JP2018024336A - 操舵制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】モータへの給電を制御するためのアシスト制御量を減少させる保護制御機能を有する場合であれ、異常値を示す過大なアシスト制御量をより適切に制限することができる操舵制御装置を提供する。【解決手段】EPSの制御装置は、アシスト制御量の演算に使用する各状態量に応じてアシスト制御量の変化範囲を制限する制限値を前記状態量ごとに個別に設定し、これら制限値(IUL1*〜IUL5*,ILL1*〜ILL5*)を合算することによりアシスト制御量に対する最終的な制限値(IUL*,ILL*)を生成する。また、制御装置は、エンド当ての判定条件が成立するとき、各状態量に基づき演算されるアシスト制御量の値を減少させるエンド当て保護制御を実行する。また、制御装置は、エンド当て判定条件が成立するとき、エンド当て保護制御が実行される直前の最終的な制限値を使用してアシスト制御量の変化範囲を制限する。【選択図】図4

Description

本発明は、操舵制御装置に関する。
従来、車両の操舵機構にモータのトルクをアシスト力として付与するEPS(電動パワーステアリング装置)が存在する。たとえば特許文献1に記載のEPSの制御装置は、操舵トルクおよび操舵角などの操舵状態を示す複数種の状態量に基づきアシスト制御量を演算し、当該アシスト制御量に基づきモータへの給電を制御する。制御装置は、各状態量に応じてアシスト制御量の変化範囲を制限する制限値(上限値および下限値)を状態量ごとに個別に設定する。制御装置は、これら個別に設定した制限値を合算した値をアシスト制御量に対する最終的な制限値として設定する。このように、EPSの制御装置に異常なアシスト制御量に対する制限機能を持たせることによって、異常値を示すアシスト制御量が演算された場合、当該異常なアシスト制御量の値は最終的な制限値によって各状態量に応じた適切な値に制限される。
特許文献1のEPSでは、操舵機構としてラックアンドピニオン機構が採用されている。当該機構は、ステアリングホイールの操作に伴うピニオンの回転を当該ピニオンに噛み合うラック軸の直線運動に変換することにより転舵輪の向きを変える。ラック軸はハウジングに摺動可能に収容されている。通常、ラック軸がその可動範囲の限界に達すると、当該ラック軸の端部(ラックエンド)がハウジングに突き当たる、いわゆる「エンド当て」が生じ、ラック軸の移動範囲が物理的に規制される。これにより、ステアリングホイールの操作範囲も規制される。
エンド当ての際、ステアリングホイールの慣性によりトーションバーが捻られることによって、より大きな操舵トルクが瞬間的に検出される。操舵トルクに基づき演算されるアシスト制御量もより大きな値となる。また、エンド当てが生じることによってモータの回転速度、ひいては逆起電力(誘起電圧)が急激に低下する。このため、モータを流れる電流が過剰に大きくなり、必要以上に大きなアシスト力が操舵機構に付与されるおそれがある。したがって、エンド当ての際の衝撃がより大きくなるおそれがある。
そこで、エンド当ての際の衝撃を緩和するために、たとえば特許文献2に記載のEPSの制御装置は、エンド当てが発生している旨判定されるとき、現アシスト電流値から余剰アシスト電流値を減算して得られる電流指令値に基づいてモータを制御する。モータには電流指令値に応じた電流が供給される。ここでの現アシスト電流値は、エンド当てが発生する直前のモータに対するアシスト電流値である。また、余剰アシスト電流値は、エンド当てが発生してから所定時間だけ経過するまでのモータの逆起電力の変化を計測して得られる補正用の波形として制御装置に記憶されている。この構成によれば、現アシスト電流値から余剰アシスト電流値が減算されることにより、モータに対する電流指令値が過剰に大きくなることが抑制される。また、モータに対する電流指令値が、ステアリングホイールの最大操舵角を維持する際の適正な値に補正される。したがって、エンド当ての際の衝撃が緩和される。
特開2015−163498号公報 特開2009−143312号公報
EPSの制御装置に、保護機能として、引用文献1の異常なアシスト制御量に対する制限機能、および引用文献2のエンド当て時の衝撃を緩和する緩衝機能の両方を持たせる場合、つぎのようなことが懸念される。すなわち、EPSの制御装置がエンド当てに対する緩衝機能を実行している間においてはモータへ供給される電流が抑えられるため、操舵トルクはより大きくなりやすい。このため、アシスト制御量に対する制限機能が実行されるとき、たとえば操舵状態を示す状態量の一である操舵トルクに応じた個別の制限値、ひいては当該個別の制限値が反映される最終的な制限値が、緩衝機能の実行を通じて減少されたアシスト制御量に対して過剰に拡がるおそれがある。この状況下において、異常値を示す過大なアシスト制御量が演算された場合、この異常なアシスト制御量を適切に制限することができないことが懸念される。このとき、モータトルクのより大きな変化、あるいはセルフステアリングが発生するおそれもある。
本発明の目的は、モータへの給電を制御するためのアシスト制御量を減少させる保護制御機能を有する場合であれ、異常値を示す過大なアシスト制御量をより適切に制限することができる操舵制御装置を提供することにある。
上記目的を達成し得る操舵制御装置は、アシスト制御部、保護制御部および制限処理部を有している。アシスト制御部は、操舵トルクを含む複数種の状態量に基づき、車両の操舵機構に付与するアシスト力の発生源であるモータへの給電を制御するためのアシスト制御量を演算する。保護制御部は、特定条件が成立するとき、前記アシスト制御量の値を減少させる保護制御を実行する。制限処理部は、前記複数種の状態量に応じて前記アシスト制御量の変化範囲を制限する制限値を前記状態量ごとに個別に設定するとともに、これら制限値を合算することにより得られる前記アシスト制御量に対する最終的な制限値に基づき前記アシスト制御量の変化範囲を制限する。また、前記制限処理部は、前記特定条件が成立するとき、前記保護制御が実行される直前の最終的な制限値を使用して前記アシスト制御量の変化範囲を制限する。
この構成によれば、アシスト制御量の制限値はアシスト制御量の演算に使用される各状態量に対して個別に設定されるとともに、これら制限値を合算した値がアシスト制御量に対する最終的な制限値として設定される。このため、何らかの原因によって異常値を示す過大なアシスト制御量が演算された場合であれ、当該異常なアシスト制御量は最終的な制限値によって各状態量に応じた適切な値に制限される。適切な値に制限されたアシスト制御量に基づきアシスト力の発生源であるモータへの給電が制御されることにより、意図しないアシスト力が操舵機構に付与されることが抑制される。
ここで、保護制御が実行されている間においては、その時々の操舵状態に応じて演算される本来のアシスト制御量が強制的に減少されるため、操舵トルクの値はより大きくなりやすい。このため、操舵トルクに応じた個別の制限値、ひいては当該個別の制限値が反映される最終的な制限値の制限幅が、減少された実際のアシスト制御量に対して過剰に拡がるおそれがある。
この点、上記の構成によれば、特定条件が成立するとき、保護制御が実行される直前の最終的な制限値が使用されて、減少されたアシスト制御量の変化範囲が制限される。保護制御が実行される直前の最終的な制限値は、保護制御の実行を通じてアシスト制御量が減少される直前、すなわちアシスト制御量の減少に伴い操舵トルクが増大する直前の操舵状態に基づき演算されたものである。このため、保護制御が実行される直前の最終的な制限値の制限幅は、保護制御が実行された以降に演算される最終的な制限値の制限幅よりも狭い。したがって、減少されたアシスト制御量に対する最終的な制限値として、保護制御が実行される直前の最終的な制限値を使用することにより、減少されたアシスト制御量に対する制限幅が無駄に拡がることが抑制される。異常値を示す過大なアシスト制御量をより適切に制限することができる。
上記の操舵制御装置において、前記制限処理部は、保持部と切替部とを有していることが好ましい。保持部は、前記最終的な制限値が使用されるたびに当該使用された最終的な制限値を保持する。切替部は、前記特定条件の成否に応じて、使用する最終的な制限値を、今回演算された最終的な制限値と、前記保持部に保持されている前回演算された最終的な制限値との間で切り替える。
この構成によれば、特定条件が成立するとき、使用する最終的な制限値が、今回演算された最終的な制限値から、保持部に保持されている前回演算された最終的な制限値(保護制御が実行される直前の最終的な制限値)へ切り替えられる。また、特定条件が成立しないとき、使用する最終的な制限値が、保持部に保持されている前回演算された最終的な制限値から、今回演算された最終的な制限値へ切り替えられる。このように、制限処理部で使用する最終的な制限値を、特定条件の成否に応じて適切に切り替えることができる。
上記の操舵制御装置において、前記保護制御部は、前記特定条件の成否の判定結果に応じてフラグの値をセットすることが好ましい。またこのとき、前記制限処理部は、前記フラグの値に基づき前記特定条件の成否を認識することが好ましい。
この構成によれば、制限処理部は、保護制御部においてセットされるフラグの値に基づき、特定条件の成否を簡単に認識することができる。
上記の操舵制御装置において、前記特定条件は、前記操舵機構がその物理的な操舵限界に達した旨判定されることであってもよい。
操舵機構がその物理的な操舵限界に達した旨判定されるとき、アシスト制御量が強制的に減少される分だけアシスト力も弱められる。このため、操舵機構がその物理的な操舵限界に達した際の衝撃が緩和される。
上記の操舵制御装置において、前記特定条件は、前記モータが過熱状態である旨判定されることであってもよい。
モータが過熱状態である旨判定されるとき、アシスト制御量が強制的に減少される分だけモータへ供給される電流も減少する。このため、モータの過熱が抑制される。
本発明の操舵制御装置によれば、モータへの給電を制御するためのアシスト制御量を減少させる保護制御機能を有する場合であれ、異常値を示す過大なアシスト制御量をより適切に制限することができる。
電子制御装置を有する電動パワーステアリング装置の一例を示す構成図。 電子制御装置の一例を示す制御ブロック図。 アシスト制御部の一例を示す制御ブロック図。 上下限リミット演算部の一例を示す制御ブロック図。 操舵トルクと制限値との関係の一例を示すマップ。 操舵トルクの微分値と制限値との関係の一例を示すマップ。 操舵角と制限値との関係の一例を示すマップ。 操舵速度と制限値との関係の一例を示すマップ。 操舵角加速度と制限値との関係の一例を示すマップ。 アシスト制御量(電流指令値)の変化の一例を示すグラフ。
以下、操舵制御装置を電動パワーステアリング装置のECU(電子制御装置)に具体化した一実施の形態を説明する。
<EPSの概要>
図1に示すように、電動パワーステアリング装置10は、運転者のステアリング操作に基づいて転舵輪を転舵させる操舵機構20、運転者のステアリング操作を補助する操舵補助機構30、および操舵補助機構30の作動を制御するECU40を備えている。
操舵機構20は、運転者により操作されるステアリングホイール21、およびステアリングホイール21と一体回転するステアリングシャフト22を備えている。ステアリングシャフト22は、ステアリングホイール21の中心に連結されたコラムシャフト22a、コラムシャフト22aの下端部に連結されたインターミディエイトシャフト22b、およびインターミディエイトシャフト22bの下端部に連結されたピニオンシャフト22cからなる。ピニオンシャフト22cの下端部は、ピニオンシャフト22cに交わる方向へ延びるラック軸23(正確にはラック歯が形成された部分23a)に噛合されている。したがって、ステアリングシャフト22の回転運動は、ピニオンシャフト22cおよびラック軸23からなるラックアンドピニオン機構24によりラック軸23の往復直線運動に変換される。当該往復直線運動が、ラック軸23の両端にそれぞれ連結されたタイロッド25を介して左右の転舵輪26,26にそれぞれ伝達されることにより、これら転舵輪26,26の転舵角θtaが変更される。
なお、図1に二点鎖線で示されるように、ラック軸23およびピニオンシャフト22cの下端部はハウジング27に収容されている。ステアリングホイール21の操作を通じて、ラック軸23がその可動範囲の限界に達するとき、当該ラック軸23の端部(ラックエンド)がハウジング27に突き当たる、いわゆる「エンド当て」が生じることにより、ラック軸23の移動範囲が物理的に規制される。これにより、ステアリングホイール21の操作範囲も規制される。
図1に示すように、操舵補助機構30は、操舵補助力の発生源であるモータ31を備えている。モータ31としては、たとえば三相のブラシレスモータが採用される。モータ31は、減速機構32を介してコラムシャフト22aに連結されている。減速機構32はモータ31の回転を減速し、当該減速した回転力をコラムシャフト22aに伝達する。すなわち、ステアリングシャフト22にモータのトルクが操舵補助力(アシスト力)として付与されることにより、運転者のステアリング操作が補助される。
ECU40は、車両に設けられる各種のセンサの検出結果を運転者の要求あるいは走行状態を示す情報として取得し、これら取得される各種の情報に応じてモータ31を制御する。
各種のセンサとしては、たとえば車速センサ51、ステアリングセンサ52、トルクセンサ53および回転角センサ54がある。車速センサ51は車速(車両の走行速度)Vを検出する。ステアリングセンサ52はコラムシャフト22aに設けられて操舵角θsを検出する。トルクセンサ53はコラムシャフト22aに設けられて操舵トルクτを検出する。回転角センサ54はモータ31に設けられてモータ31の回転角θmを検出する。
ECU40は車速V、操舵角θs、操舵トルクτおよび回転角θmに基づき目標アシスト力を演算し、当該目標アシスト力を操舵補助機構30に発生させるための駆動電力をモータ31に供給する。
<ECUの構成>
つぎに、ECUのハードウェア構成を説明する。
図2に示すように、ECU40は駆動回路(インバータ回路)41およびマイクロコンピュータ42を備えている。
駆動回路41は、マイクロコンピュータ42により生成されるモータ制御信号Sc(PWM駆動信号)に基づいて、バッテリなどの直流電源から供給される直流電力を三相交流電力に変換する。当該変換された三相交流電力は各相の給電経路43を介してモータ31に供給される。各相の給電経路43には電流センサ44が設けられている。これら電流センサ44は各相の給電経路43に生ずる実際の電流値Imを検出する。なお、図2では、説明の便宜上、各相の給電経路43および各相の電流センサ44をそれぞれ1つにまとめて図示する。
マイクロコンピュータ42は、車速センサ51、ステアリングセンサ52、トルクセンサ53、回転角センサ54および電流センサ44の検出結果をそれぞれ定められたサンプリング周期で取り込む。マイクロコンピュータ42はこれら取り込まれる検出結果、すなわち車速V、操舵角θs、操舵トルクτ、回転角θmおよび実際の電流値Imに基づきモータ制御信号Scを生成する。
<マイクロコンピュータ>
つぎに、マイクロコンピュータの機能的な構成を説明する。
マイクロコンピュータ42は、図示しない記憶装置に格納された制御プログラムを実行することによって実現される各種の演算処理部を有している。
図2に示すように、マイクロコンピュータ42は、これら演算処理部として電流指令値演算部61およびモータ制御信号生成部62を備えている。電流指令値演算部61は、操舵トルクτ、車速Vおよび操舵角θsに基づき電流指令値Iを演算する。電流指令値Iはモータ31に供給するべき電流を示す指令値である。正確には、電流指令値Iは、d/q座標系におけるq軸電流指令値およびd軸電流指令値を含む。本実施形態においてd軸電流指令値は零に設定されている。d/q座標系は、モータ31の回転角θmに従う回転座標である。モータ制御信号生成部62は、回転角θmを使用してモータ31の三相の電流値Imを二相のベクトル成分、すなわちd/q座標系におけるd軸電流値およびq軸電流値に変換する。そして、モータ制御信号生成部62は、d軸電流値とd軸電流指令値との偏差、およびq軸電流値とq軸電流指令値との偏差をそれぞれ求め、これら偏差を解消するようにモータ制御信号Scを生成する。
<電流指令値演算部>
つぎに、電流指令値演算部について説明する。
図2に示すように、電流指令値演算部61は、アシスト制御部71、上下限リミット演算部72および上下限ガード処理部73を有している。また、電流指令値演算部61は3つの微分器74,75,76を有している。微分器74は操舵角θsを微分することにより操舵速度ωsを演算する。微分器75は前段の微分器74により算出される操舵速度ωsをさらに微分することにより操舵角加速度αsを演算する。微分器76は操舵トルクτを時間で微分することにより操舵トルク微分値dτを演算する。
アシスト制御部71は、操舵トルクτ、車速V、操舵角θs、操舵速度ωs、操舵角加速度αsおよび操舵トルク微分値dτに基づきアシスト制御量Ias を演算する。アシスト制御量Ias は、モータ31への給電を制御するために演算されるものである。アシスト制御量Ias は、各種の状態量に応じた適切な大きさの目標アシスト力を発生させるためにモータ31へ供給すべき電流量の値(電流値)である。
上下限リミット演算部72は、アシスト制御部71において使用される各種の信号、ここでは操舵トルクτ、操舵角θs、操舵トルク微分値dτ、操舵速度ωsおよび操舵角加速度αsに基づきアシスト制御量Ias に対する制限値として上限値IUL および下限値ILL を演算する。上限値IUL および下限値ILL はアシスト制御量Ias に対する最終的な制限値となる。
上下限ガード処理部73は、上下限リミット演算部72により演算される上限値IUL および下限値ILL に基づきアシスト制御量Ias の制限処理を実行する。すなわち、上下限ガード処理部73はアシスト制御量Ias の値ならびに上限値IUL および下限値ILL を比較する。上下限ガード処理部73は、アシスト制御量Ias が上限値IUL を超える場合にはアシスト制御量Ias を上限値IUL に制限し、下限値ILL を下回る場合にはアシスト制御量Ias を下限値ILL に制限する。当該制限処理が施されたアシスト制御量Ias が最終的な電流指令値Iとなる。なお、アシスト制御量Ias が上限値IUL と下限値ILL との範囲内であるときには、アシスト制御部71により演算されるアシスト制御量Ias がそのまま最終的な電流指令値Iとなる。
<アシスト制御部>
つぎに、アシスト制御部71について詳細に説明する。
図3に示すように、アシスト制御部71は基本アシスト制御部81、補償制御部82、加算器83およびエンド当て制御部87を備えている。
基本アシスト制御部81は操舵トルクτおよび車速Vに基づき基本アシスト制御量I を演算する。基本アシスト制御量I は、操舵トルクτおよび車速Vに応じた適切な大きさの目標アシスト力を発生させるための基礎成分(電流値)である。基本アシスト制御部81はたとえばマイクロコンピュータ42の図示しない記憶装置に格納されるアシスト特性マップを使用して基本アシスト制御量I を演算する。アシスト特性マップは操舵トルクτおよび車速Vに基づき基本アシスト制御量I を演算するための車速感応型の三次元マップであって、操舵トルクτ(絶対値)が大きいほど、また車速Vが小さいほど大きな値(絶対値)の基本アシスト制御量I が算出されるように設定されている。
補償制御部82は、より優れた操舵感を実現するために基本アシスト制御量I に対する各種の補償制御を実行する。補償制御部82は慣性補償制御部84、ステアリング戻し制御部85およびトルク微分制御部86を備えている。
慣性補償制御部84は、操舵角加速度αsおよび車速Vに基づきモータ31の慣性を補償するための補償量I (電流値)を演算する。補償量I を使用して基本アシスト制御量I を補正することにより、ステアリングホイール21の切り始め時における引っ掛かり感(追従遅れ)および切り終わり時の流れ感(オーバーシュート)が低減される。
ステアリング戻し制御部85は、操舵トルクτ、車速V、操舵角θsおよび操舵速度ωsに基づきステアリングホイール21の戻り特性を補償するための補償量I (電流値)を演算する。補償量I を使用して基本アシスト制御量I を補正することにより、路面反力によるセルフアライニングトルクの過不足が補償される。補償量I に応じてステアリングホイール21を中立位置に戻す方向へ向けたアシスト力が発生されるからである。
トルク微分制御部86は、逆入力振動成分を操舵トルク微分値dτとして検出し、当該検出される操舵トルク微分値dτに基づき逆入力振動などの外乱を補償するための補償量I (電流値)を演算する。補償量I を使用して基本アシスト制御量I を補正することにより、ブレーキ操作に伴い発生するブレーキ振動などの外乱が抑制される。補償量I に応じて逆入力振動を打ち消す方向へ向けたアシスト力が発生されるからである。
加算器83は基本アシスト制御量I に対する補正処理として補償量I 、補償量I および補償量I を加算することによりアシスト制御量Ias を生成する。
エンド当て制御部87は、トルクセンサ53を通じて検出される操舵トルクτおよび車速センサ51を通じて検出される車速Vに基づき、ラック軸23のエンド当てが発生しているかどうかを判定する。エンド当て制御部87は、たとえばつぎの(a)〜(d)の判定条件が成立するとき、エンド当てが発生している旨判定する。
(a)車速Vがしきい値未満であること。一般に、車速Vが速くなるほど、ステアリングホイール21を操舵限界まで操舵することが困難となる。
(b)操舵トルクτの絶対値がしきい値以上であること。エンド当てが発生するとき、一般に操舵トルクτが増加する。
(c)操舵トルクτの変化速度の絶対値がしきい値以上であること。ステアリングホイール21が操舵限界に達しているにも関わらず操舵が行われようとすることに起因して操舵トルクτの変化速度が大きく変化する。
(d)操舵トルクτと操舵トルクτの変化速度が同符号であること。操舵トルクτと操舵トルクτの変化速度とが異符号であるとき、ステアリングホイール21はエンド当てが回避される方向へ向けて操作されていることになる。
エンド当て制御部87は、エンド当てが発生している旨判定されるとき、いわゆるエンド当て制御を実行する。エンド当て制御とは、ステアリングホイール21の操作を通じてラック軸23にエンド当てが発生したときの衝撃を緩和するために、モータ31に発生させるトルク(アシスト力)を操舵トルクτに応じた通常のアシスト力よりも弱める制御をいう。エンド当て制御部87は、エンド当てが発生している旨判定されるとき、たとえば加算器83により演算される本来のアシスト制御量Ias を設定量だけ減少させる。設定量は、たとえばエンド当ての際の衝撃を緩和するためにモータ31へ供給する電流をどの程度だけ減少させるべきかという観点に基づき、実験などを通じて設定される。この設定量に応じてアシスト制御量Ias が減少する分だけモータ31へ供給される電流が減少するので、モータ31により発生されるアシスト力は操舵トルクτに対して必要とされる本来のアシスト力よりも弱くなる。アシスト力が弱められる分だけ、エンド当ての際の衝撃が緩和される。
また、エンド当て制御部87は、エンド当てが発生している旨判定されるとき、エンド当て判定フラグFを「1」にセットする。エンド当て制御部87は、エンド当てが発生していない旨判定されるとき、エンド当て判定フラグFを「0」にセットする。
<上下限リミット演算部>
つぎに、上下限リミット演算部72について詳細に説明する。
図4に示すように、上下限リミット演算部72は上限値演算部90および下限値演算部100を備えている。
<上限値演算部>
上限値演算部90は、操舵トルク感応リミッタ91、操舵トルク微分値感応リミッタ92、操舵角感応リミッタ93、操舵速度感応リミッタ94、操舵角加速度感応リミッタ95および加算器96を有している。また、上限値演算部90は、上限値保持部97および上限値切替部98を有している。
操舵トルク感応リミッタ91は、操舵トルクτに応じてアシスト制御量Ias に対する上限値IUL1 を演算する。操舵トルク微分値感応リミッタ92は、操舵トルク微分値dτに応じてアシスト制御量Ias に対する上限値IUL2 を演算する。操舵角感応リミッタ93は、操舵角θsに応じてアシスト制御量Ias に対する上限値IUL3 を演算する。操舵速度感応リミッタ94は、操舵速度ωsに応じてアシスト制御量Ias に対する上限値IUL4 を演算する。操舵角加速度感応リミッタ95は、操舵角加速度αsに応じてアシスト制御量Ias に対する上限値IUL5 を演算する。
加算器96は5つの上限値IUL1 〜IUL5 を足し算することによりアシスト制御量Ias に対する上限値IUL を生成する。この上限値IUL は上限値切替部98を介して上下限ガード処理部73へ供給される。
上限値保持部97は、上限値切替部98から上下限ガード処理部73へ供給される上限値IUL を取り込み、この取り込まれる上限値IUL を保持する。上限値保持部97に保持される上限値IUL は、上下限ガード処理部73へ上限値IUL が供給される度に更新される。すなわち、上限値保持部97に保持されている上限値IUL は、上下限ガード処理部73へ供給される今回値としての上限値IUL に対する前回値(一演算周期前の上限値IUL )である。
上限値切替部98は、データ入力として、加算器96により演算される上限値IUL および上限値保持部97に保持されている上限値IUL を取り込む。また、上限値切替部98は、制御入力として、エンド当て制御部87によりセットされるエンド当て判定フラグFの値を取り込む。上限値切替部98は、エンド当て判定フラグFの値に基づき、上下限ガード処理部73へ供給する上限値IUL を、加算器96により演算される上限値IUL (今回値)と、上限値保持部97に保持されている上限値IUL (前回値)との間で切り替える。上限値切替部98は、エンド当て判定フラグFの値が「0」であるとき、加算器96により演算される上限値IUL を上下限ガード処理部73へ供給する。上限値切替部98は、エンド当て判定フラグFの値が「1」であるとき(より正確には、エンド当て判定フラグFの値が「0」ではないとき)、上限値保持部97に保持されている上限値IUL を上下限ガード処理部73へ供給する。
<下限値演算部>
下限値演算部100は、操舵トルク感応リミッタ101、操舵トルク微分値感応リミッタ102、操舵角感応リミッタ103、操舵速度感応リミッタ104、操舵角加速度感応リミッタ105および加算器106を有している。また、下限値演算部100は、下限値保持部107および下限値切替部108を有している。
操舵トルク感応リミッタ101は、操舵トルクτに応じてアシスト制御量Ias に対する下限値ILL1 を演算する。操舵トルク微分値感応リミッタ102は、操舵トルク微分値dτに応じてアシスト制御量Ias に対する下限値ILL2 を演算する。操舵角感応リミッタ103は、操舵角θsに応じてアシスト制御量Ias に対する下限値ILL3 を演算する。操舵速度感応リミッタ104は、操舵速度ωsに応じてアシスト制御量Ias に対する下限値ILL4 を演算する。操舵角加速度感応リミッタ105は、操舵角加速度αsに応じてアシスト制御量Ias に対する下限値ILL5 を演算する。
加算器106は5つの下限値ILL1 〜ILL5 を足し算することによりアシスト制御量Ias に対する下限値ILL を生成する。この下限値ILL は下限値切替部108を介して上下限ガード処理部73へ供給される。
下限値保持部107は、下限値切替部108から上下限ガード処理部73へ供給される下限値ILL を取り込み、この取り込まれる下限値ILL を保持する。下限値保持部107に保持される下限値ILL は、上下限ガード処理部73へ下限値ILL が供給される度に更新される。すなわち、下限値保持部107に保持されている下限値ILL は、上下限ガード処理部73へ供給される今回値としての下限値ILL に対する前回値(一演算周期前の下限値ILL )である。
下限値切替部108は、データ入力として、加算器106により演算される下限値ILL および下限値保持部107に保持されている下限値ILL を取り込む。また、下限値切替部108は、制御入力として、エンド当て制御部87によりセットされるエンド当て判定フラグFの値を取り込む。下限値切替部108は、エンド当て判定フラグFの値に基づき、上下限ガード処理部73へ供給する下限値ILL を、加算器106により演算される下限値ILL (今回値)と、下限値保持部107に保持されている下限値ILL (前回値)との間で切り替える。下限値切替部108は、エンド当て判定フラグFの値が「0」であるとき、加算器106により演算される下限値ILL を上下限ガード処理部73へ供給する。下限値切替部108は、エンド当て判定フラグFの値が「1」であるとき(より正確には、エンド当て判定フラグFの値が「0」ではないとき)、下限値保持部107に保持されている下限値ILL を上下限ガード処理部73へ供給する。
<上下限リミットマップ>
上限値演算部90および下限値演算部100は、それぞれ第1〜第5のリミットマップM1〜M5を使用して各上限値IUL1 〜IUL5 および各下限値ILL1 〜ILL5 を演算する。第1〜第5のリミットマップM1〜M5はマイクロコンピュータ42の図示しない記憶装置に格納されている。第1〜第5のリミットマップM1〜M5は、それぞれ運転者のステアリング操作に応じて演算されるアシスト制御量Ias は許容し、それ以外の何らかの原因による異常なアシスト制御量Ias は許容しないという観点に基づき設定される。
図5に示すように、第1のリミットマップM1は、横軸を操舵トルクτ、縦軸をアシスト制御量Ias とするマップであって、操舵トルクτとアシスト制御量Ias に対する上限値IUL1 との関係、および操舵トルクτとアシスト制御量Ias に対する下限値ILL1 との関係をそれぞれ規定する。操舵トルク感応リミッタ91,101はそれぞれ第1のリミットマップM1を使用して操舵トルクτに応じた上限値IUL1 および下限値ILL1 を演算する。
第1のリミットマップM1は、操舵トルクτと同じ方向(正負の符号)のアシスト制御量Ias は許容し、操舵トルクτと異なる方向のアシスト制御量Ias は許容しない観点に基づき設定されることにより、つぎのような特性を有する。すなわち、操舵トルクτが正の値である場合、アシスト制御量Ias の上限値IUL1 は操舵トルクτの増大に伴い正の方向へ増加し、所定値を境として正の一定値に維持される。また、操舵トルクτが正の値である場合、アシスト制御量Ias の下限値ILL1 は「0」に維持される。一方、操舵トルクτが負の値である場合、アシスト制御量Ias の上限値IUL1 は「0」に維持される。また、操舵トルクτが負の値である場合、アシスト制御量Ias の下限値ILL1 は操舵トルクτの絶対値が増大するほど負の方向へ増加し、所定値を境として負の一定値に維持される。
図6に示すように、第2のリミットマップM2は、横軸を操舵トルク微分値dτ、縦軸をアシスト制御量Ias とするマップであって、操舵トルク微分値dτとアシスト制御量Ias に対する上限値IUL2 との関係、および操舵トルク微分値dτとアシスト制御量Ias に対する下限値ILL2 との関係をそれぞれ規定する。操舵トルク微分値感応リミッタ92,102はそれぞれ第2のリミットマップM2を使用して操舵トルク微分値dτに応じた上限値IUL2 および下限値ILL2 を演算する。
第2のリミットマップM2は、操舵トルク微分値dτと同じ方向(正負の符号)のアシスト制御量Ias は許容し、操舵トルク微分値dτと異なる方向のアシスト制御量Ias は許容しない観点に基づき設定されることにより、つぎのような特性を有する。すなわち、操舵トルク微分値dτが正の値である場合、アシスト制御量Ias の上限値IUL2 は操舵トルク微分値dτの増大に伴い正の方向へ増加し、所定値を境として正の一定値に維持される。また、操舵トルク微分値dτが正の値である場合、アシスト制御量Ias の下限値ILL2 は「0」に維持される。一方、操舵トルク微分値dτが負の値である場合、アシスト制御量Ias の上限値IUL2 は「0」に維持される。また、操舵トルク微分値dτが負の値である場合、アシスト制御量Ias の下限値ILL2 は操舵トルク微分値dτの絶対値が増大するほど負の方向へ増加し、所定値を境として負の一定値に維持される。
図7に示すように、第3のリミットマップM3は、横軸を操舵角θs、縦軸をアシスト制御量Ias とするマップであって、操舵角θsとアシスト制御量Ias に対する上限値IUL3 との関係、および操舵角θsとアシスト制御量Ias に対する下限値ILL3 との関係をそれぞれ規定する。操舵角感応リミッタ93,103はそれぞれ第3のリミットマップM3を使用して操舵角θsに応じた上限値IUL3 および下限値ILL3 を演算する。
第3のリミットマップM3は、操舵角θsと反対方向(正負の符号)のアシスト制御量Ias は許容し、操舵角θsと同じ方向のアシスト制御量Ias は許容しない観点に基づき設定されることにより、つぎのような特性を有する。すなわち、操舵角θsが正の値である場合、アシスト制御量Ias の上限値IUL3 は「0」に維持される。また、操舵角θsが正の値である場合、アシスト制御量Ias の下限値ILL3 は操舵角θsの増大に伴い負の方向へ増加する。一方、操舵角θsが負の値である場合、アシスト制御量Ias の上限値IUL3 は操舵角θsの絶対値が増大するほど正の方向へ増加する。また、操舵角θsが負の値である場合、アシスト制御量Ias の下限値ILL3 は「0」に維持される。
図8に示すように、第4のリミットマップM4は、横軸を操舵速度ωs、縦軸をアシスト制御量Ias とするマップであって、操舵速度ωsとアシスト制御量Ias に対する上限値IUL4 との関係、および操舵速度ωsとアシスト制御量Ias に対する下限値ILL4 との関係をそれぞれ規定する。操舵速度感応リミッタ94,104はそれぞれ第4のリミットマップM4を使用して操舵速度ωsに応じた上限値IUL4 および下限値ILL4 を演算する。
第4のリミットマップM4は、操舵速度ωsと反対方向(正負の符号)のアシスト制御量Ias は許容し、操舵速度ωsと同じ方向のアシスト制御量Ias は許容しない観点に基づき設定されることにより、つぎのような特性を有する。すなわち、操舵速度ωsが正の値である場合、アシスト制御量Ias の上限値IUL4 は「0」に維持される。また、操舵速度ωsが正の値である場合、アシスト制御量Ias の下限値ILL4 は操舵速度ωsの増大に伴い負の方向へ増加し、所定値を境として負の一定値に維持される。一方、操舵速度ωsが負の値である場合、アシスト制御量Ias の上限値IUL4 は操舵速度ωsの絶対値が増大するほど正の方向へ増加し、所定値を境として正の一定値に維持される。また、操舵速度ωsが負の値である場合、アシスト制御量Ias の下限値ILL4 は「0」に維持される。
図9に示すように、第5のリミットマップM5は、横軸を操舵角加速度αs、縦軸をアシスト制御量Ias とするマップであって、操舵角加速度αsとアシスト制御量Ias に対する上限値IUL5 との関係、および操舵角加速度αsとアシスト制御量Ias に対する下限値ILL5 との関係をそれぞれ規定する。操舵角加速度感応リミッタ95,105はそれぞれ第5のリミットマップM5を使用して操舵角加速度αsに応じた上限値IUL5 および下限値ILL5 を演算する。
第5のリミットマップM5は、操舵角加速度αsと反対方向(正負の符号)のアシスト制御量Ias は許容し、操舵角加速度αsと同じ方向のアシスト制御量Ias は許容しない観点に基づき設定されることにより、つぎのような特性を有する。すなわち、操舵角加速度αsが正の値である場合、アシスト制御量Ias の上限値IUL5 は「0」に維持される。また、操舵角加速度αsが正の値である場合、アシスト制御量Ias の下限値ILL5 は操舵角加速度αsの増大に伴い負の方向へ増加し、所定値を境として負の一定値に維持される。一方、操舵角加速度αsが負の値である場合、アシスト制御量Ias の上限値IUL5 は操舵角加速度αsの絶対値が増大するほど正の方向へ増加し、所定値を境として正の一定値に維持される。また、操舵角加速度αsが負の値である場合、アシスト制御量Ias の下限値ILL5 は「0」に維持される。
<ECUの作用および効果>
つぎに、ECU40の基本的な作用および効果を説明する。エンド当てが発生していないとき、加算器96により演算される今回の上限値IUL および加算器106により演算される今回の下限値ILL が最終的な制限値として使用される。エンド当てが発生しているとき、上限値保持部97に保持されている前回の上限値IUL および下限値保持部107に保持されている前回の下限値ILL が最終的な制限値として使用される。
アシスト制御量Ias に対する制限値(上限値および下限値)がアシスト制御量Ias を演算する際に使用する各信号、ここでは操舵状態を示す状態量である操舵トルクτ、操舵トルク微分値dτ、操舵角θs、操舵速度ωsおよび操舵角加速度αsに対して個別に設定される。マイクロコンピュータ42は、アシスト制御量Ias に基づき最終的な電流指令値Iを演算するに際して、各信号の値に応じてアシスト制御量Ias の変化範囲を制限するための制限値を信号毎に設定する。マイクロコンピュータ42は、これら信号毎に設定される制限値(IUL1 〜IUL5 ,ILL1 〜ILL5 )を合算した値をアシスト制御量Ias に対する最終的な制限値(IUL ,ILL )として設定する。
ちなみに、信号毎の制限値、ひいては最終的な制限値は運転者のステアリング操作に応じて演算される通常のアシスト制御量Ias は許容し、何らかの原因に起因する異常なアシスト制御量Ias は制限する観点に基づき設定される。マイクロコンピュータ42は、たとえば運転者の操舵入力に対するトルク微分制御およびステアリング戻し制御などの各種補償制御による補償量は許容する一方、各補償量の値を超える異常出力あるいは誤出力などは制限する。
マイクロコンピュータ42は、アシスト制御量Ias が最終的な上限値IUL および下限値ILL により定められる制限範囲を超えるとき、上限値IUL を超えるアシスト制御量Ias あるいは下限値ILL を下回るアシスト制御量Ias が最終的な電流指令値Iとしてモータ制御信号生成部62に供給されないように制限する。最終的な上限値IUL および下限値ILL には信号毎に設定された個別の制限値(上限値および下限値)が反映されている。すなわち、異常な値を示すアシスト制御量Ias が演算される場合であれ、当該異常なアシスト制御量Ias の値は最終的な制限値によって各信号値に応じた適切な値に制限される。そして、当該適切なアシスト制御量Ias が最終的な電流指令値Iとしてモータ制御信号生成部62に供給されることにより適切なアシスト力が操舵機構20に付与される。何らかの原因によって異常値を示す過大なアシスト制御量Ias が演算された場合であれ、この異常なアシスト制御量Ias に基づく最終的な電流指令値Iがモータ制御信号生成部62に供給されることが抑制される。このため、操舵機構20に対して意図しないアシスト力が付与されることが抑制される。たとえばいわゆるセルフステアなどの発生も抑制される。
ここで、アシスト制御量Ias の異常が続く限り継続してアシスト制御量Ias を制限することも可能ではあるものの、より安全性を高める観点から、つぎのようにしてもよい。
図10のグラフに示すように、アシスト制御量Ias の値がたとえば下限値ILL を下回るとき(時刻TL0)、アシスト制御量Ias の値は下限値ILL で制限される。マイクロコンピュータ42は当該制限される状態が一定期間ΔTだけ継続したとき(時刻TL1)、下限値ILL を「0」に向けて漸減させる(以下、「漸減処理」という。)。そして下限値ILL が「0」に至るタイミング(時刻TL2)でアシスト制御量Ias の値は「0」になる。その結果、操舵機構20に対するアシスト力の付与が停止される。当該漸減処理は、異常な状態が一定期間ΔTだけ継続したときにはアシスト力の付与を停止することが好ましいという観点に基づき行われる。アシスト制御量Ias の値は徐々に小さくなるので、これに伴いアシスト力も徐々に小さくなる。このため、操舵機構20に対するアシスト力の付与を停止させる際、操舵感に急激な変化が発生することはない。安全性も、より高められる。
なお、アシスト制御量Ias の値が上限値IUL を超える場合についても同様である。すなわち、マイクロコンピュータ42はアシスト制御量Ias の制限状態が一定期間ΔTだけ継続したとき、上限値IUL を「0」に向けて漸減させる。
当該漸減処理は上限値IUL および下限値ILL の演算処理とは無関係に強制的に行われるものである。マイクロコンピュータ42は、当該漸減処理の実行中において、アシスト制御量Ias の値が上限値IUL と下限値ILL との間の正常範囲内の値に復帰したとき、漸減処理の実行を停止するようにしてもよい。これにより、強制的に「0」に向けて漸減させた上限値IUL または下限値ILL は本来の値に復帰する。
<制限値を今回値と前回値との間で切り替えることの意義>
つぎに、最終的な制限値(IUL ,ILL )をエンド当て判定フラグFの値に応じて今回値と前回値との間で切り替えることの技術的な意義を説明する。
まず、エンド当てが発生していない場合、エンド当て判定フラグFの値は「0」にセットされる。このとき、加算器96,106を通じて演算される今回の制限値(IUL ,ILL )が使用されてアシスト制御量Ias が制限される。このときのアシスト制御量Ias は強制的に減少されることはなく、その時々の操舵状態に応じた値となる。また、今回の制限値(IUL ,ILL )も、その時々の操舵状態に応じて演算されるものである。このため、アシスト制御量Ias に対して今回の制限値(IUL ,ILL )による制限幅が無駄に拡がることはない。
つぎに、エンド当てが発生した際、マイクロコンピュータ42は保護制御としてエンド当て制御を実行する。エンド当て制御が実行されている間においては、加算器83により演算される本来のアシスト制御量Ias が設定量だけ減少されるため、トルクセンサ53を通じて検出される操舵トルクτの値はより大きくなりやすい。このため、操舵トルクτに応じた個別の制限値(IUL1 ,ILL1 )、ひいては当該個別の制限値が反映される最終的な制限値(IUL ,ILL )が、エンド当て制御の実行を通じて減少された実際のアシスト制御量Ias に対して過剰に拡がるおそれがある。
この点、本例ではエンド当てが発生した際、すなわちエンド当て判定フラグFの値が「1」であるとき、加算器96,106により演算される今回の制限値(IUL ,ILL )ではなく、上限値保持部97に保持されている前回の上限値IUL および下限値保持部107に保持されている前回の下限値ILL が最終的な制限値として使用される。これら前回の上限値IUL および前回の下限値ILL は、エンド当てが発生する直前(たとえば、今回の一演算周期前)において、加算器96,106により演算された上限値IUL および下限値ILL である。
エンド当て直前の最終的な制限値(IUL ,ILL )は、エンド当て制御部87を通じてアシスト制御量Ias 、ひいてはアシスト力が減少されることに起因して増大する前の操舵トルクτに応じた個別の制限値(IUL1 ,ILL1 )が反映されたものである。このため、前回の最終的な制限値(IUL ,ILL )による制限幅は、今回の最終的な制限値(IUL ,ILL )による制限幅よりも狭くなる。すなわち、エンド当て制御部87を通じて減少されたアシスト制御量Ias に対して、最終的な制限値(IUL ,ILL )による制限幅が過剰に拡がることが抑制される。
したがって、ECU40に保護機能としてエンド当て制御機能を持たせる場合であれ、異常値を示すアシスト制御量Ias に対する制限機能をより適切に発揮させることができる。エンド当て制御が実行されている場合に異常値を示す過大なアシスト制御量Ias が演算されるとき、この異常なアシスト制御量Ias がより適切に制限されることにより、モータトルクのより大きな変化、あるいはセルフステアリングの発生を抑制することができる。安全性もより高められる。
なお、エンド当て判定フラグFの値が「1」から「0」へ切り替わったとき、使用される最終的な制限値(IUL ,ILL )は、上限値保持部97および下限値保持部107に保持された前回の最終的な制限値から、加算器96,106を通じて演算される今回の最終的な制限値へ切り替えられる。
<他の実施の形態>
なお、本実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・本例では、エンド当て制御部87はアシスト制御部71の構成要素として設けたが、たとえばアシスト制御部71と上下限ガード処理部73との間の演算経路に設けてもよい。
・本例では、エンド当てが発生した際、エンド当て制御として、加算器83により演算されるアシスト制御量Ias を減少させるようにしたが、たとえば各補償量I ,I ,I の少なくとも一を減少させるようにしてもよい。この場合、慣性補償制御部84、ステアリング戻し制御部85およびトルク微分制御部86の少なくとも一と加算器83との間の演算経路上にエンド当て制御部87を設ける。また、エンド当て制御として、加算器83により演算されるアシスト制御量Ias を減少させることに代えて、各補償量I ,I ,I の合算値を減少させるようにしてもよい。この場合、たとえば各補償量I ,I ,I を合算する加算器を追加して設ける。そして、当該追加した加算器と加算器83との間の演算経路にエンド当て制御部87を設ける。このようにしても、エンド当てが発生した際、アシスト制御量Ias を減少させることができる。
・EPS10のECU40には、モータ31の過熱保護機能を持たせてもよい。ECU40は、たとえば電流センサ44を通じて検出されるモータ31に供給される電流値Im、または図示しない温度センサを通じて検出されるモータ31の温度に基づき、モータ31の過熱状態を判定する。当該過熱状態の判定は、たとえば、検出される電流値Imと電流判定しきい値との比較、または検出されるモータ31の温度と温度判定しきい値との比較を通じて行われる。ECU40は、モータ31が過熱状態である旨判定されるとき、アシスト制御量Ias の値を減少補正する。この場合においても、エンド当て制御機能が実行されたときと同様に、アシスト制御量Ias に対する最終的な制限値(IUL ,ILL )の制限幅が過剰に拡がるおそれがある。このため、過熱保護機能が実行されているとき、本例と同様に、アシスト制御量Ias の値を減少補正することが有効である。ちなみに、エンド当て制御機能および過熱保護機能だけでなく、特定の条件が成立するとき、アシスト制御量Ias の値を減少補正する種々の保護制御機能に対して有効である。ECU40は、エンド当て制御機能および過熱保護機能を含む保護制御機能として、単一種の保護制御機能を有していてもよいし、複数種の保護制御機能を有していてもよい。
・本例では、ステアリングシャフト22にアシスト力を付与するタイプの電動パワーステアリング装置にECU40を適用した例を挙げたが、たとえばラック軸23にアシスト力を付与するタイプの電動パワーステアリング装置にECU40を適用してもよい。
20…操舵機構、31…モータ、40…ECU(操舵制御装置)、71…アシスト制御部、72…制限処理部を構成する上下限リミット演算部、73…制限処理部を構成する上下限ガード処理部、87…エンド当て制御部(保護制御部)、97…上限値保持部、98…上限値切替部、107…下限値保持部、108…下限値切替部。

Claims (5)

  1. 操舵トルクを含む複数種の状態量に基づき、車両の操舵機構に付与するアシスト力の発生源であるモータへの給電を制御するためのアシスト制御量を演算するアシスト制御部と、
    特定条件が成立するとき、前記アシスト制御量の値を減少させる保護制御を実行する保護制御部と、
    前記複数種の状態量に応じて前記アシスト制御量の変化範囲を制限する制限値を前記状態量ごとに個別に設定するとともに、これら制限値を合算することにより得られる前記アシスト制御量に対する最終的な制限値に基づき前記アシスト制御量の変化範囲を制限する制限処理部と、を備え、
    前記制限処理部は、前記特定条件が成立するとき、前記保護制御が実行される直前の最終的な制限値を使用して前記アシスト制御量の変化範囲を制限する操舵制御装置。
  2. 請求項1に記載の操舵制御装置において、
    前記制限処理部は、前記最終的な制限値が使用されるたびに当該使用された最終的な制限値を保持する保持部と、
    前記特定条件の成否に応じて、使用する最終的な制限値を、今回演算された最終的な制限値と、前記保持部に保持されている前回演算された最終的な制限値との間で切り替える切替部と、を有している操舵制御装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の操舵制御装置において、
    前記保護制御部は、前記特定条件の成否の判定結果に応じてフラグの値をセットし、前記制限処理部は、前記フラグの値に基づき前記特定条件の成否を認識する操舵制御装置。
  4. 請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の操舵制御装置において、
    前記特定条件は、前記操舵機構がその物理的な操舵限界に達した旨判定されることである操舵制御装置。
  5. 請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の操舵制御装置において、
    前記特定条件は、前記モータが過熱状態である旨判定されることである操舵制御装置。
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