JP2018034349A - ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、高拡散と高反射を併せ持つ、生産性に優れたポリエステルフィルムを提供する。【解決手段】表層(A)、基材層(B)を有する少なくとも2層からなるポリエステルフィルムであって、以下(1)〜(3)を満たすポリエステルフィルム。(1)表層(A)が、ルチル型酸化チタンを10〜30重量%含有すること。(2)基材層(B)が、粒子を2〜45重量%含有し、基材層(B)に含有する粒子が下記方法により求められる歪度が1以上3以下、粒子径偏在率が2.0未満であること。(3)表層(A)が少なくとも一方の表層にあり、かつ、前記基材層の少なくとも一方の面に設けられていること。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエステルフィルムに関するものである。
近年、二酸化炭素の増加による温室効果で地球の温暖化が生じることが予測され、二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーの要求が高まっている。このような状況下で、太陽電池モジュールを利用した太陽光発電は、安全性と汎用性の高さから非常に注目されている。一般に、太陽電池モジュールは、受光面側から順にカバー材、表側封止材、光電変換を行う太陽電池セル、裏側封止材、およびバックシートが積層され、構成されている。
ここで、太陽電池バックシートは、太陽電池の発電素子を雨などの外的影響から保護する目的で用いられるものである。太陽電池は、屋外で長期間置かれるため、太陽電池バックシートに用いられるポリエステルフィルムは高い耐湿熱性が要求される。これまでに、太陽電池バックシート用ポリエステルフィルムの耐加水分解性を高める検討がなされている。
また、近年では太陽電池バックシートに、太陽電池セル同士の間を通過した光を反射させ、セルに取り込むことにより太陽電池モジュールの発電効率を向上させるという機能を付与する検討がなされている(特許文献1、2)。
具体的には、太陽電池バックシートに用いられるポリエステルフィルム基材表面に白色粒子と白色バインダーにより反射層を形成し、太陽電池バックシートの光反射効率を向上させる技術や、太陽電池バックシートに用いられるポリエステルフィルムに空洞を含む層を形成することにより高い光反射特性を有するバックシートを提供する技術が提案されている(特許文献3,4)。
特開2012−179816号公報 特開2012−135952号公報 特開2016−108504号公報 登録特許5145479号公報
しかしながら、特許文献3、4のように、白色粒子や空洞を含む層を有するポリエステルフィルムを生産すると、粒子の凝集物起因で大きな欠点や気泡が発生してフィルム破れが発生したり、生産ラインに通常設置されるフィルターにつまりが発生するという課題が発生する。
本願発明者らが鋭意検討した結果、上記の課題は特許文献3、4のような白色粒子を多く含有させたり、空洞含有量が高いフィルムにおいて顕著に発生することを見出した。上記の課題を解決するには、ポリエステルフィルムに含有する粒子の粒子径を制御することが重要ではあるが、ポリエステルフィルムに含有する粒子の平均粒子径を制御するだけでは上記の課題は解決できないということがわかった。
そこで本発明の目的は、これら従来技術の不具合に鑑みてなされたものであり、高い光反射特性を持つことにより太陽電池の発電効率を向上させることができ、かつ、フィルム破れや生産ラインのフィルター濾圧上昇が起こりにくく長期生産が容易なポリエステルフィルムを提供することにある。
上記課題を解決するために本発明は以下の構成をとる。
[I]表層(A)、基材層(B)を有する少なくとも2層からなるポリエステルフィルムであって、以下(1)〜(3)を満たすポリエステルフィルム。
(1)表層(A)が、ルチル型酸化チタンを10〜30重量%含有すること。
(2)基材層(B)が、粒子を2〜45重量%含有し、基材層(B)に含有する粒子が下記方法により求められる歪度が1以上3以下、粒子径偏在率が2.0未満であること。
(3)表層(A)が少なくとも一方の表層にあり、かつ、前記基材層の少なくとも一方の面に設けられていること。
[歪度、粒子径偏在率の測定方法]
1.ポリエステルフィルムの厚み方向に対して垂直方向に切削した断面を電界放射走査型電子顕微鏡JSM−6700F(日本電子(株)製)を用いて10000倍に拡大して観察する。
2.断面観察においてから任意に選び出した2500個の粒子径(円相当径)を測定し、横軸を粒子径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットした体積基準粒度分布を得る
3.歪度は、歪度(G)=Σ{n(X−X}/SDΣn、により求める。式中、nCは上記体積基準粒度分布における各粒子径における粒子の存在比率(%)、XCは各粒子の粒子径(μm)、XAは平均粒子径(μm)、SDは粒度分布の標準偏差(μm)を表す。なお、平均粒子径は、式、X=(ΣX×n)Σn、により求める。
4.粒子径偏在率は、粒子径偏在率(R)=D90−D10/D50、により求める。式中、D10は上記体積基準粒度分布における10%体積粒子径、D50は上記体積基準粒度分布における50%体積粒子径、D90は上記体積基準粒度分布における90%体積粒子径を表す。
[II]前記基材層(B)が、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アクリルから選ばれる少なくとも1種の粒子を2〜30重量%、ルチル型酸化チタン粒子を0.1〜15重量%含有する[I]に記載のポリエステルフィルム。
[III]前記炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム、アクリルから選ばれる少なくとも1種の粒子の50%体積粒子径D50が0.8〜1.0μmである[I]または[II]に記載のポリエステルフィルム。
[IV]基材層(B)が空洞を含有しており、その空洞含有率が4〜40%である[I]〜[III]のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
[V]ポリエステルフィルムの重量平均分子量が35000以上47000未満である[I]〜[IV]のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
[VI]ポリエステルフィルムのCOOH末端基濃度が6〜25(当量/トン)である[I]〜[V]のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
[VII]太陽電池バックシートに用いられる[I]〜[VI]のいずかに記載のポリエステルフィルム。
本発明によれば、高い光反射特性を持つことにより太陽電池の発電効率を向上させることができ、かつ、フィルム破れが起こりにくく、長期製膜性に優れた太陽電池バックシート用ポリエステルフィルムが得られる。
本発明のポリエステルフィルムを太陽電池バックシートとして用いた太陽電池の一例を示す断面図である。 本発明のポリエステルフィルムが、A層、B層を有する2層積層構成を有する場合の、本発明のポリエステルフィルムを太陽電池バックシートとして用いた太陽電池の一例を示す断面図である。 本発明のポリエステルフィルムが、A層、B層、耐UV層を有する3層積層構成を有する場合の、本発明のポリエステルフィルムを太陽電池バックシートとして用いた太陽電池の一例を示す断面図である。
本発明のポリエステルフィルムに用いられるポリエステルとは、ジカルボン酸成分とジオール成分を重合して得られる熱可塑性樹脂である。本発明のポリエステルに用いられるジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、および、これらのエステル形成性誘導体に由来する成分を挙げることができる。ジオール成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、および、これらのエステル形成性誘導体に由来する成分を挙げることができる。これらのポリエステルの中で、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。本発明におけるポリエステルは、好ましくは共重合ポリエステル、特に好ましくは共重合ポリエチレンテレフタレートである。
本発明のポリエステルフィルムは、表層(A)、基材層(B)を有する少なくとも2層からなるポリエステルフィルムであって、以下(1)〜(3)を満たすポリエステルフィルムである。
(1)表層(A)が、ルチル型酸化チタンを10〜30重量%含有すること。
(2)基材層(B)が、粒子を2〜45重量%含有し、前記粒子の粒度分布の歪度が1以上3以下、粒子径偏在率が2.0未満であること。
(3)表層(A)が少なくとも一方の表層にあり、かつ、前記基材層の少なくとも一方の面に設けられていること。
表層(A)に含有するルチル型酸化チタン粒子の含有量が10重量%未満であると、耐紫外線性が不足し、且つ光反射特性が十分でなく、太陽電池の発電効率を向上することができない。一方、30重量%を超えると、耐加水分解性が悪化し、また、無機粒子とポリエステルの間に発生する微細な隙間がきっかけとなり、製膜中にフィルム破れが発生するし、生産されたフィルムの耐湿熱性が悪化する。
また、基材層(B)が、粒子を2〜45重量%含有し、前記粒子の粒度分布の歪度が1以上3以下、粒子径偏在率が2.0未満であると、耐紫外線性、光反射特性、耐加水分解性、製膜性を良好とすることができる。
本発明の基材層(B)に含有する粒子は、有機粒子、無機粒子のいずれでも良いが、光反射性、耐加水分解性の観点からは、本発明に用いられる粒子としては、炭酸カルシウム粒子、アクリル粒子、硫酸バリウム粒子、酸化チタン粒子などが好ましい例として挙げられる。ポリエステルフィルムの粒子の含有量が2重量%未満であると、耐紫外線性が不足し、且つ光反射特性が十分でなく、太陽電池の発電効率を向上することができない。一方、45重量%を超えると、耐加水分解性が悪化し、また、粒子とポリエステルの間に発生する微細な隙間がきっかけとなり製膜時に破れやすいフィルムとなり、また製膜されたフィルムにクラックが入りやすく、耐湿熱性が足りなくなる。より好ましくは2〜30重量%である。
本発明のポリエステルフィルムは、基材層(B)に含有する粒子の歪度が1以上3以下であることが必要である。歪度とは、後述する測定方法により求められる、粒子径の存在量バランスを規定する指標である。歪度が小さいということは、横軸に粒子径、縦軸に粒子存在頻度をプロットした粒度頻度分布において、粒度頻度分布の形が左右対称に近いことを表す。例えば、粒子存在頻度が正規分布の場合は歪度0となる。また、歪度が正のときは、粒度頻度分布が左(粒子が小さい方)に偏っていることを示し、歪度が負のときは粒度頻度分布が右(粒子が大きい方)に偏っていることを示すこととなる。粒度分布の歪度が負であるか、1より小さいと、全粒子に占める大きい粒子が多くなるため、ポリエステルとの分散が悪くなり、粒子の凝集物起因で大きな欠点や気泡が発生してフィルム破れが発生したり、生産ラインに通常設置されるフィルターにつまりが発生するという問題が発生し、安定して生産をすることができない。また、製膜したフィルムにクラックができ、強度が低いフィルムとなる。一方、歪度が3より大きいとき、粒子径の小さい粒子の存在比率が大きくなるため、反射率が小さくなり、太陽電池の出力向上が達成できない。13より好ましくは、1.2〜2.8である。
(粒子径の規定)
本発明のポリエステルフィルムは、基材層(B)に含有する粒子の粒子径偏在度が2.0以下であることが必要である。粒子径偏在度とは、後述する測定方法により求められるものであり、横軸を粒子径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットした体積基準粒度分布において、10%体積粒子径D10、50%体積粒子径D50、90%体積粒子径D90としたときに、(D90−D10)/D50により求められるものである。上記D50の範囲と合わせてかかる比率を満足することによって、反射率をより高くすることができるとともに、入射光の方向による反射率のばらつきを抑制できる。
粒子径偏在度が大きすぎると、延伸条件に追従した偏平なボイドが形成されやすい傾向となり、反射率のばらつき抑制効果が低くなってしまう。また、効率的にボイドを形成し難くなる傾向にあり、ボイド数が低減する傾向にあり、反射率が低くなってしまう。かかる観点から、(D90−D10)/D50は、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下である。理想的には低ければ低い方が好ましいが、現実的には上記比率が0.8未満となる粒子の形成は難しく、よって下限は0.8が好ましい。
粒子をポリエステル樹脂に含有させる方法としては、従来公知の各種の方法を用いることができる。その代表的な方法として、下記のような方法が挙げられる。
(ア)ポリエステル樹脂の合成時のエステル化の段階もしくはエステル交換反応終了後に添加する方法。
(イ)得られたポリエステル樹脂に添加し、溶融混練する方法。
(ウ)上記(ア)または(イ)の方法においてポリエステル樹脂に粒子を多量添加したマスターペレットを製造し、これと希釈ポリマーとしてのポリエステル樹脂とを混練してポリエステル樹脂に所定量の炭酸カルシウム粒子を含有させる方法。
(エ)上記(ウ)のマスターペレットをそのまま使用する方法。
本発明においては、上記(ウ)または(エ)の方法が好ましい。このとき、混練温度としては、ポリエステル樹脂の融点Tm以上、Tm+10℃未満とすることが好ましく、このようにすることで本発明が規定する極限粘度を達成し易くなる。混練温度が高すぎると、本発明が規定する極限粘度が得難くなる。他方、低すぎると、当然ながら実溶融物が発
生してしまう。この際、単にヒーターの温度調整だけでは上記温度範囲とすることが困難である場合があるため、好ましくはタンデム型二軸混練押出機を用いて、該押出機のニーディングディスク部のスクリューの径に対するスクリューの全長の比やスクリュー回転数を調整して、押出機の内部や出口でのシェアによる温度上昇を抑制しながら行うことも重要である。
前述したとおり、本発明に用いられる粒子としては、炭酸カルシウム粒子、アクリル粒子、硫酸バリウム粒子、酸化チタン粒子などが好ましい例として挙げられる。炭酸カルシウム粒子を用いる場合は、表面処理剤により表面処理が施されていることが好ましい。かかる表面処理剤としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、あるいはこれらの誘導体などのリン化合物などがある。粒子の表面処理方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用することができる。例えばリン化合物によって表面処理を施す場合は、リン化合物と炭酸カルシウム粒子とを物理的に混合する方法(物理的混合方法)を採用することが好ましい。かかる物理的混合方法としては特に限定されるものではなく、例えばロール転動ミル、高速回転式粉砕機、ボールミル、ジェトミルなどの各種の粉砕機を使用して、炭酸カルシウムを粉砕しながらリン化合物で表面処理する方法、あるいは容器自身が回転する容器回転型混合機、固定容器内に回転翼を有したり、あるいは気流を吹き込む容器固定型混合機等を使用して表面処理する方法を挙げることができる。具体的にはナウタミキサー、リボンミキサー、ヘンシエルミキサー等の混合機が好ましい。
また、前記基材層(B)は、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アクリルから選ばれる少なくとも1種の粒子を2〜30重量%、ルチル型酸化チタン粒子0.1〜15重量%含有することが好ましい。基材層(B)に、上記の粒子を含有させることで、特に耐紫外線性、光反射特性、耐加水分解を良好とすることができる。
前記基材層(B)に炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム、アクリルから選ばれる少なくとも1種の粒子を含有させる場合、その粒子の50%体積粒子径D50は0.8〜1.0μmであることが好ましい。粒子径が大きすぎると生産性が悪くなり、粒子径が小さいときは太陽電池の出力向上の効果が低下してしまう場合がある。
また、本発明のポリエステルフィルムは、表層(A)が少なくとも一方の表層にあり、かつ、前記基材層の少なくとも一方の面に設けられていると、光反射特性を特に良好にすることができ、太陽電池の出力向上の効果が顕著に得られる。
(空洞)
本発明のポリエステルフィルムの基材層(B)は、その空洞含有率が4体積%以上40体積%以下であることが好ましい。空洞含有率は後述する測定方法により求められる。基材層(B)の空洞含有率が4体積%未満であると、光反射特性が十分でなく、太陽電池の発電効率を向上することができない場合がある。一方、40体積%を超えると、製膜性が悪化すると共にフィルムの耐湿熱性が悪化する場合がある。ポリエステルフィルムに空洞を形成させる方法については、特に限定されないが、詳しくは後述する。
(分子量)
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステルの重量平均分子量が35000〜47000であることが好ましい。重量平均分子量が35000未満であるとフィルムの耐湿熱性、他積層材との接着性が不十分となる場合がある。重量平均分子量が高い方が耐熱性、耐加水分解性および接着性は良好となるが、重量平均分子量が47000を超えると、フィルム破れ、生産工程粒子を含有させた組成物をフィルムとすることが困難となる場合がある。
(COOH末端基濃度)
本発明においてポリエステルフィルムのポリエステルのCOOH末端基濃度は好ましくは6〜25当量/トン、さらに好ましくは6〜20当量/トンである。COOH末端基濃度が25当量/トンを超えると、フィルムの耐加水分解性に劣り、耐湿熱性が低下する場合がある。他方、6当量/トン未満のフィルムを得るためには、それ以上にCOOH末端基濃度の少ないポリエステルを原料とする必要があり、原料の固相重合時間が長くかかり不経済であり、かつ、製膜するのが困難となる場合がある。
本発明のポリエステルフィルムは、基材層(B)が非相溶ポリマーを含有していることが好ましく、その含有量が、当該層を構成するポリエステル樹脂組成物全体に対して、非相溶ポリマーを8重量%〜40重量%であることが好ましい。より好ましくは、10重量%以上30重量%以下であり、更に好ましくは10重量%以上25重量%以下である。非相溶ポリマーの添加量を多くすることで高い反射率を得ることが可能となり、添加量を減らすことで機械強度の低下を抑制し、生産性を向上させることが可能となる。また、非相溶ポリマーの添加量を増加させるにつれて、空洞核が増加し空洞含有率が増加することから、反射率が向上し出力特性向上に貢献する。なお、本願では、非相溶ポリマーの含有量は、添加量のことを指すものとする。
本発明で用いられる非相溶ポリマーとしては、ポリエステルに非相溶なポリマーであれば、特に限定されない。例えば、ポリ−3−メチルフテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリビニル−T−ブタン、1,4−トランス−ポリ−2,3−ジメチルブタジエン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリジメチルスチレン、ポリ−2−メチル−4−フルオロスチレン、ポリビニル−T−ブチルエーテル、セルロールトリアセテート、セルロールトリプロピオネート、ポリビニルフルオライド、非晶ポリオレフィン、環状オレフィン共重合樹脂などから選ばれた融点180℃以上のポリマーなどが挙げられる。
中でも、ポリエステル樹脂母材に対する非相溶ポリマーとしては、ポリオレフィン、特にポリメチルペンテンおよび環状オレフィンが好ましく用いられる。環状オレフィン共重合樹脂とは、エチレンとビシクロアルケンおよびトリシクロアルケンからなる群から選ばれた少なくとも1種の環状オレフィンとからなる共重合体である。
非相溶ポリマーを分散させるには、分散助剤を添加することが有効である。分散助剤とは、分散を促進させる効果を持つ化合物のことであり、次に挙げるような化合物にその効果が認められる。
すなわち、分散助剤としては、熱可塑性ポリエステルエラストマーが好ましく用いられる。分散助剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、シクロヘキサンジメタノール共重合体、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、さらにはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホネートナトリウム塩、グリセリンモノステアレート、テトラブチルホスホニウム、およびパラアミノベンゼンスルホネートなどが挙げられる。
本発明で使用される分散助剤としては、特にポリアルキレングリコールが好ましく、中でもポリエチレングリコールが好ましく用いられる。また、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールの共重合体なども、非相溶ポリマーの分散性を向上させるために好ましく用いられる。
分散助剤の添加量としては、非相溶ポリマーを含有する層を構成するポリエステル樹脂組成物全体に対して、3重量%以上40重量%以下であることが好ましい。分散助剤の添加量を多くすることで非相溶ポリマーの分散性を向上させることが可能であり、添加量を少なくすることでフィルム母材本来の特性を損なうことなく使用することが可能となる。
このような分散助剤は、予めフィルム母材ポリマー中に添加してマスターポリマ(マスターチップ)として調整することが可能である。光学特性との関係については、分散助剤を添加し、3重量%以上40重量%以下の領域までは、分散径が極度に小径化することから、同厚み当たりのボイド層数が増加し反射率が向上し、太陽電池モジュールの高効率化に寄与する。分散助剤の添加が40重量%より大きい領域では、添加量を増加させても分散径は、小径化しないことがあり添加しても効果がないことがある。
本発明のポリエステルフィルムは、表層(A)と基材層(B)が、他の層を介さずに直接積層することが、本発明のひとつの好ましい態様である。太陽電池バックシート用ポリエステルフィルムの製造方法として、例えば、表層(A)と基材層(B)の原料をそれぞれ別の押出機に投入し、Tダイからシート状に押し出す工程を含む製造方法(共押出法)、単膜で作製したシートに被覆層原料を押出機に投入して溶融押出して口金から押出しながらラミネートする方法(溶融ラミネート法)などが挙げられるが、本発明のポリエステルフィルムにおいては、共押出法が好ましい。
本発明において、表層(A)と基材層(B)を有するポリエステルフィルムの製造方法について具体的に説明するが、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
非相溶ポリマーとしてポリメチルペンテンを用い、分散助剤としてポリエチレングリコール、およびポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコール共重合物を用い、これらをポリエチレンテレフタレートに混合し、それを十分混合し乾燥させて、270〜300℃の温度に加熱された押出機Aに供給する。別に、酸化チタンなどの無機粒子を含むポリエチレンテレフタレートを押出機Bに供給し、Tダイ2層口金内で、押出機Aと押出機Bからのポリマーをそれぞれ1層ずつ押し出すことにより、表層(A)と基材層(B)が積層されたシートとすることが可能である。
このようにして溶融され積層されたシートを、ドラム表面温度が10〜60℃に冷却されたドラム上で静電気力によって密着冷却固化して未延伸フィルムとし、得られた未延伸フィルムを80〜120℃の温度に加熱したロール群に導き、長手方向に2.0〜5.0倍で縦延伸し、次いで20〜50℃の温度のロール群で冷却する。続いて、縦延伸されたフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、90〜140℃の温度に加熱された雰囲気中で、長手に垂直な方向に横延伸する。延伸倍率は、縦と横それぞれ2.5〜4.5倍に延伸するが、その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は9〜16倍であることが好ましい。面積倍率が9倍未満では得られるフィルムの白さが不良となり、逆に、面積倍率が16倍を超えると延伸時に破れを生じやすくなり、製膜性が不良となる傾向がある。このようして二軸延伸されたフィルムの平面性と寸法安定性を付与するために、テンター内で150〜230℃の温度で熱固定を行い、均一に徐冷後、室温まで冷却して巻き取り、本発明のポリエステルフィルムを得る。
本発明のポリエステルフィルムは、太陽電池バックシート用途に好適に用いられる。本発明のポリエステルフィルムを太陽電池バックシート用途に用いる場合、基材層(B)は、太陽電池セルの裏側封止材側に配置されることが好ましい。そして、太陽電池は、カバー材、表側封止材、太陽電池セル、裏側封止材、および本発明の前述の太陽電池バックシートの順に積層され、加熱され得られる。
本発明において、上記の各材料を積層し加熱する方法については、具体的には大気圧の状態で封止材の融点以上の温度環境下で、加圧することにより熱圧着する方法や、真空状態で封止材の融点以上の温度環境下で、加圧することにより熱圧着する方法などが挙げられるが、太陽電池内の気泡発生を抑制する観点から、真空状態で加圧し熱圧着することが好ましい態様である。
(図の説明)
本発明の太陽電池の概略構成を図1、図2に示す。
図1は、本発明のポリエステルフィルムを太陽電池バックシートとして用いた太陽電池の一例を示す断面図である。太陽電池1は、カバー材5、表側封止材4、太陽電池セル6、裏側封止材3、および本発明のポリエステルフィルム(太陽電池バックシート2)の順に積層され、加熱され得られる。太陽電池セル6が1枚あるいは複数枚が直列、または並列に導電材料を用いて接続されており、表側封止材4と裏側封止材3の間に隣り合う太陽電池セル6同士の間に隙間ができるように設置される。
図2は、本発明のポリエステルフィルムが、A層、B層を有する2層積層構成を有する場合の、本発明のポリエステルフィルムを太陽電池バックシートとして用いた太陽電池の一例を示す断面図である。太陽電池バックシート2は、A層7とB層8が積層されており、A層7は封止材3側の逆側に位置ことが好ましい。
図3は、本発明のポリエステルフィルムが、A層、B層、耐UV層を有する3層積層構成を有する場合の、本発明のポリエステルフィルムを太陽電池バックシートとして用いた太陽電池の一例を示す断面図である。太陽電池バックシート2は、A層7とB層8、A層9が積層されており、A層7は封止材3側、および、裏側封止材3とは逆側の最外層に位置することが好ましい。
[製造方法]
以下、本発明のポリエステルフィルムを製造する方法の一例を説明する。以下の例では、ポリエステルフィルムとしての表層(A)と、基材層(B)とを有する積層ポリエステルフィルムの場合について記載するが、B層のみからなる単層フィルムも同様にして得られる。
タイから溶融した樹脂組成物をフィードブロックを用いた同時多層押出し法により、積層未延伸シートを製造する。すなわち、A層を形成するための樹脂組成物Aの溶融物とB層を形成するための樹脂組成物Bの溶融物を、フィードブロックを用いて例えばB層/A層/B層となるように積層し、タイに展開して押出しを実施する。この時、フィードブロックで積層されたポリマーは積層された形態を維持している。また、マルチマニホルールドダイでも同様の積層が可能である。
ダイより押出された未延伸シートは、キャスティングドラムで冷却固化され、未延伸フィルムとなる。この未延伸状フィルムをロール加熱、赤外線加熱等で加熱し、縦方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。延伸温度は、原料としての上記樹脂組成物を構成するポリエステル(好ましくはA層のポリエステル)のガラス転移点(Tg)以上の温度、更にはTg〜Tg−70℃の範囲とするのが好ましい。延伸倍率は、用途の要求特性にもよるが、製膜機械軸方向(以下、縦方向または長手方向またはMDという場合がある。)、および、縦方向と直交する方向(以下、横方向または幅方向またはTDという場合がある。)ともに、好ましくは2.5〜4.0倍、さらに好ましくは2.8〜3.9倍である。延伸倍率が低すぎると、ボイドが形成され難い傾向にあり、反射率が低下する傾向にある。また、フィルムの厚み斑が悪くなる傾向にある。他方、延伸倍率が高すぎると製膜中に破断が発生し易くなる傾向にある。
縦延伸後のフィルムは、続いて、横延伸、熱固定、好ましくは熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、これら処理はフィルムを走行させながら行う。横延伸の処理はポリエステル(好ましくはA層のポリエステル)のガラス転移点(Tg)より高い温度から始める。そしてTgより50〜70℃高い温度まで昇温しながら行う。横延伸過程での昇温は連続的でも段階的(逐次的)でもよいが、通常逐次的に昇温する。例えばテンターの横延伸ゾーンをフィルム走行方向に沿って複数に分け、ゾーン毎に所定温度の加熱媒体を流すことで昇温する。横延伸の倍率は、用途の要求特性にもよるが、好ましくは2.5〜4.5倍、より好ましくは2.8〜4.3倍、さらに好ましくは3.0〜4.1倍、特に好ましくは3.5〜4.0倍である。延伸倍率が低すぎると、ボイドが形成され難い傾向にあり、反射率が低下する傾向にある。また、フィルムの厚み斑が悪くなる傾向にある。他方、延伸倍率が高すぎると製膜中に破断が発生し易くなる傾向にある。
横延伸後のフィルムは、両端を把持したまま(Tm−10)−(Tm−100)幅または10%以下の幅減少下で熱処理して熱収縮率を低下させるのがよい。ここでTmは、原料としての上記樹脂組成物を構成するポリエステル(好ましくはA層のポリエステル)の融点である。これより高い温度であるとフィルムの平面性が悪くなり、厚み斑が大きくなり好ましくない。また、熱処理温度が(Tm-80)℃より低いと熱収縮率が大きくなることがある。また、熱固定後、フィルム温度を常温に戻す過程で(Tm-10)-(Tm-100)℃以下の領域の熱収縮量を調整するために、把持しているフィルムの両端を切り落し、フィルム縦方向の引き取り速度を調整し、縦方向に弛緩させることができる。弛緩させる手段としてはテンタ一出側のロール群の速度を調整する。弛緩させる割合として、テンターのフィルムライン速度に対してロール群の速度ダウンを行い、好ましくは0.1〜1.5%の速度ダウンすなわち弛緩(以降この値を弛緩率という)を実施するより好ましくは0.2〜1.2%の弛緩率、さらに好ましくは0.3〜1.0%の弛緩率を実施し縦方向の熱収縮率を調整する。また、フィルム横方向は両端を切り落すまでの過程で幅減少させて、所望の熱収縮率を得ることもできる。かくして本発明のポリエステルフィルムを得ることができる。
以下、本発明を実施例よりさらに詳細に説明する。
<評価について>
1.製膜性
実施例に記載の下の条件において製膜し、安定に製膜できるか観察し、下記基準で評価した。
◎:10時間以上安定に製膜できる
○:1時間以上10時間未満安定に製膜できる
△:10分間以上1時間未満の間に切断が生ずる。
×:10分間以内にフィルム破れが発生し、安定な製膜ができない。
2.重量平均分子量
ポリエステルフィルム3mgに、HFIP:クロロホルム(1:1)0.5mlを加えて溶解(一晩)させ、不溶物をメンブレンフィルター0.45μmでろ過し、GPC分析を行った。測定機器、条件は以下のとおりである。
GPC:HLC−8020東ソー製
検出器:UV−8010東ソー製
カラム:TSK−gelGMHHR・M×2東ソー製
移動相:HPLC用クロロホルム
流速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出器:UV(254nm)
注入量:200μl
較正曲線用試料:ポリスチレン(PolymerLABorATories製EA
siCAl“PS−1”)
3.COOH末端基濃度
MAuliceの方法に準じて以下の条件よって測定する(文献M.J.MAulice,F.HuizingA,AnAl.Chim.AcTA,22363(1960))。ポリエステル組成物2gをo−クレゾール/クロロホルム(重量比7/3)50mLに温度150℃にて溶解し、0.05NのKOH/メタノール溶液によって滴定し、COOH末端基濃度を測定し、当量/ポリエステル1トン(当量/トン)の値で示す。なお、滴定時の指示薬はフェノールレッドを用いて、黄緑色から淡紅色に変化したところを
滴定の終点とする。
4.歪度、粒子径偏在率
(1)ポリエステルフィルムの厚み方向に対して垂直方向に切削した断面を電界放射走査型電子顕微鏡JSM−6700F(日本電子(株)製)を用いて10000倍に拡大して観察する。
(2)断面観察において任意に選び出した2500個の粒子径(円相当径)を測定し、横軸を粒子径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットした体積基準粒度分布を得る。M671mA25前記、体積基準粒度分布において、横軸を担う粒子径は、0nmを初点とした20nm間隔毎の階級により、縦軸を担う粒子の存在比率は、計算式「存在比率=該当する粒子径を持つ検出粒子の合計体積/全検出粒子の合計体積×100」により表す。
(3)歪度は、歪度(G)=Σ{n(X−X}/SDΣn、により求める。式中、nCは上記体積基準粒度分布における各粒子径における粒子の存在比率(%)、XCは各粒子の粒子径(μm)、XAは平均粒子径(μm)、SDは粒度分布の標準偏差(μm)を表す。なお、平均粒子径は、式、X=(ΣX×n)Σn、により求める。
(4)粒子径偏在率は、粒子径偏在率(R)=(D90−D10)/D50、により求める。式中、D10は上記体積基準粒度分布における10%体積粒子径、D50は上記体積基準粒度分布における50%体積粒子径、D90は上記体積基準粒度分布における90%体積粒子径を表す。
5.粒子の含有量
ポリマーペレットまたはフィルム1g(積層フィルムの場合は評価したい層を削り取る)を1N−KOHメタノール溶液200mlに投入して加熱還流し、ポリマーを溶解した。溶解が終了した該溶液に200mlの水を加え、次いで該液体を遠心分離器にかけて不活性粒子を沈降させ、上澄み液を取り除いた。粒子にはさらに水を加えて洗浄、遠心分離を2回繰り返した。このようにして得られた粒子を評価したい粒子径の粒子よりも小さい粒子が通過する濾紙で濾過し乾燥させ、その質量を量ることで粒子の含有量を算出した。
6.モジュール化による発電向上率
多結晶シリコン型太陽電池セル「ジンテック社製G156M3」の表面と裏面の銀電極部分に、フラックス「HOZAN社製H722」をディスペンサーで塗布し、表面と裏面の銀電極の上に、155mmの長さに切断した配線材「日立電線社製銅箔SSA−SPS0.2×1.5(20)」を、表面側のセルの片端から10mm離れたところが配線材の端に、そして裏面側は表面側と対称になるように乗せ、半田ごてを用いて、セル裏面側から半田ごてを接触させて表面と裏面を同時に半田溶着し、1セルストリングスを作製した。次に作製した1セルストリングスのセルから飛び出している前記の配線材の長手方向と、180mmに切断した取り出し電極「日立電線社製銅箔A−SPS0.23×6.0」の長手方向が垂直になるよう置き、前記の配線材と取り出し電極が重なる部分に前記のフラックスを塗布して半田溶着を行い、取り出し電極付きストリングスを作製した。この時点において、JISC8914:2005の基準状態に準じて短絡電流の測定を実施し、セル単体の発電性能とした。
次に、太陽光側から図1のように下の順にセットする。
・カバー材として190mm×190mmのガラス(旭硝子社製太陽電池用3.2mm厚白板熱処理ガラス)
・表側封止材として190mm×190mmのエチレンビニルアセテート(サンビック社製封止材0.5mm厚)
・セル単体の発電性能評価を実施した取り出し電極付きストリングス
・裏側封止材として190mm×190mmのエチレンビニルアセテート(サンビック社製封止材0.5mm厚)
・測定したいバックシート用ポリエステルフィルム
(ポリエステルフィルムが、基材層(B)がエチレンビニルアセテート側にくるようにし、190mm×190mmに裁断したもの)
セットしたものをカバー材側から真空ラミネータの熱板と接触するようにセットし、熱板温度145℃、真空引き4分、プレス1分および保持時間10分の条件で、真空ラミネートし、太陽電池モジュールを得た。このとき、取り出し電極付きストリングスはガラス面がセル表面側になるようにセットした。得られた太陽電池モジュールを、JISC8914:2005の基準状態に準じて測定した短絡電流の測定を実施し、モジュール化後の発電性能とした。
このようにして得られたセル単体の発電性能とモジュール化後の発電性能から、次の式に従い、モジュール化による性能向上率を算出した。
・モジュール化による発電向上率(%)=((モジュール化後の発電性能/セル単体の発電性能)×100)−100(%)
7.フィルム断面における空洞含有率:
フィルムをミクロトームを用いて厚み方向に切断し、得られたサンプルの断面を、日立製作所製電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)S−800を用いて、3000倍の倍率で3点撮像し、下記の基準で評価し、3点の撮像から空洞の面積割合を算出し、平均値から空洞のフィルム全体または各層の断面方向に占める面積の割合を、次の式に従い算出した。
・空洞のフィルム全体または各層の断面方向に占める面積の割合
=視野内の空洞の面積/視野内のフィルム全体または各層の面積。
[実施例1]
(ポリエチレンテレフタラート)
テレフタル酸100重量部、エチレングリコール57.5重量部、酢酸マンガン0.03重量部(Mn金属元素換算で1.35mol/t)、三酸化アンチモン0.03重量部を150℃、窒素雰囲気下で溶融後、攪拌しながら230℃まで3時間かけて昇温し、メタノールを留出させ、エステル交換反応を終了した。
エステル交換反応終了後、リン酸0.005重量部(P元素換算で0.52mol/t相当)とリン酸二水素ナトリウム2水和物0.021重量部(P元素換算で1.3mol/t相当)をエチレングリコール0.5重量部に溶解したエチレングリコール溶液(pH5.0)を添加した。その後、重合反応を最終到達温度285℃、真空度0.1Torrで行い、固有粘度0.52、カルボキシル基量16eq/tのポリエチレンテレフタラートを得た。得られたポリエチレンテレフタレートを160℃で6時間乾燥、結晶化させたのち、220℃、真空度0.3Torr、8時間の固相重合を行い、固有粘度0.85、末端カルボキシル基量10.2eq/t、融点255℃、ガラス転移温度Tg82℃のポリエチレンテレフタレート1を得た。
(基材層(B))
基材層(B)について上述の方法で作成したポリエチレンテレフタレート1を43.8重量部と、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールの共重合物(PBT/PTMG、商品名:東レデュポン社製“ハイトレル”(登録商標))を8重量部と、全ジオール単位中1,4−シクロヘキサンジメタノールを33mol%共重合された共重合ポリエチレンテレフタレート(PET/CHDM)を8重量部と、非相溶ポリマーとして環状オレフィン共重合体としてガラス転移温度Tgが190℃であるエチレン−ノルボルネン共重合体(COC)10重量部と50%体積粒子径0.8μm、歪度1.5の硫酸バリウムを分散させたポリエチレンテレフタレートマスターチップ(マスターチップ総量に対して硫酸バリウム50重量%含有)30重量部、無機粒子として、数平均二次粒径0.25μmの二酸化チタン50重量%を分散させたポリエチレンテレフタレートマスターチップ(マスターチップ総量に対して二酸化チタン50重量%含有)を0.2重量部調整混合した。
(表層(A))
一方、表層(A)を構成する原料として、上で作成したポリエチレンテレフタレート1を70重量部と、無機粒子として、数平均二次粒径0.25μmの二酸化チタン50重量%を分散させたポリエチレンテレフタレートマスターチップ(マスターチップ総量に対して二酸化チタン50重量%含有)を30重量部とを、調整混合し、表層材料Aとする。これを180℃の温度で3時間真空乾燥した後、280℃の温度に加熱された押出機Aに投入する。
(積層ポリエステルフィルム)
押出機A、Bに供給されたポリマーを、A/B/A(表層/基材層/表層)となり、フィルム層の厚み比で15:120:15となるように積層装置を通して積層し、Tダイからシート状に成形しフィルムを得た。さらに、このフィルムを、表面温度が25℃の冷却ドラムで冷却固化して得られた未延伸フィルムを、85〜98℃の温度に加熱されたロール群に導き、長手方向に3.4倍縦延伸し、21℃の温度のロール群で冷却した。続いて、このようにして得られた縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、120℃の温度に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向に3.6倍横延伸した。その後、テンター内で200℃の温度の熱固定を行い、均一に徐冷後、25℃まで冷却して、巻き取り厚み150μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムを太陽電池バックシートとして使用した際のモジュール化による発電向上率は、8.3%であり、物性は表のとおりである。この実施例1においては、製膜安定性があった。
[実施例2]
基材層(B)に添加する硫酸バリウムを数平均粒子径0.8μmのアクリル粒子に変更した以外は実施例1と同じ方法で製膜を実施し、物性を確認したところ表の通りとなった。
[実施例3]
基材層(B)に添加する硫酸バリウムを数平均粒子径0.8μmの炭酸カルシウム粒子に変更した以外は実施例1と同じ方法で製膜を実施し、物性を確認したところ表の通りとなった。
[実施例4]
実施例1と使用する原料A、Bは同じにして、積層装置を(A/B=表層/基材層)となり、フィルム層の厚み比で30:120となるようにした以外は、実施例1と同様に製膜した。
[実施例5、6]
基材層(B)の硫酸バリウムマスターに使用する硫酸バリウムの粒子径偏在率を1.0、3.0に変更したものと変更する以外は実施例1と同じ方法で製膜した。
[実施例7]
基材層(B)の硫酸バリウムマスターに使用する硫酸バリウムの歪度を2.0に変更したものと変更する以外は実施例1と同じ方法で製膜した。
[実施例8、9]
基材層(B)の硫酸バリウムマスターに使用する硫酸バリウムの50%体積粒子径を1.0、0.5μmに変更したものと変更する以外は実施例1と同じ方法で製膜した。これらのフィルムは実施例1に対して破れが起こりやすいフィルムとなっており、発電向上率も実施例1に対して小さいものであった。
[実施例10]
基材層(B)について実施例1に記載の混率ではなく、下の混率を用いて製膜を実施した。
すなわち、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールの共重合物(PBT/PTMG、商品名:東レデュポン社製“ハイトレル”(登録商標))を10重量部と、全ジオール単位中1,4−シクロヘキサンジメタノールを33mol%共重合された共重合ポリエチレンテレフタレート(PET/CHDM)を10重量部と、非相溶ポリマーとして環状オレフィン共重合体としてガラス転移温度Tgが190℃であるエチレン−ノルボルネン共重合体(COC)40重量部と50%体積粒子径0.8μmの硫酸バリウムを分散させたポリエチレンテレフタレートマスターチップ(マスターチップ総量に対して硫酸バリウム50重量%含有)30重量部を調整混合した。
[実施例11]
実施例1のポリエチレンテレフタレート1ではなく、下に記載のポリエチレンテレフタレート2を使用して製膜を実施した。
すなわち、テレフタル酸100重量部、エチレングリコール57.5重量部、酢酸マンガン0.03重量部(Mn金属元素換算で1.35mol/t)、三酸化アンチモン0.03重量部を150℃、窒素雰囲気下で溶融後、攪拌しながら230℃まで3時間かけて昇温し、メタノールを留出させ、エステル交換反応を終了した。
エステル交換反応終了後、リン酸0.005重量部(P元素換算で0.52mol/t相当)とリン酸二水素ナトリウム2水和物0.021重量部(P元素換算で1.3mol/t相当)をエチレングリコール0.5重量部に溶解したエチレングリコール溶液(pH5.0)を添加した。その後、重合反応を最終到達温度285℃、真空度0.1Torrで行い、固有粘度0.52、カルボキシル基量16eq/tのポリエチレンテレフタラートを得た。得られたポリエチレンテレフタレートを160℃で6時間乾燥、結晶化させたのち、220℃、真空度0.3Torr、14時間の固相重合を行い、固有粘度1.0、末端カルボキシル基量8.0eq/t、融点255℃、ガラス転移温度Tg82℃のポリエチレンテレフタレート2とした。
[実施例12]
実施例1のポリエチレンテレフタレート1ではなく、下に記載のポリエチレンテレフタレート3を使用して製膜を実施した。
すなわち、テレフタル酸100重量部、エチレングリコール57.5重量部、酢酸マンガン0.03重量部(Mn金属元素換算で1.35mol/t)、三酸化アンチモン0.03重量部を150℃、窒素雰囲気下で溶融後、攪拌しながら230℃まで3時間かけて昇温し、メタノールを留出させ、エステル交換反応を終了した。
エステル交換反応終了後、リン酸0.005重量部(P元素換算で0.52mol/t相当)とリン酸二水素ナトリウム2水和物0.021重量部(P元素換算で1.3mol/t相当)をエチレングリコール0.5重量部に溶解したエチレングリコール溶液(pH5.0)を添加した。その後、重合反応を最終到達温度285℃、真空度0.1Torrで行い、固有粘度0.52、カルボキシル基量16eq/tのポリエチレンテレフタラートを得た。得られたポリエチレンテレフタレートを160℃で6時間乾燥、結晶化させたのち、220℃、真空度0.3Torr、2時間の固相重合を行い、固有粘度0.7、末端カルボキシル基量20.0eq/t、融点255℃、ガラス転移温度Tg82℃のポリエチレンテレフタレート3とした。
[実施例13]
基材層(B)について下の混率に変更して製膜を実施した。
すなわち、上述の方法で作成したポリエチレンテレフタレート1を14重量部と、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールの共重合物(PBT/PTMG、商品名:東レデュポン社製“ハイトレル”(登録商標))を8重量部と、全ジオール単位中1,4−シクロヘキサンジメタノールを33mol%共重合された共重合ポリエチレンテレフタレート(PET/CHDM)を8重量部と、非相溶ポリマーとして環状オレフィン共重合体としてガラス転移温度Tgが190℃であるエチレン−ノルボルネン共重合体(COC)10重量部と50%体積粒子径0.8μmの硫酸バリウムを分散させたポリエチレンテレフタレートマスターチップ(マスターチップ総量に対して硫酸バリウム50重量%含有)30重量部、無機粒子として、数平均二次粒径0.25μmの二酸化チタン50重量%を分散させたポリエチレンテレフタレートマスターチップ(マスターチップ総量に対して二酸化チタン50重量%含有)を30重量部調整混合した。
[実施例14]
基材層(B)について実施例1の方法から変更して下の混率としてそれ以外は実施例1と同じ方法で製膜を実施した。
すなわち、ポリエチレンテレフタレート1を13.8重量部と、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールの共重合物(PBT/PTMG、商品名:東レデュポン社製“ハイトレル”(登録商標))を8重量部と、全ジオール単位中1,4−シクロヘキサンジメタノールを33mol%共重合された共重合ポリエチレンテレフタレート(PET/CHDM)を8重量部と、非相溶ポリマーとして環状オレフィン共重合体としてガラス転移温度Tgが190℃であるエチレン−ノルボルネン共重合体(COC)10重量部と50%体積粒子径0.8μmの硫酸バリウムを分散させたポリエチレンテレフタレートマスターチップ(マスターチップ総量に対して硫酸バリウム50重量%含有)60重量部、無機粒子として、数平均二次粒径0.25μmの二酸化チタン50重量%を分散させたポリエチレンテレフタレートマスターチップ(マスターチップ総量に対して二酸化チタン50重量%含有)を0.2重量部調整混合した。
[比較例1]
基材層(B)について上述の方法で作成したポリエチレンテレフタレート1を43.8重量部と、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールの共重合物(PBT/PTMG、商品名:東レデュポン社製“ハイトレル”(登録商標))を8重量部と、全ジオール単位中1,4−シクロヘキサンジメタノールを33mol%共重合された共重合ポリエチレンテレフタレート(PET/CHDM)を8重量部と、非相溶ポリマーとして環状オレフィン共重合体としてガラス転移温度Tgが190℃であるエチレン−ノルボルネン共重合体(COC)10重量部と50%体積粒子径0.8μm、歪度0の硫酸バリウムを分散させたポリエチレンテレフタレートマスターチップ(マスターチップ総量に対して硫酸バリウム50重量%含有)30重量部、無機粒子として、数平均二次粒径0.25μmの二酸化チタン50重量%を分散させたポリエチレンテレフタレートマスターチップ(マスターチップ総量に対して二酸化チタン50重量%含有)を0.2重量部調整混合した。
[比較例2]
基材層(B)について上述の方法で作成したポリエチレンテレフタレート1を43.8重量部と、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールの共重合物(PBT/PTMG、商品名:東レデュポン社製“ハイトレル”(登録商標))を8重量部と、全ジオール単位中1,4−シクロヘキサンジメタノールを33mol%共重合された共重合ポリエチレンテレフタレート(PET/CHDM)を8重量部と、非相溶ポリマーとして環状オレフィン共重合体としてガラス転移温度Tgが190℃であるエチレン−ノルボルネン共重合体(COC)10重量部と50%体積粒子径0.8μm、歪度3の硫酸バリウムを分散させたポリエチレンテレフタレートマスターチップ(マスターチップ総量に対して硫酸バリウム50重量%含有)30重量部、無機粒子として、数平均二次粒径0.25μmの二酸化チタン50重量%を分散させたポリエチレンテレフタレートマスターチップ(マスターチップ総量に対して二酸化チタン50重量%含有)を0.2重量部調整混合した。
[比較例3]
実施例1の表層(A)の押し出し機Aを使用せず、基材層(B)のみの150μmの単膜フィルムとしてそれ以外は実施例1と同じ方法で製膜を実施し、物性を確認したところ表の通りとなった。
Figure 2018034349
Figure 2018034349
本発明のポリエステルフィルムは、高い光反射特性を持つことにより太陽電池の発電効率を向上させることができ、かつ、耐湿熱性に優れる太陽電池バックシート用途に好適に用いることができる。
1:太陽電池
2:太陽電池バックシート
3:裏側封止材
4:表側封止材
5:カバー材
6:太陽電池セル
7:表層
8:基材層
9:表層

Claims (7)

  1. 表層(A)、基材層(B)を有する少なくとも2層からなるポリエステルフィルムであって、以下(1)〜(3)を満たすポリエステルフィルム。
    (1)表層(A)が、ルチル型酸化チタンを10〜30重量%含有すること。
    (2)基材層(B)が、粒子を2〜45重量%含有し、基材層(B)に含有する粒子が下記方法により求められる歪度が1以上3以下、粒子径偏在率が2.0未満であること。
    (3)表層(A)が少なくとも一方の表層にあり、かつ、前記基材層の少なくとも一方の面に設けられていること。
    [歪度、粒子径偏在率の測定方法]
    1.ポリエステルフィルムの厚み方向に対して垂直方向に切削した断面を電界放射走査型電子顕微鏡JSM−6700F(日本電子(株)製)を用いて10000倍に拡大して観察する。
    2.断面観察において任意に選び出した2500個の粒子径(円相当径)を測定し、横軸を粒子径、縦軸を粒子の存在比率としてプロットした体積基準粒度分布を得る
    3.歪度は、歪度(G)=Σ{n(X−X}/(SDΣn)により求める。式中、nCは上記体積基準粒度分布における各粒子径における粒子の存在比率(%)、Xは各粒子の粒子径(μm)、Xは平均粒子径(μm)、SDは粒度分布の標準偏差(μm)を表す。
    4.粒子径偏在率は、粒子径偏在率(R)=D90−D10/D50、により求める。式中、D10は上記体積基準粒度分布における10%体積粒子径、D50は上記体積基準粒度分布における50%体積粒子径、D90は上記体積基準粒度分布における90%体積粒子径を表す。
  2. 前記基材層(B)が、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アクリルから選ばれる少なくとも1種の粒子を2〜30重量%、ルチル型酸化チタン粒子を0.1〜15重量%含有する請求項1に記載のポリエステルフィルム。
  3. 前記炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム、アクリルから選ばれる少なくとも1種の粒子の50%体積粒子径D50が0.8〜1.0μmである請求項1または2に記載のポリエステルフィルム。
  4. 基材層(B)が空洞を含有しており、その空洞含有率が4〜40体積%である請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  5. ポリエステルフィルムの重量平均分子量が35000以上47000未満である請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  6. ポリエステルフィルムのCOOH末端基濃度が6〜25(当量/トン)である請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  7. 太陽電池バックシートに用いられる請求項1〜6のいずかに記載のポリエステルフィルム。
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