JP2017217669A - 熱交換器用アルミニウム合金チューブ - Google Patents
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Abstract
Description
また、ろう付時にろう付用塗膜とチューブとの反応で形成する液相ろうがフィンとチューブの接合部へ流動し、フィレットを形成して両者を接合するので、高い熱交換性能が得られる。
前記特許文献に記載の技術によれば、Si粉末とZn含有フラックスとが塗膜中で混合されているので、ろう付時にSi粉末が溶融してろう液となり、このろう液にフラックス中のZnが均一に拡散し、チューブ表面に均一に広がる。ろう液のような液相内でのZnの拡散速度は固相内の拡散速度より著しく大きいので、チューブ表面のZn濃度がほぼ均一となる。これによりチューブ表面に均一な犠牲陽極層が形成され、熱交換器用チューブの耐食性を向上させることができる。
その結果、腐食環境の非常に厳しい地域などにおいて熱交換器を使用すると、フィン接合部のフィレットが優先的に腐食することがあり、フィンとチューブが分離し、フィンの剥離を生じるおそれがあった。
この種の熱交換器の性能では、長期に渡り高い熱交換性能を維持することが重要である。そのためには、腐食による冷媒漏れの防止やフィンとチューブとの接合を長期間維持する必要がある。
熱交換器においてフィンが剥離すると、熱交換性能が低下し、フィンの犠牲防食効果の低下により熱交換器(チューブ)の耐食寿命が低下するため、熱交換器の性能上問題となるおそれがある。
従って熱交換器においては、チューブの耐食性に優れ、耐食寿命が長い上に、フィンの剥離も生じ難いことが重要であるが、チューブの耐食性向上とフィン剥離発生防止の両面において優れた特性を兼務することは難しい課題であった。
本発明の熱交換器用アルミニウム合金チューブは、有機銅化合物またはその一部を金属Cu粉末で供給されるCu成分としてのCu量:0.01〜0.5g/m2、Si粉末:1〜5g/m2、Zn含有フラックス:2〜10g/m2、バインダ:0.5〜3.5g/m2からなるろう付用塗膜が表面に形成され、耐食性と耐フィン剥離性に優れたことを特徴とする。
本発明において、ろう付けによりフィレットを形成してフィンと接合されるアルミニウム合金チューブであり、前記フィレットに0.015質量%以上1.5質量%以下のCuが含まれることが好ましい。
本発明において、前記ろう付けによりアルミニウム合金チューブ表面に生成したAl−CuろうまたはAl−Cu−Znろう、またはAl−Si−Cuろう、あるいはAl−Si−Cu−Znろうが前記フィレットに集合してCu濃縮部が形成されたことが好ましい。
本発明において、ろう付け後にチューブ最表面のCu濃度が0.5質量%未満であることが好ましい。
本発明において、前記フィンが、Zn:0.3〜5.0質量%、Mn:0.5〜2.0質量%、Fe:1.0質量%以下、Si:1.5質量%以下、残部不可避不純物およびアルミニウムの組成を有するアルミニウム合金からなることが好ましい。
より具体的に本実施形態の熱交換器用アルミニウム合金チューブは、有機銅化合物またはその一部を金属Cu粉末で供給されるCu成分としてのCu量:0.01〜0.5g/m2、Si粉末:1〜5g/m2、Zn含有フラックス:2〜10g/m2、バインダ:0.5〜3.5g/m2からなるろう付用塗膜が表面に形成されている。
前記ろう付け用塗膜は、有機銅化合物またはその一部を金属Cu粉末で供給されるCu成分としてのCu量:0.01〜0.5g/m2、Si粉末:1〜5g/m2、Zn含有フラックス:2〜10g/m2、Zn非含有フラックス:1〜10g/m2、バインダ:0.5〜3.5g/m2からなるろう付用塗膜であってもよい。
発明者らは、チューブ、フィン及びヘッダーパイプを主構成要素とし、これらのろう付によって製造されるアルミニウム合金製熱交換器における構成要素の接合部の腐食機構について研究した。その結果、フィン接合部のフィレットが優先的に腐食し、フィンがチューブから分離することを防止するため、ろう付用塗膜中のCu量とZn量との関係について研究し、これらを適正な関係になるように規定すれば、上述の問題を解決できることを見出した。
フィレットの優先腐食は、犠牲陽極フィンの電位よりフィレットの電位が低く(卑)なることが原因であると考えている。そこで、フィレットを形成する塗膜の組成について研究を重ねた結果、本発明に至った。
図1は、本発明に係わる熱交換器の一例を示すものである。この熱交換器100は左右に離間し平行に配置されたヘッダーパイプ1、2と、これらのヘッダーパイプ1、2の間に相互に間隔を保って平行に、かつ、ヘッダーパイプ1、2に対して直角に接合された複数の扁平状のチューブ3と、各チューブ3に付設された波形のフィン4を主体として構成されている。ヘッダーパイプ1、2、チューブ3及びフィン4は、後述するアルミニウム合金から構成されている。
即ち、図2に示す如く、ヘッダーパイプ1、2のスリット6に対してチューブ3の端部を挿通した部分においてろう材によりフィレット8が形成され、ヘッダーパイプ1、2に対しチューブ3がろう付されている。また、波形のフィン4において波の頂点の部分を隣接するチューブ3の表面または裏面に対向させてそれらの間の部分に生成されたろう材によりフィレット9が形成され、チューブ3の表面側と裏面側に波形のフィン4がろう付されている。
本実施形態の熱交換器100は、後述する製造方法において詳述するように、ヘッダーパイプ1,2とそれらの間に架設された複数のチューブ3と複数のフィン4とを組み付けて図3に示す如く熱交換器組立体101を形成し、これを加熱してろう付けすることにより製造されたものである。
本実施形態のチューブ3は、その内部に複数の通路3cが形成されるとともに、平坦な表面(上面)3A及び裏面(下面)3Bと、これら表面3A及び裏面3Bに隣接する側面とを具備する偏平多穴管として構成されている。一例として本実施形態にあっては、ろう付前のチューブ3の表面3Aと裏面3Bにろう付用塗膜7が形成されている。
<有機銅化合物粉末、Cu粉末>
有機銅化合物粉末中のCuまたはCu粉末中のCu成分としてのCuは、ろう付け時の加熱処理によりフィレット9に濃縮し、Cuを含まない場合よりもフィレット9の電位を貴とし、フィレット9の耐食性を向上させて腐食環境下におけるフィン4の剥離性を改善する。
有機銅化合物粉末として具体的に、ナフテン酸銅粉末、オキシン銅粉末、ヒドロキシノリン銅粉末などを用いることができる。
有機銅化合物粉末またはそれに加えて金属Cu粉末を添加した場合のCu成分としてのCu量:0.01〜0.5g/m2
有機銅化合物粉末またはそれに加えて金属Cu粉末を添加した場合のCu成分としてのCu量が0.01g/m2未満であるとフィレット9による耐フィン剥離性の向上効果が少なく、有機銅化合物粉末中のCu量が0.5g/m2を超えるとチューブ表面の犠牲陽極層作製が困難となる。
Si粉末は、チューブ3を構成するAlと反応し、フィン4とチューブ3を接合するろうを形成するが、ろう付時にSi粉末が溶融してろう液となる。このろう液にフラックス中のZnが拡散し、チューブ3の表面に均一に広がる。液相であるろう液内でのZnの拡散速度は固相内の拡散速度より著しく大きいので、チューブ3表面のZn濃度がほぼ均一となり、これにより均一なZn拡散層が形成され、チューブ3の耐食性を向上することができる。
Si粉末の塗布量が1g/m2未満であると、ろう付性が低下する。一方、Si粉末の塗布量が5g/m2を超えると、過剰なろう形成によりフィレットにZnが濃縮しやすくなり、未反応Si残渣が発生するとともに、チューブの腐食深さが大きくなり、フィンの分離を防止しようとする目的の効果が得られない。このため、塗膜におけるSi粉末の含有量は1〜5g/m2とする。好ましくは、塗膜におけるSi粉末の含有量は、1.5〜4.5g/m2、より好ましくは2.0〜4.0g/m2である。ここで用いるSi粉末の粒径は、一例としてD(99)で15μm以下である。D(99)は小径粒側からの体積基準の積算粒度分布が99%となる径である。
Zn含有フラックスは、ろう付に際し、チューブ3の表面にZn拡散層を形成し、耐孔食性を向上させる効果がある。また、ろう付時にチューブ3の表面の酸化物を除去し、ろの広がり、ぬれを促進してろう付性を向上させる作用を有する。このZn含有フラックスは、Znを含まないフラックスに比べ活性度が高いので、比較的微細なSi粉末を用いても良好なろう付け性が得られる。
Zn非含有フラックスは、K3AlF3+KAlF4なる組成のものや、LiF、KF、CaF2、AlF3、SiF4等のフッ化物系に加えて、KCl、BaCl、NaCl等の塩化物系がある。市販されている商品(製品)では、例えば、ノコロックフラックス(NOCOLOK FLUX:ノコロックはソルベイ フルオール社登録商標)があり、4フッ化カリウムアルミニウムを主成分とするフラックスであり、添加物を加えた種々の組成が知られており、K3AlF3+KAlF4なる組成のものや、ノコロックSilフラックス(KAlF4+Si粉末)、ノコロックCsフラックスなどを例示できる。また、他に、LiF、KF、CaF2、AlF3、SiF4等のフッ化物を添加したノコロックフラックスを用いることもできる。
Zn含有フラックスを用いるか、Zn含有フラックスに加えてこれらのZn非含有フラックスを添加することでろう付け性向上に寄与する。
Zn含有フラックスの塗布量が2g/m2未満であると、Zn拡散層の形成が不十分になり、チューブ3の耐食性が低下する。また、被ろう付材(チューブ3)の表面酸化皮膜の破壊除去が不十分なためにろう付不良を招く。一方、塗布量が10g/m2を超えると、フィレットにおけるZn濃縮が顕著になり、フィレットの耐食性が低下して、フィン分離を加速する。このため、Zn含有フラックスの塗布量を2〜10g/m2とする。
Zn含有フラックスは、KZnF3を主体として用いることが好ましいが、KZnF3に、必要に応じて、K1−3AlF4−6、Cs0.02K1−2AlF4−5、AlF3、KF、K2SiF6などのZnを含有しないフラックスを混合した混合型のフラックスを用いても良い。塗布量はZn含有フラックスが2〜10g/m2の範囲であれば良い。
「Zn非含有フラックス塗布量:1〜10g/m2」
Zn非含有フラックス塗布量が1g/m2未満であると、Zn非含有フラックスを添加した効果が得られず、Zn非含有フラックス塗布量が10g/m2を超えると、ろうの流動性が過剰に向上する事によって想定以上のZnがフィレットに濃縮して、フィン剥離に繋がる問題がある。
塗膜には、有機銅化合物粉末あるいは該粉末に加えて金属Cu粉末を添加した混合粉末、Si粉末、Zn含有フラックスに加えてバインダを含む。また、塗膜に有機銅化合物粉末またはその一部を金属Cu粉末に置換した粉末、Si粉末、Zn含有フラックス、Zn非含有フラックスに加えてバインダを含んでも良い。バインダの例としては、好適にはアクリル系樹脂を挙げることができる。
バインダ塗布量:0.5〜3.5g/m2
バインダの塗布量が0.5g/m2未満であると、塗膜硬度が低下し、加工性(耐塗膜剥離性)が低下する。一方、バインダの塗布量が3.5g/m2を超えると、塗膜未反応によるフィレット未形成の影響でろう付性が低下する。このため、バインダの塗布量は、0.5〜3.5g/m2とすることが好ましい。なお、バインダは、通常、ろう付の際の加熱により蒸散する。
以下、チューブ3を構成するアルミニウム合金の各構成元素の限定理由について説明する。
SiはMnと同様に強度向上効果を有する元素である。
Siの含有量が0.05%未満では、強度向上の効果が不十分である。一方、Siが1.0%を超えて含有されると、押出性が低下する。従って本発明におけるチューブ3のSi含有量は、0.05〜1.0%に設定することが好ましい。
<Mn:0.1〜1.5%>
Mnは、チューブ3の耐食性を向上するとともに、機械的強度を向上させる元素である。また、Mnは、押出し成形時の押出性を向上する効果をも有する。更にMnは、ろうの流動性を抑制し、フィレットとチューブ表面のZn濃度差を小さくする効果がある。
Mnの含有量が0.1%未満では、耐食性及び強度向上の効果が不十分であり、ろうの流動性を抑制する効果も低下する。一方、Mnを1.5%を超えて含有させると、押出圧力増により押出性が低下する。従って本発明におけるMn含有量は、0.1〜1.5%にすることが好ましい。
Cuは、チューブ3の耐食性に影響を与える元素であり、0.05%以下では問題ないが0.05%を超えて含有させると自己腐食速度の増加により耐食性が低下し、チューブ表面の犠牲陽極層作製が困難になる傾向となる。
チューブ3に接合されるフィン4は、質量%で、Zn:0.3〜5.0%、Mn:0.5〜2.0%、Fe:1.0%以下、Si:1.5%以下を含有し、残部不可避不純物およびアルミニウムからなるアルミニウム合金からなることが好ましい。
フィン4は、上記組成を有するアルミニウム合金を常法により溶製し、熱間圧延工程、冷間圧延工程などを経て、波形形状に加工される。なお、フィン4の製造方法は、本発明としては特に限定をされるものではなく、既知の製法を適宜採用することができる。以下、フィン4を構成するアルミニウム合金の各構成元素の限定理由について説明する。
フィン4にZnを含有させることによってフィン4の電位を下げて、フィン4に犠牲防食効果を付与することができる。
フィン4におけるZn含有量については、質量%において0.3%以上、5.0%以下とする必要がある。フィン4におけるZn含有量が0.5%未満では犠牲防食効果が低減し、Zn含有量が5%を超えるようであると、自己耐食性が低下する傾向となる。
<Mn:0.5〜2.0%>
Mnはフィン4の強度を向上させ、耐食性も向上させる。
Mnの含有量が0.5%未満では、高温及び室温強度向上効果が不十分であり、一方、Mnの含有量が2.0%を超えると、フィン4を作製する際に加工性が不足する。したがって、フィンを構成する合金におけるMnの含有量は、0.5〜2.0%にする。
Siを含有することによって、Mnとの化合物を形成し、強度向上効果を奏し得るようにする。Si含有量が上記範囲を外れると、フィンの分離が発生し易くなる。
<Fe:1.0%以下>
Feは耐食性を向上させるが、Feの含有量が1.0%を超えると、フィン4自身の自己腐食速度が増加するので耐食性が低下する。
図3は、フィン4との接合面にろう付用塗膜7を塗布したチューブ3を使用して、ヘッダーパイプ1、2、チューブ3及びフィン4を組み立てた状態を示す熱交換器組立体101の部分拡大図であって、加熱ろう付する前の状態を示している。図3に示す熱交換器組立体101において、チューブ3はその一端をヘッダーパイプ1に設けたスリット6に挿入し取り付けられている。
ろう付の条件は特に限定されない。一例として、炉内を窒素雰囲気とし、熱交換器組立体101を昇温速度5℃/分以上でろう付温度(実体到達温度)580〜620℃に加熱し、ろう付温度で30秒以上保持し、ろう付温度から400℃までの冷却速度を10℃/分以上として冷却してもよい。
フィレット9に含まれるCu量は、ろう付け用塗膜7に含まれるCu量とチューブ3に含まれるCu量に応じて変化し、塗膜7からのCuの拡散とチューブ3からのCuの拡散に影響を受ける。塗膜7に含まれるCu量の最低値が0.01g/m2であり、チューブ3に含まれるCu量を0.01〜0.05質量%とすることを勘案し、後述の実施例のフィレット中のCu量を勘案すると、耐食性とろう付け性、耐フィン剥離性のバランスをとるために、フィレット中のCu量を0.015質量%以上、1.5質量%以下の範囲にすることが好ましい。
得られた熱交換器100は、チューブ3の表面に適度なZn層が形成されて孔食が防止され、また、有機銅化合物からのCuの濃縮によりフィレット9の腐食が抑制され、フィレット9の脱落が生じ難いので、長期に亘ってチューブ3とフィン4とが確実に接合されたままとなり、良好な熱交換性能が維持される。即ち、チューブ3に孔食が生じ難く、チューブ3自体の耐食性に優れるとともに、フィレット9の腐食抑制によりフィレット9の脱落を生じ難い熱交換器100を提供できる。
チューブ用Al合金を均質加熱処理後、熱間押出によりチューブ(肉厚t:0.3mm×幅W:18mm×全体厚T:1.3mm、19穴の扁平状の押出多孔チューブを作製した。
フィン用Al合金を均質加熱処理後、熱間圧延、冷間圧延することにより、厚さ0.08mmの板材を得た。この板材をコルゲート加工することにより、フィンを作製した。
次に、チューブの表面に、ろう材組成物をロール塗布し、150℃で3分間乾燥させた。
ろう付け後のチューブ及びフィンをSWAAT40日の腐食試験に供し、試験後にチューブに生じた最大腐食深さを測定した。この結果を表4〜表6の耐食性(*1)の欄に示した。
耐フィン剥離性についての評価は、ろう付け後のチューブ及びフィンをSWAAT40日の腐食試験に供し、試験後の剥離強度を測定することで評価した。剥離強度は、(SWAAT40日後の強度/SWAAT試験前の強度)×100の値で評価した。
評価基準は、100〜75%の例を◎印、74〜50%の例を○印、49〜25%の例を△印、24〜0%の例を×印と認定し、表4〜表6の耐フィン剥離性(*3)の欄に示した。
アルミニウム合金として著名なAA規格3102、3003合金と比較し、押出性が3102合金と同等以上であれば、◎印、3102合金より劣るが3003合金より良好であれば○印とし、3003合金と同等であれば△印、3003合金より劣る場合は×印と認定し、表4〜表6の押出性(*4)の欄に示した。
フィン加工性については、金型摩耗性を評価基準とし、3403合金、3009合金と比較して加工性が3403合金同等以上であれば◎、3403合金より劣るが3009合金より良好であれば○印、3009合金と同等であれば△印、3009合金より摩耗性が劣る場合は×印と認定し、表4〜表6の塗膜硬度(*6)の欄に記載した。
フィレットのCu量については表4〜表6のフィレットのCu量の欄(*7)に記載した。以上の結果を以下の表1〜表6に示す。
有機銅化合物粉末中のCu量(一部の試料はCu量の一部を金属Cu粉末として添加):0.01〜0.5g/m2、Si粉末:1〜5g/m2、Zn含有フラックス:2〜10g/m2、バインダ:0.5〜3.5g/m2からなるろう付用塗膜が表面に形成されたチューブをフィンと組み合わせて、ろう付けによる加熱を行うことにより、フィンとチューブを接合するフィレットを形成できた。該フィレットにはCu粉末から拡散されるCuが濃縮され、チューブ表面ではSiとZnが拡散されて犠牲陽極層が形成されることを確認できた。
また、有機銅化合物粉末で供給されるCuに加え、金属Cu粉末の状態でCuを添加した実施例51〜56の試料についても他の実施例と同様に優れた効果を得られることが判った。
また、実施例14、40、42、44、46、比較例13はチューブにCuが多量に入っており、その分がフィレットに濃縮する為にフィレットのCu量(質量%)が増加している。
比較例5はZn含有フラックス量が1.0g/m2と少ないため耐食性に問題を生じ、比較例6はZn含有フラックス量が11.0g/m2と多く耐フィン剥離性に問題を生じた。
比較例7はバインダ量が少なすぎる試料であり塗膜硬度が低く、比較例8はバインダ量が多すぎる試料でありろう付け性と耐フィン剥離性に問題を生じた。
比較例11はチューブのMn含有量が低い試料であり耐食性に劣り、チューブ強度が若干低く、比較例12はチューブのMn含有量が多い試料であり押出性に劣り、チューブ強度も高くなりすぎた。
比較例13はチューブのCu含有量が多い試料であり耐食性に劣る傾向となった。
比較例14はフィンのZn含有量が低い試料であり耐食性に劣り、比較例15はフィンのZn含有量が多い試料であり耐フィン剥離性が悪化した。
比較例16はフィンのMn含有量が低い試料であり耐フィン剥離性に劣り、フィン強度も低くなり、比較例17はフィンのMn含有量が多い試料でありフィン強度が上昇し過ぎたためフィン加工性が悪化した。
比較例18はフィンのFe含有量が多いため、耐フィン剥離性に劣り、比較例19はフィンのSi含有量が多すぎるため、フィン強度が高くなりすぎ、フィン加工性が低下した。
これらのことからフィレットに含まれるCu量は、0.015質量%以上、1.5質量%以下の範囲がより好ましいと推定できる。
Claims (8)
- 有機銅化合物またはその一部を金属Cu粉末で供給されるCu成分、Si粉末、及びZn含有フラックスとバインダからなるろう付用塗膜が表面に形成されたことを特徴とする耐食性とフィン剥離性に優れた熱交換器用アルミニウム合金チューブ。
- 有機銅化合物またはその一部を金属Cu粉末で供給されるCu成分としてのCu量:0.01〜0.5g/m2、Si粉末:1〜5g/m2、Zn含有フラックス:2〜10g/m2、バインダ:0.5〜3.5g/m2からなるろう付用塗膜が表面に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の耐食性とフィン剥離性に優れた熱交換器用アルミニウム合金チューブ。
- Si:0.05〜1.0質量%、Mn:0.1〜1.5質量%、Cu:0.05質量%以下、残部不可避不純物およびアルミニウムの組成を有するアルミニウム合金の押出管からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐食性とフィン剥離性に優れた熱交換器用アルミニウム合金チューブ。
- ろう付けによりフィレットを形成してフィンと接合されるアルミニウム合金チューブであり、前記フィレットに0.015質量%以上1.5質量%以下のCuが含まれることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の耐食性とフィン剥離性に優れた熱交換器用アルミニウム合金チューブ。
- 前記ろう付け時にアルミニウム合金チューブ表面に生成したAl−Cuろう、またはAl−Cu−Znろう、またはAl−Si−Cuろう、あるいはAl−Si−Cu−Znろうが前記フィレットに集合してCu濃縮部が形成されたことを特徴とする請求項4に記載の耐食性とフィン剥離性に優れた熱交換器用アルミニウム合金チューブ。
- ろう付けにより表面にSiとZnが拡散して犠牲陽極層が形成されることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の耐食性とフィン剥離性に優れた熱交換器用アルミニウム合金チューブ。
- 前記ろう付け後のチューブ最表面のCu濃度が0.5質量%未満であることを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれか一項に記載の耐食性とフィン剥離性に優れた熱交換器用アルミニウム合金チューブ。
- 前記フィンが、Zn:0.3〜5.0質量%、Mn:0.5〜2.0質量%、Fe:1.0質量%以下、Si:1.5質量%以下、残部不可避不純物およびアルミニウムの組成を有するアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項4〜請求項7のいずれか一項に記載の耐食性とフィン剥離性に優れた熱交換器用アルミニウム合金チューブ。
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