貫通孔の内部で支持対象物を十分に支えることができ、しかも施工時の手間が少なく施工性に優れる支持具の実現が望まれる。
本発明に係る支持具は、
建築物の区画体に形成された貫通孔に配置される支持対象物を支持する支持具であって、
前記貫通孔の形状に沿う筒状本体部と、当該筒状本体部の一端から内側に向かって突出する支持片部と、を有する樹脂製のスリーブ部材と、
クランク状に形成され、前記貫通孔の内部で前記筒状本体部及び前記支持片部に沿って延びつつ前記貫通孔の外部で前記区画体の表面に沿って延びる状態で前記スリーブ部材に取り付けられる金属製の補助支持部材と、を備える。
この構成によれば、スリーブ部材が貫通孔の形状に沿う筒状本体部の一端から内側(径方向内側)に向かって突出する支持片部を有するので、貫通孔の内部で、広い径方向領域で支持対象物を支えることができる。よって、貫通孔の内部で支持対象物を十分に支えることができる。スリーブ部材は成形性に優れる樹脂で構成されるので、所望形状のスリーブ部材を容易に得ることができる。支持具にて支持対象物を支持するにあたっては、筒状本体部と支持片部とを有する支持具を貫通孔の内部に挿入するだけで良いので、施工時の手間が少なく施工性に優れる。
一方で、スリーブ部材を樹脂製とすると、例えば火災等の熱によって溶融し、その溶融したスリーブ部材自体が区画体(貫通孔)から脱落してしまう可能性がある。その結果、支持対象物も区画体(貫通孔)から脱落してしまう可能性がある。
この点、本構成によれば金属製の補助支持部材がスリーブ部材に取り付けられているので、仮にスリーブ部材が溶融したとしても、補助支持部材は溶融することなくそのまま残る。この補助支持部材は、スリーブ部材を構成する筒状本体部及び支持片部に沿って延びつつ区画体の表面に沿って延びるようにクランク状に形成されるので、区画体の表面に係止されつつ、非常時には貫通孔の内部でスリーブ部材の機能を部分的に代替する。従って、本構成によれば、上述したように施工性を向上させつつ、通常時だけでなく例えば火災発生時等にも、貫通孔の内部で支持対象物を十分に支えることができる。
以下、本発明の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
一態様として、
前記補助支持部材における前記筒状本体部に沿う第一延在部が、前記筒状本体部の外面に沿って配置されていることが好ましい。
この構成によれば、貫通孔の内部に支持具を挿入する際に、支持具は、補助支持部材の第一延在部が貫通孔の内面に摺接しながら挿入されることになる。一般に金属材は樹脂材に比べて摺動抵抗が小さいため、挿入時の抵抗を小さく抑えることができ、この点からも施工性を向上させることができる。
一態様として、
前記スリーブ部材は、前記筒状本体部における前記支持片部とは反対側の端部から外側に向かって突出して前記区画体に取り付けられる鍔部をさらに有し、
前記補助支持部材における前記区画体の表面に沿う第二延在部が、前記鍔部における前記区画体に対する対向面に沿って配置されていることが好ましい。
この構成によれば、スリーブ部材が、鍔部にて補助支持部材の第二延在部を介して区画体の表面に支持されるので、例えば水平方向に延在する区画体に形成され上下方向の貫通孔に設置する場合であっても、スリーブ部材を区画体に安定的に支持することができる。また、補助支持部材は第二延在部にて直接的に区画体の表面に支持されるので、当該補助支持部材を区画体に安定的に係止することができる。
一態様として、
前記補助支持部材における前記支持片部に沿う第三延在部が前記筒状本体部と前記支持片部との境界部に形成された挿通孔に挿通された状態で、前記第三延在部が前記支持片部の内面に沿って配置されていることが好ましい。
この構成によれば、補助支持部材の第二延在部を鍔部の区画体対向面に沿って配置するとともに第三延在部を支持片部の内面に沿って配置することで、スリーブ部材の鍔部と支持片部との間に補助支持部材を安定的に取り付けることができる。このとき、筒状本体部と支持片部との境界部に形成された挿通孔に第三延在部を挿通させながら、補助支持部材を径方向外側からワンタッチでスリーブ部材に取り付けることができる。
一態様として、
前記スリーブ部材と前記補助支持部材との間に、前記スリーブ部材に対する前記補助支持部材の取付状態を維持させるための抜け止め機構が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、施工時にスリーブ部材と補助支持部材とを一体的に扱うことができる。よって、この点からも貫通孔の内部に支持対象物を配置する際の施工性を向上させることができる。
一態様として、
前記抜け止め機構が、少なくとも前記第二延在部と前記鍔部との間に設けられ、
前記第二延在部と前記鍔部との間の前記抜け止め機構は、前記第二延在部及び前記鍔部の一方に設けられた突起部と、前記第二延在部及び前記鍔部の他方に設けられて前記突起部が収納される収納凹部と、を含むことが好ましい。
この構成によれば、スリーブ部材の鍔部と補助支持部材の第二延在部とに振り分けて突起部と収納凹部とを設けるだけで、簡単に、スリーブ部材に対する補助支持部材の取付状態を維持させることができる。
一態様として、
前記抜け止め機構が、少なくとも前記第三延在部と前記筒状本体部との間に設けられ、
前記第三延在部と前記筒状本体部との間の前記抜け止め機構は、前記第三延在部に設けられて前記筒状本体部の内面に係止される突起部を含むことが好ましい。
この構成によれば、補助支持部材の第三延在部が筒状本体部に形成された挿通孔に挿通される構造を利用して、補助支持部材の第三延在部に突起部を設けるだけで、簡単に、スリーブ部材に対する補助支持部材の取付状態を維持させることができる。
一態様として、
前記補助支持部材における前記筒状本体部に沿う第一延在部が、前記筒状本体部の内面に沿って配置されていることが好ましい。
この構成によれば、スリーブ部材の筒状本体部の内側で補助支持部材と支持対象物とが直接接するので、例えば火災発生時等にスリーブ部材が溶融したとしても、支持対象物を安定的に支えることができる。
一態様として、
前記スリーブ部材は、前記筒状本体部における前記支持片部とは反対側の端部から外側に向かって突出して前記区画体に取り付けられる鍔部をさらに有し、
前記補助支持部材における前記区画体の表面に沿う第二延在部が、前記鍔部における前記区画体に対する対向面とは反対側の面に沿って配置されているとともに、前記補助支持部材における前記支持片部に沿う第三延在部が、前記支持片部の内面に沿って配置されていることが好ましい。
この構成によれば、補助支持部材を、スリーブ部材に挿通させることなくスライド移動させるだけで簡単に、スリーブ部材に取り付けることができる。
一態様として、
前記スリーブ部材と前記補助支持部材との間に、前記スリーブ部材に対する前記補助支持部材の取付状態を維持させるための抜け止め機構が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、施工時にスリーブ部材と補助支持部材とを一体的に扱うことができる。よって、この点からも貫通孔の内部に支持対象物を配置する際の施工性を向上させることができる。
一態様として、
前記抜け止め機構が、少なくとも前記第二延在部と前記鍔部との間に設けられ、
前記第二延在部と前記鍔部との間の前記抜け止め機構は、前記第二延在部及び前記鍔部の一方に設けられた突起部と、前記第二延在部及び前記鍔部の他方に設けられて前記突起部が収納される収納凹部と、を含むことが好ましい。
この構成によれば、スリーブ部材の鍔部と補助支持部材の第二延在部とに振り分けて突起部と収納凹部とを設けるだけで、簡単に、スリーブ部材に対する補助支持部材の取付状態を維持させることができる。
一態様として、
前記抜け止め機構が、少なくとも前記第三延在部と前記支持片部との間に設けられ、
前記第三延在部と前記支持片部との間の前記抜け止め機構は、前記第三延在部及び前記支持片部の一方に設けられた突起部と、前記第三延在部及び前記支持片部の他方に設けられて前記突起部が収納される収納凹部と、を含むことが好ましい。
この構成によれば、スリーブ部材の支持片部と補助支持部材の第三延在部とに振り分けて突起部と収納凹部とを設けるだけで、簡単に、スリーブ部材に対する補助支持部材の取付状態を維持させることができる。
一態様として、
前記第三延在部と前記支持片部との間の前記抜け止め機構は、前記第三延在部に設けられた第一突起部と、前記支持片部に設けられて前記第一突起部が収納される第一収納凹部と、を含む第1の組と、前記支持片部に設けられて前記第一突起部とは反対向きに突出する第二突起部と、前記第三延在部に設けられて前記第二突起部が収納される第二収納凹部と、を含む第2の組と、を含むことが好ましい。
この構成によれば、互いに反対方向を向く2つの突起部(第一突起部、第二突起部)と、それらが収納される2つの収納凹部(第一収納凹部、第二収納凹部)とにより、効果的に抜け止めを図ることができる。よって、スリーブ部材に対する補助支持部材の取付状態を良好に維持させることができる。
一態様として、
前記スリーブ部材は、前記筒状本体部における前記支持片部とは反対側の端部から外側に向かって突出して前記区画体に取り付けられる鍔部をさらに有し、
前記補助支持部材における前記区画体の表面に沿う第二延在部が、前記筒状本体部と前記鍔部との境界部に形成された挿通孔に挿通された状態で、前記鍔部における前記区画体に対する対向面に沿って配置されていることが好ましい。
この構成によれば、スリーブ部材が、鍔部にて補助支持部材の第二延在部を介して区画体の表面に支持されるので、例えば水平方向に延在する区画体に形成され上下方向の貫通孔に設置する場合であっても、スリーブ部材を区画体に安定的に支持することができる。また、補助支持部材は第二延在部にて直接的に区画体の表面に支持されるので、当該補助支持部材を区画体に安定的に係止することができる。この場合において、筒状本体部と鍔部との境界部に形成された挿通孔に第二延在部を挿通させながら、補助支持部材を径方向内側からワンタッチでスリーブ部材に取り付けることができる。
一態様として、
前記補助支持部材における前記支持片部に沿う第三延在部が前記支持片部の内面に沿って配置されていることが好ましい。
この構成によれば、補助支持部材の第二延在部を鍔部の区画体対向面に沿って配置するとともに第三延在部を支持片部の内面に沿って配置することで、スリーブ部材の鍔部と支持片部との間に補助支持部材を安定的に取り付けることができる。
一態様として、
前記スリーブ部材と前記補助支持部材との間に、前記スリーブ部材に対する前記補助支持部材の取付状態を維持させるための抜け止め機構が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、施工時にスリーブ部材と補助支持部材とを一体的に扱うことができる。よって、この点からも貫通孔の内部に支持対象物を配置する際の施工性を向上させることができる。
一態様として、
前記抜け止め機構が、少なくとも前記第二延在部と前記筒状本体部との間に設けられ、
前記第二延在部と前記筒状本体部との間の前記抜け止め機構は、前記第二延在部に設けられて前記筒状本体部の外面に係止される突起部を含むことが好ましい。
この構成によれば、補助支持部材の第二延在部が筒状本体部に形成された挿通孔に挿通される構造を利用して、補助支持部材の第二延在部に突起部を設けるだけで、簡単に、スリーブ部材に対する補助支持部材の取付状態を維持させることができる。
一態様として、
前記抜け止め機構が、少なくとも前記第三延在部と前記支持片部との間に設けられ、
前記第三延在部と前記支持片部との間の前記抜け止め機構は、前記第三延在部及び前記支持片部の一方に設けられた突起部と、前記第三延在部及び前記支持片部の他方に設けられて前記突起部が収納される収納凹部と、を含むことが好ましい。
この構成によれば、スリーブ部材の支持片部と補助支持部材の第三延在部とに振り分けて突起部と収納凹部とを設けるだけで、簡単に、スリーブ部材に対する補助支持部材の取付状態を維持させることができる。
一態様として、
前記筒状本体部の一端であって前記支持片部よりも中央側の部位において、前記筒状本体部と前記支持対象物とが一体化されていることが好ましい。
この構成によれば、支持対象物を筒状本体部と共に貫通孔に挿入することができる。スリーブ部材と支持対象物とを一体的に扱うことができるので、この点からも貫通孔の内部に支持対象物を配置する際の施工性を向上させることができる。
一態様として、
前記スリーブ部材から少なくとも径方向に延出する板状体で構成され、前記支持対象物を前記支持片部とは反対側から当該支持対象物に対して交差姿勢で押さえる板状押さえ部をさらに備えることが好ましい。
この構成によれば、径方向に延出する板状押さえ部にて、支持片部との協働により、相対的に広い径方向領域で支持対象物を確実に押さえることができる。このとき、板状押さえ部は支持対象物を当該支持対象物に対して交差姿勢で押さえるので、貫通孔の内部で支持対象物を軸方向に強固に押さえることができる。
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
〔第1実施形態〕
支持具の第1実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、本発明に係る支持具を、延焼防止を目的とする防火措置ユニット100及びそれを用いた防火措置構造に適用した例について説明する。本実施形態の支持具1は、建築物の区画体7に形成された貫通孔7Hに配置される支持対象物5を支持するために用いられる。この支持具1は、貫通孔7Hの形状に沿う筒状本体部21と、当該筒状本体部21の一端から内側に向かって突出する支持片部25とを有する、樹脂製のスリーブ部材20を備える。このような構成において、支持具1は、クランク状に形成され、貫通孔7Hの内部で筒状本体部21及び支持片部25に沿って延びつつ貫通孔7Hの外部で区画体7の表面7aに沿って延びる状態でスリーブ部材20に取り付けられる金属製の補助支持部材30をさらに備える点によって特徴付けられる。これにより、貫通孔7Hの内部で支持対象物5を十分に支えることができ、しかも施工時の手間が少なく施工性に優れる支持具1を提供することができる。以下、本実施形態の支持具1、並びに防火措置ユニット100及び防火措置構造について、詳細に説明する。
なお、以下の説明において、「軸方向L」、「周方向C」、及び「径方向R」は、貫通孔7Hに挿入される筒状のスリーブ部材20を基準として定義するものとする。すなわち、スリーブ部材20の中心軸が延びる方向が軸方向Lであり、スリーブ部材20の中心軸周りに周回する方向が周方向Cであり、スリーブ部材20の中心軸に対して直交する方向に延びる方向が径方向Rである。また、以下の説明で用いる方向や寸法等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態も含む概念である。
本実施形態では、防火措置構造が適用される区画体7は、建築物内の空間を複数の室空間に区画する耐火性及び防火性の構造体である。本実施形態の区画体7は、図1に示すように複数の室空間を鉛直方向に区画する床(又は天井)である。区画体7は、例えば鉄筋コンクリート造(RC)や軽量気泡コンクリート造(ALC)等の中実壁であっても良いし、石膏ボード等の中空壁であっても良い。もちろん、これら以外の構造を有するものを区画体7として用いても良い。
区画体7には、当該区画体7をその厚み方向(図示の例では鉛直方向)に貫通する貫通孔7Hが形成されている。本実施形態では、円形状の貫通孔7Hが形成されている。但し、そのような構成に限定されることなく、貫通孔7Hの具体的形状は、例えば楕円状や多角形状、その他の各種形状であって良い。
区画体7の貫通孔7Hには、長尺体8が挿通されている。長尺体8は、例えば線状体、管状体、及び帯状体等の、一方向に延びる長尺状の構造を有するものである。このような長尺体8としては、例えば空調装置用の配管類を例示することができる。本実施形態では、長尺体8は、冷媒循環用の配管部材81とドレイン水排出用のドレイン管82とを含む。
配管部材81は、内部を冷媒が流通する流体管81Aと、その流体管81Aの周囲を被覆する被覆材81Bとを有する。流体管81Aは例えば金属製の管状部材であり、被覆材81Bは流体管81Aに外装された例えば合成樹脂製の断熱材である。ドレイン管82は例えば合成樹脂製の管状部材である。なお、これら以外にも、例えば導体線の周囲に絶縁被覆材が設けられて構成される電気ケーブル等が長尺体8に含まれても良い。本実施形態では、複数の長尺体8は、束となって貫通孔7Hに挿通されている。一束の長尺体8は、貫通孔7H内において、互いに外面どうしが接する状態で密集して配置されている。そして、互いに隣り合う長尺体8のそれぞれの外面に亘って、谷間空間が形成されている。
貫通孔7Hと複数の長尺体8との間の隙間空間Sに、防火措置構造が設けられている。隙間空間Sは、貫通孔7Hの内面と複数の長尺体8のそれぞれの外面との間の径方向Rの隙間に広がる空間である。本実施形態の防火措置構造は、貫通孔7Hに配置される耐火パック部材50(支持対象物5の一例)を用いて実現されている。より具体的には、防火措置構造は、筒状の筒状本体部21と板状の支持片部25とを有する樹脂製のスリーブ部材20と、このスリーブ部材20と一体化された耐火パック部材50とを備える防火措置ユニット100を用いて実現されている。また、支持対象物5としての耐火パック部材50を、通常時のみならず火災発生時にも安定的に支持するため、支持具1が用いられている。
支持対象物5である耐火パック部材50は、柔軟性を有する袋体51と、この袋体51の内部に封入されたペースト状の熱膨張性耐火材53とを含む(図5を参照)。
袋体51は、例えば樹脂製のフィルム材(例えばポリエチレンフィルムやナイロンフィルム等のプラスチックフィルム)で形成することができる。耐火パック部材50の周縁部では、袋体51が、間に熱膨張性耐火材53を挟むことなく密着している。そして、耐火パック部材50には、当該袋体51が密着している部分(ラミネート部)において、1辺(具体的には長辺の1つ)に沿って、所定間隔で複数の挿通孔52が形成されている。
熱膨張性耐火材53は、熱膨張性(加熱により体積が増加する性質)と耐火性(火熱に耐えやすい性質、溶融温度が高く燃えにくい性質)とを有する部材である。熱膨張性耐火材53としては、公知の材質のものを特に制限なく用いることができ、例えばパテ状部材(熱膨張性パテ状耐火材)を用いることができる。但し、本実施形態の熱膨張性耐火材53は、可塑剤(水性の場合は水、油性の場合は油)の含有量が通常よりも多く、全体としてペースト状となっている。熱膨張性耐火材53は、例えば200℃以上に加熱された際に、その厚み方向に膨張する。熱膨張性耐火材53を含む耐火パック部材50の熱膨張率は、例えば2倍〜40倍等であって良い。
支持対象物5を支持するための支持具1は、図2に示すように、スリーブ部材20と、このスリーブ部材20に取り付けられる補助支持部材30とを備えている。本実施形態では、支持具1は、1つのスリーブ部材20を備えているとともに、複数(本例では3つ)の補助支持部材30を備えている。複数の補助支持部材30は、周方向Cに分散して配置されている。
スリーブ部材20は、筒状本体部21と、鍔部23と、支持片部25とを有する。本実施形態のスリーブ部材20は、これらに加え、板状押さえ部29をさらに有する。筒状本体部21及び鍔部23は、それぞれ単一の環状部材として形成されている。支持片部25及び板状押さえ部29は、それぞれ複数(本例では支持片部25が8つ、板状押さえ部29が4つ)設けられているとともに、それぞれ周方向Cに分散して配置されている。スリーブ部材20を構成する筒状本体部21、鍔部23、支持片部25、及び板状押さえ部29は、例えば樹脂材料を用いて一体的に形成されている。スリーブ部材20は、例えば射出成型によって形成することができる。
筒状本体部21は、スリーブ部材20の本体部分であり、貫通孔7Hに挿入される。筒状本体部21は、貫通孔7Hの形状に対応する形状の筒状(本例では円筒状)に形成されている。但し、その周方向Cの一部は分断されており、筒状本体部21は全体としてC字型の筒状に形成されている。このように、本実施形態では、周方向Cの一部が分断されたものであっても、分断端部どうしを近づけた場合に全体として筒形を呈する形状であれば、「筒状」の概念に含まれるものとする。
本実施形態の筒状本体部21は、周方向Cに分散配置されてそれぞれ軸方向Lに沿って延びる複数の軸方向延在部21Lと、軸方向Lに分散配置されてそれぞれ周方向Cに沿って延びる複数の周方向延在部21Cとを含む。こうして、筒状本体部21は、その厚み方向に貫通する貫通部(肉抜き部分)22を有する筒状に形成されている。筒状本体部21は、その軸方向一方側の端部で鍔部23と一体化されているとともに、軸方向他方側の端部で複数の支持片部25と一体化されている。
鍔部23は、区画体7の表面7a(貫通孔7Hの周縁部)に直接的に取り付けられる。鍔部23は、筒状本体部21の一端から外側(径方向外側)に向かって突出する板状に形成されている。鍔部23は、貫通孔7Hの形状に対応する形状の環状(本例では円環状)に形成されている。但し、その周方向Cの一部は分断されており、鍔部23は全体としてC字状に形成されている。鍔部23には、ビス等の固定部材が挿通される固定用孔部24が形成されている。固定用孔部24に挿通される固定部材を区画体7にねじ込んで、スリーブ部材20を区画体7に取り付けることができる(図1を参照)。但し、施工状態次第では、そのような固定部材を用いて完全に固定するのではなく、不完全固定状態でスリーブ部材20を区画体7に取り付ける(例えば単に鍔部23を区画体7の表面7aに載置する)ことも可能である。
支持片部25は、筒状本体部21の一端から内側(径方向内側)に向かって突出する薄板状の板片部として形成されている。支持片部25は、所定の周方向幅及び所定の径方向幅を有する台形状に形成されている。支持片部25は、その内面(軸方向Lにおける貫通孔7Hの内部側を向く面;本例では上面)25aにより、耐火パック部材50を受け止め支持する(図9を参照)。本実施形態のように、水平方向に延びる区画体7に貫通孔7Hが鉛直方向に貫通形成されている場合には、支持片部25は、耐火パック部材50を下方から受け止め支持する。
本実施形態では、周方向Cに分散配置された複数の台形状の支持片部25は、全体として、所定の径方向幅の環状をなすように設けられている。このため、その全体として環状の支持片部25により、貫通孔7Hの内部で、比較的広い径方向領域で耐火パック部材50を下方から支えることができる。よって、例えば針金状の線材を加工して形成される支持部材を用いて耐火パック部材50を直接支える場合に比べて、耐火パック部材50を十分にかつ安定的に支えることができる。また、例えば上記の支持部材と適当なバックアップ材とを用いて、バックアップ材を介して耐火パック部材50を支える場合に比べて、施工時の手間が少なく施工性に優れる。
本実施形態では、筒状本体部21における支持片部25との境界部には、当該筒状本体部21を厚み方向に貫通する挿通孔26が形成されている(図3も参照)。挿通孔26は、スリーブ部材20に取り付けられる補助支持部材30と同じ個数だけ、周方向Cにおける補助支持部材30の取付位置に対応させて形成されている。挿通孔26は、補助支持部材30の第三延在部33よりもひとまわり大きく形成されており、この挿通孔26に第三延在部33が挿通可能となっている。
また、筒状本体部21における支持片部25が設けられている側の端部付近には、周方向Cに沿って延びるスリット部27が形成されている。スリット部27は、筒状本体部21をその厚み方向に貫通するように形成されている。スリット部27は、貫通部22に比べて軸方向Lに幅狭に形成されている。また、筒状本体部21は、その内面21a側に、周方向Cに分散配置された複数(本例では7つ)の係止爪28を有する。係止爪28は、フック状に形成されている。図4に示すように、係止部としての係止爪28は、根元部分を支点として屈曲姿勢に姿勢変更することにより、被係止部としてのスリット部27に係止可能となっている。
本実施形態では、互いに係止可能なスリット部27及び係止爪28により、筒状本体部21と支持対象物5としての耐火パック部材50とが、着脱自在に一体化されている。耐火パック部材50は、筒状本体部21の一端であって支持片部25よりも中央側の部位において、筒状本体部21と一体化されている。本実施形態では、筒状本体部21の複数の係止爪28が、それぞれ対応する耐火パック部材50の挿通孔52に挿通された状態で(図4を参照)、その先端部がスリット部27に係止される。こうして、複数の係止爪28によって周方向Cの複数箇所で耐火パック部材50の1辺を抱きかかえるようにして、筒状本体部21と耐火パック部材50とが一体化されている。
板状押さえ部29は、筒状本体部21に連結された板状体で構成されている。板状押さえ部29は、所定の周方向幅及び所定の軸方向幅を有する矩形状(より具体的には軸方向Lに沿う長辺を有する縦長の長方形状)に形成されている。板状押さえ部29は、当該板状押さえ部29よりも短い(図示の例では1/4程度の)軸方向長さを有する連結部位にて、筒状本体部21(具体的には軸方向延在部21L)に一体的に連結されている。板状押さえ部29は、上記連結部位を支点として、周方向Cに沿う姿勢(以下、「収納姿勢」と言う;図2を参照)と、径方向Rに沿う姿勢(以下、「延出姿勢」と言う;図4を参照)との間で、姿勢変更可能となっている。
延出姿勢において、板状押さえ部29は、筒状本体部21の内部空間で、少なくとも径方向Rに延出するように配置される。「少なくとも径方向Rに延出する」とは、筒状本体部21との連結部位からの板状押さえ部29の延出方向が径方向Rの成分を有することを意味する。すなわち、径方向Rに平行に延出する状態、又は、径方向R及び周方向Cの両方に対して傾斜して延出する状態を意味する。延出姿勢の板状押さえ部29は、少なくとも径方向Rに延出するように配置されて、支持片部25とは反対側から、耐火パック部材50を当該耐火パック部材50に対して交差姿勢で押さえる。板状押さえ部29は、その全体が耐火パック部材50に沿うのではなく、一部分だけが耐火パック部材50に沿う状態で、当該耐火パック部材50を押さえる。
一態様によれば、延出姿勢の板状押さえ部29は、当該板状押さえ部29を構成する押さえ本体部29Aそれ自体は変形することなく(図4の右側を参照)、耐火パック部材50を軸方向Lに押さえる。他の一態様によれば、板状押さえ部29が弾性変形(撓み変形)可能に構成され、延出姿勢の板状押さえ部29は、当該板状押さえ部29を構成する押さえ本体部29Aが撓み変形した状態で(図4の左側を参照)、耐火パック部材50を軸方向Lに押さえる。なお、本実施形態では、押さえ本体部29Aには、軸方向Lに対して直交する方向に互いに平行状に延びる複数の凹溝部29Bが形成されている。この凹溝部29Bの存在により、板状押さえ部29は、容易に弾性変形(撓み変形)可能となっている。
上述したように、本実施形態の支持具1は、スリーブ部材20に取り付けられる補助支持部材30を備えている。この補助支持部材30は、スリーブ部材20を構成する樹脂材料よりも高融点の金属材料を用いて形成されている。補助支持部材30は、スリーブ部材20を構成する鍔部23、筒状本体部21、及び支持片部25に沿って延びる状態で、スリーブ部材20に取り付けられている。補助支持部材30は、筒状本体部21の軸方向延在部21Lと同程度の幅(周方向幅)を有する帯板状の金属薄板を2箇所で折り曲げることによって、クランク状に形成されている。補助支持部材30は、当該2箇所の屈曲部を境界として区分される第一延在部31と第二延在部32と第三延在部33とを有する。第一延在部31は筒状本体部21に沿って延在し、第二延在部32は鍔部23に沿って延在し、第三延在部33は支持片部25に沿って延在する。
図3に示すように、第一延在部31は、筒状本体部21の軸方向延在部21Lと同程度の軸方向長さを有するように形成されている。第一延在部31は、軸方向延在部21Lに沿って配置されている。第一延在部31は、軸方向延在部21Lの外面21b(径方向外側を向く面)に沿って配置されている。支持具1が貫通孔7Hに設置された状態で、第一延在部31は、貫通孔7Hの内面(径方向内側を向く面)に沿って配置される。
第二延在部32は、鍔部23と同程度の径方向長さを有するように形成されている。第二延在部32は、鍔部23に沿って配置されている。第二延在部32は、鍔部23における区画体7に対する対向面23f(本例では下面)に沿って配置されている。支持具1が貫通孔7Hに設置された状態で、第二延在部32は、区画体7の表面7aに沿って配置される。
第三延在部33は、支持片部25よりも短い径方向長さを有するように形成されている。第三延在部33の径方向長さは、支持片部25の径方向長さの例えば1/3〜3/4程度であって良く、図示の例ではおよそ3/5程度とされている。第三延在部33は、支持片部25の内面25a(軸方向Lにおける貫通孔7Hの内部側を向く面;本例では上面)に沿って配置されている。このとき、第三延在部33は、筒状本体部21と支持片部25との境界部に形成された挿通孔26に外側(径方向外側)から挿通された状態で、支持片部25の内面25aに沿って配置されている。
図3に示すように、スリーブ部材20と補助支持部材30との間に、抜け止め機構RMが設けられている。抜け止め機構RMは、スリーブ部材20と第二延在部32及び第三延在部33の少なくとも一方との間に設けられている。抜け止め機構RMは、スリーブ部材20に対する補助支持部材30の取付状態を維持させるための機構である。このような抜け止め機構RMとして、本実施形態では、第二延在部32と鍔部23との間に設けられる第一抜け止め機構RM1と、第三延在部33と筒状本体部21との間に設けられる第二抜け止め機構RM2との両方が設けられている。
第二延在部32と鍔部23との間の第一抜け止め機構RM1は、第二延在部32に設けられた突起部32Pと、鍔部23に設けられた収納凹部23Rとを含む。第二延在部32の突起部32Pは、第二延在部32に対してプレス絞り加工等の板金加工を施すことによって形成することができる。但し、そのような構成に限定されることなく、例えば小さな塊状の部材を第二延在部32に固着させる等の方法により、突起部32Pを形成しても良い。突起部32Pは、第二延在部32の本体部分から鍔部23側(本例では上側)に向かって突出形成されている。また、突起部32Pは、第二延在部32の基端部側(第一延在部31との連結部側)から先端部側に向かうに従って突出量が大きくなるように、傾斜状に形成されている。
鍔部23の収納凹部23Rは、例えば射出成型によってスリーブ部材20を形成するのと同時に形成することができる。但し、そのような構成に限定されることなく、例えば収納凹部23Rを有さないスリーブ部材20を形成した後に切削加工を施す等の方法により、収納凹部23Rを形成しても良い。本実施形態の収納凹部23Rは、有底の凹部となっている。収納凹部23Rは、鍔部23の対向面23fから凹状に窪むように形成されている。本例では、収納凹部23Rは、上側に向かって窪むように形成されている。収納凹部23Rの立体形状は、第二延在部32の突起部32Pの立体形状に対して概ね相補的となっており、この収納凹部23Rに突起部32Pが収納される。そして、収納凹部23Rに突起部32Pが収納された状態で、突起部32Pの一端が収納凹部23Rの内壁面に係止されて、鍔部23に対して第二延在部32が位置決めされる。
第三延在部33と筒状本体部21との間の第二抜け止め機構RM2は、第三延在部33に設けられた突起部33Pを含む。第三延在部33の突起部33Pは、第二延在部32の突起部32Pと同様にして形成することができる。突起部33Pは、第三延在部33の本体部分から支持片部25とは反対側(本例では上側)に向かって突出形成されている。また、突起部33Pは、第三延在部33の先端部側から基端部側(第一延在部31との連結部側)に向かうに従って突出量が大きくなるように、傾斜状に形成されている。そして、第三延在部33が筒状本体部21の挿通孔26に挿通された状態で、突起部33Pの一端が筒状本体部21の内面(径方向内側を向く面)21aに係止されて、筒状本体部21に対して第三延在部33が位置決めされる。
スリーブ部材20に対する補助支持部材30の取り付けは、挿通孔26が形成されている周方向位置において、補助支持部材30を外側(径方向外側)からスライド操作することによって行うことができる。このとき、まず第三延在部33の先端部を挿通孔26に挿入してから、補助支持部材30の全体を径方向内側に向かってスライド移動させる。すると、第三延在部33が支持片部25の内面25a(本例では上面)に沿って移動し、やがて第二延在部32も鍔部23の対向面23f(本例では下面)に沿う状態となる。補助支持部材30をさらに押し込むと、鍔部23が第二延在部32の突起部32Pに乗り上げるようにして、収納凹部23Rに突起部32Pが収納される。また、第三延在部33の突起部33Pが筒状本体部21の挿通孔26に圧入されて当該挿通孔26を通過し、筒状本体部21の内面21aに突起部33Pが係止される。
このように、本実施形態の支持具1では、補助支持部材30を外側からスライド操作するだけで、補助支持部材30をワンタッチで容易にスリーブ部材20に取り付けることができる。しかも、そのスライド操作の完了により、第一抜け止め機構RM1及び第二抜け止め機構RM2の2つの抜け止め機構RMが同時に機能する状態となるので、スリーブ部材20に対して補助支持部材30を容易かつ安定的に取り付けることができる。
以下、本実施形態の防火措置ユニット100を用いて実現される防火措置構造の施工手順について説明する。まず、図6に示すように、建築物の区画体7に形成された貫通孔7Hに複数の長尺体8の束が配置された状態で、貫通孔7Hの外側で、一束の長尺体8の周囲を取り囲むように防火措置ユニット100を配置する。このとき、筒状本体部21の分断端部どうしを互いに離間させて拡開させた状態で、一束の長尺体8の周囲に防火措置ユニット100を配置する。その際、軸方向Lにおける筒状本体部21と耐火パック部材50との一体化端部が区画体7側に位置する状態となるように防火措置ユニット100を配置する。その後、分断端部どうしを近づけて周方向に対向させ、筒状本体部21を筒状とする。
次に、防火措置ユニット100を、軸方向Lにおける筒状本体部21と耐火パック部材50との一体化端部側から貫通孔7Hに挿入する。このとき、耐火パック部材50がペースト状の熱膨張性耐火材53を内包して形成されて柔らかい場合であっても、貫通孔7Hと複数の長尺体8との間の隙間空間Sに、一定以上の剛性を有する筒状本体部21と共に耐火パック部材50を容易に奥まで挿入することができる。特に、隙間空間Sが径方向に狭い(占積率が高い)場合であっても、耐火パック部材50を容易に奥まで挿入することができる。
その際、本実施形態では補助支持部材30の第一延在部31が筒状本体部21(具体的には軸方向延在部21L)の外面21bに沿って配置されているので、挿入時の摺動抵抗を小さく抑えることができる。よって、スリーブ部材20及び耐火パック部材50の挿入操作を円滑に行うことができ、施工性を向上させることができる。この挿入操作が完了すると、スリーブ部材20に取り付けられた補助支持部材30は、貫通孔7Hの内部で筒状本体部21及び支持片部25に沿って延びつつ貫通孔7Hの外部で区画体7の表面7aに沿って延びる状態となる(図3を参照)。
その後、図7に示すように、耐火パック部材50におけるスリーブ部材20から軸方向Lにはみ出していた部分を、貫通孔7Hの内部へと押し込む。そして、当該部分を、互いに隣り合う長尺体8のそれぞれの外面に亘る谷間空間に配置する。その際、板状押さえ部29は収納姿勢に維持されるので、当該板状押さえ部29との干渉を生じさせることなく、貫通孔7Hの内部に耐火パック部材50を円滑に押し込むことができる。
その後、図8に示すように、収納姿勢の板状押さえ部29を、少なくとも径方向に延出するように連結部位を支点として揺動させ、延出姿勢に姿勢変更させる。板状押さえ部29が延出姿勢とされた後は、撓み変形した状態の板状押さえ部29が、耐火パック部材50に対して面接触した状態で、弾性復元力によって耐火パック部材50を押さえることになる。よって、大面積で耐火パック部材50を強固に押さえることができる。しかも、広範囲に亘って、撓み変形した板状押さえ部29の弾性復元力により、耐火パック部材50をより一層強固に押さえることができる。さらには、収納姿勢から延出姿勢への板状押さえ部29の姿勢変更操作を行うだけで、一操作で容易に耐火パック部材50を強固に押さえることができる。
建築物において火災が発生すると、火炎の熱によって周囲温度が上昇し、長尺体8を構成する被覆材81Bが溶融・燃焼し、貫通孔7Hと長尺体8との間の隙間空間Sがさらに拡大する可能性がある。この場合であっても、周囲温度の上昇に応じて耐火パック部材50に内包された熱膨張性耐火材53が熱膨張して、被覆材81Bの溶融・燃焼によって生じる空間を埋める(言い換えれば、隙間容積の増加分を補填する)ことができる。特に本実施形態では、柔らかい耐火パック部材50を谷間空間に形状追従させることで谷間空間が十分に埋められているので、十分な防火性能が付与される。
場合によっては、火炎の熱により、熱膨張性耐火材53が熱膨張するよりも前に、支持具1を構成する樹脂製のスリーブ部材20が溶融してしまう可能性がある。すると、その溶融したスリーブ部材20が区画体7から脱落し、その結果、耐火パック部材50も区画体7から脱落してしまう可能性がある。この点、本実施形態の支持具1は、スリーブ部材20に取り付けられる金属製の補助支持部材30を備えており、この補助支持部材30は貫通孔7Hの内部で筒状本体部21及び支持片部25に沿って延びつつ貫通孔7Hの外部で区画体7の表面7aに沿って延びる状態に配置される。このため、仮に火災発生時にスリーブ部材20が溶融したとしても、金属製で溶融することなくそのまま残る補助支持部材30が、区画体7の表面7aに係止されつつ、貫通孔7Hの内部でスリーブ部材20の機能を部分的に代替する。よって、火災発生時等にも、貫通孔7Hの内部で耐火パック部材50を十分に支えることができる。
なお、補助支持部材30は、火災発生時にある程度の時間に亘って耐火パック部材50を支えることさえできるように設計されれば良い。上述したように、熱膨張性耐火材53はやがて火炎の熱によって熱膨張するので、当該熱膨張後は、長尺体8の外面と貫通孔7Hの内面との間に作用する応力にもよって、熱膨張性耐火材53が貫通孔7Hの内部に留まるからである。このため、一組の支持具1において用いられる補助支持部材30の個数は、本実施形態のように3個程度であって良い。よって、製造コストの大幅な上昇を伴うことなく、上述した各種の効果を得ることができる。
〔第2実施形態〕
支持具の第2実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、スリーブ部材20に対する補助支持部材30の取付態様が第1実施形態とは異なっている。また、それに伴い、抜け止め機構RMの具体的構造も、第1実施形態とは一部異なっている。以下、本実施形態の支持具1について、主に第1実施形態との相違点について説明する。なお、特に明記しない点に関しては、第1実施形態と同様であり、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施形態では、図10及び図11に示すように、補助支持部材30は、筒状本体部21を貫通することなくスリーブ部材20に取り付けられている。そして、補助支持部材30は、筒状本体部21の内面21aに沿って配置されている。より具体的には、補助支持部材30は、鍔部23の非対向面(区画体7とは反対側を向く面)、筒状本体部21の内面21a、及び支持片部25の内面25a(軸方向Lにおける貫通孔7Hの内部側を向く面;本例では上面)に沿うように取り付けられている。このような構成では、補助支持部材30をスリーブ部材20に貫通させなくて良いので、スリーブ部材20に対して補助支持部材30を容易に取り付けることができる。
本実施形態では、スリーブ部材20における補助支持部材30の取付位置において、鍔部23の非対向面に、軸方向Lの外側に向かって突出する突起部23Pが形成されている。一方、補助支持部材30の第二延在部32には、鍔部23の突起部23Pが収納される収納凹部32Rが形成されている。なお、本明細書において、「収納凹部」は、有底の凹部に限定されることなく、無底の凹部(貫通孔)をも含む概念として用いる。本実施形態では、第二延在部32に設けられた収納凹部32R(本例では貫通孔)と鍔部23に設けられた突起部23Pとを含んで、第二延在部32と鍔部23との間の第一抜け止め機構RM1が構成されている。
また、スリーブ部材20における補助支持部材30の取付位置において、支持片部25の内面25aに、軸方向Lにおける貫通孔7Hの内部側に向かって突出する突起部25Pが形成されているとともに、収納凹部25R(本例では貫通孔)が形成されている。一方、補助支持部材30の第三延在部33には、支持片部25の突起部25Pが収納される収納凹部33R(本例では貫通孔)と、支持片部25の収納凹部25Rに嵌入する突起部33Pとが形成されている。第三延在部33の突起部33Pと、支持片部25の突起部25Pとは、軸方向Lにおいて互いに反対向きに突出している。本実施形態では、第三延在部33に設けられた収納凹部33Rと支持片部25に設けられた突起部25Pとの組、及び、第三延在部33に設けられた突起部33Pと支持片部25に設けられた収納凹部25Rとの組を含んで、第三延在部33と支持片部25との間の第二抜け止め機構RM2が構成されている。また、本実施形態では、第三延在部33の突起部33Pが「第一突起部」に相当し、支持片部25の突起部25Pが「第二突起部」に相当し、支持片部25の収納凹部25Rが「第一収納凹部」に相当し、第三延在部33の収納凹部33Rが「第二収納凹部」に相当する。
本実施形態でも、仮に火災発生時にスリーブ部材20が溶融したとしても、金属製で溶融することなくそのまま残る補助支持部材30が、区画体7の表面7aに係止されつつ、貫通孔7Hの内部でスリーブ部材20の機能を部分的に代替する。よって、火災発生時等にも、貫通孔7Hの内部で耐火パック部材50を十分に支えることができる。
〔その他の実施形態〕
(1)上記の第1実施形態では、補助支持部材30がスリーブ部材20を貫通して配置される場合において、補助支持部材30の第一延在部31が筒状本体部21の外面21bに沿って配置されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、補助支持部材30の第一延在部31が筒状本体部21の内面21aに沿って配置されても良い。この場合、例えば図12に示すように、補助支持部材30の第二延在部32が筒状本体部21と鍔部23との境界部に形成された挿通孔26’に挿通された状態で、第二延在部32が鍔部23の区画体7への対向面23fに沿うとともに、第三延在部33が支持片部25の内面25aに沿って配置される。
(2)上記の第2実施形態では、補助支持部材30が筒状本体部21を貫通することなくスリーブ部材20に取り付けられる場合において、補助支持部材30が筒状本体部21の内面21aに沿って配置されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、補助支持部材30が筒状本体部21の外面21bに沿って配置されても良い。すなわち、例えば補助支持部材30が、鍔部23の対向面23f、筒状本体部21の外面21b、及び支持片部25の外面(軸方向Lにおける貫通孔7Hの外部側を向く面;上記の例では下面)に沿うように取り付けられても良い。
(3)上記の各実施形態では、突起部と収納凹部との係止構造を利用した抜け止め機構RMが支持具1に設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば補助支持部材30に第一延在部31から延びる一対のアーム部が設けられ、このアーム部で筒状本体部21の軸方向延在部21Lを抱持するようにしても良い。このように、第一延在部31と筒状本体部21(軸方向延在部21L)との間に設けられるアーム部による抱持構造を利用して、抜け止め機構RMが構成されても良い。
(4)上記の第1実施形態では、第一抜け止め機構RM1が第二延在部32と鍔部23との間に設けられ、第一抜け止め機構RM1が第二延在部32に設けられた突起部32Pと鍔部23に設けられた収納凹部23Rとを含む構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば鍔部23に設けられた突起部と、第二延在部32に設けられた収納凹部とを含んで第一抜け止め機構RM1が構成されても良い。或いは、第一抜け止め機構RM1が第二延在部32と筒状本体部21との間に設けられ、第二延在部32に設けられて筒状本体部21の外面21bに係止される突起部32Pを含んで第一抜け止め機構RM1が構成されても良い(図12の上側を参照)。
(5)上記の第1実施形態では、第二抜け止め機構RM2が第三延在部33と筒状本体部21との間に設けられる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば第三延在部33と支持片部25との間に第二抜け止め機構RM2が設けられても良い。この場合、例えば第三延在部33に設けられた突起部33Pと、支持片部25に設けられた収納凹部25Rとを含んで第二抜け止め機構RM2が構成されても良い(図12の下側を参照)。或いは、支持片部25に設けられた突起部と、第三延在部33に設けられた収納凹部とを含んで第二抜け止め機構RM2が構成されても良い。
(6)上記の第2実施形態では、第一抜け止め機構RM1が第二延在部32に設けられた収納凹部32Rと鍔部23に設けられた突起部23Pとを含む構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば鍔部23に設けられた収納凹部と、第二延在部32に設けられた突起部とを含んで第一抜け止め機構RM1が構成されても良い。また、例えば第二延在部32に設けられた収納凹部32Rと鍔部23に設けられた突起部23Pとの組に加え、鍔部23に設けられた収納凹部と第二延在部32に設けられた突起部との組をさらに含んで第一抜け止め機構RM1が構成されても良い。
(7)上記の第2実施形態では、第二抜け止め機構RM2が、第三延在部33に設けられた収納凹部33Rと支持片部25に設けられた突起部25Pとの組、及び、第三延在部33に設けられた突起部33Pと支持片部25に設けられた収納凹部25Rとの組を含む構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば第三延在部33に設けられた収納凹部33Rと支持片部25に設けられた突起部25Pとの組だけで第二抜け止め機構RM2が構成されても良い。或いは、第三延在部33に設けられた突起部33Pと支持片部25に設けられた収納凹部25Rとの組だけで第二抜け止め機構RM2が構成されても良い。
(8)上記の各実施形態では、抜け止め機構RMとして第一抜け止め機構RM1及び第二抜け止め機構RM2の両方が支持具1に設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第一抜け止め機構RM1及び第二抜け止め機構RM2のいずれか一方のみが支持具1に設けられても良い。或いは、支持具1に抜け止め機構RMが全く設けられなくても良い。
(9)上記の各実施形態では、一組の支持具1において3つの補助支持部材30を取り付けて用いる構成を主に想定して説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば一組の支持具1において4つ以上の補助支持部材30を取り付けて用いても良い。また、支持具1(貫通孔7H)のサイズ次第では、2つ又は1つの補助支持部材30だけを取り付けて用いても良い。
(10)上記の各実施形態では、スリーブ部材20に板状押さえ部29が設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、板状押さえ部29がスリーブ部材20に設けられなくても良い。
(11)上記の各実施形態では、スリーブ部材20と耐火パック部材50とが、互いに係止可能なスリット部27と係止爪28とによって着脱自在に一体化されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えばクリップ部材等を用いてスリーブ部材20と耐火パック部材50とが着脱自在に一体化されても良い。或いは、例えば接着剤(接着層)、熱融着、及びハトメ部材等の一体化手段又はインサート成型等によって、スリーブ部材20と耐火パック部材50とが常時一体化されても良い。或いは、スリーブ部材20と耐火パック部材50とが、一体化されることなく別々に扱われても良い。
(12)上記の各実施形態では、支持具1による支持対象物5が、柔軟性を有する袋体51と当該袋体51の内部に封入されたペースト状の熱膨張性耐火材53とを含む耐火パック部材50である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、支持対象物5は、例えば貫通孔7Hを単に埋めるための閉塞部材(貫通孔閉塞部材)であっても良い。この場合、支持対象物5としての閉塞部材は、例えば袋体51と、当該袋体51の内部に封入された繊維材やパテ材等の非耐火性の充填材とを含んで構成されても良い。或いは、支持対象物5としての閉塞部材は、一定形状を有しつつ柔軟性をも有する繊維材(例えばロックウール、セラミックウール、及びグラスウール等の無機繊維材)等からなる充填材で構成されても良い。
(13)上記の各実施形態では、区画体7が複数の室空間を鉛直方向に区画する床(又は天井)である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、区画体7は、例えば複数の室空間を水平方向に区画する壁部であっても良い。
(14)上述した各実施形態(上記の各実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。