JP2004092506A - 内燃機関用点火装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】内燃機関用点火装置1は、検出した遮断時一次電流平均値Iavが制御許容範囲内(It±Iθ)に含まれる場合(S740、S760で共に否定判定)には、補正量βの加算あるいは減算を行わず、前回補正時の通電時間調整値αn−1と同一値を今回の通電時間調整値αnに設定して、遮断時一次電流平均値Iavに基づくコイル通電時間Tonの補正を禁止する。よって、遮断時一次電流平均値Iavが制御目標電流値Itに一致しなくとも制御許容範囲(It±Iθ)に含まれる場合には、遮断時一次電流平均値Iavに基づくコイル通電時間Tonの補正は行われず、点火用高電圧のハンチング現象は発生しない。
【選択図】 図7
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、点火コイルの一次巻線に流れる一次電流を遮断することで二次コイルに点火用高電圧を発生させ、発生した点火用高電圧を点火プラグに印加することにより点火プラグの電極間に火花放電を発生させる内燃機関用点火装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電源装置からの電源電圧を点火コイルの一次巻線に印加(供給)して一次電流を一定時間通電した後、その一次電流を遮断することで、点火コイルの二次巻線に点火用高電圧を誘起させ、点火プラグに火花放電を発生させる電流遮断型の内燃機関用点火装置が知られている。
【0003】
この電流遮断型の内燃機関用点火装置においては、二次巻線にて発生する点火用高電圧の大きさが、点火コイルの一次/二次巻線の巻数比や、一次巻線への通電電流により点火コイルに蓄積された磁束エネルギの大きさ等によって決定される。なお、点火コイルの一次/二次巻線の巻数比は、点火コイルの製品仕様により定まる固定値であり、点火コイルに蓄積される磁束エネルギは、電源電圧および一次電流通電時間により決定される。
【0004】
そして、上記従来の電流遮断型の内燃機関用点火装置では、一般に、定電圧(例えば12(v))電源装置を用いており、一次電流通電時間を変化させることで、点火コイルに蓄積される磁束エネルギ量を変化させることができる。
このため、上記従来の内燃機関用点火装置では、火花放電が発生可能な点火用高電圧を確保するために、一次電流通電時間を十分に長く設定することで、火花放電の発生に必要な磁束エネルギを点火コイルに蓄積できるよう構成されている。
【0005】
しかし、点火コイルは、その製品仕様(一次巻線の巻線抵抗等)に一定の許容差が認められているため、一次巻線の巻線抵抗等における点火コイル毎の個体差により、点火コイルに蓄積される磁束エネルギが変化して、一次電流の通電遮断時に発生する点火用高電圧の電圧値が変動してしまう虞がある。例えば、一次巻線の巻線抵抗の許容差は、JIS−D5121により±10%と規定されており、一次電流通電時間および電源電圧を一定として巻線抵抗を±10%変化させた場合、通電遮断時の一次電流は、+11%から−9%までの変動を示す。これは、一次電流通電遮断時の電流目標値が、例えば、6[A]である場合には、電流の変動幅が6.66〜5.46[A]となるため、1[A]以上の差が生じてしまい、点火コイルの性能(最大二次電圧発生能力)に大きな影響を及ぼすことになる。
【0006】
そして、一次電流通電遮断時の一次電流が小さくなると、点火コイルに十分な磁束エネルギを蓄積できなくなり点火用高電圧の電圧値が低下してしまい、火花放電を発生できす失火を招く虞がある。また、一次電流通電遮断時の一次電流が過剰に大きくなると、一次電流の通電・遮断を制御するために一次巻線と接続されるスイッチング素子に過剰な電流が流れることになり、スイッチング素子の発熱量が増大して負担が大きくなり、寿命が短くなることや、あるいはスイッチング素子の破壊に至る虞もある。
【0007】
こうした問題に対しては、一次巻線に流れる一次電流を検出し、その一次電流の大きさに応じて、一次電流通電時間を予め定められた補正量だけ補正するように、内燃機関用点火装置を構成するとよい。このように一次電流通電時間を補正することで、通電遮断時の一次電流を一定値(制御目標電流値)に近づけることができる。なお、制御目標電流値としては、火花放電が発生可能な点火用高電圧を二次巻線に発生するための最低一次電流値以上で、かつ、スイッチング素子等に対して悪影響が及ぶ過剰一次電流値よりも小さい電流範囲において、混合気への着火性が良好となる一次電流値を設定するとよい。
【0008】
この内燃機関用点火装置によれば、実際に一次巻線に通電される一次電流値に基づいて一次電流通電時間を補正することから、点火コイルにおける一次巻線の巻線抵抗等の個体差の影響を抑えて、通電遮断時の一次電流値を略一定に制御することができる。この結果、点火コイルに蓄積する磁束エネルギをほぼ一定に制御することができ、失火の発生やスイッチング素子における発熱量の増大を抑制することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のように、検出した一次電流に基づき一次電流通電時間を補正する構成の内燃機関用点火装置においては、補正量に大きい値が設定されていると、通電遮断時の一次電流が大きく変動してしまい、遮断時一次電流値を制御目標電流値に収束できない虞がある。
【0010】
つまり、遮断時一次電流値が、一次電流通電時間の補正タイミング毎に、制御目標電流値の超過値と未満値とを交互に示すハンチング現象が発生する虞がある。このように遮断時一次電流のハンチング現象が発生すると、これに伴い、点火用高電圧も常に変動(振動)することになる。
【0011】
このような点火用高電圧の変動が発生すると、火花エネルギ(火花放電の継続時間など)が変動して混合気への着火状態が変動することになり、内燃機関の運転状態が不安定になる場合がある。
これに対して、一次電流通電時間の補正量に小さい値を設定し、補正タイミング毎の一次電流通電時間の変化量を小さく抑制することで、点火用高電圧の変動を防止することができる。しかし、補正量を小さく設定すると、何らかの要因で一次電流値が大きく変動した際に、通電遮断時の一次電流値を制御目標電流値に制御するまでの所要時間が長くなり、一次電流値の変動に対する追従性能が低下するという問題が生じる。
【0012】
そこで、本発明は、点火コイルの個体差の影響を抑えて点火コイルに蓄積する磁束エネルギをほぼ一定に維持するにあたり、内燃機関の運転状態が不安定になるのを防止でき、一次電流の変動に対する追従性能の低下を抑制できる内燃機関用点火装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するためになされた請求項1記載の発明は、電源装置からの電源電圧が印加されることで一次電流が流れる一次巻線と、内燃機関に装着された点火プラグと閉ループを形成する二次巻線とを有する点火コイルと、一次巻線および電源装置と共に閉ループを形成し、該一次巻線に流れる一次電流を通電、遮断するためのスイッチング手段と、スイッチング手段を駆動制御して、少なくとも点火プラグの火花放電に必要なエネルギを点火コイルに蓄積するための一次電流通電時間にわたり一次電流を通電することで、二次巻線に点火用高電圧を発生させる点火制御手段と、を備える内燃機関用点火装置であって、一次巻線に流れる一次電流を検出する一次電流検出手段と、一次電流検出手段で検出される一次電流に基づいて、点火制御手段による通電遮断時に一次巻線に流れる遮断時一次電流が制御目標電流値に近付くように、一次電流通電時間を補正する通電時間補正手段と、一次電流検出手段により検出される遮断時一次電流が、制御目標電流値を含む制御許容範囲内に含まれる場合には、前記一次電流に基づく一次電流通電時間の補正を禁止する補正禁止手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の内燃機関用点火装置は、予め定められた固定値の一次電流通電時間を用いるのではなく、検出される一次電流に基づいて、遮断時一次電流が制御目標電流値に近付くように補正される一次電流通電時間を用いて、点火制御を行う。このように、実際に一次巻線に流れる一次電流に基づき補正される一次電流通電時間を用いることで、点火コイルの巻線抵抗やインダクタンスのバラツキにより点火コイル毎に個体差がある場合や点火コイルの一次巻線が経時劣化した場合でも、その個体差、経時劣化の影響を受けることなく、点火コイルに蓄積する磁束エネルギをほぼ一定に制御することができる。
【0015】
そして、この内燃機関用点火装置は、一次電流検出手段で検出される遮断時一次電流が制御目標電流値を含む制御許容範囲内に含まれる場合には、一次電流通電時間の補正を禁止するという点に特徴がある。
つまり、一次電流通電時間の補正量に大きい値が設定されているために遮断時一次電流が制御目標電流値に一致しない場合でも、遮断時一次電流が制御許容範囲内に含まれる場合には、補正禁止手段が、一次電流に基づく一次電流通電時間の補正を禁止する。なお、制御許容範囲には、例えば、火花放電を発生可能な点火用高電圧を二次巻線に発生できる最低一次電流値以上で、かつ、スイッチング素子等に対して悪影響が及ぶ過剰一次電流値よりも小さい範囲のうち、制御目標電流値を含む一定範囲を設定する。
【0016】
これにより、遮断時一次電流が制御目標電流値に一致しない場合でも、遮断時一次電流が制御許容範囲に含まれる場合には、一次電流に基づく一次電流通電時間の補正は行われなくなり、点火用高電圧の振動(ハンチング現象)は発生しない。この結果、火花エネルギの変動を抑制することができ、内燃機関の運転状態が不安定になるのを防止できる。
【0017】
さらに、一次電流に基づく一次電流通電時間の補正量に大きい値を設定できることから、何らかの要因で一次電流が大きく変化した場合であっても、速やかに、遮断時一次電流を制御目標電流値に制御するよう一次電流通電時間を適切な値に補正することができる。
【0018】
よって、本発明によれば、点火コイルの個体差や経時劣化の影響を抑えて点火コイルに蓄積する磁束エネルギをほぼ一定に維持するにあたり、内燃機関の運転状態が不安定になるのを防止でき、一次電流の変動に対する追従性能の低下を抑制することができる。
【0019】
なお、通電時間補正手段は、例えば、遮断時一次電流が制御目標電流値よりも大きい場合には一次電流通電時間を補正量だけ短縮し、遮断時一次電流が制御目標電流値よりも小さい場合には一次電流通電時間を補正量だけ延長するように、一次電流通電時間を補正すると良い。
【0020】
次に、定電圧電源装置から出力される電圧値は略一定値であるが、他の電気機器への電力供給状況の変化に伴い、電源装置の出力電圧値が変動して、一次巻線への印加電圧が変動する場合がある。例えば、自動車などでは電源として搭載している電源装置の電源電圧は9〜16[V](12V定格の場合)の範囲で変動することがある。このように一次巻線への印加電圧が変動すると、一次電流も変動するため、点火コイルに所定の磁束エネルギを蓄積するために必要な一次電流通電時間が変動してしまう。
【0021】
そこで、上述(請求項1)の内燃機関用点火装置は、請求項2に記載のように、電源電圧を検出する電源電圧検出手段を備え、通電時間補正手段が、少なくとも一次電流検出手段で検出される一次電流および電源電圧検出手段で検出される電源電圧に基づき、遮断時一次電流が制御目標電流値に近付くように、一次電流通電時間を設定するとよい。
【0022】
つまり、一次電流に加えて電源電圧を検出し、一次電流および電源電圧を用いて一次電流通電時間を設定することで、点火コイルに蓄積される磁束エネルギを高精度に設定することが可能となる。これにより、電源装置に接続される他の電気機器の動作状態が変化して、電源電圧が変動する場合であっても、点火用高電圧の変動を抑制でき、混合気への着火状態をより安定させることができる。
【0023】
よって、本発明(請求項2)によれば、電源電圧の変動を加味して一次電流通電時間を設定するため、電源電圧の変動による影響を抑えることができ、混合気への着火性をより安定させることができるため、内燃機関の運転状態が不安定になるのを防止できる。
【0024】
ところで、通電遮断時には一次巻線に流れる電流値が急激に変動するため、遮断時一次電流の検出精度が低下する場合がある。これに対して、通電遮断時よりも検出予備時間だけ早い通電時検出時期に一次電流を検出し、通電時検出時期から通電遮断時までの一次電流の変化割合に基づき、遮断時一次電流を予測算出する方法がある。つまり、通電開始後の一次電流の変化については、実際の点火コイルなどを用いて事前に測定を実施することで、変化波形を得られることから、その変化波形および検出予備時間に基づいて遮断時一次電流を予測算出できる。
【0025】
しかし、一次電流の変化割合は、電源電圧が変動すると、それに伴い誤差が生じるため、遮断時一次電流を高精度に検出する必要がある用途には、遮断時一次電流を予測算出により検出する一次電流検出手段を用いることができない。
そこで、上述(請求項2)の内燃機関用点火装置は、請求項3に記載のように、一次電流検出手段が、通電遮断時より検出予備時間だけ早い通電時検出時期に検出した一次電流と、電源電圧検出手段で検出される電源電圧とに基づいて、通電遮断時の一次電流値を算出するとよい。
【0026】
これにより、通電時検出時期に検出した一次電流から予測算出して遮断時一次電流を検出するにあたり、電源電圧の変動を加味して予測算出が可能となり、電源電圧の変動に起因して遮断時一次電流に誤差が生じるのを防止できる。
よって、本発明(請求項3)によれば、一次電流検出手段による遮断時一次電流の検出精度を向上させることができ、遮断時一次電流を精度良く制御目標電流値に近づける制御が可能となる。
【0027】
次に、上述(請求項1から請求項3のいずれか)の内燃機関用点火装置は、請求項4に記載のように、内燃機関の運転状態に基づき、少なくとも点火制御手段としての制御処理を実行する中央演算処理装置を備え、単一の中央演算処理装置が、点火制御手段に加えて、通電時間補正手段および補正禁止手段としての制御処理を実行するとよい。
【0028】
つまり、点火制御手段、通電時間補正手段および補正禁止手段としての制御処理を単一の中央演算処理装置で実行する構成であれば、各制御処理を実行するための中央演算処理装置を個別に備える必要が無くなり、また、複数の中央演算処理装置の間で信号を送受信するための接続配線を設ける必要が無くなる。このように、中央演算処理装置や接続配線などのハードウェア構成部品の個数を削減できるため、内燃機関用点火装置としての製造コストを削減することができ、小型化を図ることができる。
【0029】
よって、本発明(請求項4)によれば、内燃機関の運転状態が不安定になるのを防止でき、一次電流の変動に対する追従性能の低下を抑制できる内燃機関用点火装置を低コストで実現することができ、装置自体の小型化に寄与することができる。
【0030】
ところで、一次巻線への通電途中に検出した一次電流から、その後の一次電流を予測算出する場合には、通電途中に検出した一次電流とその後の電流変化割合とに基づき、同一燃焼サイクルにおける制御目標電流値となる時期を予測算出することができる。このため、一次電流検出時期と同一の燃焼サイクルにおいて、予測算出されたその時期に一次電流の通電を遮断することで、点火コイルの個体差の影響を抑えて点火コイルに蓄積する磁束エネルギをほぼ一定に維持することができる。
【0031】
しかし、このような制御を行う場合、一次電流の電流値が変動することによって、点火時期が最適時期とは異なる時期に変動することになり、内燃機関のトルク低下などが発生し、内燃機関の運転状態が不安定になる虞がある。
そこで、上述(請求項1から請求項4のいずれか)の内燃機関用点火装置は、請求項5に記載のように、通電時間補正手段が、1燃焼サイクル毎に一次電流通電時間を補正し、点火制御手段は、前回の燃焼サイクルで検出された前記一次電流に基づいて補正された一次電流通電時間を用いて、一次電流の通電・遮断制御を行うとよい。
【0032】
つまり、隣接する燃焼サイクルの時間差は短いことから、前回の燃焼サイクルから今回の燃焼サイクルにかけて、内燃機関の運転状態が大幅に変化することは少ない。このため、隣接する燃焼サイクルにおけるそれぞれの内燃機関の運転状態は略同等であり、遮断時一次電流を制御目標電流値とするための一次電流通電時間は、略等しくなる。このことから、前回の燃焼サイクルで検出された一次電流に基づいて補正された一次電流通電時間を用いる場合でも、遮断時一次電流を制御目標電流値に略等しい値に制御することができる。
【0033】
なお、隣接する燃焼サイクルとは、同一気筒での時間的に連続する2つの燃焼サイクルのことであり、多気筒内燃機関においては、互いに異なる気筒での2つの燃焼サイクルのことではなく、各気筒における時間的に連続する2つの燃焼サイクルのことを指している。
【0034】
これにより、点火制御手段は、点火時期を基準時期として固定して、その基準時期から一次電流通電時間だけ早い時期に一次巻線への通電を開始することができ、その結果、一次電流通電時間の補正に起因して点火時期が不適切な値に設定されるのを防止できる。
【0035】
よって、本発明(請求項5)によれば、点火コイルの個体差の影響を抑えて点火コイルに蓄積する磁束エネルギをほぼ一定に維持するにあたり、点火時期が不適切な時期になるのを防止でき、内燃機関の運転状態が不安定になるのを防止することができる。
【0036】
次に、一次電流通電時間として設定可能な値の範囲が無制限であると、一次電流検出手段の故障などの要因から、一次電流通電時間が不適切な値に設定される場合があり、例えば、過度に短く設定されると火花放電を発生できない虞や、過度に長く設定されるとスイッチング手段などの破損を招く虞がある。
【0037】
そこで、上述(請求項1から請求項5のいずれか)の内燃機関用点火装置は、請求項6に記載のように、通電時間補正手段が、予め定められた設定可能範囲内に一次電流通電時間を設定するとよい。
このとき、設定可能範囲として、火花放電の発生に必要な最小限のエネルギを点火コイルに蓄積するための通電時間よりも長く、点火コイルやスイッチング素子などの加熱破壊が発生する時間よりも短い範囲を設定すると良い。これにより、一次電流通電時間が不適切な値に設定されるのを防止でき、失火の発生やスイッチング手段などの破損を防止できる。
【0038】
よって、本発明(請求項6)によれば、点火コイルの個体差の影響を抑えて点火コイルに蓄積する磁束エネルギをほぼ一定に維持するにあたり、一次電流通電時間が不適切な値に設定された事に起因して内燃機関の運転状態が不安定になるのを防止できる。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施例を図面と共に説明する。
まず、図1に、実施例の内燃機関用点火装置の概略構成を表す構成図を示す。
図1に示すように、実施例の内燃機関用点火装置1は、直流定電圧(例えば電源電圧12[V])を出力する直流電源装置11と、一次巻線45および二次巻線47を有する点火コイル13と、二次巻線47と閉ループを形成するとともに内燃機関の気筒に設けられた点火プラグ17と、点火プラグ17の電極51−53間に火花放電を発生させるために点火コイル13の一次巻線45への通電制御を行う電子制御装置31(以下、ECU31ともいう)を備えている。
【0040】
ECU31は、一次巻線45と直列接続されたnpn型パワートランジスタからなる主制御用トランジスタ15と、主制御用トランジスタ15に対して内燃機関の運転状態に応じた点火指令信号81を出力する中央演算処理装置21(以下、CPU21とも呼ぶ)と、直流電源装置11から出力される電源電圧を変圧してCPU21などを駆動するための駆動電圧(例えば5[V])を発生する電圧変換回路23と、直流電源装置11から一次巻線45に供給される電源電圧を検出するための電源電圧検出回路27と、一次巻線45に流れる一次電流46を検出するための一次電流検出回路33と、内燃機関の回転速度に応じた周期のパルス波形を示すパルス信号85を生成するパルス成形回路71と、スロットル開度を表すスロットル開度信号93を受信する入力回路73と、を備えている。
【0041】
パルス成形回路71は、内燃機関のカムシャフトの回転角度を表すカム角度信号89がカムセンサ75から入力され、内燃機関のクランク軸の回転角度を表すクランク角度信号91がクランクセンサ77から入力される。そして、パルス成形回路71は、カム角度信号89とクランク角度信号91とに基づいて、クランク軸の回転速度に応じた時間間隔(本実施例では、1回転に1回の割合)でパルスを発生するパルス信号85を生成し、そのパルス信号85をCPU21に対して出力する。なお、パルス成形回路71は、パルス信号85を、CPU21に入力可能な電圧範囲内の信号として出力する。
【0042】
入力回路73は、スロットルバルブの開度を表すスロットル開度信号93がスロットル開度センサ79から入力され、スロットル開度信号93をCPU21に入力可能な電圧範囲内の電圧変換後スロットル開度信号87に変換して、電圧変換後スロットル開度信号87をCPU21に対して出力する。
【0043】
主制御用トランジスタ15は、点火コイル13の一次巻線45への通電(オン状態)・非通電(オフ状態)を切り換える半導体素子からなるスイッチング素子である。よって、本実施例の内燃機関用点火装置1はフルトランジスタ型の点火装置である。
【0044】
CPU21は、内燃機関の運転状態に基づいて、内燃機関の火花放電発生時期、燃料噴射量、エンジン回転数(エンジン回転速度)等を総合的に制御するために備えられており、図示しないRAM,ROMおよび入出力部等と共に、ECU31の主要部を構成する。
【0045】
なお、点火コイル13や点火プラグ17などは、複数の気筒を備えた内燃機関では各気筒ごとに備えられているが、図1では図面を見易くするために、1気筒分のみを記している。
点火コイル13の一次巻線45の一端は直流電源装置11の正極に接続され、他端は主制御用トランジスタ15のコレクタに接続されている。また、二次巻線47の一端は、整流素子49を介して、直流電源装置11の正極に接続される一次巻線45の一端に接続され、他端は点火プラグ17の中心電極51に接続(電気的接続)されている。さらに、点火プラグ17の接地電極53は、直流電源装置11の負極と同電位のグランドに接続(接地)されており、主制御用トランジスタ15のベースはCPU21における点火指令信号81の出力端子に接続され、主制御用トランジスタ15のエミッタは、一次電流検出回路33を介して、直流電源装置11の負極と同電位のグランドに接続(接地)されている。
【0046】
このため、主制御用トランジスタ15のベースに入力される点火指令信号81がローレベル(一般にグランド電位)である場合には、主制御用トランジスタ15にベース電流は流れず、主制御用トランジスタ15はオフ状態となり、主制御用トランジスタ15を通じて一次巻線45に電流が流れることはない。また、点火指令信号81がハイレベル(例えば、定電圧電源からの供給電圧5[V])である場合には、主制御用トランジスタ15はオン状態となり、直流電源装置11の正極側から点火コイル13の一次巻線45,主制御用トランジスタ15,一次電流検出回路33を通って直流電源装置11の負極側に至る一次巻線45の通電経路を形成し、一次巻線45に一次電流46が流れる。
【0047】
なお、主制御用トランジスタ15のオン状態とは、主制御用トランジスタ15のコレクタ−エミッタ間が導通した状態(短絡された状態)を表し、オフ状態とは、主制御用トランジスタ15のコレクタ−エミッタ間が導通していない状態(開放された状態)を表している。
【0048】
したがって、点火指令信号81がハイレベルであり、一次巻線45に一次電流46が流れている状態の時に、点火指令信号81がローレベルに切り替わると、主制御用トランジスタ15がターンオフし、一次巻線45への一次電流46の通電を停止(遮断)することになる。すると、点火コイル13の磁束密度が急激に変化して二次巻線47に点火用高電圧が発生し、この点火用高電圧が点火プラグ17に印加されることで、点火プラグ17の電極51−53間に火花放電が発生する。
【0049】
尚、点火コイル13は、主制御用トランジスタ15による一次巻線45における一次電流46の遮断により、二次巻線47の端部のうち点火プラグ17の中心電極51に接続される端部に、グランド電位よりも低い負極性の点火用高電圧を発生するように構成されている。このため、点火プラグ17での火花放電に伴い二次巻線47に流れる二次電流48は、点火プラグ17の中心電極51から二次巻線47を通って、一次巻線45側に流れる。また、二次巻線47と一次巻線45との接続部分には、二次巻線47から一次巻線45側に電流が流れるのを許容し、逆方向への電流の流れを阻止するために、ダイオード等からなる整流素子49が設けられている。本実施例では、整流素子49として、アノードが二次巻線47に、カソードが一次巻線45に接続されたダイオードを設けており、整流素子49の動作によって、主制御用トランジスタ15のターンオン時(一次巻線45への通電開始時)に二次巻線47に電流が流れるのが阻止される。
【0050】
次に、電圧変換回路23は、電圧基準端子がグランドに接続(接地)され、入力端子が直流電源装置11の正極に接続され、出力端子がCPU21に接続されており、入力端子から入力される電圧値を変圧して出力端子から出力している。つまり、直流電源装置11から出力される電源電圧(例えば12[V])を変圧して、CPU21に駆動用電圧(例えば5[V])を供給している。なお、電圧変換回路23は、例えば、いわゆる三端子レギュレータを用いて構成することができる。また、電圧変換回路23は、出力端子が定電源ライン59にも接続されており、定電源ライン59を介して一次電流検出回路33に対しても、駆動用電圧を供給している。
【0051】
また、電源電圧検出回路27は、抵抗55と抵抗57とが直列接続されて構成されており、電源電圧検出回路27のうち、抵抗55の側の端部は直流電源装置11の正極に接続され、抵抗57の側の端部は直流電源装置11の負極(換言すればグランド)に接続されている。さらに、抵抗55と抵抗57との接続点56がCPU21に接続されており、抵抗55と抵抗57による電源電圧の分圧値Vs(換言すれば、接続点56の電位)となる電圧検出信号58がCPU21に入力される。
【0052】
このとき、抵抗55および抵抗57のそれぞれの抵抗値は、直流電源装置11が出力する電源電圧の変動範囲に対応する分圧値Vsの変動範囲が、CPU21の入力ポートにおける入力レンジの許容範囲内となるように設定されている。そして、分圧値Vsは直流電源装置11が出力する電源電圧の電圧値に応じて変動しており、CPU21は、入力レンジに適した下限値から上限値までの範囲内(例えば、0〜5[V])で変化する分圧値Vsが入力されることで、電源電圧を検出することができる。
【0053】
次に、一次電流検出回路33は、一端が主制御用トランジスタ15のエミッタに接続され、他端がグランドに接続(接地)された検出用抵抗35と、ノイズなどの影響を除去するためのフィルタ回路37と、が備えられており、検出用抵抗35の両端電圧Vrを一次電流検出信号83として、フィルタ回路37を通じてCPU21に対して出力する。
【0054】
ここで、フィルタ回路37は、検出用抵抗35と主制御用トランジスタ15との接続点に一端が接続され、他端がCPU21における一次電流検出信号83の入力端子に接続された抵抗61と、CPU21に接続された抵抗61の端部とグランドとの間に設けられたコンデンサ67と、抵抗61とコンデンサ67との接続点と定電源ライン59との間に設けられたダイオード63と、コンデンサ67に並列に接続されたダイオード65と、が備えられている。
【0055】
ダイオード63は、カソードが定電源ライン59に接続されており、アノードが抵抗61とコンデンサ67との接続点に接続されている。また、ダイオード65は、カソードが抵抗61とコンデンサ67との接続点に接続され、アノードが直流電源装置11の負極と同電位のグランドに接続(接地)されている。
【0056】
このとき、フィルタ回路37では、抵抗61およびコンデンサ67がローパスフィルタとして作用することで、一次電流検出信号83にノイズの影響が及ぶのを抑えており、また、ダイオード63およびダイオード65が、一次電流検出信号83の電位をCPU21の駆動電圧(5[V])以下に制限して、高電位の信号が入力されてCPU21が破壊されるのを防止している。
【0057】
ところで、CPU21が出力する点火指令信号81のハイレベル電位Vh、検出用抵抗35の両端電圧Vr、主制御用トランジスタ15のベース−エミッタ間電圧Vbeには、「Vh=Vbe+Vr」という関係がある。このことから、検出用抵抗35の両端電圧Vrが大きくなると、相対的に主制御用トランジスタ15のベース−エミッタ間電圧Vbeが小さくなり、このベース−エミッタ間電圧Vbeが主制御用トランジスタ15の駆動可能電圧を下回ると、主制御用トランジスタ15を駆動できなくなる。
【0058】
このため、検出用抵抗35の両端電圧Vrが主制御用トランジスタ15の駆動を妨げることがないように、検出用抵抗35の抵抗値は小さく設定することが望ましい。一次電流の最大値は、当然ながら一次巻線の巻数によっても変化するが、通常4[A]〜8[A]程度(電源電圧12[V])であり、この検出用抵抗35にて消費される最大電力W(=I2R )が、リーズナブルなコスト(消費電力)となるよう、検出用抵抗35の許容電力を3[W]〜5[W]にするには、検出用抵抗35の抵抗値は、例えば、0.1[Ω]〜0.3[Ω]に設定するとよい。
【0059】
続いて、図2に、パルス信号85、点火指令信号81、一次電流46および点火プラグ17の中心電極51の電位の各状態を表すタイムチャートを示す。
図2のうち、時刻t1は、パルス成形回路71からのパルス信号85がハイレベルからローレベルに変化するパルス信号85の立ち下がり時期であり、本実施例の内燃機関用点火装置においては、クランク軸の1回転に1回の割合で発生して、点火時期や一次電流の検出時期などを定める基準時期となる。
【0060】
時刻t1から通電ディレイ時間Tdが経過した時刻t2が通電開始時期であり、通電開始時期になると、後述する第2割込制御処理にて点火指令信号81をオフ状態からオン状態に切り換える処理が行われる。これにより、主制御用トランジスタ15がターンオンして、一次巻線45への通電が開始される。なお、通電ディレイ時間Tdは、後述する第1割込制御処理で設定される。
【0061】
時刻t2から一次電流測定時間Tcuが経過した時刻t3が一次電流検出時期であり、一次電流検出時期になると、後述する第3割込制御処理にて一次電流検出信号83に基づき一次電流46の電流値を検出する処理が行われる。なお、一次電流測定時間Tcuは、後述する第2割込制御処理で設定される。
【0062】
時刻t1から点火待機時間Tspが経過した時刻t4が点火時期であり、点火時期になると、後述する第4割込制御処理にて点火指令信号81をオン状態からオフ状態に切り換える処理が行われる。なお、点火待機時間Tspは、後述する点火時期設定制御処理で設定される。
【0063】
時刻t2以降、一次電流46は徐々に増加しており、時刻t4で一次電流46の通電が遮断されると、二次巻線に48の両端に点火用高電圧が誘起され、この点火用高電圧の印加により点火プラグ17に火花放電が発生する。そして、時刻t4で火花放電が発生した後、火花放電の継続に伴い点火コイルの磁束エネルギが消費されていき、二次巻線47の両端電圧が火花放電に必要な電圧値を下回ると、火花放電が終了する(時刻t5)。
【0064】
つまり、図2に示すタイムチャートから判るように、本実施例の内燃機関用点火装置1では、パルス信号85の立ち下がり時期を基準時期として、通電開始時期、一次電流検出時期、点火時期をそれぞれ設定している。
次に、CPU21において実行される点火制御に関する制御処理について説明する。
【0065】
なお、CPU21は、前述したように内燃機関の火花放電発生時期、燃料噴射量、エンジン回転速度等を総合的に制御するためのものであり、以下に説明する点火制御に関する制御処理の他に、内燃機関の吸入空気量(吸気管圧力),冷却水温,吸気温等、機関各部の運転状態を検出する運転状態検出処理や、燃料噴射時期で燃料を吸気管内に供給するための燃料制御処理などを行っている。
【0066】
まず、点火制御に関する制御処理のうち、点火時期を設定するための点火時期設定制御処理について説明する。図3に、点火時期設定制御処理の処理内容を表すフローチャートを示す。なお、点火時期設定制御処理は、内燃機関が始動されて、CPU21が起動されると処理を開始する。
【0067】
点火時期設定制御処理が開始されると、まず、S310(Sはステップを表す)では、電圧変換後スロットル開度信号87の電圧値をA/D変換してスロットル開度を検出し、検出したスロットル開度を図示しない記憶部(メモリ)に記憶する処理を実行する。
【0068】
続くS320では、電圧検出信号58の電圧値をA/D変換し、変換後の電圧値と電源電圧検出回路27の抵抗55および抵抗57の抵抗比率とに基づいて、点火コイル13に印加される電源電圧(以下、点火コイル電源電圧ともいう)を算出し、算出した電源電圧を記憶部(メモリ)に記憶する処理を実行する。なお、電源電圧検出回路27の抵抗55および抵抗57の抵抗比率は、予め内部変数として、CPU21の記憶部(メモリ)に記憶されている。
【0069】
次のS330では、パルス信号85のパルス周期に基づき内燃機関のエンジン回転速度を算出し、算出したエンジン回転速度を記憶部(メモリ)に記憶する処理を実行する。
続くS340では、S310で検出したスロットル開度、S320で算出した電源電圧、S330で算出したエンジン回転速度のそれぞれについて、記憶部(メモリ)に記憶されているデータのうち、最新の5個のデータの平均値を算出する処理を行う。
【0070】
S350では、S340で算出したエンジン回転速度の平均値およびスロットル開度の平均値に基づき、図8に示す点火時期設定用マップを用いて、点火時期を算出する処理を行う。なお、図8に示すように、点火時期設定用マップは、エンジン回転速度をX軸、スロットル開度をY軸、点火時期をZ軸とする3次元マップとして表すことができる。また、図8に示す3次元座標空間は、X軸が、図の左側から右側に向かうほどエンジン回転速度が速く(回転数が高く)なるように、Y軸が、図の奥側から手前側に向かうほどスロットル開度が大きくなるように、Z軸が、図の下側から上側に向かうほど点火時期が早くなる(進角する)ように定められている。
【0071】
なお、S350では、単位がクランク角度[°CA]で表される点火時期を算出する処理を行う。
続くS360では、クランク軸が回転する際の所要時間のうち、パルス信号85の立ち下がり時期(基準時期)のクランク角度からS350で算出された点火時期のクランク角度に至るまでの所要時間(点火待機時間Tsp)を算出する処理を行う。具体的には、まず、単位時間あたりのクランク軸の回転角度(角速度)と、パルス信号85の立ち下がり時期のクランク角度とS350で算出された点火時期のクランク角度との角度差とを算出し、そして、角度差を角速度で除算することで点火待機時間Tspを算出する。
【0072】
次のS370では、S340で算出した電源電圧の平均値に基づき、図9に示す基本通電時間算出用マップを用いて、基本通電時間Tonsを算出する処理を行う。図9に示すように、基本通電時間算出用マップは、点火コイル電源電圧の平均値が高電圧になるほど基本通電時間Tonsを短く設定するように、また、点火コイル電源電圧の平均値が低電圧になるほど基本通電時間Tonsを長く設定するように構成されている。また、基本通電時間算出用マップは、火花放電の発生に必要な最小限のエネルギを点火コイル13に蓄積するのに要する最短通電時間よりも長く、点火コイル13や主制御用トランジスタ15の加熱破壊が発生する時間よりも短い時間範囲において、基本通電時間Tonsを設定するよう構成されている。
【0073】
続くS380では、S380に処理が移行した時点から設定処理周期Tt(本実施例では、10[ms])が経過したか否かを判断しており、肯定判定する場合は本ステップを終了して再びS310に移行し、否定判定する場合は同ステップを繰り返し実行することで設定処理周期Ttが経過するまで待機する。
【0074】
つまり、点火時期設定制御処理は、S310からS380までの処理を設定処理周期Ttごとに繰り返し実行することで、点火待機時間Tspおよび基本通電時間Tonsを設定する処理を行う。
次に、点火制御に関する制御処理のうち、所定タイミングで割込処理として実行される4つの割込制御処理について説明する。
【0075】
まず、第1割込制御処理について説明する。図4に、第1割込制御処理の処理内容を表すフローチャートを示す。なお、第1割込制御処理は、パルス信号85がハイレベルからローレベルに変化すると(換言すれば、パルス信号85の立ち下がり時期になると)処理を開始する。
【0076】
第1割込制御処理が開始されると、まず、S410では、タイマ1およびタイマ2のカウント処理を開始(スタート)する処理を行う。次のS420では、タイマ1による割込処理(後述する第4割込制御処理)のタイマ1割込許可フラグF1と、タイマ2による割込処理(第2割込制御処理)のタイマ2割込許可フラグF2とを、それぞれセット状態(許可状態)に設定する。
【0077】
次のS430では、タイマ1のカウント時間に、点火時期設定制御処理で算出された点火待機時間Tspを設定(セット)する。なお、タイマ1は、カウント処理の開始時点からカウント時間が経過すると、後述する第4割込制御処理を起動する処理を実行する。
【0078】
続くS440では、点火待機時間Tspからコイル通電時間Tonを減算した値を通電ディレイ時間Tdに代入し、通電ディレイ時間Tdを設定する処理を行う。なお、コイル通電時間Tonは、後述する第4割込制御処理で値が設定される。
【0079】
次のS450では、タイマ2のカウント時間に、S440で算出された通電ディレイ時間Tdを設定(セット)する。なお、タイマ2は、カウント処理を開始した時点からカウント時間が経過すると、後述する第2割込制御処理を起動する処理を実行する。
【0080】
S450での処理が終了すると、第1割込制御処理が終了する。
つまり、第1割込制御処理は、タイマ1のカウント時間に点火待機時間Tspを設定し、タイマ2のカウント時間に通電ディレイ時間Tdを設定して、第4割込制御処理および第2割込制御処理の開始時期を設定する処理を行う。
【0081】
次に、第2割込制御処理について説明する。図5に、第2割込制御処理の処理内容を表すフローチャートを示す。なお、第2割込制御処理は、タイマ2割込許可フラグF2がセット状態であり、かつタイマ2からの起動指令がある場合(換言すれば、通電ディレイ時間Tdが経過した場合)に、処理を開始する。
【0082】
第2割込制御処理が開始されると、まず、S510では、点火指令信号81をローレベルからハイレベルに変更してハイレベル出力を行い、一次巻線45への通電を開始する処理を行う。次のS520では、タイマ3のカウント処理を開始(スタート)すると共に、タイマ3割込許可フラグF3をセット状態(許可状態)に設定する処理を行う。
【0083】
続くS530では、コイル通電時間Tonから測定マージン時間Ta(予め定められている固定値)を差し引いた値を一次電流測定時間Tcuに代入して、一次電流測定時間Tcuを設定する処理を行う。
次のS540では、タイマ3のカウント時間に、S530で設定した一次電流測定時間Tcuを設定(セット)する。なお、タイマ3は、カウント処理の開始時点からカウント時間が経過すると、後述する第3割込制御処理を起動する処理を実行する。
【0084】
続くS550では、タイマ2割込許可フラグF2をリセット状態(禁止状態)に設定する処理を行う。
S550での処理が終了すると、第2割込制御処理が終了する。
つまり、第2割込制御処理は、一次電流測定時間Tcuを算出し、タイマ3のカウント時間に一次電流測定時間Tcuを設定して、第3割込制御処理の開始時期を設定する処理を行う。
【0085】
続いて、第3割込制御処理について説明する。図6に、第3割込制御処理の処理内容を表すフローチャートを示す。なお、第3割込制御処理は、タイマ3割込許可フラグF3がセット状態であり、かつタイマ3からの起動指令がある場合(換言すれば、一次電流測定時間Tcuが経過した場合)に、処理を開始する。
【0086】
第3割込制御処理が開始されると、まず、S610では、一次電流検出回路33から入力される一次電流検出信号83をA/D変換し、変換後の電流値と検出用抵抗35の抵抗値に基づいて、一次電流46の一次電流値Icを検出する処理を行う。
【0087】
次のS620では、タイマ3割込許可フラグF3をリセット状態(禁止状態)に設定する処理を行う。
S620での処理が終了すると、第3割込制御処理が終了する。
つまり、第3割込制御処理は、点火時期(時刻t4)よりも測定マージン時間Taだけ早い通電時検出時期において、一次電流値Icを検出する処理を行う。
【0088】
次に、第4割込制御処理について説明する。図7に、第4割込制御処理の処理内容を表すフローチャートを示す。なお、第4割込制御処理は、タイマ1割込許可フラグF1がセット状態であり、かつタイマ1からの起動指令がある場合(換言すれば、点火待機時間Tspが経過した場合)に、処理を開始する。
【0089】
第4割込制御処理が開始されると、まず、S710では、点火指令信号81をハイレベルからローレベルに変更して出力し、一次巻線45への通電を遮断する処理(一次巻線通電OFF処理)を行う。これにより、二次巻線47の両端に点火用高電圧が誘起され、この点火用高電圧が点火プラグ17に印加されることで、点火プラグ17の電極間に火花放電が発生し、混合気への点火が行われる。
【0090】
次のS720では、タイマ1割込許可フラグF1をリセット状態(禁止状態)に設定する処理を行う。
続くS730では、まず、第3割込制御処理のS610で検出した通電時検出時期の一次電流値Icと、点火時期設定制御処理のS320で算出した最新の電源電圧とに基づいて、点火時期(換言すれば、タイマ1によるカウント時間の経過時期)における遮断時一次電流値Iを予測算出し、算出した値を記憶部(メモリ)に記憶する。さらに、S730では、記憶部(メモリ)に記憶されている遮断時一次電流値Iのうち、最新の5個分の平均値(遮断時一次電流平均値Iav)を算出する処理を行う。
【0091】
なお、遮断時一次電流値Iの算出回数が5回に満たない場合には、既に算出した遮断時一次電流値Iを用いて不足個数分を補い、遮断時一次電流平均値Iavを算出する。つまり、遮断時一次電流値Iの初回算出時には、算出した遮断時一次電流値Iと同一の値を記憶部に5個記憶しておき、その5個の遮断時一次電流値Iを用いて遮断時一次電流平均値Iavの算出を行う。そして、遮断時一次電流値Iの第2回算出時には、第2回目に算出した1個分の遮断時一次電流値Iと、初回に算出した4個分の遮断時一次電流値Iとの平均値を、遮断時一次電流平均値Iavとして算出する処理を行う。また、遮断時一次電流値Iの第3回算出時には、第3回目に算出した1個分の遮断時一次電流値Iと、第2回目に算出した1個分の遮断時一次電流値Iと、初回に算出した3個分の遮断時一次電流値Iとの平均値を、遮断時一次電流平均値Iavとして算出する処理を行う。さらに、遮断時一次電流値Iの第4回算出時には、第4回目、第3回目、第2回目のそれぞれ1個分の遮断時一次電流値Iと、初回に算出した2個分の遮断時一次電流値Iを用いて、遮断時一次電流平均値Iavとして算出する処理を行う。これにより、遮断時一次電流値Iの算出回数が5回に満たない場合においても、遮断時一次電流平均値Iavを算出することができる。
【0092】
続くS740では、S730で算出した遮断時一次電流平均値Iavが、制御目標電流値Itから制御幅Iθを差し引いた電流許容下限値(It−Iθ)よりも小さいか否かを判断しており、肯定判定するとS750に移行し、否定判定するとS760に移行する。
【0093】
S740で肯定判定されてS750に移行すると、S750では、前回補正時の通電時間調整値αn−1に補正量βを加算した値を、今回の通電時間調整値αnに代入する処理を行う。なお、補正量βは、予め定められた固定値であり、一次電流が大きく変動した場合でも、点火時期の一次電流を速やかに制御目標電流値Itに近づけることができる大きさの正の値が設定されている。
【0094】
S740で否定判定されてS760に移行すると、S760では、S730で算出した遮断時一次電流平均値Iavが、制御目標電流値Itに制御幅Iθを加算した電流許容上限値(It+Iθ)よりも大きいか否かを判断しており、肯定判定するとS770に移行し、否定判定するとS780に移行する。
【0095】
S760で肯定判定されてS770に移行すると、S770では、前回補正時の通電時間調整値αn−1から補正量βを減算した値を、今回の通電時間調整値αnに代入する処理を行う。
S760で否定判定されてS780に移行すると、S780では、前回補正時の通電時間調整値αn−1を、今回の通電時間調整値αnに代入する処理を行う。
【0096】
S750、S770、S780のいずれかの処理が終了すると、S790に移行し、S790では、通電時間調整値αnが時間許容下限値αLO以下であるか否かを判断しており、肯定判定するとS800に移行し、否定判定するとS810に移行する。なお、時間許容下限値αLOは、通電時間調整値αnとして設定可能な範囲における下限値であり、負の値である。
【0097】
S790で肯定判定されてS800に移行すると、S800では通電時間調整値αnに対して時間許容下限値αLOを代入する処理を行う。
S790で否定判定されてS810に移行すると、S810では、通電時間調整値αnが時間許容上限値αUP以上であるか否かを判断しており、肯定判定するとS820に移行し、否定判定するとS830に移行する。なお、時間許容上限値αUPは、通電時間調整値αnとして設定可能な範囲における上限値であり、正の値である。
【0098】
S810で肯定判定されてS820に移行すると、S820では通電時間調整値αnに対して時間許容上限値αUPを代入する処理を行う。
S800またはS820の処理が終了するか、S810で否定判定されると、S830に処理が移行し、S830では、基本通電時間Tonsに通電時間調整値αnを加算した値を、コイル通電時間Tonに対して代入する処理を行う。なお、通電時間調整値αnが正の値に設定されている場合には、コイル通電時間Tonには基本通電時間Tonsよりも長い値が設定され、通電時間調整値αnが負の値に設定されている場合には、コイル通電時間Tonには基本通電時間Tonsよりも短い値が設定される。
【0099】
S830での処理が終了すると、第4割込制御処理が終了する。
つまり、第4割込制御処理は、点火時期に一次電流を遮断して点火プラグ17に火花放電を発生させる処理と、遮断時一次電流平均値Iavを算出し、算出した遮断時一次電流平均値Iavを用いて通電時間調整値αnを補正して、通電時間調整値αnと基本通電時間Tonsとを用いてコイル通電時間Tonを設定する処理を行う。
【0100】
なお、本実施例においては、主制御用トランジスタ15が特許請求の範囲に記載のスイッチング手段に相当し、CPU21で実行される点火制御に関する制御処理が点火制御手段に相当し、コイル通電時間Tonが一次電流通電時間に相当し、一次電流検出回路33,第3割込制御処理および第4割込制御処理のS730が一次電流検出手段に相当する。
【0101】
また、第4割込制御処理におけるS740からS770まで,S790からS830までの各ステップ、および点火時期設定制御処理のS370が通電時間補正手段に相当し、第4割込制御処理におけるS740,S760およびS780の各ステップが補正禁止手段に相当する。さらに、電源電圧検出回路27および点火時期設定制御処理のS320が電源電圧検出手段に相当し、測定マージン時間Taが検出予備時間に相当する。
【0102】
以上、説明したように、本実施例の内燃機関用点火装置では、予め定められた一次電流通電時間を用いるのではなく、一次電流検出回路33を用いて検出される一次電流に基づいて、遮断時一次電流値Iが制御目標電流値Itに近付くように補正量βの加算あるいは減算により補正されるコイル通電時間Tonを用いて、点火制御を行う。
【0103】
つまり、検出した遮断時一次電流値Iが制御目標電流値It(詳細には、電流許容下限値(It−Iθ))よりも小さい場合には、補正量βを加算してコイル通電時間Tonを延長する補正を行い、点火コイル13に蓄積される磁束エネルギを増大させ、遮断時一次電流値Iが制御目標電流値Itに近付くようフィードバック制御を行っている。反対に、検出した遮断時一次電流値Iが制御目標電流値It(詳細には、電流許容上限値(It+Iθ))よりも大きい場合には、補正量βを減算してコイル通電時間Tonを短縮する補正を行い、点火コイル13に蓄積される磁束エネルギを減少させ、遮断時一次電流値Iが制御目標電流値Itに近付くようフィードバック制御を行っている。
【0104】
このように、実際に一次巻線45に流れる一次電流46に基づき補正されるコイル通電時間Tonを用いて点火制御を行うことで、点火コイル13の巻線抵抗やインダクタンスのバラツキにより点火コイルの個体間にバラツキがある場合でも、その個体差の影響を受けることなく、点火コイル13に蓄積する磁束エネルギをほぼ一定に制御することができる。
【0105】
また、この内燃機関用点火装置は、検出した遮断時一次電流平均値Iavが制御許容範囲内(It±Iθ)に含まれる場合(S740およびS760で共に否定判定される場合)には、今回の通電時間調整値αnに対する補正量βの加算あるいは減算を行わず、前回補正時の通電時間調整値αn−1と同一値を今回の通電時間調整値αnに設定する。つまり、遮断時一次電流平均値Iavが制御許容範囲内(It±Iθ)に含まれる場合には、通電時間調整値αnの補正を禁止し、ひいては、遮断時一次電流平均値Iavに基づくコイル通電時間Tonの補正を禁止するよう構成されている。
【0106】
これにより、遮断時一次電流平均値Iavが制御目標電流値Itに一致しない場合でも、遮断時一次電流平均値Iavが制御許容範囲(It±Iθ)に含まれる場合には、遮断時一次電流平均値Iavに基づくコイル通電時間Tonの補正は行われず、点火用高電圧の振動(ハンチング現象)は発生しない。この結果、火花エネルギの変動を抑制することができ、内燃機関の運転状態が不安定になるのを防止できる。
【0107】
なお、制御許容範囲(It±Iθ)は、点火プラグ17に火花放電を発生可能な点火用高電圧を二次巻線47に発生できる最低一次電流値以上で、かつ、主制御用トランジスタ15などに対して悪影響が及ぶ過剰一次電流値よりも小さい範囲のうち、制御目標電流値Itを含む一定範囲が設定されている。また、制御許容範囲(It±Iθ)は、遮断時一次電流値Iが電流許容下限値(It−Iθ))および電流許容上限値(It+Iθ))となる場合のそれぞれの点火用高電圧が、遮断時一次電流値Iが制御目標電流値Itとなる場合の点火用高電圧に比べて、著しく低下することのない範囲が設定されている。
【0108】
さらに、遮断時一次電流平均値Iavに基づくコイル通電時間Tonの補正量βに大きい値を設定できることから、何らかの要因で遮断時一次電流値Iが大きく変化した場合であっても、速やかに、遮断時一次電流値Iを制御目標電流値Itに近づけるようコイル通電時間Tonを適切な値に補正することができる。
【0109】
また、本実施例の内燃機関用点火装置は、一次電流に加えて、電源電圧も検出可能に構成されており、検出した電源電圧に基づき基本通電時間Tonsを設定し、この基本通電時間Tonsと通電時間調整値αnとを用いてコイル通電時間Tonを設定している。つまり、検出した遮断時一次電流値Iおよび検出した電源電圧に基づき、遮断時一次電流値Iが制御目標電流値Itに近付くように、コイル通電時間Tonを設定している。
【0110】
このように一次電流および電源電圧を用いてコイル通電時間Tonを設定することで、直流電源装置11に接続される他の電気機器の動作状態が変化して、電源電圧が変動する場合であっても、点火コイル13に蓄積される磁束エネルギを高精度に設定することが可能となる。これにより、他の電気機器の動作状態の変化に伴い電源電圧が変動する場合であっても、点火用高電圧の変動をより抑制でき、混合気への着火状態をより安定させることができる。
【0111】
さらに、本実施例の内燃機関用点火装置は、測定マージン時間Taだけ早い通電時検出時期(図2における時刻t3)に検出した一次電流値Icと、電源電圧検出回路27および点火時期設定制御処理のS320で検出される電源電圧とに基づいて、通電遮断時の遮断時一次電流値Iを予測算出している。このため、通電時検出時期に検出した一次電流値Icと測定マージン時間Taに基づき予測算出して遮断時一次電流値Iを検出するにあたり、電源電圧の変動を加味して予測算出することができ、電源電圧の変動に起因する遮断時一次電流値Iの検出誤差が生じるのを防止できる。
【0112】
また、本実施例の内燃機関用点火装置は、単一の中央演算処理装置(CPU21)が、点火制御に関する制御処理(点火時期設定制御処理および4つの割込制御処理)をすべて実行している。
このような構成であれば、各制御処理を実行するための中央演算処理装置を個別に備える必要が無くなり、また、複数の中央演算処理装置の間で信号を送受信するための接続配線を設ける必要が無くなる。このように、中央演算処理装置や接続配線などのハードウェア構成部品の個数を削減できるため、内燃機関用点火装置としての製造コストを削減することができる。
【0113】
さらに、本実施例の内燃機関用点火装置は、1燃焼サイクル毎にコイル通電時間Tonを補正し、前回の燃焼サイクルで検出された一次電流に基づいて補正されたコイル通電時間Tonを用いて、一次電流の通電・遮断制御を行っている。このため、点火時期を基準時期として固定し、その基準時期からコイル通電時間Tonだけ早い時期(図2における時刻t2)に一次巻線への通電を開始することができる。その結果、コイル通電時間Tonの補正に起因して点火時期が不適切な時期に設定されるのを防止できる。
【0114】
なお、隣接する燃焼サイクルの時間間隔は短いことから、前回の燃焼サイクルから今回の燃焼サイクルにかけて、内燃機関の運転状態が大幅に変化することは少ない。このため、隣接する燃焼サイクルにおけるそれぞれの内燃機関の運転状態は略同等であり、遮断時一次電流を制御目標電流値とするための一次電流通電時間は、略等しくなる。このことから、前回の燃焼サイクルで補正された一次電流通電時間を用いる場合でも、遮断時一次電流を制御目標電流値に略等しい値に制御することができる。
【0115】
また、本実施例の内燃機関用点火装置は、通電時間調整値αnとして設定可能な範囲を、時間許容下限値αLOから時間許容上限値αUPまでの範囲に限定している。時間許容下限値αLOから時間許容上限値αUPまでの範囲は、火花放電の発生に必要な最小限のエネルギを点火コイルに蓄積するための通電時間よりも長く、点火コイルやスイッチング素子などの加熱破壊が発生する時間よりも短い範囲が設定されている。そして、基本通電時間Tonsは、マップにより設定されることから設定可能な値が一定範囲内に制限されている。
【0116】
このように通電時間調整値αnおよび基本通電時間Tonsが共に一定範囲内に設定されることから、これらの和であるコイル通電時間Tonも一定範囲内に限定されることになり、コイル通電時間Tonが不適切な値に設定されて失火の発生や主制御用トランジスタ15の破損などを防止できる。
【0117】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
例えば、点火時期設定制御処理のS380における設定処理周期Ttは、10[ms]に限ることはなく、内燃機関の種類や用途などに応じて適切な値を設定することが出来る。なお、設定処理周期Ttの設定値が長すぎると、内燃機関の運転状態の変化に追従できず的確な検出ができなくなるため、運転状態の変化が検出可能な範囲内(例えば、500[ms]以下)で設定することが望ましい。
【0118】
また、点火時期設定制御処理のS350での点火時期の算出は、図8に示すマップを用いる算出方法に限らず、計算式を用いた算出方法を利用しても良い。同様に、S370での基本通電時間の算出は、図9に示すマップを用いる算出方法に限らず、計算式を用いた算出方法を利用しても良い。
【0119】
さらに、上記実施例では、補正量βは固定値であるが、遮断時一次電流平均値Iavや検出した電源電圧に基づいて、遮断時一次電流値Iを制御目標電流値Itに近づけるための値を、補正量βに設定してもよい。このように補正量βを可変値とする構成においても、遮断時一次電流平均値Iavが制御許容範囲内(It±Iθ)に含まれる場合には、遮断時一次電流平均値Iavに基づくコイル通電時間Tonの補正を禁止することで、ハンチング現象を防止でき、内燃機関の運転状態が不安定になるのを防止できる。
【0120】
また、遮断時一次電流平均値Iavは、最新の5個の遮断時一次電流値Iを用いて算出した平均値に限らず、5個以上あるいは5個未満の個数の遮断時一次電流値Iを用いて算出した平均値としても良い。あるいは、前回の遮断時一次電流平均値Iavに対して、最新の遮断時一次電流値Iに所定の係数を乗じた値を加えた値を、今回の遮断時一次電流平均値Iavとして設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の内燃機関用点火装置の概略構成図である。
【図2】パルス信号、点火指令信号、一次電流および点火プラグの中心電極電位の各状態を表すタイムチャートである。
【図3】点火時期設定制御処理の処理内容を表すフローチャートである。
【図4】第1割込制御処理の処理内容を表すフローチャートである。
【図5】第2割込制御処理の処理内容を表すフローチャートである。
【図6】第3割込制御処理の処理内容を表すフローチャートである。
【図7】第4割込制御処理の処理内容を表すフローチャートである。
【図8】点火時期の設定に用いる点火時期設定用マップの説明図である。
【図9】基本通電時間の算出に用いる基本通電時間算出用マップの説明図である。
【符号の説明】
1…内燃機関用点火装置、11…直流電源装置、13…点火コイル、15…主制御用トランジスタ、17…点火プラグ、21…中央演算処理装置(CPU)、23…電圧変換回路、27…電源電圧検出回路、31…電子制御装置(ECU)、33…一次電流検出回路、45…一次巻線、47…二次巻線、51…中心電極、53…接地電極、75…カムセンサ、77…クランクセンサ、79…スロットル開度センサ。
Claims (6)
- 電源装置からの電源電圧が印加されることで一次電流が流れる一次巻線と、内燃機関に装着された点火プラグと閉ループを形成する二次巻線とを有する点火コイルと、
前記一次巻線および前記電源装置と共に閉ループを形成し、該一次巻線に流れる前記一次電流を通電、遮断するためのスイッチング手段と、
前記スイッチング手段を駆動制御して、少なくとも前記点火プラグの火花放電に必要なエネルギを前記点火コイルに蓄積するための一次電流通電時間にわたり前記一次電流を通電することで、前記二次巻線に点火用高電圧を発生させる点火制御手段と、
を備える内燃機関用点火装置であって、
前記一次巻線に流れる一次電流を検出する一次電流検出手段と、
前記一次電流検出手段で検出される前記一次電流に基づいて、前記点火制御手段による通電遮断時に前記一次巻線に流れる遮断時一次電流が制御目標電流値に近付くように、前記一次電流通電時間を補正する通電時間補正手段と、
前記一次電流検出手段により検出される前記遮断時一次電流が、前記制御目標電流値を含む制御許容範囲内に含まれる場合には、前記一次電流に基づく前記一次電流通電時間の補正を禁止する補正禁止手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関用点火装置。 - 前記電源電圧を検出する電源電圧検出手段を備え、
前記通電時間補正手段は、少なくとも前記一次電流検出手段で検出される前記一次電流および前記電源電圧検出手段で検出される前記電源電圧に基づき、前記遮断時一次電流が前記制御目標電流値に近付くように、前記一次電流通電時間を設定すること、
を特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火装置。 - 前記一次電流検出手段は、
前記通電遮断時より検出予備時間だけ早い通電時検出時期に検出した前記一次電流と、前記電源電圧検出手段で検出される前記電源電圧とに基づいて、前記通電遮断時の一次電流値を算出すること、
を特徴とする請求項2に記載の内燃機関用点火装置。 - 内燃機関の運転状態に基づき、少なくとも前記点火制御手段としての制御処理を実行する中央演算処理装置を備え、
単一の前記中央演算処理装置が、前記点火制御手段に加えて、前記通電時間補正手段および前記補正禁止手段としての制御処理を実行すること、
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の内燃機関用点火装置。 - 前記通電時間補正手段は、1燃焼サイクル毎に前記一次電流通電時間を補正し、
前記点火制御手段は、前回の燃焼サイクルで検出された前記一次電流に基づいて補正された前記一次電流通電時間を用いて、前記一次電流の通電・遮断制御を行うこと、
を特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の内燃機関用点火装置。 - 前記通電時間補正手段は、予め定められた設定可能範囲内に前記一次電流通電時間を設定すること、
を特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の内燃機関用点火装置。
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