JP2017049312A - マスクブランク、位相シフトマスク、位相シフトマスクの製造方法および半導体デバイスの製造方法 - Google Patents

マスクブランク、位相シフトマスク、位相シフトマスクの製造方法および半導体デバイスの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】微細かつ高精度な位相シフトパターンと、所定の位相差および透過率を有し、かつ薬液による洗浄に対して耐性の高い位相シフトマスク用のマスクブランクを提供する。このために、パターン形成時に使用されるフッ素系ガスによるドライエッチングに対する耐性が高く、かつ薬液洗浄耐性も高い膜を備えるマスクブランクを提供する。【解決手段】透光性基板の主表面上に位相シフト膜および遮光膜を備えたマスクブランクであって、位相シフト膜は透光性基板側から下層と上層がこの順に積層された構造を有し、下層はケイ素および窒素を含有する材料からなり、上層はケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料からなり、遮光膜はケイ素およびタンタルから選ばれる1以上の元素を含有する材料からなり、遮光膜は上層の表面に接して形成されている。【選択図】図1

Description

本発明は、マスクブランク、そのマスクブランクを用いて製造された位相シフトマスクおよびその製造方法に関するものである。また、本発明は、上記の位相シフトマスクを用いた半導体デバイスの製造方法に関するものである。
近年、半導体デバイスで用いられるパターンの微細化に伴い、転写用マスクに形成されるマスクパターンの微細化が進んできている。
転写用マスクの一種として、ハーフトーン型位相シフトマスクが知られている。この位相シフトマスクは、透光性基板上に位相シフトパターンを備えたものである。この位相シフト膜は、実質的に露光に寄与しない強度で光を透過させ、かつその位相シフト膜を透過した光に、同じ距離だけ空気中を通過した光に対して所定の位相差を生じさせる機能を有しており、これにより、いわゆる位相シフト効果を生じさせている。
一般に、位相シフトマスクにおける位相シフトパターンが形成される領域の外周領域は、露光装置を用いて半導体ウェハ上のレジスト膜に露光転写した際に、外周領域を透過した露光光による影響をレジスト膜が受けないように、所定値以上の光学濃度(OD:Optical Density)を確保することが求められている。通常、位相シフトマスクの外周領域では、ODが3以上あると望ましいとされており、少なくとも2.8程度は必要とされている。しかし、位相シフトマスクの位相シフト膜は、露光光を所定の透過率で透過させる機能を有しており、この位相シフト膜だけでは、位相シフトマスクの外周領域に求められている光学濃度を確保することは困難である。このため、特許文献1に開示されているマスクブランクのように、露光光に対して所定の透過率を有し、かつ所定の位相差を生じさせる半透明膜(位相シフト膜)の上に遮光膜(遮光性膜)を積層し、半透明膜と遮光膜との積層構造で所定の光学濃度を確保することが行われている。
一方、特許文献2に開示されているように、位相シフト膜上に設けられる遮光膜を遷移金属とケイ素を含有する材料で形成した位相シフトマスクブランクも存在する。この位相シフトマスクブランクは、それまでのハーフトーン型位相シフトマスクと同様に、位相シフト膜を形成する材料にも遷移金属とケイ素を含有する材料が適用されている。このため、位相シフト膜と遮光膜との間で、ドライエッチングに対するエッチング選択性を確保することが難しい。特許文献2の位相シフトマスクブランクでは、位相シフト膜と遮光膜との間にクロムを含有する材料からなるエッチングストッパー膜を設けている。また、遮光膜の上にもクロムを含有する材料からなるエッチングマスク膜がさらに設けられている。
他方、特許文献3には、石英からなる透明基板の上に、アルミナ(Al)からなる透明導電膜と、二酸化ケイ素(SiO)からなる透明な位相シフト膜、クロム(Cr)を主成分とする遮光膜をこの順に形成し、遮光膜に主透光部と補助透光部のパターンを形成し、主透光部とそれに隣接する補助透光部のどちらか一方の位相シフト膜をエッチングした位相シフトマスクとその製造方法が示されている。ここで、アルミナ(Al)膜は、このエッチングの際に、エッチングストッパーとしての機能を担っている。
特開2007−033469号公報 特開2007−241065号公報 特開2006−084507号公報
一般に、位相シフトマスクを製造するためのマスクブランクは、位相シフト膜上に遮光膜が設けられているため、位相シフト膜に形成すべき位相シフトパターンを有するレジストパターンをマスクとしたドライエッチングを、位相シフト膜に対して直接行うことはできない。
位相シフトマスクでは、位相シフト膜には微細なパターンが設けられ、遮光膜には位相シフト膜との積層構造で所定の光学濃度を満たす遮光帯等を形成するための遮光パターンが設けられているのが一般的である。すなわち、位相シフトマスクでは、一般的に、位相シフト膜と遮光膜とで異なるパターンが形成される。このため、位相シフト膜の上に直接接して遮光膜が設けられた積層構造のマスクブランクでは、位相シフト膜と遮光膜とは互いにエッチング特性の異なる材料が用いられている。位相シフト膜は、単に所定の透過率で透過させる機能だけでなく、その位相シフト膜を透過する光の位相を制御する機能も兼ね備える必要がある。ケイ素を含有する材料は、このような位相シフト膜に求められる光学特性が得やすいため、位相シフト膜の材料に用いられることが多い。
ケイ素を含有する材料からなる薄膜は、フッ素系ガスを用いるドライエッチングでパターニングされるのが一般的である。フッ素系ガスを用いるドライエッチングに対してエッチング耐性を有する材料として、クロムを含有する材料がある。クロムを含有する材料からなる薄膜は、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガス(以下、「酸素含有塩素系ガス」という。)を用いるドライエッチングでパターニングが可能である。ケイ素を含有する材料からなる薄膜は、酸素含有塩素系ガスを用いるドライエッチングに対してエッチング耐性がある。クロムを含有する材料からなる薄膜とケイ素を含有する材料からなる薄膜は、互いに十分なエッチング選択性が得られる組み合わせである。
このようなマスクブランクから位相シフトマスクを製造する場合、位相シフト膜に形成すべき転写用のパターンを有するレジストパターンをマスクとしたドライエッチングを遮光膜に対して行い、位相シフト膜に形成すべき転写用のパターンを先に遮光膜に形成する。そして、この転写用のパターンが形成された遮光膜をマスクとしたドライエッチングを位相シフト膜に対して行うことで、位相シフト膜に転写用のパターン(位相シフトパターン)を形成する。しかしながら、クロムを含有する材料からなる遮光膜に対して行われる酸素含有塩素系ガスを用いるドライエッチングは、エッチングガスにラジカル主体の酸素ガスのプラズマを含んでいる等の理由から等方性エッチングの傾向を有しており、エッチングの異方性を高めることが難しい。
一般に、使用される有機系材料で形成されるレジスト膜は、酸素ガスのプラズマに対する耐性が、他のガスのプラズマに対する耐性に比べて大幅に低い。このため、クロム系材料の遮光膜を酸素含有塩素系ガスでドライエッチングした場合、レジスト膜の消費量、すなわち、エッチング中に生じるレジスト膜の減膜量が多くなる。ドライエッチングによって遮光膜に微細パターンを高い精度で形成するには、遮光膜のパターニング完了時に、所定以上の厚さでレジスト膜が残存している必要がある。しかし、最初にパターンを形成するレジスト膜の膜厚を厚くすると、レジストパターンの断面アスペクト比(パターン線幅に対する膜厚の比率)が大きくなり過ぎるために、レジストパターンが倒壊する現象が発生しやすくなる。遮光膜の厚さを大幅に薄くすることによってこれらの問題を解決することは可能ではあるが、遮光膜には露光光に対する所定の光学濃度が必要なため、遮光膜をエッチングに支障のない厚さにすることは困難である。
以上のように、酸素含有塩素系ガスを用いるドライエッチングによって、遮光膜に、パターン形状の精度が高く、面内CD(Critical Dimension)均一性の高い微細な転写パターン(位相シフト膜に形成すべき微細な転写パターン)を形成することは難しい。
位相シフト膜に転写パターンを形成するときに行われるドライエッチングに対しては、高い異方性エッチングの傾向を有するフッ素系ガスを用いるドライエッチングが適用される。しかし、そのドライエッチングの際、微細な転写パターンを高精度に形成することが難しい遮光膜をエッチングマスクとして用いる必要があるため、位相シフト膜に微細な転写パターンを形成することは難しい。このため、位相シフト膜と有機系材料のレジスト膜との間に遮光膜を備えるマスクブランクにおいて、位相シフト膜(光半透膜)に形成すべき微細な転写パターンが形成可能な薄膜のレジストパターンを使って、最終的に位相シフト膜にその転写パターンを高精度に形成することが課題となっていた。
特許文献2に開示されているマスクブランクは、上述のマスクブランクが抱える課題を解決する手段として考え出されたものである。このマスクブランクでは、所定以上の厚さが必要な遮光膜にフッ素系ガスによるドライエッチングが可能な遷移金属シリサイド系材料を適用し、遮光膜に微細パターンを高精度に形成できるようにしている。この遮光膜は、位相シフト膜との間でエッチング選択性が小さいため、位相シフト膜と遮光膜の間にクロム系材料のエッチングストッパー膜を設けている。エッチングストッパー膜は、光学濃度の制約を基本的に受けない。エッチングストッパー膜は、位相シフト膜に微細な転写パターンを形成するときに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングにおいて、エッチングマスクとして機能できる厚さがあればよく、従来のクロム系材料の遮光膜に比べて大幅な薄膜化が図れる。このため、エッチングストッパー膜は、等方性エッチングの傾向を有しているクロム系材料で形成されているが、微細パターンを高い精度で形成することが可能となっている。
しかし、クロム系材料の薄膜は、ドライエッチングによるパターニング時、パターンの側壁方向へのエッチングの進行が比較的速い(サイドエッチング量が多い)という特性を有している。このため、レジスト膜に形成するパターンは、そのクロム系材料の薄膜にパターニングするときの側壁方向のエッチング量(エッチングバイアス)を見込んで設計される。特許文献2のマスクブランクの場合、位相シフト膜のパターニングに至る前までに、エッチングマスク膜、エッチングストッパー膜と2つのクロム系材料の薄膜のパターニングを行う必要があり、エッチングバイアスが比較的大きくなるという問題がある。
そこで、本発明者は、特許文献2に開示されている構成のマスクブランクのクロム系材料のエッチングストッパー膜に代えて、特許文献3に開示されているAlからなるエッチングストッパー膜を適用することを考えた。しかし、Alからなるエッチングストッパー膜は、薬液洗浄に対する耐性が低い傾向があることが判明した。マスクブランクから位相シフトマスクを製造するプロセスの途上において、薬液を用いた洗浄が何度も行われる。また、完成後の位相シフトマスクに対しても、定期的に薬液による洗浄が行われる。これらの洗浄では、アンモニア過水やTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液が洗浄液として用いられることが多いが、Alからなるエッチングストッパー膜は、これらの洗浄液に対する耐性が低い。
例えば、遮光膜とエッチングストッパー膜をパターニングした後のマスクブランクに対し、アンモニア過水による洗浄を行うと、遮光膜が存在しない領域であり、エッチングストッパー膜の表面が露出している領域で、そのエッチングストッパー膜が表面から徐々に溶解していき、位相シフト膜の表面が露出する状態にまで進行する。そして、さらに洗浄を行うと、遮光膜からなる遮光パターン部分の直下のエッチングストッパー膜も遮光膜の側壁側から内部側に向かって溶解していく。このエッチングストッパー膜が溶解する現象は、遮光パターンの両方の側壁側からそれぞれ進行するため、遮光パターン幅よりも溶解せずに残存しているエッチングストッパー膜の幅の方が小さくなってしまう。このような状態になると、遮光パターンが脱落する現象が発生しやすくなる。
ケイ素含有物からなる遮光パターンは、位相シフト膜をパターニングするときのフッ素系ガスによるドライエッチングに対する耐性がないため、位相シフト膜をパターニングするときのエッチングマスクとしては機能し得ない。このため、エッチングストッパー膜が位相シフト膜をパターニングするときのエッチングマスク(ハードマスク)として機能しなければならない。洗浄液による溶解によって、エッチングストッパー膜のパターンの幅が狭くなっていると、位相シフト膜のドライエッチング後に形成される位相シフト膜のパターンは、設計線幅よりも狭くなるという問題も生じる。
前記の課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
透光性基板の主表面上に位相シフト膜および遮光膜を備えたマスクブランクであって、
前記位相シフト膜は、前記透光性基板側から下層と上層がこの順に積層された構造を有し、
前記下層は、ケイ素および窒素を含有する材料からなり、
前記上層は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料からなり、
前記遮光膜は、ケイ素およびタンタルから選ばれる1以上の元素を含有する材料からなり、
前記遮光膜は、前記上層の表面に接して形成されていることを特徴とするマスクブランク。
(構成2)
前記上層は、酸素含有量が60原子%以上であることを特徴とする構成1記載のマスクブランク。
(構成3)
前記上層は、前記ケイ素および前記アルミニウムの合計含有量に対する前記ケイ素の含有量の原子%による比率が、4/5以下であることを特徴とする構成1または2記載のマスクブランク。
(構成4)
前記上層は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素からなることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成5)
前記上層は、厚さが3nm以上であることを特徴とする構成1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成6)
前記下層は、遷移金属、ケイ素および窒素を含有する材料からなることを特徴とする構成1から5のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成7)
前記位相シフト膜は、露光光を1%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上180度以下の位相差を生じさせる機能とを有することを特徴とする構成1から6のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成8)
前記遮光膜は、遷移金属およびケイ素を含有する材料からなることを特徴とする構成1から7のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成9)
前記透光性基板の主表面に接してエッチングストッパー膜が形成されていることを特徴とする構成1から8のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成10)
前記エッチングストッパー膜は、酸素含有量が60原子%以上であることを特徴とする構成9記載のマスクブランク。
(構成11)
前記エッチングストッパー膜は、前記ケイ素および前記アルミニウムの合計含有量に対する前記ケイ素の含有量の原子%による比率が、4/5以下であることを特徴とする構成9または10記載のマスクブランク。
(構成12)
前記エッチングストッパー膜は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素からなることを特徴とする構成9から11のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成13)
前記エッチングストッパー膜は、厚さが3nm以上であることを特徴とする構成9から12のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成14)
前記遮光膜上に、クロムを含有する材料からなるハードマスク膜を備えることを特徴とする構成1から13のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成15)
構成1から13のいずれかに記載のマスクブランクの前記位相シフト膜に位相シフトパターンが形成され、前記遮光膜に遮光パターンが形成されていることを特徴とする位相シフトマスク。
(構成16)
構成1から14のいずれかに記載のマスクブランクを用いた位相シフトマスクの製造方法であって、
ドライエッチングにより前記遮光膜に位相シフトパターンを形成する工程と、
前記位相シフトパターンを有する遮光膜をマスクとし、塩化ホウ素ガスを含有するエッチングガスを用いるドライエッチングにより前記上層に位相シフトパターンを形成する工程と、
前記位相シフトパターンを有する遮光膜をマスクとし、フッ素系ガスを含有するエッチングガスを用いるドライエッチングにより前記下層に位相シフトパターンを形成する工程と、
ドライエッチングにより前記遮光膜に遮光帯を含むパターンを形成する工程と
を備えることを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
(構成17)
構成15記載の位相シフトマスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
(構成18)
構成16記載の位相シフトマスクの製造方法により製造された位相シフトマスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
本発明のマスクブランクは、透光性基板の主表面上に位相シフト膜と遮光膜を備えたマスクブランクであって、位相シフト膜は、ケイ素および窒素を含有する下層と、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する上層からなる積層膜であり、位相シフト膜上に接して形成された遮光膜は、ケイ素及およびタンタルから選ばれる1以上の元素を含有する材料からなることを特徴としている。
マスクブランクをこの構造にすることにより、上層と下層からなる積層型の位相シフト膜は、所定の位相差と透過率を与える位相シフト膜になる。また、上層は、十分な薬液洗浄耐性を有する膜であって、遮光膜にパターンを形成するときのフッ素系ガスを用いたドライエッチングに対し、エッチングストッパーとして十分機能し、かつフッ素系ガスを用いたドライエッチングによって下層にパターンを形成するときのハードマスクとしての機能を有する膜となる。この上層が有するエッチングストッパー機能とハードマスク機能によって、微細で高精度な位相シフトパターンを形成することが可能になる。
このため、このマスクブランクは、微細かつ高精度な位相シフトパターンと、所定の位相差および透過率を有し、かつ薬液洗浄耐性の高い位相シフトマスクを製造する上で好適なマスクブランクとなる。また、このマスクブランクを使用して製造された位相シフトマスクは、微細かつ高精度な位相シフトパターンと、所定の位相差および透過率を有し、かつ薬液洗浄耐性の高い位相シフトマスクとなる。さらに、この位相シフトマスクを用いて露光転写を行うと、微細かつ高精度なパターンを低欠陥に形成できるので、微細で高精度な回路パターンを有する半導体デバイスを高い歩留まりで製造することが可能になる。
本発明の第1の実施形態におけるマスクブランクの構成を示す断面図である。 本発明の第1の実施形態における位相シフトマスクの構成を示す断面図である。 本発明の第1の実施形態における位相シフトマスクの製造工程を示す断面模式図である。 本発明の第2の実施形態におけるマスクブランクの構成を示す断面図である。 本発明の第2の実施形態における位相シフトマスクの構成を示す断面図である。 本発明の第2の実施形態における位相シフトマスクの製造工程を示す断面模式図である。
まず、本発明の完成に至った経緯を述べる。
本発明者らは、Al膜が有する技術的課題を解決すべく鋭意研究を行った。Al膜は、フッ素系ガスによるドライエッチングに対する耐性は高いが、位相シフトマスクの洗浄に用いられる洗浄液に対する耐性は低い。試行錯誤を繰り返して、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料であるAlとSiOを混合させた材料でドライエッチング特性や薬液耐性を調べたところ、フッ素系ガスによるドライエッチングに対して実用上、十分な耐性を有し、また、洗浄液(アンモニア過水、TMAH等)に対する耐性もAl膜に比べて高い耐性を有する膜を形成することができることが判明した。また、AlとSiOからなる膜は、位相シフト膜の一部として、適度な屈折率nと消衰係数kを有することもわかった。
AlとSiOを混合させた材料で形成した膜は、位相シフト膜をパターニングするときのフッ素系ガスによるドライエッチングでは除去されず、膜厚の減少も僅かである。後工程の遮光膜に遮光帯を含むパターンをパターニングするときのフッ素系ガスによるドライエッチングでも除去されずに残り、膜厚の減少も僅かである。このため、この膜は、位相シフト膜の一部を構成する上層として用いることができる。すなわち、位相シフト膜を下層と上層の積層構造とし、下層を従来の位相シフト膜に用いられている材料を適用し、上層をAlとSiOを混合させた材料とする。そして、この下層と上層の積層構造からなる位相シフト膜が、露光光に対する所定の透過率と所定の位相差となるように、下層と上層の光学特性および厚さを調整する。本発明のマスクブランクは、以上の研究の結果としてなされたものであり、透光性基板の主表面上に位相シフト膜と遮光膜を備えたマスクブランクであって、位相シフト膜は、ケイ素および窒素を含有する下層と、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する上層からなる積層膜であり、位相シフト膜上に接して形成された遮光膜は、高精度な微細パターン形成に適したケイ素及およびタンタルから選ばれる1以上の元素を含有する材料からなる。
以下、本発明の各実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
[マスクブランクとその製造]
本発明の第1の実施形態に係るマスクブランクは、位相シフトマスク(転写用マスク)を製造するために用いられるものである。図1に、この第1の実施形態のマスクブランクの構成を示す。この第1の実施形態に係るマスクブランク101は、透光性基板1の主表面上に、下層31、上層32、および遮光膜4を備えていて、下層31と上層32からなる積層膜が、透過する露光光に対して所定の透過率と位相差を付与する位相シフト膜(パターン形成用薄膜)3を形成する。なお図1には図示されていないが、遮光膜4上にハードマスク膜5を備えていることが、微細で高精度な位相シフトパターンを形成する上で好ましい(図3参照)。
透光性基板1は、露光光に対して高い透過率を有するもので、変形を防止するための十分な剛性があるものであれば、特に制限されない。本発明では、合成石英ガラス基板、その他各種のガラス基板(例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス等)を用いることができる。これらの基板の中でも特に合成石英ガラス基板は、ArFエキシマレーザー(波長193nm)またはそれよりも短波長の領域で透過率が高いので、高精細の転写パターン形成に用いられる本発明のマスクブランクの基板として好適である。
透光性基板1の上に接して形成される下層31は、ケイ素と窒素を含有する材料からなり、下層31の上に形成されるケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料で形成される上層32と合わせて位相シフト膜3を形成する。位相シフト膜3は、実質的に露光に寄与しない強度の光を透過させるものであって、所定の位相差を有するものである。具体的には、この位相シフト膜3をパターニングすることにより、位相シフト膜3が残る部分であるパターン部と残らない部分である透光部とを形成し、位相シフト膜3が無い部分である透光部を透過した光(ArFエキシマレーザー露光光)に対して、位相シフト膜3のパターン部を透過した光(実質的に露光に寄与しない強度の光)の位相が実質的に反転した関係(所定の位相差)になるようにする。こうすることにより、回折現象によって互いに相手の領域に回り込んだ光が打ち消し合うようにして境界部における光強度をほぼゼロとし境界部のコントラスト、すなわち解像度を向上させるものである。
位相シフト膜3は、露光光を1%以上の透過率で透過させる機能(透過率)と、位相シフト膜3を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜3の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上180度以下の位相差を生じさせる機能とを有することが好ましい。また、位相シフト膜3の透過率は、2%以上であるとより好ましい。位相シフト膜3の透過率は、30%以下であることが好ましく、20%以下であるとより好ましい。
近年、ハーフトーン型の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、転写対象物(半導体ウェハ上のレジスト膜等)に露光転写する際、位相シフトパターンのパターン線幅(特にライン・アンド・スペースパターンのパターンピッチ)による露光転写のベストフォーカスの差が大きいことが問題となってきている。位相シフトパターンのパターン線幅によるベストフォーカスの変動幅を小さくするには、位相シフト膜3における所定の位相差を170度以下とするとよい。
下層31と上層32で構成される位相シフト膜3の膜厚は、80nm以下であることが好ましく、70nm以下であるとより好ましい。また、上記の位相シフトパターンのパターン線幅によるベストフォーカスの変動幅を小さくするには、位相シフト膜3の膜厚は65nm以下とすることが特に好ましい。位相シフト膜3の膜厚は50nm以上とすることが好ましい。アモルファス構造の材料で位相シフト膜3を形成しつつ、位相シフト膜3の位相差を150度以上とするためには50nm以上は必要なためである。ここで、アモルファス構造の材料は、一般的に、膜表面の表面荒れが小さく、その材料からなる膜からエッチング形成されたパターンの側面はラフネスが少ない、言い換えればLER(Line Edge Roughness)の小さな好ましいものとなる。
位相シフト膜3の全体で前記の光学特性と膜厚に係る諸条件を満たすには、下層31のArFエキシマレーザーの露光光の波長(193nm)における屈折率n(以降、単に「屈折率n」という。)は、2.02以上であると好ましく、2.17以上であるとより好ましい。下層31の屈折率nは、2.68以下であると好ましく、2.51以下であるとより好ましい。下層31のArFエキシマレーザーの露光光の波長(193nm)における消衰係数k(以降、単に「消衰係数k」という。)は、0.30以上であると好ましく、0.35以上であるとより好ましい。下層31の消衰係数kは、1.00以下であると好ましく、0.90以下であるとより好ましい。
他方、上層32の屈折率nは、1.57以上であると好ましく、1.58以上であるとより好ましい。上層32の屈折率nは、1.73以下であると好ましく、1.72以下であるとより好ましい。上層32の消衰係数kは、0.00以上であることが求められ、0.005以上であると好ましい。上層32の消衰係数kは、0.04以下であると好ましい。
下層31は、ケイ素および窒素を含有する材料からなるが、ケイ素を含有する材料に窒素を含有させることで、窒素を含有しない場合よりも屈折率nを大きくでき、より薄い厚さで大きな位相差が得られる。また、かつ消衰係数kを小さくできるので、透過率を高くすることができる。このため、位相シフト膜として好ましい光学特性を得ることができる。
下層31は、ケイ素および窒素からなる材料、ケイ素および窒素からなる材料に酸素を除く非金属元素および半金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料(以下、SiN系材料という。)で形成することができる。半金属元素の中でも、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモン及びテルルから選ばれる1以上の元素を含有させると、スパッタリングターゲットとして用いるケイ素の導電性を高めることが期待できるため、好ましい。
SiN系材料の下層31は、酸素以外の非金属元素を含有してもよい。この非金属元素の中でも、窒素、炭素、フッ素及び水素から選ばれる1以上の元素を含有させると好ましい。この非金属元素には、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)等の希ガスも含まれる。SiN系材料の下層31は、積極的に酸素を含有させることをしない(X線光電子分光法等による組成分析を行ったときに検出下限値以下。)。SiN系材料の下層31を形成する材料中に酸素を含有させることによって下層31の屈折率nおよび消衰係数kがともに低下するため、位相シフト膜3の全体膜厚を厚くする必要が生じる。SiN系材料の下層31を形成する材料中の窒素含有量が多くなるに従い、屈折率nは大きくなり、消衰係数kは小さくなる。SiN系材料の下層31を形成する材料中の窒素含有量は、48原子%以上であることが好ましく、50原子%以上であるとより好ましい。他方、下層31を形成する材料中の窒素含有量は、57原子%以上であることが好ましく、55原子%以下であるとより好ましい。
他方、下層31は、遷移金属、ケイ素および窒素を含有する材料(以下、MSiN系材料という。)で形成することができる。この場合の遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)およびパラジウム(Pd)等のうちいずれか1つ以上の金属またはこれらの金属の合金が挙げられる。MSiN系材料の下層31の材料には、前記の元素に加え、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)および水素(H)等の元素が含まれてもよい。また、MSiN系材料の下層31の材料には、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)等の不活性ガスが含まれていてもよい。
下層31は、単層で構成してもよく、また複数層の積層膜で構成してもよい。SiN系材料の単層膜で、ArFエキシマレーザー光に対し、10%以下の透過率で透過し、かつ所定の位相差を生じさせるような光学特性を有する下層31を形成することは可能である。しかし、そのような光学特性を有するSiN系材料の下層31を、スパッタリング法で成膜する場合、その方式によっては光学特性の均一性が高い膜や低欠陥の膜を安定的に形成することが難しい成膜条件になることがある。これらのことを考慮し、下層31を、窒素含有量が比較的少ない低透過層と窒素含有量が比較的多い高透過層が積層した構造としてもよい。この場合、低透過層はメタルモードのスパッタリングで成膜されたSiN系材料の窒化膜とし、高透過層は反応モード(ポイズンモード)のスパッタリングで成膜されたSiN系材料の窒化膜とするとよい。このようにすることで、成膜条件が判定しにくい遷移モードでのスパッタリングを使用することなく、所望の透過率と所望の位相差の条件を満たす下層31を形成することができる。
上層32は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料からなり、その膜の上に形成される遮光膜4をドライエッチングするときのエッチングストッパー機能と、その膜の下に形成される下層31をドライエッチングするときのハードマスク機能を有し、さらに遮光膜4の上に形成されたハードマスク膜5を除去するときのドライエッチングに対するエッチング選択性も有している。位相シフト膜3は、所定の位相差と透過率を備える必要があるが、それを達成するための要素は、屈折率、消衰係数、および膜厚である。
上層32は、酸素含有量が60原子%以上であることが好ましい。また、酸素と未結合のケイ素よりも酸素と結合した状態のケイ素の方が、薬液洗浄(特に、アンモニア過水やTMAH等のアルカリ洗浄)に対する耐性が高くなる傾向があり、上層32中に存在する全てのケイ素のうちの酸素と結合状態となっているものの比率を高くすることが好ましい。他方、上層32は、酸素含有量が66原子%以下であることが好ましく、65原子%以下であることがより好ましい。
上層32は、ケイ素(Si)およびアルミニウム(Al)の合計含有量[原子%]に対するケイ素(Si)の含有量[原子%]の比率(以下、「Si/[Si+Al]比率」という。)が4/5以下であることが好ましい。エッチングストッパー膜2のSi/[Si+Al]比率を4/5以下とすることにより、フッ素系ガスによるドライエッチングに対する上層32のエッチングレートを、遮光膜4や下層31とのエッチングレートの0.2以下とすることができる。すなわち、上層32と、遮光膜4や下層31との間で5倍以上のエッチング選択比が得られる。
また、上層32におけるSi/[Si+Al]比率は3/4以下であると好ましく、2/3以下であるとさらに好ましい。Si/[Si+Al]比率が2/3以下の場合、フッ素系ガスによるドライエッチングに対する上層32のエッチングレートを遮光膜4や下層31のエッチングレートの0.16以下とすることができる。すなわち、上層32と、遮光膜4や下層31との間で7倍以上のエッチング選択比が得られる。
上層32は、ケイ素(Si)およびアルミニウム(Al)のSi/[Si+Al]比率が1/5以上であることが好ましい。上層32のSi/[Si+Al]比率を1/5以上とすることにより、薬液洗浄に対する耐性を高くすることができる。また、上層32のSi/[Si+Al]比率は1/3以上であるとより好ましい。Si/[Si+Al]比率が1/3以上の場合、薬液洗浄に対する耐性をさらに高くすることができる。
上層32は、アルミニウム以外の金属の含有量を2原子%以下とすることが好ましく、1原子%以下とするとより好ましく、X線光電子分光法による組成分析を行った時に検出下限値以下であるとさらに好ましい。また、上層32は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素以外の元素の合計含有量が5原子%以下であることが好ましく、3原子%以下であるとより好ましい。
上層32は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素からなる材料で形成するとよい。ケイ素、アルミニウムおよび酸素からなる材料とは、これらの構成元素のほか、スパッタ法で成膜する際、上層32に含有されることが不可避な元素(ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)等の希ガス、水素(H)、炭素(C)等)のみを含有する材料のことをいう。上層32中にケイ素やアルミニウムと結合する他の元素の存在を極小にすることにより、上層32中におけるケイ素および酸素の結合とアルミニウムおよび酸素の結合の比率を大幅に高めることができる。これにより、フッ素系ガスによるドライエッチングのエッチング耐性をより高くし、薬液洗浄に対する耐性をより高めることができる。上層32は、アモルファス構造とすることが好ましい。より具体的には、上層32は、ケイ素および酸素の結合とアルミニウムおよび酸素の結合を含む状態のアモルファス構造であることが、上層32の表面粗さを低減できるので好ましい。
上層32は、膜厚が3nm以上であることが好ましい。上層32をケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料で形成することにより、フッ素系ガスに対するエッチングレートが大幅に小さくはなっても、全くエッチングされないわけではない。また、上層32を薬液洗浄した場合においても、全く膜減りしないというわけではない。マスクブランクから位相シフトマスクを製造するまでに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングによる影響、薬液洗浄による影響を考慮すると、上層32の膜厚は3nm以上あることが望まれる。上層の膜厚は4nm以上であると好ましく、5nm以上であるとより好ましい。
上層32は、フッ素系ガスでドライエッチングできるケイ素および窒素を含有する下層31に比べるとドライエッチングでの加工が困難であり、垂直な断面形状でかつサイドエッチングを抑制してドライエッチングすることが難しい。このため、遮光膜4をドライエッチングして遮光パターンを形成する際に十分なエッチングストッパーとなり、また、下層31をドライエッチングして下層パターンを形成する際に十分なハードマスクとなるエッチングストッパー機能が確保できる範囲で、上層32の膜厚は薄いほうが好ましい。このことから、上層32は、20nm以下であることが望まれ、15nm以下であると好ましく、10nm以下であるとより好ましい。
上層32は、膜厚方向で組成の均一性が高く、膜厚方向における各構成元素の含有量の差が5原子%以内の変動幅に収まっていることが好ましい。他方、上層32を、膜厚方向で組成傾斜した膜構造としてもよい。この場合、上層32の下層31側のSi/[Si+Al]比率が、遮光膜4側のSi/[Si+Al]比率よりも高くなるような組成傾斜とすることが好ましい。上層32は、遮光膜4側がフッ素系ガスによるドライエッチングの耐性が高く、かつ薬液耐性が高いことが望まれるためである。
上層32の成膜方法に関しては、成膜室内にケイ素および酸素の混合ターゲットとアルミニウムおよび酸素の混合ターゲットの2つのターゲットを配置し、下層31上に上層32を形成することが好ましい。具体的には、その成膜室内の基板ステージに下層31が形成された透光性基板1を配置し、アルゴンガス等の希ガス雰囲気下、あるいは、酸素ガスまたは酸素を含有するガスとの混合ガス雰囲気下で、2つのターゲットのそれぞれに所定の電圧を印加する。この場合、印加する電源としては、RF電源が好ましい。これにより、プラズマ化した希ガス粒子が2つのターゲットに衝突してそれぞれスパッタ現象が起こり、透光性基板1の表面にケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する上層32が形成される。なお、この場合の2つのターゲットにSiOターゲットとAlターゲットを適用するとより好ましい。
このほか、ケイ素、アルミニウムおよび酸素の混合ターゲット(好ましくは、SiOとAlの混合ターゲット、以下同様。)のみで上層32を形成してもよく、ケイ素、アルミニウムおよび酸素の混合ターゲットとケイ素ターゲット、あるいはアルミニウムおよび酸素の混合ターゲットとアルミニウムターゲットの2つのターゲットを同時放電させ、上層32を形成してもよい。
なお、位相シフト膜3を含む薄膜の屈折率nと消衰係数kは、その薄膜の組成だけで決まるものではない。その薄膜の膜密度や結晶状態なども屈折率nや消衰係数kを左右する要素である。このため、反応性スパッタリングで薄膜を成膜する時の諸条件を調整して、その薄膜が所望の屈折率nおよび消衰係数kとなるように成膜する。位相シフト膜3を、上記の屈折率nと消衰係数kの範囲にするには、反応性スパッタリングで成膜する際に、希ガスと反応性ガス(酸素ガス、窒素ガス等)の混合ガスの比率を調整することが有効であるが、それだけに限られることではない。他の要因は、反応性スパッタリングで成膜する際の成膜室内の圧力、スパッタターゲットに印加する電力、ターゲットと透光性基板1との間の距離等の位置関係など多岐に渡る。また、これらの成膜条件は成膜装置に固有のものであり、形成される位相シフト膜3が所望の屈折率nおよび消衰係数kになるように適宜調整されるものである。
遮光膜4には、遮光性、加工性、膜表面の平滑性、量産性、および低欠陥性が求められる。
このような特性を有する材料としては、ケイ素に窒素を含有する材料や、遷移金属、ケイ素および窒素を含有する材料が挙げられる。遷移金属、ケイ素および窒素を含有する材料は、遷移金属を含有しないケイ素および窒素を含有する材料に比べて遮光性能が高く、遮光膜4の膜厚を薄くすることが可能となる。遮光膜4に含有させる遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、パラジウム(Pd)等のいずれか1つ以上の金属またはこれらの金属の合金が挙げられる。また、ケイ素を含有する材料で遮光膜4を形成する場合、遷移金属以外の金属(スズ(Sn)インジウム(In)、ガリウム(Ga)等)を含有させてもよい。
遮光膜4は、タンタルを含有する材料で形成してもよい。この場合、遮光膜4のケイ素の含有量は、5原子%以下であることが好ましく、3原子%以下であるとより好ましく、実質的に含有していないとさらに好ましい。これらのタンタルを含有する材料は、フッ素系ガスによるドライエッチングで転写パターンを形成することが可能な材料である。この場合におけるタンタルを含有する材料としては、タンタル金属のほか、タンタルに窒素、酸素、ホウ素および炭素から選らばれる1つ以上の元素を含有させた材料などが挙げられる。例えば、Ta、TaN、TaO、TaON、TaBN、TaBO、TaBON、TaCN、TaCO、TaCON、TaBCN、TaBOCNなどが挙げられる。
遮光膜4を形成する材料には、光学濃度が大きく低下しない範囲であれば、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)、水素(H)から選ばれる1以上の元素を含有させてもよい。特に窒素を含有させたタンタル窒化膜(TaN膜)は、遮光膜の平滑性が向上し、遮光パターンのラフネスが改善される傾向がある。また、Ta金属は大気中で酸化しやすいため、遮光パターン作製後にTa金属単体からなるパターン側壁が露出すると、時間とともに線幅が変化するという問題がある。Ta金属に窒素を加えると酸化しにくくなるので、遮光膜4にタンタルを用いる場合は、窒素を含有させるのが好ましい。また、タンタル窒化膜の平滑性をさらに向上させるため、タンタル窒化膜にホウ素、炭素等を加えてもよい。これらの元素はTa金属が有する遮光性能もしくはエッチング性能を低下させるため、添加量は30原子%以下が好ましい。具体的にはホウ素、炭素を添加すると遮光性能が低下する。炭素を添加すると、エッチング速度が低下する。
なお、遮光膜4は、クロムを含有する材料で形成してもよい。遮光膜4は、クロムに加えて、窒素、酸素、炭素、水素およびホウ素から選ばれる1以上の元素を含有させた材料で形成するとより好ましい。遮光膜4は、これらのクロムを含有する材料に、インジウム(In)、スズ(Sn)およびモリブデン(Mo)から選ばれる少なくとも1以上の金属元素(以下、これらの金属元素を「インジウム等金属元素」という。)を含有させた材料で形成してもよい。クロムを含有する材料で遮光膜4を形成した場合、後述のハードマスク膜5には、ケイ素および酸素を含有する材料あるいはタンタルと酸素を含有する材料が適用される。
遮光膜4は、単層構造および2層以上の積層構造のいずれも適用可能である。また、単層構造の遮光膜および2層以上の積層構造の遮光膜の各層は、膜または層の膜厚方向でほぼ同じ組成である構成であっても、層の厚さ方向で組成傾斜した構成であってもよい。遮光膜4の透光性基板1とは反対側の表面における露光光に対する反射率を低減させるために、その透光性基板1とは反対側の表層、すなわち下層と上層の2層構造の場合は上層に酸素や窒素を多く含有させてもよい。
遮光膜4は、位相シフトマスクの完成後において、位相シフト膜3との積層構造で遮光帯等を形成する。このため、遮光膜4は、位相シフト膜3との積層構造で、露光光(波長193nm)に対して2.8以上の光学濃度(OD)を確保することが求められ、3.0以上のODがあるとより好ましい。
本実施の形態1では、遮光膜4上に積層したハードマスク膜5を、遮光膜4をエッチングする時に用いられるエッチングガスに対してエッチング選択性を有する材料で形成している(図3参照)。これにより、以下に述べるように、レジスト膜を遮光膜4のマスクとして直接用いる場合よりもレジスト膜の膜厚を大幅に薄くすることができる。
遮光膜4は、上記のとおり、所定の光学濃度を確保して十分な遮光機能を有する必要があるため、その膜厚の低減には限界がある。一方、ハードマスク膜5は、その直下の遮光膜4にパターンを形成するドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能することができるだけの膜厚があれば十分であり、基本的に光学面での制限を受けない。このため、ハードマスク膜5の膜厚は、遮光膜4の膜厚に比べて大幅に薄くすることができる。そして、有機系材料のレジスト膜は、このハードマスク膜5にパターンを形成するドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能するだけの膜厚があれば十分であるので、レジスト膜を遮光膜4のマスクとして直接用いる場合よりもレジスト膜の膜厚を大幅に薄くすることができる。このようにレジスト膜を薄膜化できるため、レジスト解像度を向上できるとともに、形成されるパターンの倒壊を防止することができる。
このため、実施の形態1のマスクブランクにおいては、遮光膜4上にハードマスク膜5を備えている。遮光膜4がケイ素またはタンタルを含有する材料で形成されている場合、このハードマスク膜5は、クロムを含有する材料で形成することが好ましい。また、ハードマスク膜5は、クロムに加えて、窒素、酸素、炭素、水素およびホウ素から選ばれる1以上の元素を含有させた材料で形成するとより好ましい。ハードマスク膜5は、これらのクロムを含有する材料に、インジウム等金属元素を含有させた材料で形成してもよい。
マスクブランク101において、ハードマスク膜5の表面に接して、有機系材料のレジスト膜が100nm以下の膜厚で形成されていることが好ましい。DRAM hp32nm世代に対応する微細パターンの場合、ハードマスク膜5に形成すべき転写パターン(位相シフトパターン)に、線幅が40nmのSRAF(Sub−Resolution Assist Feature)が設けられることがある。このような場合でも、レジストパターンの断面アスペクト比は1:2.5と低くなるので、レジスト膜の現像時、リンス時等にレジストパターンが倒壊することや脱離することが抑制される。なお、レジスト膜の膜厚は、80nm以下であると、レジストパターンの倒壊や脱離がさらに抑制されるため、より好ましい。
なお、上述のように、遮光膜4上に積層したハードマスク膜5を上述の材料で形成することが好ましいが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではなく、マスクブランク101において、ハードマスク膜5を形成せずに、遮光膜4上にレジストパターンを直接形成し、そのレジストパターンをマスクにして遮光膜4のエッチングを直接行うようにしてもよい。
また、下層31、上層32、遮光膜4およびハードマスク膜5は、スパッタリングによって形成されるが、DCスパッタリング、RFスパッタリングおよびイオンビームスパッタリングなどのいずれのスパッタリングも適用可能である。導電性が低いターゲットを用いる場合においては、RFスパッタリングやイオンビームスパッタリングを適用することが好ましいが、成膜レートを考慮すると、RFスパッタリングを適用するとより好ましい。
[位相シフトマスクとその製造]
この第1の実施形態に係る位相シフトマスク201(図2参照)では、下層31と上層32からなる位相シフト膜3に転写用のパターンである位相シフトパターン3aが形成され、遮光膜4には遮光帯を含むパターンである遮光パターン4b(遮光帯、遮光パッチ等)が形成されている。なお、マスクブランク101にハードマスク膜5が設けられている構成の場合、この位相シフトマスク201の作製途上でハードマスク膜5は除去される。
この第1の実施形態に係る位相シフトマスクの製造方法は、前記のマスクブランク101を用いるものであり、ドライエッチングにより遮光膜4に転写パターンを形成する工程と、転写パターンを有する遮光膜4あるいはハードマスク膜5をエッチングマスクとして、塩化ホウ素(BCl)ガスを含むエッチングガスを用いて上層32に転写パターンを形成する工程と、フッ素系ガスを用いるドライエッチングにより下層31に転写パターンを形成する工程と、ドライエッチングにより遮光膜4に遮光帯を含むパターン(遮光帯、遮光パッチ等)を形成する工程、を備えることを特徴としている。以下、図3に示す製造工程にしたがって、この第1の実施形態に係る位相シフトマスク201の製造方法を説明する。なお、ここでは、遮光膜4の上にハードマスク膜5が積層したマスクブランク101を用いた位相シフトマスク201の製造方法について、図3を参照しながら、説明する。また、遮光膜4には遷移金属とケイ素を含有する材料を適用し、ハードマスク膜5にはクロムを含有する材料を適用している場合について説明する。
まず、マスクブランク101におけるハードマスク膜5に接して、レジスト膜をスピン塗布法によって形成する。次に、レジスト膜に対して、位相シフト膜3に形成すべき転写パターン(位相シフトパターン)を電子線で描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、第1のレジストパターン6aを形成する(図3(a)参照)。続いて、第1のレジストパターン6aをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜5に第1のハードマスクパターン5aを形成する(図3(b)参照)。
次に、第1のレジストパターン6aを除去してから、第1のハードマスクパターン5aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜4に第1の遮光パターン4aを形成する(図3(c)参照)。その後、第1のハードマスクパターン5aをマスクとして、塩化ホウ素(BCl)ガスと塩素(Cl)ガスの混合ガスを用いたドライエッチングにより上層32に上層パターン32aを形成する(図3(d))。
次に、レジスト膜をスピン塗布法によって形成し、レジスト膜に対して、遮光帯を含む遮光パターン(遮光帯、遮光パッチ等)を電子線で描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、第2のレジストパターン7bを形成する(図3(e)参照)。ここで、第2のパターンが比較的大きなパターンのみで構成されている場合には、電子線を用いた描画に換えて、スループットの高いレーザー描画装置によるレーザー光を用いた露光描画とすることも可能である。
その後、第2のレジストパターン7bをエッチングマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜5に第2のハードマスクパターン5bを形成する(図3(f)参照)。
第2のレジストパターン7bを除去した後、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、下層31に第1のパターン(位相シフトパターン31a)を形成する(図3(g)参照)。この時、遮光パターンは、遮光帯等が含まれる第2のハードマスクパターン5bに保護された部分のみが残る遮光パターン4bとなり、その他の部分の遮光膜4は除去される。この下層31のドライエッチングでは、位相シフトパターン3aが垂直に近い断面形状となるように、また、位相シフトパターン3aの面内CD(Critical Dimension)均一性を高めるため、さらには遮光膜が上層パターン32aの表面に残っている遮光膜が完全に除去され、上層パターン32aの表面700が露出するように、所定のオーバーエッチングを行う。この時、その影響で透光性基板1が露出している部分の表面701は少し掘り込まれる。一方、上層パターン32aにおける露出した表面700は、上層32がフッ素系ガスのドライエッチングに対して高いエッチング耐性(エッチングストッパー機能)を持つため、ほとんどエッチングされない。
その後、第2のハードマスクパターン5bを、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングにて除去し、洗浄等の所定の処理を経て、位相シフトマスク201を得る(図3(h)参照)。
以上のことから、透光性基板1が露出している部分の表面701の掘り込み量を考慮して(露光光に対する微小な位相変化分を考慮して)位相シフトパターン3aの光学条件(屈折率n、消衰係数kおよび膜厚)を設計しておけば、位相シフトパターン3aは、十分高い精度で位相差を制御可能であり、高精度で微細なパターン転写に好適な位相シフトパターンとなる。
前記のドライエッチングで使用される塩素系ガスとしては、塩素(Cl)が含まれていれば特に制限はない。例えば、Cl、SiCl、CHCl、CHCl、BCl等が挙げられる。また、前記のドライエッチングで使用されるフッ素系ガスとしては、フッ素(F)が含まれていれば特に制限はなく、例えば、CHF、CF、C、C、SF等が挙げられる。
なお、上記の位相シフトマスクの製造方法では、ハードマスクパターン5aをマスクとするドライエッチングで上層パターン32aを形成しているが、この手順に限られない。例えば、遮光パターン4aが形成された後、第2のレジストパターン7bをマスクとするドライエッチングを行ってハードマスクパターン5bを形成し、その後、遮光パターン4aをマスクとするドライエッチングを行って上層パターン32aを形成する手順でも、位相シフトマスク201を製造することは可能である。
以上のように、この実施の形態1のマスクブランク101は、位相シフト膜3を、ケイ素および窒素を含有する下層31と、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する上層32からなる積層型の位相シフト膜3とし、遮光膜4を、ドライエッチングによる加工性に優れ高精度の微細パターン形成が可能なケイ素あるいはタンタルを含有する材料からなる膜としている。
遮光膜4も下層31もフッ素系ガスを用いたエッチングにより各々遮光パターン4b、下層パターン31aを形成するが、その際、上層32の材料をケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料としたため、上層32は、それらのエッチングに対して十分なエッチングストッパーやハードマスクとしての機能を担う。遮光パターン4bの形成工程においても上層32の膜厚変化は少なく、下層パターン31aと上層パターン32aからなる位相シフトパターン3aの位相制御性は高い。異方性エッチング性の高いフッ素ガス系のドライエッチングで、かつ十分なオーバーエッチングもできることから、位相シフトパターン3aの側壁の垂直性は高く、面内のCD均一性も高い。また、上層32を含め、このマスクブランク101に用いられているすべての材料は、マスクブランクからマスク製造に至るまでに使用される洗浄液に対して十分な洗浄耐性を持つ。このため、このマスクブランク101を用いて製造される位相シフトマスク201は高精度の微細パターンを有し、かつ位相制御性および薬液洗浄耐性の高い位相シフト膜となる。
[半導体デバイスの製造]
実施の形態1の半導体デバイスの製造方法は、実施の形態1の位相シフトマスク201または実施の形態1のマスクブランク101を用いて製造された位相シフトマスク201を用い、半導体基板上のレジスト膜に位相シフトパターン(転写パターン)3aを露光転写することを特徴としている。実施の形態1の位相シフトマスク201は、位相シフトパターン3aの側壁の垂直性が高く、位相シフトパターン3aの面内のCD均一性も高い。しかも、十分な薬液洗浄を行えるのでマスク欠陥も少ない。このため、実施の形態1の位相シフトマスク201を用いて半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写すると、半導体デバイス上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度でパターンを高い歩留まりで形成することができる。
<第2の実施形態>
[マスクブランクとその製造]
本発明の第2の実施形態に係るマスクブランクは、透光性基板1の主表面に接してエッチングストッパー膜2を形成したことを特徴としている。このエッチングストッパー膜2は、実施の形態1で上層32に用いたものと同じケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料で、製法も同じである。図4に、この第2の実施形態のマスクブランク102の構成を示す。この第2の実施形態のマスクブランク102は、透光性基板1上に、エッチングストッパー膜2、位相シフト膜3、遮光膜4が順に積層された構造からなるものであり、これにハードマスク膜5を積層することができる。位相シフト膜3は下層31と上層32からなる。この第2の実施の形態のマスクブランク102は、実施の形態1のマスクブランク101に比して、エッチングストッパー膜2をさらに備えた点で異なる。また、これに伴い、詳細を後述するように、下層31の膜厚も変更されている。なお、第1の実施形態のマスクブランク101と同様の構成については同一の符号を使用し、説明を適宜省略する。
エッチングストッパー膜2は、透光性基板1の主表面の全面に形成されるもので、位相シフトマスクが完成した段階でも、透光性基板1の主表面の全面に残り、位相シフトパターン3aがない領域である透光部にもエッチングストッパー膜2が残存した形態をとる(図5参照)。このため、エッチングストッパー膜2は、透光性基板1との間にほかの膜を介さず、透光性基板1に接して形成されていることが好ましい。
また、エッチングストッパー膜2は、露光光に対する位相シフトマスクの透光部の透過率を左右するので、露光光(波長193nmのArFエキシマレーザー光)に対する高い透過率が求められる。透過率が低いと露光転写の際により多くの露光量(ドーズ量)が必要となり、露光時間が伸びて半導体デバイス製造のスループットが低下する。
一方で、エッチングストッパー膜2は、高い透過率とともに、透光性基板1との間でフッ素系ガスに対する十分なエッチング選択性も同時に求められるため、露光光に対する透過率を透光性基板1と同じ透過率とすることは難しい。すなわち、露光光に対する透光性基板1(合成石英ガラス)の透過率を100%としたときのエッチングストッパー膜2の透過率は、100%未満となる。露光光に対する透光性基板1の透過率を100%としたときのエッチングストッパー膜2の透過率は、95%以上であることが好ましく、96%以上であるとより好ましく、97%以上であるとさらに好ましい。
エッチングストッパー膜2は、酸素含有量が60原子%以上であることが好ましい。露光光に対する透過率を上記の数値以上とするには、エッチングストッパー膜2中に酸素を多く含有させることが求められるためである。後述のとおり、エッチングストッパー膜2は薬液洗浄に対する耐性を高める必要があり、それにはエッチングストッパー膜2における酸素と未結合のケイ素およびアルミニウムの存在比率が小さいことが好ましいためである。
エッチングストッパー膜2は、ケイ素(Si)およびアルミニウム(Al)のSi/[Si+Al]比率が1/5以上であることが好ましい。エッチングストッパー膜2のSi/[Si+Al]比率を1/5以上とすることにより、露光光に対する透光性基板1(合成石英ガラス)の透過率を100%としたときのエッチングストッパー膜2の透過率を95%以上とすることができる。また、同時に、薬液洗浄に対する耐性も高くすることができる。また、エッチングストッパー膜2におけるSi/[Si+Al]比率は1/3以上であるとより好ましい。Si/[Si+Al]比率が1/3以上の場合、露光光に対する透光性基板(合成石英ガラス)1の透過率を100%としたときのエッチングストッパー膜2の透過率を97%以上とすることができる。
エッチングストッパー膜2のSi/[Si+Al]比率は、4/5以下であることが好ましい。エッチングストッパー膜2のSi/[Si+Al]比率を4/5以下とすることにより、フッ素系ガスによるドライエッチングに対するエッチングストッパー膜2のエッチングレートを透光性基板1のエッチングレートの1/3以下とすることができる。すなわち、透光性基板1とエッチングストッパー膜2との間で3倍以上のエッチング量の差が得られる。また、エッチングストッパー膜2におけるSi/[Si+Al]比率は3/4以下であるとより好ましく、2/3以下であるとさらに好ましい。Si/[Si+Al]比率が2/3以下の場合、フッ素系ガスによるドライエッチングに対するエッチングストッパー膜2のエッチングレートを透光性基板1のエッチングレートの1/5以下とすることができる。すなわち、透光性基板1とエッチングストッパー膜2との間で5倍以上のエッチング量の差が得られる。
エッチングストッパー膜2は、膜厚が3nm以上であることが好ましい。エッチングストッパー膜2は上層32と同様に、フッ素系ガスに対するドライエッチングの際、全くエッチングされないわけではない。また、エッチングストッパー膜2を薬液で洗浄した場合においても、全く膜減りしないというわけではない。マスクブランクから位相シフトマスクを製造するまでに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングによる影響、薬液洗浄による影響を考慮すると、エッチングマスク膜の膜厚は3nm以上あることが望まれる。エッチングマスク膜の膜厚は4nm以上であると好ましく、5nm以上であるとより好ましい。一方で、露光光に対する透過率の観点から、エッチングストッパー膜2の膜厚は、20nm以下であることが望まれ、15nm以下であると好ましく、10nm以下であるとより好ましい。
エッチングストッパー膜2は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素からなる材料で形成するとよい。ケイ素、アルミニウムおよび酸素からなる材料とは、これらの構成元素のほか、スパッタ法で成膜する際、エッチングストッパー膜2に含有されることが不可避な元素(希ガス、水素(H)、炭素(C)等)のみを含有する材料のことをいう。実施の形態1において説明したように、これらの材料でエッチングストッパー膜2を形成することにより、従来に比して、フッ素系ガスによるドライエッチングのエッチング耐性をより高くし、薬液洗浄に対する耐性をより高め、また、露光光に対する透過率をより高めることができる。
下層31の膜厚は、実施の形態1では、透光性基板1が露出している部分の表面701が少し掘り込まれることを考慮して、所定の位相差を得る膜厚に設定していた。一方、実施の形態2では、エッチングストッパー膜2が露出している表面702は下層31をドライエッチングする際にほとんどエッチングされないので、表面702の掘り込みを考慮する必要はない。したがって、下層31の膜厚は、上層32と合わせた位相シフト膜3が露光光に対して所定の位相差と所定の透過率になるように設定する。
EB欠陥修正のエッチング終点検出は、黒欠陥に対して電子線を照射した時に、照射を受けた部分から放出されるオージェ電子、2次電子、特性X線、後方散乱電子の少なくともいずれか1つを検出することによって行われている。例えば、電子線の照射を受けた部分から放出されるオージェ電子を検出する場合には、オージェ電子分光法(AES)によって、主に材料組成の変化を見ている。また、2次電子を検出する場合には、SEM像から主に表面形状の変化を見ている。さらに、特性X線を検出する場合には、エネルギー分散型X線分光法(EDX)や波長分散X線分光法(WDX)によって、主に材料組成の変化を見ている。後方散乱電子を検出する場合には、電子線後方散乱回折法(EBSD)によって、主に材料の組成や結晶状態の変化を見ている。
ガラス材料からなる透光性基板1の主表面に接してケイ素系材料の位相シフト膜(単層膜、多層膜とも)3が設けられた構成のマスクブランクは、位相シフト膜3がケイ素と窒素がほとんどの成分であるのに対し、透光性基板1がケイ素と酸素がほとんどの成分であり、両者の差は実質的に酸素と窒素しかない。このため、EB欠陥修正のエッチング修正の検出が難しい組み合わせであった。これに対し、エッチングストッパー膜2の表面に接して位相シフト膜3が設けられた構成の場合、位相シフト膜3がケイ素と窒素がほとんどの成分であるのに対し、エッチングストッパー膜2がケイ素と酸素の他にアルミニウムを含んでいる。このため、EB欠陥修正のエッチング修正では、アルミニウムの検出を目安にすればよく、終点検出が比較的容易となる。一方、位相シフト膜3が、遷移金属、ケイ素および窒素を含有する材料で形成されている場合、EB欠陥修正のエッチング終点の検出のことを考慮すると、この位相シフト膜3には、アルミニウムを含有させないことが好ましい。
[位相シフトマスクとその製造]
この第2の実施形態に係る位相シフトマスク202(図5参照)では、マスクブランク102のエッチングストッパー膜2が透光性基板1の主表面上の全面で残され、位相シフト膜3と遮光膜4にパターン露光転写に必要な位相シフトパターン3aおよび遮光パターン4bが形成されていることを特徴としている。
この第2の実施形態に係る位相シフトマスクの製造方法は、前記のマスクブランク102を用いるものであり、図6に示されるように、第1のレジストパターン6aを形成するところから、ハードマスクパターン5bを除去し、薬液による洗浄を行って位相シフトマスク202を得るまで実施の形態1と同じ工程を備える。実施の形態1と異なる点は、下層31をフッ素系のガスを用いたドライエッチングして下層パターン31aを形成する際に、エッチングストッパー膜2が露出した表面702がほとんどエッチングされないことである(図6(g)参照)。このため、下層パターン31aを形成する際のドライエッチングにおいて、十分なオーバーエッチングを行うことができ、下層パターン31aのマスク面内CD均一性やパターン断面の垂直性をさらに高めることが可能となる。さらに、その状態でも上層パターン32aが十分なエッチングストッパー機能を持つハードマスクとなっているため、下層パターン31aの位相精度は高い。また、エッチングストッパー膜2を含め、位相シフトマスク202を構成する全ての材料が、高い薬液洗浄耐性を持つ。このため、十分なマスク洗浄を行えることからマスク欠陥も少ない。このように、位相シフトマスク202は、微細で高精度なパターン転写を行う上で好適な位相シフトマスクである。
[半導体デバイスの製造]
実施の形態2の半導体デバイスの製造方法は、実施の形態2の位相シフトマスク202または実施の形態2のマスクブランク102を用いて製造された位相シフトマスク202を用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写することを特徴としている。実施の形態2の位相シフトマスク202は、位相シフトパターン3aの側壁の垂直性が高く、マスク面内のCD均一性も高い。さらに高い位相制御性を備えている。このため、実施の形態2の位相シフトマスク202を用いて半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写すると、半導体デバイス上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度でパターンを形成することができる。
以下、実施例により、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
[マスクブランクの製造]
主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.35mmの合成石英ガラスからなる透光性基板1を準備した。この透光性基板1は、端面および主表面を所定の表面粗さ以下(二乗平均平方根粗さRqで0.2nm以下)に研磨され、その後、所定の洗浄処理および乾燥処理を施されたものである。
次に、透光性基板1の主表面に接して、モリブデン、ケイ素および窒素からなる下層(MoSiN膜)31を67.4nmの膜厚で形成した。具体的には、枚葉式DCスパッタリング装置内に透光性基板1を設置し、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)との混合焼結ターゲット(Mo:Si=12:88(原子%比))を用い、アルゴン(Ar)、窒素(N)およびヘリウム(He)の混合ガス(流量比 Ar:N:He=8:72:100,圧力=0.2Pa)をスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(DCスパッタリング)によって、下層31を形成した。別の透光性基板上に同条件で形成した位相シフト膜に対してX線光電子分光法による分析を行った結果、その材料組成比は、Mo:Si:N=4.1:35.6:60.3(原子%比)であった。
別の透光性基板上に下層31を同条件で形成し、加熱処理を施した後の下層31の屈折率と消衰係数を、分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M−2000D)を用いて測定したところ、波長193nmの光において屈折率nが2.415、消衰係数kは0.596であった。
その後、下層31の表面に接して、アルミニウム、ケイ素および酸素からなる上層32(AlSiO膜)を5nmの膜厚で形成した。具体的には、枚葉式RFスパッタリング装置内に下層31が形成された透光性基板1を設置し、AlターゲットとSiOターゲットを同時放電させ、アルゴン(Ar)ガスをスパッタリングガスとするスパッタリング(RFスパッタリング)によって、上層32を形成した。別の透光性基板上に同条件で形成したエッチングストッパー膜に対してX線光電子分光法による分析を行った結果、その材料組成比は、Al:Si:O=21:19:60(原子%比)であった。すなわち、この上層32のSi/[Si+Al]は、0.475である。なお、X線光電子分光分析法による分析では、RBS分析(ラザフォード後方散乱法による分析)の結果を基に数値補正を行っている(以下の分析においても同様)。
別の透光性基板上に上層32(AlSiO膜)を同条件で形成し、上層32の屈折率と消衰係数を、前述の分光エリプソメーターを用いて測定したところ、波長193nmの光において屈折率nが1.625、消衰係数kは0.000(測定下限)であった。
透光性基板1上に上記方法によって形成された下層31と上層32からなる積層型の位相シフト膜3に対し、位相シフト量測定装置 MPM193(レーザーテック社製)で、ArFエキシマレーザーの波長(193nm)における透過率と位相シフト量を測定したところ、透過率は6.4%、位相シフト量は177.1度であった。
次に、上層32の上に遮光膜4を形成した。この実施例1で用いた遮光膜4は、モリブデン、ケイ素および窒素(MoSiN)からなる2層膜であり、下層MoSiNを27nmの厚さで形成し、さらに上層MoSiONを13nmの厚さで形成した。具体的には、枚葉式DCスパッタリング装置内に上層32が形成された後の透光性基板1を設置し、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)との混合焼結ターゲット(Mo:Si=13:87(原子%比))を用い、アルゴン(Ar)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(DCスパッタリング)によって、遮光膜4の下層と上層を形成した。
次に、遮光膜4を備えた透光性基板1に対して、450℃で30分間の加熱処理を行い、遮光膜4の膜応力を低減させる処理を行った。なお、別の透光性基板1に同様の手順で形成し、アニール処理まで行った遮光膜4に対し、X線光電子分光法による分析を行った。その結果、遮光膜4の下層が、Mo:Si:N=8:62:30(原子%比)であり、下層側近傍の上層が、Mo:Si:N:O=6:54:37:3(原子%比)であることが確認できた。また、前記の分光エリプソメーターを用いて、遮光膜4の光学濃度(OD)を測定したところ、3.0であった。
次に、遮光膜4の上層の表面に接して、クロムおよび窒素からなるハードマスク膜5(CrN膜)を5nmの厚さで形成した。具体的には、枚葉式DCスパッタリング装置内に遮光膜4を備える透光性基板1を設置し、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(DCスパッタリング)によって、ハードマスク膜5を形成した。別の透光性基板上に同条件で形成したハードマスク膜に対してX線光電子分光法による分析を行った結果、Cr:N=72:28(原子%比)であった。以上の手順で、実施例1のマスクブランクを製造した。
上層32が形成された別の透光性基板を、濃度0.5%のアンモニア水に浸漬させてエッチングレートを測定したところ、0.1nm/minであった。この結果から、この実施例1の上層32は、マスクブランク101から位相シフトマスク201を製造する過程で行われる薬液洗浄に対して十分な耐性を有することが確認できた。
透光性基板、別の透光性基板に形成された上層、およびさらに別の透光性基板に形成された下層のそれぞれに対し、SFとHeの混合ガスをエッチングガスに用いたドライエッチングを同条件で行った。そして、それぞれのエッチングレートを算出し、3者間のエッチング選択比を算出した。透光性基板1に対する上層32のエッチング選択比は0.1であり、透光性基板1に対する下層31のエッチング選択比は2.38であった。また、上層32に対する下層31のエッチング選択比は23.8であった。
[位相シフトマスクの製造と評価]
次に、この実施例1のマスクブランク101を用い、以下の手順で実施例1の位相シフトマスク201を作製した。最初に、スピン塗布法によってハードマスク膜5の表面に接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚80nmで形成した。次に、このレジスト膜に対して、転写露光用のパターンを電子線描画し、所定の現像処理を行い、第1のレジストパターン6aを形成した(図3(a)参照)。
次に、第1のレジストパターン6aをマスクとし、塩素と酸素の混合ガス(ガス流量比 Cl:O=4:1)を用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜5に第1のハードマスクパターン5aを形成した(図3(b)参照)。
次に、第1のレジストパターン6aをTMAHにより除去した。続いて、第1のハードマスクパターン5aをマスクとし、フッ素系ガス(SFガスとHeガスの混合ガス)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜4に第1の遮光パターン4aを形成した(図3(c)参照)。このフッ素系ガスによるドライエッチングでは、遮光膜4のエッチングの開始からエッチングが遮光膜4の膜厚方向に進行して上層32の表面が露出し始めるまでのエッチング時間であるジャストエッチングタイムに加え、そのジャストエッチングタイムの20%の時間だけ追加のエッチング、すなわちオーバーエッチングを行った。なお、このフッ素系ガスによるドライエッチングは10Wの電力でバイアスを掛けており、いわゆる高バイアスエッチングの条件で行われた。
次に、第1のハードマスクパターン5aをマスクとして、塩化ホウ素(BCl)と塩素(Cl)の混合ガスを用いたドライエッチングを行い、上層32に上層パターン32aを形成した(図3(d)参照)。
次に、電子線描画により、遮光帯や露光転写用パッチパターンを有する第2のレジストパターン7bを形成し(図3(e)参照)、引き続いて、第2のレジストパターン7bをマスクとして、塩素と酸素の混合ガス(ガス流量比 Cl:O=10:1)を用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜5に第2のハードマスクパターン5bを形成した(図3(f)参照)。
次に、第2のレジストパターン7bを除去した。続いて、第2のハードマスクパターン5bをマスクとし、フッ素系ガス(SFガスとHeガスの混合ガス)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜4に第2の遮光パターン4bを形成するとともに、下層31もエッチングして下層パターン31aを形成した(図3(g)参照)。このフッ素系ガスによるドライエッチングでは、下層31に対するジャストエッチングタイムに加えてその20%の時間だけオーバーエッチングを行った。なお、このフッ素系ガスによるドライエッチングは10Wの電力でバイアスを掛けており、いわゆる高バイアスエッチングの条件で行われた。この時、透光性基板1が露出した表面701は、約3nmエッチングされた。一方、上層パターン32aはエッチングストッパーとしての機能を十分に備えており、その膜厚はこのエッチング前後でほとんど変わらなかった。
その後、残存する第2のハードマスクパターン5bを塩素系ガスと酸素ガスの混合ガス(ガス流量比 Cl:O=4:1)を用いたドライエッチングで除去し、アンモニア過水による洗浄等の所定の処理を経て、位相シフトマスク201を得た(図3(h)参照)。
作製した位相シフトマスク201の位相シフトパターン3aのマスク面内のCD均一性を検査したところ、良好な結果であった。また、位相シフトパターン3aの断面をSTEMで観察したところ、位相シフトパターン3aの側壁の垂直性は高く、また、洗浄に伴うパターン剥がれやパターン形状不良などの問題も観測されなかった。
なお、位相シフト膜3の位相シフト量は、前述のように、マスクブランクの位相シフト膜3のみでは177.1度であったが、下層パターン31aをドライエッチングにて形成する際に透光性基板1の露出した表面701を少し掘り込む関係で、位相シフトマスク201となった段階での位相シフトパターン3aの位相シフト量は180度と見積もられる。
この位相シフトマスク201に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した時における転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を満たしていた。
作製した位相シフトマスク201を露光装置に載置し、露光を行ってウェハ上にレジストパターンを形成したところ、微細な回路パターンを所定の精度で形成することができた。
(実施例2)
[マスクブランクの製造]
実施例2のマスクブランクは、下層31を窒化シリコン膜(SiN膜)の2層構造に変えたことと、上層32の組成を実施例1から変えたことを除いて実施例1のマスクブランクと同様にして製造されたものである。したがって、透光性基板1に接して下層31、上層32、遮光膜4およびハードマスク膜5がこの順に積層されたマスクブランクの構造と、透光性基板1、遮光膜4、ハードマスク膜5の材料と製法は実施例1と同じものである。以下、実施例1のマスクブランクと相違する箇所について説明する。
この実施例2の下層31は、透光性基板1の主表面に接して、低透過層および高透過層が積層された構造を備えるものである。具体的な成膜工程は、以下のとおりである。枚葉式RFスパッタリング装置内に透光性基板1を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N)の混合ガス(流量比 Ar:N=2:3,圧力=0.035Pa)をスパッタリングガスとし、RF電源の電力を2.8kWとし、メタルモードの領域での反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、透光性基板1の主表面に接して、ケイ素および窒素からなる低透過層(Si:N=59:41(原子%比))を11.9nmの厚さで形成した。別の透光性基板の主表面に対して、同条件で低透過層のみを形成し、前記の分光エリプソメーターを用いてこの低透過層の光学特性を測定したところ、波長193nmにおける屈折率nが1.85、消衰係数kが1.70であった。
次に、枚葉式RFスパッタリング装置内に、低透過層が積層された透光性基板1を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N)の混合ガス(流量比 Ar:N=1:3,圧力=0.09Pa)をスパッタリングガスとし、RF電源の電力を2.8kWとし、反応モード(ポイズンモード)の領域での反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、低透過層上に、ケイ素および窒素からなる高透過層(Si:N=46:54(原子%比))を58.5nmの厚さで形成した。別の透光性基板の主表面に対して、同条件で高透過層のみを形成し、前記の分光エリプソメーターを用いてこの高透過層の光学特性を測定したところ、波長193nmにおける屈折率nが2.52、消衰係数kが0.39であった。
この実施例2の上層32は、枚葉式RFスパッタリング装置を用いて、AlターゲットとSiOターゲットを同時放電させ、アルゴン(Ar)ガスをスパッタリングガスとするスパッタリング(RFスパッタリング)して成膜されるAlSiO膜であって、その元素比率をAl:Si:O=13:26:61(原子%比)としたものである。したがって、このエッチングストッパー膜2のSi/[Si+Al]は、0.67である。この上層32を下層31の表面に接して、5nmの膜厚で形成した。この膜の波長193nmの光における屈折率nは1.600、消衰係数kは0.0000(測定下限)であった。また、濃度0.5%のアンモニア水でのエッチングレートは0.1nm/minであり、この上層32はマスクブランク101から位相シフトマスク201を製造する過程で行われる薬液洗浄に対して十分な耐性を有することが確認できた。
また、実施例1と同様の方法で、SFとHeの混合ガスをエッチングガスに用いたドライエッチングの選択比の比較を行ったところ、透光性基板1に対する実施例2の上層32のエッチング選択比は0.2であり、透光性基板1に対する実施例2の下層31のエッチング選択比は2.03であった。また、実施例2の上層32に対する実施例2の下層31のエッチング選択比は10.2であった。
この低透過層、高透過層からなる下層31および上層32からなる位相シフト膜3に対し、前記の位相シフト量測定装置でArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における透過率および位相差を測定したところ、透過率は6.1%、位相差は177.2度であった。
[位相シフトマスクの製造]
この実施例2のマスクブランク101を用い、実施例1と同様の工程で実施例2の位相シフトマスク201を作製した。
作製した位相シフトマスク201の位相シフトパターン3aのマスク面内のCD均一性を検査したところ、良好な結果であった。また、位相シフトパターン3aの断面をSTEMで観察したところ、位相シフトパターン3aの側壁の垂直性は高く、また、洗浄に伴うパターン剥がれなどの問題も観測されなかった。
なお、位相シフト膜3の位相シフト量は、前述のように、マスクブランクの位相シフト膜3のみでは177.2度であったが、下層パターン31aをドライエッチングにて形成する際に透光性基板1の露出した表面701を少し掘り込む関係で、位相シフトマスク201となった段階での位相シフトパターン3aの位相シフト量は180度と見積もられる。
この位相シフトマスク201に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した時における転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を満たしていた。
作製した位相シフトマスク201を露光装置に載置し、露光を行ってウェハ上にレジストパターンを形成したところ、微細な回路パターンを所定の精度で形成することができた。
(実施例3)
[マスクブランクの製造]
この実施例3のマスクブランクは、下層31および上層32を除いて、実施例1のマスクブランクと同様にして製造されるものである。この実施例3の下層31は、膜厚を67.5nmに変更したことを除いて実施例1と同様にした。一方、この実施例3の上層32には、アルミニウム、ケイ素および酸素からなるAlSiO膜(Al:Si:O=7:28:65(原子%比))を適用し、下層31の表面に接して、5nmの膜厚で形成した。すなわち、このエッチングストッパー膜2のSi/[Si+Al]は、0.8である。なお、この上層32の製法は実施例1と同じで、条件を変えて組成を上記のように調整した。この膜の波長193nmの光における屈折率nは1.589、消衰係数kは0.0000(測定下限)であった。また、濃度0.5%のアンモニア水でのエッチングレートは0.1nm/minであり、この上層32はマスクブランク101から位相シフトマスク201を製造する過程で行われる薬液洗浄に対して十分な耐性を有することが確認できた。
また、実施例1と同様の方法で、SFとHeの混合ガスをエッチングガスに用いたドライエッチングの選択比の比較を行ったところ、透光性基板1に対する実施例3の上層32のエッチング選択比は0.34であり、透光性基板1に対する実施例3の下層31のエッチング選択比は2.38であった。また、実施例3の上層32に対する実施例3の下層31のエッチング選択比は7.0であった。
この下層31および上層32からなる位相シフト膜3に対し、前記の位相シフト量測定装置でArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における透過率および位相差を測定したところ、透過率は6.4%、位相差は177.0度であった。
[位相シフトマスクの製造]
この実施例3のマスクブランク101を用い、実施例1と同様の工程で実施例3の位相シフトマスク201を作製した。
作製した位相シフトマスク201の位相シフトパターン3aのマスク面内のCD均一性を検査したところ、良好な結果であった。また、位相シフトパターン3aの断面をSTEMで観察したところ、位相シフトパターン3aの側壁の垂直性は高く、また、洗浄に伴うパターン剥がれなどの問題も観測されなかった。
なお、位相シフト膜3の位相シフト量は、前述のように、マスクブランクの位相シフト膜3のみでは177.0度であったが、下層パターン31aをドライエッチングにて形成する際に透光性基板1の露出した表面701を少し掘り込む関係で、位相シフトマスク201となった段階での位相シフトパターン3aの位相シフト量は180度と見積もられる。
この位相シフトマスク201に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した時における転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を満たしていた。
作製した位相シフトマスク201を露光装置に載置し、露光を行ってウェハ上にレジストパターンを形成したところ、微細な回路パターンを所定の精度で形成することができた。
(実施例4)
[マスクブランクの製造]
この実施例4のマスクブランクは、下層31および上層32を除いて、実施例1のマスクブランクと同様にして製造されるものである。この実施例4の下層31は、膜厚を67nmに変更したことを除いて実施例1と同様とした。一方、この実施例4の上層32には、アルミニウム、ケイ素および酸素からなるAlSiO膜(Al:Si:O=31:8:61(原子%比))を適用し、下層31の表面に接して、5nmの膜厚で形成した。すなわち、このエッチングストッパー膜2のSi/[Si+Al]は、0.205である。なお、この上層32の製法は実施例1と同じで、条件を変えて組成を上記のように調整した。この膜の波長193nmの光における屈折率nは1.720、消衰係数kは0.0328であった。また、濃度0.5%のアンモニア水でのエッチングレートは0.2nm/minであり、この上層32はマスクブランクから位相シフトマスクを製造する過程で行われる薬液洗浄に対して実用に耐える耐性を有することが確認できた。
また、実施例1と同様の方法で、SFとHeの混合ガスをエッチングガスに用いたドライエッチングの選択比の比較を行ったところ、透光性基板1に対する実施例4の上層32のエッチング選択比は0.04であり、透光性基板1に対する実施例4の下層31のエッチング選択比は2.38であった。また、実施例4の上層32に対する実施例4の下層31のエッチング選択比は56.5と極めて高かった。
この下層31および上層32からなる位相シフト膜3に対し、前記の位相シフト量測定装置でArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における透過率および位相差を測定したところ、透過率は6.5%、位相差は177.0度であった。
[位相シフトマスクの製造]
この実施例4のマスクブランク101を用い、実施例1と同様の工程で実施例4の位相シフトマスク201を作製した。
作製した位相シフトマスク201の位相シフトパターン3aのマスク面内のCD均一性を検査したところ、良好な結果であった。また、位相シフトパターン3aの断面をSTEMで観察したところ、位相シフトパターン3aの側壁の垂直性は高く、また、洗浄に伴うパターン剥がれなどの問題も観測されなかった。
なお、位相シフト膜3の位相シフト量は、前述のように、マスクブランクの位相シフト膜3のみでは177.0度であったが、下層パターン31aをドライエッチングにて形成する際に透光性基板1の露出した表面701を少し掘り込む関係で、位相シフトマスク201となった段階での位相シフトパターン3aの位相シフト量は180度と見積もられる。
この位相シフトマスク201に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した時における転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を満たしていた。
作製した位相シフトマスク201を露光装置に載置し、露光を行ってウェハ上にレジストパターンを形成したところ、微細な回路パターンを所定の精度で形成することができた。
(実施例5)
[マスクブランクの製造]
実施例5のマスクブランクは、実施の形態2に対応するものであり、エッチングストッパー膜2を透光性基板1の主表面の全面に形成したことを特徴とする。したがって、このマスクブランクは、透光性基板1上にエッチングストッパー膜2、下層31、上層32、遮光膜4およびハードマスク膜5が形成されたマスクブランクである。ここで、エッチングストッパー膜2の導入と、下層31の膜厚以外は、材料、製法とも実施例1と同じである。
エッチングストッパー膜2は実施例1で上層32として用いられたものと同じ材料で、製法も同じものである。したがって、原子%比が、Al:Si:O=21:19:60、Si/[Si+Al]が0.475のAlSiO膜であり、その諸特性は実施例1の上層32と同じである。この膜を透光性基板1の主表面の全面に膜厚10nmで形成した。
別の透光性基板1に形成されたエッチングストッパー膜のArFエキシマレーザーの波長(193nm)における透過率を前記の位相シフト量測定装置で測定したところ、透光性基板の透過率を100%としたときの透過率は98.3%であり、この実施例5のエッチングストッパー膜2を設けることによって生じるマスクブランクの透過率低下の影響は小さかった。
また、エッチングストッパー膜2は、SFとHeの混合ガスをエッチングガスに用いたドライエッチングに対するエッチングレートが、透光性基板1に対するエッチングレートに比べて1/10であり、エッチングストッパー膜2は、下層31のドライエッチング時に十分なエッチングストッパーとなる。
さらに、エッチングストッパー膜2は、濃度0.5%のアンモニア水に対するエッチングレートが0.1nm/minと小さく、薬液洗浄に対して十分な耐性を有する。
下層31の膜厚は68.3nmとした。この下層31および上層32からなる位相シフト膜3に対し、前記の位相シフト量測定装置でArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における透過率および位相差を測定したところ、透過率は6.3%、位相差は180.0度であった。
[位相シフトマスクの製造]
この実施例5のマスクブランク102を用い、実施例1と同様の工程で実施例5の位相シフトマスク202を作製した。
作製した位相シフトマスク202の位相シフトパターン3aのマスク面内のCD均一性を検査したところ、良好な結果であった。また、位相シフトパターン3aの断面をSTEMで観察したところ、位相シフトパターン3aの側壁の垂直性は高く、エッチングストッパー膜2への堀込は1nm未満と微小であり、マイクロトレンチも発生していなかった。また、洗浄に伴うパターン剥がれなどの問題も観測されなかった。
なお、下層パターン31aをドライエッチングにて形成する際、エッチングストッパー膜2の露出部表面702はほとんど削れない。このため、位相シフトマスク202となった段階での位相シフトパターン3aの位相シフト量はほぼ180度で、マスクブランクの位相シフト膜3のみの位相差180度と変わらず、位相精度の高い位相シフトマスク202となった。
この位相シフトマスク202に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した時における転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を満たしていた。
作製した位相シフトマスク202を露光装置に載置し、露光を行ってウェハ上にレジストパターンを形成したところ、微細な回路パターンを所定の精度で形成することができた。
(比較例1)
[マスクブランクの製造]
比較例1のマスクブランクは、下層31の膜厚を66.5nmに変更したことと、上層32をアルミニウムと酸素からなる材料(アルミナ)で形成したことを除き、実施例1のマスクブランクと同様の構成を備える。この比較例1の上層32は、下層31の上に5nmの膜厚で形成した。具体的には、枚葉式RFスパッタリング装置内にMoSiNからなる下層31が形成された透光性基板1を設置し、Alターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガスをスパッタリングガスとするスパッタリング(RFスパッタリング)によって、上層32を形成した。前述同様の組成分析を行った結果、Al:O=42:58(原子%比)であった。すなわち、この上層32のSi/[Si+Al]は0である。
この上層32が形成された透光性基板1を、濃度0.5%のアンモニア水に浸漬させてエッチングレートを測定したところ、4.0nm/minであった。この結果から、この比較例1の上層32は、マスクブランクから位相シフトマスクを製造する過程で行われる薬液洗浄に対して十分な耐性を有していないことがわかる。なお、この上層32のArFエキシマレーザーの波長(193nm)における屈折率nは1.864であり、消衰係数は0.0689であった。
透光性基板、別の透光性基板に形成された上層、および別の透光性基板に形成された下層のそれぞれに対し、SFとHeの混合ガスをエッチングガスに用いたドライエッチングを同条件で行った。そして、それぞれのエッチングレートを算出し、3者間のエッチング選択比を算出した。透光性基板のエッチングレートに対する比較例1の上層のエッチング選択比は0.03であった。透光性基板のエッチングレートに対する比較例1の下層のエッチング選択比は2.38であった。比較例1の上層のエッチングレートに対する比較例1の下層のエッチング選択比は95.0であった。
比較例1の下層31および上層32からなる位相シフト膜3に対し、前記の位相シフト量測定装置でArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における透過率および位相差を測定したところ、透過率は6.6%、位相差は177.0度であった。
[位相シフトマスクの製造]
次に、この比較例1のマスクブランク101を用い、実施例1と同様の手順で比較例1の位相シフトマスク201を作製した。作製した比較例1の位相シフトマスク201に対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行ったところ、欠陥が多数検出された。
別のマスクブランク101を用い、同様の手順で位相シフトマスク201を製造し、その欠陥箇所について、位相シフトパターン3aの断面をSTEMで観察したところ、上層パターン32aが薬液洗浄によってダメージを受けたことが原因と考えられる欠陥が数多く観察された。
比較例1の位相シフトマスク201に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した時における転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を満たすことができていなかった。位相シフトパターン3aがダメージを受けていて正常な露光転写ができてない箇所が多数見つかった。
作製した位相シフトマスク202を露光装置に載置し、露光を行ってウェハ上にレジストパターンを形成したところ、マスク起因の転写欠陥が見られ、高い歩留まりで半導体デバイスを製造することは困難であった。
1…透光性基板
1a…エッチング後の透光性基板
2…エッチングストッパー膜
3…位相シフト膜
3a…位相シフトパターン
4…遮光膜
4a、4b…遮光パターン
5…ハードマスク膜
5a、5b…ハードマスクパターン
6a…第1のレジストパターン
7b…第2のレジストパターン
31…下層
31a…下層パターン
32…上層
32a…上層パターン
101、102…マスクブランク
201、202…位相シフトマスク
700…上層パターン表面
701…透光性基板表面(露出部)
702…エッチングストッパー表面(露出部)

Claims (18)

  1. 透光性基板の主表面上に位相シフト膜および遮光膜を備えたマスクブランクであって、
    前記位相シフト膜は、前記透光性基板側から下層と上層がこの順に積層された構造を有し、
    前記下層は、ケイ素および窒素を含有する材料からなり、
    前記上層は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素を含有する材料からなり、
    前記遮光膜は、ケイ素およびタンタルから選ばれる1以上の元素を含有する材料からなり、
    前記遮光膜は、前記上層の表面に接して形成されていることを特徴とするマスクブランク。
  2. 前記上層は、酸素含有量が60原子%以上であることを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
  3. 前記上層は、前記ケイ素および前記アルミニウムの合計含有量に対する前記ケイ素の含有量の原子%による比率が、4/5以下であることを特徴とする請求項1または2記載のマスクブランク。
  4. 前記上層は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素からなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
  5. 前記上層は、厚さが3nm以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
  6. 前記下層は、遷移金属、ケイ素および窒素を含有する材料からなることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマスクブランク。
  7. 前記位相シフト膜は、露光光を1%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上180度以下の位相差を生じさせる機能とを有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のマスクブランク。
  8. 前記遮光膜は、遷移金属およびケイ素を含有する材料からなることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のマスクブランク。
  9. 前記透光性基板の主表面に接してエッチングストッパー膜が形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のマスクブランク。
  10. 前記エッチングストッパー膜は、酸素含有量が60原子%以上であることを特徴とする請求項9記載のマスクブランク。
  11. 前記エッチングストッパー膜は、前記ケイ素および前記アルミニウムの合計含有量に対する前記ケイ素の含有量の原子%による比率が、4/5以下であることを特徴とする請求項9または10記載のマスクブランク。
  12. 前記エッチングストッパー膜は、ケイ素、アルミニウムおよび酸素からなることを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載のマスクブランク。
  13. 前記エッチングストッパー膜は、厚さが3nm以上であることを特徴とする請求項9から12のいずれかに記載のマスクブランク。
  14. 前記遮光膜上に、クロムを含有する材料からなるハードマスク膜を備えることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載のマスクブランク。
  15. 請求項1から13のいずれかに記載のマスクブランクの前記位相シフト膜に位相シフトパターンが形成され、前記遮光膜に遮光パターンが形成されていることを特徴とする位相シフトマスク。
  16. 請求項1から14のいずれかに記載のマスクブランクを用いた位相シフトマスクの製造方法であって、
    ドライエッチングにより前記遮光膜に位相シフトパターンを形成する工程と、
    前記位相シフトパターンを有する遮光膜をマスクとし、塩化ホウ素ガスを含有するエッチングガスを用いるドライエッチングにより前記上層に位相シフトパターンを形成する工程と、
    前記位相シフトパターンを有する遮光膜をマスクとし、フッ素系ガスを含有するエッチングガスを用いるドライエッチングにより前記下層に位相シフトパターンを形成する工程と、
    ドライエッチングにより前記遮光膜に遮光帯を含むパターンを形成する工程と
    を備えることを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
  17. 請求項15記載の位相シフトマスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
  18. 請求項16記載の位相シフトマスクの製造方法により製造された位相シフトマスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
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