JP6461532B2 - フッ素樹脂基材の製造方法及びプリント配線板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、表面改質されたフッ素樹脂基材の製造方法、及びプリント配線板の製造方法に関する。
フッ素樹脂基材を有するプリント配線板が知られている。フッ素樹脂は、エポキシ樹脂に比べて低誘電率であることから、フッ素樹脂基材を有するプリント配線板は、高周波信号処理用の回路基板に用いられている。また、フッ素樹脂は耐薬品性や耐熱性に優れていることから、フッ素樹脂基材を有するプリント配線板は、薬剤に晒される回路基板や耐熱性が要求される回路基板にも用いられている。
ところで、フッ素樹脂は、耐薬品性がある反面、他の部材との反応性が乏しいため、他の部材との間の接着力(剥離強度)が低いといった問題がある。このような問題を改善するため、種々の方法でフッ素樹脂基材の表面処理が行われている。表面処理の方法として、例えばプラズマ処理がある。プラズマ処理では、プラズマ照射によりフッ素樹脂基材が親水化される。フッ素樹脂基材を用いてプリント配線板を製造する場合は、フッ素樹脂基材にプラズマ照射した後、このフッ素樹脂基材に金属層を形成することが提案されている(特許文献1参照)。
特開2003−201571号公報
しかし、プラズマ処理により得られるフッ素樹脂基材は、表面改質状態が長時間維持されないという問題がある。このため、表面改質後、所定期間内に所定の処理(例えば、無電解めっきなどの処理)を行っている。このように従来のフッ素樹脂基材の製造方法では製造管理上の手間を要する。また、プラズマ処理により得られる従来のフッ素樹脂基材は、時間経過とともにその表面改質状態が失われるため、従来のフッ素樹脂基材を用いて形成した回路基板に被覆材を十分に強い接着強度(すなわち剥離強度)で設けることができないといった問題がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、表面改質状態が安定しているフッ素樹脂基材及びプリント配線板について、これらの製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するためになされた本発明の一実施形態に係るフッ素樹脂基材の製造方法は、シランカップリング剤を含有するプライマ材料を平板状担体に付着する第1工程と、上記担体のプライマ材料付着側面にフッ素樹脂を主成分とするフッ素樹脂材を熱圧着する第2工程とを備え、上記担体とフッ素樹脂材との間に改質層を形成する。
当該フッ素樹脂基材の製造方法によれば、表面改質状態が安定しているフッ素樹脂基材を製造することができる。
フッ素樹脂基材の断面図である。 プリント配線板の平面図である。 図2のA−A線に沿う断面図である。 プリント配線板の他の例を示す平面図である。 回路モジュールの模式図である。 フッ素樹脂基材の製造方法を示す模式図である。
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
本願発明の一実施形態に係るフッ素樹脂基材の製造方法は、シランカップリング剤を含有するプライマ材料を平板状担体に付着する第1工程と、上記担体のプライマ材料付着側面にフッ素樹脂を主成分とするフッ素樹脂材を熱圧着する第2工程とを備え、上記担体とフッ素樹脂材との間に改質層を形成する。
この構成により、担体を有し、かつこの担体との接着強度に優れるフッ素樹脂基材が形成される。また、プライマ材料を担体に付着させてから、これをフッ素樹脂材に熱圧着するため、プライマ材料を単にフッ素樹脂に塗布する場合に比べて、厚さにおいて斑の少ない改質層をフッ素樹脂材に形成することができる。また、熱圧着によってシランカップリング剤が互いに結合してシロキサン結合を形成するため、改質層が経時的に安定する。また、この改質層においてエッチング等の化学処理に対する耐性が高くなる。すなわち、この構成によれば、表面改質状態が安定しているフッ素樹脂基材を製造することができる。なお、「フッ素樹脂を主成分とするフッ素樹脂材」とは、フッ素樹脂の含有量が95質量%以上であるものを意味する。また、「表面改質状態」とは、元のフッ素樹脂基材に比べて表面活性になっていることを意味する。すなわち、表面改質状態とは、元のフッ素樹脂基材に比べて、極性溶媒に対して表面の接触角が小さくなっていること、化学物質との反応性が高くなっていること、又は樹脂との接着性(剥離強度)が高くなっていることの少なくとも1つを満たすことを意味する。
上記担体の少なくとも表面層の素材が、金属、ガラス、シリコーン、カーボン、セラミックス又はこれらの複合体であり、上記シランカップリング剤が加水分解性ケイ素含有官能基と親水性有機官能基とを有することが好ましい。このような担体と上記官能基を有するシランカップリング剤を用いることで、シランカップリング剤を膜状に広がり易くできる。ここで、「加水分解性ケイ素含有官能基」とは、加水分解によりシラノール基(Si−OH)を形成し得る基をいう。「親水性有機官能基」とは、水素原子及び水素原子よりも電気陰性度が大きい原子から構成される官能基であって、親水性を有するものをいう。
上記親水性有機官能基が、N原子又はS原子を含むことが好ましい。この構成によれば、改質層とフッ素樹脂との間の接着強度(すなわち剥離強度)を高めることができる。
上記第2工程後、上記担体の少なくとも一部を除去する第3工程をさらに備えるとよい。この構成によれば、少なくとも一部において改質層が露出したフッ素樹脂基材を提供することができる。なお、担体の全部を除去することにより、担体のないフッ素樹脂基材が製造される。
上記担体の素材が卑金属である場合、上記第3工程での担体の除去に上記卑金属の溶解液を用いるとよい。この構成では、担体を溶解液で除去するので、担体の除去において従来のエッチング法を適用できる。このため、従来のエッチング法と同様の方法により任意の箇所の担体を除去することができ、任意の箇所の改質層を露出させることができる。ここで、「卑金属」とは、イオン化傾向が銅と同等かそれよりも大きい金属をいい、具体的には標準酸化還元電位が0.5V以下の金属をいう。
上記担体が、平面視で複数のブロック領域に区分され、上記第3工程での担体の除去に上記複数のブロック領域の少なくとも一部を剥離してもよい。この構成では、剥離によってフッ素樹脂材から担体を除去するので、簡単な方法で担体を除去することができる。このため、溶解により担体を除去する場合に比べて、フッ素樹脂基材の製造工程を簡略化することができる。
本願発明の一実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、シランカップリング剤を含有するプライマ材料を卑金属製の平板状担体に付着する第1工程と、上記担体のプライマ材料付着側面にフッ素樹脂を主成分とするフッ素樹脂材を熱圧着する第2工程と、上記第2工程後における上記担体の一部のエッチング液での除去により回路を形成する第3工程とを備え、上記第2工程により上記担体とフッ素樹脂材との間に改質層を形成する。
この構成によれば、プライマ材料を担体に付着させた後、プライマ材料をフッ素樹脂材に熱圧着するため、厚さにおいて斑が少なく、かつ担体との接着強度の高い改質層をフッ素樹脂材に形成することができる。また、熱圧着によってシランカップリング剤が互いに結合するため、改質層が経時的に安定する。すなわち、この構成によれば、表面改質状態が安定しているプリント配線板を製造することができる。
上記担体の素材が銅又は銅合金である場合、上記第3工程で用いるエッチング液が塩化鉄又は塩化銅を含むことが好ましい。このように担体として銅を採用し、上記エッチング液を用いることによって、従来と同様の方法により担体から回路パターンを形成することができる。
上記第2工程での熱圧着の温度が、上記フッ素樹脂材のフッ素樹脂の分解温度以下であるとよい。この構成によれば、製造過程において、フッ素樹脂材の分解を抑制することができる。
上記フッ素樹脂材、改質層及び回路を含む積層体における回路側表面の少なくとも一部に被覆材を積層する工程をさらに備えるとよい。この構成では、プリント配線板の少なくとも一部が被覆材で覆われるため、信頼性の向上又は曲げ強度を高めることができる。すなわち、金属製の担体が被覆材で覆われることにより、担体により構成される回路パターンが酸化等から保護される。また、改質層が被覆材で覆われることにより、この部分の曲げ強度が高くなる。
[本願発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係るフッ素樹脂基材、プリント配線板、及び回路モジュールの具体例を、図面を参照しつつ以下に説明する。
[フッ素樹脂基材]
図1を参照して、フッ素樹脂基材1について説明する。フッ素樹脂基材1は、フッ素樹脂を主成分とするフッ素樹脂層2と、このフッ素樹脂層2の表面の少なくとも一部の領域に形成される改質層3とを有する。なお、フッ素樹脂層2の「表面」とは、フッ素樹脂層2における一面とこの反対側の他面とを含むフッ素樹脂層2の全周面をいう。図1では、片面の全体に改質層3が形成された構成となっているが、これは一例であって、改質層3の形成される領域は、片面の一部であってもよいし、また、両面の全体又は両面それぞれの一部分であってもよい。
ここで、「フッ素樹脂」とは、高分子鎖の繰り返し単位を構成する炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1つが、フッ素原子又はフッ素原子を有する有機基(以下「フッ素原子含有基」ともいう)で置換されたものをいう。フッ素原子含有基は、直鎖状又は分岐状の有機基中の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されたものであり、例えばフルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、フルオロポリエーテル基等を挙げることができる。
「フルオロアルキル基」とは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を意味し、「パーフルオロアルキル基」を含む。具体的には、「フルオロアルキル基」は、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基、アルキル基の末端の1個の水素原子以外の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基等を含む。
「フルオロアルコキシ基」とは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルコキシ基を意味し、「パーフルオロアルコキシ基」を含む。具体的には、「フルオロアルコキシ基」は、アルコキシ基の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基、アルコキシ基の末端の1個の水素原子以外の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基等を含む。
「フルオロポリエーテル基」とは、繰り返し単位としてオキシアルキレン単位を有し、末端にアルキル基又は水素原子を有する1価の基であって、このアルキレンオキシド鎖又は末端のアルキル基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された1価の基を意味する。「フルオロポリエーテル基」は、繰り返し単位として複数のパーフルオロアルキレンオキシド鎖を有する「パーフルオロポリエーテル基」を含む。
改質されていないフッ素樹脂基材1つまりフッ素樹脂層2の主成分とされるフッ素樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、並びにテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ビニリデンフルオライドの3種類のモノマーからなる熱可塑性フッ素樹脂(THV)及びフルオロエラストマーを挙げることができる。また、これら化合物を含む混合物やコポリマーも、フッ素樹脂基材1を構成する材料として使用できる。
中でも、フッ素樹脂層2の主成分として用いられるフッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。これらのフッ素樹脂を使用することによって、フッ素樹脂層2が、可撓性、光透過性、耐熱性及び難燃性を有するものとなる。
また、フッ素樹脂層2は、任意成分として、例えばエンジニアリングプラスチック、難燃剤、難燃助剤、顔料、酸化防止剤、反射付与剤、隠蔽剤、滑剤、加工安定剤、可塑剤、発泡剤、補強材等を含み得る。
上記エンジニアリングプラスチックとしては、フッ素樹脂基材1に求められる特性に応じて公知のものから選択して使用でき、典型的には芳香族ポリエーテルケトンを使用することができる。
この芳香族ポリエーテルケトンは、ベンゼン環がパラ位に結合し、剛直なケトン結合(−C(=O)−)又はフレキシブルなエーテル結合(−O−)によってベンゼン環同士が連結された構造を有する熱可塑性樹脂である。芳香族ポリエーテルケトンとしては、例えばエーテル結合、ベンゼン環、エーテル結合、ベンゼン環、ケトン結合及びベンゼン環が、この順序で並んだ構造単位を有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、エーテル結合、ベンゼン環、ケトン結合及びベンゼン環が、この順序で並んだ構造単位を有するポリエーテルケトン(PEK)を挙げることができる。中でも、芳香族ポリエーテルケトンとしては、PEEKが好ましい。このような芳香族ポリエーテルケトンは、耐摩耗性、耐熱性、絶縁性、加工性等に優れる。
PEEK等の芳香族ポリエーテルケトンとしては、市販品を使用することができる。芳香族ポリエーテルケトンとしては、様々なグレードのものが市販されており、市販されている単一のグレードの芳香族ポリエーテルケトンを単独で使用してもよく、複数のグレードの芳香族ポリエーテルケトンを併用してもよく、また変性した芳香族ポリエーテルケトンを使用してもよい。
難燃剤としては、公知の種々のものを使用することができ、例えば臭素系難燃剤、塩素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤を挙げることができる。
難燃助剤としては、公知の種々のものを使用することができ、例えば三酸化アンチモン等を挙げることができる。
顔料としては、公知の種々のものを使用することができ、例えば酸化チタン等を挙げることができる。
酸化防止剤としては、公知の種々のものを使用することができ、例えばフェノール系酸化防止剤等を挙げることができる。
反射付与剤としては、公知の種々のものを使用することができ、例えば酸化チタン等を挙げることができる。
補強材としては、フッ素樹脂層2よりも線膨張率が小さいものであれば特に限定されるものではないが、絶縁性と、フッ素樹脂の融点で溶融流動しない耐熱性と、フッ素樹脂と同等以上の引っ張り強さと、耐腐食性とを有することが望ましい。このような補強材としては、例えばガラスをクロス状に形成したガラスクロス、このようなガラスクロスにフッ素樹脂を含浸させたフッ素樹脂含有ガラスクロス、金属、セラミックス、アルミナ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、アラミド等の耐熱繊維をクロス状又は不織布に形成した樹脂クロス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、液晶ポリマー(LCP(I型))、ポリイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、熱硬化樹脂、架橋樹脂等を主成分とする耐熱フィルムなどから構成することが可能である。なお、上記樹脂クロスや耐熱フィルムは、後述する改質層を形成する工程の熱圧着の温度以上の融点(又は熱変形温度)を有するものが用いられる。クロスの織り方としては、フッ素樹脂基材1を薄くするためには平織りが好ましいが、フッ素樹脂基材1を屈曲可能とするためには綾織りやサテン織りなどが好ましい。この他、公知の織り方を適用することができる。
また、フッ素樹脂基材1に中空構造を設けてもよい。
フッ素樹脂基材1の平均厚さの下限としては、3μmが好ましく、6μmがより好ましい。一方、フッ素樹脂基材1の平均厚さの上限としては、1mmが好ましく、0.5mmがより好ましく、0.1mmがさらに好ましく、55μmが特に好ましい。フッ素樹脂基材1の平均厚さが上記下限に満たない場合、フッ素樹脂基材1の強度が不十分となるおそれがある。また、フッ素樹脂基材1の平均厚さが上記上限を超える場合、フッ素樹脂基材1ひいてはフッ素樹脂基材1を用いたプリント配線板の可撓性や光透過性が不十分となるおそれがある。
フッ素樹脂基材1の波長600nmの光の透過率の下限としては、50%が好ましく、70%がより好ましい。一方、フッ素樹脂基材1の光の透過率の上限は、特に限定されないが、理論的に100%を超えることはない。上記光の透過率が上記下限に満たない場合、透明性を必要とする用途に当該フッ素樹脂基材1を使用することができないおそれがある。上記透明性を必要とする用途としては、当該フッ素樹脂基材1を介して投光又は受光する発光素子又は受光素子を有する電気回路用プリント回路板、光回路及び電気回路が混在したハイブリッド回路板、例えば有機EL、液晶等を用いたフラットディスプレイパネル、タッチパネル等に使用される透明導電膜などが例示される。なお、「波長600nmの光の透過率」とは、JIS−K−7375(2008)に準じ、波長600nmの単波長光源を使用して測定される値である。
<改質層>
改質層3は、シロキサン結合(Si−O−Si)及び親水性有機官能基を含む。この改質層3は、フッ素樹脂層2の主成分であるフッ素樹脂に、親水性有機官能基を有し、シロキサン結合を生成する改質剤(シランカップリング剤)が結合して形成される。つまり、改質層3において、親水性有機官能基がシロキサン結合を構成するSi原子に結合している。この親水性有機官能基によって、フッ素樹脂基材1の表面側に濡れ性を付与している。ここで、フッ素樹脂と改質剤との間の化学結合は、共有結合だけで構成される場合と、共有結合及び水素結合を含む場合とがある。改質層3は、フッ素樹脂基材1の表面近傍の改質層3を除く領域(フッ素樹脂層2の表面近傍)とはミクロ構造や分子構造、元素の存在割合が異なると考えられる領域である。改質層3が親水性有機官能基を有することにより、フッ素樹脂基材1が親水性になり、その表面の濡れ性が向上する。このため、フッ素樹脂基材1を極性溶媒中で表面処理する場合において、その処理速度や表面処理の均一性(処理の斑がないこと)を向上させることができる。
改質層3において、シロキサン結合を構成するSi原子(以下、この原子を「シロキサン結合のSi原子」という)は、N原子、C原子、O原子、及びS原子のいずれか少なくとも1つの原子を介してフッ素樹脂層2のC原子と共有結合する。例えば、シロキサン結合のSi原子は、−O−、−S−、−S−S−、−(CH)n−、−NH−、−(CH)n−NH−、−(CH)n−O−(CH)m−(n,mは1以上の整数である)等の原子団を介してフッ素樹脂のC原子と結合する。
上記親水性有機官能基としては、水酸基、カルボキシ基、カルボニル基、アミノ基、アミド基、スルフィド基、スルホニル基、スルホ基、スルホニルジオキシ基、エポキシ基、メタクリル基及びメルカプト基が好ましい。これらの中でもN原子又はS原子を含むものがより好ましい。これらの親水性有機官能基は、フッ素樹脂基材1の表面の密着性を向上する。なお、改質層3は、これら親水性有機官能基の2種以上を含んでもよい。このように改質層3に異なる性質の親水性有機官能基を付与することによって、フッ素樹脂基材1の表面の反応性等を多様なものとすることができる。これらの親水性有機官能基は、シロキサン結合の構成要素であるSi原子に直接、あるいは1個又は複数個のC原子(例えばメチレン基やフェニレン基)を介して結合する。
上記の特徴を有する改質層3を形成するための改質剤としては、分子中に、親水性有機官能基を有するシランカップリング剤が好適であり、中でもSi原子を含む加水分解性ケイ素含有官能基を有するものがより好適である。このようなシランカップリング剤は、フッ素樹脂層2を構成するフッ素樹脂と化学結合する。シランカップリング剤とフッ素樹脂層2のフッ素樹脂との間の化学結合は、共有結合だけで構成される場合と、共有結合及び水素結合を含む場合とがある。
改質層3の表面の純水との接触角の上限としては、90°であり、80°が好ましく、70°がより好ましい。改質層3の表面の純水との接触角が上記上限を超える場合、導電パターン等の接着物との接着強度が不十分となるおそれがある。一方、改質層3の表面の純水との接触角の下限は特に限定されない。なお、接着物としては、導電性接着剤、異方導電性接着剤、カバーレイフィルムの接着剤、基板同士を接着するためのプリプレグ樹脂、コーティング樹脂、半田レジスト、電磁波シールド材、熱伝導材、強化剤、接着剤、タック付与剤、インク、導電性ペースト、導電パターン、部品を固定及び補強するための接着剤、カバーレイフィルム等が挙げられる。ここで、「純水との接触角」とは、JIS−R−3257(1999)の静滴法により測定される接触角の値であり、例えばERMA社の「G−I−1000」等の接触角測定器により測定される値である。
また、この改質層3は、次のエッチング耐性を有すること、すなわち、塩化鉄を含み、比重が1.33g/cmであって、遊離塩酸濃度が0.2mol/Lであるエッチング液を使用した45℃、2分間の条件で浸漬するエッチング処理に対して、改質層3が除去されないことが好ましい。ここで、「改質層3が除去されない」とは、親水性が失われないことを示し、改質層3が設けられた部分における純水との接触角が90°を超えないことを示す。なお、エッチング処理により、改質層3が形成されている領域において疎水性を示す微小部分が斑状に生じる場合もあるが、この領域全体としては親水性を有する場合は、このような状態は親水性が維持されているものとする。
また、改質層3は、塩化銅含有のエッチング液に対するエッチング耐性を有することが好ましい。なお、改質層3が、塩化鉄含有のエッチング液に対して上記エッチング耐性を有する場合は、この改質層3は、塩化銅含有のエッチング液に対して上記エッチング耐性を有することが確認されている。
また、改質層3の表面と水との接着エネルギーの下限としては、50dyne/cmが好ましい。改質層3の表面と水との接着エネルギーが上記下限に満たない場合、フッ素樹脂基材1の表面の密着性が純粋なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)との比較において不十分となるおそれがある。
また、改質層3の表面の濡れ張力の下限としては、50mN/mが好ましく、60mN/mがより好ましい。濡れ張力が上記下限未満であると、密着力が不足し、改質層3から接着物が剥離するおそれがある。上記濡れ張力の下限は、純粋なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の濡れ張力よりも大きいので、改質層3の表面は密着性が向上している。逆に、改質層3の表面の濡れ張力が上記下限に満たない場合、改質層3の表面の密着性が不十分となるおそれがある。なお、「濡れ張力」とは、JIS−K−6768(1999)に準拠して測定される値である。
改質層3の平均厚さの上限としては、400nmが好ましく、200nmがより好ましい。改質層3の平均厚さが上記上限を超える場合、当該フッ素樹脂基材1が回路基板として用いられた場合に誘電損が大きくなり、高周波特性が不十分となるおそれがある。なお、改質層の「平均厚さ」は、光干渉式膜厚測定機、XPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)、電子顕微鏡等で測定される距離である。
平均厚さ12.5μmのポリイミドシートをたわみ性被着材として測定される改質層3の表面に対する平均厚さ25μmのエポキシ樹脂接着剤の剥離強度の下限としては、1.0N/cmが好ましく、3.0N/cmがより好ましく、5.0N/cmがさらに好ましい。改質層3の表面に対する上記エポキシ樹脂接着剤の剥離強度が上記下限に満たない場合、当該フッ素樹脂基材1の表面に接着したカバーレイ等の接着物の剥がれを防止できず、フッ素樹脂基材1が用いられる回路モジュールにおいて要求される信頼性が得られないおそれがある。なお、「剥離強度」の値は、JIS−K−6854−2(1999)「接着剤−はく離接着強さ試験方法−2部:180度はく離」に準じた方法により測定される値を示す。また、上記剥離強度の測定には、ポリイミドシート及びエポキシ接着剤が積層されたカバーレイを使用し、このカバーレイとして、有沢製作所のカバーレイ「CMタイプ」のうち、ポリイミドシートとしてカネカ社の「アピカルNPI」を用いたものを使用するものとする。
上記改質層3の表面の平均表面粗さRaの上限としては、4μmが好ましく、2μmがより好ましく、1μmがさらに好ましい。改質層3の表面の平均表面粗さRaが上記上限を超える場合、改質層3の表面に導電パターンを積層する場合に、この導電パターンの裏面に凹凸ができ、表皮効果によりこの凹凸に沿って電流が流れることにより、高周波特性信号の伝達遅延や伝達損失が大きくなるおそれや、光の散乱を大きくして当該フッ素樹脂基材1の透明性を低下させるおそれがある。ここで、「平均表面粗さRa」とは、JIS−B−0601(2001)に準拠して測定される算術平均粗さをいう。
上記構成のフッ素樹脂基材1は、例えばプリント配線板の絶縁層として用いられる。この場合、フッ素樹脂基材1には、接着物として、被覆部材、被覆樹脂、接着剤、インク等が積層される。被覆部材としては、例えばカバーレイフィルムが挙げられる。通常、カバーレイは、樹脂製フィルムからなる基材と、この基材に積層され、当該フッ素樹脂基材1に接着される接着剤層とから形成される。このようなカバーレイの基材は、例えばポリイミド、エポキシ樹脂、SPS、フッ素樹脂、架橋ポリオレフィン、シリコーン等で形成される。
フッ素樹脂基材1に接着される接着剤としては、例えば導電性接着剤、異方導電性接着剤、カバーレイフィルムの接着剤、基板同士を接着するためのプリプレグ樹脂が挙げられる。このような接着剤の主成分とされる樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド、不飽和ポリエステル、飽和ポリエステル、ブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリオレフィン、シリコーン、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルサルフォン(PES)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)又はこれらの1又は2以上を含む樹脂が挙げられる。また、これらの樹脂について電子線やラジカル反応等により架橋して得られた樹脂を接着剤の材料として用いてもよい。
また、当該構成のフッ素樹脂基材1は、他のプリント配線板のカバーレイフィルムとしても用いることができる。例えば、絶縁層としてのフッ素樹脂基材1を有するプリント配線板に、カバーレイフィルムとして上記構成のフッ素樹脂基材1を用いることができる。すなわち、絶縁層と被覆材との両者に低誘電材料を採用する。このような構成によれば、信号伝送損失が低い高周波回路モジュールを得ることができる。なお、この場合、絶縁層及びカバーレイフィルムが共にフッ素樹脂であるため、接着剤を用いず、熱溶融で両者を接着することができる。例えば、このプレスは、180℃以上400℃以下、20分以上30分以下、3MPa以上4MPa以下の条件で行われる。
また、ポリイミドや液晶ポリマーを絶縁層として有するプリント配線板にも、当該フッ素樹脂基材1をカバーレイフィルムとして採用することができる。この場合は、接着剤を介してプリント配線板とフッ素樹脂基材1とを接着させる。なお、当該フッ素樹脂基材1は、改質層3が存在するため、この面を接着面とすることにより既存の接着剤(例えばエポキシ樹脂等)により、両者を貼り合せることができる。
[プリント配線板]
図2及び図3を参照して、本発明の一実施形態に係るプリント配線板10について説明する。
プリント配線板10は、上記構成のフッ素樹脂基材1と、このフッ素樹脂基材1の少なくとも一方の面に形成されている導電パターン11、つまり回路とを有する。導電パターン11は、フッ素樹脂基材1の少なくとも一部の領域に形成されている。導電パターン11の少なくとも一部は被覆材13で覆われている。なお、プリント配線板10の用途によっては、この被覆材13は省略される。
改質層3は、フッ素樹脂基材1において導電パターン11及び被覆材13が設けられる領域を含むように形成されていることが好ましい。すなわち、導電パターン11が改質層3の上に、被覆材13が改質層3の上に設けられることが好ましい。このような構成により、導電パターン11及び被覆材13の剥離強度が向上する。
導電パターン11は、例えば銅、銀、金、SUS(ステンレス)、鉄、アルミニウム、ニッケル、ITO(Indium Tin Oxide)等により形成される。導電パターン11は、樹脂と金属粉末との混合体である導電性樹脂や導電性接着剤によって形成してもよい。なお、導電パターン11には、ランド、グランドパターン、電極、金属補強層、ダミー層等が含まれる。
被覆材13には、カバーレイフィルム等の被覆部材と、未硬化時に流動性を有する被覆樹脂とが含まれる。被覆樹脂としては、コーティング樹脂、半田レジスト、導電性接着剤、電磁波シールド材、熱伝導材、強化剤、接着剤、タック付与剤、カバーレイフィルムの接着剤、インク、導電性ペースト等が挙げられる。これらの被覆樹脂の材料としては、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド、不飽和ポリエステル、飽和ポリエステル、ブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリオレフィン、シリコーン、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、シンジオタクチックポリスチレン、スチレン系樹脂、変成ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、又はこれらの2以上を含む樹脂が挙げられる。中でも、スチレン系樹脂と変成ポリフェニレンエーテルとを混合した樹脂が低誘電率かつ易接着性であるため好ましい。また、これらの樹脂について電子線やラジカル反応等により架橋し、こうして得られた樹脂を被覆樹脂の材料として用いてもよい。さらに、これらの樹脂にボイドや気泡(空孔)を含有させて、こうして得られた樹脂を被覆樹脂の材料として用いてもよい。
なお、被覆部材を構成する樹脂として、上記樹脂のうちでも、フッ素樹脂基材1を構成するフッ素樹脂に対して接着性が高い樹脂が好ましく、この樹脂の例としては、例えばフッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ウレタン樹脂、スチレン系樹脂、変成ポリフェニレンエーテルなどが挙げられる。
また、フッ素樹脂、架橋ポリオレフィン、シンジオタクチックポリスチレン等のスチレン系樹脂、変成ポリフェニレンエーテル及びこれらにボイドや気泡(空孔)を有する被覆材13は、誘電率εを3以下に設定することができる。このため、このような構造を有する被覆材13は、低誘電損失を必要とする部材(例えば、高周波用の部材)として好適である。
図3は、プリント配線板10の図2におけるA−A断面図である。被覆材13としてのカバーレイフィルムは、接着剤層14と保護層15とを備えている。導電パターン11は改質層3の上に形成されている。カバーレイフィルムの接着剤層14は改質層3に接着している。これにより、カバーレイフィルムを剥がれ難くすることができる。
図4に、プリント配線板の他の例を説明する。プリント配線板10Xは、上記フッ素樹脂基材1を有する。このプリント配線板10Xでは一方の面に改質層3が形成されている。すなわち、一方の面に親水性を持たせている。また、改質層3が形成されている面に導電パターン11が形成されている。また、少なくとも中央部16は透明であり、中央部16の平均表面粗さRaは4μm以下に形成されている。このようなプリント配線板10Xは、例えばタッチパネル用の電極シートに用いられる。なお、プリント配線板10Xにおいて、他方の面の全体又は1以上の部分的領域に改質層3を形成してもよい。これにより、プリント配線板10Xを用いる製造工程においてこのプリント配線板10Xを搬送板に置いて搬送する場合に、他方の面に形成された改質層3の作用により搬送板にプリント配線板10Xが吸着するようになるため、搬送時のプリント配線板10Xのずれが抑制される。
[回路モジュール]
図5を参照して、回路モジュール20について説明する。回路モジュール20は、上記プリント配線板10と、このプリント配線板10に実装される電子部品21とを有する。電子部品21に接続する導電パターン11は、半田レジストやカバーレイフィルム等の被覆材13で覆われている。電子部品21としては、例えば抵抗、コンデンサ、コイル、コネクタ、スイッチ、IC(Integrated Circuit)、発光素子、受光素子、加速度センサ、音響デバイス(圧電素子、シリコンマイクロフォン等)、磁気センサ、温度センサ、同軸ケーブル等が挙げられる。
この回路モジュール20は、上記プリント配線板10が、リフローに耐える耐熱性を有し、かつ接着性の高い改質層3を有するフッ素樹脂基材1を備えるので、従来のフッ素樹脂基材を有する回路モジュールに比べて製造性に優れる。また、回路モジュール20は、耐熱性が高いフッ素樹脂基材1を有するため耐熱性に優れる。
[高周波回路モジュール]
高周波回路モジュールについて説明する。高周波回路モジュールは、上記プリント配線板10と、このプリント配線板10に実装される高周波デバイス(電子部品21の一種)とを有する。電子部品21に接続する導電パターン11は、半田レジストやカバーレイフィルム等の被覆材13で覆われている。
この高周波回路モジュールは誘電率が小さいフッ素樹脂基材1を有するため、エポキシ樹脂基材を有する高周波回路モジュールに比べて、高周波信号の信号伝送損失が低い。また、導電パターン11及び半田レジストは改質層3上に設けられる。このため、高温高湿環境下においても導電パターン11及び半田レジストがフッ素樹脂基材1から剥がれ難い。これにより、高温高湿環境下においても、導電パターン11の剥離による断線や、半田レジストの剥離による回路特性の劣化が抑制される。このため、改質層3のない従来のフッ素樹脂基材を有する高周波回路モジュールに比べて、高周波回路モジュールの特性劣化を小さくすることができる。
[フッ素樹脂基材の製造方法]
図6を参照して、フッ素樹脂基材1の製造方法を説明する。第1工程では、平板状の担体100に、改質剤であるシランカップリング剤と、アルコールと、水を含むプライマ材料101を付着させる(図6(A)参照)。なお、担体100の表面においてプライマ材料101を付着させる領域は、担体100の表面の少なくとも一部分であり、担体100の表面全体にプライマ材料101を付着してもよい。また、担体100の片面だけにプライマ材料101を付着してもよく、片面の一部の領域だけにプライマ材料101を付着してもよい。なお、ここで、担体100の表面全体とは外周面の全体を示し、例えば、担体100がシートである場合は両面全体を示し、矩形体であるときはその6面全体を示す。
担体100にプライマ材料101を付着させる方法は限定されない。例えば、浸漬法、スプレー法、塗布法など、いずれの方法でも採用される。そして、乾燥により、プライマ材料101のアルコールを除去する。アルコールの除去は、自然乾燥、加熱による乾燥、又は減圧による乾燥のいずれの方法でも採用される。なお、この乾燥は、第2工程の熱圧着を行うプレス機900において、連続して行ってもよい。乾燥後、加熱(例えば120℃15分)することにより、シランカップリング剤を担体100に結合させる。
シランカップリング剤のプライマ材料101全体における含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましい。一方、シランカップリング剤のプライマ材料101全体における含有量の上限としては、5質量%が好ましく、3質量%がより好ましい。シランカップリング剤の含有量が上記上限を超える場合、シランカップリング剤の凝集が生じ、担体100の表面において、均一な厚さのプライマ材料101の膜が形成され難くなるおそれがある。
シランカップリング剤としては、N原子又はS原子を含む親水性有機官能基と、Si原子を含む加水分解性ケイ素含有官能基とを有するシランカップリング剤が好適に用いられる。
シランカップリング剤のSi原子を含む加水分解性ケイ素含有官能基は、加水分解することによりシラノール基を生成する。さらにこのシラノール基が縮合することによりシロキサン結合(Si−O−Si)を形成する。また、上記シラノール基及び親水性有機官能基の一部は、担体100に結合する。これにより、安定性を担保するシロキサン結合及び親水性を担保する親水性有機官能基を含む被膜が担体100上に形成される。また、親水性有機官能基は、N原子又はS原子を含むことでフッ素樹脂層2のフッ素樹脂と比較的容易に結合し得る。
上記Si原子を含む加水分解性ケイ素含有官能基とは、具体的にはSi原子にアルコキシ基が結合した基である。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。
N原子を含む親水性有機官能基としては、例えばアミノ基、ウレイド基等を挙げることができる。
N原子を含む親水性有機官能基を有するシランカップリング剤としては、例えばアミノアルコキシシラン、ウレイドアルコキシシラン等、及びこれらの誘導体が挙げられる。
アミノアルコキシシランとしては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
アミノアルコキシシランの誘導体としては、例えば3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン等のケチミン、N−ビニルベンジル−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン酢酸塩等のシランカップリング剤の塩などが挙げられる。
ウレイドアルコキシシランとしては、例えば3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−(2−ウレイドエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
S原子を含む親水性有機官能基としては、例えばメルカプト基、スルフィド基等が挙げられる。
S原子を含む親水性有機官能基を有するシランカップリング剤としては、例えばメルカプトアルコキシシラン、スルフィドアルコキシシラン及びこれらの誘導体が挙げられる。
メルカプトアルコキシシランとしては、例えば3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピル(ジメトキシ)メチルシラン等が挙げられる。
スルフィドアルコキシシランとしては、例えばビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等が挙げられる。
上記シランカップリング剤としては、変性基を導入したものであってもよい。変性基としては、フェニル基が好ましい。
シランカップリング剤としては、例示した中でも、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、又はビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが好ましい。
改質剤としては、上記シランカップリング剤に加えて他のカップリング剤を併用することができる。他のカップリング剤としては、フッ素樹脂層2のフッ素樹脂又はそのラジカルに対して反応性を有するものであればよく、例えばチタン系カップリング剤を使用することができる。
チタン系カップリング剤としては、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)ジイソプロピルチタネート、テトラメチルオルソチタネート、テトラエチルオルソチタネート、テトラプロピルオルソチタネート、テトライソプロピルテトラエチルオルソチタネート、テトラブチルオルソチタネート、ブチルポリチタネート、テトライソブチルオルソチタネート、2−エチルヘキシルチタネート、ステアリルチタネート、クレシルチタネートモノマー、クレシルチタネートポリマー、ジイソプロポキシ−ビス(2,4−ペンタジオネート)チタニウム(IV)、ジイソプロピル−ビス(トリエタノールアミノ)チタネート、オクチレングリコールチタネート、チタニウムラクテート、アセトアセティックエスチルチタネート、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジヒドロキシビス(ラクタト)チタン、チタニウム−イソプロポキシオクチレングリコレート、テトラ−n−ブトキシチタンポリマー、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレートポリマー、ブチルチタネートダイマー、チタンアセチルアセトネート、ポリ(チタンアセチルアセトネート)、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
プライマ材料101に含まれるアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられ、これらのアルコール群から選択される1種又は2種以上を含む溶液がプライマ材料101の溶媒として用いられる。
プライマ材料101中の水は微量で足りるが、シランカップリング剤の縮合の際の必須物質である。水の割合は、例えばアルコールの全体量に対して0.01質量%以上0.1質量%以下に設定される。
担体100としては無機物質が用いられる。例えば、担体100は、銅、金、銀、鉄、アルミニウム、ニッケルなどの金属、ガラス、シリコン、シリコーン、カーボン、セラミック等の材料により形成される。担体100は、これら材料の複合体であってもよい。
担体100として、剥離時において溶解法(後述参照)を採用するときは、エッチング液により溶解する卑金属が採用される。例えば、銅、鉄、アルミニウム等の金属シートが、プライマ材料101の担体100として用いられる。
担体100の形状は、特に限定されるものではないが、改質層3が形成される対象物の形状に合致するように構成される。例えば、板状又はシート状のフッ素樹脂材102に改質層3を形成する場合は、板状の担体100が用いられる。また、曲面を有するフッ素樹脂材102に改質層3を形成する場合には、この曲面に沿う形状の担体100が用いられる。さらに、担体100は平面視で複数のブロック領域に区分されていてもよい。
担体100においてプライマ材料101が付着する部分(以下、「付着面」という)の平均表面粗さRaを所定値以下にすることが好ましい。具体的には、担体100の付着面の平均表面粗さRaの上限としては、4μmが好ましく、1μmがより好ましい。担体100の付着面の平均表面粗さRaが上記上限を超える場合、改質層3の平均表面粗さRaが大きくなるおそれがある。また、担体100の付着面は、液体のプライマ材料が均一に塗布されるような表面に調整することが望ましい。特に濡れ性が良好な方がよく、水との接触角は100°以下となるようにすることが望ましい。
なお、担体100の付着面において、全体の所定領域の平均表面粗さRaを所定値以下とし、この所定領域の周囲の部分の平均表面粗さRaを所定値よりも大きくしてもよい。この場合、所定領域に対応する部分の改質層3の表面粗さを、この周囲の部分の表面粗さよりも小さくすることができる。
第2工程では、プライマ材料101を挟むように担体100のプライマ材料付着側面にフッ素樹脂材102を積層し、この積層体をプレス機900で熱圧着する(図6(B)参照)。担体100とフッ素樹脂材102との間に気泡や空隙が形成されないようにするために、この熱圧着は減圧下で行うことが好ましい。また、担体100の酸化を抑制するため、低酸素条件下で行うことが好ましい。例えば、窒素雰囲気中で熱圧着が行われる。これにより担体100とフッ素樹脂材102との間に改質層3を形成する。
フッ素樹脂材102は、フッ素樹脂基材1におけるフッ素樹脂層2を構成する部材である。フッ素樹脂基材1の用途により、各種の添加剤(フィラー)を含むフッ素樹脂材102が用いられる。また、フッ素樹脂基材1に曲げ強度が要求されているときには、上述のガラスクロス等の補強材を含むフッ素樹脂材102が用いられる。
熱圧着条件は、次の条件で行うことが好ましい。すなわち、フッ素樹脂材102の融点以上(さらに好ましくは、分解開始温度以上)、かつフッ素樹脂材102の分解温度以下の温度で熱圧着を行うことが好ましい。ここで、「分解開始温度」とは、フッ素樹脂材102が熱分解し始める温度をいい、「分解温度」とは、フッ素樹脂材102が熱分解によってその質量が10%減少する温度をいう。
フッ素樹脂材102の融点以上の温度で熱圧着を行う理由は、このような温度未満では、フッ素樹脂材102が活性化しないためである。また、フッ素樹脂材102の分解開始温度以上とすることにより、フッ素樹脂材102のC原子がラジカル化するため、フッ素樹脂材102がさらに活性化するためである。つまり、熱圧着の温度をフッ素樹脂材102の融点以上、好ましくは分解開始温度以上とすることにより、担体100上にシランカップリング剤を用いて形成した層に対するフッ素樹脂の結合を促進できると考えられる。
より詳しくは、フッ素樹脂材102の熱圧着の温度の下限としては、フッ素樹脂材102の融点よりも30℃高い温度が好ましく、フッ素樹脂材102の融点よりも50℃高い温度がより好ましい。FEPの場合は、融点が約270℃であるため、温度を300℃以上、好ましくは320℃以上に設定して熱圧着を行うことが好ましい。一方、熱圧着の上限温度は600℃、より好ましくは500℃である。これにより、フッ素樹脂材102の分解を抑制することができる。
圧力は、0.01MPa以上100.0MPa以下に設定される。加圧時間は、0.01分以上1000分以下である。圧力及び加圧時間は制限されるものではなく、シランカップリング剤の反応性等を考慮して設定される。
このような熱圧着により、フッ素樹脂材102のフッ素樹脂のラジカル化したC原子は、シランカップリング剤により形成されたシロキサン結合(Si−O−Si)と他の原子又は原子団を介して化学結合すると考えられる。
これらの結合は、後述する剥離強度の大きさや改質層3がエッチング耐性を有することから、共有結合を含むものであると推察される。これは、共有結合によれば、化学的作用(エッチング処理等の作用)により改質層3が除去され難いためである。なお、改質層3は膜状に広がった高分子であり、この高分子とフッ素樹脂との間において多数の水素結合が形成されることによって両者が強く結合している可能性があるため、これらの水素結合と共有結合とが混在している可能性も否定されない。
第3工程では、担体100の少なくとも一部を除去することにより改質層3を露出させる(図6(C)参照)。担体100の除去方法として、溶解法や剥離法がある。
まず、溶解法について説明する。担体100が卑金属製のシートである場合は、溶解法が適用される。これは、フッ素樹脂材102から金属シートを剥離することが困難であるためである。フッ素樹脂基材1(導電パターン11がない基材)を製造する場合は、担体100とフッ素樹脂材102との積層体を上記卑金属の溶解液に浸漬することによって、担体100を全て除去する。
担体100として銅材を用いるときは、エッチング液により積層体の担体100(銅)を溶解する。エッチング液としては、塩化鉄又は塩化銅を含み、比重が1.31g/cm以上1.33g/cm以下であって、遊離塩酸濃度が0.1mol/L以上0.2mol/L以下であるものが好適に用いられる。エッチング液が用いられる場合において、エッチング条件として、30℃以上45℃以下で、浸漬時間としては30秒以上2分以下とすることが好ましい。このような条件によれば、銅箔を除去し、かつフッ素樹脂材102から改質層3が除去されることを抑制することができる。
担体100とフッ素樹脂材102との熱圧着によりシランカップリング剤の親水性有機官能基の一部は、担体100に化学結合している。この化学結合部分が、担体100の溶解によりエッチング液に晒されるようになるため、加水分解により元の親水性有機官能基に戻るか、又は水酸基等を有する他の官能基に変化すると考えられる。
次に、剥離法について説明する。剥離法では、担体100として、担体100とフッ素樹脂材102との熱圧着後にフッ素樹脂材102から担体100を容易に剥離するものが採用される。例えば、担体100として、シリコーンシートや金属箔が用いられる。また、平面視で複数のブロック領域に区分された担体100を用い、この複数のブロック領域の少なくとも一部を剥離してもよい。
このような担体100を用いる場合においては、第3工程の作業が簡略化される。すなわち、溶解処理を行うことなく、担体100をフッ素樹脂材102から除去することができる。剥離法は、転写法ともいえるが、転写の際にプライマ材料101を変質させてかつフッ素樹脂材102に結合させている点が、単なる転写とは異なる。
本技術による改質層3の形成方法について、従来の課題とともに説明する。
フッ素樹脂は濡れ性が低く、フッ素樹脂材102の表面に液体の反応材料を直接塗布する方法では、反応材料の分布に斑が発生するため、フッ素樹脂材102の表面に均一に親水性有機官能基を導入することが困難である。このため、従来では、フッ素樹脂材102を改質するためプラズマ法が用いられている。プラズマによればフッ素樹脂材102の表面にラジカル種を容易に形成することができ、フッ素樹脂材102の表面に親水基を容易に導入することができる。しかし、プラズマによって処理されたフッ素樹脂材102の表面状態は不安定であるため、その表面が徐々に元の安定な状態(表面不活性な状態)に戻る。このようにプラズマ処理では、フッ素樹脂材102の表面改質状態を長期にわたって維持することができないといった問題がある。
このような課題を解決するために、本技術では、まず、担体100に、シランカップリング剤、アルコール及び水を含むプライマ材料101を付着させる。ここで、担体100の表面は濡れ性が良いため、液体状態のプライマ材料101は斑なく均一に担体100の表面に塗布される。
次に、プライマ材料101に含まれるシランカップリング剤は親水性有機官能基を有するため、担体100に膜状態に広がる。そして、この状態で担体100を120℃前後の温度で加熱し、Si原子を有する加水分解性ケイ素含有官能基を加水分解してシラノール基を生成し、さらにこのシラノール基を縮合させることによってシロキサン結合を形成する。同時に、上記シラノール基及び親水性有機官能基の一部は担体100に結合する。これにより、シロキサン結合構造が平面に網目状に配列する高分子膜が形成されると考えられる。
さらに、この状態で、プライマ材料101が担体100とフッ素樹脂材102との間に挟まれるようにして、担体100とフッ素樹脂材102とを積層する。そして、両者をフッ素樹脂材102の融点以上の温度で熱圧着する。
プライマ材料101は、担体100に膜状に広がっているため、プライマ材料101がフッ素樹脂材102に接触しても、フッ素樹脂の撥水性によってプライマ材料101が斑状にならない。これは、プライマ材料101が膜状であることの他にも、プライマ材料101の乾燥及び加熱時にシロキサン結合が形成されていることにも起因すると考えられる。このため、フッ素樹脂材102に略均一の厚さ(斑が少ない状態)でプライマ材料101が押し付けられる。そして、フッ素樹脂材102と担体100とをフッ素樹脂材102の融点以上の温度で熱圧着するため、シランカップリング剤により形成されたシロキサン結合にフッ素樹脂のC原子が他の原子又は原子団を介して結合すると考えられる。
[プリント配線板の製造方法]
プリント配線板10の製造方法は、上記フッ素樹脂基材1の製造方法に類似する。そこで、上記フッ素樹脂基材1の製造方法を参照しながら説明する。
第1工程では、担体100としての金属シートに、プライマ材料101を付着させる。プライマ材料101はシランカップリング剤とアルコールと水とを含む。この工程は、フッ素樹脂基材1の製造方法における第1工程と同様である。
第2工程では、乾燥により、担体100に付着したプライマ材料101のアルコールを除去した後、担体100を加熱する。そして、プライマ材料101が挟まれるように担体100とフッ素樹脂材102とを積層し、担体100とフッ素樹脂材102とを熱圧着する。この工程は、フッ素樹脂基材1の製造方法における第2工程と同様である。
次に、従来のプリント配線板の製造方法で採用されるエッチング法と同様の方法で配線パターンを形成する。例えば、担体100としての金属層にレジストパターンを形成し、エッチング液に積層体(担体100、金属層、及びレジストパターンの積層体)を浸漬し、この後、レジストパターンを除去する。これにより、導電パターン11が形成される。
このようなプリント配線板10によれば、改質層3が表面に露出するため、従来のプリント配線板に比べて、半田レジスト、導電性接着剤、カバーレイフィルム等の接着物を剥がれ難くすることができる。
フッ素樹脂基材1の製造方法及びプリント配線板10の製造方法の特徴は、フッ素樹脂材102に対してプラズマ処理又はアルカリ処理を行っていない点にある。すなわち、この種の処理を行うことなく、表面活性状態を有するフッ素樹脂基材1又はプリント配線板10を製造することができる。また、このような製造方法によれば、改質層3をフッ素樹脂基材1の表面又はプリント配線板10の表面に比較的簡単に設けることができる。
本実施形態によれば次の効果を奏する。
当該フッ素樹脂基材1の製造方法は、シランカップリング剤を含有するプライマ材料101を平坦状の担体100に付着する第1工程と、上記担体100のプライマ材料101付着側面にフッ素樹脂を主成分とするフッ素樹脂材102を熱圧着する第2工程とを含む。この方法によれば、担体100(例えば、金属層)を有するフッ素樹脂基材1が形成される。また、プライマ材料101を担体100に付着させてから、これをフッ素樹脂材102に熱圧着するため、プライマ材料101を直接フッ素樹脂に塗布する場合に比べて、斑が少なく厚さが比較的均一な改質層3をフッ素樹脂材102に形成することができる。また、熱圧着によってシランカップリング剤が互いに結合してシロキサン結合を形成するため、改質層3が経時的に安定である。すなわち、当該製造方法によれば、表面改質状態が安定しているフッ素樹脂基材1を製造することができる。
担体100が、金属、ガラス、シリコーン、カーボン、セラミックス又はこれらの複合体であり、シランカップリング剤が加水分解性ケイ素含有官能基と親水性有機官能基とを有することが好ましい。上記担体100に対しては、親水性有機官能基を有するシランカップリング剤が膜状に広がりやすい。また、熱圧着により、シランカップリング剤は、加水分解性ケイ素含有官能基が加水分解してシラノールを生成し、このシラノールが縮合することによりシロキサン結合を形成する。このように、シロキサン結合を含む改質層3が担体100及びフッ素樹脂の間に層状に形成されるため、改質層3のエッチング等の化学処理に対する耐性が高くなる。また、改質層3はシランカップリング剤に由来する親水性有機官能基を含むため、担体100及び担体を剥離した後に積層される被覆材13に対する接着性が高い。
上記親水性有機官能基が、N原子又はS原子を含むことが好ましい。N原子及びS原子がラジカル化したフッ素樹脂のC原子と結合し易いため、N原子又はS原子を含む親水性有機官能基は、他の官能基(例えば、フェニル基等、CとHのみからなる基)に比べてフッ素樹脂と結合し易い。これにより、改質層3とフッ素樹脂との間の接着強度(すなわち剥離強度)を高めることができる。
第2工程後に、上記担体100の少なくとも一部を除去する第3工程をさらに備えることが好ましい。このため、少なくとも一部において改質層3が露出したフッ素樹脂基材1を提供することができる。なお、担体100の全部を除去することにより、担体100のないフッ素樹脂基材1を製造することもできる。
担体100が卑金属である場合には、上記溶解法、つまり第3工程で卑金属の溶解液を用いた上記担体100の溶解により上記改質層3を露出させる方法を採用できる。溶解法では、担体100の除去において従来のエッチング法を適用することができるため、従来のエッチング法と同様の方法により任意の箇所の担体100を除去することができ、任意の箇所の改質層3を露出させることができる。
担体100が、少なくとも表面層が金属、ガラス、シリコーン、カーボン、セラミックス又はこれらの組合せから形成され、平面視で複数のブロック領域に区分されており、第3工程において担体100のブロックをフッ素樹脂材102から剥離することで改質層3を露出させるといった方法を採用することができる。この方法によれば、剥離によってフッ素樹脂材102から担体100を除去するため、溶解で担体100を除去する場合に比べて、フッ素樹脂基材1の製造工程を簡略化することができる。
当該プリント配線板10の製造方法は、シランカップリング剤を含有するプライマ材料101を担体100に付着する第1工程と、担体100のプライマ材料101付着側面にフッ素樹脂を主成分とするフッ素樹脂材102を熱圧着する第2工程と、第2工程後における上記担体100の一部のエッチング液での除去により回路(導電パターン11)を形成する第3工程とを含む。この方法によれば、プライマ材料101を担体100に付着させた後、プライマ材料101をフッ素樹脂材102に熱圧着するため、プライマ材料101を直接フッ素樹脂に塗布する場合に比べて、斑が少なく厚みが比較的均一な改質層3をフッ素樹脂材102に形成することができる。また、熱圧着によってシランカップリング剤が互いに結合してシロキサン結合を形成するため、改質層3が経時的に安定する。すなわち、この構成によれば、表面改質状態が安定しているプリント配線板10を製造することができる。
担体100が銅であり、上記第3工程で用いるエッチング液が塩化鉄又は塩化銅を含むことが好ましい。このように、担体100として銅を採用し、エッチング液を用いることによって、従来と同様の方法により回路パターンを形成することができる。
上記第2工程での熱圧着の温度が、上記フッ素樹脂材のフッ素樹脂の分解温度以下であることが好ましい。これにより、製造過程において、フッ素樹脂材102の分解を抑制することができる。
上記フッ素樹脂材102、改質層3及び回路(導電パターン11)を含む積層体における回路側表面の少なくとも一部に被覆材13を積層する工程を含むことが好ましい。この方法によれば、プリント配線板10の少なくとも一部が被覆材13で覆われるため、信頼性の向上又は曲げ強度を高めることができる。すなわち、金属製の担体100が被覆材13で覆われることにより、担体100により構成される回路パターンが酸化等から保護される。また、改質層3が被覆材13で覆われることにより、当該部分の曲げ強度が高くなる。
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
[試験1]
本実施形態に係るフッ素樹脂基材1及び比較に係るフッ素樹脂基材について、剥離強度の試験結果を表1に示す。
この試験に使用した試料(試料1と2)は次のように形成した。フッ素樹脂基材1を構成するフッ素樹脂シート(上記フッ素樹脂基材102に対応するもの)として、平均厚さ0.05mm、寸法幅10mm×長さ500mmのFEP(ダイキン工業株式会社の「FEP−NE−2」)を用いた。
改質層3は次のように形成した。プライマ材料101のシランカップリング剤としては、アミノシランを用いた。プライマ材料101のアルコールとしては、エタノールを用いた。水は添加していない。すなわち、空気中に存在する水及びアルコールに含まれる不純物としての水を用いた。シランカップリング剤の濃度は、プライマ材料101全体の質量に対して1質量%とした。担体100として銅箔(平均厚さ18μm、平均表面粗さRa0.6μm)を用いた。浸漬法により、担体100としての銅箔にプライマ材料101を付着し、乾燥し、120℃で加熱した。これにより、銅箔にプライマ材料101の層を形成した。そして、この銅箔を上記フッ素樹脂シートに熱圧着した。この後、銅箔の全てをエッチング液で除去した。これによって形成された改質層3の平均厚さは、電子顕微鏡による測定で30nmであった。
エッチング処理では、塩化鉄含有のエッチング液を、比重が1.31g/cm以上1.33g/cm以下、遊離塩酸濃度が0.1mol/L以上0.2mol/L以下となるように制御し、温度45℃、浸漬時間2分の条件でエッチングを行った。
そして、試料1は、エッチング処理後、水で洗浄し、乾燥した直後に、平均厚さ25μmのエポキシ樹脂接着剤層と平均厚さ12.5μmのポリイミド層とを有する試験用ポリイミドシートでフッ素樹脂基材1を被覆した。なお、上記試験用ポリイミドシートとしては、有沢製作所のカバーレイ「CMタイプ」のうち、ポリイミド層としてカネカ社のポリイミドフィルム「アピカルNPI」を用いたものを使用した。その後、24時間経過後に、試験用ポリイミドシートの剥離強度を測定した。剥離強度の測定は、JIS−K−6854−2(1999)「接着剤−はく離接着強さ試験方法−2部:180度はく離」に準じた方法で行った(以下、試験用ポリイミドシートの剥離強度という)。
また、試料2は、エッチング処理後、水で洗浄し、乾燥した後に、1週間にわたって空気雰囲気で放置した。その後、試験用ポリイミドシートでフッ素樹脂基材1を被覆した。その後、24時間経過後に、試験用ポリイミドシートの剥離強度を測定した。
一方、比較に係るフッ素樹脂基材(試料3と4)については、上記フッ素樹脂シート(平均厚さ0.05mm、平均幅10mm、平均長さ500mmのFEP(ダイキン工業株式会社の「FEP−NE−2」))をプラズマ処理した。キャリアガスとしては、Nを用いた。反応ガスとしては、CF、Oを用いた。キャリアガスと反応ガスとの体積比は、1650/1000(キャリアガス/反応ガス)とした。ガス圧力は27Pa、流量は1650sccm、電力は5000Wで、容量結合型のプラズマ装置を用いて、30分間のプラズマ処理を行った。
そして、試料3は、プラズマ処理の直後に、試験用ポリイミドシートでフッ素樹脂基材(プラズマ処理品)を被覆した。その後、24時間経過後に、試験用ポリイミドシートの剥離強度を測定した。
また、試料4は、1週間にわたって空気雰囲気で放置した。その後、試験用ポリイミドシートでフッ素樹脂基材(プラズマ処理品)を被覆した。その後、24時間経過後に、試験用ポリイミドシートの剥離強度を測定した。この剥離強度の測定結果を表1に示す。
Figure 0006461532
[結果]
(1)表1に示されるように、処理直後においては、プラズマ処理したフッ素樹脂シートに対するポリイミドシートの剥離強度よりも、本実施形態に係るフッ素樹脂基材に対するポリイミドシートの剥離強度が大きい。
(2)また、プラズマ処理したフッ素樹脂シートでは、1週間の放置により、ポリイミドシートの剥離強度が大幅に低下している。これに対して、本実施形態に係るフッ素樹脂基材1では、1週間にわたって放置した後において剥離強度に若干の低下があるものの、その大きさはある程度維持されている。これは、フッ素樹脂基材1に形成された改質層3が安定であることを示す。
なお、表1に示す変化率は、{(PB−PA)/PA}×100(%)により計算される値である。この式において、「PA」及び「PB」は次の内容を示す。「PA」は、試験に係るフッ素樹脂シートに改質層を形成して洗浄及び乾燥した直後に試験用ポリイミドシートを接着し、24時間の経過後に剥離強度の測定を行ったときの試験用ポリイミドシートの剥離強度を示す。「PB」は、試験に係るフッ素樹脂シートに改質層を形成して洗浄及び乾燥し、1週間にわたって空気雰囲気で放置後に試験用ポリイミドシートを接着し、24時間の経過後に剥離強度の測定を行ったときの試験用ポリイミドシートの剥離強度を示す。
この試験では、エポキシ樹脂接着剤を介して接着したポリイミドシートの剥離強度を比較しているが、接着剤の種類に関わらず、結果(2)の傾向がある。すなわち、接着剤の種類にかかわらず、プラズマ処理したフッ素樹脂シートは、1週間の放置により表面活性が殆ど消失する傾向にある。一方、本実施形態のフッ素樹脂基材1は、エポキシ樹脂接着剤のみならず、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド等を主成分とする接着剤に対しても接着性を有し、1週間経過後においてもその接着性は略維持されている。すなわち、本実施形態のフッ素樹脂基材1は1週間の放置によっても表面活性の低下が小さい。
[試験2]
また、上記試験1においてエッチング処理してから洗浄及び乾燥した直後のフッ素樹脂基材の試料1と、改質層を形成する前のフッ素樹脂シート(ダイキン工業株式会社の「FEP−NE−2」)とについて、それぞれサンプルを10枚用意し、純水との接触角を、JIS−R−3257(1999)の静滴法により測定した。
この結果、フッ素樹脂基材の試料1の改質層の表面における純水との接触角は、50°以上90°以下の範囲に分布していた。一方、改質層を形成していないフッ素樹脂シートの表面における純水との接触角は、95°以上130°以下の範囲に分布していた。このように、改質層を形成したフッ素樹脂基材は、その表面の純水との接触角が明らかに小さくなっており、親水性が向上していることが確認された。
[試験3]
本実施形態に係るプリント配線板10について、剥離強度の試験結果を表2に示す。以下、試験の条件を説明する。
信頼性試験に供するため、試料No.1〜8を以下のように形成した。
フッ素樹脂基材1を構成するフッ素樹脂シート(上記フッ素樹脂基材102に対応するもの)として、平均厚さ0.05mm、平均幅10mm、平均長さ500mmのFEP(ダイキン工業株式会社の「NF−0050」)を試料No.1,2,5,6に使用した。また、PFA(ダイキン工業株式会社の「AF―0050」)を試料No.3,4,7,8に使用した。
以下に説明するプライマ材料101を用いて改質層3を形成した。プライマ材料101のシランカップリング剤としては、アミノシランを用いた。プライマ材料101のアルコールとしては、エタノールを用いた。水は添加していない。すなわち、空気中に存在する水及びアルコールに含まれる不純物としての水を用いた。シランカップリング剤の濃度は、プライマ材料101全体の質量に対して1質量%とした。担体100として銅箔(平均厚さ18μm、平均表面粗さRa0.6μm)を用いた。浸漬法により、担体100としての銅箔にプライマ材料101を付着し、乾燥し、120℃で加熱した。これにより、銅箔にプライマ材料101の層を形成した。このプライマ層の平均厚さは30nmであった。そして、この銅箔を上記フッ素樹脂シートに熱圧着した。
次に、エッチング法で、平均厚さ18μm、平均幅100μm、平均ピッチ100μmで25本の銅配線を形成した。エッチング処理では、塩化鉄含有のエッチング液を、比重が1.31g/cm以上1.33g/cm以下、遊離塩酸濃度が0.1mol/L以上0.2mol/L以下となるように制御し、温度45℃、浸漬時間2分間の条件でエッチングを行った。
さらに、平均厚さ25μmのエポキシ樹脂接着剤層と平均厚さ12.5μmのポリイミド層とを有するポリイミドシート(試験用ポリイミドシート)で、銅配線を被覆した。
信頼性試験として、相対湿度85%、温度85℃の条件下で上記プリント配線板10を100時間放置した。
銅配線及びポリイミドシートについて、信頼性試験の前後で試験用ポリイミドシートの剥離強度を測定した。剥離強度の測定に係るものは、信頼性試験の前後において互いに隣接するものを用いた。
Figure 0006461532
[結果]
(1)表2に示されるように、試料No.1〜No.8について、信頼性試験前の剥離強度は、判定基準である1.0N/cm以上である。なお、改質層3の形成を行わずプラズマ照射後に上記試料No.1と同様の方法で銅配線を形成した試料については、信頼性試験前の剥離強度は、判定基準である1.0N/cmよりも小さい値であった。
(2)また、試料No.1〜No.8について、信頼性試験の前後において剥離強度の変化率は小さい。すなわち、剥離強度の変化率{(P2−P1)/P1}×100(%)は、判定基準である±10%の範囲内である。このように本実施形態のプリント配線板10においては導電パターン11及びポリイミドシート(被覆部材)の剥離強度が高く、かつ信頼性試験の前後において剥離強度の変化率が小さい。
(3)また、表1及び表2には示していないが、試料No.1〜No.8と同一条件で作成した試料(No.11〜No.18)について、エッチング耐性の試験を行った。なお、試料は、エッチングで全ての銅箔を除去し、銅配線を形成していない。すなわち、フッ素樹脂基材の表面に改質層3のみを形成した。そして、フッ素樹脂基材(改質層3を含む)のエッチング耐性を確認するために、温度45℃、比重が1.31g/cm以上1.33g/cm以下、遊離塩酸濃度が0.1mol/L以上0.2mol/L以下となるように制御されたエッチング液に、フッ素樹脂基材を2分間にわたって浸漬した。また、このエッチング試験の前後において、試験用ポリイミドシートについての剥離強度を比較した。この結果、剥離強度は、いずれの試料についてもその変化率は±10%以内であった。ここで、「変化率」は、{(エッチング試験後の剥離強度−エッチング試験前の剥離強度)/(エッチング試験前の剥離強度)}×100(%)の式で示される値を示す。すなわち、この結果によれば、エッチングレートが低温化により低下することを考慮すると、改質層3は、少なくとも、比重が1.31g/cm以上1.33g/cm以下であって遊離塩酸濃度が0.1mol/L以上0.2mol/L以下であるエッチング液を使用して45℃以下、2分以内の条件で浸漬するエッチング処理に対して、改質層3はエッチング耐性を有することが分かる。
銅箔付きフッ素樹脂基材1(銅箔とフッ素樹脂基材1との間に改質層3が介在するフッ素樹脂基材1)において、上記エッチング液を使用して45℃以下2分以内の条件で浸漬するエッチング処理であれば、露出した改質層3がエッチング液に晒される時間は2分よりも短い時間となる。このため、フッ素樹脂基材1をこのようなエッチング条件でエッチングした場合、改質層3の劣化はさらに小さくなっていると考えられる。
(4)また、表1及び表2には示していないが、上記試料No.1〜No.8と同一条件で作成した試料(No.21〜No.28)について、純水との接触角(以下、「対水接触角」という)について試験を行った。この結果、純水との接触角は、改質層形成処理前のPFAでは平均115°であり、また改質層形成処理前のFEPでは平均114°であった。これに対して、プライマ材料を介して銅箔をPFA(又はFEP)に接着した後にこの銅箔をエッチング除去したPFA(又はFEP)の対水接触角は、いずれも60°〜80°に低下した。すなわち、改質層形成処理(フッ素樹脂に対してプライマ材料を介して銅箔を接着してからこの銅箔を除去する処理)により親水化していることが確認された。このため、改質層形成処理によれば、エッチング除去面に対するエポキシ接着剤等による接着強度を、未処理のフッ素樹脂に比べて、高くすることができる。
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
金属製の担体100を有するフッ素樹脂基材1は、例えばプリント配線板10の材料として用いられる。一方、担体100を有しないフッ素樹脂基材1は被覆部材として有用である。従来のフッ素樹脂基材はその接着力が低いことから被覆部材(例えば、カバーフィルム)として用いることが困難であったが、このフッ素樹脂基材1は改質層3の存在により接着剤に対して活性であるため、接着剤を介して多種多様な基板に接着させることができる。
上記製造方法によれば、フッ素樹脂材102の所望の部分に改質層3を形成することができる。このことから、所定の部分(すなわち改質層3が形成された領域以外の部分)において、フッ素樹脂自体の特性である撥水性を発揮させることもできる。例えば、一方の面にのみ改質層3を有するフッ素樹脂基材1は防水シートとして有用である。
フッ素樹脂を絶縁層として有する多層プリント配線板の製造方法において、本実施形態に示す少なくとも第1工程及び第2工程を採用することができる。すなわち、多層プリント配線板の製造工程において、第1工程及び第2工程によりフッ素樹脂基材1を形成する。そして、このフッ素樹脂基材1の担体100の一部を除去して回路パターンを形成したものを接着剤を介して積層する。接着剤は改質層3に接触するため、このような改質層3のない多層プリント配線板に比べて、フッ素樹脂基材1同士の密着性が向上する。
1 フッ素樹脂基材
2 フッ素樹脂層
3 改質層
10,10X プリント配線板
11 導電パターン
13 被覆材
14 接着剤層
15 保護層
16 中央部
20 回路モジュール
21 電子部品
100 担体
101 プライマ材料
102 フッ素樹脂材
900 プレス機

Claims (9)

  1. シランカップリング剤を含有するプライマ材料を平板状担体に付着する第1工程と、
    上記担体のプライマ材料付着側面にフッ素樹脂を主成分とするフッ素樹脂材を熱圧着する第2工程とを備え、
    上記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、又はポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体であり、
    上記第2工程での熱圧着の温度が、上記フッ素樹脂材の融点以上であり、かつ上記フッ素樹脂材のフッ素樹脂の分解温度以下である、
    上記担体とフッ素樹脂材との間に改質層を形成するフッ素樹脂基材の製造方法。
  2. 上記担体の少なくとも表面層の素材が、金属、ガラス、シリコーン、カーボン、セラミックス又はこれらの複合体であり、
    上記シランカップリング剤が、加水分解性ケイ素含有官能基と親水性有機官能基とを有する請求項1に記載のフッ素樹脂基材の製造方法。
  3. 上記親水性有機官能基が、N原子又はS原子を含む請求項2に記載のフッ素樹脂基材の製造方法。
  4. 上記第2工程後、上記担体の少なくとも一部を除去する第3工程をさらに備える請求項1、請求項2又は請求項3に記載のフッ素樹脂基材の製造方法。
  5. 上記担体の素材が卑金属であり、
    上記第3工程での担体の除去に上記卑金属の溶解液を用いる請求項4に記載のフッ素樹脂基材の製造方法。
  6. 上記担体が、平面視で複数のブロック領域に区分され、
    上記第3工程での担体の除去に上記複数のブロック領域の少なくとも一部を剥離する請求項4に記載のフッ素樹脂基材の製造方法。
  7. シランカップリング剤を含有するプライマ材料を卑金属製の平板状担体に付着する第1工程と、
    上記担体のプライマ材料付着側面にフッ素樹脂を主成分とするフッ素樹脂材を熱圧着する第2工程と、
    上記第2工程後における上記担体の一部のエッチング液での除去により回路を形成する第3工程と
    を備え、
    上記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、又はポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体であり、
    上記第2工程での熱圧着の温度が、上記フッ素樹脂材の融点以上であり、かつ上記フッ素樹脂材のフッ素樹脂の分解温度以下である、
    上記担体とフッ素樹脂材との間に改質層を形成するプリント配線板の製造方法。
  8. 上記担体の素材が銅又は銅合金であり、
    上記第3工程で用いるエッチング液が塩化鉄又は塩化銅を含む請求項7に記載のプリント配線板の製造方法。
  9. 上記フッ素樹脂材、改質層及び回路を含む積層体における回路側表面の少なくとも一部に被覆材を積層する工程をさらに備える請求項7又は請求項8に記載のプリント配線板の製造方法。
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