JP2018028298A - エンジン点火装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 点火時期のバラツキを小さくしてエンジン回転数の変動幅を小さく抑えることができるようにする。【解決手段】 エンジン回転に同期して発生する所定の基準波形から所定の遅延時間を計時して点火信号を出力するようにしたエンジン点火装置において、点火時期特性から得た1回転前のエンジン回転数に対応する可変遅延時間により点火制御を行う通常点火制御手段31と、遅延時間を略一定に固定する一定遅延時間により点火制御を行う特定点火制御手段32と、通常点火制御手段31と特定点火制御手段32とを切り替える切り替え手段27とを備える。切り替え手段27はエンジン回転数が安定状態にあるときに特定点火制御手段32に切り替え、エンジン回転数が非安定状態のときに通常点火制御手段31に切り替える。【選択図】図5

Description

本発明はエンジン点火装置に関し、エンジン回転数の安定化を図るようにしたものである。
2サイクルエンジン等の小型汎用エンジンには、コンデンサ充放電式等のエンジン点火装置を使用したものがある。このエンジン点火装置は、エンジンにより駆動される磁石式発電機と、この磁石式発電機のソースコイルに誘起する出力電圧により充電される充放電コンデンサと、点火プラグに接続された点火コイルと、オン時に充放電コンデンサの電荷を点火コイルを経て放電するスイッチング素子と、1回転前のエンジン回転数を条件に所定の点火時期特性X(図20参照)に従って点火時期を算出し、次の1回転時にその点火時期にスイッチング素子をオンさせるマイコン式等の点火時期制御手段とを備えている(特許文献1)。
磁石式発電機のソースコイルには、一般に図19に示すように、エンジンの正転時の1回転毎に上死点Qの前後近傍を中心に第1の正の出力波形Vp1、第1の負の出力波形Vn1、第2の正の出力波形Vp2、第2の負の出力波形Vn2の順に出力波形が交互に発生する。
なお、図20の点火時期特性Xは、低速回転域x1が上死点Q前約20°、アイドル回転域x2が上死点Q前約5°、高速回転域x3が上死点Q前約35°、加減速回転域x4が上死点Q前約5〜35°に夫々設定されている。
点火時期制御手段はディジタル制御方式を採用し、第1の正の出力波形Vp1の発生周期からエンジン回転数T0,T1,T2,T3・・・を求めて、点火時期特性X(図16参照)のデータテーブルに基づいて1回転前のエンジン回転数T0,T1,T2,T3・・・に対応する点火時期、例えば第1の正の出力波形Vp1から点火信号pを出力するまでのエンジン回転数T0,T1,T2,T3・・・に対応する可変遅延時間s1,s2,s3・・・を読み出し、エンジンの回転毎に第1の正の出力波形Vp1から1回転前のエンジン回転数T0,T1,T2,T3・・・に対応する可変遅延時間s1,s2,s3・・・が経過したときにスイッチング素子に点火信号pを出力する。
特開2012−7576号公報
例えば、手持ち式エンジンを搭載した刈り払い機では、実際の作業時にスロットル開度を略一定に固定し、5000〜6000r/min程度のエンジン回転数を維持しながら作業を行うことが多い。しかし、従来の制御方式では、スロットル開度が略一定であっても、負荷変動等に伴ってエンジン回転数の変動幅が大きくなりエンジン回転数が安定しないという問題がある。
例えば、図20に示すような点火時期特性Xに従ってエンジン回転数5000r/minのときに上死点Q前15°の点火時期狙いで点火制御する場合には、次のような問題がある。
即ち、図19に示すように、1回転前のエンジン回転数T0が5000r/minであれば、そのエンジン回転数T0に対応する、次のエンジン回転数T1での回転時の可変遅延時間s1を読み出して、そのエンジン回転数T1での回転時に第1の正の出力波形Vp1から点火信号pを出力するまでの可変遅延時間s1を計時し、この可変遅延時間s1が経過したときに上死点Q前約15°の点火時期で点火信号pを出力する。以下、エンジン回転数T1,T2,T3・・・に応じて同様の動作を繰り返す。従って、エンジン回転数T0,T1,T2,T3・・・が5000r/minである限り、上死点Q前約15°狙いの点火制御を継続する。
しかし、実際には上死点Q前約15°で点火すれば、そのときの負荷が軽負荷又は無負荷状態のときには、その次の1回転のエンジン回転数T2(例えば5500r/min)が上昇する。そのため図19に示すように1回転前のエンジン回転数T1(例えば5000r/min)に対応して、次の1回転時の可変遅延時間s2(=上死点Q前15°)を読み出し、第1の正の出力波形Vp1から遅延時間s2を計時して上死点Q前15°の点火時期で点火信号pを出力すべく制御しても、実際の点火時期はエンジン回転数T2の上昇により、相対的に上死点Q前10°前後まで遅れることになる。
また逆に点火時期(=上死点Q前10°前後)の遅れがあると、それによって次の1回転のエンジン回転数T3(例えば5000r/min)が低下する。そのため1回転前の早いエンジン回転数T2を条件に、次の1回転時の可変遅延時間s3(=上死点Q前20°)を読み出して、第1の正の出力波形Vp1から遅延時間s3を計時して上死点Q前20°の点火時期で点火信号pを出力すべく制御する。しかし、実際の点火時期はエンジン回転数T3の低下により、相対的に上死点Q前24°前後まで進むことになる。
このように従来の点火時期制御の場合には、5000r/minの上側の半分の回転域を見ても、実際の点火時期が図21に示すように狙いとする上死点Q前15°の点火時期t15に対して、上死点Q前10°の遅角時期t10と上死点Q前24°の進角時期t24との間で各回転毎に遅角、進角を繰り返すこととなり、エンジン回転数の回転変動が非常に大きくなる問題がある。
そして、エンジン回転数の回転変動が大きくなれば、その回転変動に伴ってエンジンの振動及び振幅が大きくなり、手持ち式エンジンを搭載した刈り払い機やチェーンソー等の作業機では、作業者に対して非常に大きな負担を強いることとなる。
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、点火時期のバラツキを小さくしてエンジン回転数の変動幅を小さく抑えることができるエンジン点火装置を提供することを目的とする。
本発明は、エンジン回転に同期して発生する所定の基準波形から所定の遅延時間を計時して点火信号を出力するようにしたエンジン点火装置において、1回転前のエンジン回転数に対応する可変遅延時間により点火制御を行う通常点火制御手段と、遅延時間を略一定に固定された一定遅延時間により点火制御を行う特定点火制御手段とを備えたものである。
通常点火制御手段と特定点火制御手段とを切り替える切り替え手段を備えることが望ましい。切り替え手段は手動操作式であってもよい。切り替え手段は通常点火制御手段による点火制御でのエンジン回転数が安定状態のときに特定点火制御手段に切り替え、特定点火制御手段による点火制御でのエンジン回転数が非安定状態のときに通常点火制御手段に切り替えるようにしてもよい。
切り替え手段はスロットル開度が略一定での通常点火制御手段による点火制御においてエンジン回転数が安定状態のときに特定点火制御手段に切り替えるようにしてもよい。切り替え手段はエンジン回転数が所定の変動幅内に収まるエンジン回転が所定回数継続したときに特定点火制御手段に切り替えるようにしてもよい。
特定点火制御手段から通常点火制御手段に切り替えるときの下限側のエンジン回転数は、通常点火制御手段から特定点火制御手段に切り替えるときの下限側のエンジン回転数よりも小であってもよい。特定点火制御手段は特定回転域内でエンジン回転数に応じて高回転時に点火時期を遅角させて低回転時に点火時期を進角させるようにしてもよい。
特定点火制御手段は一定遅延時間を補正する遅延時間補正手段を備えたものでもよい。遅延時間補正手段は前後の回転周期又は前後のエンジン回転数を比較して加減速状態の何れかを判定して、加速状態のとき一定遅延時間を短く補正し、減速状態のときに一定遅延時間を長く補正することもある。
遅延時間補正手段は前後の回転周期又は前後のエンジン回転数を比較して加減速状態の何れかを判定して、加速状態のとき一定遅延時間を長く補正し、減速状態のときに一定遅延時間を短く補正することもある。
遅延時間補正手段は前後の回転周期の周速差又は前後のエンジン回転数の回転数差から変化度を求め、その変化度に応じて一定遅延時間を補正するようにしてもよい。遅延時間補正手段は前後の回転周期又は前後のエンジン回転数の変化度に比例した補正値を求め、この補正値を一定遅延時間に加算して補正するようにしてもよい。
本発明によれば、点火時期のバラツキを小さくしてエンジン回転数の変動幅を小さく抑えることができる利点がある。
本発明の第1の実施形態を示す磁石式エンジン点火装置の回路図である。 同磁石式発電機の構成図である。 同点火制御のタイムチャートである。 同点火制御のタイムチャートである。 同エンジン点火装置のブロック図である。 同エンジン点火時のフローチャートである。 同点火時期特性図である。 同点火時期の説明図である。 本発明の第2の実施形態を示すエンジン点火装置のブロック図である。 同エンジン点火時のフローチャートである。 同点火時期特性図である。 本発明の第3の実施形態を示すエンジン点火時のフローチャートである。 同点火時期特性図である。 同エンジン回転が安定する過程の説明図である。 同エンジン回転が安定する過程の説明図である。 本発明の第4の実施形態を示すエンジン点火装置のブロック図である。 本発明の第5の実施形態を示すエンジン点火装置のブロック図である。 同エンジン点火時のフローチャートである。 従来の点火制御のタイムチャートである。 点火時期特性図である。 従来の点火時期を示す説明図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳述する。
図1〜図8は本発明の第1の実施形態を例示する。図1は本発明の磁石式エンジン点火装置20を示す。このエンジン点火装置20は、エンジン回転により駆動される磁石式発電機1と、点火プラグ2に接続された点火コイル3と、磁石式発電機1のソースコイル4に発生する正の出力波形Vp2(図3、図4参照)によりダイオード5,6を介して充電される充放電用コンデンサ7と、点火信号pによるオン時に充放電用コンデンサ7の電荷を点火コイル3の一次側に放電させる放電用スイッチング素子8と、ソースコイル4に発生する負の出力波形Vn1によりダイオード9を介して充電される電源回路10と、電源回路10の電源電圧Vccの立ち上がりによって動作するマイコン11により構成され且つ正の出力波形Vp1の発生タイミングに基づいて1回転前のエンジン回転数に対応する点火時期で放電用スイッチング素子8に点火信号pを出力する点火時期制御手段12とを備えている。なお、ソースコイル4は発電コイルを構成する。
磁石式発電機1は、図2に示すように、エンジンのクランク軸13の一端に装着されて矢印方向に回転するロータ14と、このロータ14の外周でエンジンのクランクケース等の固定側に装着されたステータ15とを備えている。
ロータ14の外周側には、回転方向の両側にN及びSの磁極を有する磁石16が埋設されている。ステータ15は一対の脚部17がロータ14の外周面に近接して配置された鉄心18と、この鉄心18に一方の脚部17に巻装された点火コイル3及びソースコイル4とを備えている。
ソースコイル4には、図3、図4に示すように、エンジンの正転時の1回転毎に上死点Qの前後近傍を中心に第1の正の出力波形Vp1、第1の負の出力波形Vn1、第2の正の出力波形Vp2、第2の負の出力波形Vn2の順に出力波形が交互に発生する。電源回路10はソースコイル4の第1の負の出力波形Vn1により充電され、マイコン11に電源を供給するようになっている。なお、ソースコイル4はロータ14、ステータ15の構成によって出力波形の出力数が決まるが、出力波形は二つ又は三つでもよい。
点火時期制御手段12はRAM、ROM、CPU等を有するマイコン11により構成されており、図5に示すように入力処理手段21と回転数計測手段22と点火時期特性記憶手段23と可変遅延時間算出手段24と一定遅延時間記憶手段25と点火信号出力制御手段26と切り替え手段27とを有する。
入力処理手段21はソースコイル4に発生する第1の正の出力波形Vp1、第1の負の出力波形Vn1、第2の正の出力波形Vp2、第2の負の出力波形Vn2等を波形成形すると共に、交互に発生する出力波形Vp1、Vn1、Vp2、Vn2を正規波形として認識し、正又は負の出力波形が続くときには、先の出力波形を正規波形として後の出力波形を認識しないように処理する。
回転数計測手段22は、図3、図4に示すように、ソースコイル4の第1の正の出力波形Vp1に基づいて、その前後二つの第1の正の出力波形Vp1間の回転周期から、単位時間当たりのエンジン回転数T0,T1,T2・・・を計測するようになっている。
点火時期特性記憶手段23はエンジンの通常回転時の点火制御に必要な点火時期特性X(例えば図7参照)のデータテーブルを記憶するためのものである。この点火時期特性記憶手段23のデータテーブルには、各回転時に点火時期特性Xに従って上死点Qよりも進角側で点火できるように、エンジン回転数に対応する遅延時間(点火時期)が設定されている。なお、点火時期特性Xは所定のエンジン出力(加減速性能等)が得られるように、エンジンの使用目的等に応じて適宜決定されている。従って、図7に示す点火時期特性Xに限定されるものではない。
可変遅延時間算出手段24は、点火時期特性記憶手段23に記憶された点火時期特性Xのデータテーブルから、回転数計測手段22で計測された1回転前のエンジン回転数T0,T1,T2・・・に対応する可変遅延時間s1,s2,s3・・・(図3、図4参照)を読み出して算出するためのものである。
遅延時間はソースコイル4の第1の正の出力波形Vp1を基準に、その第1の正の出力波形Vp1から点火信号pを出力するまでに要する時間であり、この遅延時間にはエンジン回転数T0,T1,T2・・・に対応する可変遅延時間s1,s2,s3・・・と、後述の略一定に固定された一定遅延時間sとがある。
なお、可変遅延時間s0,s1,s2,s3・・・は当該回転よりも前のエンジン回転数T0,T1,T2・・・に対応しておればよく、1回転前の1回のエンジン回転数の他、1回転前の前後2回のエンジン回転の平均値に基づいて算出してもよい。
点火信号出力制御手段26はエンジン回転が通常回転状態のときには点火時期特性Xに基づいて得た1回転前のエンジン回転数T0,T1,T2・・・に対応する可変遅延時間s1,s2,s3・・・に従って点火時期を制御し、またエンジン回転が特定回転域B(図7参照)内で安定した状態にあるときに一定遅延時期sに従って点火時期を制御するためのものであり、通常点火制御手段31と特定点火制御手段32とを備え、切り替え手段27の制御によりその何れかに択一的に切り替えるようになっている。
通常点火制御手段31は始動時、加減速時等を含む通常回転状態(非安定状態)にあるときの点火時期を点火時期特性Xに基づいて点火制御するためのものであり、各回転毎に第1の正の出力波形Vp1から可変遅延時間s1,s2,s3・・・が経過したときに点火信号pを出力するように構成されている。
特定点火制御手段32はエンジン回転が特定回転域B内で安定状態にあるときの点火時期を制御するためのもので、各回転毎に一定遅延時間記憶手段25に記憶された一定遅延時間sを読み出して、第1の正の出力波形Vp1からその一定遅延時間sが経過したときに点火信号pを出力するように構成されている。
一定遅延時間記憶手段25は第1の正の出力波形Vp1から点火信号pを出力するまでの略一定に固定された一定遅延時間sを記憶するものである。なお、この一定遅延時間sはエンジンの用途等を考慮して適宜設定すればよい。
切り替え手段27は、点火信号出力制御手段26の通常点火制御手段31と特定点火制御手段32とを自動的に切り替えるためのもので、回転数比較手段29と継続回数判定手段30とを備え、エンジン回転数が安定状態と非安定状態との何れであるかを判定して、安定状態のときに通常点火制御手段31から特定点火制御手段32に切り替え、スロットル操作等でエンジン回転数が非安定状態になれば、特定点火制御手段32から通常点火制御手段31に切り替えるようになっている。
回転数比較手段29は各回転毎に前後のエンジン回転数を比較して、その回転数差が所定の変動幅R内か否かを判断するようになっている。即ち、回転数比較手段29には変動幅R(例えばR=±500r/min)が予め設定されており、各回転毎に前々回のエンジン回転数T1と前回のエンジン回転数T2とを比較して回転数差T1−T2を求めて、その回転数差T1−T2が変動幅R内か否かを判断して、その何れかの判断結果を出力するようになっている。
変動幅Rは、作業条件に応じて作業負荷が変動する作業機搭載用のエンジンにおいて、通常の負荷変動に伴うエンジン回転数の変動幅よりも大に設定されている。そのため通常の作業負荷で作業を継続する限りは、その負荷変動程度ではエンジン回転数が不安定に変動幅Rを越えることはない。
継続回数判定手段30は回転数比較手段29から変動幅R内の判定結果が継続するときにその継続回数を計数し、その継続回数が予め設定された所定の判定回数A(例えばA=1000回)に達したときに、エンジン回転数が特定回転域B内で安定状態にあるものと判断して、通常点火制御手段31側から特定点火制御手段32側に切り替えるようになっている。
なお、特定点火制御手段32による点火制御において、回転数差T1−T2が変動幅Rを超えたときには、特定点火制御手段32による点火制御を解除して通常点火制御手段31による通常点火制御に戻るようになっている。
従って、切り替え手段27は、例えば通常点火制御手段31による点火制御において、スロットル開度を一定にして作業を開始した後にエンジン回転数T1,T2の回転数差T1−T2が変動幅R内に収まり、その状態でのエンジン回転が判定回数Aだけ継続したときに特定回転域B内と判定して特定点火制御手段32による点火制御に切り替え、また特定点火制御手段32による点火制御において、スロットル開度の変更による加減速操作等で前後のエンジン回転数T1,T2の回転数差T1−T2が変動幅Rから外れたときに特定回転域B外の通常回転と判断して通常点火制御手段31による点火制御に戻すことが可能である。
そのため前後のエンジン回転数T1,T2の回転数差T1−T2が変動幅R内に入れば、それによってスロットル開度を一定にして何等かの実作業を開始したものと推定することができる。
なお、切り替え手段27はユーザーのスロットル開度の変更によりエンジン回転数が増減速して特定回転域B外になったときに特定点火制御手段32から通常点火制御手段31に切り替えるため、ユーザーの操作により特定点火制御手段32を解除して通常点火制御手段31に戻す解除手段を構成することになる。
また切り替え手段27は前後のエンジン回転数T1,T2の回転数差T1−T2が変動幅R内に入ること、及びその状態でのエンジン回転が所定の判定回数A継続することの二点を条件に特定回転域Bを判定するため、その場合の特定回転域Bは所定の負荷状態で安定的に作業を行う実作業回転域に限定されるものではなく、アイドリング状態でエンジン回転が安定するアイドリング回転域、その他の回転域も含まれることになる。
次に図6のフローチャートを参照しながら点火時の動作を説明する。エンジンが始動すると、その1回転毎にソースコイル4に図3、図4に示すように第1の正の出力波形Vp1、第1の負の出力波形Vn1、第2の正の出力波形Vp2、第2の負の出力波形Vn2が交互に発生する。
通常、点火時期制御手段12では、入力処理手段21による入力処理後に第1の正の出力波形Vp1の立ち上がりを認識し(ステップS1)、次いで回転数計測手段22がエンジンの1回転毎に前後二つの正の出力波形Vp1間の周期からエンジン回転数T0,T1,T2・・・を計測する(ステップS2)。そして、可変遅延時間算出手段24が1回転前のエンジン回転数T0,T1,T2・・・に対応する可変遅延時間s1,s2,s3・・・を読み出す(ステップS3)。
一方、切り替え手段27では、その回転数比較手段29が前々回のエンジン回転数T1,T2,T3・・・と前回のエンジン回転数T2,T3,T4・・・とを比較して、その前後の回転数差(T1−T2),(T2−T3),(T3−T4)・・・を求め、変動幅R内か否かを判断する(ステップS4)。
例えば、スロットルレバー等の操作手段を加速方向に操作してスロットル開度を上げて行くと、変動幅R以上の差でエンジン回転数が加速する。また逆に操作手段を減速方向に操作してスロットル開度を下げて行くと、変動幅R以上の差でエンジン回転数が減速する。
このような加減速時には、その回転数の差が変動幅R以上となるため、切り替え手段27の回転数比較手段29が変動幅R外と判定する。そのため点火信号出力制御手段26の通常点火制御手段31において、継続回数判定手段30が変動幅R内の継続回数のカウント中であれば、そのカウント値をリセットし(ステップS5)、回転数計測手段22にて計測されたその時点のエンジン回転数を外部記憶し(ステップS6)、可変遅延時間算出手段24で算出されたその時点のエンジン回転数に対応する可変遅延時間s1を外部記憶した後(ステップS7)、第1の正の出力波形Vp1から可変遅延時間s1,s2,s3・・・を計時して(ステップS8)、その可変遅延時間s1,s2,s3・・・が経過したときに点火信号pを出力する(ステップS9)。
従って、エンジンの始動直後はエンジン回転数T1,T2,T3・・・が大きく変動しており、このエンジン回転数T1,T2,T3・・・が安定状態となるまでは、通常点火制御手段31の制御により、エンジン回転数T1,T2,T3・・・に対応する可変遅延時間s1,s2,s3・・・に基づいて点火時期が決定される。
エンジン回転数が5000r/minに達するまでスロットル開度を上げた後に作業を開始し、その作業負荷によりエンジン回転数が安定して前々回のエンジン回転数T1001と前回のエンジン回転数T1002との回転数差(T1001−T1002)が変動幅R内になれば、回転数比較手段29が変動幅R内の比較結果を出力して(ステップS4)、1回転毎に継続回数判定手段30がその継続回数を計数し判定する(ステップS10,11)。
そして、安定状態でのエンジン回転の継続回数が判定回数Aに達するまでは(ステップS11)、エンジン回転が特定回転域B外の非安定状態にあるものと判断するため、通常点火制御手段31が可変遅延時間算出手段24で算出されたエンジン回転数T1002に対応する遅延時間s1002に従って点火制御を継続する(ステップS7〜S9)。
変動幅R内でのエンジン回転が判定回数Aに達すると、継続回数判定手段30がその時のエンジン回転が特定回転域B内で安定状態にあるものと判断し(ステップS11)、切り替え手段27が点火信号出力制御手段26の通常点火制御手段31から特定点火制御手段32に切り替え、この特定点火制御手段32による点火制御に移行する。
その後、特定点火制御手段32が一定遅延時間記憶手段25に記憶された一定遅延時間sを読み出して(ステップS12)、第1の正の出力波形Vp1から一定遅延時間sが経過することを契機に点火信号pを出力する点火制御を行う(ステップS7,S9)。
例えば、図7に示すようにエンジン回転数が5000±500r/minの特定回転域B内で変化する場合には、エンジン回転数5000r/minのときに上死点Q前15°で点火信号pを出力するように、一定遅延時間記憶手段25には上死点Q前15°の点火時期狙いの一定遅延時間s=1.5msが設定されている。
エンジン回転数が5000r/minと5500r/minとの間で変化する場合を図3に示し、エンジン回転数が5000r/minと4500r/minとの間で変化する場合を図4に示す。
例えば、エンジン回転数T2000が特定回転域B内の5000r/minであれば、図3、図4に示すように、特定点火制御手段32が一定遅延時間記憶手段25から一定遅延時間s=1.5msを読み出して、第1の正の出力波形Vp1から一定の遅延時間s=1.5msの経過を契機に点火信号pを出力するため、エンジン回転数T2001での回転時には上死点Q前15°の点火時期で狙い通り点火する。
そして、この上死点Q前15°での点火後に何らかの原因によって、図3に示すようにエンジン回転数T2002が5500r/minまで上昇すると、このエンジン回転数T2002での1回転ではそれに比例して第1の正の出力波形Vp1、第1の負の出力波形Vn1、第2の正の出力波形Vp2、第2の負の出力波形Vn2の周期が短くなる。そのためエンジン回転数T2002での回転時には、第1の正の出力波形Vp1から一定遅延時間s=1.5msで点火信号pを出力すると、点火時期が第1の負の出力波形Vn1の後の上死点Q前10°付近まで遅れて点火する。その結果、この上死点Q前10°付近での点火により、次のエンジン回転数T2003での回転時には5000r/minと遅くなる。
そして、エンジン回転数T2003での回転時に5000r/minまで低下すれば、第1の正の出力波形Vp1から一定の遅延時間s=1.5msが経過したときに点火信号pを出力するため、相対的に上死点Q前15°まで進角して狙い通りに点火することができる。
上死点Q前15°での点火後に負荷の増加、その他の原因によって、図4のエンジン回転数T2002での回転時に示すように、エンジン回転数が4500r/minまで低下すると、そのエンジン回転数T2002に比例して第1の正の出力波形Vp1、第1の負の出力波形Vn1、第2の正の出力波形Vp2、第2の負の出力波形Vn2の周期が長くなる。そのためエンジン回転数T2002での回転時に、第1の正の出力波形Vp1から一定遅延時間s=1.5msで点火信号pを出力すると、点火時期が第1の負の出力波形Vn1の後の上死点Q前20°付近まで進角して点火する。その結果、この上死点Q前20°付近での点火により、次の1回転のエンジン回転数T2003が速くなる。
この上死点Q前20°付近での点火により、エンジン回転数T2003が5000r/minまで上昇すれば、このエンジン回転数T2003での回転時には、第1の正の出力波形Vp1から一定の遅延時間s=1.5msが経過したときに点火信号pを出力するため、相対的に上死点Q前15°まで進角して狙い通りに点火することができる。
このようにエンジン回転数が安定状態にある特定回転域B内では、エンジン回転数の増減の如何に拘わらず、遅延時間を一定遅延時間sに固定して、第1の正の出力波形Vp1から一定遅延時間sが経過したときに点火信号pを出力する。これによって恰も、図7に示す特定点火時期特性XXに従って点火制御したかのような制御結果を得ることができる。
この図7の特定点火時期特性XXに従う点火制御では、エンジン回転数が5000r/minと5500r/minとの間で変化する場合には、図8の下半分に実線で示すように、1回転毎に狙いとする上死点Q前15°の点火時期t15と、これから遅角した上死点Q前10°の遅角時期t10との間で点火時期が変化し、逆にエンジン回転数が5000r/minと4500r/minとの間で変化する場合には、図8の上半分に点線で示すように、1回転毎に狙いとする上死点Q前15°の点火時期t15と、これから進角した上死点Q前20°の遅角時期t20との間で点火時期が変化することとなる。
この特定点火時期特性XXでは、遅延時間を一定遅延時間sに固定することにより、特定回転域B内のエンジン回転数に応じて、その高回転側では最大上死点Q前10°まで点火時期を遅角させて、低回転側では最大上死点Q前20°まで点火時期を進角させることができる。
その結果、エンジン負荷の低下等によってエンジン回転数が5500r/minまで上昇すれば、点火時期が上死点Q前10°まで遅角してエンジン回転数の上昇を抑え、またエンジン負荷の増加等によってエンジン回転数が4500r/minまで低下すれば、点火時期が上死点Q前20°まで進角してエンジン回転数の上昇を促すことができる。
従って、各回転毎の点火時期の変動幅を上死点Q前10°〜20°の狭い範囲内に制限することができ、エンジンの点火時期のバラツキによるエンジン回転数の上下変動幅を抑えてエンジン回転数の安定化を図ることができる。またエンジンの回転変動を抑制できるため、運転時のエンジンの振動を抑制することができる。
更に実際の作業等において、運転中に負荷が上がって出力が低下した場合には、点火時期が上死点Q前20°に進角してエンジン回転数の上昇を促すことができる効果があり、また負荷が下ってエンジン回転数が上昇した場合には、点火時期が上死点Q前10°に遅角して出力を下げる効果がある。そのため特定回転域B内での負荷の変動状況に応じて最適なエンジン出力を確保することができる。
スロットル開度の調整によって前後のエンジン回転数の回転数の差が±500r/minを超えた場合には、切り替え手段27が特定回転域B外と判定するので、特定点火制御手段32による一定遅延時間sでの点火制御を終了し、通常点火制御手段31がエンジン回転数に対応した可変遅延時間に基づいて点火時期を制御する。そのためエンジン回転数を加減速する加減速操作にも迅速に追従することができる。
なお、刈り払い機に搭載したエンジンの場合には、5000〜6000r/min前後で実作業を行うことが多いため、5000〜6000r/min内の任意のエンジン回転数で作業を開始すれば、そのエンジン回転数を中心に変動幅R(±500r/min)内に収まる特定回転域B内で安定的に作業を行うことができる。
しかし、前後のエンジン回転数の差が変動幅R内になるのは、アイドリング回転等の低速回転時は勿論のこと、上死点Q前30°又は35°での高進角で点火する高速回転時にも生じる。従って、エンジンの全回転範囲において、その何れかのエンジン回転数を中心に特定回転域Bを設定することができる。その場合の変動幅Rは、低速回転では小さく設定し、高速回転時は大きく設定する等、エンジン回転数の違いによって異なる値を設定してもよい。
図9〜図11は本発明の第2の実施形態を例示する。この実施形態は、特定回転域Bでの点火制御に際し、遅延時間を一定遅延時間sに固定しながらも、エンジンの搭載対象の作業機の種類、エンジンの作業負荷の軽重等を考慮して必要に応じて、その一定遅延時間sを適宜補正できるようにしたものである。
点火信号出力制御手段26の特定点火制御手段32には、図9に示すように遅延時間補正手段34が設けられている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
遅延時間補正手段34は前後のエンジンの回転周期、即ち前々回の回転周期と前回の回転周期とを比較して、前回の回転周期が前々回の回転周期よりも早い増速状態のときに遅延時間が短くなり、前回の回転周期が前々回の回転周期よりも遅い減速状態のときに遅延時間が長くなるように、一定遅延時間sに所定の補正値αを加減算して補正する。そのため特定点火制御手段32はエンジン回転が増速のときに補正遅延時間s−αで、減速のときに補正遅延時間s+αで夫々点火時期を制御することとなる。
即ち、この遅延時間補正手段34には、一定遅延時間sを補正するための補正値αが固定的に設定されている。そして、特定点火制御手段32では、一定遅延時間sを読み出した後(ステップ12)、その遅延時間補正手段34が前々回の回転周期と前回の回転周期とを比較してエンジン回転数が高回転状態か低回転状態かを判定し(ステップ13)、前回の回転周期が早い高回転状態のときには一定遅延時間sから補正値αを減算し(ステップ14)、前回の回転周期が遅い低回転状態のときには一定遅延時間sから補正値αを加算するようになっている(ステップ15)。
このように構成すれば、次のような利便性がある。即ち、一定遅延時間sに固定すれば、例えば図11に示すように、上死点Q前17°〜33°の特定点火時期特性XXに従って点火時期が進角し又は遅角する。しかし、このような場合でも、特定点火制御手段32に遅延時間補正手段34を設けることにより、図11の補正点火時期特性Xxで示すように、特定回転域Bの高回転側では上死点Q前23°と進角させ、また低回転側では上死点Q前27°と遅角させることが可能であり、点火時期の変動幅を更に小さく抑えることができる。なお、この実施形態では、変動幅R(=±1000r/min)とし、判定回数A(=1000回)としている。
点火制御に際して、図10に示すように、前後の回転数差が変動幅R内に収まる安定状態でのエンジン回転が所定の判定回数Aだけ継続して切り替え手段27が特定回転域Bと判断すると(ステップS11)、特定点火制御手段32が特定回転域B内の点火時期を制御する。
即ち、特定点火制御手段32では、一定遅延時間記憶手段25から一定遅延時間sを読み出した後(ステップS12)、前々回と前回との回転周期を比較して、現時点のエンジンの回転状態が高回転、低回転の何れの状態にあるかを判断する(ステップS13)。
現在のエンジン回転が高回転の場合には、一定遅延時間sから補正値αを減算して(ステップS14)、その補正後の補正遅延時間s−αに従って点火時期を制御する(ステップS8,S9)。この高回転時には、1回転当たりの回転周期が短くなるため、その回転周期に合わせて一定遅延時間sから補正値αを減算した短い補正遅延時間s−αに補正する。
また現在のエンジン回転が低回転の場合には、一定遅延時間sに補正値αを加算して(ステップS15)、その補正後の補正遅延時間s+αに従って点火時期を制御する(ステップS8,S9)。この低回転時には、1回転当たりの回転周期が長くなるため、その回転周期に合わせて一定遅延時間sに補正値αを加算した長い補正遅延時間s+αに補正する。
例えば、エンジン回転数6000r/minのときに上死点Q前25°狙いで点火すべく、図11の特定点火時期特性XXに従って遅延時間を一定遅延時間sに固定すれば、1回転当たりの回転周期が短くなる高回転の場合には、その一定遅延時間sがエンジンの回転周期に対して長くなり過ぎて実際の点火時期が大きく遅角し、また逆に1回転当たりの回転周期が長くなる低回転の場合には、その一定遅延時間sがエンジンの回転周期に対して短くなり過ぎて実際の点火時期が大きく進角する。
然るに、エンジン回転数に応じて一定遅延時間sに補正値αを加減算して補正して、エンジン回転が高回転の場合には、回転周期が短くなるのに合わせて短い補正遅延時間s−αとし、エンジン回転が低回転の場合には、周期が長くなるのに合わせて長い補正遅延時間s+αとすることにより、その一定遅延時間sをエンジンの回転周期に対応して補正することが可能である。
このようにエンジンの加減速に応じて一定遅延時間sを補正値αで補正することにより、図11の補正点火時期特性Xxに示すように、狙いの点火時期である上死点Q前25°を中心にして狭い範囲で点火時期を制御することができる。
図12〜図15は本発明の第3の実施形態を例示する。この実施形態では、変動幅R内でエンジン回転数が大きく変動する場合に、特定点火制御手段32の遅延時間補正手段34により、前後のエンジン回転数の変動幅に応じて、その割合で一定遅延時間sを補正して実際の点火時期を決定するようにしたものである。他の構成は各実施形態、取り分け第2の実施形態と略同様である。
この実施形態では、切り替え手段27は、図12に示すように、エンジン回転数の変動幅Rを=±2000r/minに設定し、その変動幅R内のエンジン回転が判定回数A(1000回)続いたときに特定回転域Bと判断する。そして、切り替え手段27が特定回転域Bと判断したときに、特定点火制御手段32の遅延時間補正手段34が前後の1回転の回転周期、前々回の回転周期と前回の回転周期とを比較して正又は負の回転周期差を求め(ステップS13)、その回転周期差の大小に応じた変化度±βを算出し(ステップS16)、一定遅延時間sにその変化度±βを加えて(ステップS17)、そのときのエンジン回転数の周期差の大小に応じた補正遅延時間s±βにより点火制御する(ステップS8、S9)。
このようにエンジンの前後の回転周期の違いの大小に応じた変化度±βを求めて、その変化度±βを一定遅延時間sに加算した補正遅延時間s±βで点火時期を制御してもよい。なお、周期差の変化度±βは前回の回転周期が前々回よりも早いときには補正遅延時間を長くすべく正の値となり、前回の回転周期が前々回よりも遅いときには補正遅延時間を短くすべく負の値となる。
この場合には、図13に示すように、特定点火時期特性XXから補正点火時期特性Xxに補正して点火時期を制御することとなり、一定遅延時間sでの点火時期制御に対して、特定回転域Bの高回転側では大きく遅角させ、また特定回転域Bの低回転側では大きく進角させることができる。そのためエンジン回転数が低下すれば点火時期が大きく進角し、逆にエンジン回転数が上昇すれば点火時期が大きく遅角することになり、負荷状態等によってエンジン回転数が大きく変動した場合にも、早期にエンジン回転数を安定させることができる。
例えば、作業中の負荷変動等によりエンジン回転数6000r/minからエンジン回転数8000r/minに急激に変動した場合には、一定遅延時間sでの特定点火時期特性XXによる点火時期制御であれば、図14に点線で示すように1回転毎に上死点Q前23°程度から徐々に上死点Q前25°へと進角しながら、それに伴って図15に点線で示すように1回転毎にエンジン回転数が徐々に低下して、元のエンジン回転数6000r/minに戻ることとなる。
しかし、補正遅延時間s±βでの補正点火時期特性Xxによる点火時期制御であれば、図14、図15に実線で示すように、エンジン回転数8000r/minに上昇しても、その直後の1〜2回転で点火時期が大きく進角、遅角しながら急速に上死点Q前25°に収斂し、この点火時期の変化、収斂に対応してエンジン回転数も大きな変化を経て急速に6000r/minに収斂する。
従って、エンジン回転数が急激に上昇し又は低下するような作業環境で使用するエンジンの場合には、上昇又は低下したエンジン回転数をその後の少ない回転回数で元のエンジン回転数に戻すことができるので、作業能率が向上し作業の安全性が向上する等、その利便性が著しく向上する利点がある。
図16は本発明の第4の実施形態を例示する。この実施形態では、切り替え手段27に特定点火制御移行部36と特定点火制御解除部37とが設けられている。特定点火制御移行部36は特定点火への移行に必要な移行変動幅R1(例えば=±500r/min)内でのエンジン回転が所定の判定回数A(例えば=1000回)まで継続したときに、特定点火制御手段32による特定回転域Bでの点火時期制御へと移行させるようになっている。
また特定点火制御解除部37は特定回転域Bでの点火時期制御において、負荷の増加等でエンジン回転数が解除変動幅R2(例えば=2000r/min以上)に低下したときに特定点火制御手段32によるによる点火制御を解除して、通常点火制御手段31による通常の点火時期制御に戻すようになっている。解除変動幅R2は移行変動幅R1よりも大である。
このようにすれば、作業時の負荷の増加でエンジン回転数が低下するような場合でも、そのエンジン回転数が解除変動幅R2以上に急激に低下するまでは、特定点火制御手段32による一定遅延時間sでの点火制御を継続するため、特定回転域Bの低回転側での点火時期を大きく進角させることができる。そのため負荷の増加によりエンジン回転数が一時的に低下するようなことがあっても、点火時期の進角によって負荷の増加に抗しながらエンジン回転数の回復を図ることができる。他の構成は各実施形態と同様である。
図17、図18は本発明の第5の実施形態を例示する。この実施形態では、図17に示すように、ユーザーが操作する手動操作式切り替え手段40が採用されており、ユーザーが手動操作式切り替え手段40を操作することにより、直接的又は間接的に点火信号出力制御手段26の通常点火制御手段31と特定点火制御手段32との何れかを選択できるようになっている。手動操作式切り替え手段40はユーザーがスロットルレバーを所定位置まで操作したときに動作するスイッチ、ユーザーが操作可能な押しボタンスイッチ等により構成されている。
点火制御に際しては、ユーザーが手動操作式切り替え手段40をオン・オフして、通常点火制御手段31での点火制御と、特定点火制御手段32での点火制御との何れかを選択する。
エンジンが始動すると、図18に示すようにステップS1〜S3を経た後、手動操作式切り替え手段40のオン・オフを確認(ステップS19)する。そして、手動操作式切り替え手段40がオフであれば、通常点火制御手段31がエンジン回転数T1,T2,T3・・・に対応する可変遅延時間s1,s2,s3・・・で点火時期を制御する点火制御を行う(ステップS7〜S9)。
また手動操作式切り替え手段40がオンであれば、特定点火制御手段32が一定遅延時間記憶手段26から一定遅延時間sを読み出して(ステップS12)、その一定遅延時間sで点火時期を制御する点火制御を行う(ステップS8,S9)。
従って、スロットル開度を一定にして略一定のエンジン回転数を保ちながら作業を行う場合には、手動操作式切り替え手段40をオンにして一定遅延時間sでの点火制御を採用することにより、特定点火時期特性XXに従ってエンジン回転数の安定化を図ることができる。
即ち、手動操作式切り替え手段40をオンすれば、特定点火制御手段32が一定遅延時sで点火時期を制御するので、他の実施形態と同様に特定点火時期特性XXに従っての点火制御となり、エンジン回転数が上昇すれば点火時期を遅角させ、エンジン回転数が低下すれば点火時期を進角させることができる。
従って、エンジン回転数が所定回転数まで上昇した後に、手動操作式切り替え手段40をオンした場合には、そのときのエンジン回転数を中心に変動幅R内の安定した回転状態に維持することが可能であり、作業時の利便性が向上する。
また手動操作式切り替え手段40をオフすれば、通常点火制御手段31がエンジン回転数T1,T2,T3・・・に対応する可変遅延時間s1,s2,s3・・・により通常の点火制御に戻り、通常通りに加速し減速することができる。
以上、本発明の各実施形態について詳述したが、本発明は各実施形態に限定されるものではない。例えば実施形態では、磁石式発電機1は第1の実施形態に例示のもの以外の構成でもよい。例えば、ソースコイル4の出力波形の数は1周期に1以上あればよい。
特定回転域Bへの移行、特定回転域Bから通常回転域への復帰(又は解除)は、エンジン回転数の安定化及びその継続回数により自動的に制御する他、手動操作により切り替えるようにしてもよい。特定回転域Bを判断する場合には、回転状態のエンジンの挙動等を考慮して、変動幅Rの回転範囲や継続回数を適宜設定すればよい。
また手動操作式切り替え手段40はユーザーが直接操作する切り替えスイッチの他、スロットル操作手段の他の操作を直接的又は間接的に検出する接触式又は非接触式のセンサ等を利用して行うようにしてもよい。
特定点火制御手段32による特定回転域Bの点火制御に移行した後は、ユーザーが解除スイッチ等を操作しない限り、通常点火制御手段31による通常点火制御に戻らないようにしてもよい。
特定回転域Bの点火制御で遅延時間を一定に固定する場合、その一定遅延時間sはエンジンの用途等を考慮して設定すればよい。また特定回転域Bの点火制御に用いる一定遅延時間sは一般的には一種類であるが、複数の特定点火時期特性XXを設けて、その何れかを択一的に選択して点火制御するようにしてもよい。
遅延時間補正手段34により一定遅延時間sを補正する場合には、現在のエンジン回転が加速状態、減速状態の何れかを判定して、加速状態のときには一定遅延時間sを短くし、減速状態のときには一定遅延時間sを長くするように、加減速状態の割合に応じた補正計数を加減算し、又は乗算するようにしてもよい。
また遅延時間補正手段34により一定遅延時間sを補正する場合には、前後の回転周期又は前後のエンジン回転数を比較して加減速状態の何れかを判定して、加速状態のとき一定遅延時間を長く補正し、減速状態のときに一定遅延時間を短く補正するようにしてもよい。
12 点火時期制御手段
26 点火信号出力手段
27 切り替え手段
31 通常点火制御手段
32 特定点火制御手段
34 遅延時間補正手段
40 手動操作式切り替え手段
A 判定回数
B 特定回転域
R 変動幅

Claims (13)

  1. エンジン回転に同期して発生する所定の基準波形から所定の遅延時間を計時して点火信号を出力するようにしたエンジン点火装置において、
    1回転前のエンジン回転数に対応する可変遅延時間により点火制御を行う通常点火制御手段と、
    遅延時間を略一定に固定された一定遅延時間により点火制御を行う特定点火制御手段とを備えた
    ことを特徴とするエンジン点火装置。
  2. 通常点火制御手段と特定点火制御手段とを切り替える切り替え手段を備えた
    ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン点火装置。
  3. 切り替え手段は手動操作式である
    ことを特徴とする請求項2に記載のエンジン点火装置。
  4. 切り替え手段は通常点火制御手段による点火制御でのエンジン回転数が安定状態のときに特定点火制御手段に切り替え、特定点火制御手段による点火制御でのエンジン回転数が非安定状態のときに通常点火制御手段に切り替える
    ことを特徴とする請求項2に記載のエンジン点火装置。
  5. 切り替え手段はスロットル開度が略一定での通常点火制御手段による点火制御においてエンジン回転数が安定状態のときに特定点火制御手段に切り替える
    ことを特徴とする請求項2又は4に記載のエンジン点火装置。
  6. 切り替え手段はエンジン回転数が所定の変動幅内に収まるエンジン回転が所定回数継続したときに特定点火制御手段に切り替える
    ことを特徴とする請求項2、4又は5に記載のエンジン点火装置。
  7. 特定点火制御手段から通常点火制御手段に切り替えるときの下限側のエンジン回転数は、通常点火制御手段から特定点火制御手段に切り替えるときの下限側のエンジン回転数よりも小である
    ことを特徴とする請求項2、4〜6の何れかに記載のエンジン点火装置。
  8. 特定点火制御手段は特定回転域内でエンジン回転数に応じて高回転時に点火時期を遅角させて低回転時に点火時期を進角させる
    ことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のエンジン点火装置。
  9. 特定点火制御手段は一定遅延時間を補正する遅延時間補正手段を備えた
    ことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載のエンジン点火装置。
  10. 遅延時間補正手段は前後の回転周期又は前後のエンジン回転数を比較して加減速状態の何れかを判定して、加速状態のとき一定遅延時間を短く補正し、減速状態のときに一定遅延時間を長く補正する
    ことを特徴とする請求項9に記載のエンジン点火装置。
  11. 遅延時間補正手段は前後の回転周期又は前後のエンジン回転数を比較して加減速状態の何れかを判定して、加速状態のとき一定遅延時間を長く補正し、減速状態のときに一定遅延時間を短く補正する
    ことを特徴とする請求項9に記載のエンジン点火装置。
  12. 遅延時間補正手段は前後の回転周期の周速差又は前後のエンジン回転数の回転数差から変化度を求め、その変化度に応じて一定遅延時間を補正する
    ことを特徴とする請求項9に記載のエンジン点火装置。
  13. 遅延時間補正手段は前後の回転周期又は前後のエンジン回転数の変化度に比例した補正値を求め、この補正値を一定遅延時間に加算して補正する
    ことを特徴とする請求項12に記載のエンジン点火装置。
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