JP2017223890A - マスクブランク、転写用マスク、マスクブランクの製造方法、転写用マスクの製造方法および半導体デバイスの製造方法 - Google Patents

マスクブランク、転写用マスク、マスクブランクの製造方法、転写用マスクの製造方法および半導体デバイスの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】パターン形成用薄膜にパターンを形成するときに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングに対する耐性が透光性基板に比べて高く、薬液洗浄に対する耐性も高く、露光光に対する透過率も高いという3つの特性を同時に満たすエッチングストッパー膜を備えるマスクブランクを提供する。【解決手段】透光性基板の主表面上に、エッチングストッパー膜およびパターン形成用薄膜がこの順に積層した構造を備えるマスクブランクであって、パターン形成用薄膜は、前記エッチングストッパー膜の表面に接して設けられ、パターン形成用薄膜は、ケイ素を含有し、エッチングストッパー膜は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有し、パターン形成用薄膜側が透光性基板側よりもケイ素およびアルミニウムの合計含有量に対するケイ素の含有量の原子%による比率が高いことを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、マスクブランク、そのマスクブランクを用いて製造された転写用マスク、そのマスクブランクおよび転写用マスクの製造方法に関するものである。また、本発明は、上記の転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法に関するものである。
一般に、半導体デバイスの製造工程では、フォトリソグラフィ法を用いて微細パターンの形成が行われている。また、この微細パターンの形成には、通常何枚もの転写用マスクが使用される。半導体デバイスのパターンを微細化するに当たっては、転写用マスクに形成されるマスクパターンの微細化に加え、フォトリソグラフィで使用される露光光源の波長の短波長化が必要となる。半導体デバイスの製造の際に用いられる露光光源は、近年ではKrFエキシマレーザー(波長248nm)から、ArFエキシマレーザー(波長193nm)へと短波長化が進んでいる。
転写用マスクの種類には、従来の透光性基板上にクロム系材料からなる遮光パターンを備えたバイナリ型マスクの他に、ハーフトーン型位相シフトマスクがある。ハーフトーン型位相シフトマスクの位相シフト膜には、特許文献1に開示されているようにモリブデンシリサイド(MoSi)系の材料が広く用いられる。また、特許文献2に開示されているように、モリブデンシリサイド材料でありながら、露光光に対する透過率が9%以上と比較的高い透過率を有する位相シフト膜を備える位相シフトマスクも知られている。
特許文献3には、遮光膜の黒欠陥部分に対して、二フッ化キセノン(XeF)ガスを供給しつつ、その部分に電子線を照射することで黒欠陥部をエッチングして除去する欠陥修正技術(以下、このような電子線等の荷電粒子を照射して行う欠陥修正を単にEB欠陥修正という。)が開示されている。このEB欠陥修正は、当初、EUVリソグラフィ(Extreme Ultraviolet Lithography)用の反射型マスクの吸収体膜における黒欠陥修正に用いられていたが、近年ではMoSiハーフトーンマスクの黒欠陥修正においても使用されている。
位相シフト膜としてモリブデンシリサイド系材料およびケイ素系材料を用いた位相シフトマスクでは、フッ素系ガスをエッチングガスとするドライエッチングによって位相シフトパターンを形成することが一般的である。しかし、これらの材料の位相シフト膜は、ガラス材料からなる基板に対するフッ素系ガスによるドライエッチングのエッチング選択性があまり高くない。特許文献4では、フッ素系ガスのドライエッチングに対する耐性の高い材料であるAl等からなるエッチングストッパー膜を基板と位相シフト膜の間に介在させている。このような構成とすることで、フッ素系ガスによるドライエッチングで位相シフト膜に位相シフトパターンを形成するときに、基板の表面を掘り込むことを抑止することが可能となっている。
特開2002−162726号公報 特開2010−9038号公報 特表2004−537758号公報 特開2005−208660号公報
Alからなるエッチングストッパー膜は、フッ素系ガスによるドライエッチングに対する耐性に優れており、ケイ素を含有する材料からなる位相シフト膜をドライエッチングする際の基板掘り込みを抑止できる利点がある。また、Alからなるエッチングストッパー膜は、EB欠陥修正時に生じるエッチングに対する耐性も高く、位相シフト膜の黒欠陥部分に対してEB欠陥修正を行うときに生じやすい基板のダメージを抑止することも可能である。しかし、Alからなるエッチングストッパー膜は、薬液洗浄に対する耐性が低い傾向がある。マスクブランクから位相シフトマスク(転写用マスク)を製造するプロセスの途上において、薬液を用いた洗浄が何度も行われる。また、完成後の位相シフトマスクに対しても、定期的に薬液による洗浄が行われる。これらの洗浄では、アンモニア過水やTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液が洗浄液として用いられることが多く、Alからなるエッチングストッパー膜は、これらの洗浄液に対する耐性が低い。
例えば、ガラスからなる透光性基板上に、Alからなるエッチングストッパー膜と位相シフトパターンが形成された位相シフト膜を備える位相シフトマスクに対し、アンモニア過水による洗浄を行うと、位相シフトマスクにおける位相シフト膜が存在しない領域であり、エッチングストッパー膜の表面が露出している透光部で、そのエッチングストッパー膜が表面から徐々に溶解していく。この洗浄が続くと、その透光部で基板の主表面が露出し、さらに洗浄を続けると、位相シフト膜が存在するパターン部分の直下のエッチングストッパー膜も位相シフト膜の側壁側から内部側に向かって溶解していく。このエッチングストッパー膜が溶解する現象は、位相シフト膜のパターンの両方の側壁側からそれぞれ進行するため、位相シフト膜のパターン幅よりも溶解せずに残存しているエッチングストッパー膜の幅の方が小さくなってしまう。このような状態になると、位相シフト膜のパターンが脱落する現象が発生しやすくなる。
また、位相シフトマスクを露光装置にセットして、転写対象物(半導体ウェハ上のレジスト膜等)に露光転写する際、露光光は位相シフトマスクの透光性基板の位相シフトパターンが設けられている主表面とは反対側の主表面側から入射し、エッチングストッパー膜を介して位相シフトパターンに入射する。位相シフトマスクの位相シフト膜に形成されているパターンは、透光性基板と位相シフト膜との間にエッチングストッパー膜が存在することを前提に設計されている。このため、位相シフトマスクのエッチングストッパー膜が溶解した状態では、位相シフトパターン設計時に見込まれていた光学特性が十分に得られなくなる恐れがある。
位相シフト効果が必要となる位相シフトパターンの側壁の近傍で、エッチングストッパー膜が溶解していると、十分な位相シフト効果が得られにくくなる。より高い位相シフト効果を得るために、位相シフト膜の露光光に対する透過率を高めた、特許文献2に開示されているような高透過率タイプの位相シフトマスクの場合、位相シフト効果の低下はより顕著になりやすい。
Alからなるエッチングストッパー膜は、位相シフトマスクの透光性基板の材料に用いられる合成石英ガラスよりも露光光に対する透過率が低いという問題がある。ArFエキシマレーザーを露光光に適用する位相シフトマスクの場合、より顕著にその傾向が表れる。Alからなるエッチングストッパー膜は、位相シフトマスクが完成した段階において、透光部にも残されるものである。位相シフトマスクの透光部における露光光の透過率が低下することは、位相シフトマスクにおける位相シフト効果の低下に繋がる。
一方、透光性基板上に高い光学濃度を有する遮光膜のパターンを備えるバイナリ型の転写用マスクを製造するためのマスクブランクにおいても、遮光膜の材料に遷移金属シリサイド系材料が用いられている。この遷移金属シリサイド系材料の遮光膜にパターンを形成するときにおいても、フッ素ガスによるドライエッチングが用いられる。この遮光膜の遷移金属シリサイド系材料は、高い光学濃度が求められることもあり、一般に、位相シフト膜の遷移金属シリサイド系材料に比べて窒化度や酸化度は低い傾向にある。このため、遮光膜と透光性基板との間のフッ素系ガスによるドライエッチングに対するエッチング選択性は、位相シフト膜と透光性基板との間の選択性よりも大きくなりやすい。しかし、そのエッチング選択性では透光性基板のエッチングを抑制するのに十分でない場合もあるので、透光性基板と遮光膜との間にエッチングストッパー膜を設けることが望まれている。
また、この遷移金属シリサイド系材料の遮光膜を有するマスクブランクから転写用マスクを製造する際、遮光膜のパターンに黒欠陥部分が見つかった場合においても、EB欠陥修正が行われている。EB欠陥修正時の基板のダメージを抑制するには、エッチングストッパー膜を設けることは有効である。そして、このバイナリ型の転写用マスクにおけるエッチングストッパー膜の場合も位相シフトマスクの場合と同様、薬液洗浄に対する耐性が高い材料であることが必要であり、露光光に対する高い透過率を有する材料であることも望まれている。
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、透光性基板上に位相シフト膜や遮光膜のようなケイ素を含有する材料からなるパターン形成用薄膜を備えたマスクブランクで透光性基板とパターン形成用薄膜の間にエッチングストッパー膜を介在させる構成とする場合において、パターン形成用薄膜をパターニングする際に用いられるフッ素系ガスによるドライエッチングに対する耐性が高く、薬液洗浄に対する耐性が高く、さらに露光光に対する透過率が高いエッチングストッパー膜を備えたマスクブランクおよびその製造方法を提供することを目的としている。また、このマスクブランクを用いて製造される転写用マスクを提供することを目的としている。さらに、このような転写用マスクを製造する方法を提供することを目的としている。そして、本発明は、このような転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを目的としている。
前記の課題を達成するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
透光性基板の主表面上に、エッチングストッパー膜およびパターン形成用薄膜がこの順に積層した構造を備えるマスクブランクであって、
前記パターン形成用薄膜は、前記エッチングストッパー膜の表面に接して設けられ、
前記パターン形成用薄膜は、ケイ素を含有し、
前記エッチングストッパー膜は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有し、前記パターン形成用薄膜側が前記透光性基板側よりも前記ケイ素および前記アルミニウムの合計含有量に対する前記ケイ素の含有量の原子%による比率が高いことを特徴とするマスクブランク。
(構成2)
前記エッチングストッパー膜は、前記透光性基板側から前記パターン形成用薄膜側に向かって前記ケイ素および前記アルミニウムの合計含有量に対する前記ケイ素の含有量の原子%による比率が高くなる組成傾斜膜であることを特徴とする構成1記載のマスクブランク。
(構成3)
前記エッチングストッパー膜は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素からなることを特徴とする構成1または2に記載のマスクブランク。
(構成4)
前記エッチングストッパー膜は、酸素含有量が50原子%以上であることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成5)
前記パターン形成用薄膜側のエッチングストッパー膜は、前記ケイ素および前記アルミニウムの合計含有量に対する前記ケイ素の含有量の原子%による比率が、1/5以上であることを特徴とする構成1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成6)
前記パターン形成用薄膜側のエッチングストッパー膜は、前記ケイ素および前記アルミニウムの合計含有量に対する前記ケイ素の含有量の原子%による比率が、4/5以下であることを特徴とする構成1から5のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成7)
前記エッチングストッパー膜は、アモルファス構造および微結晶構造の少なくともいずれかの構造を有することを特徴とする構成1から6のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成8)
前記エッチングストッパー膜は、厚さが3nm以上であることを特徴とする構成1から7のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成9)
前記パターン形成用薄膜は、ケイ素および窒素を含有することを特徴とする構成1から8のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成10)
前記パターン形成用薄膜は、位相シフト膜であり、
前記位相シフト膜は、露光光を1%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有することを特徴とする構成1から9のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成11)
前記位相シフト膜上に、遮光膜を備えることを特徴とする構成10記載のマスクブランク。
(構成12)
構成1から10のいずれかに記載のマスクブランクの前記パターン形成用薄膜に転写パターンが設けられていることを特徴とする転写用マスク。
(構成13)
構成11記載のマスクブランクの前記位相シフト膜に転写パターンが設けられ、前記遮光膜に遮光帯を含むパターンが設けられていることを特徴とする転写用マスク。
(構成14)
構成1から11のいずれかに記載のマスクブランクを製造する方法であって、
前記透光性基板上に、アルミニウムおよび酸素を含有する前記エッチングストッパー膜を形成する工程と、
前記エッチングストッパー膜に接してケイ素を含有する前記パターン形成用薄膜を形成する工程と、
前記エッチングストッパー膜およびパターン形成用薄膜が形成された後の透光性基板に対し、400℃以上の温度での加熱処理を行う工程と、
を有することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
(構成15)
前記エッチングストッパー膜を形成する工程は、酸素含有量が60原子%未満であるエッチングストッパー膜を形成する工程であることを特徴とする構成14記載のマスクブランクの製造方法。
(構成16)
構成11記載のマスクブランクを用いた転写用マスクの製造方法であって、
ドライエッチングにより前記遮光膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンを有する遮光膜をマスクとし、フッ素系ガスを用いるドライエッチングにより前記位相シフト膜に転写パターンを形成する工程と、
ドライエッチングにより前記遮光膜に遮光帯を含むパターンを形成する工程と
を備えることを特徴とする転写用マスクの製造方法。
(構成17)
構成12または13に記載の転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
(構成18)
構成16記載の転写用マスクの製造方法により製造された転写用マスクを用い、半導体
基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
本発明のマスクブランクは、透光性基板の主表面上に、エッチングストッパー膜およびパターン形成用薄膜がこの順に積層した構造を備えるマスクブランクであって、パターン形成用薄膜は、前記エッチングストッパー膜の表面に接して設けられ、パターン形成用薄膜は、ケイ素を含有し、エッチングストッパー膜は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有し、パターン形成用薄膜側が透光性基板側よりもケイ素およびアルミニウムの合計含有量に対するケイ素の含有量の原子%による比率が高いことを特徴としている。このような構造のマスクブランクとすることにより、エッチングストッパー膜は、パターン形成用薄膜にパターンを形成するときに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングに対する耐性が透光性基板に比べて高く、薬液洗浄に対する耐性も高く、露光光に対する透過率も高いという3つの特性を同時に満たすことができる。
本発明の第1の実施形態におけるマスクブランクの構成を示す断面図である。 本発明の第1の実施形態における位相シフトマスクの構成を示す断面図である。 本発明の第1の実施形態における位相シフトマスクの製造工程を示す断面模式図である。 本発明の第2の実施形態におけるマスクブランクの構成を示す断面図である。 本発明の第2の実施形態における転写用マスクの構成を示す断面図である。 本発明の第2の実施形態における転写用マスクの製造工程を示す断面模式図である。
まず、本発明の完成に至った経緯を述べる。本発明者らは、Alからなるエッチングストッパー膜が有している技術的課題を解決すべく鋭意研究を行った。エッチングストッパー膜の材料であるAlは、フッ素系ガスによるドライエッチングに対する耐性が高いが、ArFエキシマレーザー(波長:約193nm)の露光光に対する透過率はあまり高くはなく、転写用マスクの洗浄に用いられる洗浄液に対する耐性も低い。他方、透光性基板の主材料であるSiOは、ArFエキシマレーザーの露光光に対する透過率が高く、転写用マスクの洗浄に用いられる洗浄液に対する耐性も高い材料であるが、フッ素系ガスによるドライエッチングに対してエッチングされやすい材料でもある。本発明者らは、鋭意検討の結果、エッチングストッパー膜をSiOとAlを混合させた材料で形成することにより、フッ素系ガスによるドライエッチングに対する耐性、ArFエキシマレーザーの露光光に対する高い透過率、転写用マスクの洗浄に用いられる薬液に対する耐性の3つの条件をいずれも満たすことができる可能性を見出した。
上記のようなSiOとAlを混合させた材料でエッチングストッパー膜を製造して検証してみたところ、フッ素系ガスによるドライエッチングに対する耐性については、Alのみからなるエッチングストッパー膜よりは劣るが十分に高く、エッチングストッパー膜として十分に機能することが判明した。ArFエキシマレーザーの露光光に対する透過率については、SiOのみからなる材料よりは劣るがAlのみからなるエッチングストッパー膜に比べると透過率が格段に高いことが判明した。さらに、薬液(アンモニア過水、TMAH等)に対する耐性も、SiOのみからなる材料よりは劣るがAlのみからなるエッチングストッパー膜に比べると耐性が格段に高いことが判明した。また、EB欠陥修正で行われる二フッ化キセノン(XeF)ガスを供給しつつ、その部分に電子線を照射する処理をSiOとAlを混合させた材料のエッチングストッパー膜に対して行ったところ、Alのみからなるエッチングストッパー膜よりは劣るが、SiOのみからなる材料に比べると十分に耐性が高く、エッチングされにくいことも判明した。
一方、マスクブランクの薄膜(パターン形成用薄膜)にパターンを形成するときのフッ素系ガスによるドライエッチングでは、使用するガス種、エッチングチャンバー内のガス流量、バイアス電圧等、様々な条件が用いられる。エッチングストッパー膜は、これらの様々なエッチング条件に対して十分な耐性を有することが望まれる。他方、マスクブランクから転写用マスクを製造するときに行われる洗浄や、製造後の転写用マスクに対して行われる洗浄での洗浄条件も、使用する薬液、濃度、洗浄時間等、様々な条件が用いられる。SiOとAlを混合させた材料からなるエッチングストッパー膜は、SiOの含有量が少なくなるほど、フッ素系ガスのエッチング耐性は高くなっていくが、洗浄時の薬液耐性は低下していくというトレードオフの関係がある。
本発明者らは、様々なエッチング条件、様々な薬液洗浄の条件に広く対応できるエッチングストッパー膜についてさらに研究を行った。その結果、エッチングストッパー膜のケイ素とアルミニウムの含有比率を膜厚方向で均一とするのではなく、膜厚方向でケイ素とアルミニウムの含有比率を異なるようにすることを思いついた。さらに、エッチングストッパー膜のパターン形成用薄膜側を薬液耐性が高くなる構成とし、エッチングストッパー膜の透光性基板側をフッ素系ガスのエッチング耐性が高くなる構成とすることを思いついた。そして、これらの条件を満たすためには、エッチングストッパー膜のパターン形成用薄膜側のケイ素およびアルミニウムの合計含有量[原子%]に対するケイ素の含有量[原子%]の比率を、透光性基板側のケイ素およびアルミニウムの合計含有量[原子%]に対するケイ素の含有量[原子%]の比率よりも高くすればよいという結論に至った。
すなわち、本発明のマスクブランクは、透光性基板の主表面上に、エッチングストッパー膜およびパターン形成用薄膜がこの順に積層した構造を備えるマスクブランクであって、パターン形成用薄膜は、前記エッチングストッパー膜の表面に接して設けられ、パターン形成用薄膜は、ケイ素を含有し、エッチングストッパー膜は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有し、パターン形成用薄膜側が透光性基板側よりもケイ素(Si)およびアルミニウム(Al)の合計含有量に対するケイ素(Si)の含有量の原子%による比率(以下、「Si/[Si+Al]比率」という。)が高いことを特徴としている。次に、本発明の各実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
[マスクブランクとその製造]
本発明の第1の実施形態に係るマスクブランクは、パターン形成用薄膜を露光光に対して所定の透過率と位相差を付与する膜である位相シフト膜としたものであり、位相シフトマスク(転写用マスク)を製造するために用いられるものである。図1に、この第1の実施形態のマスクブランクの構成を示す。この第1の実施形態に係るマスクブランク100は、透光性基板1の主表面上に、エッチングストッパー膜2、位相シフト膜(パターン形成用薄膜)3、遮光膜4、ハードマスク膜5を備えている。
透光性基板1は、露光光に対して高い透過率を有するものであれば、特に制限されない。本発明では、合成石英ガラス基板、その他各種のガラス基板(例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス等)を用いることができる。これらの基板の中でも特に合成石英ガラス基板は、ArFエキシマレーザーまたはそれよりも短波長の領域で透過率が高いので、高精細の転写パターン形成に用いられる本発明のマスクブランクの基板として好適である。ただし、これらのガラス基板は、いずれもフッ素系ガスによるドライエッチングに対してエッチングされやすい材料である。このため、透光性基板1上にエッチングストッパー膜2を設ける意義は大きい。
エッチングストッパー膜2は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料で形成されており、位相シフト膜3側のSi/[Si+Al]比率が透光性基板1側のSi/[Si+Al]比率よりも高くなっている。このエッチングストッパー膜2は、位相シフトマスク200が完成した段階において、少なくとも転写パターン形成領域の全面で除去されずに残されるものである(図2参照)。すなわち、位相シフトパターンの位相シフト膜3が存在しない領域である透光部にもエッチングストッパー膜2が残存した形態をとる。このため、エッチングストッパー膜2は、透光性基板1との間に他の膜を介さず、透光性基板1に接して形成されていることが好ましい。
薬液洗浄によってエッチングストッパー膜2が溶解する(エッチングされる)場合、等方性の傾向を有するのに対し、ドライエッチングによってエッチングストッパー膜2がエッチングされる場合、異方性の傾向を示す。等方性のエッチングの場合、位相シフト膜3のパターンがない領域のエッチングストッパー膜2が表面からエッチングされるだけでなく、位相シフト膜3が存在する領域のエッチングストッパー膜2も位相シフト膜3のパターン側壁側から内部側に向かってエッチングされていくため、位相シフト膜3のパターンが脱離する恐れがある。また、位相シフト膜3のパターンが脱落しない場合であっても、パターンの側壁近傍のエッチングストッパー膜2が欠損していると位相シフトマスクとしての光学特性が大きく変化するため、好ましくない。
これに対し、異方性のドライエッチングの場合、位相シフト膜3が除去されている領域におけるエッチングストッパー膜2の表面がエッチングされるに留まる。これらのことを考慮し、エッチングストッパー膜2は、位相シフト膜3側が高い薬液耐性を有するようにSi/[Si+Al]比率を高くしている。ただし、エッチングストッパー膜2の位相シフト膜3側におけるSi/[Si+Al]比率は、後述の通り、位相シフト膜3のドライエッチング時にエッチングストッパー膜2が除去されないだけの位相シフト膜3との間のエッチングレート差が確保できる程度にとどめている。
エッチングストッパー膜2は、位相シフト膜3側のSi/[Si+Al]比率が透光性基板1側のSi/[Si+Al]比率よりも高いことが少なくとも求められる。エッチングストッパー膜2は、組成傾斜膜、2層以上の多層膜のいずれの構成でもよい。エッチングストッパー膜2が組成傾斜膜の場合は、位相シフト膜3側の領域におけるSi/[Si+Al]比率を透光性基板1側の領域におけるSi/[Si+Al]比率よりも高くする。この組成傾斜膜の場合、エッチングストッパー膜2における位相シフト膜3側の領域と透光性基板1側の領域に挟まれた領域のSi/[Si+Al]比率は、位相シフト膜3側の領域よりも高くしてもよく、また透光性基板1側の領域よりも低くしてもよい。
エッチングストッパー膜2は、透光性基板1側から位相シフト膜(パターン形成用薄膜)3側に向かってケイ素およびアルミニウムの合計含有量に対するケイ素の含有量の原子%による比率(Si/[Si+Al]比率)が高くなる組成傾斜膜であるとより好ましい(この場合、位相シフト膜3側の領域と透光性基板1側の領域に挟まれた領域のSi/[Si+Al]比率は、両方の領域の中間の範囲内となる。)。この構成のエッチングストッパー膜2は、位相シフト膜3に対してパターンを形成するときに行うフッ素系ガスによるドライエッチングを様々な条件で行っても透光性基板1上に残存し、透光性基板1の表面がエッチングされることを抑制する。また、この構成のエッチングストッパー膜2は、位相シフト膜3にパターンが形成された後に薬液洗浄が行われても透光性基板1上に残存し、位相シフト膜3のパターンが透光性基板1上から脱離することを抑制する。
一方、エッチングストッパー膜2が多層膜の場合は、位相シフト膜3側の層のSi/[Si+Al]比率を透光性基板1側の層のSi/[Si+Al]比率よりも高くする。3層以上の多層膜である場合のエッチングストッパー膜2における位相シフト膜3側の層と透光性基板1側の層に挟まれた層のSi/[Si+Al]比率は、位相シフト膜3側の層よりも高くしてもよく、また透光性基板1側の層よりも低くしてもよい。3層以上の多層膜である場合のエッチングストッパー膜2は、位相シフト膜3側の層と透光性基板1側の層に挟まれた層のSi/[Si+Al]比率が、位相シフト膜3側の層と透光性基板1側の層の中間の範囲内であるとより好ましい。この構成のエッチングストッパー膜2は、位相シフト膜3に対してパターンを形成するときに行うフッ素系ガスによるドライエッチングを様々な条件で行っても透光性基板1上に残存し、透光性基板1の表面がエッチングされることを抑制する。また、この構成のエッチングストッパー膜2は、位相シフト膜3にパターンが形成された後に薬液洗浄が行われても透光性基板1上に残存し、位相シフト膜3のパターンが透光性基板1上から脱離することを抑制する。
エッチングストッパー膜2は、露光光に対する透過率が高いほど好ましいが、エッチングストッパー膜2は、透光性基板1との間でフッ素系ガスに対する十分なエッチング選択性も同時に求められるため、露光光に対する透過率を透光性基板1と同じ透過率とすることは難しい(すなわち、露光光に対する透光性基板1(合成石英ガラス)の透過率を100%としたときのエッチングストッパー膜2の透過率は、100%未満となる。)。露光光に対する透光性基板1の透過率を100%としたときのエッチングストッパー膜2の透過率は、94%以上であることが好ましく、95%以上であるとより好ましく、96%以上であるとさらに好ましい。
エッチングストッパー膜2は、アルミニウム以外の金属の含有量を2原子%以下とすることが好ましく、1原子%以下とするとより好ましく、X線光電子分光法による組成分析を行った時に検出下限値以下であるとさらに好ましい。エッチングストッパー膜2がアルミニウム以外の金属を含有していると、露光光に対する透過率が低下する要因となるためである。また、エッチングストッパー膜2は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素以外の元素の合計含有量が5原子%以下であることが好ましく、3原子%以下であるとより好ましい。
エッチングストッパー膜2は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素からなる材料で形成するとよい。ケイ素、アルミニウムおよび酸素からなる材料とは、これらの構成元素のほか、スパッタ法で成膜する際、エッチングストッパー膜2に含有されることが不可避な元素(ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)等の貴ガス、水素(H)、炭素(C)等)のみを含有する材料のことをいう。エッチングストッパー膜2中にケイ素やアルミニウムと結合する他の元素の存在を極小にすることにより、エッチングストッパー膜2中におけるケイ素および酸素の結合とアルミニウムおよび酸素の結合の比率を大幅に高めることができる。これにより、フッ素系ガスによるドライエッチングのエッチング耐性をより高くし、薬液洗浄に対する耐性をより高め、露光光に対する透過率をより高めることができる。
エッチングストッパー膜2は、酸素含有量が50原子%以上であることが好ましく、55原子%以上であるとより好ましい。露光光に対する透過率を上記の数値以上とするには、エッチングストッパー膜2中に酸素を多く含有させることが求められるためである。また、酸素と未結合のケイ素よりも酸素と結合した状態のケイ素の方が、薬液洗浄(特に、アンモニア過水やTMAH等のアルカリ洗浄)に対する耐性が高くなる傾向があり、エッチングストッパー膜2中に存在する全てのケイ素のうちの酸素と結合状態となっているものの比率を高くすることが好ましい。他方、エッチングストッパー膜2は、完全酸化した膜ではない不完全酸化膜であると好ましい。ケイ素を含有する材料で形成される位相シフト膜3との間で相互拡散が起こりやすくなり、位相シフト膜3のパターンとエッチングストッパー膜2との密着性が向上するためである。エッチングストッパー膜2は、酸素含有量が66原子%以下であることが好ましく、66原子%未満であるとより好ましい。
位相シフト膜3側のエッチングストッパー膜2は、ケイ素(Si)およびアルミニウム(Al)の合計含有量[原子%]に対するケイ素(Si)の含有量[原子%]の比率(Si/[Si+Al]比率)が1/5以上であることが好ましい。位相シフト膜3側のエッチングストッパー膜2のSi/[Si+Al]比率を1/5以上とすることにより、薬液洗浄に対する耐性を十分に高くすることができる。また、エッチングストッパー膜2の透過率をAlで形成する場合よりも高くすることができる。位相シフト膜3側のエッチングストッパー膜2におけるSi/[Si+Al]比率は1/3以上であるとより好ましい。
位相シフト膜3側のエッチングストッパー膜2は、Si/[Si+Al]比率が4/5以下であることが好ましい。位相シフト膜3側のエッチングストッパー膜2のSi/[Si+Al]比率を4/5以下とすることにより、フッ素系ガスによるドライエッチングに対する位相シフト膜3側のエッチングストッパー膜2のエッチングレートを透光性基板1のエッチングレートの1/3以下とすることができる(透光性基板1と位相シフト膜3側のエッチングストッパー膜2との間で3倍以上のエッチング選択比が得られる。)。
位相シフト膜3側のエッチングストッパー膜2におけるSi/[Si+Al]比率は3/4以下であるとより好ましく、2/3以下であるとさらに好ましい。Si/[Si+Al]比率が2/3以下の場合、フッ素系ガスによるドライエッチングに対する位相シフト膜3側のエッチングストッパー膜2のエッチングレートを透光性基板1のエッチングレートの1/5以下とすることができる(透光性基板1と位相シフト膜3側のエッチングストッパー膜2との間で5倍以上のエッチング選択比が得られる。)。
透光性基板1側のエッチングストッパー膜2におけるSi/[Si+Al]比率は、上記の規定の範囲内であれば特段制約はない。透光性基板1側のエッチングストッパー膜2は、Si/[Si+Al]比率がゼロ(ケイ素を含有しない。)であってもよい。透光性基板1側のエッチングストッパー膜2は、Si/[Si+Al]比率が1/5以上であるとより好ましい。これは、透光性基板1側のエッチングストッパー膜の薬液洗浄に対する耐性を確保するためと、エッチングストッパー膜2の露光光に対する透過率を高くするためである。
エッチングストッパー膜2は、アモルファス構造および微結晶構造の少なくともいずれかの構造を有することが好ましい。この構造にすることにより、エッチングストッパー膜2は、その表面粗さが抑えられ、露光光に対する透過率を高めることができる。具体的には、エッチングストッパー膜2は、ケイ素および酸素の結合とアルミニウムおよび酸素の結合を含む状態のアモルファス構造および微結晶構造の少なくともいずれかの構造を有することが好ましい。エッチングストッパー膜2は、ケイ素および酸素の結合とアルミニウムおよび酸素の結合を含む状態のアモルファス構造であるとより好ましい。
エッチングストッパー膜2は、厚さが3nm以上であることが好ましい。エッチングストッパー膜2をケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料で形成することにより、フッ素系ガスに対するエッチングレートは大幅に小さくなるが、全くエッチングされないわけではない。また、エッチングストッパー膜2を薬液洗浄した場合においても、全く膜減りしないわけではない。マスクブランクから転写用マスクを製造するまでに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングによる影響、薬液洗浄による影響を考慮すると、エッチングストッパー膜2の厚さは3nm以上あることが望まれる。エッチングストッパー膜2の厚さは4nm以上であると好ましく、5nm以上であるとより好ましい。
エッチングストッパー膜2は、露光光に対する透過率が比較的高い材料であるが、厚さが厚くなるにつれて透過率は低下する。また、エッチングストッパー膜2は、透光性基板1を形成する材料よりも屈折率が高く、エッチングストッパー膜2の厚さが厚くなるほど、位相シフト膜3に実際に形成するマスクパターン(Bias補正やOPCやSRAF等を付与したパターン)を設計する際に与える影響が大きくなる。これらの点を考慮すると、エッチングストッパー膜2は、20nm以下であることが望まれ、15nm以下であると好ましく、10nm以下であるとより好ましい。
エッチングストッパー膜2は、膜厚方向の組成が均一でないため、屈折率や消衰係数が膜厚方向で変動しやすい。しかし、このようなエッチングストッパー膜2の場合であっても、屈折率と消衰係数を膜厚方向に対する平均値で表したときの数値が所定の範囲にあることが望ましい。薄膜の膜厚方向に対して単純平均を取った屈折率や消衰係数を、平均屈折率naveおよび平均消衰係数kaveとした場合、エッチングストッパー膜2のArFエキシマレーザーの露光光に対する屈折率nave(以下、単に屈折率naveという。)は1.79以下であると好ましく、1.72以下であるとより好ましい。位相シフト膜3に実際に形成するマスクパターンを設計する際に与える影響を小さくするためである。エッチングストッパー膜2は、アルミニウムを含有する材料で形成されるため、透光性基板1と同じ屈折率nとすることはできない。エッチングストッパー膜2は、屈折率naveが1.57以上で形成される。一方、エッチングストッパー膜2は、ArFエキシマレーザーの露光光に対する消衰係数kave(以下、単に消衰係数kaveという。)が0.04以下であると好ましい。エッチングストッパー膜2の露光光に対する透過率を高くするためである。エッチングストッパー膜2は、消衰係数kaveが0.000以上の材料で形成される。
透光性基板1とエッチングストッパー膜2の間に他の膜を介在させてもよい。この場合、その他の膜は、エッチングストッパー膜2よりも露光光に対する透過率が高く、屈折率nが小さい材料を適用することが求められる。マスクブランクから位相シフトマスクが製造されたとき、その位相シフトマスクにおける位相シフト膜3のパターンがない領域の透光部には、この他の膜とエッチングストッパー膜2との積層構造が存在することになる。透光部は露光光に対する高い透過率が求められ、この積層構造の全体での露光光に対する透過率を高くする必要があるためである。他の膜の材料は、例えば、ケイ素と酸素からなる材料、あるいはこれらにハフニウム、ジルコニウム、チタン、バナジウムおよびホウ素から選ばれる1以上の元素を含有させた材料などが挙げられる。
位相シフト膜3は、ケイ素を含有する材料からなり、実質的に露光に寄与しない強度の光を透過させるものであって、所定の位相差を有するものである。具体的には、この位相シフト膜3をパターニングすることにより、位相シフト膜3が残る部分と残らない部分とを形成し、位相シフト膜3が無い部分を透過した光(ArFエキシマレーザー露光光)に対して、位相シフト膜3を透過した光(実質的に露光に寄与しない強度の光)の位相が実質的に反転した関係(所定の位相差)になるようにする。こうすることにより、回折現象によって互いに相手の領域に回り込んだ光が打ち消しあうようにし、境界部における光強度をほぼゼロとし境界部のコントラスト、即ち解像度を向上させるものである。
位相シフト膜3は、露光光を1%以上の透過率で透過させる機能と、位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有することが好ましい。また、位相シフト膜3の透過率は、2%以上であるとより好ましい。位相シフト膜3の透過率は、30%以下であることが好ましく、20%以下であるとより好ましい。
近年、ハーフトーン型の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、転写対象物(半導体ウェハ上のレジスト膜等)に露光転写する際、位相シフトパターンのパターン線幅(特にライン・アンド・スペースパターンのパターンピッチ)による露光転写のベストフォーカスの差が大きいことが問題となってきている。位相シフトパターンのパターン線幅によるベストフォーカスの変動幅を小さくするには、位相シフト膜3における所定の位相差を170度以下とするとよい。
位相シフト膜3の厚さは80nm以下であることが好ましく、70nm以下であるとより好ましい。また、上記の位相シフトパターンのパターン線幅によるベストフォーカスの変動幅を小さくするには、位相シフト膜3の厚さは65nm以下とすることが特に好ましい。位相シフト膜3の厚さは50nm以上とすることが好ましい。アモルファスの材料で位相シフト膜3を形成しつつ、位相シフト膜3の位相差を150度以上とするためには50nm以上は必要なためである。
位相シフト膜3において、前記の光学特性と膜の厚さに係る諸条件を満たすため、位相シフト膜の露光光(ArF露光光)に対する屈折率nは、1.9以上であると好ましく、2.0以上であるとより好ましい。また、位相シフト膜3の屈折率nは、3.1以下であると好ましく、2.7以下であるとより好ましい。位相シフト膜3のArF露光光に対する消衰係数kは、0.26以上であると好ましく、0.29以上であるとより好ましい。また、位相シフト膜3の消衰係数kは、0.62以下であると好ましく、0.54以下であるとより好ましい。
他方、後述のように、位相シフト膜3を露光光に対する透過率が相対的に低い材料で形成した低透過層と露光光に対する透過率が相対的に高い材料で形成した高透過層を1組以上積層した構造とする場合もある。この場合、低透過層は、ArF露光光に対する屈折率nが2.5未満(好ましくは2.4以下、より好ましくは2.2以下、さらに好ましくは2.0以下)であり、かつ消衰係数kが1.0以上(好ましくは1.1以上、より好ましくは1.4以上、さらに好ましくは1.6以上)である材料で形成されていることが好ましい。また、高透過層は、ArF露光光に対する屈折率nが2.5以上(好ましくは2.6以上)であり、消衰係数kが1.0未満(好ましくは0.9以下、より好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0.4以下)である材料で形成されていることが好ましい。
なお、位相シフト膜3を含む薄膜の屈折率nと消衰係数kは、その薄膜の組成だけで決まるものではない。その薄膜の膜密度や結晶状態なども屈折率nや消衰係数kを左右する要素である。このため、反応性スパッタリングで薄膜を成膜する時の諸条件を調整して、その薄膜が所望の屈折率nおよび消衰係数kとなるように成膜する。位相シフト膜3を、上記の屈折率nと消衰係数kの範囲にするには、反応性スパッタリングで成膜する際に、貴ガスと反応性ガス(酸素ガス、窒素ガス等)の混合ガスの比率を調整することが有効であるが、それだけに限られることではない。反応性スパッタリングで成膜する際における成膜室内の圧力、スパッタターゲットに印加する電力、ターゲットと透光性基板1との間の距離等の位置関係など多岐に渡る。また、これらの成膜条件は成膜装置に固有のものであり、形成される位相シフト膜3が所望の屈折率nおよび消衰係数kになるように適宜調整されるものである。
一般に、ケイ素を含有する材料からなる位相シフト膜3は、フッ素系ガスによるドライエッチングでパターニングされる。ガラス材料からなる透光性基板1は、フッ素系ガスによるドライエッチングでエッチングされやすく、特に炭素を含有するフッ素系ガスに対しては耐性が低い。このため、位相シフト膜3をパターニングする際には、炭素を含有しないフッ素系ガス(SF等)をエッチングガスとするドライエッチングが適用されることが多い。フッ素系ガスによるドライエッチングの場合、比較的エッチングの異方性を高めやすい。しかし、レジストパターン等のエッチングマスクパターンをマスクとして、位相シフト膜3をフッ素系ガスによるドライエッチングでパターニングするとき、ドライエッチングを位相シフト膜3の下端に最初に到達した段階(これをジャストエッチングといい、エッチング開始からジャストエッチングの段階までに要した時間をジャストエッチングタイムという。)で止めてしまうと、位相シフトパターンの側壁の垂直性は低くなり、位相シフトマスクとしての露光転写性能に影響が生じる。また、位相シフト膜3に形成するパターンは、マスクブランクの面内で疎密差があり、パターンが比較的密な部分はドライエッチングの進行が遅くなるので、その部分にエッチング残りが発生しやすくなる。
これらの事情から、位相シフト膜3のドライエッチング時、ジャストエッチングの段階まで到達しても、さらに追加のエッチングを継続(オーバーエッチング)し、位相シフトパターンの側壁の垂直性を高め、面内での位相シフトパターンのCD均一性を高めることが行われる(ジャストエッチング終了からオーバーエッチング終了までの時間をオーバーエッチングタイムという。)。透光性基板1と位相シフト膜3の間にエッチングストッパー膜2がない場合、位相シフト膜3に対してオーバーエッチングを行うと、位相シフト膜3のパターン側壁にエッチングが進むのと同時に透光性基板1の表面のエッチングが進んでしまうため、あまり長い時間のオーバーエッチングをすることはできず(透光性基板が表面から4nm掘り込まれる程度まででやめていた。)、位相シフトパターンの垂直性を高めることは難しかった。
位相シフトパターンの側壁の垂直性をより高めることを目的に、位相シフト膜3のドライエッチング時に掛けるバイアス電圧を従来よりも高くする(以下、「高バイアスエッチング」という。)ことが行われている。この高バイアスエッチングにおいて、位相シフトパターンの側壁近傍の透光性基板1が局所的にエッチングで掘り込まれる現象、いわゆるマイクロトレンチが発生することが問題となっている。このマイクロトレンチの発生は、透光性基板1にバイアス電圧を掛けることで生じるチャージアップにより、イオン化したエッチングガスが透光性基板1よりも抵抗値の低い位相シフトパターンの側壁側へ回り込むことに起因していると考えられている。
他方、透光性基板1と位相シフト膜3の間にAlからなるエッチングストッパー膜を設けた場合、位相シフト膜3に対してオーバーエッチングを行っても、エッチングストッパー膜がエッチングされる量は微小であるため、位相シフトパターンを精度よく形成することができ、高バイアスエッチングで生じやすいマイクロトレンチも抑制できる。しかし、その後に薬液洗浄を行うことで、エッチングストッパー膜が溶解してしまい、位相シフトパターンが脱落する現象が発生しやすい。この第1の実施の形態のエッチングストッパー膜2は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料で形成されているため、位相シフト膜3に対してオーバーエッチングを行っても、エッチングストッパー膜2が残るので、高バイアスエッチングで生じやすいマイクロトレンチも抑制でき、さらにその後に行われる薬液洗浄に対する耐性も十分に高く、位相シフトパターンが脱落する現象も抑制される。
位相シフト膜3は、ケイ素および窒素を含有する材料で形成することができる。ケイ素に窒素を含有させることで、ケイ素のみからなる材料よりも屈折率nを大きく(より薄い厚さで大きな位相差が得られる。)、かつ消衰係数kを小さく(透過率を高くすることができる。)することができ、位相シフト膜として好ましい光学特性を得ることができる。
位相シフト膜3は、ケイ素と窒素からなる材料、またはケイ素と窒素からなる材料に半金属元素、非金属元素および貴ガスから選ばれる1以上の元素を含有する材料(以下、これらの材料を総称して「ケイ素系材料」という。)で形成することができる。このケイ素材料の位相シフト膜3は、ArF露光光に対する耐光性が低下する要因となり得る遷移金属は含有しない。また、遷移金属を除く金属元素についても、ArF露光光に対する耐光性が低下する要因となり得る可能性は否定できないため、含有させない。ケイ素系材料の位相シフト膜3は、いずれの半金属元素を含有してもよい。この半金属元素の中でも、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモンおよびテルルから選ばれる一以上の元素を含有させると、位相シフト膜3をスパッタリング法で成膜するときにターゲットとして用いるケイ素の導電性を高めることが期待できるため、好ましい。
ケイ素系材料の位相シフト膜3には、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)等の貴ガスを含有させてもよい。ケイ素系材料の位相シフト膜3は、酸素の含有量を10原子%以下に抑えることが好ましく、5原子%以下とすることがより好ましく、積極的に酸素を含有させることをしない(X線光電子分光法の組成分析の結果が検出下限値以下)ことがさらに好ましい。ケイ素系材料に酸素を含有させると、消衰係数kが大幅に小さくなる傾向があり、位相シフト膜3の全体の厚さが厚くなるためである。
ケイ素系材料の位相シフト膜3は、酸化が避けられない表層(酸化層)を除き、単層で構成してもよく、また複数層の積層で構成してもよい。ケイ素系材料の単層膜(表層の酸化層を含む)で、ArF露光光に対し、所定の透過率で透過し、かつ所定の位相差を生じさせるような光学特性を有する位相シフト膜3を形成することは可能である。しかし、そのような光学特性を有する材料の位相シフト膜3を、スパッタリング法で成膜する場合、その方式によっては光学特性の均一性が高い膜や低欠陥の膜を安定的に形成することが難しい成膜条件になることがある。これらのことを考慮し、ケイ素系材料の位相シフト膜3を、窒素含有量が比較的少ない低透過層と窒素含有量が比較的多い高透過層が積層した構造としてもよい。
ケイ素系材料の位相シフト膜3における低透過層および高透過層は、他の膜を介さずに、直接互いに接して積層する構造であることが好ましい。また、低透過層および高透過層のいずれにも金属元素を含有する材料からなる膜が接しない膜構造であることが好ましい。ケイ素を含有する膜に金属元素を含有する膜が接した状態で加熱処理やArF露光光の照射が行われると、金属元素がケイ素を含有する膜中に拡散しやすい傾向があるためである。
ケイ素系材料の位相シフト膜3における低透過層および高透過層は、同じ構成元素からなることが好ましい。低透過層および高透過層のいずれかが異なる構成元素を含んでおり、これらが接して積層している状態で加熱処理やArF露光光の照射が行われた場合、その異なる構成元素が、その構成元素を含んでいない側の層に移動して拡散するおそれがある。そして、低透過層および高透過層の光学特性が、成膜当初から大きく変わってしまうおそれがある。位相シフト膜3における低透過層および高透過層のエッチングストッパー膜2側からの積層順は、いずれの順であってもよい。
ケイ素系材料の位相シフト膜3は、1層の低透過層と1層の高透過層とからなる1組の積層構造を2組以上有することが好ましい。また、低透過層および高透過層は、いずれの1層の厚さが20nm以下であることが好ましい。
ケイ素系材料の位相シフト膜3は、透光性基板1から最も離れた位置に、ケイ素、窒素および酸素からなる材料、または当該材料に半金属元素、非金属元素および貴ガスから選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成された最上層を有する。ケイ素、窒素および酸素からなる材料、または当該材料に半金属元素、非金属元素および貴ガスから選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成された最上層は、層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成のほか、層の厚さ方向で組成傾斜した構成、すなわち最上層が透光性基板1から遠ざかっていくに従い層中の酸素含有量が増加していく組成傾斜を有する構成も含まれる。層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成の最上層に好適な材料としては、SiOやSiONが挙げられる。層の厚さ方向で組成傾斜した構成の最上層としては、透光性基板1側がSiNであり、透光性基板1から遠ざかっていくに従って酸素含有量が増加して表層がSiOあるいはSiONである構成であることが好ましい。
ケイ素系材料の位相シフト膜3における低透過層、高透過層および最上層は、スパッタリングによって形成されるが、DCスパッタリング、RFスパッタリングおよびイオンビームスパッタリングなどのいずれのスパッタリングも適用可能である。導電性が低いターゲット、例えばケイ素ターゲット、半金属元素を含有しないあるいは含有量の少ないケイ素化合物ターゲットなどを用いる場合においては、RFスパッタリングやイオンビームスパッタリングを適用することが好ましいが、成膜レートを考慮すると、RFスパッタリングを適用することがより好ましい。
EB欠陥修正のエッチング終点検出は、黒欠陥に対して電子線を照射した時に、照射を受けた部分から放出されるオージェ電子、2次電子、特性X線、後方散乱電子の少なくともいずれか1つを検出することによって行われている。例えば、電子線の照射を受けた部分から放出されるオージェ電子を検出する場合には、オージェ電子分光法(AES)によって、主に材料組成の変化を見ている。また、2次電子を検出する場合には、SEM像から主に表面形状の変化を見ている。さらに、特性X線を検出する場合には、エネルギー分散型X線分光法(EDX)や波長分散X線分光法(WDX)によって、主に材料組成の変化を見ている。後方散乱電子を検出する場合には、電子線後方散乱回折法(EBSD)によって、主に材料の組成や結晶状態の変化を見ている。
ガラス材料からなる透光性基板1の主表面に接してケイ素系材料の位相シフト膜(単層膜、多層膜とも)3が設けられた構成のマスクブランクは、位相シフト膜3がケイ素と窒素がほとんどの成分であるのに対し、透光性基板1がケイ素と酸素がほとんどの成分であり、両者の差は実質的に酸素と窒素しかない。このため、EB欠陥修正のエッチング修正の検出が難しい組み合わせであった。これに対し、エッチングストッパー膜2の表面に接して位相シフト膜3が設けられた構成の場合、位相シフト膜3がケイ素と窒素がほとんどの成分であるのに対し、エッチングストッパー膜2がケイ素と酸素の他にアルミニウムを含んでいる。このため、EB欠陥修正のエッチング修正では、アルミニウムの検出を目安にすればよく、終点検出が比較的容易となる。
一方、位相シフト膜3は、遷移金属、ケイ素および窒素を含有する材料で形成することができる。この場合の遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)およびパラジウム(Pd)等のうちいずれか1つ以上の金属またはこれらの金属の合金が挙げられる。位相シフト膜3の材料には、前記の元素に加え、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)、水素(H)およびホウ素(B)等の元素が含まれてもよい。また、位相シフト膜3の材料には、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)等の不活性ガスが含まれてもよい。EB欠陥修正のエッチング終点の検出のことを考慮すると、この位相シフト膜3には、アルミニウムを含有させないことが好ましい。
位相シフト膜3は、膜中の遷移金属(M)の含有量[原子%]を、遷移金属(M)とケイ素(Si)との合計含有量[原子%]で除して算出した比率(以下、M/[M+Si]比率という。)が、0.15以下であることが求められる。この位相シフト膜3は、遷移金属の含有量が多くなるに従い、炭素を含有しないフッ素系ガス(SF等)によるドライエッチングのエッチングレートが速くなり、透光性基板1との間でのエッチング選択性が得られやすくなるが、それでも十分ではない。また、位相シフト膜3のM/[M+Si]比率がこれよりも高くなると、所望の透過率を得るために酸素を多く含有させる必要が生じ、位相シフト膜3の厚さが厚くなる恐れがあり、好ましくない。
ArF露光光の照射に対する耐性を高くする必要がある場合、位相シフト膜3のM/[M+Si]比率が、0.04未満であることが好ましい。位相シフト膜3中におけるM/[M+Si]比率は、0.03以下であるとより好ましく、0.02以下であるとさらに好ましい。
他方、位相シフト膜3におけるM/(M+Si)比率は、0.01以上とすることが好ましい。マスクブランクから位相シフトマスクを作製する際、位相シフト膜3のパターンに存在する黒欠陥に対して電子線照射とXeF等の非励起ガスによる欠陥修正を適用するときに、位相シフト膜3のシート抵抗が低い方が好ましいためである。
遮光膜4は、単層構造および2層以上の積層構造のいずれも適用可能である。また、単層構造の遮光膜および2層以上の積層構造の遮光膜の各層は、膜または層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成であっても、層の厚さ方向で組成傾斜した構成であってもよい。
図1に記載のマスクブランク100は、位相シフト膜3の上に、他の膜を介さずに遮光膜4を積層した構成となっている。この構成の場合の遮光膜4では、位相シフト膜3にパターンを形成する際に用いられるエッチングガスに対して十分なエッチング選択性を有する材料を適用する必要がある。
この場合の遮光膜4は、クロムを含有する材料で形成することが好ましい。遮光膜4を形成するクロムを含有する材料としては、クロム金属の他、クロム(Cr)に酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)およびフッ素(F)から選ばれる1つ以上の元素を含有する材料が挙げられる。一般に、クロム系材料は、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスでエッチングされる。遮光膜4を形成する材料としては、クロムに酸素、窒素、炭素、ホウ素およびフッ素から選ばれる1つ以上の元素を含有する材料が好ましい。また、遮光膜4を形成するクロムを含有する材料にモリブデン(Mo)、インジウム(In)およびスズ(Sn)のうち1つ以上の元素を含有させてもよい。
なお、本発明のマスクブランクは、図1に示したものに限定されるものではなく、位相シフト膜3と遮光膜4の間に別の膜(エッチングマスク兼ストッパー膜)を介するように構成してもよい。この場合においては、前記のクロムを含有する材料でエッチングマスク兼ストッパー膜を形成し、ケイ素を含有する材料で遮光膜4を形成する構成とすることが好ましい。
遮光膜4を形成するケイ素を含有する材料には、遷移金属を含有させてもよく、遷移金属以外の金属元素を含有させてもよい。遮光膜4に含有させる遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、パラジウム(Pd)等のいずれか1つの金属またはこれらの金属の合金が挙げられる。
遮光膜4は、位相シフトマスクの完成後において、位相シフト膜3との積層構造で遮光帯等を形成する。このため、遮光膜4は、位相シフト膜3との積層構造で、2.0よりも大きい光学濃度(OD)を確保することが求められ、2.8以上のODであると好ましく、3.0以上のODがあるとより好ましい。
本実施の形態では、遮光膜4上に積層したハードマスク膜5を、遮光膜4をエッチングする時に用いられるエッチングガスに対してエッチング選択性を有する材料で形成している。これにより、以下に述べるように、レジスト膜を遮光膜4のマスクとして直接用いる場合よりもレジスト膜の厚さを大幅に薄くすることができる。マスクブランク100において、ハードマスク膜5を形成せずに、遮光膜4上にレジストパターンを直接形成し、そのレジストパターンをマスクにして遮光膜4のエッチングを直接行うようにしてもよい。
このハードマスク膜5は、遮光膜4がクロムを含有する材料で形成されている場合は、前記のケイ素を含有する材料で形成されることが好ましい。ここで、この場合のハードマスク膜5は、有機系材料のレジスト膜との密着性が低い傾向があるため、ハードマスク膜5の表面に対してHMDS(Hexamethyldisilazane)処理を施し、表面の密着性を向上させることが好ましい。なお、この場合のハードマスク膜5は、SiO、SiN、SiON等で形成されるとより好ましい。
遮光膜4がクロムを含有する材料で形成されている場合、ハードマスク膜5の材料として、タンタルを含有する材料も適用可能である。この場合におけるタンタルを含有する材料としては、タンタル金属の他、タンタルに窒素、酸素、ホウ素および炭素から選ばれる1つ以上の元素を含有させた材料などが挙げられる。なお、ハードマスク膜5は、遮光膜4がケイ素を含有する材料で形成されている場合、前記のクロムを含有する材料で形成されることが好ましい。
エッチングストッパー膜2、位相シフト膜3、遮光膜4、ハードマスク膜5は、スパッタリングによって形成されるが、DCスパッタリング、RFスパッタリングおよびイオンビームスパッタリングなどのいずれのスパッタリングも適用可能である。導電性が低いターゲットを用いる場合においては、RFスパッタリングやイオンビームスパッタリングを適用することが好ましいが、成膜レートを考慮すると、RFスパッタリングを適用するとより好ましい。
エッチングストッパー膜2の形成方法としては、上記のSi/[Si+Al]比率、および酸素含有量の範囲からあらかじめ選定した組成になるようにしたスパッタリング法を適用できる。この場合、成膜室内にケイ素および酸素の混合ターゲットとアルミニウムおよび酸素の混合ターゲットの2つのターゲットを配置して、透光性基板1上にエッチングストッパー膜2を形成することが好ましい。具体的には、その成膜室内の基板ステージに透光性基板1を配置し、アルゴンガス等の貴ガス雰囲気下(あるいは、酸素ガスまたは酸素を含有するガスとの混合ガス雰囲気)で、2つのターゲットのそれぞれに所定の電圧を印加する(この場合、RF電源が好ましい。)。これにより、プラズマ化した貴ガス粒子が2つのターゲットに衝突してそれぞれスパッタ現象が起こり、透光性基板1の表面にケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有するエッチングストッパー膜2が形成される。このエッチングストッパー膜2の形成中に、2つのターゲット間の電圧を調整し、各ターゲットから飛散するスパッタ粒子の量を調整する。これにより、エッチングストッパー膜2を上記のような構成とすることができる。なお、これらの場合の2つのターゲットにSiOターゲットとAlターゲットを適用するとより好ましい。
一方、エッチングストッパー膜2の形成方法として、最初にアルミニウムおよび酸素を含有するエッチングストッパー膜2をスパッタリング法で形成し、次にエッチングストッパー膜2に接してケイ素を含有する位相シフト膜(パターン形成用薄膜)3を形成し、エッチングストッパー膜2および位相シフト膜3が形成された後の透光性基板1に対し、400℃以上の温度で加熱処理を行うことで、上記の組成傾斜膜のエッチングストッパー膜2を形成する方法も適用できる。
具体的には、最初に、成膜室内にアルミニウムおよび酸素の混合ターゲットを配置し、基板ステージに透光性基板1を配置し、アルゴンガス等の貴ガス雰囲気下(あるいは、酸素ガスまたは酸素を含有するガスとの混合ガス雰囲気)で、ターゲットに所定の電圧を印加する(この場合、RF電源が好ましい。)。このことにより、透光性基板1上にアルミニウムと酸素を含有するエッチングストッパー膜2を形成する。つぎに、成膜室内にケイ素を含有するターゲットを配置し、基板ステージにエッチングストッパー膜2が設けられた透光性基板1を配置する。そして、反応性ガスと貴ガスの混合ガスの雰囲気下で、ターゲットに所定の電圧を印加する(この場合、RF電源が好ましい。)ことにより、透光性基板1上にケイ素を含有する位相シフト膜3を形成する。
次に、エッチングストッパー膜2および位相シフト膜3がこの順に積層した透光性基板1を加熱炉内に設置し、400℃以上の温度で加熱処理を行う。エッチングストッパー膜2および位相シフト膜3が高温で加熱されることにより、位相シフト膜3中のケイ素がエッチングストッパー膜2の位相シフト膜3側から透光性基板1側に向かって拡散する現象が起こる。これにより、エッチングストッパー膜2は、位相シフト膜3側のSi/[Si+Al]比率が透光性基板1側のSi/[Si+Al]比率よりも高い組成傾斜膜となる。この方法で形成したエッチングストッパー膜2は、位相シフト膜3との間の密着性が高く、位相シフト膜3にパターンを形成したときにパターンがより脱離しにくいものとなる。
上記のエッチングストッパー膜2および位相シフト膜3に対する加熱処理の加熱温度は、450℃以上であるとより好ましい。一方、上記加熱処理の加熱温度は、変形等の透光性基板1への影響を考慮すると、900℃以下であることが望ましい。また、上記加熱処理の加熱時間は、10分以上であると好ましく、20分以上であるとより好ましく、30分以上であるとさらに好ましい。一方、上記加熱処理の加熱時間は、120分以下であると好ましく、90分以下であるとより好ましい。上記の加熱処理は、位相シフト膜3の膜応力を低減させるためのアニール処理と兼ねることができる。位相シフト膜3は、遷移金属、ケイ素および窒素を含有する材料、ケイ素と窒素を含有する材料のいずれを適用してもよい。
加熱処理で形成する組成傾斜膜のエッチングストッパー膜2の場合、スパッタリング法で形成されたときのアルミニウムおよび酸素を含有する材料からなるエッチングストッパー膜2は、完全酸化していない(酸素欠損が存在している不完全酸化膜。)ことが好ましい。不完全酸化膜のエッチングストッパー膜2は、完全酸化膜のエッチングストッパー膜に比べて加熱処理時に位相シフト膜3からケイ素が拡散しやすく、Si/[Si+Al]比率が組成傾斜したエッチングストッパー膜2が形成されやすいためである。なお、上記のスパッタリング法で形成されたときのアルミニウムおよび酸素を含有する材料からなるエッチングストッパー膜は、ケイ素を含有してもよいが、Si/[Si+Al]比率は1/5以下であることが好ましい。
エッチングストッパー膜2および位相シフト膜3をスパッタリング法で形成するときに用いる貴ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンが挙げられる。また、位相シフト膜3をスパッタリング法で形成するときに用いる反応性ガスとしては、酸素、窒素、一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、エタンなどが挙げられる。
他方、エッチングストッパー膜2の形成方法として、最初にアルミニウムおよび酸素を含有するエッチングストッパー膜2をスパッタリング法で形成し、次にエッチングストッパー膜2に接してケイ素を含有する位相シフト膜(パターン形成用薄膜)3を形成し、エッチングストッパー膜2および位相シフト膜3が形成された後の透光性基板1に対し、光照射処理を行うことで、上記の組成傾斜膜のエッチングストッパー膜2を形成する方法も適用できる。この光照射処理では、エッチングストッパー膜2および位相シフト膜3が形成された後の透光性基板1に対して、閃光ランプから発せられる光(高エネルギー線)を照射する処理を行う。
閃光ランプは、連続した幅の広い波長領域をもつ光を発することのできる光源である。閃光ランプとしては、例えば、キセノン等のガスをガラス等の光を通す材料でできた管に封入し、これに高電圧をパルス状に印加することによって光を発することができるランプを用いることができる。閃光ランプの照射強度は、0.1〜100J/cm、好ましくは1〜50J/cm、より好ましくは10〜50J/cmである。照射強度がこの範囲よりも大きいと、位相シフト膜3が飛散したり、表面あれが生じたりするおそれがある。照射強度がこの範囲よりも小さいと、位相シフト膜3中のケイ素がエッチングストッパー膜2内に拡散しないおそれがある。
閃光ランプによる光の照射時間は、1秒以下、好ましくは0.1秒以下、更に好ましくは0.01秒以下である。閃光ランプから発せられる光の照射時間を短くすることによって、透光性基板1をあまり加熱せずに位相シフト膜3中のケイ素をエッチングストッパー膜2内に拡散させることができる。これにより、透光性基板1にダメージを与えることを防止することができる。また、閃光ランプからの光は、膜面から照射しても、透光性基板1のエッチングストッパー膜2が設けられていない主表面側から照射してもよい。
閃光ランプによって光を照射する際に透光性基板1が置かれる場所の周囲の雰囲気は、アルゴン等の不活性ガス、窒素、酸素、あるいはこれらのうち2種以上の混合ガス、真空中、大気中など、どのような雰囲気であってもよい。このほかの事項については、上記の加熱処理によって組成傾斜膜のエッチングストッパー膜2を形成する場合と同様である。
以上のように、この実施の形態1のマスクブランク100は、透光性基板1とパターン形成用薄膜である位相シフト膜3の間に、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有し、位相シフト膜3側が透光性基板1側よりもケイ素およびアルミニウムの合計含有量に対するケイ素の含有量の原子%による比率が高いエッチングストッパー膜2を備えている。そして、このエッチングストッパー膜2は、位相シフト膜3にパターンを形成するときに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングに対する耐性が透光性基板1に比べて高く、薬液洗浄に対する耐性も高く、露光光に対する透過率も高いという3つの特性を同時に満たす。これにより、フッ素系ガスによるドライエッチングで位相シフト膜3に転写パターンを形成する際、透光性基板1の主表面を掘り込むことなく、オーバーエッチングを行うことができるため、パターン側壁の垂直性を高めること、またパターンの面内のCD均一性を高めることができる。また、位相シフトマスクの製造途上で発見された位相シフトパターンの黒欠陥をEB欠陥修正で修正するとき、エッチング終点を検出しやすいため、精度よく黒欠陥を修正することができる。
[位相シフトマスクとその製造]
この第1の実施形態に係る位相シフトマスク200(図2参照)は、マスクブランク100のエッチングストッパー膜2が透光性基板1の主表面上の全面に残され、位相シフト膜3に転写パターン(位相シフトパターン3a)が形成され、そして遮光膜4に遮光帯を含むパターン(遮光パターン4b:遮光帯、遮光パッチ等)が形成されていることを特徴としている。マスクブランク100にハードマスク膜5が設けられている構成の場合、この位相シフトマスク200の作製途上でハードマスク膜5は除去される。
すなわち、この第1の実施形態に係る位相シフトマスク200は、透光性基板1の主表面上に転写パターンを有する位相シフト膜である位相シフトパターン3aを備え、位相シフトパターン3a上に遮光帯を含むパターンを有する遮光膜である遮光パターン4bを備え、透光性基板1と位相シフトパターン3aの間にエッチングストッパー膜2を備え、位相シフトパターン3aは、ケイ素を含有し、エッチングストッパー膜2は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有し、位相シフト膜3側が透光性基板1側よりもケイ素およびアルミニウムの合計含有量に対するケイ素の含有量の原子%による比率が高いことを特徴とするものである。
この第1の実施形態に係る位相シフトマスクの製造方法は、前記のマスクブランク100を用いるものであり、ドライエッチングにより遮光膜4に転写用パターンを形成する工程と、転写用パターンを有する遮光膜4をマスクとし、フッ素系ガスを用いるドライエッチングにより位相シフト膜3に転写用パターンを形成する工程と、ドライエッチングにより遮光膜4に遮光帯を含むパターン(遮光帯、遮光パッチ等)を形成する工程とを備えることを特徴としている。以下、図3に示す製造工程にしたがって、この第1の実施形態に係る位相シフトマスク200の製造方法を説明する。なお、ここでは、遮光膜4の上にハードマスク膜5が積層したマスクブランク100を用いた位相シフトマスク200の製造方法について説明する。また、遮光膜4にはクロムを含有する材料を適用し、ハードマスク膜5にはケイ素を含有する材料を適用している場合について説明する。
まず、マスクブランク100におけるハードマスク膜5に接して、レジスト膜をスピン塗布法によって形成する。次に、レジスト膜に対して、位相シフト膜3に形成すべき転写用パターン(位相シフトパターン)である第1のパターンを電子線で描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、位相シフトパターンを有する第1のレジストパターン6aを形成する(図3(A)参照)。続いて、第1のレジストパターン6aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜5に第1のパターン(ハードマスクパターン5a)を形成する(図3(B)参照)。
次に、レジストパターン6aを除去してから、ハードマスクパターン5aをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜4に第1のパターン(遮光パターン4a)を形成する(図3(C)参照)。続いて、遮光パターン4aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、位相シフト膜3に第1のパターン(位相シフトパターン3a)を形成し、かつ同時にハードマスクパターン5aも除去する(図3(D)参照)。
この位相シフト膜3のフッ素系ガスによるドライエッチングの際、位相シフトパターン3aのパターン側壁の垂直性を高めるため、また位相シフトパターン3aの面内のCD均一性を高めるために追加のエッチング(オーバーエッチング)を行っている。そのオーバーエッチング後においても、エッチングストッパー膜2の表面は若干エッチングされた程度であり、位相シフトパターン3aの透光部において透光性基板1の表面は露出していない。
次に、マスクブランク100上にレジスト膜をスピン塗布法によって形成する。その後、レジスト膜に対して、遮光膜4に形成すべきパターン(遮光パターン)である第2のパターンを電子線で描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、遮光パターンを有する第2のレジストパターン7bを形成する(図3(E)参照)。ここで、第2のパターンは比較的大きなパターンなので、電子線を用いた描画に換えて、スループットの高いレーザー描画装置によるレーザー光を用いた露光描画とすることも可能である。
続いて、第2のレジストパターン7bをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜4に第2のパターン(遮光パターン4b)を形成する。さらに、第2のレジストパターン7bを除去し、洗浄等の所定の処理を経て、位相シフトマスク200を得る(図3(F)参照)。洗浄工程において、アンモニア過水を用いたが、エッチングストッパー膜2の表面はほとんど溶解しておらず、位相シフトパターン3aの透光部において透光性基板1の表面は露出していない。
前記のドライエッチングで使用される塩素系ガスとしては、塩素(Cl)が含まれていれば特に制限はない。例えば、Cl、SiCl、CHCl、CHCl、BCl等が挙げられる。また、マスクブランク100は、透光性基板1上にエッチングストッパー膜2を備えているため、前記のドライエッチングで使用されるフッ素系ガスは、フッ素(F)が含まれていれば特に制限はない。例えば、CHF、CF、C、C、SF等が挙げられる。
この実施の形態1の位相シフトマスク200は、前記のマスクブランク100を用いて作製されたものである。エッチングストッパー膜2は、位相シフト膜3にパターンを形成するときに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングに対する耐性が透光性基板1に比べて高く、薬液洗浄に対する耐性も高く、露光光に対する透過率も高いという3つの特性を同時に満たしている。これにより、フッ素系ガスによるドライエッチングで位相シフト膜3に位相シフトパターン(転写パターン)3aを形成する際、透光性基板1の主表面を掘り込むことなく、オーバーエッチングを行うことができる。このため、この実施の形態1の位相シフトマスク200は、位相シフトパターン3aの側壁の垂直性が高く、位相シフトパターン3aの面内のCD均一性も高い。また、位相シフトマスク200の製造途上において、位相シフトパターン3aに黒欠陥が発見され、その黒欠陥に対してEB欠陥修正で修正するとき、エッチング終点を検出しやすいため、精度よく黒欠陥を修正することができる。
[半導体デバイスの製造]
実施の形態1の半導体デバイスの製造方法は、実施の形態1の位相シフトマスク200または実施の形態1のマスクブランク100を用いて製造された位相シフトマスク200を用い、半導体基板上のレジスト膜に転写用パターンを露光転写することを特徴としている。実施の形態1の位相シフトマスク200は、位相シフトパターン3aの側壁の垂直性が高く、位相シフトパターン3aの面内のCD均一性も高い。このため、実施の形態1の位相シフトマスク200を用いて半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写すると、半導体デバイス上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度でパターンを形成することができる。
また、その製造途上で黒欠陥部分をEB欠陥修正で修正した位相シフトマスクを用いて半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した場合においても、精度よく黒欠陥が修正されており、その位相シフトマスク200の黒欠陥が存在していたパターン部分に対応する半導体デバイス上のレジスト膜に転写不良が発生することを防止できる。このため、このレジストパターンをマスクとして、被加工膜をドライエッチングして回路パターンを形成した場合、精度不足や転写不良に起因する配線短絡や断線のない高精度で歩留まりの高い回路パターンを形成することができる。
<第2の実施形態>
[マスクブランクとその製造]
本発明の第2の実施形態に係るマスクブランクは、パターン形成用薄膜を所定の光学濃度を有する遮光膜としたものであり、バイナリ型マスク(転写用マスク)、掘込レベンソン型位相シフトマスク(転写用マスク)、あるいはCPL(Chromeless Phase Lithography)マスク(転写用マスク)を製造するために用いられるものである。図4に、この第2の実施形態のマスクブランクの構成を示す。この第2の実施形態のマスクブランク110は、透光性基板1上に、エッチングストッパー膜2、遮光膜(パターン形成用薄膜)8、ハードマスク膜9が順に積層した構造からなるものである。なお、第1の実施形態のマスクブランクと同様の構成については同一の符号を使用し、ここでの説明を省略する。
遮光膜8は、マスクブランクからバイナリ型マスクが製造されたときに、転写パターンが形成されるパターン形成用薄膜である。バイナリ型マスクは、遮光膜8のパターンに高い遮光性能が求められる。遮光膜8のみで露光光に対するODが2.8以上であることが求められ、3.0以上のODがあるとより好ましい。遮光膜8は、単層構造および2層以上の積層構造のいずれも適用可能である。また、単層構造の遮光膜および2層以上の積層構造の遮光膜の各層は、膜または層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成であっても、層の厚さ方向で組成傾斜した構成であってもよい。
遮光膜8は、フッ素系ガスによるドライエッチングで転写パターンをパターニング可能な材料で形成される。このような特性を有する材料としては、ケイ素を含有する材料のほか、遷移金属およびケイ素を含有する材料が挙げられる。遷移金属およびケイ素を含有する材料は、遷移金属を含有しないケイ素を含有する材料に比べて遮光性能が高く、遮光膜8の厚さを薄くすることが可能となる。遮光膜8に含有させる遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、パラジウム(Pd)等のいずれか1つの金属またはこれらの金属の合金が挙げられる。EB欠陥修正のエッチング終点の検出のことを考慮すると、この遮光膜8には、アルミニウムを含有させないことが好ましい。
ケイ素を含有する材料で遮光膜8を形成する場合、遷移金属以外の金属(スズ(Sn)インジウム(In)、ガリウム(Ga)等)を含有させてもよい。ただし、ケイ素を含有する材料にアルミニウムを含有させると、エッチングストッパー膜2との間におけるフッ素系ガスによるドライエッチングのエッチング選択性が低下する場合があること、遮光膜8に対してEB欠陥修正を行ったときにエッチング終点を検出しづらくなることがある。
遮光膜8は、ケイ素と窒素からなる材料、またはケイ素と窒素からなる材料に半金属元素、非金属元素および貴ガスから選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成することができる。この場合の遮光膜8には、いずれの半金属元素を含有してもよい。この半金属元素の中でも、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモンおよびテルルから選ばれる一以上の元素を含有させると、遮光膜8をスパッタリング法で成膜するときにターゲットとして用いるケイ素の導電性を高めることが期待できるため、好ましい。
遮光膜8は、下層と上層を含む積層構造である場合、下層をケイ素からなる材料またはケイ素に炭素、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモンおよびテルルから選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成し、上層をケイ素と窒素からなる材料またはケイ素と窒素からなる材料に半金属元素、非金属元素および貴ガスから選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成することができる。
遮光膜8は、タンタルを含有する材料で形成してもよい。この場合、遮光膜8のケイ素の含有量は、5原子%以下であることが好ましく、3原子%以下であるとより好ましく、実質的に含有していないとさらに好ましい。これらのタンタルを含有する材料は、フッ素系ガスによるドライエッチンで転写パターンをパターニング可能な材料である。この場合におけるタンタルを含有する材料としては、タンタル金属の他、タンタルに窒素、酸素、ホウ素および炭素から選ばれる1つ以上の元素を含有させた材料などが挙げられる。例えば、Ta、TaN、TaO、TaON、TaBN、TaBO、TaBON、TaCN、TaCO、TaCON、TaBCN、TaBOCNなどが挙げられる。
遮光膜8を形成する材料には、光学濃度が大きく低下しない範囲であれば、酸素、窒素、炭素、ホウ素、水素から選ばれる1以上の元素を含有させてもよい。遮光膜8の透光性基板1とは反対側の表面における露光光に対する反射率を低減させるために、その透光性基板1とは反対側の表層(下層と上層の2層構造の場合は上層。)に酸素や窒素を多く含有させてもよい。
この実施の形態2のマスクブランクにおいても、遮光膜8上にハードマスク膜9を備えている。このハードマスク膜9は、遮光膜8をエッチングする時に用いられるエッチングガスに対してエッチング選択性を有する材料で形成する必要がある。このハードマスク膜9は、クロムを含有する材料で形成することが好ましい。また、ハードマスク膜9は、クロムのほかに、窒素、酸素、炭素、水素およびホウ素から選ばれる1以上の元素を含有させた材料で形成するとより好ましい。ハードマスク膜9は、これらのクロムを含有する材料に、インジウム(In)、スズ(Sn)およびモリブデン(Mo)から選ばれる少なくとも1以上の金属元素(以下、これらの金属元素を「インジウム等金属元素」という。)を含有させた材料で形成してもよい。
以上のように、この実施の形態2のマスクブランク110は、透光性基板1とパターン形成用薄膜である遮光膜8の間に、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有し、位相シフト膜3側が透光性基板1側よりもケイ素およびアルミニウムの合計含有量に対するケイ素の含有量の原子%による比率が高いエッチングストッパー膜2を備えている。そして、このエッチングストッパー膜2は、遮光膜8にパターンを形成するときに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングに対する耐性が透光性基板1に比べて高く、薬液洗浄に対する耐性も高く、露光光に対する透過率も高いという3つの特性を同時に満たす。これにより、フッ素系ガスによるドライエッチングで遮光膜8に転写パターンを形成する際、透光性基板1の主表面を掘り込むことなく、オーバーエッチングを行うことができるため、パターン側壁の垂直性を高めること、またパターンの面内のCD均一性を高めることができる。また、転写用マスク(バイナリ型マスク)の製造途上で発見された遮光パターンの黒欠陥をEB欠陥修正で修正するとき、エッチング終点を検出しやすいため、精度よく黒欠陥を修正することができる。
[転写用マスクとその製造]
この第2の実施形態に係る転写用マスク210(図5参照)は、マスクブランク110のエッチングストッパー膜2が透光性基板1の主表面上の全面で残され、遮光膜8に転写パターン(遮光パターン8a)が形成されていることを特徴としている。マスクブランク110にハードマスク膜9が設けられている構成の場合、この転写用マスク210の作製の途中でハードマスク膜9は除去される。
すなわち、この第2の実施形態に係る転写用マスク210は、透光性基板1の主表面上に転写パターンを有する遮光膜である遮光パターン8aを備え、透光性基板1と遮光パターン8aの間にエッチングストッパー膜2を備え、遮光パターン8aは、ケイ素を含有し、エッチングストッパー膜2は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有し、遮光膜8側が透光性基板1側よりもケイ素およびアルミニウムの合計含有量に対するケイ素の含有量の原子%による比率が高いことを特徴とするものである。
この第2の実施形態に係る転写用マスク(バイナリ型マスク)の製造方法は、前記のマスクブランク110を用いるものであり、フッ素系ガスを用いるドライエッチングにより遮光膜8に転写用パターンを形成する工程を備えることを特徴としている。以下、図6に示す製造工程にしたがって、この第2の実施形態に係る転写用マスク210の製造方法を説明する。なお、ここでは、遮光膜8の上にハードマスク膜9が積層したマスクブランク110を用いた転写用マスク210の製造方法について説明する。また、遮光膜8には遷移金属およびケイ素を含有する材料を適用し、ハードマスク膜9にはクロムを含有する材料を適用している場合について説明する。
まず、マスクブランク110におけるハードマスク膜9に接して、レジスト膜をスピン塗布法によって形成する。次に、レジスト膜に対して、遮光膜8に形成すべき転写パターン(遮光パターン)を電子線で描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、遮光パターンを有するレジストパターン10aを形成する(図6(A)参照)。続いて、レジストパターン10aをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜9に転写パターン(ハードマスクパターン9a)を形成する(図6(B)参照)。
次に、レジストパターン10aを除去してから、ハードマスクパターン9aをマスクとして、フッ素ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜8に転写パターン(遮光パターン8a)を形成する(図6(C)参照)。この遮光膜8のフッ素系ガスによるドライエッチングの際、遮光パターン8aのパターン側壁の垂直性を高めるため、また遮光パターン8aの面内のCD均一性を高めるために追加のエッチング(オーバーエッチング)を行っている。そのオーバーエッチング後においても、エッチングストッパー膜2の表面は若干エッチングされた程度であり、遮光パターン8aの透光部においても透光性基板1の表面は露出していない。
さらに、残存するハードマスクパターン9aを塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングで除去し、洗浄等の所定の処理を経て、転写用マスク210を得る(図6(D)参照)。洗浄工程において、アンモニア過水を用いたが、エッチングストッパー膜2の表面はほとんど溶解しておらず、遮光パターン8aの透光部において透光性基板1の表面は露出していない。なお、前記のドライエッチングで使用されている塩素系ガスおよびフッ素系ガスは、実施の形態1で使用されているものと同様である。
この実施の形態2の転写用マスク210は、前記のマスクブランク110を用いて作製されたものである。エッチングストッパー膜2は、遮光膜8にパターンを形成するときに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングに対する耐性が透光性基板1に比べて高く、薬液洗浄に対する耐性も高く、露光光に対する透過率も高いという3つの特性を同時に満たしている。これにより、フッ素系ガスによるドライエッチングで遮光膜8に遮光パターン(転写パターン)8aを形成する際、透光性基板1の主表面を掘り込むことなく、オーバーエッチングを行うことができる。このため、この実施の形態2の転写用マスク210は、遮光パターン8aの側壁の垂直性が高く、遮光パターン8aの面内のCD均一性も高い。また、転写用マスク210の製造途上において、遮光パターン8aに黒欠陥が発見され、その黒欠陥に対してEB欠陥修正で修正するとき、エッチング終点を検出しやすいため、精度よく黒欠陥を修正することができる。
[半導体デバイスの製造]
実施の形態2の半導体デバイスの製造方法は、実施の形態2の転写用マスク210または実施の形態2のマスクブランク110を用いて製造された転写用マスク210を用い、半導体基板上のレジスト膜に転写用パターンを露光転写することを特徴としている。実施の形態2の転写用マスク200は、遮光パターン8aの側壁の垂直性が高く、遮光パターン8aの面内のCD均一性も高い。このため、実施の形態2の転写用マスク210を用いて半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写すると、半導体デバイス上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度でパターンを形成することができる。
以下、実施例により、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
[マスクブランクの製造]
主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.35mmの合成石英ガラスからなる透光性基板1を準備した。この透光性基板1は、端面および主表面を所定の表面粗さ以下(二乗平均平方根粗さRqで0.2nm以下)に研磨され、その後、所定の洗浄処理および乾燥処理を施されたものである。
次に、透光性基板1の表面に接して、アルミニウムおよび酸素からなるエッチングストッパー膜2(AlO膜)を10nmの厚さで形成した。具体的には、枚葉式RFスパッタリング装置内に透光性基板1を設置し、Alターゲットを放電させ、アルゴン(Ar)ガスをスパッタリングガスとするスパッタリング(RFスパッタリング)によって、エッチングストッパー膜2を形成した。別の透光性基板上に同条件で形成したエッチングストッパー膜に対してX線光電子分光法による分析を行った結果、Al:O=42:58(原子%比)であった。なお、X線光電子分光分析法による分析では、RBS分析(ラザフォード後方散乱法による分析)の結果を基に数値補正を行っている(以下の分析においても同様。)。
次に、エッチングストッパー膜2の表面に接して、高透過層、低透過層、高透過層、低透過層および最上層が積層した構造を備える位相シフト膜3を形成した。具体的な成膜工程は、以下のとおりである。枚葉式RFスパッタリング装置内にエッチングストッパー膜2が形成された透光性基板1を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、クリプトン(Kr)、ヘリウム(He)および窒素(N)の混合ガス(流量比 Kr:He:N=1:10:3,圧力=0.09Pa)をスパッタリングガスとし、RF電源の電力を2.8kWとし、反応モード(ポイズンモード)の領域での反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、エッチングストッパー膜2の表面に接して、ケイ素および窒素からなる高透過層(Si:N=44:56(原子%比))を17nmの厚さで形成した。別の透光性基板の主表面に対して、同条件で高透過層のみを形成し、分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M−2000D)を用いてこの高透過層の光学特性を測定したところ、波長193nmにおける屈折率nが2.66、消衰係数kが0.38であった。
次に、枚葉式RFスパッタリング装置内に、高透過層が積層された透光性基板1を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、クリプトン(Kr)、ヘリウム(He)および窒素(N)の混合ガス(流量比 Kr:He:N=1:10:1,圧力=0.035Pa)をスパッタリングガスとし、RF電源の電力を2.8kWとし、メタルモードの領域での反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、高透過層の上に、ケイ素および窒素からなる低透過層(Si:N=62:38(原子%比))を8nmの厚さで形成した。別の透光性基板の主表面に対して、同条件で低透過層のみを形成し、前記の分光エリプソメーターを用いてこの低透過層の光学特性を測定したところ、波長193nmにおける屈折率nが1.69、消衰係数kが1.87であった。
次に、枚葉式RFスパッタ装置内に、高透過層および低透過層が積層した透光性基板1を設置し、低透過層の上に、上記高透過層の成膜と同じ条件で高透過層を17nmの厚さで形成し、上記低透過層の成膜と同じ条件で、低透過層を8nmの厚さで形成し、上記高透過層の成膜と同じ条件で最上層を17nmの厚さで、この順に形成した。成膜した高透過層および低透過層の組成と光学特性は、上述の高透過層および低透過層と同様である。また、成膜した最上層23の組成と光学特性は、上述の高透過層22と同様である。以上の手順により、透光性基板1上に、高透過層、低透過層、高透過層、低透過層および最上層が積層した構造を有する位相シフト膜3を合計膜厚67nmで形成した。
次に、エッチングストッパー膜2と位相シフト膜3がこの順に積層した透光性基板1に対し、大気中において加熱温度500℃、処理時間1時間の条件で加熱処理を行った。加熱処理後の位相シフト膜3は、最上層の酸素含有量が透光性基板1側から遠ざかっていくに従い、増加していく組成傾斜を有する内部構造となった。この位相シフト膜3に対し、位相シフト量測定装置でArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における透過率および位相差を測定したところ、透過率は5.7%、位相差が175.8度であった。
別の透光性基板の主表面に対して同様の手順で、エッチングストッパー膜、位相シフト膜を形成し、加熱処理を行った。その加熱処理後のエッチングストッパー膜に対してX線光電子分光法による分析を行った結果、透光性基板側から位相シフト膜側に向かってSi/[Si+Al]比率が高くなっていく組成傾斜膜であることが確認できた。また、そのエッチングストッパー膜の透光性基板側の組成は、Si:Al:O=8:31:61(原子%比)であった。すなわち、このエッチングストッパー膜の透光性基板側のSi/[Si+Al]比率は、0.205であった。これに対し、このエッチングストッパー膜の位相シフト膜側の組成は、Si:Al:O=28:7:65(原子%比)であった。すなわち、このエッチングストッパー膜の位相シフト膜側のSi/[Si+Al]比率は、0.8であった。
また、その加熱処理後のエッチングストッパー膜に対し、前記の分光エリプソメーターを用いて光学特性を測定した。このエッチングストッパー膜は、膜厚方向に対して屈折率nや消衰係数kは分布を持つが、膜厚方向に対して単純平均を取った平均値で表すと、波長193nmに対して屈折率naveは1.655、消衰係数kaveは0.016であった。さらに、その加熱処理後のエッチングストッパー膜が形成された透光性基板を、濃度0.5%のアンモニア水に浸漬させてエッチングレートを測定したところ、0.1nm/minであった。この結果から、この実施例1のエッチングストッパー膜2は、マスクブランクから位相シフトマスクを製造する過程で行われる薬液洗浄に対して十分な耐性を有することが確認できた。
別の透光性基板、別の透光性基板に形成された上記の加熱処理後のエッチングストッパー膜、および別の透光性基板に形成された位相シフト膜のそれぞれに対し、SFとHeの混合ガスをエッチングガスに用いたドライエッチングを同条件で行った。そして、それぞれのエッチングレートを算出し、3者間のエッチング選択比を算出した。透光性基板のエッチングレートに対するエッチングストッパー膜のエッチング選択比は0.33であった。透光性基板のエッチングレートに対する位相シフト膜のエッチング選択比は2.03であった。エッチングストッパー膜のエッチングレートに対する位相シフト膜のエッチング選択比は6.16であった。
次に、位相シフト膜3の表面に接して、クロム、酸素、炭素および窒素からなる遮光膜(CrOCN膜)4を46nmの厚さで形成した。具体的には、枚葉式DCスパッタリング装置内に加熱処理後の透光性基板1を設置し、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO)と窒素(N)とヘリウム(He)をスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(DCスパッタリング)によって、遮光膜4を形成した。別の透光性基板上に同条件で形成した遮光膜に対してX線光電子分光法による分析を行った結果、Cr:O:C:N=55.2:22.1:11.6:11.1(原子%比)であった。なお、位相シフト膜3と遮光膜4の積層構造において、ArFエキシマレーザーの波長(193nm)の光学濃度は2.8以上であった。
次に、遮光膜4の表面に接して、ケイ素、酸素および窒素からなるハードマスク膜(SiON膜)5を5nmの厚さで形成した。具体的には、枚葉式DCスパッタリング装置内に遮光膜4が形成された後の透光性基板1を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)と一酸化窒素(NO)とヘリウム(He)の混合ガス(流量比 Ar:NO:He=8:29:32、圧力0.3Pa)をスパッタリングガスとする反応性スパッタリングを行うことによって、ハードマスク膜5を形成した。別の透光性基板上に同条件で形成したハードマスク膜に対してX線光電子分光法による分析を行った結果、Si:O:N=37:44:19(原子%比)であった。以上の手順で、実施例1のマスクブランクを製造した。
[位相シフトマスクの製造]
次に、この実施例1のマスクブランク100を用い、以下の手順で実施例1の位相シフトマスク200を作製した。最初に、ハードマスク膜5の表面にHMDS処理を施した。続いて、スピン塗布法によって、ハードマスク膜5の表面に接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚80nmで形成した。次に、このレジスト膜に対して、位相シフト膜3に形成すべき位相シフトパターンである第1のパターンを電子線描画し、所定の現像処理を行い、第1のパターンを有する第1のレジストパターン6aを形成した(図3(A)参照)。なお、このとき電子線描画した第1のパターンには、位相シフト膜に黒欠陥が形成されるように、本来形成されるべき位相シフトパターンの他にプログラム欠陥を加えておいた。
次に、第1のレジストパターン6aをマスクとし、CFガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜5に第1のパターン(ハードマスクパターン5a)を形成した(図3(B)参照)。次に、第1のレジストパターン6aをTMAHにより除去した。続いて、ハードマスクパターン5aをマスクとし、塩素と酸素の混合ガス(ガス流量比 Cl:O=4:1)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜4に第1のパターン(遮光パターン4a)を形成した(図3(C)参照)。
次に、遮光パターン4aをマスクとし、フッ素系ガス(SF+He)を用いたドライエッチングを行い、位相シフト膜3に第1のパターン(位相シフトパターン3a)を形成し、かつ同時にハードマスクパターン5aを除去した(図3(D)参照)。このフッ素系ガスによるドライエッチングでは、位相シフト膜3のエッチングの開始からエッチングが位相シフト膜3の厚さ方向に進行してエッチングストッパー膜2の表面が露出し始めるまでのエッチング時間(ジャストエッチングタイム)に加え、そのジャストエッチングタイムの20%の時間(オーバーエッチングタイム)だけ追加のエッチング(オーバーエッチング)を行った。なお、このフッ素系ガスによるドライエッチングは25Wの電力でバイアスを掛けて行われた。
次に、遮光パターン4a上に、スピン塗布法によって、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚150nmで形成した。次に、レジスト膜に対して、遮光膜4に形成すべきパターン(遮光パターン)である第2のパターンを描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、遮光パターンを有する第2のレジストパターン7bを形成した(図3(E)参照)。続いて、第2のレジストパターン7bをマスクとして、塩素と酸素の混合ガス(ガス流量比 Cl:O=4:1)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜4に第2のパターン(遮光パターン4b)を形成した。さらに、第2のレジストパターン7bをTMAHにより除去し、アンモニア過水による洗浄等の所定の処理を経て、位相シフトマスク200を得た(図3(F)参照)。
作製した実施例1のハーフトーン型の位相シフトマスク200に対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行ったところ、プログラム欠陥を配置していた箇所の位相シフトパターン3aに黒欠陥が確認された。その黒欠陥部分に対し、電子線とXeFガスを用いるEB欠陥修正を行ったところ、エッチング終点を容易に検出することができ、エッチングストッパー膜2の表面へのエッチングを最小限にとどめることができた。
別のマスクブランクを用い、同様の手順で位相シフトマスクを製造し、位相シフトパターンの面内のCD均一性を検査したところ、良好な結果であった。また、位相シフトパターンの断面をSTEMで観察したところ、位相シフトパターンの側壁の垂直性は高く、エッチングストッパー膜の掘込は1nm程度と微小であり、マイクロトレンチも発生していなかった。
EB欠陥修正を行った後の実施例1のハーフトーン型位相シフトマスク200に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した時における転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。エッチングストッパー膜2を設けたことによる透光部の透過率の低下が露光転写に与える影響は微小であった。また、EB欠陥修正を行った部分の転写像は、それ以外の領域の転写像に比べて遜色のないものであった。この結果から、EB欠陥修正を行った後の実施例1の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンを高精度に形成できると言える。
(実施例2)
[マスクブランクの製造]
この実施例2のマスクブランクは、バイナリ型マスク(転写用マスク)を製造するためのものであり、図4に示すように、透光性基板1上に、エッチングストッパー膜2、下層および上層の積層構造からなる遮光膜8、ハードマスク膜9が積層した構造を備える。以下、実施例1のマスクブランクと相違する箇所について説明する。
実施例1と同様の手順で、透光性基板1を準備し、次に、透光性基板1の表面に接して、アルミニウムおよび酸素からなるエッチングストッパー膜2(AlO膜)を10nmの厚さで形成した。
次に、エッチングストッパー膜2の表面に接して、モリブデン、ケイ素および窒素からなる遮光膜8の下層(MoSiN膜)を47nmの厚さで形成し、さらに上層(MoSiN膜)を13nmの厚さで形成した。具体的には、枚葉式DCスパッタリング装置内にエッチングストッパー膜2が形成された後の透光性基板1を設置し、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)との混合焼結ターゲット(Mo:Si=13:87(原子%比))を用い、アルゴン(Ar)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(DCスパッタリング)によって、遮光膜8の下層と上層を形成した。次に、エッチングストッパー膜2と遮光膜8を備えた透光性基板1に対して、大気中において450℃で30分間の条件で加熱処理を行った。
別の透光性基板の主表面に対して同様の手順で、エッチングストッパー膜、遮光膜を形成し、加熱処理を行った。その加熱処理後の別の透光性基板に形成された遮光膜とエッチングストッパー膜に対し、X線光電子分光法による分析を行った。その結果、遮光膜の下層が、Mo:Si:N=9.2:68.3:22.5(原子%比)であり、下層側近傍の上層が、Mo:Si:N:O=5.8:64.4:27.7:2.1(原子%比)であることが確認できた。また、遮光膜の上層の表層については、窒素が14.4原子%、酸素が38.3原子%であった。また、前記の分光エリプソメーターを用いて、遮光膜の光学濃度を測定したところ、3.0であった。
一方、加熱処理後のエッチングストッパー膜は、透光性基板側から遮光膜側に向かってSi/[Si+Al]比率が高くなっていく組成傾斜膜であることが確認できた。また、そのエッチングストッパー膜の透光性基板側の組成は、Si:Al:O=5:34:61(原子%比)であった。すなわち、このエッチングストッパー膜の透光性基板側のSi/[Si+Al]比率は、0.13であった。これに対し、このエッチングストッパー膜の遮光膜側の組成は、Si:Al:O=26:13:61(原子%比)であった。すなわち、このエッチングストッパー膜の遮光膜側のSi/[Si+Al]比率は、0.67であった。
また、その加熱処理後のエッチングストッパー膜に対し、前記の分光エリプソメーターを用いて光学特性を測定した。このエッチングストッパー膜は、膜厚方向に対して屈折率nや消衰係数kは分布を持つが、膜厚方向に対して単純平均を取った平均値で表すと、波長193nmに対して屈折率naveは1.680、消衰係数kaveは0.020であった。さらに、その加熱処理後のエッチングストッパー膜が形成された透光性基板を、濃度0.5%のアンモニア水に浸漬させてエッチングレートを測定したところ、0.1nm/minであった。この結果から、この実施例1のエッチングストッパー膜2は、マスクブランクから転写用マスクを製造する過程で行われる薬液洗浄に対して十分な耐性を有することが確認できた。
別の透光性基板、別の透光性基板に形成されたエッチングストッパー膜、および別の透光性基板に形成された遮光膜のそれぞれに対し、SFとHeの混合ガスをエッチングガスに用いたドライエッチングを同条件で行った。そして、それぞれのエッチングレートを算出し、3者間のエッチング選択比を算出した。透光性基板のエッチングレートに対する実施例2のエッチングストッパー膜のエッチング選択比は0.1であった。透光性基板のエッチングレートに対する実施例2の遮光膜のエッチング選択比は1.9であった。実施例2のエッチングストッパー膜のエッチングレートに対する実施例2の遮光膜のエッチング選択比は19.0であった。
次に、遮光膜8の上層の表面に接して、クロムおよび窒素からなるハードマスク膜9(CrN膜)を5nmの厚さで形成した。具体的には、枚葉式DCスパッタリング装置内に加熱処理後の遮光膜8を備える透光性基板1を設置し、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(DCスパッタリング)によって、ハードマスク膜9を形成した。別の透光性基板上に同条件で形成したハードマスク膜に対してX線光電子分光法による分析を行った結果、Cr:N=72:28(原子%比)であった。以上の手順で、実施例2のマスクブランクを製造した。
[転写用マスクの製造]
次に、この実施例2のマスクブランク110を用い、以下の手順で実施例2の転写用マスク210を作製した。最初に、スピン塗布法によってハードマスク膜9の表面に接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚80nmで形成した。次に、このレジスト膜に対して、遮光膜8に形成すべき転写パターンを電子線描画し、所定の現像処理を行い、レジストパターン10aを形成した(図6(A)参照)。なお、このとき電子線描画したパターンには、遮光膜8に黒欠陥が形成されるように、本来形成されるべき転写パターンの他にプログラム欠陥を加えておいた。
次に、レジストパターン10aをマスクとし、塩素と酸素の混合ガス(ガス流量比 Cl:O=4:1)を用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜9に遮光パターン(ハードマスクパターン9a)を形成した(図6(B)参照)。
次に、レジストパターン10aをTMAHにより除去した。続いて、ハードマスクパターン9aをマスクとし、フッ素系ガス(SF+He)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜8に転写パターン(遮光パターン8a)を形成した(図6(C)参照)。このフッ素系ガスによるドライエッチングでは、遮光膜8のエッチングの開始からエッチングが遮光膜8の厚さ方向に進行してエッチングストッパー膜2の表面が露出し始めるまでのエッチング時間(ジャストエッチングタイム)に加え、そのジャストエッチングタイムの20%の時間(オーバーエッチングタイム)だけ追加のエッチング(オーバーエッチング)を行った。なお、このフッ素系ガスによるドライエッチングは25Wの電力でバイアスを掛けて行われた。
さらに、残存するハードマスクパターン9aを塩素系ガスと酸素ガスの混合ガス(ガス流量比 Cl:O=4:1)を用いたドライエッチングで除去し、アンモニア過水による洗浄等の所定の処理を経て、転写用マスク210を得た(図6(D)参照)。
作製した実施例2の転写用マスク210に対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行ったところ、プログラム欠陥を配置していた箇所の遮光パターン8aに黒欠陥が確認された。その黒欠陥部分に対し、電子線とXeFガスを用いるEB欠陥修正を行ったところ、エッチング終点を容易に検出することができ、エッチングストッパー膜2の表面へのエッチングを最小限にとどめることができた。
別のマスクブランクを用い、同様の手順で転写用マスクを製造し、遮光パターンの面内のCD均一性を検査したところ、良好な結果であった。また、遮光パターンの断面をSTEMで観察したところ、遮光パターンの側壁の垂直性は高く、またエッチングストッパー膜への掘込は1nm未満と微小であり、マイクロトレンチも発生していなかった。
EB欠陥修正を行った後の実施例5の転写用マスク210に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した時における転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。エッチングストッパー膜2を設けたことによる透光部の透過率の低下が露光転写に与える影響は微小であった。また、EB欠陥修正を行った部分の転写像は、それ以外の領域の転写像に比べて遜色のないものであった。この結果から、EB欠陥修正を行った後の実施例2の転写用マスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンを高精度に形成できると言える。
(比較例1)
[マスクブランクの製造]
比較例1のマスクブランクは、エッチングストッパー膜2をアルミニウムと酸素からなる材料で形成した後、上記の条件での高温の加熱処理を行わなかったことを除き、実施例1のマスクブランクと同様の構成を備える。この比較例1のエッチングストッパー膜2は、透光性基板1の表面に接して、アルミニウムおよび酸素からなるエッチングストッパー膜2(AlO膜)を10nmの厚さで形成した。具体的には、枚葉式RFスパッタリング装置内に透光性基板1を設置し、Alターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガスをスパッタリングガスとするスパッタリング(RFスパッタリング)によって、エッチングストッパー膜2を形成した。別の透光性基板上に同条件で形成したエッチングストッパー膜に対してX線光電子分光法による分析を行った結果、Al:O=42:58(原子%比)であった。すなわち、このエッチングストッパー膜2のSi/[Si+Al]は0である。また、このエッチングストッパー膜の波長193nmの光における屈折率nは1.864、消衰係数kは0.069である。
別の透光性基板に同様の手順でエッチングストッパー膜を形成し、そのエッチングストッパー膜が形成された透光性基板を、濃度0.5%のアンモニア水に浸漬させてエッチングレートを測定したところ、4.0nm/minであった。この結果から、この比較例1のエッチングストッパー膜2は、マスクブランクから位相シフトマスクを製造する過程で行われる薬液洗浄に対して十分な耐性を有していないことがわかる。
別の透光性基板、別の透光性基板に形成されたエッチングストッパー膜、および別の透光性基板に形成された位相シフト膜のそれぞれに対し、SFとHeの混合ガスをエッチングガスに用いたドライエッチングを同条件で行った。そして、それぞれのエッチングレートを算出し、3者間のエッチング選択比を算出した。透光性基板のエッチングレートに対する比較例1のエッチングストッパー膜のエッチング選択比は0.025であった。透光性基板のエッチングレートに対する比較例1の位相シフト膜のエッチング選択比は2.38であった。比較例1のエッチングストッパー膜のエッチングレートに対する比較例1の位相シフト膜のエッチング選択比は95.2であった。
[位相シフトマスクの製造]
次に、この比較例1のマスクブランク100を用い、実施例1と同様の手順で比較例1の位相シフトマスク200を作製した。作製した比較例1のハーフトーン型の位相シフトマスク200に対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行ったところ、プログラム欠陥以外の欠陥が多数検出された。各欠陥箇所を調べたところ、位相シフトパターン3aが脱落していることに起因する欠陥がほとんどであった。なお、プログラム欠陥を配置していた箇所の黒欠陥部分に対し、電子線とXeFガスを用いるEB欠陥修正を行ったところ、エッチング終点を容易に検出することができ、エッチングストッパー膜2の表面へのエッチングを最小限にとどめることはできた。
別のマスクブランクを用い、同様の手順で位相シフトマスクを製造し、位相シフトパターンが脱落していない箇所について、位相シフトパターンの断面をSTEMで観察したところ、透光部のエッチングストッパー膜が消失(薬液洗浄による溶解)しており、位相シフトパターンが存在している領域の直下のエッチングストッパー膜も、位相シフトパターンの側壁側から内側に向かって溶解が進行しているのが確認できた。この結果から、エッチングストッパー膜が薬液洗浄によって溶解したことが、位相シフトパターンの脱落が多発した要因であると推察できる。
EB欠陥修正を行った後の比較例1のハーフトーン型位相シフトマスク200に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した時における転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を満たすことができていなかった。位相シフトパターン3aの脱落によって正常な露光転写ができてない箇所が多数見つかった。また、位相シフトパターン3a自体は精度よく形成されている箇所においても、エッチングストッパー膜2のArF露光光に対する透過率が低いことに起因するものと思われる転写像の精度低下がみられた。この結果から、EB欠陥修正の有無にかかわらず、比較例1の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した場合、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンには、回路パターンの断線や短絡が多発することが予想される。
1 透光性基板
2 エッチングストッパー膜
3 位相シフト膜(パターン形成用薄膜)
3a 位相シフトパターン(転写パターン)
4 遮光膜
4a,4b 遮光パターン
5,9 ハードマスク膜
5a,9a ハードマスクパターン
6a 第1のレジストパターン
7b 第2のレジストパターン
8 遮光膜(パターン形成用薄膜)
8a 遮光パターン(転写パターン)
10a レジストパターン
100,110 マスクブランク
200 位相シフトマスク(転写用マスク)
210 転写用マスク

Claims (18)

  1. 透光性基板の主表面上に、エッチングストッパー膜およびパターン形成用薄膜がこの順に積層した構造を備えるマスクブランクであって、
    前記パターン形成用薄膜は、前記エッチングストッパー膜の表面に接して設けられ、
    前記パターン形成用薄膜は、ケイ素を含有し、
    前記エッチングストッパー膜は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有し、前記パターン形成用薄膜側が前記透光性基板側よりも前記ケイ素および前記アルミニウムの合計含有量に対する前記ケイ素の含有量の原子%による比率が高いことを特徴とするマスクブランク。
  2. 前記エッチングストッパー膜は、前記透光性基板側から前記パターン形成用薄膜側に向かって前記ケイ素および前記アルミニウムの合計含有量に対する前記ケイ素の含有量の原子%による比率が高くなる組成傾斜膜であることを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
  3. 前記エッチングストッパー膜は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素からなることを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク。
  4. 前記エッチングストッパー膜は、酸素含有量が50原子%以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
  5. 前記パターン形成用薄膜側のエッチングストッパー膜は、前記ケイ素および前記アルミニウムの合計含有量に対する前記ケイ素の含有量の原子%による比率が、1/5以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
  6. 前記パターン形成用薄膜側のエッチングストッパー膜は、前記ケイ素および前記アルミニウムの合計含有量に対する前記ケイ素の含有量の原子%による比率が、4/5以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマスクブランク。
  7. 前記エッチングストッパー膜は、アモルファス構造および微結晶構造の少なくともいずれかの構造を有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のマスクブランク。
  8. 前記エッチングストッパー膜は、厚さが3nm以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のマスクブランク。
  9. 前記パターン形成用薄膜は、ケイ素および窒素を含有することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のマスクブランク。
  10. 前記パターン形成用薄膜は、位相シフト膜であり、
    前記位相シフト膜は、露光光を1%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のマスクブランク。
  11. 前記位相シフト膜上に、遮光膜を備えることを特徴とする請求項10記載のマスクブランク。
  12. 請求項1から10のいずれかに記載のマスクブランクの前記パターン形成用薄膜に転写パターンが設けられていることを特徴とする転写用マスク。
  13. 請求項11記載のマスクブランクの前記位相シフト膜に転写パターンが設けられ、前記遮光膜に遮光帯を含むパターンが設けられていることを特徴とする転写用マスク。
  14. 請求項1から11のいずれかに記載のマスクブランクを製造する方法であって、
    前記透光性基板上に、アルミニウムおよび酸素を含有する前記エッチングストッパー膜を形成する工程と、
    前記エッチングストッパー膜に接してケイ素を含有する前記パターン形成用薄膜を形成する工程と、
    前記エッチングストッパー膜およびパターン形成用薄膜が形成された後の透光性基板に対し、400℃以上の温度での加熱処理を行う工程と、
    を有することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
  15. 前記エッチングストッパー膜を形成する工程は、酸素含有量が60原子%未満であるエッチングストッパー膜を形成する工程であることを特徴とする請求項14記載のマスクブランクの製造方法。
  16. 請求項11記載のマスクブランクを用いた転写用マスクの製造方法であって、
    ドライエッチングにより前記遮光膜に転写パターンを形成する工程と、
    前記転写パターンを有する遮光膜をマスクとし、フッ素系ガスを用いるドライエッチングにより前記位相シフト膜に転写パターンを形成する工程と、
    ドライエッチングにより前記遮光膜に遮光帯を含むパターンを形成する工程と
    を備えることを特徴とする転写用マスクの製造方法。
  17. 請求項12または13に記載の転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
  18. 請求項16記載の転写用マスクの製造方法により製造された転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
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