JP2016107903A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】操舵機構に対してより適切なアシスト力を付与することができる電動パワーステアリング装置を提供する。【解決手段】EPSの制御装置は、アシスト制御量の演算に使用する各状態量に応じてアシスト制御量の変化範囲を制限する制限値を前記状態量ごとに個別に設定し、これら制限値(IUL1*〜IUL5*,ILL1*〜ILL5*)を合算することによりアシスト制御量に対する最終的な制限値(IUL*,ILL*)を生成する。また、EPSの制御装置は、各状態量の一である操舵トルクτが設定値に達するとき、操舵トルクτと逆符号を有するアシスト制御量に対する最終的な制限値(IUL*,ILL*)を制限するための制限処理を実行する制限処理部(98a,108a)を有する。【選択図】図11

Description

本発明は、電動パワーステアリング装置に関する。
たとえば特許文献1に記載されるように、電動パワーステアリング装置(以下、「EPS」という。)は、車両の操舵機構にモータのトルクを付与することにより運転者のステアリング操作を補助する。EPSは少なくとも操舵トルクに応じた適切なアシスト力を発生させるためにモータ電流のフィードバック制御を行う。すなわち、EPSは少なくとも操舵トルクに基づき演算されるアシスト電流指令値とモータ電流検出値との差が小さくなるようにPWMデューティの調節を通じてモータ印加電圧を調節する。
EPSにはより高い安全性が要求されるところ、引用文献1のEPSではつぎのような構成を採用している。すなわち、EPSは操舵トルクとアシスト電流指令値の方向が一致するときには定められた上限値または下限値でアシスト電流指令値を制限するのに対し、操舵トルクとアシスト電流指令値の方向が反対になるときにはアシスト制御演算に異常が生じたと判定してアシスト電流指令値を「0」に制限する。
特開2010−155598号公報([0037]、図3、図6)
ところが、特許文献1のEPSではつぎのような懸念がある。すなわち、特許文献1のEPSは操舵トルクが小さい範囲(0を中心とする正負の一定範囲)であるときにはアシスト電流指令値を「0」に制限することができない。一般に、アシスト電流指令値は操舵トルクに基づく基礎成分にステアリングの挙動を調整するための補償量を重畳して生成されるが、この補償量は操舵トルクの方向と一致しない場合がある。操舵トルクが大きい場合、補償量が操舵トルクの方向に一致しなくても、補償量は基礎成分によって相殺されるためアシスト電流指令値自体は操舵トルクの方向と一致する。したがって、アシスト電流指令値と操舵トルクの方向の不一致はアシスト制御演算の異常とみなすことができる。しかし、操舵トルクが小さい範囲では基礎成分が小さくなり、アシスト電流指令値に占める補償量の割合が大きくなるため、アシスト制御演算が正常であってもアシスト電流指令値と操舵トルクの方向が一致しない場合がある。このような場合にアシスト電流指令値を「0」に制限してしまうとステアリングの挙動を調整できなくなるおそれがある。そこで特許文献1のEPSは、操舵トルクが小さい範囲であるときにはアシスト電流指令値を「0」に制限せず、補償量が制限されない余裕を持たせた範囲内でアシスト電流指令値を制限している。このため、何らかの原因で異常なアシスト電流指令値が誤って演算されたとしても、操舵トルクが小さい領域においてはアシスト電流指令値の制限が甘いため、意図しないアシスト力が操舵機構に付与され、場合によってはセルフアシストが発生するおそれがある。
本発明の目的は、操舵機構に対してより適切なアシスト力を付与することができる電動パワーステアリング装置を提供することにある。
上記目的を達成し得る電動パワーステアリング装置は、ステアリングの操舵状態を示す複数種の状態量に基づきアシスト制御量を演算し当該アシスト制御量に基づき車両の操舵機構に付与するアシスト力の発生源であるモータを制御する制御装置を備えている。前記制御装置は、前記アシスト制御量の演算に使用する各状態量に応じて前記アシスト制御量の変化範囲を制限する制限値を前記状態量ごとに個別に設定し、これら制限値を合算することにより前記アシスト制御量に対する最終的な制限値を生成する。
この構成によれば、アシスト制御量の制限値はアシスト制御量の演算に使用される各状態量に対して個別に設定される。何らかの原因によって異常値を示すアシスト制御量が演算された場合であれ、各制限値が使用されてアシスト制御量の変化範囲が制限されることにより操舵機構に意図しないアシスト力が付与されることが抑制される。また、アシスト制御量の制限値がアシスト制御量の演算に使用される各状態量に対して個別に設定されるため、他の状態量に基づく制御に対する影響を考慮する必要がなく、アシスト制御量に対してより緻密で厳密な制限処理を施すことが可能となる。
また、上記の構成を前提として、前記制御装置は、前記複数種の状態量の一である操舵トルクと逆符号を有するアシスト制御量に対する前記最終的な制限値を制限するための制限処理を実行する制限処理部を有する。
この構成によれば、操舵トルクと逆符号を有するアシスト制御量に対する最終的な制限値が制限される。このため、何らかの原因により操舵トルクと逆符号を有する異常なアシスト制御量が演算されたとき、運転者の操舵を阻害する方向へ向けた、いわゆる逆アシストが抑制される。
上記の電動パワーステアリング装置において、前記状態量ごとに個別に設定される制限値は、操舵トルクと同符号を有するアシスト制御量を制限するための第1の制限値群と、操舵トルクと逆符号を有するアシスト制御量を制限するための第2の制限値群とを含むことがある。このとき、前記制御装置は、前記第1の制限値群を構成する制限値を合算することにより第1の合算値を演算する第1の加算器と、前記第2の制限値群を構成する制限値を合算することにより第2の合算値を演算する第2の加算器と、前記第1の合算値と前記第2の合算値とを合算することにより前記アシスト制御量に対する最終的な制限値として第3の合算値を演算する第3の加算器とを有することが好ましい。前記制限処理部は、前記第3の合算値を制限することにより、操舵トルクと逆符号を有するアシスト制御量に対する前記最終的な制限値を制限する構成を採用することが可能となる。
上記の電動パワーステアリング装置において、前記制限処理部は、操舵トルクの絶対値が設定値に達することを契機として、前記第3の合算値に対する制限処理を実行するようにしてもよい。
操舵トルクの絶対値が大きくなるほど、操舵トルクと反対方向の異常なアシスト制御量が演算されたときの影響が大きい。このため、操舵トルクの絶対値がある程度の大きさに達したとき、第3の合算値に対する制限処理を通じて、操舵トルクと反対方向のアシスト制御量に対する最終的な制限値を制限することが好ましい。
上記の電動パワーステアリング装置において、前記制御装置は、操舵トルクと前記第3の合算値に対する制限値との関係を規定するとともに、操舵トルクの絶対値が設定値に達した以降、前記第3の合算値に対する制限値が0へ向けて漸減する特性を有するガードマップを記憶していることを前提としてもよい。前記制限処理部は、前記第3の合算値に対する制限処理として、前記ガードマップに基づき前記第3の合算値に対する制限値を0に向けて減少させる構成を採用することが可能となる。
上記の電動パワーステアリング装置において、前記制御装置は、操舵トルクとゲインとの関係を規定するとともに、操舵トルクの絶対値が設定値に達した以降、前記ゲインが0へ向けて漸減する特性を有するトルクゲインマップを記憶していることを前提としてもよい。前記制限処理部は、前記第3の合算値に対する制限処理として、前記トルクゲインマップに基づくゲインを前記第3の合算値に乗算する構成を採用することが可能となる。
上記の電動パワーステアリング装置において、前記状態量ごとに個別に設定される制限値は、操舵トルクと同符号を有するアシスト制御量を制限するための第1の制限値群と、操舵トルクと逆符号を有するアシスト制御量を制限するための第2の制限値群とを含むことがある。このとき、前記制御装置は、前記第1の制限値群を構成する制限値を合算することにより第1の合算値を演算する第1の加算器と、前記第2の制限値群を構成する制限値を合算することにより第2の合算値を演算する第2の加算器と、前記第1の合算値と前記第2の合算値とを合算することにより前記アシスト制御量に対する最終的な制限値として第3の合算値を演算する第3の加算器とを有することが好ましい。前記制限処理部は、前記第2の合算値を制限することにより、操舵トルクと逆符号を有するアシスト制御量に対する前記最終的な制限値を制限する構成を採用することが可能となる。
上記の電動パワーステアリング装置において、前記制限処理部は、前記第1の合算値に応じて、前記第2の合算値を制限するようにしてもよい。
この構成によれば、操舵トルクと同符号を有するアシスト制御量を制限するための第1の制限値群を合算した第1の合算値に応じて、操舵トルクと逆符号を有するアシスト制御量を制限するための第2の制限値群を合算した第2の合算値が制限される。これにより、操舵トルクと逆符号を有するアシスト制御量の許容範囲がむやみに拡がることが抑制される。
上記の電動パワーステアリング装置において、前記制限処理部は、操舵トルクの絶対値が設定値に達することを契機として、前記第2の合算値に対する制限処理を実行するようにしてもよい。
操舵トルクの絶対値が大きくなるほど、操舵トルクと反対方向の異常なアシスト制御量が演算されたときの操舵挙動に対する影響が大きい。このため、操舵トルクの絶対値がある程度の大きさに達したとき、第2の合算値に対する制限処理を通じて、操舵トルクと反対方向のアシスト制御量を制限するための最終的な制限値を制限することが好ましい。このようにすれば、操舵トルクと反対方向の異常なアシスト制御量が演算されたときの操舵挙動に対する影響を抑制することができる。
上記の電動パワーステアリング装置において、前記制御装置は、操舵トルクと前記第2の合算値に対する制限値との関係を規定するとともに、操舵トルクの絶対値が設定値に達した以降、前記第2の合算値に対する制限値が0へ向けて漸減する特性を有するガードマップを記憶していることを前提としてもよい。前記制限処理部は、前記第2の合算値に対する制限処理として、前記ガードマップに基づき前記第2の合算値に対する制限値を0に向けて減少させる構成を採用することが可能となる。
上記の電動パワーステアリング装置において、前記制御装置は、操舵トルクとゲインとの関係を規定するとともに、操舵トルクの絶対値が設定値に達した以降、前記ゲインが0へ向けて漸減する特性を有するトルクゲインマップを記憶していることを前提としてもよい。前記制限処理部は、前記第2の合算値に対する制限処理として、前記トルクゲインマップに基づくゲインを前記第2の合算値に乗算する構成を採用することが可能となる。
本発明の電動パワーステアリング装置によれば、操舵機構に対してより適切なアシスト力を付与することができる。
第1の実施の形態における電動パワーステアリング装置の概略構成図。 第1の実施の形態における電動パワーステアリング装置の制御ブロック図。 第1の実施の形態におけるアシスト制御部の制御ブロック図。 第1の実施の形態における上下限リミット演算部の制御ブロック図。 第1の実施の形態における操舵トルクと制限値との関係を示すマップ。 第1の実施の形態における操舵トルクの微分値と制限値との関係を示すマップ。 第1の実施の形態における操舵角と制限値との関係を示すマップ。 第1の実施の形態における操舵速度と制限値との関係を示すマップ。 第1の実施の形態における操舵角加速度と制限値との関係を示すマップ。 第1の実施の形態におけるアシスト制御量(電流指令値)の変化を示すグラフ。 第1の実施の形態における上下限リミット演算部の制御ブロック図。 第1の実施の形態における操舵トルクと最終的な制限値に対するガード値との関係を示すガードマップ。 第2の実施の形態における上下限リミット演算部の制御ブロック図。 (a),(b)は、第2の実施の形態における操舵角、操舵速度および操舵角加速度に応じた各制限値の合算値と、当該合算値に対するガード値との関係を示すガードマップ。 第3の実施の形態における上下限リミット演算部の制御ブロック図。 第3の実施の形態における操舵角、操舵速度および操舵角加速度に応じた各制限値の合算値と、操舵トルクとの関係を示すガードマップ。 第4の実施の形態における上下限リミット演算部の制御ブロック図。 第4の実施の形態におけるトルクゲインマップ。
以下、電動パワーステアリング装置の第1の実施の形態を説明する。
<EPSの概要>
図1に示すように、電動パワーステアリング装置10は、運転者のステアリング操作に基づいて転舵輪を転舵させる操舵機構20、運転者のステアリング操作を補助する操舵補助機構30、および操舵補助機構30の作動を制御するECU(電子制御装置)40を備えている。
操舵機構20は、運転者により操作されるステアリングホイール21、およびステアリングホイール21と一体回転するステアリングシャフト22を備えている。ステアリングシャフト22は、ステアリングホイール21の中心に連結されたコラムシャフト22a、コラムシャフト22aの下端部に連結されたインターミディエイトシャフト22b、およびインターミディエイトシャフト22bの下端部に連結されたピニオンシャフト22cからなる。ピニオンシャフト22cの下端部は、ピニオンシャフト22cに交わる方向へ延びるラック軸23(正確にはラック歯が形成された部分23a)に噛合されている。したがって、ステアリングシャフト22の回転運動は、ピニオンシャフト22cおよびラック軸23からなるラックアンドピニオン機構24によりラック軸23の往復直線運動に変換される。当該往復直線運動が、ラック軸23の両端にそれぞれ連結されたタイロッド25を介して左右の転舵輪26,26にそれぞれ伝達されることにより、これら転舵輪26,26の転舵角θtaが変更される。
操舵補助機構30は、操舵補助力の発生源であるモータ31を備えている。モータ31としては、ブラシレスモータなどが採用される。モータ31は、減速機構32を介してコラムシャフト22aに連結されている。減速機構32はモータ31の回転を減速し、当該減速した回転力をコラムシャフト22aに伝達する。すなわち、ステアリングシャフト22にモータのトルクが操舵補助力(アシスト力)として付与されることにより、運転者のステアリング操作が補助される。
ECU40は、車両に設けられる各種のセンサの検出結果を運転者の要求あるいは走行状態を示す情報として取得し、これら取得される各種の情報に応じてモータ31を制御する。
各種のセンサとしては、たとえば車速センサ51、ステアリングセンサ52、トルクセンサ53および回転角センサ54がある。車速センサ51は車速(車両の走行速度)Vを検出する。ステアリングセンサ52は磁気式の回転角センサであってコラムシャフト22aに設けられて操舵角θsを検出する。トルクセンサ53はコラムシャフト22aに設けられて操舵トルクτを検出する。回転角センサ54はモータ31に設けられてモータ31の回転角θmを検出する。
ECU40は車速V、操舵角θs、操舵トルクτおよび回転角θmに基づき目標アシスト力を演算し、当該目標アシスト力を操舵補助機構30に発生させるための駆動電力をモータ31に供給する。
<ECUの構成>
つぎに、ECUのハードウェア構成を説明する。
図2に示すように、ECU40は駆動回路(インバータ回路)41およびマイクロコンピュータ42を備えている。
駆動回路41は、マイクロコンピュータ42により生成されるモータ制御信号Sc(PWM駆動信号)に基づいて、バッテリなどの直流電源から供給される直流電力を三相交流電力に変換する。当該変換された三相交流電力は各相の給電経路43を介してモータ31に供給される。各相の給電経路43には電流センサ44が設けられている。これら電流センサ44は各相の給電経路43に生ずる実際の電流値Imを検出する。なお、図2では、説明の便宜上、各相の給電経路43および各相の電流センサ44をそれぞれ1つにまとめて図示する。
マイクロコンピュータ42は、車速センサ51、ステアリングセンサ52、トルクセンサ53、回転角センサ54および電流センサ44の検出結果をそれぞれ定められたサンプリング周期で取り込む。マイクロコンピュータ42はこれら取り込まれる検出結果、すなわち車速V、操舵角θs、操舵トルクτ、回転角θmおよび実際の電流値Imに基づきモータ制御信号Scを生成する。
<マイクロコンピュータ>
つぎに、マイクロコンピュータの機能的な構成を説明する。
マイクロコンピュータ42は、図示しない記憶装置に格納された制御プログラムを実行することによって実現される各種の演算処理部を有している。
図2に示すように、マイクロコンピュータ42は、これら演算処理部として電流指令値演算部61およびモータ制御信号生成部62を備えている。電流指令値演算部61は、操舵トルクτ、車速Vおよび操舵角θsに基づき電流指令値Iを演算する。電流指令値Iはモータ31に供給するべき電流を示す指令値である。正確には、電流指令値Iは、d/q座標系におけるq軸電流指令値およびd軸電流指令値を含む。本実施形態においてd軸電流指令値は零に設定されている。d/q座標系は、モータ31の回転角θmに従う回転座標である。モータ制御信号生成部62は、回転角θmを使用してモータ31の三相の電流値Imを二相のベクトル成分、すなわちd/q座標系におけるd軸電流値およびq軸電流値に変換する。そして、モータ制御信号生成部62は、d軸電流値とd軸電流指令値との偏差、およびq軸電流値とq軸電流指令値との偏差をそれぞれ求め、これら偏差を解消するようにモータ制御信号Scを生成する。
<電流指令値演算部>
つぎに、電流指令値演算部について説明する。
図2に示すように、電流指令値演算部61は、アシスト制御部71、上下限リミット演算部72および上下限ガード処理部73を有している。また、電流指令値演算部61は3つの微分器74,75,76を有している。微分器74は操舵角θsを微分することにより操舵速度ωsを演算する。微分器75は前段の微分器74により算出される操舵速度ωsをさらに微分することにより操舵角加速度αsを演算する。微分器76は操舵トルクτを時間で微分することにより操舵トルク微分値dτを演算する。
アシスト制御部71は、操舵トルクτ、車速V、操舵角θs、操舵速度ωs、操舵角加速度αsおよび操舵トルク微分値dτに基づきアシスト制御量Ias を演算する。アシスト制御量Ias は、これら各種の状態量に応じた適切な大きさの目標アシスト力を発生させるためにモータ31へ供給する電流量の値(電流値)である。
上下限リミット演算部72は、アシスト制御部71において使用される各種の信号、ここでは操舵トルクτ、操舵角θs、操舵トルク微分値dτ、操舵速度ωsおよび操舵角加速度αsに基づきアシスト制御量Ias に対する制限値として上限値IUL および下限値ILL を演算する。上限値IUL および下限値ILL はアシスト制御量Ias に対する最終的な制限値となる。
上下限ガード処理部73は、上下限リミット演算部72により演算される上限値IUL および下限値ILL に基づきアシスト制御量Ias の制限処理を実行する。すなわち、上下限ガード処理部73はアシスト制御量Ias の値ならびに上限値IUL および下限値ILL を比較する。上下限ガード処理部73は、アシスト制御量Ias が上限値IUL を超える場合にはアシスト制御量Ias を上限値IUL に制限し、下限値ILL を下回る場合にはアシスト制御量Ias を下限値ILL に制限する。当該制限処理が施されたアシスト制御量Ias が最終的な電流指令値Iとなる。なお、アシスト制御量Ias が上限値IUL と下限値ILL との範囲内であるときには、アシスト制御部71により演算されるアシスト制御量Ias がそのまま最終的な電流指令値Iとなる。
<アシスト制御部>
つぎに、アシスト制御部71について詳細に説明する。
図3に示すように、アシスト制御部71は基本アシスト制御部81、補償制御部82および加算器83を備えている。
基本アシスト制御部81は操舵トルクτおよび車速Vに基づき基本アシスト制御量I を演算する。基本アシスト制御量I は、操舵トルクτおよび車速Vに応じた適切な大きさの目標アシスト力を発生させるための基礎成分(電流値)である。基本アシスト制御部81はたとえばマイクロコンピュータ42の図示しない記憶装置に格納されるアシスト特性マップを使用して基本アシスト制御量I を演算する。アシスト特性マップは操舵トルクτおよび車速Vに基づき基本アシスト制御量I を演算するための車速感応型の三次元マップであって、操舵トルクτ(絶対値)が大きいほど、また車速Vが小さいほど大きな値(絶対値)の基本アシスト制御量I が算出されるように設定されている。
補償制御部82は、より優れた操舵感を実現するために基本アシスト制御量I に対する各種の補償制御を実行する。
補償制御部82は、たとえば慣性補償制御部84、ステアリング戻し制御部85、トルク微分制御部86およびダンピング制御部87を備えている。
慣性補償制御部84は、操舵角加速度αsおよび車速Vに基づきモータ31の慣性を補償するための補償量I (電流値)を演算する。補償量I を使用して基本アシスト制御量I を補正することにより、ステアリングホイール21の切り始め時における引っ掛かり感(追従遅れ)および切り終わり時の流れ感(オーバーシュート)が低減される。
ステアリング戻し制御部85は、操舵トルクτ、車速V、操舵角θsおよび操舵速度ωsに基づきステアリングホイール21の戻り特性を補償するための補償量I (電流値)を演算する。補償量I を使用して基本アシスト制御量I を補正することにより、路面反力によるセルフアライニングトルクの過不足が補償される。補償量I に応じてステアリングホイール21を中立位置に戻す方向へ向けたアシスト力が発生されるからである。
トルク微分制御部86は、逆入力振動成分を操舵トルク微分値dτとして検出し、当該検出される操舵トルク微分値dτに基づき逆入力振動などの外乱を補償するための補償量I (電流値)を演算する。補償量I を使用して基本アシスト制御量I を補正することにより、ブレーキ操作に伴い発生するブレーキ振動などの外乱が抑制される。補償量I に応じて逆入力振動を打ち消す方向へ向けたアシスト力が発生されるからである。
ダンピング制御部87は、操舵速度ωsおよび車速Vに基づき操舵系が有する粘性を補償するための補償量I (電流値)を演算する。補償量I を使用して基本アシスト制御量I を補正することにより、たとえばステアリングホイール21に伝わる小刻みな振動などが低減される。
加算器83は基本アシスト制御量I に対する補正処理として補償量I 、補償量I 、補償量I および補償量I を加算することによりアシスト制御量Ias を生成する。
<上下限リミット演算部>
つぎに、上下限リミット演算部72について詳細に説明する。
図4に示すように、上下限リミット演算部72は上限値演算部90および下限値演算部100を備えている。
<上限値演算部>
上限値演算部90は、操舵トルク感応リミッタ91、操舵トルク微分値感応リミッタ92、操舵角感応リミッタ93、操舵速度感応リミッタ94、操舵角加速度感応リミッタ95および加算器96を有している。
操舵トルク感応リミッタ91は、操舵トルクτに応じてアシスト制御量Ias に対する上限値IUL1 を演算する。操舵トルク微分値感応リミッタ92は、操舵トルク微分値dτに応じてアシスト制御量Ias に対する上限値IUL2 を演算する。操舵角感応リミッタ93は、操舵角θsに応じてアシスト制御量Ias に対する上限値IUL3 を演算する。操舵速度感応リミッタ94は、操舵速度ωsに応じてアシスト制御量Ias に対する上限値IUL4 を演算する。操舵角加速度感応リミッタ95は、操舵角加速度αsに応じてアシスト制御量Ias に対する上限値IUL5 を演算する。
加算器96は5つの上限値IUL1 〜IUL5 を足し算することによりアシスト制御量Ias に対する上限値IUL を生成する。
<下限値演算部>
下限値演算部100は、操舵トルク感応リミッタ101、操舵トルク微分値感応リミッタ102、操舵角感応リミッタ103、操舵速度感応リミッタ104、操舵角加速度感応リミッタ105および加算器106を有している。
操舵トルク感応リミッタ101は、操舵トルクτに応じてアシスト制御量Ias に対する下限値ILL1 を演算する。操舵トルク微分値感応リミッタ102は、操舵トルク微分値dτに応じてアシスト制御量Ias に対する下限値ILL2 を演算する。操舵角感応リミッタ103は、操舵角θsに応じてアシスト制御量Ias に対する下限値ILL3 を演算する。操舵速度感応リミッタ104は、操舵速度ωsに応じてアシスト制御量Ias に対する下限値ILL4 を演算する。操舵角加速度感応リミッタ105は、操舵角加速度αsに応じてアシスト制御量Ias に対する下限値ILL5 を演算する。
加算器106は5つの下限値ILL1 〜ILL5 を足し算することによりアシスト制御量Ias に対する下限値ILL を生成する。
<上下限リミットマップ>
上限値演算部90および下限値演算部100は、それぞれ第1〜第5のリミットマップM1〜M5を使用して各上限値IUL1 〜IUL5 および各下限値ILL1 〜ILL5 を演算する。第1〜第5のリミットマップM1〜M5はマイクロコンピュータ42の図示しない記憶装置に格納されている。第1〜第5のリミットマップM1〜M5は、それぞれ運転者のステアリング操作に応じて演算されるアシスト制御量Ias は許容し、それ以外の何らかの原因による異常なアシスト制御量Ias は許容しないという観点に基づき設定される。
図5に示すように、第1のリミットマップM1は、横軸を操舵トルクτ、縦軸をアシスト制御量Ias とするマップであって、操舵トルクτとアシスト制御量Ias に対する上限値IUL1 との関係、および操舵トルクτとアシスト制御量Ias に対する下限値ILL1 との関係をそれぞれ規定する。操舵トルク感応リミッタ91,101はそれぞれ第1のリミットマップM1を使用して操舵トルクτに応じた上限値IUL1 および下限値ILL1 を演算する。
第1のリミットマップM1は、操舵トルクτと同じ方向(正負の符号)のアシスト制御量Ias は許容し、操舵トルクτと異なる方向のアシスト制御量Ias は許容しない観点に基づき設定されることにより、つぎのような特性を有する。すなわち、操舵トルクτが正の値である場合、アシスト制御量Ias の上限値IUL1 は操舵トルクτの増大に伴い正の方向へ増加し、所定値を境として正の一定値に維持される。また、操舵トルクτが正の値である場合、アシスト制御量Ias の下限値ILL1 は「0」に維持される。一方、操舵トルクτが負の値である場合、アシスト制御量Ias の上限値IUL1 は「0」に維持される。また、操舵トルクτが負の値である場合、アシスト制御量Ias の下限値ILL1 は操舵トルクτの絶対値が増大するほど負の方向へ増加し、所定値を境として負の一定値に維持される。
図6に示すように、第2のリミットマップM2は、横軸を操舵トルク微分値dτ、縦軸をアシスト制御量Ias とするマップであって、操舵トルク微分値dτとアシスト制御量Ias に対する上限値IUL2 との関係、および操舵トルク微分値dτとアシスト制御量Ias に対する下限値ILL2 との関係をそれぞれ規定する。操舵トルク微分値感応リミッタ92,102はそれぞれ第2のリミットマップM2を使用して操舵トルク微分値dτに応じた上限値IUL2 および下限値ILL2 を演算する。
第2のリミットマップM2は、操舵トルク微分値dτと同じ方向(正負の符号)のアシスト制御量Ias は許容し、操舵トルク微分値dτと異なる方向のアシスト制御量Ias は許容しない観点に基づき設定されることにより、つぎのような特性を有する。すなわち、操舵トルク微分値dτが正の値である場合、アシスト制御量Ias の上限値IUL2 は操舵トルク微分値dτの増大に伴い正の方向へ増加し、所定値を境として正の一定値に維持される。また、操舵トルク微分値dτが正の値である場合、アシスト制御量Ias の下限値ILL2 は「0」に維持される。一方、操舵トルク微分値dτが負の値である場合、アシスト制御量Ias の上限値IUL2 は「0」に維持される。また、操舵トルク微分値dτが負の値である場合、アシスト制御量Ias の下限値ILL2 は操舵トルク微分値dτの絶対値が増大するほど負の方向へ増加し、所定値を境として負の一定値に維持される。
図7に示すように、第3のリミットマップM3は、横軸を操舵角θs、縦軸をアシスト制御量Ias とするマップであって、操舵角θsとアシスト制御量Ias に対する上限値IUL3 との関係、および操舵角θsとアシスト制御量Ias に対する下限値ILL3 との関係をそれぞれ規定する。操舵角感応リミッタ93,103はそれぞれ第3のリミットマップM3を使用して操舵角θsに応じた上限値IUL3 および下限値ILL3 を演算する。
第3のリミットマップM3は、操舵角θsと反対方向(正負の符号)のアシスト制御量Ias は許容し、操舵角θsと同じ方向のアシスト制御量Ias は許容しない観点に基づき設定されることにより、つぎのような特性を有する。すなわち、操舵角θsが正の値である場合、アシスト制御量Ias の上限値IUL3 は「0」に維持される。また、操舵角θsが正の値である場合、アシスト制御量Ias の下限値ILL3 は操舵角θsの増大に伴い負の方向へ増加する。一方、操舵角θsが負の値である場合、アシスト制御量Ias の上限値IUL3 は操舵角θsの絶対値が増大するほど正の方向へ増加する。また、操舵角θsが負の値である場合、アシスト制御量Ias の下限値ILL3 は「0」に維持される。
図8に示すように、第4のリミットマップM4は、横軸を操舵速度ωs、縦軸をアシスト制御量Ias とするマップであって、操舵速度ωsとアシスト制御量Ias に対する上限値IUL4 との関係、および操舵速度ωsとアシスト制御量Ias に対する下限値ILL4 との関係をそれぞれ規定する。操舵速度感応リミッタ94,104はそれぞれ第4のリミットマップM4を使用して操舵速度ωsに応じた上限値IUL4 および下限値ILL4 を演算する。
第4のリミットマップM4は、操舵速度ωsと反対方向(正負の符号)のアシスト制御量Ias は許容し、操舵速度ωsと同じ方向のアシスト制御量Ias は許容しない観点に基づき設定されることにより、つぎのような特性を有する。すなわち、操舵速度ωsが正の値である場合、アシスト制御量Ias の上限値IUL4 は「0」に維持される。また、操舵速度ωsが正の値である場合、アシスト制御量Ias の下限値ILL4 は操舵速度ωsの増大に伴い負の方向へ増加し、所定値を境として負の一定値に維持される。一方、操舵速度ωsが負の値である場合、アシスト制御量Ias の上限値IUL4 は操舵速度ωsの絶対値が増大するほど正の方向へ増加し、所定値を境として正の一定値に維持される。また、操舵速度ωsが負の値である場合、アシスト制御量Ias の下限値ILL4 は「0」に維持される。
図9に示すように、第5のリミットマップM5は、横軸を操舵角加速度αs、縦軸をアシスト制御量Ias とするマップであって、操舵角加速度αsとアシスト制御量Ias に対する上限値IUL5 との関係、および操舵角加速度αsとアシスト制御量Ias に対する下限値ILL5 との関係をそれぞれ規定する。操舵角加速度感応リミッタ95,105はそれぞれ第5のリミットマップM5を使用して操舵角加速度αsに応じた上限値IUL5 および下限値ILL5 を演算する。
第5のリミットマップM5は、操舵角加速度αsと反対方向(正負の符号)のアシスト制御量Ias は許容し、操舵角加速度αsと同じ方向のアシスト制御量Ias は許容しない観点に基づき設定されることにより、つぎのような特性を有する。すなわち、操舵角加速度αsが正の値である場合、アシスト制御量Ias の上限値IUL5 は「0」に維持される。また、操舵角加速度αsが正の値である場合、アシスト制御量Ias の下限値ILL5 は操舵角加速度αsの増大に伴い負の方向へ増加し、所定値を境として負の一定値に維持される。一方、操舵角加速度αsが負の値である場合、アシスト制御量Ias の上限値IUL5 は操舵角加速度αsの絶対値が増大するほど正の方向へ増加し、所定値を境として正の一定値に維持される。また、操舵角加速度αsが負の値である場合、アシスト制御量Ias の下限値ILL5 は「0」に維持される。
<EPSの基本的な作用>
したがって、電動パワーステアリング装置10では、アシスト制御量Ias に対する制限値(上限値および下限値)がアシスト制御量Ias を演算する際に使用する各信号、ここでは操舵状態を示す状態量である操舵トルクτ、操舵トルク微分値dτ、操舵角θs、操舵速度ωsおよび操舵角加速度αsに対して個別に設定される。マイクロコンピュータ42は、アシスト制御量Ias に基づき最終的な電流指令値Iを演算するに際して、各信号の値に応じてアシスト制御量Ias の変化範囲を制限するための制限値を信号毎に設定し、これら制限値を合算した値をアシスト制御量Ias に対する最終的な制限値として設定する。ちなみに、信号毎の制限値、ひいては最終的な制限値は運転者のステアリング操作に応じて演算される通常のアシスト制御量Ias は許容し、何らかの原因に起因する異常なアシスト制御量Ias は制限する観点で設定される。マイクロコンピュータ42は、たとえば運転者の操舵入力に対するトルク微分制御およびステアリング戻し制御などの各種補償制御による補償量は許容する一方、各補償量の値を超える異常出力あるいは誤出力などは制限する。
マイクロコンピュータ42は、アシスト制御量Ias が最終的な上限値IUL および下限値ILL により定められる制限範囲を超えるとき、上限値IUL を超えるアシスト制御量Ias あるいは下限値ILL を下回るアシスト制御量Ias が最終的な電流指令値Iとしてモータ制御信号生成部62に供給されないように制限する。最終的な上限値IUL および下限値ILL には信号毎に設定された個別の制限値(上限値および下限値)が反映されている。すなわち、異常な値を示すアシスト制御量Ias が演算される場合であれ、当該異常なアシスト制御量Ias の値は最終的な制限値によって各信号値に応じた適切な値に制限される。そして、当該適切なアシスト制御量Ias が最終的な電流指令値Iとしてモータ制御信号生成部62に供給されることにより適切なアシスト力が操舵系に付与される。異常なアシスト制御量Ias が最終的な電流指令値Iとしてモータ制御信号生成部62に供給されることが抑制されるため、操舵系に対して意図しないアシスト力が付与されることが抑制される。たとえばいわゆるセルフステアリングなどの発生も抑制される。
また、アシスト制御量Ias を演算する際に使用する各信号に基づきアシスト制御量Ias に対する適切な制限値が個別に設定される。このため、たとえば基本アシスト制御量I を演算する際に使用される信号である操舵トルクτのみに基づいてアシスト制御量Ias の制限値を設定する場合に比べて、アシスト制御量Ias に対してより緻密な制限処理が行われる。アシスト制御量Ias の制限値の設定において、各種の補償量I ,I ,I ,I に対する影響を考慮する必要もない。
ここで、アシスト制御量Ias の異常が続く限り継続してアシスト制御量Ias を制限することも可能ではあるものの、より安全性を高める観点から、つぎのようにしてもよい。
図10のグラフに示すように、アシスト制御量Ias の値がたとえば下限値ILL を下回るとき(時刻TL0)、アシスト制御量Ias の値は下限値ILL で制限される。マイクロコンピュータ42は当該制限される状態が一定期間ΔTだけ継続したとき(時刻TL1)、下限値ILL を「0」に向けて漸減させる(以下、「漸減処理」という。)。そして下限値ILL が「0」に至るタイミング(時刻TL2)でアシスト制御量Ias の値は「0」になる。その結果、操舵系に対するアシスト力の付与が停止される。当該漸減処理は、異常な状態が一定期間ΔTだけ継続したときにはアシスト力の付与を停止することが好ましいという観点に基づき行われる。アシスト制御量Ias の値は徐々に小さくなるのでアシストを停止させる際、操舵感に急激な変化が発生することはない。
なお、アシスト制御量Ias の値が上限値IUL を超える場合についても同様である。すなわち、マイクロコンピュータ42はアシスト制御量Ias の制限状態が一定期間ΔTだけ継続したとき、上限値IUL を「0」に向けて漸減させる。
当該漸減処理は上限値IUL および下限値ILL の演算処理とは無関係に強制的に行われるものである。マイクロコンピュータ42は、当該漸減処理の実行中において、アシスト制御量Ias の値が上限値IUL と下限値ILL との間の正常範囲内の値に復帰したとき、漸減処理の実行を停止するようにしてもよい。これにより、強制的に「0」に向けて漸減させた上限値IUL または下限値ILL は本来の値に復帰する。
ここで、前述のように構成された電動パワーステアリング装置10においては、つぎのようなことが懸念される。
すなわち、アシスト制御量Ias の制限値は、アシスト制御量Ias の演算に使用される各状態量(τ,dτ,θs,ωs,αs)に対して個別に設定されるとともに、これら制限値を合算した値がアシスト制御量Ias に対する最終的な制限値(IUL ,ILL )として設定される。そして、各信号に応じて個別に設定される各制限値(各上限値IUL1 〜IUL5 ,各下限値ILL1 〜ILL5 )は、自身以外の他の制限値とは無関係に設定される。
個別に設定される各制限値(IUL1 〜IUL5 ,ILL1 〜ILL5 )は、操舵トルクτと同方向へ向けたアシストを許容する観点に基づき設定されるものと、操舵トルクτと反対方向へ向けたアシストを許容する観点に基づき設定されるものとを含んでいる。このため、各マップのチューニングあるいは操舵状況などによっては、操舵トルクτと逆符号を有するアシスト制御量Ias を制限するための最終的な制限値(上限値IUL ,下限値ILL )と、アシスト制御量Ias との差が大きく拡がるおそれがある。この場合、何らかの原因により操舵トルクτと逆符号を有する異常なアシスト制御量Ias が演算されるとき、当該異常なアシスト制御量Ias が許容されることにより、いわゆる逆アシストが発生するおそれがある。
詳述すると、たとえば操舵トルクτに応じた制限値は、操舵トルクτと同方向へ向けたアシストを許容する観点に基づき設定されるもの、すなわちステアリングホイール21を操作するときの重さを軽くする方向のアシスト制御量Ias に対する制限値である。操舵トルク微分値dτに応じた制限値についても同様である。これに対して、操舵角θsに応じた制限値は、操舵トルクτと反対方向へ向けたアシストを許容する観点に基づき設定されるもの、すなわちステアリングホイール21を操作するときの重さを重くする方向のアシスト制御量Ias に対する制限値である。操舵速度ωsに応じた制限値、および操舵角加速度αsに応じた制限値についても同様である。
また、操舵トルクτに基づくアシスト制御量Ias (基本アシスト制御量I および補償量I の合計)は、ステアリングホイール21を操作するときの重さを軽くする方向(操舵トルクτと同方向)へ向けたアシスト力を発生させるためのものである。これに対し、操舵角θsに基づくアシスト制御量Ias (各補償量I ,I ,I の合計)は、ステアリングホイール21を操作するときの重さを重くする方向(操舵トルクτと反対方向)へ向けたアシスト力を発生させるためのものである。
このため、操舵トルクτに基づくアシスト制御量Ias の絶対値が、操舵角θsに基づくアシスト制御量Ias の絶対値よりも大きくなる場合、ステアリングホイール21を操作するときの重さは軽くなる。これは、トータルとしては、ステアリングホイール21を操作するときの重さを軽くする方向のアシスト制御量Ias に基づきモータ31が制御されるからである。
逆に、操舵トルクτに基づくアシスト制御量Ias の絶対値が非常に小さく、かつ操舵角θsに基づくアシスト制御量Ias の絶対値が非常に大きい場合、ステアリングホイール21を操作するときの重さは非常に重くなる。これは、トータルとしては、ステアリングホイール21を操作するときの重さを重くする方向のアシスト制御量Ias に基づきモータ31が制御されるからである。
通常の操舵では、ステアリングホイール21の操作を重くする方向のアシストと、ステアリングホイール21の操作を軽くする方向のアシストとがある場合、運手者としては当然、トータルとしてステアリングホイール21の操作が軽くなる方向へ向けたアシスト、すなわち運転者が操舵したい方向へ向けたアシストが行われることが望ましい。
しかし、電動パワーステアリング装置10では、各状態量に基づくアシスト制御量Ias の出力範囲(正常範囲)は、基本的には第1〜第5のリミットマップM1〜M5から理論的に決まる。しかも、各状態量に応じて個別に設定される各制限値(IUL1 〜IUL5 ,ILL1 〜ILL5 )は、自身以外の他の制限値とは無関係に設定される。このため、各マップのチューニングあるいは操舵状況などによっては、個別の各上限値および各下限値がそれぞれ、より大きな値に設定される。そして、各個別の制限値の組み合わせによっては、最終的な上限値IUL および下限値ILL がより大きな値に設定される。
最終的な上限値IUL と最終的な下限値ILL とが大きな値になるほど、これらによって決まるアシスト制御量Ias の制限範囲(正常範囲)が拡がる。当該制限範囲が拡がるほど、許容されるアシスト制御量Ias の値の範囲も拡がるため、本来、制限することが好ましい異常なアシスト制御量Ias が許容されるおそれがある。
アシスト制御量Ias が正常範囲内の値である場合において、何らかの原因により、たとえば操舵トルクτに基づくアシスト制御量Ias が「0」に近似した値、かつ操舵角θsに基づくアシスト制御量Ias が非常に大きな値となったとき、運転者の意図する操舵方向と反対方向へ向けたアシスト力が作用する。この場合、ステアリングホイール21を操作するときの重さが非常に重くなるので、本来、このときのアシスト制御量Ias を異常であるとして検出することが好ましい。しかし、現状の制限値の設定方法では、このときのアシスト制御量Ias は正常範囲の値になる。このため、このときのアシスト制御量Ias を異常なアシスト制御量Ias として検出することが困難である。
そこで、本例では最終的な制限値(上限値IUL ,下限値ILL )の拡がり、特にステアリングホイール21の操作が重くなる方向へ向けたアシスト制御量Ias に対する制限値の拡がりを抑えるために、つぎの構成を採用している。
図11に示すように、上限値演算部90は、各感応リミッタ(91〜95)に加え、ガード値演算部97aおよびガード処理部98aを有している。また、上限値演算部90は、加算器96に代えて、3つの加算器96a,96b,96cを有している。
加算器96aは、操舵トルクτに応じた上限値IUL1 および操舵トルク微分値dτに応じた上限値IUL2 を合算する。これら上限値IUL1 ,IUL2 はいずれも、操舵トルクτと同方向へ向けたアシストを許容する観点に基づき設定されるものであって、ステアリングホイール21を操作するときの重さを軽くする方向のアシスト制御量Ias に対する制限値である。
加算器96bは、操舵角θsに応じた上限値IUL3 、操舵速度ωsに応じた上限値IUL4 および操舵角加速度αsに応じた上限値IUL5 を合算する。これら上限値IUL3 ,IUL4 ,IUL5 はいずれも、操舵トルクτと反対方向へ向けたアシストを許容する観点に基づき設定されるものであって、ステアリングホイール21を操作するときの重さを重くする方向のアシスト制御量Ias に対する制限値である。
加算器96cは、加算器96aにより演算される合算値IU1 と、加算器96bにより演算される合算値IU2 とを加算する。
ガード値演算部97aは、操舵トルクτを取り込み、当該取り込まれる操舵トルクτに基づき、加算器96cにより演算される合算値IU3 に対するガード値IU3G を演算する。
ガード処理部98aは、ガード値演算部97aにより演算されるガード値IU3G に基づき、加算器96cにより演算される合算値IU3 の制限処理を実行する。すなわち、ガード処理部98aは合算値IU3 とガード値IU3G とを比較する。ガード処理部98aは、合算値IU3 がガード値IU3G を操舵トルクτと反対方向に超える場合には合算値IU3 をガード値IU3G に制限する。当該ガード処理が施された合算値IU3 がアシスト制御量Ias に対する最終的な上限値IUL となる。なお、合算値IU3 がガード値IU3G 以下の値であるときには、加算器96cの合算値IU3 がそのままアシスト制御量Ias に対する最終的な上限値IUL となる。
図11に示すように、下限値演算部100は、上限値演算部90と同様の構成を有している。すなわち、下限値演算部100は、ガード値演算部107aおよびガード処理部108aを有している。また、下限値演算部100は、加算器106に代えて、3つの加算器106a,106b,106cを有している。
加算器106aは、操舵トルクτに応じた下限値ILL1 および操舵トルク微分値dτに応じた下限値ILL2 を加算する。これら下限値ILL1 ,ILL2 はいずれも、操舵トルクτと同方向へ向けたアシストを許容する観点に基づき設定されるものであって、ステアリングホイール21を操作するときの重さを軽くする方向のアシスト制御量Ias に対する制限値である。
加算器106bは、操舵角θsに応じた下限値ILL3 、操舵速度ωsに応じた下限値ILL4 および操舵角加速度αsに応じた下限値ILL5 を加算する。これら下限値ILL3 ,ILL4 ,ILL5 はいずれも、操舵トルクτと反対方向へ向けたアシストを許容する観点に基づき設定されるものであって、ステアリングホイール21を操作するときの重さを重くする方向のアシスト制御量Ias に対する制限値である。
加算器106cは、加算器106aにより演算される合算値IL1 と加算器106bにより演算される合算値IL2 とを加算する。
ガード値演算部107aは、操舵トルクτを取り込み、当該取り込まれる操舵トルクτに基づき、加算器106cにより演算される合算値IL3 に対するガード値IL3G を演算する。
ガード処理部108aは、ガード値演算部107aにより演算されるガード値IL3G に基づき、加算器106cにより演算される合算値IL3 の制限処理を実行する。すなわち、ガード処理部108aは合算値IL3 の値とガード値IL3G とを比較する。ガード処理部108aは、合算値IL3 がガード値IL3G を操舵トルクτと反対方向に超える場合には合算値IL3 をガード値IL3G に制限する。当該ガード処理が施された合算値IL3 がアシスト制御量Ias に対する最終的な下限値ILL となる。なお、合算値IL3 がガード値IL3G 以下の値であるときには、加算器106cの合算値IL3 がそのままアシスト制御量Ias に対する最終的な下限値ILL となる。
2つのガード値演算部97a,107aは、それぞれガードマップM6を使用して合算値IU3 ,IL3 に対するガード値IU3G ,IL3G を演算する。ガードマップM6はマイクロコンピュータ42の図示しない記憶装置に格納されている。
操舵を補助するという観点からすれば、ステアリングホイール21を操作するときの重さを軽くする方向のアシスト制御量Ias と、ステアリングホイール21を操作するときの重さを重くする方向のアシスト制御量Ias とをトータルしたとき、操舵トルクτが一定値以下になるように操舵がアシストされることが好ましい。最終的な制限値も、トータルとしてステアリングホイール21の操作が軽くなる方向に設定されることが好ましい。このため、ガードマップM6は、運転者の意思を阻害する方向、すなわち操舵トルクτと反対方向へ向けたアシストを制限する観点に基づき設定される。
図12に示すように、ガードマップM6は、横軸を操舵トルクτ、縦軸をアシスト制御量Ias とするマップであって、操舵トルクτと合算値IU3 に対するガード値IU3G との関係、および操舵トルクτと合算値IL3 に対するガード値IL3G との関係をそれぞれ規定する。
ガードマップM6は、つぎのような特性を有する。すなわち、操舵トルクτが正の値である場合、操舵トルクτが「0」から第1の設定値+τ1に達するまでの間、ガード値IU3G は負の一定値に維持される。操舵トルクτが第1の設定値+τ1に達した以降、ガード値IU3G は正の方向へ急激に増加し、やがて「0」の近傍値である正の一定値に維持される。また、操舵トルクτが正の値である場合、ガード値IL3G は正の一定値に維持される。一方、操舵トルクτが負の値である場合、ガード値IU3G は負の一定値に維持される。また、操舵トルクτが負の値である場合、操舵トルクτが「0」から第2の設定値−τ1に達するまでの間、ガード値IL3G は正の一定値に維持される。操舵トルクτが第2の設定値−τ1に達した以降、ガード値IL3G は負の方向へ急激に減少し、やがて「0」の近傍値である負の一定値に維持される。このガードマップM6によれば、操舵トルクτの絶対値が第1および第2の設定値+τ1,−τ1の絶対値を超えるとき、操舵トルクτと反対方向のアシスト制御量Ias が、操舵トルクτと同方向における「0」近傍の一定値に制限される。
ちなみに、第1および第2の設定値+τ1,−τ1を設定する理由は、つぎの通りである。すなわち、操舵トルクτの値が大きくなるほど、アシスト制御量Ias の制限範囲(正常範囲)が拡がるため、異常なアシスト制御量Ias が演算されたときの操舵挙動に対する影響が大きい。換言すれば、操舵トルクτの値が小さいほど、アシスト制御量Ias の制限範囲(正常範囲)が狭くなるため、異常なアシスト制御量Ias が演算されたときの操舵挙動に対する影響が小さい。このため、第1および第2の設定値+τ1,−τ1を基準として、加算器96c,106cの合算値IU3 ,IL3 を制限するかどうかを切り分ける。
たとえば、操舵トルクτの値が大きくなるほど、操舵トルクτと逆符号を有する異常なアシスト制御量Ias が演算された場合におけるステアリングホイール21を操作するときの重さが重くなる。このため、操舵トルクτの値がある程度の大きさ以上であるときには逆アシストを抑制することが好ましい。これに対して、操舵トルクτの値が小さくなるほど、操舵トルクτと逆符号を有する異常なアシスト制御量Ias が演算された場合におけるステアリングホイール21を操作するときの重さが重くなる度合いは小さくなる。このため、操舵トルクτが小さい値であるときには、逆アシストを許容してもさほど問題はない。
<上下限加算値に対するガード処理の作用>
さて、ガードマップM6を使用して加算器96c,106cにより演算される合算値IU3 ,IL3 を制限することにより、つぎのような作用を奏する。
たとえば、トータルとしてステアリングホイール21の操作が重くなる方向(操舵トルクτと反対方向)のアシスト制御量Ias が非常に大きな値となる場合、ステアリングホイール21の操作が困難となるため、当然、操舵トルクτの絶対値も大きくなる。この点を鑑み、操舵トルクτが正の値である場合、操舵トルクτの値が第1の設定値+τ1を超える程度に大きな値になるとき、加算器96cによる各上限値IUL1 〜IUL5 の合算値IU3 の下限が「0」近傍の正の一定値に制限される。また、操舵トルクτが負の値である場合、操舵トルクτの値が第2の設定値−τ1を超える程度に大きな値になるとき、加算器106cによる各下限値ILL1 〜ILL5 の合算値IL3 の上限が「0」近傍の負の一定値に制限される。
すなわち、操舵トルクτの絶対値が第1および第2の設定値+τ1,−τ1の絶対値を超える程度に大きな値になるとき、操舵トルクτと逆符号を有するアシスト制御量Ias を制限するための最終的な制限値(上限値IUL または下限値ILL )は、操舵トルクτと同方向における「0」近傍の一定値に制限される。このため、トータルとしてステアリングホイール21の操作が重くなる方向(操舵トルクτと反対方向)のアシスト制御量Ias が非常に大きな値となる場合であれ、当該アシスト制御量Ias は操舵トルクτと同方向における「0」近傍の一定値に制限される。すなわち、アシスト制御量Ias は必ず操舵トルクτと同方向(同符号)の値となる。したがって、操舵トルクτの絶対値が第1および第2の設定値+τ1,−τ1の絶対値を超える程度に大きな値になるとき、操舵トルクτと反対方向(ステアリングホイール21の操作を重くする方向)へ向けたアシストが制限されるため、運転者は自身の意思通りに操舵することができる。また、何らかの原因により操舵トルクτと逆符号を有する異常なアシスト制御量Ias が演算されるときであれ、当該異常なアシスト制御量Ias は操舵トルクτと同方向における「0」近傍の一定値に制限される。したがって、いわゆる逆アシストが抑制される。
<実施の形態の効果>
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)アシスト制御量Ias の制限値はアシスト制御量Ias の演算に使用される各信号(各状態量)に対して個別に設定されるとともに、これら制限値を合算した値がアシスト制御量Ias に対する最終的な制限値として設定される。このため、何らかの原因によって異常値を示すアシスト制御量Ias が演算された場合であれ、当該異常なアシスト制御量Ias は最終的な制限値によって直接的に各信号値に応じた適切な値に制限される。適切な値に制限されたアシスト制御量Ias が最終的な電流指令値Iとしてモータ制御信号生成部62に供給されることにより意図せぬアシスト力が操舵系に付与されるのを的確に抑制することができる。
(2)マイクロコンピュータ42は各上限値IUL1 〜IUL5 を足し算することにより得られる上限値IUL および各下限値ILL1 〜ILL5 を足し算することにより得られる下限値ILL を使用してアシスト制御量Ias に対して一括して制限処理を行う。各上限値IUL1 〜IUL5 および各下限値ILL1 〜ILL5 を使用してアシスト制御量Ias に対して個別に制限処理を行う構成も考えられるところ、当該構成を採用する場合に比べてマイクロコンピュータ42の演算負荷を低減させることが可能である。
(3)マイクロコンピュータ42は第1〜第5のリミットマップM1〜M5を使用することにより各上限値IUL1 〜IUL5 および各下限値ILL1 〜ILL5 を簡単に演算することができる。
(4)操舵トルクτの絶対値が第1および第2の設定値+τ1,−τ1の絶対値を超える程度に大きな値になるとき、操舵トルクτと反対方向へ向けたアシストが制限される。このため、運転者は自身の意思通りに操舵しやすくなる。また、操舵トルクτと反対方向の最終的な制限値(上限値IUL または下限値ILL )の絶対値が制限されることにより、操舵トルクτと反対方向へ向けた異常なアシスト制御量Ias が演算されたときの急激な操舵挙動の変化が抑制される。いわゆる逆アシストも抑制される。
(5)操舵トルクτが第1および第2の設定値+τ1,−τ1の絶対値を超える程度に大きな値になるとき、操舵トルクτと反対方向のアシスト制御量Ias は、操舵トルクτと同方向における「0」近傍の一定値に制限される。このため、操舵トルクτが第1および第2の設定値+τ1,−τ1の絶対値を超える程度に大きな値になるとき、アシスト制御量Ias は必ず操舵トルクτと同方向の値となる。したがって、運転者の意思通りの操舵方向(操舵トルクτと同方向)へ向けたアシストが行われるので、運転者は快適に自身の意思通りの操舵を行うことができる。いわゆる逆アシストも、より確実に抑制される。
<第2の実施の形態>
つぎに、電動パワーステアリング装置の第2の実施の形態を説明する。本例は、先の図11に示される上下限リミット演算部72の構成の点で前記第1の実施の形態と異なる。
図13に示すように、上限値演算部90はガード処理部98bを有している。ガード処理部98bは、加算器96aにより演算される合算値IU1 を取り込み、当該取り込まれる合算値IU1 に応じて、加算器96bにより演算される合算値IU2 の制限処理を実行する。下限値演算部100のガード処理部108bは、加算器106aにより演算される合算値IL1 を取り込み、当該取り込まれる合算値IL1 に応じて、加算器106bにより演算される合算値IL2 の制限処理を実行する。
ガード処理部98bは、図14(a)に示されるガードマップM7を使用して合算値IU3 に対する制限処理を実行する。ガード処理部108bは、図14(b)に示されるガードマップM7を使用して合算値IL3 に対する制限処理を実行する。2つのガードマップM7,M7は、マイクロコンピュータ42の図示しない記憶装置に格納されている。
図14(a)に示すように、ガードマップM7は、横軸を加算器96aにより演算される合算値IU1 、縦軸をアシスト制御量Ias とするマップであって、加算器96aにより演算される合算値IU1 と、加算器96bにより演算される合算値IU2 に対するガード値IU2G との関係を規定する。
ガードマップM7は、つぎのような特性を有する。すなわち、加算器96aにより演算される合算値IU1 が正の値である場合、合算値IU2 に対するガード値IU2G は「0」に維持される。また、加算器96aにより演算される合算値IU1 が負の値である場合、合算値IU2 に対するガード値IU2G は、加算器96aにより演算される合算値IU1 の負の方向への増大に伴い正の方向へ向けて増加する。
図14(b)に示すように、ガードマップM7は、横軸を加算器106aにより演算される合算値IL1 、縦軸をアシスト制御量Ias とするマップであって、加算器106aにより演算される合算値IL1 と、加算器106bにより演算される合算値IL2 に対するガード値IL2G との関係を規定する。ガードマップM7,M7は、ステアリングホイール21を操作するときの重さを重くする方向のアシスト制御量Ias に対する各制限値の合算値IU1 ,IL1 の絶対値が大きくなりすぎることを抑制する観点に基づき設定される。
ガードマップM7は、つぎのような特性を有する。すなわち、加算器106aにより演算される合算値IL1 が負の値である場合、合算値IL2 に対するガード値IL2G は「0」に維持される。また、加算器106aにより演算される合算値IL1 が正の値である場合、合算値IL2 に対するガード値IL2G は、加算器106aにより演算される合算値IL1 の正の方向への増大に伴い負の方向へ向けて増加する。
ちなみに、ガード値IU2G ,IL2G の絶対値は、第1〜第3のリミットマップM1〜M3に基づく、ステアリングホイール21を操作するときの重さを軽くする方向(操舵トルクτと同符号)のアシスト制御量Ias に対する各制限値の合算値IU1 ,IL1 の絶対値よりも小さい値に設定されることが好ましい。
さて、ガード処理部98bは合算値IU2 とガード値IU2G とを比較する。ガード処理部98bは、合算値IU2 がガード値IU2G を正方向へ超える場合、合算値IU2 をガード値IU2G に制限する。当該ガード処理が施された合算値IU2 と加算器96aにより演算される合算値IU1 とが足し算されることにより、アシスト制御量Ias に対する最終的な上限値IUL が生成される。なお、合算値IU2 がガード値IU2G 以下の値であるときには、そのままの合算値IU2 と加算器96aにより演算される合算値IU2 とが足し算されることにより、アシスト制御量Ias に対する最終的な上限値IUL が生成される。
また、ガード処理部108bは合算値IL2 とガード値IL2G とを比較する。ガード処理部108bは、合算値IL2 がガード値IL2G を負方向へ超える場合には合算値IL2 をガード値IL2G に制限する。当該ガード処理が施された合算値IL2 と加算器106aにより演算される合算値IL1 とが足し算されることにより、アシスト制御量Ias に対する最終的な下限値ILL が生成される。なお、合算値IL2 がガード値IL2G 以下の値であるときには、そのままの合算値IL2 と加算器106aにより演算される合算値IL1 とが足し算されることにより、アシスト制御量Ias に対する最終的な下限値ILL が生成される。
このように、ステアリングホイール21を操作するときの重さを重くする方向のアシスト制御量Ias に対する各制限値の合算値IU2 ,IL2 の絶対値が、ガード値IU2G ,IL2G の絶対値以下の値に制限される。このため、ステアリングホイール21を操作するときの重さを重くする方向のアシスト制御量Ias の値が、むやみに大きくなることが抑制される。したがって、運転者は自身の意思通りの操舵を行いやすくなる。また、何らかの原因により操舵トルクτと逆符号を有する異常なアシスト制御量Ias が演算されるときであれ、当該異常なアシスト制御量Ias の許容範囲が狭められることにより、いわゆる逆アシストが抑制される。
なお、ガード値IU2G ,IL2G の絶対値が、ステアリングホイール21を操作するときの重さを軽くする方向のアシスト制御量Ias に対する各制限値の合算値IU1 ,IL1 の絶対値よりも小さい値に設定される場合、最終的なアシスト制御量Ias は必ずステアリングホイール21を操作するときの重さを軽くする方向の値となる。運転者の意思通りの操舵方向へ向けたアシストが行われるので、運転者は自身の意思通りに、円滑に操舵することができる。
<実施の形態の効果>
したがって、本実施の形態によれば、第1の実施の形態の(1)〜(3)の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
(6)ステアリングホイール21を操作するときの重さを軽くする方向のアシスト制御量Ias に対する各制限値の合算値IU1 ,IL1 に応じて、ステアリングホイール21を操作するときの重さを重くする方向のアシスト制御量Ias に対する各制限値の合算値IU2 ,IL2 が制限される。これにより、ステアリングホイール21を操作するときの重さを重くする方向(操舵トルクτと逆符号)のアシスト制御量Ias の許容範囲がむやみに拡がることが抑制される。操舵トルクτと逆符号を有する異常なアシスト制御量Ias が制限される分、操舵トルクτと反対方向へ向けて作用するアシスト力が低減される。このため、運転者は自身の意思通りの操舵を行いやすくなる。
<第3の実施の形態>
つぎに、電動パワーステアリング装置の第3の実施の形態を説明する。本例は、上下限リミット演算部72の構成の点で第2の実施の形態と異なる。
図15に示すように、上限値演算部90はガード値演算部97bを有している。ガード値演算部97bは、操舵トルクτを取り込み、当該取り込まれる操舵トルクτに基づき、加算器96bにより演算される合算値IU2 に対するガード値IU2G を演算する。ガード処理部98bは、ガード値演算部97bにより演算されるガード値IU2G に基づき、加算器96bにより演算される合算値IU2 の制限処理を実行する。
下限値演算部100はガード値演算部107bを有している。ガード値演算部107bは、操舵トルクτを取り込み、当該取り込まれる操舵トルクτに基づき、加算器106bにより演算される合算値IL2 に対するガード値IL2G を演算する。ガード処理部108bは、ガード値演算部107bにより演算されるガード値IL2G に基づき、加算器106bにより演算される合算値IL2 の制限処理を実行する。
2つのガード値演算部97b,107bは、それぞれ図16に示されるガードマップM8を使用して合算値IU2 ,IL2 に対するガード値IU2G ,IL2G を演算する。ガードマップM8はマイクロコンピュータ42の図示しない記憶装置に格納されている。ガードマップM8は、運転者の意思を阻害する方向、すなわち操舵トルクτと反対方向へ向けたアシストを制限する観点に基づき設定される。
図16に示すように、ガードマップM8は、横軸を操舵トルクτ、縦軸をアシスト制御量Ias とするマップであって、操舵トルクτと合算値IU2 に対するガード値IU2G との関係、および操舵トルクτと合算値IL2 に対するガード値IL2G との関係をそれぞれ規定する。
ガードマップM8は、つぎのような特性を有する。
すなわち、図16のグラフの第4象限に実線で示されるように、操舵トルクτが正の値である場合、操舵トルクτが第1の設定値+τ1に達するまでの間、ガード値IU2G は負の一定値に維持される。操舵トルクτが第1の設定値+τ1に達した以降、ガード値IU2G は操舵トルクτの増大に伴い正の方向へ向けて増加し、やがて「0」に到る。その後、操舵トルクτが増大する場合であれ、ガード値IU2G は「0」に維持される。また、図16のグラフにおける第1象限に一点鎖線で示されるように、操舵トルクτが正の値である場合、ガード値IL2G は正の一定値に維持される。
一方、図16の第3象限に実線で示されるように、操舵トルクτが負の値である場合、ガード値IU2G は負の一定値に維持される。また、図16の第2象限に一点鎖線で示されるように、操舵トルクτが負の値である場合、操舵トルクτが第2の設定値−τ1に達するまでの間、ガード値IL2G は正の一定値に維持される。操舵トルクτが第2の設定値−τ1に達した以降、ガード値IL2G は操舵トルクτの増大に伴い負の方向へ向けて減少し、やがて「0」に到る。その後、操舵トルクτが増大する場合であれ、ガード値IL2G は「0」に維持される。
さて、このガードマップM8によれば、操舵トルクτの絶対値が第1および第2の設定値+τ1,−τ1の絶対値を超えるとき、操舵トルクτと逆符号を有するアシスト制御量Ias を制限するための各制限値の合算値IU2 ,IL2 が制限される。その各制限値の合算値IU2 ,IL2 が制限される分、アシスト制御量Ias に対する最終的な制限値(IUL ,ILL )が操舵トルクτと反対方向へ拡がることが抑制される。また、各制限値の合算値IU2 ,IL2 が「0」に制限されるときには、操舵トルクτと逆符号を有するアシスト制御量Ias に対する最終的な制限値(IUL ,ILL )が「0」に設定されるので、操舵トルクτと逆符号を有するアシスト制御量Ias は「0」に制限される。すなわち、運転者の意思を阻害する操舵トルクτと反対方向へ向けた、いわゆる逆アシストが禁止される。
したがって、本実施の形態によれば、先の第1の実施の形態における(1)〜(4)と同様の効果を得ることができる。
<第4の実施の形態>
つぎに、電動パワーステアリング装置の第4の実施の形態を説明する。本例は、上下限リミット演算部72の構成の点で第3の実施の形態と異なる。
図17に示すように、上限値演算部90はトルクゲイン演算部(ガード値演算部)97cおよび乗算器(ガード処理部)98cを有している。トルクゲイン演算部97cは、操舵トルクτを取り込み、当該取り込まれる操舵トルクτに基づき、加算器96bにより演算される合算値IU2 に対するトルクゲインGτを演算する。乗算器98cは、トルクゲイン演算部97cにより演算されるトルクゲインGτを、加算器96bにより演算される合算値IU2 に乗算する。
下限値演算部100はトルクゲイン演算部(ガード値演算部)107cおよび乗算器(ガード処理部)108cを有している。トルクゲイン演算部107cは、操舵トルクτを取り込み、当該取り込まれる操舵トルクτに基づき、加算器106bにより演算される合算値IL2 に対するトルクゲインGτを演算する。乗算器108cは、トルクゲイン演算部107cにより演算されるトルクゲインGτを、加算器106bにより演算される合算値IL2 に乗算する。
2つのトルクゲイン演算部97c,107cは、それぞれ図18に示されるトルクゲインマップM9を使用して操舵トルクτに応じたトルクゲインGτを演算する。トルクゲインマップM9はマイクロコンピュータ42の図示しない記憶装置に格納されている。
図18に示すように、トルクゲインマップM9は、横軸を操舵トルクτ、縦軸をトルクゲインGτとするマップであって、操舵トルクτとトルクゲインGτとの関係を規定する。トルクゲインマップM9は、つぎのような特性を有する。すなわち、操舵トルクτの絶対値が「0」から第1の設定値τ1に達するまでの間、トルクゲインGτは操舵トルクτにかかわらず「1」に維持される。操舵トルクτの絶対値が第1の設定値τ1に達した以降、操舵トルクτの絶対値が増大するにつれてトルクゲインGτは減少する。そして、操舵トルクτの絶対値が第2の設定値τ2(>τ1)に達した以降、トルクゲインGτは操舵トルクτにかかわらず「0」に維持される。
さて、このトルクゲインマップM9によれば、操舵トルクτの絶対値が第1の設定値τ1を超えるとき、トルクゲインGτの値は「1」よりも小さな値となる。このため、当該トルクゲインGτが、操舵トルクτと逆符号を有するアシスト制御量Ias を制限するための各制限値の合算値IU2 ,IL2 に乗算されることにより、当該合算値IU2 ,IL2 はトルクゲインGτの値に応じて減少される。当該合算値IU2 ,IL2 が減少される分、アシスト制御量Ias に対する最終的な制限値(IUL ,ILL )が操舵トルクτと反対方向へ向けて拡がることが抑制される。逆に、当該合算値IU2 ,IL2 が減少される分、アシスト制御量Ias に対する最終的な制限値(IUL ,ILL )が操舵トルクτと同方向へ向けて拡大される。このため、操舵トルクτと同符号を有する最終的な制限値(IUL ,ILL )が演算される蓋然性が高められる。すなわち、操舵トルクτと同符号を有するアシスト制御量Ias が許容されやすくなる。
また、操舵トルクτの絶対値が第2の設定値τ2に達した以降、トルクゲインGτの値が「0」に設定されることにより、操舵トルクτと逆符号を有するアシスト制御量Ias を制限するための各制限値の合算値IU2 ,IL2 は「0」になる。このため、結果的に操舵トルクτと同符号を有するアシスト制御量Ias を制限するための各制限値の合算値IU1 ,IL1 がそのまま最終的な制限値(IUL ,ILL )となる。この場合、操舵トルクτと同符号を有するアシスト制御量Ias は許容される一方、操舵トルクτと逆符号を有するアシスト制御量Ias は「0」に制限される。すなわち、運転者の意思を阻害する操舵トルクτと反対方向へ向けた、いわゆる逆アシストが禁止される。
ちなみに、図17に二点鎖線で示すように、乗算器98c,108cをそれぞれ加算器96c,106cの出力経路に設けてもよい。加算器96c,106cにより演算される合算値IU3 ,IL3 にトルクゲインGτが乗算されることにより、当該合算値IU3 ,IL3 はトルクゲインGτに応じた値となる。操舵トルクτの絶対値が第1の設定値τ1に達した以降、当該合算値IU3 ,IL3 、すなわちアシスト制御量Ias に対する最終的な制限値(IUL ,ILL )は、トルクゲインGτの値に応じて減少される。当該最終的な制限値(IUL ,ILL )が減少される分、操舵トルクτと逆符号を有するアシスト制御量Ias の制限範囲(許容範囲)が狭められる。このため、いわゆる逆アシストが抑えられる。
したがって、本実施の形態によれば、先の第1の実施の形態における(1)〜(4)と同様の効果を得ることができる。
<他の実施の形態>
なお、前記各実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・第1および第3の実施の形態において、ガードマップM6,M8の第1および第2の設定値+τ1,−τ1は、製品仕様などに応じて適宜変更して設定してもよい。
・第4の実施の形態において、トルクゲインマップM9の第1および第2の設定値τ1,τ2は、製品仕様などに応じて適宜変更して設定してもよい。
・本来、制限すべきアシスト制御量Ias は車速Vに応じて異なる。第1〜第5のリミットマップM1〜M5では、たとえばすべての車速域において発生し得るアシスト制御量Ias のうち最も大きなアシスト制御量Ias を基準として制限値(上限値および下限値)が設定される。このため、異常なアシスト制御量Ias は必ずしも最適な制限値で制限されるとは限らない。この点を踏まえ、アシスト制御量Ias に対する各制限値(上限値IUL1 〜IUL5 、下限値ILL1 〜ILL5 )を車速Vに応じて設定してもよい。車速Vを加味して各制限値(IUL1 〜IUL5 、ILL1 〜ILL5 )を変化させることにより、車速Vが加味されない第1〜第5のリミットマップM1〜M5では許容される、本来制限すべきアシスト制御量Ias をより早く検出して制限することが可能となる。したがって、各制限値の精度が向上し、アシスト制御量Ias に対する制限処理を、より適切に行うことができる。
10…電動パワーステアリング装置、20…操舵機構(操舵系)、21…ステアリングホイール、31…モータ、40…ECU(制御装置)、96a…加算器(第1の加算器)、96b…加算器(第2の加算器)、96c…加算器(第3の加算器)、98a,108a…ガード処理部(制限処理部)、98b,108b…ガード処理部(制限処理部)、98c,108c…乗算器(制限処理部)、IUL1 ,IUL2 …第1の制限値群を構成する上限値、ILL1 ,ILL2 …第1の制限値群を構成する下限値、IUL3 ,IUL4 ,IUL5 …第2の制限値群を構成する上限値、ILL3 ,ILL4 ,ILL5 …第2の制限値群を構成する下限値、IU1 ,IL1 …第1の合算値、IU2 ,IL2 …第2の合算値、IU3 ,IL3 …第3の合算値、M6,M7,M7,M8…ガードマップ、M9…トルクゲインマップ、+τ1,−τ1,τ1…設定値。

Claims (10)

  1. ステアリングの操舵状態を示す複数種の状態量に基づきアシスト制御量を演算し当該アシスト制御量に基づき車両の操舵機構に付与するアシスト力の発生源であるモータを制御する制御装置を備え、
    前記制御装置は、前記アシスト制御量の演算に使用する各状態量に応じて前記アシスト制御量の変化範囲を制限する制限値を前記状態量ごとに個別に設定し、これら制限値を合算することにより前記アシスト制御量に対する最終的な制限値を生成する電動パワーステアリング装置であって、
    前記制御装置は、前記複数種の状態量の一である操舵トルクと逆符号を有するアシスト制御量に対する前記最終的な制限値を制限するための制限処理を実行する制限処理部を有する電動パワーステアリング装置。
  2. 請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記状態量ごとに個別に設定される制限値は、操舵トルクと同符号を有するアシスト制御量を制限するための第1の制限値群と、操舵トルクと逆符号を有するアシスト制御量を制限するための第2の制限値群とを含み、
    前記制御装置は、前記第1の制限値群を構成する制限値を合算することにより第1の合算値を演算する第1の加算器と、前記第2の制限値群を構成する制限値を合算することにより第2の合算値を演算する第2の加算器と、前記第1の合算値と前記第2の合算値とを合算することにより前記アシスト制御量に対する最終的な制限値として第3の合算値を演算する第3の加算器とを有し、
    前記制限処理部は、前記第3の合算値を制限することにより、操舵トルクと逆符号を有するアシスト制御量に対する前記最終的な制限値を制限する電動パワーステアリング装置。
  3. 請求項2に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記制限処理部は、操舵トルクの絶対値が設定値に達することを契機として、前記第3の合算値に対する制限処理を実行する電動パワーステアリング装置。
  4. 請求項3に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記制御装置は、操舵トルクと前記第3の合算値に対する制限値との関係を規定するとともに、操舵トルクの絶対値が設定値に達した以降、前記第3の合算値に対する制限値が0へ向けて漸減する特性を有するガードマップを記憶していることを前提とし、
    前記制限処理部は、前記第3の合算値に対する制限処理として、前記ガードマップに基づき前記第3の合算値に対する制限値を0に向けて減少させる電動パワーステアリング装置。
  5. 請求項3に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記制御装置は、操舵トルクとゲインとの関係を規定するとともに、操舵トルクの絶対値が設定値に達した以降、前記ゲインが0へ向けて漸減する特性を有するトルクゲインマップを記憶していることを前提とし、
    前記制限処理部は、前記第3の合算値に対する制限処理として、前記トルクゲインマップに基づくゲインを前記第3の合算値に乗算する電動パワーステアリング装置。
  6. 請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記状態量ごとに個別に設定される制限値は、操舵トルクと同符号を有するアシスト制御量を制限するための第1の制限値群と、操舵トルクと逆符号を有するアシスト制御量を制限するための第2の制限値群とを含み、
    前記制御装置は、前記第1の制限値群を構成する制限値を合算することにより第1の合算値を演算する第1の加算器と、前記第2の制限値群を構成する制限値を合算することにより第2の合算値を演算する第2の加算器と、前記第1の合算値と前記第2の合算値とを合算することにより前記アシスト制御量に対する最終的な制限値として第3の合算値を演算する第3の加算器とを有し、
    前記制限処理部は、前記第2の合算値を制限することにより、操舵トルクと逆符号を有するアシスト制御量に対する前記最終的な制限値を制限する電動パワーステアリング装置。
  7. 請求項6に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記制限処理部は、前記第1の合算値に応じて、前記第2の合算値を制限する電動パワーステアリング装置。
  8. 請求項6に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記制限処理部は、操舵トルクの絶対値が設定値に達することを契機として、前記第2の合算値に対する制限処理を実行する電動パワーステアリング装置。
  9. 請求項8に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記制御装置は、操舵トルクと前記第2の合算値に対する制限値との関係を規定するとともに、操舵トルクの絶対値が設定値に達した以降、前記第2の合算値に対する制限値が0へ向けて漸減する特性を有するガードマップを記憶していることを前提とし、
    前記制限処理部は、前記第2の合算値に対する制限処理として、前記ガードマップに基づき前記第2の合算値に対する制限値を0に向けて減少させる電動パワーステアリング装置。
  10. 請求項8に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記制御装置は、操舵トルクとゲインとの関係を規定するとともに、操舵トルクの絶対値が設定値に達した以降、前記ゲインが0へ向けて漸減する特性を有するトルクゲインマップを記憶していることを前提とし、
    前記制限処理部は、前記第2の合算値に対する制限処理として、前記トルクゲインマップに基づくゲインを前記第2の合算値に乗算する電動パワーステアリング装置。
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