[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係るプリント配線板用基板は、フッ素樹脂を主成分とし、絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの少なくとも一方の面に積層される圧延銅箔とを備え、上記ベースフィルムの上記圧延銅箔側の表層の少なくとも一部の領域に改質層を有し、上記改質層がシロキサン結合及び親水性官能基を含むプリント配線板用基板である。
上記「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上の成分を指す。上記「改質層」とは、ベースフィルムの他の領域に比べて圧延銅箔との反応性が高くなっている層を指す。すなわち、「改質層」とは、ベースフィルムの他の領域に比べて圧延銅箔との密着性が高くなっている層を意味する。上記「親水性官能基」とは、水素原子よりも電気陰性度が大きい原子を含む官能基であって、親水性を有するものを指す。
当該プリント配線板用基板は、フッ素樹脂を主成分とするベースフィルム及び圧延銅箔を備えるため、高周波領域に用いた際の伝送損失を抑制できる。また、ベースフィルムの圧延銅箔側の表層の少なくとも一部の領域に、シロキサン結合及び親水性官能基を含む改質層を有するため、圧延銅箔に対して伝送損失の抑制を阻害する粗化処理を施さなくても密着性を向上させることができる。従って、当該プリント配線板用基板によれば、密着性を向上させることができる上、伝送損失を抑制できる。
上記圧延銅箔の銅の純度としては、99.99質量%以上が好ましい。圧延銅箔の銅の純度を上記範囲とすることで、圧延銅箔の抵抗を下げることができるため、伝送損失をより抑制できる。ここで、上記「銅の純度」とは、JIS−C−6515(1998年)に準拠する試験方法により得られた質量基準の銅含有量を指す。
上記圧延銅箔の上記ベースフィルム側の面の最大高さ粗さRzとしては、4μm以下が好ましい。圧延銅箔のベースフィルム側の面の最大高さ粗さRzを上記範囲とすることで、表皮効果により高周波信号が集中する部分の凹凸が小さくなり、電流が直線的に流れやすくなるため、伝送損失をより抑制できる。ここで、上記「最大高さ粗さRz」とは、JIS−B−0601(2001年)に準拠して測定される最大高さ粗さを指し、評価長さを3.2mmとし、カットオフ値を0.8mmとした値である。
上記圧延銅箔の上記ベースフィルム側の面の結晶粒の平均長径としては、100μm以上が好ましい。圧延銅箔のベースフィルム側の面の結晶粒の平均長径を上記範囲とすることで、上記面がより平坦化する。これにより、電流が直線的に流れやすくなるため、伝送損失をより抑制できる。ここで、上記「結晶粒の平均長径」とは、上記面内の任意の3箇所につき、0.5mm四方の光学顕微鏡像を撮影し、撮影視野内に存在する結晶粒の長径を測定した値の平均値を指す。なお、上記「結晶粒の長径」とは、結晶粒を取り囲む最小円(結晶粒の最小外接円)の直径を意味する。
上記親水性官能基としては、水酸基、カルボキシ基、カルボニル基、アミノ基、アミド基、スルフィド基、スルホニル基、スルホ基、スルホニルジオキシ基、エポキシ基、メタクリル基、メルカプト基、及びこれらの組合せが好ましい。上記親水性官能基を上記特定官能基とすることで、上記改質層の表面の反応性を高めることができるため、密着性をより向上させることができる。
上記改質層の平均厚みとしては400nm以下が好ましい。比誘電率が高くなり易い改質層の平均厚みを上記範囲とすることで、伝送損失の抑制機能と密着性の向上機能とをバランスよく発揮させることができる。なお、本明細書において「平均厚み」とは、対象物の厚み方向に切断した断面における測定長さ内の表面側の界面の平均線と、裏面側の界面の平均線との間の距離を指す。ここで、「平均線」とは、界面に沿って引かれる仮想線であって、界面とこの仮想線とによって区画される山の総面積(仮想線よりも上側の総面積)と谷の総面積(仮想線よりも下側の総面積)とが等しくなるような線を指す。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の好適な実施形態に係るプリント配線板用基板について、以下に図面を参照しつつ説明する。
図1に、本発明の一実施形態に係るプリント配線板用基板10の模式的断面図を示す。プリント配線板用基板10は、フッ素樹脂を主成分とし、絶縁性を有するベースフィルム1と、ベースフィルム1の一方の面に直接積層される圧延銅箔4とを備える。ベースフィルム1は、フッ素樹脂を主成分とするフッ素樹脂層2と、このフッ素樹脂層2の圧延銅箔4側の面に形成される改質層3とを有する。つまり、ベースフィルム1は、圧延銅箔4側の表層に改質層3を有する。また、改質層3はシロキサン結合及び親水性官能基を含む。プリント配線板用基板10は、上記構成を備えるため、上述したように密着性を向上させることができる上、伝送損失を抑制できる。
<ベースフィルム>
上述したように、ベースフィルム1は、フッ素樹脂層2と改質層3とを有する。以下、フッ素樹脂層2及び改質層3について説明する。
(フッ素樹脂層)
フッ素樹脂層2は、フッ素樹脂を主成分とする層である。ここで、「フッ素樹脂」とは、高分子鎖の繰り返し単位を構成する炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1つが、フッ素原子又はフッ素原子を有する有機基(以下、「フッ素原子含有基」ともいう)で置換されたものをいう。フッ素原子含有基は、直鎖状又は分岐状の有機基中の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されたものであり、例えばフルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、フルオロポリエーテル基等が挙げられる。
上記「フルオロアルキル基」とは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を意味し、「パーフルオロアルキル基」等が例示できる。具体的なフルオロアルキル基としては、例えばアルキル基の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基、アルキル基の末端の1つの水素原子以外の水素原子がフッ素原子で置換された基等が挙げられる。
上記「フルオロアルコキシ基」とは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルコキシ基を意味し、「パーフルオロアルコキシ基」等が例示できる。具体的なフルオロアルコキシ基としては、例えばアルコキシ基の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基、アルコキシ基の末端の1つの水素原子以外の水素原子がフッ素原子で置換された基等が挙げられる。
上記「フルオロポリエーテル基」とは、繰り返し単位としてオキシアルキレン単位を有し、末端にアルキル基又は水素原子を有する1価の基であって、このアルキレンオキシド鎖又は末端のアルキル基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された1価の基を意味する。フルオロポリエーテル基としては、例えば繰り返し単位として複数のパーフルオロアルキレンオキシド鎖を有する「パーフルオロポリエーテル基」等が例示できる。
フッ素樹脂層2の主成分であるフッ素樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、並びにテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ビニリデンフルオライドの3種類のモノマーにより形成される熱可塑性フッ素樹脂(THV)及びフルオロエラストマー等が挙げられる。また、これら化合物を含む混合物やコポリマーも上記フッ素樹脂として使用できる。
中でも、フッ素樹脂層2の主成分として用いられるフッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びこれらの組み合わせが好ましい。これらのフッ素樹脂は比誘電率が低い材料であるため、これらのフッ素樹脂をフッ素樹脂層2の主成分とすることで、伝送損失をより抑制できる。
また、フッ素樹脂層2は、任意成分として、例えばエンジニアリングプラスチック、難燃剤、難燃助剤、顔料、酸化防止剤、反射付与剤、隠蔽剤、滑剤、加工安定剤、可塑剤、発泡剤、補強材等を含むことができる。この場合、フッ素樹脂層2中の任意成分の含有量の上限としては、50質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましい。
上記エンジニアリングプラスチックとしては、ベースフィルム1に求められる特性に応じて公知のものから選択して使用でき、典型的には芳香族ポリエーテルケトンを使用することができる。
この芳香族ポリエーテルケトンは、ベンゼン環がパラ位で結合し、剛直なケトン結合(−C(=O)−)又はフレキシブルなエーテル結合(−O−)によってベンゼン環同士が連結された構造を有する熱可塑性樹脂である。芳香族ポリエーテルケトンとしては、例えばエーテル結合、ベンゼン環、エーテル結合、ベンゼン環、ケトン結合及びベンゼン環が、この順序で並んだ構造単位を有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、エーテル結合、ベンゼン環、ケトン結合及びベンゼン環が、この順序で並んだ構造単位を有するポリエーテルケトン(PEK)を挙げることができる。中でも、芳香族ポリエーテルケトンとしては、PEEKが好ましい。このような芳香族ポリエーテルケトンは、耐摩耗性、耐熱性、絶縁性、加工性等に優れる。
PEEK等の芳香族ポリエーテルケトンとしては、市販品を使用することができ、例えば市販されている単一のグレードの芳香族ポリエーテルケトンを使用してもよく、複数のグレードの芳香族ポリエーテルケトンを併用してもよく、また変性した芳香族ポリエーテルケトンを使用してもよい。
上記難燃剤としては、公知の種々のものを使用することができ、例えば臭素系難燃剤、塩素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤などを挙げることができる。
上記難燃助剤としては、公知の種々のものを使用することができ、例えば三酸化アンチモン等を挙げることができる。
上記顔料としては、公知の種々のものを使用することができ、例えば酸化チタン等を挙げることができる。
上記酸化防止剤としては、公知の種々のものを使用することができ、例えばフェノール系酸化防止剤等を挙げることができる。
上記反射付与剤としては、公知の種々のものを使用することができ、例えば酸化チタン等を挙げることができる。
上記補強材としては、フッ素樹脂層2よりも線膨張率が小さいものであれば特に限定されるものではないが、絶縁性と、フッ素樹脂の融点で溶融流動しない耐熱性と、フッ素樹脂と同等以上の引っ張り強さと、耐腐食性とを有することが望ましい。このような補強材としては、例えばガラスをクロス状に形成したガラスクロス、このようなガラスクロスにフッ素樹脂を含浸させたフッ素樹脂含有ガラスクロス、金属、セラミックス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、アラミド等により形成された耐熱繊維を含む樹脂クロス、ポリテトラフルオロエチレン、液晶ポリマー、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、熱硬化樹脂、架橋樹脂等を主成分とする耐熱フィルムなどから構成することが可能である。なお、上記樹脂クロス及び耐熱フィルムとしては、後述する改質層3を形成する工程の熱圧着の温度以上の融点(又は熱変形温度)を有するものが好ましい。上記樹脂クロスの織り方としては、フッ素樹脂層2を薄くするためには平織りが好ましいが、フッ素樹脂層2を屈曲可能とするためには綾織り及びサテン織りが好ましい。この他、公知の織り方を適用することができる。
また、フッ素樹脂層2に中空構造を設けてもよい。この場合、フッ素樹脂層2の比誘電率を小さくすることができるため、伝送損失をより効果的に抑制できる。
フッ素樹脂層2の平均厚みの下限としては、3μmが好ましく、6μmがより好ましい。一方、フッ素樹脂層2の平均厚みの上限としては、1mmが好ましく、0.5mmがより好ましく、0.1mmがさらに好ましく、55μmが特に好ましい。フッ素樹脂層2の平均厚みが上記下限未満の場合、フッ素樹脂層2の強度が不十分となるおそれがある。また、フッ素樹脂層2の平均厚みが上記上限を超える場合、可撓性が要求される電子機器への適用が困難となるおそれがある。
(改質層)
改質層3は、シロキサン結合(Si−O−Si)及び親水性官能基を含む。この改質層3は、フッ素樹脂層2の主成分であるフッ素樹脂に、例えば親水性官能基を有し、かつシロキサン結合を生成する改質剤(シランカップリング剤)が結合して形成される。この場合、改質層3において、例えば親水性官能基がシロキサン結合を構成するSi原子に結合している。ここで、フッ素樹脂と改質剤との間の結合は、共有結合だけで構成される場合、共有結合及び水素結合を含む場合等がある。
改質層3において、シロキサン結合を構成するSi原子(以下、この原子を「シロキサン結合のSi原子」ともいう)は、例えばN原子、C原子、O原子、及びS原子のいずれか少なくとも1つの原子を介してフッ素樹脂層2のC原子と共有結合する。具体的には、シロキサン結合のSi原子は、例えば−O−、−S−、−S−S−、−(CH2)n−、−NH−、−(CH2)n−NH−、−(CH2)n−O−(CH2)m−(n及びmは1以上の整数である)等の原子団を介してフッ素樹脂層2のC原子と結合する。
上記親水性官能基としては、水酸基、カルボキシ基、カルボニル基、アミノ基、アミド基、スルフィド基、スルホニル基、スルホ基、スルホニルジオキシ基、エポキシ基、メタクリル基、メルカプト基、及びこれらの組合せが好ましい。これらの中でもN原子を含む親水性官能基、及びS原子を含む親水性官能基がより好ましい。これらの親水性官能基は、ベースフィルム1の表面の密着性を向上させる。
また、改質層3は、これら親水性官能基の2種以上を含んでもよい。このように改質層3に異なる性質の親水性官能基を付与することによって、ベースフィルム1の表面の反応性等を多様なものとすることができる。これらの親水性官能基は、シロキサン結合の構成要素であるSi原子に直接、又は1つ若しくは複数のC原子を介して結合することができる。
上記の特徴を有する改質層3を形成するための改質剤としては、分子中に親水性官能基を有するシランカップリング剤が好適であり、中でも加水分解性ケイ素含有官能基を有するものがより好適である。このようなシランカップリング剤は、フッ素樹脂層2を構成するフッ素樹脂と化学結合する。シランカップリング剤とフッ素樹脂層2のフッ素樹脂との間の化学結合は、共有結合だけで構成される場合、共有結合及び水素結合を含む場合等がある。ここで、「加水分解性ケイ素含有官能基」とは、加水分解によりシラノール基(Si−OH)を形成し得る基をいう。
改質層3の表面の純水との接触角の上限としては、90°が好ましく、80°がより好ましく、70°がさらに好ましい。改質層3の表面の純水との接触角を上記上限以下とすることにより、密着性をより向上させることができる。一方、改質層3の表面の純水との接触角の下限は特に限定されない。上記接触角は、例えば親水性官能基の種類や量を調整することにより制御できる。なお、上記「純水との接触角」とは、JIS−R−3257(1999年)の静滴法により測定される接触角の値である。
また、この改質層3は、以下に示すエッチング耐性を有することが好ましい。すなわち、塩化鉄を含み、比重が1.33g/cm3であって、遊離塩酸濃度が0.2mol/Lであるエッチング液(温度45℃)に、2分間の条件で浸漬するエッチング処理に対して、改質層3が除去されないことが好ましい。ここで、「改質層3が除去されない」とは、親水性が失われないことを示し、改質層3が設けられた部分における純水との接触角が90°を超えないことを示す。改質層3が上記エッチング耐性を有すると、プリント配線板用基板10を用いて銅配線を形成する際に、銅配線とベースフィルム1との間にエッチング液が浸入することを抑制できるため、銅配線とベースフィルム1との間の密着性を良好に維持できる。上記エッチング耐性は、例えば後述する好ましいシランカップリング剤を用いることにより改質層3に付与することができる。なお、エッチング処理により、改質層3が形成されている領域において疎水性を示す微小部分が斑状に生じる場合もあるが、この領域全体として親水性を有する場合は、このような状態は親水性が維持されているものとする。
また、改質層3は、塩化銅を含有するエッチング液に対するエッチング耐性を有することが好ましい。なお、改質層3が上記塩化鉄含有エッチング液に対するエッチング耐性を有する場合は、この改質層3は、塩化銅を含有するエッチング液に対して上記と同様のエッチング耐性を有することが確認されている。
改質層3の平均厚みの下限としては、10nmが好ましく、20nmがより好ましい。また、改質層3の平均厚みの上限としては、400nmが好ましく、200nmがより好ましい。改質層3の平均厚みを上記下限以上とすることにより、密着性をより向上させることができる。一方、改質層3の平均厚みが上記上限を超えると、改質層3に起因する誘電損の影響により高周波特性が不十分となるおそれがある。よって、改質層3の平均厚みを上記範囲内とすることで、伝送損失の抑制機能と密着性の向上機能とをバランスよく発揮させることができる。なお、改質層3の平均厚みは、例えば電子顕微鏡等により測定できる。
ベースフィルム1中の改質層3の含有量の上限は、10質量%が好ましく、5質量%がより好ましく、1質量%がさらに好ましい。上記含有量を上記上限以下とすることにより、伝送損失の抑制機能と密着性の向上機能とをバランスよく発揮させることができる。なお、上記含有量の下限については、密着性を向上できる限り特にない。
<圧延銅箔>
圧延銅箔4は、導電層として用いられるものであり、プリント配線板を製造する際に、例えばエッチングにより種々のパターンに加工される。
圧延銅箔4としては、プリント配線板に適用可能な圧延銅箔であれば特に限定されず、要求特性等に応じて適宜選択すればよい。圧延銅箔4の銅の純度の下限としては、99.99質量%が好ましく、99.995質量%がより好ましい。また、上記純度の上限としては、99.999質量%が好ましい。上記純度を上記下限以上とすることで、圧延銅箔4の抵抗を下げることができるため、伝送損失をより抑制できる。一方、上記純度が上記上限を超えると、コスト増加につながるおそれがある。
圧延銅箔4の平均厚みの下限としては、1μmが好ましく、5μmがより好ましく、10μmがさらに好ましい。また、圧延銅箔4の平均厚みの上限としては、300μmが好ましく、200μmがより好ましく、150μmがさらに好ましい。上記平均厚みが上記下限未満の場合、圧延銅箔4により得られる銅配線の抵抗が増大するおそれがある。一方、上記平均厚みが上記上限を超えると、可撓性が要求される電子機器への適用が困難となるおそれがある。
圧延銅箔4のベースフィルム1側の面4a(図1参照)の最大高さ粗さRzの上限としては、4μmが好ましく、2μmがより好ましく、1.3μmがさらに好ましい。上記最大高さ粗さRzを上記上限以下とすることにより、表皮効果により高周波信号が集中する部分の凹凸が小さくなり、電流が直線的に流れやすくなるため、伝送損失をより抑制できる。一方、上記最大高さ粗さRzの下限としては、特に限定されないが、通常0.1μm程度である。上記最大高さ粗さRzは、例えば圧延銅箔4の製造に用いる圧延ロールの表面粗さの調整や、圧延後の銅箔に対して研磨処理を施すこと等により制御できる。
圧延銅箔4のベースフィルム1側の面4aの結晶粒の平均長径の下限としては、100μmが好ましく、110μmがより好ましく、120μmがさらに好ましい。上記平均長径を上記下限以上とすることにより、ベースフィルム1側の面4aがより平坦化する。これにより、電流が直線的に流れやすくなるため、伝送損失をより抑制できる。一方、上記平均長径の上限としては、特に限定されないが、通常180μm程度である。上記平均長径は、例えば圧延後の銅箔に対して熱処理を施すこと等により制御できる。
プリント配線板用基板10は、例えばサブトラクティブ法用のプリント配線板用基板として使用できる。プリント配線板用基板10をサブトラクティブ法に適用する場合は、圧延銅箔4にレジストパターン等のマスキングを施してエッチングすることにより、圧延銅箔4がパターニングされて銅配線等が形成される。なお、本発明のプリント配線板用基板10は、サブトラクティブ法用に限定されず、例えば厚みの薄い圧延銅箔4を用いることにより、セミアディティブ法等にも適用できる。
<プリント配線板用基板の製造方法>
次に、上述したプリント配線板用基板10の好適な製造方法について、図2A〜Cを参照しながら説明する。なお、図2A〜Cにおいて、図1と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
まず、圧延銅箔4の一方の面に、改質剤であるシランカップリング剤と、アルコールと、水とを含むプライマ材料101を付着させる(図2A参照)。
プライマ材料101全体におけるシランカップリング剤の含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましい。また、シランカップリング剤のプライマ材料101全体における含有量の上限としては、5質量%が好ましく、3質量%がより好ましい。シランカップリング剤の含有量を上記下限以上とすることにより、密着性をより向上できる。一方、シランカップリング剤の含有量が上記上限を超える場合、シランカップリング剤の凝集が生じ、圧延銅箔4の表面において、均一な厚みのプライマ材料101の膜が形成され難くなるおそれがある。
上記シランカップリング剤としては、上述したようにN原子又はS原子を含む親水性官能基と、加水分解性ケイ素含有官能基とを有するシランカップリング剤が好適に用いられる。
上記加水分解性ケイ素含有官能基は、加水分解することによりシラノール基を生成する。さらにこのシラノール基が縮合することによりシロキサン結合(Si−O−Si)を形成する。また、上記シラノール基及び親水性官能基の一部は、圧延銅箔4の一方の面に結合する。これにより、安定性を担保するシロキサン結合及び親水性を担保する親水性官能基を含む被膜が圧延銅箔4上に形成される。また、親水性官能基は、N原子又はS原子を含むことで、後述するフッ素樹脂材102のフッ素樹脂と容易に結合し得る。
上記加水分解性ケイ素含有官能基としては、例えばSi原子にアルコキシ基が結合した基等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。
上記N原子を含む親水性官能基としては、例えばアミノ基、ウレイド基、アミド基等が挙げられる。
上記N原子を含む親水性官能基を有するシランカップリング剤としては、例えばアミノアルコキシシラン、ウレイドアルコキシシラン及びこれらの誘導体等が挙げられる。
上記アミノアルコキシシランとしては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記アミノアルコキシシランの誘導体としては、例えば3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン等のケチミン、N−ビニルベンジル−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン酢酸塩等のシラン化合物の塩などが挙げられる。
上記ウレイドアルコキシシランとしては、例えば3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−(2−ウレイドエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記S原子を含む親水性官能基としては、例えばメルカプト基、スルフィド基、スルホニル基、スルホ基、スルホニルジオキシ基等が挙げられる。
上記S原子を含む親水性官能基を有するシランカップリング剤としては、例えばメルカプトアルコキシシラン、スルフィドアルコキシシラン、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
上記メルカプトアルコキシシランとしては、例えば3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピル(ジメトキシ)メチルシラン等が挙げられる。
上記スルフィドアルコキシシランとしては、例えばビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等が挙げられる。
上記シランカップリング剤としては、変性基を導入したものであってもよい。変性基としては、フェニル基が好ましい。
中でも、上記シランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及びビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが好ましい。
上記改質剤としては、上記シランカップリング剤に加えて他のカップリング剤を併用することができる。他のカップリング剤としては、フッ素樹脂層2のフッ素樹脂又はそのラジカルに対して反応性を有するものであればよく、例えばチタン系カップリング剤を使用することができる。
上記チタン系カップリング剤としては、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)ジイソプロピルチタネート、テトラメチルオルソチタネート、テトラエチルオルソチタネート、テトラプロピルオルソチタネート、テトライソプロピルテトラエチルオルソチタネート、テトラブチルオルソチタネート、ブチルポリチタネート、テトライソブチルオルソチタネート、2−エチルヘキシルチタネート、ステアリルチタネート、クレシルチタネートモノマー、クレシルチタネートポリマー、ジイソプロポキシ−ビス(2,4−ペンタジオネート)チタニウム(IV)、ジイソプロピル−ビス(トリエタノールアミノ)チタネート、オクチレングリコールチタネート、チタニウムラクテート、アセトアセティックエスチルチタネート、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジヒドロキシビス(ラクタト)チタン、チタニウム−イソプロポキシオクチレングリコレート、テトラ−n−ブトキシチタンポリマー、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレートポリマー、ブチルチタネートダイマー、チタンアセチルアセトネート、ポリ(チタンアセチルアセトネート)、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
プライマ材料101に含まれるアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。これらのアルコール群から選択される1種又は2種以上が、上記アルコールとして使用できる。
プライマ材料101に含まれる水は、シランカップリング剤を加水分解させる物質であり、微量で足りるが、例えばアルコール100質量部に対して0.01質量部以上0.1質量部以下に設定される。なお、上記水としては、空気中に存在する水分や、アルコールに含まれる不純物としての水分を用いてもよい。
次に、乾燥及び必要に応じて加熱することにより、圧延銅箔4に付着したプライマ材料101中のアルコールを除去した後、プライマ材料101を挟むように圧延銅箔4のプライマ材料が付着する側の面にフッ素樹脂材102を積層し、この積層体をプレス機900で熱圧着する(図2B参照)。フッ素樹脂材102は、上述したフッ素樹脂層2を構成する部材である。熱圧着は、圧延銅箔4とフッ素樹脂材102との間に気泡や空隙が形成されないようにするために、減圧下で行うことが好ましい。また、圧延銅箔4の酸化を抑制するため、低酸素条件下(例えば窒素雰囲気中)で行うことが好ましい。これにより圧延銅箔4とフッ素樹脂材102との間に改質層3が形成され、上述したプリント配線板用基板10が得られる(図2C参照)。
熱圧着条件は、以下の条件で行うことが好ましい。すなわち、フッ素樹脂材102の融点以上(より好ましくは分解開始温度以上)、かつフッ素樹脂材102の分解温度以下の温度で熱圧着を行うことが好ましい。ここで、「分解開始温度」とは、フッ素樹脂材102が熱分解し始める温度をいい、「分解温度」とは、フッ素樹脂材102が熱分解によってその質量が10%減少する温度をいう。
フッ素樹脂材102の融点以上の温度で熱圧着を行う理由は、融点未満の温度ではフッ素樹脂材102が活性化しないためである。また、フッ素樹脂材102の分解開始温度以上に加熱することにより、フッ素樹脂材102のC原子がラジカル化するため、フッ素樹脂材102をさらに活性化させることができる。つまり、熱圧着の温度をフッ素樹脂材102の融点以上(より好ましくは分解開始温度以上)とすることにより、改質層3とフッ素樹脂材102との間の密着を促進できると考えられる。
より詳しくは、フッ素樹脂材102の熱圧着の温度の下限としては、フッ素樹脂材102の融点よりも30℃高い温度が好ましく、フッ素樹脂材102の融点よりも50℃高い温度がより好ましい。FEPの場合は、融点が約270℃であるため、熱圧着の温度の下限としては、300℃が好ましく、320℃がより好ましい。一方、熱圧着の温度の上限としては、600℃が好ましく、500℃がより好ましい。上記温度を上記上限以下とすることにより、フッ素樹脂材102の変形を抑制することができる。
上記熱圧着の圧力は、例えば0.01MPa以上100MPa以下に設定される。加圧時間は、例えば0.01分以上1000分以下である。圧力及び加圧時間は制限されるものではなく、シランカップリング剤の反応性等を考慮して設定される。
このような熱圧着により、フッ素樹脂材102中のラジカル化したC原子が、シランカップリング剤により形成されたシロキサン結合(Si−O−Si)と他の原子又は原子団を介して化学結合すると考えられる。
これらの結合は、後述する剥離強度の大きさや改質層3がエッチング耐性を有すること等から、共有結合を含むものであると推察される。なお、改質層3は、例えば膜状に広がった高分子であり、この高分子とフッ素樹脂との間において多数の水素結合が形成されることによって両者が強く結合している可能性があるため、これらの水素結合と共有結合とが混在している可能性も否定されない。
[利点]
当該プリント配線板用基板は、フッ素樹脂を主成分とするベースフィルム及び圧延銅箔を備えるため、高周波領域に用いた際の伝送損失を抑制できる。また、ベースフィルムの圧延銅箔側の表層の少なくとも一部の領域に、シロキサン結合及び親水性官能基を含む改質層を有するため、圧延銅箔に対して伝送損失の抑制を阻害する粗化処理を施さなくても密着性を向上させることができる。従って、当該プリント配線板用基板によれば、密着性を向上させることができる上、伝送損失を抑制できる。
[その他の実施形態]
上記開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
例えば当該プリント配線板用基板は、図1に示す実施形態のようにベースフィルム1の一方の面に圧延銅箔4が積層されたプリント配線板用基板であってもよく、ベースフィルム1の両面に圧延銅箔4が積層されたプリント配線板用基板であってもよい。また、ベースフィルムの両面に圧延銅箔が積層されたプリント配線板用基板の場合、2枚の圧延銅箔のうちの一方に面するベースフィルムの表層には改質層が形成されていなくてもよい。
また、当該プリント配線板用基板は、図1に示す実施形態のようにベースフィルム1の圧延銅箔4側の表層全体に改質層3が形成された構成に限定されず、例えば図3に示すプリント配線板用基板20のように、ベースフィルム1の圧延銅箔4側の表層の一部の領域に改質層5を有する構成であってもよい。この場合、改質層5が形成される領域としては、例えば導電パターンが形成される箇所に対応する領域とすればよい。
また、当該プリント配線板用基板は、改質層5の一方の面全体に圧延銅箔4が積層されていなくてもよい。例えば、改質層5の一方の面の一部の領域のみに圧延銅箔4が積層されていてもよい。この場合、露出した上記改質層5の一部にカバーレイ等の絶縁材を積層させることにより、ベースフィルム1と絶縁材との密着性を向上させることができる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<プリント配線板用基板の作製>
(試験例1)
プリント配線板用基板の作製に使用した圧延銅箔、フッ素樹脂材及びプライマ材料は以下の通りである。
圧延銅箔としては、SHカッパープロダクツ社の「無酸素銅」(平均厚み18μm、純度99.96質量%、フッ素樹脂材を積層させる面の最大高さ粗さRz1.2μm、)を用いた。フッ素樹脂材としては、平均厚み0.05mm、幅10mm、長さ500mmのFEP材(ダイキン工業社の「FEP−NE−2」)を用いた。プライマ材料としては、シラン1質量%とエタノールとを含むものを用いた。なお、プライマ材料には水を添加していない。すなわち、水としては、空気中に存在する水分、及び上記エタノールに含まれる不純物としての水分を用いた。
圧延銅箔とフッ素樹脂材との積層は、以下の手順で行った。まず、浸漬法により、圧延銅箔にプライマ材料を付着させた後、乾燥し、120℃で加熱した。これにより、圧延銅箔にプライマ材料層を形成した。そして、このプライマ材料層を挟むように圧延銅箔のプライマ材料が付着する側の面にフッ素樹脂材を積層し、この積層体をプレス機で熱圧着することにより、圧延銅箔とフッ素樹脂材との間に改質層を有するプリント配線板用基板を得た。
(試験例2)
プライマ材料を用いないこと以外は、上記試験例1と同様の手順でプリント配線板用基板を得た。
(試験例3)
圧延銅箔の代わりに電解銅箔(福田金属社の「SV箔」、平均厚み18μm、フッ素樹脂材を積層させる面の最大高さ粗さRz1.5μm)を用いたこと以外は、上記試験例1と同様の手順でプリント配線板用基板を得た。
得られた各プリント配線板用基板について、下記項目の評価を行った。結果を表1に示す。
<剥離強度>
試験例1〜3のプリント配線板用基板について、JIS−K−6854−2(1999年)の「接着剤−剥離接着強さ試験方法−2部:180度剥離」に準じた方法で、銅箔とフッ素樹脂材との間の剥離強度(N/cm)を測定した。
<伝送損失>
試験例1〜3のプリント配線板用基板の銅箔をパターニングして、長さ30〜80mm、平均幅150μm、平均高さ18μmのマイクロストリップラインを形成した。次いで、各プリント配線板用基板におけるフッ素樹脂材の上記マイクロストリップラインとは反対側の面に平均厚み18μmの銅箔を貼り合わせて、伝送損失を評価するための試験基板を作製した。次いで、ネットワークアナライザ(Agilent社の「E8361A」)に各試験基板を接続し、周波数10GHz、温度25℃、相対湿度50%の条件で伝送損失(dB/cm)を測定した。
表1に示すように、シロキサン結合及び親水性官能基を含む改質層を設けた試験例1は、上記改質層を設けていない試験例2に比べて剥離強度が高いことが分かる。また、表1に示すように、圧延銅箔を用いた試験例1は、電解銅箔を用いた試験例3に比べて伝送損失が小さいことが分かる。これらの結果から、本発明によれば、密着性を向上させることができる上、伝送損失を抑制できることが分かる。