アモルファス粒子コンポジットは、65.1vol%-2.56μm (300℃ 6hアニール)/エポキシ樹脂である。
図7に示す測定結果は、周波数が1〜10MHzの領域においてtanδの値が最も小さくなるのは、鉄系アモルファス粒子コンポジットであり、周波数が30MHz以上の領域においてはカルボニル鉄コンポジットであることを示す。また、周波数が6MHz程度を超えると、Ni-Znフェライトでは、磁気共鳴による損失が徐々に増大し、鉄系アモルファス粒子コンポジットでは徐々に渦電流による損失が増大する。したがって、鉄系アモルファス粒子コンポジットを高周波領域(1MNz〜数十MHz)で使用する場合には、1μmあるいはサブμmサイズのアモルファス粒子を使用して渦電流による損失を抑制するようにするのがよい。
図8は、Ni-Znフェライト、カルボニル鉄粉コンポジット、鉄系アモルファス粒子コンポジットをそれぞれ磁心材料に使用して、巻線数5のトロイダルインダクタを作成し、Q値を測定した結果を示す。使用したNi-ZnフェライトはF14(μr;17)、カルボニル鉄粉コンポジットは54.0vol%- 1.6μm/エポキシ樹脂(μr;6)、鉄系アモルファス粒子コンポジットは65.1vol% -2.56μm/エポキシ樹脂(μr;10)である。
図8の各図で、薄い色の曲線はLCR meterを使用して測定したQ値である。LCR meterによる測定は、電流を極めて低く抑えた状態でのQ値の測定に相当する。
図8(a)のNi-Znフェライトを用いたQ値の測定結果を見ると、電流値を0.1A、0.5A、1A、1.5Aと徐々に増加させていくとQ値がLCR meterによる測定結果よりも低下していくこと、また、周波数を徐々に高くしていくにしたがって、Q値の減少度合いが大きくなることがわかる。
これに対して、図8(b)、(c)のカルボニル鉄粉コンポジットと、鉄系アモルファス粒子コンポジットについては、電流値を0.1A、0.5A、1A、1.5Aと徐々に増加させても、LCR meterによるQ値の測定結果よりも下がることがなく、また周波数を徐々に高くしてもLCR meterによるQ値の測定結果とまったく変わらないという測定結果が得られた。
この測定結果は、カルボニル鉄粉コンポジットと、鉄系アモルファス粒子コンポジットの磁心については、Q値の電流依存性がほとんどなく(線形鉄心)、電力変換用の磁心材料として好適に使用することができる。また、鉄系アモルファス粒子コンポジットについては、微細なアモルファス粒子を使用して渦電流損を低減させることにより、さらに高周波領域においてQ値を向上させることが可能である。
図9は、B-H Analyzer(IWATSU,SY-8218)を用いて、Ni-Znフェライト、カルボニル鉄粉コンポジット、鉄系アモルファス粒子コンポジットについて、鉄損W[J/cm3]を測定した結果を示す。使用したサンプルは上述したQ値の測定で使用したものと同一の材料である。
図9から、最大磁束密度Bmが20[mT]において鉄系アモルファス粒子コンポジットの鉄損はNi-Znフェライトの約1/5にまで低減している。図9でAMOとあるのは鉄系アモルファス粒子コンポジットである。
(共振形コンバータの作製例)
Ni-Znフェライトからなる鉄心と、鉄系アモルファス粒子コンポジットからなる鉄心を用いた共振形コンバータを作製し、実際に駆動した際の変換効率について調べる実験を行った。
図10は、実際に作製した共振形コンバータの回路である。このコンバータは入力電圧48V、出力電圧24Vのコンバータで、リーケージトランスとして、Ni-Znフェライトコアトランス(F14F、μr=17)と、鉄系アモルファス粒子コンボジットトランス(μr=10)を使用した。
図11は、変換効率の測定結果を示すグラフである。図11に示す測定結果は、鉄系アモルファス粒子コンポジットを鉄心とするトランスの最大変換効率が91%程度であるのに対し、Ni-Znフェライトを鉄心とするトランスの最大変換効率が89%程度であり、鉄系アモルファス粒子コンポジットを鉄心とするトランスの効率が優っていることが示されている。
図12は上記共振形コンバータを実際に駆動しているときのトランスの温度を観測したものである。測定は出力電流5A、周囲温度25℃としたときのものである。図12(a)は、鉄系アモルファス粒子コンポジットを鉄心とした場合、図12(b)はNi-Znフェライトを鉄心とした場合である。
図12(a)、(b)に示すように、鉄系アモルファス粒子コンポジットを鉄心とした場合は、コア部分についてはほとんど温度上昇せず、巻線の部分で温度上昇し、巻線部分の温度が76.2℃(ΔT=34.4℃)であった。一方、Ni-Znフェライトを鉄心とした場合のトランス部分の温度は、コア全体が加熱され、巻線を含むコアの温度が115.5℃(ΔT=90.5℃)となり、コアの周縁部でも110.3℃となった。
このように、Ni-Znフェライトコアを用いた場合と比較して鉄系アモルファス粒子コンポジットをコアとした場合は、駆動時におけるコア(トランス部分)の昇温を効果的に抑えることができ、回路部品の耐熱性等の条件を緩和することができ、実際の回路を構成する上で有利である。また、コアの昇温を抑えることにより、トランスの変換効率が低減することを抑えることができる点についても有効であるという利点がある。
(磁心材料の製造方法)
本発明に係る磁心材料は、樹脂からなる母材に磁性粒子としてアモルファス粒子が充填されてなるものである。この磁心材料は、母材となる樹脂の前駆体とアモルファス粒子との混合スラリーを、磁心材料を成形するための成形型にキャスティングし、混合スラリーが硬化した後、成形型から成形品を取り出す方法によって製造することができる。
図13に本発明に係る磁心材料の製造方法を示す。混合スラリー10は母材となる樹脂の前駆体とアモルファス粒子とを混合して流動性を有する液状として調製する。混合スラリーに使用する樹脂の前駆体には、スラリー中でアモルファス粒子が分散して、アモルファス粒子が効率的に充填されるものを使用する。また、回路部品として使用する際に発熱することを考慮して、所要の耐熱性を有する樹脂、たとえばエポキシ樹脂等の熱硬化性の樹脂材料を使用する。
図13に示すように、磁性粒子11が混入された混合スラリー10を収容した容器12から、磁心材料の成形型14に混合スラリー10を投入し、成形型14内で混合スラリー10が硬化した後、成形型14から成形品16を離型させることにより、所定形状に成形された成形品として磁心材料を得ることができる。成形型14内で混合スラリー10を硬化させるには、加熱による硬化等によればよい。
従来の磁性粉を使用して磁心材料を製造する方法は、磁性粉を所定形状に加圧して圧粉成形体を形成し、圧粉成形体を焼結する方法である。上述した、成形型に混合スラリーをキャスティングして硬化させる方法は、きわめて簡単に磁心材料を製造することができる利点がある。また、磁心材料の外形形状に合わせて成形型を用意することにより、種々の形態の磁心材料を製造することができる。
成形型に混合スラリーをキャスティングして磁心材料を作製することができる理由は、本発明に係る磁心材料が母材である樹脂中に磁性粒子を充填した形態として構成されること、磁性粒子の表面が酸化被膜により被覆され母材の樹脂中に効率的に分散させて充填することができることにある。
また、混合スラリーに用いる樹脂の前駆体や、樹脂に充填する磁性粒子については、使用する周波数領域や用途に応じて、適宜材料及び適宜アモルファス粒子を選択して使用することができるという利点もある。
10 混合スラリー
11 磁性粒子
12 容器
14 成形型
16 成形品


Claims (6)

  1. 母材である樹脂中に磁性粒子が充填されてなる磁心材料であって、
    前記磁性粒子は、磁性金属を含むアモルファス粒子であり、該磁性粒子の表面がガラス相からなる酸化被膜により被覆されていることを特徴とする磁心材料。
  2. 前記磁性粒子は、平均粒径が10μm以下のものからなることを特徴とする請求項1記載の磁心材料。
  3. 前記磁性粒子は、粒径が異なる粒子が混在していることを特徴とする請求項1記載の磁心材料。
  4. 前記磁性粒子は、鉄を主成分とする鉄系のアモルファス粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の磁心材料。
  5. 磁性粒子と樹脂の前駆体とから調製された混合スラリーを、磁心材料を成形する成形型にキャスティングし、
    前記成形型内で前記混合スラリーを硬化させ、硬化後の成形品を前記成形型から離型して、母材である樹脂中に磁性粒子が充填された磁心材料を製造する方法であって、
    前記磁性粒子は、磁性金属を含むアモルファス粒子であり、該磁性粒子の表面がガラス相からなる酸化被膜により被覆されたものであることを特徴とする磁心材料の製造方法。
  6. 前記磁性粒子は、鉄を主成分とする鉄系のアモルファス粒子であることを特徴とする請求項5記載の磁心材料の製造方法。



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