JP2018015736A - 金属の抽出剤、金属の抽出方法、及び金属の回収方法 - Google Patents

金属の抽出剤、金属の抽出方法、及び金属の回収方法 Download PDF

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Abstract

【課題】酸性水溶液から高選択的に金属を抽出でき、かつ、酸性水溶液への漏出が抑制された金属の抽出剤、金属の抽出方法、及び金属の回収方法の提供。
【解決手段】式(I)で表される化合物から選択される少なくとも1種を含む金属の抽出剤。
Figure 2018015736

[R及びRは、夫々独立に直鎖/分岐鎖状のC1〜18のアルキル基又はアルケニル基]
【選択図】図2

Description

本発明は、金属の抽出剤、金属の抽出方法、及び金属の回収方法に関する。
電子機器等の廃棄物には金をはじめとする有価金属が含まれており、小型家電リサイクル法の施行を背景にこれらの金属の回収・再利用が求められている。湿式法で廃棄物中の有価金属を回収する場合、例えば塩素吹き込み塩酸等の強酸溶液で金属を酸浸出し、混在する金属イオンから目的の金属イオンを選択的に有機相へ抽出分離する溶媒抽出法が有力である。このように廃棄物中に含まれる金属を酸性溶液を用いて浸出した液には、天然鉱物とは異なる組成で、かつ数十種におよぶ多様な元素が含まれることから、有価金属を高純度に分離回収することは困難を極める。このような条件での金属精製において、特定の金属のみと選択的に錯体を形成する抽出剤を用いた溶媒抽出法は有力な手段の1つである。酸性溶液からの貴金属の抽出に有効な金属抽出剤はこれまでにも多数開発されているが、複雑な組成からなる廃棄物由来の浸出液から目的の金属を抽出分離するためにはより優れた金属選択性が求められる。また、現在貴金属の回収において工業的に使用される抽出剤は、その金属選択性は万能的ではない上、高濃度で用いることが必要であり、また水への漏出による損失があるといった欠点を有する。
例えば塩酸系からの金の抽出剤として、アルキルスルフィドやアミン系抽出剤、エーテル系抽出剤が有力であるほか、アルキルピリジン(特許文献1)、アルキルシアナミド(特許文献2)やプロリン誘導体(特許文献3)が有効であることが報告されている。代表的なエーテル系抽出剤であるジブチルカルビトール(DBC)は塩酸からの金の抽出剤として広く工業的に使用されている。しかしながらDBCで金を抽出する場合、原液で用いる等高濃度での使用が必須であり、水相への漏出によって徐々に抽出相から減少していくという欠点もある。またパラジウムの抽出剤として、テオフェリン誘導体やテオブロミン誘導体等の核酸塩基が有効であることが報告されている(特許文献4)。
このように、溶媒抽出法による金属分離プロセスの成否は、用いる抽出剤の金属選択性が鍵を握り、抽出する対象に応じたより優れた抽出剤が求められている。
特開平6−335601号公報 特開平7−62462号公報 特開2010−180430号公報 特開2001−106537号公報
本発明は、酸性水溶液から高選択的に金属を抽出することができ、かつ、酸性水溶液への漏出が抑制された金属の抽出剤、金属の抽出方法、及び金属の回収方法を提供することを目的とする。
本発明者は、式(I)で表される化合物が特定の金属に対して高い選択性を示し、また酸性水溶液に対する溶解性が低いために抽出剤として用いた際に酸性水溶液への漏出を抑制することができることを見出した。
本発明は以下の発明を包含する。
[1]式(I):
Figure 2018015736
[式中、
及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜18のアルキル基又はアルケニル基である]
で表される化合物から選択される少なくとも1種を含む金属の抽出剤。
[2]Rが炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基であり、Rが炭素数5〜15の直鎖状のアルキル基である、上記[1]に記載の抽出剤。
[3]金属を含有する酸性水溶液から上記[1]又は[2]に記載の抽出剤を用いて金属を抽出する工程を含む、金属の抽出方法。
[4]金属を含有する酸性水溶液から上記[1]又は[2]に記載の抽出剤を用いて金属を抽出する工程;及び
金属及び抽出剤を含有する有機相から水性溶媒を用いて金属を逆抽出する工程
を含む、金属の回収方法。
[5]式(I):
Figure 2018015736
[式中、
が炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基であり、Rが炭素数5〜15の直鎖状のアルキル基である]
で表される化合物。
[6]式(II):
Figure 2018015736
で表される化合物。
本発明によれば、酸性水溶液から高選択的に金属を抽出することができ、また、酸性水溶液への漏出による抽出剤の損失を抑制することができる。本発明は、湿式法による廃棄物酸浸出液からの有価金属回収・再利用法として利用することができる。
図1は、接触時間と1−メトキシ−2−オクトキシベンゼン(o−MOB)による金(III)の抽出率との関係を示す図である。 図2は、平衡塩酸濃度と、各種抽出剤による金(III)の抽出率との関係を示す図である。 図3は、o−MOB濃度と金(III)の抽出率との関係を示す図である。 図4は、平衡塩酸濃度と、o−MOBによる各種金属の抽出率との関係を示す図である。
本発明において「金属」とは、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム及びオスミウム等の貴金属、さらには鉄、銅、ニッケル、コバルト、亜鉛、鉛、カドミウム、ガリウム、アルミニウム及びインジウムから選択される少なくとも1種である。これらの中で、高選択的に抽出する観点から、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム及びオスミウム等の貴金属、さらには鉄、鉛、ガリウム及びアルミニウムが好ましく、金、白金、ガリウム及び鉄がさらに好ましい。
本発明は、式(I):
Figure 2018015736
[式中、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜18のアルキル基又はアルケニル基である]で表される化合物から選択される少なくとも1種を含む金属の抽出剤に関する(以下、本発明の抽出剤ともいう)。本発明の抽出剤によれば、塩酸等の酸性水溶液から金をはじめとする各種金属を抽出分離できる。
上記式(I)で表される化合物は、金属と親和性が高い酸素原子2個が互いに近く配置されており、かつ構造の自由度が制限されているために、特定の金属を高選択的に抽出することができる。また式(I)で表される化合物は、抽出工程において平衡に達するまでの時間が短いため、金属抽出剤として有用である。また式(I)で表される化合物は、酸素原子と芳香環が結合しているため、脂肪鎖からなる従来の抽出剤として用いられるジブチルカルビトール(DBC)とは異なる抽出特性を示し、より高選択的に金属を抽出することができる。
上記式(I)におけるR及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜18のアルキル基又はアルケニル基であり、例として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、2−メチルノニル基、2,7−ジメチルオクチル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基及びオクタデシル基等の直鎖状又は分岐状アルキル基、1以上の二重結合を有するアルケニル基等を挙げることができる。アルキル基又はアルケニル基は、場合により、1以上の水素原子がフッ素等のハロゲンや水酸基等で置換されていてもよい。
上記R及びRは、ドデカン等の脂肪族飽和炭化水素を希釈剤(後述する有機溶媒)として用いたときに溶解度が大きくなるために、直鎖状であることが好ましい。上記R及びRは、異なる炭素数を有するものであることが好ましい。上記R及びRは、それぞれアルキル基であることが好ましい。
上記R及びRの組み合わせとしては、Rが炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基であり、Rが炭素数5〜15の直鎖状のアルキル基であることが好ましく、Rが炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基であり、Rが炭素数6〜13の直鎖状のアルキル基であることがより好ましく、Rが炭素数1〜2の直鎖状のアルキル基であり、Rが炭素数6〜10の直鎖状のアルキル基であることがさらに好ましい。
上記R及びRの組み合わせとしては、比較的安価なグアイアコール(2−メトキシフェノール)を原料として容易に合成でき、かつ水への溶解度が小さくなることから、Rが炭素数1のメチル基であり、Rが炭素数6〜10の直鎖状のアルキル基であることが好ましい。
式(I)で表される化合物は、具体的には、式(II):
Figure 2018015736
で表される化合物、すなわち1−メトキシ−2−オクトキシベンゼン(以下、o−MOBともいう)であることが好ましい。o−MOBは、炭素数が多いためにDBCよりも疎水性で水への溶解度が低く、よって、酸性水溶液から高選択的に金属を抽出するための抽出剤として用いた場合に、酸性水溶液への抽出剤の漏出を抑制することができる。
本発明は、金属を含有する酸性水溶液から式(I)で表される化合物から選択される少なくとも1種を含む金属の抽出剤を用いて金属を抽出する工程(以下、抽出工程ともいう)を含む、金属の抽出方法にも関する(以下、本発明の抽出方法ともいう)。本発明の抽出方法によれば、酸性水溶液から高選択的に金属を抽出することができ、また、酸性水溶液への漏出による抽出剤の損失を抑制することができる。
本発明の抽出方法における抽出工程は、金属を含有する酸性水溶液と、式(I)で表される化合物から選択される少なくとも1種を含む金属の抽出剤又は当該抽出剤を含有する有機相とを接触させることにより行う。例えば、金属を抽出するには、まず対象とする金属を含有する酸性水溶液を調製し、その溶液に上記抽出剤の有機溶媒溶液を加え、攪拌等を行う。加える上記抽出剤の量は、抽出対象である金属の種類、量に応じて適宜設定される。また、金属の抽出が平衡状態に至るまでの攪拌時間、抽出温度等の条件は、溶液中の金属の濃度等によって変わり、特に限定されるものではない。
上記抽出工程において上記抽出剤を単独で有機相としてもよいが、上記抽出剤を有機溶媒に希釈したものを有機相としてもよい。上記抽出剤を有機溶媒で希釈する方法は経済的である点で好ましい。また、上記抽出剤が固体である場合、より効率的かつ選択的に金属を抽出するために、上記抽出剤を有機溶媒に希釈することが好ましい。具体的には、式(I)で表される化合物を、好ましくは0.01〜5.0mol/dm、より好ましくは0.05〜1.0mol/dm、さらに好ましくは0.10〜1.0mol/dmとなるように希釈する。
上記有機溶媒としては、脂肪族化合物及び芳香族化合物を含む全ての有機溶媒が適用可能であり、例として、アルコール類(2−エチルヘキシルアルコール等)、有機塩素類(クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、脂肪族炭化水素類(ノルマルヘキサン、シクロヘキサン等)等を挙げることができる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、あるいは複数を混合して用いてもよい。
上記「金属を含有する酸性水溶液」は、典型的には金属の塩化物を含有する酸性水溶液である。金属を含有する酸性水溶液は、例えば、金属を含む廃棄物等を塩素化溶解することにより得ることができる。塩素化溶解は常法により、例えば過酸化水素と塩酸の併用、あるいは塩素ガスと塩酸の併用により行うことができる。
特定の金属に対する選択性を高める観点から、抽出の際、金属を含有する酸性水溶液(水相)のpH及び酸濃度等を適宜制御することが好ましい。具体的には、金属を含有する酸性水溶液の水素イオン濃度は、0.001〜10.0mol/dmであることが好ましく、0.01〜8.0mol/dmであることがより好ましい。
上記金属を含有する酸性水溶液に用いる酸としては、塩酸、硫酸及び硝酸等が挙げられ、金属錯体の抽出性の観点から、塩酸を用いることが好ましい。金属を含有する酸性水溶液中の酸の濃度は、特に限定されず、除去したい他の金属との関係で適切に選択される。例えば、金又は白金を抽出する場合、酸性水溶液の水素イオン濃度は0.01〜10.0mol/dmであることが好ましく、0.1〜3.0mol/dmであることがより好ましい。例えば、ガリウム及び鉄を抽出する場合、酸性水溶液の水素イオン濃度は3.0〜10.0mol/dmであることが好ましく、3.0〜8.0mol/dmであることがより好ましい。
上記金属を含有する酸性水溶液における金属の濃度は、抽出剤濃度を過剰にするために、好ましくは0.1×10−4〜5.0×10−2/dm、より好ましくは0.5×10−4〜1.0×10−2mol/dmである。
上記抽出工程の条件は特に限定されない。例えば、金属を含有する酸性水溶液(水相)と上記抽出剤を含有する有機相とを、好ましくは1:10〜10:1、より好ましくは1:5〜5:1の容積比で、5〜50℃にて、10分〜48時間、好ましくは30分〜24時間接触させることにより有機相に金属を抽出することができる。
上記抽出工程により有機相中に金属を抽出した後、有機相と水相とを分離することが好ましい。
以下に、本発明の抽出方法の例を示す。
(a)パラジウム、鉄、銅、ニッケル、コバルト、亜鉛、鉛、カドミウム、ガリウム、アルミニウム及びインジウムから選択される少なくとも1種の金属、並びに、白金及び金から選択される少なくとも1種の金属を含有する、濃度が0.01〜10.0mol/dm、より好ましくは0.1〜3.0mol/dmの塩酸溶液に、本発明の抽出剤の有機溶媒溶液を加えることによって、白金及び/又は金を高選択的に抽出することができる。
(b)コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、鉛、カドミウム及びインジウムから選択される少なくとも1種の金属、並びに、ガリウム及び鉄から選択される少なくとも1種の金属を含有する、濃度が3.0〜10.0mol/dm、より好ましくは3.0〜8.0mol/dmの塩酸溶液に、本発明の抽出剤の有機溶媒溶液を加えることによって、ガリウム及び/又は鉄を高選択的に抽出することができる。
本発明は、金属を含有する酸性水溶液から式(I)で表される化合物から選択される少なくとも1種を含む金属の抽出剤を用いて金属を抽出する工程(以下、抽出工程ともいう);及び、金属及び抽出剤を含有する有機相から水性溶媒を用いて金属を逆抽出する工程(以下、逆抽出工程ともいう)を含む、金属の回収方法にも関する(以下、本発明の回収方法ともいう)。本発明の回収方法によれば、金属を水相側に容易にリサイクル可能な状態で回収・濃縮することができる。
上記抽出工程については、本発明の抽出方法における抽出工程について上述した記載を引用するものとする。
上記逆抽出工程において金属を逆抽出するための水性溶媒としては、水、塩酸、硫酸、硝酸、(塩酸+チオ尿素)溶液等を用いることができ、これらの中で、逆抽出率を高める観点から、塩酸、(塩酸+チオ尿素)溶液を用いることが好ましい。逆抽出に用いられる水性溶媒は、逆抽出の効率に悪影響を与えない範囲で他の成分を含有するものであってもよい。
上記逆抽出工程の条件は特に限定されない。例えば、上記抽出剤及び金属を含む有機相と水性溶媒(水相)とを、1:10〜10:1、より好ましくは1:5〜5:1の容積比で、5〜50℃にて、10分〜48時間、好ましくは30分〜24時間接触させることにより水相に金属を逆抽出することができる。
上記逆抽出工程により水相中に金属を逆抽出した後、有機相と水相とを分離することが好ましい。
水相中の金属は常法に従い還元剤を用いて還元析出させ、回収することができる。還元剤としては例えばシュウ酸又はシュウ酸ナトリウムが挙げられる。また、水素ガスをバブリングすることによっても還元析出できる。
本発明は、式(I):
Figure 2018015736
[式中、Rが炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基であり、Rが炭素数5〜15の直鎖状のアルキル基である]で表される化合物にも関する(以下、本発明の化合物ともいう)。本発明の化合物によれば、塩酸等の酸性水溶液から金をはじめとする各種金属を抽出分離できる。
本発明の化合物は、例えば、塩基性条件下で、対応するアルコキシフェノール又はアルケニルオキシフェノールと、対応するハロゲン化アルカン又はハロゲン化アルケンとを反応させることにより得ることができ、当業者であれば適宜反応条件を決定することができる。本発明の化合物の好ましい態様については、本発明の抽出剤において式(I)で表される化合物について上述した記載を引用するものとする。
本発明の化合物である、式(II):
Figure 2018015736
で表される化合物、すなわち1−メトキシ−2−オクトキシベンゼン(以下、o−MOBともいう)は、塩基性条件下での1−ブロモオクタンとグアイアコール(2−メトキシフェノール)との1段階の反応により高い収率で得ることができる。
以下実施例により本発明を具体的に説明するが本発明は実施例の記載には限定されない。
実験1:抽出剤1−メトキシ−2−オクトキシベンゼンの合成
1−メトキシ−2−オクトキシベンゼン(o−MOB)の合成手順を以下に示す。
グアイアコール6.0g及び炭酸カリウムを7.78gをDMF50cmに加えた。混合液を撹拌しながら、1−ブロモオクタン15.56gをゆっくりと滴下した。滴下終了後、60℃、窒素雰囲気下で24時間加熱撹拌した。
加熱撹拌を終了した後、混合物をろ過して炭酸カリウムの大半を除去し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をクロロホルムに溶解させた。この溶液に1mol/dm程度の塩酸を加えて分液ろうとで分液操作を2回行った。さらに、1mol/dm程度の水酸化ナトリウム水溶液を塩基性になったことを確認して分液操作を3回繰り返し、蒸留水を加えてさらにもう1回分液した。その後、クロロホルム溶液を無水硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過して硫酸ナトリウムを除去した溶媒を減圧留去し、褐色液体を得た。NMRにより、目的物の生成を確認した。
Figure 2018015736
実験2:o−MOBによる塩酸溶液からの金(III)の抽出における振とう時間(接触時間)の影響
1.0×10−4mol/dmの金(III)を含む5.0mol/dm塩酸溶液10cmを調製し水相とした。0.200mol/dmのo−MOBを含むトルエン溶液10cmを調製し有機相とした。両相を混合し50cm共栓付き三角フラスコに加えて混合し、30℃の恒温槽中で所定時間振とうした。振とう時間を0.5、1、2、5、10、15、30、60、120、240、480、720分と変えて同様の抽出実験を行った。所定時間振とうした後、水相を分取し、振とう前後の水相中の金(III)濃度を原子吸光光度計で測定するとともに、塩酸濃度(結果示さず)を電位差滴定装置で測定した。水相中の金(III)濃度の減少から、有機相への金(III)の抽出率を算出した。
図1に異なる振とう時間(接触時間)0〜120分までのo−MOBによる金(III)の抽出率を示す。図1より、金(III)は振とう開始から5分までの間で迅速に抽出され、15分まで間で抽出率は緩やかに増加したがその後は一定値にとどまった。この結果より、o−MOBによる金(III)の抽出はおよそ15分で平衡に達し、迅速な処理が行えることが示唆された。
実験3:各種エーテル系抽出剤による塩酸溶液からの金(III)の抽出
1.0×10−4mol/dmの金(III)を含む塩酸濃度0.1、0.3、0.5、0.8、1.0、3.0、5.0、8.0mol/dmの水溶液10cmを調製し水相とした。0.200mol/dmのo−MOB、m−MOB、p−MOB若しくはMOE(2個の酸素原子を有するエーテル系抽出剤)、又はDBCを含むトルエン溶液10cmを調製し有機相とした。両相を混合し50cm共栓付き三角フラスコに加えて混合し、30℃の恒温槽中で24時間振とうした。振とう後、水相を分取し、振とう前後の水相中の金(III)濃度を原子吸光光度計で測定して有機相への金(III)の抽出率を算出するとともに、平衡塩酸濃度を電位差滴定装置で測定した。用いた抽出剤の構造を以下に示す。
Figure 2018015736
図2に各エーテル系抽出剤による金(III)の抽出における平衡塩酸濃度の影響を示す。図2より、o−MOBを用いた場合に、塩酸溶液中からの金(III)への抽出率が最も高かった。次いでp−MOB、m−MOBの順に抽出率は高かったが、その抽出率はo−MOBと比較すると大幅に低かった。一方、脂肪鎖からなるDBC及びMOEの抽出率は極めて低かった。これらの結果より抽出剤濃度0.200mol/dmの条件ではo−MOBが最も高い抽出能力(90%以上)を示すことが示された。一方、この条件ではDBCは金(III)を全く抽出できず、希釈された条件では工業的に利用されているDBCよりもo−MOBの方が抽出能力が高かった。
実験4:塩酸溶液からの金(III)の抽出におけるo−MOB濃度の影響
1.0×10−4mol/dmの金(III)を含む塩酸1.0mol/dm溶液10cmを調製し水相とした。0.01、0.02、0.05、0.10、0.20、0.50、1.00mol/dmのo−MOBを含むトルエン溶液10cmを調製し有機相とした。両相を混合し50cm共栓付き三角フラスコに加えて混合し、30℃の恒温槽中で24時間振とうした。振とう後、水相を分取し、振とう前後の水相中の金(III)濃度を原子吸光光度計で測定して有機相への金(III)の抽出率を算出するとともに、平衡塩酸濃度(結果示さず)を電位差滴定装置で測定した。
図3にo−MOBによる金(III)の抽出におけるo−MOB濃度の影響を示す。図3より、o−MOB濃度が高くなるにつれ、抽出率も上昇し、0.200mol/dmのo−MOB存在下で抽出率が95%を越えた。この結果より、o−MOBが金(III)の抽出に寄与していることが示された。
実験5:塩酸溶液におけるo−MOBを用いた各種金属の抽出
コバルト(Co)(II)、ニッケル(Ni)(II)、銅(Cu)(II)、亜鉛(Zn)(II)、パラジウム(Pd)(II)、金(Au)(III)、鉄(Fe)(III)、ガリウム(Ga)(III)、インジウム(In)(III)、アルミニウム(Al)(III)、ロジウム(Rh)(III)、白金(Pt)(IV)の塩化物塩を用い、いずれかの金属を1.0×10−4mol/dm含む塩酸濃度0.1、0.3、0.5、0.8、1.0、3.0、5.0、8.0mol/dmの水溶液10cmを調製し水相とした。0.200mol/dmのo−MOBを含むトルエン溶液10cmを調製し有機相とした。両相を混合し50cm共栓付き三角フラスコに加えて混合し、30℃の恒温槽中で24時間振とうした。振とう後、水相を分取し、振とう前後の水相中の金属濃度を原子吸光光度計又はICP発光分光分析装置で測定して有機相への各金属の抽出率を算出するとともに、平衡塩酸濃度を電位差滴定装置で測定した。
図4にo−MOBによる塩酸溶液からの各種金属の抽出率に及ぼす平衡塩酸濃度の影響を示す。In(III)、Cu(II)、Co(II)、Ni(II)及びZn(II)は、実験した塩酸濃度域0.1〜8.0mol/dmでは全く抽出されなかった(図示せず)。
図4より、o−MOBは0.1mol/dm〜1mol/dmの塩酸において金(III)及び白金(IV)を卑金属から選択的に抽出した。ロジウム(III)は広範囲の塩酸濃度条件下で10〜20%抽出された。他方、パラジウム(II)の抽出率は低く、塩酸濃度0.5mol/dm以上では全く抽出されなかった。これにより、本抽出剤によりパラジウム(II)から金(III)又は白金(IV)を分離することができる。他方、ガリウム(III)及び鉄(III)は低塩酸濃度では全く抽出されなかったが、塩酸濃度3.0mol/dm以上で抽出率が大きく増大し、塩酸濃度5.0mol/dmでガリウム(III)の抽出率は95%を越えた。高塩酸濃度条件下でコバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、亜鉛(II)等多くの金属は全く抽出されないことから、本抽出剤によりこれらの金属からガリウム(III)又は鉄(III)を分離することができる。
実験6:o−MOBを用いて抽出した金(III)の逆抽出
1.0×10−4mol/dmの金(III)を含む塩酸1.0mol/dm溶液100cmを調製し水相とした。0.200mol/dmのo−MOBを含むトルエン溶液100cmを調製し有機相とした。両相を混合し300cm共栓付き三角フラスコに加えて混合し、30℃の恒温槽中で24時間振とうした。振とう後、水相を分取し、振とう前後の水相中の金(III)濃度を原子吸光光度計で測定して有機相への金(III)の抽出率を算出した。
以上の正抽出操作で得られた有機相を10cmずつ分取して50cm共栓付き三角フラスコに加えた。これに蒸留水、0.01〜5.0mol/dmの塩酸、1.0mol/dmのチオ尿素を含む0.1〜5.0mol/dmの塩酸のいずれかを10cmを加え、30℃の恒温槽中で24時間振とうした。振とう後、水相を分取し、振とう前後の水相中の金(III)濃度を原子吸光光度計で測定して有機相から水相への金(III)の逆抽出率を算出した。
正抽出の抽出率は95.5%となり、逆抽出に用いた有機相の金の濃度は9.1×10−5mol/dmであった。表1に各逆抽出剤による金(III)の逆抽出率を示す。結果より、塩酸濃度が高くなるほど逆抽出率が上昇した。これは、塩酸濃度が高くなるほどo−MOBによる金(III)の抽出率が減少する傾向(実験3の図2)と一致する。1.0mol/dmのチオ尿素存在下では塩酸濃度に関わらず金(III)を100%逆抽出することができた。
各逆抽出剤による金(III)の逆抽出率を表1に示す。
Figure 2018015736

Claims (6)

  1. 式(I):
    Figure 2018015736
    [式中、
    及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜18のアルキル基又はアルケニル基である]
    で表される化合物から選択される少なくとも1種を含む金属の抽出剤。
  2. が炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基であり、Rが炭素数5〜15の直鎖状のアルキル基である、請求項1に記載の抽出剤。
  3. 金属を含有する酸性水溶液から請求項1又は2に記載の抽出剤を用いて金属を抽出する工程を含む、金属の抽出方法。
  4. 金属を含有する酸性水溶液から請求項1又は2に記載の抽出剤を用いて金属を抽出する工程;及び
    金属及び抽出剤を含有する有機相から水性溶媒を用いて金属を逆抽出する工程
    を含む、金属の回収方法。
  5. 式(I):
    Figure 2018015736
    [式中、
    が炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基であり、Rが炭素数5〜15の直鎖状のアルキル基である]
    で表される化合物。
  6. 式(II):
    Figure 2018015736
    で表される化合物。
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