JP2018014387A - 基板、フレキシブルプリント配線板用基材、フレキシブルプリント配線板及び基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、電気特性の温度依存性が少なく、かつ伝送特性に優れる基板及びその製造方法と、この基板を用いたフレキシブルプリント配線板用基材及びフレキシブルプリント配線板との提供を目的とする。【解決手段】本発明の一実施形態に係る基板は、マトリックスとこのマトリックス中に含まれる層状の補強材とを含有し、上記マトリックスの主成分がフッ素樹脂であるフッ素樹脂層を備える基板であって、上記フッ素樹脂層における上記補強材の体積比率が15体積%以上60体積%以下である。本発明の別の一実施形態に係るフレキシブルプリント配線板用基材は、上述の基板と、この基板の一方の面側に積層される導電層とを備える。本発明のさらに別の一実施形態に係るフレキシブルプリント配線板用基材は、上述の基板と、この基板の一方の面側に積層される導電パターン層とを備える。【選択図】図1
Description
本発明は、基板、フレキシブルプリント配線板用基材、フレキシブルプリント配線板及び基板の製造方法に関する。
近年、情報通信量は増大する一方であり、これに応えるため、例えばICカード、携帯電話端末等の機器においてマイクロ波、ミリ波といった高周波領域での通信が盛んになっている。このような機器には、高周波基板を用いたプリント配線板が用いられている。
一般的なプリント配線板において、伝送速度V及び伝送損失αdは、基板の比誘電率εr、周波数f及び誘電正接tanδとそれぞれ以下の関係(下記式(1)及び式(2))を満たす。
つまり、伝送速度Vを大きくすると共に伝送損失αdを小さくするためには、基板の比誘電率εrを小さくすることが望まれる。このため、基板の材料として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビリニデン(PVDF)等のフッ素樹脂を用いることが提案されている(特開2001−7466号公報、及び特許第4296250号公報参照)。これらのフッ素樹脂を用いた基板は、比誘電率εrが比較的小さいため、高周波基板として好適に使用することができる。
近年、フッ素樹脂を用いた基板は、その比誘電率εrの低さを活かして車載用ミリ波レーダー等のミリ波レーダーにも適用されるようになっている。このミリ波レーダーがレーダー特性を安定的に発揮するためには、基板の比誘電率εrをなるべく一定に保つことが望ましい。
しかしながら、上記従来の基板は、温度の上昇に伴って比誘電率εrが低下し易い傾向にある。そのため、上記従来の基板を用いたミリ波レーダーは、屋外で使用する場合や、使用に伴って温度上昇する可能性がある場合等に、安定的にレーダー特性を発揮できないおそれがある。
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、電気特性の温度依存性が少なく、かつ伝送特性に優れる基板、フレキシブルプリント配線板用基材及びフレキシブルプリント配線板、並びにそのような基板の製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明の一態様に係る基板は、マトリックスとこのマトリックス中に含まれる層状の補強材とを含有し、上記マトリックスの主成分がフッ素樹脂であるフッ素樹脂層を備える基板であって、上記フッ素樹脂層における上記補強材の体積比率が15体積%以上60体積%以下である。
また、本発明の別の態様に係るフレキシブルプリント配線板用基材は、上述の基板と、この基板の一方の面側に積層される導電層とを備える。
本発明のさらに別の態様に係るフレキシブルプリント配線板は、上述の基板と、この基板の一方の面側に積層される導電パターン層とを備える。
本発明のさらに別の態様に係る基板の第1の製造方法は、層状の補強材の両面にフッ素樹脂を主成分とする樹脂フィルムを重畳する重畳工程と、上記重畳工程で得られた重畳体を真空吸引しつつ熱圧着する熱圧着工程とを備え、上記重畳体における上記補強材の体積比率を15体積%以上60体積%以下とする。
本発明のさらに別の態様に係る基板の第2の製造方法は、不織布又は織布である補強材の表面及び内部にフッ素樹脂を主成分とする組成物を含浸させる含浸工程と、含浸させた上記組成物を加熱する加熱工程とを備え、上記組成物の含む固形分と上記補強材との合計における上記補強材の体積比率を15体積%以上60体積%以下とする。
本発明の基板、フレキシブルプリント配線用基材及びフレキシブルプリント配線板は、電気特性の温度依存性が少なく、かつ伝送特性に優れる。本発明の基板の製造方法は、電気特性の温度依存性が少なく、かつ伝送特性に優れる基板を容易かつ確実に製造できる。
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係る基板は、マトリックスとこのマトリックス中に含まれる層状の補強材とを含有し、上記マトリックスの主成分がフッ素樹脂であるフッ素樹脂層を備える基板であって、上記フッ素樹脂層における上記補強材の体積比率(層状の補強材の体積比率)が15体積%以上60体積%以下である。
本発明の一態様に係る基板は、マトリックスとこのマトリックス中に含まれる層状の補強材とを含有し、上記マトリックスの主成分がフッ素樹脂であるフッ素樹脂層を備える基板であって、上記フッ素樹脂層における上記補強材の体積比率(層状の補強材の体積比率)が15体積%以上60体積%以下である。
本発明者らは、上記課題解決に向けて鋭意検討し、以下の点に着目した。まず、誘電体である基板の比誘電率εrは、真空の誘電率ε0に対する誘電率εの比(ε/ε0)で表され、誘電率εは、ε=C(d/S)で表される。この式中、Cは静電容量、dは誘電体の厚み、Sは誘電体の面積を表わす。このように、比誘電率εrは誘電体の厚みに依存することから、基板の温度が変化した際にも比誘電率εrをなるべく一定に保つためには、基板の厚み方向(Z軸方向)での線膨張率(熱膨張率)を軽減する必要がある。これに対し、フッ素樹脂を用いる基板は線膨張率が比較的大きい傾向にあることから、上記課題を解決するためには、フッ素樹脂を用いる基板において線膨張の軽減化を図ることが重要であると考えた。以上の知見に基づきさらに検討を進めた結果、本発明者らは本発明を完成させた。
当該基板は、マトリックスの主成分がフッ素樹脂であるので、高周波領域に用いた際の伝送損失を抑制することができる。また、当該基板は、マトリックス中に補強材を含有し、上記体積比率が上記範囲と比較的大きいため、強度及び寸法安定性を確保しつつ、厚み方向(Z軸方向)での基板の線膨張率を低減することができる。その結果、当該基板は、比誘電率に代表される電気特性の温度依存性が少ない。
上記補強材が不織布又は織布であるとよい。上記補強材が不織布又は織布であることで、マトリックスの主成分であるフッ素樹脂が補強材に含浸した含浸構造を形成でき、その結果、強度及び寸法安定性を向上すると共に、反りの発生を抑制できる。
上記補強材の主成分がガラス又は合成樹脂であるとよい。このように、上記補強材の主成分が熱膨張し難いガラス又は合成樹脂であることで、線膨張率をより確実に低減することができ、その結果、電気特性の温度依存性をより低減することができる。
上記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)又はテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を50質量%以上含有するとよい。上記フッ素樹脂がFEP又はPFAを上記下限以上含有することで、電気特性をより向上し、また電気特性の温度依存性をより低減できる。この理由については明確ではないが、例えばFEP及びPFAの結晶化度が小さく、さらに結晶構造の変化に伴う電気特性の変化が小さいためであると推測できる。
上記フッ素樹脂層が、上記補強材を含む補強材層と、この補強材層の一方の面又は両面に積層され、上記マトリックスにより形成されるマトリックス層とを備える多層構造を有するとよい。この場合、上記マトリックス層におけるテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)及びテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)の合計含有量としては、90質量%以上が好ましく、上記マトリックス層の平均厚みとしては10μm以上が好ましい。このように、上記フッ素樹脂層が、上記補強材を含む補強材層と、この補強材層の一方の面又は両面に積層され、上記マトリックスにより形成されるマトリックス層とを備える多層構造を有し、上記マトリックス層におけるFEP及びPFAの合計含有量と、上記マトリックス層の平均厚みとを上記範囲とすることで、例えば70GHz以上のミリ波領域で使用する際の伝送損失を効果的に抑制できる。この理由は明確ではないが、例えば補強材の増量によって基板の合成誘電率及び合成誘電正接が増加すると見かけ上は伝送損失が増大すると考えられるが、基板の厚み方向に誘電特性の異方性がある場合には上記伝送損失の増大が抑制されるためであると推察される。
当該基板の30℃かつ10GHzにおける比誘電率としては、2.0以上4.5以下が好ましい。このように、当該基板の30℃かつ10GHzにおける比誘電率を上記範囲とすることで、優れた伝送特性を確実に発揮することができる。
当該基板の−40℃以上120℃以下における厚み方向での平均線膨張係数としては、250ppm/℃以下が好ましい。このように、当該基板の−40℃以上120℃以下における厚み方向での平均線膨張係数を上記上限以下とすることで、電気特性の温度依存性をより確実に低減できる。
当該基板は、シロキサン結合及び親水性官能基を含む改質層を一方の面に有するとよい。このように、当該基板がシロキサン結合及び親水性官能基を含む改質層を一方の面に有することで、当該基板の上記一方の面に積層される導電層等との密着性を向上できる。
本発明の別の態様に係るフレキシブルプリント配線板用基材は、上述の基板と、この基板の一方の面側に積層される導電層とを備える。
当該フレキシブルプリント配線板用基材は、上述の基板を備えるため、電気特性の温度依存性が少なく、かつ伝送特性に優れる。
上記導電層が銅箔であるとよい。銅箔は、導電性及び可撓性に優れ、かつ比較的安価である。そのため、上記導電層を銅箔とすることで、優れた伝送特性と、良好なフレキシブル性と、材料コストの低さとをバランスよく達成できる。
上記基板と上記導電層との剥離強度としては、8N/cm以上が好ましい。このように、上記基板と上記導電層との剥離強度を上記下限以上とすることで、導電層の剥離をより確実に抑制することができる。
当該フレキシブルプリント配線板用基材の加熱変形性としては、0.5%以下が好ましい。当該フレキシブルプリント配線板用基材の加熱変形性を上記上限以下とすることで、寸法安定性をより向上でき、その結果、電気特性の温度依存性をより低減できる。
本発明のさらに別の態様に係るフレキシブルプリント配線板は、上述の基板と、この基板の一方の面側に積層される導電パターン層とを備える。当該フレキシブルプリント配線板は、上述の基板を用いたものであるため、電気特性の温度依存性が少なく、かつ伝送特性に優れる。
本発明のさらに別の態様に係る基板の第1の製造方法は、層状の補強材の両面にフッ素樹脂を主成分とする樹脂フィルムを重畳する重畳工程と、上記重畳工程で得られた重畳体を真空吸引しつつ熱圧着する熱圧着工程とを備え、上記重畳体における上記補強材の体積比率を15体積%以上60体積%以下とする。
当該基板の第1の製造方法は、フッ素樹脂を主成分とするマトリックスとこのマトリックス中に含まれる層状の補強材とを含有するフッ素樹脂層を備え、上記フッ層樹脂層における補強材の体積比率が比較的大きい基板を容易かつ確実に製造できる。この基板は、マトリックスの主成分がフッ素樹脂であるため伝送特性に優れ、かつ補強材を比較的多く含むことで線膨張が抑制されるため電気特性の温度依存性が少ない。
上記熱圧着の開始前から真空吸引を開始することが好ましい。このように、上記熱圧着の開始前から真空吸引を開始することで、層状の補強材と上記樹脂フィルムとがより強固に一体化した基板を得ることができる。
本発明のさらに他の態様に係る基板の第2の製造方法は、不織布又は織布である補強材の表面(上面及び下面)及び内部にフッ素樹脂を主成分とする組成物を含浸させる含浸工程と、上記含浸させた組成物を加熱する加熱工程とを備え、上記組成物の含む固形分と、上記補強材との合計における上記補強材の体積比率を15体積%以上60体積%以下とする。
当該基板の第2の製造方法は、フッ素樹脂を主成分とするマトリックスとこのマトリックス中に含まれる層状の補強材とを含有するフッ素樹脂層を備え、上記フッ層樹脂層における補強材の体積比率が比較的大きい基板を容易かつ確実に製造できる。この基板は、マトリックスの主成分がフッ素樹脂であるため伝送特性に優れ、かつ補強材を比較的多く含むことで線膨張が抑制されるため電気特性の温度依存性が少ない。また、上記補強材が不織布又は織布であることで、マトリックスの主成分であるフッ素樹脂が補強材に含浸した含浸構造を形成でき、その結果、強度及び寸法安定性を向上すると共に、反りの発生を抑制できる。
ここで「主成分」とは、最も含有量が多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上、好ましくは90質量%以上の成分を指す。「補強材の体積比率」とは、平面視で補強材が含まれる領域における体積比率を意味する。「比誘電率」とは、JIS−C2138:2007「電気絶縁材料−比誘電率及び誘電正接の測定方法」に準拠する空洞共振器摂道法により、相対湿度50%の条件で測定される厚さ方向の値である。「線膨張係数」とは、レーザー干渉法により測定した値を意味し、「−40℃以上120℃以下における平均線膨張係数」とは、−40℃から120℃まで20℃間隔で測定した線膨張率の算術平均値を意味する。「剥離強度」とは、JIS−K6854−2:1999「接着剤−剥離接着強さ試験方法−2部:180度剥離」に準拠する試験方法により得られる剥離強度を指す。「加熱変形性」とは、JIS−C6471:1995「フレキシブルプリント配線板用銅張積層板試験方法」の「寸法安定性」に準拠して測定される値である。具体的には、温度150℃、時間30分の条件での加熱前後の銅箔の寸法変化率を測定することにより求められる値である。ここで、寸法変化率は、下記式より求められる。
寸法変化率(%)=(加熱後の標点間距離と加熱前の標点間距離との差の絶対値)/(加熱前の標点間距離)×100
寸法変化率(%)=(加熱後の標点間距離と加熱前の標点間距離との差の絶対値)/(加熱前の標点間距離)×100
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態に係る基板、フレキシブルプリント配線板用基材、フレキシブルプリント配線板及び基板の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
以下、本発明の実施形態に係る基板、フレキシブルプリント配線板用基材、フレキシブルプリント配線板及び基板の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
<基板>
図1に示す当該基板1は、マトリックスとこのマトリックス中に含まれる層状の補強材とを含有し、上記マトリックスの主成分がフッ素樹脂であるフッ素樹脂層2と、このフッ素樹脂層2の一方の面に積層される改質層4とを備える。フッ素樹脂層2は、厚み方向の中間に積層され、上記層状の補強材を含む補強材層3と、この補強材層3の両面に積層され、上記マトリックスで形成される一対のマトリックス層2aとにより構成される。つまり、フッ素樹脂層2は、上記補強材を含む補強材層3と、この補強材層の両面に直接積層され、上記マトリックスにより形成される一対のマトリックス層2aとを備える3層構造を有する。但し、補強材層3は、上記補強材が例えば不織布、織布等である場合には、上記補強材のみを含む層であっても、上記補強材とこの補強材に含浸されるマトリックスとを含む層であってもよい。一方、補強材層3は、上記補強材がフィルム状である場合には、通常上記補強材のみを含む層である。当該基板1は、上記マトリックスの主成分がフッ素樹脂であるので、高周波基板として用いた際の伝送損失を抑制できる。また、当該基板1は、マトリックス中に補強材を含有するので、強度及び寸法安定性を確保できる。
図1に示す当該基板1は、マトリックスとこのマトリックス中に含まれる層状の補強材とを含有し、上記マトリックスの主成分がフッ素樹脂であるフッ素樹脂層2と、このフッ素樹脂層2の一方の面に積層される改質層4とを備える。フッ素樹脂層2は、厚み方向の中間に積層され、上記層状の補強材を含む補強材層3と、この補強材層3の両面に積層され、上記マトリックスで形成される一対のマトリックス層2aとにより構成される。つまり、フッ素樹脂層2は、上記補強材を含む補強材層3と、この補強材層の両面に直接積層され、上記マトリックスにより形成される一対のマトリックス層2aとを備える3層構造を有する。但し、補強材層3は、上記補強材が例えば不織布、織布等である場合には、上記補強材のみを含む層であっても、上記補強材とこの補強材に含浸されるマトリックスとを含む層であってもよい。一方、補強材層3は、上記補強材がフィルム状である場合には、通常上記補強材のみを含む層である。当該基板1は、上記マトリックスの主成分がフッ素樹脂であるので、高周波基板として用いた際の伝送損失を抑制できる。また、当該基板1は、マトリックス中に補強材を含有するので、強度及び寸法安定性を確保できる。
ここで「フッ素樹脂」とは、高分子鎖の繰り返し単位を構成する炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1つが、フッ素原子又はフッ素原子を有する有機基(以下、「フッ素原子含有基」ともいう)で置換されたものをいう。フッ素原子含有基は、直鎖状又は分岐状の有機基中の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されたものであり、例えばフルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、フルオロポリエーテル基等が挙げられる。
上記「フルオロアルキル基」とは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を意味し、「パーフルオロアルキル基」等が例示できる。具体的なフルオロアルキル基としては、例えばアルキル基の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基、アルキル基の末端の1つの水素原子以外の水素原子がフッ素原子で置換された基等が挙げられる。
上記「フルオロアルコキシ基」とは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルコキシ基を意味し、「パーフルオロアルコキシ基」等が例示できる。具体的なフルオロアルコキシ基としては、例えばアルコキシ基の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基、アルコキシ基の末端の1つの水素原子以外の水素原子がフッ素原子で置換された基等が挙げられる。
上記「フルオロポリエーテル基」とは、繰り返し単位としてオキシアルキレン単位を有し、末端にアルキル基又は水素原子を有する1価の基であって、このアルキレンオキシド鎖又は末端のアルキル基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された1価の基を意味する。フルオロポリエーテル基としては、例えば繰り返し単位として複数のパーフルオロアルキレンオキシド鎖を有する「パーフルオロポリエーテル基」等が例示できる。
上記フッ素樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)や、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びビニリデンフルオライドの3種類のモノマーにより形成される熱可塑性フッ素樹脂(THV)や、フルオロエラストマー等が挙げられる。また、これら化合物を含む混合物やコポリマーも上記フッ素樹脂として使用できる。
中でも、上記フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)及びテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が好ましい。上記フッ素樹脂がFEP又はPFAを含有する場合、上記フッ素樹脂におけるこれらの樹脂の含有量の下限としては、50質量%が好ましく、90質量%がより好ましい。FEP及びPFAは、比誘電率及び熱膨張率が比較的低い材料であるため、これらのFEP又はPFAを上記マトリックスの主成分とすることで、伝送損失をより抑制できる。これは、FEP及びPFAは、結晶化度が小さく、さらに結晶構造の変化に伴う電気特性の変化が小さいためと推測される。
詳しく説明すると、PTFEは19℃及び30℃において結晶構造が特異的に変化して、線膨張率や比重が変化し、電気特性も大きく変化する(例えば「ふっ素樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社、1990年発行)参照)。さらに、PTFEの結晶化度は60%以上85%以下であり、PFAの結晶化度は50%以上60%以下であり、FEPの結晶化度は40%以上50%以下である。このように、FEP及びPFAの結晶化度はPTFEの結晶化度より小さい。ゆえに、PFA及びFEPは、結晶化度が小さく、仮に結晶構造の特異的な変化が起こったとしても電気特性等の変化への影響は少ないと推測される。このため、PFA及びFEPは、PTFEと比べて、温度変化による電気特性の変動幅が小さく、電気特性が安定している。つまり、PFA及びFEPは、PTFEと比べて、電気特性の温度依存性が良好である。
上記マトリックスには、上記フッ素樹脂以外の成分(任意成分)が含まれてもよい。この任意成分としては、例えば上記フッ素樹脂以外の合成樹脂、難燃剤、難燃助剤、顔料、酸化防止剤、反射付与剤、隠蔽剤、滑剤、加工安定剤、可塑剤、発泡剤等が挙げられる。上記マトリックス中の任意成分の含有量の上限としては、20質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。
[フッ素樹脂層]
フッ素樹脂層2の平均厚みの上限としては、2.7mmが好ましく、1.0mmがより好ましい。一方、上記平均厚みの下限としては、1μmが好ましく、30μmがより好ましく、100μmがさらに好ましい。上記平均厚みが上記上限を超えると、当該基板1が十分な可撓性を得られないおそれがある。逆に、上記平均厚みが上記下限未満であると、当該基板1の取り扱いが難しくなるおそれがある。
フッ素樹脂層2の平均厚みの上限としては、2.7mmが好ましく、1.0mmがより好ましい。一方、上記平均厚みの下限としては、1μmが好ましく、30μmがより好ましく、100μmがさらに好ましい。上記平均厚みが上記上限を超えると、当該基板1が十分な可撓性を得られないおそれがある。逆に、上記平均厚みが上記下限未満であると、当該基板1の取り扱いが難しくなるおそれがある。
なお、本明細書において、「平均厚み」とは、対象物の厚み方向に切断した断面における測定長さ内の表面側の界面の平均線と、裏面側の界面の平均線との間の距離を指す。ここで、「平均線」とは、界面に沿って引かれる仮想直線であって、界面とこの仮想直線とによって区画される山の総面積(仮想直線よりも上側の総面積)と谷の総面積(仮想直線よりも下側の総面積)とが等しくなるような線を意味する。
(マトリックス層)
マトリックス層2aの30℃かつ10GHzにおける比誘電率の上限としては、2.7が好ましく、2.5がより好ましい。一方、上記比誘電率の下限としては、1.2が好ましく、1.4がより好ましい。上記比誘電率が上記上限を超えると、伝送損失を十分に小さくできないおそれがあると共に、十分な伝送速度が得られないおそれがある。逆に、上記比誘電率が上記下限未満であると、導電層を一方の面側に積層した当該基板1をパターン状にエッチングして回路を設ける際に回路幅を十分に小さくできないおそれがある。
マトリックス層2aの30℃かつ10GHzにおける比誘電率の上限としては、2.7が好ましく、2.5がより好ましい。一方、上記比誘電率の下限としては、1.2が好ましく、1.4がより好ましい。上記比誘電率が上記上限を超えると、伝送損失を十分に小さくできないおそれがあると共に、十分な伝送速度が得られないおそれがある。逆に、上記比誘電率が上記下限未満であると、導電層を一方の面側に積層した当該基板1をパターン状にエッチングして回路を設ける際に回路幅を十分に小さくできないおそれがある。
マトリックス層2aの−40℃以上120℃以下における厚み方向での平均線膨張係数の上限としては、120ppm/℃が好ましい。一方、上記平均線膨張係数の下限としては、20ppm/℃が好ましい。上記平均線膨張係数が上記上限を超えると、フッ素樹脂層2が温度変化によって体積変化を生じ易くなり、反りの発生を効果的に抑制できないおそれがある。逆に、上記平均線膨張係数が上記下限未満であると、材料選択の幅が狭まるおそれがある。
補強材層3によって上下2層に分割されている一対のマトリックス層2aは、略同じ厚みを有することが好ましい。一対のマトリックス層2aの厚みが大きく異なると、熱膨張によりフッ素樹脂層2で反りを生じるおそれがある。なお「略同じ厚み」とは、一方の平均厚みに対する他方の平均厚みの比が0.9以上1.1以下である場合をいう。
各マトリックス層2aの平均厚みの上限としては、1mmが好ましく、100μmがより好ましく、70μmがさらに好ましい。一方、上記平均厚みの下限としては、0.5μmが好ましく、5μmがより好ましく、30μmがさらに好ましい。上記平均厚みが上記上限を超えると、可撓性が要求される電子機器への適用が困難となるおそれがある。逆に、上記平均厚みが上記下限未満であると、当該基板1の誘電正接が大きくなり、伝送損失を十分に小さくできないおそれや十分な伝送速度が得られないおそれがある。
マトリックス層2aにおけるFEP及びPFAの合計含有量としては、90質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。この場合、マトリックス層2aの平均厚みのとしては10μm以上が好ましい。このように、マトリックス層2aにおける上記合計含有量と平均厚みとを上記範囲とすることで、当該基板1を例えば70GHz以上のミリ波領域で使用する際の伝送損失を効果的に抑制できる。
(補強材層)
補強材層3は、フィルム、不織布、織布(以下、不織布及び織布をまとめて「クロス」ともいう)等の層状の補強材を含む。但し、補強材層3は、上記補強材がクロス状である場合等にはマトリックスが含まれていてもよい。上記補強材としては、不織布及び織布が好ましい。上記補強材として不織布又は織布を用いることで、マトリックスの主成分であるフッ素樹脂が補強材に含浸した含浸構造を形成でき、その結果、強度及び寸法安定性を向上すると共に、反りの発生を抑制できる。
補強材層3は、フィルム、不織布、織布(以下、不織布及び織布をまとめて「クロス」ともいう)等の層状の補強材を含む。但し、補強材層3は、上記補強材がクロス状である場合等にはマトリックスが含まれていてもよい。上記補強材としては、不織布及び織布が好ましい。上記補強材として不織布又は織布を用いることで、マトリックスの主成分であるフッ素樹脂が補強材に含浸した含浸構造を形成でき、その結果、強度及び寸法安定性を向上すると共に、反りの発生を抑制できる。
フッ素樹脂層2における上記補強材の体積比率の上限としては、60体積%であり、40体積%が好ましく、33体積%がさらに好ましい。一方、上記補強材の体積比率の下限としては、15体積%であり、20体積%が好ましく、27体積%がより好ましい。上記補強材の体積比率が上記範囲であると、厚み方向(Z軸方向)での当該基板1の線膨張を抑制することができ、その結果、電気特性の温度依存性を低減することができる。上記補強材の体積比率が上記下限未満であると、当該基板1の熱膨張を十分に抑制することが困難となり、電気特性の温度依存性が顕著となってしまうおそれがある。逆に、上記補強材の体積比率が上記上限を超えると、当該基板1を高周波基板として用いた際に、伝送損失が大きくなるおそれがある。
また、当該基板1は、上述の通り比較的多量に補強材を含有することにより、厚み方向の線膨張係数だけでなく、平面方向の線膨張係数も比較的低い傾向にある。そのため、当該基板1は、後述する導電層を積層した後の寸法変化を抑制できるため、当該基板1及び導電層の密着性も向上できる。
上記補強材は、当該基板1の厚み方向の中間に主に配設され、これにより1層の補強材層を形成している。このように、上記補強材が厚み方向の中間に主に含まれることで、当該基板1の強度及び寸法安定性をより向上できると共に、反りの発生をより効果的に抑制できる。
上記補強材としては、マトリックス層2aよりも線膨張係数が小さいものであれば特に限定されるものではないが、絶縁性と、フッ素樹脂の融点で溶融流動しない耐熱性と、フッ素樹脂と同等以上の引っ張り強さと、耐腐食性とを有することが望ましい。このような観点から、上記補強材の主成分としては、ガラス及び合成樹脂が好ましい。これにより、当該基板1の強度及び寸法安定性を確実に向上できると共に、反りの発生を抑制できる。
このような補強材の具体例としては、例えばガラス繊維をクロス状に加工したガラスクロス、このようなガラスクロスにフッ素樹脂を含浸させたフッ素樹脂含有ガラスクロス、金属、セラミックス等の無機繊維をクロス状に加工した無機クロス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、アラミド、液晶ポリマー(LCP)等の合成樹脂繊維をクロス状に加工した樹脂クロス、ポリテトラフルオロエチレン、液晶ポリマー、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、熱硬化樹脂、架橋樹脂等を主成分とする耐熱フィルムなどが挙げられる。なお、上記樹脂クロス及び耐熱フィルムとしては、後述する基板の製造方法で熱圧着する工程の温度以上の融点(又は熱変形温度)を有するものが好ましい。上記ガラスクロス、無機クロス及び樹脂クロスが織布である場合、その織り方としては、フッ素樹脂層2を薄くするためには平織りが好ましいが、フッ素樹脂層2を屈曲可能とするためには綾織り及びサテン織りが好ましい。この他、公知の織り方を適用することができる。
上記ガラスクロスを構成するガラス繊維としては、例えばJIS−R3410:2006に規定されるEガラス、ECRガラス、ARガラス、Aガラス、Sガラス、Cガラス、Dガラスや、Eガラスよりも低誘電率であるLガラス等が挙げられる。
上記フッ素樹脂含有ガラスクロスにおいてガラスクロスに含浸しているフッ素樹脂は、当該基板1のマトリックスと同種のフッ素樹脂でも別種のフッ素樹脂でもよい。
上記補強材としては、強度及び寸法安定性をさらに向上させる観点から、ガラスクロス及び樹脂クロスが好ましく、Eガラス又はLガラスを用いたガラスクロスと、LCPを用いた樹脂クロスとがより好ましい。
補強材層3は、1枚の層状の補強材のみを含んでも、重なりあった複数枚の層状の補強材を含んでもよい。上記補強材の枚数の上限としては、6枚が好ましく、4枚がより好ましい。一方、上記補強材の枚数の下限としては、2が好ましい。補強材の枚数を上記範囲とすることで、フッ素樹脂層2における上記補強材の体積比率を容易かつ確実に上述の範囲に調節することができる。
1枚の上記補強材の平均厚みの上限としては、200μmが好ましく、50μmがより好ましい。一方、上記補強材の平均厚みの下限としては、5μmが好ましく、15μmがより好ましい。上記補強材の平均厚みが上記上限を超えると、当該基板1の可撓性が低下するおそれがある。逆に、上記補強材の平均厚みが上記下限未満であると、当該基板1の製造時に多数の補強材を使用する必要が生じ、製造効率が低下するおそれがある。
上記ガラスクロスを形成するガラス繊維の密度の上限としては、5g/m3が好ましく、3g/m3がより好ましい。一方、上記密度の下限としては、1g/m3が好ましく、2g/m3がより好ましい。上記密度を上記範囲とすることで、当該基板1の強度及び寸法安定性を確実に向上できると共に、反りの発生を抑制できる。ここで「ガラス繊維の密度」とは、JIS−L1013:2010「化学繊維フィラメント糸試験方法」に準拠して測定した値を意味する。後述する「ガラス繊維の引張強度」及び「ガラス繊維の最大伸び率」についても同様に定義されるものとする。
上記ガラスクロスを形成するガラス繊維の引張強度の上限としては、10GPaが好ましく、5GPaがより好ましい。一方、上記引張強度の下限としては、1GPaが好ましく、2GPaがより好ましい。上記引張強度を上記範囲とすることで、当該基板1の強度及び寸法安定性を確実に向上できると共に、反りの発生を抑制できる。
上記ガラスクロスを形成するガラス繊維の引張弾性率の上限としては、200GPaが好ましく、100GPaがより好ましい。一方、上記引張弾性率の下限としては、10GPaが好ましく、50GPaがより好ましい。上記引張弾性率を上記範囲とすることで、当該基板1の強度及び寸法安定性を確実に向上できると共に、反りの発生を抑制できる。ここで「引張弾性率」とは、引張応力とひずみとの関係を表わす複素弾性率であり、引張試験機により測定される値を意味する。
上記ガラスクロスを形成するガラス繊維の最大伸び率の上限としては、20%が好ましく、10%がより好ましい。一方、上記最大伸び率の下限としては、1%が好ましく、3%がより好ましい。上記最大伸び率を上記範囲とすることで、当該基板1の強度及び寸法安定性を確実に向上できると共に、反りの発生を抑制できる。
上記ガラスクロスを形成するガラス繊維の軟化点の上限としては、1200℃が好ましく、1000℃がより好ましい。一方、上記軟化点の下限としては、700℃が好ましく、800℃がより好ましい。上記軟化点が上記上限を超えると、材料選択の幅が狭まるおそれがある。逆に、上記軟化点が上記下限未満であると、当該基板1の製造時にガラス繊維が軟化して反り等が生じるおそれがある。ここで「軟化点」とは、JIS−K7234:1986に規定する環球法により測定した軟化点を意味する。
上記補強材の30℃かつ10GHzにおける比誘電率の上限としては、10が好ましく、6がより好ましく、5がさらに好ましい。一方、上記比誘電率の下限としては、1.2が好ましく、1.5がより好ましく、1.8がさらに好ましい。上記比誘電率が上記上限を超えると、伝送損失を十分に小さくできないおそれがあると共に、十分な伝送速度が得られないおそれがある。逆に、上記比誘電率が上記下限未満であると、材料選択の幅が狭まるおそれがある。
上記補強材の−40℃以上120℃以下における厚み方向での平均線膨張係数の上限としては、5ppm/℃が好ましく、4.7ppm/℃がより好ましい。一方、上記平均線膨張係数の下限としては、−100ppm/℃が好ましく、0ppm/℃がより好ましい。上記平均線膨張係数が上記上限を超えるか、又は上記平均線膨張係数が上記下限未満であると、当該基板1における電気特性の温度依存性を十分に低減できないおそれがある。なお、当該基板1は、マトリックス層2aを構成するフッ素樹脂の平均線膨張係数が比較的大きいため、上記補強材の平均線膨張係数を比較的大きな負の値としても、温度上昇に伴う収縮を抑制できる。
マトリックス層2aの平均線膨張係数に対する上記補強材の平均線膨張係数の比の上限としては、0.95が好ましく、0.1がより好ましい。一方、上記比の下限としては、0.001が好ましく、0.002がより好ましい。上記比が上記上限を超えると、当該基板1における電気特性の温度依存性を十分に低減できないおそれがある。逆に、上記線膨張係数が上記下限未満であると、材料選択の幅が狭まるおそれがある。
補強材層3の平均厚みの上限としては、200μmが好ましく、100μmがより好ましい。一方、上記平均厚みの下限としては、10μmが好ましく、30μmがより好ましく、60μmがさらに好ましい。上記平均厚みが上記上限を超えると、当該基板1の可撓性が低下するおそれがある。逆に、上記平均厚みが上記下限未満であると、当該基板1の電気特性の温度依存性を十分に低減できないおそれがある。
マトリックス層2aの平均厚みに対する上記補強材層3の平均厚みの比の上限としては、30が好ましく、2がより好ましく、0.5がさらに好ましい。一方、上記比の下限としては、0.001が好ましく、0.1がより好ましく、0.2がさらに好ましい。上記比が上記上限を超えると、十分な可撓性が得られないおそれがある。逆に、上記比が上記下限未満であると、当該基板1での反りの発生を効果的に抑制できないおそれがある。
なお、フッ素樹脂層2は、中空構造を有してもよい。フッ素樹脂層2が中空構造を有することで、当該基板1の比誘電率をより小さくし、伝送損失をより効果的に抑制できる。
(改質層)
当該基板1は、一方の面に改質層4を有する。改質層4は、シロキサン結合(Si−O−Si)及び親水性有機官能基を含む。そのため、当該基板1の改質層4側の表面は、反応性に富む。このように、当該基板1は、改質層4を一方の面に有することで、上記一方の面に積層される導電層等との密着性を向上し、剥離を抑制できる。ここで「反応性に富む」には、接着性等の物理的作用が大きいことを含む。つまり、改質層4の表面は表面活性である。また、改質層4は、シロキサン結合構造を有することで経時的に安定であるため、表面改質状態(表面活性である状態)が安定している。また、「親水性官能基」とは、電気陰性度の大きい原子から構成される官能基であって、親水性を有するものをいう。
当該基板1は、一方の面に改質層4を有する。改質層4は、シロキサン結合(Si−O−Si)及び親水性有機官能基を含む。そのため、当該基板1の改質層4側の表面は、反応性に富む。このように、当該基板1は、改質層4を一方の面に有することで、上記一方の面に積層される導電層等との密着性を向上し、剥離を抑制できる。ここで「反応性に富む」には、接着性等の物理的作用が大きいことを含む。つまり、改質層4の表面は表面活性である。また、改質層4は、シロキサン結合構造を有することで経時的に安定であるため、表面改質状態(表面活性である状態)が安定している。また、「親水性官能基」とは、電気陰性度の大きい原子から構成される官能基であって、親水性を有するものをいう。
改質層4は、フッ素樹脂層2のマトリックスが含む上記フッ素樹脂に、例えば親水性官能基を有し、かつシロキサン結合を生成する改質剤(シランカップリング剤)が結合して形成される。この場合、改質層4において、例えば親水性官能基がシロキサン結合を構成するSi原子に結合している。ここで、フッ素樹脂と改質剤との間の結合は、共有結合だけで構成される場合、共有結合及び水素結合を含む場合等がある。
改質層4において、シロキサン結合を構成するSi原子(以下、この原子を「シロキサン結合のケイ素原子」ともいう)は、例えば窒素原子、炭素原子、酸素原子、及びイオウ原子のいずれか少なくとも1つの原子を介して上記フッ素樹脂の炭素原子と共有結合する。具体的には、シロキサン結合のケイ素原子は、例えば−O−、−S−、−S−S−、−(CH2)n−、−NH−、−(CH2)n−NH−、−(CH2)n−O−(CH2)m−(n及びmは1以上の整数である)等の原子団を介して上記フッ素樹脂の炭素原子と結合する。
上記親水性官能基としては、水酸基、カルボキシ基、カルボニル基、アミノ基、アミド基、スルフィド基、スルホニル基、スルホ基、スルホニルジオキシ基、エポキシ基、メタクリル基、メルカプト基、及びこれらの組合せが好ましい。これらの中でも窒素原子を含む親水性官能基、及びイオウ原子を含む親水性官能基がより好ましい。これらの親水性官能基は、表面の密着性や接着性をより向上させる。
また、改質層4は、これら親水性官能基の2種以上を含んでもよい。このように改質層4に異なる性質の親水性官能基を付与することによって、表面の反応性等を多様なものとすることができる。これらの親水性官能基は、シロキサン結合の構成要素であるケイ素原子に直接、又は1つ若しくは複数の炭素原子を介して結合することができる。
上記の特徴を有する改質層4を形成するための改質剤としては、分子中に親水性官能基を有するシランカップリング剤が好ましく、中でも加水分解性ケイ素含有官能基を有するものがより好ましい。このようなシランカップリング剤は、フッ素樹脂層2のマトリックスが含む上記フッ素樹脂と化学結合する。シランカップリング剤と上記フッ素樹脂との間の化学結合は、共有結合だけで構成される場合、共有結合及び水素結合を含む場合等がある。ここで、「加水分解性ケイ素含有官能基」とは、加水分解によりシラノール基(Si−OH)を形成し得る基をいう。
改質層4の表面における純水との接触角の上限としては、90°が好ましく、80°がより好ましく、70°がさらに好ましい。改質層4の表面における純水との接触角が上記上限を超えると、接着性や密着性を十分に得られないおそれがある。なお、改質層4の表面における純水との接触角の下限は特に限定されない。上記接触角は、例えば親水性官能基の種類や量を調整することにより制御できる。上記「純水との接触角」とは、JIS−R−3257:1999の静滴法により測定される接触角の値である。
また、この改質層4は、以下に示すエッチング耐性を有することが好ましい。すなわち、塩化鉄を含み、比重が1.33g/cm3であって、遊離塩酸濃度が0.2mol/Lであるエッチング液(温度45℃)に、2分間の条件で浸漬するエッチング処理に対して、改質層4が除去されないことが好ましい。ここで、「改質層が除去されない」とは、親水性が失われないことを示し、改質層4が設けられた部分における純水との接触角が90°を超えないことを示す。改質層4が上記エッチング耐性を有すると、当該基板1と後述する導電層とを備えるフレキシブルプリント配線板用基材の導電層をパターン状にエッチングする際に、導電層と基板との間にエッチング液が浸入することを抑制できるため、当該基板1と導電層との間の密着性を良好に維持できる。上記エッチング耐性は、例えば上述する好ましいシランカップリング剤を用いることにより改質層4に付与することができる。なお、エッチング処理により、改質層4が形成されている領域において疎水性を示す微小部分が斑状に生じる場合もあるが、この領域全体として親水性を有する場合は、このような状態は親水性が維持されているものとする。
また、改質層4は、塩化銅を含有するエッチング液に対するエッチング耐性を有することが好ましい。なお、改質層4が上記塩化鉄含有エッチング液に対するエッチング耐性を有する場合は、この改質層4は、塩化銅を含有するエッチング液に対して上述と同様のエッチング耐性を有することが確認されている。
改質層4の平均厚みの上限としては、200nmが好ましく、50nmがより好ましい。一方、上記平均厚みの下限としては、3nmが好ましく、5nmがより好ましい。上記平均厚みが上記上限を超えると、改質層4に起因する誘電損失の影響により高周波特性が不十分となるおそれがある。逆に、上記平均厚みが上記下限未満であると、改質層4による表面活性効果が十分に得られず、当該基板1に接着性や密着性を十分に付与できないおそれがある。よって、改質層4の平均厚みを上記範囲とすることで、伝送損失の抑制機能と密着性の向上機能とをバランスよく発揮させることができる。なお、改質層4の平均厚みは、例えばX線分光等により測定できる。
但し、当該基板1において改質層4は任意構成である。つまり、当該基板1は、改質層4を備えず、補強材層3及びマトリックス層2aにより主に構成されていてもよい。
(基板の特性)
当該基板1の平均厚みの上限としては、2.7mmが好ましく、1.0mmがより好ましい。一方、上記平均厚みの下限としては、1μmが好ましく、30μmがより好ましく、100μmがさらに好ましい。上記平均厚みが上記上限を超えると、十分な可撓性が得られないおそれがある。逆に、上記平均厚みが上記下限未満であると、取り扱いが難しくなるおそれがある。
当該基板1の平均厚みの上限としては、2.7mmが好ましく、1.0mmがより好ましい。一方、上記平均厚みの下限としては、1μmが好ましく、30μmがより好ましく、100μmがさらに好ましい。上記平均厚みが上記上限を超えると、十分な可撓性が得られないおそれがある。逆に、上記平均厚みが上記下限未満であると、取り扱いが難しくなるおそれがある。
当該基板1の30℃かつ10GHzにおける比誘電率の上限としては、4.5が好ましく、3.5がより好ましい。一方、比誘電率の下限としては、1.5が好ましく、2.0がより好ましく、2.5がさらに好ましい。上記比誘電率が上記上限を超えると、伝送損失を十分に小さくできないおそれや十分な伝送速度が得られないおそれがある。逆に、上記比誘電率が上記下限未満であると、導電層を一方の面側に積層した当該基板1をパターン状にエッチングして回路を設ける際に回路幅を十分に小さくできないおそれがある。
周波数条件を10GHzとした時の当該基板1の30℃における比誘電率εr30℃と120℃における比誘電率εr120℃との変化幅(εr30℃及びεr120℃の差の絶対値)の上限としては、0.06が好ましく、0.05がより好ましく、0.03がさらに好ましい。一方、上記比誘電率の変化幅の下限としては、0.0001が好ましく、0.01がより好ましい。上記比誘電率の変化幅が上記上限を超えると、電気特性の温度依存性を十分に低減できないおそれがある。逆に、上記比誘電率の変化幅が上記下限未満であると、材料選択の幅が狭まるおそれがある。
当該基板1の30℃かつ10GHzにおける誘電正接の上限としては、0.005が好ましく、0.002がより好ましい。一方、上記誘電正接の下限としては、特に限定されないが、例えば0.001である。上記誘電正接が上記上限を超えると、伝送損失を十分に小さくできないおそれや十分な伝送速度が得られないおそれがある。
周波数条件を10GHzとした時の当該基板1の30℃における誘電正接tanδ30℃と120℃における誘電正接tanδ120℃との変化幅(tanδ30℃及びtanδ120℃の差の絶対値)の上限としては、0.001が好ましく、0.0003がより好ましく、0.00015がさらに好ましい。一方、上記誘電正接の変化幅の下限としては、例えば0.00001である。上記誘電正接の変化幅が上記上限を超えると、電気特性の温度依存性を十分に低減できないおそれがある。逆に、上記誘電正接の変化幅が上記下限未満であると、材料選択の幅が狭まるおそれがある。
当該基板1の−40℃以上120℃以下における厚み方向での平均線膨張係数の上限としては、250ppm/℃が好ましく、200ppm/℃がより好ましい。一方、上記平均線膨張係数の下限としては、特に限定されず低いほど好ましいが、例えば0ppm/℃である。上記平均線膨張係数が上記上限を超えると、電気特性の温度依存性を十分に低減できないおそれがある。
<基板の製造方法>
次に、当該基板の好ましい製造方法の例示として、第1の製造方法及び第2の製造方法について説明する。第1の製造方法で用いる補強材は、層状の補強材であれば特に限定されない。第2の製造方法で用いる補強材は、不織布又は織布である。この第1の製造方法及び第2の製造方法は、いずれも当該基板を容易かつ確実に製造できる。
次に、当該基板の好ましい製造方法の例示として、第1の製造方法及び第2の製造方法について説明する。第1の製造方法で用いる補強材は、層状の補強材であれば特に限定されない。第2の製造方法で用いる補強材は、不織布又は織布である。この第1の製造方法及び第2の製造方法は、いずれも当該基板を容易かつ確実に製造できる。
(基板の第1の製造方法)
当該基板の第1の製造方法は、層状の補強材の両面にフッ素樹脂を主成分とする樹脂フィルムを重畳する重畳工程と、上記重畳体を真空吸引しつつ熱圧着する熱圧着工程とを備え、上記重畳体における上記補強材の体積比率を15体積%以上60体積%以下とする。
当該基板の第1の製造方法は、層状の補強材の両面にフッ素樹脂を主成分とする樹脂フィルムを重畳する重畳工程と、上記重畳体を真空吸引しつつ熱圧着する熱圧着工程とを備え、上記重畳体における上記補強材の体積比率を15体積%以上60体積%以下とする。
[重畳工程]
本工程では、層状の補強材の両面にフッ素樹脂を主成分とする樹脂フィルムを重畳する。上記層状の補強材としては、当該基板に用いる補強材として説明したものと同様の補強材等を用いることができる。また、上記樹脂フィルムの主成分としては、当該基板のマトリックスの主成分として例示したものと同様のフッ素樹脂等を用いることができる。
本工程では、層状の補強材の両面にフッ素樹脂を主成分とする樹脂フィルムを重畳する。上記層状の補強材としては、当該基板に用いる補強材として説明したものと同様の補強材等を用いることができる。また、上記樹脂フィルムの主成分としては、当該基板のマトリックスの主成分として例示したものと同様のフッ素樹脂等を用いることができる。
上記重畳体における上記補強材の体積比率の上限としては、40体積%が好ましく、33体積%がさらに好ましい。一方、上記補強材の体積比率の下限としては、20体積%が好ましく、27体積%がより好ましい。上記補強材の体積比率を上記範囲とすることで、形成される当該基板の電気特性の温度依存性の低減と、伝送特性の向上とをバランスよく達成できる。
[熱圧着工程]
本工程では、上記重畳工程で得られた重畳体を真空吸引しつつ熱圧着する。上記熱圧着温度の上限としては、600℃が好ましく、400℃がより好ましい。上記熱圧着温度の下限としては、上記樹脂フィルムの主成分であるフッ素樹脂の融点の温度が好ましく、上記フッ素樹脂の分解開始温度がより好ましい。より詳しくは、上記熱圧着温度の下限としては、上記フッ素樹脂の融点よりも10℃高い温度が好ましく、上記フッ素樹脂の融点よりも30℃高い温度がより好ましい。具体的な熱圧着温度の下限としては、上記フッ素樹脂がFEP(融点260℃)である場合、270℃が好ましく、290℃がより好ましい。上記熱圧着温度が上記上限を超えると、得られる当該基板が変形するおそれがある。上記温度が上記下限未満であると、補強材及び樹脂フィルムが一体化した当該基板を得ることが難しくなるおそれがある。ここで「分解開始温度」とはフッ素樹脂が熱分解し始める温度をいい、「分解温度」とはフッ素樹脂が熱分解によってその質量が10%減少する温度をいう。
本工程では、上記重畳工程で得られた重畳体を真空吸引しつつ熱圧着する。上記熱圧着温度の上限としては、600℃が好ましく、400℃がより好ましい。上記熱圧着温度の下限としては、上記樹脂フィルムの主成分であるフッ素樹脂の融点の温度が好ましく、上記フッ素樹脂の分解開始温度がより好ましい。より詳しくは、上記熱圧着温度の下限としては、上記フッ素樹脂の融点よりも10℃高い温度が好ましく、上記フッ素樹脂の融点よりも30℃高い温度がより好ましい。具体的な熱圧着温度の下限としては、上記フッ素樹脂がFEP(融点260℃)である場合、270℃が好ましく、290℃がより好ましい。上記熱圧着温度が上記上限を超えると、得られる当該基板が変形するおそれがある。上記温度が上記下限未満であると、補強材及び樹脂フィルムが一体化した当該基板を得ることが難しくなるおそれがある。ここで「分解開始温度」とはフッ素樹脂が熱分解し始める温度をいい、「分解温度」とはフッ素樹脂が熱分解によってその質量が10%減少する温度をいう。
上記熱圧着の圧力としては、0.01MPa以上1200MPa以下が好ましい。また、上記熱圧着の加圧時間としては、5秒以上10時間以下が好ましい。
上記真空吸引の際の真空度の上限としては、10MPaが好ましく、1MPaがより好ましく、10Paがさらに好ましい。一方、真空度の下限としては、特に限定されないが、例えば0.01Paである。真空度を上記上限以下とすることにより、樹脂フィルム及び補強材の密着性を向上できる。また、層状の補強材として織布又は不織布を用いる場合、織布又は不織布の空隙に上記樹脂フィルムの樹脂を確実に含浸させ、補強材及びマトリックスがより強固に一体化した当該基板を得ることができる。
当該基板の第1の製造方法では、樹脂フィルム及び補強材の密着性をより向上する観点から、上記熱圧着の開始前から真空吸引を開始することが好ましい。
(基板の第2の製造方法)
当該基板の第2の製造方法は、不織布又は織布である補強材の表面及び内部にフッ素樹脂を主成分とする組成物を含浸させる含浸工程と、含浸させた上記組成物を加熱する加熱工程とを備え、上記組成物の含む固形分と上記補強材との合計における上記補強材の体積比率を15体積%以上60体積%以下とする。
当該基板の第2の製造方法は、不織布又は織布である補強材の表面及び内部にフッ素樹脂を主成分とする組成物を含浸させる含浸工程と、含浸させた上記組成物を加熱する加熱工程とを備え、上記組成物の含む固形分と上記補強材との合計における上記補強材の体積比率を15体積%以上60体積%以下とする。
[含浸工程]
含浸工程では、不織布又は織布である補強材の表面及び内部にフッ素樹脂を主成分とする組成物を含浸させる。不織布及び織布としては、当該基板に用いる不織布及び織布として説明したものと同様のもの等を用いることができる。また、上記フッ素樹脂としては、当該基板のマトリックスの主成分として例示したものと同様のフッ素樹脂等を用いることができる。上記組成物としては、例えば溶媒にフッ素樹脂粒子が分散したフッ素樹脂ディスパージョン等が挙げられる。当該基板の補強材不織布又は織布である補強材の表面及び内部に上記組成物を含浸させる方法としては、例えば不織布又は織布の表面に上記組成物を塗布する方法、上記組成物にガラスクロス又は樹脂クロスを浸漬する方法等が挙げられる。
含浸工程では、不織布又は織布である補強材の表面及び内部にフッ素樹脂を主成分とする組成物を含浸させる。不織布及び織布としては、当該基板に用いる不織布及び織布として説明したものと同様のもの等を用いることができる。また、上記フッ素樹脂としては、当該基板のマトリックスの主成分として例示したものと同様のフッ素樹脂等を用いることができる。上記組成物としては、例えば溶媒にフッ素樹脂粒子が分散したフッ素樹脂ディスパージョン等が挙げられる。当該基板の補強材不織布又は織布である補強材の表面及び内部に上記組成物を含浸させる方法としては、例えば不織布又は織布の表面に上記組成物を塗布する方法、上記組成物にガラスクロス又は樹脂クロスを浸漬する方法等が挙げられる。
上記組成物の含む固形分と上記補強材との合計における上記補強材の体積比率としては、40体積%が好ましく、33体積%がさらに好ましい。一方、上記補強材の体積比率の下限としては、20体積%が好ましく、27体積%がより好ましい。上記補強材の体積比率を上記範囲とすることで、形成される当該基板の電気特性の温度依存性の低減と、伝送特性の向上とをバランスよく達成できる。ここで「固形分」とは、上記組成物における溶媒以外の成分をいう。
[加熱工程]
加熱工程では、含浸させた上記組成物を加熱する。加熱工程は、含浸させた上記組成物が乾燥し硬化する焼き付け工程に相当する。加熱工程後には、不織布又は織布の表面にフッ素樹脂の層が形成されると共に、不織布又は織布の内部にフッ素樹脂が含浸する。
加熱工程では、含浸させた上記組成物を加熱する。加熱工程は、含浸させた上記組成物が乾燥し硬化する焼き付け工程に相当する。加熱工程後には、不織布又は織布の表面にフッ素樹脂の層が形成されると共に、不織布又は織布の内部にフッ素樹脂が含浸する。
加熱工程の温度の下限としては、150℃が好ましく、200℃がより好ましい。一方、加熱工程の温度の上限としては、600℃が好ましく、500℃がより好ましい。加熱工程の温度が上記下限未満であると、含浸させた上記組成物の乾燥及び硬化が不十分となるおそれがある。逆に、加熱工程の温度が上記上限を超えると、得られる当該基板が変形するおそれがある。
第2の製造方法では、不織布又は織布の一方の面にフッ素樹脂の層を形成した後、他方の面に再度フッ素樹脂の層を形成してもよい。また、第2の製造方法では、不織布又は織布の両面に同時にフッ素樹脂の層を形成してもよい。
第2の製造方法では、上記含浸工程及び加熱工程を2回以上繰り返してもよい。例えば、上記組成物の塗布と加熱とを繰り返し行えば、所定の厚みを有するフッ素樹脂の層を容易に形成できる。
第2の製造方法では、不織布又は織布の表面及び内部にフッ素樹脂を主成分とする組成物を含浸させる。このため、第2の製造方法では、補強材及びマトリックスがより強固に一体化した当該基板を容易かつ確実に得ることができる。
<フレキシブルプリント配線板用基材>
図2に、本発明の一実施形態に係るフレキシブルプリント配線板用基材10を示す。当該フレキシブルプリント配線板用基材10は、当該基板1と、この当該基板1の一方の面側(改質層4の外面側)に積層される導電層5とを備える。導電層5は、当該基板1に直接積層されてもよく、他の層を介して積層されてもよい。図2において、図1と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図2に、本発明の一実施形態に係るフレキシブルプリント配線板用基材10を示す。当該フレキシブルプリント配線板用基材10は、当該基板1と、この当該基板1の一方の面側(改質層4の外面側)に積層される導電層5とを備える。導電層5は、当該基板1に直接積層されてもよく、他の層を介して積層されてもよい。図2において、図1と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
(導電層)
導電層5を構成する導電物質としては、例えば銅、銀、金、鉄、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、ITO(Indium Tin Oxide)等の金属、樹脂と金属との混合物である導電性樹脂などが挙げられる。
導電層5を構成する導電物質としては、例えば銅、銀、金、鉄、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、ITO(Indium Tin Oxide)等の金属、樹脂と金属との混合物である導電性樹脂などが挙げられる。
中でも、上記導電物質としては、コスト、電気特性及び可撓性の観点より、銅が好ましい。すなわち、導電層5としては、銅箔が好ましい。導電層5を銅箔とすることで、優れた伝送特性と、良好なフレキシブル性と、コストの安さとをバランスよく達成できる。
上記銅箔の十点平均粗さ(Rz)の上限としては、4μmが好ましく、1μmがより好ましい。上記十点平均粗さ(Rz)が上記上限を超えると、表皮効果により高周波信号が集中する部分の凹凸が大きくなり、電流が直線的に流れることが阻害され、意図しない伝送損失を生じるおそれがある。なお、上記銅箔の十点平均粗さ(Rz)の下限としては、特に限定されないが、0.01μmが好ましく、0.1μmがより好ましい。ここで「十点平均粗さ(Rz)」は、JIS−B0601:1994で規定される値である。
導電層5の平均厚みの上限としては、300μmが好ましく、200μmがより好ましく、150μmがさらに好ましい。一方、上記平均厚みの下限としては、1μmが好ましく、5μmがより好ましく、10μmがさらに好ましい。上記平均厚みが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板用基材10を可撓性が要求される電子機器に適用することが困難となるおそれがある。逆に、上記平均厚みが上記下限未満であると、導電層5の抵抗が増大するおそれがある。
当該フレキシブルプリント配線板用基材10における当該基板1と導電層5との剥離強度の下限としては、8N/cmが好ましく、12N/cmがより好ましく、16N/cmがさらに好ましい。上記剥離強度を上記下限以上とすることで、導電層の剥離をより抑制することができる。
当該フレキシブルプリント配線板用基材10の加熱変形性の上限としては、0.5%が好ましく、0.3%がより好ましく、0.2%がさらに好ましい。上記加熱変形性を上記上限以下とすることで、寸法安定性をより向上でき、電気特性の温度依存性をより低減できる。
<フレキシブルプリント配線板用基材の製造方法>
当該フレキシブルプリント配線板用基材10の好ましい製造方法の一例について、導電層5として銅箔を用い、改質層4を有さず、フッ素樹脂層2により主に構成される当該基板を用いた場合を挙げて説明する。
当該フレキシブルプリント配線板用基材10の好ましい製造方法の一例について、導電層5として銅箔を用い、改質層4を有さず、フッ素樹脂層2により主に構成される当該基板を用いた場合を挙げて説明する。
まず、導電層5としての銅箔の一方の面又は両面に、改質剤であるシランカップリング剤(例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン)と、エタノールとを含むプライマ材料を付着させる。このプライマ材料におけるシランカップリング剤の濃度としては、例えば0.5質量%以上3質量%以下である。次に、必要に応じて例えば80℃以上150℃で加熱することにより、上記銅箔に付着した上記プライマ材料中のエタノールを乾燥させて除去した後、上記銅箔におけるプライマ材料を付着させた側の面と当該基板の一方の面とを対向させて積層する。その後、得られた積層体をプレス機で熱圧着する。この熱圧着は、銅箔と当該基板1との間に気泡や空隙が形成されないようにするために、減圧下で行うことが好ましい。また、銅箔の酸化を抑制するため、低酸素条件下(例えば窒素雰囲気中)で行うことが好ましい。これにより、導電層5としての上記銅箔とフッ素樹脂層2との間に改質層4が形成され、当該フレキシブルプリント配線板用基材10が得られる。なお、上記プライマ材料による改質層4の形成には、少量の水分が必要とされるが、この水分は上記エタノールに不可避的に含まれる水分や、空気中の湿気等から供給される。
なお、当該基板として、図1に示す改質層4を有する当該基板1を用いる場合、上述の製造方法において銅箔にプライマ材料を付着させる工程は省略できる。つまり、銅箔の一方の面と当該基板1の改質層4とを対向させて積層し、得られた積層体を熱圧着することで当該フレキシブルプリント配線板用基材10が得られる。
上記熱圧着の温度の上限としては、600℃が好ましく、400℃がより好ましい。上記熱圧着温度の下限としては、当該基板1のマトリックスの主成分であるフッ素樹脂の融点の温度が好ましく、上記フッ素樹脂の分解開始温度がより好ましい。より詳しくは、上記熱圧着温度の下限としては、上記フッ素樹脂の融点よりも10℃高い温度が好ましく、上記フッ素樹脂の融点よりも30℃高い温度がより好ましい。具体的な熱圧着温度の下限としては、上記フッ素樹脂がFEP(融点260℃)である場合、270℃が好ましく、290℃がより好ましい。上記熱圧着の温度が上記上限を超えると、製造途中で意図しない変形を生じるおそれがある。逆に、上記熱圧着の温度が上記下限未満であると、銅箔と当該基板1との間で十分な密着性が得られないおそれがある。
上記熱圧着の際、上記フッ素樹脂の融点以上の温度で熱圧着を行うことが好ましい理由は、融点未満の温度では上記フッ素樹脂が活性化しないためである。また、上記フッ素樹脂の分解開始温度以上に加熱することにより、上記フッ素樹脂の炭素原子がラジカル化するため、上記フッ素樹脂をさらに活性化させることができる。つまり、熱圧着の温度を上記フッ素樹脂の融点以上(より好ましくは分解開始温度以上)とすることにより、銅箔と当該基板1との間の密着をより促進できると考えられる。
上記熱圧着の圧力としては、0.01MPa以上1,000MPa以下が好ましい。また、上記熱圧着の加圧時間としては、5秒以上10時間以下が好ましい。
このような熱圧着により、上記フッ素樹脂中のラジカル化した炭素原子が、シランカップリング剤により形成されたシロキサン結合(Si−O−Si)と他の原子又は原子団を介して化学結合すると考えられる。
<フレキシブルプリント配線板>
本発明の一実施形態に係るフレキシブルプリント配線板は、上述の基板と、この基板の一方の面側に積層される導電パターン層(パターンが形成された導電層)とを備える。当該フレキシブルプリント配線板の導電層は、例えば当該フレキシブル配線板用基材の導電層にエッチング等によりパターニングすることで得られる。当該フレキシブルプリント配線板は、上述の当該基板が用いられているので、電気特性の温度依存性が少なく、かつ伝送特性に優れる。なお、上記導電パターン層は、上述の基板の両面に積層されていてもよい。
本発明の一実施形態に係るフレキシブルプリント配線板は、上述の基板と、この基板の一方の面側に積層される導電パターン層(パターンが形成された導電層)とを備える。当該フレキシブルプリント配線板の導電層は、例えば当該フレキシブル配線板用基材の導電層にエッチング等によりパターニングすることで得られる。当該フレキシブルプリント配線板は、上述の当該基板が用いられているので、電気特性の温度依存性が少なく、かつ伝送特性に優れる。なお、上記導電パターン層は、上述の基板の両面に積層されていてもよい。
上記エッチング方法としては、特に制限されないが、例えばサブトラクティブ法、セミアディティブ法等が挙げられる。上記エッチング法としてサブトラクティブ法を適用する場合、当該フレキシブル配線板用基材の導電層にパターンのマスキングを施した後、エッチングすることにより、配線を形成できる。
[その他の実施形態]
上記開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
上記開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
上記実施形態の当該基板は、1層の補強材層と一対のマトリックス層とを備える3層構造を有するフッ素樹脂層を備えるが、上記フッ素樹脂層は、他の多層構造を有していてもよい。具体的には、上記フッ素樹脂層は、例えば1層の補強材層と1層のマトリックス層とを備える2層構造等であってもよい。また、当該基板は、上記フッ素樹脂層を備える替わりに、不織布又は織布である補強材と、この補強材に含浸されるマトリックスとにより形成される単層を備えてもよい。
当該基板は、層状の補強材以外に、粒状、繊維状等の非層状の補強材を含んでもよい。但し、上記補強材の体積は、フッ素樹脂層における層状の補強材の体積比率の計算においては算入しないものとする。
上記補強材は、図1では厚み方向の中間に主に配設されて1層の補強材層を形成しているが、当該基板の表面付近に配設されていてもよく、当該基板の複数の厚み方向位置に配設されることで2層以上の補強材層を形成していてもよい。
当該基板は、補強材を平面視で全領域に均一に含有してもよく、補強材を平面視で一部の領域に偏って含有してもよい。また、当該基板は、平面視で一部の領域に補強材が含まれていなくてもよい。
当該基板は、両方の面に改質層を有してもよい。また、上記改質層は、平面視で全領域に積層されていてもよく、一部の領域のみに積層されていてもよい。
当該フレキシブルプリント配線板用基材は、両面に導電層が積層されていてもよい。また、当該フレキシブルプリント配線板用基材の備える導電層は、平面視で全領域に積層されてもよく、一部の領域のみに積層されてもよい。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[製造例1]
以下の手順で製造例1の基板を作製した。まず、Eガラスを用いたEガラスクロス(IPC規格スタイル1030、平均厚み27μm、ユニチカ社の「UTK E03R 04 127SK」)を3枚重ねあわせ、これを補強材(合計平均厚み81μm)とした。この補強材の両面にFEPフィルム(平均厚み50μm)を重ね合わせ、重畳体を得た。次に、この重畳体を温度300℃、圧力20MPa、時間120分の条件で真空吸引しつつ熱圧着をし、製造例1の基板を得た。なおこの基板は、ガラスクロス内部にFEPが含浸していた。
以下の手順で製造例1の基板を作製した。まず、Eガラスを用いたEガラスクロス(IPC規格スタイル1030、平均厚み27μm、ユニチカ社の「UTK E03R 04 127SK」)を3枚重ねあわせ、これを補強材(合計平均厚み81μm)とした。この補強材の両面にFEPフィルム(平均厚み50μm)を重ね合わせ、重畳体を得た。次に、この重畳体を温度300℃、圧力20MPa、時間120分の条件で真空吸引しつつ熱圧着をし、製造例1の基板を得た。なおこの基板は、ガラスクロス内部にFEPが含浸していた。
(フレキシブルプリント配線板用基材の作製)
以下の手順で製造例1の基板を用いてフレキシブルプリント配線板用基材を作製した。まず、浸漬法によって銅箔(無電解銅箔、平均厚み18μm、十点平均粗さRz0.6μm)にプライマ材料を付着させた。次に、この銅箔を120℃で加熱することで乾燥させた。これにより、上記銅箔にプライマ材料を付着させた。次に、銅箔に付着させたプライマ材料を挟むように、上記銅箔のプライマ材料付着面と上記基板とを積層し、得られた積層体をプレス機で熱圧着することにより、上記銅箔と上記基板との間に平均厚み30nmの改質層を有するフレキシブルプリント配線板用基材を得た。上記熱圧着の条件は、温度300℃、圧力20MPa、時間120分とした。なお、上記プライマ材料としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン1質量%とエタノールとを含むものを用いた。
以下の手順で製造例1の基板を用いてフレキシブルプリント配線板用基材を作製した。まず、浸漬法によって銅箔(無電解銅箔、平均厚み18μm、十点平均粗さRz0.6μm)にプライマ材料を付着させた。次に、この銅箔を120℃で加熱することで乾燥させた。これにより、上記銅箔にプライマ材料を付着させた。次に、銅箔に付着させたプライマ材料を挟むように、上記銅箔のプライマ材料付着面と上記基板とを積層し、得られた積層体をプレス機で熱圧着することにより、上記銅箔と上記基板との間に平均厚み30nmの改質層を有するフレキシブルプリント配線板用基材を得た。上記熱圧着の条件は、温度300℃、圧力20MPa、時間120分とした。なお、上記プライマ材料としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン1質量%とエタノールとを含むものを用いた。
[製造例2]
Eガラスよりも誘電率の低いLガラスを用いたLガラスクロス(IPC規格スタイル106、平均厚み29μm、旭化成イーマテリアル社の「L106/50”/AS890AD」)を3枚重ねあわせたものを補強材(合計平均厚み87μm)として用いた。それ以外の点は製造例1と同様に操作し、製造例2の基板と、この基板を用いたフレキシブルプリント配線板用基材を得た。なお、この基板は、ガラスクロス内部にFEPが含浸していた。
Eガラスよりも誘電率の低いLガラスを用いたLガラスクロス(IPC規格スタイル106、平均厚み29μm、旭化成イーマテリアル社の「L106/50”/AS890AD」)を3枚重ねあわせたものを補強材(合計平均厚み87μm)として用いた。それ以外の点は製造例1と同様に操作し、製造例2の基板と、この基板を用いたフレキシブルプリント配線板用基材を得た。なお、この基板は、ガラスクロス内部にFEPが含浸していた。
[製造例3]
1枚のEガラスクロスを補強材(平均厚み27μm)として用いた。それ以外の点は製造例1と同様に操作し、製造例3の基板と、この基板を用いたフレキシブルプリント配線板用基材を得た。なお、この基板は、ガラスクロス内部にFEPが含浸していた。
1枚のEガラスクロスを補強材(平均厚み27μm)として用いた。それ以外の点は製造例1と同様に操作し、製造例3の基板と、この基板を用いたフレキシブルプリント配線板用基材を得た。なお、この基板は、ガラスクロス内部にFEPが含浸していた。
(基板のフッ素樹脂層における補強材の体積比率)
製造例1〜3において、補強材及びFEPフィルムの合計体積に対する補強材の体積の比を百分率で表したものを各基板のフッ素樹脂層における補強材の体積比率とした。表1に、製造例1〜3で使用した補強材の種類、使用量及び上記体積比率を示す。
製造例1〜3において、補強材及びFEPフィルムの合計体積に対する補強材の体積の比を百分率で表したものを各基板のフッ素樹脂層における補強材の体積比率とした。表1に、製造例1〜3で使用した補強材の種類、使用量及び上記体積比率を示す。
[評価]
製造例1〜3の基板及びフレキシブルプリント配線板用基材について、下記項目の測定を行った。それぞれ結果を表2〜5に示す。
製造例1〜3の基板及びフレキシブルプリント配線板用基材について、下記項目の測定を行った。それぞれ結果を表2〜5に示す。
(平均線膨張係数)
レーザ熱膨張計(アドバンス理工社の「LIX―2L型」)を用いたレーザー干渉法により、−40℃以上120℃以下における各基板の厚み方向での線膨張係数を20℃間隔で測定し、その平均値を平均線膨張係数とした。平均線膨張係数は、その値が小さいほど比誘電率の温度依存性が低減されるためよいことを示す。
レーザ熱膨張計(アドバンス理工社の「LIX―2L型」)を用いたレーザー干渉法により、−40℃以上120℃以下における各基板の厚み方向での線膨張係数を20℃間隔で測定し、その平均値を平均線膨張係数とした。平均線膨張係数は、その値が小さいほど比誘電率の温度依存性が低減されるためよいことを示す。
(比誘電率及び誘電正接)
JIS−C2138:2007に準拠する空洞共振器摂道法により、周波数10GHz、温度30℃、60℃又は120℃、相対湿度50%の条件で各基板の比誘電率及び誘電正接を測定した。また、この測定結果を元に、各基板の30℃での比誘電率εr30℃と120℃での比誘電率εr120℃との変化幅(εr30℃及びεr120℃の差の絶対値)と、30℃での誘電正接tanδ30℃と120℃での誘電正接tanδ120℃との変化幅(tanδ30℃及びtanδ120℃の差の絶対値)とをそれぞれ算出した。比誘電率は、その値が小さいほど伝送速度が大きくよいことを示し、また30℃及び120℃での変化幅が小さいほど電気特性の温度依存性が小さいことを示す。誘電正接は、その値が小さいほど伝送損失が少なくよいことを示し、また30℃及び120℃での変化幅が小さいほど電気特性の温度依存性が小さいことを示す。
JIS−C2138:2007に準拠する空洞共振器摂道法により、周波数10GHz、温度30℃、60℃又は120℃、相対湿度50%の条件で各基板の比誘電率及び誘電正接を測定した。また、この測定結果を元に、各基板の30℃での比誘電率εr30℃と120℃での比誘電率εr120℃との変化幅(εr30℃及びεr120℃の差の絶対値)と、30℃での誘電正接tanδ30℃と120℃での誘電正接tanδ120℃との変化幅(tanδ30℃及びtanδ120℃の差の絶対値)とをそれぞれ算出した。比誘電率は、その値が小さいほど伝送速度が大きくよいことを示し、また30℃及び120℃での変化幅が小さいほど電気特性の温度依存性が小さいことを示す。誘電正接は、その値が小さいほど伝送損失が少なくよいことを示し、また30℃及び120℃での変化幅が小さいほど電気特性の温度依存性が小さいことを示す。
(剥離強度)
JIS−K6854−2:1999の「接着剤−剥離接着強さ試験方法−2部:180度剥離」に準拠し、各フレキシブルプリント配線板用基材の基板及び銅箔の剥離強度(N/cm)を測定した。
JIS−K6854−2:1999の「接着剤−剥離接着強さ試験方法−2部:180度剥離」に準拠し、各フレキシブルプリント配線板用基材の基板及び銅箔の剥離強度(N/cm)を測定した。
表1〜5に示すように、製造例1〜2の基板は、補強材の体積比率を15体積%以上60体積%以下と比較的多くすることで、製造例3の基板より、比誘電率及び誘電正接の温度依存性を低減できた。この比誘電率及び誘電正接の温度依存性の低減は、基板の厚み方向での平均線膨張係数を低減できたためであると考えられる。また、製造例1〜2の基板を用いたフレキシブルプリント基材は、銅箔との剥離強度も向上した。これは、上記補強材の増量によって面方向の寸法変化が抑制されたためであると判断される。さらに、製造例1〜2の基板は、補強材の増量によりフッ素樹脂の含有量が減少しているが、比誘電率及び誘電正接の大幅な増加は確認できなかった。このような結果から、本発明の基板と、この基板を用いたフレキシブルプリント配線板用基材及びフレキシブルプリント配線板とは、伝送特性に優れ、かつ電気特性の温度依存性が少ないと判断される。
本発明の基板、フレキシブルプリント配線用基材及びフレキシブルプリント配線板は、電気特性の温度依存性が少なく、かつ伝送特性に優れる。本発明の基板の製造方法は、電気特性の温度依存性が少なく、かつ伝送特性に優れる基板を容易かつ確実に製造できる。
1 基板
2 フッ素樹脂層
2a マトリックス層
3 補強材層
4 改質層
5 導電層
10 フレキシブルプリント配線板用基材
2 フッ素樹脂層
2a マトリックス層
3 補強材層
4 改質層
5 導電層
10 フレキシブルプリント配線板用基材
Claims (16)
- マトリックスとこのマトリックス中に含まれる層状の補強材とを含有し、上記マトリックスの主成分がフッ素樹脂であるフッ素樹脂層を備える基板であって、
上記フッ素樹脂層における上記補強材の体積比率が15体積%以上60体積%以下である基板。 - 上記補強材が不織布又は織布である請求項1に記載の基板。
- 上記補強材の主成分がガラス又は合成樹脂である請求項1又は請求項2に記載の基板。
- 上記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体又はテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体を50質量%以上含有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の基板。
- 上記フッ素樹脂層が、
上記補強材を含む補強材層と、
この補強材層の一方の面又は両面に積層され、上記マトリックスにより形成されるマトリックス層と
を備える多層構造を有し、
上記マトリックス層におけるテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体の合計含有量が90質量%以上であって、
上記マトリックス層の平均厚みが10μm以上である請求項4に記載の基板。 - 30℃かつ10GHzにおける比誘電率が2.0以上4.5以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の基板。
- −40℃以上120℃以下における厚み方向での平均線膨張係数が250ppm/℃以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の基板。
- シロキサン結合及び親水性官能基を含む改質層を一方の面に有する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の基板。
- 請求項1に記載の基板と、
この基板の一方の面側に積層される導電層と
を備えるフレキシブルプリント配線板用基材。 - 上記導電層が銅箔である請求項9に記載のフレキシブルプリント配線板用基材。
- 上記基板と上記導電層との剥離強度が8N/cm以上である請求項9又は請求項10に記載のフレキシブルプリント配線板用基材。
- 加熱変形性が0.5%以下である請求項9、請求項10又は請求項11に記載のフレキシブルプリント配線板用基材。
- 請求項1に記載の基板と、
この基板の一方の面側に積層される導電パターン層と
を備えるフレキシブルプリント配線板。 - 層状の補強材の両面にフッ素樹脂を主成分とする樹脂フィルムを重畳する重畳工程と、
上記重畳体を真空吸引しつつ熱圧着する熱圧着工程と
を備え、
上記重畳体における上記補強材の体積比率を15体積%以上60体積%以下とする基板の製造方法。 - 上記熱圧着の開始前から真空吸引を開始する請求項14に記載の基板の製造方法。
- 不織布又は織布である補強材の表面及び内部にフッ素樹脂を主成分とする組成物を含浸させる含浸工程と、
含浸させた上記組成物を加熱する加熱工程と
を備え、
上記組成物の含む固形分と上記補強材との合計における上記補強材の体積比率を15体積%以上60体積%以下とする基板の製造方法。
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