JP2006205254A - ろう付け性と耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金材及びそれを備えた熱交換器 - Google Patents

ろう付け性と耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金材及びそれを備えた熱交換器 Download PDF

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雅三 麻野
Yasunori Hiyougo
靖憲 兵庫
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Abstract

【課題】 本発明は、エロージョンを抑制するために粒径の微細なSi粉末とAl−Si合金粉末を使用し、塗布量を多くした場合であっても、優れたろう付け性が得られる熱交換器用アルミニウム合金材の提供を目的とする。
【解決手段】 本発明は、純Si粉末と、0.05〜35%のSiを含有し残部Alと不可避不純物からなるAl−Si系合金粉末と、フッ化物フラックスと、バインダとを混合し、前記純Si粉末と前記Al−Si系合金粉末との重量混合比を90:10〜99.5:0.5の範囲内で混合してなることを特徴とする
【選択図】 図1

Description

本発明は、ろう付け性と耐食性に優れた熱交換器用のろう付けアルミニウム合金材及びそれを備えた熱交換器に関する。
これまでラジエータやコンデンサなどの水冷式の自動車用熱交換器に用いられるチューブ材においては、片面にAl-Si系ろう材、もう一方の面にJIS規定7072合金などの犠牲陽極皮材をクラッドしたブレージングシートが使用されており、ベアフィン材と組み合わされ、ろう付けされて使用されている。このブレージングシートは、例えば、貼り合わせる面材が厚さ比率約10%のAl−Si系合金のろう材を表裏両面に配置し、芯材が厚さ比率約80%のAl−Mn系合金で構成される。
また、コンデンサなどのカーエアコン用材料においては、先のブレージングシートをコルゲート加工するフィン材に、押出多穴扁平管を冷媒通路のチューブに各々適用するという例が知られている。
これらの熱交換器におけるろう付け方法として従来、真空ろう付け方法と、ろう付け前にフラックスを塗布し、Nガスなどの不活性ガス雰囲気中でろう付けする方法の2種類が知られている。これらのろう付けにおいては、押出多穴管やフィン材を治具で拘束して目的の形状に組み付け、組み付け品にフラックスを塗布し、Nガス雰囲気とした不活性雰囲気ガス炉に投入し、580〜610℃のろう付け温度まで加熱してフラックス及びフィン材表面のろうを溶融して金属的な接合を得た後、冷却してろう付けを完了する。
ところが最近では、これらのようなクラッド材を使用することなくろう付けする技術が開発されてきており(特許文献1参照)、この特許文献1には、アルミニウム、銅、黄銅、鋼などの表面にSi、Cu、Geとフラックスからなる組成物を塗布してろう付けする方法が記載されている。この特許文献1に記載の技術は、カーエアコンのコンデンサなどに応用され、押出多穴管に塗布したろう材組成物とベアフィンと組み合わせにより接合した熱交換器が実用化されている。
ここで前述した組成物を塗布してろう付けする方法において粉末ろう付けは、以下のような過程で進行する。
(1)ろう付け熱処理の昇温過程においてフラックスが加熱されて活性化する。
(2)活性化したフラックスがアルミニウム合金材料表面とSi粉末表面の酸化皮膜を破壊する。
(3)酸化皮膜が破壊された後、それぞれの金属が接触することにより固相拡散が進行し、Al-Si合金共晶組成となった部分から溶解し、ろう材層を形成する。
また、粒径が30μm以下の微細なSi粉末とフッ化物系フラックスを被ろう付材に事前に塗布した押出管をろう付けに供し、ろうの供給を上述のブレージングシートに頼らない新規な方式が提案されている(特許文献2参照)。
さらには、Al−Si二元系過共晶合金粉末とSi粉末からなる混合粉末にフラックスを混合してなるろう材も提案されている(特許文献3参照)。
特表平6−504485号公報 特開2004−330233号公報 特開平10−263877号公報
ところが本発明者らの研究により、Si粉末を使用した粉末ろう付け技術において、当該Si粉末の粒径が大きい場合、アルミニウム合金基材に局部的に侵食し、エロージョンを発生させる問題があることが判明した。また、本発明者の研究によれば、このエロージョンを抑制するためには、Si粉末の粒径を微細化する必要があることも判明した。
しかし、一方上述したろう材によるろう付け熱処理時においてフラックスは、Si粉末表面の酸化皮膜を破壊する必要があるため、粉末を微細化しておくと粉末の表面積が増加して酸化皮膜の破壊が進まず、結果的にろう付け不良を引き起こす問題があると考えられる。ここで仮にフラックス量を増加させる手段も考えられ、フラックス量の増加によりろう付け不良を回避できるが、それでは無駄なフラックス量が増えてろう付けコストが上昇する問題が発生する。
更に、ろう材量を多くしたい場所においてSi粉末の塗布量を増加すると、少ない場所と同じ比率のフラックス量ではろう付けができず、フラックスの比率を増やさざるを得ない状況となる問題がある。例えば、粉末ろう付けにおいてはアルミニウム表面にSi粉末が接触することになるので、ある一定量以上のろう材(Si粉末)を塗ってもアルミニウム表面に接触できるろう材には限度があり、過剰に塗布したろう材(Si粉末)はろう付けに寄与しないばかりか、ろう付けの阻害要因となってしまう問題がある。
次に、先の特許文献2に記載された技術によれば、ろう材をSi粉末のみに頼る技術になるので、限定された形状の継手のろう付けには有効であるが、より大きなフィレット形成やろう流れを要求する継手に対しては十分とは言えなかった。
また、ろう材をSi粉末のみに頼る技術では、Siと被ろう付材(Al)との拡散で得られるAl−Si合金ろうの量に限界があるので、継手フィレットののど厚を厚くできない、継手フィレットの脚長を長くできないという問題を抱えていた。
これは、微細なSi粉末が被ろう付け材と反応してAl−Si合金を形成できる範囲が、ろう付け加熱を通してSiが固相のAl中を拡散できる距離に規制されて拘束されるからであり、仮により多くのSi粉末を供給したとしても、実際にフィレット形成に寄与できるろう材の量に限界があることに他ならない。
また、Al合金からなる熱交換器のチューブ材などの被ろう付材に塗布された純Si粉末においては、Siの融点が1427℃であるが、ろう付け加熱を通してSiと被ろう付材のAlが相互拡散して低融点(Al−Si系2元状態図の固相線温度577℃)のAl−Siろう合金を形成する。この時、Si粒子が大きすぎるとろう侵食が進行し、被ろう付材の表面に腐食環境において孔食につながりやすいクレータ状の欠陥を形成する。
それ故、微細なSi粉末を適用して上述のろう侵食を防止することが考えられるが、その拡散を通しての金属原子間または原子間の反応は、被ろう付材のAlに対して最前線に位置する(界面に位置する)Si粒しか関与せず、仮に多くのSi粒を添加しても未反応のSi粒子が残留するだけに終始するので、微細なSi粒子の場合に、供給したSi粉末の量の割にはろう付け後に生成されるフィレット形成に関与できるろうが少ないという事情があった。これはSiが生成する酸化皮膜の影響も一因をなしている。更に、このフィレット形成に関与しなかった余剰なSiは、残留して熱交換器の耐食性を阻害し、また、局部的に偏った被ろう付材の侵食を進行させて製品としての熱交換器の特性を損なうおそれもあった。
従って、純Siの微細粉末では充分なフィレットが得難く、フラックスの酸化皮膜破壊作用を促進する技術の登場が望まれている。
ここで例えば、フラックスの添加量を増加させると、上述の酸化皮膜の破壊作用を促進できるが、無駄なフラックスが増えてコストが上昇するだけでなく、ろう付け時に熱交換器部品を組み立てる初期組立段階での継手間の隙間が、無駄なフラックスの介在により大きくなり、ひいてはろう付材の充填性を阻害する問題がある。
そこで本発明者は、上述の観点から、エロージョンを抑制するために粒径の微細なSi粉末とAl−Si系合金粉末を使用し、塗布量を多くした場合であっても、優れたろう付け性が得られるろう材の研究を行った結果、添加する粉末ろうとして純Si粉末とAl-Si系合金粉末とすることで優れたろう付け性を発揮できることを可能としたろう付け性と耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金材を提供すること、およびそのアルミニウム合金材を備えた熱交換器の提供を目的とする。
なお、純Si粉末とAl−Si系合金粉末とフラックスを混合することは、特許文献3で開示はされているが、フラックスの種類について言及はなく、耐食性が不足する場合がある。また特許文献3は、実施例によると、ろう材塗布量が60g/m以上と比較的多く必要とする。さらに特許文献3ではヘッダーなど厚みが0.5mm以上と比較的厚く、求められるフィレットのど厚が大きめのAlまたはAl合金材のろう付継手に特に適しているが、本願は厚みが比較的薄いチューブ(多穴管)とフィンなど求められるフィレットのど厚が小さめのろう付継手に特に適するものである。チューブの中でもさらに0.5mm未満の厚さのチューブに適する。
上記目的を達成するために本発明は、純度98%以上の純Si粉末と、0.05〜35%のSiを含有し残部Alと不可避不純物からなるAl−Si系合金粉末と、フッ化物フラックスと、バインダとを混合したろう付け用組成物が塗布されたアルミニウム合金材であって、前記純Si粉末と前記Al−Si系合金粉末とが、重量混合比において90:10〜99.5:0.5の範囲内で混合されてなることを特徴とする。
本発明において、前記純Si粉末の粒径が2〜25μm、Al−Si系合金粉末の粒径が2〜75μmであることを特徴とする。
本発明において、前記フッ化物フラックスが、ZnF、KZnFのうち、少なくとも1種以上のZn化合物を含むものであることを特徴とする。
本発明において、前記純Si粉末と前記Al−Si系合金粉末の合計塗布量が1〜30g/m、フッ化物系フラックスの塗布量が3〜100g/mであることを特徴とする。
本発明の熱交換器は、先のいずれかに記載のろう付け性と耐食性に優れた熱交換器用ろう付けアルミニウム合金材を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、耐エロージョン性に優れ、仮に塗布量を増やした場合であっても、優れたろう付け性を得ることができるろう付け性に優れたアルミニウム合金材およびそれを備えた熱交換器を提供することができる。
Si粉末とSi系合金粉末がろう材として機能するためには、SiがAlと接触して固相拡散する必要がある。
この点においてろうの溶融の初期に純Siよりも低融点のAl−Si系合金の成分がろうの中に存在することにより、低融点のAl−Si系合金が反応の核となって純Siの溶融も促進する。これにより、従来のSi粉末単独のろう材では得られなかったのど厚の大きな厚いフィレットを得ることができるようになり、かつ、ろう付け後の余剰なSiの残留も抑制できる耐食性の良好な熱交換器を得ることができる。
Si粉末の粒径は2〜25μmであることが好ましく、Al−Si合金粉末の粒径は2〜75μmであることが好ましく、これらの範囲の粒径とすることにより、ろう付け時の温度で部分的に溶融したろう材においてSiがAlと接触し易くなり、固相拡散が円滑に進行する。
Si系合金粉末の塗布量を1〜30g/mとすることで、適切な塗布量を確保することができる。塗布量が多すぎるとAlに接触できないSi系合金粉末が存在する確率が高くなり、これら接触できない粉末はろう材として機能しないだけではなく、かえって異物となってろう付けの阻害要因となってしまう。このため塗布量の好ましい限界範囲を有する。また、Si系合金粉末の塗布量が少なすぎると、ろう材の機能が不足してろう付け不良が増加する。
以下に本発明において限定する事項について説明する。
図1に示す熱交換器Aは、離間して左右に配置されている一対のヘッダータンク1、1と、これらヘッダータンク1、1の間に互いに並行に間隔をあけて設けられたアルミニウム合金製の複数の扁平型のチューブ3(図2参照)と、これら隣接するチューブ3とチューブ3の間に架設されるように設けられた波形のフィン5とから構成されている。
そして、熱交換器Aにおいて前記ヘッダータンク1とチューブ3は、ヘッダータンク1の側面に複数整列形成されたスロット(差込孔)に各チューブ3の端部を差し込み、差込部分の周りに配置したろう材を用いて両者を相互にろう付けするとともに、チューブ3とフィン5は、チューブ3の上下面に塗布した後述のろう付け用組成物(ろう材層)7を用いて両者を相互にろう付けすることで組み立てられている。
前記構造の熱交換器Aは、図2に示すようなチューブ3の内部に複数形成された流通孔3A…とヘッダータンク1の内部空間を介して冷媒を循環させ、前記フィン5を介して効率良く熱交換ができるように構成されている。
前記構造の熱交換器Aにおいてチューブ3は、例えばwt%でSi:0.5〜1.0wt%、Mn:0.05〜1.2wt%を含有し残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金の押出材から構成されている。
また、このチューブ3を構成する押出材として、前記組成に加え、Cu、Ti、Zr、Znのうちの1種以上を更に必要に応じて含有する組成のアルミニウム合金から構成することもできる。
なお、以下の表記において合金組成の範囲を〜の符号で示す場合、特に注記しない限りは下限値と上限値を含むことを意味するので、以上、以下を意味する。従って例えば、Mn:0.05〜1.2wt%と表記した場合に、0.05wt%以上、1.2wt%以下を意味する。
以下に前記チューブ3を構成するアルミニウム合金押出材の主要添加元素の添加理由について説明するが、これら元素の添加範囲は一例であって本発明が以下の範囲に規定されるものではない。
Si:Siは、チューブを構成するAl押出管にSiを多く固溶させることで押出管の電位を貴にし、熱交換器を構成する際にチューブにろう付けするフィンを犠牲的に腐食させることができ、これにより押出管への深い孔食の発生を抑制させ、またろう付け性を向上させると共に良好な接合部を形成してろう付け後の強度を向上させる作用を有する。チューブにおけるSiの含有量が0.5wt%未満では所望の効果が得られないので好ましくなく、一方、Siを1.0wt%より多くチューブに含有させると、合金の融点を低下させてろう付け時の過剰な溶融を招き、さらに押出し性を低下させるので好ましくない。したがって、Al合金押出管に含まれるSiは0.5〜1.0wt%にすることが好ましい。
Mn:Mnは、チューブを構成するAl合金押出管の電位を貴にし、ろう中に拡散し難いためにフィンとの電位差を大きくとれ、フィンによる防食効果をより有効にし、外部耐食性を向上させ、さらにろう付け後の強度を向上させる作用を有する。Mnの含有量が0.05wt%未満ではAl合金押出管の電位を貴にする効果が少なくなってしまうので好ましくなく、含有量が1.2wt%を超えると、押出性が低下してしまうので好ましくない。したがって、Al合金押出管に含まれるMn量は、0.05〜1.2wt%にすることが好ましい。
次に、本実施形態で用いるろう材層7は、純度98.0%以上の高純度のSi粉末と、0.05〜35%のSiを含有し、残部Alと不可避不純物からなるAl−Si系合金粉末と、フッ化物系フラックスと、バインダとからなる。
Al:Alについては、Si系合金粉末の酸化皮膜の成長を抑制し、特にフッ化物系フラックスの効果を有効に作用させる。Al−Si系状態図の液相線温度範囲から、0.05〜35%の範囲でSiを含有させた合金を使用することができる。
Si:Si含有量は実用的なAl合金に不可避的に含有されている量である0.05wt%を下限とした。
前記ろう材層7には、前記Si系合金粉末の他に、以下のフッ化物系フラックスが含まれている。これらは、K1−3AlFe4−6、KZnF、KSiFのいずれかのフラックスであることが好ましい。
Si粉末粒径:2〜25μm
Si粉末の粒径が25μmを超えるようであると、被ろう付材のろう侵食が激しく、満足なろう付け表面が得られず、ひいては耐食性を阻害する。また、Si粉末の粒径が小さ過ぎる場合は、ろう形成に有効なSi量を確保できなくなる。
Al−Si合金粉末粒径:2〜75μm
Al−Si合金粉末粒径が75μmを超えるようであると、熱交換器を組み立てる際の初期段階において各部材を治具で締め付けても部材間に粒径の大きな粉末が介在するので部材間の隙間が大きくなり、ろうの充填が困難になる。また、逆にAl−Si合金粉末粒径が2μmを下回るようであると、Siを活かしてろう形成に効果を発揮することができなくなる故、2〜75μmの範囲とした。
Si粉末とAl−Si系合金粉末の塗布量:3〜30g/m
塗布量が下限未満では十分な大きさのフィレットを形成することができず、上限を超える塗布量では組立初期時の部材間隔が大きくなりすぎてろうの充填が困難になる。
フッ化物系フラックスの塗布量:3〜100g/m
フラックスはろう付け熱処理過程においてアルミニウム基材およびSi粉末の酸化皮膜を破壊するために使用するが、上限を超える量を加えると、熱交換器を組み立てる際の初期段階において各部材を治具で締め付けても部材間に粒径の大きな粉末が介在するので部材間の隙間が大きくなり、下限を下回る量の塗布では酸化皮膜を破壊する効果が不十分となり易い。また、残余のフラックスが多い場合はその残渣の存在により熱交換器の外観が損なわれる。
上記粉末ろう材をチューブ3の上面あるいは下面に必要量塗布すれば、ろう材層7を形成することができる。
ろう材層7をチューブ3の上下両面に塗布したものをヘッダータンク1に装着した後、フィン5を組み付けた後、適当な雰囲気で適温に加熱して、ろう材を溶解させる。この際の加熱温度としては580〜610℃が望ましい。580℃以下ではろう材および母材の一部溶解が進まず、良好なろう付が難しく、一方、610℃を越えると、著しい侵食が生じるおそれがあるため、上記温度範囲が望ましい。
本実施形態の構造によれば、チューブ3を差し込むためのスロットが側面に設けられ、チューブ3を差し込むためのスロットが設けられたヘッダータンク1において、先のろう付け用組成物により先に記載の合金からなるチューブ3にフィン5が接合されているので、ろう付け強度を高くすることができる。
次に本発明において、ヘッダータンクの形状は断面四角形状に限らず、丸形パイプ状のヘッダータンクであっても良い。
また、ヘッダータンクは1つの部材(ピース)からなる構成である必要はなく、縦割り半パイプ状のヘッダータンク半体を組み合わせてパイプ状とした構造の2ピース型のヘッダータンクであっても良い。
前述の如くSi系合金粉末とAl−Si系合金粉末とZn含有フラックスが混合されて塗布されており、ろう付け時にフラックスが溶融して活性度が上がり、アルミニウム材、Si粉末、及びAl−Si合金粉末の酸化皮膜を破壊する。フラックス中のZnは還元されてアルミニウム材へ拡散し、これによりアルミニウム材の表面近くに犠牲陽極層が形成され、熱交換器の耐食性を向上させる。
ところで、熱交換器のチューブ材あるいはフィン材などの被ろう付材にあっては、年々薄肉化が進められているので、図3に示す如く薄肉のアルミニウム合金製の被ろう付け材(チューブ)10の場合、25μm以下の粒径の小さなSi粉末11であれば、ろう付け加熱を通してSiと被ろう付材10のAlが相互拡散して低融点(Al−Si系2元状態図の固相線温度577℃)のAl−Siろう合金部12を形成する。ここで被ろう付材10の表面部分に存在するのはバインダ15である。
この構造の場合、仮に、図3に示すようにSi粒子13が大き過ぎるとろう侵食が進行し、製品の腐食環境において孔食につながりやすいクレータ状の欠陥を生じさせてしまうおそれが高い。また、熱交換器において薄肉化、小型化などの要望から、チューブの肉厚は0.2mm程度の極薄のものまで登場している。
以上のような観点から見ると25μm以下の粒径のSi粉末とすることが望ましい。また、Si系合金粉末11が25μm以下の微細なものであっても、存在量が多すぎる場合はAl−Siろう合金部12の生成に寄与せずに未反応のまま残留するので、この未反応のSi粉末は逆にろう付けの障害物となる。
ところで、Alを含むSi系合金粉末においてフラックスの存在下においてろう付け温度(600℃)まで加熱すると、ろう付け温度はSiの融点(1427℃)よりも遙かに低いが、Alの存在下において初めて部分溶融が生じてAl−Siろう合金部の生成が可能となる。
「実施例1」
以下の表1に示す組成の純Si粉末とAl−Si合金粉末を作製し、フラックスとしてKZnFの組成のフラックスを混合し、アクリル系バインダーとアルコール系溶剤を用いてスラリー状のろう材組成物を作製した。これらのろう材組成物をJIS規定A1050のアルミニウム合金の押出材からなるチューブの表面に塗布し、コルゲートフィン材と組み合わせ、窒素雰囲気中にて600℃で3分間保持するろう付けを行い、ろう付け性を測定した。ろう付け性とは、(社)軽金属溶接構造協会規格LWSーQ9701(1997)に定められた隙間充填性試験(クリアランス2mm)に供した時のフィレットの形成長さにおいて30mm以上のものを○、30mm未満のものを×とした。
また、ろう付け後のフィン材付きチューブに対して腐食試験(ASTMG85−85
SWAAT 20日間)を行い、チューブの最大孔食深さを測定し、150μm以下のものを○、150μmを超えるものを×とした。また、エロージョンについては、チューブにおける最大エロージョン深さを測定した。以上の結果を以下の表1に示す。
Figure 2006205254
表1に示す結果から、純Si粉末と、0.05〜35%のSiを含有し残部Alと不可避不純物からなるAl−Si系合金粉末と、フッ化物フラックスと、バインダとを混合したろう付け用組成物であって、前記純Si粉末と前記Al−Si系合金粉末とが、重量混合比において90:10〜99.5:0.5の範囲内で混合されてなるろう付材であるならば、ろう付性に優れ、耐食性が良好であり、形成されたフィレットののど厚が大きいものが得られた。
これらに対し、比較例1の試料はAl−Si系合金粉末のSi%が45%と多い試料であるが、ろう付け性が悪化し、フィレットのど厚も小さかった。
比較例2の試料は純Si粉末の粒径を2〜35μmの範囲とし、大きな粒径のものを混合した例であるが、ろう付け性が悪化し、耐食性も悪く、フィレットのど厚も不十分であった。これは、ろう付け後においても純Si粉末が多く残留したためと考えられる。
比較例3の試料はAl−Si系合金粉末の粒径が大きすぎた試料であるが、Al−Si系合金粉末の粒径が大きすぎる場合、熱交換器の組み立て初期時にチューブとフィン材を多段(例えば40〜60段)に積層すると、チューブとフィン材の間に大きな粒径のAl−Si系合金粉末が存在すると、その隙間ゆえ積層全体でろう付け後の積層寸法が設計値と大幅に異なるようになる。例えば75〜100μm程度の粒子が介在し、ろう付け用組成物の塗布量が厚くなることを余儀なくされると、チューブとフィン材が50〜60段積層時には、合計でおよそ3〜4mm程度積層状態でのフィンーチューブ間の隙間が増加するようになる。
比較例4の試料は、Al−Si系合金粉末の構成比率を12%と多くした例であるが、ろう付け性が不十分であった。また、比較的微細なAl−Si系合金粉末は純Si粉末よりも高価であるので、多く使用することはろう付材のコストアップにつながる。
比較例5の試料は、Al−Si系合金粉末を含ませていない、純Si粉末のみの試料であり、この試料はフィレット形成はできるが、フィレットののど厚が不足する。
比較例6の試料は、純Si粉末とAl−Si粉末の混合塗布量が少ない例を示すが、この混合塗布量が少ないと、ろう付け性が低下した。
比較例7の試料は、純Si粉末とAl−Si粉末の混合塗布量が多すぎる例を示すが、この混合塗布量が多すぎると、ろう付け性と耐食性が低下した。
比較例8の試料は、フラックス量のみ多くした試料であるが、フラックス量のみを増加しても、熱交換器の組み立て初期時にチューブとフィン材との積層時の隙間を増大させるので好ましくない。
比較例9の試料は、Al−Si系合金粉末の量を40%とした試料であるが、ろう付け性が不十分であった。
図1は本発明に係る熱交換器の一実施形態を示す斜視図。 図2は同熱交換器の一実施形態のチューブの部分を示す断面図。 図3はチューブ材の表面に塗布したSi系合金粉末の状態を示す説明図である。
符号の説明
A…熱交換器、1…ヘッダータンク、3…チューブ、5…フィン、7…ろう材層、10…チューブ、11,13…Si系合金粉末、12,14…Al−Siろう合金部、15…バインダ。

Claims (5)

  1. 純度98%以上の純Si粉末と、0.05〜35%のSiを含有し残部Alと不可避不純物からなるAl−Si系合金粉末と、フッ化物フラックスと、バインダとを混合したろう付け用組成物が塗布されたアルミニウム合金材であって、前記純Si粉末と前記Al−Si系合金粉末とが、重量混合比において90:10〜99.5:0.5の範囲内で混合されてなることを特徴とするろう付性と耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金材。
  2. 前記純Si粉末の粒径が2〜25μm、前記Al−Si系合金粉末の粒径が2〜75μmであることを特徴とする請求項1に記載のろう付け性と耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金材。
  3. 前記フッ化物フラックスが、ZnF、KZnFのうち、少なくとも1種以上のZn化合物を含むものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のろう付性と耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金材。
  4. 前記純Si粉末と前記Al−Si系合金粉末の合計塗布量が1〜30g/m、フッ化物系フラックスの塗布量が3〜100g/mであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のろう付性と耐食性に優れた熱交換器用ろう付けアルミニウム合金材。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のろう付け性と耐食性に優れた熱交換器用ろう付けアルミニウム合金材を備えたことを特徴とする熱交換器。

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JP2005141707A Withdrawn JP2006205254A (ja) 2004-12-27 2005-05-13 ろう付け性と耐食性に優れた熱交換器用アルミニウム合金材及びそれを備えた熱交換器

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP4547032B1 (ja) * 2009-04-17 2010-09-22 三菱アルミニウム株式会社 アルミニウム材のフラックスレスろう付け方法およびフラックスレスろう付け用アルミニウムクラッド材
JP2011136358A (ja) * 2009-12-28 2011-07-14 Mitsubishi Alum Co Ltd 耐食性に優れる粉末ろう組成物及びそれを用いてなる熱交換器用アルミニウム合金チューブ及び熱交換器
CN113369668A (zh) * 2021-05-20 2021-09-10 西安交通大学 一种复合管/排管及复合板的搅拌摩擦硬钎焊制备方法

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