JP2017218581A - 押出発泡シートおよびその成形品 - Google Patents
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Abstract
Description
〔1〕
スチレン系共重合体を含む、厚み0.5mm〜5.0mmの押出発泡シートであって、
上記スチレン系共重合体は、数平均分子量(Mn)850〜100000の共役ジビニル化合物と、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物との共重合体であり、上記共役ジビニル化合物の含有量は、上記モノビニル化合物1モル当たり2.0×10−6〜4.0×10−4モルであり、上記スチレン系共重合体の重量平均分子量(Mw)は20万〜50万であり、分子量200万以上の割合は0.3%〜6.0%であり、上記モノビニル化合物の二量体と三量体の合計の含有量が上記スチレン系共重合体100質量%に対して0.01〜0.30質量%以下である、押出発泡シート。
〔2〕
上記共役ジビニル化合物の数平均分子量(Mn)が1000〜30000である、項目1に記載の押出発泡シート。
〔3〕
上記共役ジビニル化合物が鎖状である、項目1又は項目2に記載の押出発泡シート。
〔4〕
上記共役ジビニル化合物の共役ビニル基のうち少なくとも一つが、前記共役ジビニル化合物の末端に位置する、項目1〜3のいずれか一項に記載の押出発泡シート。
〔5〕
上記スチレン系共重合体のMwに対するZ平均分子量(Mz)とMwの比が1.8〜5.0である、項目1〜4のいずれか一項に記載の押出発泡シート。
〔6〕
上記スチレン系共重合体の分子量100万以上の割合が4.0%〜20.0%である、項目1〜5のいずれか一項に記載の押出発泡シート。
〔7〕
上記スチレン系共重合体の立上りはじめひずみが0.2〜1.3であり、最大立上り比が1.2〜4.0である、項目1〜6のいずれか一項に記載の押出発泡シート。
〔8〕
上記共役ジビニル化合物が、(水添)ポリブタジエン末端ジ(メタ)アクリレートである、項目1〜7のいずれか一項に記載の押出発泡シート。
〔9〕
押出発泡シート中のモノビニル化合物の残存量が100μg/g以下である、項目1〜8のいずれか一項に記載の押出発泡シート。
〔10〕
項目1〜9のいずれか一項に記載の押出発泡シートの二次成形品。
本実施形態の押出発泡シートは、スチレン系共重合体を含む、厚み0.5mm〜5.0mmの押出発泡シートであって、上記スチレン系共重合体は、数平均分子量(Mn)850〜100000の共役ジビニル化合物と、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物との共重合体であり、上記共役ジビニル化合物の含有量は、上記モノビニル化合物1モル当たり2.0×10−6〜4.0×10−4モルである。また、上記スチレン系共重合体の重量平均分子量(Mw)は20万〜50万であり、分子量200万以上の割合は0.3%〜6.0%であり、上記モノビニル化合物の二量体と三量体の合計の含有量が上記スチレン系共重合体100質量%に対して0.01〜0.30質量%である。本実施形態の押出発泡シートは、上記の構成を有するため、高い発泡倍率においても優れた成形加工性を有する。
本実施形態によれば、成形加工性に優れ、かつ高倍率化に適した押出発泡シートおよびその成形品を提供することができる。理論に限定されないが、本実施形態では、得られるスチレン系共重合体の分子鎖を、モノビニル化合物で主に構成される複数の分子鎖部分と、それらの分子鎖部分間を相互に連結する共役ジビニル化合物由来の部分とで形成するとともに、当該分子鎖部分間の間隔を所定の距離にすることが容易である。すなわち、スチレン系共重合体の分子鎖中に、「H」字状の分岐構造を有する部分を導入しやすいと推測される。本実施形態におけるスチレン系共重合体は、スチレン系共重合体のそれぞれの分子鎖が相互に効果的に絡み合いやすく(このような効果を「絡み合い効果」とも称す)、それゆえにスチレン系共重合体の成形加工性を向上させることができる。また、本実施形態では、共役ジビニル化合物の含有量、並びにスチレン系共重合体の分子量、分子量分布、モノビニル化合物の二量体と三量体の合計量を所定の範囲としているので、スチレン系共重合体の成形加工性を効果的に向上させつつ、スチレン系共重合体がゲル状化することを効果的に防止することができる。したがって、本実施形態によれば、高い発泡倍率においても優れた成形加工性を有する押出発泡シートを提供することができ、ゲル状物質が少ないことにより、例えばスチレン系共重合体を含む押出発泡シートを二次成形することにより、欠陥が少なく、かつ高倍率の成形品を効率よく得ることができる。
本実施形態の押出発泡シートに含まれるスチレン系共重合体は、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物を、スチレン系共重合体を形成する単量体として含む。モノビニル化合物は、スチレン系化合物(モノマー)のみからなっていても、スチレン系化合物とともにスチレン系化合物と共重合可能な他のモノビニル基を有する化合物とからなっていてもよい。モノビニル化合物としては、スチレン系化合物の他、スチレン系化合物と共重合可能であれば特に限定されず、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリロニトリルなどのビニル系化合物、並びにジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、無水マレイン酸、マレイミド、及び核置換マレイミドなどが挙げられる。また、スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられ、好ましくはスチレンである。また、スチレン系化合物の含有量としては、モノビニル化合物の合計含有量のうち、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
本実施形態における共役ジビニル化合物は、数平均分子量(Mn)が850〜100000であり、分子内に共役ビニル基を少なくとも2つ有する化合物である。また、本実施形態における共役ジビニル化合物は、網目状ではなく、鎖状であることが好ましい。鎖状は、直鎖であってもよく、主鎖に一つ又は複数の側鎖を有していてもよい。鎖状であることにより、分子鎖をよりリニアな形状にすることができ、それにより、絡み合い効果を向上させやすい傾向があるためである。側鎖は、例えば炭素数6以下が好ましく、炭素数4以下がより好ましい。
共役ジビニル化合物中の共役ビニル基は、分子内の任意の位置であることができ、共役ビニル基のうち少なくとも一つが、共役ジビニル化合物の末端に位置することが好ましい。少なくとも2つの共役ビニル基のうち、2つの共役ビニル基は、分子中の異なる末端に位置していることがより好ましい。共役ジビニル化合物が鎖状の場合には、当該2つの共役ビニル基は、主鎖の異なる末端に位置していること、すなわち、主鎖の両末端が共役ジビニル基であることが更に好ましい。共役ビニル基が末端に位置していることにより、重合反応性を高めることができる。
共役ジビニル化合物が鎖状であり、共役ビニル基が3つ以上存在する場合には、3つ以上の共役ビニル基のうち、少なくとも2つの共役ビニル基が末端に位置することが好ましいが、残りの1つ以上の共役ビニル基も末端に位置することがより好ましい。
具体的な共役ジビニル化合物としては、(水添)ポリブタジエン末端ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール末端ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール末端ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールA末端ジ(メタ)アクリレート、及びエトキシ化ビスフェノールF末端ジ(メタ)アクリレートなどの末端ジ(メタ)アクリレート化合物、並びに(水添)ポリブタジエン末端ウレタンアクリレート、ポリエチレングリコール末端ウレタンアクリレート、ポリプロピレングリコール末端ウレタンアクリレート、エトキシ化ビスフェノールA末端ウレタンアクリレート、及びエトキシ化ビスフェノールF末端ウレタンアクリレートなどの末端ウレタンアクリレート化合物などが挙げられる。例えばポリプロピレングリコール末端(メタ)アクリレートの場合は、数平均分子量(Mn)が850〜100000となるように繰返し単位のプロピレングリコールの結合数が決められる。共役ジビニル化合物は鎖状高分子であることが好ましく、重合反応性が高いため、共役ビニル基が該鎖状高分子の両末端に少なくとも一つずつある両末端共役ビニル化合物であることがさらに好ましい。共役ジビニル化合物は、スチレン系共重合体との相溶性の観点から、(水添)ポリブタジエン末端ジ(メタ)アクリレートであることが好ましい。化合物名中の「末端」や「両末端」は、最も端の両方に共役ビニル基が位置することを意味する。
本実施形態における共役ジビニル化合物の含有量は、モノビニル化合物1モル当たり2.0×10−6〜4.0×10−4モル、好ましくは5.0×10−6〜3.5×10−4モル、より好ましくは1.5×10−5〜3.0×10−4モル、さらにより好ましくは2.0×10−5〜2.5×10−4モルである。含有量が2.0×10−6モル未満の場合は、高分子同士の十分な絡み合いが生じにくく、ひずみ硬化が発現しない、あるいはひずみ硬化度合いが小さいために、成形品の肉厚が不均一となったり、成形時に成形品が破けることがあり、成形加工性が劣る。一方、含有量が4.0×10−4モルを超える場合は、ゲル状物質の発生が多く、二次成形不良などの原因となる。
本実施形態で用いるスチレン系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、20万〜50万であり、好ましくは22万〜48万、より好ましくは24万〜45万である。スチレン系共重合体のMwを20万〜50万にすることにより、スチレン系共重合体の強度を確保しつつ、ゲル状物質の発生を抑えてより成形加工性と流動性を向上させることができる。本実施形態のスチレン系共重合体のZ平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比は、1.8〜5.0であることが好ましく、より好ましくは2.0〜4.8、さらに好ましくは2.1〜4.7である。スチレン系共重合体のMwに対するMzの比を1.8〜5.0の範囲にすることにより、スチレン系共重合体の強度を確保しつつ、ゲル状物質の発生を抑えてより成形加工性と流動性を向上させることができる。
本実施形態で用いるスチレン系共重合体の分子量200万以上の割合は0.3〜6.0%であり、0.8〜5.0%であることが好ましく、1.4〜4.8%であることがより好ましい。分子量200万以上の割合を0.3〜6.0%の範囲にすることにより、ゲル状物質の含有量を非常に少なくすることができる。分子量100万以上の割合は4.0〜20.0%であることが好ましく、5.0〜18.0%であることがより好ましく、5.0〜15.0%がさらに好ましい。分子量100万以上の割合を4.0〜20.0%の範囲にすることにより、成形加工性と流動性により優れたスチレン系共重合体を得ることができる。
本実施形態で用いるスチレン系共重合体の分子量の割合は、スチレン系単量体をラジカル重合する際に、共役ジビニル化合物の種類及び添加量、反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、溶媒の種類及び量、連鎖移動剤の種類及び添加量等によって制御することができる。より具体的には、上記の分子量200万以上、分子量100万以上の割合等の制御は、限定されるものではないが、例えば、製造方法において:重合する際の重合開始剤の添加量を増加させ、重合の反応温度を低くすること;重合溶媒の使用量を少なくすること;及び/又は重合する際の滞留時間を長くすること等により制御することができ、このようにすることで、得られるスチレン系共重合体の低分子量成分の割合を低減しつつ、高分子量成分の割合、すなわち分子量200万以上、分子量100万以上の割合を適切に増加させることができる。
本実施形態で用いるスチレン系共重合体のメルトマスフローレート(MFR)は、0.5〜8.0が好ましい。より好ましくは0.6〜5.0、さらにより好ましくは0.7〜4.0、とりわけ好ましくは0.8〜3.5である。メルトマスフローレートを0.5〜8.0の範囲にすることにより、より成形加工性と流動性に優れたスチレン系共重合体が得られる。
本実施形態で用いるスチレン系共重合体の立上りはじめひずみは、好ましくは0.2〜1.3であり、より好ましくは0.3〜1.1、さらにより好ましくは0.4〜1.0である。本願明細書において「立上りはじめひずみ」とは、ひずみ硬化の発現するひずみであり、成形加工性の指標となる。立上りはじめひずみが小さいほど、言い換えれば立ち上がりが早いほど低延伸時からひずみ硬化がおこり、成形加工性に優れるため、発泡成形時のセル璧の肉厚がより均一になることがあり、また発泡成形品を高倍率化できることがある。
本実施形態で用いるスチレン系共重合体中のモノビニル化合物の二量体及び三量体の合計の含有量は、スチレン系共重合体100質量%に対して0.01〜0.30質量%、好ましくは0.02〜0.28質量%、より好ましくは0.03〜0.25質量%、さらに好ましくは0.01〜0.20質量%である。モノビニル化合物の二量体及び三量体の合計の含有量が0.01〜0.30質量%であることにより、発泡成形時の目ヤニが少なくなり、良好な外観の押出発泡シートの歩留まりが向上することがある、あるいは押出発泡シートやその二次成形品の臭気が少なくなることがある。モノビニル化合物の二量体及び三量体の合計の含有量が0.30質量%より多い場合、押出発泡シートに液だれした様な斑ができることがあり、外観が不良となることがある。
本実施形態で用いるスチレン系共重合体には、必要に応じてゴム質を含有する成分としてHI−PS樹脂、MBS樹脂等のゴム強化芳香族ビニル系樹脂やSBS等の芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーが1%〜50%程度含有されていてもよい。また、未反応モノマーの回収工程における高分子の熱分解を抑制するために、例えば2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−フェニルペンチル)エチル]−4,6−ジ−t−フェニルペンチルアクリレートのような加工安定剤が含まれていてもよい。また、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸およびその塩やエチレンビスステアリルアミド等の滑剤、流動パラフィン等の可塑剤、酸化防止剤が含まれていてもよい。その他、スチレン系樹脂の分野で慣用されている添加剤、例えば核剤、難燃剤、着色剤等と本実施形態の目的を損なわない範囲で組み合わせてスチレン系共重合体に添加してもよい。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、タルク等の核剤、ヘキサブロモシクロドデカン等の難燃剤、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤等が挙げられる。またスチレン系樹脂をペレットとし、当該ペレットの外部潤滑剤として、エチレンビスステアリルアミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等をペレットにまぶして使用してもよい。
本実施形態で用いるスチレン系共重合体は、数平均分子量(Mn)が850〜100000である共役ジビニル化合物と、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物とを共重合することによって得ることができる。共役ジビニル化合物の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)を意味する。
本実施形態で用いるスチレン系共重合体の重合方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法等、公知のスチレン重合方法が挙げられる。これらの重合法は、バッチ重合法であっても連続重合法であってもよく、生産性の点から連続重合法であることが好ましい。連続塊状重合法としては、例えば、スチレン系単量体、共役ビニル基を有する共役ジビニル化合物、必要に応じて溶剤、重合触媒、及び連鎖移動剤等を添加及び混合して、単量体類を含む原料溶液を調製する。直列及び/又は並列に配列された1個以上の反応器と、未反応単量体等の揮発性成分を除去する脱揮工程のための脱揮装置とを備えた設備に、上記原料溶液を連続的に送入し、段階的に重合を進行させる方法が挙げられる。
脱揮工程装置としては、例えば、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機などの通常の脱揮装置を用いることができ、一般的には加熱器付きの真空脱揮槽や脱揮押出機などが用いられる。脱揮装置の配列としては、例えば、加熱器付きの真空脱揮槽を1段のみ使用したもの、加熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続したもの、及び加熱器付きの真空脱揮槽と脱揮押出機とを直列に接続したもの等が挙げられる。揮発成分を極力低減するためには、加熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続したもの、又は加熱器付きの真空脱揮槽と脱揮押出機とを直列に接続したものが好ましい。
脱揮処理の温度は、通常、190〜280℃程度である。脱揮処理の圧力は、好ましくは0.1〜50kPa、より好ましくは0.13〜13kPa、更に好ましくは0.13〜7kPa、特に好ましくは0.13〜1.3kPaである。脱揮方法としては、例えば加熱下で減圧して脱揮する方法や、揮発成分を除去するよう設計された押出機等を通して脱揮することが望ましい。
脱揮工程は、モノビニル化合物の二量体及び三量体の残存量が合計で0.01〜0.30質量%となるまで行う。さらに、モノビニル化合物の残存量が100μg/g以下となるまで行うことが望ましい。
本実施形態の押出発泡シートの製造方法は、押出機で本実施形態におけるスチレン系共重合体を溶融混練して押し出す方法が挙げられ、例えば、限定されないが、以下の方法が挙げられる。まず、サーキュラーダイに接続された押出機で本実施形態におけるスチレン系共重合体を溶融混練し、当該溶融混練物を上記サーキュラーダイの前方に設けられた円環状の開口から上記溶融混練物を発泡状態で押出して、円筒状の発泡体を形成する。次いで、上記発泡体を上記サーキュラーダイの上記開口よりも径大な冷却マンドレルの外周面に摺接させて周方向に延伸しつつ冷却し、これを押出し方向に沿って連続的に切断して展開するような通常知られている方法を用いることができる。
本実施形態の押出発泡シート中のモノビニル化合物の残存量は、好ましくは100μg/g以下である。押出発泡シート中のモノビニル化合物の残存量が100μg/g以下であると、深絞り成形性に加え、成形体の外観が非常に優れる傾向があるため好ましい。
本実施形態における成形品は、本実施形態の押出発泡シートの二次成形品である。本実施形態の押出発泡シートを、例えば、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、両面真空成形、プレス成形等の従来公知の方法で二次成形することにより、トレー、コップ、丼容器、納豆容器等の二次成形品を形成できる。本実施形態の二次成形品の例としては、本実施形態の押出発泡シートを成形素材として、真空成形機により、横方向を押出方向として、縦5.5〜21cm、横6.5〜36cm、深さ1.1〜3.4cmの食品用トレー容器や縦3.5〜20cm、横3.5〜20cm、深さ2.0〜20cmの食品用スープ・丼容器が挙げられる。真空成型の温度条件としては、以下に限定されないが、通常、120〜150℃の条件が好ましい。
測定及び評価方法は以下の方法に基づいて行った。
共役ジビニル化合物の数平均分子量(Mn)、スチレン系共重合体の重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、分子量100万以上の割合、及び分子量200万以上の割合、並びに共役ジビニル化合物の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。以下の条件で測定した。
装置:東ソー製HLC―8220
分別カラム:東ソー製TSK gel Super HZM−H(内径4.6mm)
ガードカラム:東ソー製TSK guard column Super HZ−H
測定溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
試料濃度:測定試料5mgを10mLの溶媒に溶解し、0.45μmのフィルターでろ過をおこなった。
注入量:10μl
測定温度:40℃
流速:0.35mL/分
検出器:紫外吸光検出器(UV−8020、波長254nm)
検量線の作成には東ソー製のTSK標準ポリスチレン11種類(F−850、F−450、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000)を用いた。1次直線の近似式を用いて検量線を作成した。
スチレン系共重合体のメルトマスフローレートはISO1133に準拠し、200℃、49Nの荷重条件にて測定した。
30mmφシート押出機(創研株式会社製)を用いて、スチレン系共重合体を押し出し、厚さ0.5mmのシート(ソリッドシート)を作成した。得られたシートから縦100mm×横100のmmの大きさに試験片を20枚切出し、短径と長径の平均が2mm以上のゲル状物質の数を目視で測定した。判定はゲル状物質の数が0〜2個を「◎」、3〜10個を「○」、11個以上の場合を「×」とした。
スチレン系共重合体の立上りはじめひずみ、最大立上りひずみ、及び最大立上り比の測定は、以下の粘弾性測定に基づいて行った。
装置名:粘弾性測定装置 ARES−G2(TA Instruments社製)
測定システム:ARES−EVFオプション
試験片寸法:長さ20mm、厚さ0.7mm、幅10mm
伸長ひずみ速度:0.01/秒
温度:150℃
測定雰囲気:窒素気流中
予熱時間:2分
予備伸長ひずみ速度:0.03/秒、
予備伸長長さ:0.295mm
予備伸長後緩和時間:2分
粘弾性測定は、試験片をローラーに取り付け、温度が安定した後、上記の予熱時間、静置し、予熱をおこなった。予熱終了後、予備伸長させた。予備伸長後、2分間静置し、予備伸長で生じた応力を緩和させ、測定した。
モノビニル化合物の二量体及び三量体の合計の含有量は、ガスクロマトグラフィー法で測定した。測定は、ポリオレフィン等衛生協議会発行の文献、「ポリオレフィン等合成樹脂食品包装容器等に関する自主規制基準」(第3版)、第3部衛生試験法−追補(1993年5月)に記載の測定法に準じて行なった。
スチレン系共重合体100質量部に対して、発泡核剤としてタルク(平均粒径1.3μm)を0.15質量部、発泡剤として液化ブタンを4質量部添加してスチレン系樹脂組成物を得た。直径150mmのサーキュラーダイを備えた押出発泡機を用い、上記スチレン系樹脂組成物を押出し発泡成形した。押出発泡機の樹脂溶融ゾーンの温度は200〜230℃、ロータリークーラー温度は130〜170℃、ダイス温度は145℃に調整した。押出発泡直後の発泡体を冷却マンドレルで冷却し、円周上の1点でカッターにより切断することにより、シート厚み1.4mm、幅1000mmの押出発泡シートを得た。
押出発泡シート中のモノビニル化合物の残存量は、以下の測定条件で、ガスクロマトグラフィー法で測定した。押出発泡シート1gをジメチルフォルアミド25mlに溶解し、測定試料を調整した。
測定条件
検出方法 :FID
機器 :島津製製作所 GC14B
カラム :CHROMAPACK CP WAX 52CB
100m、膜厚2μm、0.52mmφ
カラム温度 :110℃で10分間保持し、15℃/分で130℃まで昇温し、130℃で2分間保持した。
注入口温度 :150℃
検出器温度 :150℃
キャリアガス :ヘリウム
押出発泡シートを23±3℃、相対湿度50±5%にて20日間にわたって放置した。その後、創研製のシート容器成型機を用いて、このシート成型機の固定枠で発泡シートを挟み、ヒータの平均温度を200℃、雰囲気温度を130℃に設定し、15秒間加熱した。次いで、径10cmで深さ3cm又は6cmの深さが異なるコップ状の金型(温度40℃)に固定枠ごとスライドさせて真空成形を行い、成形体を100個ずつ成形した。この成形体の側面に引裂きが生じていないかを目視で確認し、引裂きが起こらず成形可能であった成形体の数を深絞り成形性の指標とした。
上記(7)で成形した深絞り成形品表面の光沢と肌荒れ状態を目視で確認した。
○:良好(均一)
△:やや不良(不均一:成形品の一面(側面もしくは底面)のみに液だれした様な斑が確認できる)
×:不良(不均一:液だれした様な斑が確認できる)
ISO10350に基づいて、押出発泡シートの発泡体密度を測定した。なお、測定装置としては島津製作所製の比重計(SGM−220−60測定器)を使用した。
発泡倍率は、上記(9)で求めた発泡体密度の値(ρf)及びスチレン系共重合体の密度(ρ)を用いて、次式より算出した。
発泡倍率=ρ/ρf
本実施例で用いた共役ジビニル化合物1、5及び6は、下記の方法に基づいて製造した。
撹拌機、温度計および還流冷却管を取り付けた容量5Lの反応容器内に、ポリブタジエン両末端アルコール(Mn:1900)2742g、アクリル酸メチル379g、n−ヘキサン380g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.8194g、及び4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル0.5533gを仕込んだ。得られた混合物を塩化カルシウム管内に通しながら、その混合物に空気を吹き込み、80〜85℃で還流脱水を行った。この混合物に含まれている水分をカールフィッシャー法により測定し、その含水量が200ppm以下であることを確認した。その後、エステル交換触媒として、テトラn−ブチルチタネート1.3685gを上記混合物に添加し、生成したメタノールをその共沸溶媒であるn−ヘキサンの還流下で反応系外に留去しながら、攪拌下で80〜85℃の反応温度で10時間反応させた。
ポリブタジエン両末端アルコールの分子量をMn:25000に変更した以外は同様の条件にて製造した共役ジビニル化合物5は、ポリブタジエン両末端ジアクリレートの転化率が99.5%であった。またGPCで測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は26000であった。
ポリブタジエン両末端アルコールの分子量をMn:57000に変更した以外は同様の条件にて製造した共役ジビニル化合物6は、ポリブタジエン両末端ジアクリレートの転化率が99.2%であった。またGPCで測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は58000であった。
(実施例1)
スチレン単量体80質量部、エチルベンゼン20質量部、共役ジビニル化合物1(ポリブタジエン末端アクリレート Mn:1900)を0.035質量部(スチレン1モルに対して2.4×10−5モル)、重合開始剤1として2,2−ビス(4,4‐ジ‐ターシャリー‐ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン[日油株式会社製:パーテトラA]を0.030質量部添加して原料溶液を調整した。調製した原料溶液を、105℃の温度に保持した内容積5.4Lの完全混合型第1反応器に、1.00L/hrで連続的に供給した。ついで、第1反応器からの重合溶液を、原料溶液が通過する順番に、3ゾーンの温度をそれぞれ119℃、133℃、143℃の温度に保持した、内容積3Lのプラグフロー型第2反応器に供給した。第2反応器では、原料溶液が通過する順番に、3ゾーンの温度を119、133、143℃の温度に保持した。第2ゾーンにおいて、重合開始剤2として1,1−ジ−(ターシャリー−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン[日油株式会社製:パーヘキサC]を0.03質量部添加した。ついで、第2反応器からの重合溶液を240℃の温度に加熱された真空脱気槽に供給し、未反応モノマーや溶媒などの揮発性成分を取り除き、72時間の連続運転後に、スチレン系共重合体を得た。
共役ジビニル化合物2:ポリブタジエンジアクリレート [巴工業社製:CN307] Mn:3800
共役ジビニル化合物3:ポリブタジエン末端アクリレート [大阪有機化学工業社製:BAC‐45] Mn:4800
共役ジビニル化合物4:ウレタンアクリレートオリゴマー [巴工業社製:CN9014NS] Mn:8000
共役ジビニル化合物7:芳香族ウレタンアクリレート [巴工業社製:CN9782] Mn:5200
共役ジビニル化合物8:(2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチルビフェニル−4,4’−ジオール・2,6−ジメチルフェノール重縮合物)とクロロメチルスチレンとの反応生成物[三菱ガス化学株式会社製:OPE−2ST]Mn:1200
共役ジビニル化合物9:1,3−ブチレンジオールジメタクリレート [和光純薬工業株式会社製] 分子量:226
共役ジビニル化合物10:NKエステル A−GLY−20E [新中村化学工業株式会社製] 分子量:1295、共役ジビニル化合物9の1分子中の平均の共役ビニルの数は3である。
共役ジビニル化合物11:ジビニルベンゼン [和光純薬工業社製] 分子量:130
共役ジビニル化合物12:ポリエチレングリコールジメタクリレート [シグマアルドリッチ社製] 分子量:750
重合開始剤2:1,1‐ジ−(ターシャリー‐ブチルペルオキシ)シクロヘキサン [日油株式会社製:パーヘキサC]
熱劣化防止剤1:2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−フェニルペンチル)エチル]−4,6−ジ−t−フェニルペンチルアクリレート[住友化学株式会社製:スミライザーGS]
熱劣化防止剤2:オクタデシルー3−(3,5−ジーターシャリーブチルー4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート[チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製:IRGANOX1076]
Claims (10)
- スチレン系共重合体を含む、厚み0.5mm〜5.0mmの押出発泡シートであって、
前記スチレン系共重合体は、数平均分子量(Mn)850〜100000の共役ジビニル化合物と、少なくともスチレン系化合物を含む1種類以上のモノビニル化合物との共重合体であり、前記共役ジビニル化合物の含有量は、前記モノビニル化合物1モル当たり2.0×10−6〜4.0×10−4モルであり、前記スチレン系共重合体の重量平均分子量(Mw)は20万〜50万であり、分子量200万以上の割合が0.3%〜6.0%であり、前記モノビニル化合物の二量体と三量体の合計の含有量が前記スチレン系共重合体100質量%に対して0.01〜0.30質量%である、押出発泡シート。 - 前記共役ジビニル化合物の数平均分子量(Mn)が1000〜30000である、請求項1に記載の押出発泡シート。
- 前記共役ジビニル化合物が鎖状である、請求項1又は2に記載の押出発泡シート。
- 前記共役ジビニル化合物の共役ビニル基のうち少なくとも一つが、前記共役ジビニル化合物の末端に位置する、請求項1又は2に記載の押出発泡シート。
- 前記スチレン系共重合体のMwに対するZ平均分子量(Mz)の比が1.8〜5.0である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の押出発泡シート。
- 前記スチレン系共重合体の分子量100万以上の割合が4.0%〜20.0%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の押出発泡シート。
- 前記スチレン系共重合体の立上りはじめひずみが0.2〜1.3であり、最大立上り比が1.2〜5.0である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の押出発泡シート。
- 上記共役ジビニル化合物が、(水添)ポリブタジエン末端ジ(メタ)アクリレートである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の押出発泡シート。
- 押出発泡シート中のモノビニル化合物の残存量が100μg/g以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の押出発泡シート。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の押出発泡シートの二次成形品。
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