JP2018014926A - 成木保護具 - Google Patents

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佐藤 清純
Kiyozumi Sato
清純 佐藤
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【課題】成木に巻き付けた状態を長期間にわたって維持することができるとともに取付作業が容易であり、かつ成木に取付けてもその成長を阻害しない成木保護具を提供する。【解決手段】成木に取付けられて鹿や熊等の野生動物の食害から成木を保護する成木保護具Pが、経糸1及び緯糸2が格子状に配列されたネット状編織物で形成され、経糸及び緯糸の一部に、芯成分が高融点重合体で形成され鞘成分が低融点重合体で形成された芯鞘型複合長繊維が少なくとも複数本集束されてなるマルチフィラメント糸が含まれて、鞘成分が溶融固化されることによって、マルチフィラメント糸を構成する芯鞘型複合長繊維の相互間が経糸及び緯糸の交差点において融着され一体化されているようにする。【選択図】図1

Description

本発明は、山林等において造林された樹木に対して鹿や熊等の野生動物が樹皮を剥がして食い荒らす被害から成木を防護するために使用する成木保護具に関するものである。
近年、造林により育成した成木に対して野生動物が樹皮を剥がして食い荒らす被害が増加している。成木は樹皮を剥がされてしまうと再生されずに枯れてしまうため、深刻な被害が生じることから、鹿や熊等の野生動物に対する成木の防護対策が必要とされ、例えば、樹木の周囲に巻回可能な周回部材と、前記周回部材から垂下する複数の垂下部材とからなり、前記垂下部材は、柔軟性のある細長いテープ状部材により構成されることによって、風などの外力により揺動するようになされると共に、その先端側が地面を這うように配することが可能なようになされた樹木の根元保護具である成木保護具が開示されている。(特許文献1の請求項1参照)。
特開2011−188828号公報
しかしながら、上記従来の成木保護具においては、テープ状部材を成木に巻き付けて取り付ける場合、テープ状部材がずれ落ちたり、裂けてしまうおそれがある。また、テープ状部材が成木に引っ掛かった状態でもテープ状部材に樹皮が刺さった状態となっている場合には、刺さった部分からテープ状部材が裂けていくおそれがある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、成木に巻き付けた状態を長期間にわたって維持することができるとともに取付作業が容易であり、かつ成木に取付けてもその成長を阻害しない成木保護具を提供せんとするものである。
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわち本発明に係る成木保護具は、成木に取付けられて鹿や熊等の野生動物の食害から成木を保護する成木保護具が、経糸及び緯糸が格子状に配列されたネット状編織物で形成され、前記経糸及び緯糸の一部に、芯成分が高融点重合体で形成され鞘成分が低融点重合体で形成された芯鞘型複合長繊維が少なくとも複数本集束されてなるマルチフィラメント糸が含まれて、前記鞘成分が溶融固化されることによって、前記マルチフィラメント糸を構成する前記芯鞘型複合長繊維の相互間が前記経糸及び緯糸の交差点において融着され一体化されていることを特徴とするものである。
また本発明に係る成木保護具は、前記成木保護具は伸縮自在となされていると共に、伸ばされた場合に原形の格子状に復帰しようとして縮むようになされていることを特徴とするものである。
本発明に係る成木保護具によれば、成木に取付けられて鹿や熊等の野生動物の食害から成木を保護する成木保護具を、経糸及び緯糸が格子状に配列されたネット状編織物で形成し、前記経糸及び緯糸の一部に、芯成分を高融点重合体で形成し鞘成分を低融点重合体で形成した芯鞘型複合長繊維が少なくとも複数本集束されてなるマルチフィラメント糸を含め、前記鞘成分が溶融固化されることによって、前記マルチフィラメント糸を構成する前記芯鞘型複合長繊維の相互間を前記経糸及び緯糸の交差点において融着し一体化しているので、前記ネット状編織物で形成されている成木保護具を、例えばロール状に巻き取れば、成木が造林されている場所までの運搬を効率的に行うことができると共に、現地で前記ネット状編織物を適切な長さに切断し成木の幹の表面に巻き付けるだけで、前記成木保護具の取付けを完了するので、成木保護具の設置を非常に効率的に実施することができる。
また本発明に係る成木保護具によれば、前記成木保護具を伸縮自在としていると共に、伸ばされた場合に原形の格子状に復帰しようとして縮むようにしているので、前記成木保護具を伸ばした状態で成木の幹の表面に巻き付け取付けると、前記成木保護具は原形の格子状に復帰しようとして縮むため、成木の表面に適度に緊張した状態で前記成木保護具が取付けられ、長期間にわたって成木に巻き付けた状態を維持することができると共に、前記成木保護具が伸縮自在であるため、成木が成長するにしたがって、前記成木保護具が伸びて、成木の成長を阻害することなく、成木の食害を保護することができる。
本発明に係る成木保護具の一つの実施形態を示す正面図である。 図1に示す成木保護具が横方向に引張られ伸ばされた状態を示す正面視の模式図である。 図1に示す成木保護具が成木に取付けられた状態を示す概略図である。 図3の要部拡大図である。 図1に示す成木保護具を構成する芯鞘型複合長繊維の構造を示す説明図である。
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照し、具体的に説明する。なお、本実施形態はあくまでも本発明を理解するための一例を示したに過ぎず、各部の形状、構造、材質等に関し、本実施形態以外のバリエーションが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で許容されていることは言うまでもない。
Pは本発明に係る成木保護具であって、成木Tに取付けられて鹿や熊等の野生動物の食害から成木Tを保護するものである。前記成木保護具Pは経糸1及び緯糸2が格子状に配列されたネット状編織物で形成されている。詳細には、前記経糸1は左上から右下に向けて斜めに配置され、前記緯糸2は右上から左下に向けて斜めに配置され、それぞれがほぼ等しい間隔をあけて少なくとも実質的に相互に平行に延在する経糸1と、それぞれがほぼ等しい間隔をあけて少なくとも実質的に相互に平行に延在する緯糸2とが、生じる隙間5、すなわち形成される編み目が縦に長い菱形の格子状を有するように相互に織り合わされている、或いは編み合わされて、篩(ふるい)の構造のネット状編織物となっている。
そして、前記成木保護具Pは伸縮自在となされていると共に、伸ばされた場合に原形の縦に長い菱形の格子状に復帰しようとして縮むようになされている。
そして、前記経糸1及び緯糸2の一部に、芯31成分が高融点重合体で形成され鞘32成分が低融点重合体で形成された芯鞘型複合長繊維3が少なくとも複数本集束されてなるマルチフィラメント糸4が含まれている。高融点重合体と低融点重合体の融点差(各重合体に明確な融点がない場合には軟化点差)は任意であるが、一般的に20℃以上であるのが好ましい。20℃未満であると、低融点重合体のみを溶融しにくくなるからである。各重合体の材料は任意であるが、一般的に、高融点重合体としてレギュラーポリエステルが用いられ、低融点重合体として低融点ポリエステルが用いられる。ポリエステルは耐候性に優れていると共に機械的強度も優れているためである。
前記芯鞘型複合長繊維3は、高融点重合体が芯31成分となり、低融点重合体が鞘32成分となっているもので、同心芯鞘型であっても偏心芯鞘型であってもよい。一般的に、熱処理によって長繊維が捲縮しにくい同心芯鞘型複合長繊維が用いられる。前記芯鞘型複合長繊維3の繊度は任意であるが、一般的に5〜15デシテックス程度である。5デシテックス未満であると集束する本数を極めて多くしなければならないので、煩雑である。また、15デシテックスを超えると、剛性が高くなるので、製編織しにくくなる。
前記経糸1及び緯糸2として用いられた前記マルチフィラメント糸4は、製編織後に低融点成分の融点以上で高融点成分の融点以下の温度で熱処理が施され、鞘32成分である低融点成分のみが溶融固化して、各芯鞘型複合長繊維3の相互間が融着する。これによって、前記経糸1及び緯糸2は一体になる。また、前記経糸1及び緯糸2の交差点でも鞘32成分である低融点成分のみが溶融し融着して、前記経糸1及び緯糸2が交差点において一体化される。
一方、芯31成分である高融点成分は溶融せずに、当初の長繊維形態を維持している。したがって、低融点成分が溶融固化したものの内部に、高融点成分よりなる芯31成分が長繊維形態を保って内在しており、得られるネット状編織物は、引張強度と剛性が高く、耐切創性(耐切断性)に優れたものとなり、鹿や熊等の野生動物の加える力によって、変形したり破断したり、食いちぎられたりしにくいものとなっている。
上述の通り、前記経糸1及び緯糸2は、その一部に前記芯鞘型複合長繊維3が少なくとも複数本集束されてなる前記マルチフィラメント糸4が含まれている。言い換えると、前記マルチフィラメント糸4は、複数本の前記芯鞘型複合長繊維3と別の合成樹脂製繊維とで形成されていてもよいし、全て前記芯鞘型複合長繊維3で形成されていてもよい。そして前記経糸1及び緯糸2は、数本の前記芯鞘型複合長繊維3と別のポリエステル繊維とで形成されているマルチフィラメント糸4で形成されていてもよいし、全て前記芯鞘型複合長繊維3で形成されているマルチフィラメント糸4で形成されていてもよく、またそれらを混合させて形成してもよい。
なお、前記別の合成樹脂製繊維の材質は、前記芯鞘型複合長繊維3の高融点重合体として芯の部分に用いられるレギュラーポリエステルでもよいし、低融点重合体として用いられる低融点ポリエステルでもよいし、別のポリエステルでもよいし、ポリエステル以外の合成樹脂でもよく、要は鞘32部分に用いられる低融点ポリエステルが溶融された際、それに溶着され固化後に一体化されるものであればよい。
前記経糸1、緯糸2の直径は約1〜4mm程度であり、隙間12の編み目幅、すなわち経糸1の相互間隔、或いは緯糸2の相互間隔は5mmから30mm、さらに好ましくは15mmから20mmである。
図2は、前記成木保護具Pが横方向に引張られ伸ばされた状態を示す正面視の模式図である。上述の通り、前記成木保護具Pを縦に長い菱形の格子状の隙間を備えた構造に形成することで、引張強度と剛性が高く、耐切創性(耐切断性)に優れ、かつ伸縮自在性を備えたものとすることができる。
例えばロール状に巻き取った前記成木保護具Pを山林等において造林された成木Tが生えている現地まで運搬し、前記成木Tの幹の周長よりも広い幅で、幹の所定の高さから根張り部分まで覆うのに十分な長さで切断する。そして、菱形の格子が縦に長くなる様に配置し、横方向に引っ張って前記成木保護具Pを伸ばしながら、前記成木Tの幹の所定の取付位置に合せて前記成木Tの周囲に巻き付け、重なり合った両側部を結束バンド等の止着部材Sにより結合する。
この止着部材Sは、前記成木保護具Pの両側部が開かないように所定間隔で複数箇所に取り付けられる。前記成木保護具Pを用いることによって、1枚のシート材で前記成木Tの幹部分から根張り部分までを覆うことができ、取り付け作業を効率的に行うことが可能となる。
前記成木保護具Pを横方向に引っ張って伸ばした状態で前記成木Tの幹の周囲に巻き付けた状態では、前記成木保護具Pは原形の菱形の格子状に復帰しようとして縮むため、前記成木Tの幹の表面に適度に緊張した状態で前記成木保護具Pに取付けられているので、前記成木保護具Pが容易に前記成木Tから外れることがない。また、前記成木Tが成長していくに従い幹の径が太くなっていくが、伸縮自在となされた前記成木保護具Pがそれに合せて横方向に伸ばされていくため、前記成木Tの成長を阻害することなく、長期間にわたって前記成木保護具Pが前記成木Tに巻き付けられた状態を維持することができる。
1 経糸
2 緯糸
3 芯鞘型複合長繊維
31 芯
32 鞘
4 マルチフィラメント糸
5 隙間
P 成木保護具
T 成木
S 止着部材

Claims (2)

  1. 成木に取付けられて鹿や熊等の野生動物の食害から成木を保護する成木保護具が、経糸及び緯糸が格子状に配列されたネット状編織物で形成され、前記経糸及び緯糸の一部に、芯成分が高融点重合体で形成され鞘成分が低融点重合体で形成された芯鞘型複合長繊維が少なくとも複数本集束されてなるマルチフィラメント糸が含まれて、前記鞘成分が溶融固化されることによって、前記マルチフィラメント糸を構成する前記芯鞘型複合長繊維の相互間が前記経糸及び緯糸の交差点において融着され一体化されていることを特徴とする成木保護具。
  2. 前記成木保護具は伸縮自在となされていると共に、伸ばされた場合に原形の格子状に復帰しようとして縮むようになされていることを特徴とする請求項1に記載の成木保護具。
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