発明の陳述
前記のとおり、ウイルスベクター産生細胞におけるウイルスベクター発現カセットによりコードされる関心のあるタンパク質(POI)の発現はウイルスベクター治療用物質の製造に幾つかの問題をもたらしうる。特に、そのような発現はウイルスベクターの力価の低減、ならびにウイルスベクター粒子内へのNOIコード化タンパク質の望ましくない取り込み又は該タンパク質との結合を招きうる。
本発明者らは、真核細胞培養内で異種翻訳制御系を使用することで、NOIの翻訳を抑制し従ってNOIによってコードされるタンパク質の発現を抑制または予防(阻止)することにより、この問題が克服されうることを、本発明において示した。本発明者らは、驚くべきことに、この系の使用が、パッケージング可能なベクターゲノム分子の産生もベクター粒子の活性も妨げず、標的細胞におけるNOIの長期発現を妨げないことを、本発明において見出した。
1つの態様においては、本発明は、関心のあるヌクレオチドに機能的に連結された結合部位を含む核酸配列であって、関心のあるヌクレオチドの翻訳がウイルスベクター産生細胞において抑制または予防(阻止)されるように該結合部位がRNA結合タンパク質と相互作用しうる、核酸配列を提供する。
好ましい実施形態においては、RNA結合タンパク質はトリプトファンRNA結合減衰タンパク質(TRAP)、例えば細菌トリプトファンRNA結合減衰タンパク質である。
本発明のもう1つの態様は、本発明の核酸配列を含むウイルスベクターに関する。
本発明のもう1つの態様は、ウイルスベクターの産生に要求される成分をコードする核酸配列のセットを含むウイルスベクター産生系に関するものであり、ここで、ベクターゲノム配列は本発明の核酸配列を含む。
本発明のもう1つの態様は、本発明の核酸配列を含む本発明のウイルスベクター産生系における使用のためのDNA構築物に関する。
本発明のもう1つの態様は、本発明のRNA結合タンパク質をコードする核酸配列を含む本発明のウイルスベクター産生系における使用のためのDNA構築物に関する。
本発明のもう1つの態様は、本発明のDNA構築物の一部または全部ならびにGag/Polタンパク質およびEnvタンパク質またはそれらの機能的代替物をコードするDNA構築物を含む本発明のウイルスベクター産生系における使用のためのDNA構築物のセットに関する。Revを発現するDNA構築物も該ウイルスベクター産生系において使用されうる。
本発明のもう1つの態様は、本発明の核酸配列、ウイルスベクター産生系またはDNA構築物の全部もしくは一部を含むウイルスベクター産生細胞に関する。
本発明のもう1つの態様は、本発明の核酸配列、ウイルスベクター産生系またはDNA構築物の一部もしくは全部をウイルスベクター産生細胞内に導入し、ウイルスベクターの産生に適した条件下で、該産生細胞を培養することを含む、ウイルスベクターの製造方法に関する。
本発明のもう1つの態様は、本発明のウイルスベクター産生系により、本発明のウイルスベクター産生細胞を使用して、または本発明の製造方法により製造されるウイルスベクターに関する。
本発明のもう1つの態様は、本発明のウイルスベクターが導入された細胞に関する。
本発明のもう1つの態様は、医薬品における使用のための、本発明の核酸配列、ウイルスベクターまたは導入細胞に関する。
本発明のもう1つの態様は、医薬品における、本発明の核酸配列、ウイルスベクターまたは導入細胞の使用に関する。
本発明のもう1つの態様は、関心のあるヌクレオチドをそれを要する標的部位に送達するための医薬の製造のための、本発明の核酸配列、ウイルスベクターまたは細胞の使用に関する。
本発明のもう1つの態様は、本発明の核酸配列、ウイルスベクターまたは導入細胞を、それを要する対象に投与することを含む治療方法に関する。
本発明のもう1つの態様は、本発明の核酸配列、ウイルスベクターまたは導入細胞を、医薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤と共に含む医薬組成物に関する。
本発明のもう1つの態様は、核酸結合部位に機能的に連結されている場合に関心のあるヌクレオチドの翻訳がウイルスベクター産生細胞において抑制または予防されるように相互作用しうる核酸結合部位および/または核酸結合タンパク質を特定する方法に関するものであり、ここで、該方法は、レポーター遺伝子に機能的に連結された核酸結合部位および核酸結合タンパク質の両方を含む細胞におけるレポーター遺伝子の発現を分析することを含む。
発明の概括
治療用レトロウイルスベクターを高い又は更には中等度の力価で製造する際の重大な制約は、特にトランスジーン(導入遺伝子)が強力な構成的プロモーターにより駆動される場合の、産生細胞におけるトランスジーン/NOIによりコードされるタンパク質の不利な発現でありうる。あるトランスジーンタンパク質は、直接的および間接的の両方で、活性感染性ベクター粒子を産生する細胞の能力に様々な影響を及ぼしうる。細胞代謝、ウイルスベクター粒子構築および/または粒子活性はトランスジーン産物の個々の(既知または未知の)作用により影響されうる。産生細胞におけるトランスジーン発現をサイレンシングするための組織特異的プロモーターがこの問題の解決策として使用されているが、このアプローチの重大な欠点は、しばしば、組織特異的プロモーターからの遺伝子発現が構成的プロモーターからのものほどは頑強ではなく、ベクター開発中に利用される種々の動物モデルにおいて、より低い予測可能性またはより高い変動性を示しうることである。
本発明者らは、驚くべきことに、RNA結合タンパク質(例えば、細菌trpオペロン調節タンパク質、トリプトファンRNA結合減衰タンパク質、TRAP)およびそれが結合するRNA標的の新規使用がRNAまたはDNAウイルスベクター産生細胞におけるトランスジーン翻訳を抑制または予防することを、本発明において見出した。TRAPの場合、トランスジーン翻訳のこの低減または予防は、あるNOIをコードするベクターに関するベクター力価の、100倍もの改善をもたらしうる。この系はベクター産生細胞内トランスジーン抑制系(Transgene Repression In vector Production cell system)またはTRIP系と称される。
本発明者らは、NOI mRNAの翻訳を抑制することにより真核細胞産生系におけるRNA(レトロウイルス)ベクター力価を増加させるための、細菌翻訳抑制系の使用を初めて実証するものである。RNA結合タンパク質に対する結合部位(例えば、TRAP結合配列、tbs)をNOI翻訳開始コドンの上流に配置することは、ベクターRNAの産生または安定性に有害な影響を全く及ぼすことなく、内部発現カセットから誘導されるmRNAの翻訳の特異的抑制を可能にする。本発明者らはまた、レトロウイルスベクターの産生および機能がベクターゲノム内のtbsの存在によって最低限度で影響されるらしいことを示している。これは、逆転写酵素(RT)がtbsからTRAPを追い出しうること、またはビリオン内にパッケージングされる長いベクターゲノムRNAのコンテキスト(context)においてはTRAPがtbsに効率的に結合しないことのいずれかを示唆している。本発明者らはまた、AAVのようなDNAウイルスベクターのNOI発現カセット内に配置されるtbsの類似配置が、活性ウイルスベクタービリオンの産生を維持する一方で、TRAPによるNOI翻訳抑制を可能にすることを示している。
NOIの翻訳開始コドンとtbsとの間のヌクレオチドの数は、好ましくは、mRNA翻訳の抑制の度合に影響を及ぼすことなく、0〜12ヌクレオチドで変動可能である。いずれの理論によっても束縛されるものではないが、tbs結合TRAPは、40Sスキャニングリボソーム複合体を、それが開始コドンに到達する前に物理的に遮断することにより(これが生じないならば、より安定でより高いアフィニティの翻訳装置が形成するであろう)、翻訳開始を抑制しうる。
また、本発明者らは、マルチシストロンmRNAにおけるNOIの翻訳を抑制するために配列内リボソーム進入部位(IRES)の下流にtbsが配置されうることを見出している。実際、これは、tbs結合TRAPが40Sリボソームの通過を遮断しうること、すなわち、完全翻訳複合体が形成される前に、IRES要素が、40SリボソームサブユニットをmRNAへとCAP非依存的に隔離するように機能することの更なる証拠となる(IRES翻訳開始に関する総説は、Thompson,S.(2012)Trends in Microbiology 20(11):558−566を参照されたい)。NOIの開始コドンとIRESとの間に配置されたtbs配列は非抑制翻訳レベルに若干の影響を及ぼしたが、TRAPによって機能的に作用される能力を維持した。この知見は、ウイルスベクターゲノムから発現される単一mRNAからの複数のオープンリーディングフレームをTRIP系が抑制することが可能であることを示している。これは、複数の治療用遺伝子をコードするベクターを製造する場合、特に、トランスジーン産物の全てがベクター力価に或る程度の負の影響を及ぼしうる場合、TRIP系の有用な特徴であろう。
tbs配列の更なる特徴づけは、RNA結合タンパク質としてのTRAPに関して、好ましくは、少なくとも8個のRAGNN反復を含有するtbs配列でTRIP系が最大限度に働くことを明らかにした。尤も、1つの実施形態においては、頑強なトランスジーン抑制を尚も得るために7個の反復(リピート)が使用可能であり、もう1つの実施形態においては、ベクター力価をレスキューしうるレベルまでのトランスジーンの十分な抑制を可能にするために6個の反復が使用可能である。TRAP媒介性抑制を維持するためにRAGNNコンセンサス配列は改変されうるが、好ましくは、選択された厳密な配列は、非抑制状態の高レベルの翻訳を確保するために最適化されうる。例えば、tbs配列は、スプライシング部位、不安定な配列またはステム−ループ[これは、TRAPの非存在下(すなわち、標的細胞内)でmRNAの翻訳効率を阻害しうる]を除去することにより最適化されうる。与えられたtbsのRAGNN反復の配置に関しては、RAG反復間のN「スペーシング」ヌクレオチドの数は好ましくは2である。しかし、少なくとも2個のRAG反復間に2個を超えるNスペーサーを含有するtbsも許容される(インビトロ結合研究による判定によれば、3個のNを含有する反復の50%もが機能的tbsを与えうる;Babitzke P,Y.J.,Campanelli D.(1996)Journal of Bacteriology 178(17):5159−5163)。実際、本発明者らは、11×RAGNN tbs配列がRAGNNN反復での3個までの置換を許容し、TRAP結合と協同して何らかの潜在的に有用な翻訳遮断活性を尚も保有しうることを示している。
RNA結合タンパク質(例えば、TRAP)オープンリーディングフレームは哺乳類(例えば、ホモ・サピエンス(Homo sapiens))細胞における発現に関してコドンが最適化されうる。なぜなら、細菌遺伝子配列は哺乳類細胞における発現に非最適である可能性があるからである。該配列は、潜在的な不安定配列およびスプライシング部位を除去することによっても最適化されうる。TRAPタンパク質上のC末端で発現されるHIS−タグの使用は翻訳抑制に関する利点をもたらすようであり、所望により使用されうる。このC末端HIS−タグは真核細胞におけるTRAPの溶解性または安定性を改善しうるが、改善される機能的利点は排除され得ない。それでも、HISタグ付きTRAPおよびタグ無しTRAPの両方がトランスジーン発現の頑強な抑制を可能にした。RNA結合タンパク質(例えば、TRAP)転写単位内の或るシス作用性配列も最適化されうる。例えば、EF1aプロモーター駆動性構築物は、一過性トランスフェクションの状況において、低い投入量のTRAPプラスミドで、CMVプロモーター駆動性構築物より良好な抑制を可能にする。
トランスジーン翻訳の抑制を最大にするためには、TRIP系内のRNA結合タンパク質(例えば、TRAP)の頑強な発現が望ましい。高レベルのRNA結合タンパク質プラスミドを含むための要件は一過性ベクター産生系内の他のベクター産生構築物のトランスフェクションに悪影響を及ぼしうると予想されていた。これは、ゲノム構築物の量/比が典型的には追加的プラスミドの非存在下で最適化されるからであり、大量のRNA結合タンパク質コード化プラスミドをコトランスフェクトするための要件はこれらの最適比に悪影響を及ぼして、ベクター力価の低減を招きうるであろう。しかし、一過性トランスフェクションプロトコルを用いた場合、僅か1対10のTRAP対レトロウイルスベクターゲノムプラスミドの比が、最高に近いレベルのトランスジーン抑制を可能にすることが示された。更に、1対5ものTRAP対レトロウイルスベクターゲノムプラスミドの比を用いた場合、問題の無いNOIを発現するベクターが、最高に近い力価で産生された。したがって、レトロウイルスベクター産生構築物の一過性トランスフェクション中のこれらの比較的低い投入量でのTRAP発現プラスミドの添加は、そのような構築物の予め最適化された比に悪影響を及ぼす可能性が低い。TRAP発現プラスミド対DNAウイルスベクター成分プラスミド(例えばAAV)の比も最適化されている。
これらの重要な知見は、一過性トランスフェクションベクター産生プロトコル中にTRIP系が使用されうることを示している。TRIP系は安定産生系にも使用可能であり、したがってウイルスベクター製造に広範に適用可能である。
発明の詳細な説明
次に、非限定的な例により、本発明の種々の好ましい特徴および実施形態を記載する。
本発明の実施は、特に示されていない限り、当業者の能力の範囲内の化学、分子生物学、微生物学および免疫学の通常の技術を用いる。そのような技術は文献に説明されている。例えば、以下のものを参照されたい:J.Sambrook,E.F.FritschおよびT.Maniatis(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Books 1−3,Cold Spring Harbor Laboratory Press; Ausubel,F.M.ら(1995および定期的な補遺)Current Protocols in Molecular Biology,Ch.9,13および16,John Wiley & Sons,New York,NY;B.Roe,J.CrabtreeおよびA.Kahn(1996)DNA Isolation and Sequencing:Essential Techniques,John Wiley & Sons;J.M.PolakおよびJames O’D.McGee(1990)In Situ Hybridization:Principles and Practice;Oxford University Press;M.J.Gait(編)(1984)Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;ならびにD.M.J.LilleyおよびJ.E.Dahlberg(1992)Methods of Enzymology:DNA Structure Part A:Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology,Academic Press。これらの一般的テキストのそれぞれを参照により本明細書に組み入れることとする。
1つの態様においては、本発明は、関心のあるヌクレオチドに機能的に連結された結合部位を含む核酸配列を提供し、ここで、関心のあるヌクレオチドの翻訳がウイルスベクター産生細胞において抑制または予防されるように、該結合部位はRNA結合タンパク質と相互作用しうる。
「RNA結合タンパク質」なる語は、核酸配列に結合しうるタンパク質として理解されるべきである。本発明の文脈においては、RNA結合タンパク質のその結合部位配列への結合は、該結合部位が機能的に連結されている関心のあるヌクレオチドの翻訳をウイルスベクター産生細胞において抑制または予防する効果をもたらす。
好ましい実施形態においては、RNA結合タンパク質はトリプトファンRNA結合減衰タンパク質(TRAP)、例えば細菌トリプトファンRNA結合減衰タンパク質である。
もう1つの実施形態においては、RNA結合タンパク質は細菌保存炭素固定調節系タンパク質A(bacterial conserved carbon storage regulation system protein A)(CsrA)である。
もう1つの実施形態においては、RNA結合タンパク質は単純ヘルペスウイルス1RNA結合タンパク質US11である。
トリプトファンRNA結合減衰タンパク質(TRAP)
トリプトファンRNA結合減衰タンパク質(TRAP)は、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)において詳細に特徴づけられている細菌タンパク質である。それは、転写減衰または翻訳制御メカニズムのいずれかに関与することにより、trpEDCFBAオペロンから指令されるトリプトファン生合成を調節する(Gollnick,B.,AntsonおよびYanofsky(2005)Annual Review of Genetics 39:47−68に概説されている)。
TRAPは、その天然コンテキストにおいて、以下の3つの異なるメカニズムによりトリプトファンの生合成および輸送を調節する。
1.trpEDCFBAオペロンの転写の減衰(Shimotsu H,K.M.,Yanofsky C,Henner DJ.(1986)Journal of Bacteriology 166:461−471)。
2.trpEおよびtrpDシャイン−ダルガルノ遮断性ヘアピンの形成の促進(Yakhnin H,B.J.,Yakhnin AV,Babitzke P.(2001)Journal of Bacteriology 183(20):5918−5926)。
3.trpGおよびyhaGリボソーム結合部位へのリボソームの接近の遮断(Yang M,d.S.A.,van Loon APGM,Gollnick P.(1995)Journal of Bacteriology 177:4272−4278)。
バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)においては、TRAPは単一遺伝子(mtrB)によりコードされ、機能的タンパク質は、トロイド環として配置された11個の同一サブユニットから構成される(Antson AA,D.E.,Dodson G,Greaves RB,Chen X,Gollnick P.(1999)Nature 401(6750):235−242)。それは、隣接サブユニット間のポケット内の11個までのトリプトファン分子に結合することにより、RNAと相互作用するように活性化される。標的RNAはこの四元(quaternary)環構造の外側を包囲する(Babitzke P,S.J.,Shire SJ,Yanofsky C.(1994)Journal of Biological Chemistry 269:16597−16604)。
理論により束縛されることを望むものではないが、トリプトファン合成のセンシングおよび制御の天然メカニズムにおいては、TRAPは、新たに合成されたRNAリーダー内の結合部位に結合することにより、転写終結のレベルで作用すると理解される。これは、重複する抗ターミネーター配列を不安定化させて、下流rho非依存的ターミネーターを活性にして、短いRNAのみの産生をもたらす。トリプトファンが細菌内で限定的である場合、TRAP環は、もはや、そのRNA結合部位に結合できない。したがって、抗ターミネーターが活性化され、トリプトファン合成遺伝子オペロンへと転写が継続する。TRAPは転写レベルでも作用可能であり、RNA転写産物の5’−UTR内のTRAPの結合部位へのTRAPのトリプトファン依存的結合は抗シャイン−ダルガルノ配列を遊離させ、これは、翻訳のリボソームイニシエーションが抑制されるように、シャイン−ダルガルノ配列と共に安定なステムを形成しうる。最後に、他の状況においては、TRAPがその核酸結合部位に結合すると、それは、40Sスキャニングリボソーム複合体を、それが開始コドンに到達する前に物理的に遮断することにより(これが生じないならば、より安定でより高いアフィニティの翻訳装置が形成するであろう)、翻訳開始を抑制しうる。
本発明の1つの実施形態においては、TRAPはバシラス・サチリス(Bacillus subtilis)に由来する。例えば、TRAPは配列:MNQKHSSDFVVIKAVEDGVNVIGLTRGTDTKFHHSEKLDKGEVIIAQFTEHTSAIKVRGEALIQTAYGEMKSEKK(配列番号1)を含みうる。
本発明の好ましい実施形態においては、配列番号1は、C末端において、6個のヒスチジンアミノ酸でタグ化されている(HIS×6 タグ)。
もう1つの実施形態においては、TRAPはアミノモナス・パウシボランス(Aminomonas paucivorans)に由来する。例えば、TRAPは配列:MKEGEEAKTSVLSDYVVVKALENGVTVIGLTRGQETKFAHTEKLDDGEVWIAQFTEHTSAIKVRGASEIHTKHGMLFSGRGRNEKG(配列番号2)を含みうる。
もう1つの実施形態においては、TRAPはデスルホトマクルム・ヒドロサーマレ(Desulfotomaculum hydrothermale)に由来する。例えば、TRAPは配列:MNPMTDRSDITGDYVVVKALENGVTIIGLTRGGVTKFHHTEKLDKGEIMIAQFTEHTSAIKIRGRAELLTKHGKIRTEVDS(配列番号3)を含みうる。
もう1つの実施形態においては、TRAPはビー・ステアロサーモフィラス(B.stearothermophilus)に由来する。例えば、TRAPは配列:MYTNSDFVVIKALEDGVNVIGLTRGADTRFHHSEKLDKGEVLIAQFTEHTSAIKVRGKAYIQTRHGVIESEGKK(配列番号4)を含みうる。
もう1つの実施形態においては、TRAPはビー・ステアロサーモフィラス(B.stearothermophilus)S72Nに由来する。例えば、TRAPは配列:MYTNSDFVVIKALEDGVNVIGLTRGADTRFHHSEKLDKGEVLIAQFTEHTSAIKVRGKAYIQTRHGVIENEGKK(配列番号5)を含みうる。
もう1つの実施形態においては、TRAPはビー・ハロデュランス(B.halodurans)に由来する。例えば、TRAPは配列:MNVGDNSNFFVIKAKENGVNVFGMTRGTDTRFHHSEKLDKGEVMIAQFTEHTSAVKIRGKAIIQTSYGTLDTEKDE(配列番号6)を含みうる。
もう1つの実施形態においては、TRAPはカルボキシドテルムス・ヒドロゲノホルマンス(Carboxydothermus hydrogenoformans)に由来する。例えば、TRAPは配列:MVCDNFAFSSAINAEYIVVKALENGVTIMGLTRGKDTKFHHTEKLDKGEVMVAQFTEHTSAIKIRGKAEIYTKHGVIKNE(配列番号7)を含みうる。
1つの実施形態においては、TRAPはトリプトファンRNA結合減衰タンパク質遺伝子ファミリーmtrB(TrpBPスーパーファミリー、例えば、NCBI保存ドメインデータベース#cl03437)によりコードされる。
好ましい実施形態においては、TRAPは6個のヒスチジンアミノ酸(HIS×6タグ)でC末端においてタグ化されている。
好ましい実施形態においては、TRAPは、配列番号1〜7のいずれかに対して50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、機能的に連結されたNOIの発現がウイルスベクター産生細胞において修飾、例えば抑制または予防されるようにRNA結合部位と相互作用しうる。
好ましい実施形態においては、TRAPは、配列番号1〜7のいずれかに対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、機能的に連結されたNOIの発現がウイルスベクター産生細胞において修飾、例えば抑制または予防されるようにRNA結合部位と相互作用しうる。
もう1つの実施形態においては、RNA結合タンパク質(例えば、TRAP)は、機能的に連結されたNOIの発現がウイルスベクター産生細胞において修飾、例えば抑制または予防されるようにRNA結合部位と相互作用しうるタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによりコードされうる。例えば、TRAPは、配列番号1〜7のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによりコードされうる。
本発明における使用のためのRNA結合タンパク質、例えばTRAPの全変異体、断片またはホモログは、NOI(これはマーカー遺伝子でありうる)の翻訳がウイルスベクター産生細胞において抑制または予防されるように本発明の結合部位に結合する能力を保有する。
核酸結合部位
「結合部位」なる語は、あるタンパク質と相互作用しうる核酸配列として理解されるべきである。本発明の核酸結合部位は、本発明のRNA結合タンパク質、例えばトリプトファンRNA結合減衰タンパク質(TRAP)と相互作用しうるものでありうる。
TRAPの場合、TRAPに結合しうるコンセンサス核酸結合部位配列は、複数回(例えば、6、7、8、9、10、11、12回以上)反復する[RAGNN]であり、そのような配列は天然trpオペロンにおいて見出される。天然の状況においては、時にはAAGNNが許容され、時には追加的な「スペーシング」Nヌクレオチドが機能的配列を与える。インビトロ実験は、少なくとも6個またはそれ以上のコンセンサス反復がTRAP−RNA結合に要求されることを示している(Babitzke P,Y.J.,Campanelli D.(1996)Journal of Bacteriology 178(17):5159−5163)。したがって、好ましくは、1つの実施形態においては、tbs内に6個以上の連続的[RAGN >2]配列が存在し、ここで、RはDNAにおけるTまたはGおよびRNAにおけるUまたはGでありうる。
本発明の1つの実施形態においては、TRAP結合部位は配列RAGN >2(例えば、RAGN2−3)を含む。したがって、疑義を回避するために示すと、この核酸結合部位は、例えば、配列UAGNN、GAGNN、TAGNN、UAGNNN、GAGNNNまたはTAGNNNのいずれかを含む。
「N」は、配列内のその位置におけるいずれかのヌクレオチドを特定するものとして理解されるべきである。例えば、これはG、A、T、CまたはUでありうるであろう。そのようなヌクレオチドの数は好ましくは2であるが、11×反復tbsの、3個までの、例えば1個、2個または3個のRAG反復が3個のスペーシングヌクレオチドにより分離されていることが可能であり、翻訳抑制を招く何らかのTRAP結合活性を尚も保有しうる。好ましくは、翻訳抑制を招く最大TRAP結合活性を保有させるために、11×反復tbsにおいて、1個以下のN3スペーサーが使用される。
もう1つの実施形態においては、核酸結合部位はRAGN >2の複数反復(例えば、RAGN2−3の複数反復)を含む。
もう1つの実施形態においては、核酸結合部位は配列RAGN2の複数反復を含む。
もう1つの実施形態においては、核酸結合部位は、RAGN >2の、少なくとも6個の反復(例えば、RAGN2−3の、少なくとも6個の反復)を含む。
もう1つの実施形態においては、核酸結合部位は、RAGN2の、少なくとも6個の反復を含む。例えば、核酸結合部位は、RAGN2の、6、7、8、9、10、11、12個またはそれ以上の反復を含みうる。
もう1つの実施形態においては、核酸結合部位は、RAGN >2の、少なくとも8個の反復(例えば、RAGN2−3の、少なくとも8個の反復)を含む。
好ましくは、核酸結合部位に存在するRAGNNN反復の数は1以下である。
もう1つの実施形態においては、核酸結合部位は、RAGN >2の、11個の反復(例えば、RAGN2−3の、11個の反復)を含む。好ましくは、この核酸結合部位に存在するRAGNNN反復の数は3以下である。
もう1つの実施形態においては、核酸結合部位は、RAGN >2の、12個の反復(例えば、RAGN2−3の、12個の反復)を含む。
好ましい実施形態においては、核酸結合部位は、RAGN2の、8〜11個の反復(例えば、RAGN2の、8、9、10または11個の反復)を含む。
例えば、TRAP結合部位は以下の配列のいずれかを含みうる:
GAGUUUAGCGGAGUGGAGAAGAGCGGAGCCGAGCCUAGCAGAGACGAGUGGAGCU(配列番号8);または
GAGUUUAGCGGAGUGGAGAAGAGCGGAGCCGAGCCUAGCAGAGACGAGAAGAGCU(配列番号9)。
「RAGN >2の反復」は、一般的なRAGN >2(例えばRAGN2−3)モチーフが反復していることであると理解されるべきである。このモチーフの基準を満足する種々のRAGN >2配列が、核酸結合部位を構成するために加わりうる。生じる核酸結合部位は、このモチーフの要件を満足するただ1個の配列の反復に限定されるとは意図されないが、この可能性も該定義に含まれる。例えば、「RAGN >2の、6個の反復」は以下の配列を含むが、それらに限定されるものではない:
UAGUU−UAGUU−UAGUU−UAGUU−UAGUU−UAGUU(配列番号10);
UAGUU−UAGUU−GAGUU−UAGUU−GAGUU−UAGUU(配列番号11);
GAGUUU−GAGUU−GAGUU−GAGUUU−GAGUU−GAGUU(配列番号12);および
UAGUUU−GAGUU−UAGUU−GAGUUU−UAGUU−GAGUU(配列番号13)(ここにおけるダッシュ記号は、明確化のために、該反復間に含まれているに過ぎない)。
1個のRAGNNN反復と7個のRAGNN反復とを含有する8反復tbsはTRAP媒介性抑制活性を保有する。1以上のRAGNNN反復を含有する8個未満の反復のtbs配列(例えば、7または6反復tbs配列)はより低いTRAP媒介性抑制活性を有しうる。したがって、8個未満の反復が存在する場合、tbsはRAGNN反復のみを含むを含むことが好ましい。
RAGNN反復コンセンサスにおける使用のための好ましいヌクレオチドは以下のとおりである:
・NNスペーサー位置の少なくとも1つにおけるピリミジン;
・NNスペーサー位置の最初の位置におけるピリミジン;
・NNスペーサー位置の両方におけるピリミジン;
・R位におけるG。
NNスペーサー位置がAAである場合、R位にGが使用されることも好ましい(すなわち、コンセンサス配列における反復としてTAGAAは使用されないことが好ましい)。
「相互作用しうる」は、細胞、例えばウイルスベクター産生真核細胞において生じる条件下、核酸結合部位がタンパク質、例えばTRAPに結合しうることとして理解されるべきである。RNA結合タンパク質、例えばTRAPとのそのような相互作用は、核酸結合部位が機能的に連結されているNOIの翻訳の抑制または予防をもたらす。
「機能的に連結」は、記載されている成分が、それらの意図される様態でそれらが機能することを可能にする関係で存在することとして理解されるべきである。したがって、NOIに機能的に連結されている本発明のRNA結合部位は、RNA結合タンパク質、例えばTRAPがRNA結合部位に結合した場合にNOIの翻訳が修飾されるように位置する。
与えられたオープンリーディングフレーム(ORF)のNOI翻訳開始コドンの上流のRNA結合タンパク質(例えば、TRAP結合配列;tbs)と相互作用しうる核酸結合部位の配置は、そのORFに由来するmRNAの特異的翻訳抑制を可能にする。翻訳開始コドンおよびTRAP結合部位を分離しているヌクレオチドの数は、抑制の度合に影響を及ぼすことなく、様々となることが可能であり、例えば0〜12ヌクレオチドでありうる。もう1つの例として、翻訳開始コドンおよびTRAP結合部位を分離するために0〜43ヌクレオチドが使用されうる。
NOIの翻訳の抑制または予防は、同等の時点で本発明の核酸結合部位の非存在下で発現される量と比較した場合の、ウイルスベクター産生中に翻訳されるNOIの産物(例えば、タンパク質)の量の変化として理解されるべきである。翻訳のそのような変化は、NOIによりコードされるタンパク質の発現の、結果として生じる抑制または予防をもたらす。
本発明の1つの実施形態においては、関心のあるヌクレオチドの翻訳がウイルスベクター産生細胞において抑制または予防されるように、核酸結合部位はRNA結合タンパク質、例えばトリプトファンRNA結合減衰タンパク質(TRAP)と相互作用しうる。
ベクター産生中のいずれかの与えられた時点でのNOIの翻訳は、ベクター産生における同じ時点で本発明の核酸配列の非存在下で翻訳される量の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%または0.1%に低減されうる。
ベクター産生中のいずれかの与えられた時点でのNOIの翻訳は、ベクター産生における同じ時点で本発明の核酸配列の非存在下で翻訳される量の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%または0.1%未満に低減されうる。
NOIの翻訳の予防(阻止)は、翻訳の量を実質的にゼロに低減することとして理解されるべきである。
ベクター産生中のいずれかの与えられた時点でのNOIからのタンパク質の発現は、ベクター産生における同じ時点で本発明の核酸配列の非存在下で発現される量の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%または0.1%に低減されうる。
ベクター産生中のいずれかの与えられた時点でのNOIからのタンパク質の発現は、ベクター産生における同じ時点で本発明の核酸配列の非存在下で発現される量の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%または0.1%未満に低減されうる。
NOIからのタンパク質の発現の予防(阻止)は、発現されるタンパク質の量を実質的にゼロに低減することとして理解されるべきである。
NOIの翻訳の分析および/または定量のための方法は当技術分野でよく知られている。
細胞溶解細胞からのタンパク質産物は、クーマシーまたは銀染色による可視化を伴うSDS−PAGE分析のような方法を用いて分析されうる。あるいは、タンパク質産物は、タンパク質産物に結合する抗体プローブを使用するウエスタンブロット法または酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)を用いて分析されうる。無傷細胞におけるタンパク質産物は免疫蛍光による分析されうる。
関心のあるヌクレオチド
本発明の1つの実施形態においては、関心のあるヌクレオチドは、RNA結合タンパク質、例えばトリプトファンRNA結合減衰タンパク質(TRAP)を欠く標的細胞において翻訳される。
「標的細胞」は、それにおいてNOIを発現させることが望ましい細胞として理解されるべきである。NOIは、本発明のウイルスベクターを使用して標的細胞内に導入されうる。標的細胞への送達はインビボ、エクスビボまたはインビトロで行われうる。
好ましい実施形態においては、関心のあるヌクレオチドは治療効果をもたらす。
NOIは治療または診断用途を有しうる。適当なNOIには、酵素、補因子、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、抗体、抗酸化分子、操作された免疫グロブリン様分子、一本鎖抗体、融合タンパク質、免疫共刺激分子、免疫調節分子、キメラ抗原受容体、標的タンパク質のトランスドメイン陰性突然変異体、毒素、条件的毒素、抗原、腫瘍抑制タンパク質、増殖因子、膜タンパク質、受容体、血管作動性タンパク質およびペプチド、抗ウイルスタンパク質およびリボザイム、ならびにそれらの誘導体(例えば、関連レポーター基を有する誘導体)をコードする配列が含まれるが、これらに限定されるものではない。NOIはマイクロRNAをもコードしうる。理論により束縛されることを望むものではないが、マイクロRNAのプロセシングはTRAPにより抑制されると考えられている。
1つの実施形態においては、NOIは神経変性障害の治療において有用でありうる。
もう1つの実施形態においては、NOIはパーキンソン病の治療において有用でありうる。
もう1つの実施形態においては、NOIは、ドーパミン合成に関与する酵素をコードしうる。例えば、該酵素は以下のものの1以上でありうる:チロシンヒドロキシラーゼ、GTP−シクロヒドロラーゼIおよび/または芳香族アミノ酸ドーパデカルボキシラーゼ。3つ全ての遺伝子の配列が入手可能である(GenBank(登録商標)アクセッション番号X05290、U19523およびM76180)。
もう1つの実施形態においては、NOIは小胞モノアミン輸送体2(VMAT2)をコードしうる。もう1つの実施形態においては、ウイルスゲノムは、芳香族アミノ酸ドーパデカルボキシラーゼをコードするNOIおよびVMAT2をコードするNOIを含みうる。そのようなゲノムはパーキンソン病の治療において、特にL−DOPAの末梢投与と共に使用されうる。
もう1つの実施形態においては、NOIは治療用タンパク質または治療用タンパク質の組合せをコードしうる。
もう1つの実施形態においては、NOIは、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、インターロイキン1ベータ(IL−1β)、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インスリン増殖因子−2、VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C/VEGF−2、VEGF−D、VEGF−E、PDGF−A、PDGF−B、PDFG−AおよびPDFG−Bのヘテロおよびホモ二量体からなる群から選択されるタンパク質をコードしうる。
もう1つの実施形態においては、NOIは、アンジオスタチン、エンドスタチン、血小板因子4、色素上皮由来因子(PEDF)、レスチン(restin)、インターフェロン−α、インターフェロン誘導性タンパク質、gro−ベータおよびチューブダウン(tubedown)−1、インターロイキン(IL)−1、IL−12、レチノイン酸、抗VEGF抗体またはそれらのフラグメント(断片)/変異体、トロンボスポンジン、VEGF受容体タンパク質、例えばUS 5,952,199およびUS 6,100,071に記載されているもの、ならびに抗VEGF受容体抗体からなる群から選択される抗血管新生タンパク質をコードしうる。
もう1つの実施形態においては、NOIは嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR)をコードしうる。
もう1つの実施形態においては、NOIは、通常は眼細胞において発現されるタンパク質をコードしうる。
もう1つの実施形態においては、NOIは、通常は光受容細胞および/または網膜色素上皮細胞において発現されるタンパク質をコードしうる。
もう1つの実施形態においては、NOIは、RPE65、アリール炭化水素相互作用性受容体タンパク質様1(AIPL1)、CRB1、レシチン網膜アセチルトランスフェラーゼ(LRAT)、光受容体特異的ホメオボックス(CRX)、網膜グアニル酸シクラーゼ(GUCY2D)、RPGR相互作用タンパク質1(RPGRIP1)、LCA2、LCA3、LCA5、ジストロフィン、PRPH2、CNTF、ABCR/ABCA4、EMP1、TIMP3、MERTK、ELOVL4、MYO7A、USH2A、VMD2、RLBP1、COX−2、FPR、ハルモニン(harmonin)、Rabエスコート(escort)タンパク質1、CNGB2、CNGA3、CEP 290、RPGR、RS1、RP1.PRELP、グルタチオン経路酵素およびオプチシン(opticin)を含む群から選択されるタンパク質をコードしうる。
他の実施形態においては、NOIはヒト第VIII因子または第IX因子をコードしうる。
他の実施形態においては、NOIはキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)をコードしうる。
他の実施形態においては、NOIは、SGSH、SUMF1、GAA、共通ガンマ鎖(CD132)、アデノシンデアミナーゼ、WASタンパク質、グロビン、アルファガラクトシダーゼA、δ−アミノレブリン酸(ALA)シンターゼ、δ−アミノレブリン酸デヒドラターゼ(ALAD)、ヒドロキシメチルビラン(HMB)シンターゼ、ウロポルフィリノーゲン(URO)シンターゼ、ウロポルフィリノーゲン(URO)デカルボキシラーゼ、コプロポルフィリノーゲン(COPRO)オキシダーゼ、プロトポルフィリノーゲン(PROTO)オキシダーゼ、フェロケラターゼ、α−L−イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、ヘパランスルファミダーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ、ヘパラン−α−グルコサミニド N−アセチルトランスフェラーゼ、3 N−アセチルグルコサミン 6スルファターゼ、ガラクトース−6−硫酸スルファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ、β−グルクロニダーゼおよびヒアルロニダーゼをコードしうる。
NOIに加えて、該ベクターはまた、siRNA、shRNAまたは調節shRNAを含む又はコードしうる(Dickinsら(2005)Nature Genetics 37:1289−1295,Silvaら(2005)Nature Genetics 37:1281−1288)。
適応症
本発明の、レトロウイルスおよびAAVベクターを含むベクターは、WO 1998/05635、WO 1998/07859、WO 1998/09985に挙げられている障害の治療において有用な1以上のNOIを送達するために使用されうる。関心のあるヌクレオチドはDNAまたはRNAでありうる。そのような疾患の例を以下に記載する。
サイトカインおよび細胞増殖/分化活性;免疫抑制または免疫刺激活性(例えば、ヒト免疫不全ウイルス感染を含む免疫不全の治療、リンパ球増殖の調節、癌および多数の自己免疫疾患の治療、ならびに移植拒絶反応の予防または腫瘍免疫の誘導のためのもの);造血の調節(例えば、骨髄またはリンパ系疾患の治療);骨、軟骨、腱、靭帯および神経組織の成長の促進(例えば、創傷治癒、熱傷、潰瘍および歯周病および神経変性の治療のためのもの);卵胞刺激ホルモンの抑制または活性化(生殖能力の調節);走化性/ケモキネシス活性(例えば、特定の細胞型を損傷または感染部位に動員するためのもの);止血および血栓溶解活性(例えば、血友病および脳卒中の治療のためのもの);抗炎症活性(例えば、敗血症性ショックまたはクローン病の治療のためのもの);マクロファージ抑制および/またはT細胞抑制活性、したがって抗炎症活性;抗免疫活性(すなわち、炎症に関連しない応答を含む、細胞性および/または体液性免疫応答に対する抑制効果);細胞外マトリックス成分およびフィブロネクチンに接着するマクロファージおよびT細胞の能力の抑制、ならびにT細胞におけるアップレギュレーションfas受容体発現に応答する障害。
悪性障害、例えば癌、白血病、良性および悪性腫瘍の増殖、浸潤および広がり、血管新生、転移、腹水および悪性胸水。
自己免疫疾患、例えば関節炎、例えば関節リウマチ、過敏症、アレルギー反応、喘息、全身性エリテマトーデス、コラーゲン疾患および他の疾患。
血管疾患、例えば動脈硬化症、アテローム硬化性心疾患、再灌流障害、心停止、心筋梗塞、血管炎症性障害、呼吸窮迫症候群、心血管作用、末梢血管疾患、片頭痛およびアスピリン依存性抗血栓症、脳卒中、脳虚血、虚血性心疾患または他の疾患。
胃腸管の疾患、例えば消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎、クローン病および他の疾患。
肝疾患、例えば肝線維症、肝硬変または他の疾患。
腎および泌尿器疾患、例えば甲状腺炎または他の腺疾患、糸球体腎炎または他の疾患。
耳、鼻および咽喉障害、例えば中耳炎または他の耳鼻咽喉疾患、皮膚炎または他の皮膚疾患。
歯科および口腔障害、例えば歯周病、歯周炎、歯肉炎または他の歯科/口腔疾患。
精巣疾患、例えば精巣炎または精巣上体−精巣炎、不妊症、睾丸外傷または他の精巣疾患。
婦人科疾患、例えば胎盤機能不全、胎盤不全、習慣流産、子癇、子癇前症、子宮内膜症およびその他の婦人科疾患。
眼科学的障害、例えば後部ブドウ膜炎、中間部ブドウ膜炎、前部ブドウ膜炎、結膜炎、脈絡網膜炎、ブドウ膜網膜炎、視神経炎、緑内障、例えば開放隅角緑内障および若年性先天性緑内障、眼内炎症、例えば網膜炎または嚢胞様黄斑浮腫、交感性眼炎、強膜炎、網膜色素変性症、黄斑変性、例えば加齢性黄斑変性(AMD)および若年性黄斑変性、例えばベスト病、ベスト卵黄様黄斑変性、スタルガルト病、アッシャー症候群、ドイン蜂巣状網膜ジストロフィー、ソービー黄斑ジストロフィー、若年性網膜分離症、錐体桿体ジストロフィー、角膜ジストロフィー、フックスジストロフィー、レーバー先天性黒内障、レーバー遺伝性視神経症(LHON)、アディー症候群、小口病、変性眼底疾患、眼外傷、感染によって引き起こされる眼炎症、増殖性硝子体網膜症、急性虚血性視神経症、過剰瘢痕化、例えば緑内障濾過手術後のもの、眼用インプラントに対する反応、角膜移植片拒絶反応、ならびに他の眼疾患、例えば糖尿病性黄斑浮腫、網膜静脈閉塞、RLBP1関連網膜ジストロフィー、脈絡膜欠如および色盲。
神経学的および神経変性障害、例えばパーキンソン病、パーキンソン病の治療からの合併症および/または副作用、エイズ関連認知症症候群HIV関連脳症、デビック病、シデナム舞踏病、アルツハイマー病および他のCNS変性疾患、病態または障害、脳卒中、ポリオ後症候群、精神障害、脊髄炎、脳炎、亜急性硬化性汎脳炎、脳脊髄炎、急性神経障害、亜急性神経障害、慢性神経障害、ポンペ病、ギラン・バレー症候群、シドナム舞踏病、重症筋無力症、擬似腫瘍大脳、ダウン症候群、ハンチントン病、CNS圧迫またはCNS外傷またはCNS感染、筋委縮およびジストロフィー、中枢および末梢神経系の疾患、病態または障害、運動ニューロン疾患、例えば筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋委縮症、脊髄および剥離損傷。
他の疾患および病態、例えば嚢胞性線維症、ムコ多糖症、例えばサンフィリポ症候群A、ADA−SCID、X連鎖SCID、ポルフィリン症、血友病A、血友病B、外傷後炎症、出血、凝血および急性期応答、悪液質、食欲不振、急性感染症、敗血症性ショック、感染性疾患、手術の合併症または副作用、骨髄移植または他の移植合併症および/または副作用、遺伝子治療の合併症および副作用、例えばウイルスキャリアまたはエイズの感染によるもの、体液性および/または細胞性免疫応答を抑制または阻害するためのものによって生じるもの、天然または人工細胞、組織および器官、例えば角膜、骨髄、臓器、臓器、レンズ、ペースメーカー、天然または人工皮膚組織の移植の場合の移植拒絶の予防および/または治療のためのものによって生じるもの。
siRNA、マイクロRNAおよびshRNA
ある他の実施形態においては、NOIはマイクロRNAを含む。マイクロRNAは生物において天然で産生される小さなRNAの非常に大きな群であり、それらの少なくとも一部は標的遺伝子の発現を調節する。マイクロRNAファミリーの当初のメンバーはlet−7およびlin−4である。let−7遺伝子は、蠕虫の発生中に内因性タンパク質コード化遺伝子の発現を調節する小さな高度に保存されたRNA種をコードしている。該活性RNA種は最初は〜70ntの前駆体として転写され、これは〜21ntの成熟形態へと転写後プロセシングされる。let−7およびlin−4は共にヘアピンRNA前駆体として転写され、これらはダイサー酵素によりそれらの成熟形態へとプロセシングされる。
該ベクターは、NOIに加えて、siRNA、shRNAまたは調節shRNAを含み又はコードしうる(Dickinsら(2005)Nature Genetics 37:1289−1295,Silvaら(2005)Nature Genetics 37:1281−1288)。
二本鎖RNA(dsRNA)により引き起こされる転写後遺伝子スプライシング(PTGS)は、外来遺伝子の発現を制御するための保存された細胞防御メカニズムである。ウイルスまたはトランスポゾンのような要素のランダムな組込みは、相同一本鎖mRNAまたはウイルスゲノムRNAの配列特異的分解を活性化するdsRNAの発現を引き起こすと考えられている(Ralphら(2005)Nature Medicine 11:429−433)。RNAiのメカニズムは約21〜25ヌクレオチド(nt)のRNAの二本鎖への長いdsRNAのプロセシングを含む。これらの産物は、mRNA分解の配列特異的メディエーターである低分子干渉またはサイレンシングRNA(siRNA)と称される。分化哺乳類細胞においては、30bpを超えるdsRNAはインターフェロン応答を活性化して、タンパク質合成の阻止および非特異的mRNA分解を招くことが判明している(Starkら,Annu Rev Biochem 67:227−64(1998))。しかし、この応答は、培養哺乳類細胞内で遺伝子機能が分析されることを可能にする21ntのsiRNA二本鎖を使用することにより迂回されうる(Elbashirら,EMBO J.Dec 3;20(23):6877−88(2001),Hutvagnerら,Science.Aug 3,293(5531):834−8.Eupub Jul 12(2001))。
ベクター
本発明のもう1つの態様は、本発明の核酸配列を含むウイルスベクターに関する。
ベクターは、1つの環境からもう1つの環境への実体の導入を可能にし又は促進する手段である。例示すれば、本発明においては、組換え核酸技術において使用される幾つかのベクターは、核酸のセグメント(例えば異種DNAセグメント、例えば異種cDNAセグメント)のような実体が標的細胞内に導入されることを可能にする。ベクターは、異種核酸(DNAまたはRNA)を細胞内に維持する目的、あるいはDNAもしくはRNAのセグメントを含むベクターの複製または核酸のセグメントによりコードされるタンパク質の発現を促進する目的を達成しうる。
本発明のベクターは、例えば、複製起点、所望により、該ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーター、および所望により、該プロモーターの調節因子を備えたウイルスベクターでありうる。ベクターは、1以上の選択可能なマーカー遺伝子(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子)および/または追跡可能なマーカー遺伝子(例えば、GFPをコードする遺伝子)を含有しうる。ベクターは、例えば、標的細胞に感染させ、および/または導入するために使用されうる。
本発明のベクターは、インビトロで和合性標的細胞においてNOIを複製するために使用されうる。したがって、本発明は、インビトロで和合性標的細胞内に本発明のベクターを導入し、NOIの発現をもたらす条件下、該標的細胞を増殖させることによる、インビトロでのタンパク質の製造方法を提供する。タンパク質は、当技術分野でよく知られた方法により標的細胞から回収されうる。適当な標的細胞には、哺乳類細胞系および他の真核細胞系が含まれる。
ベクターは発現ベクターでありうる。本明細書に記載されている発現ベクターは、転写されうる配列を含有する核酸の領域を含む。したがって、mRNA、tRNAおよびrRNAをコードする配列がこの定義に含まれる。好ましくは、発現ベクターは、標的細胞によるコード配列の発現をもたらしうる制御配列に機能的に連結された本発明のポリヌクレオチドを含む。
ウイルスベクター
本発明の1つの実施形態においては、ベクターはウイルスベクターである。ウイルスベクターはベクター、ベクタービリオンまたはベクター粒子とも称されうる。
もう1つの実施形態においては、ウイルスベクターはレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルスまたはバキュロウイルスに由来する。
本発明の抑制系は任意のウイルスベクター系に有益であると予想される。該系は、関心のあるヌクレオチドが例えばウイルスベクター産生細胞に又はビリオン構築中に有害な影響をもたらす場合に特に有用であろう。
もう1つの実施形態においては、レトロウイルスは泡沫状ウイルスに由来する。
もう1つの実施形態においては、レトロウイルスベクターはレンチウイルスに由来する。
もう1つの実施形態においては、レンチウイルスベクターはHIV−1、HIV−2、SIV、FIV、BIV、EIAV、CAEVまたはビスナレンチウイルスに由来する。
ベクター力価
ウイルスベクターの力価を決定する多数の異なる方法が存在する、と当業者は理解するであろう。力価は、しばしば、導入単位/mL(TU/mL)として記載される。力価は、感染粒子の数を増加させることにより、およびベクター調製物の特異的活性を増加させることにより増加しうる。
レトロウイルスおよびレンチウイルスベクター
本発明のレトロウイルスベクターは任意の適当なレトロウイルスから誘導(由来)されうる又は誘導可能でありうる。多数の異なるレトロウイルスが特定されている。具体例には以下のものが含まれる:マウス白血病ウイルス(MLV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、藤波肉腫ウイルス(FuSV)、モロニーマウス白血病ウイルス(Mo MLV)、FBRマウス骨肉腫ウイルス(FBR MSV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(Mo−MSV)、アベルソンマウス白血病ウイルス(A−MLV)、トリ骨髄球腫症ウイルス−29(MC29)およびトリ赤芽球症ウイルス(AEV)。レトロウイルスの詳細な一覧はCoffinら(1997)“Retroviruses”,Cold Spring Harbour Laboratory Press Eds:JM Coffin,SM Hughes,HE Varmus pp 758−763において見出されうる。
レトロウイルスは大雑把には2つの範疇、すなわち、「単純」および「複合」に分類されうる。レトロウイルスは更に7つの群に分類されうる。これらの群のうちの5つは、発癌能を有するレトロウイルスに相当する。残りの2つの群はレンチウイルスおよびスプーマウイルスである。これらのレトロウイルスの概説はCoffinら(1997),前掲に記載されている。
レトロウイルスおよびレンチウイルスゲノムの基本構造は多数の共通の特徴を有し、それらには、例えば、5’LTRおよび3’LTR(それらの間または内部に、ゲノムがパッケージングされることを可能にするパッケージングシグナルが位置する)、プライマー結合部位、標的細胞ゲノム内への組込みを可能にする組込み部位、ならびにウイルス粒子の構築に必要なポリペプチドであるパッケージング成分をコードするgag/polおよびenv遺伝子が挙げられる。レンチウイルスは追加的な特徴、例えば、HIVにおけるrev遺伝子およびRRE配列を有し、これらは、感染標的細胞の核から細胞質への、組込まれたプロウイルスのRNA転写産物の効率的な輸出を可能にする。
プロウイルスにおいては、これらの遺伝子は両端で、長末端反復(LTR)と称される領域に隣接している。LTRはプロウイルスの組込みおよび転写をもたらす。LTRはエンハンサー−プロモーター配列としても働き、ウイルス遺伝子の発現を制御しうる。
LTRはそれら自体が同一の配列であり、U3、RおよびU5と称される3つの要素に分類されうる。U3はRNAの3’末端に特有の配列に由来する。Rは、RNAの両端において反復する配列に由来し、U5は、RNAの5’末端に特有の配列に由来する。それらの3つの要素のサイズはレトロウイルスよって大きく変動しうる。
本発明の典型的なレトロウイルスベクターにおいては、複製に必須の領域をコードする1以上のタンパク質の少なくとも一部が該ウイルスから除去されうる。、例えば、gag/polおよびenvは存在しないこと又は機能的でないことが可能である。これは該ウイルスベクターを複製欠損型にする。
また、標的の非分裂細胞に導入可能であり、および/またはウイルスゲノムを宿主ゲノム内に組込むことが可能な本発明の候補核酸結合配列を含むベクターを作製するために、ウイルスゲノムの部分は、ベクターゲノム内のレポーター遺伝子および調節制御領域に機能的に連結された本発明の候補核酸結合配列をコードするライブラリーにより置換されうる。
レンチウイルスはレトロウイルスの、より大きな群の一部である。レンチウイルスの詳細な一覧はCoffinら(1997)“Retroviruses”Cold Spring Harbour Laboratory Press Eds:JM Coffin,SM Hughes,HE Varmus pp 758−763に見出されうる。簡潔に説明すると、レンチウイルスは霊長類群および非霊長類群に分類されうる。霊長類レンチウイルスの例には、ヒト自己免疫不全症候群(エイズ)の原因因子であるヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が含まれるが、これらに限定されるものではない。非霊長類レンチウイルス群には、原型「スローウイルス」ビスナ/マエディウイルス(VMV)、ならびに関連ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)およびウシ免疫不全ウイルス(BIV)が含まれる。
レンチウイルスファミリーは、レンチウイルスが分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染する能力を有する点で、レトロウイルスとは異なる(Lewisら(1992)EMBO J 11(8):3053−3058ならびにLewisおよびEmerman(1994)J Virol 68(1):510−516)。これとは対照的に、MLVのような他のレトロウイルスは非分裂細胞または遅く分裂する細胞(例えば、筋肉、脳、肺および肝組織を構成する細胞)には感染できない。
本明細書中で用いるレンチウイルスベクターは、レンチウイルスから誘導可能な少なくとも1つの成分部分を含むベクターである。好ましくは、その成分部分は、該ベクターが細胞に感染し、遺伝子を発現し、または複製される生物学的メカニズムに関与する。
レンチウイルスベクターは霊長類レンチウイルス(例えば、HIV−1)または非霊長類レンチウイルスに由来しうる。
非霊長類レンチウイルスの例は、霊長類に天然で感染しないレンチウイルス科の任意のメンバーであることが可能であり、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、マエディビスナウイルス(MVV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)を包含しうる。
一般的には、典型的なレトロウイルスベクター産生系は必須ウイルスパッケージング機能からのウイルスゲノムの分離を含む。図1に示されているとおり、これらの成分は、別々のDNA発現カセット(あるいは、プラスミド、発現プラスミド、DNA構築物または発現構築物として知られている)上で産生細胞に付与される。
ベクターゲノムはNOIを含む。ベクターゲノムは、典型的には、パッケージングシグナル(ψ)、NOIを保持する内部発現カセット、(所望により)転写後要素(PRE)、3’−ppuおよび自己不活性化(SIN)LTRを要する。ベクターゲノムRNAおよびNOI mRNAの両方の適切なポリアデニル化ならびに逆転写の過程のために、R−U5領域が必要である。ベクターゲノムは、所望により、WO 2003/064665に記載されているオープンリーディングフレームを含みうる。
パッケージング機能はgag/polおよびenv遺伝子を含む。これらは産生細胞によるベクター粒子の産生のために必要である。ゲノムへのトランスでのこれらの機能の付与は複製欠損型ウイルスの産生を促進する。
ガンマ−レトロウイルスベクターの産生系は、典型的には、ゲノム、gag/polおよびenv発現構築物を要する3成分系である。HIV−1に基づくレンチウイルスベクターの産生系は更に、ベクターゲノムがrev応答要素(RRE)を含むための、トランスで付与されるアクセサリー遺伝子revを要する。EIAVに基づくレンチウイルスベクターは、オープンリーディングフレーム(ORF)が存在する場合には、revを要さない(WO 2003/064665を参照されたい)。
通常、ベクターゲノムカセット内でコードされる「外部」プロモーター(これはベクターゲノムカセットを駆動する)および「内部」プロモーター(これはNOIカセットを駆動する)の両方は、その他のベクター系成分を駆動するものと同様に、強力な真核またはウイルスプロモーターである。そのようなプロモーターの例には、CMV、EF1a、PGK、CAG、TK、SV40およびユビキチンプロモーターが含まれる。強力な「合成」プロモーター、例えば、DNAライブラリーにより作製されたプロモーター(例えば、JeTプロモーター)が、転写を駆動するために使用されうる。あるいは、転写を駆動するためには、例えば以下のような組織特異的プロモーターが使用されうる:ロドプシン(Rho)、ロドプシンキナーゼ(RhoK)、錐体−桿体ホメオボックス含有遺伝子(CRX)、神経網膜特異的ロイシンジッパータンパク質(NRL)、卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)、チロシンヒドロキシラーゼ、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター、アストロサイト特異的グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーター、ヒトα1−アンチトリプシン(hAAT)プロモーター、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)、肝臓脂肪酸結合タンパク質プロモーター、Flt−1プロモーター、INF−βプロモーター、Mbプロモーター、SP−Bプロモーター、SYN1プロモーター、WASPプロモーター、SV40/hAlbプロモーター、SV40/CD43、SV40/CD45、NSE/RU5’プロモーター、ICAM−2プロモーター、GPIIbプロモーター、GFAPプロモーター、フィブロネクチンプロモーター、エンドグリンプロモーター、エラスターゼ−1プロモーター、デスミンプロモーター、CD68プロモーター、CD14プロモーターおよびB29プロモーター。
レトロウイルスベクターの産生(製造)はこれらのDNA成分での産生細胞の一過性トランスフェクションまたは安定なプロデューサー細胞系(PCL)の使用を含み、ここで、該成分は産生細胞ゲノム内に組込まれる(Stewart,H.J.,M.A.Leroux−Carlucci,C.J.Sion,K.A.MitrophanousおよびP.A.Radcliffe(2009)Gene Ther.16(6):805−814 Epub 2009 Mar 2005)。もう1つのアプローチは、安定なパッケージング細胞(該細胞内にパッケージング成分が安定に組込まれている)を使用すること、および次いで必要に応じて、ベクターゲノムプラスミドにおける一過性トランスフェクションを行うことである。本発明のウイルスベクターを作製するためには、産生細胞は、RNA結合タンパク質(例えば、TRAPタンパク質)を発現する能力を有する必要がある。したがって、本発明の1つの実施形態においては、産生細胞はRNA結合タンパク質(例えば、TRAP)構築物を安定に発現する。本発明のもう1つの実施形態においては、産生細胞はRNA結合タンパク質(例えば、TRAP)構築物を一過性に発現する。本発明のもう1つの実施形態においては、産生細胞はRNA結合タンパク質(例えば、TRAP)構築物を安定に発現し、そしてまた、RNA結合タンパク質(例えば、TRAP)構築物を一過性に発現する。
TRIP系は主にレトロウイルスベクターの製造に関して記載されているが、他のウイルスベクターにも類似戦略が適用されうることに留意すべきである。
本発明の1つの実施形態においては、ウイルスベクターはEIAVに由来する。EIAVはレンチウイルスの最も単純なゲノム構造を有し、本発明における使用に特に好ましい。EIAVは、gag/polおよびenv遺伝子に加えて、3つの他の遺伝子、すなわち、tat、revおよびS2をコードしている。TatはウイルスLTRの転写活性化因子として作用し(DerseおよびNewbold(1993)Virology 194(2):530−536 ならびにMauryら(1994)Virology 200(2):632−642)、revはrev応答要素(RRE)を介してウイルス遺伝子の発現を調節し、統合する(Martaranoら(1994)J Virol 68(5):3102−3111)。これらの2つのタンパク質の作用メカニズムは霊長類ウイルスにおける同様のメカニズムに大雑把には類似していると考えられている(Martaranoら(1994)J Virol 68(5):3102−3111)。S2の機能は未知である。また、EIAVタンパク質Ttmが特定されており、これは、膜貫通タンパク質の開始部位におけるenvコード配列へとスプライシングされるtatの第1エキソンによりコードされている。本発明のもう1つの実施形態においては、ウイルスベクターはHIVに由来する。HIVがEIAVと異なるのは、それがS2をコードしていないが、EIAVとは違って、それがvif、vpr、vpuおよびnefをコードしている点である。
「組換えレトロウイルスまたはレンチウイルスベクター」(RRV)なる語は、標的細胞に感染しうるウイルス粒子内へのRNAゲノムのパッケージングをパッケージング成分の存在下で可能にするのに十分なレトロウイルス遺伝情報を有するベクターを意味する。標的細胞への感染は逆転写および標的細胞ゲノム内への組込みを含みうる。RRVは、該ベクターにより標的細胞へと送達されるべき非ウイルスコード配列を保持する。RRVは、標的細胞内で感染性レトロウイルス粒子を産生する非依存的複製の能力を有さない。通常、RRVは機能的gag/polおよび/もしくはenv遺伝子、ならびに/または複製に必須の他の遺伝子を欠く。
好ましくは、本発明のRRVベクターは最小ウイルスゲノムを有する。
本明細書中で用いる「最小ウイルスゲノム」なる語は、標的細胞への関心のあるヌクレオチド配列の感染、導入および送達のための必要な機能性を付与するのに必須の要素を保有させながら非必須要素を除去するためにウイルスベクターが操作されていることを意味する。この方法の更なる詳細はWO 1998/17815およびWO 99/32646に見出されうる。最小EIAVベクターはtat、revおよびS2を欠き、これらの遺伝子のいずれもが産生系においてトランスで付与されない。最小HIVベクターはvif、vpr、vpu、tatおよびnefを欠く。
しかし、産生細胞内でベクターゲノムを産生させるために使用される発現プラスミドは、産生細胞/パッケージング細胞におけるゲノムの転写を指令するための、レトロウイルスゲノムに機能的に連結された転写調節制御配列を含む。これらの調節配列は、転写されるレトロウイルス配列に関連した天然配列、すなわち、5’U3領域であることが可能であり、あるいはそれらは異種プロモーター、例えば別のウイルスプロモーター、例えばCMVプロモーター(後記)であることが可能である。幾つかのレンチウイルスベクターゲノムは効率的なウイルス産生のための追加的配列を要する。例えば、特にHIVの場合には、RRE配列が含まれうる。しかし、RREの必要性(およびトランスで付与されるrevに対する依存性)はコドン最適化によって低減または排除されうる。この方法の更なる詳細はWO 2001/79518において見出されうる。rev/RRE系と同じ機能を果たす代替的配列も公知である。例えば、rev/RRE系の機能的類似体がメイソン・ファイザー(Mason Pfizer)サルウイルスにおいて見出される。これは構成的輸送要素(CTE)として公知であり、感染細胞内の因子と相互作用すると考えられているゲノム内のRRE型配列を含む。該細胞因子はrev類似体とみなされうる。したがって、rev/RRE系の代替物としてCTEが使用されうる。公知の又は利用可能となる任意の他の機能的等価体が本発明に関連がありうる。例えば、HTLV−1のRexタンパク質はHIV−1のRevタンパク質に機能的に取って代わりうることが公知である。RevおよびRREは、本発明の方法において使用されるベクターにおいて存在しないか又は非機能的であることが可能であり、二者択一で、revおよびRRE、または機能的に等価な系が存在することが可能である。
SINベクター
本発明の方法において使用されるベクターは、好ましくは、ウイルスエンハンサーおよびプロモーター配列が欠失した自己不活性化(SIN)配置で使用される。SINベクターは製造可能であり、野生型ベクターの場合に類似した有効性でインビボ、エクスビボまたはインビトロで非分裂標的細胞に導入されうる。SINプロウイルスにおける長末端反復(LTR)の転写不活性化は複製可能ウイルスによる動員を妨げるはずである。これは、LTRのシス作用性効果を排除することにより内部プロモーターからの遺伝子の調節発現をも可能にするはずである。
例えば、自己不活性化レトロウイルスベクター系は、転写エンハンサーまたはエンハンサーおよびプロモーター(3’LTRのU3領域内のもの)を欠失させることにより構築されている。ベクターの逆転写および組込みのラウンドの後、これらの変化が5’および3’LTRの両方にコピーされて、転写的に不活性なプロウイルスを与える。しかし、そのようなベクターにおけるLTRに対して内部のいずれかのプロモーターは転写的に尚も活性であろう。この戦略は、内部に位置する遺伝子からの転写の際のウイルスLTRにおけるエンハンサーおよびプロモーターの効果を排除するために用いられている。そのような効果には、転写の増強または転写の抑制が含まれる。この戦略は、ゲノムDNA内への3’LTRから下流転写を排除するためにも用いられうる。これは、いずれかの内因性癌遺伝子の偶発的活性化を予防することが重要なヒト遺伝子治療において特に関心が持たれる。Yuら(1986)PNAS 83:3194−98;Martyら(1990)Biochimie 72:885−7;Naviauxら(1996)J.Virol.70:5701−5;Iwakumaら(1999)Virol.261:120−32;Deglonら(2000)Human Gene Therapy 11:179−90。SINレンチウイルスベクターはUS 6,924,123およびUS 7,056,699に記載されている。
非複製型レンチウイルスベクター
複製欠損型レンチウイルスベクターのゲノムにおいては、gag/polおよび/またはenvの配列が突然変異している、存在しない、および/または機能的でないことが可能である。
本発明の典型的なレンチウイルスベクターにおいては、ウイルス複製に必須のタンパク質に関する1以上のコード領域の少なくとも一部が該ベクターから除去されうる。これはウイルスベクターを複製欠損型にする。非分裂標的細胞に導入可能であり、および/またはウイルスゲノムを標的細胞ゲノム内に組込むことが可能なNOIを含むベクターを作製するために、ウイルスゲノムの部分も、関心のあるヌクレオチド(NOI)により置換されうる。
1つの実施形態においては、レンチウイルスベクターは、WO 2006/010834およびWO 2007/071994に記載されている非組込み性ベクターである。
もう1つの実施形態においては、該ベクターは、ウイルスRNAを欠損している又は欠いている配列を送達する能力を有する。もう1つの実施形態においては、送達されるべきRNA上に位置する異種結合ドメイン(gagにとって異種)およびGagまたはGagPol上の同族(コグネイト)結合ドメインが、送達されるべきRNAのパッケージングを確保するために使用されうる。これらのベクターは共にWO 2007/072056に記載されている。
アデノウイルスベクター
本発明のもう1つの実施形態においては、ベクターはアデノウイルスベクターでありうる。アデノウイルスは、RNA中間体を介しては複製されない二本鎖線状DNAウイルスである。遺伝子配列に基づいて6個の亜群に分類されるアデノウイルスの50以上の異なるヒト血清型が存在する。
アデノウイルスは二本鎖DNA非エンベロープウイルスであり、これは、ヒトおよび非ヒト由来の広範な細胞型にインビボ、エクスビボおよびインビトロで導入されうる。これらの細胞には、呼吸気道上皮細胞、肝細胞、筋細胞、心筋細胞、滑膜細胞、初代乳腺上皮細胞および有糸分裂後終末分化細胞、例えばニューロンが含まれる。
アデノウイルスベクターは非分裂細胞にも導入可能である。これは、肺上皮内の罹患細胞が遅い代謝回転速度を有する嚢胞性線維症のような疾患の場合に非常に重要である。実際、罹患成人嚢胞性線維症患者の肺内への嚢胞性線維症トランスポーター(CFTR)のアデノウイルス媒介性導入を利用する幾つかの治験が進行中である。
アデノウイルスは遺伝子治療用および異種遺伝子発現用のベクターとして使用されている。大きな(36kb)ゲノムは8kbまでの外来インサートDNAを収容可能であり、相補細胞系において効率的に複製されて、1012導入単位/mlまでの非常に高い力価を示しうる。したがって、アデノウイルスは、初代非複製細胞における遺伝子の発現を研究するための最良の系の1つである。
アデノウイルスゲノムからのウイルス遺伝子または外来遺伝子の発現は複製細胞を要さない。アデノウイルスベクターは受容体媒介性エンドサイトーシスにより細胞に侵入する。細胞内に一旦入れば、アデノウイルスベクターは宿主染色体内にはめったに組込まれない。それよりむしろ、それらは宿主核内で線状ゲノムとしてエピソーム的に(宿主ゲノムから独立して)機能する。
アデノ随伴ウイルスベクター
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、本発明において使用される魅力的なベクター系である。なぜなら、それは高い組込み頻度を有し、それは非分裂細胞に感染可能だからである。このため、それは哺乳類細胞内への遺伝子の送達に有用となる。AAVは広範な感染宿主域を有する。rAAVベクターの作製および使用に関する詳細は米国特許第5,139,941号および米国特許第4,797,368号(それぞれを参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。
組換えAAVベクターはマーカー遺伝子およびヒト疾患に関与する遺伝子のインビトロ、エクスビボおよびインビボ導入のために成功裏に使用されている。
大きなペイロード(payload;負荷)(8〜9kbまで)を効率的に組込みうる或るAAVベクターが開発されている。1つのそのようなベクターはAAV5カプシドおよびAAV2 ITRを有する(Allocca Mら,J.Clin Invest(2008)118:1955−1964)。
単純ヘルペスウイルスベクター
単純ヘルペスウイルス(HSV)は、ニューロンに自然感染するエンベロープ二本鎖DNAウイルスである。それは外来DNAの大きな断片を収容可能であり、このため、それはベクター系として魅力的なものとなり、ニューロンへの遺伝子送達用のベクターとして使用されている(Manservigietら Open Virol J.(2010)4:123−156)。
治療方法におけるHSVの使用は、株を、それが溶解サイクルを確立し得ないように弱毒化することを要する。特に、HSVベクターをヒトにおける遺伝子治療に使用する場合には、ポリヌクレオチドは、好ましくは、必須遺伝子内に挿入されるべきである。これは、ウイルスベクターが野生型ウイルスと遭遇すると、野生型ウイルスへの異種遺伝子の導入が組換えにより生じうるからである。しかし、ポリヌクレオチドが必須遺伝子内に挿入される限り、この組換え導入は受容ウイルスにおける必須遺伝子を欠失させ、複製可能野生型ウイルス集団内への異種遺伝子の「脱出」を防ぐであろう。
ワクシニアウイルスベクター
本発明のベクターはワクシニアウイルスベクター、例えばMVAまたはNYVACでありうる。ワクシニアベクターの代替物には、鶏痘またはカナリア痘(ALVACとして公知である)のようなアビポックスベクター、およびそれらに由来する株であって、ヒト細胞に感染し、ヒト細胞において組換えタンパク質を発現するが、複製不能であるものが含まれる。
バキュロウイルスベクター
また、本発明のベクターはバキュロウイルスベクターでありうる。哺乳類細胞におけるコード化NOIの発現を可能にするバキュロウイルスの修飾は当技術分野でよく知られている。これは、例えば、NOIの上流の哺乳類プロモーターの使用により達成されうる。
複数のNOIをコードするベクター
1つの実施形態においては、ベクターは2以上のNOIを含み、ここで、1以上のNOIは本発明の核酸結合部位に機能的に連結されている。
配列内リボソーム進入部位(IRES)
前記のとおり、本発明のベクターは2以上のNOIを含みうる。これらのNOIが発現されるためには、ベクターゲノム内に2以上の転写単位(各NOIにつき1個)が存在しうる。しかし、レトロウイルスベクターは、それが遺伝的に単純な状態で維持されている場合、最高の力価および最強の遺伝子発現特性を与えることが、文献から明らかであり(WO 96/37623;Bowtellら,1988 J.Virol.62,2464;Correllら,1994 Blood 84,1812;EmermanおよびTemin 1984 Cell 39,459;Ghattasら,1991 Mol.Cell.Biol.11,5848;Hantzopoulosら,1989 PNAS 86,3519;Hatzoglouら,1991 J.Biol.Chem 266,8416;Hatzoglouら,1988 J.Biol.Chem 263,17798;Liら,1992 Hum.Gen.Ther.3,381;McLachlinら,1993 Virol.195,1;Overellら,1988 Mol.Cell Biol.8,1803;Scharfmanら,1991 PNAS 88,4626;Vileら,1994 Gene Ther 1,307;Xuら,1989 Virol.171,331;Yeeら,1987 PNAS 84,5197)、したがって、ポリシストロンメッセージにおける第2(および後続)のコード配列の翻訳を開始するために配列内リボソーム進入部位(IRES)を使用することが好ましい(Adamら 1991 J.Virol.65,4985)。
レトロウイルスベクター内へのIRES要素の挿入はレトロウイルス複製サイクルに適合し、単一プロモーターからの複数のコード領域の発現を可能にする(Adamら(前記);Kooら(1992)Virology 186:669−675;Chenら 1993 J.Virol 67:2142−2148)。IRES要素は、それがウイルスタンパク質のキャップ(cap)非依存的翻訳を促進する、ピコルナウイルスの非翻訳5’末端において、最初に見出された(Jangら(1990)Enzyme 44:292−309)。IRES要素は、RNAにおけるオープンリーディングフレーム間に位置する場合、IRES要素におけるリボソームの進入およびそれに続く下流の翻訳開始を促進することにより、下流オープンリーディングフレームの効率的発現を可能にする。
IRESの概説はMountfordおよびSmith(TIG May 1995 vol 11,No 5:179−184)に示されている。多数の異なるIRES配列が公知であり、脳心筋炎ウイルス(EMCV)(Ghattas,I.R.ら,Mol.Cell.Biol.,11:5848−5859(1991));BiPタンパク質[MacejakおよびSarnow,Nature 353:91(1991)];ショウジョウバエ(Drosophila)のアンテナペディア遺伝子(エキソンdおよびe)[Ohら,Genes & Development,6:1643−1653(1992)]からのもの、ならびにポリオウイルス(PV)におけるもの[PelletierおよびSonenberg,Nature 334:320−325(1988);また、MountfordおよびSmith,TIG 11,179−184(1985)も参照されたい]を包含する。
PV、EMCVおよびブタ水疱病ウイルス由来のIRES要素はレトロウイルスベクターにおいて既に使用されている(Coffinら,前記)。
「IRES」なる語は、IRESとして働く又はIRESの機能を改善する任意の配列または配列の組合せを含む。
IRESはウイルス由来(例えば、EMCV IRES、PV IRESまたはFMDV 2A様配列)または細胞由来(例えば、FGF2 IRES、NRF IRES、Notch 2 IRESまたはEIF4 IRES)でありうる。
IRESが各ポリヌクレオチドの翻訳を開始しうるためには、それはベクターゲノムにおいて該ポリヌクレオチドの間または前に位置するべきである。
プロモーター
NOIの発現は、プロモーター/エンハンサーおよび他の発現調節シグナルを含む制御配列を使用して制御されうる。原核プロモーターおよび真核細胞において機能的なプロモーターが使用されうる。組織特異的または刺激特異的プロモーターが使用されうる。2以上の異なるプロモーターからの配列要素を含むキメラプロモーターも使用されうる。
適当なプロモーター配列は強力プロモーターであり、それらには、ウイルス、例えばポリオーマウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、レトロウイルスおよびシミアンウイルス40(SV40)のゲノムに由来するもの、あるいは、異種哺乳類プロモーター、例えばアクチンプロモーター、EF1a、CAG、TK、SV40、ユビキチン、PGKまたはリボソームタンパク質プロモーターが含まれる。あるいは、転写を駆動するために、例えば以下のような組織特異的プロモーターが使用されうる:ロドプシン(Rho)、ロドプシンキナーゼ(RhoK)、錐体−桿体ホメオボックス含有遺伝子(CRX)、神経網膜特異的ロイシンジッパータンパク質(NRL)、卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)、チロシンヒドロキシラーゼ、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター、アストロサイト特異的グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーター、ヒトα1−アンチトリプシン(hAAT)プロモーター、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)、肝臓脂肪酸結合タンパク質プロモーター、Flt−1プロモーター、INF−βプロモーター、Mbプロモーター、SP−Bプロモーター、SYN1プロモーター、WASPプロモーター、SV40/hAlbプロモーター、SV40/CD43、SV40/CD45、NSE/RU5’プロモーター、ICAM−2プロモーター、GPIIbプロモーター、GFAPプロモーター、フィブロネクチンプロモーター、エンドグリンプロモーター、エラスターゼ−1プロモーター、デスミンプロモーター、CD68プロモーター、CD14プロモーターおよびB29プロモーター。
遺伝子の転写は、エンハンサー配列をベクター内に挿入することにより、更に増強されうる。エンハンサーは比較的、配向および位置に非依存的であるが、真核細胞ウイルス由来のエンハンサー、例えば、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(bp 100〜270)、およびCMV初期プロモーターエンハンサーを使用することが可能である。エンハンサーはプロモーターに対して5’または3’側の位置においてベクター内にスプライシングされうるが、好ましくは、プロモーターから5’側の部位に位置する。
プロモーターは、適当な標的細胞における発現を確保または増強するための特徴を更に含みうる。例えば、該特徴は保存領域、例えばプリブナウボックス(Pribnow Box)またはTATAボックスでありうる。プロモーターは、ヌクレオチド配列の発現のレベルに影響を及ぼす(例えば、該レベルを維持、増強または低減する)他の配列を含有しうる。適当な他の配列には、Sh1−イントロンまたはADHイントロンが含まれる。他の配列には、誘導可能要素、例えば、温度、化学物質、光またはストレスにより誘導可能な要素が含まれる。また、転写または翻訳を増強するための適当な要素が存在しうる。
トランスジーンを駆動する組織特異的プロモーターを含む構成的および/または強力プロモーターが望ましい場合、そして特に、産生細胞におけるトランスジーンタンパク質の発現がベクター力価の減少を招く、および/またはトランスジーン由来タンパク質のウイルスベクター送達ゆえにインビボで免疫応答を惹起する場合に、RNA結合タンパク質−結合部位(例えば、TRAP−tbs)相互作用は、レトロウイルスベクターの産生のためのトランスジーンタンパク質抑制系の基礎を形成するのに有用でありうる。図4は、これがその好ましい形態においてどのように適用されうるかの一例を示す。
パッケージング配列
本発明の文脈において用いる「パッケージングシグナル」なる語は互換的に「パッケージング配列」または「psi」とも称され、ウイルス粒子形成中にレトロウイルスRNA鎖のカプシド形成に要求される非コード化シス作用性配列に関して用いられる。HIV−1においては、この配列は、主要スプライスドナー部位(SD)の上流から少なくともgag開始コドンまで伸長する遺伝子座に位置づけられている。EIAVにおいては、パッケージングシグナルはGagの5’コード領域内へのR領域を含む。
本明細書中で用いる「拡張パッケージングシグナル」または「拡張パッケージング配列」なる語は、gag遺伝子内へと更に拡張された、psi配列の周囲の配列の使用に関するものである。これらの追加的パッケージング配列の含有はウイルス粒子内へのベクターRNAの挿入の効率を増加させうる。
ネコ免疫不全ウイルス(FIV)RNAカプシド形成決定因子は離散的および不連続的であり、ゲノムmRNAの5’末端の1つの領域(R−U5)、およびgagの近位311nt内に位置づけられるもう1つの領域を含む(Kayeら,J Virol.Oct;69(10):6588−92(1995))。
ウイルスベクター産生系および細胞
本発明のもう1つの態様は、ウイルスベクターの産生に必要な成分をコードする核酸配列のセットを含むウイルスベクター産生系に関するものであり、ここで、該ベクターゲノム配列は本発明の核酸配列を含む。
「ウイルスベクター産生系」または「ベクター産生系」または「産生系」は、ウイルスベクター産生のための必要な成分を含む系として理解されるべきである。
したがって、該ベクター産生系は、ウイルスベクター粒子の産生に必要な成分をコードする核酸配列のセットを含む。1つのそのような核酸配列は、RNA結合タンパク質をコードする遺伝子を含みうる。好ましい実施形態においては、RNA結合タンパク質は細菌TRAPである。
本発明の1つの実施形態においては、ウイルスベクターはレトロウイルスベクターであり、ウイルスベクター産生系は更に、GagおよびGag/Polタンパク質ならびにEnvタンパク質またはそれらの機能的代替物をコードする核酸配列と、本発明の結合部位を含むベクターゲノム配列とを含む。該産生系は、所望により、Revタンパク質をコードする核酸配列を含みうる。
本発明のウイルスベクター産生系のもう1つの実施形態においては、ウイルスベクターはレトロウイルス、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスに由来する。
もう1つの実施形態においては、ウイルスベクターはレンチウイルスに由来する。もう1つの実施形態においては、ウイルスベクターはHIV−1、HIV−2、SIV、FIV、BIV、EIAV、CAEVまたはビスナレンチウイルスに由来する。
本発明のもう1つの態様は本発明のウイルスベクター産生系における使用のためのDNA構築物に関する。そのようなDNA構築物(例えば、プラスミド)は、本発明の核酸配列を含むベクターゲノム構築物を含みうる。
本発明のもう1つの態様は、本発明のRNA結合タンパク質、例えばTRAPをコードする核酸配列を含む、本発明のウイルスベクター産生系における使用のためのDNA構築物に関する。
本発明のもう1つの態様は、本発明のDNA構築物と、GagおよびGag/Polタンパク質ならびにEnvタンパク質またはそれらの機能的代替物をコードするDNA構築物とを含む、本発明のウイルスベクター産生系における使用のためのDNA構築物のセットに関する。
本発明の1つの実施形態においては、DNA構築物のセットは更に、RNA結合タンパク質、例えばTRAPをコードするDNA構築物を含む。
本発明の1つの実施形態においては、DNA構築物のセットは更に、Revタンパク質またはその機能的代替物をコードするDNA構築物を含む。
本発明の1つの態様は、本発明の核酸配列、ウイルスベクター産生系またはDNA構築物の一部もしくは全部を含むウイルスベクター産生細胞に関する。
「ウイルスベクター産生細胞」は、ウイルスベクターまたはウイルスベクター粒子を産生しうる細胞として理解されるべきである。ウイルスベクター産生細胞は「プロデューサー細胞」または「パッケージング細胞」でありうる。ウイルスベクター系の、1以上のDNA構築物は、ウイルスベクター産生細胞内に安定に組込まれ、またはエピソーム的に維持されうる。あるいは、ウイルスベクター系のDNA成分の全てはウイルスベクター産生細胞内に一過性にトランスフェクトされうる。更にもう1つの代替形態においては、該成分の幾つかを安定に発現する産生細胞が、残りの成分で一過性にトランスフェクトされうる。
RNA結合タンパク質(例えば、TRAP)をコードするDNA発現カセットはウイルスベクター産生細胞内に安定に組込まれ、またはエピソーム的に維持されうる。あるいは、RNA結合タンパク質(例えば、TRAP)をコードするDNA発現カセットはウイルスベクター産生細胞内に一過性にトランスフェクトされうる。
したがって、本発明の1つの実施形態においては、該産生細胞はRNA結合タンパク質(例えば、TRAP)構築物を安定に発現する。本発明のもう1つの実施形態においては、該産生細胞はRNA結合タンパク質(例えば、TRAP)構築物を一過性に発現するであろう。
要求される抑制のレベルはNOIによって様々でありうる。したがって、該産生細胞において要求されるRNA結合タンパク質(例えば、TRAP)のレベルもNOIに左右されうる。したがって、幾つかの場合には、安定な及び一過性のRNA結合タンパク質(例えば、TRAP)発現の組合せが望まれうる。安定発現は産生細胞における継続したレベルのRNA結合タンパク質発現をもたらし、一方、一過性発現は、より短い期間の、増加したレベルのRNA結合タンパク質発現をもたらしうる。例えば、より問題のある/毒性のトランスジーンの抑制は、ベクター産生中の既存(例えば、安定発現によりもたらされる)および高レベルの両方のRNA結合タンパク質から利益を得ることが可能である。
したがって、本発明のもう1つの実施形態においては、該産生細胞はRNA結合タンパク質(例えば、TRAP)構築物を安定に発現し、そしてまた、RNA結合タンパク質(例えば、TRAP)構築物を一過性に発現する。一過性発現は、安定発現によってもたらされるものより高いレベルの短期間のRNA結合タンパク質発現をもたらしうる。
「安定発現」は、安定発現をもたらす構築物からのRNA結合タンパク質の発現が長期間にわたって実質的に変動しないこととして理解されるべきである。
「一過性発現」は、一過性発現をもたらす構築物からのRNA結合タンパク質の発現が長期間にわたって安定でないこととして理解されるべきである。好ましくは、一過性発現をもたらすRNA結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは産生細胞ゲノム内に組込まれず、産生細胞内にエピソーム的に維持されない。
本明細書中で用いる「パッケージング細胞」は、感染性ベクター粒子の産生に必要な要素を含有するがベクターゲノムを欠く細胞を意味する。典型的には、そのようなパッケージング細胞は、ウイルス構造タンパク質(例えば、gag、gag/polおよびenv)を発現しうる1以上の発現カセットを含有する。
プロデューサー細胞/パッケージング細胞は任意の適当な細胞型のものでありうる。プロデューサー細胞は一般に哺乳類細胞であるが、例えば昆虫細胞でありうる。
本明細書中で用いる「プロデューサー/産生細胞」または「ベクター産生細胞」は、レトロウイルスベクター粒子の産生およびRNA結合タンパク質(例えば、TRAP)の発現に必要な要素の全てを含有する細胞を意味する。
産生細胞は安定プロデューサー細胞系であることが可能であり、または一過性に誘導されることが可能である。
本発明の1つの実施形態においては、エンベロープおよびヌクレオカプシド、RNA結合タンパク質(例えば、TRAP)、および存在する場合のrevヌクレオチド配列は全て、プロデューサーおよび/またはパッケージング細胞内に安定に組込まれる。しかし、これらの配列のいずれかの1以上はエピソーム形態で存在することも可能であり、遺伝子発現はエピソームから生じることが可能であり、あるいは産生細胞内に一過性にトランスフェクトされることが可能であろう。
ベクター産生細胞は、インビトロで培養された細胞、例えば組織培養細胞系でありうる。適当な細胞系には、哺乳類細胞、例えばマウス線維芽細胞由来の細胞系またはヒト細胞系が含まれるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、ベクター産生細胞はヒト細胞系に由来する。
1つの実施形態においては、本発明のベクターは、NOIに機能的に連結された本発明の結合部位、gag−pol成分、エンベロープおよびRNA結合タンパク質(例えば、TRAP)を含むベクターゲノムを発現する4つの転写単位を、その産生系として使用する。エンベロープ発現カセットはVSV−Gのような幾つかの異種エンベロープの1つを含みうる。所望により、rev成分も含まれうる。
ウイルスベクターの製造方法
本発明のもう1つの態様は、本発明の核酸配列、ウイルスベクター産生系またはDNA構築物の一部もしくは全部をウイルスベクター産生細胞内に導入し、ウイルスベクターの産生に適した条件下、該産生細胞を培養することを含む、ウイルスベクターの製造方法に関する。
適当な「産生細胞」は、適当な条件下で培養された場合にウイルスベクターまたはウイルスベクター粒子を産生しうる細胞である。それらは一般に哺乳類またはヒト細胞、例えばHEK293T、HEK293、CAP、CAP−TまたはCHO細胞であるが、例えば昆虫細胞、例えばSF9細胞でありうる。
産生細胞はまた、鳥類細胞、例えばEB66(登録商標)(Sigma)細胞でありうる。鳥類細胞は、ウイルスに基づくヒト用および獣医学用ワクチン、例えばインフルエンザおよびニューカッスル病ウイルスワクチンに特に有用でありうる。
産生細胞内に核酸を導入する方法は当技術分野でよく知られており、既に記載されている。
1つの実施形態においては、産生細胞はRNA結合タンパク質(例えば、トリプトファンRNA結合減衰タンパク質;TRAP)を含む。
本発明のもう1つの態様は、本発明のウイルスベクター産生系により、本発明のウイルスベクター産生細胞を使用して、または本発明の製造方法により製造されるウイルスベクターに関する。
1つの実施形態においては、ウイルスベクター粒子は核酸結合部位を含む。ウイルスベクター粒子はレトロウイルス、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスに由来しうる。レトロウイルスベクター粒子はレンチウイルスに由来しうる。レンチウイルスベクター粒子はHIV−1、HIV−2、SIV、FIV、BIV、EIAV、CAEVまたはビスナレンチウイルスに由来しうる。
レンチウイルスベクターの製造方法および特にレンチウイルスベクターのプロセシングはWO 2009/153563に記載されている。
本発明のもう1つの態様は、本発明のウイルスベクターが導入された細胞に関する。
「ウイルスベクター粒子が導入された細胞」は、ウイルスベクター粒子によって運ばれる核酸が導入された細胞、特に標的細胞として理解されるべきである。
シュードタイピング
1つの好ましい態様においては、本発明のウイルスベクターはシュードタイピング(偽型化)されている。これに関して、シュードタイピングは1以上の利点をもたらしうる。例えば、HIVに基づくベクターのenv遺伝子産物はこれらのベクターを、CD4と称されるタンパク質を発現する細胞のみに感染することに制限するであろう。しかし、これらのベクター内のenv遺伝子が他のエンベロープウイルスからのenv配列で置換されている場合、それらはより広い感染スペクトルを有しうる(VermaおよびSomia(1997)Nature 389(6648):239−242)。例えば、研究者は、HIVに基づくベクターをVSV由来の糖タンパク質でシュードタイピングしている(VermaおよびSomia(1997)Nature 389(6648):239−242)。
もう1つの代替形態においては、Envタンパク質は修飾Envタンパク質、例えば突然変異体または操作されたEnvタンパク質でありうる。修飾は、標的化能を導入するために、または毒性を低減するために、または別の目的のために行われ、または選択されうる(Valsesia−Wittmanら 1996 J Virol 70:2056−64;Nilsonら(1996)Gene Ther 3(4):280−286;およびFieldingら(1998)Blood 91(5):1802−1809およびそれらにおいて引用されている参考文献)。
ベクターは、選ばれた任意の分子でシュードタイピングされうる。
VSV−G
ラブドウイルスである水疱性口内炎ウイルス(VSV)のエンベロープ糖タンパク質(G)は、あるエンベロープウイルスおよびウイルスベクタービリオンをシュードタイピングしうることが示されたエンベロープタンパク質である。
レトロウイルスエンベロープタンパク質の非存在下、MoMLVに基づくレトロウイルスベクターをそれがシュードタイピングしうることはEmiら((1991)Journal of Virology 65:1202−1207)により最初に示された。WO 1994/294440は、レトロウイルスベクターがVSV−Gで成功裏にシュードタイピング(シュードタイプ化)されうることを教示している。これらのシュードタイプ化VSV−Gベクターは、広範な哺乳類細胞に導入するために使用されうる。その後、Abeら(1998)J Virol 72(8)6356−6361は、非感染性レトロウイルス粒子がVSV−Gの付加により感染性にされうることを教示している。
Burnsら((1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:8033−7)はレトロウイルスMLVをVSV−Gで成功裏にシュードタイピングし、これは、天然形態のMLVと比較して変化した宿主域を有するベクターを与えた。VSV−Gシュードタイプ化ベクターは、哺乳類細胞だけでなく、魚類、爬虫類および昆虫に由来する細胞系にも感染することが示されている(Burnsら(1993)前掲)。それらは、種々の細胞系に関して、通常のアンホトロピックエンベロープより効率的であることも示されている(Yeeら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:9564−9568,Emiら(1991)Journal of Virology 65:1202−1207)。VSV−Gタンパク質は、あるレトロウイルスをシュードタイピングするために使用されうる。なぜなら、その細胞質尾部はレトロウイルスのコアと相互作用しうるからである。
VSV−Gタンパク質のような非レトロウイルスシュードタイピングエンベロープの提供は、感染性の低下を伴うことなくベクター粒子が高い力価まで濃縮されうるという利点をもたらす(Akkinaら(1996)J.Virol.70:2581−5)。レトロウイルスエンベロープタンパク質は超遠心分離中のセン断力に耐えることができないようである。なぜなら、おそらく、それらは、非共有結合により結合した2つのサブユニットからなるからであろう。そららのサブユニット間の相互作用は遠心分離により破壊されうる。一方、VSV糖タンパク質は単一の単位から構成されている。したがって、VSV−Gタンパク質シュードタイピングは潜在的な利点をもたらしうる。
WO 2000/52188は、膜関連ウイルスエンベロープタンパク質として水疱性口内炎ウイルスGタンパク質(VSV−G)を有する、安定なプロデューサー細胞系からのシュードタイプ化レトロウイルスベクターの作製を記載しており、VSV−Gタンパク質の遺伝子配列を提供している。
ロスリバーウイルス
非霊長類レンチウイルスベクター(FIV)をシュードタイピングするために、ロスリバーウイルスエンベロープが使用されており、全身投与後、主に肝臓に導入された(Kangら(2002)J Virol 76(18):9378−9388)。効率は、VSV−Gシュードタイプ化ベクターで得られたものより20倍大きいと報告された。そして、肝毒性を示唆する肝酵素の血清レベルによる測定では、それはそれほど大きな細胞毒性を引き起こさなかった。
バキュロウイルスGP64
バキュロウイルスGP64タンパク質は、臨床的および商業的用途に必要な高力価ウイルスの大規模製造において使用されるウイルスベクターのためのVSV−Gの代替物となることが示されている(Kumar M,Bradow BP,Zimmerberg J(2003)Hum Gene Ther.14(1):67−77)。VSV−Gシュードタイプ化ベクターと比較して、GP64シュードタイプ化ベクターは、類似した広い指向性および類似した天然力価を有する。GP64の発現は細胞を殺さないため、GP64を構成的に発現する293Tに基づく細胞系が作製されうる。
代替エンベロープ
EIAVをシュードタイピングするために使用された場合に合理的な力価を与える他のエンベロープには、モコラ(Mokola)、狂犬病、エボラおよびLCMV(リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス)が含まれる。4070Aでシュードタイピングされたレンチウイルスの、マウスへの静脈内注入は、肝臓において最大の遺伝子発現をもたらした。
ポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドはDNAまたはRNAを含みうる。それらは一本鎖または二本鎖でありうる。遺伝暗号の縮重の結果として、多数の異なるポリヌクレオチドが同一ポリペプチドをコードしうる、と当業者により理解されるであろう。また、本発明のポリペプチドが発現されることになるいずれかの特定の宿主生物のコドン使用頻度を反映させるために、通常の技術を用いて、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド配列に影響を及ぼさないヌクレオチド置換を当業者が行いうる、と理解されるべきである。
該ポリヌクレオチドは、当技術分野で利用可能ないずれかの方法により修飾されうる。そのような修飾は、本発明のポリヌクレオチドのインビボ活性または寿命を増加させるために行われうる。
DNAポリヌクレオチドのようなポリヌクレオチドは組換え法、合成法または当業者に利用可能ないずれかの手段により製造されうる。それらはまた、標準的な技術によってクローニングされうる。
より長いポリヌクレオチドは、一般に、組換え手段を用いて、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)クローニング技術を用いて製造される。これは、クローニングしたい標的配列に隣接するプライマー(例えば、約15〜30ヌクレオチドのもの)のペアを作製し、動物またはヒト細胞から得られたmRNAまたはcDNAと該プライマーを接触させ、所望の領域の増幅を引き起こす条件下でポリメラーゼ連鎖反応を行い、増幅された断片を(例えば、反応混合物をアガロースゲルで精製することにより)単離し、増幅されたDNAを回収することを含む。該プライマーは、増幅されたDNAが適当なベクター内にクローニングされうるように適当な制限酵素認識部位を含有するように設計されうる。
タンパク質
本明細書中で用いる「タンパク質」なる語は一本鎖ポリペプチド分子および複数のポリペプチドの複合体(この場合、個々の構成ポリペプチドは共有的手段または非共有的手段により連結されている)を含む。本明細書中で用いる「ポリペプチド」および「ペプチド」なる語は、単量体がアミノ酸でありペプチド結合またはジスルフィド結合により互いに連結された重合体を意味する。
変異体、誘導体、類似体、ホモログおよび断片
本明細書に記載されている特定のタンパク質およびヌクレオチドに加えて、本発明はそれらの変異体、誘導体、類似体、ホモログおよび断片の使用をも含む。
本発明の場合には、いずれかの与えられた配列の変異体は、問題のポリペプチドまたはポリヌクレオチドがその内因性機能の少なくとも1つを保有するように残基(アミノ酸残基も核酸残基も含む)の特定の配列が修飾されている配列である。変異体配列は、天然に存在するタンパク質において存在する少なくとも1つの残基の付加、欠失、置換、修飾、置換および/または変異により得られうる。
本発明のタンパク質またはポリペプチドに関して本明細書中で用いる「誘導体」なる語は、生じるタンパク質またはポリペプチドがその内因性機能の少なくとも1つを保有する限り、配列からの又は配列に対する、1つ(以上)のアミノ酸残基の、いずれかの置換、変異、修飾、置き換え、欠失および/または付加を含む。
ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに関して本明細書に記載されている「類似体」なる語は、いずれかの模倣体、すなわち、それが模倣しているポリペプチドまたはポリヌクレオチドの内因性機能の少なくとも1つを有する化合物を含む。
典型的には、アミノ酸置換は、要求される活性または能力を修飾配列が保有する限り、例えば、1、2または3個から10または20個までの置換として行われうる。アミノ酸置換は、天然に存在しない類似体の使用を含みうる。
本発明において使用されるタンパク質は、サイレントな変化をもたらし機能的に同等なタンパク質を与えるアミノ酸残基の欠失、挿入または置換をも有しうる。内因性機能が保有される限り、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性における類似性に基づいて、意図的なアミノ酸置換が行われうる。例えば、負荷電アミノ酸はアスパラギン酸およびグルタミン酸を含み、正荷電アミノ酸はリジンおよびアルギニンを含み、類似した親水性値を有する無荷電極性頭部基を有するアミノ酸はアスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニンおよびチロシンを含む。
保存的置換が、例えば以下の表に従い行われうる。第2列における同じ分類におけるアミノ酸、および好ましくは、第3列における同じ行におけるアミノ酸が互いに置換されうる。
「ホモログ」なる語は、野生型アミノ酸配列および野生型ヌクレオチド配列に対して或る相同性(ホモロジー)を有する実体を意味する。「相同性」なる語は「同一性」と同等でありうる。
この文脈においては、相同配列は、対象配列に対して少なくとも50%、55%、65%、75%、85%または90%同一でありうる、好ましくは少なくとも95%または97%または99%同一でありうるアミノ酸配列を含むとみなされる。典型的には、ホモログは対象アミノ酸配列と同じ活性部位などを含む。類似性(すなわち、類似した化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)に関しても相同性が考慮されうるが、本発明の文脈においては、配列同一性に関して相同性を表すことが好ましい。
この文脈においては、相同配列は、対象配列に対して少なくとも50%、55%、65%、75%、85%または90%同一でありうる、好ましくは少なくとも95%または97%または99%同一でありうるヌクレオチド配列を含むとみなされる。類似性に関しても相同性が考慮されうるが、本発明の文脈においては、配列同一性に関して相同性を表すことが好ましい。
相同性比較は、目により、またはより通常には、容易に利用可能な配列比較プログラムの補助により行われうる。これらの商業的に入手可能なコンピュータプログラムは2以上の配列の間の相同性または同一性の割合(%)を計算しうる。
相同性の割合(%)は連続的アミノ酸にわたって計算されうる。すなわち、一方の配列を他方の配列とアライメント(整列)し、一方の配列における各アミノ酸を他方の配列における対応アミノ酸と、1残基ごとに同時に、直接的に比較する。これは「非ギャップ化(ungapped)」アライメントと称される。典型的には、そのような非ギャップ化アライメントは比較的短い残基数のみにわたって行われる。
これは非常に簡単で一貫した方法であるが、それは例えば以下のような場合を考慮していない。すなわち、ヌクレオチド配列において1つの挿入または欠失が存在する場合、それが存在しなければ同一ペアである配列において、該挿入または欠失は、後続コドンの、アライメントからの脱落を引き起こして、グローバルアライメントが行われた場合に相同性(%)における大きな減少を潜在的に引き起こしうる。したがって、ほとんどの配列比較法は、全体的な相同性スコアを過度に不利にすることなく、考えられうる挿入および欠失を考慮した最適アライメントを与えるように設計される。これは、局所的相同性(ローカルホモロジー)を最大にすることを試みるために配列アライメント内に「ギャップ」を挿入することにより達成される。
しかし、より複雑なこれらの方法は、アライメントにおいて生じる各ギャップに「ギャップ・ペナルティ」を割り当てるものであり、この場合、同一アミノ酸の数が同じとなる場合、可能な限り少ないギャップを有する配列アライメント(これは、それらの2つの比較配列間の、より高い関連性を反映する)が、多数のギャップを有するものより高いスコアを得る。「アフィン・ギャップ・コスト(affine gap cost)」は典型的に用いられ、これは、ギャップの存在に関しては比較的高いコストを課し、ギャップにおける各後続残基に関しては、より小さいペナルティを課すものである。これは、最もよく用いられるギャップ・スコア化(スコアリング)法である。高いギャップ・ペナルティは、もちろん、より少数のギャップを有する最適化アライメントを与えるであろう。ほとんどのアライメントプログラムは、ギャップペナルティが修飾されることを可能にする。しかし、そのようなソフトウェアを配列比較に使用する場合、デフォルト値を使用することが好ましい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージを使用する場合、アミノ酸配列に関するデフォルト・ギャップ・ペナルティはギャップに関しては−12であり、各伸長に関しては−4である。
したがって、最大相同性(%)の計算は、まず、ギャップ・ペナルティを考慮した最適アライメントの生成を要する。そのようなアライメントを行うための適当なコンピュータプログラムとしては、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(University of Wisconsin,U.S.A.;Devereuxら(1984)Nucleic Acids Research 12:387)が挙げられる。配列比較を行いうる他のソフトウェアの例には、BLASTパッケージ(Ausubelら(1999) 前掲−Ch.18を参照されたい)、FASTA(Atschulら(1990)J.Mol.Biol.403−410)およびGENEWORKS比較ツールスイートが含まれるが、これらに限定されるものではない。BLASTおよびFASTAは共に、オフラインおよびオンライン検索のために利用可能である(Ausubelら(1999)前掲,p.7−58〜7−60を参照されたい)。しかし、幾つかのアプリケーションに関しては、GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。BLAST 2 Sequencesと称されるもう1つのツールも、タンパク質およびヌクレオチド配列の比較のために利用可能である(FEMS Microbiol Lett(1999)174(2):247−50;FEMS Microbiol Lett(1999)177(1):187−8を参照されたい)。
最終的な相同性(%)は同一性に関して測定されうるが、アライメントプロセス自体は、典型的には、オール・オア・ナッシング(全か無か)のペア比較に基づくものではない。実際には、化学的類似性または進化距離に基づいて各ペアワイズ比較にスコアを割り当てるスケール化(scaled)類似性スコアマトリックスが一般に使用される。一般に使用されるそのようなマトリックス(行列)の一例は、BLASTプログラムスイートのデフォルトマトリックスであるBLOSUM62マトリックスである。GCG Wisconsinプログラムは、一般に、公的デフォルト値またはカスタム記号比較表(提供されている場合)を使用する(更なる詳細は使用マニュアルを参照されたい)。幾つかのアプリケーションに関しては、GCGパッケージには公的デフォルト値を、あるいは他のソフトウェアの場合にはデフォルトマトリックス、例えばBLOSUM62を使用することが好ましい。
該ソフトウェアが最適アライメントを一旦生成したら、相同性(%)、好ましくは配列同一性(%)を計算することが可能である。該ソフトウェアは、典型的には、配列比較の一部としてこれを行い、数的結果を与える。
「断片」も変異体であり、この語は、典型的には、機能的に又はアッセイにおいて関心が持たれるポリペプチドまたはポリヌクレオチドの選択された領域を意味する。したがって、「断片」は、完全長ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの一部であるアミノ酸または核酸配列を意味する。
そのような変異体は、標準的な組換えDNA技術、例えば部位特異的突然変異誘発を用いて製造されうる。挿入を行いたい場合には、該挿入の両側の天然に存在する配列に対応する5’および3’隣接(フランキング)領域と共に該挿入をコードする合成DNAが作製されうる。該隣接領域は、天然に存在する配列内の部位に対応する簡便な制限部位を含有しており、その結果、該配列は適当な酵素で切断され、該合成DNAは該切断物内に連結されうる。ついで該DNAは本発明に従い発現されてコード化タンパク質を与える。これらの方法は、DNA配列の操作のための当技術分野で公知の多数の標準的な技術の単なる例示に過ぎず、他の公知技術も使用されうる。
本発明のRNA結合タンパク質の全ての変異体、断片またはホモログは、NOIの翻訳がウイルスベクター産生細胞において抑制または予防されるように本発明の同族(コグネイト)結合部位に結合する能力を保有する。
本発明の結合部位の全ての変異体断片またはホモログは、NOIの翻訳がウイルスベクター産生細胞において抑制または予防されるように同族RNA結合タンパク質に結合を能力を保有する。
コドン最適化
本発明において使用されるポリヌクレオチド(NOIおよび/またはベクター産生系の成分を含む)はコドンが最適化されうる。コドン最適化はWO 1999/41397およびWO 2001/79518に既に記載されている。細胞が異なれば、個々のコドンの該細胞の使用頻度も異なる。このコドン偏向は細胞型における個々のtRNAの相対存在量における偏向に対応する。配列内のコドンを、対応tRNAの相対存在量に合致するようにそれが調整されるように変化させることにより、発現を増強することが可能である。同様に、対応tRNAが個々の細胞型において稀有であることが知られているコドンを意図的に選択することにより発現を低減することが可能である。このように、翻訳制御度の付加が利用可能である。
HIVおよび他のレンチウイルスを含む多数のウイルスは多数の稀有コドンを利用しており、一般的に利用される哺乳類コドンに一致するようにこれらを変化させることにより、関心のある遺伝子、例えばNOIまたはパッケージング成分の、哺乳類プロデューサー細胞内の発現の増強が達成されうる。コドン使用頻度表は哺乳類細胞および種々の他の生物に関して当技術分野で公知である。
ウイルスベクター成分のコドン最適化は多数の他の利点を有する。それらの配列の改変により、プロデューサー細胞/パッケージング細胞におけるウイルス粒子の構築に要求されるウイルス粒子のパッケージング成分をコードするヌクレオチド配列において、それらからRNA不安定性配列(INS)が除去される。同時に、パッケージング成分のアミノ酸配列コード化配列は保有されており、その結果、該配列によってコードされるウイルス成分は同じままであり、またはパッケージング成分の機能が損なわれない程度に少なくとも十分に類似したままである。レンチウイルスベクターにおいては、コドン最適化は輸出のためのRev/RREの必要性を克服して、最適化配列をRev非依存的にする。コドン最適化はベクター系内の種々の構築物間(例えば、gag−polおよびenvオープンリーディングフレームにおける重複領域間)の相同組換えをも低減する。したがって、コドン最適化の全体的な効果はウイルス力価の顕著な増加および安全性の改善である。
1つの実施形態においては、INSに関連したコドンのみがコドン最適化される。しかし、遥かに好ましく実用的な実施形態においては、幾つかの例外、例えば、gag−polのフレームシフト部位を含む配列を除き(後記を参照されたい)、該配列はそれらの全体においてコドン最適化される。
gga−pol遺伝子は、gag−polタンパク質をコードする2つの重複したリーディングフレームを含む。両方のタンパク質の発現は翻訳中のフレームシフトに依存している。このフレームシフトは翻訳中のリボソーム「スリッページ」の結果として生じる。このスリッページは少なくとも部分的にはリボソーム停止(stalling)RNA二次構造により引き起こされると考えられている。そのような二次構造はgag−pol遺伝子におけるフレームシフト部位の下流に存在する。HIVの場合、重複領域はgagの開始位置の下流のヌクレオチド1222(ここで、ヌクレオチド1はgag ATGのAである)からgagの終結位置(nt1503)まで伸長している。したがって、フレームシフト部位およびそれらの2つのリーディングフレームの重複領域にわたる281bpの断片は、好ましくは、コドン最適化されない。この断片の保有は、Gag−Polタンパク質の、より効率的な発現を可能にするであろう。
EIAVの場合には、重複の開始位置はnt1262(ここで、ヌクレオチド1はgag ATGのAである)に位置するとみなされている。該重複の終結位置は1461bpに位置する。該フレームシフト部位およびgag−pol重複が維持されることを保証するために、野生型配列はnt1156から1465まで保持されている。
最適コドン使用頻度からの誘導体化が、例えば、簡便な制限部位を収容するために実施可能であり、保存的アミノ酸変化がGag−Polタンパク質内に導入されうる。
1つの実施形態においては、コドン最適化は、軽度に発現される哺乳類遺伝子に基づく。第3の塩基、そして時には第2および第3の塩基が改変されうる。
遺伝暗号の縮重性ゆえに、多数のgag−pol配列が当業者により得られうると理解されるであろう。また、コドン最適化gag−pol配列を作製するための出発点として使用されうる多数のレトロウイルス変異体が記載されている。レンチウイルスゲノムは非常に可変性でありうる。例えば、尚も機能的であるHIV−1の多数の擬似種が存在する。これはEIAVにも当てはまる。これらの変異体は、導入プロセスの特定の部分を増強するために使用されうる。HIV−1変異体の例は、http://hiv−web.lanl.govにおけるLos Alamos National Security,LLCにより運営されているHIV Databasesにおいて見出されうる。EIAVクローンの詳細は、http://www.ncbi.nlm.nih.govにおけるNational Center for Biotechnology Information(NCBI)データベースにおいて見出されうる。
コドン最適化gag−pol配列に関する戦略は任意のレトロウイルスに関して用いられうる。これは、EIAV、FIV、BIV、CAEV、VMR、SIV、HIV−1およびHIV−2を含む全てのレンチウイルスに適用されるであろう。また、この方法は、HTLV−1、HTLV−2、HFV、HSRVおよびヒト内因性レトロウイルス(HERV)、MLVおよび他のレトロウイルスからの遺伝子の発現を増強するために使用されうるであろう。
コドン最適化はgag−pol発現をRev非依存的にしうる。しかし、レンチウイルスベクターにおける抗revまたはRRE因子の使用を可能にするためには、ウイルスベクター産生系を完全にRev/RRE非依存的にすることが必要であろう。したがって、ゲノムが修飾されることも必要である。これは、ベクターゲノム成分を最適化することにより達成される。好都合なことに、これらの修飾はまた、プロデューサー細胞および導入細胞の両方において全ての追加的タンパク質が存在しない、より安全な系の産生をもたらす。
用途
本発明のもう1つの態様は、医薬品における使用のための、本発明のウイルスベクターまたは本発明のウイルスベクターが導入された細胞もしくは組織に関する。
本発明のもう1つの態様は、本発明のウイルスベクターまたは本発明のウイルスベクターが導入された細胞もしくは組織の、医薬品における使用に関する。
本発明のもう1つの態様は、関心のあるヌクレオチドをそれを要する標的部位に送達するための医薬の製造のための、本発明のウイルスベクター、本発明の産生細胞、または本発明のウイルスベクターが導入された細胞もしくは組織の使用に関する。
本発明のウイルスベクターまたは導入細胞のそのような使用は、既に記載されているとおり、治療目的または診断目的のためのものでありうる。
治療用ベクター
レトロウイルス治療用ベクター
1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、パーキンソン病を治療するために、ドーパミン合成経路の3つの酵素をコードする3つの遺伝子を導入するために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該レトロウイルスベクターにより運ばれる遺伝子はヒトチロシンヒドロキシラーゼ(TH*)遺伝子のトランケート化形態(これは、THのフィードバック調節に関与するN末端の160アミノ酸を欠いている)、ヒト芳香族L−アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)およびヒトGTP−シクロヒドロラーゼ1(CH1)遺伝子を含みうる。それらの3つの酵素は3つの別々のオープンリーディングフレームにおいてレトロウイルスベクターによりコードされうる。あるいは、該レトロウイルスベクターは第1オープンリーディングフレームにおけるTHおよびCH1酵素ならびに第2オープンリーディングフレームにおけるAADC酵素の融合体をコードしうる。該遺伝子の発現はCMVプロモーターにより駆動可能であり、発現カセットは1以上のIRES要素を含みうる。該レトロウイルスベクターは直接注射により脳の線条体内に投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、光受容体および支持網膜色素上皮(RPE)細胞に矯正用MYO7A遺伝子を導入し、それにより、アッシャー(Usher)1B症候群に関連した視力の悪化を軽減または逆転させるために設計された遺伝子治療製品として使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該レトロウイルスベクターにより運ばれる遺伝子はMYO7A cDNAであり、これはMYO7Aタンパク質(長さが100mbを超える大きな遺伝子)をコードしている。この大きなMYO7A遺伝子の発現はCMVプロモーター、CMV/MYO7Aキメラプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該レトロウイルスベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、矯正用ATP結合カセット遺伝子ABCA4(ABCRとしても公知である)を光受容体に導入し、それにより、シュタルガルト病を招く病態生理を軽減または逆転させるために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該レトロウイルスベクターにより運ばれる遺伝子はABCA4 cDNAであり、これはABCA4タンパク質をコードしている。ABCA4遺伝子の発現はCMVプロモーター、光受容体特異的プロモーター、例えばロドプシンキナーゼまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該レトロウイルスベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、湿潤型(wet−form)加齢性黄斑変性(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫もしくは網膜静脈閉塞の患者の眼における異常な血管増殖および/もしくは血管漏出の再発を予防するために、ならびに/または乾燥型(dry−form)加齢性黄斑変性(AMD)の患者の眼における異常な血管増殖を予防するために設計された遺伝子治療製品として使用されうる。このレトロウイルスベクターは、抗血管新生タンパク質、例えばアンジオスタチンおよび/またはエンドスタチンをコードする遺伝子を送達する。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。1つの実施形態においては、該レトロウイルスベクターは、網膜色素上皮細胞への送達のために配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してビシストロン(bicistronic)配置でヒトエンドスタチンおよびアンジオスタチン遺伝子を発現する。該抗血管新生遺伝子の発現はCMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(最近はベストロフィン(bestrophin)プロモーターとして公知である)または代替的プロモーターにより駆動可能である。該レトロウイルスベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、湿潤型(wet−form)加齢性黄斑変性(AMD)の患者の眼における浮腫における異常な血管増殖の再発を予防するために設計された遺伝子治療製品として使用されうる。このレトロウイルスベクターは、抗血管新生タンパク質、例えばアンジオスタチンおよび/またはエンドスタチンをコードする遺伝子を送達する。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。1つの実施形態においては、該レトロウイルスベクターは、網膜色素上皮細胞への送達のために配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してビシストロン配置でヒトエンドスタチンおよびアンジオスタチン遺伝子を発現する。該抗血管新生遺伝子の発現はCMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(最近はベストロフィン(bestrophin)プロモーターとして公知である)または代替的プロモーターにより駆動可能である。該レトロウイルスベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、移植前のドナー角膜への抗血管新生遺伝子の送達により、血管新生の結果としての角膜移植片拒絶を予防するために設計された遺伝子治療製品として使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−G、エボラまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。1つの実施形態においては、該レトロウイルスベクターは、角膜移植片へのエクスビボ送達のために配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してビシストロン配置で抗血管新生遺伝子、例えばヒトエンドスタチンおよびアンジオスタチン遺伝子を発現する。該レトロウイルスベクターは角膜移植組織にエクスビボで適用可能であり、導入ドナー組織は移植前に貯蔵されることも可能である。該抗血管新生遺伝子の発現は構成的プロモーター、例えばCMVプロモーターにより駆動可能であるが、代替的プロモーターを使用することも可能である。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、湿潤型(wet−form)加齢性黄斑変性(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫もしくは網膜静脈閉塞の患者の眼における異常な血管増殖および/もしくは血管漏出の再発を予防するために、ならびに/または乾燥型(dry−form)加齢性黄斑変性(AMD)の患者の眼における異常な血管増殖を予防するために設計された遺伝子治療として使用されうる。このレトロウイルスベクターは、fms様チロシンキナーゼの可溶性形態(可溶性Flt−1)をコードする遺伝子を送達する。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。可溶性Flt−1遺伝子の発現はCMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(最近はベストロフィン(bestrophin)プロモーターとして公知である)または代替的プロモーターにより駆動可能である。該レトロウイルスベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、湿潤型(wet−form)加齢性黄斑変性(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫もしくは網膜静脈閉塞の患者の眼における異常な血管増殖および/もしくは血管漏出の再発を予防するために、ならびに/または乾燥型(dry−form)加齢性黄斑変性(AMD)の患者の眼における異常な血管増殖を予防するために設計された遺伝子治療製品として使用されうる。このレトロウイルスベクターは、色素上皮由来因子タンパク質(PEDF)をコードする遺伝子を送達する。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。PEDF遺伝子の発現はCMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(最近はベストロフィン(bestrophin)プロモーターとして公知である)または代替的プロモーターにより駆動可能である。該レトロウイルスベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、湿潤型(wet−form)加齢性黄斑変性(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫もしくは網膜静脈閉塞の患者の眼における異常な血管増殖および/もしくは血管漏出の再発を予防するために、ならびに/または乾燥型(dry−form)加齢性黄斑変性(AMD)の患者の眼における異常な血管増殖を予防するために設計された遺伝子治療製品として使用されうる。このレトロウイルスベクターは、血管内皮増殖因子(VEGF)のインヒビター、例えば抗VEGF抗体もしくはその結合性フラグメント、VEGF特異的アプタマーまたはVEGF遮断性ペプチドもしくはポリペプチド、限定的なものではないが例えばVEGF受容体の可溶性形態、および/または血小板由来増殖因子(PDGF)のインヒビター、例えば抗PDGF抗体もしくはその結合性フラグメント、PDGF特異的アプタマーまたはPDGF遮断性ペプチドもしくはポリペプチド、限定的なものではないが例えばPDGF受容体の可溶性形態をコードする遺伝子を送達する。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。1つの実施形態においては、該レトロウイルスベクターは、網膜色素上皮細胞への送達のために配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してビシストロン配置でVEGFのインヒビターおよびPDGFのインヒビターを発現する。該遺伝子の発現はCMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(最近はベストロフィン(bestrophin)プロモーターとして公知である)または代替的プロモーターにより駆動可能である。該レトロウイルスベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、矯正用遺伝子卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)およびVMD2の疾患関連形態に特異的なマイクロRNA(miRNA)をコードするカセット、または矯正用ペリフェリン2コード化RDS遺伝子およびRDSの疾患関連形態に特異的なmiRNAをコードするカセットを、網膜色素上皮細胞に導入し、それにより、ベスト病またはベスト卵黄様黄斑変性(BVMD)を招く病態生理を軽減または逆転させるために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該遺伝子の発現はCMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(最近はベストロフィン(bestrophin)プロモーターとして公知である)または代替的プロモーターにより駆動可能である。該レトロウイルスベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、矯正用レチンアルデヒド結合タンパク質1遺伝子RLBP1を網膜色素上皮細胞に導入し、それにより、RLBP1関連網膜ジストロフィーを招く病態生理を軽減または逆転させるために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該レトロウイルスベクターにより運ばれる遺伝子はRLBP1 cDNAであり、これはRLBP1タンパク質をコードしている。RLBP1遺伝子の発現はCMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(最近はベストロフィン(bestrophin)プロモーターとして公知である)または代替的プロモーターにより駆動可能である。該レトロウイルスベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、緑内障を治療するために設計された遺伝子治療製品として使用されうる。このレトロウイルスベクターは、眼圧を低下させるように作用するCOX−2および/またはプロスタグランジンF2α受容体(FPR)をコードする遺伝子を送達する。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。1つの実施形態においては、該レトロウイルスベクターは、眼の前房への送達のために配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してビシストロン配置でCOX−2およびプロスタグランジンF2α受容体(FPR)遺伝子を発現する。該遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動されうる。該レトロウイルスベクターは経角膜注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、アッシャー(Usher)1cを招く病態生理を軽減または逆転させるために矯正用ホルモニン(hormonin)遺伝子を導入するために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該レトロウイルスベクターにより運ばれる遺伝子はホルモニンcDNAであり、これはホルモニンタンパク質をコードしている。ホルモニン遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該レトロウイルスベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、コロイデレミアを招く病態生理を軽減または逆転させるために矯正用Rabエスコート(escort)タンパク質1(REP1)遺伝子を導入するために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該レトロウイルスベクターにより運ばれる遺伝子はREP1 cDNAであり、これはREP1タンパク質をコードしている。REP1遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該レトロウイルスベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、色盲を招く病態生理を軽減または逆転させるために矯正用環状ヌクレオチド感受性チャネルベータ2(CNGB2)および/または環状ヌクレオチド感受性チャネルアルファ3(CNGA3)遺伝子を眼内に導入するために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該レトロウイルスベクターにより運ばれる遺伝子はCNGB2および/またはCNGA3遺伝子であり、これらはCNGB2および/またはCNGA3タンパク質をコードしている。該遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該レトロウイルスベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、レーバー先天黒内障(LCA)を招く病態生理を軽減または逆転させるために矯正用CEP290遺伝子を眼内に導入するために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該レトロウイルスベクターにより運ばれる遺伝子はCEP290遺伝子であり、これは290kDaの中心体タンパク質をコードしている。CEP290遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該レトロウイルスベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、X連鎖網膜色素変性を招く病態生理を軽減または逆転させるために矯正用網膜色素変性GTPアーゼ調節因子(RPGR)遺伝子を眼内に導入するために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該レトロウイルスベクターにより運ばれる遺伝子はRPGR cDNAであり、これはRPGRタンパク質をコードしている。RPGR遺伝子の発現はCMVプロモータまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該レトロウイルスベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、X連鎖網膜分離症を招く病態生理を軽減または逆転させるために矯正用レチノスキシン1(RS1)遺伝子を眼内に導入するために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該レトロウイルスベクターにより運ばれる遺伝子はRS1 cDNAであり、これはRS1タンパク質をコードしている。RS1遺伝子の発現はCMVプロモータまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該レトロウイルスベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、網膜色素変性を招く病態生理を軽減または逆転させるために矯正用網膜色素変性1(RP1)遺伝子を眼内に導入するために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該レトロウイルスベクターにより運ばれる遺伝子はRP1 cDNAであり、これはRP1タンパク質をコードしている。RP1遺伝子の発現はCMVプロモータ、光受容体特異的プロモーター、例えばロドプシンキナーゼまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該レトロウイルスベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、レーバー先天黒内障(LCA)2型を招く病態生理を軽減または逆転させるために矯正用網膜色素上皮特異的65kDaタンパク質(RPE65)遺伝子を導入するために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該レトロウイルスベクターにより運ばれる遺伝子はRPE65 cDNAであり、これはRPE65タンパク質をコードしている。RPE65遺伝子の発現はCMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(最近はベストロフィン(bestrophin)プロモーターとして公知である)または代替的プロモーターにより駆動可能である。該レトロウイルスベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、湿潤型(wet−form)加齢性黄斑変性(AMD)、乾燥型(dry−form)AMD、糖尿病性黄斑浮腫もしくは網膜静脈閉塞を招く病態生理を軽減または逆転させるために矯正用ヒトプロリン/アルギニンリッチ末端ロイシンリッチ反復タンパク質(PRELP;proline/arginine−rich end leucine−rich repeat protein)遺伝子を導入するために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該レトロウイルスベクターにより運ばれる遺伝子はPRELP cDNAであり、これはPRELPタンパク質をコードしている。PRELP遺伝子の発現はCMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(最近はベストロフィン(bestrophin)プロモーターとして公知である)または代替的プロモーターにより駆動可能である。該レトロウイルスベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、ミオシリンの発現をノックダウンすることにより若年性開放隅角緑内障を招く病態生理を軽減または逆転させるために、合成ミオシリン特異的miRNAをコードする核酸配列を眼内に導入するために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。合成ミオシリン特異的miRNAの発現はCMVプロモータまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該レトロウイルスベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、遺伝子増強および/またはノックダウンにより網膜色素変性を招く病態生理を軽減または逆転させるために、グルタチオン生合成経路からの律速性酵素、グルタミン酸−システインリガーゼ(GCL)および/またはグルタチオンシンテターゼ(GSS)、および/または合成ガンマ−グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)特異的miRNAをコードする核酸配列を眼内に導入するために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうる、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。GCLおよび/またはGSS遺伝子および/または合成GGT特異的miRNAの発現はCMVプロモータまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。1つの実施形態においては、該レトロウイルスベクターは、1以上の配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してマルチシストロン配置で該遺伝子および/または該合成miRNAを発現しうる。該レトロウイルスベクターは眼の前房への直接送達により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、神経変性障害、例えば前頭側頭葉認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、および運動ニューロン障害、例えば筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療するために設計された遺伝子治療製品として使用されうる。このレトロウイルスベクターは、VEGF−Aアイソフォーム、例えばVEGF145、VEGF165またはVEGF189でありうる、あるいはVEGF−B、VEGF−CまたはVEGF−DでありうるVEGFタンパク質をコードする遺伝子であって、神経保護作用を有する遺伝子を送達する。該レトロウイルスベクターは、狂犬病(Rabies)GまたはVSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該遺伝子の発現はCMVまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該レトロウイルスベクターは大筋肉群内への直接注射により、または髄腔内もしくは脳室内注射による脳脊髄液内への直接注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、嚢胞性線維症を治療するために設計された遺伝子治療製品として使用されうる。このレトロウイルスベクターは、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR)をコードする遺伝子を送達する。該レトロウイルスベクターは、Flu−HA、センダイウイルスエンベロープFもしくはHN,エボラ、バキュロウイルスGP64または代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該遺伝子の発現はCMVまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該レトロウイルスベクターは噴霧器の使用により鼻腔内に、または肺内への気管支肺胞洗浄による直接送達により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、サンフィリポ症候群Aを招く病態生理を軽減または逆転させるために矯正用N−スルホグルコサミンスルホヒドロラーゼ(SGSH)および/またはスルファターゼ修飾因子1(SUMF1)遺伝子を脳内に導入するために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうる、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該レトロウイルスベクターにより運ばれる遺伝子は、SGSHタンパク質をコードするSGSH cDNA、および/またはSUMF1タンパク質をコードするSUMF1遺伝子である。該遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。1つの実施形態においては、該レトロウイルスベクターは、配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してビシストロン配置でSGSHおよびSUMF−1遺伝子を発現しうる。該レトロウイルスベクターは直接脳内注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、ポンペ病を招く病態生理を軽減または逆転させるために矯正用酸−アルファグリコシダーゼ(GAA)遺伝子を大筋肉群および/または肺内に導入するために使用されうる。このレトロウイルスベクターは、GAAタンパク質をコードする遺伝子を送達する。該レトロウイルスベクターは、Flu−HA、センダイウイルスエンベロープFもしくはHN,エボラ、バキュロウイルスGP64、狂犬病G、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該遺伝子の発現はCMVまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該レトロウイルスベクターは、(i)大筋肉群内への直接注射により、および/または(ii)噴霧器の使用により鼻腔内に、または肺内への気管支肺胞洗浄による直接送達により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、CD19特異的キメラ抗原受容体(CAR19)をコードする核酸配列を自己または同種異系T細胞に導入するためにエクスビボで使用されうる。ついで、これらの導入T細胞は、CD19を発現する癌および白血病を治療するために対象内に注入される。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。CARをコードする核酸配列の発現はEF1α、CMVまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、5T4特異的キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を自己または同種異系T細胞に導入するためにエクスビボで使用されうる。ついで、これらの導入T細胞は、5T4を発現する癌および白血病を治療するために対象内に注入される。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。5T4 CARをコードする核酸配列の発現はEF1α、CMVまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。
当業者に公知のとおり、ある範囲の癌または白血病関連ポリペプチドに特異的であるキメラ抗原受容体(CAR)が製造されうる。本発明のレトロウイルスベクターは、いずれかの癌または白血病関連ポリペプチドに特異的なキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を自己または同種異系T細胞に導入するためにエクスビボで使用されうる。ついで、これらの導入T細胞は、CARが結合する癌または白血病関連ポリペプチドを発現する癌および白血病を治療するために対象内に注入される。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該CARをコードする核酸配列の発現はEF1α、CMVまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該CARにより標的化されうる適当な癌または白血病関連ポリペプチドには、メソセリン、葉酸受容体α、免疫グロブリンのカッパ軽鎖、CD30、癌胎児性抗原(CEA)、CD138、ガングリオシドG2(GD2)、CD33、CD22、上皮成長因子受容体(EGFR)、例えばEGFR VIII、IL−13Rα2、CD20、ErbB、例えばHer2、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、ルイスY抗原および線維芽細胞活性化タンパク質(FAB)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、罹患白血病または癌細胞上で発現されるペプチド−MHCに特異的であるT細胞受容体(TCR)をコードする核酸配列を自己または同種異系T細胞に導入するためにエクスビボで使用されうる。ついで、これらの導入T細胞は、TCRが結合するペプチド−MHCの発現に関連した疾患、癌または白血病を治療するために対象内に注入される。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。TCRをコードする核酸配列の発現はEF1α、CMVまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。本発明のベクターによりコードされるTCRは一本鎖TCR(scTCR)または二量体TCR(dTCR)でありうる。当業者に公知のとおり、適当なdTCRには、WO 2003/020763に記載されているものが含まれ、適当なscTCRには、WO 1999/018129に記載されているものが含まれる。この実施形態の特定の態様においては、TCRでトランスフェクトされたT細胞は、骨髄腫および肉腫を含む、エイズ、白血病および癌を治療するために使用されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、X連鎖重症複合免疫不全(SCID)を治療するために、共通ガンマ鎖(CD132)をコードする遺伝子を導入するために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。本発明のレトロウイルスベクターは、骨髄幹細胞に導入するためにエクスビボで使用されうる。ついで、これらの導入骨髄幹細胞は、該疾患を治療するために対象に注入されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、ADA重症複合免疫不全(SCID)を治療するために、アデノシンデアミナーゼをコードする遺伝子を導入するために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。本発明のレトロウイルスベクターは、骨髄幹細胞に導入するためにエクスビボで使用されうる。ついで、これらの導入骨髄幹細胞は、該疾患を治療するために対象に注入されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、ウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)を治療するために、WASタンパク質をコードする遺伝子を導入するために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。本発明のレトロウイルスベクターは、骨髄幹細胞に導入するためにエクスビボで使用されうる。ついで、これらの導入骨髄幹細胞は、該疾患を治療するために対象に注入されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、鎌状赤血球症またはサラセミアを治療するために、野生型β−グロビン、野生型胎児グロビンおよび突然変異「抗鎌状」グロビンを含む幾つかのグロブリンの1つをコードする遺伝子を導入するために使用されうる。当業者に公知のとおり、抗鎌状グロビンの例には、WO 2014/043131およびWO 1996/009385に記載されているものが含まれるが、これらに限定されるものではない。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。本発明のレトロウイルスベクターは、骨髄幹細胞に導入するためにエクスビボで使用されうる。ついで、これらの導入骨髄幹細胞は、該疾患を治療するために対象に注入されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、血友病Aを治療するために、矯正用遺伝子第VIII因子を肝臓、筋肉または脂肪細胞に導入するために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該レトロウイルスベクターにより運ばれる遺伝子は第VIII因子である。第VIII因子遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、血友病Bを治療するために、矯正用遺伝子第IX因子を肝臓、筋肉または脂肪細胞に導入するために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該レトロウイルスベクターにより運ばれる遺伝子は第IX因子である。第IX因子遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、ファブリー病を治療するために、アルファガラクトシダーゼA(α−GAL A)をコードする遺伝子を導入するために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該レトロウイルスベクターにより運ばれる遺伝子はGLA cDNAであり、これはα−GAL Aタンパク質をコードしている。該遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。本発明のレトロウイルスベクターは、造血CD34+幹細胞に導入するためにエクスビボで使用されうる。ついで、これらの導入造血CD34+幹細胞は、該疾患を治療するために対象に注入されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、ポルフィリン症の一形態を治療するために、欠損酵素をコードする遺伝子を導入するために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該レトロウイルスベクターにより運ばれる遺伝子は、以下の表から選択される治療されるポルフィリン症のタイプに関連した欠損酵素をコードする遺伝子である。該遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。
もう1つの実施形態においては、本発明のレトロウイルスベクターは、ムコ多糖症の一形態を治療するために、欠損酵素をコードする遺伝子を導入するために使用されうる。該レトロウイルスベクターは、VSV−Gまたは代替的ウイルスエンベロープタンパク質でシュードタイピングされうるヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性自己不活性化最小レンチウイルスベクターである。該レトロウイルスベクターにより運ばれる遺伝子は、以下の表から選択される治療されるムコ多糖症のタイプに関連した欠損酵素をコードする遺伝子である。該遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。
レトロウイルス治療用ベクターの製造
本発明のレトロウイルスベクターは以下の4つのプラスミドでのHEK293T細胞の一過性トランスフェクションにより製造されうる:
(1)RNA結合タンパク質と相互作用しうる結合部位および必要なトランスジーンをコードする組換えレトロウイルスベクターゲノムプラスミド、
(2)合成レトロウイルスgag/pol発現プラスミド、
(3)例えばVSV−Gを発現しうるエンベロープ(env)発現プラスミド、
(4)RNA結合タンパク質発現プラスミド。
あるいは、HIVのような本発明のレトロウイルスベクターは以下の5つのプラスミドでのHEK293T細胞の一過性トランスフェクションにより製造されうる:
(1)RNA結合タンパク質と相互作用しうる結合部位、必要なトランスジーンおよびRREをコードする組換えHIVベクターゲノムプラスミド、
(2)合成レトロウイルスgag/pol発現プラスミド、
(3)例えばVSV−Gを発現しうるエンベロープ(env)発現プラスミド、
(4)RNA結合タンパク質発現プラスミド、
(5)REV発現プラスミド。
あるいは、一過性トランスフェクション系は、本発明のRNA結合タンパク質(例えば、TRAP)を安定に発現する細胞系を利用しうる。
あるいは、本発明のレトロウイルスベクターは、(1)gag/pol、(2)envおよび(3)RNA結合タンパク質、そしてHIVベクターの場合にはRevを安定に発現するパッケージング細胞を使用することにより製造可能であり、ここで、RNA結合タンパク質と相互作用しうる結合部位および必要なトランスジーンをコードし、そしてHIVベクターの場合にはRRE配列を含む組換えレトロウイルスベクターゲノムをコードするプラスミドは、一過性トランスフェクションによりそのような細胞に導入される。
あるいは、本発明のレトロウイルスベクターは、(1)gag/pol、(2)env、(3)RNA結合タンパク質、(4)RNA結合タンパク質と相互作用しうる結合部位および必要なトランスジーンをコードする組換えEIAVベクターゲノムを安定に発現するプロデューサー細胞において製造されうる。
あるいは、本発明のHIVベクターは、(1)gag/pol、(2)env、(3)RNA結合タンパク質、(4)RNA結合タンパク質と相互作用しうる結合部位、必要なトランスジーンおよびRRE配列をコードする組換えHIVベクターゲノム、ならびに(5)REVを安定に発現するプロデューサー細胞において製造されうる。
AAV治療用ベクター
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、パーキンソン病を治療するために、ドーパミン合成経路の3つの酵素をコードする3つの遺伝子を導入するために使用されうる。該AAVベクターにより運ばれる遺伝子はヒトチロシンヒドロキシラーゼ(TH*)遺伝子のトランケート化形態(これは、THのフィードバック調節に関与するN末端の160アミノ酸を欠いている)、ヒト芳香族L−アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)およびヒトGTP−シクロヒドロラーゼ1(CH1)遺伝子を含みうる。それらの3つの酵素は3つの別々のオープンリーディングフレームにおいてAAVベクターによりコードされうる。あるいは、該AAVベクターは第1オープンリーディングフレームにおけるTHおよびCH1酵素ならびに第2オープンリーディングフレームにおけるAADC酵素の融合体をコードしうる。該遺伝子の発現はCMVプロモーターにより駆動可能であり、発現カセットは1以上のIRES要素を含みうる。該AAVベクターは直接注射により脳の線条体内に投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、光受容体および支持網膜色素上皮(RPE)細胞に矯正用MYO7A遺伝子を導入し、それにより、アッシャー(Usher)1B症候群に関連した視力の悪化を軽減または逆転させるために設計された遺伝子治療製品として使用されうる。該AAVベクターにより運ばれる遺伝子はMYO7A cDNAであり、これはMYO7Aタンパク質(長さが100mbを超える大きな遺伝子)をコードしている。この大きなMYO7A遺伝子の発現はCMVプロモーター、CMV/MYO7Aキメラプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該AAVベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、矯正用ATP結合カセット遺伝子ABCA4(ABCRとしても公知である)を光受容体に導入し、それにより、シュタルガルト病を招く病態生理を軽減または逆転させるために使用されうる。該AAVベクターにより運ばれる遺伝子はABCA4 cDNAであり、これはABCA4タンパク質をコードしている。ABCA4遺伝子の発現はCMVプロモーター、光受容体特異的プロモーター、例えばロドプシンキナーゼまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該AAVベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、湿潤型(wet−form)加齢性黄斑変性(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫もしくは網膜静脈閉塞の患者の眼における異常な血管増殖および/もしくは血管漏出の再発を予防するために、ならびに/または乾燥型(dry−form)加齢性黄斑変性(AMD)の患者の眼における異常な血管増殖を予防するために設計された遺伝子治療製品として使用されうる。このAAVベクターは、抗血管新生タンパク質、例えばアンジオスタチンおよび/またはエンドスタチンをコードする遺伝子を送達する。1つの実施形態においては、該AAVベクターは、網膜色素上皮細胞への送達のために配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してビシストロン配置でヒトエンドスタチンおよびアンジオスタチン遺伝子を発現する。該抗血管新生遺伝子の発現はCMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(最近はベストロフィン(bestrophin)プロモーターとして公知である)または代替的プロモーターにより駆動可能である。該AAVベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、移植前のドナー角膜への抗血管新生遺伝子の送達により、血管新生の結果としての角膜移植片拒絶を予防するために設計された遺伝子治療製品として使用されうる。1つの実施形態においては、該AAVベクターは、角膜移植片へのエクスビボ送達のために配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してビシストロン配置で抗血管新生遺伝子、例えばヒトエンドスタチンおよびアンジオスタチン遺伝子を発現する。該AAVベクターは角膜移植組織にエクスビボで適用可能であり、導入ドナー組織は移植前に貯蔵されることも可能である。該抗血管新生遺伝子の発現は構成的プロモーター、例えばCMVプロモーターにより駆動可能であるが、代替的プロモーターを使用することも可能である。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、湿潤型(wet−form)加齢性黄斑変性(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫もしくは網膜静脈閉塞の患者の眼における異常な血管増殖および/もしくは血管漏出の再発を予防するために、ならびに/または乾燥型(dry−form)加齢性黄斑変性(AMD)の患者の眼における異常な血管増殖を予防するために設計された遺伝子治療として使用されうる。このAAVベクターは、fms様チロシンキナーゼの可溶性形態(可溶性Flt−1)をコードする遺伝子を送達する。可溶性Flt−1遺伝子の発現はCMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(最近はベストロフィン(bestrophin)プロモーターとして公知である)または代替的プロモーターにより駆動可能である。該AAVベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、湿潤型(wet−form)加齢性黄斑変性(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫もしくは網膜静脈閉塞の患者の眼における異常な血管増殖および/もしくは血管漏出の再発を予防するために、ならびに/または乾燥型(dry−form)加齢性黄斑変性(AMD)の患者の眼における異常な血管増殖を予防するために設計された遺伝子治療製品として使用されうる。このAAVベクターは、色素上皮由来因子タンパク質(PEDF)をコードする遺伝子を送達する。PEDF遺伝子の発現はCMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(最近はベストロフィン(bestrophin)プロモーターとして公知である)または代替的プロモーターにより駆動可能である。該AAVベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、湿潤型(wet−form)加齢性黄斑変性(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫もしくは網膜静脈閉塞の患者の眼における異常な血管増殖および/もしくは血管漏出の再発を予防するために、ならびに/または乾燥型(dry−form)加齢性黄斑変性(AMD)の患者の眼における異常な血管増殖を予防するために設計された遺伝子治療製品として使用されうる。このAAVベクターは、血管内皮増殖因子(VEGF)のインヒビター、例えば抗VEGF抗体もしくはその結合性フラグメント、VEGF特異的アプタマーまたはVEGF遮断性ペプチドもしくはポリペプチド、限定的なものではないが例えばVEGF受容体の可溶性形態、および/または血小板由来増殖因子(PDGF)のインヒビター、例えば抗PDGF抗体もしくはその結合性フラグメント、PDGF特異的アプタマーまたはPDGF遮断性ペプチドもしくはポリペプチド、限定的なものではないが例えばPDGF受容体の可溶性形態をコードする遺伝子を送達する。1つの実施形態においては、該AAVベクターは、網膜色素上皮細胞への送達のために配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してビシストロン配置でVEGFのインヒビターおよびPDGFのインヒビターを発現する。該遺伝子の発現はCMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(最近はベストロフィン(bestrophin)プロモーターとして公知である)または代替的プロモーターにより駆動可能である。該AAVベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、矯正用遺伝子卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)およびVMD2の疾患関連形態に特異的なマイクロRNA(miRNA)をコードするカセット、または矯正用ペリフェリン2コード化RDS遺伝子およびRDSの疾患関連形態に特異的なmiRNAをコードするカセットを、網膜色素上皮細胞に導入し、それにより、ベスト病またはベスト卵黄様黄斑変性(BVMD)を招く病態生理を軽減または逆転させるために使用されうる。該遺伝子の発現はCMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(最近はベストロフィン(bestrophin)プロモーターとして公知である)または代替的プロモーターにより駆動可能である。該AAVベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、矯正用レチンアルデヒド結合タンパク質1遺伝子RLBP1を網膜色素上皮細胞に導入し、それにより、RLBP1関連網膜ジストロフィーを招く病態生理を軽減または逆転させるために使用されうる。該AAVベクターにより運ばれる遺伝子はRLBP1 cDNAであり、これはRLBP1タンパク質をコードしている。RLBP1遺伝子の発現はCMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(最近はベストロフィン(bestrophin)プロモーターとして公知である)または代替的プロモーターにより駆動可能である。該AAVベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、緑内障を治療するために設計された遺伝子治療製品として使用されうる。このAAVベクターは、眼圧を低下させるように作用するCOX−2および/またはプロスタグランジンF2α受容体(FPR)をコードする遺伝子を送達する。1つの実施形態においては、該AAVベクターは、眼の前房への送達のために配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してビシストロン配置でCOX−2およびプロスタグランジンF2α受容体(FPR)遺伝子を発現する。該遺伝子の発現はCMVまたは代替的プロモーターにより駆動されうる。該AAVベクターは経角膜注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、アッシャー(Usher)1cを招く病態生理を軽減または逆転させるために矯正用ホルモニン(hormonin)遺伝子を導入するために使用されうる。該AAVベクターにより運ばれる遺伝子はホルモニンcDNAであり、これはホルモニンタンパク質をコードしている。ホルモニン遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該AAVベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、コロイデレミアを招く病態生理を軽減または逆転させるために矯正用Rabエスコート(escort)タンパク質1(REP1)遺伝子を導入するために使用されうる。該AAVベクターにより運ばれる遺伝子はREP1 cDNAであり、これはREP1タンパク質をコードしている。REP1遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該AAVベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、色盲を招く病態生理を軽減または逆転させるために矯正用環状ヌクレオチド感受性チャネルベータ2(CNGB2)および/または環状ヌクレオチド感受性チャネルアルファ3(CNGA3)遺伝子を眼内に導入するために使用されうる。該AAVベクターにより運ばれる遺伝子はCNGB2および/またはCNGA3遺伝子であり、これらはCNGB2および/またはCNGA3タンパク質をコードしている。該遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該AAVベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、レーバー先天黒内障(LCA)を招く病態生理を軽減または逆転させるために矯正用CEP290遺伝子を眼内に導入するために使用されうる。該AAVベクターにより運ばれる遺伝子はCEP290遺伝子であり、これは290kDaの中心体タンパク質をコードしている。CEP290遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該AAVベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、X連鎖網膜色素変性を招く病態生理を軽減または逆転させるために矯正用網膜色素変性GTPアーゼ調節因子(RPGR)遺伝子を眼内に導入するために使用されうる。該AAVベクターにより運ばれる遺伝子はRPGR cDNAであり、これはRPGRタンパク質をコードしている。RPGR遺伝子の発現はCMVプロモータまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該AAVベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、X連鎖網膜分離症を招く病態生理を軽減または逆転させるために矯正用レチノスキシン1(RS1)遺伝子を眼内に導入するために使用されうる。該AAVベクターにより運ばれる遺伝子はRS1 cDNAであり、これはRS1タンパク質をコードしている。RS1遺伝子の発現はCMVプロモータまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該AAVベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、網膜色素変性を招く病態生理を軽減または逆転させるために矯正用網膜色素変性1(RP1)遺伝子を眼内に導入するために使用されうる。該AAVベクターにより運ばれる遺伝子はRP1 cDNAであり、これはRP1タンパク質をコードしている。RP1遺伝子の発現はCMVプロモータ、光受容体特異的プロモーター、例えばロドプシンキナーゼまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該AAVベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、レーバー先天黒内障(LCA)2型を招く病態生理を軽減または逆転させるために矯正用網膜色素上皮特異的65kDaタンパク質(RPE65)遺伝子を導入するために使用されうる。該AAVベクターにより運ばれる遺伝子はRPE65 cDNAであり、これはRPE65タンパク質をコードしている。RPE65遺伝子の発現はCMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(最近はベストロフィン(bestrophin)プロモーターとして公知である)または代替的プロモーターにより駆動可能である。該AAVベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVは、湿潤型(wet−form)加齢性黄斑変性(AMD)、乾燥型(dry−form)AMD、糖尿病性黄斑浮腫もしくは網膜静脈閉塞を招く病態生理を軽減または逆転させるために矯正用ヒトプロリン/アルギニンリッチ末端ロイシンリッチ反復タンパク質(PRELP;proline/arginine−rich end leucine−rich repeat protein)遺伝子を導入するために使用されうる。該AAVベクターにより運ばれる遺伝子はPRELP cDNAであり、これはPRELPタンパク質をコードしている。PRELP遺伝子の発現はCMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(最近はベストロフィン(bestrophin)プロモーターとして公知である)または代替的プロモーターにより駆動可能である。該AAVベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、ミオシリンの発現をノックダウンすることにより若年性開放隅角緑内障を招く病態生理を軽減または逆転させるために、合成ミオシリン特異的miRNAをコードする核酸配列を眼内に導入するために使用されうる。合成ミオシリン特異的miRNAの発現はCMVプロモータまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該AAVベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、遺伝子増強および/またはノックダウンにより網膜色素変性を招く病態生理を軽減または逆転させるために、グルタチオン生合成経路からの律速性酵素、グルタミン酸−システインリガーゼ(GCL)および/またはグルタチオンシンテターゼ(GSS)、および/または合成ガンマ−グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)特異的miRNAをコードする核酸配列を眼内に導入するために使用されうる。GCLおよび/またはGSS遺伝子および/または合成GGT特異的miRNAの発現はCMVプロモータまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。1つの実施形態においては、該AAVベクターは、1以上の配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してマルチシストロン配置で該遺伝子および/または該合成miRNAを発現しうる。該AAVベクターは眼の前房への直接送達により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、神経変性障害、例えば前頭側頭葉認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、および運動ニューロン障害、例えば筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療するために設計された遺伝子治療製品として使用されうる。このAAVベクターは、VEGF−Aアイソフォーム、例えばVEGF145、VEGF165またはVEGF189でありうる、あるいはVEGF−B、VEGF−CまたはVEGF−DでありうるVEGFタンパク質をコードする遺伝子であって、神経保護作用を有する遺伝子を送達する。該遺伝子の発現はCMVまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該AAVベクターは大筋肉群内への直接注射により、または髄腔内もしくは脳室内注射による脳脊髄液内への直接注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、嚢胞性線維症を治療するために設計された遺伝子治療製品として使用されうる。このAAVベクターは、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR)をコードする遺伝子を送達する。該遺伝子の発現はCMVまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該AAVベクターは噴霧器の使用により鼻腔内に、または肺内への気管支肺胞洗浄による直接送達により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、サンフィリポ症候群Aを招く病態生理を軽減または逆転させるために矯正用N−スルホグルコサミンスルホヒドロラーゼ(SGSH)および/またはスルファターゼ修飾因子1(SUMF1)遺伝子を脳内に導入するために使用されうる。該AAVベクターにより運ばれる遺伝子は、SGSHタンパク質をコードするSGSH cDNA、および/またはSUMF1タンパク質をコードするSUMF1遺伝子である。該遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。1つの実施形態においては、該AAVベクターは、配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してビシストロン配置でSGSHおよびSUMF−1遺伝子を発現しうる。該AAVベクターは直接脳内注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、ポンペ病を招く病態生理を軽減または逆転させるために矯正用酸−アルファグリコシダーゼ(GAA)遺伝子を大筋肉群および/または肺内に導入するために使用されうる。このAAVベクターは、GAAタンパク質をコードする遺伝子を送達する。該遺伝子の発現はCMVまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該AAVベクターは、(i)大筋肉群内への直接注射により、および/または(ii)噴霧器の使用により鼻腔内に、または肺内への気管支肺胞洗浄による直接送達により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、血友病Aを治療するために、矯正用遺伝子第VIII因子を肝臓、筋肉または脂肪細胞に導入するために使用されうる。該AAVベクターにより運ばれる遺伝子は第VIII因子である。第VIII因子遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、血友病Bを治療するために、矯正用遺伝子第IX因子を肝臓、筋肉または脂肪細胞に導入するために使用されうる。該AAVベクターにより運ばれる遺伝子は第IX因子である。第IX因子遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、ポルフィリン症の一形態を治療するために、欠損酵素をコードする遺伝子を導入するために使用されうる。該AAVベクターにより運ばれる遺伝子は、以下の表から選択される治療されるポルフィリン症のタイプに関連した欠損酵素をコードする遺伝子である。該遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、ムコ多糖症の一形態を治療するために、欠損酵素をコードする遺伝子を導入するために使用されうる。該AAVベクターにより運ばれる遺伝子は、以下の表から選択される治療されるムコ多糖症のタイプに関連した欠損酵素をコードする遺伝子である。該遺伝子の発現はCMVプロモーターまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、湿潤型(wet−form)加齢性黄斑変性(AMD)の患者の眼における浮腫における異常な血管増殖の再発を予防するために設計された遺伝子治療製品として使用されうる。このAAVベクターは、抗血管新生タンパク質、例えばアンジオスタチンおよび/またはエンドスタチンをコードする遺伝子を送達する。1つの実施形態においては、該AAVベクターは、網膜色素上皮細胞への送達のために配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してビシストロン配置でヒトエンドスタチンおよびアンジオスタチン遺伝子を発現する。該抗血管新生遺伝子の発現はCMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(最近はベストロフィン(bestrophin)プロモーターとして公知である)または代替的プロモーターにより駆動可能である。該AAVベクターは眼の硝子体切除術の後に直接的な網膜下注射により投与されうる。
もう1つの実施形態においては、本発明のAAVベクターは、神経変性障害、例えば前頭側頭葉認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、および運動ニューロン障害、例えば筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療するために設計された遺伝子治療製品として使用されうる。このAAVベクターは、VEGF−Aアイソフォーム、例えばVEGF145、VEGF165またはVEGF189でありうる、あるいはVEGF−B、VEGF−CまたはVEGF−DでありうるVEGFタンパク質をコードする遺伝子であって、神経保護作用を有する遺伝子を送達する。該遺伝子の発現はCMVまたは代替的プロモーターにより駆動可能である。該AAVベクターは、髄腔内もしくは脳室内注射による、脊髄を浸す脳脊髄液内への直接注射により投与されうる。
治療方法
本発明のもう1つの態様は、本発明のウイルスベクターを、または本発明のウイルスベクターが導入された細胞を、それを要する対象に投与することを含む治療方法に関する。
本明細書における治療に対する全ての言及は、治癒的、対症療法的および予防的治療を含むと理解されるべきである。尤も、本発明の文脈においては、予防(阻止)に対する言及は、より一般的には、予防的治療に関連したものである。治療は、予防または疾患進行の減速(遅延)をも含む。哺乳動物の治療が特に好ましい。ヒトに対する治療および獣医学的治療は共に本発明の範囲内である。
1つの実施形態においては、本発明のウイルスベクターまたはウイルスベクター粒子はワクチンとしての使用のためのものでありうる。該ワクチンは、例えば、ヒト用または獣医学用の、ウイルスに基づくワクチン(例えば、インフルエンザおよびニューカッスル病ウイルスワクチン)でありうる。
ワクチンが、トランスジーンを保持する修飾されたコンピテント(competent)ウイルスである場合に、本発明は特に有用でありうる。
前記のとおり、ワクチンとしての使用のためのウイルスベクターおよびウイルスベクター粒子の製造においては、トリ産生細胞が使用されうる。
医薬組成物
本発明のもう1つの態様は、本発明のウイルスベクターを、または本発明のウイルスベクターが導入された細胞もしくは組織を、医薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤と共に含む医薬組成物に関する。
本発明は、遺伝子治療により個体を治療するための医薬組成物を提供し、ここで、該組成物はベクターの治療的有効量を含む。
該組成物は、医薬上許容される担体、希釈剤、賦形剤またはアジュバント(補助剤)を含みうる。医薬担体、賦形剤または希釈剤の選択は、意図される投与経路および標準的な医薬慣例に基づいて行われうる。該医薬組成物は、担体、賦形剤または希釈剤を、あるいはそれらに加えて、いずれかの適当な結合剤、滑沢剤、懸濁化剤、コーティング剤、可溶化剤、および標的部位内へのベクターの進入を補助または増進しうる他の担体物質(例えば、リピッド(脂質)デリバリーシステム)を含みうる。
適当な場合には、該組成物は以下のいずれかの1以上により投与されうる:吸入;坐剤またはペッサリーの形態;ローション剤、溶液(水剤)、クリーム剤、軟膏剤または散布剤の形態で局所的に;皮膚パッチの使用により;賦形剤、例えばデンプンまたはラクトースを含有する錠剤の形態で、あるいは単独での又は賦形剤と混合されたカプセル剤または胚珠状物(ovule)において、あるいは香味または着色剤を含有するエリキシル剤、溶液(水剤)または懸濁剤の形態で経口的に。あるいは、それらは、非経口的に、例えば海綿体内、静脈内、筋肉内、頭蓋内、眼内または皮下に注射されうる。非経口投与の場合、該組成物は、他の物質、例えば、溶液を血液と等張にするのに十分な塩または単糖類を含有しうる無菌水溶液の形態で最良に使用されうる。頬側または舌下投与の場合には、該組成物は、通常の方法で製剤化されうる錠剤またはトローチ剤(ロゼンジ)の形態で投与されうる。
本発明のベクターは、エクスビボで、標的細胞または標的組織に導入した後、該標的細胞または組織を、それを要する患者に導入するためにも使用されうる。そのような細胞の一例は自己T細胞でありうる。そのような組織の一例はドナー角膜でありうる。
スクリーニング方法
本発明のもう1つの態様は、核酸結合部位および/または同族(コグネイト)核酸結合タンパク質を特定する方法に関するものであり、それらは、核酸結合部位に機能的に連結されている場合の関心のあるヌクレオチドの翻訳がウイルスベクター産生細胞において抑制または予防されるように相互作用することが可能であり、ここで、該方法は、レポーター遺伝子に機能的に連結された核酸結合部位と核酸結合タンパク質との両方を含む細胞において、該レポーター遺伝子の発現を分析することを含む。
該方法は、本発明において有用な新規RNA結合タンパク質およびそれらの対応結合部位の特定を可能にしうる。該方法は、既知RNA結合タンパク質または結合部位の変異体の特定をも可能にしうる。
1つの実施形態においては、該方法は、TRAPと相互作用する結合部位の特定を可能にする。
もう1つの実施形態においては、該方法は、TRAPに結合しうる結合部位と相互作用する核酸結合タンパク質の特定を可能にする。
1つの実施形態においては、レポーター遺伝子は蛍光タンパク質をコードしている。
もう1つの実施形態においては、レポーター遺伝子は、陽性細胞増殖選択マーカー、例えば、Zeocin(商標)(ゼオシン)に対する細胞の耐性を可能にするsh ble遺伝子産物をコードしている。
もう1つの実施形態においては、レポーター遺伝子は、陰性細胞増殖選択マーカー、例えば、ガンシクロビル(Ganciclovir)の存在下で細胞死を引き起こすHSVチミジンキナーゼ遺伝子産物をコードしている。
機能性の改善のためのTRAP結合部位(tbs)のスクリーニングの一例は以下のとおりでありうる。
・配列RAGNNの、8個の反復、またはRAGNNおよびRAGNNNの、合計8個の反復を含む縮重DNAライブラリーを合成する。
・該ライブラリーをGFPのようなレポーター遺伝子カセットの5’UTR内(好ましくは、ORFの12ヌクレオチド以内)にクローニングする。該ライブラリー連結レポーター遺伝子は、所望により、レトロウイルスベクターゲノム内にクローニングされ、レトロウイルスベクターライブラリーが作製されうる。
・ライブラリー連結レポーター遺伝子カセットを細胞系内に安定に導入し(これはトランスフェクションまたはレトロウイルスベクター送達により達成されうる)、単一クローンを単離する。
・対照DNA(例えば、pBlueScript)またはTRAP発現プラスミドDNAを使用する並行トランスフェクションによりクローンをスクリーニングする。両方のシナリオにおいてレポーター遺伝子発現を測定し、高い非抑制レポーター遺伝子レベル(対照)および低い抑制レポーター遺伝子レベル(TRAP)を示すクローンを特定する。
・候補クローンからの標的細胞ゲノムDNAからのtbs配列のPCR増幅および配列決定により配列を特定する。
典型的なレトロウイルスベクター成分を示す図。現在使用されている治療用レトロウイルスベクター系は、それが由来する野生型ウイルスゲノムから高度に操作されている。ガンマ−レトロウイルスベクターは、典型的には、ベクターゲノム、Gag/Polおよびエンベロープ発現構築物を要する3または4成分系を使用して製造され、HIVに基づくレンチウイルスベクターの場合には、アクセサリー遺伝子Revも必要である。EIAVに基づくレンチウイルスベクターは、オープンリーディングフレーム(ORF)がRREに取って代わっている場合にはRevを要さない。ベクターゲノムは、典型的には、パッケージングシグナル(ψ)、NOI、(所望により使用されうる)転写後要素(PRE)、3’ppuおよび自己不活性化(SIN)LTRを要する。ベクターゲノムRNAおよびトランスジーンmRNAの両方の適切なポリアデニル化ならびに逆転写の過程のためにR−U5領域が必要である。通常、ゲノムカセット内でコードされる「外部」および「内部」の両方のプロモーター(Pro)は、その他のベクター系成分を駆動するものと同様に、強力な真核生物またはウイルスプロモーターである。
ベクターを産生する産生細胞の能力に対するNOIトランスジーン産物の負の影響の規模を決定するためのベクターゲノムプラスミド混合実験を記載する図。ベクターゲノム混合実験において、ベクターパッケージング成分および2つのタイプのベクターゲノムプラスミド(1つのレポーター遺伝子ベクターゲノムプラスミド、および細胞のベクター産生性に対するトランスジーン産物の影響を試験するためのNOIトランスジーンをコードするベクター)での細胞のコトランスフェクションによりベクター粒子を産生させる。lacZまたはGFPレポータータンパク質の発現はベクター力価に影響を及ぼさないため、これらは対照ベクターとして使用される。該細胞のベクター産生性に負の影響を及ぼしうるNOIトランスジーンをコードする第2のベクターゲノムプラスミドの導入はlacZ−ベクター産生にバイスタンダー効果を及ぼすであろう。NOIトランスジーンの発現は主に内部発現カセットから生じ、これは、典型的には、強力な構成的プロモーターにより駆動される。ビリオン当たり2コピーのベクターゲノムRNA分子をパッケージングする結果が考えられうること、そしてただ1つのベクターRNAが逆転写され、標的細胞内に組込まれることから、lacZ−ベクターと第2のゲノムを混合する希釈効果が存在するであろう。この希釈効果は、比例的に更に多量の第2のゲノムプラスミドがlacZ−ベクターゲノムプラスミドと混合された場合、より明らかとなる。したがって、第2のベクターゲノムプラスミドがGFPのものである「希釈」対照が要求され、GFPはベクター力価に負の影響を及ぼさないことも公知である。したがって、ベクター産生性に対する与えられたNOIトランスジーン産物の影響は、LacZ:GFPベクターゲノム混合対照に対して測定されうる。混合実験から産生されたベクターは、典型的には、lacZ−ベクターの測定(例えば、ベクター−導入細胞のX−gal染色)により力価測定される。
図3i.産生中のベクターゲノム混合はベクター力価に対するトランスジーンタンパク質発現の影響を示す。A.lacZコード化ベクターゲノム成分を、一過性ベクター産生中に、もう1つのベクターゲノムと1:1または1:5の比で混合し、標的細胞上のX−galアッセイによりベクター力価に対する影響をアッセイした。GFP発現はベクター力価に影響を及ぼさず、したがって、種々の比における力価低減のレベルはlacZゲノムの希釈のベースライン効果を示す。したがって、lacZ力価に対する他のベクタートランスジーンの影響がlacZ:GFP混合物に対して測定されうる。B.この実験は、RetinoStat(登録商標)、StarGen(商標)、UshStat(登録商標)およびReQuinate(登録商標)ゲノムからのトランスジーンタンパク質の効果がベクター力価に7〜100倍影響を及ぼすことを示している。外部および内部プロモーター要素は共にCMVである。図3ii.産生中のCOX2および/またはFPRゲノムならびにlacZゲノム混合はベクター力価に対するトランスジーンタンパク質発現の影響を示す。lacZコード化ベクターゲノム成分を、一過性トランスフェクションベクター産生中に、GFPまたは治療用ベクターゲノムと1:1または1:5の比で混合し、標的細胞上のX−galアッセイによりlacZベクター力価に対する影響をアッセイする。GFP発現はベクター力価に影響を及ぼさず、したがって、lacZの力価はlacZゲノムの希釈のベースライン効果を示す。したがって、lacZ力価に対する他のベクタートランスジーンの影響が1:1および1:5の比のlacZ/GFP混合物に対して測定されうる。試験された治療用ベクターは単一トランスジーンベクターまたはビシストロン(bicistronic)ベクター(IRES要素を保持するもの)のいずれかであった。lacZ力価に対するCOX−2およびFPRの影響は相加的でありうる。
レトロウイルスベクター産生細胞におけるトランスジーン発現の抑制におけるTRIP系の一例。TRAPまたはコドン最適化TRAP(coTRAP)(ここで、ベクターゲノム発現カセットのトランスジーンの5’UTR内にtbsが挿入されている)を発現するレトロウイルスベクター産生細胞。TRAPはtbsに結合し、トランスジーンタンパク質の翻訳を遮断する。ベクターRNA分子もTRAPに結合しうるが、驚くべきことに、これはベクタービリオンの単一ラウンドのライフサイクルを妨げない。すなわち、逆転写および組込み工程はベクター粒子により正常に行われる。
GFP−プラスミドトランスフェクト化細胞集団のフローサイトメトリー分析においてGFP陽性細胞またはMFIのいずれかの数のみを用いた場合の制約。これらの図は、実質的に異なるGFP発現レベルを有する集団を比較する実験における潜在的結果を示す。実験A/Bにおいては、どちらのGFP陽性集団も同じMFIを有し、実験C/Dにおいては、GFP陽性集団は類似した数の細胞を含有するが、10倍異なるMFIを示す。シナリオAは、pEF1a−coTRAP[H6]を使用した場合に実際に実証されており、pCMV−tbsGFPおよびpEF1a−coTRAP[H6]でコトランスフェクトされた場合、非常に少数(<1%)の非常に高発現性のGFP陽性HEK293T細胞が一貫して観察されている。このことは、EF1aプロモーターがこの小さな亜集団において活性でない可能性があることを示唆している。したがって、これは、集団における発現の尺度としてMFIのみを使用した場合にGFP−抑制分析を歪曲する。したがって、発現スコア(% GFP陽性×MFI)がゲート化(gated)集団内のGFPタンパク質発現の全体的なレベルをより有効に示す。
TRAP/tbs配置の評価のための蛍光レポーター遺伝子構築物。まず、簡単な評価のために、pONY8.4RC−GFPからpCMV−tbsGFPを作製した。この後、ベクター活性に対するTRAP/tbs配置の効果を評価するために、非SIN EIAVベクターゲノムpONY8.4RC−tbsGFPを作製した。評価のために初めに使用されたtbs配列[RAGNN]11は翻訳開始コドンの前の41ntの近位および9ntの遠位配列に隣接していた。
一過性トランスフェクション評価研究において及び安定なHEK293T−TRAP[H6]細胞系を作製するために使用されたTRAP発現プラスミド。初期実験は、C末端HIS6−タグの存在下/非存在下のバシラス・サチリス(Bacillus subtilis)のコドン/配列最適化TRAPの発現を駆動するためにpCI−Neoバックボーンを使用した。ついでCMVプロモーターを置換するためにEF1aプロモーター配列を使用して、pEF1a−coTRAP[H6]を得た。CMVプロモーター駆動性構築物(この場合には3’UTRが異なる)とは対照的に、両方のEF1aプロモーター駆動性構築物の3’UTRが同一となるように、pEF1a−coTRAP[H6]におけるH6配列のオリゴ−アダプター置換により、pEF1a−coTRAPプラスミドを作製した。pEF1a−coTRAP−iBsrは合成により完全に再誘導された。これは、TRAP[H6]およびブラスチシジン(Blasticidin)耐性マーカーをコードするマルチシストロン(multicistronic)mRNAを発現する。Bsrの翻訳を駆動するためにEMCV IRESを使用した。
HEK293T細胞におけるトランスジーン発現のTRAP媒介性抑制の第1の一過性トランスフェクション評価研究からの選ばれた写真。pCMV−tbsGFPのtbs含有5’UTRからの発現をpCI−coTRAP[H6]が特異的に抑制しうることを示す写真による証拠。
HEK293T細胞におけるトランスジーン発現のTRAP媒介性抑制の第1の一過性トランスフェクション評価研究からのフローサイトメトリーデータの概要。A.別々の軸上にプロットされた陽性GFP集団の百分率(%)および蛍光強度(ArbU)の中央値のヒストグラム。TRAPもTRAP[H6]もpCMV−GFPからのGFP発現に全く影響を及ぼさなかった。TRAP[H6]は、1:1の比で、および用量依存的に、pCMV−tbsGFPからのGFP発現を有意に低減した。TRAPは、pCMV−tbsGFPからの発現を抑制する能力が、より低いようであった。B.TRAP媒介性抑制の規模をより良好に評価するために、各コトランスフェクト化細胞培養に関して発現スコアを導いた。陽性細胞の百分率(%)にMFIを掛け算すると、培養当たりに産生されたGFPの総量の近似値が得られる。発現スコアにより判定された場合のTRAP[H6]によるGFP抑制の最大レベルはこの実験においては25倍までであった。C.pCI−coTRAPまたはpCI−coTRAP[H6]で1:1の比でコトランスフェクトされたレポータープラスミドの代表的なフローサイトメトリードットプロット。D.TRAP発現プラスミドの非存在下のもの(スタッファー)と比較された、GFP−レポータープラスミドおよびEF1aプロモーターまたはCMVプロモーター駆動性TRAP[H6]プラスミドでのコトランスフェクト化HEK293T細胞のGFP蛍光強度の中央値。pEF1a−coTRAP[H6]をGFP:TRAPの1:0.1のモル比で使用した場合に、pCMV−tbsGFPからの最大に近いGFP抑制が可能であったが、これはpCI−coTRAP[H6]では可能でなかった。
HIS6タグ付きTRAPおよびタグ無しTRAPの機能比較。A.別々の軸上でプロットされた陽性GFP集団の百分率(%)および蛍光強度(ArbU)の中央値のヒストグラム。HIS6タグ付き若しくはタグ無しTRAP発現またはスタッファープラスミドをGFPレポータープラスミドのいずれかと、示されている比(括弧内)で、三重重複でコトランスフェクトした。トランスフェクト化細胞をフローサイトメトリーにより分析した。B.発現スコア(MFI×%GFP)は集団におけるGFPのTRAP媒介性抑制の効果の全体的な評価を示す。HIS6 C末端タグは、pCMV−tbsGFPによるGFP発現を抑制するTRAPの能力における少なくとも2倍の増加をもたらす。
トランスジーン発現を抑制する種々のTRAPホモログの能力およびHEK293T−TRAP細胞系の評価。A.デスルホトマクルム・ヒドロサーマレ(Desulfotomaculum hydrothermale)およびアミノモナス・パウシボランス(Aminomonas paucivorans)からのTRAP ORFをコドン/配列最適化し、pEF1a−プラスミドバックボーン内にクローニングした。TRAP発現またはスタッファープラスミドをGFPレポータープラスミドのいずれかと共に、示されている比(括弧内)で、三重重複でコトランスフェクトした。トランスフェクト化細胞をフローサイトメトリーにより分析した。各トランスフェクション条件ごとに平均発現スコアを得た。B.4個のHEK293T−TRAP[H6]細胞系を、三重重複の一過性トランスフェクションによるpCMV−tbsGFPからのトランスジーン発現を抑制するそれらの能力に関して比較した。pCMV−GFPまたはpCMV−tbsGFPをスタッファープラスミドまたはpEF1a−coTRAP[H6]と共にコトランスフェクトした。細胞をフローサイトメトリーにより分析し、各条件ごとに平均発現スコアを得た。pCMV−GFP/スタッファーの発現スコアをその他の条件の発現スコアで割り算することにより、平均抑制倍率を得た。
レトロウイルスベクター産生におけるTRAP−tbs系の評価からのフローサイトメトリーデータの概要。A.別々の軸上にプロットされた陽性GFP集団の百分率(%)および蛍光強度(ArbU)の中央値のヒストグラム。TRAP[H]発現プラスミドを単一GFPレポータープラスミドまたは非SIN EIAVベクターゲノムプラスミド(図6を参照されたい)のいずれかと共に、示されている比で、HEK293T細胞内にコトランスフェクトした。非SIN EIAVベクターゲノムプラスミドとのGag/PolおよびVSVG発現プラスミドの追加的なコトランスフェクションによりベクター産生が達成された。ベクターの産生中のGFP抑制は単一GFPレポーターの状況に非常に類似しており、TRAPおよびtbs配列の両方の存在に左右された。B.発現スコア(MFI×%GFP)は集団におけるGFPのTRAP媒介性抑制の効果の全体的な評価を示す。C.D17細胞に対するベクター力価。pONY8.4RC−(tbs)GFPベクタートランスフェクションから得られたベクター上清を使用してD17細胞に導入し、4日後にフローサイトメトリーを行った。驚くべきことに、TRAP/tbs配置はベクター力価に最小の影響を及ぼした。このことは、ベクター粒子の単一ラウンドのライフサイクルがベクターRNAゲノム上の推定TRAP/tbs相互作用によっては影響されなかったことを示している。
TRAP/tbs配置におけるトランスジーンAUGコドンとtbsとの間の短いスペーシングの要件の試験からのフローサイトメトリーデータの概要。A.pONY8.4RC−tbsGFPに基づくベクターゲノムにおいて試験されたスペーシング変異体を示す図。完全長ベクターゲノムRNAから誘導されうる、すなわち、「外部」CMVプロモーター(図6を参照されたい)から駆動されうるいずれかのGFP発現に関する制御のために、「ヌル」変異体においてはAUGが終止コドンに改変された。5’ステム−ループ(SL)配列をバシラス・サチリス(Bacillus subtilis)におけるtrpオペロンリーダー配列から誘導した。下線付きヌクレオチドはコザック配列を示す。これらのスペーサー変異体ベクターレポータープラスミドをスタッファープラスミドまたはpEF1a−coTRAP[H6]と共に、示されているモル比(括弧内)で、HEK293T細胞内に三重重複でコトランスフェクトした。細胞をフローサイトメトリーにより分析した。B.各条件ごとの全体的なGFP発現を、平均発現スコアを得ることにより評価した。GFP抑制の効率はスペーシング変異体+11〜+1に関して実質的に同じであった。「0」変異体はTRAP[H6]の非存在下のGFP発現に関して若干欠損しているようであった。意外にも、5’SL変異体はTRAP媒介性抑制に対して完全に不応答性であった。このことは、5’SLがこの系におけるTRAP−tbs相互作用を阻止することを示唆している。
図14i.TRAP/tbs配置が機能するのに必要なTRAP結合配列におけるRAGNN反復の最小数を定める。A.評価のためにpCMV−tbsGFP内にクローニングされたtbs変異体配列。該研究において評価された初期tbs配列は、TGスペーサーをAAへと変化するように第10および第11 RAGNN反復間で最適化された配列であった。したがって、変異体tbs×11Mおよびtbs×10Mは、潜在的な隠れたSD部位が除去されるように設計された。GFPレポーターの良好な翻訳コンテキストを維持しながら、RAGNN反復をtbs×11M変異体の3’末端から順次欠失させた(11〜4反復のみ)。反復−変異体tbs−GFPレポータープラスミドをスタッファープラスミドまたはpEF1a−coTRAP[H6]と共に、10:1 GFP:TRAPプラスミドの比で、HEK293T細胞内に三重重複でコトランスフェクトした。細胞をフローサイトメトリーにより分析した。B.別々の軸上にプロットされた陽性GFP集団の百分率(%)および蛍光強度(ArbU)の中央値のヒストグラム。C.各条件ごとの平均発現スコアを計算し、トランスフェクト化集団内の全体的なGFP発現の尺度として使用した。D.スタッファープラスミドでトランスフェクトされた各tbs変異体に関する発現スコアをpEF1a−coTRAP[H6]トランスフェクションのもので割り算することにより、抑制倍率を得た。8 RAGNN反復で最大抑制が可能であり、7 RAGNN反復tbsは最大に近い抑制を可能にした。6 RAGNN反復tbsは中等度レベルのトランスジーン抑制を可能にし、一方、5および4 RAGNN反復tbs配列は最低限度の機能性を示した。図14ii.11 RAGNN反復tbsのバックグラウンドにおいて1以上のRAGNNN反復を含有するtbs配列の機能性の評価。A.この実験においてN2×11と称されるtbs×11M配列を、より多数のRAGNNN反復がtbsの中心部から漸進的にRAGNN反復に取って代わる修飾のための基本体として使用した。したがって、該変異体は漸進的に1、3、5、7または10個のRAGNNN反復を含有していた(3’末端ctヌクレオチドはスペーサーとはみなされないため、N3×11は10個のNNNスペーシングヌクレオチドを含有する)。これらのtbs変異体を治療用ベクターゲノムプラスミドpONYK−tbsCOX2(図18iを参照されたい)内にクローニングして、既存tbsを置換する。B.これらのtbs変異体含有ベクターゲノムプラスミドを使用して、EIAVベクターパッケージング成分との及びスタッファープラスミドまたはpEF1a−coTRAP[H6]との5:1のベクターゲノム:TRAPプラスミド比でのコトランスフェクションにより、ベクターを作製した。COX−2に対する免疫ブロット法を産生終了細胞からの細胞ライセート上で行った。図14iii.11 RAGNN反復tbsのバックグラウンドにおいて1以上のRAGNNN反復を含有するtbs配列の機能性の評価:トランスフェクションの8時間後のベクター産生細胞におけるCOXタンパク質レベル。予め、産生終了細胞(トランスフェクション後48時間まで)におけるCOX2レベルを分析した(図14iiBを参照されたい)。TRAP−tbs媒介性抑制がベクター産生中に一時的に異なるかどうかを試験するために、トランスフェクションの8時間後、免疫ブロットによりCOX2レベルに関して産生細胞を分析した。N3N2 tbs変異体をコードする種々の構築物からのCOX2の発現のパターンは、トランスフェクションの8時間後には、トランスフェクションの48時間までに観察されたもの(図14iiBを参照されたい)と同じであった。これは、与えられたtbs配列上のTRAPの抑制の度合がベクター産生中に明白には変化しないことを示している。図14iv.11 RAGNN反復tbsのバックグラウンドにおいて1以上のRAGNNN反復を含有するtbs配列の機能性の評価:ベクター力価。図14iiおよび図14iiiに関連した実験においてEIAV−tbsCOX2産生細胞から得られた粗ベクター上清をDNA組込みアッセイにより力価測定して、ベクター活性に対する産生中のCOX2抑制の影響を判定した。該データは、産生中のCOX2の僅かな抑制のみ(図14iiBおよび図14iiiにおけるN3N2×11[3]を参照されたい)が、EIAV−COX2ベクター力価を実質的に増強するために要求されることを示している。図14v.×7および×8 RAGNN反復tbsのバックグラウンドにおいて1以上のRAGNNN反復を含有するtbs配列の機能性の評価。A.これまでのデータは、8または7個のRAGNN反復を含むtbsを使用して、最大レベルまたは最大に近いレベルのトランスジーン抑制が生じうることを示している。単一RAGNNN反復を8×RAGNNおよび7×RAGNN tbs内に挿入して、より短いこれらのtbs配列の機能に対する影響を評価した。これらを、×11、×7、×6および×5反復を含むRAGNN含有tbsと共に比較した。これらのtbs変異体を治療用ベクターゲノムプラスミドpONYK−tbsCOX2(図18iを参照されたい)内にクローニングして、既存のtbsを置換した。B.これらのtbs変異体含有ベクターゲノムプラスミドを使用して、EIAVベクターパッケージング成分との及びスタッファープラスミドまたはpEF1a−coTRAP[H6]との5:1のベクターゲノム:TRAPプラスミド比でのコトランスフェクションにより、ベクターを作製した。COX−2に対する免疫ブロット法をベクター産生中の早い時点(すなわち、トランスフェクションの8時間まで)の細胞ライセート上で行った。該データは、RAGNNN反復が、7×RAGNNを含む×8反復tbs以内で「許容」されうることを示している。
遺伝子発現のIRES依存的TRAP/tbs調節を試験するためのIRES−tbs GFPレポータープラスミドの構築。A.遠位シストロン(GFP)からの発現がTRAPによる抑制の度合を示すように、IRES−tbs GFPレポーター構築物を作製した。pCMV−Vi−tbsx11GにおけるtbsとIRES要素との間の距離は44nt(スペーシングヌクレオチドをコードする)であり、一方、pCMV−Vi−tbsx4Gにおいてはこの距離を4ntへと低減した。pCMV−ViGFPを「無tbs」対照としてクローニングした。B.IRES−tbs GFPレポータープラスミドをスタッファープラスミドまたはpEF1a−coTRAP[H6]と共に10:1のGFP−レポーター:TRAPプラスミド比でHEK293T内に三重重複でコトランスフェクトした。単一ORF GFPレポータープラスミドをTRAP媒介性抑制に関する対照として同時に含めた。細胞をフローサイトメトリーにより分析した。各条件ごとの平均発現スコアを計算し、トランスフェクト化集団における全体的なGFP発現の尺度として使用した。TRAPは、IRESから導かれるGFP発現を、5’CAP媒介性発現と類似した規模で抑制することが可能であった。
TRIP系を使用する、WPREを含有するEIAV SIN−ベクターの製造。ベクターゲノムプラスミドpONY8.9RC−tbsGFP(+WPRE)をTRAP/tbs配置に対するWPREのいずれかの影響に関して試験した。細胞をフローサイトメトリーにより分析した。pEF1a−coTRAP[H6]またはスタッファープラスミドと共にベクターゲノムpONY8.4RC−tbsGFPまたはpONY8.9RC−tbsGFP(+WPRE)でコトランスフェクトされた細胞集団に関する発現スコアを得た。% GFPおよび蛍光強度値中央値の掛け算からスコアを導出して、全集団におけるGFP発現の尺度を得た。
図17i.tbsを含有するように修飾されたReQuinate(登録商標)に基づく治療用ベクターゲノムの図。血友病Aの治療用ベクターであるReQuinate(登録商標)はヒト第VIII因子遺伝子をコードしている。第VIII因子はベクタービリオン粒子内へのVSV−Gの取り込みを妨げてベクター活性を劇的に低減することが公知である。tbsまたはスクランブル化(scrambled)tbsを該ベクターゲノム内にクローニングして、それぞれReQuinate−tbsおよびReQuinate−conベクターを得た。図17ii.TRIP系を使用するReQuinate(登録商標)力価の改善。HEK293T細胞においてTRIP系を使用して、標準的なベクタープロトコルに従い、ReQuinate(登録商標)に基づくベクターを製造した。ベクターゲノムプラスミドをpEF1a−coTRAP[H6]と5:1の比でEIAVベクターパッケージング成分と共にコトランスフェクトした。ベクター上清を集め、組込みアッセイにより力価測定し、遠心分離により〜70倍濃縮し、ついでPERTアッセイを行い、ついでVSV−Gおよびp26(EIAVカプシド)に対する免疫ブロットを行った。A.ReQuinate(登録商標)−tbsベクター力価はDNA組込みアッセイによる判定でReQuinate(登録商標)と比較して30倍増加し、これはベクター産生中のTRAPの存在に左右された。ベクターの粒子対感染性の比も改善された(非表示データ)。B.濃縮ベクターサンプルにおけるVSV−Gの免疫ブロット。ベクター力価はベクタービリオン内へのVSV−Gの取り込みの度合と相関した。h第VIII因子は、レトロウイルスベクタービリオン内に取り込まれるVSV−Gの量を劇的に抑制することが公知である。C.ベクターコア(p26−カプシド)の免疫ブロットは、ウェル当たりに等しい数のベクタービリオンがローディングされたことを示している。
図18i.COX2またはFPRのいずれかをコードするベクターゲノムの図。tbs×11M変異体を単一遺伝子発現ベクター内にクローニングした。5’UTR配列+/−tbs×11Mは、ReQuinate(登録商標)研究において使用された対照スクランブル化tbs含有5’UTRとは完全に異なる。図18ii.TRIP系を使用して改善された単一遺伝子COX2ベクター力価。単一遺伝子COX−2に基づくベクターを、HEK293T細胞内でTRIP系を使用して製造した。ベクターゲノムプラスミドをpEF1a−coTRAP[H6]と5:1の比で、EIAVベクターパッケージング成分と共にコトランスフェクトした。ベクター上清を回収し、等しい体積の粗回収上清を使用する組込みアッセイにより力価測定し、産生終了細胞ライセートを免疫ブロット上で抗COX−2抗体によりプローブした。組込み終了アッセイ細胞(すなわち、COX−2ベクター調製物が導入されたもの)も免疫ブロットによりCOX−2発現に関して分析した。A.COX2ベクター力価はDNA組込みアッセイによる判定で100倍増加し、これはベクター産生中のTRAPおよびtbsの存在に左右された。B.産生終了細胞内のCOX−2の免疫ブロットは、ベクター力価がCOX−2レベルと逆相関したことを示している。C.回収上清の体積当たりの活性ベクター粒子の増加は標的細胞内のCOX−2の導入および発現の増加をもたらした。図18iii.TRIP系を使用して改善された単一遺伝子FPRベクター力価。単一遺伝子FPRに基づくベクターを、HEK293T細胞内でTRIP系を使用して製造した。ベクターゲノムプラスミドをpEF1a−coTRAP[H6]と5:1の比で、EIAVベクターパッケージング成分と共にコトランスフェクトした。ベクター上清を回収し、等しい体積の粗回収上清を使用する組込みアッセイにより力価測定した。FPRベクター力価はDNA組込みアッセイによる判定で24倍増加し、これはベクター産生中のTRAPおよびtbsの存在に左右された。
図19i.COX−2またはFPR ORFをコードするベクターゲノムの図。示されているとおり、マルチシストロンベクターゲノムプラスミド内にtbs×11M変異体をクローニングした。COX−2およびFPRを上流または下流のいずれかの位置に配置し、tbs×11M配列を両方の位置に挿入するか、いずれの位置にも挿入しなかった。図19ii.TRIP系を使用して改善されたマルチシストロンCOX2/FPRベクター力価。図19iにおけるマルチシストロンベクターを、HEK293T細胞内でTRIP系を使用して製造した。ベクターゲノムプラスミドをpEF1a−coTRAP[H6]と5:1の比で、EIAVベクターパッケージング成分と共にコトランスフェクトした。ベクター上清を回収し、等しい体積の粗回収上清を使用する組込みアッセイにより力価測定し、産生終了細胞ライセートを免疫ブロット上で抗COX−2抗体によりプローブした。COX−2/FPRマルチシストロンベクター力価は〜100倍増加し、FPR/COX−2マルチシストロンベクター力価はDNA組込みアッセイによる判定で〜50倍増加し、これはベクター産生中のTRAPおよびtbsの存在に左右された。産生終了細胞におけるCOX−2の免疫ブロットが示すところによると、ベクター力価はCOX−2レベルと逆相関し、TRAP/tbs配置は同じmRNA転写産物上の複数部位におけるトランスジーン抑制が可能であった。
図20i.TRIP系における使用のために修飾されたOXB−102ベクターゲノムの図。示されているとおり、マルチシストロンベクターゲノムプラスミド内にtbs×11M変異体をクローニングした。上流TH−CH1融合遺伝子のみを、tbs×11M配列を含むように修飾した。図20ii.TRIP系におけるベクター産生中の「問題の無い」トランスジーンの抑制。図20iにおけるベクターを、HEK293T細胞内でTRIP系を使用して製造した。ベクターゲノムプラスミドをpEF1a−coTRAP[H6]と5:1の比で、EIAVベクターパッケージング成分と共にコトランスフェクトした。ベクター上清を回収し、抗TH抗体を使用する免疫蛍光アッセイにより力価測定し(A)、産生終了細胞ライセートを免疫ブロット上で抗THおよび抗CH1抗体によりプローブした(B)。TRAP/tbs系による産生細胞におけるトランスジーンの抑制は明らかであったが、標的細胞におけるトランスジーン発現には影響を及ぼさなかった。このことは、検出可能なTRAP関連活性が標的細胞に導入されなかったこと、およびトランスジーンカセットの5’UTR内でコードされるtbsがTRIP産生細胞のもの以外の細胞における融合トランスジーンの頑強な発現を可能にしたことを示している。
図21i.HEK293T細胞においてTRAP抑制機能性に関して試験された種々の細菌種からのトリプトファンRNA結合ホモログの一覧。該研究において試験されたTRAPホモログの名称、系統およびNCBI参照番号(図11Aに関連した追加的情報)。図21ii.×11−および×12RAGNN反復含有tbs−GFPレポーターカセット上の抑制機能に関する種々のTRAPホモログおよびS72N変異体の試験。6Hisタグ付きTRAPホモログをpEF1a発現プラスミド内にクローニングし、pCMV−tbsx11−GFPまたはpCMV−tbsx12−GFPレポータープラスミドのいずれかと共に、1:5(pTRAP:pReporter)の比でHEK293T細胞内にコトランスフェクトした。「TRAP無し」対照には、pBluescriptを使用して、TRAP変異体を比較するためにGFP発現の「オン(on)」レベルを得た。トランスフェクションの2日後に細胞をフローサイトメトリーにより分析し、[A](MFI×%GFP)においてGFP発現スコアを得た。[B]は、各tbs−GFPレポーターごとの「TRAP無し」対照に対する抑制倍率として、これらのデータを示す。(図11Aに関する追加的情報)。図21iii.新規抑制系における種々のTRAPホモログの機能性の概要。HEK293T細胞において×11−または×12−RAGNN反復tbs−GFPレポーターカセットを使用した場合の種々のホモログおよびS72N変異体の抑制倍率の概要。該ホモログは、バシラス・サチリス(B.Subtilis)TRAPと比較して多様なアミノ配列変異(56〜78%)を表す(100%;アライメントはHis−タグを含む)。(図11Aに関連した追加的情報)。
図22i.安定細胞系を単離するために使用されたTRAP発現カセット。IRES−Bsr配列がTRAP[H6]とポリアデニル化シグナルとの間に挿入されるようにpEF1a−coTRAP[H6]を修飾した。プラスミドの線状化中に細菌配列を該DNA配列から除去し、バシラス・サチリス(B.Subtilis)TRAPをコードするこのカセットを低継代HEK293T細胞内に安定にトランスフェクトした。(図11Aに関連した追加的情報)。図22ii.GFPレポータープラスミドのトランスフェクションによるHEK293T.TRIP細胞クローンのスクリーニング。A.サブクローン細胞の二重重複プレートをpCMV−GFPまたはpCMV−tbsx11GFPのいずれかで三重重複でトランスフェクトし、2日後、細胞上でFACSを行った。各サブクローンに関する発現スコアを計算し(MFI×%GFP)、各サブクローンごとにpCMV−GFP(すなわち、tbs無し)に関する発現スコアをpCMV−tbs×11GFPに関する発現スコアで割り算することにより、抑制倍率を計算した(「抑制倍率」と表示されている棒グラフ、右側の軸)。(図11Bに関連した追加的情報)。B.クローン細胞ライセートにおけるTRAPの免疫ブロット。TRAP[H6]を発現する11個のサブクローンに関する結果が示されており、抗HIS6抗体により単量体TRAPが検出された。HEK293T細胞をpEF1a−coTRAP[H6]で一過性にトランスフェクトし、ライセートを免疫ブロットのための陽性対照として使用した。(図11Bに関連した追加的情報)。図22iii.TRAPを安定に発現する産生細胞を使用して改善されたEIAVベクター力価;EIAV−[tbs]GFPおよびEIAV−[tbs]huFVIIIベクターゲノムの50:50の混合物を産生中に使用する事例研究。A.混合ベクターゲノムでトランスフェクトされたベクター産生細胞に関するGFP発現スコア。50:50の比のベクターゲノムプラスミドEIAV−[tbs]GFPおよびEIAV−[tbs]huFVIIIと共にEIAV−ベクターパッケージング成分pGagPol、pVSVGで細胞をトランスフェクトした。したがって、産生細胞におけるhuFVIIIの発現は混合ベクター粒子の力価に負の影響を及ぼすであろう(EIAV−[tbs]huFVIIIはReQuinate−tbsと同じである;図17iを参照されたい)。ゲノムは標準体であるか、またはトランスジーンの上流にtbsを含有していた。示されている場合には、pEF1a−coTRAP[H6](+TRAP TXN)またはpBluescript(−)も加えた。産生細胞はHEK293T細胞または安定TRAP細胞系2F、10H、7Eおよび3Dであった。産生終了細胞に関してGFP発現スコアを計算した(MFI×%GFP)。B.HEK293T細胞に関する混合EIAV−[tbs]GFP/huFVIII粗ベクター回収物のベクター力価。[A]におけるベクター産生細胞からの粗ベクター上清をHEK293T細胞上で滴定し、FACSにより力価を測定した。hu第VIII因子の発現はEIAVベクタービリオン活性に影響を及ぼすことが知られており(図17iiを参照されたい)、したがって、トランスジーン発現が産生細胞において([A]におけるGFPによる測定で)抑制される場合にのみ、([B]におけるGFPによる測定で)ベクター力価は改善されうる。図22iv.安定または一過性TRIP系において産生された混合EIAV−[tbs]GFP|EIAV−[tbs]huFVIIIベクター粒子内へのVSVGの取り込みの改善。EIAV−[tbs]GFP|EIAV−[tbs]huFVIIIベクターゲノム混合実験における産生細胞からのベクター上清を遠心分離により濃縮し、抗VSVG抗体を使用する免疫ブロットにより分析した。ウェルごとに等しい体積の濃縮調製物をローディングした。図22v.HEK293T.TRIP安定細胞系を使用して改善された、治療用トランスジーンコード化レンチウイルスベクターの産生。Cell Factory(商標)のスケールでEIAV−tbsCOX2を製造するために、標準物(TRAP無し)および一過性トランスフェクト化TRAP(HEK293T細胞にけるもの)と共に、HEK293T.TRIP[3D]細胞系(バシラス・サチリス(B.Subtilis)TRAP[H6]を安定に発現する)を使用した。ベクターをDNA組込みアッセイにより力価測定し、TU/mLをEIAV−GFPベクター力価(100%と設定)と比較した。EIAV−COX2ベクターに関しては、HEK293T.TRIP[3D]細胞の使用は、HEK293T細胞における一過性トランスフェクト化TRAPと比較して、ベクター力価の更なる回収を可能にする。
図23i.種々の長さのtbs配列におけるRAGNN反復の「R」および「NN」位におけるヌクレオチドの選択の重要性の試験。R位がGである場合にNN配列がGG、AA、TT[UU]またはCCである11×RAGNN反復の試験は、NN位にはピリミジンが好ましいことを示した。機能性の一般的順位はT[U]>C>G>Aであった。最初の(R)における最も機能的なヌクレオチドを試験するために、×11、×8または×6反復を含むtbs内のxAGAA反復内に各ヌクレオチドG、A、T[U]またはCを挿入した。図23ii.RAGTT反復の「R」位におけるG|T優先性の試験、およびNNスペーサー内のTとのヌクレオチドペア形成の試験。高抑制性tbs(11×GAGTT)の場合において、TAGTT反復をこの×11 tbs配列と漸進的に交換した。TAGTT反復の増加(GAGTT反復の置換)は該tbsの抑制機能を多少は低減した。少なくとも1つがN=TであるGAGNN反復の試験は、最初のN(RAGNNの4位)が好ましくはT[U]またはピリミジンである場合に最大抑制が達成されることを示した。これは、RAGNNの重要な特徴が最初のNスペーサーにおけるピリミジンおよびR位におけるG>Tであることを示した。(GAGATは試験されなかった。なぜなら、このRAGNN配列の縦列反復はトランスジーンORFの上流に複数のATGコドンを与え、これがトランスジーンの発現を減衰させる可能性があるからである)。
図24i.TRAPによる抑制活性を試験するために、GFPトランスジーンの5’UTR内のtbsの位置およびコピー数を変化させた。CAP部位に対して種々の位置においてpCMV−GFP内にtbs×11M配列をクローニングした:0nt[1]、34nt[2]、54nt[3] 74nt[4]または114nt[5]。構築物[2]を構成する34ntのリーダー上に付加された付加的配列(有効な標準的なtbs×11Mレポーター)をCMVp 5’UTRから誘導した。また、構築物[6]においては、tbsとAUGとの間の配列が43ntへと増加された。最後に、tbsの2コピーが5’UTR内に配置され、それらの間に34ntスペーサーが存在する[7]。図24ii.TRAPによる抑制活性の効果に関する、GFPトランスジーンの5’UTR内のtbsの種々の配置の試験。図24iにおける7個のtbs変異体GFPレポーター構築物を、以下の3つの条件下でTRAPにより抑制されるそれらの能力に関して試験した:TRAP無し(HEK293T)、一過性コトランスフェクト化TRAP(HEK293T+TRAP)および最大TRAP抑制条件(HEK293T.TRIP[内因性TRAP]+コトランスフェクト化TRAP)。トランスフェクションの2日後、GFP発現を測定するために、培養をフローサイトメトリーにより分析し、GFP発現スコア(MFI×%GFP)を得た。
図25i.HIVに基づくGFPベクターの製造へのTRIP系の適用。[A]GFPをコードするHIV−1に基づくレンチウイルスベクターバックボーン内にtbs(×11M変異体)を挿入し、それを使用して、HEK293T細胞 +/− pEF1a−coTRAP[H6]における粗ベクター調製物を得た。[B]産生終了細胞をFACSにより分析してGFP発現スコア(MFI×%GFP;「発現スコア」と表示された棒グラフ)を得た。粗ベクター上清をHEK293T細胞上のDNA組換えアッセイにより力価測定した(「力価」と表示された棒グラフ)。GFP発現は、TRAPの存在下、HIV−tbsGFPベクターを放出する産生細胞において>100倍抑制されたが、ベクター力価は影響されなかった(なぜなら、GFPタンパク質はベクター産生に有害ではないからである)。CMV−CMVプロモーター、ψ−パッケージングシグナル、RRE−rev応答要素、wPRE−ウッドチャックHBV転写後要素、ppu−ポリプリントラクト、SIN−自己不活性化U3/LTR。図25ii.HIVに基づく治療用ベクター製造へのTRIP系の適用。[A]5T4−CARをコードするHIV−1に基づくレンチウイルスベクターバックボーン内にtbs(×11M変異体)を挿入し、それを使用して、HEK293T細胞 +/− pEF1a−coTRAP[H6]における粗ベクター調製物を得た。[B]FACS(HIV−GFP;左側の2本の棒グラフ)またはHEK293T細胞上のDNA組込みアッセイ(HIV−5T4.CAR;右側の2本の棒グラフ)により粗ベクター上清を力価測定した。TRIP系は、TRAP共発現の非存在下の産生と比較して、HIV−5T4.CARベクター力価の10倍の改善を可能にした。CMV−CMVプロモーター、ψ−パッケージングシグナル、RRE−rev応答要素、wPRE−ウッドチャックHBV転写後要素、ppu−ポリプリントラクト、SIN−自己不活性化U3/LTR。
標準的またはTRAP−tbs配置成分でトランスフェクト化されたHEK293T細胞におけるトランスジーンmRNAレベルの分析。pCMV−GFPまたはpCMV−tbsGFP +/− pEF1a−coTRAP[H6]のいずれかでHEK293T細胞をトランスフェクト化し、48時間後、GFPタンパク質([A];FACS)および細胞質内のGFP mRNAレベル([B];GFP特異的プライマー/FAM−プローブセットを使用する、抽出されDNアーゼ処理された細胞質RNAのqRT−PCR)に関して細胞を分析した。TRAP−tbs配置を使用した場合には、細胞においてGFPタンパク質の>100倍の抑制が生じるが、GFP mRNAレベルは明白には影響されないことを、これらのデータは示している。[B]Ctは、シグナルが初めて検出されたPCRサイクルを反映しており、Ctが低くなればなるほど、標的は豊富になる。したがって、存在量は各サイクルごとに〜1.5倍増加し、40は検出不能シグナルである。−RT条件は最小プラスミドDNA汚染を示す。
図27i.TRAP−tbsコードするHIV−1に基づくベクターは、構成的または組織特異的プロモーターにより駆動されるビシストロントランスジーンカセットを調節した。ホタルルシフェラーゼ(1位)およびGFP(2位)をコードするビシストロントランスジーンカセットが構成的CMVプロモーターにより転写され、TRAP−tbsにより翻訳レベルで示差的に調節される、4個の構築物を作製した。両方のトランスジーンORFまたは第1もしくは第2トランスジーンのみの上流にtbs配列を挿入し、あるいはいずれのtbs配列も存在させなかった。また、組織特異的プロモーター(光受容体細胞に限局されたVMD2プロモーター、または肝臓特異的であるmAlbATプロモーター)が利用される2個の構築物を作製した。完全長ベクターRNA転写産物からの低レベル発現が測定されうるように内部プロモーターが存在しない対照構築物を作製した。図27ii.TRAP−tbsをコードするHIV−1に基づくベクターからのトランスジーン発現の評価は、HEK293T産生細胞において構成的または組織特異的プロモーターにより駆動されるビシストロントランスジーンカセットを調節した。HIV−1ビシストロンベクターゲノム(図27i)、pGagPol、pRevおよびpVSVGで、ならびにpEF1a−coTRAP[H6](+TRAP)またはpBluescript(対照)で、HEK293T細胞をコトランスフェクトした。ゲノム対TRAPプラスミド比は5対1であった。pGL3−対照(ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ発現プラスミド)は全てのトランスフェクション混合物において全DNA塊に対して1:40の比で存在した。二重重複96ウェルプレート上でトランスフェクションを三重重複で行った。1個の96ウェルプレートを、トランスフェクションの2日後、フローサイトメトリーによる産生終了細胞の分析のために使用して、GFP発現スコア(MFI×%GFP)を得た。第2のプレートを使用して、トランスフェクションの2日後、二重ルシフェラーゼアッセイ(Promega)のための細胞ライセートを得た。図27iii.マルチシストロントランスジーンをコードするレトロウイルス(レンチウイルス)ベクターの製造に適用された場合のTRIP系の抑制能を要約する図。配列内リボソーム進入部位[IRES]を使用する2つのオープンリーディングフレーム(ORF)からのトランスジーン発現を抑制するためにTRIP系を使用するレンチウイルスベクター産生細胞の一例。該ベクターゲノム発現カセットは強力なプロモーター[Ext Pro]により駆動されて、豊富な量のベクターゲノムRNAを生成する。内部プロモーター[Int Pro]は、豊富なレベルのトランスジーンコード化/発現mRNAを与える強力/構成的プロモーター、または最小/トランスジーン非コード化/発現mRNAレベルを与える漏出性であってもなくてもよい組織特異的プロモーターでありうる。TRAP結合配列[tbs]は一方または両方のORF位置の上流に挿入されうる。したがって、産生細胞内のTRAPの発現は豊富な又は低レベルのトランスジーンmRNAからのタンパク質産生を抑制するであろう。また、該ベクターゲノムRNAはトランスジーンタンパク質を(典型的には低レベルで)Cap依存的に又は(IRESから;典型的には中等度レベルないし高レベルで)Cap非依存的に発現しうる。したがって、内部プロモーターが活性であるか否かに無関係に、トランスジーン発現はベクター産生中に可能でありうる。したがって、TRIP系は、組織特異的プロモーターを使用した場合より良好に、この発現を抑制しうる。Ext Pro−外部プロモーター;ψ−パッケージングシグナル;RRE−rev応答要素;cppt/CTS−中央ポリプリントラクト/中央ターミネーター配列;Int Pro−内部プロモーター;tbs−TRAP結合配列;ORF−オープンリーディングフレーム;IRES−配列内リボソーム進入部位;WPRE−ウッドチャック肝炎転写後調節要素;ppu−ポリプリントラクト;Δ;部分欠失U3(ベクターパッケージングおよびTRAP発現カセットは図に示されていないが、この例のTRIP系ベクター産生細胞内に存在するとみなされることに注意されたい)。
図28i.TRIPAAV系の開発。AAVに基づくベクターの製造のためのTRAP−tbs配置の適用。標準的なAAVベクター系はアデノウイルスE1発現細胞(例えば、HEK293に基づく細胞)におけるベクターの産生のために以下の3個のDNA成分を利用する:ゲノム(所望により、自己相補性[sc]AAVベクターゲノムを得るために1つのtrsが欠失しうる[Δtrs])、RepCapおよびヘルパー機能(この非限定的な例においては、ヘルパー機能はアデノウイルスE2A、E4orf6およびVAにより付与される)。TRIPAAV系はTRAP−tbs配置を利用する。AAVベクターゲノムを修飾して、トランスジーンカセットの5’UTR内にtbsを挿入し、TRAP発現プラスミドのコトランスフェクションおよび/またはTRAPを安定に発現する細胞系の使用によりベクター産生中にTRAP発現カセットを共導入する。TRAPは、所望により、His6タグ化されうる。ITR−逆末端反復;Pro−真核プロモーター要素;tbs−TRAP結合配列;pA−ポリアデニル化シグナル;[ITN]−随意的イントロン。この図は正確な縮尺で示されているわけではない。図28ii.TRIPAAV系を使用するHEK293T細胞におけるscAAVベクタートランスジーン発現の抑制。血清型2scAAV−GFPゲノムをコードするプラスミド(+/− tbs)を、TRAP−tbs媒介性トランスジーン抑制に対するそれらの影響を測定するための種々の成分と共にHEK293T細胞内にコトランスフェクトした。pscAAV−[tbs]GFP|pRepCap2|pHelper|pEF1a−coTRAP[H6]またはpBlueScriptの(−)質量比は、示されているとおりにpEF1a−coTRAP[H6]の投入量を変化させる場合以外は、10cm TCプレート当たり2|2|2|2μgであった。pCMV−tbsGFP対照プラスミド(隣接AAV2 ITRを欠く)を同じ条件に付して抑制レベルを比較した。pscAAV2−[tbs]GFPプラスミドからのGFP発現はpCMV−tbsGFPより大きかったが、これは恐らく、より安定なmRNA転写産物(3’UTR配列およびポリAシグナルは構築物間で異なっていた)によるものであろう。TRAPは、pRepCap2およびpHelperの存在下(すなわち、scAAVベクター産生中)、pscAAV2−tbsGFPからのGFP発現を300倍以上抑制することが可能であった。pEF1a−coTRAP[H6]対pscAAV2−tbsGFPの等しい質量比は、用いたトランスフェクション条件下、最大抑制を可能にした。pEF1a−coTRAP[H6]の質量投入を10倍減少させても、1−Logのオーダーの測定可能なGFP抑制が尚も可能であった。pscAAV−GFPでは抑制は観察されなかった。図28iii.標準的およびTRIPAAV系を使用するscAAV−[tbs]GFPベクター産生の比較。HEK293T細胞における等しい質量のゲノム、pRepCap2、pHelperおよびpEF1a−coTRAP[H6]またはpBluescriptの一過性コトランスフェクションにより、scAAV−(CMV)−GFPまたはscAAV−(CMV)−tbsGFPベクターを製造した。トランスフェクションの約53時間後、細胞を回収し、凍結−解凍サイクルに付してAAVビリオンを放出させた。Virabind(商標)キットを使用してAAVビリオンを精製して、それぞれの10cmプレートからのベクターを含有する100μLのPBSを得た。フローサイトメトリーによりHEK293T細胞(「HEK293T」と表示されている棒グラフ)またはHEPG2細胞(「HEPG2」と表示されている棒グラフ)上でベクター調製物を力価測定した。それぞれのベクター産生細胞に関するGFP発現スコアが共にプロットされている(「GFP発現スコア」と表示されている棒グラフ)。AAVベクター産生細胞におけるGFP発現は>300倍抑制され、TRIPAAV系のTRAP−tbs配置はAAVベクター産生の基本的な生物学には影響を及ぼさないことを、データは示しており、このことは、問題のある/細胞毒性トランスジーンがAAVベクター産生中に阻止されうることを示唆している。図28iv.バルナーゼを使用する、問題のある/細胞毒性トランスジーンをコードするAAVベクターのモデル化。A.ベクターゲノムscAAV2−CMV−tbsBarnaseは、細菌RNアーゼであるバルナーゼ(Barnase)をコードしており、そのORFはヒト細胞における発現のためにコドン最適化される。トランスジーンカセットの5’UTR内にtbsを挿入した。また、大腸菌(E.coli)におけるCMVプロモーターの漏出性(leaky)発現ゆえに、細菌におけるプラスミド増殖を補助するために、バルスター(Barstar)(バルナーゼの天然インヒビター)のための細菌発現カセットがプラスミドバックボーン内に存在する。バルスターORFは大腸菌(E.coli)における発現のためにコドン最適化される。B.GFP発現に対するバルナーゼの効果をモニターするために、ゲノム混合トランスフェクションにおいてpscAAV−CMV−GFPプラスミドを使用した。図28v.pscAAV−CMV−tbsBarnaseおよびpscAAV−CMV−GFPベクターゲノムプラスミドの50:50の混合物ならびにpRepCap2およびpHelperでのHEK293TまたはHEK293T.TRiP[3D]細胞のトランスフェクションによりゲノム混合を行った。ゲノムプラスミドはそれぞれ、1μg/10cm プレートで存在するか[i]、あるいはpscAAV−CMV−GFPのみが2μg/10cm プレートで存在し[ii]、追加的なTRAP発現プラスミドは存在しなかった。トランスフェクションの24時間後、これらの培養におけるGFP発現の写真を撮影した。
図29i.TRIPAdeno系の開発。アデノウイルスに基づくベクターの製造へのTRAP−tbs配置の適用。標準的アデノウイルスベクターは第1世代(E1/E3領域において欠失している)、第2世代(E1/E2/E3/E4において欠失している)およびヘルパー依存的「中身抜き(gutted)」ベクターに分類される。また、E1活性腫瘍溶解性ベクターは、E3領域内にコードされる毒性トランスジーンを含有しうる。例えば、毒性遺伝子の発現はアデノウイルス主要後期プロモーターまたは異種プロモーターおよびアデノウイルスコード化または異種ポリアデニル化シグナルによって支配されうる。これらのタイプのベクターゲノムTRIPAdeno系形態はトランスジーンコード化転写産物の5’UTR内にtbsを保持する。ベクター産生中に、TRAP発現プラスミドのコトランスフェクションおよび/またはTRAPを安定に発現する細胞系の使用により、TRAP発現カセットを共導入する。TRAPは、所望により、His6でタグ化されうる。ITR−逆末端反復;ψ−パッケージングシグナル;Pro−真核プロモーター要素;tbs−TRAP結合配列;pA−ポリアデニル化シグナル;[ITN]−随意的イントロン。この図は正確な縮尺で示されているわけではない。図29ii.TRAP−tbs配置を使用するHEK293T細胞における第1世代アデノウイルスベクターゲノム成分からのGFPトランスジーンの抑制。pEF1a−coTRAP[H6](+TRAP)またはpBluescript(−)と共に、pAd−CMV−GFPまたはpAd−CMV−tbsGFPシャトルプラスミド(アデノウイルスベクターゲノムの左側を含有する)でHEK293T細胞をトランスフェクトし[A]、48時間後、フローサイトメトリーを行った[B]。また、並行トランスフェクションはRAPAd(登録商標)−バックボーン(pacAd5 9.2−100;アデノウイルスベクターゲノムの右側を含有する)を含んでいて、RAPAd(登録商標)キットを使用する第1世代アデノウイルスベクターの産生を模擬した(ここで、HEK293T細胞において、該ベクターゲノムの組換えが生じる)。各条件下でGFP発現スコア(MFI×%GFP)を得た。tbsが該シャトルプラスミド内に存在した場合およびTRAPが発現された場合にのみ、GFPの100倍以上の抑制が観察された。ITR−逆末端反復;CMV−CMVプロモーター;ψ−パッケージングシグナル;tbs−TRAP結合配列;pA−ポリアデニル化シグナル。この図は正確な縮尺で示されているわけではない。図29iii.HEK293T.TRIP細胞におけるAdeno(アデノ)−tbsGFP(E1/E3欠失)ベクター増幅中のGFPトランスジーンの抑制。pRAPAd(登録商標)−バックボーンおよびpEF1a−coTRAP[H6]の存在下のpAd−CMV−GFPまたはpAd−CMV−tbsGFPシャトルのコトランスフェクションにより作製されたAdeno−CMV−GFPおよびAdeno−CMV−tbsGFPベクターのストック(図29iiを参照されたい)を使用して、HEK293T細胞またはHEK293T.TRIP[3D]細胞(TRAP[H6]を安定に発現する)のいずれかに0.01のMOIで導入した。[A]ベクター増幅中のGFP発現を評価するために、導入後の種々の時点で同型培養をフローサイトメトリーにより分析した。各条件ごとにGFP発現スコア(MFI×%GFP)を得た。[B]時間経過終了同型培養を凍結−解凍してベクター粒子を放出させ、細胞残渣を遠心分離により除去し、粗上清をHeLa細胞上で力価測定した。
実施例
プロトコル、データ分析および報告の説明
(tbs)GFPレポーターおよびTRAP発現プラスミドの一過性コトランスフェクション
Lipofectamine(リポフェクタミン)2000CDを使用して、TRAP発現プラスミドを伴うpCMV−GFPまたはpCMV−tbsGFP(またはそれらの変異体)でのHEK293T細胞の一過性コトランスフェクションにより、TRAP−tbs配置の試験を行った。DNAの量を10cmプレート(トランスフェクションの24時間前に3.5×106個の細胞が予め播かれたもの)当たり6.1μgの全DNAに正規化するために、スタッファーDNA(pBlueScript)を使用した。マルチウェルプレートを使用する場合には、これらのパラメータを組織培養容器面積に応じて縮小した。トランスフェクションを三重重複で行った。GFP−レポータープラスミド対TRAP発現プラスミドのモル比が各実験において示されている。トランスフェクションの〜18時間後に培地を交換し、トランスフェクションの48時間後に生細胞に関してGFP分析を行った。
典型的なレトロ(レンチ)ウイルスベクター産生プロトコル
3つのベクター成分を使用するHEK293T細胞の一過性トランスフェクションによるベクター産生を、Lipofectamine 2000CDを使用して行った。pDNAの比は10cmプレート(トランスフェクションの24時間前に3.5×106個の細胞が予め播かれたプレート)当たり4μgのベクターゲノム、2μgのGagPol、0.1μgのVSVGプラスミドであった。これらのパラメータを容器面積に応じて比例的に増減した。TRAPプラスミドまたはスタッファープラスミド(pBluescript)のトランスフェクションを、示されているモル比のベクターゲノムで行った。例えば、ベクターゲノムプラスミド対TRAPプラスミドのモル比が10対1の場合、質量比は4μg ベクターゲノム対0.28μg TRAPプラスミドであった。トランスフェクションの2日後、新鮮培地の交換の前に6時間にわたって、10mMの最終濃度の酪酸ナトリウムを加えた。20〜24時間後、ベクター含有回収上清を採取した。GFPコード化ベクターの産生の場合、トランスフェクションの48時間後、GFP分析を生細胞に関して行った。免疫ブロット法のためのベクター産生終了細胞サンプルを、典型的には、分画バッファー(130mM NaCl,20mM Tris−HCl[pH7.4],2mM EDTA,0.2% IEGPAL)を使用して調製し、遠心分離により核を取り出した。ベクター回収上清を0.45μmフィルターで濾過し、ベクター力価測定アッセイの前に−80℃で保存した。標的細胞の導入および分析(3日後のフローサイトメトリーによるもの(後記を参照されたい))により、GFPコード化ベクターを力価測定した。導入の10日後に宿主細胞DNAのqPCRにより(DNA組込みアッセイ;後記を参照されたい)、または導入の3日後にトランスジーン産物に対する免疫蛍光により、治療用ベクターを力価測定した。
トランスフェクト化細胞集団内の全体的なGFPタンパク質の評価
GFP陽性細胞の分析を主としてフローサイトメトリーにより行った。これは、該集団におけるGFP陽性細胞の比率および細胞当たりのGFP発現の度合(蛍光強度の中央値により測定される)の両方の高感度定量を可能にした。GFP陽性細胞数の百分率に蛍光強度の中央値(MFI;任意単位)を掛け算して「発現スコア」を得ることにより、トランスフェクト化集団における全体的なGFP発現の規模の報告を行ったことに注目すべきである。この尺度は、トランスフェクト化細胞集団内の全体的なGFPタンパク質発現レベルの、より良好な表現である、と本発明者らは考えている。それはトランスフェクト化集団内のGFP発現レベルの正規分布を本質的に前提としており、したがって「曲線下面積」を近似している。これを行ったのは、陽性比率またはMFIのいずれかのみに基づくGFP発現の報告が、分析されている集団のそれらの「記述」において制限されたからである(説明は図5を参照されたい)。したがって、「抑制倍率」がGFP翻訳に対するTRAPの影響の尺度であり、「スタッファー」対照の発現スコアを関連TRAP−発現プラスミド試験サンプルの発現スコアにより割り算することにより計算された。
SDS−PAGEおよび免疫ブロット法
標準的なSDS−PAGEおよび免疫ブロット法を、主として、ベクター回収後のベクター産生終了細胞に関して行った。ベクター粒子の免疫ブロット分析では、〜2mLの濾過ベクター上清を微量遠心管内で21,000rpmで4℃で1〜2時間、遠心分離した後、「ペレット」を20〜30μLのPBSに再懸濁させた。これらの濃縮ベクター調製物をPERTアッセイ(後記)により定量し、7×104 PERT予測TUのベクターをSDS−PAGEゲルのウェルごとにローディングした。約1×106個のベクター産生終了細胞を200μlの分画バッファー中で細胞溶解し、遠心分離により核を取り出した。タンパク質サンプルをBioRadアッセイにより定量し、典型的には5μgのタンパク質を、予め形成された12〜15ウェルの4〜20% アクリルアミドゲル上にローディングした。タンパク質を氷上で3時間にわたって45Vでニトロセルロース上にトランスファーした。ブロットを5% 乳PBS/tween―20中で4℃で一晩ブロッキングした。一次抗体およびHRP二次抗体(ブロッキングバッファー中で典型的には1:100希釈)でブロットをプローブした。免疫ブロットをECL検出およびそれに続くX線フィルム露出により分析した。
レトロウイルスベクター力価測定
・組込みアッセイ
回収された濾過ベクター上清を培地中で1:5希釈した後、0.5mLの体積を用いて、8μg/mL ポリブレンの存在下、12ウェルスケールで1×105個のHEK293T細胞に導入した。培養を10日間継代(2〜3日ごとに1:5分割)した後、1×106 細胞ペレットから宿主DNAを抽出した。EIAVパッケージングシグナル(ψ)に対して設定されたFAMプライマー/プローブを使用して定量PCRを行い、以下の因子を用いてベクター力価(TU/mL)を計算した:導入体積、ベクター希釈度、細胞当たりに検出されたψコピー数、および特徴づけられた「単一コピーψ」細胞系対照の細胞当たりに検出されたψコピー数。
・GFP−レポーターアッセイ
回収された濾過GFPコード化ベクター上清を培地内で1:10〜1:160の範囲で希釈した後、0.25mLの体積を用いて、24ウェルスケールで、8μg/mL ポリブレンの存在下、5×104個のHEK293T細胞または3.74×104個のD17細胞に導入した。導入の3日後、FACS VerseまたはFACS Caliburを製造業者により推奨された設定で用いて、培養をフローサイトメトリーにより分析した。10,000個の事象を捕捉し、SSC/FSC 2Dプロットおよび/またはToPro3染色に基づいてDEAD/LIVE混合対照を使用して死細胞をアウトゲート(out−gate)した。
・免疫蛍光(IF)アッセイ(生物学的力価測定)
回収された濾過OXB−102コード化ベクター上清を培地内で1:2〜1:8で希釈した後、0.5mLの体積を用いて、12ウェルスケールで、8μg/mL ポリブレンの存在下、1×105個のHEK293T細胞に導入した。培養を3日間インキュベートした後、固定され透過処理された細胞上のIFに付した。チロシンヒドロキシラーゼ(TH)に対する一次抗体およびAlexa−488二次抗体を共に、透過処理バッファー中で1:500希釈で使用した。
・LacZ−レポーターアッセイ
LacZ−ベクター混合実験のために、回収された濾過ベクター上清を10−5の係数まで10倍系列希釈した後、10−2、10−3、10−4および10−5希釈ベクターの0.5mLの体積を用いて、導入の24時間前に7.5×104個の細胞が予め播かれた12ウェルプレート上のD17細胞に導入した。導入の3日後に、固定およびX−gal添加ならびにそれに続く青色コロニー計数により培養を分析して、力価(LFU TU/mL)を得た。
・PERTアッセイ
PERTアッセイは他の文献に記載されている(Arnold BAら,1998,Biotechniques 25:98−106)。PERT予測力価(PERT−TU/mL)は、PERTアッセイにおいてqRT−PCR標準曲線として使用されたGFPコード化EIAVベクター調製物の生物学的力価に関連したRT活性に基づく任意物理的粒子力価である。
ベクターゲノム混合実験による産生細胞におけるトランスジーン産物の発現によるレトロ/レンチウイルスベクター産生に対する影響の評価
細胞からのレトロウイルスベクター産生に対するNOIトランスジーン産物の負の影響の度合を評価するために、図2に概説されているとおり、単純なベクターゲノム混合実験を行った。前記の「レトロ(レンチ)ウイルスベクター産生プロトコル」は、図1に記載されているベクターパッケージング成分と共に、レポーター遺伝子ベクターゲノムプラスミド(例えば、lacZまたはGFPトランスジーン)と、NOIを発現するベクターゲノムプラスミドとの混合物を使用して行われうる。ベクター産生細胞、例えばHEK293Tにおけるレポータータンパク質lacZまたはGFPの発現は、産生されるベクター粒子の力価または特異的活性に悪影響を及ぼさないことが、一般に受け入れられている。したがって、これらのレポーターをコードするベクターは高い力価で製造されうる。したがって、そのようなレポーター遺伝子を有するベクターゲノムをコードするプラスミドと、ベクター力価に影響を及ぼすトランスジーンをコードするベクターゲノムのプラスミドとを混合することは、標的細胞における読取り(read−out)としてレポーター遺伝子活性を用いたベクターの力価測定によるその影響の或る程度の測定を可能にする。これは、「問題のある」トランスジーンタンパク質の影響からのレポーター遺伝子ベクター力価に対する「バイスタンダー」効果が存在するからである。なぜなら、全てのベクター粒子は同じ細胞において生じ、ビリオン構築のために同じ細胞装置/経路を利用するからである。トランスフェクション時に用いられるレポーター対NOIベクターゲノムプラスミドの比は典型的には1:1〜1:5である。レトロウイルスベクター粒子はビリオン当たり2コピーのゲノムRNAをパッケージングするため、問題の無い2つのタンパク質(例えば、LacZおよびGFP)が産生細胞において2つの異なるベクターゲノムプラスミドから発現された場合であっても、レポーター特異的ベクター力価に対する「希釈」効果が存在することに注目されたい。例えば、lacZおよびGFPベクターゲノムプラスミドの1:1の比を用いる場合、確率の法則により、ビリオンの25%は2コピーのlacZベクターRNAを含有することになり、25%は2コピーのGFPベクターRNAを含有することになり、残りの50%のビリオンは各ベクターRNAの1つを含有することになる。後者のシナリオにおいては、それらの2つのゲノムRNA分子の1つだけがDNAへと逆転写されることになり、したがって、50:50の確率で、いずれかのレポーターベクターゲノムが標的細胞内に組込まれて、該レポーターの発現をもたらす。総合すると、これは、ベクターゲノムの、2つのプラスミドが、1:1の比で混合され、特異的レポーターベクター力価が、単一ベクターゲノム調製物の産生と比べて2倍減少することを意味している。より大きな混合比(例えば、1:5)を用いた場合には、希釈効果はより大きくなる。この理由により、2つのレポーターベクターゲノムプラスミドの混合は、評価中のNOIトランスジーンを発現するベクターゲノムプラスミドとのレポーターベクターゲノムプラスミドのいずれかの混合と共に、希釈効果に関する「混合」対照として用いられる。
例えば、図3iおよび3iiは、標的細胞におけるX−gal染色に基づくベクター力価読取りによる、lacZレポーターベクターゲノムプラスミドを使用した種々のベクターゲノムプラスミド混合実験からのデータを示す。RetinoStat(登録商標)、StarGen(商標)、UshStat(登録商標)およびReQuinate(登録商標)のもの並びにCOX−2および/またはFPRを発現するベクターを含む、試験されたベクターゲノムプラスミドの大多数は、使用される試験ベクタープラスミドに対するlacZベクタープラスミドの比に応じて、7〜100倍、ベクター力価に影響を及ぼす。これらのデータは、ベクター産生細胞におけるトランスジーンタンパク質発現が、レポーター遺伝子ベクターと比べて臨床的に関連のあるベクターで観察される低いベクター力価に有意に寄与することを明らかに示している。
レトロウイルスベクター産生に関する本発明の説明:ベクター産生細胞内翻訳抑制(Translation Repression In vector Production cell)[TRIP]系
図4は、レトロ/レンチウイルスベクター産生に適用された場合のベクター産生細胞内翻訳抑制[TRIP]系の簡略図を示す。他のウイルスベクター系(例えば、アデノウイルスおよびAAVベクターに基づくベクター)におけるトランスジーン翻訳を抑制するのに必要な成分を示すTRIP系は、ウイルス特異的パッケージング成分を含むように示されうる。全てのそのようなTRIP系は、必要なベクター成分に加えて、以下の2つの成分を含有しなければならない:TRAPの存在下でPOIの産生が抑制されるようにNOIトランスジーンの5’UTR内に挿入されるTRAP結合部位(tbs)およびTRAP発現カセット。ベクターゲノム分子内の複数のNOI ORFはTRAPにより調節されうる。すなわち、ベクターゲノムはマルチシストロンである(例えば、IRESを含有する)ことが可能であり、2以上のORFが、その翻訳開始コドンの上流(例えば、IRESと下流ORFとの間)に挿入されたTRAP結合部位を有しうる。
中心的な実験の説明
GFPプラスミドおよびGFP発現レンチウイルスベクターゲノムプラスミドの使用によるTRAP/tbs配置の初期試験
実施例1.TRAP発現プラスミドでの一過性コトランスフェクションにおけるGFP発現調節の試験
図6に記載されているとおり、GFPレポーター構築物pCMV−tbsGFPを構築した。5’UTRが(5’から3’へと)41ntのリーダー、55ntのtbsおよびGFP ATGコドンの直上流にコザックコンセンサス配列をコードする9ntの領域をコードするように、TRAP結合配列(tbs)を該構築物内に挿入した。これらのGFPレポーター構築物は2つのCMVプロモーター間の領域の欠失により実験用EIAVベクターゲノムpONY8.4RC−GFPから誘導された(図6を参照されたい)。
蛍光遺伝子発現レポーターの詳細に関して、より詳細には、GFPレポーター遺伝子は、遺伝子調節の比較的早い評価がフローサイトメトリーにより実施可能となるように、初期評価実験のために選択された。GFPがベクター産生に毒性または有害であることは知られていないが、TRAP/tbsによる遺伝子発現調節に関する高感度モデルとして使用された。更に、既存ベクターゲノムpONY8.4RC−GFPが操作のために利用可能であった。図6に示されているとおり、このベクターは3’LTR内の野生型EIAV U3、および内部トランスジーンカセットの上流のDsRED−express ORFを利用する。したがって、このベクターゲノムプラスミドはベクター産生細胞におけるGFPおよびDsRed−expressの両方の発現が可能である。
全てのこれらのレポーター構築物は、強力なCMVプロモーターからの転写から誘導されるmRNAのポリアデニル化を可能にする野生型EIAV LTRを含有していた。したがって、HEK293T細胞におけるpCMV−tbsGFPおよび対照プラスミドpCMV−GFPの両方からのGFPの発現は頑強であった(図8および9を参照されたい)。
該TRAP発現構築物は、ヒト細胞における高発現のためのバシラス・サチリス(Bacillus subtilis)からのコドン/配列最適化TRAP ORFを使用して作製した。より詳細には、図7は、一過性トランスフェクション実験において初期に評価されたTRAP発現プラスミドのタイプを示す。TRAPタンパク質は細菌由来であるため、公に入手可能なヌクレオチド配列は、mtrB/TrpBP「転写減衰タンパク質遺伝子ファミリー」オペロン内でコードされる細菌配列のものである。しかし、哺乳類細胞における発現を潜在的に増強するために、そしてスプライス−ドナー/アクセプター部位のようないずれかの準最適配列を排除するために、TRAPヌクレオチド配列をホモサピエンス(homo sapiens)における発現に関してコドン/配列最適化した。該合成配列は、pCI−coTRAPを得るためのpCI−NEO内へのクローニングのために設計された。SapI部位は、消化および再環化がTRAPタンパク質のC末端へのHIS6−タグの融合を可能にするように、配置された。これはpCI−coTRAP[H6]を最終的に与えた。非コドン最適化TRAP発現プラスミドを使用した過去の報告も、TRAP機能への悪影響を伴うことなくC末端HIS6−タグ付きTRAPを使用している。商業的に入手可能なTRAP抗体は現在存在しないため、HIS6−タグ付きTRAPを使用して実験中のTRAPの発現のレベルを決定した。
実験の第1セットはタグ無しTRAPおよびC末端HIS6−タグ付きTRAPの両方を使用した。TRAP +/− HIS6−タグプラスミドおよびtbs−GFPレポーター構築物でのコトランスフェクション実験は、両形態のTRAPがHEK293T細胞におけるpCMV−tbsGFPからのGFP発現を抑制しうることを示した(図8および9)。TRAPプラスミドおよびレポーターが1:1の比でコトランスフェクトされた場合、TRAPおよびTRAP[H6]はGFP発現をそれぞれ3倍および27倍抑制した(図9B)。この用量の10分の1(すなわち、10:1の分子比(レポーター:TRAP))でTRAPプラスミドをコトランスフェクトした場合でさえも、幾らかの最小抑制が観察された。TRAPのいずれの形態もpCMV−GFPのGFP発現に影響を及ぼさなかったが、このことは、tbsがTRAP媒介性抑制に必須であったことを示している。
実施例2.TRAP発現プラスミド発現の最適化
pCI−Neoに基づくプラスミドからの発現は他のCMV駆動性DNAカセットの影響下にあるか、またはそれと競合しうる。この理由により、pCMV−tbsGFPで1/10の用量でコトランスフェクトされたpCI−coTRAP[H6]はこのタイプの競合の影響下にあった可能性があると仮定した。なぜなら、DNA負荷を正規化するためのスタッファーDNAとしてpCI−Neoをも使用したからである(この実験後、全ての他の実験のための標準的なスタッファーDNAとしてpBlueScriptを使用した)。したがって、EF1a駆動性構築物pEF1a−coTRAP[H6]を前記のとおりに作製し、種々の比のpCMV−tbsGFPとのコトランスフェクションにおいて試験した。図9Dは、GFPレポーター構築物と共にpCI−coTRAP[H6]またはpEF1a−coTRAP[H6]のいずれかでコトランスフェクトされた細胞におけるGFPの抑制を要約している。これらのデータは、pEF1a−coTRAP[H6]が1/10の用量のtbs−GFPレポーターDNAと共にコトランスフェクト可能であり、pCI−coTRAP[H6]とは対照的に、1:1の比で観察されたGFP抑制レベルを維持しうることを示している(この場合には、MFIデータを比較した)。したがって、EF1a−プロモーターは、TRAP発現の駆動において、より好ましい可能性がある。
pCI−coTRAPおよびpCI−coTRAP[H6]をクローニングする方法により、これらの構築物の3’UTRは同一ではなかった(図7)。したがって、それらの2つの構築物の間の機能性における観察された相違(図9)に関する考えられうる理由は、いずれかのアミノ酸相違によるものではなくTRAP mRNA/タンパク質レベルによるものであった可能性がある。TRAP上のC末端HIS6タグが機能性に重要であるかどうかを評価するために、pEF1a−coTRAP[H6]から該配列を除去することによりpEF1a−coTRAPを構築した(図7)。これらの構築物はHIS6タグ配列以外は同一である。pEF1a−coTRAP[H6]およびpEF1a−coTRAPを、種々の比のtbs−GFPレポータープラスミドとのHEK293T細胞のコトランスフェクションにより、直接的に比較した(図10)。
これらのデータは、HIS6タグ付きおよびタグ無しの両方のTRAPタンパク質が、tbs含有GFPレポータープラスミドと共に1:1または1:0.1のモル比で供給された場合に、ほとんど検出不能なレベルまでGFP発現を抑制しうることを示している。該タグ無しTRAP形態は、発現の全測定において、TRAP[H6]より2倍低い、抑制における有効性を示した。したがって、HIS6タグはタグ無しTRAPと比較して何らかの最低限の利点をもたらしうる。これは、タンパク質の安定性および/または溶解度/フォールディングおよび/または機能性(例えば、RNA結合)の増強によるものかもしれない。
実施例3.種々のTRAPホモログの評価
バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)のTRAPに加えて、2つの他のTRAPホモログが、pCMV−tbsGFPおよびTRAP発現プラスミドでコトランスフェクトされた細胞からのGFP発現の抑制を媒介することが示された(図11A)。デスルホトマクルム・ヒドロサーマレ(Desulfotomaculum hydrothermale)およびアミノモナス・パウシボランス(Aminomonas paucivorans)からのTRAP遺伝子をコドン/配列最適化し、pEF1aに基づく発現プラスミド内にクローニングした。これらの変異体は共にC末端HIS6タグを含んでいた。これらのTRAP変異体はバシラス・サチリス(Bacillus subtilis)TRAPのものに対してそれぞれ75%および55%のアミノ酸相同性を有していた。3つ全ての変異体は2 LogのオーダーでHEK293T細胞におけるGFP発現抑制が可能であった。このことは、わずか55%の配列相同性を有するTRAPホモログがTRIP系において機能しうることを示している。3つ全てのホモログは、RNAおよびトリプトファン結合部位に関与する配列において保存されていた(非表示データ)。
実施例3b.種々のTRAPホモログおよび変異体の評価
バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)のほかの細菌株からのTRAPのホモログが該抑制系において機能しうるかどうかを試験するために、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)TRAPに対して種々の配列同一性を有する5つのTRAP変異体をNCBIデータベースから特定した(図21i)。それらの変異体は細菌系統にわたる広範な異なるTRAP変異体を代表するものであった。これらのTRAP変異体の遺伝子配列をヒト細胞における高発現のためにコドン最適化し、C末端HIS6を含有させ(TRAP媒介性抑制を増強することが既に示されているバシラス・サチリス(Bacillus subtilis)TRAP[H6]に類似している;図10)、pEF1a−プロモータープラスミド内にクローニングした(図7)。ビー・ハロジュランス(B.Halodurans)TRAP変異体は天然12マーを形成し(Bayfield,O.W.ら(2012)PLoS ONE 7:e44309.doi:10.1371/journal.pone.0044309)、このことは、潜在的にtbs内の12個のRAGNN反復がこのTRAPに結合しうることを示している。天然11マーTRAP形態の人工12マー形態が該タンパク質のC末端における修飾により操作されうることも示されている。バシラス・ステアロサーモフィルス(Bacillus Stearothermophilus)TRAPのS72N修飾はX線結晶学による判定で12マータンパク質を与えることが示されている(Bayfield,O.W.ら(2012)PLoS ONE 7:e44309.doi:10.1371/journal.pone.0044309)。尤も、これらの変異体の11マーまたは12マーが細胞環境において形成されるかどうかは知られていない。バシラス・ステアロサーモフィルス(Bacillus Stearothermophilus)TRAP−S72N変異体も構築し、その他のTRAPホモログと共に、TRAP−抑制系における潜在的機能に関して試験した。11×RAGNNまたは12×RAGNN反復tbsを含有する2つのGFPレポータープラスミドを使用した。12マーTRAPはpCMV−tbsx12GFPレポーターからのトランスジーン発現を、pCMV−tbsx11GFPレポーター上の11マーより大きな度合で抑制しうると仮定した。
種々のTRAPホモログおよびバシラス・ステアロサーモフィルス(B.Stearothermophilus)TRAP−S72N変異体の比較からのデータを図21iiA〜Bに示す。該ホモログおよびバシラス・ステアロサーモフィルス(B.Stearothermophilus)TRAP−S72N変異体の全てはGFPの少なくとも10倍の抑制が可能であった。これらのTRAPホモログ間の比較的低いアミノ酸配列相同性(バシラス・サチリス(B.subtilis)との比較で56〜78%;図21iiiを参照されたい)を考慮すると、これは、多様な細菌種からのTRAPタンパク質が、哺乳類細胞におけるtbs RNA配列との相互作用に要求される類似した四次構造を形成することを示唆している。全てのホモログが、RNAとの接触およびL−トリプトファン結合に重要であることが知られているアミノ酸残基を含有していた。しかし、L−トリプトファン結合突然変異体は、バシラス・サチリス(B.subtilis)TRAP T30Vのように(L−トリプトファンの非存在下でさえも)tbs−RNAに構成的に結合し(Yakhninら(2000)J.Biol.Chem.275:4519−4524)、同様にTRAP媒介性抑制配置において機能すると予想される。
実施例4.安定HEK293T−TRAP細胞系におけるトランスジーン抑制の評価
安定TRAP発現細胞系の場合のトランスジーン発現のTRAP媒介性抑制を評価するために、構築物pEF1a−coTRAP[H6]−iBsrを作製し、これを使用して、ブラスチシジン選択によりHEK293T細胞に安定にトランスフェクトした(図11B)。〜100個の安定クローンから、4個のサブクローニングされたHEK293T−TRAP[H6]細胞系2F、10H、7Eおよび3Dを単離し、トランスフェクト化pCMV−tbsGFPからのGFP発現を抑制するそれらの能力に関して試験した。TRAP[H6]の内因性レベルが、一過性トランスフェクト化TRAP発現プラスミドで観察されたものと同じレベルのGFP抑制を達成しうるかどうかを評価するために、培養をスタッファープラスミドまたはpEF1a−coTRAP[H6]プラスミドのいずれかでコトランスフェクトした。安定TRAP発現細胞系は、TRAP発現プラスミドで一過性にトランスフェクトされたHEK293T細胞と比較して、内因性TRAPからの類似レベルのトランスジーン抑制(2Logのオーダー)が可能であることを、これらのデータは示している。しかし、追加的なTRAP発現プラスミドが一過性にトランスフェクトされた場合に、HEK293T−TRAP[H6]クローンにおいて、より一層大きなレベルのトランスジーン抑制が観察された(4Logのオーダー)。この理由は、おそらく、HEK293T−TRAP[H6]クローン細胞における既存のTRAPプールによるものであろう。更に詳細に説明すると、一過性トランスフェクト化シナリオにおいては、pCMV−tbsGFPおよびpEF1a−coTRAP[H6]のコトランスフェクションの後の早い時点で、pCMV−tbsGFP由来mRNAのTRAP媒介性抑制が生じうる前に不十分なTRAP[H6]タンパク質が蓄積して、少量であるが測定可能な量のGFP発現をもたらすであろう。この少量のGFP発現はHEK293T−TRAP[H6]細胞においては観察されない。なぜなら、TRAP[H6]の既存プールはデノボ(de novo)tbsGFP mRNAに対して直接作用しうるからである。この効果は、追加的なTRAP発現プラスミドと協同して、安定TRAP細胞系におけるGFP発現における遥かに大きな「抑制倍率」を可能にする。これは、安定細胞系におけるTRAP[H6]発現の最大量が、HEK293T細胞の一過性トランスフェクションにおいて観察されるものほどは高くないことを示唆している(これはTRAP[H6]に対する免疫ブロットにより確認されている;非表示データ)。しかし、トランスジーン発現を2Log以上抑制する安定TRAP[H6]細胞系の能力は、ベクター力価を改善するのに十分である可能性がある。
実施例4b.TRAP[H6]を安定に発現するHEK293T細胞系の開発およびベクターの産生におけるそれらの使用
この実施例は、実施例4に示されているものに基づくものであり、安定TRAP[H6]細胞系をどのようにして開発したかに関する更なる情報を提供する。HEK293T細胞をEF1a−coTRAP[H6]−iBsr発現カセット(図22i)で安定にトランスフェクトし、ブラスチシジン選択によりクローンを単離した。これらの安定発現TRAP[H6](バシラス・サチリス(B.subtilis))クローンを2回サブクローニングし、ついでpCMV−GFP(無抑制)またはpCMV−tbsGFPでのトランスフェクションにより抑制機能に関してスクリーニングした。発現スコア(図22iiA;MFI×%GFP)を得ることにより、細胞集団における全GFP発現を推定した。4つのクローン(2F、10H、7Eおよび3D)が2−Logまでの抑制活性および低い絶対的GFP発現スコアを抑制条件下(すなわち、TRAPの存在下)で有すると確認された。安定クローンにおけるGFPトランスジーンの抑制レベルは、細胞において検出されたTRAP[H6]のレベルと合理的に良く相関した(図22iiB)。これらのデータは、TRAP発現がHEK293T細胞に対して毒性ではないこと、および「HEK293T.TRIP」細胞(TRAPを安定に発現するもの;「HEK293T.TRAP」としても公知である)が、TRAPプラスミドの一過性トランスフェクションにおいて既に観察されているものと同様にトランスジーン発現を抑制しうることを示している。
本発明者らは、もう1つの例において、TRIPがReQuinate(hu第VIII因子を発現するEIAVベクター)のベクター力価を標準的なベクター産生系と比較して改善しうることを示す(図17)。hu第VIII因子はEIAVベクタービリオン内へのVSVGの取り込みを妨げる。安定TRIP系(すなわち、組込みTRAPカセット)は、一過性TRIP系(すなわち、ベクター成分との「pTRAP」プラスミドのコトランスフェクション)と比較して、トランスジーン抑制のタイミングにおける改善をもたらしうると理論化される。これは、安定細胞におけるTRAPタンパク質の既存プールは、トランスジーンを抑制するために直ちに利用可能となり、一方、一過性系においては、トランスジーンmRNAを抑制するために十分なレベルのTRAPタンパク質が存在するまで「pTRAP」が発現されることが必要だからである。したがって、この早い時点で、トランスジーンの幾らかの「漏出(leaky)」発現が生じて、おそらく、活性なベクター産生に負の影響を及ぼしうる。これを試験するために、ベクター混合実験を行った。この実験においては、ベクター成分 +/− pEF1a−coTRAP[H6]での細胞のトランスフェクション中に、EIAV−[tbs]GFPおよびEIAV−[tbs]FVIII(ReQuinate−tbsとしても公知である)ゲノムを50:50で混合した。したがって、全般的なEIAVベクタービリオン活性に対するhuFVIII発現のいずれかの負の影響がEIAV−GFPベクター力価に関して測定可能であろう。HEK293T細胞ならびに安定HEK293T.TRIP細胞系2F、10H、7Eおよび3Dを試験した。産生終了細胞をフローサイトメトリーによりGFP発現から分析し(図22iiiA)、産生した粗ベクターを新鮮なHEK293T細胞上で力価測定し、同様にフローサイトメトリーにより分析した(図22iiiB)。
図22iiiAにおけるデータは、TRAPを発現する安定細胞が一過性TRIP系の場合より大きなトランスジーン抑制を可能にすることを示している。HEK293T.TRIP−10Hにおいては、GFP発現は1000倍低減した(図22iiiA;EIAV−GFPおよびEIAV−tbsGFPゲノムの比較)。産生細胞におけるGFP(そしてその延長線上で考えて、huFVIII)抑制の度合は、産生したベクターの力価と相関した(図22iiiB)。総合すると、安定HEK293T.TRIP細胞系は一過性TRIP系より〜3倍大きな力価を示した。安定HEK293T.TRIP細胞系(+ TRAP TXN)における追加的TRAP発現はトランスジーン発現の更なる抑制を可能にしたが、これはこの特異的トランスジーンコード化ベクターの力価における更なる改善には転換しなかった。したがって、TRAP(最大TRAPタンパク質自体ではない)の既存プールが本実施例における一過性系(すなわち、huFVIIIを発現するベクター)と比べた場合のベクター力価における改善の原因となっている可能性がある。より問題のある/毒性のトランスジーンは、ベクター産生中に、既存および高レベルの両方のTRAPから利益を受けることが可能である。
EIAV−[tbs]GFP|EIAV−[tbs]huFVIII産生細胞から回収されたベクター粒子含有上清を免疫ブロット法によりVSVG含量に関して分析した(図22iv)。これらのデータは、tbsが該ベクターゲノム上で利用され、ベクター産生中にTRAPが(トランス − HEK293T + pEF1a−coTRAP[H6]で、または安定TRAP発現により)供給された場合にのみ、VSVGがベクター粒子内に取り込まれうることを示している。
実施例5.GFPコード化レンチウイルスベクターの産生に関するTRIP系の試験
この実験の目的は、ベクターゲノム内のtbsの存在の潜在的影響を評価することであった。更に拡張すると、TRAPはベクターゲノムRNA分子内(およびトランスジーンmRNA上)のtbsに結合可能であり、したがって、デノボ(de novo)ベクタービリオン内にパッケージングされうるため、逆転写の過程が悪影響を受けると合理的に予想された。TRAP−tbs相互作用は特に高いアフィニティ(nMの範囲)で生じ、RT段階中に逆転写酵素がこの相互作用を破壊しうるかどうかは知られていなかった。産生細胞におけるベクタートランスジーンの抑制にTRAP/tbs配置を適用するために、EIAVベクターゲノムpONY8.4RC−tbsGFPをpCMV−tbsGFPから構築した。(図6を参照されたい)。ゲノムpONY8.4RC−tbsGFPまたはpONY8.4RC−GFP、パッケージング成分(GagPolおよびVSVG)を使用して、ベクターをHEK293T細胞において産生させ、pCI−coTRAP[H6]の存在下または非存在下でコトランスフェクトした(この実験はpEF1a−coTRAP[H6]の構築の前に行った)。産生終了細胞をGFP発現に関してフローサイトメトリーにより分析し(図12AおよびB)、ベクター上清を使用してD17細胞に導入した(図12C)。
tbsの非存在下のベクターゲノムとは対照的に、該TRAP/tbs配置は、tbs含有ベクターゲノムの内部トランスジーンカセットからのGFPを、pCMV−tbsGFPに類似したレベルまで抑制することが可能であった(図12A)。DsRed−Xの発現はTRAPによっては影響されなかったが、このことは、完全長ベクターゲノムRNAが産生され、翻訳可能であったことを示している(非表示データ)。TRAPによるベクターゲノムプラスミドからのGFPの抑制倍率は50〜100倍であった(図12B)。該抑制倍率は、pCMV−tbsGFPで観察されたものより低かったが、これは、該ベクターゲノムから観察されたGFPの、より低い非抑制レベルによるものであった可能性があり、これは、おそらく、外部CMVp駆動性ベクターゲノムRNAとの競合の結果であったでろう。これらのデータはまた、ベクター産生中の酪酸ナトリウム(CMVプロモーターの公知活性化因子)の添加がTRIP系に影響を及ぼさないようであったことを示している(この実験においては、pCMV−tbsGFPトランスフェクションにも酪酸ナトリウムを加えた)。
図12Cは、tbs含有GFPベクターが標準的なGFPベクターに非常に類似した力価で産生されうることを示している。すなわち、TRAPタンパク質の存在下で産生されたpONY8.4RC−tbsGFPは1.4×106 TU/mlを示し、一方、TRAPタンパク質の非存在下で産生されたpONY8.4RC−GFPは1.8×106 TU/mlを示した。これらのデータは、トランスジーンが翻訳的にサイレンシングされたレトロウイルスベクターの製造においてTRIP系が使用されうることを初めて示すものである。
TRAP媒介性抑制のためのtbs配列要件の基本的特徴づけ
実施例6.tbsと翻訳開始コドンとの間の短い間隔要件の試験
TRAP結合部位(tbs)において重要な配列の特徴づけにおける最初の実験は、tbsとAUG翻訳開始コドンとの間の短い間隔(スペーシング)距離が翻訳抑制に重要であるかどうかという疑問を検討した。pCMV−tbsGFPおよびpONY8.4RC−tbsGFP内のtbsの配置においては、tbsはGFP AUG翻訳開始コドンから9ヌクレオチド離れている。Tet−ON/OFFのような他の人工遺伝子調節系においては、間隔パラメータは機能性に寄与することが示されている。短距離の間隔の重要性を評価するために、これらのスペーサーヌクレオチドの1〜9個が漸進的に欠失した一連の変異体を構築した。また、2つの他の変異体においては、間隔を10および11ヌクレオチドまで増加させた。最後に、インビボの転写減衰メカニズムのためのTRAP−tbs結合に重要であることが示されているバシラス・サチリス(Bacillus subtilis)trpEDCFBAオペロンから得られた5’近位ステムループ(SL)配列(McGraw AP,M.A.,Major F,Bevilacqua PC,Babitzke P.(2009)RNA 15(1):55−66)に、標準的なtbs−9nt−AUG配置を付加した。該SL突然変異体を含めたのは、TRAP媒介性抑制が増強されうるかどうかを試験するためであった。これらの変異体をベクターゲノムpONY8.4RC−tbsGFP内にクローニングし、翻訳抑制における微妙な相違がより容易に定量されうるように、限られた量のpEF1a−coTRAP[H6](1:0.05の比)でコトランスフェクトした。
この実験の結果を図13Bに示す。スペーサー欠失変異体またはスペーサー増加変異体はいずれも、9ntスペーサーと比べて変化したTRAP媒介性抑制を全く示さなかった。「0」変異体は、その他の変異体+11〜+1と比べてGFP発現における約2倍の低減を示したが、これはTRAPの存在下または非存在下で生じた。このことは、この変異体mRNAから翻訳されうるGFPの全般的能力がそれほど効率的でなかったことを示している(おそらく、最適コザックコンセンサス配列の欠失によるものであろう)。興味深いことに、天然trpオペロンからの5’ステムループの存在は、TRAPと協同して翻訳を抑制するtbsの機能性を完全に除去した。この予想外の結果が示唆するところによると、インビボでの機能性を可能にするSL−tbs配置のその他の特徴がどのようなものであっても、それらは、この人工配置から欠けているか、または適切な配列間隔/コンテキストでは存在せず、あるいはバシラス・サチリス(Bacillus subtilis)におけるSL−tbsへのTRAP結合は、転写減衰においては、翻訳減衰とは異なるメカニズムに従っており、後者はSLに非依存的である。全てのこれらのデータは、この人工系におけるtbsへのTRAP結合により導かれる翻訳抑制がtbsと翻訳開始コドンとの間の短い距離によっては改変されないことを示唆している。
実施例6b.TRAP媒介性抑制に対するトランスジーンカセットの5’UTR内のtbsの位置の影響の試験
TRAP媒介性抑制活性に関するトランスジーンの5’UTR内のtbsの位置の重要性を更に特徴づけるために、pCMV−tbsGFPの一連の5’UTR変異体を構築した。この場合、Cap部位およびAUG開始コドンからのtbsの相対距離を変化させた(図24i)。また、tbsの2コピーがそれらの2つのtbs配列の間の34ntの介在配列と共に5’UTR内に挿入されたもう1つの構築物を作製した。これを構築したのは、TRAP−tbs媒介性抑制が単一コピーのtbs配置と比べて増強されうるかどうかを試験するためであった。
図24iにおける7個のtbs変異体GFPレポーター構築物を、以下の3つの条件下、TRAPにより抑制されるそれらの能力に関して試験した:TRAP無し(HEK293T)、pEF1a−coTRAP[H6](HEK293T + TRAP)での一過性コトランスフェクション、および最大TRAP抑制条件(HEK293T.TRIP[内因性TRAP] + コトランスフェクト化TRAP)。該5’UTR tbs変異体の全てはTRAP[H6]によって10〜100倍抑制可能であった。上流UTRの長さをゼロまで減少させる(すなわち、該UTR全体が単一tbsのみから構成された)ことはTRAP媒介性抑制に影響を及ぼさないようであった。構築物#[1]はTRAPによる〜2−LogのGFP抑制が可能であった。尤も、GFPの非抑制レベルはその他の構築物より低かった。
tbsとAUG開始コドンとの間の間隔を9から43ntへと増加させることは、tbsによる10倍のTRAP媒介性抑制を尚も可能にした。二重tbsコード化5’UTR変異体(図24ii、構築物#[7])は、単一tbs含有変異体と比較して、TRAP媒介性抑制を改善しなかった。
これらのデータは、[1]単一tbsが5’UTR内のいずれかの部位に挿入されて、トランスジーンの或る程度のTRAP媒介性抑制を可能にしうること、[2]最大TRAP媒介性抑制を促進するために、tbsをAUG開始コドンの近くに挿入することが好ましいこと、および[3]tbsの上流の5’UTR配列の長さが、抑制の大きさに影響を及ぼすことなく、ゼロまで低減されうることを示している。
実施例7.翻訳のTRAP媒介性抑制に必要なtbs内の[RAGNN]反復の最小数の特定
TRAP媒介性抑制を可能にするのに必要な[RAGNN]反復の最小数を特定するために、次の実験を行った。文献における1つの報告は、TRAP結合を可能にするには僅か5個の反復で十分でありうることを示すためにインビトロ結合を用いた(Babitzke P,Y.J.,Campanelli D.(1996)Journal of Bacteriology 178(17):5159−5163)。1〜7個の反復が漸進的に欠失した一連のtbs欠失変異体を作製した(図14iA)。全ての変異体において、最適コザック配列は維持された。また、tbsにおいて、第10反復と第11反復との間でTG>AAの変化を施した。これを行ったのは、この領域が非正準(non−canonical)スプライスドナー部位を含有しうること(これは後に間違いであることが判明した)(非表示データ)を他の研究が示唆した後であった。該変異体tbs GFPレポーター構築物をpEF1a−coTRAP[H6](前者は後者に対して10:1のモル過剰であった)またはpBlueScriptと共にHEK293T細胞内にコトランスフェクトし、GFP発現をフローサイトメトリーにより測定した(図14iB)。tbs×11M変異体はGFP発現の1000倍の抑制を可能にしたことから、tbsに対するTG>AAの修飾はTRAP媒介性抑制における検出可能な効果を及ぼさなかった。変異体tbs×10M、tbs×9およびtbs×8もGFP発現における1000倍の抑制を可能にし、一方、tbs×7は500倍の抑制を可能にした(図14iCおよびD)。tbs×6を与えるもう1つのRAGNN反復の欠失は、この変異体がGFP発現を30倍抑制することが可能であったため、機能性における更なる低減をもたらした。変異体tbs×5およびtbs×4は無tbs配列と比べて無視しうるほどの抑制を示した。TRAP/tbs配置による最も高いレベルの抑制は少なくとも7個(好ましくは少なくとも8個)のRAGNN反復を要し、一方、6個の反復はトランスジーン発現における幾らかの有用なノックダウンを可能にしうることを、これらのデータは明らかに示している。
実施例8.tbs内で許容される[RAGNNN]反復の数の特定
一般的な一致した見解によると、RAG反復間にN2スペーサーを含有するtbsへのTRAP結合が最適であるが、インビトロのtbs−TRAP結合研究は、tbsのRAG反復間の3ヌクレオチドのヌクレオチドスペーサーも許容されうることを示唆している(Babitzke P,Y.J.,Campanelli D.(1996)Journal of Bacteriology 178(17):5159−5163)。実際、インビボで見出される天然tbs配列は、2ヌクレオチドより長いスペーサーを有することがたまにある。尤も、これは、インビボでのTRAP/tbs相互作用が、他のタンパク質相互作用および/または選択圧が働きうる特異的細胞条件下で進化してきたことによる可能性がある。生物学的機能性に合致するためには、天然TRAP/tbs相互作用は最大効率であることを要しない可能性がある。しかし、人工TRIP系においては、TRAP/tbs相互作用は最大限度に効率的であることが望ましい。11×RAGNN tbs配列の機能性がRAGNNN反復での系列的置換に対してどの程度許容性であるのかを試験するために、一連の変異体tbs配列を設計し(図14iiA)、COX2トランスジーンを発現するEIAVベクターゲノム内にクローニングした(図18iを参照されたい)。これらは、図14iAにおいて最初に試験されたtbs×11M配列に基づくものであった。RAGNNN反復が中心位置から外側へとtbs×11M内のRAGNN反復に取って代わって、1×、3×、5×、7×、そして最終的に11×RAGNNN反復を含有するtbs配列を与えた(N3×11M tbs配列に関しては、最も3’側の遠位反復スペーサーはスペーサーとみなされないため、10個のNNNスペーサーのみが有効に存在することに注意されたい)。これらのベクターゲノムプラスミドをEIAVベクターパッケージング成分 +/ pEF1a−coTRAP[H6]と共にHEK293T細胞内に一過性にコトランスフェクトし、ベクター上清を回収した(これらのCOX2ベクターのベクター力価は後記に示されている)。産生終了細胞ライセートをCOX2に対する免疫ブロットにより分析して、スタッファープラスミド(非抑制)と比較した場合の該細胞におけるトランスジーン抑制を測定した(図14iiB)。
11×反復tbs内の3個までのRAGNNN反復はベクター産生細胞におけるトランスジーン発現の幾らかの検出可能な抑制を可能にすることを該データは示している。これは、TRIP系の非存在下のベクター力価に対するトランスジーンタンパク質の影響の大きさによっては、幾つかの場合には、ベクター力価を改善するのに十分であるかもしれない。tbs内の単一RAGNNN反復はN2×11反復tbsと同程度に機能的であるようである。
実施例8b.tbs内に許容される[RAGNNN]反復の数の特定
TRAP媒介性抑制を可能にするコンセンサス反復RAGN2−3におけるRAG反復間のスペーサーを含むNの数に関して、更なる研究を行った。図14iBはトランスフェクションの約2日後の産生終了細胞におけるCOX2発現分析を示す。N3N2 tbs変異体のコンテキストにおけるトランスジーン(COX2)発現がトランスフェクション後の早い時点で(後の時点と比較して)異なっていたかどうかを試験するために、トランスフェクションの8時間後の産生細胞ライセートをCOX2に対する免疫ブロット法により分析した(図14iii)。ベクター産生中の早い時点および遅い時点の両方においてCOX2発現の類似パターンがN3N2 tbs変異体から生じることを、これらのデータは示している。すなわち、与えられたtbs変異体に関するTRAP−tbs媒介性抑制はベクター産生の経過中に類似しているようである。
N3N2 tbs変異体含有ベクターゲノムの、異なるレベルのCOX2抑制の、ベクター力価に対する影響を測定するために、粗上清回収物をDNA組込みアッセイに付した。図14ivはこれらのデータを示し、明らかなCOX2抑制が産生細胞において認められたN3N2 tbs変異体、すなわち、「N3N2×11[3]」、「N3N2×11[1]」および「N2×11[0]」に関しては、ベクター力価が増加したことを示している。これは、RAGNNから構成される×11 tbs内の3個までの反復がRAGNNN反復で置換可能であり、ベクター力価の改善をもたらす幾らかのTRAP媒介性抑制活性を維持しうることを証明している。しかし、ベクター産生の増加以外の理由(すなわち、ベクター投与中にトランスジーンに対する免疫応答を招きうるベクター産物に関連したトランスジーンタンパク質の著しい減少)により、RAGNN ×8〜11 tbs配置が尚も優先されることに注目すべきである。
RAGNN×7〜8 tbs変異体は最大に近いTRAP媒介性抑制活性を保有することが既に示された(図14i)。より短いこれらのtbs変異体内のRAGNNNによる単一RAGNN反復置換の影響を試験するために、第2の一連のN3N2 tbs変異体を構築し、COX2ベクターゲノム内に挿入した(図14vA)。これらのベクターゲノムプラスミドをEIAVベクターパッケージング成分 +/ pEF1a−coTRAP[H6]と共にHEK293T細胞内に一過性にコトランスフェクトし、トランスフェクションの8時間後、細胞ライセートをCOX2に対する免疫ブロットにより分析して、スタッファープラスミド(非抑制)と比較した場合の該細胞におけるトランスジーン抑制を測定した(図14vB)。これらのデータは、1個のRAGNNN反復および7個のRAGNN反復を含有する8反復tbsがTRAP媒介性抑制活性を保有することを示している。1以上のRAGNNN反復を含有する8個未満の反復tbsの配列はより低いTRAP媒介性抑制活性を有しうる。
実施例8c.RAGNN反復コンセンサスの5つの位置における好ましいヌクレオチドの特徴づけ
tbsのRAGNNコンセンサス反復を更に特徴づけるために、全てのGAGxx反復から構成される×11反復tbsのコンテキストにおける各ヌクレオチド(G|A|T[U]|C)を用いて、NNスペーサーを試験した。これらのtbs変異体をpCMV−[tbs]GFP内にクローニングして×11M tbsに取って代え、HEK293T細胞 +/− pEF1a−coTRAP[H6]の一過性コトランスフェクションにより試験した。48時間後、細胞をフローサイトメトリーにより分析し、GFP発現スコアを計算した(図23i)。これはNN位におけるピリミジンの優先性を示した。機能性の一般的順位はT[U]>C>G/Aであった。最初の(R)位における最も機能的なヌクレオチドを試験するために、各ヌクレオチドG、A、T[U]またはCを、×11、×8または×6反復を含むtbs内のxAGAA反復内に挿入した。これは、最弱のスペーサー反復(NN=AA)のコンテキストにおいては、Gが最初の位置において最も機能的であることを示した。[TAGAA]×11の最初の位置におけるT[U]は最低限度に機能的であるに過ぎず、これらのxAGAA反復のいずれにおいてもAおよびCは機能的でなかった。したがって、縦列xAGAA反復含有tbsのコンテキストにおいては、xはTではなく、Gでなければならない。
次に、RAGNN反復コンセンサスの第1位におけるGまたはTの相対的優先性を試験した。高度に機能的なtbs(11×GAGTT)のコンテキストにおいて、GAGTT反復をTAGTT反復で漸進的に置換した。TAGTT反復を増加させる(GAGTT反復を置換する)ことはtbsの抑制機能を僅かに低減したに過ぎなかった。図23iの結果を考慮すると、これは、RAGNN反復コンセンサスにおいては、可変性ヌクレオチドのうち、機能性のために最も重要な位置がNNスペーサーであり、それに次いでRであることを示唆している。該データは、NN位におけるピリミジンが最も好ましいことを示した。
RAGNN反復コンセンサスのこの特徴を更に特徴づけるために、もう1つの一連のtbs変異体を構築した。この場合、GAGxxのコンテキストにおける少なくとも1つはN=Tであった(図23ii)。これは、最初のN(RAGNNの第4位)が好ましくはピリミジンであり、より一層好ましくはT[U]である場合に最大抑制が達成されることを示した。このRAGNN配列の縦列反復はトランスジーンORFの上流に複数のATGコドンを与え、これは下流トランスジーンの発現を低減する可能性があるため、GAGATは試験しなかったことに注意されたい。
これらの知見の多くは、インビトロまたはインビボで試験されたTRAP−tbs相互作用に関する公開されている報告に合致している[細菌](Babitzke P,Y.J.,Campanelli D.(1996)Journal of Bacteriology 178(17):5159−5163)。尤も、幾つかの相違が見られる。例えば、本研究においては、RAGCC反復はTRAP抑制の非常に有効なメディエーターであることが判明したが、他の研究は、このスペーサーが二次構造ゆえに活性を低減することを示唆している(Xirasagarら,J.Biol.Chem.,Vol 273(42):27146−27153,Oct 1998)。このことは、TRAPの存在下で特異的tbsにより可能となる抑制の大きさを試験するためには、RAGNN反復を含む特異的tbs配列が、ベクター産生のために意図される細胞(限定的なものではないが、典型的にはHEK293に基づく細胞)において、TRAP−tbs抑制系内で実験的に試験される必要があることを示している。総合すると、本研究におけるデータは、RAGNN反復コンセンサスの好ましいヌクレオチドが以下のとおりであることを示している:
・NNスペーサー位置の少なくとも1つにおけるピリミジン;
・NNスペーサー位置の最初の位置におけるピリミジン;
・NNスペーサー位置の両方におけるピリミジン;
・好ましくはR位におけるG。
実施例9.翻訳がIRESに依存的であるトランスジーンカセットにおけるTRAP/tbs配置の試験
マルチシストロンベクターは、患者における標的細胞へ2以上の遺伝子を送達する際の有用な手段である。したがって、TRIP系(IRESに依存的なものを含む)を使用してベクターゲノム内の複数のトランスジーンを抑制することができれば好都合であろう。遠位ORFが配列内リボソーム進入部位(IRES)に依存的であるトランスジーン発現カセットにTRIP系が適用されうるかどうかを試験するために、図15Aに記載されているビシストロンベクターを構築した。簡潔に説明すると、血管内皮増殖因子(VEGF)およびEMCV IRES要素をコードする配列をpCMV−tbsGFP内に挿入して、pCMV−Vi−tbsx11GFP内にコードされるビシストロン遺伝子カセットVEGF−IRES−tbsGFPを得た。4個のみの[RAGNN]反復を含有する又は反復を含有しない2つの更なる対照構築物を作製した。これらはTRAPにより抑制可能であるとは予想されなかった。該構築物をスタッファープラスミドまたはpEF1a−coTRAP[H6]のいずれかと共にHEK293T細胞内にコトランスフェクトし、GFP発現をフローサイトメトリーにより評価した。これらのデータを図15Bに示す。ビシストロンカセットにおける遠位からのGFP発現のレベルは単一シストロン構築物のものより約7倍低かったが、これはビシストロン遺伝子配置には非典型的である。pCMV−Vi−tbsx11GFPトランスフェクト化細胞におけるGFP発現のレベルは更に2倍低かったが、このことは、該tbs配列の配置がIRES依存的翻訳効率を若干低減したことを示している。pCMV−Vitbsx11G + pEF1a−coTRAP[H6]でトランスフェクトされた細胞におけるGFP発現のレベルはスタッファープラスミドの場合より17倍低かったが、このことは、該TRAP/tbs配置が配列内リボソーム進入のコンテキストにおいて機能しうることを示している。更に、この機能性はtbsの存在およびTRAPタンパク質の存在に依存的であった。なぜなら、該対照および4×反復構築物はTRAPに対して有意には応答しなかったからである。これらのデータは、IRES依存的翻訳の制御による遺伝子発現の調節におけるTRAP/tbsの新規使用を初めて示すものである(図19iおよび19iiにおけるデータは、TRIP系を使用してマルチシストロンmRNA内の複数のORFが同時に抑制されうることを更に実証している)。
TRAP/tbs配置によるWPRE含有SINベクターからの産生細胞におけるGFPトランスジーンの抑制
実施例10.TRIP系を使用するWPREを含有するSIN−レンチウイルスベクターの製造
ウッドチャック転写後要素(WPRE)をも含有するSIN−ベクターの製造(産生)にTRIP系を適用した。TRAP/tbs配置を使用するトランスジーン翻訳抑制を例示するために使用した初期ベクターゲノム(pONY8.4RC−tbsGFP)はSINベクターではなく、転写後調節要素(PRE)(現在のレトロウイルスベクターおよび他のウイルスベクター系に典型的な特徴である)を含有しなかった。WPREは、ポリアデニル化部位におけるリードスルーを低減することにより機能することが示されている(Higashimoto T,U.F.,Perumbeti A,Jiang G,Zarzuela A,Chang LJ,Kohn DB,Malik P.(2007)Gene Therapy 14(17):1298−1304)。しかし、初期報告は、WPREが他の様態でRNAレベルで作用しうることを示唆した。WPREを含有するSIN−ベクターゲノムからのトランスジーン発現を抑制するためにTRAP/tbs配置が使用されうるかどうかを試験するために、ベクターゲノムpONY8.9RCTG(+WPRE)を構築し、HEK293T細胞におけるGFP発現において試験した。図16は、SIN−ベクターゲノム上のWPREの含有がTRIP系に悪影響を及ぼさないことを示した。pONY8.4RC−tbsGFPおよびpONY8.9RCTG(+WPRE)からのGFP抑制は同等であった。
治療用トランスジーンを発現するベクターの産生力価を増加させるためのTRIP系の使用
実施例11.TRIP系を使用するhu第VIII因子発現ベクターの製造
血友病Aの治療のために開発されたReQuinate(登録商標)はHEK293T細胞において製造することが困難である。なぜなら、トランスジーンhu第VIII因子はベクタービリオン内へのVSVGエンベロープの取り込みを著しく抑制することが示されているからである。HEK293T細胞において活性でない組織特異的プロモーターがhu第VIII因子の発現の駆動のために使用されない限り、ReQuinate(登録商標)のベクター力価は低い(混合実験データに関しては、図3iを参照されたい)(Radcliffe PA,S.C.,Wilkes FJ,Custard EJ,Beard GL,Kingsman SM,Mitrophanous KA(2008)Gene Therapy 15(4):289−297)。HEK293T産生細胞におけるhu第VIII因子発現を抑制することによりベクター力価が増加しうるかどうかを試験するために、ReQuinate(登録商標)にTRIP系を適用した。ベクターゲノムReQuniate−tbsおよびReQuniate−conを構築した(図17i)。この場合、元のReQuinate(登録商標)ゲノム内の5’UTRをtbs−GFPレポーターベクター(図6に示されている)からの同じ5’UTRで置換した。ReQuniate−conベクターゲノムは、tbsがスクランブル化(scrambled)されている以外はReQuinate−tbsと同じ5’UTRを含有していた。tbs陰性mRNAからのhu第VIII因子の翻訳が、tbs含有mRNAと比較して配列の長さおよびヌクレオチド含量の点で類似した5’UTRのコンテキストとなるように、これを行った。ベクターゲノムプラスミドDNAをpEF1a−coTRAP[H6]に対して5倍モル過剰で使用して、これらのベクターをHEK293T細胞において作製した。濾過されたベクター上清をDNA組込みアッセイに付して、力価を決定した。また、ベクター上清を〜100倍濃縮し、PERTアッセイに付して粒子数を定量し、免疫ブロット法により同数のベクター粒子をVSVG含量に関して分析した。これらの分析からのデータを図17iiに示す。TRIP系は、TRAP[H6]およびReQuinate(登録商標)の存在下で産生されたReQuinate−tbsと比較して、hu第VIII因子発現ベクターゲノムのDNA組込み力価を30倍改善した。ベクター粒子内へのVSVGの取り込みの度合は、該TRAP/tbs配置を使用して著しく増加し、これはベクター力価と密接に相関した。興味深いことに、ReQuniate−conで作製されたベクター粒子内へのVSVGの取り込みは若干増加し、+/− pEF1a−coTRAP[H6]において、ベクター力価における僅かな付随的増加が観察された。これは、この構築物からのhu第VIII因子の準最適発現によるものであった可能性がある。
実施例12.TRIP系を使用するCOX2および/またはFRP発現ベクターの製造
緑内障を治療するためのレトロウイルスベクターの開発に関連して、幾つかのトランスジーンが、眼圧を低減するために評価されている。それらには、PTGFR遺伝子によりコードされるプロスタグランジンF2αの受容体であるプロスタグランジンF受容体(FPR)、およびプロスタグランジン生合成における律速酵素であるシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)が含まれる。これらの遺伝子の両方の同時送達(別々の単一遺伝子ベクターによるもの、またはビシストロン遺伝子ベクターによるもの)は緑内障患者に有益であると期待される。しかし、これらのトランスジーンをコードするベクターの力価はマーカー遺伝子ベクター力価と比べて著しく低いことが判明している。この影響の少なくとも一部はトランスジーン産物によるものであることが示されている。なぜなら、ベクター産生中のlacZ−ベクターゲノムとのこれらのベクターゲノムの混合はlacZ−ベクター力価の減少を引き起こすからである(図3iiを参照されたい)。
TRIP系が緑内障ベクター力価を増加させうるかどうかを試験するために、tbs×11m変異体配列(図14iAを参照されたい)を、図18iに示されている単一トランスジーンベクターゲノム内にクローニングした。ウイルスベクター調製物をHEK293Tにおいて作製し、同時にまた、pEF1a−coTRAP[H6]またはスタッファープラスミドをベクターゲノム:TRAPプラスミドの1:0.2のモル比でコトランスフェクトした。ベクター調製物を標準的なDNA組込みアッセイにより力価測定し(図18iiA)、細胞ライセートをCOX−2ベクター産生細胞およびCOX−2ベクター導入細胞の両方から採取して、標的細胞におけるtbs含有転写単位からのCOX−2の発現を評価した。これらの分析からのデータをそれぞれ図18iiBおよび18iiCに示す。tbs−COX−2ベクターの力価は未修飾COX−2ベクターのものより100倍高く(図18iiA)、産生細胞におけるCOX−2のレベルは力価と逆相関した(図18iiB)。COX−2発現は、TRIP系を使用して産生されたベクターが導入された標的細胞内のみで頑強に検出可能であったが、このことは、tbs配列が標的細胞におけるトランスジーンの発現に影響を及ぼさなかったことを示している(図18iiC)。TRIP系を使用して産生されたFPR−ベクターの力価は標準的ベクターと比べて24倍増加した(図18iii)。この場合も、これは該系におけるTRAPおよびtbsの両方に依存的であった。
COX−2およびFPRの両方を発現するマルチシストロンベクターを試験するために、tbs×11M配列を、図19iに示されているベクターゲノムプラスミド内クローニングした。COX−2およびFRPを+/− tbs位でコードするビシストロンベクターゲノムプラスミドを作製した。ウイルスベクター調製物をHEK293Tにおいて標準条件下で産生させ、同時にまた、pEF1a−coTRAP[H6]またはスタッファープラスミドをベクターゲノム:TRAPプラスミドの1:0.2のモル比でコトランスフェクトした。ベクター調製物を標準的なDNA組込みアッセイにより力価測定し、細胞ライセートをベクター産生細胞から採取した(図19ii)。FPRに対する商業的に入手可能な抗体が存在しないため、COX−2に対する抗体のみを使用して、細胞ライセートの免疫ブロット法を行った。これらのデータは、TRIP系を使用してマルチシストロンmRNAが2以上のORF位置において同時に抑制されうることを示している。この抑制の結果はベクター力価における100倍の増加を可能にした(pKCMV−COX2−i−FPR[+スタッファー]とpKCMV−tbsCOX2−i−tbsFPR[+pEF1a−coTRAP[H6]]との比較)。
実施例13.TRIP系を使用するOXB−102ベクターの製造
OXB−102は、パーキンソン病の治療のために開発されているEIAVベクターであり、それは、ドーパミン生合成に関与する3つのタンパク質、すなわち、チロシンヒドロキシラーゼ、GTP−シクロヒドロラーゼおよび芳香族L−アミノ酸デカルボキシラーゼを発現する(WO 2013/061076に記載されている)。既に記載されているとおり、これらの酵素はベクター力価に悪影響を及ぼさないことが公知であるが、ベクターの処理/濃度の観点、およびより低い免疫原性のベクター調製物を患者に投与するという観点からは、ベクター産生細胞におけるトランスジーン発現を抑制することが有益でありうる。したがって、tbs×11M配列を、図20iに示されているマルチシストロンOXB−102ベクターゲノムプラスミドの5’近位ORF内にクローニングした。得られたベクターにおける融合遺伝子チロシンヒドロキシラーゼ:GTP−シクロヒドロラーゼ1(TH−CH1)の翻訳はベクター産生細胞のみにおいてTRAPにより抑制されると予測された。ウイルスベクター調製物をHEK293Tにおいて産生させ、同時にまた、pEF1a−coTRAP[H6]またはスタッファープラスミドをベクターゲノム:TRAPプラスミドの1:0.2のモル比でコトランスフェクトした。ベクター調製物を標準的なDNA組込みアッセイにより力価測定し、細胞ライセートをベクター産生細胞から採取した。図20iiAおよび20iiBは、THおよびCH1の両方に対する抗体を使用する免疫ブロットによる判断で、TH−CH1融合タンパク質がベクター産生細胞において抑制されるが(図20iiB)、抗TH抗体を使用する免疫染色による判断で、導入細胞において容易に検出されることを実際に示している。
実施例14.TRIP系を使用するHIV−1に基づくレンチウイルスベクターの製造
本発明者らは、HIVに基づくレンチウイルスベクターの製造(産生)におけるTRIP系の有用性を実証しようと努力した。tbs×11M配列を、CMVプロモーターの制御下でGFPをコードする標準的なHIV−1ベクターゲノム内にクローニングした(図25iA)。10cmプレート(トランスフェクションの24時間前に3.5×106 細胞/プレートで播かれたもの)当たり25μLのリポフェクタミン(Lipofectamine)2000CDを使用して、4.5μgのベクターゲノム、1.5μgのgagpol、1.1μgのrev、0.7μgのvsvg、および0.56μgのpEF1a−coTRAP[H6](+TRAP)または0.56μgのpBlueScript(−)の質量比のパッケージング成分プラスミドでのHEK293T細胞の一過性コトランスフェクションにより、GFPコード化ベクターを産生させた。培養を一晩インキュベートした後、酪酸ナトリウムを10mMの最終濃度まで5時間加えた。ついで培地を交換し、培養をトランスフェクションの2日後までインキュベートし、その時点で粗ベクター上清を回収し、濾過(0.2μm)し、−80℃で保存した。産生終了細胞をフローサイトメトリーに分析し、GFP発現スコアを計算した。ベクター上清をHEK293T細胞のトランスダクションにより力価測定し、ついでフローサイトメトリーによる分析を行った。図25iiBは産生終了細胞のGFP発現スコア(MFI×%GFP)および得られたベクター力価の両方を示す。記載されているtbs配列をHIV−1ベクターゲノムが含有する場合およびTRAPが共導入された場合にのみ、GFP発現は2−Log抑制された。しかし、ベクター力価はこれらの修飾によっては影響されなかった。これらのデータは、原則として、TRIPLenti(レンチ)系を使用して、いずれかのトランスジーンが、HIV−1に基づくベクター産生細胞において抑制されうることを示している。
治療用遺伝子をコードするHIV−1に基づくベクターの力価が、TRIPLenti系を使用して改善されうるかどうかを評価するために、tbs×11M tbsを、5T4−CARをコードするHIV−1ベクターゲノムのトランスジーンカセット(図25iiA)の5’UTR内に挿入した。この治療用ベクターはT細胞の遺伝的修飾のためのものであり、抗原5T4を発現する腫瘍細胞を該T細胞が標的とし殺すことを可能にする。得られたベクターHIV−tbs−h5T4.CARを、(GFPベクターに関する)前記と同じ条件下で、すなわち、ベクター成分 +/− pEF1a−coTRAP[H6]でのHEK293T細胞のコトランスフェクションにより産生させた。ベクター上清をHEK293T細胞におけるDNA組込みアッセイにより力価測定した。図25iiBはこの実験の結果を示す。TRAP[H6]を産生細胞内で共発現させた場合、対照(pBlueScript)と比較して、HIV−tbs−h5T4.CARの力価は30倍大きかった。これらのデータは、産生細胞における5T4.CARの発現が活性なベクターの産生に有害であること、および、TRIP系がトランスジーン発現の抑制によりこの問題を克服することを示している。
実施例15.TRIP−tbs配置は細胞質におけるトランスジーンmRNAレベルに影響を及ぼさない
TRAP−tbs配置は極めて強力なトランスジーン抑制を可能し、専ら翻訳レベルで作用すると考えられている。tbsをコードするmRNAの定常状態プールがTRAPの存在下で影響されるかどうか(例えば、考えられうる不安定化効果)(これは、トランスジーン発現の抑制にも寄与しうるであろう)を試験するために、トランスジーン細胞質RNAの相対レベルを、pCMV−[tbs]GFP +/− pEF1a−coTRAP[H6]でトランスフェクトされたHEK293T細胞において測定した。細胞をトランスフェクトし、トランスフェクションの2日後にGFP発現をフローサイトメトリーにより測定した(図26A)、同型培養を分画し、核を除去し、全細胞質RNAを、QIAGEN RNAeasyキットを使用して精製した。RNAをDNAアーゼ処理した後、GFP標的配列に対するFAM−プローブ/プライマーセットを使用してqRT−PCRを行った(図26B)。これまでのデータと合致して、TRAP−tbs配置はHEK293T細胞におけるGFP発現を2−Log抑制することが可能であった。しかし、細胞質内のGFP mRNAの検出レベルは全ての条件にわたって僅か〜2倍変動したに過ぎなかった(全てのCt値は1.5サイクル未満で変動した)。これらのデータは、TRAP媒介性トランスジーン抑制の最も考えられうるメカニズムが翻訳におけるものであることを証明している。
実施例16.構成的プロモーターをコードするHIV−1に基づくベクターからのベクター産生細胞におけるTRAP/tbs媒介性ビシストロントランスジーン抑制と、組織特異的プロモーターをコードするHIV−1に基づくベクターからの該抑制との比較
転写レベルにおけるトランスジーン抑制と比較してTRAP媒介性抑制(翻訳レベルのもの)を試験するために、組織特異的プロモーター(VMD2;光受容体細胞発現(Esumi,N.ら(2004)J.Biol.Chem.279:19064−73),mAlbAT;肝細胞発現(Kramer,M.G.ら(2003)Mol.Ther.7:375−385))または構成的CMVプロモーターによりトランスジーン転写が駆動されるHIV−1に基づくベクターゲノムを構築した。該トランスジーンカセットはビシストロンであり、第1 ORFにおいてはホタル(ホチヌス・ピラリス(Photinus pyralis))ルシフェラーゼを、そして第2 ORFにおいてはGFPをコードしており、それらの2つのORFの間にEMCV IRES要素が挿入されている。単一tbs(×11M)配列を両方のレポーター遺伝子の上流に挿入した。第1または第2 ORFのみがTRAP−tbsにより調節される代替的CMVプロモーター構築物、およびいずれのtbs配列をも含有しない又はプロモーターを含有しない対照を作製した(図27i)。
HEK293T細胞においてベクター粒子を作製するために7個のベクターゲノムを使用した。ベクターゲノムプラスミド + パッケージング成分およびpEF1a−coTRAP[H6]またはpBluescript(対照)のいずれかで細胞をコトランスフェクトした。また、pGL3−対照(SV40プロモーター駆動性レニラ・レニフォルミス(Renilla reniformis)、ルシフェラーゼ)を加えて(全DNAに対して1:40の比)、トランスフェクション効率対照を得た。プラスミドの比は以下のとおりであった:ゲノム(4.5)|GagPol(1.5)|Rev(1.1)|VSVG(0.7)|TRAP/Bluescript(0.56)|pGL3対照(0.23)。トランスフェクションは96ウェルの規模で二重重複プレートにおいて行い、各条件を三重重複で行った。トランスフェクションの1日後、培養を10mM 酪酸ナトリウムで5〜6時間誘導した(典型的なベクター産生法)後、培地を新鮮培地と交換した。産生終了細胞をフローサイトメトリーにより分析してGFP発現スコア(MFI×%GFP)を得て、第2位における発現を測定し、あるいは産生終了細胞をDual luciferase(登録商標)レポーターアッセイプロトコル(Promega)に従い受動細胞溶解(passive lysis)バッファー中で細胞溶解して、第1位における発現を測定した。Dynex MLXプレートリーダーを、製造業者の方法を用いて前記プロトコルに従い使用して、ホタルルシフェラーゼ発現に関してライセートを分析した。
ベクター産生細胞におけるビシストロンカセットに関する発現データを図27iiに示す。予想どおり、TRAPが供給された場合のpHIV−CMV−Luc−iGFPからは、tbsの非存在ゆえに、ルシフェラーゼまたはGFPのいずれの抑制も観察されなかった。pHIV−CMV−tbsLuc−itbsGFPおよびpHIV−CMV−tbsLuc−iGFPからはルシフェラーゼ発現の抑制が観察されたが、pHIV−CMV−Luc−itbsGFPからは観察されなかった。
興味深いことに、プロモーター非含有ゲノムpHIV−Null−tbsLuc−itbsGFPはCMVp変異体より100倍低いレベルでルシフェラーゼを発現したが、この発現レベルはTRAPにより抑制可能であった。より低いレベルの(TRAPの非存在下の)このルシフェラーゼ発現は完全長ベクターゲノムRNAからCAP依存的に(すなわち、完全長ベクターRNAの5’末端からのリボソームスキャニングにより)誘導される可能性がある。したがって、TRAPは完全長ベクターゲノムRNA上のtbsに結合し、より長いこのRNAおよび内部転写産物からのトランスジーン発現を阻止しうる。これは、高レベルのGFPがpHIV−Null−tbsLuc−itbsGFPにより発現された事実によって更に実証される。これは、おそらく、IRES要素がGFP翻訳のみを駆動することによるものであろう。TRAPは、pHIV−Null−tbsLuc−itbsGFPに由来する完全長ベクターゲノムRNAからのGFPのこの発現を抑制することが可能であった。これは、ルシフェラーゼ発現が(CMVp構築物と比べて)低いにもかかわらず、組織特異的構築物pHIV−VMD2−tbsLuc−itbsGFPおよびpHIV−mAlb−hAAT−tbsLuc−itbsGFPが、(TRAPの非存在下)pHIV−Null−tbsLuc−itbsGFPと比べて類似レベルのGFPを産生したことにより裏付けられ、このことは、GFP発現の大部分が内部プロモーター駆動性カセットに由来していなかったことを示している。このレベルの(完全長ベクターゲノムRNAからの)GFP発現はTRAPによって効率的に抑制可能であった。最後に、pHIV−VMD2−tbsLuc−itbsGFPおよびpHIV−mAlb−hAAT−tbsLuc−itbsGFPからのルシフェラーゼ発現のレベルはpHIV−Null−tbsLuc−itbsGFPの場合より〜2倍高かった。このことは、これらの組織特異的プロモーターがHEK293Tにおいて若干漏出性であることを示している。この低レベルのルシフェラーゼ発現でさえもTRAPによって抑制された。
これらの観察を、図27iiiに示す図に要約する。これらのデータは、TRIP系がマルチシストロントランスジーンを同時に抑制することが可能であり、組織特異的プロモーターの使用と比較した場合の利点を有することを示している。レトロウイルスベクター産生の場合、大量の完全長ベクターゲノムRNAが細胞内で転写される必要があるが、ここで、本発明者らは、特にIRES要素が使用された場合、トランスジーンタンパク質の翻訳がこの完全長分子から可能であることを示している。TRIP系は翻訳レベルで抑制を媒介するため、それは完全長ベクターゲノムRNAおよび内部由来トランスジーンカセットmRNAからのトランスジーン発現を抑制しうる。
実施例17.DNAに基づくウイルスベクターの産生におけるTRAP/tbs媒介性トランスジーン抑制の有用性の実証;事例研究1−AAVに基づくベクター
以下の研究はTRiPAVVベクター産生系を示し、これは、レトロ/レンチウイルスのようなRNAに基づくウイルスベクター系に関して記載されているのと同様にしてTRAP−tbs配置を使用する。図28iはTRiPAVV系の非限定的な一例を示し、これは、以下の発現カセットを含有する産生細胞(例えば、アデノウイルスE1発現細胞;HEK293に基づく細胞、PER.C6に基づく細胞)を含む:[1]トランスジーンの5’UTR内(および/またはIRESと下流トランスジーンとの間)にtbsが挿入されるように修飾されたAAVベクターゲノム、[2]recap発現プラスミド、[3]ヘルパー機能(例えば、アデノウイルスE2A、E4orf6、VA遺伝子)、および[4]TRAP発現カセット(一過性にトランスフェクトされた又は安定なTRAP細胞系)。
トランスジーン発現がAAVベクター産生細胞において抑制されうるかどうかを試験するために、HEK293T細胞における自己相補的(sc)AAV−(CMV)−tbsGFPベクター(血清型2)の産生にTRiPAAV系を適用した。まず、TRAP媒介性抑制に対するrecapおよびアデノウイルスヘルパー機能の共発現の影響を試験し、pCMV−tbsGFPレポータープラスミドと比較した(図28ii)。pEF1a−coTRAP[H6]、pRepCap2 およびpHelper(pEF1a−coTRAP[H6]に関して特記されているもの以外は全て、2μg/10cmプレートの等しい質量比におけるもの;図28iiを参照されたい)の種々の組合せにおけるpscAAV−GFPまたはpscAAV−tbsGFPまたはpCMV−tbsGFPのいずれかでHEK293T細胞を三重重複でトランスフェクトした。予想どおり、TRAPの発現は、tbsを欠くpscAAV−GFPによるGFP発現には影響を及ぼさなかった。pscAAV−tbsGFPからのGFP発現はTRAPの存在下(1:1の比のTRAPおよびscAAVベクターゲノムプラスミド)で約3−Log抑制された。pHelperまたはpRepCap2の共発現はTRAP媒介性抑制のこのレベルに影響を及ぼさなかった。pscAAV−tbsGFP、pRepCap2、pHelperおよびpEF1a−coTRAP[H6]を全て一緒に(すなわち、scAAV−tbsGFPベクター粒子が産生される条件下で)トランスフェクトした場合、TRAPによるGFP抑制のレベルは300倍を超えた。scAAV−tbsGFP産生の条件下のpEF1a−coTRAP[H6](ゲノムとの比は1:1[2μg]〜10:1[0.2μg])の、10倍の力価は、より大量のTRAPプラスミドの投入で、3−Logの抑制が可能でありうることを示している。TRiPAAV系を使用してAAVベクターゲノム内のトランスジーンカセットの発現が少なくとも300倍抑制されうること、およびパッケージング/ヘルパー機能自体はTRAP媒介性抑制を抑制しないことを、これらのデータは示している。
TRiPAAV系を使用して機能的AAVベクター粒子が産生されうることを実証するために、pscAAV2−GFPゲノム(+/− tbs)、pRepCap2、pHelperおよびpEF1a−coTRAP[H6](TRAP)またはpBluescript(−)(2μgの全DNA)で細胞をトランスフェクトすることにより、scAAV2−[tbs]GFPベクター粒子を10cmプレートの規模で産生させた。〜53時間後、細胞を凍結−解凍し、ベクター粒子を、Virabind(商標)キットを使用して精製し、100μL PBSの最終体積まで濃縮し、ついでHEK293TおよびHEPG2細胞のトランスダクションにより力価測定した(図28iii)。これらのデータは、AAV−GFPベクターがTRiPAAV系において、標準的な方法の場合と同等の力価まで産生されうることを示しており、このことは、tbs修飾およびTRAPの共発現がAAVベクターの生物学を本質的に妨げないことを示している。したがって、TRiPAAV系を使用してAAVベクター産生細胞におけるトランスジーン発現の強力な抑制が可能であること、およびトランスジーン産物の活性がAAVベクター粒子の力価または効力に有害である場合、この活性は著しく低減することを、この研究は示している。
TRiPAAVベクター系が、AAVベクターゲノムによりコードされる非常に毒性/問題のあるトランスジーンを産生細胞において抑制しうることを実証するために、scAAV2−tbsBamaseを構築した(図28ivA)。バルナーゼ(Barnase)は、発現されると真核細胞に対して毒性である強力な細菌RNアーゼであり、サイレンシングされない限りAAVベクターの産生を妨げることが示されている(Chen H.,Mol Ther Nuc Acids.,1,e57;doi:10.1038/mtna.2012.48,Nov 2012)。HEK293TおよびHEK293T.TRiP[3D]細胞系をpRepCap2およびpHelperパッケージング成分(pEF1a−coTRAP[H6]を伴わない)でトランスフェクトした。ただし、GFP発現に対するバルナーゼの効果を観察するために、等しい質量のpscAAV2−GFP(図28ivB)およびpscAAV2−tbsBarnaseゲノムプラスミドを混合し、あるいはpscAAV−(CMV)−GFPのみをトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、これらの培養の写真を撮影し、これらを図28v:i〜iiに示す。pscAAV−(CMV)−GFPのみでトランスフェクトされたHEK293TおよびHEK293T.TRiP[3D]培養は高レベルのGFP発現を示した(図28v:ii)。しかし、pscAAV−(CMV)−GFPゲノムおよびpscAAV−(CMV)−tbsBarnaseでコトランスフェクトされたHEK293T培養は無視しうるレベルのGFPを発現したが(図28v:i)、このことは、おそらくトランスジーンmRNAおよびリボソームRNAの分解ゆえに、バルナーゼ発現がタンパク質発現の低減の全体的な影響をもたらしていたことを示している。これとは対照的に、同じDNA混合物でトランスフェクトされたHEK293T.TRiP培養は相当なGFP発現を可能にしたが、このことは、これらの細胞におけるTRAP[H6]の内因性レベルがバルナーゼ発現を抑制していたことを示している。より一層大きなレベルの内因性TRAPを含有する安定細胞系を単離することによりバルナーゼ抑制を改善することが可能でありうる。ウイルスベクター産生中に発現される毒性トランスジーンタンパク質としてのバルナーゼのモデル化は最悪の場合のシナリオに相当し、この場合、デノボ(de novo)タンパク質合成(ウイルスベクター成分を含む)が有効に阻止される。HEK293T.TRiP細胞におけるGFP発現の中等度の回復が観察されたことを考慮すると、これは、AAVベクター成分タンパク質の発現も生じたこと、およびバルナーゼをコードするAAVベクター粒子の産生が安定なTRAP細胞系において可能であることを示唆している。
実施例18.DNAに基づくウイルスベクターの産生におけるTRAP/tbs媒介性トランスジーン抑制の有用性の実証;事例研究2−アデノウイルスに基づくベクター
以下の研究はTRIPAdenoベクター産生系を示し、これは、レトロ/レンチウイルスのようなRNAに基づくウイルスベクター系に関して及びDNAに基づくAAVベクター(実施例17)に関して記載されているのと同様にしてTRAP−tbs配置を使用する。図29iはTRIPAdeno系の非限定的な一例を示し、これは、以下の発現カセットを含有する産生細胞(例えば、アデノウイルスE1発現細胞;HEK293に基づく細胞、PER.C6に基づく細胞)を含む:[1]トランスジーンの5’UTR内(および/またはIRESと下流トランスジーンとの間)にtbsが挿入されるように修飾されたアデノウイルスに基づくベクターゲノム、および[2]TRAP発現カセット(一過性にトランスフェクトされた又は安定なTRAP細胞系)。所望により、E1欠失ヘルパーウイルスがヘルパー依存的ベクター産生のために共導入されうる。
哺乳類細胞においてベクターDNA組換え中にTRIPAdeno系においてトランスジーン発現が抑制されて、完全長Adeno−tbsTransgeneベクターゲノムが得られうることを実証するために、pAdeno−CMV−GFPおよびpAdeno−tbsGFPシャトルプラスミド(RAPAd(登録商標)キット,Cell BioLabs)を構築した(図29iiA)。これらは、該トランスジーンカセットをコードするアデノウイルスゲノム(E1欠失体)の左側を含有していた。これらのシャトルプラスミドをpEF1a−coTRAP[H6](TRAP)またはpBlueScript(−)と共に、そして並行トランスフェクションにおいてpacAd5 9.2−100(RAPAd(登録商標)キット,Cell BioLabs)(これは、該シャトルにおけるAd5配列に対する重複相同性、およびAd5ゲノム(E3欠失体)から右側ITRまでの残部を含む)(図29iiB)と共にHEK293T細胞内にコトランスフェクトした。シャトルプラスミド対TRAPプラスミドの質量比は5:1であった。同型培養を48時間インキュベートし、ついでフローサイトメトリーによりGFP発現に関して分析し(GFP発現スコアを得た;MFI×%GFP)、あるいは細胞変性効果が観察されるまで(〜14日)、インキュベートした。細胞を凍結−解凍し、細胞残渣を除去することにより、粗Adeno−CMV−GFPおよびAdeno CMV−tbsGFPベクターストックを調製し、ついでHeLa細胞上での力価測定を行った。
図29iiBにおけるデータはトランスフェクションの48時間後の培養における全体的なGFP発現を示し、トランスジーン5’UTR内にtbsが存在する場合かつTRAPの存在下でのみ、Adシャトルプラスミドからのトランスジーン発現が2−Log抑制されうることを示している。pacAd5 9.2−100でのコトランスフェクションは抑制レベルに影響を及ぼさなかったが、このことは、哺乳類細胞においてベクターDNA組換え中にトランスジーン発現を抑制することが可能であることを示している。これは哺乳類細胞におけるアデノウイルスベクターの製造における大きな進歩に相当する。なぜなら、毒性トランスジーン発現はベクター組換え体の回収の可能性をなくしうるからである。
TRIPAdeno系がAdベクター増幅中にトランスジーン発現を抑制しうるかどうかを試験するために、HEK293T細胞またはHEK293T.TRIP[3D]細胞(TRAP[H6]を安定に発現する)にAdeno−CMV−GFPおよびAdeno−CMV−tbsGFPを0.01のMOIで導入した。同型培養をベクター増幅中のGFP発現に関して接種後の種々の時点で分析し、GFP発現スコアを得た(MFI×%GFP)。この実験の結果は図29iiiに示されており、GFP発現が、HEK293T.TRIP[3D]細胞系においてのみ、Adeno−CMV−tbsGFPの増幅中に>400倍抑制されることを示している(図29iiiA)。予想どおり、それらの細胞系のいずれにおいてもAdeno−CMV−GFPの増幅中のGFP発現は類似していた(すなわち、抑制されなかった)。
TRAPの存在下で産生されたAdeno−CMV−GFPおよびAdeno−CMV−tbsGFPのベクターストックを、接種の48時間後に細胞から回収し、残渣を除去し、HeLa細胞上で力価測定を行った(図29iiiB)。HEK293TまたはHEK293T.TRIP[3D]細胞において産生されたベクターの力価は同等であったが、このことは、tbs修飾およびTRAPの発現がアデノウイルスベクターの生物学を本質的に妨げないことを示している。したがって、TRIPAdeno系を使用してアデノウイルスベクター産生細胞におけるトランスジーン発現の強力な抑制が可能であること、およびトランスジーン産物の活性がアデノウイルスベクター粒子の力価または効力に有害である場合、この活性は著しく低減することを、この研究は示している。
前記の本明細書に挙げられている全ての刊行物を参照により本明細書に組み入れることとする。本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本発明の記載されている態様の種々の修飾および変更が当業者に明らかであろう。本発明は特定の好ましい実施形態に関して記載されているが、特許請求している本発明はそのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないと理解されるべきである。実際、生化学およびバイオテクノロジーまたは関連分野における当業者に明らかである、本発明を実施するための記載されている態様の種々の修飾が、以下の特許請求の範囲の範囲内に含まれると意図される。